JP4210992B2 - ハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法及び同装置 - Google Patents

ハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法及び同装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子に永久磁石と界磁巻線とを備えたハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法及び同装置に関するものである。特に、トルク指令値あるいはこれと等価なトルク目標値のダイナミックな変化に従ったトルクの発生を可能とし、かつ固定子銅損と界磁銅損とからなる総合銅損を最小とするような、更には運転速度領域を広げるような、固定子電流及び界磁電流の制御方法及び同装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
永久磁石同期電動機の効率の良さから、近年、低中速域での大トルク発生と高速域運転とを同時に要求するような用途へ、本電動機の適用が試みられている。しかし、印加電圧に制限を有する状況下では、両要求は互いに反するものであり、同時には実現することはできない。永久磁石同期電動機における本課題を解決すべく、この改良とも言うべき、回転子に永久磁石に加えて界磁巻線を持たせたハイブリッド界磁形同期電動機の開発が試みられている。ハイブリッド界磁形同期電動機は、永久磁石同期電動機の改良と言う歴史的経緯もあり、永久磁石同期電動機のためめの伝統的なベクトル制御方法に従い、制御されている。すなわち、固定子電流を、回転子永久磁石のN極位置に選定したd軸とこれに直交するq軸とで構成される回転dq座標系上で、電流ベクトルのd軸成分及びq軸成分として分割し制御すると言うベクトル制御方法が取られている。
【0003】
ハイブリッド界磁形同期電動機を対象とした文献は、本電動機が開発途上と言うこともあり、世界的にも非常に少ない。その中で、制御方法を扱った最新の文献としては、2002年11月発行の文献(Y.Amara,E.Hoang,M.Gabsi,M.Lecrivain,A.H.Ben−Ashmed and S.Derou:“Measured Performances ofa New Hybrid Excitation SynchronousMachine”,EPE Journal,Vol.12,No.4,pp.42−50(2002−11))がある。図12は、上記文献を参考に、ハイブリッド界磁形同期電動機の従来の代表的ベクトル制御方法を装置化し、これに装着した様子を概略的にブロック図で示したものである。1はハイブリッド界磁形同期電動機を、2は回転子の位置検出器を、3は電力変換器を、4は交流電流検出器を、5a、5bは夫々3相2相変換器、2相3相変換器を、6a、6bは共にベクトル回転器を、7は固定子電流制御器を、8は正弦信号発生器を、9は直流電圧電源を、10は回転子の速度検出器を、11は速度制御器を示している。
【0004】
図12では、2から8までの諸機器が、固定子電流を、回転子永久磁石のN極位置に選定したd軸とこれに直交するq軸とで構成される回転dq座標系上で、電流ベクトルのd軸成分及びq軸成分として分割し制御する電流制御工程を実行する手段を構成している。
【0005】
交流電流検出器4で検出された3相電流は、3相2相変換器5aで固定αβ座標系上の2相電流(2x1ベクトル)に変換された後、ベクトル回転器6aで回転dq座標系の2相電流(2x1ベクトル)i、iに変換され、固定子電流制御器7へ送られる。固定子電流制御器7は、変換電流i、iが、各々の電流指
Figure 0004210992
ル回転器6bへ送る。6bでは、この2相信号(2x1ベクトル)を固定αβ座標系の2相電圧指令値(2x1ベクトル)に変換し、2相3相変換器5bへ送る。5bでは、2相信号(2x1ベクトル)を3相電圧指令値に変換し、電力変換器3への指令値として出力する。電力変換器3は、指令値に応じた電力を発生し、ハイブリッド界磁形同期電動機1へ印加しこれを駆動する。正弦信号発生器8は、回転dq座標系の位相決定の手段を構成しており、回転子の位置検出器2から磁極位置情報が送られると、この信号を用いて余弦正弦信号を生成し、回転dq座標系の位相情報として、ベクトル回転器6a,6bへ向け出力している。速度制御器11は、外部からの速度指令値と速度検出器10からの速度検出値とを入力として得て、q軸電流指令値を出力している。速度制御器のパラメータは、当然のことながら、速度制御フィードバックループが安定に動作するように、換言するならばその出力がd軸電流指令値として使用できるように、設計されている。なお、同図では、図の簡明性確保のため、余弦正弦信号を1つの位相ベクトルとして捕らえ、1本の太い信号線で表現している。
【0006】
9は、界磁巻線に直流電圧を印加し、静的な界磁電流を流すための直流電圧電源である。本直流電圧電源9は、所期の界磁電流が得られるように電圧が可変できるようになっている。一定電圧を印加すれば、定常的には、一定の界磁電流が得られる。すなわち、印加した直流電圧と発生する界磁電流との間には、静的状態では、比例関係が成立する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図12の代表例から明白なように、従来のベクトル制御方法では、界磁電流に対しては、動的な電流制御がなされていない。このため、ハイブリッド界磁形同期電動機をして可変速を伴う運転をさせる場合には、界磁電流が変動し、ハイブリッド界磁形同期電動機が好ましくない振動を起すことがあった。また、固定子電流に対応して、実時間で、界磁電流発生のための直流電源の電圧を変化させることが困難なため、固定子巻線、界磁巻線で発生する損失(すなわち、銅損)が必要以上に大きくなることが、しばしば発生した。同様な原因により、固定子電圧の制限下では、ハイブリッド界磁形同期電動機の速度領域が、必要以上に制限されることがあった。低中速域での大トルク発生と高速域運転とを同時に達成すると言う目的の下に開発されたハイブリッド界磁形同期電動機ではあるが、上記のように制御上の問題があり、所期の運転性能、所期の有用性を十分に発揮できないと言う問題を抱えていた。
【0008】
本発明は、以上の背景のもとになされたものであり、その目的は、ハイブリッド界磁形同期電動機が本来有する特性を引出すことのできる、高度な電流制御を中心とした、ベクトル制御方法及び同装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、固定子電流を、回転子永久磁石のN極位置に選定したd軸とこれに直交するq軸とで構成される回転dq座標系上で、電流ベクトルのd軸成分及びq軸成分として分割し制御する電流制御工程と、界磁巻線の電流を制御するための界磁電流制御工程とを有する、回転子に永久磁石と界磁巻線とを備えたハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法であって、トルク指令値あるいはこれと等価なトルク目標値に従って、該界磁電流制御工程のための界磁電流指令値と、該固定子電流制御工程のための固定子電流指令値の内の少なくともq軸電流指令値とを、実質的な固定子電圧制限が無い中低速運転領域において、速度に依存することなく、共に更新生成するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項の発明は、請求項記載のハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法であって、該界磁電流指令値と該q軸電流指令値とを、固定子銅損と回転子界磁銅損とからなる総合銅損が最小となる軌道を規定した最小総合銅損軌道上で、決定することを特徴とする。
【0012】
請求項の発明は、請求項記載のハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法であって、該トルク指令値あるいは該トルク目標値に従った該界磁電流指令値と該q軸電流指令値とを、制御遂行時の繰返し演算で決定するようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、固定子電流を、回転子永久磁石のN極位置に選定したd軸とこれに直交するq軸とで構成される回転dq座標系上で、電流ベクトルのd軸成分及びq軸成分として分割し制御する電流制御手段と、界磁巻線の電流を制御するための界磁電流制御手段とを有する、回転子に永久磁石と界磁巻線とを備えたハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御装置であって、トルク指令値あるいはこれと等価なトルク目標値に従って、該界磁電流制御手段のための界磁電流指令値と、該固定子電流制御手段のための固定子電流指令値の内の少なくともq軸電流指令値とを、実質的な固定子電圧制限が無い中低速運転領域において、速度に依存することなく、共に更新生成する手段を有することを特徴とする。
【0017】
請求項及び請求項の本発明の作用を説明する。この合理的な説明を行うために、ハイブリッド界磁形同期電動機の数学モデルを考える。回転dq座標系上では、本ハイブリッド界磁形同期電動機の数学モデルは、(1)式に示した回路方程式、(2)式に示したトルク発生式、(3)式に示したエネルギー伝達式、から構成される。
【数1】
Figure 0004210992
【数2】
Figure 0004210992
【数3】
Figure 0004210992
ただし、
【数4】
Figure 0004210992
【0018】
(1)〜(4)式においては、2x1ベクトルv、iは、それぞれ、固定子の電圧、電流であり、v、iは回転子界磁巻線の電圧、電流である。R、Rは固定子巻線、回転子界磁巻線の抵抗である。L、L、Mは固定子インダクタンス、回転子界磁インダクタンス、固定子・回転子間の相互インダクタンスである。また、Φは永久磁石による回転子磁束の最大値である。τ、Nは各々発生トルク、極対数である。また、sは微分演算子d/dtである。ω2n、ω2mは次の関係を有する回転子の電気速度、機械速度である。
【数5】
Figure 0004210992
また、(1)〜(3)式における脚符d、qは、固定子の電圧、電流のd軸成分、q軸成分を意味している。
【0019】
(2)式が明示しているように、発生トルクと界磁電流、固定子q軸電流とは非線形の関係にある。本非線形性は、同一トルクの発生をもたらす界磁電流、固定子q軸電流は無数に存在することを意味する。
【0020】
請求項または請求項の発明は、トルク指令値あるいはこれと等価なトルク目標値(以下、トルク指令値等と略記、後掲の(18)式参照)に従って、界磁電流制御工程のための界磁電流指令値と、固定子電流制御工程のための固定子電流指令値の内の少なくともq軸電流指令値とを、共に更新生成するようにしたものである。この結果、請求項あるいは請求項の発明によれば、同一のトルク指令値等に従って界磁電流指令値とq軸電流指令値を同時生成できるようになる。しかも、上に説明したように、同一トルクの発生をもたらす界磁電流指令値とq軸電流指令値は無数存在する。この結果、請求項あるいは請求項の本発明によれば、両電流指令値の選択の同時性と自由性とが活用できるようになり、所期のトルク発生を達成しながら、かつ設計者が指定した合理的評価基準(例えば、損失の最小、運転領域の拡大などの基準)を満足する最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値とが生成できるようになると言う作用が得られる。
【0021】
続いて、請求項の発明の作用を説明する。固定子d軸電流は、(2)式が示しているように、トルク発生に全く寄与しない。従って、固定子銅損と界磁銅損とからなる総合銅損が最小となるように、界磁電流、固定子電流を制御するには、トルク発生に寄与しない固定子d軸電流はゼロに制御することが合理的である。すなわち、次の(6)を達成する制御が合理的である。
【数6】
Figure 0004210992
(6)式を達成する電流制御が維持されている場合には、(3)式右辺第1項と第2項で示された、固定子巻線による銅損に界磁巻線による銅損を加えた総合銅損Pは、次式で評価される。
【数7】
Figure 0004210992
【0022】
詳しい導出過程は省略するが、(7)式の総合銅損Pを最小とする最小総合銅損軌道は、次の(8)式で記述することができる。
【数8】
Figure 0004210992
所期のトルクτを発生し、かつ最小総合銅損Pを達成する界磁電流とq軸電流は、(2)式のトルク発生の条件と(8)で示された最小総合銅損軌道の条件とを同時に満足するものでなくてはならない。
【0023】
図1は、表1の電動機パラメータを利用して、q軸電流/界磁電流平面上に、(2)式に基づきトルクτ=1、1.5、2(Nm)を促す一定トルク軌道(3本)と、(8)に基づき最小総合銅損軌道を描画した。両軌道の交点(図中に○印で明示)が、所期のトルク発生と最小総合銅損とを同時に達成する界磁電流、q軸電流となる。図1では、3つの発生トルクに対する総合銅損曲線(右縦軸利用)も、(7)式に従い、併せ描画している。○印で明示した軌道交点が、最小総合銅損を達成している事実は、総合銅損曲線より明瞭に確認される。
【表1】
Figure 0004210992
【0024】
以上の説明は、固定子電圧の制限を考慮していない。換言するならば、実質的な固定子電圧制限が無い、中低速運転おていのみ有効な説明である。周知のように、固定子電圧制限は常に存在する。しかし、一般に、中低速運転ではトルク発生に要する電圧は固定子電圧制限より遥かに低く、本領域では電圧制限は実質的に無いのと同様である。しかし、高速運転時には、固定子電圧制限が実効的に働き始め、これへの考慮が不可欠である。
【0025】
次に、高速運転を想定し、固定子電圧制限の影響を説明する。固定子電圧の2乗ノルムは、(1)式より次のように評価される。
【数9】
Figure 0004210992
トルク発生に寄与しないd軸電流がゼロに制御されている場合には、すなわち(6)式の制御がなされている場合には、(9)式は以下のように評価される。
【数10】
Figure 0004210992
【0026】
図2に、q軸電流/界磁電流平面上に、1例として、(10)式に基づき、固
Figure 0004210992
タを用い、回転子電気速度ω2n=700、740、790(rad/s)の条件で描画した。また、τ=1.5(Nm)に対応する一定トルク軌道を(2)式に従い、最小総合銅損軌道を(8)式に従い描画した。
【0027】
以上の準備のもとに、図2において、速度ω2n=740(rad/s)の状態でトルク指令値τ=1.5(Nm)が入力されたと仮定する。固定子電圧制限を考慮しない電流グローバルな最小総合銅損点は、一定トルク軌道上のA点に存在するが、A点は固定子電圧制限楕円の外部にあり、固定子電圧制限下では採用することはできない。固定子電圧制限下で、所期のトルク発生をもたらす界磁電流、q軸電流は、上下2個の固定子電圧制限楕円に挟まれているB点からD点までの一定トルク軌道上のものでなくてはならない。しかし、これらすべてが、同一の損失を有しているわけではない。
【0028】
図1に示した総合銅損曲線より、固定子電圧制限下の最小総合銅損を与える界磁電流、q軸電流は、一定トルク軌道上の電流であり、かつ負側から見て電流グローバルな最小総合銅損点に最も近い選択可能な界磁電流および同対応q軸電流である。これによれば、本例の固定子電圧制限下の最小総合銅損点は、B点となる。B点は取りも直さず、一定トルク軌道と固定子電圧制限楕円の交点である。
【0029】
請求項の本発明は、請求項1記載のベクトル制御方法であって、特に、上記説明の原理に基づくものである。請求項1記載のベクトル制御方法により、電流指令値通りに電流が制御できるので、上記の説明は、「q軸電流」、「界磁電流」を「q軸電流指令値」、「界磁電流指令値」と置換してもそのまま成立する。当然のことながら、「所期の発生トルク」は「トルク指令値またはこれと等価なトルク目標値」として指示されることになる。
【0030】
請求項の本発明では、トルク指令等に従った界磁電流指令値とq軸電流指令値とが固定子電圧の制限内で決定可能な場合には、これらを、最小総合銅損軌道((8)式)上か、または固定子電圧制限楕円((10)式)上で、決定するものである。電動機の速度が比較的低い場合には、固定子電圧制限楕円は十分大きく、トルク指令等に従った界磁電流指令値とq軸電流指令値は最小総合銅損軌道上で決定できる。この場合には、所期のトルク発生と、電流に関し真にグローバルな意味での最小総合銅損とを同時に達成する電流指令値が得られる。電動機速度の向上につれ、固定子電圧制限楕円が小さくなり、トルク指令等に従った界磁電流指令値とq軸電流指令値は、やがて固定子電圧制限楕円上で決定することになる。この場合には、所期のトルク発生と、限界ながら固定子電圧制限とを満足した上で、総合銅損を最小とする電流指令値が得られる。以上の説明で明らかなように、請求項の本発明によれば、トルク指令等に合致したトルク発生を伴い、かつ固定子電圧制限を満足した上で、更には総合銅損を最小とする最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値が存在する場合には、これが決定されると言う作用が得られる。なお、後述する実施形態例に関連して改めて詳しく説明するように、固定子電圧制限‖v‖=cは電力変換器3のリンクdc電圧より自ずと定まり(後掲の(19)式参照)、回転子の電気速度ω2nは速度検出器10から直ちに得られる((5)式参照)。
【0031】
続いて、請求項の発明の作用を説明する。請求項の発明の作用の説明で明らかにしたように、所期のトルク発生をもたらす最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値は、最小総合銅損軌道((8)式)または固定子電圧制限楕円((10)式)上に存在する。この最適電流指令値は、図1、図2では、一定トルク軌道((2)式)と最小総合銅損軌道との交点(○印で明示)、または一定トルク軌道と固定子電圧制限楕円との交点である(○印で明示)。換言するならば、最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値は、一定トルク軌道と最小総合銅損軌道からなる非線形連立方程式、または一定トルク軌道と固定子電圧制限楕円からなる非線形連立方程式の解である。
【0032】
最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値を得るには、この連立方程式を解法する必要がある。ところが、本連立方程式は4次の非線形であり、これを解析的に解法することは大変困難であり、現実的ではない。請求項の本発明は、これを繰返し演算で近似的に解法するものである。具体的な繰返し演算の方法は、後述する本発明の実施形態例に関連して詳しく説明するが、これによれば容易に電流指令値を得ることができる。また、後述の実施形態例で示すように、近似誤差は十分に小さくできる。以上の説明より理解されるように、請求項の本発明によれば、請求項の発明に基づく最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値を容易に決定できるようになると言う作用が得られる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。ハイブリッド界磁形同期電動機に対し、本発明のベクトル制御方法に基づくベクトル制御装置を適用した1実施形態例の基本構造を図4に示す。図4における電動機等の1〜11の機器は、従来のベクトル制御方法を適用した図12と同一である。本実施形態例は、ハイブリッド界磁形同期電動機に対して、トルク制御と速度制御の2つの制御モードがスイッチで切換えられる例としている。トルク制御モードの場合には外部より直接トルク指令値を受け、速度制御モードの場合には速度制御器11の出力としてトルク指令値を受ける構造としている。速度制御器11の制御器パラメータは、当然のことながら、速度制御フィードバックループが安定に動作するように、換言するならばその出力がトルク指令値として使用できるように、設計されている。当業者には周知のように、このような速度制御器の制御器パラメータは簡単に設計される。
【0039】
従来のベクトル制御装置を示した図12と本発明によるベクトル制御装置を示した図4との比較より容易に理解されるように、本発明による制御装置の特色は、界磁電流制御器13、界磁電流制御器のための直流電流検出器12、指令変換器14の新規導入にある。界磁電流制御器13と直流電流検出器12が、界磁巻線の電流を制御するための界磁電流制御工程を遂行する手段を実現している。また、指令変換器14が、請求項あるいは請求項の本発明に基づき、界磁電流制御のための界磁電流指令値と、固定子電流制御のための固定子電流指令値の内の少なくともq軸電流指令値とを、共に更新生成する工程を遂行する手段を実現している。本発明に基づき新規導入された手段の構成について、以下詳しく説明する。
【0040】
図4に明示しているように、界磁巻線に流れる界磁電流は直流電流検出器12で検出され、界磁電流制御器13へフィードバックされる。図5(a)は、界磁電流制御器13の内部構造の1例を示したものである。本例の界磁電流制御器はフィードバック形電流制御器である。本例では、特に、1次のフィードバック形制御器の1種であるPI形制御器として構成している。フィードバック電流制御系の目標とすべき制御帯域をω2cとすると、この帯域を達成するための2種の制御器パラメータは、簡単には以下のように設計すればよい。
【数15】
Figure 0004210992
【0041】
(1)式の第3式で記述された界磁回路の動特性に対し、(15)式の制御器パラメータを用いた図5(a)の界磁電流制御器で界磁電流を制御する場合には、
Figure 0004210992
としての伝達関数Gは、固定子d軸電流が(6)式の状態に維持されている状態では、次の(16)式となる。
【数16】
Figure 0004210992
すなわち、フィードバック電流制御系の伝達関数Gは、帯域ω2cを持つ1次遅れ系の特性をもつ。(16)式の第2式より、(15)式に基づく制御器パラメータが、設計者が定めた所期の電流制御帯域を達成するものであることが分かる。
【0042】
要約するならば、図5(a)に示したフィードバック形界磁電流制御器に、(15)式の制御器パラメータを用いれば、ハイブリッド界磁形同期電動機を可変速運転を行う動的状態下でも、設計者が指定した界磁電流指令値に、設計者が設計した時定数で追随する界磁電流を確保できるようになる。設計者が設計すべき時定数としては、固定子電流制御系の時定数と同程度が設計上の一応の目安である。なお、時定数は、数値的には、概ね電流制御帯域ω2cの逆数となる。従って、電流制御帯域ω2cとし2,000〜3,000(rad/s)を確保すれば、時定数0.3〜0.5(ms)の十分に高速な追随性能が得られる。1次制御器の1種であるPI制御器に代わって、高次のあるいは高度な電流制御器を使用しても、もちろん差し支えない。実際的には、図5(a)、(15)式のPI制御器で満足いく電流制御性能を得ることができる。
【0043】
図5(b)は、界磁電流制御器の第2の実施形態例である。本例の界磁電流制御器はフィードフォワード形電流制御器である。フィードフォワード形電流制御器では、図5(b)に明示しているように電流をフィードバックする必要がないので、図4の直流電流検出器12は必要ない。図4の直流電流検出器12は、既に明言しているように、図5(a)のフィードバック形界磁電流制御器のためのものである。
【0044】
(1)式の第3式で記述された界磁回路の動特性に対し、所期の電流制御帯域を設計パラメータω2cとしてもつ図5(b)のフィードフォワード界磁電流制御
Figure 0004210992
へ至る、フィードフォワード電流制御系としての伝達関数Gは、固定子d軸電流が(6)式の状態に維持されている状態では、次の(17)式となる。
【数17】
Figure 0004210992
すなわち、フィードフォワード電流制御系の伝達関数Gは、帯域ω2cを持つ1次遅れ系の特性をもつ。(17)式より、図5(b)のフィードフォワード形界磁電流制御器が、設計者が定めた所期の電流制御帯域ω2cを達成するものであることが分かる。なお、電流制御帯域ω2cの設計法は、及び電流制御帯域と時定数との関係は、既に説明したフィードバック形電流制御器の場合と同様である。
【0045】
以上要約するならば、図5(b)に示したフィードフォワード形界磁電流制御器を用いれば、ハイブリッド界磁形同期電動機を可変速運転を行う動的状態下でも、設計者が指定した界磁電流指令値に、設計者が設計した時定数で追随する界磁電流を確保できるようになる。フィードフォワード形界磁電流制御器として、図5(b)に例示した1次制御器に代わって、高次の制御器を使用して差し支えないことを指摘しておく。
【0046】
次に、指令変換器14を説明する。指令変換器14は、請求項あるいは請求項の本発明に基づき、界磁電流制御のための界磁電流指令値と、固定子電流制御のための固定子電流指令値の内の少なくともq軸電流指令値とを、共に更新生成する工程を遂行する手段を実現している。指令変換器における処理は、請求項、請求項の発明に基づき、遂行されている。本処理を適切に遂行し、所期の電流指令値を出力するために、指令変換器14には、トルク指令値に加えて、電力変換器からリンクdc電圧、固定子電圧指令値、回転子速度が、入力されている。指令変換器14による処理の内容を、以下、詳しく説明する。
【0047】
指令変換器14による処理は、ディジタル的に遂行される。図6は、指令変換器による処理手順をフローチャートで示したものである。同チャートでは、現時点をn時点の制御周期とし、n時点での一連の処理を明示している。
【0048】
ステップS1では、以降の処理で共通して利用される信号の前処理を遂行する。まず、(5)式に従い、n時点での機械速度から電気速度を生成する。次に、n
Figure 0004210992
る。
【数18】
Figure 0004210992
続いて、n時点で電力変換器8から得たリンクdc電圧vdcに基づき、n時点での固定子制限電圧cを算定する。両者の間には、基本的に、次の関係が存在する。
【数19】
Figure 0004210992
【0049】
ステップS2で、所要の固定子電圧が、ステップS1で算定した固定子制限電圧c以内か否かを算定する。トルク指令値等が連続的に変化しているとすれば、n時点のトルク指令値のためのn時点の固定子電圧は、1制御周期前の(n−1)時点の固定子電圧と概ね同一と考えてよい。これは固定子電流制御器の出力から直ちに得ることができる。固定子電圧に関し、次の(20)式が成立する場合には、固定子電圧制限の影響を実質的に受けない処理を遂行するステップS3へ進む。
【数20】
Figure 0004210992
反対に、(20)式が成立しない場合には、固定子電圧制限の影響を取込んだ処理を遂行するステップS4へ進む。
【0050】
ステップS2でトルク指令値等に従った界磁電流指令値とq軸電流指令値とが固定子電圧の制限内で決定できることが判明し、ステップS3へ進んだ場合を説明する。ステップS3では、電流グローバルな意味で最小総合銅損を達成する界磁電流指令値とq軸電流指令値を決定することになる。具体的には、請求項2の発明に基づき、(2)式に基づく一定トルク軌道と(8)式に基づく最小総合銅損軌道からなる非線形連立方程式を解くことになる。これは、請求項の発明に基づく、次の(21)〜(23)式に示した、kに関し繰り返す繰返アルゴリズムで解法する。
【数21】
Figure 0004210992
【数22】
Figure 0004210992
【数23】
Figure 0004210992
ここに、Lmt(・)はリミッタ処理を意味する。q軸電流指令値のリミッタ範囲は、正トルクの場合は0〜正制限値、負トルクの場合は負制限値〜0に設定すればよい。
【0051】
図7に、表1の電動機パラメータを利用して、トルク指令値τ=1.5(Nm)に対
Figure 0004210992
場合の求解の様子を示す。特異な初期値に対しても、5回の繰返しで、概ね真値を得ている。トルク指令値が連続的に変化する場合には、前時点の電流指令値を初期値に利用すれば、1、2回の繰返しで所期の最適電流指令値を得ることができる。
【0052】
ステップS2で、発生すべき固定子電圧が固定子電圧制限に到達することが判明して、ステップS4へ進んだ場合を説明する。ステップS4では、固定子電圧制限で発生可能な最大のトルク目標値cτmaxの算定を、次の(24)式に従い行う。
【数24】
Figure 0004210992
【0053】
Figure 0004210992
値cτmaxの大小関係を評価する。次の(25)式の関係が成立する場合には、固定子電圧制限に達していても、所期のトルク発生が可能であるので、ステップS6へ進む。
【数25】
Figure 0004210992
反対に、(25)が成立しない場合には、固定子電圧制限のため所期のトルク発生が不可能であるので、ステップS7へ進む。
【0054】
ステップS5で、固定子電圧制限に達していても所期のトルク発生が可能であることが判明し、ステップS6へ進んだ場合を説明する。ステップS6では、固定子電圧制限に達した上で、最小総合銅損で、所期のトルク発生をもたらす界磁電流指令値とq軸電流指令値を決定することになる。具体的には、請求項の発明に基づき、(2)式に基づく一定トルク軌道と(10)式に基づく固定子電圧制限楕円からなる非線形連立方程式を解くことになる。これは、請求項4の発明に基づく、次の(26)〜(28)式に示した、kに関し繰り返す繰返アルゴリズムで解法する。
【数26】
Figure 0004210992
【数27】
Figure 0004210992
【数28】
Figure 0004210992
ここに、gは真の解への収束速度を調整するためのゲインであり、これは次式のように決定すればよい。
【数29】
Figure 0004210992
Lmt(・)はリミッタ処理を意味しており、リミッタ値の下限はゼロ、上限は電流制限値でよい。
【0055】
図8に、表1の電動機パラメータを利用して、本繰返アルゴリズムによる求解の様子を例示した。なお、運転条件及び初期値等は次のように選定した。
【数30】
Figure 0004210992
適当な初期値に対し、2度の繰返しで真の電流指令値を得ていることが確認される。なお、第1回計算で大きな狂いを発生しているが、これは初期値を適当に与えたことに起因している。トルク指令値が連続的に変化する場合には、(n−1)時点の指令値を初期値に利用でき、1回の繰返し計算で確実に最適電流指令値を得ることができる。
【0056】
ステップS5で、固定子電圧制限のため所期のトルク発生が不可能であると判定し、ステップS7へ進んだ場合を説明する。ステップS7では、固定子電圧制限下で発生可能な最大トルクを発生するための界磁電流指令値、q軸電流指令値を決定する。こらの指令値は、(12)、(13)式における電流値などをその指令値で置換した次式で、直ちに決定される。
【数31】
Figure 0004210992
【数32】
Figure 0004210992
【0057】
以上、本発明の指令変換器14による処理の詳細を、図6のフローチャートを中心に詳しく説明した。次に、指令変換器14が本フローチャートに従った処理を遂行し連続的な電流指令値を生成する様子を、トルク制御を例に取り、総合的に説明する。簡単のため、停止時のハイブリッド界磁形同期電動機に一定のトルク指令値τ=1.5(Nm)が与えられ、ハイブリッド界磁形同期電動機がゼロ速から加速している運転状況を、図9と共に考える。図9(a)はトルク指令値に対応して選択された電流指令値を、図9(b)はトルク/速度図を用いてトルク指令値と同応答値の概略的関係を、示したものである。なお、図9(a)は、表1のパラメータを利用し電圧制限値をc=50(V)として描画している。
【0058】
図9(a)を考える。停止時では固定子電圧は十分に余裕があり、最小総合銅損軌道上のA点を最適動作点とする。加速につれ電圧制限楕円が縮少してくるが、固定子電圧制限楕円がA点に至るまで、最適動作点としてはA点が維持される。すなわち、この間、同一の電流指令値がステップS3((21)〜(23)式)で決定される。図9(b)においては、この間の動作は、A点からA’点までの運転に対応する。
【0059】
本例では、おおよそ電気速度ω2n=700(rad/s)で固定子電圧制限を受け始める。しかし、引続きトルク指令値に従った所期のトルク発生は可能であり、一定トルクでの加速が続く。この間、最適動作点すなわち電流指令値は一定トルク軌道上のA点からB点へ移動する。図9(b)においては、この間の動作は、A’点からB点の運転に対応する。この間の電流指令値は、ステップS6((26)〜(27)式)で決定される。当然、電流指令値は制御周期ごと連続的に変化する。
【0060】
本例では、おおよそ電気速度ω2n=790(rad/s)で図9(a)のB点に到達し、これ以上の速度では、固定子電圧制限のため、トルク指令値に従ったトルク発生は不能となる。このため、一定トルク軌道から離脱し、固定子電圧制限下の最大トルク軌道に移る。本軌道に乗った時点で、加速につれて、固定子電圧制限楕円が縮少するため、電流指令値は最大トルク軌道上のB点からC点に向かって制御される。なお、最大トルク軌道は速度の関数であるので、速度増加とともに若干変化することになるが、本例では、図の輻輳を避けるため1軌道のみを描画している。図9(b)においては、この間の動作は、B点からC点の運転に対応する。この間の電流指令値は、ステップS7((31)、(32)式)で決定される。この場合も、当然、電流指令値は制御周期ごと連続的に変化する。
【0061】
図9を用いて説明したトルク制御を、試作したハイブリッド界磁形同期電動機を用い、実験的に検証した。図10に試験装置の概観を示す。右端の試作ハイブリッド界磁形同期電動機は、トルクセンサを介して、左端の負荷装置に結合されている。試作ハイブリッド界磁形同期電動機の特性は、表1と概ね同様である。本試験では、負荷装置はフリーラン状態に保ち、実質的には、増加慣性モーメントとして利用した。
【0062】
停止時の試作ハイブリッド界磁形同期電動機に、固定子電圧制限値を約c=50(V)とし、一定トルク指令値τ=1.5(Nm)を与えたときのトルク/速度応答を図11(a)に示す。図11(a)は、定常応答ではなく動的な瞬時応答である点には注意されたい。なお、発生トルクは、トルクセンサが本試験に耐え得る高速応答性を有しないため、q軸電流、界磁電流の実測値から(2)式に基づき算定した。図11(b)は、図11(a)と同一の回転子機械速度、発生トルクに加え、指令変換器14が生成したq軸電流指令値、界磁電流指令値を、時間応答として表現したものである。同図は上から、回転子機械速度、発生トルク、q軸電流指令値、界磁電流指令値を示している。図11(a)、(b)では、A、A’、B、Cの各動作点が互いに対応している。図11(c)は、図11(b)におけるq軸電流指令値、界磁電流指令値を、相対関係として再描画したものである。なお、同図には参考までに設計上の各種軌道も破線で描画している。図11(a)の瞬時的なトルク/速度応答によれば、軌道変更を伴うB点前後で、若干のトルクリプルが見られる。これは過渡応答の影響である。事実、図11(b)の時間応答によれば、電流指令値は期待通りに生成されている。図11(c)からも、所期の電流指令値が生成されていることが確認される。
【0063】
Figure 0004210992
常時ゼロに設定した。しかし、本発明は、d軸電流指令値を常時ゼロに設定することを強要するものではないことを指摘しておく。例えば、図6に示した処理手順に従って、界磁電流指令値、q軸電流指令値を決定した後に、d軸電流指令値
Figure 0004210992
【数33】
Figure 0004210992
この場合には、電動機のみを対象とした最小総合銅損の特性は失われるが、反対に、力率の向上を図ることができる。力率向上は、電動機による損失に電力変換器による損失を含めた総合損失の低下に寄与する。(33)式はd軸電流指令をゼロを含め負側に選定することを示しているが、負のd軸電流指令値は固定子電圧制限の緩和に寄与する効果もある。
【0064】
本発明に関する上記の実施形態例は、図4で例示したトルク制御、あるいは速度制御に関するものであるが、当業者にとっては明白なように、本発明は位置制御においても利用できることを指摘しておく。
【0065】
【発明の効果】
【0066】
特に、請求項あるいは請求項の本発明によれば、q軸電流指令値と界磁電流指令値の選択の同時性と自由性とが活用できるようになり、所期のトルク発生を達成しながら、かつ設計者が指定した合理的評価基準(例えば、損失の最小、運転領域の拡大などの基準)を満足する最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値とが生成できるようになると言う作用が得られた。この結果、請求項あるいは請求項の本発明によれば、本発明が目的にした、所期のトルク発生を達成しながら、かつ設計者が指定した合理的評価基準(例えば、損失の最小、運転領域の拡大などの基準)を満足する、ハイブリッド界磁形同期電動機のための優れたベクトル制御方法あるいはベクトル装置を実現できるようになると言う効果が得られる。
【0067】
特に、請求項の本発明によれば、トルク指令等に合致したトルク発生を伴い、かつ固定子電圧制限を満足した上で、更には固定子巻線と界磁巻線に発生する総合銅損を最小とする最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値が存在するならば、これが決定されると言う作用が得られた。この作用の結果、請求項の本発明によれば、トルク指令等に合致したトルク発生が可能な運転状態では、トルク指令等に合致したトルク発生をもたらし、かつ総合損失の最小化を図る効率的なベクトル制御方法が実現できると言う効果が得られる。
【0068】
特に、請求項の発明によれば、請求項の発明に基づく最適な界磁電流指令値とq軸電流指令値を容易に決定できるようになると言う作用が得られた。この作用の結果、請求項の発明によれば、請求項の発明に基づくベクトル制御方法を容易に実現できるようになると言う効果が得られる。
【0070】
以上述べた本発明の効果は、実施形態例の説明に関連して明示したように、ハイブリッド界磁形同期電動機実機による実験でも検証確認されている。これらの効果は、本発明が提供するベクトル制御方法及び同装置が、所期の目的を達成した有用性の高いベクトル制御方法及び同装置であることを立証するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイブリッド界磁形同期電動機における最小総合銅損軌道、一定トルク軌道、総合銅損曲線の1相互関係例を示す図
【図2】ハイブリッド界磁形同期電動機における最小総合銅損軌道、一定トルク軌道、固定子電圧制限楕円の1相互関係例を示す図
【図3】ハイブリッド界磁形同期電動機における固定子電圧制限楕円、最大トルク軌道の1相互関係例を示す図
【図4】本発明によるベクトル制御装置の概略構成を示すブロック図
【図5】1実施形態例における界磁電流制御器の概略構成を示すブロック図
【図6】1実施形態例における指令変換器の処理手順を示すフローチャート
【図7】1実施形態例におけるq軸電流指令値、界磁電流指令値のための繰返アルゴリズムの応答例を示す図
【図8】1実施形態例におけるq軸電流指令値、界磁電流指令値のための繰返アルゴリズムの応答例を示す図
【図9】トルク制御時の応答例の概略を示す図
【図10】本発明を適用した、テストベンチ上のハイブリッド界磁同期電動機を示す図
【図11】ハイブリッド界磁同期電動機実機による実験結果の1例を示す図
【図12】従来のベクトル制御装置の概略構成を示すブロック図
【符号の説明】
1 ハイブリッド界磁形同期電動機
2 位置検出器
3 電力変換器
4 交流電流検出器
5a 3相2相変換器
5b 2相3相変換器
6a ベクトル回転器
6b ベクトル回転器
7 固定子電流制御器
8 正弦信号発生器
9 直流電圧電源
10 速度検出器
11 速度制御器
12 直流電流検出器
13 界磁電流制御器
14 指令変換器

Claims (4)

  1. 固定子電流を、回転子永久磁石のN極位置に選定したd軸とこれに直交するq軸とで構成される回転dq座標系上で、電流ベクトルのd軸成分及びq軸成分として分割し制御する電流制御工程と、界磁巻線の電流を制御するための界磁電流制御工程とを有する、回転子に永久磁石と界磁巻線とを備えたハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法であって、
    トルク指令値あるいはこれと等価なトルク目標値に従って、該界磁電流制御工程のための界磁電流指令値と、該固定子電流制御工程のための固定子電流指令値の内の少なくともq軸電流指令値とを、実質的な固定子電圧制限が無い中低速運転領域において、速度に依存することなく、共に更新生成するようにしたことを特徴とするハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法。
  2. 該界磁電流指令値と該q軸電流指令値とを、固定子銅損と回転子界磁銅損とからなる総合銅損が最小となる軌道を規定した最小総合銅損軌道上で、決定することを特徴とする請求項記載のハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法。
  3. 該トルク指令値あるいは該トルク目標値に従った該界磁電流指令値と該q軸電流指令値とを、制御遂行時の繰返し演算で決定するようにしたことを特徴とする請求項記載のハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御方法。
  4. 固定子電流を、回転子永久磁石のN極位置に選定したd軸とこれに直交するq軸とで構成される回転dq座標系上で、電流ベクトルのd軸成分及びq軸成分として分割し制御する電流制御手段と、界磁巻線の電流を制御するための界磁電流制御手段とを有する、回転子に永久磁石と界磁巻線とを備えたハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御装置であって、
    トルク指令値あるいはこれと等価なトルク目標値に従って、該界磁電流制御手段のための界磁電流指令値と、該固定子電流制御手段のための固定子電流指令値の内の少なくともq軸電流指令値とを、実質的な固定子電圧制限が無い中低速運転領域において、速度に依存することなく、共に更新生成する手段を有することを特徴とするハイブリッド界磁形同期電動機のベクトル制御装置。
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