JP4207416B2 - 酸化ポリアミノ糖誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミノ糖を原料とした酸化ポリアミノ糖誘導体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、天然多糖類を原料とした各種誘導体は、生分解性や生体適合性の高さなどから幅広く研究、利用されている。これら天然多糖類のうち、キチン、キトサンに代表されるポリアミノ糖、これらを原料とした各種誘導体は、くり返し単位中にアセトアミド基、アミノ基を持ち、生体親和性、生理活性、あるいはキレート性などから各種分野において注目されており、医薬品原料、化粧品原料、凝集剤などに応用されている。キチンは、カニやエビなどの甲殻類の殻や、昆虫の骨格に多く存在する、N−アセチル−D−グルコサミンがβ−1,4結合した直鎖構造を持つ化合物であり、脱アセチル化処理により遊離のアミノ基を持つキトサンとなる。キチンは極めて溶けにくい物質で、水、希酸、希アルカリには溶けない。一方キトサンは、酸性溶液にのみ可溶である。
【0003】
また、多糖類のうちムコ多糖、グリコサミノグリカンは、動物の結合組織の基質や体液に広く分布するアミノ糖を含む複合多糖であり、多くのものはカルボキシル基を含むウロン酸との二糖単位のくり返し構造からなる直鎖構造を持つ。例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリンなどである。これらムコ多糖は血液凝固阻止活性、脂血清澄作用、潤滑機能、水分保持機能等多くの生体機能が知られており、現在も精力的に研究されている有用物質である。
【0004】
これらムコ多糖は一般に高価であり、より多くの分野での応用を考慮し、より安価な類似物質を得る試みがなされてきた。比較的構造が類似しており、より安価なポリアミノ糖を変性する方法が一般的であり、特表昭61−501923号公報には美容分野に利用できるグリコサミノグリカン重合体としてキチンの酸化物を、酸化剤としてCrO3、NO2ガスまたはその液体二量体(N2O4)を用いた製法を開示している。また、特開昭59−106409号公報にはキチン化合物含有化粧料として、カルボキシメチルキチン等を、特開平2−105801号公報には新規なキトサン化合物、該化合物の製造方法および保湿剤としての用途として、N−(3−カルボキシプロパノイル)−6−O−(カルボキシメチル)キトサンおよび6−O−(カルボキシメチル)キトサンと無水コハク酸とを反応させる製造方法を開示している。さらに特開2000−256404号公報には酸化キトサン化合物として、キトサンを酸化、アセチル化した化合物を、酸化剤として無水クロム酸、過マンガン酸ナトリウム、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウムなどを開示している。
【0005】
しかしながら、これらの変性法では、原料のキチン、キトサンの溶解性が乏しい等の為、必ずしも十分に官能基が導入され、かつ高分子量の変性物は得られておらず、主に酸化法によるものは、低分子化、副反応の問題等、主に付加法によるものは、置換基分布の不均一性、置換度の低さ等により、目標とする機能を十分に発現しておらず、依然として、より安価なムコ多糖類似物質としてのポリアミノ糖変性物が求められている。
【0006】
一方、Carbohydr.Res.,269,89−98(1995)、WO95/07303には水可溶グルカン、炭水化物の1級アルコールの選択酸化に関する記載が有り、TEMPO及び臭化ナトリウム存在下、次亜塩素酸ナトリウムを酸化剤とした水溶液中での反応について記載されている。これらの文献、特許によれば、高収率で1級アルコールの酸化物が高い選択率で得られるとの事であるが、得られた多糖類酸化物は酸化と同時に分子鎖切断を引き起こしており好ましくない。また、分子鎖切断を引き起こさないため、臭素、臭化物、よう素またはよう化物を共存させないと酸化反応速度は低下し、場合によっては見掛け上反応が進まなくなることもある。反応速度を上げる方法として、反応温度を上げる、反応時のpHを上げる等の手法が考えられるが、これらの手法も分子鎖切断を引き起こし好ましくない。またJ.Carbohydrate Chem.,15,819−830(1996)にはキチン、キトサン等の非水溶性多糖類をも基質とした上記酸化法に関する記載があるが、キチンのみ酸化収率が40%程度と低く、酸化収率が高かったキトサンも粘度低下が著しいとの記載が有り、低分子化が示唆されている。また、Cellulose,5,153−164(1998)にもキチン、キトサン等を基質とした上記酸化法に関する記載があるが、キチンは選択的な酸化反応が進んでいるようであるが、総じて低分子化が指摘されており、キトサンでは著しい解重合が起きているとのことである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、より安価なムコ多糖類似物質を得ることであり、詳しくは十分な量のカルボキシル基を導入し、かつ高分子量の、ムコ多糖に匹敵する機能を持つポリアミノ糖変性物を得ることであり、その製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決する方法について鋭意検討した結果、ニトロキシル化合物の存在下、水溶性を向上させたポリアミノ糖を原料とし、次亜塩素酸またはその塩で酸化する事により、十分な量のカルボキシル基を導入し、かつ高分子量の、ムコ多糖に匹敵する機能を持つポリアミノ糖変性物が得られることを見いだして、本発明を完成させた。
【0009】
本発明で使用されるポリアミノ糖は、くり返し単位中の糖のアルコール性水酸基がアミノ基、アセトアミド基等のN置換アミノ基で置換されたものであり、その誘導体も含む。アミノ糖のみからなる単純多糖及びその誘導体でも、アミノ糖を含む複数の糖から構成される複合多糖及びその誘導体でもよい。結合様式は、デンプンに見られるα結合型、セルロースに見られるβ結合型のいずれでも構わない。ポリアミノ糖及びその誘導体としてはキチン、キトサン等のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖、およびそれらの誘導体が挙げられ、同様の構造を持つ微生物が産生する多糖類や、デンプン、セルロース等の元々はアミノ基を持たない多糖類にアミノ基を導入した多糖類も含まれる。原料コスト、入手の容易性からキチン、キトサンおよびそれらの誘導体、ポリガラクトサミンが好ましい。酸化反応後の多糖類誘導体の分子量を高く維持する目的から、上記の多糖類に化学的、物理的に低分子化する処理または酸化反応時に分子鎖切断を助長するような処理をあらかじめ施すこと、若しくは酸化反応時に分子鎖切断を助長するような不純物を含む多糖類は、好ましくない。
【0010】
本発明では、分子鎖切断を抑制しながら酸化反応を進める為に、原料として水溶性を向上させる前処理を施した多糖類を使用する。水溶性を向上させる前処理方法としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを作用させる方法、カルボキシメチル化、サクシニル化する方法などが挙げられるが、ポリアミノ糖のアミノ基のアセチル化度を調整する前処理により水溶性を向上させた多糖類を原料とする方法が好ましい。ポリアミノ糖は天然にはほとんどN−アセチル化されて存在しており、濃アルカリで処理すると脱アセチル化し遊離のアミノ基をもつ構造となる。アセチル化度を調整する方法は、この脱アセチル化でも、遊離のアミノ基をもつポリアミノ糖の部分アセチル化でも良い。
【0011】
脱アセチル化時に使用するアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属類等が挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。アルカリ剤溶液の濃度は10%以上であり、40%以上が好ましい。N−アセチルポリアミノ糖をアルカリ剤溶液に浸漬し、脱アセチル化を行う際の温度は50℃以下に維持すべきであり、分子鎖切断を抑制する為、あるいは溶解性を改善する為、好ましくは30℃以下に、より好ましくは5℃以下に維持すべきである。N−アセチルポリアミノ糖をアルカリ剤溶液に浸漬する際、アルカリ剤溶液に分散した後、撹袢しながら減圧に保ち、より効果的に浸漬を行ってもよい。N−アセチルポリアミノ糖をアルカリ剤溶液に十分浸漬した後、氷または水を加えアルカリ剤溶液の濃度を5%以上25%以下とし、さらに1時間〜1週間熟成する事により脱アセチル化を進行させる。その後、塩酸、酢酸等の酸により中和する。この中和操作中も、好ましくは30℃以下に、より好ましくは5℃以下に維持すべきである。中和操作とともゲル化する場合もあるが、必要に応じて過剰量の冷含水アセトン中で沈澱化する。ゲル、沈澱をろ過、遠心分離等の固液分離操作により回収し、含水アセトン、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒で十分洗浄し、沈澱物を乾燥し、脱アセチル化物を得る。脱アセチル化度は、アルカリ剤濃度、基質濃度、温度、時間などにより決まる。もちろん、脱アセチル化酵素を利用するなど、他の手法により脱アセチル化物を得てもよい。
【0012】
遊離のアミノ基をもつポリアミノ糖の部分アセチル化は、氷冷下無水酢酸を添加して行う。遊離のアミノ基をもつポリアミノ糖としては、脱アセチル化度が1.0に近く、酸性溶液に可溶なものが望ましい。まず、遊離のアミノ基をもつアミノ糖を酸に溶解する。使用する酸としては、酢酸、ギ酸等の有機酸、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられ、酢酸、塩酸が好ましく、酸濃度は1%以上15%以下が好ましい。その後、この溶液をメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒で希釈後、氷冷ピリジン中に滴下しすると高度に膨潤したゲルとなる。このゲルをろ過、遠心分離等の固液分離操作により回収、粉砕し、ピリジンで洗浄し再度ピリジン中に分散する。無水酢酸を添加するタイミングは、酸に溶解直後でも、水溶性有機溶媒での希釈後でも、ゲル化後でもよい。あらかじめピリジン中に無水酢酸を添加しておき、ゲル化してもよい。無水酢酸を添加した後の操作は不要となる。この後必要に応じて熟成しアセチル化を進行させた後、必要に応じて過剰量の冷含水アセトン中で沈澱化する。ゲル、沈澱をろ過、遠心分離等の固液分離操作により回収し、含水アセトン、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒で十分洗浄し、沈澱物を乾燥し、部分アセチル化物を得る。N−アセチル化だけでなく、O−アセチル化も進行した場合は、O−アセチル基の部分加水分解が必要である。アルカリ剤のアルコール溶液中での撹拌が効果的であり、アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが、アルコールとしてはメタノール、エタノールが好ましい。ゲル、沈澱をろ過、遠心分離等の固液分離操作により回収し、含水アセトン、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒で十分洗浄し、沈澱物を乾燥し、部分N−アセチル化物を得る。アセチル化度は、無水酢酸量、添加タイミング、基質濃度、温度、時間などにより決まる。
【0013】
水溶性の向上と、ムコ多糖類似物質を得るという観点から、アセチル化度は0.3以上である事が好ましく、0.4以上0.8以下である事がより好ましい。アセチル化度はくり返し単位中のN−アセチルアミノ基数をN−アセチルアミノ基と遊離のアミノ基の合計数で除したのもであり、元素分析による窒素含量、炭素含量から算出、IRによる1655cm-1のアミド吸収Iと3450cm-1の水酸基吸収の吸光度比からの算出などにより測定可能である。
【0014】
本発明の酸化工程において使用するニトロキシル化合物とは、ヒンダードアミンのN−酸化物であり、特にアミノ基のα位に嵩高い基を有するヒンダードアミンのN−酸化物であり、ジ−ターシャリーアルキルニトロキシル化合物等である。ジ−ターシャリーアルキルニトロキシル化合物として2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシル、4−アルコキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン−1−オキシルを挙げる事ができ、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルが好ましく、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)が特に好ましい。
【0015】
分子鎖切断を抑制しながら酸化反応を進める為の酸化反応条件は、酸化工程での酸化剤使用量を、ポリアミノ糖を構成するグルコピラノース単位重量当り0.1〜2.0当量、反応温度を−5〜50℃、反応系のpHを7〜11とするのが好ましく、酸化剤使用量を1.0当量以上、反応系のpHを8〜10とするのがより好ましく、酸化剤使用量を1.6当量以上、反応系のpHを8〜9とするのが特に好ましい。2.0等量より多い酸化剤の使用、50℃より高い温度での加熱、pHが11より高い強アルカリ性での反応は分子鎖切断を引き起こし好ましくない。0.1等量より少ない酸化剤の使用、−5℃より低い温度、7より低いpHでは酸化反応が十分に進行しない。また、酸化時に臭素、臭化物、よう素又はよう化物は、分子鎖切断を抑制するという観点から、多糖類を構成するグルコピラノース又はグルコフラノース単位当たり40mol%未満使用し、好ましくは20mol%未満、特に好ましくは反応系内に存在させない。
【0016】
本発明の酸化ポリアミノ糖誘導体は、多糖類の1級アルコールをカルボン酸に選択的に酸化したポリアミノ糖で、1級アルコール酸化物としてのカルボキシル基をポリアミノ糖を構成するグルコピラノース又はグルコフラノース単当たり5〜100mol%含む。水溶性の向上と、ムコ多糖類似物質を得るという観点から、好ましくはカルボキシル基をポリアミノ糖を構成するグルコピラノース又はグルコフラノース単当たり40mol%以上、より好ましくは75mol%以上、特に好ましくは90mol%以上含む。
またムコ多糖に匹敵する機能を発現する為には、分子量は重要な因子となる。例えば天然のヒアルロン酸は、分子量1〜3*106の高分子量物質といわれている。本発明の酸化ポリアミノ糖誘導体の分子量は分布を持つ為、平均分子量で表わした場合、重量平均分子量100,000以上であり、好ましくは重量平均分子量500,000以上、より好ましくは重量平均分子量1,000,000以上である。
【0017】
本発明の酸化ポリアミノ糖誘導体は、ムコ多糖類似物質であり、ムコ多糖に匹敵する種々の機能を持つが、そのうち吸保湿特性について優れた特性を有する天然のヒアルロン酸と比較したところ、同等の機能を有していた。すなわち本発明の酸化ポリアミノ糖誘導体は、より安価な天然ヒアルロン酸類似物質であり、香粧品原料や、医薬品原料として好適である。
【0018】
【実施例】
以下、本発明について実施例にて詳述する。実施例において、アセチル化度の測定は、IR法によって算出した。1655cm-1のアミド吸収Iと3450cm-1の水酸基吸収の吸光度比と、N−アセチル基含量との相関係数により、次式によって算出した。尚、O−アセチル基由来のエステル吸収は1750cm-1付近に観測される。
N−アセチル化度=(A1655/A3450)/1.33
但し、A1655:1655cm-1吸光度
A3450:3450cm-1吸光度
分子量は標準物質としてプルランを用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法により以下に示す条件で測定し、プルラン換算重量平均分子量を算出した。尚、検量線については、分子量1.6*106までのプルランを用いて作成し、分離カラムの排除限界範囲内の1.0*107まで外そうした。
分離カラム:Shodex OHpak SB-806MHQ+SB-802.5HQ
カラム温度:40℃
溶離液:0.10M NaCl+0.06M Na2HPO4+0.04M KH2PO4
流量 :0.8ml/min
注入量:約1.0W/V% 10μl
検出器:RI
酸化ポリアミノ糖誘導体中のカルボキシル基の生成比の測定は、NMR法によって測定した。試料を重水に溶解後、13C−NMRにより、ケミカルシフト60ppm付近に検出される1級アルコールのメチレン炭素に由来するピークと、同180ppm付近に検出されるカルボキシル基の4級炭素に由来するピークのピーク面積比を比較算出した。
また吸保湿特性は、粉末試料を乾燥後、25℃恒温下、硫酸アンモニウム飽和水溶液により相対湿度81%としたデシケーター内に放置し経過時間毎の重量変化を測定し、次式により吸湿率を算出し吸湿特性を評価し、粉末試料を乾燥後一定量の水を加え、25℃恒温下、シリカゲルデシケーター内に放置し、経過時間毎の重量変化を測定し次式により水分残存率を算出し保湿特性を評価した。
吸湿率(%)=(W−S)/S*100
水分残存率(%)=(W−S)/H*100
但し、S:乾燥試料重量(g)
W:放置後試料重量(g)
H:添加水分重量(g)
【0019】
実施例1
粉末キチン(試薬)2.50gを、48%NaOH水溶液50mlを入れた200mlナスフラスコに氷冷下加え、ロータリーエバポレータにより撹袢しながら、20mmHgまで減圧にし、そのまま45分間氷冷しつつ撹拌を続けた。キチン溶液は、均一な粘性流体となった。常圧に戻した後、これに砕氷108gを加え、室温で5時間十分に撹袢し、脱アセチル化を進行させた。さらにこれをビーカーにとり、pH計でモニターしながら、氷冷下濃塩酸、希塩酸を順次加え中和しpH=9とした。中和操作中に粘度が上昇した。氷冷アセトン1lをビーカーにとり、十分に撹袢しながら中和した溶液を滴下すると白色沈澱が生じた。吸引ろ過により沈澱をろ別後、アセトン/水=4/1(容量比)で十分に洗浄後、回収し、50℃で一晩真空乾燥し、脱アセチル化キチン2.25gを得た。IR法によるアセチル化度は0.70であった。
攪拌機、温度計、pH計、ORP計、次亜塩素酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムの供給管を備えた300ml容丸底セパラブルフラスコに、上記脱アセチル化キチン2.25g、水200mlを加え、撹拌により懸濁させた。2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)100mgを加え、13.5%次亜塩素酸ナトリウム11.04g(20mmol)を反応初期のpHの上昇、ORPの急上昇に注意を払いながら175分間かけて滴下し、この間2N−水酸化ナトリウム溶液を滴下し、十分に撹袢しながらpH=9.0、反応液温度=20℃に維持しつつ反応を続けた。尚、反応初期にpH上昇が認められた為、1N−塩酸溶液を計9ml添加した。
220分後、pH低下による水酸化ナトリウムの消費は止まり、反応を停止した。反応液中に少量の固形物の残存が認められた。水酸化ナトリウムの消費量は、6.1mmolであった。この反応液を2倍容量のアセトン中に滴下し、沈澱化操作を行った。吸引ろ過により沈澱をろ別後、アセトン/水=4/1(容量比)で十分に洗浄後、回収し、50℃で一晩真空乾燥し、酸化脱アセチル化キチン2.49gを得た。
SEC分析の結果、一部不溶分が認められたが、可溶分のプルラン換算の重量平均分子量は10万であった。また重水に加温して溶解後可溶分の13C−NMRスペクトルを測定した所、未反応の1級アルコールに隣接するメチレン由来のピークは検出されず、6位カルボキシル基炭素及びN−アセチル基由来のピークが180ppm付近に2本観測され、その他6本のメインピークが観測された。よって、主生成物は、選択的に6位の1級アルコールが酸化されカルボキシル基が生成したN−アセチルグルコサミン構造のくり返しである事が確認された。
【0020】
実施例2
粉末キチン(CHA−1、片倉チッカリン)2.50gを、実施例1と同様に処理し脱アセチル化キチン2.29gを得た。IR法によるアセチル化度は0.72であった。尚、減圧下浸漬時間を160分としたが、粒子が認められ均一な流体とはならなかった。
実施例1と同様に酸化を行ない酸化脱アセチル化キチン2.50gを得た。尚、TEMPO量は50mg、13.5%次亜塩素酸ナトリウムは11.60g(21mmol)を220分間かけて滴下し、330分間反応し、水酸化ナトリウムを5.2mmol消費した。
SEC分析の結果、一部不溶分が認められたが、可溶分のプルラン換算の重量平均分子量は70万であった。また重水に加温して溶解後可溶分の13C−NMRスペクトルを測定した所、実施例1同様のメインピークと、わずかなサブピークが観測された。
【0021】
実施例3
粉末キトサン(試薬)2.00gを、10%酢酸溶液150mlを入れた500mlセパラブルフラスコに加え、撹拌、溶解した。この溶液にメタノール150mlを加え、再度撹袢し、粘ちょうな溶液とした。氷冷ピリジン600mlをビーカーにとり、十分に撹袢しながらこの溶液を滴下するとゲル化した。このゲルをホモジナイザーにより氷冷下粉砕し、さらにピリジンで洗浄した。ゲルをセパラブルフラスコにとり、ピリジン100mlを加え、氷冷しながら、撹袢し、無水酢酸を12.6g(124mmol)滴下し、室温で18時間撹拌し続けたた。氷冷アセトン700mlをビーカーにとり、十分に撹袢しながらゲルをピリジンと共に滴下すると白色沈澱が生じた。吸引ろ過により沈澱をろ別後、アセトンで十分に洗浄後、回収し、50℃で一晩真空乾燥した。この固形物のIR測定を行った所、O−アセチル基由来のエステル吸収が1750cm-1付近に観測されたため、水酸化カリウム0.56g(10mmol)をメタノール100mlに溶解し、これにこの固形物を加え、室温で6h撹袢し、エステル加水分解を行った。吸引ろ過により沈澱をろ別後、メタノールで十分に洗浄後、回収し、50℃で一晩真空乾燥し、部分アセチル化キトサン1.65gを得た。IR法によるアセチル化度は0.75であった。
実施例1と同様に酸化を行ない酸化部分アセチル化キトサン1.77gを得た。尚、TEMPO量は50mg、13.5%次亜塩素酸ナトリウムは8.50g(15.4mmol)を130分間かけて滴下し、180分間反応し、水酸化ナトリウムを3.8mmol消費した。
SEC分析の結果、一部不溶分が認められたが、可溶分のプルラン換算の重量平均分子量は50万であった。また重水に加温して溶解後可溶分の13C−NMRスペクトルを測定した所、実施例1同様のメインピークが観測された。
【0022】
実施例4
実施例2と同様の処理により得た脱アセチル化キチンを、実施例1と同様の装置により酸化し、酸化脱アセチル化キチン2.49gを得た。尚、臭化ナトリウム160mg(1.56mmol)を共存させ、TEMPO量は50mg、13.5%次亜塩素酸ナトリウムは11.60g(21mmol)を120分間かけて滴下し、170分間反応し、水酸化ナトリウムを6.4mmol消費した。
SEC分析の結果、一部不溶分が認められたが、可溶分のプルラン換算の重量平均分子量は50万であった。また重水に加温して溶解後可溶分の13C−NMRスペクトルを測定した所、実施例1同様のメインピークと、わずかなサブピークが観測された。
【0023】
実施例5
実施例1から4で得られた酸化物の吸保湿特性を微生物産生ヒアルロン酸ナトリウム(純正化学試薬)と共に評価した。吸湿率、水分残存率の経時変化を、表1、2に示す。これらの結果より、実施例1から4で得られた酸化物の吸保湿特性は、ヒアルロン酸ナトリウムの吸保湿特性に類似していた。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
比較例1
攪拌機、温度計、pH計、ORP計、次亜塩素酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムの供給管を備えた300ml容丸底セパラブルフラスコに、粉末キチン(試薬)2.50g、水200mlを加え、撹拌により懸濁させた。TEMPO100mgを加え、実施例1と同様に13.5%次亜塩素酸ナトリウム11.04g(20mmol)を滴下し酸化反応を試みたが、酸化反応が進まずORPは上昇した。1N−塩酸溶液を添加してpHを調整しながら予定量の50%次亜塩素酸ナトリウムを170分かけて滴下したが、水酸化ナトリウムは消費されなかった。そのまま一晩放置した後、実施例1と同様の処理により固形物2.03gを得たが、水不溶性であった。
【0027】
比較例2
比較例1と同様に酸化反応を試みた。尚、臭化ナトリウム515mg(5.0mmol)を共存させ、pH=10.8とした。次亜塩素酸ナトリウムは130分間かけて滴下し、170分間反応し、水酸化ナトリウムを8.4mmol消費し、固形物2.21gを得た。
SEC分析の結果、不溶分も認められたが、可溶分のプルラン換算の重量平均分子量は4.5万であった。また重水に加温して溶解後可溶分の13C−NMRスペクトルを測定した所、実施例1同様のメインピークが観測された。
【0028】
比較例3
攪拌機、温度計、pH計、ORP計、次亜塩素酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムの供給管を備えた300ml容丸底セパラブルフラスコに、10%酢酸溶液210mlを入れ、粉末キトサン(試薬)2.10gを加え、撹拌、溶解した。TEMPO100mgを加え、2N−NaOHを加えpH=9に調整しようとした所膜状のゲルが析出したが、実施例1と同様に13.5%次亜塩素酸ナトリウム15.84g(29mmol)を260分間かけて滴下し、270分間反応し、水酸化ナトリウムを7.4mmol消費した(中和分除く)。
SEC分析の結果、不溶分も認められたが、可溶分のプルラン換算の重量平均分子量は2千であり、重水に加温して溶解後可溶分の13C−NMRスペクトルを測定した所、63ppm付近に1級アルコールに隣接するメチレン由来のピークが認められ、カルボキシル基由来のピークは検出されず、酸化反応は進行していなかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明により、ポリアミノ糖に、十分な量のカルボキシル基を導入し、かつ高分子量のムコ多糖類似物質が得られ、その機能も天然のムコ多糖に匹敵するものであった。これらは、より安価な各種天然ムコ多糖類似物質や、それらの原料として、とりわけより安価な天然ヒアルロン酸類似物質として、その吸保湿特性を活かし、香粧品原料や、医薬品原料等として好適に利用できる。
Claims (9)
- ニトロキシル化合物の存在下、下記(1)又は(2)に記載の方法により水溶性を向上させる前処理を施したポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体を、次亜塩素酸またはその塩で酸化する事を特徴とするポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
(1)カルボキシメチル化又はサクシニル化する方法
(2)ポリアミノ糖のアミノ基のアセチル化度を調整する方法 - ポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体が、キチン、キトサン又はそれらの誘導体である請求項1記載のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
- ポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体が、キチン又はキトサンである請求項1記載のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
- ニトロキシル化合物が、ジ−ターシャリーアルキルニトロキシル化合物である請求項1〜3何れか1項に記載のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
- ポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体のアセチル化度が、0.3以上である請求項1〜4何れか1項に記載のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
- 酸化時の反応液のpHを、7〜11とすることを特徴とする請求項1〜5何れか1項に記載のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
- 酸化時に臭素、臭化物、よう素又はよう化物を、ポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体を構成するグルコピラノース又はグルコフラノース単位当たり40mol%未満使用することを特徴とする請求項1〜6何れか1項に記載のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
- 酸化時に臭素、臭化物、よう素又はよう化物を、存在させないことを特徴とする請求項1〜6何れか1項に記載のポリグルコサミン、ポリガラクトサミン又はそれらの誘導体の酸化物の製造方法。
- 請求項1〜8の製造方法によって得られたくり返し単位中の1級アルコールの40%以上をカルボン酸に酸化した分子量が100,000以上のキチン又はキトサンの酸化物。
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