JP4213594B2 - サンプル・デバイスの保存加工 - Google Patents

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Description

本発明は、検出可能な標識を使用する分析物アッセイの分野に関し、光散乱粒子標識で標識したサンプルを保存加工する特定の応用例を伴うものである。
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている、2001年9月5日に出願した特許文献1の一部継続出願である。
生化学及び分子遺伝学の最近の進歩により、人体及びそのプロセスに関して多くの知識及び情報が蓄積されてきた。これらの知識を医療用途に転換し、かつ様々な病気をより深く理解することが急務である。したがって、複数の分析物用の定量的で安価な分析物検出手順及び機器が強く求められている。このような手順、検査キット及び機器は、研究、個々の診療現場(診療所、救急処置室、野外など)及びハイ・スループット検査応用例で有用であろう。
分析物アッセイでは、色素標識、放射性標識、化学発光標識、蛍光標識、吸光性標識及び光散乱標識を使用することがよく知られている。特に、RLS(共鳴光散乱)粒子標識及び信号検出技術の利用法における最近の発展により、単一分析物アッセイ、複数分析物アッセイから、組織学的切片及び細胞のin situ標識に至る分析的応用分野全体が可能になっている。
特に分析物アッセイにおけるこのようなRLS粒子標識及びその使用法が、Yguerabideらの特許文献2、特許文献3、Yguerabideらの特許文献4、1997年10月17日出願の「Analyte Assay Using Particulate Labels」という名称のYguerabideらの特許文献5、2002年2月25日出願の「Methods For Providing Extended Dynamic Range in Analyte Assays」という名称のYguerabideらの特許文献6に記載されている。これらすべてを参照により図面を含めてそれら全体を本明細書に組み込む。この技術要素は、非特許文献1及び非特許文献2という2つの関連する文献にも記載されている。これらも同様に参照により本明細書にそれら全体を組み込む。
アッセイで(「プラズモン共鳴」と称する)光散乱標識を利用する類似の方法が、Schultzらの特許文献7、Schultzらの特許文献8、Schultzらの特許文献9及びSchultzらの非特許文献3にも記載されている。
Swopeらの特許文献10は、サンプルに向かって臨界角未満の角度で光を向けるように光源を配置することによって散乱した光を測定する機器を記載している。検出器は、臨界角エンベロープの外側で散乱光を検出するように配置している。
De Meyらの特許文献11は、組織学的切片中における赤色マーカとして金コロイド標識した免疫グロブリンの位置決定を行う、明視野光学顕微鏡による免疫細胞化学的な類似の方法を記載している。粒子標識の吸光特性に基づくIGS(免疫金染色)法が、著者らにより以下のように述べられている。
「いずれの手順でも、最終産物は、抗原を含む区域の上に蓄積した多数の金顆粒であり、したがって、典型的な赤みがかった色の金コロイド・ゾルが得られる。」
DeBrabanderらの特許文献12は、明視野又は落射偏光顕微鏡法及びビデオ・カメラによるコントラスト増強を利用することによって、直径200nm未満の個々の金属粒子を検出する方法を記載している。発明者らは、以下のように述べている。
「一般に、上記の手順では、使用する金属粒子の直径は約10〜約100nmである。これは、一般に、200nm程度とされている明視野顕微鏡法の解像限界よりもはるかに小さい。したがって、以前から知られている目視による光学顕微鏡法はどれも、固定された金属粒子凝集体の検出に応用するには不十分であることは極めてもっともである。個々の粒子は、超顕微技術、具体的には電子顕微鏡法によってしか観察することはできないはずである。
現在、極めて驚くべきことに、得られた画像を電子的なコントラスト増強にかければ、直径200nm未満の個々の金属粒子を、可視スペクトルの明視野顕微鏡又は落射偏光顕微鏡手段によって鮮明に可視化できることがわかっている。」
非特許文献4(及び特許文献12)は、顕微鏡分解能以下の金粒子及び明視野ビデオ・コントラスト増強を利用することを記載している。具体的には、直径5〜40nmの金粒子を用いた明視野ビデオ・コントラスト増強顕微鏡法によって細胞が観察された。著者らは、偏光落射照明を用いてその反射光を収集するか、あるいは、単色光及び簡単なカメラを用いた透過明視野照明による「より簡単で明らかにより感度の高い方法」を用いることを記載している。
RLS粒子標識を用いるYguerabideの方法(例えば、米国特許第6,214,560号参照)では、粒子の光散乱特性の検出及び/又は測定を、サンプル中の1種又は複数種の分析物の存在の有無及び/又はその量に相関させる。このような方法は、好ましくは照明光の波長未満のサイズの、少なくともある集合体の検出可能な光散乱粒子に分析物を結合させることによって、サンプル中の1種又は複数種の分析物を検出することを含む。粒子によって散乱したビームからの光を500倍未満の倍率で目視検出することができるという条件下で、光ビームでこれらの粒子を照明する。次いで、これらの条件下で、これら1種又は複数種の分析物の存在の尺度として、粒子から散乱した光を検出する。単に、適切に照明を行い、かつ特定の散乱光をできるだけ多く検出するようにすると、極めて感度の高い検出方法が得られる。
一般に、固相体又は膜のサンプル・デバイス上の標識したサンプルの場合、サンプルを細心の注意を払って取り扱い、それによって、表面の損傷その他の劣化を防ぐ。このことは、デバイスからの信号の読取りをいくらか遅らせたいか、又は後で読取りを繰り返したいか、あるいは実験結果の恒久的かつ物理的に記録したい場合は特にそうである。しかし、多くのタイプの標識は、標識自体が変化するために、読取りを繰り返し及び/又は遅らせて行うのに適していない。例えば、蛍光標識は、ブリーチング及びフェーディングが生じ易く、それによって、再現性のよい繰返し読取り値又は信頼性の高い遅延読取り値を得ることが制限されるか、あるいはまったくできない。同様に、一般に使用する放射性標識の半減期は比較的短く、それによって、標識したサンプルの読取りを遅らせる能力が制限される。対照的に、RLS(共鳴光散乱)粒子標識、特に金属粒子による光散乱標識では、このような劣化が生じにくく、再現性よく繰返し読取りにかけることができ、かつ信頼性が高く正確な遅延読取りを行うことができる。
米国特許出願第09/948,058号 米国特許第6,214,560号 PCT/US/97/06584号(WO97/40181号) PCT/US98/23160号(WO99/20789号) 米国特許出願第08/953,713号 米国特許出願第10/084,844号 PCT/US98/02995号(WO98/37417号) 米国特許第6,180,415号 米国特許出願第09/740,615号 米国特許第5,350,697号 米国特許第4,446,238号 米国特許第4,752,567号 米国特許6,165,798号 米国仮出願第60/317,543号 米国仮出願第60/364,962号 Yguerabide、Yguerabide、Anal.Biochem.261(1998)、157〜176頁 Anal.Biochem.262(1998)、137〜156頁 Schultzら、Proc.Natl.Acad.Sci.97、996〜1001頁、(2000) DeBrabanderら、Cell Motility and the Cytoskelton 6(1986)、105〜113頁
以上開示した技術は、分析物の検出を行う信号生成/検出システムとして、ほとんどのサンプル・タイプ、システム及びアッセイ・フォーマットに広く適用可能である。しかし、時折、これらのアッセイは、例えば基板上でほこりの汚染を受け易く、こうしたほこりによっても光が散乱し、散乱によるバックグラウンドが増加し、画像が形成される際のアーティファクトになる。したがって、このような汚染その他の光散乱アーティファクトに関連するバックグラウンド光散乱を大きく低減することができるサンプル及びアッセイを保存する方法が求められている。
様々なタイプのサンプルが、様々な方法で保存加工されている。例えば、顕微鏡スライド上の染色組織サンプルは、コーティングするか、あるいは透明な材料中に包埋する。一般に、このように保存加工したサンプルは、学習用に使用して、ある期間にわたり、多くの様々な生徒がそのサンプルを利用することができる。しかし、一般に、このようなサンプルを用いて定量的な結果は得られず、定性的な顕微鏡検査及び教育に用いられる。
同様に、電子顕微鏡法では、切片化し検査する前に、固体基質中にサンプルを包埋することが一般的である。別の例では、しばしば、染色サンプルを含むアガロース又はポリアクリルアミドのゲルを乾燥させ、それによって、電気泳動結果の半永久的記録が得られる。しかし、一般に、このように乾燥させると乾燥処理中にゲルの寸法が変化するので、かなりの歪みが生じる。
特定の材料に特異的に結合する検出可能な標識を伴う多くの状況では、標識したサンプルを保存加工することができると有用である。例えば、多くの状況では、異なる時点でアッセイを行ったサンプルに関する結果を比較することができると有益である。しかし、サンプルの不安定性、アッセイ機器の不安定性及び/又はサンプル・デバイス(サンプル・キャリア)の不安定性のために、このような比較を実施する能力が制限されている。同様に、様々な他の理由からサンプル・デバイスからの信号検出を繰り返し行うことができるか、あるいは、本質的に即座にではなく、ある長い期間後に信号の検出を行うことができるか、もしくは、実験又は臨床アッセイ結果の永久的かつ物理的な記録を確定することができるとしばしば有益である。これらの応用例でも、様々な不安定性によって、繰返し又は遅延検出を行う能力は制限されている。
したがって、標識したサンプルを保存加工し、保護し、及び/又は検出を増強する助けとなる方法及び材料があると極めて有利であろう。
本発明は、光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプルを保存加工する方法を提供する。この方法は、サンプルの少なくとも一部にコーティング組成物を塗布して、光学的に透明なコーティングを形成することを含む。好ましくは、この光散乱粒子は、サイズが1〜500nm(1nm、500nmを含む)であり、光散乱粒子から散乱された光を、500倍未満の倍率で電子的な増幅を行わずに肉眼で検出することができる光散乱特性を有する。一実施形態では、本発明は、サンプルを繰り返し使用し、長期間保管することができるように、散乱光を検出可能な粒子を含むサンプルを保存加工する方法を提供する。サンプルを保存加工するのに使用するコーティング組成物は、ラッカー、ワニス又は木材仕上げ用ラッカーを含み得る。特定の実施形態では、このコーティング組成物は、アルキド樹脂、アクリル樹脂、炭水化物ポリマー、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、テルペン、ウレタンアルキド及びウレタン油などの高分子化合物並びに2−ブタノン、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、トルエン又はキシレンなどの希釈剤を含む。特定の実施形態では、サンプルは膜上に存在し、コーティング組成物は、膜によって散乱する光を減らし、分析を先に延ばし遅らせるために膜を保存加工することが同時に行われるようにその膜を改変する。
別の実施形態では、本発明は、光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプル上に形成された、少なくとも1つの光学的に透明なコーティングを含むサンプル・デバイスを提供する。好ましくは、この光散乱粒子は、サイズが1〜500nm(1nm、500nmを含む)であり、粒子から散乱された光を、500倍未満の倍率で電子的な増幅を行わずに肉眼で検出することができる光散乱特性を有する。
別の実施形態では、本発明は、コーティング組成物及びサンプルをコーティングするための1組の指示を含むキットを提供する。キット中の他の構成要素は、光散乱粒子、硬化剤、剥離剤、サンプル・デバイス及び検出機器を含み得る。
別の実施形態では、本発明は、光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプル中でバックグラウンド光散乱を減少させ、また、光散乱粒子標識の特異的検出を増強させる方法を提供する。この方法は、前記サンプルの少なくとも一部にコーティング組成物を被覆することを含む。このコーティング組成物は、光学的に透明なコーティングを形成し、この光学的に透明なコーティングの屈折率により、バックグラウンド光散乱が少なくなり、また、前記標識から散乱した光を検出するための屈折率が大きくなる。
サンプル・デバイスのコーティングは光学的損傷を受けやすいが、一般に、このような損傷は無視できるほどのものである。好ましくは、コーティングしたサンプルは、紫外線露光をできるだけ低減する手段を含む暗条件下で保管する。遮光容器の使用又は暗室での保管など、暗条件下で保管する従来の方法を用いることができる。
別の実施形態では、本発明は、較正デバイスを準備する方法を提供する。この方法は、サンプル・デバイス上の1つ又は複数の離散位置に既知量の光散乱粒子を被着させることと、サンプル・デバイスに、光学的に透明なコーティングを形成するコーティング組成物を被覆することとを含む。好ましくは、この光散乱粒子は、サイズが1〜500nm(1nm、500nmを含む)であり、粒子から散乱された光を、500倍未満の倍率で電子的な増幅を行わずに肉眼で検出することができる光散乱特性を有する。特定の実施形態では、本発明は、既知量の光散乱粒子を含み、光学的に透明なコーティングで恒久的に保存加工された少なくとも1つの離散位置を含む較正デバイスも提供する。
本発明は、この較正デバイスを使用して、1組の光散乱粒子によって生成された光信号を分析する方法も提供する。この方法は、規定した条件下で1組の光散乱粒子からの散乱光信号を測定することと、同じ規定条件下で、既知量の光散乱粒子からの散乱光信号を測定することと、この2組の測定値からの散乱光信号を比較して、第1組の粒子中の光散乱粒子の量を予測することを含む。較正デバイス上に存在する既知量の光散乱粒子は、光学的に透明なコーティングで恒久的に保存加工されている。
本発明は、散乱光を検出可能な粒子に基づく分析物検出方法に有用な組成物及びデバイスに関するものである。
一実施形態では、本発明は、対象とする1種又は複数種の標識を含むサンプルを保存加工するのに有用な、物体の組成物、調合物及びプロセスに関する。本発明は、検出可能な標識、特に光学的に検出可能な標識を固定しかつ保護することが望まれる任意のサンプル・デバイスに適用することができる。好ましい実施形態では、本発明の組成物及び方法を用いて、分析物アッセイで使用する標識を固定し保護する。
標識として光散乱粒子を使用すると、フェーディングなど他のタイプの標識の欠点が克服されるが、固相体又は膜のサンプル・デバイス上に存在する標識されたサンプルに共通の問題を有する。サンプルを保存するか、あるいは2回以上読み取る場合には、サンプルが損傷しないように注意深く取り扱わなければならない。本発明者らは、光散乱粒子標識に基づくアッセイは、例えば、読み取りを遅らせるか、あるいは保管状態から読み取る際に、やはり光を散乱させ、バックグラウンド散乱を増加させ、画像を形成する際にアーティファクトとなることがある粒子状のほこり又は汚れがサンプル上に存在するという問題が時には生じ易いことにも気づいた。
この問題をしっかりと念頭において、本発明者らは、データの質を大きく改善し、誤った結果が生じる危険性を低減することができるサンプル及びアッセイを保存するこの方法を見い出した。したがって、本発明は、第1態様で、光散乱粒子を備えたサンプルを保存加工する方法を提供する。この方法は、粒子の検出を妨げない保護材料で光散乱粒子をコーティングするか、あるいは覆うことを含む。これは、例えば、サンプル・デバイスの一部に、光学的に透明な凝固性溶液をコーティングすることによって実現することができる。
本発明は、従来技術に対していくつかの利点を示す。これらの利点には、サンプルが光散乱粒子を含むとき、表面に付着した粒子及び汚染物からのアーティファクトが低減し、取扱い及び環境への露出のために生じる物理的損傷から保護されることが含まれる。さらに、光を散乱するごみやスクラッチなどの表面欠陥を有する表面上で光学的に透明なコーティングを使用すると、これらのアーティファクトによるバックグラウンド光散乱が大きく減少する。また、粒子を取り囲む媒質の屈折率を大きくすることによって、粒子の散乱効率が、空気に比べて、その媒質の屈折率の4乗に相当する倍率で大きくなる。本発明で説明する媒質では、この効果により、粒子の光散乱信号がほぼ倍になる。
本発明は、標識したサンプルの保護、保存加工、さらに長期間にわたる保管後の繰返し又は遅延検出の必要に対処する。さらに、この方法では、RLS粒子(共鳴光散乱粒子)とともに用いる際に、バックグラウンド散乱光を減少させ、及び/又は、散乱光信号の屈折率を大きくすることによって、分析物アッセイの感度を増強することもできる。保護及び/又は保存加工を行うことを「アーカイブする」と称することもある。保護及び/又は保存加工に用いる媒質をアーカイブ剤と称することもある。
本明細書で用いるとき、「サンプル」という用語は、対象とする物体、例えば分析物並びに同定プロセス又はアッセイで使用する1種又は複数種の標識を含み得る材料を指す。
本明細書で用いるとき、「サンプル・デバイス」という用語は、同定又は分析を行うサンプルを保持する物理的な物品を指す。一般に、サンプル・デバイスは、1つ(又は複数)のサンプルを保持する1つ(又は複数)の表面で構成される。好ましくは、複数のサンプルを分析するために、複数の表面又はゾーンがサンプル・デバイス上で利用可能である。サンプル及び/又は標識が存在する表面を指すのに、「基板」という用語も用いる。サンプル・デバイスの非限定的な例には、スライド、チップ、プレート、マイクロタイタ・プレート及び膜が含まれる。
サンプル・デバイス又は固相体を伴う他の物品に関連して本明細書で用いるとき、「チップ」という用語は、1平方インチ以下の表面積を有するほぼ平面の固体基板を指す。この基板は、ガラス又はプラスチックなど光学的に透明であることが好ましいが、他の材料の支持体を用いることもできる。
サンプル・デバイスその他の固相物品に関連して用いるとき、「スライド」という用語は、1平方インチよりも広く、最大4平方インチ(4平行インチを含む)までの表面積を有するほぼ平面の固体基板を指す。好ましくは、この基板は光学的に透明とする。約1インチ×3インチの寸法のガラス製顕微鏡スライドがその例である。ほぼ均一で平らな表面をもつスライドが好ましいが、スライドは、くぼみ、稜、固定式又は着脱可能なウエル構造、あるいは他の有用な表面構造若しくは意図するアッセイでそのスライドの使用を妨げない表面構造を有し得る。
同様に、「プレート」という用語は、面積が4平方インチよりも広いほぼ平らな表面を有する固体基板を指す。プレートは、ほぼ均一な平面とすることもできるし、くぼみ、取り付けられたウエル構造その他の構造的な特徴を有することもできる。いくつかの実施形態では、プレートは、例えば、マイクロタイタ・プレート(例えば、96ウエル、192ウエル及び384ウエル・プレート)など、液体を保持するウエルなどのくぼみを有する。他の実施形態では、プレートは、固定式又はプレートの表面に取り付けられる着脱可能なウエル構造を有し得る。
「チャンバ・スライド」という用語は、培養などの処理中に流体サンプルを保持するために、表面上に1つ(又は複数)のチャンバ化されたウエルあるいはウエルを有するスライドを指す。一般に、ウエル面を画定する上部構造は、ポリスチレンなどでできており、シリコンゴム・ガスケットなどのエラストマ・ガスケットでスライド表面に密封される。一般に、このガスケット及び上部構造は着脱可能である。こうすると、個々のサンプルを、スライドの異なる区域にのせることができる。一般に、スライドのコーティング及び/又は読取り前にウエル構造を取り外すが、必要条件ではない。
本明細書で用いるとき、一般に「標識」という用語は、対象とする物体を同定し、ほとんどの場合、物理的、化学的又は生物学的なプロセスを通じてその物体を追跡するのに用いる実体を指す。好ましい実施形態では、この標識は、RLS(共鳴光散乱)粒子標識などの標識が放出するフォトンによって検出可能である。
本明細書で用いるとき、「散乱光を検出可能な粒子」、「光散乱粒子」及び「RLS(共鳴光散乱)粒子」という用語を交換可能に用いて、金属、金属化合物、酸化金属、半導体、ポリマーからなる任意の粒子又は粒子状の物質、あるいは、金属、金属化合物、酸化金属、半導体又は超電導体材料を少なくとも0.1重量%含む混合組成物からなる粒子を指す。セクション5.1で、本発明の粒子標識をより詳細に説明する。
以下のセクション5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8及び5.9で、膜の使用を含めて、本発明のこの実施形態の様々な態様を詳細に説明する。
5.1 共鳴光散乱粒子標識
RLS(共鳴光散乱)により、顕微鏡分解能以下の粒子に結合した分析物の存在を検出するための極めて感度の高い方法が得られる。好ましくは、この粒子は、均一なサイズの金及び/又は銀粒子であり、一般にそのサイズは直径40〜120nmの範囲の値をとるが、例えば、1〜500nm(1nm、500nmを含む)又は20〜200nmあるいは30〜300nmというより大きな範囲の値をとる粒子を使用することもできる。適当な条件下で白色光その他の多色光で照明すると、これらの粒子は、特定の色及び強度の光を極めて効率よく散乱する。これらの粒子を、特定の粒子結合を行うことができるように様々な生体分子で誘導体化し、それによって、例えば、特定のハプテン、抗原、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、小分子リガンド、核酸など多くの異なる標的部分を検出し、かつ定量する可能性がある。RLS検出システムにより、精確な顕微的位置決定が必要な応用例で、優れた空間分解能も得られる。このようなRLS粒子は、様々な分析物アッセイにおける標識として極めて有用であり、本発明の方法において好ましいものである。
したがって、一実施形態では、本発明は、光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプルを保存加工する方法を提供する。負の制御などある種の実施形態では、サンプルと光散乱粒子の接触が行われたにもかかわらず、サンプルに結合したままになり得る粒子はほとんどないか、あるいは全くない。このようなサンプルの保存加工も本発明に包含される。本発明の方法は、サンプルの少なくとも一部にコーティング組成物を塗布して、光学的に透明なコーティングを形成することを含む。この光散乱粒子は、サイズが1〜500nmになるように選択され、これらの粒子の1つ又は複数から散乱された光を、500倍未満の倍率で電子的な増幅を行わずに肉眼で検出することができる特性を有する。
光散乱理論並びに超高感度分析物検出に最も適した粒子サイズ及び組成の選択
RLS(共鳴光散乱)粒子の光学特性は、粒子の組成、サイズ及び形状並びに浸浴媒質の屈折率によって決まる。(目視検出の応用例では)最適な標識の組成及びサイズとは、電磁スペクトルの可視領域中で強い光散乱バンドを示すものである。超高感度検出で望まれる粒子の組成及びサイズは、特にRayleighの光散乱理論で表される光散乱理論を検討することによって推定することができる。Rayleighの式は、入射光の波長よりもはるかに小さい(半径が入射光波長の約1/10未満の)球形で均質な粒子に適用される。使用する粒子の一部の直径がこのRayleighサイズ範囲よりも大きくても、Rayleighの式により、超高感度標識として用いるのに最も適した粒子を選択するための基本的な指針が得られる。Rayleighの式を検討する前に、以下の段落に示す光散乱の機序を理解すると有利である。
光散乱の機序
単色偏光(すなわち、所与の方向に振動する電磁波からなる)ビームで小さな粒子を照明すると、粒子中の電子に、振動する電気的な力が加わる。これらの電子はそれに応答して、入射光と同じ周波数で偏光方向(ここでは、垂直方向とする)に振動する。粒子が入射光波長よりもはるかに小さい場合、粒子中の電子はすべて、入射光と位相が揃った状態で全体として振動し、そのため、振動する大きな電気双極子モーメントが生じる。このような振動する双極子は、励起入射波と同じ周波数及び波長を有する電磁波を放射することが電気力学理論から知られている。散乱光を構成するのはこの放射である。単色光で照明すると、すべての粒子は、粒子サイズ、組成又は形状と無関係に、入射光と同じ波長で光を散乱することを強調しておく。検出可能な光散乱粒子は、以下により詳細に論じるように、白色光照明下で、異なる色などの異なる光学特性を示すように構成することもできる。
「光散乱及び吸収スペクトルに関する理論的な表現並びに異なる組成及びサイズを有する均質な小さい球形粒子の光散乱及び吸収能」
小さな粒子の散乱に関するRayleighの式は、入射光が垂直方向に沿って偏光している場合には、以下のように記述することができる。
Figure 0004213594
は散乱光強度、aは粒子の半径、λは真空で測定した入射光の波長(分光光度計で測定した波長は空気中での波長であるが、実用上は、真空での波長と同じである)、nmedは粒子を浸浴する媒質の屈折率(λ=λ/nmedにより、粒子が感知する波長である浸浴媒質内部の入射光波長が与えられる。nmedの項により、λが、実際に粒子が感知する波長λに換算される)、αは、入射光の偏光方向である垂直方向と散乱光が検出される方向の間の角度、rは粒子と検出器の距離、nは粒子の屈折率、m=n/nmedは粒子の相対屈折率である。粒子の屈折率は、組成及び波長によって決まり、この文章中で論じる粒子サイズでは、バルク粒子材料の屈折率と同じスペクトル(nとλの関係)を有する。多くの粒子組成についての異なる波長における屈折率は、様々なハンドブック及び科学論文中に出ている。
Rayleighの式から、超高感度標識としてRLS粒子を使用するのに重要な光の散乱特性に関して以下のことが言える。
1.粒子サイズの増加に伴い、散乱光強度は極めて急激に増加する。より精確には、散乱光強度は半径の6乗で増加する。したがって、80nmの球形粒子は、同じ組成の40nmの粒子よりも約64倍強い光を散乱する。
2.散乱光強度に対する組成の影響は、式(1)中で組成に依存する唯一のパラメータであるmの値を含む項によるものである。mがどのように光の散乱に影響を及ぼすかを説明するには、Rayleighの式の基礎であるマックスウエルの電気力学理論では、屈折率は複素数量であり得るという概念を導入することによってのみ光の吸収を説明することができることを理解することが必要である。すなわち、光を吸収する(例えば、電磁スペクトルの可視領域の色を表す)材料では、屈折率は複素数である。光を吸収しない透明な材料では、屈折率は実数である。したがって、一般に、粒子の屈折率nは、次のように表すことができる。
Figure 0004213594
ただし、i=√−1であり、nrel及びnimはそれぞれ、屈折率の実数部及び虚数部である。図1A、1B及び1Cにそれぞれ、金、銀及びセレニウムについてのnrel及びnimとλの関係のグラフを示す。これらの材料では、nrel及びnimはともに波長に大きく依存する。ガラス及びポリスチレンなどの(可視光に)透明な誘電体材料では、nimはゼロであり、通常、波長に大きく依存しない。ガラスではnrel=1.46(石英ガラス)、ポリスチレンでは(等級に応じて)nrel=1.57〜1.60である。実質上、ガラス及びポリスチレンの屈折率は、可視光波長全体にわたって波長に無関係である。
Rayleighの式を検討すると、式(1)の分母がゼロのとき、強い光の散乱が生じることが示される。この場合、Iは無限大になる。すなわち、光の散乱が強くなる条件はm+2=0である。mについて後者の式を解くと、m=i√2が得られる。ただし、i=√−1である。この結果は、相対屈折率の実数部がゼロ(すなわち、mrel=nrel/nmed=0)であり、虚数部が√2に等しい(すなわち、mim=nim/nmed=√2)である波長で、光の散乱が極めて強く生じることを示している。透明な誘電体材料では、nim=0なので、これらの条件を満たすことはできない。したがって、例えば、ガラス及びポリスチレンからなる粒子は、強い光散乱信号を示さないと予測される。しかし、金属、酸化金属及び半導体などの材料は、波長に大きく依存し、したがって、ある波長での高光散乱条件を満たすことによって光散乱強度が大きくなる可能性がある複素屈折率を有する。これらの条件を厳密に満たす必要はないが、それらの条件に近づくほど、光散乱バンドが強くなる。
「いくつかの粒子組成物の光散乱スペクトル及び光散乱能」
図2に、水に浸浴した異なる組成をもつ40nmの球形粒子の光散乱スペクトルを示す。これらはRayleighの式を用いて計算したものである。ガラス及びポリスチレン粒子では、実質的にnは波長に無関係であり、Iとλの関係は、Rayleighの式から予想されるように、波長が増加するにつれて1/λに従って単調に減少する。一方、金属粒子では、それらの複素屈折率のために、可視領域中の波長において、表面プラズモン共鳴としても知られる強い光散乱バンドを示し得る。一般に、350〜850nm、350〜450nm、400〜500nm、450〜550nm、530〜640nm及び600〜850nmの波長範囲内で強い光散乱バンドを示す粒子が好ましい。金及び銀粒子は、電磁スペクトルの可視領域中でこの表面プラズモン共鳴を示し得る。これらのバンドを図2のグラフに示す。図では、光散乱が強くなる条件が、40nmの金粒子では525nm、40nmの銀粒子では380nmでほぼ満たされることが示されている。セレニウムは、波長依存性の複素屈折率を有するが、光散乱が強くなる条件が、可視領域内の波長では満たされず、40nmのセレニウム粒子は、可視領域では光散乱バンドを示さない。
図2の光散乱スペクトルの振幅は(すべてのスペクトルが同じスケールで示されるように)正規化されており、したがって、光の散乱能に関する情報は得られない。光散乱断面積によって光散乱能を表すのが慣例である。粒子の光散乱断面積は、当たった光のフォトンを散乱する粒子の周りの区域を表す。粒子が小さい場合には、光散乱断面積は次式で与えられる。
Figure 0004213594
scaの値は、ゼロから、粒子の物理的な断面積πaよりも大きい値までの範囲の値をとり得る。光を吸収する粒子の能力も考察する。光散乱理論では、吸収とは、光のフォトンが入射光ビームから取り出され、熱に変換されるプロセスを指す。光の散乱及び光の吸収は互いに独立したプロセスであり、この2つのプロセスを合わせて消光と呼ぶ。Cextは、吸収分光光度計で測定される量である。より具体的には、光ビームが光散乱懸濁液を横切るときに、光ビームから取り出される光の量は、次式で与えられる。
Figure 0004213594
ただし、Iは入射光強度、Iは透過光強度、ρは粒子濃度、Cextは消光断面積、Lは光路長である。小さい球形の粒子の場合、吸収断面積は次式で与えられる。
Figure 0004213594
ただし、Imは、括弧内の複素数の虚数部を意味する。吸収強さの合計は消光断面積Cextによって次のように与えられる。
Figure 0004213594
消光の強さは、通常、A=Log(I/I)=εCLの関係を利用して、吸収Aの測定値からの10進数のモル消光係数ε(M−1cm)について評価する。ただし、Cはモル濃度であり、Mは1リットル当たりのモル数である。ε及びCextは、式(1)によって次のように関連づけられる。
Figure 0004213594
Figure 0004213594
ただし、Navはアボガドロ数(1.602×1023/mol−1)である。前に述べたように、Cextは、光ビームが光散乱懸濁液を通過するときに、光ビームから取り除かれるフォトンの総数の尺度であり、フォトンは、光の散乱及び吸収の両方で取り除かれる。散乱効率は、次式によって定義することができる。
Figure 0004213594
この式から、光ビームから取り除かれ、散乱したフォトンとして現れる部分のフォトンが与えられる。所与の粒子の散乱強さCscaは、次式の関係で示されるように、積εφに比例する。
Figure 0004213594
照明が偏光しているときの散乱光の空間分布及び偏光度も考察する。垂直方向に偏光している光で照明される小さな粒子の懸濁液では、偏光方向に直交する任意の方向(式1でα=90°)で強度が最大になり、方位角には無関係(垂直方向の周りの回転には無関係)である。さらに、散乱光は、垂直方向に完全に偏光している。すなわち、偏光子を通して散乱光を観察する場合、偏光子が垂直方向に向いているときに強度が大きく、その向きが水平方向に変化したときにゼロになる。検出器の向きが、α=90°からα=0°に回転する場合、散乱光強度は、αが減少するにつれsin(α)で減少し、0°でゼロになる。これらの影響は、実験的に容易に確認することができる。偏光していない光で粒子を照明する場合、偏光の影響は減少する。
「入射光波長よりも大きい粒子」
入射光の波長に匹敵するか、あるいはそれよりも直径が大きい粒子の光散乱及び吸収特性は、Rayleigh理論では理解することができないが、Mie理論によって予測することができる。Mie理論は、Rayleigh理論よりも複雑であり、したがってここには示さない。粒子が大きい場合に生じる光の散乱特性の大きな変化の1つは、粒子サイズの増加に伴い散乱光の色が変化することであり、より本質的には、粒子サイズの増加に伴い光散乱バンドがより長波長側にシフトすることである。粒子が小さい場合には、散乱光強度は粒子半径に伴って増加するが、光散乱及び吸収バンドの形状及び波長の最大値は、粒子サイズの変化とともに変化しない。図3及び4に、Mie散乱によって計算した異なるサイズの銀及び金粒子の光散乱スペクトルを示す。Mie理論の予測値は実験結果に極めてよく一致することがわかっている。超高感度検出では、光散乱断面積は約10−10cm、あるいはεφの値が約2.5×1010−1cm−1であることが好ましい。
粒子が大きい場合には、粒子サイズの増加に伴って生じるスペクトル変化は、以下のように定性的に説明することができる。粒子が小さい場合には、粒子中の電子はすべて、同じ位相で振動し、振動する大きな双極子モーメントが生じる。(直径が約40nmよりも大きい)大型の粒子では、粒子の異なる部分の電子は、入射光の波の異なる位相を感知するので、異なる位相で振動する。粒子の異なる領域から散乱される光の波は異なる位相を有し、そのため、粒子の表面で干渉する。この干渉により、粒子サイズが増加すると散乱光スペクトルに変化が生じる。
「粒子の光散乱パラメータの研究用に展開した公式」
当業者なら、本発明の理論的な方法を用いて、組成、サイズ、形状及び均質性という個々の粒子パラメータを評価し、改変し、調整し、それによって、容易に検出かつ測定される1つ又は複数の所望の光散乱特性を導出する(すなわち、構成する)ことができよう。粒子を選択する際に、サンプルのタイプ、診断フォーマット及び機器の照明及び検出手段の制限に関する考察を行う必要がある。例えば、一応用例では、ハイ・スループット検査機器上で非特異的バックグラウンド光を多く含む固相サンプル上の複数分析物検出を実施することができ、別の応用例では、診療所におけるその場でのアッセイで溶液中の単一分析物検出を実施することができる。
主な目的は、分析的かつ診断的なアッセイで使用する粒子タイプを最適化することである。当技術分野で知られているように、多くの応用例で、粒子にポリマー、タンパク質などの高分子物質をコーティングし、それによって、様々な媒質の化学的安定性が適切なものになる。抗体、受容体、ペプチド、タンパク質、核酸などの結合剤も、粒子表面上に配置することができ、それによって、分析的又は診断的なフォーマットでコーティングした粒子を用いることができる。いくつかの応用例では、これらの結合剤は、溶液状の粒子を安定化し、分析物を結合する特異的な認識結合成分を提供するという点で二重の機能の働きをする。粒子に抗体などのタンパク質をコーティングすることが当技術分野で知られている。しかし、主な関心は、異なるタイプの粒子の光散乱信号の1つ又は複数の特定のパラメータを測定することにある。これらの粒子は、場合によっては、類似のサイズ及び/又は形状及び/又は組成のものであり、コーティングした粒子の1つ又は複数の特定の光散乱特性の光学的な解像性を決定することが望まれる。
物理的実験及び理論的なモデル化によって、粒子表面上に、結合剤の薄いコーティング、(可視領域スペクトルにおける)非光学的吸収性ポリマー又は他の材料が存在しても、これらのタイプの材料をコーティングしていないそのタイプの粒子に固有の光散乱特性が大きく変わらないことが確認されている。「薄いコーティング」とは、粒子表面上にコーティングされた、異なる量及び組成の上記材料の1つ(又は複数)の単層のことである。
「粒子の特定の光散乱特性」
様々な異なるアッセイ・フォーマットを用いて様々なサンプル・タイプ中の分析物を検出するのに用いることができる最も重要な光散乱特性の一部の簡単な概要を示す。検出する光散乱特性の測定値は、散乱光の強度、波長、色、偏光、角度依存性及びRIFSLIW(散乱光の強度及び/又は波長の回転個別変動)のうち1つ又は複数のものである。
金属状粒子はコーティングの有無にかかわらず類似の光散乱特性を有し、ともに非金属状粒子に比べて優れた光散乱特性を有する。さらに、様々なサンプル・タイプの金属状粒子から特定の光散乱属性を測定することができるように、サイズ、形状、組成及び均質性を様々に変えることによって金属状粒子の光散乱特性のタイプを調整するのは比較的簡単なことが確認されている。
極限の感度まで金属状粒子を検出することができる。例えば、特許文献2に開示されているDLASLPD(検出される粒子だけからの散乱光に対して角度を付けた直接光)と称する照明/検出方法による安価で使い易い機器によって、単一粒子限界まで個々の粒子を容易に検出することができる。
サンプル中で1つ又は複数のタイプの金属状粒子を、白色光又は類似の広帯域照明下で、DLASLPDタイプの照明/検出方法によってそれらの色を測定することによって検出する。例えば、直径40、60及び80nmのほぼ球形の(例えば、結合剤をコーティングし、分析物に結合させ、溶液中に放出するか、あるいは、固相体に結合させた)金粒子及び直径約30nmの銀粒子を、各粒子のタイプをそれぞれの固有の散乱光の色から同定し、及び/又は強度を測定することによって、サンプル中で容易に検出し、定量することができる。これは、マイクロタイタ・ウエル又はマイクロアレイ・チップなどの固相体上あるいは溶液中で行うことができる。溶液中での測定は、固相フォーマットの場合のように粒子が空間的に分解されていないので、より複雑である。例えば、それぞれスペクトルの異なる波長又は色の領域を測定するように設定した一連の検出器を通過するように溶液を流すことによって、溶液中の異なるタイプの粒子を検出することができ、これらの異なる波長における強度が測定される。あるいは、フロー・システムの有無にかかわらず、一連の異なる波長の照明及び/又は検出を用いて、異なる粒子のタイプを検出することができる。
固相体による分析の応用例では、粒子の濃度に応じて、粒子計数から、積算光強度測定に切り替えることによって、極めて広い範囲の濃度の金属状粒子を検出可能である。単位面積当たりの粒子密度が極めて低いものから極めて高いものまで、粒子を検出することができる。
他のアッセイ応用例では、ビーズなどの固体基板やウエル底部などの表面などに結合した粒子を、pH、イオン強度その他の液体特性を調整することによって溶液中に放出することができる。屈折率がより大きい液体を追加することができ、溶液中で粒子の光散乱特性が測定される。同様に、光の散乱特性を測定する前に、様々な手段によって溶液状態の粒子を濃縮して、体積又は面積を小さくすることができる。この場合も、測定前に屈折率がより大きい液体を追加することができる。
小さな非球形粒子は、粒子の長軸に沿った吸収及び放出のモーメントによって、ある程度直線状双極子散乱体として振る舞う。通常の光学顕微鏡でDLASLPD照明/検出条件下で、以下の観察を行った。照明光が直線偏光していると、非球形粒子は、それらが回転するときに明滅する。これらの粒子は、粒子の長軸が偏光方向を向く粒子の向きのときに最も明るくなり、モーメントがこの向きに直交するときに最も暗くなる。対照的に、球形微粒子は偏光で照明しても明滅しない。ある種の組成の非球形粒子では、非対称性の度合いに応じて(白色光照明による)散乱光の色が変化する。非対称性が増すと、色はより長波長側にシフトする。例えば、非対称な銀粒子が溶液状態で回転する際に、DLASLPDに似た条件(RIFSLIW)下で通常の光学顕微鏡で観察すると、色が変化するのが観察された。本発明の多くの異なる態様でこの回転特性を用いて、より特異的かつより高感度に、サンプル中の1種又は複数種の分析物又は粒子を検出及び/又は測定する。
金属状の材料及び非金属状/金属状の材料製のある種の混合組成の粒子では、追加の光散乱特性及び/又は追加の物理的な特性が得られることも確認されている。これらの特性には、EMF(電磁力)を加えることによって粒子を操作する能力が含まれる。本発明の1つ又は複数の態様の実施に伴って、多くの異なる方法で、これらの粒子のこの特性を利用することができる。次に、粒子依存性の光散乱特性及びこれらの特性を利用してサンプル中の1種又は複数種の分析物を検出することの例を論じる。
まず、異なるサイズ及び組成の均質な球形粒子の光散乱特性について本発明を説明すると有用であろう。ただし、本発明の基本的な態様は、非球形粒子にも同様に当てはまることが当業者には理解されよう。さらに、300nm〜700nmの範囲の入射光の波長について本発明を説明すると有用であろう。ただし、本発明の基本的な態様は、本質的にあらゆる波長の電磁放射にも同様に当てはまる。「光」とは、紫外、可視、近赤外、赤外及びマイクロ波周波数の電磁放射を意味する。本発明の説明に、ポリスチレン粒子を用いて様々なタイプの非金属状粒子を表すとさらに有用であろう。他の非金属状粒子のタイプには、ガラス及び他の多くの高分子化合物からなるものが含まれる。このような粒子は、ポリスチレン粒子にほぼ類似した光散乱特性を有する。
同じ強度及び波長の入射光で照射した異なる粒子から得られる散乱光の相対強度を、それらのCscaを比べることによって直接比較することができる。Cscaが大きいほど、粒子の散乱能(光散乱強度)が高い。以下のセクションでは、「散乱能」という用語を用いて、Cscaすなわち散乱光強度を意味するものとする。
300〜700ナノメートル(nm)の波長範囲の入射波長について、サイズが同じで組成が異なる球形微粒子の水中での光散乱能を計算した。この計算で用いた様々なバルク材料についての屈折率と(真空中での)波長の値の関係は、標準的なハンドブックに出ている。
ある種の粒子組成物では、光の散乱能は300から700nmまで連続的に減少し、他の組成物では、散乱能と波長の関係のプロフィールは最大値又はバンドを示す。これらの最大値又はバンドがスペクトルの可視領域にあると、入射光が白色のときには粒子によって散乱した光は色づく。
図4Aに、様々な直径の球形金粒子について、散乱光強度の計算値と入射光波長の関係のスペクトルのプロフィールを示す。金粒子のサイズが大きくなるにつれ、散乱光強度の最大値の波長はより長波長側にシフトする。コーティングの有無にかかわらず直径40、60、80、100nmの金粒子についてのこれらの光散乱特性はそれぞれ類似しており、白色光源で照明されると、それぞれ緑、黄緑、橙及び橙がかった赤の粒子に見える。球形の銀微粒子は青に見える(図3A)。したがって、分析型アッセイにおいて、様々な方法で様々なタイプの結合剤をコーティングした金属状粒子を使用することができる。散乱光を検出可能な粒子の構成可能な特性、例えば、異なるタイプの金属状粒子の色により、複数の分析物を検出することができる。複数分析物アッセイ(すなわち、複合アッセイ)における異なるタイプの分析物の検出に、異なる集合体の光散乱粒子を用いることができる。この場合、特定のタイプの分析物の検出に使用する粒子の集合体をそれぞれ、他の集合体の粒子の散乱光から区別可能な散乱光が放出されるように構成する。例えば、同じサンプル中で、それぞれ異なるタイプの結合剤をコーティングした直径40、60、80及び100nmの球形金粒子及び直径20nmの銀粒子を用いて、そのサンプル中で5つの異なる分析物を検出することができる。1つのフォーマットで、5つの異なるタイプの細胞表面受容体その他の細胞表面上に存在する表面構成物を検出し可視化することができる。これは、細胞表面に結合した、異なるコーティングを施した粒子の散乱光の色を、DLASLPD条件下で光学顕微鏡によって、白色光照明を用いて検出することによって可能になる。分析物の数及びタイプは、検出された緑、黄色、橙、赤及び青の粒子数によって同定される。同様に、異なるタイプの金属状粒子を「染色体の染料」として使用して、異なるタイプの金属状粒子の散乱光の色によってサンプル中の異なるタイプの核酸配列、核酸結合タンパク質その他類似の分析物を同定する上記の方法を用いて、in situハイブリダイゼーションなどの染色体分析及び遺伝学的な分析を行うこともできる。これらの例は例として示されたものであり、単一又は複数分析物検出に関する多くの異なるアッセイ・フォーマットで、異なるタイプの金属状粒子の散乱光の色を用いることができることが当業者には理解されよう。
したがって、ある種のタイプの球形金属状粒子のサイズを調整することは、粒子の散乱光の色及び/又は他の特性を用いることによって様々なサンプルにおける粒子の検出性を高めるのに有用な方法である。白色光源を使用することによって、2つ以上の異なるタイプの粒子を極めて低い濃度まで容易に検出することができる。
「混合組成粒子」
混合組成の球形粒子を理論的かつ物理的な実験によって評価して、様々な診断的かつ分析的な応用例におけるそれらの可能な有用性を査定した。理論的な評価では、異なる厚さの銀をコーティングした金の「コア」粒子及び異なる厚さの金又はポリスチレンをコーティングした銀のコア粒子を検討した。「コア」とは、その上に追加の層又は厚さの異なる光散乱材料をかぶせ、それによってある種の割合の混合組成物が形成される、球形粒子を意味する。直径16nmの金のコア粒子に追加の厚さの銀を加えた混合組成物からなる粒子について、直接的な物理実験を行った。これらの例では、金及び銀が金属状の材料を代表し、ポリスチレンが非金属状の材料を代表している。これらの例は、1種又は複数種の異なる金属状及び/又は非金属状の材料の混合物からなる粒子が関与する多数の異なる可能な組合せのうちの単なるいくつかの例である。
金属状材料のある種の混合組成物からなる粒子、例として、金及び銀の混合組成物では、多くの異なるサンプル・タイプ及び特定の診断的かつ分析的な応用例において有用な新しい光散乱特性が得られる。金属状材料の組成を変えることによって、散乱強度が大きい分解可能な波長を有する2つ以上の光学的に別個な粒子を作製することができる。
対照的に、非金属状材料及び金属状材料の混合組成物からなる粒子は、非金属状材料の割合が金属状材料に対して等しいか、あるいはそれより少ないと、金属状材料に全体的に類似した光散乱特性を示す。金属状材料に対する非金属状材料の割合が極めて高い場合にのみ、表1のセクションBにその結果を示すように、混合組成粒子の光散乱特性が、非金属状材料状の特性に似たものとなる。
銀−金の混合組成物及び銀−ポリスチレン組成物はともに、純粋な金属状材料からなる粒子の性質である高い光散乱能及び可視波長の散乱バンドを示す。ある種の混合組成物粒子は、これらの混合組成タイプの粒子の一方又は両方の散乱強度の最大値からの散乱光及び/又は1つ(又は複数)の色を特異的に検出することによって検出可能である。このような混合組成タイプの粒子では、より少ない量の粒子を検出する能力、より具体的には、以前に可能であったよりも少量の粒子や多量の粒子を検出する能力が増強される。
Figure 0004213594
「非対称粒子又は非球形対称構造」
非対称又は対称な非球形粒子などの非球形粒子の入射光ビームに対する物理的な向きにより、これらの粒子を検出するのに用いられる追加の散乱光特性が得られる。非球形対称構造には、扁平回転楕円体、三角柱又は六方粒子、かん体その他の多角形粒子構造、及びかん体、円柱、円錐などの円柱構造が含まれる。非球形構造によって散乱された光の性質(例えば、色、波長、偏光など)は、その構造の幾何形状及び照明光ビームの偏光方向に対する相対的な向きに大きく依存する。この固有の特性は、RIFSLIW(散乱光の強度及び/又は波長の回転個別変動)の観察によるものである。
(対称性の有無にかかわらず)小さな非球形粒子は、粒子の長軸又は主軸に沿った、短軸とは異なる吸収及び放出モーメントをもつ直線状の双極子散乱体としてある程度振る舞う。通常の光学顕微鏡でDLASLPD照明/検出条件下で、以下の観察を行った。照明光が直線偏光していると、非結合状態又は弱い結合状態の非球形粒子は、それらが動くときに(例えば、回転により)明滅する。これらの粒子は、それらの主軸が光の偏光方向を向くときに最も明るくなり、モーメントがこの方向に直交するときに最も暗くなる。対照的に、小さな球形粒子は偏光で照明しても明滅しない。ある種の組成の非球形粒子では、非対称性の度合いに応じて(例えば、白色光照明下で)散乱光の色が変化する。非対称性が増すと、色はより長波長側にシフトする。例えば、溶液中で非対称な銀粒子が回転する際に、DLASLPDに似た条件下で通常の光学顕微鏡で観察すると、色が変化するのが観察された。本発明の多くの異なる態様でRIFSLIWを用いて、より特異的かつより高感度に、サンプル中の1種又は複数種の分析物又は粒子を検出及び/又は測定する。
本出願人は、金属状の材料及び非金属状/金属状の材料製のある種の混合組成物粒子では、追加の光散乱特性及び/又は追加の物理的な特性が得られることも確認した。これらの特性には、EMF場を加えることによって粒子を操作する能力が含まれる。本発明の1つ又は複数の態様を実施に伴って、多くの異なる方法で、これらの粒子のこの特性を利用することができる。次に、粒子依存性の光散乱特性及びこれらの特性を利用してサンプル中の1種又は複数種の分析物を検出することの例をさらに論じる。
本発明の多くの異なる態様でRIFSLIW特性を用いて、より特異的かつより高感度に、サンプル中の1種又は複数種の分析物又は粒子を検出及び/又は測定することができる。例えば、散乱光強度の明滅及び/又は色の変化により、どの粒子が表面に結合しており、どの粒子が結合していないかを決定する追加の検出手段が得られる。これにより、非分離型(均質)アッセイを開発することができる。必要なのは、粒子計数、強度測定などによって、明滅せず、及び/又は色が変化しない粒子を検出することだけである。結合していない溶液状態の粒子は、明滅し、及び/又は色が変化し、表面に結合している粒子はそれらの変化がない。ビデオ・レコーダなどの追加の画像処理手段などにより、非対称及び球形(対称な粒子)の両方に用いられる追加の検出方法が可能になる。例えば、分離又は非分離フォーマットのいずれにおいても、集光レンズの焦点を表面に結ばせ、単位面積当たりある時間にわたって一定である散乱光信号だけを記録することによって、結合粒子が検出される。ブラウン運動その他のタイプの運動を行っている溶液状態の遊離した粒子では、これらの粒子の単位面積当たり単位時間当たりの散乱光強度が変動する。結合した光散乱粒子は空間的に固定され動かない。「結合している」光散乱粒子から「動いている」光散乱粒子を分離するために画像処理方法を用いることによって、結合粒子の量を決定し、サンプル中の分析物の量と相関させる。表面に結合している粒子と、結合していない球形又は非対称の溶液状態の粒子とを区別するのに用いることができる多くの他の画像処理方法があることが当業者には理解されよう。
「粒子の表面又はコアに他の材料を追加して、光散乱特性に関連しない追加の物理的な属性をもたらすこと」
ある種の応用例で、ある種のタイプの組成物を用いる場合、粒子表面を「コーティング」して、粒子をさらに化学的に安定化させるか、あるいは、特定の応用例で分析的かつ診断的アッセイに極めて重要であり得る追加の表面結合属性を追加すると有用なことがある。例えば、銀が急速に酸化されることはよく知られている。銀粒子又は銀を含む混合組成物粒子を使用するために、表面上に金その他の物質の薄いコーティングを施して、銀がその化学的な安定性に関してもはや環境の影響を受けないようにすることによって、銀を含む粒子を化学的に安定化させることができる。
別の例では、特異的に結合する結合剤を含むポリマーなどの別の材料又は結合剤を付着させるのに有用な他の材料を表面に、あるいは結合剤自体を粒子にコーティングしたいことがある。これらそれぞれの例で、このような「薄い」コーティングは、コア材料の光散乱特性を大きく変化させない。というのは、これらの材料の光散乱濃度は、金/銀粒子からの散乱に対して相対的に無視できるほどのものだからである。「薄い」コーティングとは、粒子表面上の単層又はそれに類似するタイプのコーティングを意味する。
MLSP(操作可能な光散乱粒子)は、1つ又は複数の所望の光散乱特性をさらに有する粒子であり、これらの粒子は、EMFを加えることによって1次元、2次元又は3次元空間で操作することもできる。MLSP粒子は、多くの異なる方法で作製することができる。例えば、強誘電性、磁性又は類似の材料の小径「コア」に、所望の光散乱特性を有する材料をはるかに多い割合でコーティングすることによってMLSP粒子を作製する。例えば、直径10nmの磁性又は強誘電性材料のコアに十分な量の金をコーティングして、直径50、70又は100nmの粒子を作製する。これを図5Aに示す。
このような粒子を作製する別の方法は、所望の光散乱特性を有する材料に、磁性又は強誘電性材料の薄いコーティングを被覆することである。例えば、約50nmの金又は銀粒子に、厚さ1〜2nmの磁性又は強誘電性材料のコーティングを被覆する。これを図5Bに示す。
あるいは、粒子を形成する際に、1つの粒子当たり、磁性又は強誘電性材料に対する適切な割合の所望の光散乱材料の比が得られるように所望の光散乱材料と強誘電性又は磁性材料を適切な割合で混合することによってMLSP粒子を作製する。これを図5Cに示す。
上記MLSP粒子の代替形態は、所望の光散乱特性を備えた1つ又は複数のタイプの粒子を、EMFによって移動させることができる1つ又は複数の粒子に連結又は組み合わせることである。こうすると、このような複数粒子構造は、MPSL粒子に類似の特性を有し得る。例えば、磁性又は強誘電性材料の微粒子を、検出される光散乱特性を有する1つ又は複数の粒子に連結する。この連結は、安定な複数粒子構造が得られるイオン的、化学的その他の任意の手段によるものとする。例えば、適切な割合で混合する際に、異なるタイプの個々の粒子を合わせて架橋することによって規定した配置の離散した複数粒子構造が得られるように、異なる粒子に適当なポリマーをコーティングする。1つ(又は複数)の所望の複数粒子構造を得るために、粒子を合わせて連結する多くの異なる方法がある。図6A、B及びCに、例として、いくつかの可能な複数粒子構造を示す。図には、配向可能なMLSP粒子に関して、ダイマー、テトラマー及びより高次の粒子構造をそれぞれ示す。2つ以上の粒子の直線構成から複数粒子構造を形成できることも企図されている。これらは、可能な多くの異なるタイプの複数粒子構造のうちの単なるいくつかの例であり、このような構造を作製する多くの方法があることが当業者には理解されよう。
1種又は複数種の材料の混合物からなる粒子のこれらの例は、当業者には明らかである可能な異なる材料からなる極めて多くの異なる組成物のいくつかの例である。
「粒子サイズ及び形状の均一性」
粒子の光散乱特性を検出する方法によっては、粒子の集合体におけるおおよそのサイズ及び粒子サイズの分布が極めて重要であり得る。例として、多くの市販の金粒子調製品では、粒子サイズ分布の変動係数は、約10%未満から約20%未満程度であると見積もられている。パーセント変動係数は、粒子サイズ分布の標準偏差を粒子調製品の平均値で割った商と定義される。したがって、変動係数が20%の60nmの粒子調製品の場合、標準偏差の1単位は約+12nmである。すなわち、約10%の粒子が、48nmよりも小さいか、72nmよりも大きい。このようなサイズの変動は、調製品の粒子のおおよその「平均」サイズに応じて、散乱光強度及び散乱光の色に大きな影響を及ぼす。
狭いサイズ分布を示す粒子集合体が好ましい。このような粒子を作製する好ましい手順は、まず、「種となる」金粒子の調製品を作製し、次いで、この「種となる」粒子調製品を取り出して、化学的な方法によって異なるサイズの金又は銀粒子を「成長」させるというものである。例えば、直径16nmの金粒子を「種」粒子として使用し、適当な試薬を追加することによってより大きな直径の金粒子を作製する。この方法は、混合組成物粒子を作製するのにも極めて有用である。こうした粒子調製方法の例に関しては、特許文献1を参照されたい。
粒子の均一性:個々の粒子の散乱光の色による分析物の検出
ある種の応用例では、個々の粒子の色を用いて、特定のタイプの分析物を同定し定量する。例えば、画像によるサイトメトリの応用例では、表面に付着した異なるタイプの粒子の数及び色を検出することによって、異なるタイプの細胞表面抗原などを同定し計数することが興味の対象であり得る。上記その他の関連するタイプの複数分析物検出では、異なる粒子のそれぞれのサイズ分布をできるだけ狭く保つ必要がある。粒子調製品の平均粒子直径は、白色光照明下で散乱光の所望の色が得られるように選択すべきである。それには、散乱光の異なる色を生成するために同じ応用例で用いることになる比較的小さい粒子と大きい粒子それぞれの平均粒子サイズの中間サイズに近い平均すなわち「中間」粒子サイズを用いる。こうすると、散乱光の色による異なるタイプの粒子の解像性が最大になる。
粒子の均一性:積算光強度測定
散乱光の強度は、粒子サイズが増減すると大きく変動し得る。積算光強度測定を行う際には特にこの強度変動を考慮に入れなければならない。変動係数が20%の上記60nm粒子調製品を使用することは、全体の10%の粒子の強度が、60nmの粒子の約3倍になるか、あるいは約1/3になることを意味する。さらに、残りの90%の集合に含まれる粒子の強度もかなり変動する。測定対象の粒子が多数存在する応用例では、積算光強度の「平均値」が60nm粒子を近似するはずである。しかし、粒子の濃度が低い場合には、統計学的なこのような変動が、サンプルごとの読取り値の精度に影響を及ぼし、補正アルゴリズムが必要となり得る。できるかぎり狭い粒子分布を用いることによって、測定の精度及び容易さが高められる。
「吸光色によって分析物を検出する有用な金属状粒子」
ある種のタイプの分析物アッセイでは、吸光特性によって分析物の検出を行うことができる濃度で分析物が存在する。例えば、免疫クロマトグラフィ・アッセイなどの技術分野における現在の問題は、一般に用いられるサイズ(直径4〜50nm)の金粒子を使用すると、それらの吸光色では光学的に解像できない粒子しか得られないことである。これらの粒子は、濾紙又は類似の診断アッセイ用固相媒質上で観察するとピンクから赤の色を有する。銀粒子その他の金属状粒子のサイズ及び/又は形状を変えることによって、多くの異なる色の光の吸収が得られる。光の吸収による粒子のこれらの異なる色を用いて、粒子の吸光色により異なる分析物を検出することができる。肉眼で検出することができるこれらの色は、免疫クロマトグラフィ・フロー・アッセイ、パネル・タイプ及びマイクロアレイあるいはより大型の個相の単一又は複数分析物アッセイなどの多くのタイプの固相アッセイにおいて極めて有用である。球形で非対称な銀粒子及びある種の混合組成の他の金属状粒子により、光の吸収による広範囲な色が得られる。
当業者なら、所望の診断的又は分析的な検出能力を得るために、多くの異なる粒子タイプ構成で様々な粒子タイプを用いることによって、本発明の多くの異なる態様を実施することができよう。図7に、当業者が、粒子の所望の光散乱特性の検出によって個々の診断的かつ分析的な検査の必要に合うように、適切な粒子組成、形状、サイズ及び均質性を選択するであろう方法を示す。
5.2 サンプルの保存加工
本明細書では、RLS(共鳴光散乱)粒子標識に関する使用法を強調して本発明を説明するが、本発明はそれに限定されるものではなく、可視光その他のタイプのEM放射を放出する他のタイプの標識とともに用いることもできる。本発明のこの態様を利用することができる他のタイプの標識の例には、とりわけ、蛍光標識、発光標識、色素標識及び放射性標識が含まれる。このような標識を使用する分析物アッセイ及びサンプル・デバイスは、当業者に周知のものである。RLS粒子標識を、同じサンプル中でこれらのタイプの標識と組み合わせて用いる分析物アッセイも企図されている。本発明のある種の実施形態では、分析物アッセイの構成に応じて、対象となる1種又は複数種の分析物に標識を付着させる。異なるタイプの標識を使用して、異なる供給源からの1種又は複数種の異なる分析物を追跡し同定することができる。
一実施形態では、本発明は、光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子を含む組成物との接触が行われたサンプルを保存加工する方法を提供する。この方法は、サンプルの少なくとも一部に、サンプル上に存在する光散乱粒子によって散乱した光を検出することができる少なくとも1つの光学的に透明なコーティングをコーティングするか、あるいは覆うことを含む。本発明は、様々な実施形態において、分析物と結合した光散乱粒子標識を有するサンプル上の分析物の存在又はその量あるいはその両方の検出を容易にするサンプル・デバイスを提供する。サンプル・デバイス上又はその中のサンプルを照明し、コーティングの存在下で、サンプル上に存在する分析物の存在及び/又はその量を示す働きをする、標識から散乱された光を検出する。ある種の実施形態では、覆い又はコーティングは可逆的である。すなわち、覆い又はコーティングを除去しても、物理的及び/又は化学的に、サンプル又は標識及び/又は他のサンプル、サンプル中の標識又はサンプル・デバイスに対する相対的なそれらの位置は変化しない。他の実施形態では、それは非可逆的である。一般に、標識を含むサンプルは固相体上に存在し、単一の光学的に透明なコーティング材料をサンプル及び固相体の上面に積層し、それによって、サンプルとその上の雰囲気の間に障壁を形成する。本発明は、付着した光散乱粒子を有する固相体及び光散乱粒子標識を覆う光学的に透明な固体コーティングを含む保存加工したサンプル・デバイスも提供する。ほとんどの場合、この光散乱粒子標識は、固相体上の分析物又はサンプルに直接又は間接的に付着させる。
本発明で使用することができるコーティング材料の例には、テルペン、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル、ラッカー、エポキシポリマー、ポリビニルアルコール、炭水化物その他の生体ポリマー、有機ポリマー、水性ポリマー、重合又は架橋によって凝固させることができるモノマー化学単位、並びに化学的かつ光学的に適合するそれらの組合せ及び共重合体が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明を用いると、バックグラウンド信号の減少、光散乱効率の増強、サンプルの固定及び保護、標識の固定及び保護、取扱い及び保管の簡便さ、並びに繰返し又は遅延分析でばらつきのない結果を得ることができる性能特性のうち1つ又は複数のものを含めて、多くの利点が付与されるが、これらに限定されるものではない。
しかし、このサンプル・デバイスは、他の技術を用いて、例えば、それ自体がプラスチック、ガラス又は水晶カバー・スリップなど光学的に透明な小型プレートで覆われたコーティング組成物でデバイスの少なくとも一部を覆うことによって保存加工することもできる。この小型プレートは、溶液の表面張力及び/又は溶液の粘性で定位置に保持することができる(溶液は接着剤として効果的に働き得る)。この組成物は、(隙間なくサンプル・デバイスを覆うのに依然として十分に流状であるが)塗布の前後でともに高い粘性とすることもできるし、サンプル・デバイス上に塗布した後でより粘性が高くなるようにすることもできる。同様に、網状組織又はゲル、例えば、ポリアクリルアミド及びアガロース・ゲルを形成する溶液でサンプル・デバイスの少なくとも一部を覆うことができる。この網状組織又はゲルは、上記の小型プレートで覆うことができる。このプレートは、表面張力及び/又はプレートと網状組織又はゲルの間のなんらかの結合によって定位置に保持することができる。
非凝固組成物を用いる実施形態では、(特にカバー・プレートの縁部の周りで)乾燥するために、凝固組成物を用いる実施形態よりも保存期間が短くなり得る。しかし、このような場合には、非凝固溶液を密封して、蒸発速度をかなり遅くする(すなわち、密封しない場合に比べて、少なくとも50%、70%、80%、90%、95%あるいはそれ以上蒸発速度を遅くする)か、あるいは、実質上蒸発を止める(例えば、密封しない場合に比べて、蒸発速度を5%、3%、2%、1%、0.5%以下に遅くする)ことによって保存期間を長くすることができる。このような密封は、蒸発速度を遅くするために、1種(又は複数種)の溶剤に対して透過性の低い(そうでない場合には、溶液から蒸発してしまう)光学的に透明な材料の追加の層で非凝固組成物(さらに、存在する場合にはカバー・プレート)を覆うことを伴い得る。あるいは、小型プレートで非凝固溶液を覆う場合には、プレートの縁部の周りだけ密封してもよい。この場合、密封材料は、光学的に透明なもの、すなわち、光学的に透明な囲いで非凝固溶液を取り囲むものとすることができるが、必要条件ではない。
固体表面又は膜にRLS技術を適用する際に生じる1つの実際上の問題は、ほこり、粒子状の汚染物、表面の凹凸又は光を散乱させる下にある基板の光学特性が、非特異的なバックグラウンド信号に寄与することである。このバックグラウンド信号により、標識粒子からの主要な散乱信号が不明瞭になり得る。したがって、一実施形態では、本発明は、粒子状の物体が、サンプル中の光散乱性粒子などの標識に混入するのを妨げる材料でサンプルを覆うか、あるいはコーティングすることを含むサンプルの保存加工方法を提供する。
散乱光を検出可能な粒子の散乱効率は、それらを取り囲む材料の屈折率で決まることが観察されているので、RLS粒子による散乱を増強し、かつ非特異的なバックグラウンド散乱を抑制する屈折率を有する材料を用いることが好ましい。水などの空気に比べて屈折率が大きい材料により、より大きな信号が生成される。こうした特性を有する液体が(例えば、上記非特許文献1に)記載されている。しかし、液体は、取扱いが面倒であり、蒸発し易く、汚染されやすい傾向がある。したがって、多くの応用例では、凝固又は硬化して不浸透性の表面を形成することができ、かつ光を透過することができる液体が好ましい。したがって、別の実施形態では、本発明は、液相から固相に変化することができ、好ましくは、固相状態の屈折率が空気及び/又は水に対して相対的に高い材料でサンプルを覆うか、あるいはコーティングすることを含むサンプルの保存加工方法を提供する。したがって、このような固体コーティングにより、バックグラウンドが減少し、及び/又は粒子からの特定の光散乱が増強される。好ましい実施形態では、この光学的に透明なコーティングは、サンプル又はサンプル・デバイス上で凝固する光学的に透明な溶液である。ある種の実施形態では、同じ又は異なる光学的に透明な材料の複数のコーティングを塗布することができる。
固体コーティングにより、バックグラウンドの低減及び/又は特定の光散乱の増強に加えて、標識された表面を物理的及び/又は化学的に保護することができる。この点で、RLSによって精確に空間的な位置決定を行うことができることは、検出すべき分析物/標的が固体表面上に固定される細胞生物学、分子生物学及び分析化学の応用例に特に有用である。例えば、RLS標識は、組織、組織学的切片、全細胞、細胞内成分、染色体調製物又は複数の空間的に固有なフィーチャを有するマイクロアレイなどのサンプル上に存在し得る。好ましい実施形態では、このサンプル・デバイスは、固相アレイを含む。同様に、好ましい実施形態では、このサンプル・デバイスは、スライド、チャンバ・スライド、マイクロタイタ・プレート、アレイ・チップ、膜などを含む。粒子と分析物/標的又は表面との結合が、化学反応又は表面接着によって行われる場合、元に戻ることがある。したがって、本発明は、損傷を与える液体又は気体を通さず、及び/又は、サンプル及び/又は標識に損傷を与えるか、あるいはサンプル又はサンプル・デバイス上の元の位置から標識を移動させる物理的な力に対して弾力的な固相体でサンプルを覆うか、あるいはコーティングすることを含むサンプルの保存加工方法を提供する。例えば、これらの組成物及び方法を用いて、実質上不可逆的に、固相体上のサンプルに対して相対的にRLS標識の位置及び/又は空間的な向きを固定することができる。
さらに、RLS検出で分析するサンプルを多数回(潜在的には実質的に無限回)繰り返し分析し直すことができる可能性があり、それによって、(同じ照明条件で)繰り返すごとに本質的に同じ定量的な散乱光出力が得られる。これは、蛍光、化学発光、放射性同位元素及び多くの色素検出システムと異なり、RLS信号が消光、フェーディング、減衰又はブリーチングしないからである。
本発明の方法は繰返し及び/又は遅延分析に用いることができるが、デバイスを保管する前に、コーティングの存在下で、サンプル・デバイス上の少なくとも1種類の分析物の存在及び/又はその量の指示値として標識から散乱した光を検出することができる。保管期間は、選択した保管条件に鑑みて、ほぼ選択したコーティング材料の安定性によって制限される再現性のある繰返し検出に対する制限によって変動し得る。実質的な保管期間に大きく影響を及ぼし得るパラメータには、コーティングが光(特に紫外光)に曝される程度、保管温度、湿度、かなりの速さでコーティング材料と化学的に反応し得る化学物質にコーティングを露出することが含まれる。ある種の実施形態では、保管期間は、少なくとも1、2、4、6、8、12、16、20又は24時間となり得る。好ましい実施形態では、保管期間は、少なくとも1日、1週間、2週間、1カ月、2カ月、4カ月、6カ月、9カ月、1年、5年又はそれよりもさらに長い期間である。
ある種の実施形態では、ある期間にわたって保管及び検出を複数回行う。異なるタイプの標識又は異なる光散乱粒子を用いる場合、異なるタイプの標識又は光散乱粒子を異なる時間に恐らくは異なる機器を用いて検出し分析することができる。ある種の実施形態では、特に複数のサンプルがデバイス上に存在する場合、サンプルの異なる部分又は異なるサンプル上の標識を異なる時間に検出し分析することができる。好ましくは、これらの粒子から散乱した光は、保管後も(同じ照明及び検出条件下では)ほぼ一定のままである。
ある種の実施形態では、この方法は、最初の検出及び/又は繰返し検出の前に、コーティングしたサンプル・デバイスを洗浄することも含む。このような洗浄は、例えばほこりの粒子からのバックグラウンド光散乱を除去するのに有用である。コーティングにより、光散乱粒子が洗い流されたり、すり減ったりすることから保護される。この洗浄条件は、物理的かつ化学的に穏やかなものであることが好ましい。したがって、例えば、すり減らすような清浄化を行わず、1種(又は複数種)の洗浄溶液は特定のコーティングに対して化学的に穏やかなものであることが好ましい。好ましくは、この洗浄溶液は水溶液とする。このような水溶液は、1種(又は複数種)の緩衝液及び/又は穏やかな洗剤及び/又は低〜中程度のイオン濃度を含み得る。他の適合成分又は代替適合成分も存在し得る。水の代わりに、コーティングに適合する他の溶剤を使用することができる。適合する溶剤(又は溶液)とは、繰返し又は遅延検出を妨げるようにコーティングを大きく劣化させないものである。場合によっては、コーティングの薄い層を溶解して、新しいコーティング表面を提供する溶剤又は溶液(及びそれに伴う洗浄条件)を選択することができる。好ましくは、コーティングの厚さの1、2、5、10又は20%よりも厚く薄い層を溶解しない。
あるいは、又はそれに加えて、同じ又は化学的に互換性のある異なる光学的に透明な材料を用いてサンプル・デバイスをコーティングし直すことができる。再コーティングが完了した後で、このサンプル・デバイスを分析し直すことができる。この手法は、例えば、不適切な保管又は取扱いによる不慮のスクラッチ又はほこりの堆積がある場合など様々な状況で有用である。
本発明の1つの実際的な結果は、定量的なRLS較正基準が提供され、それによって、異なる操作者が異なる時間に異なる装置で取得した結果を正規化して絶対定量結果が得られることである。現在、この種の普遍的な較正及び絶対定量化は、相対的な信号しか得ることができない蛍光その他の検出試薬又は装置を用いては可能ではない。例えば、凝固性コーティング組成物を被覆することによって得られる物理的な耐久性が、このような較正基準の安定性を長期間にわたって確保するために重要な特性である。したがって、別の実施形態では、本発明は、結果の較正及び標準化を行うために設計され製造されるサンプル・デバイス並びにそのための試薬及び機器を提供する。
法医学用サンプル・デバイス、同定用サンプル・デバイス及び臨床用サンプル・デバイスなど本発明で使用するための多くの他のタイプのサンプル・デバイスが企図されているが、これらに限定されるものではない。法医学用サンプル・デバイスは、法執行調査及び/又は訴訟手続きに関する1つ又は複数のサンプルを有するサンプル・デバイスを指す。したがって、法医学用サンプル・デバイスは、例えば、1人(又は複数人)の容疑者及び/又は1人(又は複数人)の被害者からの1つ(又は複数)のサンプルあるいは犯罪現場のサンプルを有し得る。同定用「サンプル・デバイス」は、個々の生物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを同定するために選別された1つ(又は複数)のサンプルを備えたサンプル・デバイスを指す。例えば、このデバイスは、サンプルの供給元の個人を、幾人かの他の個人又はすべての他の個人から区別するために遺伝子型情報を提供するアレイであり得る。臨床用サンプル・デバイス又は患者用サンプル・デバイスは、医学関連目的(例えば、臨床又は医学研究目的)のために選択した1人又は複数人からのサンプルを備えたサンプル・デバイスを指す。一般に、このサンプル・デバイス及びそれに関連するサンプルは、疾患の有無又は疾患の状態あるいは患者の状態、若しくは疾患又は状態の発病のし易さ又はそれに対する抵抗力あるいは疾患又は状態のある種の進展経過又は結果を診断するために選択され構成される。あるいは、患者用サンプル・デバイスは、例えば、ある疾患又は状態を有する1人又は複数人の患者と、その疾患又は状態をもっていない1人又は複数人のコントロール用の個人及び/又はその疾患又は状態を異なる形態又は感応性でもっている個人との間で、遺伝的特徴又は遺伝子発現レベルを比較するなどの研究目的用に構成される。この患者用サンプルを使用すると、例えば、アッセイ結果の永久記録が望まれる場合など様々な状況で有利である。
5.3 コーティング組成物
本発明の様々な実施形態において、サンプルを固定し保護し、かつサンプル上の標識の検出を可能にするコーティング組成物からなる少なくとも1つの層で覆うか、あるいはコーティングすることによってサンプルを保存加工する。好ましくは、このサンプルは、サンプル・デバイスなどの固相体上で保持する。使用する材料によっては、サンプルを覆うか、あるいはコーティングするコーティング組成物は、サンプル・デバイスの一部となり得る。
本発明のコーティング組成物には多数の異なるコーティング材料を使用することができる。一実施形態では、コーティング又はコーティング組成物は、アルキド樹脂、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、炭水化物ポリマー、エポキシポリマー、PVA(ポリビニルアルコール)、PVAc(ポリビニルアセテート)、テルペン及び有機/無機網状組織材料などの高分子化合物を含むが、これらに限定されるものではない。コーティング材料は、異なる材料からなる共重合体も含み得る。これらの化合物は、ラッカー、ワニス、接着剤及び工業用コーティングなどの製品中に一般に見い出されるものである。コーティング組成物として使用し得る市販製品の例は、とりわけ、Zar Interior High Gloss and Varathane 900(ジイソシアネート化学物質に基づくポリウレタン)RUSTOLEUM(商標)(透明コーティング塗料)、KRYLON(商標)(透明コーティング塗料)、DEFT(商標)ラッカー及びPLASCRON(商標)の商品名で入手可能である。Midwest Industrial Coatings社からのBREAK−THROUGH(商標)と、以下のセクション5.5で説明するように好ましくは改変する、Sigma−Aldrich社からのFICOLL(商標)も提供されている。セルロースを含み得る写真用ラッカー、フタル酸エステル及びアクリルも使用することができる。他の例には、硬化又は乾燥して光学的に透明なコーティング(例えば、大規模な化学品製造業者/販売業者を介して入手可能な多くの可塑剤)を形成する生体ポリマーその他の水溶性材料も含まれる。さらに、長波長又は短波長の紫外光反応によってメルカプト−エステルと硬化する、光学アセンブリ(顕微鏡、望遠鏡など)で使用する高分子調合物などの光触媒硬化ポリマーもコーティング材料として用いることができる。これらの材料及び組成物は、多くの有機系コーティングに関連する製造、出荷及び取扱いの問題に鑑みて有利であり得る。
本発明のコーティング組成物のコーティング材料として使用し得る高分子化合物の範疇を以下に説明する。これらの高分子材料又は高分子化合物を含むコーティング組成物は、当技術分野で周知の技術によって、単独で容易に適合性検査を行うことができる。コーティング材料及び(必要な場合には)硬化剤の選択は、応用例、用いるプロセス及び所望の特性で決まり、好ましくは無毒性のものとする。当業者なら、次のセクションで説明する所望の特性に基づいて特定の実施形態用の好ましい材料を容易に選択することができよう。
一実施形態では、高分子化合物は、二官能価酸又は無水物(例えば、フマル酸、マレイン酸、イソフタル酸、テルフタル酸)及び二官能価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール)で形成されたポリエステルである。好ましいポリエステルには、低分子量の水酸基末端の油分を含まないポリエステルが含まれる。この群の化合物では、一般に、1分子当たりの官能基の数を増やすことによって粘性が増加する。
別の実施形態では、高分子化合物は、かなりの数のモノマーがアクリル又はメチルアクリルエステルであるアクリル、及び他の共重合体がスチレン及びビニルアセテートを含み得るアクリルである。ある実施形態では、コーティングは、水性ポリマー又は有機ポリマーを含む。
別の実施形態では、高分子化合物は、グリシジルエポキシ(グリシジル−エーテル、グリシジル−エステル及びグリシジル−アミン)及び非グリシジルエポキシ樹脂を含むが、これらに限定されるものではないエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂の例は、ビスフェノールAエポキシ樹脂である。一般に、エポキシ樹脂は、硬化して高度に架橋した、硬質で不融性の剛体3次元網目組織を形成する。エポキシ樹脂は、硬化剤の選択に応じて5〜150℃という実質上任意の温度で急速かつ容易に硬化する。必要なプロセス及び特性に応じて、エポキシ樹脂用の様々な硬化剤が利用可能である。エポキシ用に一般に使用する硬化剤には、アミン、ポリアミド、フェノール樹脂、無水物、イソシアネート及びポリマーカプタンが含まれる。エポキシ硬化剤系の化学量論も、硬化材料の特性に影響を及ぼす。架橋密度を制御する傾向がある異なるタイプ及び量の硬化剤を使用すると、構造が変化する。第1級及び第2級アミンは、エポキシと極めて反応し易く、最も一般に使用される。一般に、第3級アミンは触媒として用いられ、硬化反応の促進剤として一般に知られている。大量の触媒を使用するとより速く硬化するが、通常、寿命が短くなり、熱安定性が低くなるという欠点がある。
別の実施形態では、高分子化合物は、一般に、脂肪族又は芳香族イソシアネートによってヒドロキシ官能基ポリエステルとアクリル樹脂を架橋することによって形成されるポリウレタンである。この反応は、室温で比較的急速に進行する。ラッカー及びワニスで使用するポリウレタンの例は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びテトラメチルキシリデンのポリマーである。ドゥー・イット・ユアセルフ市場用のワニス製品の一部は、乾性油のグリコールエステルの一部を含むジイソシアネートによって形成される(ウレタンアルキド又はウラリドとしても知られる)ウレタン油を含む。一般に、このような組成物は未反応のイソシアネートを欠き、その毒性の低さゆえに好ましいものである。
本発明で使用するために、上記1種又は複数種の高分子化合物をコーティング組成物中に個々に含めるか、あるいは、多くの市販製品の場合と同様に混合物として含める。
コーティング組成物とともに使用してその様々な特性、例えば、粘性、濡れ性及び揮発性を変えることができる溶剤には、アセトン、トルエン、メタノール、塩化メチレン、n−メチルピロリドン、2−ブタノン、2−ブトキシエタノール、キシレン及び二塩基性エステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。このような溶剤は、家具及び住宅建築用の溶剤系ポリマー・コーティングの開発に使用されている。このような調合物の成分は周知のものであるが、調合物の成分の相対量は、当技術分野で周知の方法によってコーティングする表面の特性に基づいて経験的に決められている。
5.4 コーティング・プロセス
サンプル・デバイスのコーティングは、噴霧法、浸漬法及び流し込み法、スパッタ堆積法、蒸着、プラズマ増強成長法及びマスキング技術を含めて、様々な方法で実施することができるが、これらに限定されるものではない。適切なコーティング方法の選択は、選択した特定のコーティング、得られる仕上げコーティングの必要な特徴、表面特性、簡便性、コストその他のプロセス・ファクタによって決まることがコーティング塗布技術分野の技術者には理解されよう。いくつかの実施形態では、最終コーティングを形成するために、コーティング組成物を硬化させることが必要である。硬化は、熱及び/又は光などの物理的な作用因子、あるいは、空気、蒸気又は揮発剤及びガス状の硬化剤を含めて化学的な作用物質に曝すことによって行うことができる。特定の実施形態では、コーティング組成物を塗布した後で硬化させると、固体の、すなわち恒久的なコーティングが得られる。
薄いコーティングを施す分野で一般に理解されているように、噴霧法は無空気式とすることができ、それによって、噴霧ノズルから高圧で流体が流れ出る際に流体が霧化するというものである。他の噴霧システムは、約30〜80psiの圧力下でガス(通常は空気)の流れを利用して、コーティング流体を押し出し、霧化する。噴霧式塗布は、塗布後のコーティングの流動性により十分に滑らかで欠陥のない表面が形成され、それによって、表面欠陥による光散乱の難点を回避する場合に適切であり得る。さらに、噴霧法は、噴霧しぶきが大きな問題にならない場合に適切であると思われ、したがって、恐らくは大面積を一度にコーティングすべき場合に用いられる。
一般に、浸漬法は、デバイス表面の少なくとも標識が付着した部分、そうでない場合にはコーティングすることが望まれる部分を浸漬するのに十分な液相のコーティング組成物ボリューム中でサンプル・デバイスを浸漬するというものである。浸漬・乾燥システムは、大がかりな追加の機器及び操作とは無関係に機能することができる。対照的に、架橋を誘起する化学的かつ物理的な方法は、あまり堅固にならないことがあり、有害な材料を使用する必要があり、及び/又は手動操作がより多いことがある。一般に、コーティングが凝固する前に、ある時間にわたってデバイスから過剰な流体コーティングが流れ落ちるようにする。デバイスを垂直又は傾いた流出位置で乾燥又は硬化させることもできるし、ほぼ水平位置に置いて、コーティングが凝固する際にその中に生じる歪み及び凹凸を最小限に抑えることもできる。過剰なコーティング溶液を除去するために、例えば、低速遠心分離機で回転にかけることもできる。
一般に、流し込み法は、サンプル・デバイスをほぼ水平位置に置き、上部水平面上に液相のコーティング組成物を流し込むというものである。コーティングが凝固する間、デバイスは水平位置のままとすることもできるし、傾けて流れ落ちるのを容易にすることもできる。浸漬法に関連して示したように、回転にかけることもできる。
光の散乱が生じるようなコーティングは、バックグラウンド・ノイズを増加させ、光の検出感度を低下させることになり、したがって望ましくない。凝固したコーティングは無色であることが好ましい。ただし、これは、コーティング層が薄く、色の寄与が最小限であり、及び/又は色を予測でき、必要な場合には下流のデータ定量時に補正することができる場合には不可欠ではない。硬化法は、複数の硬化剤、特別な操作又は装置を含まないことが好ましい。硬化時間は、コーティング組成物を塗布した後で物理的に取り扱うことができるように十分な時間をかけるべきであるが、30分、1時間、3時間又は6時間よりも長くする必要はない。多くの応用例では、30分〜1時間が妥当な硬化時間の例である。コーティング前後の信号強度及び分解能を比較して、プロセスをよりよいものにすることができる。
コーティング材料及びプロセス技術に精通する当業者なら、特定のコーティング材料とともに適切に用いることができる多くの異なるコーティング及び硬化方法の変形形態を想起しよう。
5.5 コーティングの生成
上記で説明したように、本発明では、特定の応用例に必要な特性に応じて、任意の数の異なるタイプのコーティング材料を用いることができる。ただし、コーティングの生成プロセスでは、対処すべき多くの実際上の懸念があり、それらは保存加工するサンプル・デバイスのタイプによって決まることになる。本発明で用いるのに適したコーティング材料を識別又は生成するための実際上の検討事項がいくつかある。候補となるコーティング材料の物理的かつ光学的な特性、例えば、粘性、毒性、屈折率などを、選択を行う際に検討する必要がある。さらに、利用可能なコーティング材料の1つ又は複数の特性が望ましくない場合、以下に説明する方法によってそれらを改変して、より望ましい材料を提供することができる。
コーティング材料の粘性は、保存加工を行うサンプル・デバイスのタイプに基づいて検討する必要がある特性の1つである。いくつかの実施形態において、かなりの流動性が望まれる場合には、コーティング材料の粘性が低いことが好ましいであろう。好ましくはコーティング材料をサンプル・デバイスと混合するか、あるいは浸透させる応用例がその例であり得る。さらに、低粘性材料は、必要な場合には、簡単な濾過、重力などによってさらに浄化することもできる。いくつかの応用例において、例えば、コーティング材料により、サンプル・デバイスにある程度の構造的な支持を与えることが期待される場合には、比較的高い粘性の材料が好ましいことがある。さらに、仕上がったコーティングの屈折率も大きくし得る化合物(例えば、油又はアルコール)によって溶剤系を改変すると望ましくかつ有利なことがある。
出荷及び廃棄に関連するコストを最小限に抑えるために、非毒性及び/又は不燃性の材料を選択することが好ましく、それによって、潜在的な使用者/取扱者に対する危険性も少なくなる。この点で、それらの材料が、水溶性又は水と混合可能であることも好ましいであろう。
得られるコーティングの所望の光学特性も、コーティング材料の選択に影響を及ぼすことになる。コーティングしたサンプル・デバイスの屈折率は、サンプル・デバイス上の標識から放出される光の強度に影響を及ぼし得る。さらに、硬化/乾燥プロセスの結果、コーティング材料の屈折率が変化することも検討すべきである。例えば、高屈折率材料を選択すると、サンプル・デバイスが共鳴光散乱標識を含む場合、サンプル・デバイスから放出される光の強度は増加し得る。候補となるコーティング材料が無色だと、それらの材料が反射、屈折又は散乱した光を偏倚させない指標になり得る。また、曇りが少なく透明度が高いなどの可視特性も、そのコーティング材料が、サンプル・デバイスに対して最小限のバックグラウンド散乱しかもたらさないことの指標になり得る。コーティング材料の曇りが大きすぎると判明した場合には、適合する溶剤で希釈することによって候補となる材料の固体含有物を少なくする第1の手法を試みることが好ましいはずである。第2の手法は、試薬ポリマーと反応すると、架橋化を妨げるか、あるいはその速度を遅くするか、若しくはポリマーが広範囲には架橋しない溶剤を使用又は代わりに使用することである。ポリウレタンの例では、適合する溶剤は、2−ブタノンなどの低分子量ケトンである。フィコール/ポリスクロース又はポリビニルアルコールの例では、組成物中の固形物は、単に、適合する範囲まで水で減らすことができる。代替溶剤系、例えばエタノール:水又はジメチルスルホキシド:水を代わりに用いると、それぞれ粒子及び曇りが増加し、したがって第2の手法が有用であることを示している。
付着及び/又は濡れ特性は、塗布するコーティング材料に従って変化し得る。理想的には、光学コーティング材料は、標準の温度及び圧力下で様々な表面に付着する。しかし、ある種のコーティングは、基板への付着性が悪いことがある。ほとんどの有機溶剤系では、多くの溶剤が極めて高い濡れ性能を有するので、一般にこれは問題にならない。しかし、水性系では、各ポリマーの付着性及び濡れ性を検査し、必要な場合には改変しなければならない。ある種の化学的に改変したガラス表面上で濡れ性能が悪いポリスクロースの例では、表面から揮発する前にアルコールを添加すると、濡れ性能がより高くなる。さらに、ホウ酸塩などの媒介物によって水素結合を介してポリスクロース及びポリビニルアルコールなどのポリマーの粘弾性特性を改変することができる。一般に、ホウ酸塩を添加すると、水素結合を形成する傾向が強いポリマーの弾性が増加する(例えば、ポリスクロース/フィコール、PVOH)。
乾燥又は硬化して滑らかで強い光沢に仕上がるコーティング材料では、スライド表面上でエアロゾルのごみの残留が最小限に抑えられ、滑らかで光沢のある透明な光学的コーティング−空気界面が得られる。穴があり、及び/又は凹凸があり、むらのある表面では、より多くの入射光が反射し得る。乾燥及び/又は硬化時間が、得られる仕上げの質のファクタになり得る。
光学コーティングを施すのに必要な乾燥時間は短いことが好ましい。コーティング材料の乾燥時間が長すぎる場合、(1)溶剤系の揮発性を改変するか、(2)粘性を低下させることによって時間を短縮することができ、それによって、塗布後の硬化層がより薄くなる。有機溶剤の場合には、一般に、溶剤系のより揮発性の高い成分をより多く与えて、乾燥時間をより短縮することができるはずである。2−ブタノンは多くの有機溶剤系に適合するので、ポリウレタンをベースとする系では好ましい選択であるが、多くの他の任意選択肢が存在し、それらを実験的に試験して最大の適合性を得るべきである。ポリビニルアルコール又はフィコールを含む系などの水性系では、固形物を少なくすると、しばしば粘性が減少し、それによってより薄い乾燥層が残る。
あるいは、コーティング材料の存在下でサンプル・デバイスをさらに操作することが望まれる場合など他の応用例では、より長い乾燥時間が必要なことがある。有機溶剤並びにある種のラッカー/ウレタン及びアクリルをベースとする系が、乾燥がものの数分で行われるコーティング材料の例である。ある種の条件下では、極めて急速に乾燥する調合物に起因して、霜(雰囲気中の湿気が、塗布したポリマーの冷えた表面上で凝結して表面につく曇り)がつくことがある。このような例は、基板に結合したニトロセルロースにある種のラッカーを塗布して、1ステップで、ニトロセルロースを透明にし、かつそれを保存加工する際に見られる。この場合の霜がつくことに対する最も直接的な処理は、元の組成物に2−ブトキシエタノールの一部を添加して、乾燥プロセスを遅らせることである。この応用例では、2−ブトキシエタノールの比較的低い揮発性が溶剤系全体に付与されることによって乾燥プロセスが安定化する。場合によっては、2−ブトキシエタノールを添加するために、ほぼ50%の溶剤調合物を分離する。
5.5.1 低バックグラウンド散乱
一般に、非特異的な光の散乱が少ない状態で、光学的に透明なコーティングが得られる材料を選択すると有益である。このような非特異的な光の散乱は、例えば、汚染粒子物体、異なる屈折率をもつ凝固した材料及び泡を含めて、材料の不均質性から生じ得る。したがって、著しいバックグラウンド散乱が生じないコーティング材料を選択することが好ましい。さらに、材料の取扱い及びコーティング・プロセスは、散乱材料の混入を最小限に抑えるように行うべきである。したがって、例えば、ほこりその他の空気中の粒子から材料を保護し、泡が生成されないように取り扱うべきである。ただし、粒子又は泡が存在する場合には、それぞれ濾過及び脱気を行うことによってこれらをほぼ除去することができる。
最初のコーティングの後で、コーティングしたサンプル・デバイスは、非特異的な光の散乱が生じないように取り扱うべきである。一般に、凝固したコーティング上をできるだけ欠陥のない表面にすると有益である。このような欠陥は、異物及び/又は表面の凹凸を含み得る。例えば、凝固中、コーティング表面上に被着し得る粒子からコーティングを保護すべきである。同様に、凝固、硬化又は可塑化は、例えば、コーティングが完全に固体状になる前に表面に接触することや、部分的に凝固した材料を流動可能な状態にする(すなわち、リップル)など、表面の凹凸が導入されないように行うべきである。この点で、かなり粘性が低く、自己平坦化特性を示す物質が特に有用である。
本明細書で用いるとき、「凝固する」という用語は、液体から固体の状態又は相への移行を指す。「固体」という用語には共通の意味があり、十分に凝集した形態をもち、それによって、液体及び気体から区別される材料を示す。多くの場合、硬化プロセスは、コーティング組成物を凝固させることを含む。本明細書で用いるとき、「固体」という用語はゲルを含む。ただし、この固体材料は、任意の位置で10時間保持したときに、本発明で用いる材料の量及び形状について肉眼で見える流体の流れがない十分に凝集した形態を有することが好ましい。この材料は、人間の指で5秒間適度な圧力をかけたとき、肉眼で見える変形を示さないものであることが極めて好ましい。凝固とは、例えば、乾燥、架橋、重合及び/又は凝固材料中の成分分子の運動の自由度を十分に低くして固体を形成する他の反応など様々なプロセスを含み得る。凝固は、液体又は気体中で固体粒子の懸濁液又はコロイドが形成される状態とは異なる。このような懸濁液又はコロイド中では、大部分の溶剤が液体又は気体のままであり、コロイド状の粒子だけが固体材料であるが、この場合の凝固した材料では、固体を形成する化学的かつ物理的な相互作用が、凝固したコーティング全体を通じて生じ、コロイド粒子のスケールに留まらない。
本明細書で用いるとき、「溶液」という用語は、主に液体バルク特性をもつ材料を指す。したがって、この用語は、真の溶液並びに懸濁液、液状媒体コロイド及びエマルジョンを含む。
5.5.2 透明度
本発明で有用なコーティングは、光の大部分を妨げず、また散乱させずに透過させることが可能であるべきである。したがって、一般に、不透明なコーティングは使用することができない。さらに、特にRLS標識とともに用いるには、上記で示したように、コーティングは、バックグラウンド光散乱の生成に大きく寄与すべきではない。したがって、半透明のコーティングは、たとえかなりの光を透過させるとしても好ましくない。コーティングには、目に見える曇りやそれに類似する特徴がないことが極めて好ましい。
「澄んだ」、「光学的に澄んだ」、「透過性の」、「透明な」及び「透明性」という用語は、コーティング材料及び/又は支持材料などの材料又は媒質が光を十分に透過させることができ、かつ曇りなどがほぼ存在せず、それによって、その材料を通して像がすぐに識別できることを指す。サンプルの照明又は検出用光路にある材料の場合、この用語は、その材料が、個々の場合に用いる量で、サンプルに付着した光散乱粒子標識からの散乱光を再現性よく繰り返し検出することの妨げになるほどには、その材料を透過する光を大きく妨害しないことを示す。このような妨害には、例えば、材料による吸収、反射及び/又は散乱が含まれる。極めて好ましくは、光学的に透明な材料は、本発明で用いる量で、その材料を透過する光の強度を、30%よりも大きく減衰させない、より好ましくは20%、さらに好ましくは10%、最も好ましくは5%、4%、3%、2%又は1%よりも大きく減衰させない。ただし、これらの用語は、材料が完全に無色であることを必ずしも意味しないことを理解されたい。そうではなくて、その材料を通過しない光の色及び/又は波長の量は、そのアッセイにおいてそのコーティングを使用することを妨げない程度のものである。例えば、コーティングが十分に薄く、それによって、反射又は吸収された光の一部がアッセイを行うのを実質上妨げない程度に十分に小さく、無視できるほど十分に小さい場合には、比較的大きく色が付いた材料でさえ使用することができる。同様に、反射又は吸収された光の波長が、実質上、標識の照明及び検出を妨げないようにすることができる。
そうではなくて、重要なのは、関連する光の波長に対してコーティングが透明であることだけである。例えば、特定の応用例では、コーティングは、紫外又は近紫外の波長を大きく吸収してよく、被検出光の波長のために、アッセイの実施は妨げられない。同様に、材料は、赤外波長を大きく吸収してよいが、依然としてアッセイの実施は妨げられない。好ましくは、コーティングにより、可視波長光、特に400〜700nmの波長範囲あるいは少なくとも450〜700nmの範囲の使用が妨げられるべきではない。
5.5.3 化学的かつ物理的な耐久性
多くの応用例では、コーティングが物理的及び/又は化学的に耐久性があると極めて有益である。サンプル・デバイスを直ちに読み取り、後で読み取るために保管しない場合、こうした特徴はあまり重要でなくなり、より柔らかく及び/又はより化学的に耐性が少ないコーティングも十分に許容可能である。しかし、一般に、硬いコーティングが好ましい。遭遇し得る化学物質に対する耐性も有利になる。
化学的耐性に関して、特定の実施形態では、コーティングの光学特性は、水で短時間洗っても影響を受けず、室温で最長1時間、好ましくは最長1日、あるいはさらに長く水に曝しても影響を受けないことが好ましい。コーティングは、コーティングしたサンプル・デバイスが接触する可能性がある溶液、例えば、生物学実験室の実務慣行で使用する一般的な緩衝液、顕微鏡用のイマージョン・オイル、洗剤溶液、エタノール、プロパノールなど、並びにエタノール及び/又はプロパノール及び水の混合物のうち1つ又は複数のものにも同様に耐性があることが好ましい。
物理的な耐久性に関して最も重要な特徴は、スクラッチがつきにくく、異物粒子が包埋されにくいことである。鉱物に関連してモース・スケールが通常用いられるが、それをコーティングに適用すると、本発明で使用するコーティングは、好ましくは、そのスケールで少なくとも1.5、より好ましくは、少なくとも2、2.5、3又は3.5であり、これらよりも大きい値であることがさらに好ましい。比較例として、凝固したコーティングの硬さ及びスクラッチ耐性は、製造業者の推奨事項に従って塗布し、かつ23℃、50%湿度で1週間乾燥させた市販の屋外用途のアルキドエナメル塗料の平均値よりも大きいことが好ましい。
5.5.4 厚さ
本発明のある種の実施形態では、光学的に透明な材料の1つ又は複数の層を用いて、サンプル及び/又はサンプル・デバイスをコーティングする。各層は異なる厚さを有し得る。コーティングの厚さは、サンプル上の標識を効果的に照明し検出することができるものとする。複数のコーティング層を用いる実施形態では、これらの層全体の厚さは、効果的な照明及び検出を損なわないものとすべきである。小さなあるいは密に並んだフィーチャを有するサンプル・デバイスの場合、また、単一粒子検出の場合には、コーティングにより、信号又は画像が、個々の応用例で必要なレベル、例えば、隣接するマイクロアレイのフィーチャを区別することができるレベル以下になるほどに歪まない(又は、信号強度及び/又は分解能が劣化しない)ことが極めて好ましい。典型的なコーティングの厚さは、1μm〜1mm(1nm、1mmを含む)の範囲の値をとり、好ましくは、1μm〜0.1mm又は0.02mm〜0.1mmの範囲の値をとる。
5.5.5 粘性の改変
任意の数の適切なコーティング材料を用いることができるが、本発明では、コーティング材料の粘性を改変すると有益であり得ることが示されている。本発明の一実施形態では、ポリウレタンを含むコーティング材料の希釈液、多くの有機溶剤、例えば、極めて揮発性の高いケトン系溶剤を含むラッカーその他の透明なコーティング仕上げ剤は、粘性を低くし、元の材料及びコーティング調合物の硬化時間を短縮し、それによって、それらの材料を、本発明の方法で用いるコーティング材料としてより有利にする効果を有することが示されている。これらの特徴により、以下の利益が得られる。すなわち、使用者の取扱い時間が短縮され(例えば、元の形態に対する硬化時間が3〜4時間で、希釈した形態に対しては〜1時間)、得られる層(又は表層)がより薄くなり(粘性の低下により、過剰な材料がより完全に流れ落ちることが可能になる)、濃縮された形態は粒子材料のレベルがより高くなり得るので、バックグラウンド・レベルが下がり、また、傾いた位置で乾燥させることにより、乾燥後、固相体上で、基板の下側端部又は縁部に存在するリップ又は硬化した過剰な材料の形成が明らかになくなる。このようなケトン系溶剤の例には、2−ブタノン及びアセトンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
別の実施形態では、その逆が望ましいことがある。すなわち、サンプル又はサンプル・デバイスに塗布する前に、液体コーティング材料の揮発性を低くすると有益なことがある。一実施形態では、本発明は、2−ブトキシエタノールを添加して、透明なコーティング溶剤の揮発性を全体的に低くすることによって硬化時間を長くする。別の実施形態では、芳香環、一般にはホドロカルビル環、ほとんどの場合はフェニル環を含むあるクラスの芳香族化合物、例えば、ベンズアルデヒド及びトルエンを用いて同じ効果を実現することができる。例えば、効果時間が短いとコーティング上に霜がつくことがある場合には、硬化時間を長くすることが望ましい。これは、硬化プロセス中に、コーティング表面上に水分が被着することに起因する現象である。
好ましくは2−ブトキシエタノールだけでなく、他のこのクラスの芳香族化合物も添加すると、特にガラス及び適合するプラスチック上で、コーティングの流動性を改善することもできる。ある種の速硬化性液体コーティング材料では、液体の流れが急速に「凍結」して固相体になり、それによってコーティング表面上に細い筋が生じることがある。その結果、表面が不完全になり、それによって、追加の光散乱が生じる可能性がある。
同じ手法を、揮発性がより高いか、あるいはより低い化学的に適合する溶剤を使用して、他のコーティング材料に適用することもできる。このような適合する溶剤は、個々のコーティングの既知の化学物質に基づいて、及び/又は実験的に試験し、適合性を確認することによって容易に選択することができる。
5.6 膜の保存加工
別の実施形態では、本発明は、サンプルを含む膜及び/又は膜の中及び/又はその上に存在する1つ又は複数の標識の保存加工法を提供する。好ましい実施形態では、この膜はサンプル・デバイスであり、コーティング組成物をサンプル・デバイスに塗布してコーティングを形成してサンプル・デバイスを保存加工する。
本明細書で用いるとき、「膜」は、不浸透性又は微孔質とすることができ、かつ好ましくは合成材料である薄い可撓性の材料を指す。膜中に孔又はチャネルが存在する場合(メンブレン・フィルタとしても知られている)、それらは、好ましくは20μmよりも小さく、より好ましくは、10、5、2、1、0.5、0.2又は0.1μmよりも小さく、あるいは、これらの指定された端点のうち任意の2つの値で指定した範囲の値をとる。膜は、例えば、フィルム状、織物状又はマット状の繊維材料など本質的に均一な組成及び特性をもつ、均一なシート材料とすることができる。一般に用いられる材料の例には、ナイロン、ニトロセルロース、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)及びセルロースが含まれる。この膜は、意図する応用例、例えば、アレイ中のフィーチャのサイズ及び数で一般に決まる任意の範囲の表面積をとり得る。したがって、特定の実施形態では、この膜サンプル・デバイスの面積は、1in、2in、4in又は10in未満であるが、これらよりも大型の膜を用いることもできる。好ましくは、この膜は無色である。
固体支持体上で支持されるか、あるいはそれに付着した膜では、光散乱粒子標識に関する1組の技術的な問題が提示される。例えば、入射白色光は、不透明な基板、非特異的な粒子、分子及び基板表面の凹凸によって散乱され得る。固体支持体に結合した膜に特に関連するのは透明度の欠如である。したがって、膜上の光散乱粒子標識から安定した特定の信号を得るために、これらの膜を光学的にほぼ透明にすべきである。
液体材料を用いて膜を透明にすることが、Brooksらの特許文献13に記載されている。これを参照により本明細書にその全体を組み込む。Brooksの特許は、PEG(ポリエチレングリコール)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEI(ポリエチレンイミン)(屈折率1.52〜1.53)、ベンジルアルコール(屈折率1.538)、及びPEIと水を使用することに加えて、膜を透明にするか、あるいは溶解する他の作用物質について述べている。他の液状の透明化材料は、タイプAのイマージョン・オイル及びベンゼンメタノール(屈折率1.539)である。これらの手法の欠点は、それらが、本来「湿式」化学的操作を必要とするために、「使用者にとって使い易い」ものでなく、通常使用する機器の動作とも適合しないことである。すなわち、分析中、膜は濡れたままでなければならない。膜を透明にするか、あるいは溶解するが、これらの材料は液状のままであり、膜が保存加工されず、繰返し及び遅延分析を行うことができない。Brooksは、膜に組み込まれるが、液化したときにのみ膜を透明にする固体である分子量1000のPEGをニトロセルロースとともに使用することも開示している。したがって、本発明のコーティング組成物中にポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンイミンを使用することはあまり好ましくない。
本発明者らは、ニトロセルロース膜などの膜の周りに耐久性のある表皮を生成して膜を保存加工しながら、同時にその膜を透明にする方法及びあるクラスのコーティング組成物を見い出した。このプロセスでは、コーティング組成物は凝固してコーティングを形成するが、コーティング組成物によって膜が透明になり、膜は透明のままである。したがって、Brooksの方法に比べて、バックグラウンドが少なくなり、信号が大きくなり、操作が乾式であり、後で分析するために膜が保存加工されるという利点が得られる。ニトロセルロース膜に加えて、この方法及びこのクラスの試薬は、生物工学で使用する多くのタイプの膜、例えばナイロン及びPVDF(ポリ二塩化ビニル)に適用することができ、ニトロセルロースでできている膜に限定されるものではない。
特定の一実施形態では、本発明は、凝固し、非溶解性であり、光学的に透明なコーティング組成物で膜を処理することによって、膜を透明にし、保存加工するための1ステップの方法を提供する。「非溶解性」という用語は、その溶液が膜の基質を溶解せず、したがって、その膜がほぼ完全な状態のままであることを示す。「透明にする」という用語は、例えば、膜からの光の散乱を少なくする流体を膜に接触させることによって、特定の照明条件下で膜によって散乱する光をかなり少なくすることを指す。一般に、また好ましくは、このプロセスにより、膜の透明度が、処理しない膜に比べて少なくとも10%、20%、30%、50%、75%、90%及び98%増加する。好ましくは、この流体は光学的に透明な流体とする。光学的に透明な凝固性溶液を流体として用いることができるが、様々な態様の他の実施形態では、光学的に透明な非凝固性溶液も同様に用いることができる。好ましくは、膜は光散乱粒子標識も含む。コーティング組成物は、サンプル又は標識を溶解せず、またそれらの妨げにならないことが好ましい。
好ましい実施形態では、膜を光学的に澄んでいる、すなわち透明な固相支持体に付随させる。膜及び固相支持体に関連して用いるとき、「付随させる」という用語は、膜を固相体に隣接して保持する任意の相互作用の形を指す。したがって、この用語は、例えば、固相支持体に付着している、その上に載っている、それに結合している、それに留められている、それによって支持されている状態を含む。好ましくは、この固相支持体は、ガラス又はプラスチックとする。例えば、特定の実施形態では、膜は、フレームなどの物理的な構造に付着しているか、あるいはそれによって支持されているか、もしくはスライドに結合している。「付着している」という用語は、通常の任意の取扱い位置でその膜を保持するのに十分な力で、その支持体によって膜が物理的に保持されている状態を指す。この状態は、膜が重力下で固体支持体上に保持されるが、すべての向きでは膜が定位置に保持されない状態を指す「支持されている」状態と区別する。支持には、物理的なクランプ又は化学的な結合その他の類似の強い化学的又は物理的手段は含まれない。「結合している」という用語は、化学結合的相互作用及び/又は接着剤の使用を含むことを示す。
固体支持体に付随する膜の透明化及び保存加工をともに行うことができ、好ましくはこれを1つの処理ステップで実現することができるコーティング組成物の利益は大きい。これらの利益には以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
1.膜を透明にすると、固定標識を付着させた基板によって生じる非特異的な散乱が最小限に抑えられる。
2.この保存加工プロセスには、材料中に特異的に付着させた光散乱粒子を保存するという最終的な効果があり、それによって、空気の場合に比べて、光散乱粒子による信号強度がより大きくなる。
3.この保存加工プロセスでは、通常用いる処理では固体支持体から分離することができない非特異的な散乱性のごみを溶解し、透明にすることができる。
4.好ましくは、この保存加工により、滑らかで規則正しい表面が得られる。
5.この保存加工プロセスにより、膜が無期限に保護かつ保存加工されるだけでなく、特定の信号が膜上に保たれる。前に述べたように、RLS粒子では、長期間にわたって信号強度が劣化しにくい。RLS粒子の信号の完全性と保存加工を組み合わせることにより、他の光検出技術に比べて、RLS粒子信号を読み取ることができる頻度及び期間の点で極めて大きな利点が得られる。
6.保存加工かつ透明化するコーティングが完全に硬化した後いつでも、保存加工したサンプル・デバイスを穏やかな溶剤で洗浄して、蓄積した望ましくないごみ及び油分を取り除くことができる。
膜がスライドその他の支持体に結合する実施形態では、結合には、例えばシート、液体、ゲル、エアロゾル及び半流動体など様々な形態をとり得る接着剤を使用することが好ましい。この接着剤は、光学的に透明であるか、あるいは、結合後に光学的に透明になることが好ましいが、必要条件ではない。このような光学的な透明性は、照明及び検出がそれぞれ支持体の反対側で行われるとき特に有用であるが、非特異的な散乱光を少なくするなど他の構成でも有益となり得る。他の実施形態では、この結合は、膜と支持体、例えば、支持体の機能化した表面との間の直接的な化学的相互作用を伴う。
屈折率整合材料を使用することにより膜を透明にすることができるが、本発明は、比較的屈折率が小さい溶剤/溶液を、膜中の架橋を大きく減少させる化学的な改変と組み合わせて使用することを含む。本発明者らは、100%エタノールにより、ニトロセルロース膜がほぼ透明になり得ることを確認し、架橋構造の単純な減少又は改変により、透明化処理が容易になり得ると考えた。アッセイが完了した後で透明化作用物質によって膜を化学的に改変しても、結果に影響を及ぼさないことは明らかである。さらに、膜を溶解せずに膜の構造を広範囲にわたって分解すると、架橋ポリマーの網目組織によって生成された残余の曇りを少なくする助けとなり得る。この残余の曇りは、チンダル・ビームを用いて容易に可視化することができる。したがって、ある種の実施形態では、コーティング材料は、例えば、Brooksら、特許文献13に記載されているように膜を溶解しないが、膜中の架橋を減少させることによって膜を化学的に改変する1種又は複数種の作用物質も含む。
本発明の特定の実施形態では、コーティング組成物は、テルペン、好ましくはモノテルペン、最も好ましくはβ−ピネンを含む。テルペンは自然界に広く分布しており、精油の成分として主に植物中に存在する。多くのテルペンは炭水化物であるが、アルコール、アルデヒド又はケトン(テルペノイド)などの酸素含有化合物も含まれる。この群の化合物の構成単位は、イソプレン、CH=C(CH)−CH=CHである。したがって、テルペン炭水化物の分子式は(Cであり、イソプレン単位数に従って分類され、n=2のときモノテルペン、n=3のときセスキテルペン、n=4のときジテルペン、n=6のときトリテルペン、n=8のときテトラテルペンとなる。
本発明の透明化/保存加工を同時に行うプロセスで、少なくともテルペンを含む有機溶剤(又は有機溶剤の混合物)を含むコーティング組成物を用いることができる。好ましい実施形態では、コーティング組成物中に、二環式テルペン(C1016)であるβ−ピネンを含む。β−ピネンにより、例えばラッカーをベースとした系など他の多くの系に比べて、比較的短波長(例えば、220〜450nm)における光の吸収、反射及び散乱が最小限に抑えられるという有利な光学的特徴が得られる。β−ピネン・ペレットを溶解するのに使用する有機溶剤の例には、トルエン及びキシレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。最終作用物質の調合は、膜の層の厚さである程度決まる。さらに、β−ピネンを含むコーティング組成物は、ガラス、プラスチック・スライド又はフィルムなどの固相体に付着する極めて薄い膜の層に好ましい。
コーティング組成物中でβ−ピネンを用いることは、膜を含む系に限定されない。コーティング組成物中でβ−ピネンを用いて、ガラス又はプラスチックを含む他のサンプル・デバイスを保存加工することができる。このような応用例では、使用する1種(又は複数種)の溶液には、当技術分野で周知の多くのラッカー低粘稠化系に一般的なものが含まれる。このような改変は、ガラス及びプラスチックに適合する液体の濡れ性及び流動性を得るのに好ましい。トルエン又はキシレンは、コーティング・ガラス及びプラスチック表面に対する流動性が悪いのであまり好ましくない。
コーティング組成物の例には、選択した有機溶剤中に、最終濃度が5%、10%、15%、20%、25%及び30%になるように溶解したβ−ピネン・ペレットが含まれる。所望の濃度は、膜の厚さなどのファクタによって決まる。好ましくは、コーティング組成物を容器内に密封して蒸発を防ぐ。コーティング組成物を膜又は膜を含むサンプル・デバイスに塗布する。一実施形態では、コーティング組成物中にこの膜又はサンプル・デバイスを1回又は複数回、好ましくは、すべての空気の泡又は粒子状物体を除去するのに必要な回数だけ浸漬する。コーティングは薄くすることが好ましい。コーティングした膜又はサンプル・デバイスを数分間、好ましくは10〜15分間硬化させる。他の実施形態では、β−ピネンを含むコーティング組成物を用いて、膜でないサンプル・デバイス、例えばガラス及びプラスチックの顕微鏡スライドを保存加工することができる。
別の実施形態では、コーティング組成物は、透明な木材仕上げ用ラッカーを含む。木材仕上げ用ラッカー(例えば、Parks Clear Lacquer(商標)又はDeft Lacquer(商標))を有機溶剤又は有機溶剤の混合物と混合して、サンプル・デバイスの透明化/保存加工を同時に行うのに用いることができる。このコーティングの調合は、膜の厚さである程度決まる。好ましい実施形態では、木材仕上げ用ラッカーを含むコーティング組成物を調製する溶剤としてメチルエチルケトン又はエチレングリコールモノブチルエーテルを使用する。木材仕上げ用ラッカーを含むコーティング組成物は、ニトロセルロース膜に好ましい。
コーティング組成物は、膜の厚さに応じて、選択した有機溶剤(又は有機溶剤の混合物)中に混合した少なくとも20%、25%、30%、45%、50%、65%の木材仕上げ用ラッカーを含む。木材仕上げ用ラッカーを有機溶剤(又は混合物)中で希釈し、好ましくは室温で保温してコーティング組成物を形成する。好ましくは、このコーティング組成物を容器内に密封して蒸発を防ぐ。例えば、このコーティング組成物中にサンプル・デバイスを1回又は複数回、好ましくは、すべての空気の泡又は粒子状物体を除去するのに必要な回数だけ浸漬することによって、このコーティング組成物に膜を曝す。コーティングは薄くすることが好ましい。コーティングしたサンプル・デバイスを数分間、好ましくは30〜45分間硬化させる。
RLS検出を用いた信号の定量化では保存加工後の光学的な透明度が重要である。厚さなどの膜の特性及び使用する接着材料が、保存加工性能に影響を及ぼすことがある。透明支持体上の膜の層の孔のサイズも、保存加工剤の調合と、性能及び検出感度を最適にするための手順に影響を及ぼす。
保存加工ステップに加えて、膜スライド処理における他の試薬又はアッセイ条件も、RLS検出性能に影響を及ぼし得る。例えば、膜アレイ上でのRLS検出の場合、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション及びポストハイブリダイゼーション用の洗浄溶液を調合し、膜及び保存加工剤に最適化して、保存加工剤コーティングに、不透明層の形成として現れる「霜」を妨げる。検出性能に関して他に考慮することには、ハイブリダイゼーション温度、時間及び透明支持体上の(流延又は積層した)膜の安定性が含まれる。
当技術分野で周知の技術を用いて、所与のタイプの膜又はサンプル・デバイスを保存加工する手順及び分析物検出用RLS粒子の最適性能を得るための実験プロトコルを最適化する。
5.7 保管
後で(最初の又は繰返し)分析を行うために保管するサンプル・デバイスの場合、サンプル及び分析結果を損なう恐れがある欠陥が生成されないようにデバイスを保管することが極めて好ましい。このような欠陥は、光学的損傷、物理的損傷、化学的損傷及び表面上の異物の存在(例えば、ほこり)など様々に形成され得る。
多くのタイプのコーティング材料が光学的損傷を受け易い。こうした損傷は、特にUV(紫外)光によって、このような光がもつ高エネルギーのために生じ易い。こうした光学的損傷により、コーティング、特にその表面への色付き及び物理的な劣化が生じることがあり、それに伴ってバックグラウンド光散乱が増加し、標識の照明及び特定の信号検出の再現性が悪くなる。
「暗状態」でコーティングしたサンプル・デバイスを保管することによって、このような光学的損傷を低レベルに抑えることができる。「暗状態」とは、正常な視力をもつ人間によって知覚される暗い光を指すが、特に指定のない限り完全に暗くする必要はない。UV光が、光学的損傷及びUVにより誘起される化学的な変化のために材料の劣化にとって特に重大であることを理解し、暗状態を、2mの距離で測定しUVスペクトル全体にわたって平均した、就労区域又は住居区域の照明用に設計された40ワットの標準蛍光灯から生成される強度の10%未満の紫外光のレベルとする。より好ましくは、暗状態のUV強度は、上記で定義した蛍光灯強度の5%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%未満又はそれよりもさらに弱いものとする。同様に、好ましくは、他の波長もUVと同じ強度パーセントの範囲まで弱くする。このような暗条件は、保存容器その他のスペースを開くか、あるいはアクセスするとき、例えばサンプル・デバイスの出し入れの際の短時間を除いて、解除され得る。
好ましい実施形態では、この方法は、サンプル・デバイスを、好ましくは暗条件下で保管することも含む。このような暗条件、例えば、スライド・ボックス内にサンプルを保管すると、光により生じる材料の劣化、特にUV光により生じる劣化が少なくなるか、あるいはなくなると一般に理解されている。
好ましい実施形態では、この方法は、サンプル・デバイスを長期間保管することも含み、標識したサンプルが大きく劣化することなく検出可能な光散乱信号が生成されることが好ましい。このような劣化は、例えば、標識のブリーチング、消光、減衰又は化学的な劣化によって、及び/又はコーティングの劣化によって生じ得る。コーティングの劣化により、例えば、曇りさらには不透明度の増加、色づきの増加及び/又は光の散乱の増加が生じ得る。特定の実施形態では、保存加工したサンプル・デバイスは、少なくとも1、2、4、6、8、10、14、21又は28日間保管する。別の実施形態では、保存加工したサンプル・デバイスは、少なくとも1週間あるいは1、2、4、6、8、10又は12カ月間、さらにより長く保管する。
光学的損傷に加えて、コーティングしたスライドは、物理的損傷を受け易い。すなわち、コーティングは、物理的な接触によって損傷を受けることがあり、それによって、非特異的なバックグラウンドの増加及び/又はコーティングの短寿命化に寄与しし得る表面欠陥が生成される。このような物理的損傷には、例えば、摩耗、切断、包埋された粒子が含まれる。取り扱う際に適度に注意を払うことにより、このような損傷の大部分が避けられる。例えば、縁部をもってサンプル・デバイスを取り扱い、表面に鋭利なあるいは研磨性の表面を接触させず、表面のほこりその他の粒子を清浄化する際には注意深く行う。
さらに、コーティング表面は化学物質によって損傷を受けることがある。このような化学物質は、例えば、洗浄溶液及び/又はガス中に含まれていることがある。多くの実験室設備では、様々な異なる化学物質からのガスが存在する。コーティングの化学的性質に応じて、これらのガスはコーティングと反応して、表面に損傷を与えることがある。したがって、一般に、特定のコーティングと反応するこのようなガスとの接触を、特に長期間にわたって避けることが望ましい。同様に、それらを使用する場合には、コーティングを化学的に改変するか、あるいはコーティングを溶解することによってコーティングと著しく反応することのない洗浄溶液を選択すべきである。(ただし、わずかな溶解は、新しい表面が得られ、表面欠陥がわずかに除去されるか、あるいは少なくなるので有利なことがある。)
保管又は分析中に、ほこりなどの異物がコーティング上に被着することを最小限に抑えることが望ましい。ただし、表面上にほこりその他の材料が見つかった場合には、凝固したコーティングをガス流(例えば、空気又は窒素)で洗浄及び/又は清浄化することができる。このような洗浄溶液及び/又はガスはそれ自体が、本質的に、コーティング表面上に被着する異物を含まないものとすべきである。さらに、上記で示したように、洗浄溶液及び/又はガスは、コーティング媒質と化学的に適合するように選択すべきである。さらに、表面の洗浄は、物理的損傷を避けるように行うべきである。例えば、洗浄は、表面への研磨性の損傷を避けるように、例えば、液体を穏やかな流れから適度な流れの範囲で用い、拭いたり、こすり洗いせずに行うべきである。比較的柔らかいコーティングよりも硬いコーティングを選択することによっても物理的損傷を避けることができる。
さらに、場合によっては、保存加工されており、表面のスクラッチその他の欠陥又は汚染により物理的損傷を受けたサンプルをしばしば、単に同じ保存加工剤又は化学的に互換性のある異なる保存加工剤でサンプルを処理し直すことによって元の品質に戻すことができる。この態様では、本発明を用いたサンプルの保存加工の恒久性が増す。水性コーティングを含むサンプル・デバイスは、密封可能な容器内で保管するか、あるいはほこりを出さない乾燥剤、例えば、プラスチック・ハウジングで取り囲んだ乾燥剤とともに保管して、空気からの湿気又は水分への露出を制限することができる。
当業者なら、コーティングの損傷を避けるのに関係するファクタに精通していよう。特定の条件による損傷に対する特定のコーティングの感応性又は耐性は、露出させ、例えば高倍率で検査することによって、及び/又は、アッセイ又はアッセイ模擬条件下で実験的に決めることもできる。
5.8 保存加工キット
別の実施形態では、本発明は、分析物アッセイを実施することと、サンプル・デバイスを保存加工することと、このデバイスを保管し、取り出し、分析し、再利用することとを含むが、これらに限定されるものではない本発明の方法を実施するための材料及び指示を提供するキットを提供する。好ましい実施形態では、このキットは、別々のバイアル中にコーティング組成物及び分析物結合用の光散乱粒子標識を備える。
一般に、このキットは、単一の容器内にパッケージされる。少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1カ月、さらに好ましくは少なくとも2カ月、最も好ましくは少なくとも12カ月以上の期間、溶液が凝固したり、硬化したりしない条件下でコーティング組成物をパッケージするのが極めて好ましい。あるいは、このキットは、別々のバイアル中に濃縮した形の(例えば、2倍、5倍、10倍の濃度の)コーティング組成物及び希釈液(又は溶剤)を含み得る。この希釈液を用いて、所望の濃度のコーティング組成物を調製する。コーティング材料が固形物又は粉体の場合、この固形物又は粉体及び希釈液がともに提供される。ある実施形態では、このキットは、コーティング組成物を調製するための1組の指示、サンプル又はサンプル・デバイスをコーティングするための手順、及び/又は保存加工したサンプル・デバイスを保管するための推奨事項を含み得る。
別の実施形態では、このキットは、コーティング組成物及びこのコーティング組成物に固有の硬化剤を含み得る。別の実施形態では、このキットは、コーティング組成物と、サンプル又はサンプル・デバイス上に存在するコーティング又はコーティング組成物を除去することができる剥離剤とを含み得る。この剥離剤により、サンプルが変形又は損傷を受けないことが好ましい。別の実施形態では、このキットは、コーティング組成物と、希釈剤、硬化剤及び剥離剤のうち1つ又は複数のものとを含み得る。
光散乱粒子標識は、意図する応用例に応じて、例えば、各アッセイとともに直接用いるか、あるいは、特定用途のアッセイを構築するのに用いるかに応じて、様々な形態のキットで供給することができる。したがって、ある種の実施形態では、光散乱粒子標識は、結合条件下で分析物を結合する1つ又は複数の部分を有する。このような部分には、特定のオリゴヌクレトチド、抗体及び抗体断片、特定の抗原、ハプテン、ビオチン、アビジン及びストレプトアビジン並びに特定の結合対の他の成分及び特定の結合をもたらす他の分子が含まれるが、これらに限定されるものではない。分析物との結合は直接的又は間接的であり得る。同様に、ある種の実施形態では、光散乱粒子標識は、結合条件下で分析物結合分子に結合する部分を有する。例えば、この粒子は、その表面上に、核酸又はタンパク質あるいは直接的又は間接的な分析物結合をもたらし得る他の分子を付着させる部分を有し得る。
このキットは、少なくとも1つのサンプル・デバイス、例えば、少なくとも1、2、4、6、8、10個以上のサンプル・デバイスを含み得る。上記の態様の場合と同様に、このようなサンプル・デバイスは、アレイ、マイクロアレイ、アレイ・チップ、スライド、マイクロタイタ・プレート及び膜を含むが、これらに限定されるものではない。
このキットは、サンプル・デバイス上の標識を検出する機器も含み得る。使用する標識のタイプに応じて、この機器は、極めて簡単で携帯型のものとなり得る。このような機器は、光源、サンプル・デバイスを保持する場所及び検出又は検出の助けとなる手段、例えば、直接観察用の集光光学系、光検出器及び写真撮影用装置を含み得る。一般に、検出には、分析し、定量化し、及び/又は実験データの記録をとる助けとなる、接続されたコンピュータ及び関連するソフトウエアの使用が含まれる。
5.9 較正デバイスの生成と使用
検出可能な信号を大きく劣化させることなく、サンプル・デバイスを保存加工し、それを所望のとおりに保管することができると、様々な状況で有利である。例えば、このような保存加工を行い、サンプル・デバイスを保管することができると、ある実験のアッセイ結果を繰り返し読み取ることができるだけでなく、アッセイ結果を後で読み取ることができる。こうすると、サンプル・デバイス及び/又はサンプル結果をある期間にわたって、及び/又は異なる実験室間で使用しながら、依然として比較結果を取得することができる。(較正スライドなどの)基準「較正」デバイスで機器又は結果を較正することによって、異なる機器を用いるときでもこのような比較結果を取得することができる。
本発明のある実施形態では、露光時間、カメラの感度、解像度など一般にRLS検出に関連する様々なパラメータを較正するのに用いることができるRLS粒子を含む較正デバイスが提供される。較正スライドその他の較正デバイスを使用すると、例えば、アッセイ結果の機器相互、実験相互及び/又は実験室相互の比較を行う助けとなり有益である。好ましい実施形態では、このような較正デバイスは、規定した光学特性のRLS粒子を、1平方マイクロメートル当たりの粒子数で示した所定の粒子表面密度で被着させた顕微鏡用のガラス・スライドである。較正デバイスとして、他の基板又はアッセイ・フォーマット、例えば、膜、膜スライド又はマイクロタイタ・プレートも用いることができるが、較正スライドに関して本発明を説明する。RLS粒子から生成される信号がフェーディングもフォトブリーチングもしないと仮定すると、スライドに光学的に透明な層をコーティングすることによって、このような較正スライドを恒久的なものとすることができる。
本発明に有用とみなされるコーティング材料及びその特性の例を、セクション5.3及び実施例6.1の表2に示す。当業者なら、RLS検出機器較正用の他の形態又はフォーマットを、その機器で読み取る所望のアッセイ・フォーマット及び機器構成(入射光源又は光路、光学系、フィルタ、検出器など)に応じて開発することもできよう。
別の実施形態では、本発明は、RLS粒子を含む較正デバイスを準備する方法を提供する。上記で説明したように、RLS粒子は安定な標識であり、光散乱信号は、減衰、ブリーチング又は消光しない。較正デバイスを準備する方法は、サンプル・デバイスの中又はその上に所定の量(又は量の比)のRLS粒子を被着させることと、サンプル・デバイスの少なくとも一部に、光学的に透明なコーティングを形成するコーティング組成物を被覆することとを含む。好ましくは、異なるタイプ、量又は希釈度のRLS粒子を、サンプル・デバイスの中又はその上で、複数の空間的に離散した部位及び/又は空間的にアドレス可能な部位に被着させる。
したがって、本発明の較正デバイスは、デバイス上の異なる部位に存在する異なる量の光散乱標識粒子を含み、このデバイスには、光学的に透明なコーティングを少なくとも部分的にコーティングする。特定の実施形態では、この較正デバイスは、少なくとも一連の希釈度のRLS粒子、例えば、一連の2倍、5倍及び/又は10倍希釈液を有し、及び/又は複数の異なるタイプの(例えば、異なるサイズ及び/又は形状の)粒子を有する。好ましくは、この較正デバイスは、較正デバイス用の較正データを提供するデータ・シートとともにパッケージする。あるいは、このような較正データを、当技術分野で周知の技術によってデバイス自体に書き込むか、あるいは組み込み、それによって、機器がその較正データを自動的に読み取り、分析及びその記録に組み込むことができる。
例えば、アレイ上にRLS粒子の希釈液を配置することによって、(マイクロアレイを含めて)アレイ型の較正デバイスを準備することができる。ロボットによるピペット処理又は印刷処理を含めて、様々な技術を用いて、アッセイ上の異なる位置に精確な量のRLS粒子を分布させることができる。次いで、そのアレイに光学的に透明な層をコーティングするか、あるいは他の手段で保存加工する。保存加工後、この較正スライドを用いて、異なる検出機器ユニットを通じて、及び/又は同じ機器による異なる実験あるいは測定を通じて、対応する光散乱信号の調整又は較正を行うことができる。したがって、このような再現性のある較正サンプル・デバイスを使用すると、より高いレベルの信頼度で、異なる実験室で得られた実験結果のより直接的な比較を行うことができる。
様々な異なるタイプのRLS粒子を用いることができ、単一の較正デバイスは、1つ又は複数の異なるタイプの粒子を有し得る。較正デバイス上の1つの位置又は部位で、既知の異なる割合で2種類以上の異なるタイプの(例えば、異なるサイズ及び/又は形状の)RLS粒子の混合物を用いることもできる。好ましくは、較正サンプル・デバイス上のRLS粒子のタイプは、較正デバイスとともに使用するサンプル・デバイス上に存在する粒子の1つ又は複数のタイプを含む。特定の実施形態では、較正デバイス上で使用するRLS粒子は、直径20、40、60、80、100及び120nmの金、銀並びに金と銀を組み合わせたほぼ球形の粒子を含む。
関連する実施形態では、本発明は、較正デバイスを用いて、1組の光散乱粒子によって生成された散乱光信号を分析する方法を含む。一実施形態では、この方法は、規定した照明及び検出条件下で、第1の組の光散乱粒子からの光信号を測定することと、同じ条件下で、較正デバイス上に存在する既知量の光散乱粒子からの散乱光信号を測定することとを含む。これらの散乱光信号を比較すると、第1の組の光散乱粒子の量の推定値が得られる。この方法を用いて、実験で用いる機器及び試薬を較正し標準化することができる。
較正デバイスにより、2つ以上の異なる実験間で散乱光信号の信頼性の高い比較を行うこともできる。この2つ以上の異なる実験は、異なる実験条件下、例えば、同じ又は異なる機器で、同じ又は異なる時間に行うことができる。換算定数、曲線、式又は数学モデルなどの変換ファクタによって、それぞれの異なる実験からの光信号を互いに関連づけることができる。異なる実験ごとの変換ファクタは、各実験からの光信号と、それぞれの実験条件下で、較正デバイス上に存在する既知量の光散乱粒子によって生成された光信号とを比較することによって得られる。次いで、このアッセイ結果を正規化するプロセスは、アッセイ結果に変換ファクタを適用することをさらに含む。較正基準及び変換ファクタを適用した後で、正規化プロセスにより、結果に影響を及ぼし得る機器依存性のファクタが取り除かれるので、異なる実験からの正規化したアッセイ結果を直接比較することができる。特定の実施形態では、2つ以上の異なる実験からの正規化したアッセイ結果を比較する。特定の実施形態では、2つ以上の異なる実験で同じ較正デバイスを用いる。
ある実施形態の例では、較正デバイスを用いて、RLS粒子で標識した分析物を用いた分析物アッセイ用の1つ又は複数の較正デバイス上の少なくとも一連の粒子希釈液に基づいて基準曲線を構築する。同じ又は異なる実験室の同じ又は異なる分析器による様々な実験で、同じ又は異なる較正デバイスを用いる。異なる較正デバイスを用いる場合、それらの異なるデバイスは、そのデバイスに関連する較正係数を有し、それによって、他の1つ又は複数の較正サンプル・デバイスと比較することができる。特定の実施形態では、これらの較正デバイスは、マスター較正基準に対して較正を行う。
本発明のある実施形態では、較正スライドを生成するために、添加物として様々な濃度のPVA(ポリビニルアルコール)及びDMSO(ジメチルスルホキシド)、好ましくは、12(重量/体積)%のDMSO及び5(重量/体積)%のPVOHを含むスポッティング溶液中に異なる又は同じタイプのRLS粒子を準備するが、この値の前後である範囲の濃度も使用可能であり、マイクロアレイ技術分野で周知の上記以外の調合物又は類似の添加物も用いることができる。この好ましい調合物により、RLS粒子の集合体、RLS粒子濃度に無関係な同じスポット・サイズ及びすべての印刷されたフィーチャ全体を通じて同じフィーチャ形態が得られた。手作業による方法及び機器/ソフトウエアによる方法で、フィーチャの強度の評価を行った。このような較正により、機器の較正用の、特に、ダイナミック・レンジ及び検出下限を決定するための再現性のあるツールが得られた。粒子は、粒子サイズに応じて、スライド表面上で1平方マイクロメートル当たり約10〜0.0006粒子数に相当する約100光学密度単位〜約0.006光学密度単位の範囲の値をとる一連の希釈液としてスポッティングする。好ましくは、特定の調合のスポッティング溶液及びスポッティング条件は、スライド上での乾燥中に、スポット全体にわたってほぼ均一な粒子分布が得られ、粒子によらない散乱の影響が妨げられるように選択する。次いで、一連の希釈液を生成し、スライド表面上に希釈した粒子を被着させる。RLS粒子の被着は、マイクロアレイ分野で周知の任意の様々なスポッタ装置を使用して行うことができる。これらのスポッタ装置には、キル又はブラント・ペン型機械式スポッタ、ソレノイド・ベースの非接触型流体被着スポッタ、圧電式非接触型スポッタ及びインク・ジェット式非接触型スポッタが含まれるが、これらに限定されるものではない。表面上に被着させた後で、暗視野顕微鏡を用いて、比較的高い希釈度でRLS粒子を含むスポットを観察し、個々の粒子を数える。希釈レベル及び所与の希釈レベルの粒子の数がわかると、RLS粒子の表面密度を高い精度で決定することができる。これが決まると、既知の密度のRLS粒子を含む一連の希釈度のスポットをスポッティングすることによって、較正スライドを生成することができる。スポッティングした後で、スライドを乾燥(又は硬化)させ、保存加工する。特定の実施形態では、これは、コーティング組成物中にスライドを浸漬し、そのスライドを硬化又は乾燥させることによって行われるが、他の方法を用いることもできる。これら他の方法には、噴霧法又は気相成長法が含まれるが、これらに限定されるものではない。このように形成した較正スライドが乾燥した後で、好ましくは、顕微鏡スライド保管箱など、保護されたほこりのない環境で保管することができる。いくつかの保存加工剤のある期間にわたる寿命及び性能は、暗条件又はほぼ暗条件下で保管することによって長くなる。
本発明のある実施形態では、較正プロセスを行うために、一般に、以下のステップがとられる。まず、効率的な暗視野照明及びCCDカメラによる検出を行うように構成した機器を用いて、検査スライドの画像を取得する。Yguerabideらの特許文献2及びSchultzらの特許文献8、「Apparatus for Analyte Assays」という名称の特許文献14及び(信号生成及び検出システムを含む)「Multiplexed Assays Using Resonance Light Scattering Particles」という名称の特許文献15、並びに「Analyte Assay Using Particulate Labels」という名称の特許文献5及び「Methods for Providing Extended Dynamic Range in Analyte Assays」という名称の特許文献6に記載されているように、本発明とともに様々な検出システムを用いることができる。フィーチャによらない(すなわち、バックグラウンド)散乱信号に対する相対的な、検査スライド上のRLS粒子の存在によるフィーチャの積算強度を、様々な市販又は特定用途向け画像解析ソフトウエアを用いて画像から定量化する。例えば、マイクロアレイ分野では、このような画像解析ソフトウエアを、例えば、Imageneと呼ばれるソフトウエア・パッケージを提供する米国カリフォルニア州ロサンゼルス所在のBiodiscovery社、Array Visionと呼ばれるソフトウエア・パッケージを提供するカナダ国オンタリオ州St.Catherines所在のImaging Research社、GenePixと呼ばれるソフトウエア・パッケージを提供する米国カリフォルニア州Union City所在のAxon Instruments社などから購入することができる。同様に、較正スライドの画像を取得するか、あるいは、機器上で測定条件を高い信頼性で再現することができる場合には前に取得した画像を用いる。同様に、画像解析によって、較正スライド上のフィーチャからの積算強度を取得する。較正スライドからのバックグラウンドを補正した積算強度を、較正スライド上の既知の粒子表面密度と相関させる。検査スライドからのRLS粒子信号を、較正スライドからの信号と相関させて、検査スライドのRLS粒子密度が得られる。このようにして、入射光源強度、フィルタ、露光時間、カメラの解像度など所与の組の機器パラメータについて、RLS粒子標識の既知の表面密度又は濃度と直接相関するバックグラウンド測定値に対する予想信号の相関値が得られる。こうすると、異なる場所にいて、異なるモデルの機器又は同じモデルの異なるユニットを所有する研究者が、これらの機器を互いに較正するか、あるいは、普遍的な承認又は相互の合意が得られた設定値又はパラメータ群に対して較正することができる。これにより、使用者が、異なる時間に、及び/又は他の使用者によって生成された他の実験結果と相関し、かつそれらによって解釈され得る、よりばらつきのない結果を得ることができる。
6.1 コーティング材料の評価
複数のコーティング材料候補を試験した。塗布のし易さ(シート化、粘性)、乾燥時間、屈折率、光学的透明度、硬さ/スクラッチ耐性、原材料の安定性、溶剤の適合性及びコストの基準を満たすいくつかの適切なコーティング材料を特定した。
自動マイクロアレイ印刷システム(米国カリフォルニア州アーバイン所在のCartesian Technologies社)及びキル・ペン(米国カリフォルニア州Sunnyvale所在のTelechem International社)を用いて、裸の80nm金粒子を含む溶液を印刷したマイクロアレイ・スライドによって検査を実施した。印刷、スライド処理及び蛍光検出を含めて、マイクロアレイ技術の包括的な説明が、Mark Schena監修のMicroarray Biochip Technology、Eaton Publishing(米国マサチューセッツ州Natick所在)、2000年に出ている。印刷パターンは、1メタ列当たり5回反復(行)させたものとした。粒子は、50 O.D.(光学密度)単位から、繰り返し半分にする2倍希釈を8ステップ(列)行った。したがって、第1サンプル濃度は50 OD、第2サンプルは、50/2=25 OD、第3サンプルは、25/2=12.5 OD、8つの希釈液を作製するまで同じことを繰り返し、第8サンプルは0.39 ODとした。それぞれ4列のメタ列を含む2行のメタ行をスライド上に印刷した。次いで、これらのスライドを、下記の1つ又はすべてを含む生物学用緩衝液で数回洗浄処理した。ステップを組み合わせると、注釈のない限り、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション及びポスト洗浄の典型的なステップが再現される。この例では、終夜ハイブリダイゼーションは行わず、ハイブリダイゼーションにcDNAを添加しなかった。
3倍以下のSSC(クエン酸ナトリウム)
0.1(重量/体積)%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)
0.2(重量/体積)%のBSA(ウシ血清アルブミン)
カゼイン
10mMのPBS(リン酸緩衝食塩水)
純水
乾燥用強制窒素空気
これらの条件を採り入れて、実験処理中にマイクロアレイの操作を近似した。大部分の実験プロセスで用いる実際の条件は、より厳密であり得、処理されるマイクロアレイ・スライド上に、より高いレベルの散乱性不純物が被着し得る。
候補となるコーティング材料をコーティングする前後のマイクロアレイ・フィーチャの画像を、市販のマイクロアレイ画像解析プログラム(カナダ国オンタリオ州所在のImaging Research社のArrayVision)を用いて同じように処理した。このように、測定を行う機器上での走査露光時間に加えて、表示範囲を合わせた。ArrayWorXs自動マイクロアレイ処理システム(米国ワシントン州Issaquah所在のApplied Precision社)又はGSD−501システム(米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のGenicon Sciences社)を用いてすべての画像データを収集した。
試験したコーティング材料候補の例を以下に示す。
Fcll=50%フィコール(商標)
Kryln=KRYLON(商標)透明コーティング用アクリル
Rstlm=RUSTOLEUM(商標)透明コーティング塗料
PolyU=ポリウレタン
PR=プラスチック(CRAFTICS(商標))とRUSTOLEUM(商標)透明コーティング塗料の(1:1)組合せ
PVA=ポリビニルアルコール:粘弾性ポリマー、セラニーズ社の等級203s、205s
浸漬によってすべてのスライドをコーティングし、標準温度及び圧力で乾燥/硬化させた。スライドをコーティングする前後で走査を行った。コーティング前に行った走査は、スポッティング後に得ることができる最も清浄な状態のスライドのものであった(すなわち、スポッティングの後でスライドにさらなる処理は施さなかった)。一般に、生物学用緩衝液による処理によって、塩類、タンパク質、低分子及び粒子状汚染物が捕捉される結果、かなりのバックグラウンド・ノイズの発生が示されることに留意されたい。好ましい実施形態はPVAを含む。
信号の損失は観察されず、すべてのマイクロアレイ・フィーチャにわたって信号対バックグラウンドの平均値が大きく増加するのが観察される。図8は、各コーティング例について、代表的な信号対ノイズ比の平均値を示すグラフである。図に示すように、「保存加工した」スライド上のすべてのスポットにわたって、信号対バックグラウンド平均値が劇的に増加した。比較的高性能のコーティングの一部では、信号対バックグラウンド平均値は、コーティングしていないスライドに対して約4倍増加する。
以下の表2に試験したコーティング材料候補の一部の結果を記載する。チンダル効果とは、あらゆる方向に可視光が散乱することであり、チンダル・ビームを用いて、コーティング材料の光散乱特性を測定する。コーティング材料の色は、コーティングを塗布した直後の時点(湿潤時)と、コーティングが硬化してコーティングを形成した後の時点(乾燥時)のものを示す。
Figure 0004213594
6.2 膜の透明化及び保存加工
この例では、RLS粒子とともに使用するガラス・スライドに結合したニトロセルロース膜の生成について説明する。膜を透明にし、かつ凝固して膜を保護する溶液を用いたニトロセルロース膜の透明化及び保存加工プロセスについてもさらに説明する。塗布のし易さ(シート化、粘性)、乾燥時間、屈折率、光学的透明度、ポリマーの硬さ/スクラッチ耐性、原材料の安定性、溶剤の適合性及びコストの基準を満たす、膜の透明化及び保存加工用溶液の候補を特定した。
1.ニトロセルロース膜の生成
材料:
コーニング社のGold Sealスライド(任意の普通のガラス・スライドを使用してよい)
3M社の光学接着剤8141、8142、8161あるいは9483(記載したもののうち任意のものを使用することができる)
Pall社のニトロセルロース膜(ただし、任意の製造業者の膜を代わりに使用してよい)
直径約1/2インチの剛体管(接着テープに圧力をかけるのに使用する)
カミソリの刃
テープ
処理:
複数のスライドからなるパネルを7列×2行からなる矩形で配置した。標準のラボ・テープでこれらのスライドを固定して、接着テープ及び膜を貼る間に動かないようにした。この矩形パネルに合うように1片の光学両面接着テープを切断し、まず一方の縁部をラボ・ベンチの最も近いところに貼り付け、矩形グリッドにそろえ、それによって、張力を解放すれば、その接着テープ片がスライド上にまっすぐに落ちるようにした。一方の手で張力を維持しながら、他方の手で剛体管を当てることによって接着テープの接触している縁部に圧力をかける。管の長さ全体にわたってしっかりと均一に圧力を連続してかけることによって接着テープの接触縁部を前方に動かし、反対側の手はゆっくりと圧力を解放する。ここで示した説明は、完全に工業用設備の特徴でありかつ周知の方法であるニップ・ロールによる張合せの手作業の表現である。こうすると、ニトロセルロース膜を貼り付ける光学的に透明な接着テープが泡を生じることなく貼り付けられる。
ニトロセルロースを貼り付けるには、適切に接着が行われるようにするために、正しく合わせ、手又はローラで穏やかな圧力を表面全体にわたって滑らかにかけるだけでよい。次いで、縁部のぎざぎざを最小限に抑えるためにカミソリの刃で複数のスライドからなるパネルを分割することによって仕上げる。
表面上でポリマー基質を流体又は回転成形するなど当技術分野で周知の、膜基板又は固体支持体を準備する他の方法も本発明とともに用いることができる。
2.マイクロアレイの配置、膜の透明化及び保存加工
材料
Deft透明ラッカー
Parks透明ラッカー
2−ブトキシエタノール
Cartesian Technologies社のアレイヤー
RLS観察装置
アレイ・パターン
上記で準備したニトロセルロース膜を、図9に示すように、Cartesian Technologies社のアレイヤー上で、抗ビオチンが結合した80nmのRLS金粒子を矩形アレイ・パターンでスポッティングした。
150mMのNaCl及び5%ウシ血清アルブミンの組成でスポッティングした。アレイ化した後で、蒸留水でスライドを洗浄した。スポッティングした抗ビオチン80nm金粒子の濃度は、最高で6 OD、最低で0.09 ODであった。これらの濃度は、バイオ・アッセイで得られるものに対してかなり低いものである。最良の膜保存加工候補の例の場合、RLS観察装置(米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のGenicon Sciences社)上で20秒間の走査で観察したバックグラウンド・レベルは、約75カウント/秒であった。すべての膜スライドに浸漬コーティングを施し、標準温度及び圧力で硬化させた。
実験及び図10で用いる略号を表3に示す。これらは、共通の用語及びこの実験のために選択した3種類の透明化/保存加工用の候補を表す。
Figure 0004213594
RLS観察装置上で、透明化した膜スライドのTIF画像を取得した。図9に、スポッティング方式を示す。アレイを3通り塗布し、透明化/保存加工用の各候補で複製スライドを準備した。各画像について、画面引き伸ばしサイズ及び機器の露光時間(20秒)を同じにした。
50(体積/体積)%の2−ブトキシエタノールで調製したParks透明ラッカーでは、比較的バックグラウンドが低く、粒子が混入するという徴候が見られたが、第2の興味深い点が観察された。100%Deft透明ラッカーでコーティングしたアレイ上で観察されたスポット強度は、他の2種類のコーティングによるスポットよりも大きく見える。これは、屈折率がより大きいか、あるいは、未希釈のDeftラッカーによって生成された表皮がより厚いことに起因するものである。
図10は、ニトロセルロース膜上の3種類のコーティング材料について、信号対非特異的バックグラウンド比を示すグラフである。計算値は、観察したスポットの信号平均値を、各アレイ内の負のスポットの平均値で割ることによって得られた。この結果を、平均SgMn/NSB(信号平均値を非特異的バックグラウンドで割った商の平均値)で表す。図9の行1及び行7に対応する各組の最初と最後のバーは、それぞれ抗ビオチン80nm金RLS粒子密度が最大と最小のものを表す。行8は、それぞれの計算で考慮に入れられているので除外する(略号の定義については表3を参照されたい)。上記で示したように、この例は、効果的な1ステップの透明化及び保存加工方法を示すものである。さらに、あるクラスのコーティング組成物を、これらの候補となるコーティング材料が、容易に入手可能で、安価で、より望ましい特性(例えば、屈折率の増加、粘性の低下、揮発性など)に有利なように容易に改変されるものについて特定する。これらのコーティング組成物及び方法は、この方法の実施中にニトロセルロース膜を透明にすることを除き、実施例1で説明したものの拡張形態である。
本発明の目的を実行し、そこで述べられた目的及び利点並びにその中で本来固有のものが得られるように、本発明が十分に適合されていることが当業者には容易に理解されよう。現時点で好ましい代表的な実施形態として本明細書で説明した方法、変数及び組成物は例であり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者なら、本発明の変更その他の利用法を想起しよう。それらは、本発明の趣旨に含まれるものであり、特許請求の範囲の範囲によって定義される。
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書で開示した本発明に様々な置換及び改変を加えることができることが当業者には容易に明らかであろう。例えば、他のサンプル・デバイス及び/又は標識技術を用いることはすべて本発明の範囲に含まれる。したがって、このような追加の実施形態は本発明の範囲及び添付の特許請求の範囲に含まれる。
本明細書で例示的に説明した本発明は、本明細書で具体的に開示していない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の制限がなくても適切に実施することができ、及び/又は、追加の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の制限があっても適切に実施することができる。すなわち、例えば、本明細書の各実施形態において、「含む」、「本質的に〜からなる」及び「〜からなる」という用語は、他の実施形態では、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。ここで用いるこれらの用語及び表現は、説明するための用語として用いており、限定するためのものではない。このような用語及び表現を用いるとき、ここで示し説明した特徴の均等物又はそれらの一部を除外する意図はなく、特許請求する本発明の範囲内で様々な改変が可能であることを理解されたい。したがって、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって本発明を具体的に開示してきたが、当業者なら、本明細書で開示した概念を改変かつ変形することができ、このような改変形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲に含まれるとみなされることを理解されたい。
さらに、本発明の特徴又は態様が、マーカッシュ群その他のまとまりで記載されている場合、本発明は、マーカッシュ群その他の群の個々の構成要素又は副群の構成要素でも記載されることが当業者には理解されよう。
構成要素又は制限が、その構成要素又は制限に関連する様々な異なる可能な数又は寸法で説明されている場合、追加の実施形態では、この構成要素又は制限は、ある範囲の端点として提供された特定の値のうち任意の2つをとることによって指定される範囲に含まれる。この範囲は、そうでないように明確に示されていない限り端点を含む。
したがって、追加の実施形態は、本発明の範囲及び添付の特許請求の範囲に含まれる。
図1A、B及びCはそれぞれ、金、銀及びセレニウムの屈折率の実部及び虚部を示す図である。 図1A、B及びCはそれぞれ、金、銀及びセレニウムの屈折率の実部及び虚部を示す図である。 図1A、B及びCはそれぞれ、金、銀及びセレニウムの屈折率の実部及び虚部を示す図である。 様々な金属について、相対散乱断面積とナノメートルで表した波長の関係を示す図である。 図3A及び3Bは、サイズが20〜100nm及び100〜140nmの銀粒子について、正規化した散乱断面積と(ナノメートルで表した入射光の)波長の関係を示す図である。 図3A及び3Bは、サイズが20〜100nm及び100〜140nmの銀粒子について、正規化した散乱断面積と(ナノメートルで表した入射光の)波長の関係を示す図である。 図4A及び4Bは、サイズが20〜140nm及び160〜300nmの金粒子について、正規化した散乱断面積と(ナノメートルで表した入射光の)波長の関係を示す図である。 図4A及び4Bは、サイズが20〜140nm及び160〜300nmの金粒子について、正規化した散乱断面積と(ナノメートルで表した入射光の)波長の関係を示す図である。 図5A、B及びCは、MLSP(操作可能な光散乱粒子)混合組成粒子を示す図である。図8Aでは、(1)が、所望の光散乱材料(2)をコーティングした磁性又は強誘電性材料のコアである。図8Bに、磁性又は強誘電性材料(3)をコーティングした光散乱材料コア(4)を示す。図8Cに、光散乱材料(5)と磁性又は強誘電性材料(6)の混合物を示す。 図6A、B及びCは、配向可能なMLSP粒子に関して、ダイマー、テトラマー及びより高次の粒子構造をそれぞれ示す図である。粒子(1)は光散乱により検出可能な粒子であり、(2)は磁性又は強誘電性の粒子である。線(3)は、複数粒子構造において粒子を互いに結合する、化学的、イオン的その他の結合である。 所望の光散乱特性を備えた粒子を選択する際に考慮する粒子タイプ構成を示す図である。 80nmの金RLS粒子を有するガラス・スライド上のいくつかのコーティング材料について、信号対バックグラウンド比の例を示すバーグラフである。 膜の透明化及び保存加工方法を示すのに用いるマイクロアレイ配置を示す図である。 80nmの金RLS粒子を有するニトロセルロース膜上のコーティング材料として使用する3種類のラッカー溶液について、信号対バックグラウンド比の例を示すバーグラフを示す図である。識別子d100は、100%Deft(商標)ラッカーを指す。D50egme50は、50%Deftラッカー:50% 2−ブトキシエタノール溶液を指す。P50egme50は、50%Parksラッカー:50% 2−ブトキシエタノール溶液を指す。

Claims (35)

  1. 光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプルを保存加工する方法であって、前記サンプルの少なくとも一部にコーティング組成物を塗布して、光学的に透明なコーティングをされたサンプルを形成することを含み、保存加工され、光を照射されたサンプルからの散乱光が保存加工前のサンプルに比べて増加した信号対ノイズ比を有していることを特徴とする方法
  2. 前記サンプルがサンプル・デバイス上に存在する請求項1に記載の方法。
  3. 前記サンプル・デバイスが、スライド、アレイ・チップ、マイクロタイタ・プレート、マイクロアレイ、膜、ガラス基板及びフィルムからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  4. 前記コーティング組成物が、アルキド樹脂、アクリル、炭水化物ポリマー、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、テルペン、ウレタンアルキド及びウレタン油からなる群から選択される少なくとも1つの高分子化合物を含む請求項1に記載の方法。
  5. 前記コーティング組成物が、ラッカー、ワニス又は木材仕上げ用ラッカーを含む請求項1に記載の方法。
  6. 高分子化合物を含むコーティング組成物に希釈液を添加することを含む方法によって前記コーティング組成物を調製する請求項1に記載の方法。
  7. 前記コーティング組成物が木材仕上げ用ラッカーを含み、前記希釈液が、2−ブタノン、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル又はそれらの組合せである請求項6に記載の方法。
  8. 前記塗布ステップの後で、前記コーティングが恒久的なもの又は固体になるように前記コーティング組成物を硬化することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  9. 前記塗布ステップの後で、暗条件下で前記サンプルを保管することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  10. 前記塗布ステップの後で、前記サンプルを保管するステップ及び前記サンプル上の前記光散乱粒子から散乱された光を検出するステップをさらに含み、1日、1週間、1カ月、6カ月又は1年間、前記サンプルを保管した後で前記検出ステップを行う請求項1に記載の方法。
  11. 前記保管及び検出ステップを複数回実施する請求項10に記載の方法。
  12. 前記サンプルが膜上にあり、前記コーティング組成物が、前記膜によって散乱する光がより少なくなるように前記膜を改変する請求項1に記載の方法。
  13. 光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプル上に形成された、少なくとも1つの光学的に透明なコーティングを含むサンプル・デバイスであって、前記光散乱粒子が1〜500nmのサイズのものであるサンプル・デバイス
  14. 前記光学的に透明なコーティングの少なくとも1つが、アルキド樹脂、アクリル、炭水化物ポリマー、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、テルペン、ウレタンアルキド及びウレタン油からなる群から選択される少なくとも1つの高分子化合物を含む請求項13に記載のサンプル・デバイス。
  15. 固相アレイ、スライド、マイクロタイタ・プレート、アレイ・チップ、マイクロアレイ、膜、ガラス基板又はフィルムである請求項13に記載のサンプル・デバイス。
  16. 法医学用サンプル・デバイス、同定用サンプル・デバイス又は臨床用サンプル・デバイスである請求項13に記載のサンプル・デバイス。
  17. 光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプル中でバックグラウンド光散乱を減少させるか、または、光散乱粒子標識の特異的検出を増強する方法であって、
    前記サンプルの少なくとも一部にコーティング組成物を塗布または被覆して光学的に透明なコーティングをされたサンプルを形成する工程を含み、前記光学的に透明なコーティングがアルキド樹脂、アクリル樹脂、炭水化物ポリマー、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、テルペン、ウレタンアルキド、ウレタン油、ワニス、および木材仕上げ用ラッカーから成る群より選択され、前記コーティングがバックグラウンド光散乱の低下および/または前記標識から散乱した光の検出の増強をもたらす屈折率を有している、方法
  18. 前記サンプルが、固相アレイ、スライド、アレイ・チップ、マイクロタイタ・プレート、膜からなる群から選択されるサンプル・デバイス上に存在する請求項17に記載の方法。
  19. 前記サンプルを保管する前に前記標識から散乱された光を検出し、それが前記サンプル・デバイス上の少なくとも1つの分析物の存在又はその量あるいはその両方を示す請求項17に記載の方法。
  20. コーティング組成物と、
    光散乱粒子を含むか、あるいは光散乱粒子との接触が行われたサンプルに前記コーティング組成物を被覆するための1組の指示とを含むキット。
  21. 硬化剤、剥離剤、希釈剤又は光散乱粒子のうち少なくとも1つ又は複数のものをさらに含む請求項20に記載のキット。
  22. 前記光散乱粒子が、結合条件下で分析物に結合する部分を含む請求項20に記載のキット。
  23. 少なくとも1つのサンプル・デバイスをさらに含む請求項20に記載のキット。
  24. 光散乱粒子を検出する機器をさらに含む請求項20に記載のキット。
  25. 較正デバイスを準備する方法であって、
    サンプル・デバイス上の1つ又は複数の離散位置に既知量の光散乱粒子を被着させることと、
    前記サンプル・デバイスに、光学的に透明なコーティングを形成するコーティング組成物を被覆することとを含む、方法。
  26. 前記較正デバイスが、アレイ、チップ、スライド及びプレートからなる群から選択される請求項25に記載の方法。
  27. マスター較正基準に対して前記較正デバイスを較正することをさらに含む請求項25に記載の方法。
  28. 既知量の光散乱粒子を含み、光学的に透明なコーティングで恒久的に保存加工された少なくとも1つの離散位置を含む較正デバイスであって、前記光散乱粒子が1〜500nmのサイズのものである、較正デバイス
  29. 前記光散乱粒子が、1平方マイクロメートル当たり10〜0.0006粒子数の表面密度で前記位置に存在する請求項28に記載の較正デバイス。
  30. 前記光散乱粒子が金又は銀粒子であり、前記光散乱粒子の直径が、20、40、60、80、100、120、140及び200nmからなる群から選択される請求項28に記載の較正デバイス。
  31. 1組の光散乱粒子によって生成される光信号を分析する方法であって、
    (a)規定した条件下で1組の光散乱粒子からの散乱光信号を測定することと、
    (b)同じ規定条件下で、既知量の光散乱粒子からの散乱光信号を測定することと、
    ステップ(a)及び(b)からの前記散乱光信号を比較して、ステップ(a)の前記組の中の光散乱粒子の量を予測することを含み、較正デバイス上に存在する前記既知量の光散乱粒子が、光学的に透明なコーティングで恒久的に保存加工される、方法。
  32. 前記光散乱粒子が金又は銀粒子であり、前記光散乱粒子の直径が、20、40、60、80、100、120、140及び200nmからなる群から選択される請求項13に記載のサンプル・デバイス。
  33. 前記光散乱粒子が金又は銀粒子であり、前記光散乱粒子の直径が、20、40、60、80、100、120、140及び200nmからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  34. 前記塗布ステップの後で、前のステップによって形成されたコーティングの少なくとも一部を除去することと、前記サンプルに別のコーティング組成物を塗布して別の光学的に透明なコーティングを形成することとをさらに含む請求項1に記載の方法。
  35. サンプルを検出する工程をさらに含む、請求項17記載の方法。
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