JP4204866B2 - 人の認知能力を予測する方法、プログラム、記憶媒体および装置 - Google Patents

人の認知能力を予測する方法、プログラム、記憶媒体および装置 Download PDF

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Description

本発明は、個人の認知能力を、好ましくは個人のそれまでの睡眠/覚醒履歴と、活動時間と、個人によって遂行される仕事(又は活動)に基づいて予測する方法に関する。
任意の労働環境における生産性を維持することは、命令/監督あるいは管理から個々の兵士又は労働者までの全てのレベルにおいて、効果的な認知能力に依存している。効果的な認知能力は一方において、複雑な精神作用に依存する。多くの要因が、認知能力に影響を与えることが示されてきた(例えば薬物や年齢など)。しかし、認知能力の日毎の変化を生じさせる無数の要因の中で、2つの要因が最大の影響を与えることが示された。それは個人のそれまでの睡眠/覚醒履歴および活動時間である。
十分な睡眠は認知能力を維持する。睡眠が不足すると、認知能力は時間とともに低下する。Thorneらによる論文「72時間におよぶ重労働を課せられた人の能力限界を探る」(軍事システムにおける限界要素としての人に関する第24回DRGセミナー記録、Defense and Civil Institute of Environmental Medicine, pp.17-40(1983))、Newhouseらによる論文「長時間完全に睡眠を妨げられた後の覚醒、認知および気分に対するdアンフェタミンの影響」(Neuropsychopharmacology, vol.2, pp.153-164(1989))、およびNewhouseらによる別の論文「長時間睡眠を妨げられた後の能力および挙動に対する覚醒剤の影響:アンフェタミン、ニコチンおよびデプレニルの比較」(Military Psychology, vol.4, pp.207-233(1992))はすべて、正常な自発的被験者の調査結果を述べたものであり、コンピュータを使用した試験および複雑な動作シミュレーションによって測定された、完全に睡眠を妨げられた状態が継続した場合、認知能力の激しく累積的な低下が見られることを明らかにした。Dingesらは論文「1週間の間1日4〜5時間に睡眠が制限された場合の累積的な睡眠不足、気分の動揺および精神運動的注意力の低下」(Sleep,vol.20,pp.267-277,1997)の中で、毎日の睡眠時間を制約された時間に固定した場合、累積的な睡眠不足もまた認知能力の低下をもたらすことを明らかにした。従って、作業をする場面では、民間および軍隊の両方において、睡眠不足は認知に関わる仕事の生産性(単位時間当たりの有用な仕事の出力)を低下させる。
そこでコンピュータを使用した認知能力試験により、24時間眠らずにいる状態にあると、完全な睡眠剥奪は人の認知能力を毎回約25%低下させることが示された。しかし、わずかな時間でも眠ると、睡眠不足による認知能力の低下割合が緩和されることも示された。Belenkyらは論文「連続作戦中の能力維持:米国陸軍の睡眠管理システム」(第20回軍事科学学会議事録、vol.2,pp.657-661、(1996))において、24時間ごとに30分の仮眠を1回取るだけで、85時間に及ぶ睡眠剥奪の期間中、認知能力の低下率を17%まで緩和させることを示した。このことは、睡眠中の認知能力の回復が、睡眠の初期に最も急速に進行することを示している。認知能力の正常な日々の変化に対してこれほど大幅に、また一貫して影響を与える要因は、睡眠の量以外には存在しない。
睡眠/覚醒履歴の他に、任意の時点での個人の認知能力は、活動時間によって決定される。1950年代の初頭に、Franz Halbergとその同僚が、人の一連の生理的(体温と身体活動を含む)、血液学的およびホルモン機能の24時間周期を観察し、この同期のリズムを示す「概日(circadian)」(「ほぼ1日」を意味するラテン語)という言葉を作った。Halbergは、実験データに含まれるノイズのほとんどは、異なる活動時間にサンプリングされたデータを比較した結果生じたものであることを示した。
人が夜間睡眠/日中覚醒サイクル(例えば、ほぼ深夜に就寝し始める8時間睡眠/16時間覚醒サイクル)に従うと、体温は通常午前2時から午前6時の間に最低(谷)になる。その後体温は上昇し、通常午後8時から午後10時の間に最高(ピーク)になる。同様に、人の認知能力の1日のリズムの系統的な調査により、反応速度は日中を通してゆっくりと向上し、夜(通常は午後8時から午後10時の間)に最高になり、その後急速に低下して未明(通常午前2時から午前6時の間)に最低になる。様々な認知能力に関する課題を使った試験において、これと類似しているがそれほど一定していないリズムが示された。従って、各24時間周期に関する認知能力において、睡眠剥奪が認知能力に与える上記の結果に、約±10%の変動が加味される。
種々の指標が、認知能力とある程度の相関を持つことが示されている。それらの中には眠気(あるいは反対の覚醒度)の客観的および主観的な指標が含まれる。この分野に詳しい者の中には、「眠気」という言葉を「覚醒度」の反対の意味として使用する者がいる(この文書でもその意味で使用する)。「眠たい状態」が「眠気」と同じ意味に使われることが多いが、この分野に詳しい者の中には「眠気」とは、睡眠を必要とする生理的な状態を意味し、それに対して「眠たい状態」は、眠りに入る傾向又は可能性(生理的な睡眠の必要性とは関係なく)、あるいは覚醒度の不足の自覚症状を意味すると主張する者がある。専門外の人々は「疲労」を「眠気」と同意語として使うが、この分野に詳しい者は、「疲労」を「眠気」と同じ意味には考えず、「疲労」は、睡眠不足が本質的に能力に及ぼす影響以上を網羅した広い概念であると考えている。同様に、「認知能力」は、広範囲の多様なタスクをこなす能力として定義されてきたが、最も一般的には警戒状態におけるタスク(注意の持続を要求する仕事)の意味に使われる。警戒を必要とする仕事およびその他の仕事から、ある研究者達は認知能力を測る指標として正確さを取り、別の人達は反応時間(あるいは、その反対の速度)を取る。また別の人達は速度に正確さを掛け合わせた指標を使用するが、これは単位時間に行われた有用な仕事の量(スループットとも呼ばれる)である。この分野に詳しい者の間には、警戒を要する仕事は睡眠を剥奪された条件の下での認知能力の指標として適切であり、反応時間(又は速度)又は反応時間を考慮した何らかの指標(例えばスループット)は、認知能力を測定する上で有用かつ信頼できる指標であるという点で、一般的な合意がある。
多重睡眠予備期試験(MSLT)は、眠気/覚醒度の客観的な指標として広く受け入れられている。MSLTでは、被験者は暗くした静かな寝室に横になって眠ろうとする。睡眠又は覚醒状態にあることを示す様々な生理的指標(眼球の動き、脳の活動、筋肉の緊張)を記録し、ステージ1(軽い)睡眠の最初の30秒に入るのに要する時間を測定する。ステージ1までの予備期間が短いということは、強い眠気(覚醒度の低さ)を示すと考えられる。予備期間が5分未満の場合は病的(睡眠障害又は睡眠剥奪を示唆する)と考えられる。完全睡眠剥奪と部分的睡眠剥奪のどちらの場合でも、MSLTにおける睡眠までの予備期間(覚醒度)および能力が低下する(すなわちMSLTで測定される眠気が増大する)。しかし、MSLTで求められた眠気/覚醒度と認知能力の間には相関がある(MSLTで示される強い眠気が低い認知能力に対応する)にもかかわらず、この相関が完全であると示されたことはなく、またそのほとんどにおいて強いものではない。そのため、MSLTは認知能力の予測指標としては優れたものではない(信頼性が低い)。
眠気/覚醒度の主観的な指標も、認知能力との相関(弱くはあるが)を持つことが示された。Hoddesらは論文「眠気の数量化:新たなアプローチ」(Psychophysiology,vol.10,pp.431-436(1973))において、眠気/覚醒度の測定に広く利用されている主観的質問票であるスタンフォード眠気スケール(SSS)について説明している。SSSでは、被験者は、現在の自分の眠気/覚醒度のレベルを1から7までで判定し、1は、「活動的で生き生きしていると感じる、注意力がある、完全に目が覚めている」を意味し、7は、「ほとんど夢うつつ、すぐに眠れる、起きていられない」を意味する。SSSの点数が高いことは眠気が強いことを示す。MSLTと同様に、完全睡眠剥奪と部分的睡眠剥奪のどちらの場合でもSSSの点数は増加する。しかし、MSLTと同様に、SSSで求められた眠気/覚醒度と認知能力の低下の相関は弱くて一定していない。従って、SSSもまた認知能力の予測指標としては優れたものではない。眠気/覚醒度の主観的指標の他の例としては、Johnsが論文「日中の眠気、いびきおよび睡眠時呼吸障害」(Chest,vol.103,pp.20-36(1993))で述べたエプワース眠気スケールと、AkerstedtとGillbergが論文「活動的な個人における主観的および客観的な眠気」(International Journal of Neuroscience,vol.52,pp.29-37(1990))において述べたカロリンスカ眠気スケールがある。これらの主観的な指標と認知能力の間の相関もまた弱くて一定していない。
さらに、認知能力を変化させる要因は、それに対応した影響を眠気/覚醒度の客観的および主観的指標に対して与えない可能性があり、その逆も言える。例えばPenetarらは論文「完全な睡眠剥奪の回復睡眠へのアンフェタミンの影響」(Human Psychopharmacology,vol.6,pp.319-323(1991))において、睡眠剥奪中、覚醒剤dアンフェタミンは認知能力を向上させるが、眠気/覚醒度(MSLTで測定されたもの)は向上させないと報告している。同様の研究で、睡眠剥奪対策として与えられたカフェインは、12時間以上にわたって認知能力を高いレベルに維持し、主観的な眠気、活力および疲労感への影響は、一時的に改善したがその後低下した。Thorneらは論文「72時間におよぶ重労働を課せられた人の能力限界を探る」(軍事システムにおける限界要素としての人に関する第24回DRGセミナー記録、Defense and Civil Institute of Environmental Medicine, pp.17-40(1983))において、72時間の睡眠剥奪の間に認知能力がどのように低下し続けたかということ、また一方、主観的な眠気/覚醒度は最初の24時間を超えると低下したがその後はほぼ一定レベルを保ったことを報告している。認知能力と眠気/覚醒度の指標が常に同じように影響されるのではないというこの知見は、これらが同じものを意味するのではないことを示している。すなわち、眠気/覚醒度という指標は認知能力の予測に利用できず、またその逆も言えるということである。
覚醒度の測定に関する方法と装置は、基本的に5種類に分けられる。すなわち、現在の覚醒度レベルを非強制的にモニターする方法/装置、現在の覚醒度レベルを非強制的にモニターし、覚醒度が低下した場合はユーザーに警告を発しかつ/又はユーザーの覚醒度レベルを高める方法/装置、可能であれば覚醒度が低下した場合はユーザーに警告を発しかつ/又はユーザーの覚醒度レベルを高める装置を備えて、二次的な仕事へのユーザーの反応に基づき、現在の覚醒度レベルをモニターする方法/装置、覚醒度を高める方法、および過去、現在又は未来の覚醒度を予測する方法/装置である。
非強制的に現在の覚醒度レベルをモニターするこれらの方法および装置は、「埋め込み指標」アプローチに基づいている。すなわち、これらの方法は、覚醒度/眠たい状態と相関すると仮定されるいくつかの要因(例えば眼球の位置又は瞼を閉じる)の現在のレベルから、覚醒度/眠たい状態のレベルを推定する。交付されたこのタイプの特許には、瞼の閉鎖と鼻および口の周囲の温度を検出する装置を開示したJ.Clarke, Sr.らの米国特許第5,689,241号明細書、瞼の閉鎖を検出する装置を開示したK. Mannikの米国特許第5,682,144号明細書および眼球の定位および運動を観察して眠気を検出する装置を開示したC. Liangらの米国特許第5,570,698号明細書がある。これらのタイプの方法および装置の明らかに不利な点は、覚醒度のわずかな低下ではなく、睡眠の始まりそのものを検出することである。
いくつかの特許では、覚醒度/眠たい状態の埋め込みモニターによる方法と、覚醒度が低下した場合はユーザーにそれを知らせ、かつ/又は覚醒度を高める方法とが組み合わされている。交付されたこのタイプの特許には、車両の運転者の頭の位置と動きを感知して、現在のデータを「正常」な頭の動きおよび「能力が低下した」頭の動きの分析と比較する装置を説明したP. Kithilの米国特許第5,691,693号明細書がある。警告装置は、頭の動きが何らかの所定の方法で「正常」から外れたときに起動する。R. Gwinらの米国特許第5,585,785号明細書は、車のハンドルを握る全圧力を測定して、握る圧力が眠たい状態を示すある所定の下限よりも低下したときに警報を発する方法および装置について述べている。H. Bangの米国特許第5,568,127号明細書は、警報装置にユーザーの顎が接触したことで眠たい状態を検出して、触覚および聴覚による警報を発する装置について述べている。J. Hobsonらの米国特許第5,566,067号明細書は、瞼の動きを検出する方法および装置について述べている。検出された瞼の動きが所定の閾値から外れると、出力信号/警報(好適には音声)が発せられる。第1の区分の方法および装置と同様に、これらの不利な点も、覚醒度のわずかな低下ではなく睡眠の始まりそのものを検出することであろう。
その他の覚醒度/眠たい状態のモニター装置が、「一次的/二次的課題」的アプローチを基礎として開発された。例えばE. Gozlanらの米国特許第5,595,488号明細書は、関心のある一次的な作業(例えば、運転)をしているユーザーが、その間に反応しなければならない(二次的な作業)聴覚的、視覚的又は感覚的な刺激を与える方法および装置について述べている。二次的な作業の反応が、基準となる反応「注意」レベルと比較される。A. MacLeanの米国特許第5,259,390号明細書は、比較的穏やかな振動刺激に対してユーザーに反応させる装置について述べている。刺激に対する反応速度が、覚醒度レベルの指標として利用される。この装置の不利な点は、この装置が覚醒度を推測するために二次的な作業への反応を要求し、それにより一次的な作業に対して変化又は干渉をもたらす可能性があるという点である。
他の方法はもっぱらユーザーが覚醒度レベルを自己評価して、自分が眠くなっていると感じた時装置を起動するという、ユーザーに依存して覚醒度のレベルを上げるものである。後者の一例であるM. Fukuokaの米国特許第5,647,633号明細書および関連特許は、ユーザーが眠気を検知した場合にユーザーの座席を振動させる方法/装置について述べている。かかる装置の明らかな欠点は、ユーザー自身が現在の覚醒度レベルを正確に自己評価できなければならないことと、ユーザーがこの評価を基に正しく行動できなければならないことである。
覚醒度を修正することが経験的に知られているユーザーによる入力に基づいて、覚醒度レベルを予測する方法も存在する。M. Moore-Edeらの米国特許第5,433,223号明細書は、覚醒度の変化に何らかの関連を持つ様々な要因(「現実」要因と呼ぶ)の数学的な計算に基づいて特定の時刻(過去、現在又は未来の)に個人が持つと考えられる覚醒度レベルを予測する方法について述べている。まず、5点の入力に基づいてその個人の基準覚醒度曲線(BAC)が求められ、これが安定した環境で示される最適な覚醒度曲線を表す。次ぎに覚醒度修正刺激によりBACが修正され、修正基準覚醒度曲線が求められる。従ってこの方法は認知能力ではなく、個人の覚醒度レベルを予測する手段である。
仕事に従事した時間の長さの関数として「仕事に関わる疲労」を予測するために、別の方法が開発された。FletcherとDawsonは、論文「就労時間に基づく仕事に関わる疲労予測モデル」Journal of Occupational Health and Safety, vol.13, 471-485 (1997)で彼らの方法を説明している。このモデルでは単純化した仮定がなされている。つまり、仕事に従事した時間の長さが、目覚めていた時間と正の相関を持つと仮定したのである。この方法を実施するには、ユーザーは実際の又は就業/非就業(仕事/休憩)スケジュールを入力する。このモデルの出力は、「仕事に関わる疲労」を示す点数である。この仕事に関わる疲労を示す点数はいくつかの能力指標と相関していることが示されたが、認知能力そのものの直接的な指標ではない。就業時間と覚醒時間の間に存在すると仮定された関係が壊れる場合、例えばある人が短時間のシフトに従事した後、家で眠るのでなく作業に時間を使ったり、あるいはある人が長時間のシフトに従事した後に家で使える時間全てを睡眠に当てる等の状況では、疲労の点数は正確でなくなることが理解される。この方法はまた、就業/非就業情報を非強制的な記録装置から自動的に抽出するのではなく、ユーザーがその情報を入力しなければならないという点で、強制的である。さらに、このモデルは就業時間に基づいて「疲労」を予測することに限定されている。総じて、このモデルは、シフトの長さが常に睡眠時間と(逆に)相関しているような仕事に関連した状況に限定されている。
認知能力を求める(そして生産性又は効率を判断する)上での睡眠時間と活動時間の重要性と、またほとんどの職業において認知能力に対する要求が高まっていることを考えれば、認知能力を予測するための信頼性が高くて正確な方法を考案することが望まれる。適切な入力の数を増やせば、認知能力の予測精度が向上することが理解できるであろう。しかし、かかる入力から得られる相対的な利益は、それを収集および入力する負担/コストの増加と比較考慮されなければならない。例えば、ある種の香りが覚醒を強める特性を持っていることが示されたが、これらの効果は一定したものではなく、個人の睡眠/覚醒履歴および活動時間が持つ強い影響と比べれば、無視できるものである。より重要なことは、香りが認知能力に与える影響が理解されていないことである。個人に香りをかいだ記録を取るように要求することは、その個人に無駄な時間を使わせることになり、認知能力を予測する精度に関してはわずかな利益しか得られないであろう。それに加えて、睡眠/覚醒履歴と活動時間が認知能力に与える影響はよく知られているが、覚醒度に影響すると一般に考えられているその他の要因(例えば仕事上のストレス)の影響、それらをどの様に測定するのか(それらの作業上の定義)、およびそれらが作用する方向(認知能力を強化するか、あるいは低下させるか)は、事実上全くわかっていない。
本発明と従来技術の間の重要かつ決定的な相違は、本発明が認知的な要素を持つ仕事に関する能力を予測するモデルであるという点である。それに対して、睡眠および/又は概日リズム(約24時間)がからむ従来のモデルは、「覚醒度」又は「眠気」の予測を中心とするものであった。後者は認知的仕事を遂行する能力ではなく、睡眠に落ちようとする傾向に特に関連する概念である。
眠気(又はその反対の覚醒度)は、認知能力につながる中間的な変数であると見なすことができるが、科学的な文献は認知能力と覚醒度が概念的に異なることを明確に示している。例えば、Johnsが論文「眠気の評価再考」Sleep Medicine Reviews, vol. 2, pp.3-15 (1998)において検討し、またMitlerらが論文「眠気の試験方法」Behavioral Medicine, vol. 21, pp.171-183(1996)でその問題を検討している。Thomasらは論文「長時間の睡眠剥奪の局所的脳代謝への影響」Neuroimage, vol.7, p.S130(1998)において、1〜3日眠らないと、局所的脳グルコース摂取量で見た脳全体の活動が約6%低下することを報告している。しかし、最も高次の認知機能(注意、警戒、状況の理解、計画、判断および意志決定を含むが、これらに限定されない)を司る領域(異種モード連合皮質)は、3日間眠らずにいた後ははるかに高い程度(最大で50%)で選択的に非活性化される。従って、睡眠の制限/剥奪の間の神経生物学的機能の低下は、認知能力の低下に直接的に反映される。これらの知見は、より高次の認知機能、特に注意や計画立案等を必要とする課題(異種モード連合野が介在する能力)が特に睡眠不足に影響されやすいことを示した研究結果と一致するものである。他方、一次感覚領域のような脳の領域が非活性化される程度はより低い。それに付随して、これらの領域に依存する能力(例えば視力、聴力、体力および耐久力)は睡眠不足によってほとんど影響されない。
従って、「覚醒度」そのものを予測する装置又は発明(例えばMoore-Edeらのもの)は、任意の時点で眠りに入ろうとする脳の基本的な傾向を、推定に基づいて数量化するものである。つまり、「覚醒度」(あるいはその反対に「眠気」)を予測する装置又は発明は、眠りに入ろうとする傾向の程度を予測するものである。本発明は、その様なアプローチとは異なり、仕事の性質を考慮する。すなわち、予測するのは眠りに入ろうとする傾向ではない。そうではなく、本発明では、睡眠剥奪によって最も影響される脳の領域(脳の異種モード連合野)への依存度に関して、特定の仕事の遂行能力がどの程度損なわれるかを予測するのである。最も望ましい方法では、個人の睡眠/覚醒履歴、活動時間、個人の活動(非活動)および特別な仕事に費やす時間量に基づいて、信頼性が高く正確な認知能力の推定を行う。
米国特許第5,689,241号明細書 米国特許第5,682,144号明細書 米国特許第5,570,698号明細書 米国特許第5,691,693号明細書 米国特許第5,585,785号明細書 米国特許第5,568,127号明細書 米国特許第5,566,067号明細書 米国特許第5,595,488号明細書 米国特許第5,259,390号明細書 米国特許第5,647,633号明細書 米国特許第5,433,223号明細書
本発明の1つの目的は、個人の認知能力を予測する正確な方法、プログラム、記憶媒体および装置を提供することである。
別の目的は、将来予想される睡眠/覚醒履歴、活動時間および個人によって遂行される活動が認知能力に与える影響の予測を可能にする方法(前方予測)、プログラム、記憶媒体および装置を提供することである。
別の目的は、個人の睡眠/覚醒履歴と1日の中での時刻に基づいて、考えられる過去の認知能力に対する、過去に遡った分析を可能にする方法、プログラム、記憶媒体および装置を提供することである。
さらに別の目的は、個人および/又は個人のグループについて予測された認知能力の正味の最適値を得るために、利用可能な睡眠/覚醒時間を調整および最適化する方法、プログラム、記憶媒体および装置を提供することである。
本発明は少なくとも1つの覚醒状態と少なくとも1つの睡眠状態を持つデータ列に基づいて認知能力レベルを求める方法であって、データ列を解析して関数を選択し、選択された関数を使用して認知能力容量を求め、前記認知能力容量を1日の中での時刻の値によって変調し、変調された値を供給し、前記データ列内の1点のデータが不確定である時は、少なくとも2つの関数を選択し、各関数を使って認知能力容量を求め、各認知能力容量を1日の中での時刻の値によって変調し、各々の変調された値を供給し、そして上記の各工程を少なくとも1回繰り返すことを含んでなることを特徴とする。
本発明は認知能力レベルを得る方法であって、個人の覚醒状態と睡眠状態を表すデータ列を外部装置に送信し、前記外部装置から認知能力レベルの少なくとも1つの予測値を受け取ることを含んでなることを特徴とする。
本発明は認知能力レベルを供給する方法であって、少なくとも1つの覚醒状態と少なくとも1つの睡眠状態を表すデータ列を受け取り、前記データ列に基づいて関数を選択し、選択された関数を使用して認知能力容量を求め、前記認知能力容量を1日の中での時刻の値によって変調し、変調された値を供給することを含んでなることを特徴とする。
本発明は認知能力を予測する装置であって、データを受け取る入力手段と、前記入力手段に接続されて受け取ったデータに応じて算出関数を選択するデータ解析手段と、前記解析手段に接続されて算出関数を使用して認知能力容量を計算する算出手段と、前記入力手段に接続されて前記受け取ったデータに基づいて仕事値を求める評価手段と、変調データを記憶するメモリと、前記メモリと前記評価手段および前記算出手段と接続された変調手段とを含んでなることを特徴とする。
本発明は複数の個人の各々の認知能力レベルをモニターするシステムであって、各々が各個人に取り付けられた複数のデータ収集手段と、前記複数のデータ収集手段の各々と通信関係にある受信器と、前記入力手段に接続されて前記複数のデータ収集手段の少なくとも1つについて受け取ったデータに応じて算出関数を選択するデータ解析手段と、前記データ解析手段に接続されて前記複数のデータ収集手段の少なくとも1つについて算出関数を使用して認知能力容量を計算する算出手段と、前記入力手段に接続されて前記複数のデータ収集手段の少なくとも1つについて前記受け取ったデータに基づいて仕事値を求める評価手段と、変調データを記憶するメモリと、前記メモリ、前記評価手段および前記算出手段に接続された変調手段とを含んでなることを特徴とする。
本発明は認知能力レベルを供給する装置であって、少なくとも1つの覚醒状態と少なくとも1つの睡眠状態を持つデータ列を受け取る手段と、前記データ列に基づいて関数を選択する手段と、選択された関数を使用して認知能力容量を求める手段と、1日の中での時刻に関するデータ列を記憶する手段と、前記認知能力容量を対応する1日の中での時刻の値によって変調する手段と、変調された値を供給する手段とを含んでなることを特徴とする。
本発明は外部装置から認知能力レベルを得る装置であって、少なくとも1つの覚醒状態と少なくとも1つの睡眠状態を持つデータ列を外部装置に送信する手段と、前記外部装置から認知能力レベルの少なくとも1つの予測値を受け取る手段を含んでなることを特徴とする。
本発明の1つの特徴は、直接的な人間工学的および経済的な利点を持つ認知能力、すなわち個人の生産性又は効果の高さの指標、の予測を数値的に表すと言うことである。本発明の別の特徴は、認知能力に関して間接的、中間的、推論的あるいは仮説に基づいた付随的な測定/計算を必要とせず、また利用しないということである。後者の例として、覚醒度、眠気、睡眠の開始までの時間、体温および/又は時間と共に変化するその他の生理的指標がある。本発明のさらに別の特徴は、任意の原因による認知能力の一時的又は偶発的な変化について、その原因が睡眠/覚醒履歴にどの様に影響するか(例えば、年齢)および/又は活動時間(例えば、仕事のシフト)の結果として生じる場合に、それを考慮に入れるという点である。実際上、その様な原因は、睡眠/覚醒履歴および/又は活動時間とは独立して認知能力に影響するものとしては扱われず、従って、別個測定、要約およびこの方法のデータとして入力する必要がない。
この方法の暗黙の利点と新規性は、利用する変数を限定していることである点が理解されるであろう。この方法は(経験的に示されてた)最大の予測的価値を持つ要因を、絶えず更新される入力として利用する。そのため、このモデルは単純に実施することができる。「覚醒度」を予測する他のモデルは、多数の入力変数(例えばカフェイン、アルコール摂取、周囲の明るさ/暗さ、日周タイプ)を追跡することをユーザーに要求するものであり、最大の認知能力の変化を説明する要因に基づく標準的で単純化されたモデルへのオプション的な「付属データ」としてこれらの入力を示すのではない。例えば、本発明の方法の一部によれば、認知能力に対する年齢の影響は、睡眠に対する年齢の経験的に導かれた影響を通じて暗黙の形で考慮されている。すなわち、睡眠の質は年齢と共に低下すると言うことである。本来備わっている加齢による睡眠の質の低下によって、個人の年齢がわからなくても、潜在的な形で認知能力の低下が予測できる(この方法では、睡眠の質の低下は認知能力の低下の予測をもたらすから)。したがって、年齢を認知能力予測モデルへの別個の(独立した)入力変数とする必要がない。
本発明はまた別の大きな利点を持つ。例えば、本発明の利点は、経験的な評価を不要にするという点である。
本発明の別の利点は、個人の認知能力の正確な予測が得られることである。この利点は、認知能力に大きな影響を与えることが経験的に示された3つの要因、すなわち(1)個人の睡眠/覚醒履歴と、(2)1日の中での時刻(ここで「日」は夜間と日中の両方を含む24時間を意味する)および(3)特別の仕事における個人の時間を組み込んだ方法によって達成される。
本発明によって実現する別の利点は、現在の認知能力の正確な予測である。
本発明によって実現する別の利点は、認知能力のリアルタイムの予測が可能だという点である。
本発明によって実現するさらに別の利点は、仮説的な将来の睡眠/覚醒期間に基づいて、将来に予想される1日を通じての認知能力を予測することである。
本発明によって実現する付加的な利点は、与えられた時点での認知能力の過去に遡った分析を行うことである。
本発明のさらなる利点は、標準データを認知能力の予測の基礎にしない(つまり出力用の「ルックアップテーブル」を必要としない)ということで、代わりに各個人の睡眠/覚醒情報、活動時間および仕事に費やす時間に直接基づいて計算されるということである。
本発明のさらなる利点は、固定した任務/業務スケジュールに基づいて、個人の将来の睡眠/覚醒スケジュールを最適化するのに利用できるという点である。従来の方法と装置は、仕事のスケジュールおよび/又は任務を、「個人に適合するように」修正することに向けられていた。しかし、ほとんどの場合、仕事のスケジュールおよび/又は任務は固定されている。従って、仕事のスケジュール又は任務を個人に適するように修正することは、現実的でないか又は不可能である。本発明に組み込まれたもっと理にかなったアプローチは、仕事/任務の要求を満たすように、個人が自分の睡眠/覚醒期間を調整することができるようにするものである。したがって、この方法は、仕事から離れている時間によって、あるいは覚醒度のような認知能力の間接的な指標を使って就業時間を規制する代わりに、就業時間を直接的に適用可能な測定量(認知能力)に規制する手段を提供することにより、もっと実際的なものとなる。
本発明の特徴は、個人の睡眠/覚醒履歴と活動時間を、そのまま利用できる、自明のインデックスに変換するグラフィック表現を提供することである。「覚醒度」や「眠気」の予測とは異なり、認知能力の予測はそれ以上の解釈を必要としない。
本発明により、人の認知能力を予測する方法は、上記の目的を達成し、上記の利点を実現するものである。この方法および得られる装置は、広範囲の状況および様々なタイプの入力に対して容易に適合する。
本発明のある態様によれば、個人の睡眠/覚醒履歴は処理装置に入力される。処理装置は、睡眠/覚醒履歴の個々のデータを睡眠か覚醒かに分類する。データの分類に基づいて、処理装置は個人の現在の状態に対応する認知能力の容量を選択して計算し、認知能力の容量は活動時間値によって修正して、認知能力の容量を予測された認知能力に調整することができる。予測された認知能力は、認知的な課題を遂行する個人の能力を表すものである。予測された認知能力はリアルタイム表示又は曲線の一部として表示され、表示されたと考えられる情報と共に印刷され、および/又は後の検索および利用のために保存することができる。認知能力の容量の計算は、眠っていることと起きていることの相互関係が認知能力に及ぼす影響をモデル化する機能を基礎として行われる。活動時間関数は、個人の概日リズムが認知能力に及ぼす影響をモデル化する。
本発明の基礎となる方法によれば、この方法は、様々な種類の装置を使って実現できる。可能な装置の実施形態の例としては、専用装置又はコンピュータ内蔵の装置としての電子的なハードウェア、コンピュータで利用できるようにコンピュータでの読み取り可能な形に実現されたソフトウェア、メモリ又はコンピュータ利用のためのプログラムチップあるいは専用装置に内蔵されたソフトウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアの両方を組み合わせたものが含まれる。専用装置は、専用装置の目的を補完するもっと大きな装置の一部であっても良い。
本発明の好適な実施形態を示す添付の図面を参照して、以下本発明を詳細に説明する。ただし本発明は他の多くの形態で実施することが可能であり、ここに示す実施形態によって制限されると見なすべきではない。これらの実施形態は本開示を十全たらしめ、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるためのものである。以下、本発明の好適な実施形態を示す添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。本明細書全体を通して、類似の番号は類似の要素を示す。
当業者であれば理解できるように、本発明は方法、データ処理システム、あるいはコンピュータプログラム製品として実施可能である。本発明は完全にハードウェアとしての実施、完全にソフトウェアとしての実施、あるいはソフトウェアとハードウェアの両側面を組み合わせた実施の形態をとることが可能である。更にまた本発明は、媒体内に実現されたコンピュータで利用可能なプログラムコードを有するコンピュータが利用可能な記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形を取ることもできる。ハードディスク、CD−ROM、光学記憶装置又は磁気記憶装置を含むコンピュータで読み取り可能な任意の適切な媒体を使用することができる。
本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、JAVA(登録商標)&commat、Smalltalk又はC++のようなオブジェクト指向プログラミング言語で書くことができる。しかし本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Cプログラミング言語のような従来の手続き型プログラミング言語で書くこともできる。
プログラムコードはスタンドアローンのソフトウェアパッケージとしてユーザーのコンピュータ上で、又は離れたコンピュータ上で完全に実行することもでき、あるいは部分的にユーザーのコンピュータ上でまた部分的に離れたコンピュータ上で実行することも可能である。後者の場合、離れたコンピュータはLAN又はWAN(インターネット)を介してユーザーのコンピュータに直接接続することができ、あるいは外部コンピュータを介して間接的に接続してもよい(例えばインターネットサービスプロバイダを利用してインターネットを介して)。本発明はパソコン、PAL装置、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、eブックその他のハンドヘルド又はウェアラブルコンピュータ機器(Palm OS、Windows(登録商標) CE、EPOC、あるいは3Com社のRazorやIBMとIntelを含むコンソーシアムのBluetooth(登録商標)というコードネームを持つ次世代の製品を組み込んだもの)、又は特定用途向け集積回路(ASIC)を持つ特定用途の装置のようなスタンドアローン装置上に常駐するソフトウェアとして実現することができる。
以下本発明の実施形態による方法、装置(システム)およびコンピュータプログラム製品を示すフローチャートを参照して本発明を説明する。フローチャートの各ブロックおよびフローチャートの複数ブロックの組み合わせは、コンピュータプログラムの命令によって実現できることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラムの命令を、汎用コンピュータ、特殊用途のコンピュータ、又はその他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサーに供給し、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサーを介して実行する命令が、フローチャートの1つ又は複数のブロック内に指定された機能を実現する手段を作るようにすることができる。
これらのコンピュータプログラムの命令は、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理装置に特定の仕方で機能するように指示して、コンピュータで読み取り可能なメモリに記憶された命令が、フローチャートの1つ又は複数のブロック内に指定された機能を実現する命令手段を含む製造品目を生成するように、コンピュータで読み取り可能なメモリ内に記憶しても良い。ソフトウェアを使用するために記憶する方法は、例えば以下のようである:ランダムアクセスメモリ(RAM)内、読み取り専用メモリ(ROM)内、ハードドライブ、ディスク、コンパクトディスク、パンチカード、テープその他のコンピュータで読み取り可能な材料の記憶装置上、ネットワーク、コンピュータ、イントラネット、インターネット、Abileneプロジェクトその他の上の仮想メモリ内;光学的記憶装置上、磁気記憶装置上、および/又はEPROM上。
コンピュータプログラムの命令はまた、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理装置上にロードし、一連の動作工程をコンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理装置上で実行してコンピュータで実現されたプロセスを生成し、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理装置に上で実行する命令が、フローチャートの1つ又は複数のブロック内に指定された機能を実現ための工程を提供するようにすることができる。
本発明は、任意の時点までの睡眠および覚醒の長さの結果として、またさらに活動時間および特別の個人のための作業負荷の関数として、過去、現在あるいは未来の任意の時点での認知能力を予測する方法に関する。この方法は、個人の認知能力について、数値的な予測を時間の連続関数として計算する。この計算(以下で説明する)は、(1)完全に目覚めている間の認知能力の連続的な低下、(2)睡眠中の認知能力の回復、(3)活動時間中の認知能力の周期的な変化、および(3)活動が生じたかどうか又は如何なる活動が生じたかによる認知能力の変化の間の経験的に導かれた直接的な数学的関係に基づいている。
本発明によれば、任意の時点で予測される認知能力を示す数値が、図1(a)−図4(b)に示すように与えられる。図1(a)に示すように、予測された認知能力は、科学的に制御された条件下での認知能力の直接的な測定から経験的に導かれた関数を使って、3つの概略の工程で得られた一連の計算および/又は決定の結果と等しい。図2に示す最初の工程では、好ましくは1組の関数を使って図3(a)−図3(c)に図示したような認知能力容量のレベルとして示される初期値を計算する。認知能力容量のレベルが計算されると、好ましくは第2の工程で図1(b)でG8、また図4(b)でS8として表された、事前に計算された活動時間変調子Mを計算するか又は使用する。好ましくは第3の工程は図4(b)中でS9−S10(b)として表す仕事変調子Tを計算する。また、第2および第3の工程は交換および/又は組み合わせてもよい。好ましくは第4の工程は、第1ないし第3の工程の結果の数学的な組み合わせで、図1(a)のブロック図と図1(b)のグラフとで示される認知能力の予測が得られ、認知能力容量と活動時間変調子の組み合わせを示す。
図2−図4(b)に示すように、認知能力容量のレベルの計算に使われる睡眠/覚醒履歴には、4つの関数が関係する。覚醒関数w(t)は、起きている時間と認知能力の低下の間の経験的に導かれた関係を数量化する。睡眠関数s(t)は、睡眠時間と認知能力の維持および/又は回復の間の経験的に導かれた関係を数量化する。まとまった時間の覚醒又は睡眠期間の間に作用するこれら2つの一次的な関数に加えて、一方の状態から他方の状態への移り変わりの間に短時間に作用する他の2つの関数がある。それは回復遅延関数d(t)と睡眠惰性関数i(t)である。回復遅延関数d(t)は覚醒から睡眠への遷移と認知能力の回復の間の関係を表す。この関数は、図3(b)に示されるように、覚醒に続くステージ1睡眠として知られる睡眠初期の段階で作用する。睡眠惰性関数i(t)は、睡眠から覚醒への遷移と認知能力の間の関係を表す。この関数は、図3(c)に示されるように睡眠後の覚醒状態の初期に作用する。
認知能力に対する活動時間の影響を表す関数は、変調因子Mを計算するのに使われる。活動時間関数は、活動時間(24時間の期間の中での時点)と、図1(b)においてG8で示される活動時間中の認知能力の変化との間の経験的に導かれた関係を示す。
仕事/活動が認知能力に与える影響を表す関数は、変調係数Tを計算するために使用される。仕事関数は、仕事および/又は活動の遂行が認知能力に及ぼす影響を、好適には例えば特定の仕事および/又は活動にまつわる強度、長さ、複雑さおよび困難さに基づいて記述する。図5は40時間の完全に睡眠を剥奪された期間の間、2時間ごとに10分間の精神運動覚醒仕事(PVT)試験を行う間の仕事に対する時間の影響を示す。最後の1つを除くPVTの各試験に対して、1つのPVT試験の10番目の試行から次のPVT試験の1番目の試行へと改善が見られた。
図1(b)で乗算として示される数学的演算を使って、第1、第2および第3の工程からの結果を組み合わせて、第4の工程における単一の予測認知能力曲線Eとした。
好適な実施形態を使用して、認知能力の予測値Eは理論的には指数レベル120に達する可能性があるが、それは認知能力容量Cが指数レベル100(すなわち認知能力容量Cがその間に完全に回復した睡眠期間から目覚めて20分後)であり、同時に1日の中での時刻関数Mが頂点の位相にあるときだけである。これは可能ではあるが、実際に起きることは考えにくい。
この方法に対して入力されるデータS2は、個人の睡眠/覚醒履歴を表すデータと仕事情報を含む。睡眠/覚醒履歴は、地方時間に基づく時系列又は時間的記録である。相次ぐ期間、間隔又はエポックの各々が、2つの互いに排他的な状態すなわち覚醒か睡眠かを指定する。仕事情報は、個人が活動/仕事において何をしているか又はしていないかに関する一連の情報であり、またそうではなく活動/仕事の強度、長さ、複雑さおよび/又は困難さを仕事情報に含めてもよい。睡眠/覚醒履歴と仕事情報は必ずしも過去に起きたという意味で「歴史的」である必要はなく、例えば仮説的なもの、予想された、理想化された、あるいは想定されたものであっても良い。この方法を予測に利用するためには、後者が特に適切である。
睡眠と覚醒度を測定する最高の基準は、ポリソムノグラフィー(PSG)である。PSG睡眠評価は、脳波図形(EEG)、眼球電位図(EOG)および筋電図のデータを同時に記録するか、あるいは少なくともそれらのデータを後で同期させる(典型的には時間マークを入力するか時間にリンクさせることにより)ことが出来るような方法で記録することに基づいている。これらの信号は、後でエポックを基準にして(各エポックは従来PSGについては30秒の長さとされている)目視検査を行って、個人の睡眠および覚醒のステージを決定する。ポリソムノグラフィーによる睡眠評価は、覚醒状態、ノンレム睡眠(非急速眼球運動睡眠:NREM)およびレム睡眠(急速眼球運動睡眠:REM)を識別するが、ノンレム睡眠は、さらに、特性EEGマークに基づいて4段階に分けられる(ステージ1、2、3および4)。PSGは、記録装置に接続されたセンサー又は電極を個人に取り付けることを必要とするので、応用的な状況(例えば、運転中、仕事中又は戦場)において睡眠および覚醒状態を決定するには実際的な方法ではない。現在PSG評価を行う上で受け入れられている唯一の方法は、EEG、EOGおよびEMGの測定結果を目視検査することである。
現在では、PSG評価にコンピュータを使用する場合は、コンピュータによる評価は米国睡眠障害協会に認可されていないので、通常は人間が結果をチェックして評価の正確さを保証している。また、最近では、高速フーリエ変換を使ってスペクトル分解されたPSG又は類似のデータにより、PSG評価よりも良い睡眠の測定が得られるかどうかを、研究者達が検討している。
睡眠および覚醒状態を識別する好適な方法は、携帯可能で非強制的で信頼性があり、その記録を自動的に評価出来る装置である。そのような方法の1つは、移動活動をモニターするもの、つまりアクティグラフィーである。移動活動装置は、典型的には利き腕でない方の手首に装着されるが、個人の他の部位にも取り付けられる(例えば足首)。利き腕でない方の手首に装着した場合、これらの装置は、PSGによって得られる標準的なものと比べても正確に睡眠および覚醒状態を数量化できることが示された(90%もの高い信頼性)。
アクティグラフィーのデータを評価する上で最も広く採用されている方法は、Coleらによって開発され、論文「手首装着アクティグラフィーによる睡眠/覚醒の自動識別」(Sleep, vol. 15, pp.461-469(1992))に述べられたアルゴリズムである。Coleらのアルゴリズム(Cole-Kripkeアルゴリズムとも呼ばれる)のような、良い結果を上げているアクティグラフィーによる睡眠評価アルゴリズムは、通常の(零交差数)アクティグラフと共に使用するものであり、いくつかのアルゴリズムはある閾値よりも高いカウント数の説明を与える。これらのアルゴリズムは単純な睡眠と覚醒の識別を行うことに限定されており、睡眠状態の中での睡眠段階の変化(例えばステージ1からステージ2へ、ステージ2からレム睡眠へ)は識別できない。従って、そのようなアルゴリズムは回復睡眠(ステージ2、3、4およびレム)を非回復睡眠(ステージ1)と区別することはできない。
もっと最近になって、ディジタル信号処理(DSP)アクティグラフの開発が始まった。DSPアクティグラフでは、従来の零交差数あるいは閾値を超えたカウントだけでなく(ただし従来のアクティグラフで得られるこれおよびその他の情報も保持されるが)、はるかに多くの情報が得られるので、異なる睡眠段階を識別する可能性がある。従って、DSPの睡眠評価システムはCole-Kripkeアルゴリズムの代わりになるだけでなく、それを無意味にしてしまうであろう。DSPアクティグラフを利用して得た経験的データのDSPデータベースが増加すれば、DSP用の睡眠評価システムが開発されるであろう。
自動化されたアクティグラフィー評価のための他のアルゴリズムと方法が、例えば、Jean-Louisら、1996、Sadehら、1989、およびZisapelら、1995などによって開発された。これらの個々の評価システムは、特に、アクティグラフで記録された睡眠障害又は他の医学的な問題を持つ個人の睡眠/覚醒状態を評価するという大きな可能性を持っている。現在利用できる評価システムは、技術的な面、例えば、以前および以後のエポックでの活動のカウントが、どの程度まで現在のエポックの評価に影響するか、また各評価システムの基礎となる数学的原理の変動などに違いがある。当業者であれば、どんなアクティグラフ評価システムも本発明の方法に対する睡眠/覚醒に関する入力データを与えることができる。
睡眠/覚醒履歴は、好適にはデータ列の形を取る。睡眠/覚醒履歴には個人の過去、現在および/又は未来の(予測された)睡眠/覚醒パターンを含むことができる。睡眠/覚醒履歴は、個人が眠っているか目覚めているかという状態を表すもので、複数のエポックに分けられる。各エポックは同じ長さであるが、データの収集に使用される方法と装置の制約および/又は睡眠/覚醒パターンに求められる精度に応じて、任意の長さにすることができる。PSG又は類似の評価は、個人の睡眠/覚醒履歴に変換できる。
認知能力の予測精度は、睡眠/覚醒履歴の入力の精度および個人の睡眠/覚醒状態の解釈に使用される睡眠評価システムに直接関連するものであることが理解されるであろう。精度を低下させる可能性のある1つの原因は、入力エポック又は介在時間の時間的分解能の問題である。すなわち入力エポックが短いほど、時間分解能は高く、またその結果、睡眠/覚醒入力の瞬間から瞬間への精度が高くなる。例えばアクティグラフィーでは、エポックの最も効果的な長さは1分であることが経験によって示されている。精度が悪くなる別の原因は、睡眠と覚醒の識別そのもののあいまいさである。履歴の入力があいまいな場合(つまり眠っているか目覚めているかがはっきりしない場合)、認知能力の予測値の計算をそれぞれの可能な状態(睡眠又は覚醒)について1回ずつ、計2回同時に行って、予想される認知能力の可能な範囲を示す2重の出力を得ることになる。睡眠/覚醒履歴に含まれるあいまいさが1つ以上ある場合は、2重出力をさらに分割すればよいと言うことは、当業者であれば理解できるであろう。この方法およびそれを実施する装置には全て、下に示す関数を実行する処理がその1つの要素として含まれる。
本発明の方法は時間と技術的方法に関して制約されない。つまりオンライン/リアルタイムでもオフライン/事後処理でもよく、またこれらの方程式の連続的な形式に対して増分解、反復解又は離散解でもよい。
この方法の好適な実施形態は、時刻tにおける認知能力容量の予測値Eを、仕事関数Tによる1日の中での時刻関数Mで現在の認知能力容量Cを変調したものとして表現する数学的モデルを含む。これは一般的な記述としては次のような最も単純な形で表記される:
E=C∇M∇T 式1
ここで∇は数学的な演算子を表す。認知能力容量C、1日の中での時刻関数Mおよび仕事関数Tは、任意の数学的演算子を使って組み合わせることができる。厳密にどのような演算子が最も望ましいかは、1日の中での時刻関数Mおよび/または仕事関数Tの形式と性質によって決まる。認知能力容量の予測値Eの表現には2つの異なる演算子を使用してもよく、最初の∇は1つの数学的な演算子であり2番目の∇は2番目の数学的な演算子のようにしてもよい。あるいは変調を2段階で行い、2つの項を変調した後でそれで得られた変調された値を3番目の項で変調しても良い。最も好適には下に示す式1aを使って認知能力容量C、1日の中での時刻関数Mおよび仕事関数Tを組み合わせる。
E=C*M*T 式1a
あるいは、式1bを使って認知能力容量C、1日の中での時刻関数Mおよび仕事関数Tを組み合わせても良い。
E=C+M+T 式1b
認知能力容量Cは睡眠/覚醒履歴の関数を表す、すなわち
C=w(t)+s(t)+d(t)+i(t) 式2
ここでw(t)、s(t)、d(t)およびi(t)は時刻tにおける覚醒、睡眠、遅延および睡眠惰性関数の瞬間値である。1日の中での時刻関数Mは1日の中での時刻の関数を表し、次式のようになる:
M=m(t) 式3
ここでm(t)は時刻tにおける1日の中での時刻関数の瞬間値である。仕事関数Tは、個人が覚醒している時に仕事を行っている、または行っていないことの影響の関数を表す、すなわち
T=t(t) 式4
本発明に適合する上で、それが適切であれば図4(a)のS1において開始時刻t、初期認知能力容量Cおよび最後の遷移tLSの初期設定の後に4段階のプロセスを行うことができるが、S1ではこれらのデータを任意の順序で入力することができる。最初の工程では、図4(a)−図4(b)のS3〜S7eで表されるように関数w(t)、s(t)、d(t)およびi(t)を使って個人の睡眠/覚醒履歴に基づいて、時刻tにおける認知能力容量Cのレベルを計算できる。2番目の工程では、図4(b)のS8で表される1日の中での時刻関数を使って1日の中での時刻変調子Mを計算できる。本発明のある態様によれば、1番目の工程の複数回の実行に対して一連のデータ点を時間的な順序で供給するために、2番目の工程を一度行うことができる。3番目の工程では、図4(b)のS9a〜S10cで表されるように仕事関数を使用して仕事変調子Tを計算できる。4番目の工程では、認知能力容量Cおよび1日の中での時刻変調子Mの組み合わせから認知能力の予測値Eを導くことができ、その結果、認知能力容量Cは図4(b)のS11に示すように仕事変調子Tで変調された1日の中での時刻変調子Mで変調されることになる。
<第1の工程:認知能力容量Cの計算(決定)>
図2は以下で述べる関数の使い方を模式的に示すフローチャートである。ここで説明する計算の例を図3(a)−図3(c)に図式的に示す。図4(a)および図4(b)はこの方法における各工程の詳しいフローチャートである。このモデルの好適な実施形態として、ここでは認知能力容量Cには、好ましくはゼロから120までの全範囲を持つインデックス値が割り当てられている。この応用における範囲は、示された数値的な範囲の終わりの点を含むものと考えられている。ただし、認知能力容量Cはそれぞれの応用に応じて、その他の値又は単位、例えば、ゼロから100までで表すこともできる。
好適な実施形態では、S7aからS7dで示されるように、4つの関数w(t)、s(t)、d(t)およびi(t)のうち1つだけが、与えられた任意の時間間隔で作用し、他の関数は式2においてゼロに等しい。関数w(t)とs(t)は非遷移的状態を表し、関数d(t)およびi(t)は遷移状態を表す。例えば非遷移的状態では、個人が覚醒しているときは関数s(t)がゼロに設定され、個人が眠っているときは関数w(t)がゼロに設定される。同様に、覚醒状態から睡眠状態へ、あるいはその逆に変化している特定の期間は、遷移関数d(t)およびi(t)のどちらか一方だけが作用し、その他はゼロに設定される。睡眠と覚醒の間、あるいはその逆の変化が起きると、時間カウンタtLSがリセットされて現在の状態の継続時間を追跡し、図4(b)に示すように遷移関数d(t)およびi(t)に対する決定ルールを求める。
(1)覚醒関数(w(t))
覚醒関数S7aは、覚醒している時間の経過による認知能力容量の減退を表す。これは(1)個人が毎晩8時間の睡眠を取れば、ほとんど100%の認知能力が毎日維持されることと、(2)覚醒状態を継続する24時間ごとに、認知能力が約25%低下すると思われる、という知見に基づくものである。
S7aでは、好適な実施形態では1エポックの長さに等しいt−1からtまでの期間中に起きる認知能力容量の減退の結果として得られた、認知能力容量Cの現在値を覚醒関数w(t)により計算する。上で述べたようにこの計算は、S9における活動時間関数Mによる認知能力容量Cの変調とは独立に、またそれよりも前に行われる。覚醒関数の一般化された形式は次式で表される。
w=w(t) 式5
ここで覚醒関数w(t)はtと共に減少する任意の負の値の関数でよい。より好適には、覚醒関数w(t)は一定の割合で低下する能力の一次関数であり、また最も好適には覚醒関数w(t)は時刻tにおいて次式のように表される。
w(t)=Ct-1−kw 式5a
ここで覚醒している期間は時刻t−1からt(エポックの数で)であり、1分間の能力低下がkwである。従ってt−1からtまでの期間が1分ではなければ、kwは適切に調整される。kwの全範囲は任意の正の値の実数であり、好適にはkwは毎分0.003から0.03の範囲のポイントであり、また最も好適にはkwは1時間当たり約1%のポイント、つまり毎分0.017ポイントである。kwの値は、覚醒状態を継続する24時間ごとに認知能力が約25インデックスポイント低下することを示す経験的データに基づいている。式4aを図2および4(b)においてS7aで図示する。認知能力容量の初期インデックスが100%で、16時間(960分)にわたって毎分0.017ポイントの割合で低下する場合の、覚醒関数の例を図3(a)に示す。
(2)睡眠関数(s(t))
睡眠関数S7cは、睡眠時間と共に認知能力容量を回復するものである。睡眠関数s(t)は、睡眠による認知能力の回復値は、非線形に蓄積するものであるという経験的な根拠に基づくものである。すなわち、認知能力容量の回復割合は、睡眠の初期には速く、睡眠の継続と共に遅くなる。別のデータによれば、ある時点を過ぎると、それ以上眠っても認知能力にはほとんどあるいは全く貢献せず、回復率はゼロに近づく。つまり、例えば2時間の睡眠が1時間の睡眠の2倍の回復効果を持つわけではないということになる。睡眠関数は、認知能力容量の現在のレベルに依存する割合で認知能力容量を増加させる、つまり認知能力容量の初期値が低いほど回復が速く進行する。言い換えれば、特定の認知能力容量指数に対する接線の傾きが好適には同じであり、異なる睡眠期間中に指数がそのレベルに達するたびに水平となる。
例えば、日中完全に(16時間)覚醒状態にあった後で夜間に眠ると、回復は夜の早い時期に急速に進行する。睡眠期間中に認知能力容量が回復するに従って、回復速度は低下する。睡眠剥奪の後では、初期の認知能力容量は通常の16時間起きていた後よりもさらに低いが、回復睡眠の初期段階における回復速度はより速い。日常的に部分的な睡眠剥奪が続くと、このように初期の回復速度は速くなっても、各晩の睡眠だけでは認知能力容量が完全には回復しないことがある。
睡眠関数は、個人が時間T(時刻t−1からtまで)の間眠っている間に生じる容量の回復結果から導かれる認知能力容量Cの現在値を計算する。上で述べたようにこの計算は、活動時間関数Mによる認知能力容量Cの変調と仕事関数Tによるモジュレーションとは独立に、またそれよりも前に行われる。睡眠関数の一般化された形式は次式で表される。
s=s(t) 式6
ここで睡眠関数s(t)はtと共に増加する任意の正の値の関数でよいが、より好適には、睡眠関数s(t)は指数関数である。これは、睡眠中の認知能力の回復は非線形であり、睡眠の初期に最も速く回復し、睡眠の継続と共に緩やかに遅くなるという経験的なデータに基づくものである。したがって最も好適な睡眠関数は指数関数であり、それは離散的な形式では次式のように表される。
t=Ct-1+(100−Ct-1)/ks 式6a
ここで睡眠期間はt−1からt(分)までであり、認知能力容量の最大値は100インデックスポイントである。Ct-1は時刻tに先行する期間中の認知能力容量であり、ksは回復の時定数である。別の言葉で言えばksは、認知能力容量Cが曲線の最初の勾配と等しい一定の割合で回復すると仮定した場合に、完全に回復するのに要する時間である。回復の時定数ksは部分睡眠剥奪データから経験的に導かれるもので、エポックの長さに基づいて選択される。好適な実施形態によれば、ksは任意の正の値の実数である。例えばksは長さ1分のエポックに対して100から1000までの範囲でよく、より好適には長さ1分のエポックに対して約300である。ただし、ksの最適な値は、少なくとも部分的にはエポックの長さに依存する。式6aは図2と図4(b)ではS7cで表してある。認知能力容量の初期レベルを100インデックスポイントとして、期間は1分でks=300として、16時間覚醒していたあとの8時間の睡眠の効果を、図3(a)で睡眠関数の例として図示する。
(3)覚醒から睡眠への変化に対する遅延関数d(t)
回復遅延関数d(t)は、睡眠関数からの認知能力容量の回復に遅延が生じた時間の長さを、睡眠の開始時からの期間として示すものである。この期間中に、認知能力容量の覚醒関数による低下が図4(b)においてS7dで表されるように継続する。睡眠期間の開始時点で、あるいは睡眠からの目覚めの後で、認知能力容量がただちに蓄積するのを防ぐことにより、この遅延時間は認知能力容量の計算S6bを調整する。
回復遅延関数は、睡眠の最初の数分は一般にステージ1の睡眠からなり、これは認知能力容量維持をするほど回復はないことを示す経験的な調査結果に基づくものである。頻繁に目覚めること、すなわちステージ1の睡眠(睡眠の断片化)は、認知能力容量を回復する上での睡眠の効果を大幅に低下させる。これまでに得られているデータによれば、眠りから目覚めた状態、つまりステージ1の睡眠の後で回復睡眠(ステージ2のもっと深い睡眠)に戻るために要する時間は約5分である。もしも長時間の睡眠が中断なしに得られるならば、認知能力容量の回復全体に対して遅延はわずかな相違しかもたらさない。もしも頻繁に目覚めることによって睡眠が中断されると、各目覚めた後の回復の遅延は蓄積され、その結果全睡眠期間中に回復される全認知能力容量を大幅に低下させる。
睡眠関数は、睡眠関数の適用が延期されて遷移的な公式が適用される睡眠期間の長さを規定する。覚醒から睡眠への変化に対する遅延関数の一般的形式は、下記の決定ルールとして表される。
d(t):IF(t−tLS)≦kd
THEN Ct=d(t)
ELSE Ct=s(t) 式7
ここでLSは最後の状態変化を意味し、従って覚醒−睡眠遷移時間tLSは、連続する一連の睡眠期間に先行する最後の覚醒期間の時間的長さを表す。この決定ルールは図2と図4(b)で、S6b、S7cおよびS7dを合わせたものとして示されている。期間kdの間の認知能力容量を計算するには、認知能力容量Ctを遷移公式Ct=d(t)によって評価する。時間kdが経過すると、Ct=s(t)となる。時間kdが終わる前に覚醒状態が起こると、Ctは決してs(t)に戻らないことに注意されたい。つまり、短い睡眠期間中は睡眠関数が適用されないということである。
dの範囲は好適には0から30分であり、より好適にはkdは睡眠によって回復が得られる前の睡眠の開始時刻から測って、約5分に等しいと考えられる。d(t)は好適にはw(t)と等しい。当業者であれば、kdの長さに影響する要因には様々なものがあることを理解するであろう。従ってより好適な遅延関数は次のように表される。
d(t):IF(t−tLS)≦5
THEN Ct=w(t)
ELSE Ct=s(t) 式7a
式7aで表される認知能力容量に対する遅延回復の影響を、図3(b)で詳しく図示する。
当業者であればわかるように、PSG又は類似の評価はステージ1の睡眠がいつ起きるかを分類できる。そのPSG又は類似の評価は次にステージ1の睡眠の発生を睡眠/覚醒履歴の覚醒データに変換する。従って睡眠/覚醒履歴がこの変換されたPSG又は類似の評価データに基づいている場合、個人の認知能力容量を求める上で遅延関数d(t)は必要でない。あるいはkd値を使う代わりに、個人がいつステージ2またはもっと深い睡眠に入ったかに基づいて遅延関数を求めて、ステージ2またはもっと深い睡眠に入ったら睡眠関数s(t)を使用するようにしても良い。或いは、遅延関数d(t)は、単純に遅延期間の最初での認知レベルCt、すなわち、CtLSを維持するのでも良い。
(4)睡眠から覚醒への変化に対する睡眠惰性関数i(t)
睡眠惰性関数i(t)は、睡眠から目覚めた後の期間中に、顕在的な認知能力容量が現在の実際のレベルよりも低く抑えられた期間を定義する。睡眠惰性関数i(t)は、認知能力は覚醒すると直ちに損なわれるが、覚醒時間の機能で、おおむね改善することを示す経験的データに基づいている。また同時に、睡眠から目覚めた直後に不活性化された、その後数分間の覚醒の間に再活性化される異モード連合皮質(この認知能力を媒介する領域)を示した、陽電子射出断層撮影法による研究結果にも基づいている。すなわち、睡眠中に生じる実際の認知能力の回復は、目覚めてすぐにははっきりしないのである。認知能力容量が、睡眠中に生じる実際の回復を反映したレベルに戻るのに必要な時間は約20分であることが、データによって示されている。
睡眠惰性遅延値kiは、目覚めた後で、顕在的な認知能力容量が睡眠によって回復する認知能力容量のレベルよりも一時的に低く抑えられる可能性のある期間を定義する。この期間中は、初期レベルから、覚醒関数のみによって決定されるレベルまでの橋渡しを遷移的な関数が行う。睡眠から覚醒への変化に対する睡眠惰性関数の一般的な形式は、下記の決定ルールとして表される。
i(t):IF(t−tLS)<ki
THEN Ct=i(t)
ELSE Ct=w(t) 式8
ここで睡眠−覚醒遷移時間tLSは、連続する一連の覚醒期間に先行する最後の睡眠期間の時間的長さを表す。期間kiの間の認知能力容量を計算するには、Ctを遷移公式Ct=i(t)によって評価する。時間kiが経過すると、Ct=w(t)となる。式8は図2と図4(b)で、S6a、S7aおよびS7bを合わせたものとして示されている。
iの範囲は好適には0から約60分まで、より好適には10から25分、また最も好適には18から22分の間である。
睡眠惰性関数i(t)は0からkiまでの区間にわたる任意の関数であってよく、好適には負の加速を受けた任意の関数である。好適な睡眠惰性関数i(t)は単純な二次方程式である。この関数は好適には、目覚めて直後の認知能力容量を10%から25%、またより好適には25%抑制する。この関数は目覚めてから最初の10分(またはkIの約半分)で、抑制された認知能力容量の75%を回復し、通常は目覚めてから20分までに抑制された認知能力容量の100%を回復し、それ以後は覚醒関数が働く。これらの値は、睡眠から覚醒への変化に関する経験的なデータに基づくものである。これらの研究によれば、認知能力は睡眠から目覚めた直後は損なわれているが、この損なわれた分の大部分は目覚めて最初の数分間に解消し、能力が完全に解消するには約20分を要することが示されている。好適な認知能力容量の25%の抑制と20分の回復時間を使用すると、睡眠惰性関数の好適な形式は下記の決定ルールとして表される。
i(t): IF(t−tLs)<20
THEN Ct=Ccow*[0.75+0.025(t−tvs)−(0.025(t−tLs))2
ELSE Ct=w(t) 式8a
ここでCswは睡眠期間の終わりにおける認知能力容量であり、睡眠−覚醒遷移時間tLSでの睡眠関数によって計算される。この決定ルールは図2と図4(b)で、S6a、S7aおよびS7bを合わせたものとして示されている。式8aは初期の抑制が25%であり、kiは20分に等しく、そして覚醒関数w(t)が効果を発揮するまでの期間を負の加速を受けた勾配が橋渡しをすることを示している。式8aで表現される認知能力容量に対する睡眠惰性関数i(t)の影響を、図3(c)に図示する。
睡眠惰性関数i(t)の別の変形は、kiが10分に等しく、認知能力容量の初期の低下が10%とした一次関数である。決定ルールは、下記のようになる。
i(t):IF(t−tLS)<10
THEN Ct=Csw*[0.9+(t−tLS)/100]
ELSE Ct=w(t) 式8b
当業者であれば理解できるように、式8aと78bはkiの値の変化と認知能力容量の初期的な抑制量に対して調整することができる。
<第2の工程:活動時間変調子Mの計算>
(1)活動時間関数m(t)
図4(b)でS8として示された活動時間関数m(t)は、認知能力の24時間周期の変化を表すものである。活動時間関数m(t)は、一定の日常的な状態および/又は完全な睡眠剥奪状態(すなわち睡眠/覚醒履歴が管理された状態)では、認知能力容量は24時間の期間にわたってピーク−ピークで約5%から約20%の間で変動することを示す経験的なデータに基づいている。この結果は、一般に、個人の概日リズムが原因であるとされる。この関数の出力が、活動時間に応じて現在の認知能力容量予測C(第1の工程で計算された値)を変調する。この変調の結果が、予測された認知能力容量Eである。時刻関数の一般化された形式は以下のように表される。
M=m(t) 式9
ここでm(t)は基本周期24時間の任意の周期関数であり、好適にはm(t)は2つの正弦関数の和であり、その1つは周期24時間のもの、もう1つは二段階の概日周期を構成する12時間周期のものである。この関数は、認知能力の測定において見られる大きな変動は、このような2つの正弦曲線波形によって説明できることを示す経験的なデータに基づいている。前に述べたように、経験的に観察される認知能力容量におけるピークは通常午後8時から午後10時の間に起きるもので、午前2時から午前6時の間に谷が生じて、毎日約5%から約20%の変動が生じる。二番目の谷は通常午後3時頃に起きる。関数m(t)の好適な形式に対してこれらの値を使用すると、その結果得られる関数により、昼間に低下する、経験的に示される認知能力の日周期リズムの非対称性が説明される。
関数m(t)の記述形式は、そのオフセットと振幅値を含めて、第3の工程で選択される演算子により変化する。この関数の計算値は、認知能力の付加的なパーセント値(認知能力容量Ctの現在値に従属するか又は独立)か、あるいは乗法無次元スカラー量として表現できる。この関数の好適な形式は、乗法演算子を使用して以下のように表せる。
m(t)=F+(A1*cos(2π(t−V1)/P1)+A2*cos(2π(t−V2)/P2)) 式9a
ここでFはオフセットであり、tは活動時間、P1とP2は2つの正弦関数の周期であり、V1とV2は深夜過ぎのピーク時刻を時間又はエポック単位で表し、A1とA2はそれらの余弦曲線の振幅である。この関数を使って、前に計算された認知能力容量Cを変調することができ、その結果が認知能力容量の予測値Eとなる。式9aを図1(a)と4(b)でS8として示し、図1(b)でG8として図示する。図4(b)に示すように、tはデータの各エポックに対する活動時間関数m(t)の入力である。
例えば、ある好適な実施形態において、変数を以下のように設定できる。tは深夜過ぎの時間を分で表したもの、P1は1440分、P2は720分、V1は1225、そしてV2は560である。さらにA1とA2がスカラーとして表される場合、それらの振幅は0から1の範囲であり、好適には0.01から0.2の範囲であり、最も好適にはA1は0.082でありA2は0.036である。さらにこの例において、Fは0又は1であり、より好適にはFは1である。その結果この例における活動時間関数m(t)の値は0から2の範囲となり、好適には0.8から1.2の範囲であり、最も好適には0.92から1.12の範囲となる。
上で述べたように、第2の工程は例えばリアルタイムで進行中に行ってもよいし、また第1の工程の前に事前に計算しておいても良い。
<第3の工程:仕事変調子T上の時刻の計算>
好適な実施形態では、個人が覚醒している任意の期間中に2つの関数g(t)およびh(t)のうち1つだけが作動し、他の関数はゼロに等しい。しかし個人が眠っているときは、関数g(t)およびh(t)は両方とも図4(b)のS9a〜S10cで示されるように1に等しい(式12)か、またはゼロに等しい(式12a)。関数の選択は好適にはS9b〜S10bに示されるように個人が仕事を遂行しているか否か、およびS9aおよびS10cに示されるように個人が覚醒しているかどうかに基づいて行われる。その場合仕事変調子上の時刻は、図4(b)に示すように分岐して行うのではなく、S7aおよびS7bの工程の前(図8(a)に示すように)または後で計算することができる。
(1)休息関数g(t)
休息関数g(t)を図4(b)のS10aに示す。休息関数g(t)は仕事および/または活動の合間に個人が休息をとってリラックスすることにより認知能力容量が回復することを表す。休息関数g(t)は好適には、上で睡眠関数s(t)に関して述べた睡眠中に起きるのと同じ回復の量を与えない。休息関数の一般的な形式は次式で表される:
t(t)=g(t) 式10
ここでg(t)は正の値を持つ任意の関数であってよい。あるいは休息関数g(t)を次式で表すこともできる:
g(t)=z*s(t) 式10a
ここでzは好適には0から1までの範囲のスカラーであり、tLSが好適には休息および/または非活動期間の長さを表す。
(2)仕事関数h(t)
仕事関数h(t)は個人が仕事(単数または複数)および/または活動(単数または複数)を遂行することによる認知能力容量の低下を表す。S10bでは、仕事関数h(t)は時刻t−1からtまでの期間中に起きる認知能力容量の低下によって生じる仕事変調子Tを計算するが、この期間は好適な実施形態では1つのエポックの長さとなる。仕事関数の一般的な形式は次式で表される:
t(t)=h(t) 式11
ここでh(t)はtとともに減少する負の値を持つ任意の関数であってよい。より好適には、仕事関数h(t)は一定の割合で低下する能力の線形関数である。あるいは仕事関数h(t)は例えば仕事を遂行しおよび/または活動を行う時間が長いほど低下の割合が大きくなる指数関数であってもよい。更に別の形態では、仕事のタイプ、つまり困難さ、複雑さおよび/または強度がエポック当たりの低下率に影響を与える。仕事の困難さ、複雑さおよび/または強度が高くなるほどエポック当たりの低下率が大きくなる。
あるいは、休息関数と仕事関数の両方または一方だけが1日の中での時刻変調子Mによって影響されて、認知能力容量Cと1日の中での時刻変調子Mによって変調される前に、仕事変調子Tが1日の中での時刻変調子Mで表される1日の中での時刻に基づいて変調されるようにしてもよい。更に別の形態では、上記の式1、1aおよび1bにおいて1日の中での時刻変調子Mを2度使用する。
(3)睡眠関数
個人が寝ているときの仕事関数の一般的な形式は
t(t)=1 式12
ここで変調は乗算によって行われるが、それは仕事関数Tが個人の認知能力指数に影響しないからである。あるいは仕事変調子が他の関数に加算される場合は、仕事関数は次式の形を取る。
t(t)=0 式12a
<第4の工程:認知能力の予測値の計算>
認知能力容量の予測値Eを計算する全プロセスを図1(a)および図4(a)−(b)に模式的に示す。活動時間関数Mおよび仕事関数Tは、個人の睡眠/覚醒履歴から導かれた認知能力容量Cを変調して、例えば、図1(a)に示す認知能力の最終的な予測値Eを与える。第3の工程では、認知能力の予測値Eは、認知能力容量Cと、活動時間関数Mと仕事関数Tとの組み合わせから導かれる。その最も一般的な形式は下記のようになる。
E=C∇M∇T 式1
ここで∇は認知能力容量Cと、活動時間関数Mと仕事関数Tとを結合する任意の数学的演算子である。この結合を行う演算子としては通常は加算又は乗算が選ばれる。上で選ばれた活動時間関数m(t)と仕事関数T(t)の形式によって、どちらの演算子を使っても認知能力の予測値Eの同じ数値が得られる。最も好適には、乗算S11を使って以下のように結合を行う。
E=C*M*T 式1a
式1aでは、認知能力の予測値Eは現在の認知能力容量Cと、活動時間変調子Mと、仕事関数Tとの現在値を表す1番を中心とする値を変調したものである。
上で述べたように、認知能力容量Cの好適な数値的表現は、特別の個人で得られる認知能力容量のインデックス(パーセント)を表すゼロから100までの範囲の値である。ただし、ある状況の下では、認知能力容量Cの現在値に関する時間の変調のために、認知能力の予測値Eは、重要な意味を持って100を越えることがある。その様な状況の一例としては、100インデックスレベルの認知能力容量Cが得られる睡眠期間が、夜間のピークで(そして睡眠惰性が解消した後に)中断されるというものが挙げられる。或いは、100%のスケールを維持しながら%表示を用いると、認知能力の予測値Eを100%で頭切りするか、あるいは0から120%の範囲を0から100%までの範囲に縮小しても良い。どちらの方法を選択しても最大値100%を維持できる。最も考えられる実施方法は、値が120%を超えると、120%を100%に縮小してから任意の認知能力の予測値Eを100%に頭切りすることである。
図1に示すように、データに新しいエポックが現れる度にこの方法が繰り返される。この方法の各反復実行ごとに、エポックの長さに等しい1単位の時間を時刻tに加算するが、好適には図4(b)に示すカウンタS13の形で行う。
上で述べた好適な実施形態においては、認知能力容量Cの活動時間変調子Mおよび/または仕事関数Tによる変調の前に、睡眠惰性関数i(t)が認知能力容量Cに適用される。別の実施形態では、認知能力容量Cにではなく認知能力の予測値Eに睡眠惰性関数i(t)が適用される。すなわち、活動時間変調子Mおよび/または仕事関数Tによる認知能力容量Cの変調の後で適用する。好適な実施形態がこの別の実施形態よりも良いかどうかを判断するのに十分な知識は実験から得られていない。
さらに上で述べた好適な実施形態においては、睡眠惰性関数i(t)が適用されたときに覚醒関数w(t)はゼロに設定される。さらに別の実施形態では、睡眠惰性関数i(t)と覚醒関数w(t)が同時に適用される。睡眠惰性関数i(t)と覚醒関数w(t)が互いに等しくなるか、又は睡眠惰性関数i(t)が覚醒関数w(t)よりも大きくなると、認知能力容量Cは覚醒関数w(t)を使って計算(または決定)される。
好適な実施形態をさらに修正して、図5に示すように、認知容量に影響を与える麻薬その他の要因の効果を説明できるようにすることもできる。好適な実施形態をさらに修正したものでは、例えば活動時間関数M(t)の24時間周期を数日の期間にわたって圧縮又は拡大して、調整されたスケジュールに活動時間関数M(t)を再調整することにより、ジェットラグその他の時間をずらす事象を含めることができる。
好適な実施形態を変更して、個人に対してテストを行うことを含めることにより、一定の時間間隔で追加のデータを収集して、試験結果を反映するように現在の認知能力指数を調整するようにしてもよい。使用するテストはPVTまたは類似の反応時間測定試験であってよい。テストの時点での現在の認知能力指数が次に、好適には各式との関連で上に述べた各変数の重みとともに調整され、特定の個人の回復および/または認知能力容量の低下を反映するように方法および/または装置が微調整されるようにする。
別の実施形態は、好適な実施形態から第3の工程を無くしたものである。他の代替実施形態と同様、この代替実施形態も他の代替実施形態と様々な形で組み合わせることができる。
<方法の実施>
好適な実施形態では、ソフトウェアとして実現され、個人の認知能力の現在の状態をリアルタイムに与えおよび必要に応じて認知能力容量を提供して未来の認知能力レベルを推測する。好適な実施形態においてソフトウェアが行う各工程を示すフローチャートを図4(a)−図4(b)に、また後で述べる別の実施形態の場合を図8(a)−図8(b)に示す。
このソフトウェアはコンピュータプログラム、又はその他の電子機器制御プログラム又はオペレーティングシステムとして実現できる。ソフトウェアは、個人に装着する装置、例えば、アクティグラフに常駐させることができ、あるいはPCなどのスタンドアローン装置に常駐させることができる。あるいは、ソフトウェアは間隔を置くか又は連続的にアクティグラフと通信を行うスタンドアローン装置に常駐しても良い。スタンドアローン装置はパソコン、PAL機器、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、eブックその他のハンドヘルド又はウェアラブルコンピュータ(パームOS、ウィンドウズ(登録商標)CE、EPOCなどを搭載するもの、又は3ComのRazorやIBMとIntelを含む共同企業体のブルートゥース(Bluetooth;登録商標)などのコードネームを持つ製品などの次世代機器)、又は個人または人間分析または観察から入力された人間に装着した装置、例えば、アクティグラフなどの機器から信号を受け取る特殊目的の機器であってよい。ソフトウェアの常駐場所により、ソフトウェアは例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードドライブ、ディスク、コンパクトディスク、パンチカード、テープその他のコンピュータによる読み取り可能ネットワーク、コンピュータ、イントラネット又はインターネット、コンピュータその他の上のバーチャルメモリ、光学的記憶装置、磁気記憶装置、および/又はEPROMに記憶できる。或いはまたソフトウェアは、上で述べた各式において変数を考慮して調整および変更できるようにしてもよい。この能力により、ユーザーは経験的知識に基づいて変数を調整し、また変数間の相互関係を知ることもできる。
ソフトウェアがアクティグラフ等の測定装置で実施する場合、当業者には周知のように、ソフトウェアにより、計算で使用される任意の小数はソフトウェアが適切な倍率をかけられた整数に変換される。整数はさらに誤差が最小になるように近似されて、例えばコール−クリプケ(Cole-Kripke)アルゴリズムの重みづけ係数がそれぞれ256、128、128、128、512、128、128となる。線形近似の利用により、ソフトウェアの実施のための二値演算と、それに対応するソフトウェアの実現のためのアセンブリプログラムが単純化される。
ソフトウェアは、活動時間変調子は8ビットの符号なし整数を使用して1時間の工程が24行となるテーブルとして実現される。中間の工程は、15分工程を得るために1時間工程から内挿される。この単純化により、利用できるディスプレーに対して十分な解像度が得られる。利用できるディスプレーの解像度が向上すれば、もっと細かい時間的工程が、テーブルおよび/又は活動時間変調子を再現する内挿法に使用されてもよい。ポインターシステムを使用して、活動時間変調子を計算するための適切なデータを取り込むことができる。非常に多数の要因により、当業者は、乗法的変調を選択して適切なスケールを実現するか、あるいはスピードが問題になるような、それほど複雑ではないがより迅速な評価を必要とする場合は、加法的変調を選択する可能性が高い。加法的変調の主な欠点は、本発明の乗法的変調を使用した場合の誤差が1%であるのに対して誤差が約3%になることである。このシステムは、アクティグラフ等の測定/記録装置が初期化されたときに活動時間関数をアップロードすることにより、余弦テーブルを使用して活動時間関数を各エポックごとに余弦テーブルから計算する場合の、繰り返し計算の負担を軽減することができる。
好適な実施形態はまた、図7(a)に示すように、スタンドアローン装置又は記録装置の付属部品により実現することもできる。スタンドアローン装置は、個人の睡眠/覚醒履歴を記録する装置又はその他の手段から独立している。それに対して、記録装置の付属部品の場合は、個人の睡眠履歴の記録および解析の両方を行う1台の装置を実現するための付属部品を組み込むために、記録装置を改造することが必要となる。
適切なスタンドアローン装置には、物理的な入力接続、例えばキーボード、データ入力装置あるいはアクティグラフのようなデータ収集装置等の入力装置に物理的に接続された入力ポート(入力手段20)が含まれる。あるいは、物理的な接続は、情報ネットワーク上で実現しても良い。あるいは、また、物理的な入力接続は、テレメトリー、電波、赤外線、PCS、ディジタル、携帯電話、光を利用したシステム又はその他類似のシステムを含む無線通信システムにより実現することができる。無線通信システムは、ケーブル/ワイヤ、プラグイン等の物理的な接続の必要性を無くすという利点があり、これは、動く被験者をモニターする場合に特に便利である。データ収集又はデータ入力装置は、個人の過去、現在および/又は予測される睡眠パターンを含む睡眠履歴を与える。入力手段20は情報の初期入力のためのS1と、選択した実施方法によって連続的又は1回だけデータをロードするS2を組み込む。
スタンドアローン装置は、さらに、データ解析機器(解釈手段30)を含む。データ解析機器は、S3−S6bを実行する。解釈手段30は、様々な解析機能を実行することにより、入力データを解析する。解釈手段30は、現在の入力データをそれ以前の最後の入力データと比較して、睡眠から覚醒又は覚醒から睡眠への変化があったかどうかを判定し、もしも変化があれば、時間カウンタを最後の状態、図4(a)のS3とS4aに設定する。解釈手段30は、また、図4(a)のS5で表される入力されたデータを分類して、入力データの成分に応じて図4のS6a−S7dで示される計算のための関数、すなわち、1)覚醒関数、2)睡眠関数、3)遅延関数および4)睡眠惰性関数のうちの少なくとも1つを選択又は生成できるようにする。解釈手段30は、適切にプログラムされた集積回路(IC)によって実現できる。当業者であれば、離散的アナログ回路、ハイブリッドアナログIC又はその他同様の処理素子のようなICと共に、あるいはその代わりに、様々な装置が動作できることを理解するであろう。
スタンドアローン装置は、さらに、計算器(判定手段40)を含む。判定手段40は、解釈手段のICを適切にプログラムすることによって、あるいは別個のプログラムされたICによって実現できる。判定手段40は、図4(b)のS7a−S7dにおいて、解釈手段30により選択された関数を使用する睡眠/覚醒履歴および現在の状態を考慮に入れた認知能力容量を計算する。
解釈手段30と判定手段40を組み合わせて、1つの結合した手段又は装置にすることができる。
スタンドアローン装置はさらに、変調データ列又は好適には活動時間カーブを表す曲線を含む変調データを保存する第1のメモリ60を含む。スタンドアローン装置はさらに、データ列又は時間tに対する認知能力容量Cを表す曲線を生成するためのデータを保存する第2のメモリ50を含む。第1のメモリ60および第2のメモリ50は、当業者に周知の任意のものでよい。第2のメモリ50は、好適には、判定手段40から得られた値をデータ列又は曲線の最後に追加する手段を提供する先入れ先出しメモリである。第1のメモリおよび第2のメモリは組み合わせて、1つのメモリユニットにしてもよい。当業者が理解できるように、本発明をハードウェア又はソフトウェアとして実現するために必要とされる認知能力容量Cおよび認知能力の予測値Eを計算するために必要な様々な中間値を記憶するメモリが存在するであろう。
スタンドアローン装置は、また、別個のICとして、又は先に述べたICの1つと組み合わせて、図4(b)に示すS8−S9を実現するモジュレータ(変調手段70)を含む。変調手段70は、判定手段40で計算された現在の認知能力容量を受け取り、第1のメモリ60に記憶されたデータから活動時間値を計算する。変調手段70は、第1のデータ列又は曲線(認知能力容量)を活動時間値で変調する。好適には、変調は、深夜の後半(終わり)および好適には、最初の睡眠/覚醒状態に関するエポックの数と初期開始時刻とによって決定される初期入力データからの時間の長さに基づくデータ列又はカーブに関する時系列情報のマッチングによって実行される。変調手段70は、認知能力容量の値を記憶する第2のメモリ50が存在する場合、一連の認知能力容量の値を活動時間関数で変調する。
当業者には周知のように、図4(b)に示したS11を実現するには、カウンタ又はその他同様の機能を持つ装置および/又はソフトウェアをスタンドアローン装置内で使用すればよい。
スタンドアローン装置にはまた、メモリに、例えば、先入れ先出しメモリに記憶された変調の結果を表すプロットされた変調曲線、あるいは認知能力の予測値Eを表す変調手段70から選択された時刻での変調曲線上のある点の数値的な表現を表示するディスプレーを含んでもよい。数値的な表現は、自動車の燃料計器と同様の計器の形を取ってもよい。ディスプレーの代わりとして、又はそれに加えて、スタンドアローン装置には、プリンタ又は印刷のために外部装置と通信を行うための通信ポートおよび/又は認知能力の予測値Eの記憶装置を含むことができる。
スタンドアローン装置は、専用のハードウェアを持つ代わりに、ソフトウェアプログラムおよび付随するデータファイルを実行するための記憶スペースと処理能力を備えても良い。この場合、スタンドアローン装置は、デスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、又は類似の計算機器であってよい。ソフトウェアプログラムは、通信ポート又はイントラネットやインターネットのようなコンピュータネットワークを通じて外部ソースから得た睡眠履歴を表すデータの受信を処理して、次に必要な解析とここで述べた方法の処理を実行する。記憶スペースは、少なくとも活動時間カーブおよび可能であれば入力データを保存するコンピュータで読み取り可能な形式の保存でよく、これは、コンピュータのランダムアクセスメモリ(RAM)に保存しても良い。入力データおよびそれにより生成された個人の様々な認知能力レベルを示すデータもまた、RAMで実現されるよりも恒久的なメモリ又は記憶装置に保存しても良い。
別の実施形態では、入力ポート20を改造して、個人の睡眠行為を表す何らかの形の生データを、睡眠の評価を行う前に受け取るようにする。本実施形態では、解釈手段30は、それが行うデータ解析の一部として、生データから睡眠評価を行う。睡眠評価に必要な重みづけ係数のためにテーブルが使用される場合は、その係数を記憶する第3のメモリを使用するが、そうでなければ、睡眠評価機能が暗黙の内に重みづけ係数を含み、第3のメモリは不要である。
さらに別の実施形態は、ある覚醒エポックの後の睡眠エポックの最初のkd数が覚醒エポックに変更されるように、睡眠/覚醒データのフィルタリングを解釈手段30が行うようにすることができる。本発明において、フィルタリングは様々な方法で実現できる。好適な方法は、図4(a)のS3の前に決定工程を追加して、Dswが睡眠エポックであり、しかもt−tLs≦kdであるならば、S3−S6aを飛ばしてS7aを実行するようにすることである。その結果、上記の式6でd(t)で表された決定ルールは省略されて、図4(b)および図8(b)においてS6bとS7dとが不要となる。
当業者には、スタンドアローン装置はインターネット又はその他のコンピュータネットワークに接続されたコンピュータ/ワークステーションを含む広いものであることが理解されるであろう。ユーザーは、睡眠/覚醒履歴をかかるネットワークを通してスタンドアローン装置に送信し、送信されたデータに基づく認知能力の予測値を得る。スタンドアローン装置のインターフェースにより、ユーザーは方法との関連で上述の変数を調整して、変数と認知能力の予測値との関係を知ることができる。好適には、変数の調整可能な範囲は、各変数について上述のそれぞれの範囲である。
睡眠計測能力を持つ測定装置への要素の追加は、上で説明し図7(a)に示したスタンドアローン装置に対するものと同様の要素を持つ。好適には、要素の追加はそれを収納しおよび/または設計された測定装置の一部としてのソフトウェアとして実施するためのスペースをできるだけ小さくするために1つのICに納め、入力手段20は例えば
リード線またはその他の導体となる。ただし要素の追加は1つの電気的要素、例えば1つよりも多くのメモリチップやICを含むことが出来る。要素の追加は認知能力の予測値を、更に解析を行うために遠隔の装置に送信してもよい。
第3の工程を達成するための装置を図7(b)の一部として示す。追加の要素は好適には、キーボード、タッチパッド、ボタンまたは1組のボタン、タッチスクリーンまたは他の類似のメカニズムのような何らかのデータ入力メカニズムを通して手動で供給されるか、または取りつけられた装置によって収集されたデータの解析を通して供給される仕事に関する情報を受け取るための仕事入力手段20’を含む。あるいは仕事入力手段20’は、入力手段20の一部かこれと同様のものであってもよい。好適には、仕事入力手段20’から何を受け取るかに基づいて仕事変調子を計算するための決定手段40’。決定手段40’は好適には、仕事変調子の追加の変調を持つ変調手段70である変調手段70’と通信関係にある。図7(a)との関連で説明した装置のように、図7(b)の様々な要素を1つまたは一連の要素の組み合わせの中に統合することができる。更にまた図7(a)および(b)に示す要素は、直接接続されずに別々の装置に分かれていてもよい。
上記の方法のリアルタイムでの適合を含む上に述べた代替実施形態は、ルーチンを追加して、記録装置の較正のためにボタンを押すように個人に指示を行うことによっても実現できる。個人の反応時間に基づいて、その個人の現在の認知能力のレベルを求め、それに応じて上記の各式に調整を行って、個人の最近の活動が決定された認知能力に導くようにする。
ソフトウェアおよび/またはハードウェアは、リアルタイムで動作および機能することが想定される。本発明の目的のためには、リアルタイムとは入力される睡眠/覚醒データの各エポックに対する認知能力レベルの連続的な流れと解析を表すものと理解される。従ってソフトウェアおよび/またはハードウェアは、個人その他に対して、ソフトウェア又はハードウェアに入力された睡眠/覚醒データの最後に入力されたエポックからのデータに基づいて、現在の認知能力レベルを与える。ほとんどの睡眠評価システムは、解析されているエポックのいずれかの側のエポックからのデータに基づいて睡眠/覚醒の判定を行う。従って、ユーザーに情報を提供する上で遅延が生じる。
当業者であればこの説明から理解できるように、ここで述べる方法によって、個々のエポック又はエポックのグループのいずれからのデータの連続的な流れを受け取ることもできる。時間のいくつかのブロックが入力されると、初期の遷移の後に、最初の数個のエポックが適切な遷移関数によって支配され、非遷移関数において適切な時間の熟睡又は完全な覚醒状態が使用されよう。
本発明の1つの特徴として、睡眠/覚醒データは睡眠から覚醒へ、又は覚醒から睡眠への状態変化が起きる時刻を含むことができる。睡眠/覚醒データはまた、個人の覚醒状態の継続時間と、個人の睡眠状態の継続時間を含むこともできる。予測認知能力曲線を作成するためには、睡眠/覚醒データを個々のエポックの列に外挿および/又は展開すればいい。上で説明したように、あるエポックは、所定の時間の長さを表す。従って睡眠/覚醒データは、通常の時間の単位又はエポック単位で表現できる。例えば、睡眠/覚醒データが10エポックの睡眠と3エポックの覚醒であるならば、認知能力容量の決定においてエポック1から10までが睡眠状態を表し、エポック11から13までが覚醒状態を表すようにすればよい。
本発明のある態様によれば、特定の時刻qにおける認知能力の予測値Eは、時刻qの前又は後の時刻をrとして、基準点としての時刻rでの認知能力の予測値E又は認知能力容量Cを使って求めることができる。この基準点から、時刻qとrとの間で状態に変化があった時点に対する認知能力容量が求められる。
図8(a)−図8(b)に示したように、各工程は好適な実施形態とほぼ同じであるが、覚醒関数と睡眠関数に変更が行われ、その結果、変数の定義が注記したことを除いて好適な実施形態と同じものとなる。以下で説明する式と図8(a)−図8(b)に示した各工程は、認知能力の初期値が認知能力の所望の値よりも時間的に先行する場合のものである。睡眠/覚醒データの各要素は睡眠又は覚醒として分類される。
睡眠/覚醒データが覚醒状態を表しているならば、仕事関数t(t)の影響が求められる。あるいは、覚醒関数wm(t)または睡眠惰性関数i(t)を変調する前に1日の中での時刻関数Mで仕事関数t(t)を変調してもよい。次に2つの関数の内のどちらが適合するかを以下の決定ルールに従って選ぶ。
IFΔt≦ki
THEN Ct=i(t)
ELSE Ct=Wm(t) 式13
ここでΔtは現在の状態の継続時間、すなわちt−tLSを表す。睡眠惰性関数i(t)は、最後の入力データが覚醒状態である場合にのみ期間kiよりも短いか又は等しいので使用される。従って好適な実施形態において使用されたものと同じ睡眠惰性関数i(t)が、
仕事関数t(t)によてモジュレートされた後、この別の実施形態においても使用される。修正された覚醒関数Wm(t)は、個人が認知能力容量の初期的な抑制から回復した後に、その個人が覚醒前に眠っていた時の最後のエポックの認知能力容量レベルに戻るように、曲線が定式化されたときのkiの遅延を睡眠惰性関数i(t)が与えると言うことを、考慮に入れている。この遅延を考慮することにより、以下の式が得られる。
m(t)=Ct-1−kw(Δt−ki) 式14
あるいは、修正された覚醒関数wm(t)は遅延の無いwm(t)が睡眠惰性関数i(t)と交差する点から始まってもよい。覚醒関数wm(t)はどの代替実施形態においても仕事関数t(t)で変調される。
もしも睡眠/覚醒データが睡眠状態を表すならば、下記の決定ルールに従って、2つの関数の内どちらか適切な方が選択される。
IF At≦kd
THEN Ct=d(t)
ELSE Ct=Sm(t) 式15
遅延関数d(t)は、期間がkdよりも短いか又は等しいので、最後の入力データが睡眠状態である場合にのみ使用される。従って好適な実施形態において使用されたものと同じ遅延関数d(t)が、この別の実施形態においても使用される。修正された遅延関数Sm(t)はkdに等しい期間に対して遅延関数を考慮に入れる。遅延関数d(t)を考慮することにより、以下の式が得られる。
m(t)=((CM−(kw*kd))+(100−(100−Ct-1)(1−1/k5)Δt-kd) 式16
ここで式の最初の部分は遅延関数d(t)を表し、2番目の部分は認知能力容量Cの回復を表す(S7c’のf(t)部分)。
睡眠/覚醒データの時間成分の加算は、認知能力容量の計算に関して睡眠/覚醒データの各単位データが取り扱われるとき、あるいは最終的な認知能力容量が活動時間関数m(t)で変調される前に行われる。後者の場合を図8(a)−図8(b)に示す。新しい認知能力容量Ctが計算された後で、現在の単位データが最後の単位データでなければ、本方法は睡眠/覚醒データの次の単位データの処理を繰り返す。最後の単位データの後で、上記の式1に基づいて、また好適な実施形態で詳しく説明したように、認知能力の予測値Eが計算される。
あるいは、仕事関数t(t)は図4(b)に示したのと同様の位置にS9bからS10bまでを通じて移動することにより、覚醒状態の各組に対して行う代わりに、1日の中での時刻関数m(t)と同時に含めてもよい。
ここでも、この方法には、仕事関数要素を除去した、一般形式で示した式1から12に基づくプロセスと計算が含まれることに注意すべきである。実施形態は経験的な知識に応じて該当する変数に関する関数を適用し、その結果として上の説明と図1−図4(b)(ただしこれらに限定されない)で示したようにこれらの式の特定の表現が得られるが、これらは経験的な知識の状態に従って変更又は洗練させることができる。
<産業への応用>
本発明には様々な応用の可能性がある。最も単純な応用では、本発明の方法を使用して、様々な理想的な(すなわち寸断されない)夜間睡眠量の認知能力の予測値Eへの影響を予測することが出来る。他の実際的な応用は、睡眠時無呼吸症のような睡眠障害、または航空機や列車の騒音のような環境の撹乱によって寸断された睡眠をする個人における認知能力を予測するためにこの方法を使用する。別の実際的な応用ではこの方法を使用して、夜間就労シフトのためにスケジュールを変更する個人の認知能力Eを予測する。
別の実施形態では、運転中に衝突/交通事故に巻き込まれた業務用自動車の運転者における認知能力Eを遡及的に予測するために本方法を使用する。この応用では、まず最初にこの方法を使用して、その個人の現在の業務および睡眠/覚醒スケジュールに基づいて、ある時間間隔にわたってその個人の認知能力Eのレベルを予測する。
別の同様の応用は、業務用自動車の運転者に対してある期間にわたる予測認知能力Eを最適化するために、この方法を使用して睡眠および覚醒のスケジュールを変更することである。この例では、先ず運転者の現在の睡眠/覚醒スケジュールに基づいて運転者の予測認知能力Eをモデル化する。運転者の現在の睡眠/覚醒スケジュールは、連邦道路管理局(FHWA)の就業時間規制で許される最大の就業時間の付近で作成される。これらの規制によれば、運転者は最大15時間業務(最大10時間の運転と最大5時間の運転以外の業務)に従事した後に最小で8時間の非就業時間を持つことが許される。運転者はこの終業/非終了サイクルを、累積就業時間が60時間に達するまで続けることができるが、その時点で運転者は連続就業を開始してから7日が経過するまで業務から離れなければならない。現行のFHWA規制下で許される別の就業スケジュールは、12時間就業、12時間非就業というサイクルであるが、これは運転者が非就業の12時間のうち8時間を睡眠にあてることを前提にしている。本発明を利用することにより、ある期間を通じて運転者の認知能力レベルを最大にできるスケジュールを選択できる。
本発明を様々な特定の活動との関連で説明してきたが、本発明には他に多くの用途を持っている。認知能力を予測するこの方法は、個人とグループの生産性を管理するための重要な情報を提供する。例えば軍事作戦を立てる場合、司令官はこの方法を使えば、それまでの睡眠履歴および遂行される義務にもとづいて各兵士の認知能力の現在のレベルおよび予測されるレベルを正確に判定することができる。司令官はまた、想定される睡眠/覚醒スケジュールを入力して、これから従事する任務中の兵士の認知能力を予測することもできる。任務の遂行そのもの全体を通じて、後者の認知能力の予測値(最初は想定される睡眠/覚醒スケジュールおよび義務スケジュールに基づいている)を、実際に得た睡眠および個々の兵士により遂行される仕事に従って更新することができる。将来の認知能力を算出する能力により、例えば認知能力が最適になるように任務前後の睡眠/覚醒スケジュールおよび義務スケジュールを計画し、また決定的な時点で、予測された認知能力が最高を示すであろうと予想される部隊又は複数の部隊の組み合わせを選定することにより、司令官は継続的な作戦行動の間の部隊の能力を最適にすることができる。この方法は個人および部隊の両方のレベルで生産性を最大にする助けとなる。
本発明は多くの職業分野を網羅する様々な商業的な用途において、出力(生産性)を最適化する目的に使用することができる。本発明によれば、客観的な認知能力の予測に基づく基準に合わせて作業を計画し、また就業時間を規制する能力を、管理者に与えるものである。それに対して従来利用されてきた方法は、非就労時間(睡眠/覚醒パターンおよび仕事の遂行を予測する上では比較的弱い指標であり、したがって認知能力を予測する上でも弱い)によるか、あるいは覚醒状態/眠気の予測(これは前述したように常に認知能力に対応するわけではない)を行うことで、就業時間を規制してきた。本発明は仮説的な睡眠/覚醒および義務シナリオにおいて実行することができ、その様なシナリオの下での認知能力の推定を行う。認知能力を最適化することに一般の人々が関心を持つ限り、様々な用途に使用する可能性がある。
本発明はまた、必要および/または希望に応じて個人の睡眠/覚醒サイクルを変更しかつ/あるいは個人の認知能力レベルを最適化または最小化するための薬と組み合わせて使用できる。
本発明はまた粒子群集理論/アルゴリズムの概念と連携して作用することが出来る。粒子群集アルゴリズムは、港を通るコンテナーのスループットを最適化し、あるいは与えられた期間にわたって課題を遂行する作業グループ内の労働者達の利用を最適化するために、日常的に利用されている。応用の一例としては、軍隊の司令官が部隊の任務を計画することがある。
本方法はまた、生物医学的、心理学的、その他(例えば睡眠衛生、光療法など)の治療、あるいは睡眠を改善することが示されている介入法が認知能力に対して及ぼす影響を計測し、評価するためにも利用できる。これらの例としては、明白な睡眠障害、概日リズム障害、その他睡眠の質および/又は長さに影響を与える医学的状態、悪い睡眠衛生状態、時差ぼけ、その他あらゆる睡眠/覚醒問題を抱える患者を含むが、これらに限定されない。現在では睡眠を改善する治療の効果は、夜間の睡眠のポリソムノグラムによるベースライン測定値を表す数値と日中の覚醒度を表す何らかの数値(例えばMSLT、覚醒度維持試験(MWT)、スタンフォード眠気スケール又はカロリンスカ眠気スケール)を比較して判定するが、同じ数値が治療後にも得られる。治療の有効性と、覚醒期間に能力に与える可能性のある影響の両方が、日中覚醒度試験の結果から推定される。例えば連邦航空局は現在、睡眠時無呼吸症と診断された民間パイロットに対して治療を受けることを要求している。その様な治療の後に、MWTの修正バージョンで日中覚醒度試験が行われる。MWT試験の間、パイロットは暗くした部屋の中で座り心地の良い椅子に座らされて、長時間覚醒状態を維持するように指示される。もしもこの眠りを誘うような条件でパイロットが明らかに眠ってしまわないでいられれば、職務に適していると見なされる。ここで推測されるのは、時間的に不連続な時点で覚醒状態を維持できるという最小限の能力が、航空機を安全に操縦できる能力と解釈される(すなわち覚醒状態にあることが認知能力と等価と考えられている)ということである。しかし睡眠剥奪は明白な睡眠をもたらさなくても、認知能力に影響する可能性があり、特に様々な理由によって個人が覚醒状態を維持するように強く動機づけられている可能性のある覚醒度試験においてはそうである。
それに対して本方法によれば、活動時間および仕事の遂行との関連で考慮される睡眠パラメータの測定値から、認知能力を直接推定することができる。治療の有効性を評価する上でこの方法が現行の各方法よりも有利な点は、(1)試験されている患者の動機および動機付けレベルは結果(認知能力の判定)に影響を与えない、(2)この方法は時間的に不連続な、特定の時点での覚醒度を示すのではなく、予想される覚醒期間の全体を通じての認知能力の数値的な特定と予測を可能にする、という点である。従ってこの方法は、特定の時刻にEEGで定義された覚醒状態を維持できる患者の能力に基づいて最小限の「職務適合性」のみを判定するのではなく、ある時間にわたっての認知能力を測定する連続的なスケールを提供するのである。
この方法は、睡眠発作や突発性のCNS過剰傾眠のような睡眠障害を診断するための補助として、臨床的に使用することもできる。同様に重要なことは、各種の睡眠障害の識別にも利用できるということである。後者は治療の過程において極めて重要であり、最終的な治療の有効性は妥当で信頼性のある診断に依存するのである。例えば、睡眠時無呼吸症と睡眠中の周期的な四肢の動きは、日中の認知能力欠如を伴う夜間の睡眠中断(すなわち部分的な睡眠剥奪)によって特徴づけられる。それに対して、睡眠発作や突発性の過剰傾眠は、夜間は見た目には正常な睡眠を取るが、日中の認知能力欠如を伴う状態によって特徴づけられる。後者の2つのグループにおける夜間の見た目には正常な睡眠に基づいて、本発明は比較的正常な認知能力を予測する。従って、予測された認知能力(本発明による)と観察又は測定された認知能力の間の食い違いを利用して、ある種の睡眠障害を他の種類から区別することが可能である。例えば、睡眠発作、突発性の過剰傾眠あるいはその他のCNSに関連した日中の認知能力欠如の原因(明らかな睡眠障害が見られない場合)を、睡眠時無呼吸症、周期的な四肢の動きその他の日中の認知障害の原因(睡眠の障害が明らかな場合)から、区別することができる。
特に好ましい実施形態を挙げて本発明を詳しく説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定するものではない。特に前記教示に鑑みて、当業者であれば本発明に包含される他の実施態様、実施例および変形例をなすことができよう。
当業者であれば、上で述べた好適な実施形態に対して、様々な変更および修正が、本発明の範囲と趣旨から逸脱することなく行えることを、理解するであろう。従って、本発明はここに具体的に述べた他に、添付の請求内容の範囲で実施することができる。
当業者であれば、添付図面を参照すれば、本発明の内容が明白となるであろう。
特に好ましい他の実施形態を含む本発明の概念図である。 図3(a)に示す機能からの出力と活動時間による変調の組み合わせにより予測認知能力を導く様子をグラフィックに示す。 認知能力容量の予測値を計算するための覚醒、睡眠、遅延および睡眠惰性関数を表すブロック図である。 覚醒状態と睡眠状態が認知能力に及ぼす影響を24時間にわたって示すグラフである。 図3(a)の丸で囲んだ図3(b)部分の拡大図であり、認知能力容量に関する遅延関数を示すグラフである。 図3(a)の丸で囲んだ図3(c)部分の拡大図であり、認知能力容量に関する睡眠惰性関数を示すグラフである。 本発明の方法の各工程を示す詳しいフローチャートである。 本発明の方法の各工程を示す詳しいフローチャートである。 40時間の完全に睡眠を剥奪された期間の間、2時間ごとに10分間の精神運動覚醒仕事(PVT)試験を行う間の仕事に対する時間の影響を示す。 別の実施形態の機能的表現を示す。 好適な実施形態に対する構造要素のブロック図である。 別の組の構造要素のブロック図である。 別の実施形態の各工程を示す詳細なフローチャートである。 別の実施形態の各工程を示す詳細なフローチャートである。

Claims (33)

  1. 個人の生理的データから導かれた睡眠/覚醒の履歴と当該個人の仕事情報とを示す受信データ列に基づいてコンピュータ処理を行い、当該個人の認知能力レベルを予測する方法であって、
    (a) 睡眠計測システムで得られた当該個人の少なくとも1つの覚醒状態と少なくとも1つの睡眠状態を表すデータ列を受け取り、
    (b)当該個人の仕事情報を受け取り、
    (c)少なくとも前記受け取った仕事情報に基づいて、当該個人が覚醒している時に仕事をしているあるいは仕事をしていないことの影響を表す関数を用いて仕事値を求め、
    (d)前記データ列に基づいて、現在の状態が覚醒状態か睡眠状態かに応じて認知能力容量への影響を表す関数を選択し、
    (e) 以前の当該個人の認知能力に、前記選択された関数を使用して当該個人の認知能力容量を求め、
    (f)前記認知能力容量を1日の中での時刻の値と前記仕事値によって変調し、
    (g)前記変調された値を、当該個人の認知能力レベルを表すものとして、少なくとも記憶媒体、ディスプレー又は送信器のいずれかに出力することを含んでなる、方法。
  2. 前記各工程(b)ないし(g)を、受信データ列の少なくとも2つのデータに対して繰り返すことを更に含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記工程(c)の関数は、仕事状態の長さ、仕事の複雑さ、仕事の困難さおよび仕事の強度のうち少なくとも1つに基づいて記述される、請求項1又は請求項2記載の方法。
  4. 調整された認知能力レベルを受け取り、
    前記調整された認知能力レベルを当該個人の認知能力として設定し、この認知能力に対して前記各工程(d)から(f)を少なくとも1回繰り返し、かつ
    前記各工程 (d) から (f) を少なくとも1回繰り返した結果予測される当該個人の認知能力レベルを供給することを更に含む、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 1日の中での時刻の値が、24時間の周期を持つ曲線を表す1日の中での時刻に関するデータ列から選択される、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記工程(d)が覚醒関数、睡眠関数および睡眠惰性関数からなる群から関数を選択する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記工程(d)が覚醒関数、睡眠関数、遅延関数および睡眠惰性関数からなる群から関数を選択する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の方法。
  8. (g1) 前記予測された認知能力レベルを記憶し、かつ
    前記各工程(d)から(f)および工程(g1)を少なくとも1回繰り返すことを更に含む、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記各個人の記憶された認知能力レベルの予測値に基づいて曲線をプロットすることを更に含む、請求項8記載の方法。
  10. 前記工程(g)が前記変調された値をネットワーク上で送信することを含む、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の方法。
  11. (d1) なくとも1つの変更された変数を受け取り、かつ
    (d2)前記関数に使われている所定の変数値を、前記受け取った変数値に変更することにより、前記関数を更新する工程を更に含む、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記工程(f)で変調された値を再度1日の中での時刻の値で変調する、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の方法のためのコンピュータで実行可能な命令を記憶したプログラムであって、
    睡眠計測システムを用いて集積された個人の生理データに基づく覚醒状態と睡眠状態とを表すデータ列を用いて、前記コンピュータに、請求項1記載の少なくとも工程(b)から工程(g)を実行させるプログラム。
  14. 請求項13記載のプログラムを記憶したコンピュータで読み取り可能な媒体。
  15. コンピュータを利用して個人の認知能力を予測するための装置であって、
    睡眠計測システムで得られた当該個人の睡眠/覚醒の履歴と当該個人の仕事情報とを示すデータを受け取る受信器と、
    前記受信器に接続され、前記データの少なくとも認知能力を予測しようとする時刻の睡眠/覚醒状態に応じて、睡眠と覚醒の認知能力への効果をモデル化した算出関数を選択するデータ解析器と、
    前記データ解析器に接続され、以前の当該個人の認知能力に前記選択された算出関数を使用して当該個人の認知能力容量を計算する算出器と、
    前記受信器に接続され、前記受け取った現在時刻の睡眠/覚醒の履歴に関連した情報に基づいて、当該個人が覚醒している時に仕事および/または活動を遂行している、または遂行していないことの影響表す仕事値を求める評価器と、
    一日の中での時刻の認知能力への影響を表す変調データを記憶する記憶器と、
    前記記憶器、前記評価器および前記算出器に接続され、前記記憶器から、処理されている一日の中での時刻の認知能力への影響の変調データを読み出し、前記算出器から算出した認知能力容量を読み出し、前記評価器から仕事値を読み出し、前記3つの値を変調して、予測される認知能力を出力する変調器とを有する装置。
  16. 前記変調器に接続され、予測される認知能力を表示させるディスプレーを更に含む、請求項15記載の装置。
  17. 前記変調器に接続され、予測される認知能力を送信する送信器を更に含む、請求項15又は請求項16記載の装置。
  18. 前記変調データが24時間周期での1日の中での時間変化を表す、請求項15ないし請求項17のいずれか1項に記載の装置。
  19. 前記受信器として無線受信機を用いる、請求項15ないし請求項18のいずれか1項に記載の装置。
  20. 前記受信器としてキーボードを用いる、請求項15ないし請求項19のいずれか1項に記載の装置。
  21. 前記変調器に接続され、予測される認知能力を記憶するための先入れ先出しメモリを更に含む、請求項15ないし請求項20のいずれか1項に記載の装置。
  22. 前記受信器に接続されたデータ収集器を用いる、請求項15ないし請求項21のいずれか1項に記載の装置。
  23. 前記データ収集器がポリソムノグラム(多重睡眠計)を含む、請求項22記載の装置。
  24. コンピュータを利用して複数の個人の各々の認知能力レベルをモニターする装置であって、
    各個人に取り付けられた、各個人の少なくとも1つの覚醒状態と少なくとも1つの睡眠状態を表す生理情報を収集する複数のデータ収集器と、
    前記複数のデータ収集器の各々と通信可能な受信器と、
    前記受信器に接続されて、前記複数のデータ収集器の少なくとも1つについて受け取ったデータに応じて個人の認知能力容量への影響を表す算出関数を選択するデータ解析器と、
    前記データ解析器に接続されて、前記複数のデータ収集器の少なくとも1つについて以前の当該個人の認知能力に前記選択された算出関数を使用して当該個人の認知能力容量を計算する算出器と、
    前記受信器に接続されて、前記複数のデータ収集器の少なくとも1つについて前記受け取ったデータに基づいて当該個人が覚醒している時に仕事および/または活動を遂行している、または遂行していないことの影響表す仕事値を求める評価器と、
    変調データを記憶するメモリと、
    前記メモリ、前記評価器および前記算出器とに接続され、前記メモリから処理されている一日の中での時刻の認知能力への影響の変調データを読み出し、前記算出器から算出した認知能力容量を読み出し、前記評価器から仕事値を読み出し、前記3つの値を変調して、各個人の予測される認知能力を出力する変調器とを含んでなる、装置。
  25. 前記変調器に接続された通信ポートを更に含み、前記通信ポートが前記変調器の出力を外部装置に送信する、請求項24記載の装置。
  26. 前記変調データが24時間周期での1日の中での時間変化を表す、請求項24又は請求項25記載の装置。
  27. 前記データ解析器が各時刻の生理情報を睡眠状態か覚醒状態かを記録する睡眠計測システムを含む、請求項24ないし請求項26のいずれか1項に記載の装置。
  28. 前記変調器に接続された先入れ先出しメモリを更に含み、前記先入れ先出しメモリが前記変調器の出力を記憶する、請求項24ないし請求項27のいずれか1項に記載の装置。
  29. 前記データ収集器が少なくとも1つのポリソムノグラムを含む、請求項24ないし請求項28のいずれか1項に記載の装置。
  30. コンピュータを利用して、個人の認知能力レベルを供給する装置であって、
    ポリソムノグラム(多重睡眠計)のデータから求められた少なくとも1つの覚醒状態と少なくとも1つの睡眠状態を持つデータ列を受け取る手段と、
    前記データ列に基づいて、現在が睡眠状態又は覚醒状態かに応じて、個人の認知能力への影響を表す関数を選択する手段と、
    以前の当該個人の認知能力に前記選択された関数を使用して当該個人の認知能力容量を求める手段と、
    1日の中での時刻に関するデータ列を記憶する手段と、
    当該個人の仕事情報を受け取る手段と、
    少なくとも受け取った前記仕事情報に基づいて当該個人が覚醒している時に仕事および/または活動を遂行している、または遂行していないことの影響表す仕事値を求める手段と、
    認知能力容量を、対応する1日の中での時刻の値と仕事値によって変調する手段と、
    前記変調された値を、当該個人の認知能力レベルとして供給する手段とを含んでなることを特徴とする、装置。
  31. 前記選択する手段が覚醒関数、睡眠関数および睡眠惰性関数からなる群から関数を選択する、請求項30記載の装置。
  32. 前記選択する手段が覚醒関数、睡眠関数、遅延関数および睡眠惰性関数からなる群から関数を選択する、請求項30記載の装置。
  33. 記憶された1日の中での時刻の値が24時間周期を持つ曲線を表す、請求項30ないし請求項32のいずれか1項に記載の装置。
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