JP4207742B2 - 電子鍵盤楽器 - Google Patents

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Description

本発明は、電子ピアノ、電子オルガン等の電子鍵盤楽器に関する。
鍵盤蓋を大型にすると、開閉の際に力を要したり、開閉始終端の安全性に問題があるため、鍵盤蓋を分割して結合する構成があった。その1つとして、鍵盤蓋を開く際に、該鍵盤蓋が回動すると共に後退する構造とした、特開平11−175053号公報(特許文献1)に記載のものがある。これにおいては、図11(a),(b)に示すように、閉状態でほぼ水平に延びる鍵盤蓋が前蓋106aと後蓋106bに分割され、両者はヒンジ部材107で結合されている。前蓋106aには、両側端において後端から下方へ延びるアーム108が設けられ、該アームが回動軸114aにより回動可能に支持されている。後蓋106bは、後端部が山板103によりスライド可能に支持されている。これにより、鍵盤蓋を開く際には、前蓋106aがアーム108の回動支点を中心に回動し、この前蓋の移動はヒンジ部材107を介して後蓋106bの後方へのスライドを生じさせる。鍵盤蓋の後方では、該鍵盤蓋の奥行き寸法とほぼ同じ高さの前パネルが起立状態で固定されており、全開位置に至ると、前蓋は前パネル側へ起立して側板に設けられたストッパ124に当接して支持される。
しかしながら、この鍵盤楽器は、起立状態に固定された前パネルで、楽器本体の上方部分を覆う構造となっており、鍵盤蓋は、開状態としたときに前パネルの高さに納まるようになっている。したがって、前パネルが鍵盤蓋後方からそびえ立ち、その上の天板が高い位置にあるという構造となり、高さ方向に嵩張り、演奏時に圧迫感を伴う。
また、天板の位置を下げて前パネルを低く、又は省略した構造を可能にする構造として、鍵盤蓋全体を前後方向に摺動可能に支持し、開状態では鍵盤蓋を後方へ移動して天板の下方に納めてしまうものや、開状態で鍵盤蓋を後方へ巻き取るスライド蓋があった。しかしながら、このような構造では、アコースティックピアノに由来する回動式鍵盤蓋の高級感に欠ける。また、鍵盤蓋を開く際、回動式の場合のように引き上げる動作ではなく、天板下へ押し込む動作となり、操作の簡便性に劣るという欠点がある。
特開平11−175053号公報(段落0016〜0030、図1〜3)
本発明は、前述の問題点を解決し、鍵盤蓋より上方の寸法を低く抑えることにより楽器本体の高さを低くし、且つ回動式鍵盤蓋を備えることができる構造の電子鍵盤楽器を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するため、演奏操作される鍵盤と、閉状態において前後に並んで位置するように分割された前カバー及び後カバーを備え、該前カバー及び後カバーを折りたたんだ開状態で鍵盤の上方を開放するカバーユニットと、前記鍵盤及び楽音発生手段を収容する楽器本体とを備えた電子鍵盤楽器であって、前記前カバーと後カバーとは各々の上部をヒンジ部により回動可能に結合されており、前記前カバー後端部は楽器本体内に固定された回動支持部により前記ヒンジ部より下方の部分を回動自在に支持され、前記後カバーは、側板に設けられた案内機構により前後方向に移動可能に支持されており、前記楽器本体に設けられた天板は、開状態にある前記前カバーの先端部より下方に位置するように設けられていることを特徴とする電子鍵盤楽器を提供するものである。
このように、本発明に係る電子鍵盤楽器においては、鍵盤から天板又はその近傍に亘る部分が、前カバー及び後カバーを備えたカバーユニットで覆われる。したがって、鍵盤から天板又はその近傍までの範囲の形態を、前カバー及び後カバーで自由に決定することができる。また、カバーユニットが閉状態から開状態に遷移するにつれて、後カバーが後方に移動し、開状態では前カバーは前記後カバーに代わって天板の前端部付近より下方部分を覆うように構成することができる。この場合は、前記範囲の形態を種々に決定しても、開状態に至った前カバーは、後カバーに代わって天板の前端部付近より下方部分を覆うので、天板から上方へ大きく飛び出すということがない。これにより、起立状態で固定された前パネルによる制約を受けずに優れたデザインを得ることができる。また、前記天板は、開状態にある前記前カバーの先端部より下方に位置するように設けられているので、該天板が低い位置にあり楽器本体全体の高さを低く抑えることができる。
前記電子鍵盤楽器は、カバーユニットが開状態にあるときに、演奏者の側に向くようにして電気配線を伴った機能部材が前カバーに装着されたものとすることができる。これにより、電子鍵盤楽器に必要な機能部品を配設するスペースを鍵盤と天板との間等に設ける必要がなく、奥行き方向の楽器長を小さくできると共に、機能部品の不機能状態で機能部品を保護することができる。また、電気配線を伴った機能部材は、製造時又はメンテナンス時の点検や調整を必要とすることがあるが、この構造によると、天板を外す等して後カバーを前方へ回動すると、前カバーの後方が大きく開くので、その開口部を通じて電気配線部分の点検や調整を容易にすることができる。機能部材を装着した鍵盤蓋は、厚さを増すことが多いが、本件発明の構造によれば、カバーユニットを開状態にしても、前カバーの厚さ分が前方に出てきたり、或いは後方にその厚さ分の収容スペースを必要としたりすることがない。これは、前カバーと後カバーとは各々の上部をヒンジ部で回動可能に結合され、前カバー後端部は、楽器本体内に固定された回動支持部によりヒンジ部より下方の部分を回動自在に支持されているという構造による。すなわち、鍵盤蓋の厚さが増しても、開状態に至る際に、前カバーは閉状態における上面を、回動支持点部を中心に後方へ移動させるように回動し、後カバーもこれに連れて後方へ移動する。したがって、前カバーの厚さ分は、開状態で後方への移動部分を生じるが、後カバーがこれに伴って後方へ移動するので、後方にその厚さ分の収容スペースを必要としないのである。閉状態における前カバーの上面は、開状態へ移行する際に後方へ移動するので、前カバーの厚さ分が前方へ出てくることもない。
前記機能部材は、スピーカとし、前カバーに内蔵することができる。これにより演奏者は、カバーユニットを開いて演奏する際に、楽器本体の背面スピーカや他所の外部スピーカからではなく、前カバーに内蔵されたスピーカから直接的に精度よく、楽音を聴くことができる。また、スピーカは前カバーに内蔵されるので、閉じた状態では前カバーに上方を覆われる。したがって、楽器本体等の固定部分に上向きにスピーカを装着して布製等のネットで覆った場合の問題、すなわち、ネットから埃が浸入して振動板上や加振部に溜まり、衛生上良くないばかりか、スピーカの機能に支障を来すこともあるという問題を解決することができる。また前記機能部材は、上記スピーカの他、液晶ディスプレイ等の電子的表示部を備えたものとすることもできる。
また本発明は、複数の操作子を楽器本体に備え、該操作子を覆うカバーユニットを有し、楽器本体の上面を前記カバーユニットと天板とで構成した電子鍵盤楽器において、前記カバーユニットは、閉状態において前後に並んで位置するように分割された前カバー及び後カバーを備え、該前カバーと後カバーとは、折りたたんだ開状態で前記操作子の上方を開放するようにヒンジ部により回動可能に結合されており、前記前カバーは、前記複数の操作子の両端外側における楽器本体内の回動支持部により回動自在となっており、前記回動支持部は前記ヒンジ部より下方に位置しており、前記後カバーの後端部は、前記カバーユニットの開閉動作が前記ヒンジ部及び回動支持部を回動中心として行なわれる際に前記後カバーの移動を許容する緩衝部材として作用するリンク部材の一端に回動自在に支持され、該リンク部材の他端は楽器本体における前記天板の下面近傍に支持されていることを特徴とする電子鍵盤楽器をも提供する。
すなわち、前記リンク部材は、前記後カバー後部の案内部材として機能するが、案内部材の機能上必要とされる構成要素は、相互の回転運動により作動するので、スライド動作を伴う場合の摺動摩擦がない。したがって、カバーユニットのスムーズな開閉を実現するのに有利である。
また本発明は、複数の操作子を楽器本体に備え、該操作子を覆うカバーユニットを有し、該カバーユニットの開閉時にカバーユニットの自重による負荷を軽減する負荷軽減手段を備えた電子鍵盤楽器において、前記カバーユニットは、閉状態において前後に並んで位置するように分割された前カバー及び後カバーを備え、該前カバーと後カバーとは、折りたたんだ開状態で前記操作子の上方を開放するようにヒンジ部により回動可能に結合されており、前記前カバーは、前記複数の操作子の両端外側における楽器本体内の回動支持部により回動自在に支持され、該回動支持部は前記ヒンジ部より下方に位置しており、前記負荷軽減手段は、前記カバーユニットの全開又は全閉位置へ近づくにしたがって該位置への接近に対する抵抗力を増すように、一端を楽器本体に結合され、他端を前記ヒンジ部から該ヒンジ部の長手方向を横切る方向に離れた位置で前記前カバーに結合された弾性部材を備えていることを特徴とする電子鍵盤楽器をも提供する。
これにより、前カバーの自由端を支持するのに要する力を、回動範囲に亘って、より均一化することができ、特にカバーユニットの全開位置又は全閉位置に近づいたときに必要とされる前カバー支持力の著しい増大を回避することができる。特に機能部材を装着した前カバーは、重量が増すことが多く、これに伴って全開位置又は全閉位置に近づいたときに必要とされる前カバー支持力も増すので、前記弾性部材を備えた構造による利点は大きい。
以上のように、本発明に係る電子鍵盤楽器によれば、鍵盤蓋より上方の寸法を低く抑えることにより楽器本体の高さを低くし、且つ回動式鍵盤蓋を備えることができるため、前述のような問題点を解決した構造の電子鍵盤楽器を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。説明に用いる図面においては、同一又は同種の部分に同じ番号を付して説明を省略することがある。
(第1の実施形態)
図1〜図4は、本発明を電子鍵盤楽器に適用した場合の第1の実施形態を示している。図1〜図3は、電子鍵盤楽器1の縦断側面図であり、図1は鍵盤蓋を兼ねるカバーユニットを閉じた状態、図2は開いた状態、図3はその中間の状態を各々示している。また、図4は電子鍵盤楽器1のカバーユニットを開いた状態を部分的に示している。
この電子鍵盤楽器1は、白鍵3及び黒鍵4、楽音の発生及び制御のための電子回路(図示省略)等を備え、これらを楽器本体ケース10に収容している。該ケース10は、底部を形成する棚板5、その演奏者側である前端面を覆う口棒6,背面部に立設した背板7,左右両側部の側板8,上面を覆う天板9,メインスピーカ13を収容したスピーカボックス14、棚板5から下方へ延びた脚19等を備えている。スピーカボックス14は、鍵並び方向における中央部において、棚板5の下面に取り付けられ、脚19は棚板5の前部の両端及び後部の中央部に結合されている。このケース10の中には、楽音の発生及び制御のための電子回路、そのためのスイッチやコントローラ、電源装置、接続端子等が装着されている。
鍵盤及びその後方部分は、カバーユニット30により覆われる。カバーユニット30は、前後に分割され折りたたみ自在に結合された前カバー31及び後カバー32を備え、前カバー31及び後カバー32を延ばした閉状態で口棒6上端から鍵盤上方を経て天板9の前端に亘る部分を覆い、折りたたんだ開状態で鍵盤の上方を開放する。
前カバー31と後カバー32とは各々の上部をヒンジ部33で回動可能に結合されている。ヒンジ部33は、前カバー31及び後カバー32の左右両端部間に亘って連続して延びた蝶番の形態をとっている。尤も、ヒンジ部は、前カバー31と後カバー32とに亘って延びる可撓性部材の形態とする等、前カバー及び後カバーを回動可能に結合する種々の形態とすることができる。
前カバー31は、スピーカ34等の機能部材を収容する厚さを有しており、閉じた状態において後部上端となる位置に前記ヒンジ部33が取り付けられ、左右両側の後部におけるヒンジ部33より下方の部分が、回動装置40を介して側板8に支持されている。より詳細には、前カバー31は、閉状態において、上面に位置する上壁31aと、その先端から垂下する前壁31bと、下面に位置する下壁31cとを備え、これらは鍵盤全体を覆う長さで鍵並び方向に延設されている。下壁31cは、開蓋時に音色、効果等の楽音制御パラメータ、自動演奏やプレイアシスト時の各種パラメータの設定を行う各種多様の操作子を立設した制御パネルとして機能するものであり、それらの操作子の設定時に利用される液晶表示器31kが左右方向の中央に配設されている。上壁31aと下壁31c、及び前壁31bと下壁31cは、各々結合部材31e、31fで相互に結合されている。
下壁31cは、閉状態において上壁31aより後方まで延設され、その後端部の両端部において、側板8に設けた回動装置40への回動支点部としての嵌合孔31hを有した取付け板31gを固着した構造をしている。詳細には、取付板31gの嵌合孔31hは、前カバー31側に保持されており、側板8に設けられた回動装置40の回動支持部41から内側に突設した長方形の軸42を嵌合することで、本体に対して前カバー31は回動自在になる
前カバー31の回動に連動して後カバー32が移動するが、この後カバー32の動作を案内するための案内機構50が本体側に設けられている。案内機構50は、天板9のやや下方において直接又は他の部材を介して側板に設けられ略水平に延びる案内溝51と、案内溝51から天板上端に通じる導入溝52が設けられている。後カバー32の後端部には、案内溝51から天板上端に通じる導入溝52が設けられ、案内溝51に嵌められた係合ピン53を支持する支持板54が取り付けられている。前カバー31を開閉する際には、案内溝51が係合ピン53の摺動ガイドとして働き、後カバー32の前後動を案内する。なお上記の配置に代え、案内機構50及び後カバー32における装着部材を逆にし、案内溝51を後カバー32に、係合ピン53を側板8に設けてもよい。また、前記案内溝51は、係合部材としての係合ピン53を介して後カバー32の移動を案内する種々の経路で形成することができる。例えば、案内する経路を直線状とすれば後カバ32ーの動作範囲も直線状となる。このように、案内する経路を所望の形態にして、動作の合理化や楽器本体のコンパクト化を図ることもできる。
側板8にはさらに、前カバー31の開閉動の際に回動支点となる回動装置40が取り付けられている。回動装置40は、側板8から突出し回転する軸42と、側板8内に埋め込まれ、軸42を回動自在に支持する回動支持部41とを備えた公知のダンパ機能を有するものである。この回動装置40においては、軸42が回動支持部41内で回動する時に、回動支持部41内部部材の接触抵抗によって軸42の回動に抵抗が与えられ、回転動作が緩慢化される。一方、前カバー31には、回転片としての取付板31gが設けられており、前述した軸42はこの嵌合孔31hに嵌合しており、この回動装置40の働きによって、前カバー31の回動動作に適切な抵抗が与えられている。この動作の緩慢化作用は、前カバー31を閉じるときに強く働くようにすることにより、カバーユニット30がその重量で急激に閉じるのを防止することができる。
回動装置40は、ヒンジ部33より下方に設けられる。これにより、回動支持部41とヒンジ部33との距離を半径として、前カバー31を開動作と共に後方へ移動させ、前カバー31下方の鍵盤部分を広く開放することができる(図2参照)。この開放範囲を大きくするためには、回動装置40は、ヒンジ部33の下方であって且つ後方に配置するのが望ましい
この配置により、前記カバーユニット30は、閉状態において、前カバー31と後カバー32との結合部分が鍵盤の上方に位置し、開状態において、前カバー31及び後カバー32は鍵盤上方を開放する位置に後退するように構成することができる。前カバー31及び後カバー32は、ヒンジ部33とそれより下方の回動支持部41とで回動自在に支持され、その結果、前カバーは、開状態において、前記後カバーに代わって天板の前端部付近より下方部分を覆うように構成される。この際、閉状態における前後方向の寸法が大きいと、開状態となったときに、前カバー31が天板9から上方へ突出することがある。前カバー31と後カバー32との結合部分が鍵盤の上方に位置するように前カバー31の寸法を決めておけば、前カバー31の寸法が制限されるので、そのような突出を回避し、確実に天板9の前端部付近より下方部分を覆う構成をとることができる。なお、前記回動支点部としての嵌合31hはヒンジ部33より下にあるのが望ましく、ヒンジ部33は前記回動支点部より前にあるのが望ましい。
側板8には、カバーユニット30が開位置に至ったときに、前カバー31における回動装置40近傍部分、及び後カバー32のヒンジ部33近傍部分に当接して移動を停止させるストッパ61及び62が設けられている。
前カバー31及び後カバー32は、このようにヒンジ部33、回動装置40、案内機構50により開閉動作するように支持され、カバーユニットが閉状態から開状態に遷移するにつれて、後カバー32が後方に移動しつつ、その前端が下方に下がる。こうして、前記カバーユニットの開状態において前カバー31は後カバー32に代わって天板の前端部付近より下方部分を覆うように構成されている。
この実施形態においては、さらに前カバー31にスピーカ34が内蔵されている。このため、前カバー31の上壁31aと下壁31bは結合部材31eにより相互に間隔をおいて結合し、収容空間を形成している。スピーカ34は、下壁31bに結合された取付け板31iにビス等により固定され、図外の接続線によりケース内の楽音発生手段に接続され、鍵や操作子の操作により、メインスピーカと共に発音するようになっている。スピーカ34の振動板は、下壁31bに対向しており、これによりカバーユニットを開いたときに、音響放射方向が演奏者に向くようになっている。尤も、スピーカの振動板そのものの向きは必ずしも下壁に向いている必要はなく、例えば上壁31aに向けて配置され前カバー31内の空間を経て下壁31bの側、すなわち、演奏者の側へ音響放射が向けられるようにしてもよい。前カバー31には、スピーカの他、楽音制御のためのスイッチやコントローラ、液晶等のディスプレー等、種々の機能部材がパネル面(下壁31c)に操作可能に装着されている。なお、図1及び図2において、破線31m,31nはそれぞれ前記機能部材としての液晶表示器31k及びスピーカ34からの配線を示す。図から明らかなように、前記配線31m,31nは、ストッパ61及び62の間に配設され、開蓋時においてはヒンジ部33の前方に位置するように配設されている。
前カバー31は、機能部材を組み込む結果、通常より厚さが増す。開状態においてその厚さ分が演奏者側へ突出するなどして、デザイン上又は機能上の支障を来さないように、前カバー31は十分に後方へ回動して開状態に至るようにするのが望ましい。このためには、開状態でヒンジ部材33が、回動装置40による支点より下方の位置に至るようにするのが望ましい。これは特に、閉状態において、略水平な前カバーに対し、後カバーが後方へ大きく傾斜し、或いは略水平となっている場合に効果的である。カバーユニット30は、閉状態にあるときに前カバー31a及び後カバー31bが側面視において上方へ湾曲して略直線状に並び、開状態にあるときに前カバー31aが後方へ回動して後カバー31bに接近した位置をとるようになっている。
この例ではさらに、カバーユニット30の開閉動作のために、図示のような緩衝機構70を備えている。この緩衝機構70は、カバーユニット30の鍵並び方向両端部における後部に延設して係止部71を設け、これに引張りコイルバネ等の弾性部材72の一端を係止し、該弾性部材の他端を、棚板5上のピン73に係止したものである。これらの配置は、カバーユニット30を開いた状態及び閉じた状態において、弾性部材72の伸び量が大きく、その中間位置においては、伸び量が小さくなるように決められる。図1及び図2では、各々カバーユニット30を閉じ状態及び開いた状態での弾性部材72が示されている。図3では、カバーユニット30を閉じた状態及び開いた状態における弾性部材72の位置を想像線で、中間位置における弾性部材72の位置を破線で示している。このように、カバーユニット30を最も開いた状態及び完全に閉じた状態において弾性部材72による弾性力が大きく作用するので、カバーユニットはこれら開位置及び閉位置に近づくにつれてその動作と逆向きに大きな弾性力を受ける。その結果、カバーユニットが自らの重力により急激に開又は閉の状態に至るのが防止され、開閉動作時に指を挟む等の危険が回避される。特に、スピーカ等の機能部材を収納することにより蓋体の重量が大きくなっている場合に、この緩衝機構が果たす役割は大きい。
このように、前記弾性部材72による弾力は、カバーユニットの開閉動作についてのダンパ機能を果たすものであるが、このダンパ機能は、閉蓋時においてより強く作用することが好ましい。このように閉蓋時に強くダンパ機能を作用させる場合、弾性部材72の伸び量は閉蓋時と開蓋時において対称ではなくなる。ただし、閉蓋時により強くダンパ機能が作用するように、前述の回動装置40のダンパ機能を調節してもよい。この場合、前記弾性部材の伸び量は閉蓋時と開蓋時において対称としてもよい。すなわち、図3に示すように開蓋時と閉蓋時では弾性部材72の位置がほぼ線対称をなしており、その伸び量もほぼ同じとなる。
なお、弾性部材を支持するためのピン73等の係止部材は、図示のように棚板5に設ける他、側板8に設ける等、楽器本体の種々の箇所に直接或いは他の部材を介して設けることができる。
なお、前記回動支持部41を備えた回動装置40は、本実施形態では楽器本体ケース10側(側板8側)に設けられているが、本発明においてはこれに限定されるものではない。すなわち、前カバー31の後端部において前記回動装置40と同様の回動装置を回動支点として固定し、楽器本体ケース側に前記回転片と同様の取付板を固定してもよい。
また前記カバーユニット30は、閉状態にあるときに前カバー31及び後カバー32が側面視において略直線状に並び、該前カバー及び後カバーの内、少なくとも後カバーが上に凸の曲面によって略全体を構成され、開状態にあるときに前カバーが後方へ回動して後カバーに接近した位置をとるように構成することができる。このような形態によれば、カバーユニットが覆う鍵盤上方の位置から天板までの範囲が、略直線状に形成され、且つ該前カバー及び後カバーの内、少なくとも後カバーが上に凸の曲面によって略全体を構成されているので、電子鍵盤楽器の全高を低く抑えることができる。
(第2の実施形態)
図5及び図6は、本発明を電子鍵盤楽器に適用した場合の第2の実施形態を示している。図5は前カバーを閉じた状態、図6は前カバーを開いた状態を示している。この実施形態として示す電子鍵盤楽器1'では、楽器本体のケースは、前の例と同様の棚板5、口棒6,背板7,側板8,天板9を備える。但し、この実施形態においては、カバーユニット20を形成する前カバー12は鍵盤(白鍵3、黒鍵4)を覆って鍵盤蓋(蓋体)として機能し、後カバー11は、前カバー12の後端から後方へ上昇するように傾斜して設けられ、楽器本体の演奏者側の面を覆う前板として機能する。また、天板9の前端から短く垂下した垂れ板10が設けられている。
この電子鍵盤楽器1'では、前カバー12の内部に機能部材の一例としてスピーカ14が開蓋時に放音面が演奏者側を向くように収納されている。スピーカ14は図外の接続線によりケース内の楽音制御装置に接続され、鍵や操作子の操作により、内蔵スピーカ又は外部スピーカと共に発音するようになっている。
ところで、従来の多くの電子鍵盤楽器においては、楽器本体に固定された回動軸で鍵盤蓋の後端部を支持し、これを中心に回動させることにより開閉を可能としたものである。したがって、その鍵盤蓋にスピーカを設置しようとすると、例えば図12に示すような構造をとることとなる。図12(a)は鍵盤楽器200に対し鍵盤蓋201を閉じた状態を示している。なお、203,204は、各々白鍵及び黒鍵である。この鍵盤蓋を開いた状態を図12(b)に示す。図示のように、鍵盤蓋201は、ほぼ起立した状態で前板202に支持される。この状態でスピーカ210は、演奏者の方を向くので、演奏者はこのスピーカ210から直接的に楽音を聴くことができる。
しかしながら、このような構造では、鍵盤蓋201は、スピーカを収容するのに必要な厚さとなり、鍵盤蓋を閉じたときには、その厚さが目立ち、デザインを損ねる結果となる。また、鍵盤蓋を開いて起立させたときにその厚さ分を受け入れる水平状部分205が鍵盤蓋201と前板202との間に介在し、その長さL1の分だけ奥行き寸法、すなわち鍵盤蓋前端と前板との距離L0が長くなり、外観を損ねることになる。さらに、鍵盤蓋の厚さ分の段部又は凹所が前板との間に生じ、そのような段部や凹所に物が落下して取り出し難くなるという問題も生じ得る。
また、起立した鍵盤蓋を両側板間に受け入れる形態のものにあっては、厚い鍵盤蓋を受け入れるために前パネルを側板の前端縁より大きく後退させる必要が生じる。その結果、鍵盤蓋を閉じた状態では、側板の前端縁と前パネルとに大きな段差が生じ、デザインが極めて悪くなる。
スピーカ以外の機能部材であっても、組み込むことにより鍵盤蓋が厚くなる場合は、同様の問題が生じる。したがって、スピーカ等の機能部材を組み込んでも奥行き寸法の増大の問題を生じない構造の電子鍵盤楽器が望まれる。
これに対し、この実施形態におけるカバーユニット20の取付け構造は、以下の通りである。楽器本体の演奏者側の面を覆うように後カバー11が設けられている。これを支持するために、左右両側の側板8に固定された回動支点15に各々リンク部材16が回動自在に支持され、後カバー11は左右両側において後端部が、リンク部材16の自由端にピン17により回動自在に結合されており、これらにより案内機構が構成されている。
この実施形態においては、リンク部材16と後カバー11後端部との結合部であるピン17は、リンク部材16の回動支点15より上に位置している。これにより、後カバー11の後端部を天板9に近い上方位置とすることができ、ケース内の収納スペースの確保及び外観上好ましい。尤も、ピン17をリンク部材16の回動支点15より下方に位置させることもできる。
後カバー11の前端部は、ヒンジ部材18により前カバー12の後端部と回動自在に連結されている。ヒンジ部材18は、前カバー12及び後カバー11の左右両端部間に亘って連続して延びている。前カバー12は、後述するスピーカを収容する厚さを有しており、閉じた状態において後部上端となる位置に前記ヒンジ部材18が取り付けられ、左右両側における後部下端部を回動支点用ピン21を介して側板8に回動自在に支持されている(ピン21の側板8への結合は直接でも他の部材を介してでもよい)。
このように、後カバー11、リンク部材16、前カバー12後部の厚さ方向部分、及び、リンク部材16の回動支点15と前カバー12のピン21とを支持するケース(側板8)が、各々リンクを構成する四節回転リンク機構を構成している。これにより、前カバー12が閉状態から開状態に遷移するにつれて、後カバー11が後方に移動し、且つ前カバー12が起立して後カバー11の前方へ位置し、開状態では前カバー12は後カバー11に代わって天板9の前端部付近より下方部分を覆うように構成されている。すなわち、リンク部材16は、後カバー11の動作に関し、後カバー11後部の案内部材として機能する。
開いた状態で前カバー12は、やや後方へ斜めに傾斜して垂れ板10で支持され、このとき14は、演奏者の方に音響放射面を向ける。前カバー12は、スピーカ14からの音響放射を妨げないように、布製等のネットや多孔性材料でスピーカを覆う部分が構成される。これにより、演奏者は、楽器本体の後方に設置されたスピーカ又は楽器本体外に設置された外部スピーカから発せられる楽音と同時に、スピーカ14からの楽音を直接的に聴くことができ、楽音を正確に聴き取ることができる。
また、この蓋取付け構造においては、前カバー12が水平位置へと下降するのに伴って、後カバー11が全体として上昇する。すなわち、前カバーを閉じる時には、前カバーの重心の下降と後カバー11の重心の上昇とが打ち消し合うように作用して、前カバー12の下降動作の加速が緩和される回動範囲がある。
さらに、前カバー12の開閉動作のために、図示のような緩衝機構を設けることもできる。この緩衝機構は、前カバー12の鍵並び方向両端部における後部に延設して係止部23を設け、これにコイルバネ等の弾性部材22の一端を係止し、該弾性部材22の他端を、側板8上のピン24に係止したものである。ピン24は、弾性部材22の伸びが、非対称になるような位置に設けられる。すなわち、これらの配置は、前カバー12を開いた状態及び閉じた状態において、弾性部材22の伸び量が大きく、その中間位置においては、伸び量が小さくなるように決められる。図5では前カバー12を閉じたときの弾性部材22が示されている。図6では、前カバー12を開いた状態における弾性部材22の位置を実線で、閉じた状態及び中間位置における弾性部材22の位置を一点鎖線で示している。このように、前カバーを最も開いた状態及び完全に閉じた状態において弾性部材による弾性力が大きく作用するので、前カバーはこれら開位置及び閉位置に近づくにつれてその動作と逆向きに大きな弾性力を受ける。その結果、第1の実施形態と同様に、前カバーが自らの重力により急激に開又は閉の状態に至るのが防止され、開閉動作時に指を挟む等の危険が回避される。弾性部材を支持するためのピン24等の係止部材は、図示のように側板7に設ける他、棚板5に設ける等、楽器本体の種々の箇所に直接或いは他の部材を介して設けることができる。
(第3の実施形態−譜面板装置との連動構造)
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本発明に係る電子鍵盤楽器は、以下に記載するように、天板上に設けられた譜面板装置を、カバーユニットの開閉動作に連動して天板の奥行き方向に移動するように配設したものとすることができる。このように構成することで、譜面台を使用しない状態であっても、譜面板装置を天板の奥行長以内に収めることができる。なお、ここでいう操作子とは、電子鍵盤楽器の鍵盤や、楽器の作動や楽音の制御を行う制御装置の操作端子等の操作部全般を指す。
このような電子鍵盤楽器において、好適には、前記カバーユニットと譜面板装置とを連結する連結手段とをさらに備えており、前記譜面板装置が、前記連結手段を介して、前記カバーユニットを開く際に前記天板の奥方向にスライドし、閉じる際に前記天板の手前方向にスライドするように、カバーユニットの開閉に連動して移動可能に配設されている。このような連結手段によって、前記カバーユニットの動きと前記譜面板装置の動きとが確実に連動する。
また、前記連結手段は、前記カバーユニットの開閉動作によって、該カバーユニットの少なくとも一部が前記天板の奥行き方向に移動する際に、前記カバーユニットの動く距離の全てを前記譜面板装置の動きとして伝えるのではなく、カバーユニット(またはカバーユニットの一部分)の動く距離の一部のみを伝える機能を有していることが好ましい。これによって、譜面板装置の奥行き方向の長さや天板の奥行長に関する設計の自由度が大幅に増す。
また、本願発明に係る電子鍵盤楽器においては、前記譜面板装置の奥行き方向の実質的実効長が、前記天板の奥行長よりも長く構成されることが好ましい。すなわち、通常の天板の奥行長(250mm程度)に比して、譜面板装置の長さ、すなわち譜面台の高さを従来より大きくする。これによって、譜面板装置に譜面等を立てた際の安定度が増す。具体的には、譜面板装置の奥行き方向の実質的実効長は、300mm程度確保されることが好ましい。
別の視点から述べると、本願発明に係る電子鍵盤楽器においては、前記天板の奥行長が、譜面板装置の奥行き方向の実質的実効長よりも短く構成されていることが好ましい。すなわち、譜面板装置の長さ(譜面台としての高さ)を一般的なもの(150mm〜200mm程度)とした場合、天板をそれまでに必要であった奥行長よりも小さく設計する。このように設計することで、電子鍵盤楽器を制作する際に、電子鍵盤楽器の全体構成をコンパクトにすることが可能となる。
なお、本発明において、前記譜面板装置は、譜面板と受け台とを別々に備えているものや、受け台を一体的に組み込んだものであってもよい。このような譜面板装置に関する「奥行き方向の実質的実効長」とは、譜面板を倒した状態において、前記譜面板装置を前記天板の奥行き方向において測定した実質的な長さをいう。
以下、この譜面板装置との連動構造を備えた電子鍵盤楽器について、図7〜図10を参照して説明する。
図示の電子鍵盤楽器1''においては、カバーユニット320は、鍵盤及びその後方部分を覆っており、鍵盤蓋の役割をなす。カバーユニット320は、前後に分割され折りたたみ自在に結合された前カバー(前蓋)321及び後カバー(後蓋)322を備え、前カバー321及び後カバー322を延ばした閉状態で口棒6上端から鍵盤上方を経て天板9の前端に亘る部分を覆い、折りたたんだ開状態で鍵盤の上方を開放する。
このカバーユニット320の取付け構造は、以下の通りである。カバーユニット320の一部を構成する前カバー321は、左右両側の側板8に固定された回動支点315に支持されている。前カバー321は、回動支点315を中心に回動するようにして開閉され、閉時に白鍵3および黒鍵4を覆う。前カバー321の後端部と後カバー322の前端部とはヒンジ部323で回動可能に結合されている。また前カバー321は、スピーカ324等の機能部材を内部に収容する厚さを有している。
天板9の上面には、譜面板装置330が前後方向(図7の矢印Aの方向)にスライド可能に載置されている。譜面板装置330は譜面板331と、スライド板332とを備えており、譜面板331は、背面の下部に取り付けられた回転軸333によりスライド板332に対して回動可能に支持されている。譜面板331は、その背面が支持具334によって支えられており、支持具334が係止部335の適当な位置に係止されることによって、譜面板331をやや斜め後方に起立した状態で保持することができる。スライド板332には上面に開いた凹部が形成されており、該凹部において受け台336が回転軸333に平行な方向に連続して延びるように設けられている。譜面板331を起立した状態で譜面338を立てかけた際に、受け部336において譜面の下端を支持する。図7における電子鍵盤楽器1''は、カバーユニット320を開き、譜面板331を起立させた状態を示している。
譜面板装置330は、カバーユニット320の開閉動作に連動して、天板9上を前後方向にスライドする。スライド板332の下面には、スライド板332に対してほぼ垂直に延びる前舌片341および後舌片342が相互に間隔をあけて前後に固定されており、天板9に設けられた溝状の開口343を貫通している。前記前舌片341および後舌片342が開口343に沿って移動することで、スライド板332は、天板9上を前後方向にスライドする。
側板8には案内溝350が設けられており、後カバー322の後端部に固定された接続部322aに設けられた係合ピン322bが、案内溝350に沿って摺動することで、カバーユニット320を開ける際に後カバー322を後方へとスライド可能とする。なお側板8には、係合ピン322bを側板8の上端から案内溝350に導くための導入溝351も併せて設けられている。
接続部322aに設けられた係合爪322cは、後カバー322が前方向にスライドする際には前舌片341に係合して引き寄せ、後方向にスライドする際には後舌片342を押す。この構造によって、カバーユニット320の開閉動作に連動して譜面板装置330が天板9に対して前後方向にスライド可能となる。
この例では、前述の係合爪322c,前舌片341及び後舌片342が、カバーユニット320の動きを譜面板装置330に伝える連結手段として作用する。この構成は一例であって、異なる構成であっても、同様の作用をもたらすものであれば、連結手段の概念に含まれることは言うまでもない。
次に、このような電子鍵盤楽器1''のカバーユニット320を開閉する動きに連動して、譜面板装置330が前後に移動するための動作について図7および図8を用いて詳細に説明する。なお図8においては、カバーユニット320および譜面板装置330の動きと関連しない要素の一部については図示を省略している。
図7に示す電子鍵盤楽器1''は、カバーユニット320が開いた状態を表しているが、この状態において、後カバー322後端部は、スライド板332に固定された後舌片342と接している。カバーユニット320を閉じる動作と共に、後カバー322の後端部が後舌片342から離れ、後カバー322が案内溝350に沿って前方に移動する。後カバー322の後端部は案内溝350に沿って前方方向へ一定距離(=L2)進んだ地点で前舌片341に接触する。その後、カバーユニット320がさらに閉じられることにより、前記後端部に備えられた係合爪322cは前舌片341を前方方向に引いて移動させる。これによって、譜面板装置330は天板9の上面を前方(手前側)にスライドする。カバーユニット320が完全に閉じられた状態になったとき、後カバー322の後端部は所定距離移動し、前舌片341は開口343の前端部近くに到達して停止する。この状態において、譜面板装置330は天板9の上面よりやや前方方向に張り出した場所に位置している。図8は、このようにしてカバーユニット320が完全に閉じられた電子鍵盤楽器1''の様子を示す縦断面図であり、図9は、カバーユニット320が閉じられた状態の電子鍵盤楽器1''の正面図である。図9に示すように、前舌片341(および後舌片342)は電子鍵盤楽器1''の幅方向における中央付近に位置している。また、スライド板332は、その両側端の上面及び側面が、奥行き方向に延びるガイド部材337に接しており、該ガイド部材337に沿ってスライドする。
次に、電子鍵盤楽器1''のカバーユニット320が、図2に示す閉じられた状態から、開かれる際の動作について説明する。カバーユニット320を開く動作を行うと、後カバー322の後端部は前舌片341から離れ、案内溝350に沿って移動し、係合爪322cはこれに伴って後方へスライドする。後カバー322の後端部が案内溝350に沿って一定距離(=L2)だけ移動すると、後カバー322の後端部は後舌片342に接する。後舌片342は、開口343に沿って後方へ移動可能なため、後カバー322の後端部に押される形で、係合ピン322bが案内溝350の終端部にたどり着くまで後方へ一定距離(=L1)移動する。係合ピン333cが案内溝350の終端部で停止すると、後舌片342は開口343の後端部近くに達する。
以上の説明から明らかなように、カバーユニット320の開閉動作によって、後カバー322は案内溝350の奥行き方向の実質的長さ(L0=L1+L2)を摺動する。このとき、カバーユニット320の開閉動作に連動してスライドする譜面板装置330は、前後方向にそれぞれL1の距離のみスライドする。言い換えると、前舌片341および後舌片342の間隔(=L2)を後カバー322の後端部が摺動する間は、譜面板装置330の前後方向の動きに影響を及ぼさない。すなわち、前舌片341および後舌片342の間隔L2は、カバーユニット320を開閉するために後カバー322が移動する距離の一部を吸収する役割を果たしている。
譜面板装置330をスライドさせる距離(L2)は、前舌片341および後舌片342をスライド板332の位置を変更することで、容易に調節可能であるため、前記吸収される距離を変更することができる。なお、後端部322の摺動する距離(=L0)についても、案内溝350や開口343の長さを必要に応じて選択することで、適宜設定可能である。このように、カバーユニット320の動く距離(すなわち後カバー322の摺動する距離)の一部を譜面板装置330のスライドする動作(距離)に伝達することで、譜面板装置の奥行き方向の長さや天板の奥行長、カバーユニット320の摺動構造等の設計に自由度をもたせることができる。
次に、カバーユニット320が閉じられた状態で、譜面板331を倒した様子を図10に示す。譜面板331は、後方に倒された際に天板9の奥端(地点P)を越えずに収まるように設計されている。このような天板9の奥行き長さや、譜面板331の長さ等の設計は、前舌片341と後舌片342の前後方向の間隔(=L1)とともに調整することが好ましい。このように調整することによって、譜面板331について、譜面を安定して支持することができる高さを確保できるとともに、電子鍵盤楽器1''の奥行きをコンパクトに設計することができる。
また、譜面板装置330は、カバーユニット320を閉じた状態で、天板9の前端より手前(前方)に位置する。したがって、楽譜等に書き込みを行う場合に、譜面板装置330の譜面板12またはスライド板332を筆記台として利用し易くなるという利点を得ることもできる。
さらに、カバーユニット320を開いた状態において、前カバー321とスライド板332との間にある程度の隙間ができるように設計されることが好ましい。このようにすることで、カバーユニット320を開けた際に、前カバー321と譜面板装置330との間で手挟みが生じることを防ぐことができる。
なお、図7〜図10に示した構造は、譜面板装置330およびカバーユニット320の連結手段の一例を示しているが、連結手段は、このような構造に限定されるものではない。例えば、ギヤやベルト等、またはそれらの組み合わせによってカバーユニット320の動く距離の一部を譜面板装置330のスライドする距離に伝達するようにしてもよい。また、この例ではカバーユニット320の前カバー321は、ヒンジ323を中心に回動し、後カバー322が前後に移動しているが、このうような形態に限られるものではなく、カバーユニット320の他の部分やカバーユニット320全体が前後に移動するような構造であってもよい。
(他の実施形態)
本発明は、以上に記載した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、緩衝機構としては、図示のように引張りコイルバネにより引張力を作用させる構成の他、捩りバネを前カバーの回動支点の軸及びその支持部分に介在させ回転モーメントを開閉動作の逆向きに作用させる等、種々の構成を採用することができる。
後カバーを前後方向に移動可能にする案内機構としては、前述の第1実施形態又は第3実施形態のものと第2実施形態のものとを入れ替えて備えることもできる。また他の種々の形態のリンク機構やガイド溝またはガイドレールを備えた機構を採用することも可能である。
なお、上記の各実施形態では、鍵盤を覆うカバーユニットについて示したが、鍵盤以外の楽音制御のための操作子を覆うカバーユニットを備えたものに適用することもできる。
本発明の第1の実施形態に係る電子鍵盤楽器についてカバーユニットを閉じた状態を示す縦断側面図である。 図1の電子鍵盤楽器についてカバーユニットを開いた状態を示す縦断側面図である。 図1の電子鍵盤楽器についてカバーユニットが開閉の中間位置にある状態を示す縦断側面図である。 図1の電子鍵盤楽器の一部についてカバーユニットを開いた状態を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態に係る電子鍵盤楽器についてカバーユニットを閉じた状態を示す縦断側面図である。 図5の電子鍵盤楽器についてカバーユニットを開いた状態を示す縦断側面図である。 本発明の第3の実施形態に係る電子鍵盤楽器についてカバーユニットを開いた状態を示す縦断側面図である。 図7の電子鍵盤楽器についてカバーユニットを閉じた状態を示す縦断側面図である。 図7の電子鍵盤楽器についてカバーユニットを閉じた状態を示す正面図である。 図7の電子鍵盤楽器についてカバーユニットを閉じ譜面板を倒した状態を示す縦断側面図である。 従来技術を示すものであり、(a)鍵盤蓋を開いた状態、(b)は鍵盤蓋を閉じた状態を示す縦断側面図である。 従来タイプの電子鍵盤楽器の前カバーにスピーカを内蔵した形態を概略的に示す縦断側面図であり、(a)は鍵盤蓋を閉じた状態、(b)は鍵盤蓋を開いた状態を示す。
符号の説明
1、1'、1'':電子鍵盤楽器、 8:側板、 9:天板、 11:後カバー、 12:前カバー、 16:リンク部材(案内機構)、 18:ヒンジ部、 20、30:カバーユニット、 21:回動支点、 22:弾性部材、 31:前カバー、 32:後カバー、 33:ヒンジ部、 14、34:スピーカ、 40:回動装置、 41:回動支持部、 50:案内機構、 51:案内溝、 53:係合ピン、 70:緩衝機構、 72:弾性部材、 315:回動支点、 320:カバーユニット、 321:前カバー、 322:後カバー、 322b:係合ピン、 323:ヒンジ部、 324:スピーカ、 350:案内溝

Claims (2)

  1. 複数の操作子を楽器本体に備え、該操作子を覆うカバーユニットを有し、楽器本体の上面を前記カバーユニットと天板とで構成した電子鍵盤楽器において、
    前記カバーユニットは、閉状態において前後に並んで位置するように分割され鍵盤から天板の前端又はその近傍までの範囲を覆い、折りたたんだ開状態で前記操作子の上方を開放する前カバー及び後カバーを備え、該前カバーと後カバーとは閉状態における鍵盤上方の位置で各々の上部をヒンジ部により回動可能に結合されており、
    前記前カバーは、前記複数の操作子の両端外側における楽器本体内の回動支持部により回動自在となっており、前記回動支持部は閉状態における前記ヒンジ部より下方で且つ後方に位置しており、前記前カバーは開状態において前記ヒンジ部が後方への回動により前記回動支持部より下方の位置に至るように回動範囲が決められており、
    前記後カバーの後端部は、前記カバーユニットの開閉動作が前記ヒンジ部及び回動支持部を回動中心として行なわれる際に前記後カバーの移動を許容する緩衝部材として作用するリンク部材の一端に回動自在に支持され、該リンク部材の他端は楽器本体における前記天板の下面近傍に支持されていることを特徴とする電子鍵盤楽器。
  2. 前記リンク部材は、部材相互の回転運動により前記後カバー後部の案内部材として機能することを特徴とする請求項1に記載の電子鍵盤楽器。
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