この明細書では、その装置自身がパケットを生成し、送信を行うことを送信、他の装置によって生成されたパケットを、必要であれば複製し、配下(送信装置を上流として下流側)装置に送信することを配信と定義する。
ICMP(Internet Control Message Protocol)、IGMP(Internet Group Management Protocol)等を含む広義のIP(Internet Protocol)を用いたネットワーク(IPネットワーク)では、送信装置は、複数の受信装置に対してファイルや動画像のデータを送信するマルチキャスト通信(IPマルチキャスト)を行うことができる。IGMPを用いたマルチキャストグループの管理手順は、IFTF(Internet Engineering Task Force)のRFC(Request For Comments)1112等に規定されている。
このようなマルチキャスト通信では、受信装置は、マルチキャストルータを介してマルチキャストデータの送信を行う送信装置に接続される。この場合、受信装置とマルチキャストルータとは、有線又は無線を介して接続される。更に、受信装置は、IGMP−joinパケット(経路確立要求)もしくはIGMP−Reportパケット(経路確立要求)(以下では単にjoinパケットと表記する)をマルチキャストルータへ送信する。このjoinパケット(経路確立要求)を受信したマルチキャストルータは、受信装置に対してマルチキャストパケットを配信する必要があることを知り、送信装置から供給されるマルチキャストパケットの配信を行う。
IPネットワークにおけるマルチキャストパケットの配信経路(マルチキャストパケット配信経路)は、受信装置から送信装置の方向に確立される。具体的には、受信装置がjoinパケット(経路確立要求)を送信すると、このjoinパケット(経路確立要求)を受信したマルチキャストルータは、自身の配信テーブルに、joinパケット(経路確立要求)により要求されたマルチキャストグループを追加し、上流(受信装置から見て送信装置側)にマルチキャスト配信経路の確立要求を送信する。このマルチキャスト配信経路の確立要求を受信した上流のマルチキャストルータも同様に配信テーブルを更新し、更に上流のマルチキャストルータに向けてマルチキャスト配信経路確立要求(経路確立要求)を送信する。
送信装置が接続しているマルチキャストルータにマルチキャスト配信経路確立要求(経路確立要求)が到達すると、送信装置から受信装置へのマルチキャスト配信経路が確立されることになる。なお、ある受信装置がマルチキャストグループへのjoinパケット(経路確立要求)を送信した際に、既に他の受信装置がマルチキャストパケットを受信しており、送受信装置間のマルチキャスト配信経路上に存在するあるマルチキャストルータまでマルチキャスト配信経路が確立されている場合は、マルチキャスト配信経路確立要求(経路確立要求)がそのマルチキャストルータに到達した時点で、送信装置から受信装置へのマルチキャスト配信経路が確立されることになる。
マルチキャスト配信経路の確立後、送信装置は、自身が接続しているマルチキャストルータにマルチキャストパケットを送信する。マルチキャストルータは、配下に複数の受信装置が存在し、これら複数の受信装置へマルチキャストパケットを送信するために複数のマルチキャスト配信経路を必要とする場合に、受信したマルチキャストパケットを複製して各マルチキャスト配信経路へ送信する。
このように、配下に複数のマルチキャスト配信経路が存在する位置、即ちマルチキャスト配信経路が分岐する位置に存在するマルチキャストルータは、マルチキャストパケットを複製して配信が必要なマルチキャスト配信経路にのみ送信することにより、マルチキャスト配信経路上でのトラヒックを必要以上に増加させず、ネットワークの帯域を有効に利用することができる。
上記において説明したIPマルチキャストは、IP層の処理を行うことができるマルチキャストルータが複製して配信することにより実現されるものであり、マルチキャストルータと受信装置を接続するためにLAN(Local Area Network)内で使用されるデータリンク層スイッチでは、通常IP層の処理を行わないため、マルチキャストルータから配信されたマルチキャストパケットはその経路に受信装置が存在するかどうかにかかわらず、全ての経路に配信され帯域が無駄に使用されることになる。
このようにLAN内で帯域が無駄に使用されることを防止し、受信装置が存在する経路にのみマルチキャストパケットを配信するための方法として、データリンク層スイッチが自身を経由するトラヒックをモニタし、受信装置から送信されるjoinパケット(経路確立要求)が届いたポートを記録することで、受信装置が存在する経路を認識し、マルチキャストルータからマルチキャストパケットが配信された際に、受信装置が存在する経路にのみマルチキャストパケットを配信するIGMP−Snoopingという方法が考えられている。この方法は、例えば、下記非特許文献1に記載されている。
この方法を使用することにより、LAN内でも受信装置の存在する経路にのみマルチキャストパケットを配信することができ、帯域を有効に利用することができる。
ところで、受信装置が有線を介してデータリンク層スイッチ等の中継装置に接続される場合、受信装置が接続されている経路にマルチキャストパケットが送信されなければ、受信装置はマルチキャストパケットを受信することができないため、これら中継装置は配下に受信装置が存在するマルチキャスト配信経路の数だけマルチキャストパケットを複製して送信する必要がある。一方、中継装置が無線基地局であり、複数の受信装置が無線基地局を介してマルチキャストパケットを受信する場合、これら複数の受信装置が無線基地局から送信されるマルチキャストパケットの電波信号を同時に受信することができる。このため、無線基地局は受信装置の数だけマルチキャストパケットを複製する必要がなく、1台の受信装置にパケットを送信する場合と同じ使用帯域で、複数の受信装置への配信を行うことができる。
マルチキャストパケットを受信する受信装置が無線基地局を介してデータリンク層スイッチに接続される場合、受信装置は無線基地局間を移動することがある。受信装置が無線基地局間を移動した場合、移動前の無線基地局がデータリンク層スイッチに接続されている経路と、移動後の無線基地局がデータリンク層スイッチに接続されている経路は異なるため、移動先の無線基地局を介してマルチキャストパケットを受信するためには、データリンク層スイッチにおいて、移動先の無線基地局へのマルチキャスト配信経路が新たに確立される必要がある。しかしながら、上述したようにマルチキャスト配信経路は、受信装置がjoinパケット(経路確立要求)を送信し、データリンク層スイッチは、このjoinパケット(経路確立要求)が届いたポートから受信装置が存在する経路を認識することによって確立される。通常、受信装置がjoinパケット(経路確立要求)を送信するのは、マルチキャストグループに参加する場合と、マルチキャストルータから配下受信装置の中に対応するマルチキャストグループに属する受信装置が存在するかどうかを確認するため、受信装置の存在確認要求であるIGMP−Queryパケット(以下では単にQueryパケットと表記する)を受信した際に、その応答として送信する場合のみである。このため、移動後に、データリンク層スイッチの上流に存在するマルチキャストルータからQueryパケットが送信され、受信装置がそれに応答してjoinパケット(経路確立要求)を送信するまで、受信装置はマルチキャストパケットを受信することができない。Queryパケットの送信間隔のデフォルト値は120秒であるため、移動先の無線基地局配下に同一のマルチキャストグループの受信装置が存在しない場合、平均して60秒程度の期間、マルチキャストパケットを受信することができないことになる。
また、受信装置が移動した後、移動元の無線基地局配下に同じマルチキャストグループに参加している他の受信装置が存在しない場合、移動元の無線基地局が接続された経路への配信を停止する必要があるが、受信装置の移動後にマルチキャストルータがQueryパケットを送信し、移動元の無線基地局が接続されている経路からjoinパケット(経路確立要求)の応答がないことにより、無線基地局が接続されている経路に受信装置が存在しなくなったことをデータリンク層スイッチが認識するまで移動元の無線基地局が接続されている経路への配信は停止しない。このため、受信装置が移動した後も、そのマルチキャストパケットを受信している受信装置が存在しないにもかかわらず、移動元の無線基地局が接続されている経路にマルチキャストパケットが配信され、無線基地局から無線側にも配信されるため、同様に平均して60秒程度の期間、帯域が無駄に使用されることになる。
このように帯域が無駄に使用されることを防止し、受信装置が存在しないマルチキャスト配信経路を迅速に削除するための方法として、IGMPでは、受信装置がマルチキャストパケットの受信を停止する際、マルチキャストグループからの脱退を要求するためのIGMP−leaveパケット(脱退要求)(以下では単にleaveパケットと表記する)をマルチキャストルータに送信する方法がある。leaveパケット(脱退要求)を受信したマルチキャストルータは、Queryパケットを送信し、受信装置が存在するかどうかを確認し、存在しない場合にはマルチキャスト配信経路を削除するという処理を行うため、受信装置が存在しない経路への配信を迅速に停止することができる。しかしながら、無線環境においては、受信装置は移動直前までマルチキャストパケットを受信する必要があるため、移動直前にLeaveパケット(脱退要求)を送信することは非常に困難である。
このように、移動先の無線基地局からマルチキャストパケットが配信されない、及び移動元の無線基地局の接続された経路へのマルチキャストパケット配信を停止することができない、という問題を解決するため、無線基地局毎にMSA(Mobility Support Agent)を配置し、このMSAによりマルチキャスト配信経路を確立、削除する方法が考えられている。具体的には、受信装置は移動前に、余裕をもって移動先の無線基地局が接続された経路に存在するMSAに対して、移動後には移動元の無線基地局が接続された経路に存在するMSAに対して、移動先におけるマルチキャスト配信経路の確立、及び移動元におけるマルチキャスト配信経路の削除を要求するパケットを送信する。このパケットを受信したMSAは、受信装置の代理としてマルチキャストルータに対してjoinパケット(経路確立要求)、もしくはleaveパケット(脱退要求)を送信する。これにより、受信装置が移動する前に移動先におけるマルチキャスト配信経路が確立され、移動した後に移動元におけるマルチキャスト配信経路が削除される。この方法は、例えば、下記非特許文献2に記載されている。
また、MSAを配置せず、移動先及び移動元のマルチキャストルータに直接joinパケット(経路確立要求)やleaveパケット(脱退要求)を送信する方法も考えられている。この方法では、移動先の予測のために、無線リンクの接続強度を利用し、移動しそうな無線基地局の接続されている経路に存在するマルチキャストルータにjoinパケット(経路確立要求)を、移動後に移動元の無線基地局の接続されている経路に存在するマルチキャストルータにleaveパケット(脱退要求)を送信することで、MSAを配置せずにマルチキャスト配信経路の確立、削除を行っている。この方法は、例えば、下記非特許文献3に記載されている。
一方、これら2つの非特許文献に記載されている方法のように移動前にマルチキャスト配信経路を確立するのではなく、移動後に受信装置が移動を検知し、joinパケット(経路確立要求)を送信することで、マルチキャストルータからQueryパケットが送信される前にマルチキャスト配信経路を確立する方法が考えられている。この方法では、移動後にマルチキャストルータが送信する広告パケットを受信した際に、移動元のマルチキャストルータとは異なるマルチキャストルータからの広告であった場合に、移動したことを検知しjoinパケット(経路確立要求)を送信することにより、移動後のマルチキャストパケットを受信するまでの時間を短縮している。この方法は、例えば、下記非特許文献4に記載されている。
Morten Jagd Christensen(Thrane & Thrane)ら著,「Considerations for IGMP and MLD snooping switches」,IETF Internet−draft,draft−ietf−magma−snoop−08.txt,July 2003.
Jiang Wu(Department of Teleinformatics,Royal Institute of Technology、Stockholm)著,「AN IP Mobility Support Architecture for the 4GW Wireless Infrastructure」,Proceedings of the 1999 Personal Computing and Communication Workshop(PCC‘99).
Yuki Moritaniら著,「Seamless Hand−off Method for Multicast Receivers Based on Wireless Link Connection Intensity」,Proceedings of IEEE Wireless and Networking Conference 2003(WCNC2003).
橋本 崇ら著、「Mobile IPネットワーク上でのマルチキャスト通信に関する一検討」、情報処理学会モバイルコンピューティングとワイヤレス通信研究報告No.16−6
しかしながら、上記非特許文献2に記載の技術では、マルチキャストルータの配下にデータリンク層スイッチが接続され、その配下に無線基地局が接続され、その配下に受信装置が存在する環境において、上述した非特許文献2に記載されている方法を実現するためには、無線基地局毎にMSAを配置しなければ、移動先の無線基地局が接続された経路にマルチキャストパケットが配信されず、受信装置の移動後にマルチキャストパケットを受信することができないという問題があった。また、無線基地局毎にMSAを配置した場合には、移動前に移動先ネットワークにおいて無線区間にマルチキャストが配信されてしまい、移動しない場合であっても、無線区間の帯域を無駄に消費してしまうという問題があった。また、移動元無線基地局から移動先無線基地局へ移動した後は、移動元無線基地局に接続されたMSAに対してleaveパケット(脱退要求)を送信し、移動元無線基地局が接続された経路へのマルチキャスト配信を停止してしまうため、移動先の無線基地局へ移動後、移動方向を変えて、再度移動元の無線基地局に移動する場合、移動元無線基地局におけるマルチキャストパケットの配信が停止してしまっており、移動後即座にマルチキャストパケットを受信することができないという問題があった。
また、上記非特許文献3に記載の技術では、マルチキャストルータの配下にデータリンク層スイッチが接続され、その配下に無線基地局が接続されている環境で、無線基地局間を移動しても、データリンク層スイッチの接続ポートが変化するのみで、上流に接続されているマルチキャストルータが変化しない場合には、データリンク層スイッチの各ポートに対してjoinパケット(経路確立要求)やleaveパケット(脱退要求)を送信しなければならないが、データリンク層スイッチには必ずしもアドレスが割当てられているわけではなく、またポート毎に異なるアドレスが割当てられることはないため、ポートを指定してjoinパケット(経路確立要求)やleaveパケット(脱退要求)の送信を行うことはできないという問題点がある。また、受信装置が移動先無線基地局の広告を受信しなければならないため、受信装置は現在接続している無線基地局と移動先無線基地局の2つの無線基地局からの電波を受信できる機能を備えている必要があった。
また、上記非特許文献4に記載の技術では、受信装置の移動検知に広告パケットのマルチキャストルータのアドレスを使用しているため、マルチキャストルータの配下にデータリンク層スイッチが接続され、その配下に無線基地局が接続されている環境では、無線基地局間を移動しても、上流のマルチキャストルータは変化せず、接続する無線基地局のみが変化するという場合には、joinパケット(経路確立要求)を送信できず、移動先の無線基地局において、移動後すぐにマルチキャストパケットを受信することはできないという問題があった。また、移動元の無線基地局におけるマルチキャスト配信経路の削除については言及されておらず、移動元の無線基地局においてはマルチキャストパケットの配信を停止することができないという問題があった。
このように、従来の方法では、マルチキャストルータの配下にデータリンク層スイッチが接続され、その配下に無線基地局が接続され、その配下に受信装置が存在する環境において、無線基地局毎にMSAのような特別なノード装置を設置したり、受信装置が複数の無線基地局からの電波を受信できる機能を備えたりしなければ、受信装置が無線基地局間を移動した際に、移動後にマルチキャストルータからQueryパケットが送信されるまでマルチキャストパケットを受信できないという問題があった。また、MSAのような特別なノード装置を無線基地局毎に設置しなければ、移動元の無線基地局からのマルチキャストパケットの配信を停止できないという問題があった。また、MSAのような特別なノード装置を無線基地局毎に設置した場合には、移動前に無線区間にマルチキャストパケットが配信されてしまい、無線区間の帯域が無駄に消費されてしまうという問題があった。このため、無線基地局毎に特別なノード装置を設置したり、受信装置が複数の無線基地局からの電波を受信できる機能を備えたりすることなく、これらの問題を解決する方法が要求されている。
そこで本発明では、マルチキャストルータの配下にデータリンク層スイッチが接続され、その配下に無線基地局が接続され、その配下に受信装置が存在する環境において、無線基地局毎に特別なノード装置を設置したり、受信装置に複数の無線基地局からの電波を受信できる機能を備えたりすることなく、かつ無線区間の帯域を無駄に消費することなく、受信装置が無線基地局間を移動した際に、移動先の無線基地局におけるマルチキャストパケットの受信までの遅延時間を短くすることを可能とする移動通信システム、移動端末、ノード装置、及び移動通信方法を提供することを課題とする。
本発明の移動通信システムは、(1)送信装置から送信される所定のマルチキャストグループ宛ての情報信号を受信し、当該マルチキャストグループ宛ての情報信号の配信を希望する移動端末が存在する場合に、受信した信号を複製して配下のネットワークに向けて配信することが可能なマルチキャストルータと、(2)マルチキャストルータにより配信された情報信号を受信し、マルチキャストグループ宛ての情報信号の配信を希望する移動端末が存在するマルチキャスト配信経路にのみ当該受信した情報信号を配信することが可能なデータリンク層スイッチと、(3)データリンク層スイッチに接続され、データリンク層スイッチより配信された情報信号を配下の無線ネットワークに向けて配信することが可能な無線基地局と、(4)無線基地局から配信される情報信号を受信する移動端末と、を含む移動通信システムであって、移動端末は、(4−1)自身が接続している無線基地局が切り替わったことを検知する局切替検知手段と、(4−2)自身が接続している無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ、及び自身が接続しているマルチキャストルータがどのマルチキャストルータであるかを判定する接続局判定手段と、(4−3)マルチキャスト配信経路を確立することを要求する経路確立要求を送信する確立要求送信手段と、(4−4)自身が属するマルチキャストグループから脱退することを要求する脱退要求を送信する脱退要求送信手段と、(4−5)局切替検知手段の検知、及び接続局判定手段の判定に応じて、確立要求送信手段に対して経路確立要求を送信するように指示する第1指示信号及び脱退要求送信手段に対して脱退要求を送信するように指示する第2指示信号を出力する送信制御手段と、を備え、送信制御手段は、局切替検知手段によって無線基地局の切り替えが検知され、かつ接続局判定手段によって当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータは移動端末が接続しているマルチキャストルータとは異なると判定された場合には、前記切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信するように確立要求送信手段に対して第1指示信号を出力し、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータは、移動端末の確立要求送信手段から送信された経路確立要求を受信した場合には、そのマルチキャストルータ、およびそのマルチキャキャストルータに接続される前記データリンク層スイッチまでのマルチキャスト配信経路を確立し、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているデータリンク層スイッチは、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局を介して移動端末の経路確立要求を受信した場合にのみ、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局にマルチキャストルータから受信した情報信号を配信することを特徴とする。
本発明の移動通信システムによれば、無線基地局の切り替え後に、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータが現在接続しているマルチキャストルータと異なる場合には、送信制御手段が隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信するように第1指示信号を出力するので、移動前に移動先候補であるマルチキャストルータに対して経路確立要求が送信され、マルチキャスト配信経路が確立される。このため、移動端末が隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ配下に移動した際に、マルチキャストデータの受信までの遅延時間を短くすることができる。一方で、この段階では、隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ配下に存在するデータリンク層スイッチにはマルチキャスト配信経路が確立されていないため、データリンク層スイッチ配下にはマルチキャストデータが配信されず、無線帯域を無駄に消費することもない。
また本発明の移動通信システムでは、局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知し、かつ接続局判定手段が当該切り替え後の無線基地局が接続しているマルチキャストルータは以前に前記経路確立要求を送信したマルチキャストルータと一致しなくなったと判定した場合には、以前に前記経路確立要求を送信したマルチキャストルータから当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータを除いたマルチキャストルータに対して脱退要求を送信するように第2指示信号を出力することも好ましい。このようにすれば、無線基地局の切り替え後に、以前にマルチキャスト配信経路を確立したマルチキャストルータ配下の無線基地局に隣接しない無線基地局に移動した場合には、送信制御手段が当該マルチキャストルータに対して脱退要求を送信するように第2指示信号を出力するので、配下の無線基地局に移動する可能性が低いマルチキャストルータにおけるマルチキャスト配信経路を適切に削除することができ、有線の帯域やマルチキャストルータのメモリ等のリソースについても無駄な消費を減らすことができる。
また本発明の移動通信システムでは、移動端末は、(4−6)自身が接続しているマルチキャストルータが切り替わったことを検知するルータ検知手段を備え、(4−5´)送信制御手段は、ルータ検知手段の検知に応じて第1及び第2指示信号を出力する機能を有し、(c)局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知したものの、ルータ切替検知手段がマルチキャストルータの切り替えを検知しなかった場合には、送信制御手段は現在接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求、脱退要求、経路確立要求を順次送信するために、第1指示信号、第2指示信号、第1指示信号を順次出力し、(d)局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知し、かつルータ切替検知手段がマルチキャストルータの切り替えを検知した場合には、送信制御手段は切り替え後のマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信するように第1指示信号を出力した後に、切り替え前に接続していたマルチキャストルータ、及び切り替え前に確立要求送信手段が経路確立要求を送信したマルチキャストルータに対して脱退要求を送信するように第2指示信号を出力する、ことも好ましい。
これにより、無線基地局が切り替わったもののマルチキャストルータが切り替わっていない場合には、現在接続しているマルチキャストルータを対象として、送信制御手段が第1指示信号、第2指示信号、第1指示信号を順次出力するので、移動端末から現在のマルチキャストルータに対して経路確立要求、脱退要求、経路確立要求が順次送信される。また、無線基地局もマルチキャストルータも切り替わった場合には、送信制御手段が、現在接続しているマルチキャストルータを対象として、第1指示信号を、切り替え前に接続していたマルチキャストルータ、及び切り替え前に経路確立要求を送信したマルチキャストルータを対象として、第2指示信号を出力するため、切り替え後のマルチキャストルータに対して経路確立要求が、切り替え前にマルチキャスト配信経路が確立されていたマルチキャストルータに対して脱退要求が送信される。どちらの場合も、最初に経路確立要求を送信するので、無線基地局が切り替わった後の情報信号受信までの遅延時間を短縮できる。また、マルチキャストルータが切り替わらない場合には、脱退要求が送信された後に再度経路確立要求が送信されるので、データリンク層スイッチに対して自身がどのポートの配下に存在するのかを通知することができる。一方、マルチキャストルータが切り替わった場合には、切り替え前のマルチキャストルータを含め、切り替え前にマルチキャスト配信経路を確立していたマルチキャストルータに対してマルチキャストルータに対して配下の受信装置としての移動端末の存在を確認させるためのきっかけとなる情報を与えることができる。
また本発明の移動通信システムでは、データリンク層スイッチは、(2−1)経路確立要求を受信した際に、当該受信した経路確立要求に応じた経路に対してマルチキャスト配信経路を確立する経路確立手段と、(2−2)脱退要求に応じてマルチキャストルータが配下にマルチキャストグループに属する移動端末が存在するかどうかを確認するために送信する存在確認要求を受信した際に、当該存在確認要求を配下に向けて配信すると共に、当該配信に応じて返信される経路確立要求に応じてマルチキャスト配信経路を再構成する配信経路再構成手段と、を備えることも好ましい。移動端末側から送信される経路確立要求に応じてマルチキャスト配信経路を確立するので、受信装置としての移動端末が存在する経路のみにマルチキャスト配信を行うことができる。また、マルチキャストルータ側から送信される存在確認要求を移動端末側に配信し、その結果返信される経路確立要求に応じてマルチキャスト配信経路を再構成するので、受信装置としての移動端末が存在しなくなった経路に情報信号を送信することを回避できる。
本発明の移動端末は、上述の移動通信システムに接続される移動端末であって、自身が接続している無線基地局が切り替わったことを検知する局切替検知手段と、自身が接続している無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ、及び自身が接続しているマルチキャストルータがどのマルチキャストルータであるかを判定する接続局判定手段と、マルチキャスト配信経路を確立することを要求する経路確立要求を送信する確立要求送信手段と、自身が属するマルチキャストグループから脱退することを要求する脱退要求を送信する脱退要求送信手段と、局切替検知手段の検知、及び接続局判定手段の判定に応じて、確立要求送信手段に対して経路確立要求を送信するように指示する第1指示信号及び脱退要求送信手段に対して脱退要求を送信するように指示する第2指示信号を出力する送信制御手段と、を備え、局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知し、かつ接続局判定手段が当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータは移動端末が接続しているマルチキャストルータとは異なると判定した場合には、送信制御手段は当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信するように第1指示信号を出力する、ことを特徴とする。
本発明の移動端末によれば、無線基地局の切り替え後に、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータが現在接続しているマルチキャストルータと異なる場合には、送信制御手段が隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信するように第1指示信号を出力するので、移動前に移動先候補であるマルチキャストルータに対して経路確立要求が送信され、マルチキャスト配信経路が確立される。このため、移動端末が隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ配下に移動した際に、マルチキャストデータの受信までの遅延時間を短くすることができる。一方で、この段階では、隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ配下に存在するデータリンク層スイッチにはマルチキャスト配信経路が確立されていないため、データリンク層スイッチ配下にはマルチキャストデータが配信されず、無線帯域を無駄に消費することもない。
また本発明の移動端末では、局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知し、かつ接続局判定手段が当該切り替え後の無線基地局が接続しているマルチキャストルータは以前に前記経路確立要求を送信したマルチキャストルータと一致しなくなったと判定した場合には、以前に前記経路確立要求を送信したマルチキャストルータから当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータを除いたマルチキャストルータに対して脱退要求を送信するように第2指示信号を出力することも好ましい。このようにすれば、無線基地局の切り替え後に、以前にマルチキャスト配信経路を確立したマルチキャストルータ配下の無線基地局に隣接しない無線基地局に移動した場合には、送信制御手段が当該マルチキャストルータに対して脱退要求を送信するように第2指示信号を出力するので、配下の無線基地局に移動する可能性が低いマルチキャストルータにおけるマルチキャスト配信経路を適切に削除することができ、有線の帯域やマルチキャストルータのメモリ等のリソースについても無駄な消費を減らすことができる。
また本発明の移動端末では、自身が接続しているマルチキャストルータが切り替わったことを検知するルータ検知手段を備え、送信制御手段は、ルータ検知手段の検知に応じて第1及び第2指示信号を出力する機能を有し、局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知したものの、ルータ切替検知手段がマルチキャストルータの切り替えを検知しなかった場合には、送信制御手段は現在接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求、脱退要求、経路確立要求を順次送信するために、第1指示信号、第2指示信号、第1指示信号を順次出力し、局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知し、かつルータ切替検知手段がマルチキャストルータの切り替えを検知した場合には、送信制御手段は切り替え後のマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信するように第1指示信号を出力した後に、切り替え前に接続していたマルチキャストルータ、及び切り替え前に確立要求送信手段が経路確立要求を送信したマルチキャストルータに対して脱退要求を送信するように第2指示信号を出力する、ことも好ましい。
これにより、無線基地局が切り替わったもののマルチキャストルータが切り替わっていない場合には、現在接続しているマルチキャストルータを対象として、送信制御手段が第1指示信号、第2指示信号、第1指示信号を順次出力するので、移動端末から現在のマルチキャストルータに対して経路確立要求、脱退要求、経路確立要求が順次送信される。また、無線基地局もマルチキャストルータも切り替わった場合には、送信制御手段が、現在接続しているマルチキャストルータを対象として、第1指示信号を、切り替え前に接続していたマルチキャストルータ、及び切り替え前に経路確立要求を送信したマルチキャストルータを対象として、第2指示信号を出力するため、切り替え後のマルチキャストルータに対して経路確立要求が、切り替え前にマルチキャスト配信経路が確立されていたマルチキャストルータに対して脱退要求が送信される。どちらの場合も、最初に経路確立要求を送信するので、無線基地局が切り替わった後の情報信号受信までの遅延時間を短縮できる。また、マルチキャストルータが切り替わらない場合には、脱退要求が送信された後に再度経路確立要求が送信されるので、データリンク層スイッチに対して自身がどのポートの配下に存在するのかを通知することができる。一方、マルチキャストルータが切り替わった場合には、切り替え前のマルチキャストルータを含め、切り替え前にマルチキャスト配信経路を確立していたマルチキャストルータに対してマルチキャストルータに対して配下の受信装置としての移動端末の存在を確認させるためのきっかけとなる情報を与えることができる。
本発明のノード装置は、上述の移動通信システムに接続されるノード装置であって、前記データリンク層スイッチに接続され、自身が存在する第1ネットワーク中に接続される第1無線基地局と、第1無線基地局に隣接する第2無線基地局が第1ネットワークとは異なる第2ネットワークに接続されている場合に、第2ネットワークに接続される自身とは異なるノード装置と、の対応関係を示す対応表を保持する保持手段と、移動端末に対して、対応表を通知する通知手段と、を備えることを特徴とする。
本発明のノード装置によれば、移動端末に無線基地局とネットワークを管理するノード装置の対応を通知することができ、移動端末は自身の接続している無線基地局に隣接している無線基地局が接続しているネットワークを認識でき、移動前に移動候補のネットワークにおけるマルチキャスト配信経路を確立することができるようになるとともに、移動する可能性の低いネットワークにおけるマルチキャスト配信経路を削除することができるようになる。
本発明の移動通信方法は、マルチキャストグループに属する移動端末が、マルチキャストで送信される情報信号をマルチキャストルータ、データリンク層スイッチ、無線基地局を介して受信するための移動通信方法であって、移動端末の局切替検知手段が、移動端末自身が接続している無線基地局が切り替わったことを検知する局切替検知ステップと、移動端末の接続局判定手段が、移動端末自身が接続している無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ、及び移動端末自身が接続しているマルチキャストルータがどのマルチキャストルータであるかを判定する接続局判定ステップと、局切替検知ステップにおいて局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知し、接続局判定ステップにおいて接続局判定手段が当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続
しているマルチキャストルータは移動端末が接続しているマルチキャストルータとは異なると判定した場合に、移動端末の確立要求送信手段が当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信する第一更新ステップと、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータは、移動端末の確立要求送信手段から送信された経路確立要求を受信した場合には、そのマルチキャストルータ、およびそのマルチキャキャストルータに接続されるデータリンク層スイッチまでのマルチキャスト配信経路を確立するステップと、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているデータリンク層スイッチは、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局を介して移動端末の経路確立要求を受信した場合にのみ、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局にマルチキャストルータから受信した情報信号を配信するステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の移動通信方法によれば、無線基地局の切り替え後に、切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータが現在接続しているマルチキャストルータと異なる場合には、確立要求送信手段が隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信するので、移動前に移動先候補であるマルチキャストルータに対して経路確立要求が送信され、マルチキャスト配信経路が確立される。このため、移動端末が隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ配下に移動した際に、マルチキャストデータの受信までの遅延時間を短くすることができる。一方で、この段階では、隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータ配下に存在するデータリンク層スイッチにはマルチキャスト配信経路が確立されていないため、データリンク層スイッチ配下にはマルチキャストデータが配信されず、無線帯域を無駄に消費することもない。
また本発明の移動通信方法では、局切替検知ステップにおいて局切替検知手段が無線基地局の切り替えを検知し、接続局判定ステップにおいて当該切り替え後の無線基地局が接続しているマルチキャストルータは以前に前記経路確立要求を送信したマルチキャストルータと一致しなくなったと判定した場合には、以前に前記経路確立要求を送信したマルチキャストルータから当該切り替え後の無線基地局に隣接する無線基地局が接続しているマルチキャストルータを除いたマルチキャストルータに対して脱退要求を送信する第二更新ステップを含むことも好ましい。このようにすれば、無線基地局の切り替え後に、以前にマルチキャスト配信経路を確立したマルチキャストルータ配下の無線基地局に隣接しない無線基地局に移動した場合には、脱退要求送信手段が当該マルチキャストルータに対して脱退要求を送信するので、配下の無線基地局に移動する可能性が低いマルチキャストルータにおけるマルチキャスト配信経路を適切に削除することができ、有線の帯域やマルチキャストルータのメモリ等のリソースについても無駄な消費を減らすことができる。
また本発明の移動通信方法では、移動端末のルータ検知手段が、移動端末自身が接続しているマルチキャストルータが切り替わったことを検知するルータ検知ステップと、局切替検知ステップにおいて無線基地局の切り替えを検知したものの、ルータ切替検知ステップにおいてマルチキャストルータの切り替えを検知しなかった場合には、移動端末の確立要求送信手段及び脱退要求送信手段が現在接続しているマルチキャストルータに対して経路確立要求、脱退要求、経路確立要求を順次送信する第三更新ステップと、局切替検知ステップにおいて無線基地局の切り替えを検知し、ルータ切替検知ステップにおいてマルチキャストルータの切り替えを検知した場合には、移動端末の経路確立要求送信手段が切り替え後のマルチキャストルータに対して経路確立要求を送信し、移動端末の脱退要求送信手段が切り替え前に接続していたマルチキャストルータ、及び切り替え前に確立要求送信手段により経路確立要求を送信したマルチキャストルータに対して脱退要求を送信する第四更新ステップと、を含むことも好ましい。
これにより、無線基地局が切り替わったもののマルチキャストルータが切り替わっていない場合には、現在接続しているマルチキャストルータを対象として、移動端末から現在のマルチキャストルータに対して経路確立要求、脱退要求、経路確立要求が順次送信される。また、無線基地局もマルチキャストルータも切り替わった場合には、切り替え後のマルチキャストルータに対して経路確立要求が、切り替え前にマルチキャスト配信経路が確立されていたマルチキャストルータに対して脱退要求が送信される。どちらの場合も、最初に経路確立要求を送信するので、無線基地局が切り替わった後の情報信号受信までの遅延時間を短縮できる。また、マルチキャストルータが切り替わらない場合には、脱退要求が送信された後に再度経路確立要求が送信されるので、データリンク層スイッチに対して自身がどのポートの配下に存在するのかを通知することができる。一方、マルチキャストルータが切り替わった場合には、切り替え前のマルチキャストルータを含め、切り替え前にマルチキャスト配信経路を確立していたマルチキャストルータに対してマルチキャストルータに対して配下の受信装置としての移動端末の存在を確認させるためのきっかけとなる情報を与えることができる。
本発明の移動通信システム、移動端末、ノード装置、及び移動通信方法によれば、無線基地局毎に特別なノード装置を設置したり、受信装置に複数の無線基地局からの電波を受信できる機能を備えたりすることなく、かつ無線区間の帯域を無駄に消費することなく、受信装置が無線基地局間を移動した際に、移動先の無線基地局におけるマルチキャストパケットの受信までの遅延時間を短くすることが可能となる。
本発明の知見は、例示のみのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
(第一実施形態) 図1は本発明の第一実施形態に係る移動通信システムの概念図である。この移動通信システムは、マルチキャストパケットをマルチキャスト通信で送信する送信装置10と、送信装置10からのマルチキャストパケットを複製しながら配信するマルチキャストルータ20a、20b、20c、マルチキャストルータから配信されたパケットを配下に受信装置の存在するポートにのみ複製しながら配信するIGMP−Snooping機能を有するデータリンク層スイッチ30a、30b、データリンク層スイッチより配信されたパケットを配下の無線ネットワークに送信する無線基地局40a、40b、40c、40dを含む。
送信装置10には、マルチキャストルータ20aが接続されている。このマルチキャストルータ20aの配下には、更にマルチキャストルータ20b、20cが接続され、マルチキャストルータはツリー状に形成されている。本実施形態では、簡単のため、ツリー上にマルチキャストルータが接続される例を示したが、更に多くのマルチキャストルータを利用してツリー構造でない複雑なネットワークを形成することも可能である。また、マルチキャストルータ20b、20cは、それぞれLANを管理しており、マルチキャストルータ20aの配下には、データリンク層スイッチ30aが接続され、マルチキャストルータ20bの配下には、データリンク層スイッチ30bが接続されている。更に、データリンク層スイッチ30aの配下には無線基地局40a、40bが、データリンク層スイッチ30bの配下には無線基地局40c、40dが接続されている。各無線基地局を中心として描かれている円は、これら無線基地局の通信可能な領域を示しており、移動端末50は最初無線基地局40aに接続してマルチキャストパケットを受信している。
また、マルチキャストルータ20b、20cは、管理ノード装置としての機能も有しており、それぞれ自身が管理するLANの端に存在する無線基地局と、それに隣接するネットワークの管理ノード装置のアドレスとの対応表201、202を保持している。対応表201、202はLANの管理者や移動通信システムの提供者によってあらかじめ設定されている情報であり、マルチキャストルータ20bの管理するLANの端に存在する無線基地局は無線基地局40bであり、隣接するネットワークの管理ノード装置はマルチキャストルータ20cであり、一方、マルチキャストルータ20cの管理するLANの端に存在する無線基地局は無線基地局40cであり、隣接するネットワークの管理ノード装置はマルチキャストルータ20cであるため、図1のような対応表201、202がそれぞれマルチキャストルータ20b、20cに保持されている。
送信装置10は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション等の情報処理端末である。送信装置10は、例えば、ソフトウェア、動画像等のファイルデータ、リアルタイムに取得した動画等をマルチキャストパケットとしてマルチキャストルータ20aに送信する。
マルチキャストルータ20aは、受信したマルチキャストパケットを必要な数だけ複製し、配下のマルチキャストルータ20b、20cへ、その複製したマルチキャストパケットを配信する。また、マルチキャストルータ20b、20cは、受信したマルチキャストパケットを、必要なら、配下のデータリンク層スイッチに配信する。データリンク層スイッチは、受信したマルチキャストパケットを必要な数だけ複製し、配下の無線基地局に配信する。無線基地局は、受信したマルチキャストパケットを配下の無線ネットワークに配信する。この際、無線基地局の配下は無線区間であるため、配下にマルチキャスト受信装置が複数台存在しても、無線基地局は一度無線送信するだけで、配下のマルチキャスト受信装置にマルチキャストパケットを配信することができる。
移動端末50は、マルチキャスト受信装置である。移動端末50は図33に示すように機能的な構成要素として、局切替検知部501(局切替検知手段)と、ルータ切替検知部502(ルータ切替検知手段)と、接続局判定部503(局判定手段)と、確立要求送信部504(確立要求送信手段)と、脱退要求送信部505(脱退要求送信手段)と、送信制御部506(送信制御手段)とを含む。局切替検知部501は、移動端末50が接続している無線基地局が切り替わったことを検知する部分である。ルータ切替検知部502は、移動端末50が接続しているマルチキャストルータが切り替わったことを検知する部分である。接続局判定部503は、移動端末が現在接続している無線基地局が対応表中に存在する無線基地局であるかどうかを判定する部分である。確立要求送信部504は、データリンク層スイッチやマルチキャストルータに対して、マルチキャストデータを配信するための配信経路の確立を要求する経路確立要求を送信する部分である。脱退要求送信部505は、移動端末50が属するマルチキャストグループから脱退することを要求する脱退要求を送信する部分である。送信制御部506は、局切替検知部501、ルータ切替検知部502、及び接続局判定部503の検知や判定結果に応じて、確立要求送信部504に対しては経路確立要求を送信するように支持する第1指示信号を、脱退要求送信部505に対しては脱退要求を送信するように指示する第2指示信号を、それぞれ出力する部分である。各部の詳細については後述する。
移動端末50の確立要求送信部504は、所望のマルチキャストグループ宛のマルチキャストパケットを受信することができるように、自身が現在接続している無線基地局40aを介して、自身の上流に存在するマルチキャストルータに対して、マルチキャスト配信経路の確立要求(経路確立要求)を送信する。また、移動端末50の脱退要求送信部505は、マルチキャストパケットの受信が不要になった場合は、同様に現在接続している無線基地局40aを介してマルチキャストグループの脱退要求を送信する。
マルチキャストルータ20b、20cは、脱退要求を受信した際に、配下にマルチキャストグループに属する移動端末が存在するかどうかを確認するための存在確認要求を送信する確認要求送信部(確認要求送信手段、図示しない)を備える(詳細は後述する)。
データリンク層スイッチ30a、30bは、移動端末50側から送信される経路確立要求を受信した際に、その受信した経路確立要求に応じた経路に対してマルチキャスト配信経路を確立する経路確立部(経路確立手段、図示しない)と、マルチキャストルータ20b、20c側から存在確認要求を受信した際に、その存在確認要求を配下のネットワークに向けて配信すると共に、その配信に応じて返信される経路確立要求に応じてマルチキャスト配信経路を再構成する配信経路再構成部(配信経路再構成手段)と、を備える(詳細は後述する)。
このような移動通信システムにおいて、移動端末50が所定のマルチキャストグループ宛のマルチキャストパケットを受信することを例にとって、移動通信システムの動作、及び移動通信システムを用いて実現する移動通信方法を説明する。マルチキャストグループ(マルチキャストグループGとする)のアドレスは、例えば「239.1.2.3」のように指定される。
図1では、既に移動端末50へのマルチキャスト配信経路が確立されているが、最初にこの配信経路の確立について説明する。移動端末50の確立要求送信部504はマルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットを受信するために、自身の上流に接続されているマルチキャストルータに届くように、マルチキャスト配信経路の経路確立要求を送信する。このマルチキャストグループG宛のマルチキャスト配信経路確立要求は、マルチキャストグループG宛のマルチキャストパケット配信要求や、マルチキャストグループGへの加入要求としての役割も有する。
移動端末50から送信されたマルチキャスト配信経路の経路確立要求は、無線基地局40aを介してデータリンク層スイッチ30aのポート102に到達する。この際データリンク層スイッチ30aの経路確立部(図示しない)はマルチキャスト配信経路の経路確立要求の内容を見ることで、ポート102の配下に、マルチキャストグループGの受信装置が存在することを認識し、マルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットをポート102に配信する必要があることをマルチキャスト配信管理テーブルに記録して、届いたマルチキャスト配信経路の確立要求をマルチキャストルータ20bにポート101を通して転送する。マルチキャストルータ20bが、マルチキャスト配信経路の経路確立要求を受信すると、マルチキャストルータ20bは、自身のマルチキャスト配信管理テーブルに要求されたマルチキャストグループを配信する旨を追加し、上流のマルチキャストルータ20aにマルチキャスト配信経路の確立要求を送信する。送信装置が接続されたマルチキャストルータ20aにマルチキャスト配信経路の確立要求が到達し、マルチキャストルータ20aが自身のマルチキャスト配信管理テーブルに要求されたマルチキャストグループを配信する旨を追加すると、送信装置10から受信装置50へのマルチキャスト配信経路が確立されることになる。なお、図1とは異なるが、移動端末50以外にも同じマルチキャストグループGの受信装置が別のマルチキャストルータの配下に存在し、その受信装置までのマルチキャスト配信経路が既に確立されている場合は、既に配信経路が存在するルータまでマルチキャスト配信経路確立要求が到達すると、マルチキャスト配信経路が確立することになる。
送信装置10から移動端末50へのマルチキャスト配信経路が確立すると、送信装置10から送信されたマルチキャストパケットは、マルチキャストルータ20a、20b、データリンク層スイッチ30a、無線基地局40aを介して、移動端末50へと到達することになる。マルチキャストルータ20aやデータリンク層スイッチ30aは、マルチキャスト配信経路が存在しない経路へのマルチキャストパケットの配信を行わないことで、無駄に帯域を消費せず、マルチキャストパケットを必要とする受信装置のみにマルチキャストパケットを届けることができる。
また、移動端末50の脱退要求送信部505は、マルチキャストパケットの受信が不要になった場合は、同様に現在接続しているマルチキャストルータ20bに届くように、マルチキャストグループからの脱退要求を送信する。データリンク層スイッチ30aはマルチキャストグループからの脱退要求を受信しただけでは、マルチキャスト配信経路の削除を行わず、それをマルチキャストルータ20bに転送する。マルチキャストグループからの脱退要求を受信したマルチキャストルータ20bの確認要求送信部(図示しない)は、配下に他のマルチキャスト受信装置が存在しないかどうかを確認するために、存在確認要求を送信する。そして、この存在確認要求に応答がない場合は、マルチキャストルータ20bは、当該マルチキャストグループに関するマルチキャスト配信経路を削除し、マルチキャストルータ20aにマルチキャスト配信経路削除要求を送信する。なお、データリンク層スイッチ30aの配信経路再構成部(図示しない)は、マルチキャストルータ20bから送信された存在確認要求の内容を見て、そこに記載されている最大応答時間を記録し、マルチキャスト配信経路が存在するポートに存在確認要求を配信する。存在確認要求を受信した受信装置は最大応答時間内に必ず経路確立要求を送信するので、記録した最大応答時間内に応答のなかったポートについては、マルチキャスト配信経路を削除する。このようにすることで、受信装置が存在するポートについては、マルチキャスト配信経路を維持しつつ、受信装置が存在しないポートについては迅速にマルチキャスト配信経路を削除することができる。なお、データリンク層スイッチは存在確認要求だけは、マルチキャスト配信経路が存在するポートでなく、受信ポート以外の全ポートに配信するとしてもよい。
今、図1のように移動端末50がマルチキャストグループGに加入しており、無線基地局40aを介してマルチキャストパケットを受信している状態で、移動端末50が図中の二点鎖線のように、接続無線基地局を無線基地局40aから、無線基地局40b、無線基地局40c、無線基地局40dと切替えながら移動することを考察する。移動端末50のルータ切替検知部502は、マルチキャストルータが定期的に送信する広告等を受信することにより、自身の上流のマルチキャストルータのIPアドレス情報を保持している。また、移動端末50の接続局判定部503は、無線基地局との接続を確立した際、現在接続中の無線基地局のIPアドレス情報を取得しそれを保持している。なお、図1では、自身の上流のマルチキャストルータや接続無線基地局をIPアドレスにより識別しているが、IPアドレスでなくとも、他のマルチキャストルータや無線基地局との区別がつくものであれば識別方法はどのようなものでもよい。
図2に示すように、移動端末50が接続無線基地局を無線基地局40aから無線基地局40bに切替えると、移動端末50の局切替検知部501が、自身の接続基地局が切替わったことを検出する。この局切替検知部501は、移動端末が接続している無線基地局が切替わったことを検知できればどのようなものでもよく、例えば、無線インターフェースカードからの無線基地局切替え通知等を検知するようにしてもよい。移動端末50は、接続無線基地局が無線基地局40bに切替わったことを検知すると、図2中の点線矢印で示すように、切替わった先の無線基地局40bを介して、マルチキャストグループGに関する経路確立要求を送信する。経路確立要求をポート103から受信したデータリンク層スイッチ30aの経路確立部(図示しない)は、経路確立要求の内容を見ることで、ポート103の配下にも、マルチキャストグループGの受信装置が存在することを認識し、マルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットをポート103に配信する必要があることをマルチキャスト配信管理テーブルに記録して、届いた経路確立要求をマルチキャストルータ20bにポート101を通して転送する。なお、マルチキャストルータ20bは既にマルチキャストグループG宛の配信経路を保持しているので、経路確立要求を新たに上流に送信することはしない。これにより、図3に示すように、マルチキャストグループG宛のマルチキャストパケット(情報信号)がデータリンク層スイッチ30aのポート102及び103の両方から配信されることになるので、移動端末50は、無線基地局40bを介してマルチキャストグループG宛てのマルチキャストパケットを受信できるようになる。
次に移動端末50のルータ切替検知部502は、上流のマルチキャストルータが以前のマルチキャストルータと変わったかどうかを調査する。この調査方法としては、例えば、図4中の点線矢印で示すように、広告要求パケットをマルチキャストルータ20bに送信し、図5中の点線矢印で示すように、マルチキャストルータ20bが応答として広告パケットを送信し、広告パケットの情報と自身が保持しているマルチキャストルータ情報とを比較することにより行うことができる。なお、この際にマルチキャストルータ20bは広告パケットに自身が保持している対応表201を含めて送信する。
移動端末50が接続無線基地局を無線基地局40aから無線基地局40bに切替えた際には、上流のマルチキャストルータはマルチキャストルータ20bのままである。このように上流のマルチキャストルータが変わらない場合は、移動端末50は図6中の点線矢印で示すように、上流のマルチキャストルータ20bに対してマルチキャストグループGからの脱退要求を送信する。
マルチキャストルータ20bの確認要求送信部(図示しない)はマルチキャストグループGからの脱退要求を受信すると、前述の通り、他に受信装置が存在しないかどうかを確認するため、図7中の一点鎖線矢印で示すように存在確認要求を送信する。
移動端末50は、マルチキャストグループGに参加しているため、存在確認要求を受信すると、図8中の点線矢印で示すように最大応答時間内に経路確立要求をデータリンク層スイッチ30aのポート103を介して送信する。なお、この経路確立要求はマルチキャストルータからの存在確認要求に応答して送信するとしてもよいが、簡単のため、上述のマルチキャストグループGからの脱退要求に続けて送信するとしてもよい。
データリンク層スイッチ30aの配信経路再構成部(図示しない)は、存在確認要求に記載されている最大応答時間内に応答があったポート103のみをマルチキャスト配信管理テーブルに記録し、以前配信テーブルに記載されていたポート102は記録しないため、これ以後は図9に示すようにマルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットはポート103のみに配信されることになる。
このようにすることで、移動端末50が移動後すぐにマルチキャストパケットを受信できるようになるとともに、移動により受信装置が存在しなくなった経路にはマルチキャストパケットが配信されなくなるため、受信装置の存在する経路にのみマルチキャストパケットを配信することができ、帯域を有効に利用することができる。なお、無線基地局40a配下に他の受信装置が存在した場合は、その受信装置がマルチキャストルータ20bからの存在確認要求に応答して経路確立要求を送信するので、受信装置が存在するにもかかわらず、誤ってマルチキャスト配信経路が削除されることはない。
次に、移動端末50の接続局判定部503は、取得した対応表201中に自身の接続基地局が存在するかどうかを判定する。この場合、取得した対応表中に現在の接続基地局である40bが存在し、その隣接ノード装置がマルチキャストルータ20cであることを認識する。このため、移動端末50は、図10の点線矢印で示すように、移動前に前もってマルチキャストルータ20cまでのマルチキャスト配信経路を確立するために、マルチキャストルータ20cに対して経路確立要求を送信する。この際、通常マルチキャスト配信経路の経路確立要求は、自身が直接接続しているマルチキャストルータにしか送信できないため、例えば、経路確立要求をマルチキャストルータ20c宛のユニキャストパケットでカプセル化して送信する。なお、経路確立要求をカプセル化して送信する方法以外にも、例えば、通常の経路確立要求とは異なる特別な形式の経路確立要求を直接マルチキャストルータ20cに送信するとしてもよく、マルチキャストルータ20cが経路確立を要求している受信装置が存在することを認識できるものであればよい。また、移動端末50は経路確立要求をマルチキャストルータ30cに送信したため、経路確立済みリストにマルチキャストルータ30cを追加する。
経路確立要求を受信したマルチキャストルータ20cでは、まだマルチキャストグループG宛の配信経路が確立されていないため、自身のマルチキャスト配信管理テーブルに要求されたマルチキャストグループGを配信する旨を追加し、図11中の点線矢印で示すように、上流のマルチキャストルータ20aに対して、経路確立要求を送信する。これにより、図12に示すように、マルチキャストルータ20cの配下のLANにもマルチキャストグループG宛のパケットが配信されるようになる。なお、データリンク層スイッチ30bは、配下の受信装置からの経路確立要求を受信していないため、マルチキャストグループG宛のパケットをどのポートにも配信せず、無線基地局40c、40dにはマルチキャストグループG宛のパケットは配信されず、無線区間の帯域を無駄に消費することはない。このようにすることで、無線区間の帯域を無駄に消費することなく、移動端末50が移動前に前もって移動先のマルチキャストルータであるマルチキャストルータ20cまでのマルチキャスト配信経路を確立することができ、移動後のマルチキャストパケット受信までの遅延時間を短くすることができる。なお、この場合にはデータリンク層スイッチ30bがマルチキャストグループG宛てのパケットを止めているが、このパケットの配信を止める態様はこれに限られるものではない。例えば、上位のマルチキャストルータ20cも配下の受信装置からの経路確立要求を受信していないので、マルチキャストルータ20cがマルチキャストグループG宛てのパケットを止めるようにしてもよい。
さらに移動端末50が移動し、移動端末50が接続無線基地局を無線基地局40bから無線基地局40cに切り替えると、図13中の点線矢印で示すように、移動端末50の局切替検知部は、移動先の無線基地局40cでマルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットを受信するために、無線基地局40cを介して経路確立要求を送信する。経路確立要求をポート112から受信したデータリンク層スイッチ30bは、経路確立要求の内容を見ることで、ポート112の配下に、マルチキャストグループGの受信を要求する受信装置が現れたことを認識し、マルチキャストグループG宛てのマルチキャストパケットをポート112に配信する必要があることをマルチキャスト配信管理テーブルに記録して、届いた経路確立要求をマルチキャストルータ20cにポート111を通して転送する。マルチキャストルータ20cでは既にマルチキャスト配信経路が確立され、配信されているため、データリンク層スイッチの処理のみで、移動端末50へのマルチキャスト配信経路が確立し、データリンク層30bスイッチのポート111にマルチキャストグループG宛のパケットが届くと、データリンク層スイッチ30bはポート112に当該パケットを配信するので、図14に示すように、移動端末50はマルチキャストグループG宛のパケットを受信することができるようになる。
次に移動端末50のルータ切替検知部502は、上流のマルチキャストルータが以前のマルチキャストルータと変わったかどうかを調査するために、図15中の点線矢印で示すように、広告要求パケットを送信し、図16中の点線矢印で示すように、マルチキャストルータ20cが応答として対応表202を含む広告を送信するため、上流のマルチキャストルータがマルチキャストルータ20bからマルチキャストルータ20cに切替わったことを知る。このため、図17中の点線矢印で示すように、移動端末50はマルチキャストルータ20bに対して、配下に存在するマルチキャスト配信経路を削除するため、マルチキャストグループからの脱退要求を送信する。この際も、前述の経路確立要求の場合と同様に、通常マルチキャストグループからの脱退要求は自身が直接接続しているマルチキャストルータにしか送信できないため、例えば、マルチキャストグループからの脱退要求をマルチキャストルータ20b宛のユニキャストパケットでカプセル化して送信する。なお、マルチキャストグループからの脱退要求パケットはカプセル化して送信する方法以外にも、例えば、通常とは異なる形式のマルチキャストグループからの脱退要求パケットを直接マルチキャストルータ20bに送信するとしてもよく、マルチキャストルータ20bがマルチキャストグループから脱退したい受信装置が存在することを認識できるものであればよい。
マルチキャストグループからの脱退要求を受信したマルチキャストルータ20bは、他に受信装置が存在しないかどうかを確認するため、図18中の一点鎖線矢印で示すように存在確認要求を送信する。
次に、移動端末50の接続局判定部503は、取得した対応表202中に自身の接続基地局が存在するかどうかを判定する。この場合、取得した対応表中に現在の接続基地局である40cが存在し、その隣接ノード装置がマルチキャストルータ20bであることを認識する。このため、移動端末50は、図19の点線矢印で示すように、マルチキャストルータ20bまでのマルチキャスト配信経路を確立するために、マルチキャストルータ20bに対して経路確立要求を送信する。
マルチキャストルータ20bの配下にはマルチキャスト受信装置が存在しないため、配下からの存在確認要求に対する経路確立要求の応答はなく、最大応答時間経過後、データリンク層スイッチ30aは、自身が保持しているマルチキャスト配信経路を削除する。一方、マルチキャストルータ20bは、移動端末50からの経路確立要求を受信しているため、マルチキャストグループG宛の配信経路を保持している。このため、これ以後は、図20のように、マルチキャストグループG宛のパケットは、マルチキャストルータ20bからは配信されるが、データリンク層スイッチ30aから配下には配信されない状態となる。
なお、上記では、移動端末50は、マルチキャストルータ20bに対して脱退要求を送信し、その後経路確立要求を送信することで、データリンク層スイッチ30aのマルチキャスト配信経路のみを削除し、マルチキャストルータ20bのマルチキャスト配信経路は保持させたままにさせる方法について記述したが、マルチキャストルータ20bに存在確認要求を送信させつつ、マルチキャストルータ20bのマルチキャスト配信経路を保持できる方法であれば、脱退要求、経路確立要求を連続で送信する方法でなくともよく、例えば、マルチキャストルータ20bに存在確認要求を送信しつつ、マルチキャスト配信経路は保持することを要求する特別なパケットを送信するとしてもよい。
このようにすることで、接続無線基地局とマルチキャストルータがともに変化する場合であっても、移動端末50が移動後すぐにマルチキャストパケットを受信できるようになるとともに、移動により受信装置が存在しなくなった経路にはマルチキャストパケットが配信されなくなるため、受信装置の存在する経路にのみマルチキャストパケットを配信することができ、無線帯域を有効に利用することができる。なお、この場合も、無線基地局40b配下に他の受信装置が存在した場合は、その受信装置がマルチキャストルータ20bからの存在確認要求に応答して経路確立要求を送信するので、受信装置が存在するにもかかわらず、誤ってマルチキャスト配信経路が削除されることはない。また、万が一、移動端末50が方向転換し、再度無線基地局40b配下に移動した場合であっても、マルチキャストルータ20bはマルチキャスト配信経路を保持したままであるため、移動端末50は、移動後すぐにマルチキャストパケットを受信することができる。
さらに移動端末50が移動し、移動端末50が接続無線基地局を無線基地局40cから無線基地局40dに切り替えると、図21中の点線矢印で示すように、移動端末50の局切替検知部は、移動先の無線基地局40dでマルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットを受信するために、無線基地局40dを介して経路確立要求を送信する。データリンク層スイッチ30bの経路確立部(図示しない)は、経路確立要求の内容を見ることで、ポート113の配下にも、マルチキャストグループGの受信装置が存在することを認識し、マルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットをポート113に配信する必要があることをマルチキャスト配信管理テーブルに記録して、届いた経路確立要求をマルチキャストルータ20cにポート111を通して転送する。なお、マルチキャストルータ20cは既にマルチキャストグループG宛の配信経路を保持しているので、経路確立要求を新たに上流に送信することはしない。これにより、図22に示すように、マルチキャストグループG宛のマルチキャストパケット(情報信号)がデータリンク層スイッチ30bのポート112及び113の両方から配信されることになるので、移動端末50は、無線基地局40dを介してマルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットを受信できるようになる。
次に移動端末50のルータ切替検知部502は、上流のマルチキャストルータが以前のマルチキャストルータと変わったかどうかを調査するために、図23中の点線矢印で示すように、広告要求パケットを送信し、図24中の点線矢印で示すように、マルチキャストルータ20cが応答として対応表202を含む広告を送信するため、移動端末50は、上流のマルチキャストルータがマルチキャストルータ20cのままであることを認識する。このため、前述の無線基地局40aから無線基地局40bに接続無線基地局を切り替えた場合と同様に、移動端末50は図25中の点線矢印で示すように、上流のマルチキャストルータ20cに対してマルチキャストグループGからの脱退要求を送信する。
マルチキャストルータ20cの確認要求送信部(図示しない)はマルチキャストグループGからの脱退要求を受信すると、前述の場合と同様に、他に受信装置が存在しないかどうかを確認するため、図26中の一点鎖線矢印で示すように存在確認要求を送信する。
移動端末50は、マルチキャストグループGに参加しているため、存在確認要求を受信すると、図27中の点線矢印で示すように最大応答時間内に経路確立要求をデータリンク層スイッチ30bのポート113を介して送信する。
データリンク層スイッチ30bの配信経路再構成部(図示しない)は、存在確認要求に記載されている最大応答時間内に応答があったポート113のみをマルチキャスト配信管理テーブルに記録し、以前配信テーブルに記載されていたポート112は記録しないため、これ以後は図28に示すように、マルチキャストルータ20cから配信されたマルチキャストグループG宛のマルチキャストパケットはデータリンク層スイッチ30bのポート113のみに配信されることになる。
次に、移動端末50の接続局判定部503は、取得した対応表202中に自身の接続基地局が存在するかどうかを判定する。この場合、取得した対応表中には、現在の接続基地局である40dが存在しないため、移動端末50は、現在確立済みのマルチキャスト配信経路を削除するために、マルチキャストルータ20bに対して、図29中の点線矢印で示すように、マルチキャストグループからの脱退要求を送信する。
マルチキャストグループからの脱退要求を受信したマルチキャストルータ20bは、他に受信装置が存在しないかどうかを確認するため、図30中の一点鎖線矢印で示すように存在確認要求を送信する。マルチキャストルータ20bの配下には他のマルチキャスト受信装置が存在しないため、存在確認要求に対する応答はなく、最大応答時間経過後、マルチキャストルータ20bは、自身が保持しているマルチキャスト配信経路を削除する。
その後、図31中の点線矢印で示すように、マルチキャストルータ20bは、マルチキャストルータ20aに対して、マルチキャスト配信経路の削除要求を送信する。
マルチキャストルータ20bからのマルチキャスト配信経路削除要求を受信したマルチキャストルータ20aはマルチキャストルータ20bが存在する経路に関するマルチキャスト配信経路を削除し、マルチキャストパケットを配信しないようになり、最終的に図32のように、受信装置50の存在する経路にのみマルチキャストパケットが配信されるようになる。
図34は、図1乃至図32における移動端末50の動作を示すフローチャートである。移動端末50は、無線基地局が切替わったことを検知した際、切替え先の無線基地局を介してマルチキャスト配信経路確立要求を送信する(ステップ101)。次に、移動端末50は、接続マルチキャストルータが切替わったかどうかを判定するため広告要求を送信する(ステップ102)。応答としてマルチキャストルータが対応表を含む広告を送信するので、これを受信する(ステップ103)。受信した広告により、接続マルチキャストルータが切り替わったかどうかを判定する(ステップ104)。マルチキャストルータが切り替わっていなければ、移動前の無線基地局へのマルチキャスト配信経路を削除するために、現在のマルチキャストルータに対して、マルチキャストグループからの脱退要求を送信する(ステップ105)。その後、再度マルチキャスト配信経路の経路確立要求を送信する(ステップ106)。一方、接続マルチキャストルータが切り替わった場合は、移動前の無線基地局へのマルチキャスト配信を停止するために、以前のマルチキャストルータに対して、マルチキャストグループからの脱退要求を送信する(ステップ107)。次に、対応表を参照し、経路確立済マルチキャストルータで現在の無線基地局の隣接ノードでないマルチキャストルータにマルチキャストグループからの脱退要求を送信する(ステップ108)。更に、移動候補のネットワークへのマルチキャスト配信経路を前もって確立しておくために、現在の無線基地局に対応する隣接ノードで、経路確立していないマルチキャストルータにマルチキャスト経路確立要求を送信する(ステップ109)。
移動端末50がこのフローチャートに従うことで、移動後すぐにマルチキャストパケットの受信を開始できるとともに、移動前の無線基地局におけるマルチキャスト配信を停止するとともに、必要のないマルチキャスト配信経路を適切に削除し、帯域を有効に利用することができる。また、マルチキャストルータがマルチキャスト配信経路を削除する前に、マルチキャスト受信装置存在確認要求を送信するため、マルチキャスト配信経路の削除を誤って行うこともない。
ところで、これまでの説明では、移動端末50は無線基地局の切替え検出後、最初にマルチキャスト配信経路確立要求を送信し、その後マルチキャストルータが変化したかどうかを調査したが、この順序を逆にして、最初にマルチキャストルータが変化したかどうかを調査し、その後マルチキャスト配信経路の確立要求を送信するとしてもよい。
また、これまでの説明では、対応表の管理を無線基地局と管理ノード装置(マルチキャストルータ)のIPアドレスで行うように記述したが、これらの対応は必ずしもIPアドレスで行わなくてもよく、例えば無線基地局のMAC(Media Access Control)アドレスとマルチキャストルータのIPアドレスで行ってもよく、移動端末が無線基地局を識別できることと、隣接するネットワークの管理ノード装置に対してパケットを送信するための情報が提供されることが満たされていれば、どのようなものであってもよい。また、これまでの説明では、対応表中に無線基地局が1つしか存在しない場合について記述したが、複数の隣接ネットワークが存在する場合は、対応表中に複数の無線基地局が存在するとしてもよく、また1つの無線基地局が複数のネットワークに隣接している場合は、1つの無線基地局に複数の隣接ノード装置を対応させてもよい。その場合には、接続無線基地局切替時に、複数の隣接ノード装置に対して、経路確立要求や脱退要求を送信することとなる。
なお、本願では広告要求パケット、及び広告パケットにより、上流マルチキャストルータが変わったかどうかの検出、及び対応表の取得により隣接無線基地局の管理ノード装置の判定を行うとしたが、上流マルチキャストルータの切替検知と、隣接無線基地局の管理ノード装置の判定を1つのパケットで行う必要もなく、上流マルチキャストルータが変わったかどうかの検出は広告を使用し、隣接無線基地局の管理ノード装置の判定のための対応表は広告とは別のパケットでマルチキャストルータが送信するとしてもよい。また、パケットによる方法でなくとも、移動端末が、上流のマルチキャストルータが変わったかどうかを検出し、かつ隣接無線基地局の管理ノード装置の判定を行うことができれば、どのような方法であってもよい。
(第二実施形態) 図35は、本発明の第二実施形態による移動通信システムの概念図を示す。この実施形態では、マルチキャストルータ20b、20cの配下に、移動端末の代理でマルチキャストグループからの脱退要求を送信する代理サーバ60a、60bが設けられており、これらの代理サーバがLANの管理ノード装置としてそれぞれ対応表601、602をそれぞれ管理している。これらの代理サーバ60は、移動端末50からのマルチキャストグループからの経路確立要求、及び脱退要求を受信すると、自身が接続するマルチキャストルータに、マルチキャストグループからの脱退要求を送信するとともに、移動端末50からの広告要求を受信すると対応表を含む広告を送信する。
第一実施形態では、移動端末50は、現在接続するマルチキャストルータ以外に対して、経路確立要求や脱退要求を送信する際に、直接対応するマルチキャストルータに対して送信したが、本実施形態では、現在接続するマルチキャストルータ以外に経路確立要求や脱退要求を送信する必要がある場合には、移動端末50は、代理サーバ60に対して経路確立要求や脱退要求を送信する。移動端末50からのこれらの要求パケットを受信した代理サーバ60は、経路確立要求や脱退要求を自身が接続するネットワークのマルチキャストルータ20に送信する。
このように、現在接続しているネットワーク以外に経路確立要求や脱退要求を送信する際に、代理サーバ60を利用してマルチキャストルータ20に送信するようにすることで、経路確立要求や脱退要求が、マルチキャストパケット配信の下流側からマルチキャストルータに届くようになり、経路確立要求や脱退要求は、要求する側から行われるとするマルチキャスト通信の原則に忠実に従うことが可能になる。このため、これによりマルチキャスト通信に関する他のプロトコルとの整合性が良好になるという利点をもたらす。
(第三実施形態) 図36は、本発明の第三実施形態による移動通信システムの概念図を示す。上述の説明では、1つのマルチキャストルータ配下には、1つのデータリンク層スイッチしか接続していなかったが、この図に示すように、データリンク層スイッチがツリー状に複数接続されていてもよく、各データリンク層スイッチが、上述の説明のように経路確立要求や、存在確認要求を見て、個別に自身のマルチキャスト配信管理テーブルに関する処理を行うことで、受信装置の存在する経路にのみマルチキャストパケットを配信することが可能である。
以上説明したように、上述の各実施形態によれば、移動端末50は、接続無線基地局が切り替わったことを検出した際に、接続マルチキャストルータも切り替わったかを調査し、接続マルチキャストルータは変化していない場合は、経路確立要求、脱退要求、経路確立要求を順に、現在接続しているネットワークのマルチキャストルータに送信し、接続マルチキャストルータが変化した場合は、経路確立要求を現在接続しているネットワークのマルチキャストルータに、脱退要求を移動前のネットワークのマルチキャストルータに送信する。
また、移動端末50は取得した対応表を参照し、移動先候補と考えられる隣接ネットワークにおいて、前もってマルチキャスト配信経路を確立するために、対応表中に現在接続している無線基地局が含まれている場合には、対応する隣接ノード装置に対して、経路確立要求を送信する。また、以前に確立したマルチキャスト配信経路を保持する必要がなくなった場合には、マルチキャスト配信経路を削除するために、対応するノード装置に対して、脱退要求を送信する。このようにすることで、移動端末が移動後に、マルチキャストパケットの受信を開始するまでの遅延時間を短くすることができるとともに、マルチキャスト受信装置が存在しない経路にマルチキャストパケットが配信されるのを早期に停止し、不必要なマルチキャストパケットの配信を削減して帯域が無駄に使用されることを防止することができる。
10…送信装置、20a,20b,20c…マルチキャストルータ、30a,30b,30c,30d,30e…データリンク層スイッチ、40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h…無線基地局、50…移動端末、60a,60b…代理サーバ、101,102,103,104,111,112,113,114…データリンク層スイッチのポート、201,202…マルチキャストルータが保持する対応表、601,602…代理サーバが保持する対応表。