(第1の実施形態)
図1(a)を参照すると、本実施形態に従う移動無線通信装置では、アンテナ1を介して図示しない基地局からのRF(高周波)信号を受信し、また該基地局へのRF信号の送信を行う。アンテナ1からの受信信号は無線送受信デバイス2によってディジタルの受信IF(中間周波数)信号に変換され、信号処理デバイス3に供給される。信号処理デバイス3によって生成されるディジタルの送信IF信号は、無線送受信デバイス2によって送信RF信号に変換され、アンテナ1に供給される。
信号処理デバイス3は、LSI化されたプロセッサ、メモリ及びロジック回路などのハードウェアリソースを含み、図1(b)に示したように送受信に必要なモデムユニット3A及びプロトコル3Bの処理を主として行う。モデムユニット3A及びプロトコル3Bの仕様は、例えばW−CDMA(Wide band code-division multiple access)システムに関しては、3rd Generation Partnership Project(3GGPTM)のTS 25シリーズで定義され、GSM(Global system for mobile communications)に関しては、3GGPTMのTS 05シリーズで定義される。
モデムユニット3A(ベースバンドユニットとも呼ばれる)の処理は、無線送受信デバイス2に近い領域(ベースバンド領域)での信号処理である。より具体的には、モデムユニット3Aの処理は、無線送受信デバイス2から出力される、サンプリングされたディジタル化されたIF(中間周波数)信号を復調して受信ベースバンド信号を生成する処理、送信データを変調して送信バースバンド信号を生成する処理である。プロトコルユニット3B(L2/L3プロトコルユニットとも呼ばれる)の処理は、移動無線通信装置が利用される無線通信システムに従って決められたプロトコル処理である。
信号処理デバイス3の持つリソースは、リソースコントローラ4によってコントロールされる。このコントロールにより、使用条件の変化に伴う移動無線通信装置の機能や仕様の変更に即応でき、それによって異なる無線通信システム間での移動に伴うハンドオーバ制御を容易に実現可能にする。具体的には、リソースコントローラ4により信号処理デバイス3のリソースに対してソフトウェアの変更制御、ロジック回路構成方法の変更制御、もしくはその両方の制御が行われることにより、移動無線通信装置の機能が所望に変更される。このようにリソースコントローラ4により信号処理デバイス3の持つリソースが適応的に制御されることで、量の限られた該リソースが有効に利用される。
信号処理デバイス3のリソースのうち、ソフトウェア処理で能力的に足りる処理を行う領域は、汎用プロセッサとメモリにより実現され、処理スピードが要求される領域は、DSP(ディジタル信号プロセッサ)、もしくはPLD(プログラマブルロジックデバイス)のようなハードウェア回路で実現される。DSPは、リソースコントローラ4からの制御のもとで、記憶装置5から読み出されたプログラムに従って所望の信号処理を行う。PLDは、リソースコントローラ4からの制御のもとで、記憶装置5から読み出されたプログラムに従って回路構成が記述されることにより、所望の処理を行う。
記憶装置5には、信号処理デバイス3で利用されるソフトウェア(プログラム及びプログラムの構成要素であるモジュール)と、受信データや送信データのような処理データ及び電話帳、アドレス帳などのデータベースが保持されている。記憶装置5は、リソースコントローラ4、または移動無線通信装置の内部全体を制御するシステムコントローラ6からの制御により、必要なプログラムやデータのリード/ライトを行う。記憶装置5から読み出されるプログラムは、信号処理デバイス3に記述される。記憶装置5としては、小型のハードディスクドライブ装置または、FROMのような半導体メモリが使用される。
システムコントローラ6に接続された入出力デバイスユニット7は、移動無線通信装置のユーザとのインタフェースを司る各種の入出力デバイス、例えば、音声入力のためのマイクロフォン、音声出力のためのスピーカ、キーボード及びディスプレイを含んでいる。キーボードは、ダイヤルキー、ファンクションキー操作、テキスト入力及び編集操作などに用いられる。ディスプレイでは、着信情報、コンテンツ及びメニューなどが表示される。入出力デバイスユニット7は、さらに動画像圧縮伸長処理を行うMPEGインタフェース、及び外部装置との間でシリアル入出力を行うためのUSBインタフェースを有する。入出力デバイスユニット7のこれらの構成要素は、内部バスにより接続され、内部バスはシステムコントローラ6に接続される。
図2には、図1中の無線送受信デバイス2の具体的な構成の一例を示す。受信系について説明すると、アンテナ1からのRF受信信号は、送受切り替えスイッチ(またはデュプレクサ)10により低雑音増幅器11に導かれる。LNA11で所要レベルまで増幅されたRF信号は、BPF(バンドパスフィルタ)12を経てミキサ13に入力され、ここで周波数シンセサイザ20からの受信用第1ローカル信号LO11とミキシングされることにより、ダウンコンバートされる。ミキサ13からの出力信号は、IF増幅器14及びバンドバスフィルタ15を経てミキサ16に入力され、ここでシンセサイザ20からの受信用第2ローカル信号LO12とミキシングされることにより、所要の中間周波数までダウンコンバートされる。ミキサ16からの出力信号は、ローパスフィルタ17を経てA/D変換器18に入力され、ディジタルIF信号19に変換される。IF信号19は、信号処理デバイス3に入力される。
送信系において、信号処理デバイス3から出力されるディジタルIF信号は、D/A変換器22によりアナログ信号に変換された後、ローパスフィルタ23を経てミキサ24に入力され、ここでシンセサイザ20からの送信用第1ローカル信号LO21とミキシングされることによりアップコンバートされる。
ミキサ24からの出力信号は、バンドバスフィルタ25及びIF増幅器26を経てミキサ27に入力され、ここでシンセサイザ20からの送信用第2ローカル信号LO22とミキシングされることにより、所要のRF周波数までアップコンバートされる。ミキサ27からのRF出力信号は、バンドパスフィルタ28を経て電力増幅器29で増幅された後、スイッチ10によりアンテナ1に導かれ、アンテナ1から電波として放射される。
図1(a)中の信号処理デバイス3は、例えば図3(a)に示されるように、汎用プロセッサ(CPU)31、信号処理ユニット32(SPU)、メモリ33及び入出力インタフェース34を含んでいる。CPU31は、予め与えられたプログラムに従って処理を実行し、またSPU32に対し所定のコマンド及びデータを伝送して、SPU32に高度な信号処理を行わせる。逆に、CPU31はSPU32からのコマンドあるいはトリガに従って、処理内容を変更することが可能である。
リソースコントローラ4によって、CPU31及びSPU32にプログラムがインストールされることによって、CPU31及びSPU32の信号処理機能が定義される。さらに、リソースコントローラ4によって、CPU31及びSPU32の行うべき処理の分担が決定される。図3においては、リソースコントローラ4はCPU31上で動作するプログラムによって実現されるように記述されているが、DSP上あるいはロジック回路上のシーケンサによっても実現され得る。
SPU32は、信号処理に特化したプログラマブルな専用プロセッサであり、具体的にはDSP及びPLDの少なくとも一方が用いられる。SPU32は、メモリ33をワークメモリとして用いて信号処理を行う。SPU32は、処理対象の信号の入力及び処理された信号の出力を、外部インタフェース34を介して、無線送受信デバイス2及びシステムコントローラ6との間で行う。SPU32が行う具体的な処理内容の例としては、“相関演算”、“複素演算”、“最大値検出”、“メモリのアドレス変換”、“シーケンサ”、“高速入出力処理”、“累積加算”、及び“関数演算”などが挙げられる。
本実施形態に従う無線信号処理装置がCDMA(code-division multiple access)システムに適用された場合について、具体的に説明する。信号処理デバイス3内のSPU32に、あるいはSPU32とCPU31の両方に、CDMAシステムにおける逆拡散処理を行う、例えば複数のロジック回路からなるリソース(逆拡散回路リソース)が用意される。該リソースはリソースコントローラ4によって制御される。CDMAシステムでは、マルチパス伝送に応じたフィンガタイミングで動作するRAKE受信機の機能と、フィンガタイミングを周期的にサーチする機能が必要とされる。フィンガタイミングのサーチは、マルチパスタイミングが変動する移動通信環境を考慮して行われる。これらの両機能は、共に相関回路を含む逆拡散回路により実現され、従来では両機能に別々の逆拡散回路が固定的に割り当てられる。
本実施形態に従うと、リソースコントローラ4によるリソースマネージメントにより、RAKE受信に用いている逆拡散回路リソースを、一定周期で、または通信品質等に応じて随時に、サーチ処理に用いるようにすることが容易である。こうすると、より少ない回路規模で高品質の通信が確保される。複数のコードチャネルを受信するCDMA受信機においては、コードチャネルの接続/切断に応じて、リソースコントローラ4によるリソースマネジメントによって、逆拡散回路リソースをそれぞれのチャネルに割り当てる。こうすると、有限の逆拡散回路リソースで複数チャネルのRAKE受信を実現でき、回路規模を削減することが可能となる。
図3(b)に例示されるように、SPU32は例えば複数のDSP37A及び37Bと、PLD38を含んで構成され、これらが内部バス39により接続される。逆拡散回路リソースの処理は、DSP37A及び37Bと、PLD38が共に行うことができる。この構成の場合、DSP37A及び37Bと、PLD38それぞれの持つ処理能力、あるいはMIPS値が信号処理デバイス3のリソースの一部に該当する。CDMAシステムの例では、一つの逆拡散回路の処理能力が10[MIPS]であるとすると、100[MIPS]の処理能力を持ったDSPは10個の逆拡散回路と同様な逆拡散リソースとして扱うことができる。
リソースコントローラ4は、CDMAシステムに適用される移動無線通信装置の機能(RAKE受信、マルチパスサーチ、周辺セルサーチ、多チャネル受信等)を実現するために、DSP37A及び37Bの持つリソースを、その時点で要求される全機能に当てるように、信号処理デバイス3の持つトータルのリソースを割り振る。例えば、トータルで15個の逆拡散回路に相当するリソースが要求されたとき、10個の逆拡散回路の能力と同等の100[MIPS]の処理能力をPLD38に負担させ、残り5個の逆拡散回路の能力と同等の50[MIPS]の処理能力をDSP37Aまたは37Bに負担させる。信号処理デバイス3のリソース配分は、同一の無線通信システムでの使用時に限られるものでない。例えば、CDMAシステムとTDMA(time-division multiple access)システム、TDMAシステムとFDMA(frequency-division multiple access)システム、FDMAシステムとCDMAシステム、では、それぞれ共通の処理要素がある。これら異なる無線通信システム間において共通で、かつ時間的に競合しない処理について、上記と同様に信号処理デバイス3のリソース配分を行うことができる。
上述したように、本実施形態に従う移動無線通信装置は、高い自由度をもって機能の再構築が可能であるため、機能追加に必要なコスト及び開発期間が削減される。信号処理デバイス3に含まれる図1(b)で示したモデムユニット3A及びプロトコルユニット3Bの機能は、移動無線通信装置の機能の再構築の際に必要である。このように信号処理デバイス3の機能をモデムユニット3A及びプロトコルユニット3Bに切り分けることにより、複数の無線通信システムで同じような機能を共用することが容易となる。
さらに、信号処理デバイス3に含まれる図1(b)で示したモデムユニット3A及びプロトコルユニット3Bの機能を自由に再構築できることは、本移動無線通信装置が異なる無線通信システムのサービスエリア間で移動して利用される場合に有用である。すなわち、移動無線通信装置は、移動先における電波の受信状態や無線チャネルの混雑度に応じて、最適に利用可能な無線通信システムを選択し、その選択したシステムの下で通信を行うことができる。これによってローミングやハンドオーバが容易に可能となる。
図4に示されるように、汎用プロセッサ(CPU)31はプログラム実行を管理するプログラムシーケンサ(PS)41及び算術演算ユニット(ALU)42として機能する。図3(a)中に示した信号処理ユニット(SPU)32は、自己での処理の開始あるいは終了、またはプログラムされたシーケンスに従って信号処を行い、CPU31に対してトリガ信号あるいは割り込み信号を供給する。CPU31に供給されたトリガ信号または割り込み信号は、PS41で検出される。これによってCPU31はSPU32の状態、例えば、“信号処理の終了”を認識し、その認識に基づいてALU42の処理内容を変化させることができる。
このようにCPU31とSPU32を協調動作させて、それぞれに処理を分担させることにより、複雑な演算を高速に実行することが可能となる。
図5に示されるように、SPU32は算術論理演算ユニット(ALU)51、命令メモリ52、データメモリ53及び入出力インタフェース54を有する。ALU51は、外部からの入力データ、メモリ33内のデータ及びCPU31からの処理命令やデータに従って、“相関演算”、“複素数演算”、“配列変換”、“最大値検出”、“メモリアドレス変換”、“シーケンサ”、“高速入出力”といった高度の信号処理を行う。ALU51からの処理結果は、データメモリ33、CPU31内のメモリやレジスタ、メモリ33及び入出力インタフェース34に書き込まれる。このようにCPU11で処理するには負担が重い高度の信号処理に関しては、専用プロセッサであるSPU12によって行われることにより、CPU11の負担が軽減され、処理速度が向上される。
図6には、SPU32のためのアドレス変換回路を示す。アドレス変換回路はメモリ60の二つのアドレスデコーダ61,62によって構成され、それぞれ所要の変換パターンが書き込まれている。SPU32からの命令によりアドレスデコーダ61,62の一方が選択され、デコード内容を切り替える。メモリ60内のレジスタ群63は、RAM(ランダムアクセスメモリ)のようなメモリ内のメモリセルである。通常のRAMに備えられている書き込みアドレスデコーダと読み出しアドレスデコーダのデコード内容は同一である。従って、SPU32の処理に含まれるビットインターリーブのようなビット配列変換処理を、通常のRAMで実現しようとすると、読み出し毎にアドレス計算を行う必要がある。
図6によると、アドレスデコーダ61,62をそれぞれ書き込みアドレスデコーダと読み出しアドレスデコーダに使用すれば、このようなアドレス計算が不要となり、非常に処理量の多いインターリーブのような変換処理を高速に行うことができる。アドレスデコーダ61,62をそれぞれ書き換え可能な例えばRAMの様なデバイスとし、これらにアドレス変換テーブルを書き込んでもよい。これにより複数の変換パターンに対応できるため、様々なパターンに対応した柔軟な処理を簡易な構成で実現できる。
図3(a)に示したように、CPU31内のレジスタアレイ36を介してCPU31とSPU32との間のデータの授受をダイレクトに行うこともできる。レジスタアレイ36はSPU32から直接アクセスされる。すなわち、SPU32は自己からのデータ出力を直接レジスタアレイ36に書き込み、またレジスタアレイ36からデータを直接読み出すこともできる。CPU31は、レジスタアレイ36の内容を取り込み、またレジスタアレイ36にデータを書き込むことができる。
このようにCPU31とSPU32とのデータ授受にレジスタアレイ36を利用すると、CPU31はデータ授受に当たってSPU32の動作状況と無関係にレジスタアレイ36をアクセスすればよい。従って、CPU31におけるデータ転送処理を速くすることができ、信号処理デバイス3の処理を高速化できる。
図3(a)に示した信号処理デバイス3によって、無線送受信デバイス2からのディジタル化された受信IF信号を入出力インタフェース34で受けて処理する場合の動作について説明する。受信信号をCPUのみで処理しようとすると、入出力処理だけでCPUの演算能力の多くを費やすこととなり、その他の処理に対してはCPUの残りの能力しか振り向けることができない。図3(a)に示す信号処理デバイス3によると、レジスタアレイ36を利用して、CPU31を介さずSPU32に入出力処理を実施させることで、CPU31の処理能力を入出力処理以外の処理に当てることができる。
入出力インタフェース34に取り込まれた受信IF信号は、SPU32に順次取り込まれ、固定的な処理が必要であればSPU32によって所要の信号処理が行われる。SPU32からの処理結果はメモリ33またはレジスタアレイ36に書き込まれる。CPU31は、メモリ33またはレジスタアレイ36に書き込まれたデータを用いて必要な処理を行う。
このように入出力処理と信号処理をSPU32に分担させることにより、CPU31の負荷を軽減させることができる。言い換えれば、信号処理デバイス3の処理負荷をCPU31とSPU32に分散させることにより、信号処理デバイス3全体として高速な信号処理が実現される。一層の負荷分散を図るために、CPUを複数個設けて、図3(a)のCPU31に分担させる処理をそれぞれのCPUに分散させるようにしてもよい。
以下、本発明の他の実施形態について説明する。以下の実施形態においては、移動無線通信装置の基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、移動無線通信装置の構成要素、あるいは動作態様についての他のバリエーションを開示する。
(第2の実施形態)
図7に示される信号処理デバイス3は、回路構成記述メモリ71、プログラムシーケンサ72、プログラマブルハードウェアデバイス73及びメモリ74を有する。プログラマブルハードウェアデバイス73は、PLDやFPGA(field programmable gate array)などのような回路構成を再定義できるハードウェアであって、信号処理の基本的な演算を行う各種ロジック回路の集合体である。プログラマブルハードウェアデバイス73は、各種ロジック回路の組み合わせをスイッチによりプログラマブルに変更可能として、所要の処理機能を実現するデバイスであってもよい。
回路構成記述メモリ71には、プログラマブルハードウェアデバイス73における各種ロジック回路をプログラマブルに組み合わせることで所要の信号処理機能を実現させるための処理内容別の回路構成記述が保持されている。メモリ74には、プログラマブルハードウェアデバイス73に実行させる処理の手順を示すプログラムが格納される。
プログラムシーケンサ72は、リソースコントローラ4からのリソースマネージメントプログラムを受けて、メモリ74から適宜プログラムを読み出し、それに従って回路構成記述メモリ71及びプログラマブルハードウェアデバイス73をコントロールし、該プログラムに従った信号処理をプログラマブルハードウェアデバイス73に実行させる。
一般のCPUやDSPなどのプロセッサにおいては、その内部のALU部分の回路構成は固定である。該プロセッサが与えられた命令セットによる処理内容を実現できるように、各命令セットに対応した専用回路がALUとして構成されている。これに対し、本実施形態では通常はALUによって行われていた処理が、回路構成の再定義可能なプログラマブルハードウェアデバイス73によって実現される。
回路構成記述メモリ71には、プログラマブルハードウェアデバイス73に所望の処理を実現するに必要な回路構成記述がプログラムとして格納されている。より具体的には、回路構成記述メモリ71には、通常のALUに含まれる“4則演算”、“データ転送”、“ビットシフト”といった基本的な処理をハードウェアで実現するための回路構成記述に加えて、例えば、“相関演算処理”や、“複素乗算処理”、“最大値検出処理”、“絶対値演算”等、通常のプロセッサが複数ステップかけて行う処理をハードウェアで実現するための回路構成記述、及び基本演算処理の組み合わせを示す回路構成記述を示すプログラムが格納される。このような回路構成記述メモリ71を用いることによって、信号処理デバイス3の信号処理機能が新たに定義される都度、その信号処理機能を実現できるようにプログラマブルハードウェアデバイス73の回路構成記述が変更される。
メモリ74上のプログラム領域74Aには、メモリ71に対して上記のような回路構成記述を行われるための多数のプログラムが記述されている。ブロック領域74Aから、プログラムシーケンサ72のコントロールの下で必要なプログラムが読み出され、回路構成記述メモリ71に与えられる。これによってプログラマブルハードウェアデバイス73の回路構成が再定義される。
このように本実施形態によれば、信号処理デバイス3の処理が回路構成の再定義可能なプログラマブルハードウェアデバイス73によって実現される。従ってソフトウェア処理を行う通常のプロセッサでは数十〜数百ステップも必要とする処理を数サイクル内で高速に行うことができ、しかも多様な信号処理機能の定義に柔軟に対応することができる。
(第3の実施形態)
図8に示される信号処理デバイス3は、図7に加えてCPU75が追加されている。回路構成記述メモリ71、プログラムシーケンサ72、プログラマブルハードウェアデバイス73及びメモリ74は、図7で説明したものと基本的には同じである。但し、ここではプログラムシーケンサ72はさらに、予め定めた複雑な信号処理についはプログラマブルハードウェアデバイス73に実施させ、通常の信号処理についてはCPU75に実施させるべく、処理内容に対応してデバイスを選択する機能と、プログラマブルハードウェアデバイス73及びCPU75を同時に動作させて並列処理を実行させる制御を行う機能を有する。
特に、信号処理デバイス3の図1(b)に示したモデムユニット3Aの信号処理においては、プログラムシーケンサ72でリソースコントローラ4からのリソースマネージメントプログラムが実行されることによって、信号処理デバイス3の持つべき信号処理機能に応じて、プログラマブルハードウェアデバイス73及びCPU75がそれぞれ行うべき処理の分担が決定される。この決定に従いメモリ71から選択された回路構成記述がプログラマブルハードウェアデバイス73に与えられる。同時に、CPU75にはプログラムシーケンサ72からCPU75に分担させる処理についての実施の指示が与えられる。
プログラムシーケンサ72による上記のような制御によって、CPU75にとっては複雑で負担が重い信号処理は、信号処理専用のプロセッサであるプログラマブルハードウェアデバイス73により行われ、その他の処理はCPU75により行われる。従って、高速処理が可能となり、しかも信号処理デバイス3の持つべき信号処理機能や設計変更に対しても容易に対応でき、また移動無線通信装置の新製品開発に要する時間が短縮される。
(第4の実施形態)
図9に示される信号処理デバイス3は、二つのプログラマブルハードウェアデバイス73A及び73Bを有することが図7に示した構成と異なる。プログラムシーケンサ72には、これらのプログラマブルハードウェアデバイス73A及び73Bに処理を分担させる制御を行う機能が追加されている。このような構成とすることで、信号処理デバイス3の処理機能をより高い自由度で変更でき、またより複雑な信号処理を実行することが可能となる。本実施形態の構成を拡張して、3つ以上のプログラマブルハードウェアデバイスを持ってもよい。
図10には、図9に示した信号処理デバイス3が更に具体的に示される。プログラムメモリ80及びデータメモリ81はメモリ74におけるプログラム領域74A及び74Bに、制御回路92はプログラムシーケンサ72に、回路記述メモリ83は回路構成記述メモリ71に、SPU84はプログラマブルハードウェアデバイス73に、それぞれ対応する。
外部装置、すなわち図1(a)中のリソースコントローラ4またはシステムコントローラ6からの命令やデータは、入力レジスタ群85を介して信号処理デバイス3内に取り込まれ、レジスタ群86に渡されて一時保持され、出力レジスタ群87に送り出されて、SPU84に渡される。
プログラムメモリ81の中に、例えば以下のような処理プログラムが格納されているとする。
a=A+B (i)
b=C×D (ii)
(a,b)=(A,B)*(C,D) (iii)
これらの処理プログラム(i),(ii)及び(iii)は、それぞれ加算、乗算及び複素乗算を表す。(X,Y)のX,Yは、複素数の実部及び虚部の要素をそれぞれ表す。*は複素乗算を表す。
回路構成記述メモリ83内には、それぞれの演算を実現するための回路構成記述が記録されており、制御回路82はプログラムメモリ80に格納されたプログラムの内容に応じて、回路構成記述メモリ83をアクセスすることで、プログラマブルハードウェアデバイスであるSPU84の回路構成記述を書き換える。従って、上述の処理プログラムの例では、SPU84には加算回路、乗算回路及び複素乗算回路が形成される。SPU84が担う信号処理は、加減乗除に限られず、相関演算や、最大値及び最小値判定等、回路構成記述可能であればどのような処理も可能である。非常に複雑な処理であるほど、その処理専用のハードウェア構成に組み替えることによる処理能率が向上するから、一層の高速処理効果が享受される。
(第5の実施形態)
図11に示されるように、本発明の第5の実施形態に従う信号処理デバイス3はハードウェアリソースとして、信号処理機能の再定義が不可能な領域3Aと可能な領域3B及びスイッチユニット(SW)110を有する。再定義不可能領域3Aには、頻繁に用いられるロジック回路、例えばCRC付加(attach)ブロック101、CRCチェックブロック102、ビタビデコーダ103、ターボデコーダ104、相関器105、アキュムレータ106、デモジュレータ107及びデインタリーバ108が実装されている。再定義可能領域3Bは、FPGAの構成要素である複数のPLD109から構成される。スイッチユニット110は、領域3Aと領域3Bとの接続及び領域3B内の各ブロックの接続をリソースコントローラ4からの制御により切り替える。
図12及び図13には、図11に示した信号処理デバイス3のスイッチユニット110の切り替えによって実現される、ある単一の無線通信システムに対応した結線状態を示している。信号処理デバイス3に入力された受信信号は相関器105とデモジュレータ07に入力され、相関器105からの出力信号はアキュムレータ106に入力される。アキュムレータ106からの出力信号はデモジュレータ107に入力される。デモジュレータ107からの出力信号は、デインタリーバ108、ビタビデコーダ103及びCRCチェックブロック102を介して、信号処理デバイス3の出力信号とされる。図13では、図12にさらに、PLD109に機能割り当てされたイコライザ111が追加されている。入力信号はイコライザ111を介してデモジュレータ107に入力される。
図14には、信号処理デバイス3の、二つの無線通信システムA,Bに対応可能とした結線例を示す。デモジュレータ107は、システムA,Bの両方で共通に使用される。システムA,Bのいずれにおいても、デモジュレータ107からの出力信号はデインタリーバ108に入力され、デインタリーバ108からの出力信号はシステムAではビタビデコーダ103に、システムBではターボデコーダ104にそれぞれ入力される。ビタビデコーダ103及びターボデコーダ104からの出力信号は、CRCチェックブロック102を介して、信号処理デバイス3の出力信号とされる。
信号処理デバイス3のリソースサイズ、特に領域3A及び3Bのサイズは移動無線通信装置毎に異なる。幾つかのアプリケーションサービス機能がインストールされた移動無線通信装置では、信号処理デバイス3のリソースに既に多くの信号処理機能が定義されている。信号処理デバイス3の剰余リソース量は、移動無線通信装置の使用状況に応じて時々刻々と変化する。
リソースコントローラ4は、図15に示されるようにリソース管理テーブル130、リソースマネージャ131、信号処理デバイス3のリソースを更新する更新システム132、各種のデータを一時的に格納するためのバッファ133、及び信号処理デバイス3のリソースの使用状況をモニタするためのリソースモニタシステム134を有する。
リソースマネージャ131は、リソースモニタシステム134からのモニタ結果に基づき、リソースの使用状況リストであるリソース管理テーブル130を更新する。リソースマネージャ131は、信号処理デバイス3の再定義可能領域3Bの剰余リソース量を、リソース管理テーブル130を参照することによって、あるいはリソースモニタシステム134からのモニタ結果に基づいて把握する。
リソースマネージャ131は、信号処理デバイス3のリソースに追加定義される新たな信号処理機能を実現するための構成記述情報に基づいて、該機能定義するために再定義可能領域3Bで必要とされるリソース量を把握する。リソースマネージャ131では、この所要リソース量と剰余リソース量に従って、信号処理デバイス3のリソースの再定義可能領域3Bに対する新たな信号処理機能の追加定義が、リソース更新デバイス132を用いて行われる。
本実施形態によれば、移動無線通信装置毎に、所有する信号処理デバイス3のリソースと、リソースの使用状況とが異なる環境にあっても、時々刻々変化するリソースの使用状況に応じて、効率的に新たな信号処理機能を追加することが可能となる。つまり、既に自らが使用しているリソースの状況の情報を用いて、新たな信号処理機能を追加することにより、リソースの最適配分が可能となる。
図16には、本実施形態に従う移動無線通信装置10を端末として含んだ無線通信システムの構成を示す。この無線通信システムでは、基地局に構成記述情報提供装置140が存在する。構成記述情報提供装置140は、移動無線通信装置10内の信号処理デバイス3のリソースに追加定義されるべき信号処理機能の構成を記述した情報(以下、構成記述情報という)を移動無線通信装置10に提供する。
構成記述情報提供装置140は、この例では構成記述情報を無線通信によって移動無線通信装置10に提供するために、アンテナ141、無線送受信デバイス142、及び構成記述情報を保存するためのバッファ143を有する。移動無線通信装置10と構成記述情報提供装置140との間の通信は、有線であってもよい。たとえば、移動無線通信装置10の機能を更新するサービスセンタでは、その機能更新を行う装置として構成記述情報提供装置140を用いればよい。
移動無線通信装置10は、図1に示したようにアンテナ1、無線送受信デバイス2、信号処理デバイス3、リソースコントローラ4記憶装置5、システムコントローラ6及び入出力デバイスユニット7を有する。リソースコントローラ4は、図15に示したようにリソース管理テーブル130、リソースマネージャ131、リソース更新システム132、バッファ133、及び信号処理デバイス3のリソースの使用状況をモニタするためのリソースモニタシステム134を有する。
構成記述情報提供装置140においては、無線通信装置10に新たに追加する信号処理機能に対応した構成記述情報がバッファ143から読み出される。読み出された構成記述情報は、無線送受信デバイス142によって移動無線通信装置10に向けて送信される。移動無線通信装置10に送信されてきた構成記述情報は、無線送受信デバイス2によって受信される。リソースコントローラ4では、受信された構成記述情報に基づいて、信号処理デバイス3が所望の信号処理機能を実現するための所要リソース量が把握される。リソースコントローラ4では、リソースモニタシステム134によってモニタされているリソースの使用状況に基づいて、信号処理デバイス3の使用されていない剰余リソース量が把握される。リソースコントローラ4は、これらの所要リソース量及び剰余リソース量に従って、信号処理デバイス3のリソースに追加定義されるべき信号処理機能に対する、最適なリソース配分を行う。
図17には、本実施形態に従う移動無線通信装置10を含んだ無線通信システムの他の構成を示す。構成記述情報提供装置140は、図16で説明したアンテナ141、無線送受信デバイス142及びバッファ143に加えて、リソースコントローラ144をさらに有する。移動無線通信装置10内の信号処理デバイス3のリソースに新たな信号処理機能が追加定義されるべきときに、リソースモニタシステム134によってモニタされている、信号処理デバイス3のリソースの使用状況を示す情報が無線送受信デバイス2により、アンテナ1を介して構成記述情報提供装置140に送信される。
構成記述情報提供装置140においては、信号処理デバイス3に新たに追加定義すべき信号処理機能を示す構成記述情報がバッファ143から読み出される。該構成記述情報に基づいて、リソースコントローラ144によって、信号処理デバイス3のリソースに新たな信号処理機能を追加定義するための所要リソース量が把握される。さらに、リソースコントローラ144では、リソースモニタシステム134によってモニタされているリソースの使用状況に基づいて、信号処理デバイス3の剰余リソース量が把握される。リソースコントローラ144は、これらの所要リソース量及び剰余リソース量に従って、信号処理デバイス3のリソースに追加定義される信号処理機能に対する、最適なリソース配分を演算によって求め、リソース配分指示情報を出力する。このリソース配分指示情報は、無線送受信デバイス142により、アンテナ141を介して移動無線通信装置10に送信される。
移動無線通信装置10に送信されてきたリソース配分情報は、アンテナ1を介して無線送受信デバイス2により受信され、リソースコントローラ4に渡される。リソースコントローラ4は、リソース配分情報に従って、信号処理デバイス3のリソースに追加定義されるべき信号処理機能に対する、最適なリソース配分を行う。このようにリソース配分のための演算は、構成記述情報提供装置140で実行される。すなわち、移動無線通信装置10内の信号処理デバイス3のリソースに新たな信号処理機能を追加するために必要とされる演算が、移動無線通信装置10の外部で行われる。これによって、移動無線通信装置10のリソースコントローラ4で行われる演算の量が減少するので、移動無線通信装置10の低コスト化に寄与することができる。すなわち、端末の信号処理デバイス3のリソース配分の要する処理が基地局によって補助されることによって、リソース配分に要する端末の処理負荷が軽減される。
図18〜図20を参照して本実施形態の動作について説明する。図18を参照すると、まず移動無線通信装置10は構成記述情報提供装置140から送信されてきた構成記述情報を受信する(ステップS101)。移動無線通信装置10では、受信された構成記述情報を用いてリソースコントローラ4により信号処理デバイス3への信号処理機能の追加定義に要する所要リソース量を求める(ステップS102)。所要リソース量と、移動無線通信装置10の出荷時に信号処理デバイス3が有しているリソース量(初期リソース量)を比較する(ステップS103)。所要リソース量が初期リソースの量よりも大きい場合には、信号処理機能の追加定義が不可能である旨を構成記述情報提供装置140に通知する(ステップS104)。
所要リソース量が初期リソース量より小さい場合には、リソースコントローラ4では、リソースモニタシステム134によって信号処理デバイス3の現在のリソースの使用状況、例えば剰余リソース量を把握する(ステップS105)。剰余ソース量と所要リソース量を比較し、信号処理デバイス3に新たな信号処理機能の追加定義が可能であるかどうかを判断する(ステップS106)。追加定義が可能である場合には、リソース更新システム132によって、新たな信号処理機能を信号処理デバイス3のリソースに定義する(ステップS107)。ステップS107では、必要に応じて、信号処理デバイス3に既に定義されている信号処理機能の該リソースの割り当てを変更する。新たな信号処理機能の追加定義が不可能である場合には、その旨を構成記述情報提供装置140に通知する(ステップS104)。ステップS103の処理は、省略されてもよい。
図19を参照すると、ステップS201からS204までの処理は、図18におけるステップSS101からS104までの処理と同じである。ステップS205では、リソース管理テーブル130を参照してによって信号処理デバイス3の現在のリソースの使用状況、例えば剰余リソース量が把握される。次のステップS206において信号処理デバイス3に新たな信号処理機能の追加定義が可能であるかどうかを判断する。追加定義が可能である場合には、リソース更新システム132によって、新たな信号処理機能を信号処理デバイス3のリソースに定義し(ステップS207)、それに伴ってリソース管理テーブル130を更新する(ステップS208)。
図20によると、ステップS301からS305までと、ステップS307及びS308の処理は、図19におけるステップSS201からS204までと、ステップS206及びS207の処理と同じである。図20では、ステップS305のの処理の後、ステップS307で新たな信号処理機能を信号処理デバイス3のリソースに定義する前に、ステップS306でリソース管理テーブル130の更新が行われる。
前述したように、信号処理デバイス3のリソースサイズは、一般に個々の移動無線通信装置毎に異なる。これに伴い、図11に例示した再定義不可能領域3Aと再定義可能領域3Bの構成及びサイズも、個々の移動無線通信装置毎に異なる。従って、信号処理デバイス3の信号処理機能に対するリソース配分を効率的に行うためには、信号処理デバイス3の持つリソースの詳細、例えば図11におけるCRC付加ブロック101及びCRCチェックブロック102の個数等を把握する必要がある。
図17に示した無線通信システムでは、信号処理デバイス3を有する移動無線通信装置10以外の装置である構成記述情報提供装置140内にリソースコントローラ144が設けられる。このリソースコントローラ144において、信移動無線通信装置10内の号処理デバイス3のリソースに新たな信号処理機能を追加定義するために必要な演算を行う場合には、該リソースコントローラ144が信号処理デバイス3のリソースの詳細を把握できる必要がある。
以下、構成記述情報提供装置140が基地局に設けられ、移動無線通信装置10が端末である図17の無線通信システムを例にとり、移動無線通信装置10内の信号処理デバイス3のリソース(以下、端末リソースという)の詳細を基地局において把握する方法について説明する。
図21に示されるように、通常の基地局におけるレイヤ構成(L1/L2:レイヤ1/レイヤ2)は、データリンクコントロール(DLC)と物理レイヤ(PHY)を有する。DLCはメディアアクセスコントロール(MAC)、エラーコントロールブロック(EC)及びラジオリソースコントローラ(RRC)を有する。基地局では、上位層から送られてくるデータをエラーコントロールブロック(EC)が受け取り、無線送受信デバイスで発生する誤りに対する耐性を持つべく信号処理を行う。エラーコントロールブロック(EC)から出力された信号は、メディアアクセスコントロール(MAC)に送られる。MACから出力された信号は、物理レイヤ(PHY)に送られる。PHYでは、変調のための信号処理が行われ、無線送信に供するためのRF信号が生成される。EC,MAC及びPHYは、ラジオリソースコントローラ(RRC)によって制御される。逆に、基地局が端末からの送信信号を受信する場合には、上述の信号の流れの逆の順で処理が行われる。
図22には、本実施形態に従う無線通信システムの基地局におけるレイヤ構成を示す。図22には、図21に示したL1/L2レイヤ構成に新たに、端末リソースを制御するコントローラが追加されている。具体的には、DLC(Data Link Control)の構成要素として、TRC(Terminal Resource Control)が追加されている。TRCは、独自にRRC(Radio Resource Control)と通信を行い、それによって端末の機体番号もしくは機種情報を取得する。すなわち、TRCは端末と基地局との間の通信をモニタすることによって、端末の機体番号もしくは機種情報を取得する。
機体番号もしくは端末機種情報から、端末の所有しているリソースを把握する方法の1つとして、テーブルを用いる方法が挙げられる。そのようなテーブルの例を図23に示す。テーブルには、端末リソースの詳細を示したリソースリストが参照されている。リソースリストには、図24に例示されるように、機能ブロック名と各機能ブロックの数量が記載され、さらに同時使用が不可であるといったような特記事項が記載される。前述したように、リソースは再定義不可能領域と再定義可能領域とに分かれている。
TRCは、図24に例示したようなリソースリストの情報を用いて、所望の信号処理機能を端末リソースに定義するための所要リソース量を把握し、最適なリソース配分を演算によって求め、リソース配分指示情報を出力する。リソース配分指示情報は、基地局から端末に送信される。図23に示したテーブルは、新しい端末がリリースされる毎に更新される。
図25には、本実施形態に従う基地局(BS)及び端末(MT)のレイヤ構成を示す。基地局BSにTRC、端末MTにリソースコントローラ(RC)がそれぞれ設けられる。TRCは、各端末のリソースリストを有する。端末リソースは、端末毎に異なる。RCは、端末リソースの使用状況を示したリソース管理テーブルを有する。端末リソースの再定義不可能領域と再定義可能領域の割合は、端末毎に異なる。端末リソースの使用状況は、リソースモニタシステムによってモニタされる。
基地局BSに設けられたTRCは、端末MTに設けられたRCとの間で通信を行い、端末リソースの使用状況の情報を端末から取得する。TRCは、端末リソースの使用状況を把握するために、たとえば、図26に示すようなメッセージをRRCに対して送信する。基地局BSのRRCは、このメッセージを受けると、端末MTに設けられたRCに対して、端末リソースの使用状況を基地局に申告するように要求する。端末MTのRCは、この要求を受けると端末リソースの使用状況のテーブルを更新し、基地局BSに対して当該テーブルを送信する。基地局BSのTRCは、端末MTのリソースリストを有しており、このリストによって端末MTが所有しているリソースの種類と数量を把握している。従って、MT端末から基地局BSに送られるリソース使用状況テーブルは、図27に示すように、予め定められた順番に従って、数値のみが記述されたテーブルに簡素化される。該リソースの使用状況テーブルを受信したRRCは、基地局に備えられたTRCに対して図28に示すようなメッセージを送信する。
以上の手順によって、TRCは端末リソースの使用状況を把握することができる。機体番号もしくは端末機種等の情報によって、端末が所有しているリソースを把握し、さらに端末リソースの使用状況を端末から取得する。TRCはさらに、これらの情報を基に、新たに追加する機能のために必要となる最適なリソース配分を演算によって求め、リソース配分指示情報を出力する。このリソース配分指示情報は、基地局から端末に送信される。
信号処理機能の変更が可能な端末では、リソース使用量が逐次変化する。つまり、一旦端末に設定した機能の一部が不要になる場合が起こり得る。そのため、リソース管理テーブルの更新を機能の追加を行う時点において行うことによって、最新の情報に基づいたリソース管理を行うことができる。
端末に信号処理機能の追加が不可能であった旨を通知するには、例えば図16に示した無線通信システムにおいて、移動無線通信装置10から構成記述情報提供装置140へ、機能の追加定義が不可能であった旨を伝達する仕組みを追加すればよい。信号処理機能を追加定義しようとする際に、その信号処理機能全ての追加定義はにはリソースが不足する場合がある。このような場合、端末側で新たな信号処理機能の追加定義が不可能であった旨を基地局が把握することができる。基地局では、この旨を把握すると、端末側で剰余リソース量に応じた最低限の信号処理機能の追加定義を行うことができるように構成記述情報を送信する。このような最低限の追加定義により、無線通信システムとしてのサービス向上が達成される。
(第6の実施形態)
図29には、本発明の第6の実施形態に従う移動無線通信装置が示されている。この移動無線通信装置は、これまでの実施形態と同様に、アンテナ1、無線送受信デバイス2、信号処理デバイス3、リソースコントローラ4及び記憶装置5を有する。図29では、図1中に示したシステムコントローラ6及び入出力デバイスユニット7は省略されている。
信号処理デバイス3は、例えばCPUもしくはDSPのような、ソフトウェア的に信号処理を行うプロセッサ、あるいはPLDのようなプログラマブルハードウェアデバイスによって構成される。信号処理デバイス3がプロセッサの場合を例にとると、該プロセッサは実行プログラムが読み込まれるRAM領域のような記憶領域を有し、該記憶領域に信号処理を行うためのプログラムを構成するモジュール群を読み込むことで信号処理を実行する。ここでいうモジュールとは、コンパイルされた実行形式のファイルであり、各信号処理機能がソフトウェア・モジュール化されている。
記憶装置5には、プログラムやデータファイルが格納されている。特に、プログラムとしては、信号処理デバイス3での仕様が想定されるモジュール群が格納されている。これにより、当該移動無線通信装置が別のモード、例えば、別のチャネルを受信するモード、に切り替わるときに必要となるモジュール群を記憶装置5から読み出して信号処理デバイス3に渡すことができる。
図30には、信号処理デバイス3の記憶領域及び記憶装置5の内容の例を示される。信号処理デバイス3はプロセッサとしてDSP210を有し、記憶領域には、音声送信モジュール211及び音声受信モジュール212が読み込まれている。記憶装置5には、データ送信モジュール221、等化器モジュール222、ビタビデコーダモジュール223及びCRCモジュール224が格納されている。
リソースコントローラ4は、ソース管理テーブル200、リソースマネージャ201、リソース書き換えプロセッサ202及びダウンロードバッファ203を有する。リソース管理テーブル200には、信号処理デバイス3で実行可能なモジュールの保存場所の情報が記憶される。リソースマネージャ201は、(a)リソースを入れ替える順序、(b)入れ替えるかどうかの判断、及び(c)入れ替えるタイミングを制御する。リソース書き換えプロセッサ202は、リソースマネージャ201からの指示により、記憶装置5に格納された信号処理デバイス3のプロセッサに対してモジュールの書き換えを行う。ダウンロードバッファ203は、外部からダウンロードしたモジュールを一時的に格納する。
本実施形態に従う移動無線通信装置の基本的な動作は、これまで説明した実施形態と同様であり、特有の動作は以下の通りである。シャドウイング、すなわち移動無線通信装置が物陰に入る、などにより、移動無線通信装置と図示しない基地局との間の無線伝送路が劣化し、所望の通信品質を満たさなくなったとする。通信品質は、例えば無線送受信デバイス2が有する電界測定機能によって検知される。
所望の通信品質が満たされなくなると、リソースコントローラ4は、通信品質の向上を図るために信号処理デバイス3のリソースに等化器モジュールを新たに組み込む必要があると判断する。この判断に基づき、リソースコントローラ4においては、信号処理デバイス3のリソースに余裕があれば、リソースマネージャ201が等化器モジュールを該リソースに組み込む制御を行う。リソースマネージャ201は、記憶装置5内に等化器モジュールが存在するかどうかをリソース管理テーブル200を参照することで確認する。
図30に示されているように、記憶装置5内に等化器モジュール222があれば、リソースコントローラ4は、それを信号処理デバイス3であるプロセッサの実行ファイルとして信号処理デバイス3に読み込む。記憶装置5内に等化器モジュールがなければ、リソースコントローラ4は、ダウンロード要求を出して該モジュールを取得し、ダウンロードバッファ203に格納する。
移動無線通信装置内の信号処理デバイス3で必要なモジュールが記憶装置5に格納されていない場合に、ダウンロード要求はたとえば移動無線通信装置が現在位置しているエリアをサービスエリアとして持つ基地局に対して出される。基地局は、受け取ったダウンロード要求を図示しないネットワークへ転送する。ネットワークは、ダウンロード要求を出した移動無線通信装置に、要求されたモジュールを基地局を介して送信する。
このように信号処理デバイス3であるプロセッサの記憶領域で保持されるプログラムの入れ替えを行うことにより、必要な信号処理機能が信号処理デバイス3に定義される。プログラムとしては、必要なモジュールが必要なときにだけ取り込まれる。これにより、通常は不要であるモジュールがプロセッサの記憶領域に常駐することによるリソースの無駄遣い、すなわちメモリリソースの無用な占有を抑えることができる。従って、容量に制限のあるリソースの有効活用を図りつつ、異なる無線通信システム間のローミングやハンドオフに対応することができる。
次に、本実施形態に従う移動無線通信装置のより具体的な動作例について説明する。まず、移動無線通信装置を音声通話に使用していた状態から、Webのブラウジングのようなデータ通信に用いる状態に切り替えるというように、通信の種別を切り替える場合について述べる。
通信の種別を例えば音声通話からデータ通信に切り替えようとする場合、音声通話用のモジュール、例えば音声CODECモジュールは不要になり、それに代わって新たにTCP/IPを実装したモジュールが必要となる。リソースマネージャ201は、記憶装置5内にTCP/IPモジュールが存在するかどうかをリソース管理テーブル200を参照して確認する。記憶装置5内にTCP/IPモジュールあれば、それを信号処理デバイス3であるプロセッサの実行ファイルとしてプロセッサの記憶領域に読み込む。不要となった音声CODECモジュールのような音声通話用モジュールは、該プロセッサの記憶領域からクリアされる。
リソースマネージャ201は、記憶装置5内にTCP/IPモジュールなければ前述したようなダウンロードによって取得する。取得されたTCP/IPモジュールは記憶装置5に保存された後、リソース管理テーブル200に書き込まれる。リソースマネージャ201は、再び記憶装置5ににTCP/IPモジュールが存在するかどうかをリソース管理テーブル200により確認する。記憶装置5内にTCP/IPモジュールが存在すれば、それをプロセッサの記憶領域に実行ファイルとして読み込む。これにより、以後データ通信が可能になる。
この動作を図31及び図32により説明する。図31に示されるように、信号処理デバイス3の記憶領域には、図30と同様に音声送信モジュール211及び音声受信モジュール212が読み込まれている。記憶装置5には、データ送信モジュール221、データ受信モジュール225、音声送信モジュール226及び音声受信モジュール227が格納されている。
最初のステップS401では、DSP210が音声送信モジュール211及び音声受信モジュール212を使用して、音声通話のための信号処理を行っている。この状態で、次に移動無線通信装置のユーザが図1に示した入出力デバイスユニット7を操作してデータ通信移行の指示を行ったとする。リソースコントローラ4は、この指示を受けてリソース更新要求を出す(ステップS402)。これにより、リソースコントローラ4のリソースマネージャ201はリソース管理テーブル200を参照して、記憶装置5内にデータ通信モジュールが有るか否かをチェックする(ステップS403)。記憶装置5内にデータ通信モジュールが無い場合には、ダウンロード要求を出し、ある場合にはDSP210に対して書き換え開始の通知を行う(ステップS404)。これにより、DSP210ではその記憶領域に現在あるモジュールの実行を中止する。
次に、リソースコントローラ4は書き換えプロセッサ202を用いてDSP210の記憶領域に現在ある音声送信モジュール及び音声受信モジュールを削除し、記憶装置5からデータ送信モジュール及びデータ受信モジュールを読み込んで、DSP210の記憶領域に書き込ませる(ステップS405)。書き換えプロセッサ202による書き換え処理が終了したならば、リソースコントローラ4はDSP210に書き換え終了通知を行う(ステップS406)。書き換え終了通知を受けて、DSP210はその記憶領域にあるデータ送信モジュールとデータ受信モジュールを実行し、データ通信のための信号処理を行う(ステップS407)。
このようにして、リソースコントローラ4の管理のもとにDSP210の記憶領域(DSP210の持つメモリリソース)におけるモジュールを入れ替える。これにより、DSP210の信号処理機能を音声通話の機能からデータ通信の機能に変更し、DSP210の持つ限られた容量の記憶領域を有益に利用して信号処理機能の入れ替えを実現できる。従って、不要なモジュールによるメモリリソースの占有が抑えられる。
図33の例によると、信号処理デバイス3にはDSPに代えて、プログラマブルに書き換えがプログラマブルハードウェアデバイス、例えばPLD230が用いられる。PLD230は、モジュール群231(例えば、モジュールA,B,C,D)によって動作しており、記憶装置5にはPLD231での使用が想定されているモジュール群240(例えば、モジュールA,B,C,D,E,F,…)が格納されている。ここで言うモジュールは、回路構成プログラム(回路構成記述)のモジュールであって、例えばPLDの配置配線図のようなものである。
図34を用いて動作を説明すると、まずPLD230は音声通話のための信号処理を行う回路構成を構築するためのモジュールA,B,C,Dを使用して信号処理を行っている(ステップS501)。この状態で、ユーザがデータ通信を行いたいとして、図1中に示した入出力デバイスユニット7を操作してデータ通信移行の指示を行ったとする。リソースコントローラ4は、この指示を受けてリソース更新要求を出す(ステップS502)。モジュールB,C,Dは、音声通話及びデータ通信のいずれにおいても必要な信号処理に関する回路構成を構築するためのモジュールであると仮定する。
データ通信では、モジュールB,C,D,Eが必要であることが予め記憶されているので、リソースコントローラ4はPLD230における現在のモジュール構成を調べることによって、モジュールAをモジュールEに入れ替える必要があることを知る。リソースコントローラ4のリソースマネージャ201はリソース管理テーブル200を参照して(ステップS503)、記憶装置5にデータ通信用の信号処理を行う回路構成を構築するためのモジュールEが有るか否かをチェックする(ステップS504)。
モジュールEが記憶装置5内にある場合、リソースマネージャ201は書き換えプロセッサ202に対し、PLD230に保持されているモジュール群231中のモジュールAをモジュールEに書き換える指示を与える。この書き換え指示を受けて、書き換えプロセッサ202はモジュールの書き換え開始通知をPLD230に対して行う(ステップS505)。これにより、PLD230は現在保持しているモジュールによる回路構成での処理実行を中止する。次に、書き換えプロセッサ202はPLD230が保持しているモジュールAを破棄し、代わりにモジュールEを記憶装置5から読み出してモジュールAと置き換える(ステップS506)。
このようにして書き換えプロセッサ202によるPLD230のモジュール書き換え処理が終了したならば、リソースコントローラ4はPLD230に書き換え終了通知を行う(ステップS507)。この書き換え終了通知を受けてPLD230は新たに保持しているモジュール群231(モジュールB,C,D,E)を用いて回路構成の構築を行い、その回路構成を使用してデータ通信の信号処理を行う(ステップS508)。
一方、ステップS504において記憶装置5にモジュールEが無い場合には、リソースコントローラ4はダウンロード要求を出す(ステップS509)。この要求によってモジュールEがダウンロードされ、ダウンロードバッファ203に一時的に保持される。この後、ステップS505でPLD230に対して書き換え開始の通知を行う(ステップS505)。これにより、ステップS506ではダウンロードバッファ203に保持されたモジュールEが書き換えプロセッサ202により読み込まれて、PLD230に書き込まれる。
このようにダウンロードしながら、或いはダウンロードが終わると直ちにPLD230にダウンロードしたモジュールEを書き込むことができ、音声通話からデータ通信に短時間で移行することが可能となる。ダウンロードで取得されたモジュールは、ダウンロードバッファ203に一時的に格納されるばかりでなく、必要に応じて記憶装置5に保存され、以後の利用に供される。
(第7の実施形態)
第6の実施形態では、信号処理デバイス3の信号処理機能の切り替えに当たって、必要な複数のモジュールのうち、新たな信号処理機能を実現するにモジュールを不要のモジュールと入れ替えている。用途別に必要なモジュールをセットにしたモジュール群をそれぞれ用意し、信号処理機能の切り替えを行うときに、モジュール群単位で入れ替えてもよい。これにより信号処理デバイス3の信号処理機能の切換を高速で行うことが可能となる。
図35には、このようなモジュール群単位の入れ替えを行う第7の実施形態に従う移動無線通信装置を示す。この移動無線通信装置は、異なる複数の無線通信システムに適応可能である。従って、記憶装置5には異なる無線通信システムでの通信用の信号処理を行うためのモジュール群241,242が格納されている。これらのモジュール群241,242は、記憶装置5を交換することで更新することができる。信号処理デバイス3のDSP210は、モジュール群213を読み込んで動作している。
今、移動無線通信装置が現在無線通信システムXにより基地局と通信を行っていると仮定し、この状態で例えばハンドオーバを行うために無線通信システムYにより基地局と通信を行う必要が生じたとする。この場合、リソースマネージャ201は、移動無線通信装置が無線通信システムYとの通信を行う必要が発生したことを判断して、リソースを入れ替える順序、入れ替えるかどうかの判断、入れ替えるタイミングなどを制御する。リソースマネージャ202は、システムXで使用してないモジュールを開放し、システムY用のモジュールを組み込むという指示を書き換えプロセッサ202に出す。書き換えプロセッサ202は、この指示を受けて記憶装置5からDSP210に対してモジュールの書き換え処理を行う。
ここで、無線通信システムXは現在も使用中であるから、DSP210の記憶領域に書き込んであるシステムX用のモジュール群のうち、使用するものは残す必要がある。そこで、使用されていないモジュールを調べ、そのモジュールをDSP210の記憶領域から開放して、それにより生じた余剰リソースとしての記憶領域に、システムY用のモジュールを組み込む。これにより、移動無線通信装置は無線通信システムX及びYの両方で通信を行うことが可能となる。
図36を用いて、DSP210がシステムXの下で通信を行うためのモジュールX1,X2,X3,X4を使用して信号処理を行っている状態から、システムYの下で通信を行うべくモジュールX1を開放してモジュールY1を読み込む場合の動作について説明する。
まず、ステップS601においてDSP210の記憶領域にはシステムXの下で通信を行うためのモジュールX1,X2,X3,X4が書き込まれており、DSP210はモジュールX1,X2,X3,X4を使用して信号処理を行っている。この状態で、例えばハンドオーバが生じると、リソースコントローラ4はモジュール更新要求を発生する(ステップS602)。リソースマネージャ201は、該モジュール更新要求を受けてリソース管理テーブル200を参照して記憶装置5に通信システムY用のモジュール群が有るか否かのチェックと、通信システムX用のモジュール群の構成をチェックする(ステップS603)。
リソースマネージャ201は、無線通信システムYでの通信に必要なモジュールの判断と、無線通信システムX用のモジュール群のうちのどれを入れ替えるかの判断、及びリソースを入れ替える順序の判断を行う。この結果として、リソースマネージャ201は、モジュールX1は不要、モジュールY1は必要であって、X1を削除後Y1を書き込むべきであると判断する。さらに、リソースマネージャ201は書き換えプロセッサ202に対し、DSP210に保持されているモジュール群213中のモジュールX1をモジュールY1に書き換える旨の指示を与える。書き換えプロセッサ202は、この指示を受けてモジュールの書き換え開始通知をDSP210に対して行う(ステップS604)。これにより、DSP210は現在保持しているモジュールによる処理実行を中止する。
次に、書き換えプロセッサ202は、DSP210に保持されているモジュール群213のうちのモジュールX1を破棄し、代わりにモジュールY1を記憶装置5から読み出してモジュールX1と置き換える(ステップS605)。この書き換え処理が終了したならば、リソースコントローラ4はDSP210に書き換え終了通知を行う(ステップS606)。DSP210は、この通知を受けて、保持しているモジュール群213(モジュールX2,X3,X4,Y1)を用いてデータ通信のための信号処理を行う(ステップS607)。
このようにして、リソースコントローラ4の管理のもとにDSP210内のモジュールを入れ替えることで、DSP210のモジュール記憶領域(容量有限のメモリリソース)を有効に活用して、今まで通信システムXの下でのみ行っていた通信を通信システムX及びYで行うことが可能となる。これによりハンドオーバを容易に実現できる。
図37を用いて、本実施形態における別の動作例を説明する。移動無線通信装置が無線通信システムUの下で通信を行っていると仮定する。移動無線通信装置がセル(すなわちサービスエリア)の境界で別の無線通信システムVの下で通信を行うべくハンドオーバを行う場合、無線通信システムUで使用されている信号処理デバイスであるDSP210のリソースが徐々に無線通信システムVで使用されるように、モジュールを部分的に入れ替えてゆく。こうすることで、異なる無線通信システム間でのソフトハンドオーバが可能になる。
具体的には、DSP210に読み込まれているモジュールが、システムUで占有されている状態から徐々にシステムVで占有されるようにされる。システムV用のモジュールに関しては、予め記憶装置5に格納されていればそれが利用され、なければダウンロードにより取得される。
図37においては、無線通信システムUの下で通信を行っている状態(ステップS701で、ハンドオフが生じてモジュール更新要求が発生したとする(ステップS702)。ステップS701では、DSP210はその記憶領域にモジュール群213としてモジュールU1,U2,U3,U4が書き込まれており、これらのモジュールを使用して信号処理を行っているとする。
リソースマネージャ201は、DSP210で実行可能なモジュールの保存場所等を記憶したリソース管理テーブル200を参照して、リソースを入れ替える順序、入れ替えるかどうかの判断、入れ替えるタイミングなどを判断し、その判断に基づき書き換えプロセッサ202及びDSP210に対して書き換え開始を通知する(ステップS703−S704)。これによりDSP210では、現在保持しているモジュール群213での処理実行を中止する。この時点で、DSP210に既に書き込まれているモジュール群213は、ステップS705に示されるように、全てシステムUの下での通信用の信号処理を行うためのモジュールU1,U2,U3,U4であり、システムVでの通信用の信号処理を行う為のモジュールは含まれていない。
そこで、書き換えプロセッサ202はリソースマネージャ202による制御の下で、DSP210に書き込まれているモジュール群213を徐々に書き換えるべく、まずモジュールU1の記憶領域を開放する。次に、書き換えプロセッサ202は、開放された領域に記憶装置5から読み出したモジュールV1を書き込む(ステップS706)。次に、書き換えプロセッサ202はモジュールU2の記憶領域を開放し、開放された領域に記憶装置5から読み出したモジュールV2を書き込む(ステップS707)。以下同様に、次に書き換えプロセッサ202はモジュールU3の記憶領域を開放し、開放された領域に記憶装置5から読み出したモジュールV3を書き込む(ステップS708)。次に、書き換えプロセッサ202はモジュールU4の記憶領域を開放し、開放された領域に記憶装置5から読み出したモジュールV4を書き込む(ステップS709)。
このようにリソースマネージャ201による制御の下で、書き換えプロセッサ202によりDSP210の記憶領域に対するモジュールの書き換えを徐々に行う。必要な全てが書き換えられたならば、リソースマネージャ201はDSP210に書き換え終了通知を行う(ステップS710)。この通知を受けたDSP210は、現在保持するモジュール群213(モジュールV1,V2,V3,V4)を用いてデータ通信の処理を行う(ステップS711)。
このようにして、リソースコントローラ4の管理のもとにDSP210内のモジュール群213を、要求される信号処理機能に対応して徐々に入れ替える。これにより、DSP210のモジュール格納領域(容量有限のメモリリソース)を有効に活用しつつ、つまり不要なモジュールによるリソースの占有を抑えつつ、異なる無線通信システム間でのソフトハンドオーバを可能にする。
(第8の実施形態)
図38に示されるように、本発明の第7の実施形態に従う移動無線通信装置ではプログラマブルハードウェアデバイス、例えばPLD230、を用いた信号処理デバイス3に、共通ハードウェアリソース232が用意される。共通ハードウェアデバイス232は、PLD230とは別のハードウェアであってもよいし、PLD230の一部、例えば図11中に示した再定義不可能領域3Aであってもよい。
移動無線通信装置が、ある無線通信システムの下で通信を行っている状態で、別の無線通信システムをモニタリングする必要が生じる場合がある。このような場合、本実施形態ではPLD230に読み込まれているモジュール群231の一部を開放し、新たにモニタリングする無線通信システム用のモジュールの一部を組み込む。この開放、組み込みの手順は、第7の実施形態で説明した手順と同様でよい。
共通ハードウェアデバイス232は、複数の無線通信システムに共通に使用されるデバイスである。従って、該デバイス232は、移動無線通信装置が通信に使用している無線通信システムと、モニタリングしようとする別の無線通信システムの下で、共通に用いられる。共通ハードウェアデバイス232を用いることにより、PLD230のリソースの処理負担が軽減される。
このように信号処理デバイス3に、PLD230のようなプログラマブルハードウェアデバイスを用いる構成においても、無線通信システムをモニタリングする場合に、PLD230の回路構成を変更するための回路構成記述であるモジュールを必要に応じてPLD230の記憶領域に取り込み、あるいは入れ替えることで、不要なモジュールによるPLD230のリソースの占有を抑え、リソースの有効活用ができる。
(第9の実施形態)
図39に示される本発明の第9の実施形態に従う移動無線通信装置では、信号処理デバイス3に、複数の無線通信システムに共通の実行ファイル214が格納されている。第8の実施形態で述べたと同様に、移動無線通信装置が、ある無線通信システムの下で通信を行っている状態で、別の無線通信システムをモニタリングする場合を考える。このような場合、第7の実施形態で説明した手順と同様に、DSP210に読み込まれているモジュール群213の一部を開放し、新たにモニタリングする無線通信システム用のモジュールの一部を組み込む。
固定の共通実行ファイル214は、各無線通信システムに共通に利用される。従って、該実行ファイル214は、移動無線通信装置が通信に使用している無線通信システムと、モニタリングしようとする別の無線通信システムの下で、共通に用いられる。共通実行ファイル214を用いることにより、DSP210のリソースの処理負担が軽減される。
(第10の実施形態)
図40(a)に示される本発明の第10の実施形態に従う移動無線通信装置によると、リソースコントローラ4は、モジュール管理テーブル300、モジュールマネージャ301、モジュール書き換えプロセッサ302及びダウンロードバッファ303を有する。信号処理デバイス3は、この例ではDSP310及び、DSP310の信号処理手順を示すプログラム(以下、処理モジュールという)が格納されたプログラムメモリ311を有する。信号処理デバイス3はDSPに代えて、PLA、FPGAのようなプログラマブルハードウェアデバイスによって実現されてもよく、その場合にはプログラムメモリにはプログラマブルハードウェアデバイスの回路構成を記述したソフトウェア・モジュールが処理モジュールとして格納される。
モジュール管理テーブル300は、移動無線通信装置で使用される処理モジュールの保存状態や、信号処理デバイス3のリソースへの処理モジュールの割り当て状態、処理モジュールの使用履歴がリソースコントローラ4自身により記録され、更新され、利用される。モジュール管理テーブル300は、図40(b)に示されるように少なくともモジュール保存状態テーブル3001、モジュール割当状態テーブル3002及びモジュール使用履歴テーブル3003を有する。
処理モジュールの保存状態は、モジュール保存状態テーブル3001によって管理される。処理モジュールのリソースへの割り当て状態は、モジュール割当状態テーブル3002により管理される。モジュールのリソースへの割り当て状態情報及び保存状態情報を含む処理モジュールの使用履歴の情報は、モジュール使用履歴テーブル3003によって管理される。モジュールマネージャ301は、処理モジュールの使用履歴の情報をモジュール管理テーブル300に記録し、該モジュール管理テーブル300を利用して処理モジュールの保存、削除及び更新を行う。
ダウンロードバッファ303は、無線回線から処理モジュールをダウンロードしたときにそのダウンロードした処理モジュールを一時的に保存するために利用されるバッファ領域である。モジュール書き換えプロセッサ302は、モジュールマネージャ301からの指示により、記憶装置5から信号処理デバイス3への処理モジュールの割り当てや、処理モジュールの書き換え開始・終了の通知を行う。モジュール書き換えプロセッサ302により処理モジュールが割り当てられた信号処理デバイス3は、割り当てられた処理モジュールを記憶装置5から取り込み、その処理モジュールに記述された信号処理手順を実行する。
図40(a)では、入出力デバイスユニット7の構成要素として、ディスプレイデバイス321及び入力デバイス322が示されている。さらに、インタフェース8及び該インタフェース8を介して移動無線通信装置と接続可能な外部記憶装置9が必要に応じて用意される。
次に、本実施形態に従う移動無線通信装置の動作について説明する。信号処理デバイス3は、図40(a)中に示したようにDSP310及びプログラムメモリ311を有するとする。今、移動無線通信装置のユーザが位置する地点において、2種の無線通信システム(システムA及びシステムBとする)がそれぞれサービスを提供していて、それらの無線通信システムが移動無線通信装置によって利用可能な状況下にあったとする。
移動無線通信装置では、ユーザが所望の無線通信システム、例えばAシステムを利用する指定を入力装置321のキー操作により行ったとする。この操作により発生されたAシステム利用指定情報は、リソースコントローラ4に取り込まれる。リソースコントローラ4は、モジュール管理テーブル300を参照し、指定されたAシステムの下で必要とされる処理モジュールの保存状態及び、信号処理デバイス3のリソースへの割り当て状態を認識する。この結果、必要な処理モジュールが不足していれば、その不足している処理モジュールのダウンロード要求を発生する。
リソースコントローラ4で発生された該ダウンロード要求は、無線送受信デバイス2から、例えば各無線通信システムに共通のチャネルとして用意されている制御用チャネルを介して基地局に送信される。基地局では、受信されたダウンロード要求で示される処理モジュールを基地局内のサーバもしくは基地局が接続されるネットワーク上に設けられたサーバから読み出し、要求元の移動無線通信装置に送信する。
基地局から移動無線通信装置に送信された処理モジュールは、無線送受信デバイス2によって受信され、リソースコントローラ4に渡される。こうして受信された、つまりダウンロードされた処理モジュールは、リソースコントローラ4によってダウンロードバッファ303に一旦保持された後、記憶装置5に転送され保存される。
次に、リソースコントローラ4においてモジュールマネージャ301からモジュール書き換えプロセッサ302に対し、処理モジュール割り当て要求が出される。モジュール書き換えプロセッサ302は、この処理モジュール割り当て要求に従って記憶装置5から必要な処理モジュールを読み出し、信号処理デバイス3のプログラムメモリ311に書きこむ制御を行う。信号処理デバイス3では、プログラムメモリ311に書き込まれた処理モジュールをDSP310が実行することで、その処理モジュールにより定まる信号処理を実現する。従って、当該移動無線通信装置のユーザはプログラムメモリ311に書き込まれた処理モジュールによる新たな機能を利用できる。
モジュールマネージャ301は、記憶装置5から必要な処理モジュールを読み出してプログラムメモリ311に書き込む制御を行うに当たって、以下のようにしてプログラムメモリ311の有限なメモリ容量を有効に活用する。モジュール管理テーブル300に記録されているモジュール使用履歴テーブル3003の内容を参照して、プログラムメモリ311に対する処理モジュールの入れ替え順序、入れ替えるかどうかの判断、入れ替えタイミングなどを制御する。
モジュールマネージャ301は、さらに記憶装置5に保持されている各種の処理モジュールのうちの不要処理モジュールの削除、保持している処理モジュールのバージョンアップなどを行うための制御を行う。この制御の結果、プログラムメモリ311において信号処理デバイス3での次の処理に必要な処理モジュールが不足している場合には、モジュールマネージャ301は処理モジュール割り当て要求を発生する。
処理モジュール割り当て要求は、モジュール書き換えプロセッサ302に与えられ、該プロセッサ302によって、必要な処理モジュールがプログラムメモリ311に書き込まれる。信号処理デバイス3では、こうしてプログラムメモリ311に書き込まれた処理モジュールをDSP310で実行する。これによりプログラムメモリ311書き込まれた処理モジュールにより実現される機能が移動無線通信装置で実現される。すなわち、当該移動無線通信装置にはプログラムメモリ311に新たに書き込まれた処理モジュールによる新たな機能が追加される。
信号処理デバイス3のプログラムメモリ311には、複数の処理モジュールを書き込むことができる。信号処理デバイス3では、プログラムメモリ311に複数の処理モジュールを併存させた状態で、DSP310により任意の処理モジュールを実行する。プログラムメモリ311の容量及び記憶装置5の容量は、いずれも有限である。信号処理デバイス3における処理モジュールを入れ替える順序、入れ替えるかどうかの判断、入れ替えるタイミングはモジュールマネージャ301によって制御されているので、プログラムメモリ311の容量が不足する事態は抑制できる。
移動無線通信装置が新たな処理モジュールをダウンロードする毎に、その処理モジュールを記憶装置5に保存すると、記憶装置5の空き記憶領域がやがて不足する可能性がある。空き記憶領域が記憶装置5になくなると、記憶装置5に保存されている他の処理モジュールを削除して空き記憶領域を確保する必要がある。その場合、移動無線通信装置にとって必要でない処理モジュール、つまり、次回に移動無線通信装置で使用する確率が低い処理モジュールから削除されることが望ましい。このために、過去に使用された処理モジュールの使用頻度がモジュールマネージャ301により常に監視され、モジュール管理テーブル300のモジュール使用履歴テーブル3003に監視結果が記録される。モジュールマネージャ301によって、モジュール使用履歴テーブル3003上で使用頻度が最も少ない処理モジュールが削除される。これにより記憶装置5の空き記憶領域が確保され、ダウンロードされた新たな処理モジュールを記憶装置5に保存される。
図41(a)には、モジュール管理テーブル300におけるモジュール使用履歴テーブル3003に記述された項目の一覧が示される。モジュール使用履歴の項目は、モジュール名,モジュールサイズ,使用頻度,保存状態,及び割り当て状態,がある。モジュール名は、処理モジュールの名称である。モジュールサイズは、処理モジュールを保存するに必要な、記憶装置5の容量である。使用頻度は、処理モジュールを移動無線通信装置で使用した回数である。保存状態は、その処理モジュールが記憶領域に保存されている状態を示す情報であり、具体的には、該処理モジュールが保存されているならばプログラムメモリ311のアドレスであり、保存されていないならばNOである。割り当て状態は、処理モジュールがプログラムメモリ311に割り当てられているか否かを示す情報であり、割り当てられていればON、割り当てられていなければOFFとされる。
リソース割り当て状態がOFFの処理モジュールは、記憶装置5には保存されているが、プログラムメモリ311には割り当てられていない。削除されるべき処理モジュールは、リソース割当状態がOFFの処理モジュールから選択される。全ての処理モジュールがプログラムメモリ311に割り当てられている場合は、削除されるべき処理モジュールは、プログラムメモリ311への割り当てが開放されてから削除される。
図41(b)には、モジュール使用履歴テーブル3003の具体的な内容例が示されている。この例ではモジュール名としてQPSK変調、相関器、畳み込み符号化、PN符号化、ウォルシュ符号化がある。モジュールサイズはそれぞれ10200Byte,15300Byte,12900Byte,25000Byte,18000Byteであり、使用頻度はそれぞれ320回,230回,202回,23回,98回であり、保存場所はそれぞれ0x100番地,0x400番地,0x5000番地,0x3000番地,NO(ただし、0xは16進表記を示す)であり、割り当て状態はそれぞれON,ON,OFF,OFF,OFFであることが示されている。
図42を参照して、図41(b)に示されるモジュール使用履歴テーブル3003に記録された使用頻度情報を利用して、記憶装置5内の不要な処理モジュールを削除する処理手順を説明する。この処理手順は、モジュールマネージャ301により実行される。モジュールの削除が開始すると(ステップS701)、モジュール使用履歴テーブル3003に記録されている項目のうち、使用頻度を参照する(ステップS702)。この参照により割り当て状態がOFFの処理モジュールの中で、使用頻度が最も少ない処理モジュールを探し、その処理モジュールを記憶装置5より削除する指示をリソースコントローラ4に与える。リソースコントローラ4は削除が指示された処理モジュールを記憶装置5内から削除する(ステップS703)。モジュールマネージャ301は、削除された処理モジュールの履歴情報をモジュール使用履歴テーブル3003から削除する(ステップS704)。ステップS702〜S704の操作は、ステップS705で必要な空き容量が確保されたと判断されるまで繰り返される。
例えば、図41(b)に示したモジュール使用履歴テーブル300の内容例に従うと、割当状態がOFFの処理モジュールである畳み込み符号化とPN符号化及びウォルッシュ符号化のうち、ウォルッシュ符号化の使用頻度が最も少ない。従って、このウォルッシュ符号化の処理モジュールが削除される。ウォルッシュ符号の処理モジュールの履歴情報は、モジュール使用履歴テーブル3003から削除される。こうして記憶装置5に必要な容量が確保されると、処理モジュールの削除が終了する(ステップS706)。この結果、図41(b)に示された、モジュール使用履歴テーブル3003の内容は、図41(c)に示されるように更新される。
このような手順で、モジュールマネージャ301により処理モジュールを削除していくことで、使用頻度が高い処理モジュール、すなわち次に使用される可能性が高い処理モジュールが記憶装置5に保存される。従って、使用される可能性が高い処理モジュールについては、ダウンロード処理がむやみに行われなくなるので、移動無線通信装置の処理負荷が軽減される。
次に、図43(a)〜43(c)に示されるモジュール使用履歴テーブルを用いた場合について説明する。図43(a)に、モジュール使用履歴テーブル3003に記述された項目の一覧が示されるように、モジュール使用履歴の項目は、使用頻度が最新使用日時に置き換えられいている以外は図41(a)と同様である。最新使用日時は、具体的には記憶装置5から読み出した処理モジュールをプログラムメモリ311に書き込んだ最新のタイムスタンプである。図43(b)に示されるように、モジュール使用履歴テーブル3003の内容例は、使用更新日として2005/04/14,2005/12/21,2003/05/04,2005/02/03,2005/08/14,が記入されている以外は図41(a)と同様である。
図44を参照して、図43(b)に示されるモジュール使用履歴テーブル3003に記録された最新使用日時の情報を利用して、記憶装置5内の不要な処理モジュールを削除する処理手順について説明する。この処理手順は、モジュールマネージャ301により実行される。モジュールの削除が開始すると(ステップS801)、モジュール使用履歴テーブル3003に記録されている項目のうち、最新使用日時を参照する(ステップS802)。この参照により割り当て状態が“OFF”の処理モジュールの中で、最新使用日時がもっとも古い処理モジュールを探し、その処理モジュールを記憶装置5より削除する指示をリソースコントローラ4に与える。リソースコントローラ4は削除が指示された処理モジュールを記憶装置5内から削除する(ステップS803)。モジュールマネージャ301は、削除された処理モジュールの履歴情報をモジュール使用履歴テーブル3003から削除する(ステップS804)。ステップS802〜S804の操作は、ステップS805で記憶装置5内に必要な空き容量が確保されたと判断されるまで繰り返される。
例えば、図43(b)に示したモジュール使用履歴テーブル300の内容例に従うと、割当状態がOFFの処理モジュールである畳み込み符号化とPN符号化及びウォルッシュ符号化のうち、畳み込み符号化の最新使用日時が最も古い。従って、この畳み込み符号化の処理モジュールが記憶装置5内から削除され、また畳み込み符号化の処理モジュールの履歴情報がモジュール使用履歴テーブル3003から削除される。こうして記憶装置5に必要な容量が確保されると、処理モジュールの削除が終了する(ステップS806)。この結果、図43(b)に示された、モジュール使用履歴テーブル3003の内容は、図43(c)に示されるように更新される。
このような手順で、モジュールマネージャ301により処理モジュールを削除していくことで、最新使用日時が新しい処理モジュール、すなわち次に使用される可能性が高い処理モジュールが記憶装置5に保存される。従って、使用される可能性が高い処理モジュールについては、ダウンロード処理がむやみに行われなくなるので、移動無線通信装置の処理負荷が軽減される。さらに、頻繁に利用実態が変わるようなユーザによって移動無線通信装置が使用される場合、その利用実態に即した無駄のない処理モジュールの追加及び削除が可能となる。
次に、図45(a)〜45(c)に示されるモジュール使用履歴テーブルを用いた場合について説明する。図45(a)に、モジュール使用履歴テーブル3003に記述された項目の一覧が示されるように、モジュール使用履歴の項目は、使用頻度または最新使用日時が削除されている以外は図41(a)及び図43(a)と同様である。
図46を参照して、図44(b)に示されるモジュール使用履歴テーブル3003に記録されたモジュールサイズの情報を利用して、記憶装置5内の不要な処理モジュールを削除する処理手順について説明する。この処理手順は、モジュールマネージャ301によって実行される。モジュールの削除が開始すると(ステップS901)、モジュール使用履歴テーブル3003に記録されている項目のうち、モジュールサイズを参照する(ステップS902)。この参照により割り当て状態が“OFF”の処理モジュールの中で、モジュールサイズが最も大きい処理モジュールを探し、その処理モジュールを記憶装置5より削除する指示をリソースコントローラ4に与える。
リソースコントローラ4は削除が指示された処理モジュールを記憶装置5内から削除する(ステップS903)。モジュールマネージャ301は、削除された処理モジュールの履歴情報をモジュール使用履歴テーブル3003から削除する(ステップS904)。ステップS902〜S904の操作は、ステップS905で必要な空き容量が確保されたと判断されるまで繰り返される。
例えば、図45(b)に示したモジュール使用履歴テーブル300の内容例に従うと、割当状態がOFFの処理モジュールである畳み込み符号化とPN符号化及びウォルッシュ符号化のうち、ウォルシュ符号化のモジュールサイズが最も大きい。従って、このウォルシュ符号化の処理モジュールが記憶装置5内から削除され、またウォルシュ符号化の処理モジュールの履歴情報がモジュール使用履歴テーブル3003から削除される。こうして記憶装置5に必要な容量が確保されると、処理モジュールの削除が終了する(ステップS906)。この結果、図45(b)に示された、モジュール使用履歴テーブル3003の内容は、図45(c)に示されるように更新される。
このような手順で、モジュールマネージャ301により処理モジュールを削除していくことで、割り当て状態がOFFで、かつモジュールサイズが大きい処理モジュールが記憶装置5から順に削除される。従って、記憶装置5上では必要な空き記憶領域が確保される。最もサイズの大きな処理モジュールが削除されることにより、記憶装置5上では必要な記憶領域のサイズ以上の領域が1回の削除操作で確保される可能性が高くなる。これにより処理モジュールの削除操作は最小限の回数で済み、削除に必要な処理負荷が軽減される。
次に、モジュール使用履歴テーブル3003に、移動無線通信装置が使用する処理モジュールのバージョン情報を調べて保存しておく機能を付加した構成とした例について説明する。
図47(a)に、モジュール使用履歴テーブル3003に記述された項目の一覧が示されるように、モジュール使用履歴の項目に、使用頻度または最新使用日時に代えてバージョンを有すること以外は、図41(a)及び図43(a)と同様である。バージョンは処理モジュールの改訂情報である。例えば図47(b)に示されるように、QPSK変調、相関器、畳み込み符号化、PN符号化及びウォルシュ符号化のバージョンは、2.1,1.3,3.1,2.3及び1.8であるとする。
図48を参照して、図47(b)に示されるバージョンの情報を利用して、記憶装置5内のモジュールをより新しいバージョンに更新する処理手順について説明する。モジュールの更新処理が開始し、モジュールの更新要求、すなわち新たな処理モジュールの利用要求がモジュールマネージャ301に入力されると(ステップS1001〜S1002)。モジュールマネージャ301はモジュール管理テーブル300におけるモジュール使用履歴テーブル3003の内容を参照し(ステップS1003)、必要な処理モジュールが記憶装置5に存在するかどうかを調べる(ステップS1004)。
必要な処理モジュールが記憶装置5に存在しなければ、必要なバージョンの処理モジュールを無線回線よりダウンロードし(ステップS1005)、それを記憶装置5に保存する(ステップ1006)。これにより記憶装置5には、新バージョンの処理モジュールが新たに保存されるので、次にモジュール書き換えプロセッサ302は記憶装置5内の新たな処理モジュールを含めむ必要な処理モジュールをプログラムメモリ311に書き込む(ステップS1010)。
一方、ステップS1004でのチェックの結果、必要な処理モジュールが記憶装置5に存在すれば、モジュールマネージャ301はモジュール使用履歴テーブル3003を参照し、記憶装置5の処理モジュールのバージョンと、実際に必要な処理モジュールのバージョンとを比較する(ステップS1007)。この比較の結果、記憶装置5の処理モジュールのバージョンが必要な処理モジュールのバージョンと等しければ、記憶装置5から必要な処理モジュールをロードしてプログラムメモリ311に書き込む(ステップS1010)。
ステップS1007でのチェックの結果、記憶装置5に保存されている処理モジュールのバージョンが古ければ、無線回線より必要なバージョンの処理モジュールをダウンロードし(ステップS1008)、記憶装置5に存在する古いバージョンの処理モジュールと入れ替える(ステップS1009)。これで記憶装置5内の処理モジュールは新バージョンに更新されるので、次にモジュール書き換えプロセッサ301は記憶装置5にある必要な処理モジュールをプログラムメモリ311に書き込む(ステップS1010)。ステップS1010の処理が行われると、処理モジュールのバージョン更新処理は終了する(ステップS1011)。
ここで、例えば図47(b)に示したモジュール使用履歴テーブル3003の内容例に従って、プログラムメモリ311に割り当てられていない畳み込み符号化処理モジュールを使用することを考える。必要とされる畳み込み符号化処理モジュールのバージョンは4.0であるとする。モジュールマネージャ301は、モジュール使用履歴テーブル3003を参照し、畳み込み符号化処理モジュールが記憶装置5に保存されていることを知る。モジュール使用履歴テーブル3003より、記憶装置10に保存されている畳み込み符号化処理モジュールのバージョンは3.1であり、必要とされるバージョン4.0より古いことがわかる。
そこで、モジュールマネージャ301は無線送受信デバイス2にバージョン4.0の畳み込み符号化処理モジュールをダウンロードすることを要求する。これにより無線送受信デバイス2を介してダウンロードされたバージョン4.0の畳み込み符号化処理モジュールは、元の古い処理モジュールと入れ替えられて記録装置5に保存される。同時に、モジュール使用履歴テーブル3003は更新される。その後、新しい処理モジュールはプログラムメモリ311に割り当てられる。このように、処理モジュールを使用するたびに、必要な処理モジュールと記憶措置5に保存されている処理モジュールのバージョンが比較され、記憶装置5内の処理モジュールのバージョンが古ければバージョンが更新される。
次に、移動無線通信装置を利用するユーザ自身が、削除すべき処理モジュールを選択して記憶装置5の空き容量を確保する例について説明する。ユーザが自身で削除すべき処理モジュールを選択したり、該選択した処理モジュールを削除する指令を入力することを可能とするために、入出力デバイスユニット7に備えられた表示装置321及び入力装置322が利用される。入力装置322としては、キーボードやカーソルキー及び十字キーのようなキー入力デバイス、あるいは表示装置321の表示面に設置されるタッチパネル、あるいはポインティングデバイスが利用される。表示装置321には、ユーザが記憶装置5内の空き記憶領域を確保するモードに設定した際に、現在保持している処理モジュールのモジュール名と、モジュールサイズ及び現在の割り当ての状態が表示される。ユーザは、この表示を見て削除対象の処理モジュールを選択して指定することができる。このために、モジュールマネージャ301は、モジュール管理テーブル300におけるモジュール使用履歴テーブル3003を管理する機能と、該テーブル3003の内容を参照して、記憶装置5に現在保持されている各処理モジュールのモジュール名と、モジュールサイズ及び現在の割り当ての状態、の情報を抽出する機能を少なくとも有する。リソースコントローラ4は、モジュールマネージャ301が抽出したこれらの情報を表示装置321に表示させる機能と、該表示に従ってユーザが入力装置322を操作することによって指定された削除すべき処理モジュールを記憶装置5から削除する機能を有する。
モジュールマネージャ301は、(a)プログラムメモリ311内の処理モジュールの不足発生の有無を監視する機能、(b)処理モジュールが不足したときにモジュール使用履歴テーブル3003を参照し、プログラムメモリ311内の処理モジュールの入れ替える順序、入れ替えるかどうかの判断、及び入れ替えるタイミングを制御する機能、(c)記憶装置5内の処理モジュールの削除及びバージョンアップを制御する機能を有する。モジュールマネージャ301からモジュール書き換えプロセッサ302へ処理モジュール割り当て要求が出されると、該プロセッサ302は無線回線によるダウンロードや記憶装置5からのロードによって得られた処理モジュールをプログラムメモリ311に書き込む。こうしてプログラムメモリ311に書き込まれた信号処理手順(処理モジュール)がDSP310により実行されることにより、書き込まれた処理モジュールにより実現される機能が移動無線通信装置で実現される。
モジュール使用履歴テーブル3003内のモジュール名には、対応処理モジュールのファイル容量の情報が付属する。モジュールマネージャ301は、該ファイル容量の情報を利用して、処理モジュールをプログラムメモリ311に割り当てたり、処理モジュールを入れ替えたとき、モジュール使用履歴テーブル3003の該当処理モジュールの割当て状態の情報を書き換えて現状を把握する機能を有する。この機能に従い、モジュールマネージャ301は記憶装置5の空き容量を管理するモードが設定された際に、表示装置321に表示させるべき情報をモジュール使用履歴テーブル3003を参照して取得する。リソースコントローラ4は、モジュールマネージャ301が取得した該情報を所定フォーマットで表示装置321に表示させる。
入力装置322からのユーザによる入力操作結果は、CPUであるリソースコントローラ4により認識される。この認識結果に基づき、リソースコントローラ4によって、選択されたモードへの移行、モジュール名の選択指定、選択されたモジュール名の処理モジュールの記憶装置5からの削除が行われる。
ユーザは、所望の無線通信システムを選択する指示を入力装置322を介して入力することによって、処理モジュールを入れ替えることができる。ユーザがある無線通信システム、例えばAシステムの利用を入力装置322を介して指定すると、この指定情報はリソースコントローラ4に取り込まれる。モジュールマネージャ301はモジュール管理テーブル300をそのモジュール使用履歴テーブル3003の内容を含めて参照して、指定されたAシステムにおいて必要とする処理モジュールの情報をモジュール管理テーブル300から知る。
モジュールマネージャ301は、モジュール管理テーブル300の情報から、現在使用されている処理モジュールの保存状態や、信号処理デバイス3のリソース(プログラムメモリ311)への割り当て状態を知り、処理モジュールが不足していると認識すると、その不足している処理モジュールについてのダウンロード要求を発生する。該ダウンロード要求は、リソースコントローラ4より無線送受信デバイス2を介して基地局に送られる。基地局では、受信されたダウンロード要求で示される処理モジュールをサーバから読み出し、要求元の移動無線通信装置に送信する。
基地局から移動無線通信装置に送信された処理モジュールは、無線送受信デバイス2によって受信され、リソースコントローラ4に渡される。こうして受信された、つまりダウンロードされた処理モジュールは、リソースコントローラ4によってダウンロードバッファ303に一旦保持される。このとき、リソースコントローラ4によって記憶装置5の空き容量がチェックされる。このチェックの結果、ダウンロードバッファ303に保持された処理モジュールを保存するに十分な空き容量があれば、ダウンロードバッファ303より処理モジュールが読み出され、記憶装置5に保存される。これに伴いモジュールマネージャ301によって、モジュール使用履歴テーブル3003の内容が更新される。
上記チェックの結果、記憶装置5に十分な空き容量がない場合には、モジュールマネージャ301によって記憶装置5に保存されている他の処理モジュールが削除されることにより記憶領域が確保された後、ダウンロードバッファ303から読み出された処理モジュールが記憶装置5に保持される。すなわち、記憶装置5の空き容量が不足する場合、あるいは空き容量を確保したい要求が発生した場合には、モジュールマネージャ301は、モジュール使用履歴テーブル3003の内容を参照して記憶装置5の保持する全ての処理モジュールの情報を抽出する。該情報を基にモジュールマネージャ301によって表示装置321が制御され、処理モジュールのモジュール名、モジュールサイズ、及び状態(現在の利用状態)が一覧表示される。この表示からユーザは現在、記憶装置5に保持されている処理モジュールのモジュール名、容量、そして、各処理モジュールがそれぞれ利用されているのか否かを知ることができる。ユーザは、該表示から状態が使用中でない、すなわち割り当て状態がOFFとなっている処理モジュールを探す。ユーザは、割り当て状態がOFFとなっている処理モジュールを見つけたならば、そのうちの所望のモジュールを入力装置322を用いて選択し、さらに、選択した処理モジュールの削除を指示する。この指示に従い、リソースコントローラ4によって、記憶装置5内の該当する処理モジュールが削除される。さらに、モジュールマネージャ301によって、削除された処理モジュールに関する情報がモジュール使用履歴テーブル3003から削除される。
図49を用いて以上の処理の流れを説明する。ユーザが例えば入力装置322の操作により不要処理モジュールの削除のモードを指定したとき、モジュールマネージャ301によって図49の処理が実行される。モジュールの削除が開始すると(ステップS1101)、モジュールマネージャ301は、モジュール使用履歴テーブル3003を参照し(ステップS1102)、該テーブル3003に記録されている情報のうちから、必要な情報を抽出して表示装置321に表示させる(ステップS1103)。ユーザは、この表示内容から削除したい処理モジュールを入力装置322の操作により選択して指定すると(ステップS1104)、モジュールマネージャ301は記憶装置5からその選択指定された処理モジュールを削除する(ステップS1105)。
図50(a)及び図50(b)には、これまで挙げた例と同様の、モジュール使用履歴テーブル3003に記述された項目の一覧及び該テーブル3003の具体的な内容例が示されている。図50(c)には、ステップS1103における表示装置321での履歴情報の表示画面の例が示される。この表示画面例では、記憶装置5に現在保存されている処理モジュールのモジュール名と該モジュールのサイズ、そして現在の状態が表示されている。状態は、該当処理モジュールが移動無線通信装置で使用中であるか否かを表し、使用中でなければ−が表示される。
削除対象の処理モジュールの指定は、図50(c)の表示画面上の最下段で削除対象のモジュール名を示す番号を入力装置322により入力することで行われる。この後、確定指示操作をすると、モジュールマネージャ4により制御されたモジュール書き換えプロセッサ302によって、記憶装置5内からその指定された処理モジュールが削除される。削除対象の処理モジュールとしては、割当状態がOFFの処理モジュールのうちの一つを指定するのが望ましい。割当状態がOFFの処理モジュールが無い場合には、割当て状態がONの処理モジュールのうちから適宜に選択した一つのモジュールを選び、その処理モジュールを開放してから削除すればよい。
このようにして指定された処理モジュールが削除されると、モジュールマネージャ301によってモジュール使用履歴テーブル3003の内容が更新される(ステップS1106)。ステップS1102〜1106の操作は、ステップS1107で記憶装置5内に必要な空き容量が確保されたと判断されるまで繰り返される。必要な空き容量が確保されれば、処理モジュールの削除は終了する(ステップS1108)。
このように、記憶装置5内に保存されている処理モジュールに関する情報が表示装置321で表示され、移動無線通信装置のユーザ自身がこれを参照して削除対象の処理モジュールを選択することで、信号処理デバイス3の信号処理機能を選択できる。従って、移動無線通信装置をユーザの利用形態に適合した機能にカスタマイズすることができる。
上記の説明では、移動無線通信装置で必要な処理モジュールは無線回線からのダウンロード、すなわち基地局を介してネットワーク側から供給される。一方、図40(a)に示されるように移動無線通信装置にインタフェース8を介して大容量の外部記憶装置9を接続可能とし、該外部記憶装置9から必要な処理モジュールを移動無線通信装置内の記憶装置5に取り込むことも可能である。これにより、移動無線通信装置は不足する処理モジュールや新バージョンの処理モジュールを必要とする場合に、無線回線以外からのダウンロードができる他、外部記憶装置9に、移動無線通信装置内の記憶装置5に保存した処理モジュールを転送して保持させることで、重要な処理モジュールのバックアップも実現できる。外部記憶装置9としては、例えば、半導体メモリカード、ハードディスクドライブ、MO(光磁気ディスクドライブ)、CD−ROMドライブ、CD−R/RWドライブ、及びDVDドライブなどが使用される。
上記した説明では、記憶装置5内の処理モジュールの削除は、モジュール使用履歴テーブル3003に記録された複数項目(例えば、使用頻度、最新使用日時、及びモジュールサイズ)のうちの一つを基準にして行われる。一方、記録された複数の項目の中から処理モジュールを削除する基準となる任意の項目を移動無線通信装置のユーザ自身で選択できるようにしてもよい。これにより多様な利用形態に合わせた処理モジュールの管理がユーザ自身によって可能になる。
(第11の実施形態)
図51には、本発明の第11の実施形態に従う移動無線通信装置が示される。以下の各実施形態においては、簡単のために、例えば二つの無線通信システム(AシステムとBシステム)がサービスを提供しており、移動無線通信装置はAシステム及びBシステムのうちの任意のシステムに移行して利用可能であるとする。Aシステム及びBシステムは、それぞれ通信事業者A社及びB社が提供する無線通信システムである。図51に示される移動無線通信装置は、一つの電話帳を、Aシステム及びBシステムで各システム固有のアプリケーションソフトウェア専用の形式を持つ電話帳ファイルとして使用可能とする。
信号処理デバイス2は、DSP310及び該DSP310によって直接実行可能な変復調用実行ファイル(処理モジュール)を格納する実行ファイル格納部311を有する。リソースコントローラ4は、CPU401、及び信号処理デバイス2のリソースの現在の管理状況を記録するRAM402を有する。入出力デバイスユニット7には、ユーザに対する各種情報の表示などを行うディスプレイ、及びユーザが操作入力するためのキーボードやカーソルキーのような入力装置を含む。
記憶装置5には、通話管理システムA用の実行ファイル501及び固有電話番号ファイル503、通話管理システムB用の実行ファイル502及び固有電話番号ファイル504、共通電話番号ファイル510、トランスレータA511及びトランスレータB512が格納されている。
通話管理システムA用実行ファイル501は、Aシステムでのみ用いられるアプリケーションソフトウェアであり、固有電話番号ファイル503は該アプリケーションソフトウェア用の電話帳ファイルである。同様に、通話管理システムB用実行ファイル502は、Bシステムでのみアプリケーションソフトウェアであり、固有電話番号ファイル504は該アプリケーションソフトウェア用の電話帳ファイルである。
通話管理システムA用固有電話番号ファイル503は通話管理システムAでのみ利用出来るファイル形式で記述される。同様に、通話管理システムB用固有電話番号ファイル504は通話管理システムBでのみ利用出来るファイル形式で記述される。従って、該固有電話番号ファイル503及び504はそれぞれ異なる通話管理システムに転用されることはできない。
共通電話番号ファイル510は、システムA用及びシステムB用の固有電話番号ファイル503及び504とは異なる、共通のファイル形式、例えばテキストファイル形式で記述されている電話帳ファイル(電話番号リストファイル)である。該ファイル510は、そのまま用いられても移動無線通信装置での上記アプリケーションソフトウェアの利用を可能としないファイルである。
通話管理システムA用及び通話管理システムB用の実行ファイル501及び502は、通話に関する管理のためのアプリケーションソフトウェアであり、次のような機能を有する。実行ファイル501及び502は、電話帳である通話管理システムA用及び通話管理システムA用の固有電話番号ファイル503及び504をそれぞれ参照して、該ファイル503中に登録されている電話番号リストを一覧表示したり、検索表示する。実行ファイル501及び502は、さらに表示された電話番号中からユーザ操作により所望の電話番号が選択指定されると、その電話番号にダイヤル発呼する。実行ファイル501及び502は、ユーザが新たに追加を希望する電話番号の電話帳への追加や、不要電話番号の削除を行うこともできる。これらのアプリケーションソフトウェアには、無線通信システムの移行があったとき、及び固有電話番号ファイル503及び504に変更があったときに、トランスレータを使用してファイルの変換を行い、内容の更新を実施すべく制御する機能を持たせてある。
トランスレータA511及びトランスレータB512は、ファイル形式を変換処理するソフトウェアである。該トランスレータA511及びトランスレータB512は、共通リストファイルである共通電話番号ファイル510と、変復調用実行ファイルが規定する無線通信システムで用いられるアプリケーションに固有のリストファイル間でファイルの相互変換をするために用いられる。
すなわち、トランスレータA511はAシステム用のアプリケーションソフトウェアに固有のリストファイルを共通リストファイルである共通電話番号ファイル510に変換し、当該共通リストファイルをAシステム用のアプリケーションソフトウェア固有のリストファイルに変換する機能を有する。同様に、トランスレータB512はBシステム用のアプリケーションソフトウェアに固有のリストファイルを共通リストファイルである共通電話番号ファイル510に変換し、当該共通リストファイルをBシステム用のアプリケーションソフトウェア固有のリストファイルに変換する機能を有する。
本実施形態の動作例を説明する。まず、移動無線通信装置はAシステムに収容された端末として動作しているとする。この状態では、DSP410で実行される変復調用実行ファイル(処理モジュール)はAシステムに対応しており、該ファイルは実行ファイル格納部411に格納されている。このとき、DSP410がAシステムに対応した変復調用実行ファイル(処理モジュール)を実行していることがCPU401によりRAM402に記録される。このときユーザによって、入出力デバイスユニット7を通してAシステム専用の通話管理システムAが使用される。従って記憶装置5に格納されている通話管理システムA用実行ファイル501は、リソースコントローラ4内に読み込まれ、CPU401により実行される。
ユーザが自身の頻繁に通話する相手先の電話番号一覧であるメニューリスト「電話帳A」(すなわち、通話管理システムA用固有電話番号ファイル503に基づく電話番号一覧)を入出力デバイスユニット7を通してディスプレイ上に示す要求を出したとする。このときリソースコントローラ4内のCPU401によって、記憶装置5からリソースコントローラ4内に読み込まれている通話管理システムA用固有電話番号ファイル503の内容が読み出され、入出力デバイスユニット7におけるディスプレイデバイスに表示される。
ユーザは、このディスプレイデバイス上の電話番号ファイルの表示を参照して電話をかけた後、あるいは電話がかかってきたときに、新たにメニューリストに追加したい電話番号情報があれば、追加することが可能である。追加される新たな電話番号情報は、まずリソースコントローラ4内に読み込まれている通話管理システムA用固有電話番号ファイル503に書き加えられる。次に、ユーザが通話管理システムAの利用を終了したときに、通話管理システムA用実行ファイル501を実行しているCPU401によって、書換えられた通話管理システムA用固有電語番号ファイル503が記憶装置5に格納される。
本実施形態によると、書換えられた通話管理システムA用固有電話番号ファイル503の電話番号情報は、記憶装置に格納されているトランスレータA511により共通電話番号ファイル510の形式に変換されて管理される。これによりDSP410で実行されている変復調用実行ファイルがAシステムに対応したファイル形式からBシステムに対応したファイル形式に変換され、別の通話管理システムが用いられるときでも、電話番号情報を利用することを可能とする。
具体的には、通話管理システムA(通話管理システムA用実行ファイル501なるアプリケーションソフトウェア)の利用をユーザが終了した時点において、または、DSP410で実行されている変復調用実行ファイルがAシステムに対応したファイル形式からBシステムに対応したファイル形式に変換され、RAM402が書換えられた時点において、CPU401はトランスレータA511を実行する。これにより、通話管理システムA用固有電話番号ファイル503は、トランスレータA511により共通のファイル形式に変換され、この変換後のファイルによって共通電話番号ファイル510が上書きされる。
以下、この処理の流れを図52により説明する。初期状態として、移動無線通信装置を所持したユーザがAシステムのサービスエリアに位置しており、移動無線通信装置はAシステムに適合した端末として機能しているとする。この後、ユーザが移動してAシステムと基地局との距離が離れると、移動無線通信装置の受信電界強度が小さくなり、移動無線通信装置がAシステムの端末として機能するのが困難になる。このとき、ユーザはBシステムのサービスエリア内にあり、移動無線通信装置はBシステムの基地局に対して十分な受信電界強度を確保できる状態にあるとする。
移動無線通信装置は、Aシステム及びBシステムの基地局どうし結ぶパイロット用の無線チャネルを利用して、どの無線通信システムと通信チャネルが確保ができるかを監視することにより、利用する無線通信システムの切り替えができる仕組みを持っている。従って、移動無線通信装置は、Aシステムとの回線を維持できなくなり、代わりに、Bシステムとの回線を確保できる状態になったことを知ることができる。このときリソースコントローラ4によって、DSP410で実行される変復調用実行ファイルが、実行ファイル格納部411に格納されているBシステムに対応したファイルに変更され、この変更がRAM402に記録される(ステップS2001)。
この時点までに最後に更新された通話管理システムA用固有電話番号ファイル503に従って、トランスレータA511によって共通電話番号ファイル510が上書きされているか否かをチェックする(ステップS2002)。上書きされていないならば、リソースコントローラ4によりトランスレータA512が実行される。これにより、通話管理システムA用固有電話番号ファイル503が共通ファイル形式に変換され、変換後のファイルによって共通電話番号ファイル510が上書きされる(ステップS2003)。この後、処理はステップS2004に進む。ステップS2002でのチェックの結果、上書きされていれば処理はステップS2004に進む。ステップS2004は、必ずしも必要な処理ではないが、該ステップS2004ではユーザによって通話管理システムBの「電話帳B」が起動される。
次のステップS2005では、トランスレータB512が起動され、該トランスレータB512により共通電話番号ファイル510のファイル形式が通話管理システムB用固有電話番号ファイル504のファイル形式に変換され、これによって通話管理システムB用固有電話番号ファイル504が生成または上書きされる。
前述したように、通話管理システムA用及び通話管理システムB用の固有電話番号ファイル503及び504は、それぞれ対応する通話管理システムAおよびBでのみ利用出来るファイル形式で記述されている。ファイル503または504の内容に変更のあったときは、変更後のファイルは一旦、共通ファイル形式に変換されて共通電話番号ファイル510として保存される。移動無線通信装置が使用する無線通信システムが変更されたときは、共通電話番号ファイル510がファイル変換されて変更後の無線通信システムの下で利用できるようにされる。すなわち、移動無線通信装置が使用する無線通信システムが変更される前の段階において、ファイル503または504の内容が変更されていても、次に移動無線通信装置が使用する別の無線通信システムの下で変更が反映されたファイルを利用できる。
従って、ユーザはAシステムにおいて変更を加えた通話管理システムA用固有電話番号ファイル503を、Bシステムに移行した後において通話管理システムB用固有電話番号ファイル504に反映させることができ、反映された「電話帳B」が利用可能になる(ステップS2006)。すなわち、Bシステムでのみ用いられる通話管理システムBにおける、頻繁に使用される電話番号一覧であるメニューリスト「電話帳B」を表示したときに、Aシステムで用いられる通話管理システムAで更新されたメニューリスト「電話帳A」の内容をそのまま利用することができる。これにより、異なる無線通信システム用にユーザがデータの個別管理をする必要が無くなり、どの無線通信システムに移行しても自己の最新の電話帳を利用できる。
上述の説明においては、通話管理システムA用及び通話管理システムB用の固有電話番号ファイル503及び504は記憶装置5上に存在するとしたが、これらのファイル503及び504は、必要に応じてリソースコントローラ4内のメモリ上に生成される一時的なファイルであっても構わない。
(第12の実施形態)
図53に示される本発明の第12の実施形態に従う移動無線通信装置では、記憶装置5にウェブブラウザA用及びウェブブラウザB用実行ファイル601及び602、ウェブブラウザA用及びウェブブラウザB用固有URLファイル603及び604、共通URL(Uniform Resource Locators)ファイル610、トランスレータA611及びトランスレータB612が格納されている。実行ファイル601及び602は、Aシステムでのみ及びBシステムでのみそれぞれ用いられるAシステム及びBシステム固有のウェブ(Web)ブラウジング用ソフトウェア、すなわちWWWページのデータファイルの内容を表示するためのアプリケーションソフトウェアである。実行ファイル601及び602は、リソースコントローラ4に読み込まれて、該コントローラ4により実行されることでその機能が具体化される。固有URLファイル603及び604は、ウェブブラウザA用及びB用実行ファイル601及び602でそれぞれ使用される、固有ファイル形式で記述されたお気に入り(favorite)URL情報リストファイルである。これに対して、共通URLファイル410は、所定の共通ファイル形式で記述されている。
トランスレータA411及びトランスレータB412は、共通URLファイル410と、変復調用実行ファイルが規定する無線通信システムで用いられるブラウジングソフトウェアに固有のリストファイルとの間で相互にファイル形式を変換するためのアプリケーションソフトウェアである。トランスレータA411は、Aシステム用のブラウジングアプリケーションソフトウェアに固有のリストファイルであるウェブブラウザA用固有URLファイル603を共通リストファイルに変換し、また該共通リストファイルをウェブブラウザA用固有URLファイル603に変換する機能を有する。同様に、トランスレータB412は、Bシステム用のブラウジングアプリケーションソフトウェアに固有のリストファイルであるウェブブラウザB用固有URLファイル604を共通リストファイルに変換し、また該共通リストファイルをウェブブラウザB用固有URLファイル604に変換する機能を有する。これらの固有URLファイル603及び604は、いずれもリソースコントローラ4に読み込まれ、該コントローラ4により実行されることでその機能が実現される。
上述したように、ウェブブラウザA用固有URLファイル603はウェブブラウザAでのみ利用出来るファイル形式で記述されており、ウェブブラウザB用固有URLファイル604はウェブブラウザBでのみ利用出来るファイル形式で記述されている。従って、ウェブブラウザAでは、これ専用のファイル形式で記述されたURLファイルを用いねば、Webページアドレスの指定をできない。同様に、ウェブブラウザBでは、これ専用のファイル形式で記述されたURLファイルを用いねば、Webページアドレスの指定をできない。
本実施形態によると、URLファイルは共通リストファイルの形式で保存され、移動無線通信装置によって利用される無線通信システムが変更になったときは、該共通リストファイルの形式がトランスレータによって変更先の無線通信システム用に変換される。この変換されたURLファイルを用いてWebページのURL情報をブラウザ上で利用できる。
本実施形態の動作例を説明する。まず、移動無線通信装置はAシステムに収容された端末として動作しているとする。この状態では、DSP410で実行されている変復調用実行ファイル(処理モジュール)はAシステムに対応しており、実行ファイル格納部411に格納されている。この変復調用実行ファイルに従った信号処理手順がDSP410により実行されることによって、該実行ファイルにより実現される機能が移動無線通信装置で実現される。
一方、このとき入出力デバイスユニット7を通してユーザが利用できるウェブブラウザは、Aシステムでのみ用いられるウェブブラウザAである。Aシステムの下で移動無線通信装置が運用していることを認識しているリソースコントローラ4の制御により、記憶装置5に格納されているウェブブラウザA用実行ファイル601が該コントローラ4内に読み込まれ、CPU401により実行されることでウェブブラウザAによるブラウジングが可能とされている。ここで、ウェブブラウザAには該ウェブブラウザAに固有の登録されたWebページアドレスの一発選択機能がウェブブラウザA用固有URLファイル603によって用意される。
ユーザは、ウェブブラウザAの画面上でよく閲覧するWebページを閲覧したいと思った場合に、入出力デバイスユニット7上で所定の操作を行うと、ウェブブラウザAによってウェブブラウザA用固有URLファイル603が参照され、ウェブブラウザAでのお気に入りメニューリスト(お気に入りWebのURL情報リスト)が一覧表示される。ユーザは入出力デバイスユニット7上で、表示されたお気に入りメニューリスト中から所望のWebページを選択して指定する。するとリソースコントローラ4によって信号処理デバイス3が制御され、DSP410により該WebページのURL情報が生成される。該URL情報は無線送受信デバイス2に渡され、Aシステムの基地局に送信される。該基地局からインタネットプロバイダを介してインタネット上の該URL情報によって指示されるWebサイトがアクセスされてWebページの情報が読み出される。読み出されたWebページの情報は、逆の経路を辿って基地局から移動無線通信装置に送信される。
移動無線通信装置では、受信されたWebページの情報が無線送受信デバイス2を介して信号処理デバイス3に送られ、DSP410により処理された後、リソースコントローラ4に渡される。リソースコントローラ4では、CPU401によるウェブブラウザAの処理によって、その受信したWebページの情報を入出力デバイスユニット7におけるディスプレイデバイスの画面に表示する。
このようにして、ユーザはお気に入りWebページを簡単な操作で閲覧できる。ユーザは、Webページの閲覧をしながら、新たに興味のあるWebページを探し当てたとする。ユーザは、その探し当てたWebページのURL情報をお気に入りメニューリストに追加することができる。その場合、ユーザがお気に入りメニューリストへの登録操作を行うと、リソースコントローラ4はウェブブラウザAを実行しているCPU401が当該登録したい新たなURL情報をリソースコントローラ4内に読み込まれているウェブブラウザA用固有URLファイル603に追記する。この後、ユーザがウェブブラウザAの利用を終了したときに、CPU401は追記されたウェブブラウザA用固有URLファイル603を記憶装置5に格納させる。これによって、記憶装置5に格納されたウェブブラウザA用固有URLファイル603は更新される。
こうして記憶装置5内の更新されたウェブブラウザA用固有URLファイル603は、ウェブブラウザAの専用のファイル形式を持つので、ウェブブラウザBによって参照されたり、更新されることはできない。そこで、ウェブブラウザA用固有URLファイル603は、共通ファイル形式のファイルに変換され、URL共通ファイル610として記憶装置5に格納される。
本実施形態によると、書換えられたウェブブラウザA用固有URLファイル603のURL情報は、記憶装置5に格納されているトランスレータA611によりURL共通ファイル610の形式に変換されて管理される。これにより、DSP410で実行されている変復調用実行ファイルがAシステムに対応したファイルからBシステムに対応したファイルに変更され、ウェブブラウザBが用いられるようになった時でも、URL情報を利用することを可能とする。
具体的には、ウェブブラウザAの利用をユーザが終了した時点において、またはDSP410で実行されている変復調用実行ファイルがAシステムに対応したファイル形式からBシステムに対応したファイル形式に変換され、RAM402が書換えられた時点において、CPU401はトランスレータA611を実行する。これにより、ウェブブラウザA用固有URLファイル603は、トランスレータA611により共通のファイル形式に変換され、この変換後のファイルによって共通URLファイル610が上書きされる。
以下、この処理の流れを図54により説明する。初期状態として、移動無線通信装置を所持したユーザがAシステムのサービスエリアに位置しており、移動無線通信装置はAシステムに適合した端末として機能しているとする。このときリソースコントローラ4によって、DSP410で実行される変復調用実行ファイルが、実行ファイル格納部411に格納されているBシステムに対応したファイルに変更され、この変更がRAM402に記録される(ステップS2011)。この後、ユーザが移動してAシステムと基地局との距離が離れると、移動無線通信装置の受信電界強度が小さくなり、移動無線通信装置がAシステムの端末として機能するのが困難になる。このとき、ユーザはBシステムのサービスエリア内にあり、移動無線通信装置はBシステムの基地局に対して十分な受信電界強度を確保できる状態にあるとする。移動無線通信装置は、前述したようにAシステムとの回線を維持できなくなり、代わりに、Bシステムとの回線を確保できる状態になったことを知ることができる。
この時点までに最後に更新されたウェブブラウザA用固有URLファイル603に従って、トランスレータA611によって共通URLファイル610が上書きされているか否かをチェックする(ステップS2012)。上書きされていないならばリソースコントローラ4によりトランスレータA611が実行される。これにより、ウェブブラウザA用固有URLファイル603が共通URLファイル610の形式に変換され、変換後のファイルによって共通URLファイル610が上書きされる(ステップS2013)。この後、処理はステップS2014に進む。ステップS2014は、必ずしも必要な処理ではないが、該ステップS2014ではユーザによってWebブラウザBの「お気に入り」が起動される。
次のステップS2015では、トランスレータB612が起動され、該トランスレータB612により共通URLファイル610のファイル形式がウェブブラウザB用固有URLファイル604のファイル形式に変換され、該URLファイル604が生成または上書きされる。
前述したように、ウェブブラウザA用及びウェブブラウザB用固有URLファイル603及び604は、それぞれ対応するウェブブラウザA及びウェブブラウザBでのみ利用出来るファイル形式で記述されている。従って、ウェブブラウザAではこれ専用のファイル形式で記述された固有URLファイルを用いねば、Webページ指定には利用できず、同様にウェブブラウザBではこれ専用のファイル形式で記述された固有URLファイルを用いねば、せっかく見付けてファイルに登録してあっても、お気に入りのWebページを指定することはできない。本実施形態に従えば、固有URLファイルを共通のファイル形式であるURL共通ファイル610に変換して保存し、さらにURL共通ファイル610を使用されるウェブブラウザに対応したファイル形式に変換することで、そのウェブブラウザにて利用することが可能となる。このようにしてブラウザ用の固有URLファイルに基づくWebページのリストを利用することが出来るようになる。AシステムからBシステムに移行したユーザは、Bシステムでのみ用いられるウェブブラウザBにおけるお気に入りメニューリストを表示するにはウェブブラウザB用の固有URLファイル604を必要とする。本実施形態によると、ファイル形式の変換により変更内容が反映されたウェブブラウザB用の固有URLファイル604を得ることができるため、お気に入りメニューリストを表示したときに、Aシステムで用いたウェブブラウザAで更新したお気に入りメニューリストの内容をそのまま反映することが可能となる(ステップS2016)。異なる無線通信システムにユーザがこのようなデータを個別管理する必要が無くなり、利便性が大きく向上する。
上述の説明においては、ウェブブラウザA用及びウェブブラウザB用固有URLファイル603及び604は記憶装置5上に存在するとしたが、これらのファイル603及び604がは、必要に応じてリソースコントローラ4内のメモリ上に生成される一時的なファイルであっても構わない。
(第13の実施形態)
図55に示される本発明の第13の実施形態に従う移動無線通信装置では、記憶装置5にメールシステムA用及びメールシステムB用実行ファイル701及び702、メールシステムA用及びメールシステムB用固有受信メールファイル703及び704、受信メール共通ファイル710、トランスレータA711及びB712が格納されている。
実行ファイル701及び702は、それぞれAシステムでのみ及びBシステムでのみ用いられるAシステム及びBシステムに固有のメールシステム、すなわち電子メール送受信に用いるメーリング用ソフトウェアである。実行ファイル701及び702は、リソースコントローラ4に読み込まれて、該コントローラ4で実行されることによりメーリング機能を実現する。
メールファイル703及び704は、それぞれ実行ファイル701及び702で使用する固有ファイル形式で記述された受信メールファイルである。これに対して、受信メール共通ファイル710は、所定の共通ファイル形式で記述されている。
トランスレータA711及びB712は、受信メール共通ファイル710と、変復調用実行ファイルが規定する無線通信システムで用いられるメールシステムにおける固有のファイル形式を持つ固有受信メールファイルとの間で相互にファイル形式を変換するためのファイル変換アプリケーションソフトウェアである。 トランスレータA711はAシステム用のメーリングアプリケーションソフトウェアに固有の受信メールファイルであるメールシステムA用固有受信メールファイル703を共通用のファイル形式である受信メール共通ファイル710のファイル形式に変換する機能を有する。同様に、トランスレータB712は、受信メール共通ファイル710をメールシステムA用固有受信メールファイル703に変換する機能を有する。これらのファイル703及び704は、いずれもリソースコントローラ4に読み込まれ、該コントローラ4により実行されることでその機能が実現される。
上述したように、メールシステムA用固有受信メールファイル703はメールシステムAでのみ利用出来るアプリケーションソフトウェア専用のファイル形式で記述されており、メールシステムB用固有受信メールファイル704はメールシステムBでのみ利用出来るアプリケーションソフトウェア専用のファイル形式で記述されている。
本実施形態の動作を説明する。まず、移動無線通信装置はAシステムに収容された端末として動作しているとする。この状態では、DSP410で実行されている変復調用実行ファイル(処理モジュール)はAシステムに対応しており、実行ファイル格納部411に格納されている。この変復調用実行ファイルに従った信号処理手順がDSP410により実行されることによって、該実行ファイルにより実現される機能が移動無線通信装置で実現される。
一方、このとき入出力デバイスユニット7を通してユーザが利用しているメールシステムはAシステム専用のメールシステムAである。記憶装置5に格納されているメールシステムA用実行ファイル701がリソースコントローラ4内の図示しないメモリに読み込まれ、リソースコントローラ4内のCPU401により実行されていることにより、当該メールシステムAが利用可能になっている。
ユーザは、今まで自己宛に送られて来て記憶装置5に保存してある受信メールの一覧であるメニューリスト「受信メール」を、入出力デバイスユニット7を通してディスプレイ上に示す要求を出す。この要求を受けたCPU401は、記憶装置5からリソースコントローラ4内に読み込まれているメールシステムA用固有受信メールファイル703の内容を入出力デバイスユニット7におけるディスプレイデバイスに表示させる。従って、ユーザは受信メールの閲覧が可能であり、これに対して返信したり、また新たに着信したメールがあればこのリストに追加することが可能である。その場合、CPU401により、新たな受信メールの内容はまずリソースコントローラ4内の図示しないメモリに読み込まれているメールシステムA用固有受信メールファイル703に追記される。この後にユーザがメールシステムAの利用を終了したときに、CPU401は追記されたメールシステムA用固有受信メールファイル703を記憶装置5に格納させる。
本実施形態によると、移動無線通信装置が別の無線通信システムに移行した場合においても、今まで利用してきた受信メールファイルが利用できるようにファイル形式が変換される。すなわち、移動無線通信装置がAシステムを利用しているときに、Aシステム専用のメールシステムAで受け取られ、メールシステムA用固有受信メールファイル703に保存された受信メールの内容は、移動無線通信装置がBシステムに移行した場合に、Bシステム専用のメールシステムBにおいても利用できるようにされる。このために、メールシステムA用固有受信メールファイル703が更新された場合に、或いは移動無線通信装置がBシステムに移行した後に、固有受信メールファイル703は記憶装置5に格納されているトランスレータA421によって共通受信メールファイル420の形式に変換され、共通受信メールファイル420で管理される。
具体的には、メールシステムAの利用をユーザが終了した時点において、またはDSP410で実行されている変復調用実行ファイルがAシステムに対応したファイルからBシステムに対応したファイルに変換され、RAM402が書換えられた時点において、CPU401はトランスレータA712を実行する。これにより、メールシステムA用固有受信メールファイル703は、トランスレータA710により共通のファイル形式に変換され、この変換後のファイルによって共通受信メールファイル420が上書きされる。
以下、この処理の流れを図56により説明する。初期状態として、移動無線通信装置を所持したユーザがAシステムのサービスエリアに位置しており、移動無線通信装置はAシステムに適合した端末として機能しているとする。このときリソースコントローラ4によって、DSP410で実行される変復調用実行ファイルが、実行ファイル格納部411に格納されているBシステムに対応したファイルに変更され、この変更がRAM402に記録される(ステップS2021)。この後、ユーザが移動してAシステムと基地局との距離が離れると、移動無線通信装置の受信電界強度が小さくなり、移動無線通信装置がAシステムの端末として機能するのが困難になる。このとき、ユーザはBシステムのサービスエリア内にあり、移動無線通信装置はBシステムの基地局に対して十分な受信電界強度を確保できる状態にあるとする。移動無線通信装置は、前述したようにAシステムとの回線を維持できなくなり、代わりに、Bシステムとの回線を確保できる状態になったことを知ることができる。
この時点までに最後に更新されたメールシステムA用固有受信メールファイル703に従って、トランスレータA712によって共通受信メールファイル710が上書きされているか否かがチェックされる(ステップS2022)、上述のように、この時点でメールシステムA用固有受信メールファイル703内からトランスレータA712によってファイル形式が変換され、変換後のファイルに従って共通受信メールファイル420が上書きされる(ステップS2023)。この後、処理はステップS2024に進む。ステップS2024は、必ずしも必要な処理ではないが、該ステップS2024ではユーザによってメールシステムBの「受信ボックス」が起動される。
次のステップS2025では、トランスレータB712が起動され、随トランスレータB712によって共通受信メールファイル420のファイル形式がメールシステムB用固有受信メールファイル704の形式に変換され、該受信メールファイル704が生成または上書きされる(ステップS2025)。
前述したよう、メールシステムB用固有受信メールファイル704はメールシステムBでのみ利用出来るファイル形式で記述されている。従って、上記ファイル変換によって、ユーザはメールシステムBの受信メール一覧であるメニューリスト「受信ボックス」を表示したときに、メールシステムAで更新したメニューリスト「受信メール」の内容をそのまま反映することが可能となる(ステップS2026)。異なる無線通信システム毎に、ユーザがこのようなデータを個別管理する必要が無くなり、利便性が大きく向上する。
上記説明では、メールシステムA用及びB用固有受信メールファイル703及び704は記憶装置5上に存在するものとしたが、これらのファイル703及び704は、必要に応じてリソースコントローラ4内の図示しないメモリ上に生成される一時的なファイルであっても構わない。上述した説明で受信メールを送信メールに置き変えて、ユーザが過去に送信したメールの情報に関しても、上記と全く同様な管理が可能である。ユーザが頻繁にメールの送受信を行なう相手のメールアドレス情報に関しても、上記と全く同様な管理が可能である。