JP4203144B2 - Xiapとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法 - Google Patents

Xiapとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、XIAPとTAB1との結合に対する阻害物質のスクリーニング方法に関する。また、本発明はTGF-βレセプターとXIAPとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法に関する。さらに本発明は、XIAPとTAB1との結合、又はTGF-βレセプターとXIAPとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法により得られた物質及びその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
TGF-β(形質転換増殖因子-β ; Transforming Growth Factor-β)は、細胞機能の多くの面を制御する多機能因子である。その一つとして、TGF-βは様々な傷害に伴う組織の修復及び再生を司る(Border, W. A. & Noble, N. A., The New England Journal of Medicine (1994) 331, 1286-1292)。
【0003】
慢性化した傷害におけるTGF-β異常産生により、組織の修復、再生のバランスが崩れ病的な線維化が生ずることがある。TGF-β産生のバランスが崩れた病態として肝線維症が知られている。肝臓においてTGF-βは線維化の原因となる細胞外マトリックス蛋白質の産生を亢進させ、細胞外マトリックス蛋白質分解酵素の合成を阻害し、細胞外マトリックス蛋白質分解酵素の阻害物質を誘導することにより、種々の臓器、例えば肝臓の線維症の主要な原因因子として作用することが明らかになっている(Border, W. A. & Noble, N. A., The New England Journal of Medicine (1994) 331, 1286-1292)。
【0004】
その他のTGF-βの作用としては、細胞増殖阻害活性(Moses, H. L. et al., Cell (1990) 63, 245-247)、単球遊走活性(Wahl, S. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1987) 84, 5788-5792)、生理活性物質誘導活性(Wahl, S. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1987) 84, 5788-5792)、βアミロイド蛋白質沈着作用(Wyss-Coray, T. et al., Nature (1997) 389, 603-606)が知られている。
【0005】
TGF-βは、細胞質側にセリン-及びスレオニン-特異的キナーゼドメインを含有する膜貫通蛋白質であるI型及びI I型TGF-β受容体のヘテロマー複合体を介してそのシグナルを伝達する(Wrana, J. L. et al., Nature (1994) 370, 341、Kingsley,D. M. et al., Genes Dev. (1994) 8, 133)。しかしながら、TGF-β受容体から細胞内への下流のシグナル伝達機構は分子レベルにおいて多くは解明されていない。
TGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達に関与する一連の系として、マイトジェン-活性化プロテインキナーゼ(Mitogen-Activated Protein Kinase; MAPK)系が知られている。
【0006】
MAPK系は受容体のシグナルを種々の作用に転換する保存された真核細胞性シグナル伝達系である。MAPK系は3種類のプロテインキナーゼ、すなわちMAPKKK(Mitogen-Activated Protein Kinase Kinase Kinase)、MAPKK(Mitogen-Activated Protein Kinase Kinase)、MAPK(Mitogen-Activated Protein Kinase)を含む。MAPKはMAPKKによるリン酸化で活性化される。MAPKKはMAPKKKによるリン酸化で活性化される(Nishida, E. et al., Trends Biochem. Sci. (1993) 18, 128、Blumer, K. J. et al., Trends Biochem. Sci. (1993) 19, 236、David R. J. et al., Trends Biochem. Sci. (1993) 19, 470、Marchall, C. J. et al., Cell (1995) 80, 179)。
【0007】
TGF-βスーパーファミリーに属する生理活性物質のシグナル伝達系において機能するMAPKKKファミリーの一つであるTAK1(TGF-β-Activated Kinase 1 )はYamaguchi, K.らにより同定された(Yamaguchi, K. et al., Science (1995)270, 2008)。
また、TAK1に結合し、TAK1を活性化するTGF-βのシグナル伝達系に関与する蛋白質であるTAB1(TAK1 Binding Protein 1)がShibuya, H.らにより同定された(Shibuya, H. et al., Science (1996) 272, 1179-1182)。
TAB1はTAK1に結合してTAK1のキナーゼ活性を活性化し、TGF-βのシグナルを伝達することがわかっている。しかし、TAB1によるTAK1の活性化とTGF-βレセプターとを結び付ける分子的作用機構は知られていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、TGF-βのシグナル伝達系において、TGF-βレセプターとTAB1とを結び付ける経路に関与する分子を探索し、かかる分子を利用して、生理活性物質をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の方法により得られる生理活性物質及びその利用を提供することも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、TGF-βのシグナル伝達系において、TGF-βとTAB1とを結び付ける分子として、TAN2 (TAB1 N-terminal binding protein 2)として表示されるX染色体リンクドアポトーシス抑制タンパク(X-linked Inhibitor of Apoptosis Protein; XIAP)を同定し、このXIAPが哺乳動物細胞中でTAB1と会合するだけでなく、TGF-βレセプターとも会合することを確認した。本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、XIAP、TAB1及び被験試料を接触させ、次いでXIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べることにより、XIAPとTAB1との結合を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。TAB1は、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置504位のProからなるアミノ酸配列、又はTAB1の生物学的活性を有し、且つ配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものであってよい。XIAPは、配列番号4に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置497位のSerからなるアミノ酸配列、又はXIAPの生物学的活性を有し、且つ配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものでもよい。TAB1及び/又はXIAPは、他のペプチド又はポリペプチドと融合していてもよい。TAB1又はXIAPは支持体と結合していてもよい。支持体としては、ビーズ、プレートなどを挙げることができる。
【0011】
上記のようなXIAPとTAB1との結合を阻害する物質のスクリーニング方法において、TAB1又はXIAPを標識し、該標識を検出又は測定することによりXIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べてもよい。標識としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質などを挙げることができる。
【0012】
また、上記のようなXIAPとTAB1との結合を阻害する物質のスクリーニング方法において、TAB1に結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べてもよい。この場合、TAB1に結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べてもよい。あるいは、XIAPに結合したTAB1を、TAB1に対する一次抗体又はTAB1と融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べてもよい。この場合、XIAPに結合したTAB1を、TAB1に対する一次抗体又はTAB1と融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べてもよい。一次抗体又は二次抗体は、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質により標識されているとよい。
【0013】
また、本発明は、TAB1及びXIAPを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでTAB1又はXIAPを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。TAB1またはXIAPを介して伝達される生物学的活性はTGF-βの生物学的活性であってもよい。TGF-βの生物学的活性としては、細胞外マトリックス蛋白質産生亢進、細胞増殖阻害、単球遊走、生理活性物質誘導、免疫抑制、βアミロイド蛋白質沈着などを挙げることができる。また、TAB1又はXIAPを介して伝達される生物学的活性は、TAB1又はXIAPの生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量変化であってもよい。レポーター遺伝子としては、 PAI-1、ファイブロネクチン、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲンなどを挙げることができる。
【0014】
さらに本発明は、XIAP、TGF-βタイプIレセプター及び被験試料を接触させ、次いでXIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べることにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。XIAPは、配列番号4に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置497位のSerからなるアミノ酸配列、又はXIAPの生物学的活性を有し、且つ配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものでもよい。TGF-βタイプIレセプターは、配列番号6に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置503位のMetからなるアミノ酸配列、又はTGF-βタイプIレセプターの生物学的活性を有し、且つ配列番号6に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものでもよい。XIAP又はTGF-βタイプIレセプターは、他のペプチド又はポリペプチドと融合していてもよい。XIAP又はTGF-βタイプIレセプターは支持体と結合していてもよい。支持体としては、ビーズ、プレートなどを挙げることができる。
【0015】
上記のようなTGF-βタイプIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法において、XIAP又はTGF-βタイプIレセプターを標識し、該標識を検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。標識としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質などを挙げることができる。
【0016】
また、上記のようなTGF-βタイプIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法において、XIAPに結合したTGF-βタイプIレセプターを、TGF-βタイプIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。この場合、XIAPに結合したTGF-βタイプIレセプターを、TGF-βタイプIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。あるいは、TGF-βタイプIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。この場合、TGF-βタイプIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。一次抗体又は二次抗体は、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質により標識されているとよい。
【0017】
また、本発明は、XIAP及びTGF-βタイプIレセプターを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでXIAP又はTGF-βタイプIレセプターを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定することにより、TGF-βタイプIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。XIAPまたはTGF-βタイプIレセプターを介して伝達される生物学的活性はTGF-βの生物学的活性であってもよい。TGF-βの生物学的活性としては、細胞外マトリックス蛋白質産生亢進、細胞増殖阻害、単球遊走、生理活性物質誘導、免疫抑制、βアミロイド蛋白質沈着などを挙げることができる。XIAP又はTGF-βタイプIレセプターを介して伝達される生物学的活性は、XIAP又はTGF-βタイプIレセプターの生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量変化であってもよい。レポーター遺伝子としては、 PAI-1、ファイブロネクチン、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲンなどを挙げることができる。
【0018】
さらに本発明は、XIAP、TGF-βタイプIIレセプター及び被験試料を接触させ、次いでXIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べることにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。XIAPは、配列番号4に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置497位のSerからなるアミノ酸配列、又はXIAPの生物学的活性を有し、且つ配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものでもよい。TGF-βタイプIIレセプターは、配列番号8に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置567位のLysからなるアミノ酸配列、又はTGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性を有し、且つ配列番号8に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものでもよい。XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターは、他のペプチド又はポリペプチドと融合していてもよい。XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターは支持体と結合していてもよい。支持体としては、ビーズ、プレートなどを挙げることができる。
【0019】
上記のようなTGF-βタイプIIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法において、XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを標識し、該標識を検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。標識としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質などを挙げることができる。
【0020】
また、上記のようなTGF-βタイプIIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法において、XIAPに結合したTGF-βタイプIIレセプターを、TGF-βタイプIIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。この場合、XIAPに結合したTGF-βタイプIIレセプターを、TGF-βタイプIIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。あるいは、TGF-βタイプIIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。この場合、TGF-βタイプIIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べてもよい。一次抗体又は二次抗体は、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質により標識されているとよい。
【0021】
また、本発明は、XIAP及びTGF-βタイプIIレセプターを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでXIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定することにより、TGF-βタイプIIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法を提供する。XIAPまたはTGF-βタイプIIレセプターを介して伝達される生物学的活性はTGF-βの生物学的活性であってもよい。TGF-βの生物学的活性としては、細胞外マトリックス蛋白質産生亢進、細胞増殖阻害、単球遊走、生理活性物質誘導、免疫抑制、βアミロイド蛋白質沈着などを挙げることができる。XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを介して伝達される生物学的活性は、XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量変化であってもよい。レポーター遺伝子としては、 PAI-1、ファイブロネクチン、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲンなどを挙げることができる。
【0022】
本発明は、また、上記のスクリーニング方法により得られた物質を提供する。この物質はTGF-βのシグナル伝達を阻害又は活性化する既知物質の新規な代替物であってもよく、また、XIAPのアゴニストまたはアンタゴニストのいずれであってもよい。
本発明は、また、上記のスクリーニング方法により得られた物質を有効成分として含有する医薬組成物も提供する。この医薬組成物は細胞外マトリックス蛋白質産生亢進作用、細胞増殖阻害作用、単球遊走作用、生理活性物質誘導作用、免疫抑制作用、βアミロイド蛋白質沈着作用などのシグナル伝達が関与している種々の生理作用を抑制又は活性化するために使用することができる。具体的には、肝線維症、肺線維症、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、血管再狭窄、皮膚のケロイド、強皮症、自己免疫疾患及びアルツハイマー病からなる群より選択される少なくとも一つの疾患を予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0023】
また、本発明は、XIAPを有効成分として含有する医薬組成物であって、細胞外マトリックス蛋白質産生亢進、細胞増殖阻害、単球遊走、生理活性物質誘導、免疫抑制及びβアミロイド蛋白質沈着からなる群より選択される少なくとも一つの作用を抑制又は活性化するために使用される前記の医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、XIAPを有効成分として含有する医薬組成物であって、肝線維症、肺線維症、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、血管再狭窄、皮膚のケロイド、強皮症、自己免疫疾患及びアルツハイマー病からなる群より選択される少なくとも一つの疾患を予防及び/又は治療するために使用される前記の医薬組成物を提供する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるTAB1としては、配列番号2に示すアミノ酸配列においてアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置504位のProからなるアミノ酸配列を有し、且つTAB1の生物学的活性を有するTAB1であれば、いかなるものであってよい。TAB1の生物学的活性とは、XIAPに結合する活性であることが本明細書で開示されている。さらに詳しくは、TAB1の生物学的活性とは、XIAPの1位のアミノ酸Metから326位のアミノ酸Glyからなるポリペプチドに結合する活性であることが本明細書で開示されている。しかしながら、本発明においては、TAB1はXIAPに結合する活性を有してさえいればよい。したがって、ここで述べるTAB1の生物学的活性とは、XIAPに対する結合活性であってよい。
【0025】
また、本発明に使用されるTAB1は、TAB1の生物学的活性を有し、且つ配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するTAB1であってよい。より具体的には、本発明に使用されるTAB1は、TAB1の生物学的活性を有する限り、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は20個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸が置換したアミノ酸配列を有していてよい。または、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は86個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸を有していてよい。または、配列番号1に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は30個以下、より好ましくは1又は20個以下のアミノ酸が付加したアミノ酸を有していてよい。本発明に使用されるTAB1はまた、上記アミノ酸の置換、欠失及び/又は付加が同時になされていてもよい。
【0026】
TAB1は、配列番号2において1位のアミノ酸Metから418位のアミノ酸Valまでのアミノ酸配列を有していればその生物学的活性を示すことが明らかになっている。したがって、本発明に使用されるTAB1は、配列番号2において1位のアミノ酸Metから418位のアミノ酸Valまでのアミノ酸配列を有し、かつ419位のアミノ酸Asnから504位のアミノ酸Proまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸残基の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するTAB1であってよい。TAB1は、その生物学的活性有する限り、配列番号2において1位のアミノ酸Metから418位のアミノ酸Valまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するTAB1であってよい。
【0027】
配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたされたアミノ酸配列を有するTAB1として、52位のアミノ酸SerがArgであるTAB1や1位のアミノ酸Metから418位のアミノ酸Valまでのアミノ酸配列を有するTAB1が挙げられる。
【0028】
本発明に使用されるXIAP(X-linked Inhibitor of Apoptosis Protein)としては、配列番号4に示すアミノ酸配列においてアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置497位のSerからなるアミノ酸配列を有し、且つXIAPの生物学的活性を有するXIAPであれば、いかなるものであってよい(Duckett, C. S., et al., EMBO J. (1996) 15, 2685-2694)。XIAPの生物学的活性は、TAB1と結合し、TAB1を介した生物学的活性を伝達することが本明細書で開示されている。また、種々の刺激(紫外線照射、抗Fas抗体刺激、TNFa刺激など)によるカスパーゼ3および7の活性化を直接抑制し(Deveraux, Q.L., et al., Nature (1997) 388, 300-304)、さらにそれらの刺激により誘導されるアポトーシスを抑制する活性であることが明らかになっている(Duckett, C. S., et al., Mol. Cell. Biol. (1998) 18, 608-615)。しかしながら、本発明においては、XIAPはTAB1に結合する活性を有してさえいればよく、XIAPの抗アポトーシス活性を失っているXIAPであってもよい。したがって、ここで述べるXIAPの生物学的活性とは、TAB1に対する結合活性であってよい。
【0029】
XIAPは、配列番号4において1位のアミノ酸Metから326位のアミノ酸Glyまでのアミノ酸配列を有していればその生物学的活性を示すことが明らかになっている。したがって、本発明に使用されるXIAPは、配列番号4において1位のアミノ酸Metから326位のアミノ酸Glyまでのアミノ酸配列を有し、かつ327位のアミノ酸Cysから497位のSerまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するXIAPであってよい。XIAPは、その生物学的活性有する限り、配列番号4において1位のアミノ酸Metから326位のアミノ酸Glyまでのアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものでもよい。
【0030】
また、本発明に使用されるXIAPは、XIAPの生物学的活性を有し、且つ配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するXIAPであってよい。より具体的には、本発明に使用されるXIAPは、XIAPの生物学的活性を有する限り、配列番号4に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は20個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸が置換したアミノ酸配列を有するものでもよい。
【0031】
あるいはまた、XIAPは配列番号4に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は171個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸を有していてよい。または、配列番号4に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は30個以下、より好ましくは1又は20個以下のアミノ酸残基が付加したアミノ酸を有するものでもよい。
【0032】
本発明に使用されるTGF-βタイプIレセプターとしては、配列番号6に示すアミノ酸配列においてアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置503のMetからなるアミノ酸配列を有し、且つTGF-βタイプIレセプターの生物学的活性を有するTGF-βタイプIレセプターであれば、いかなるものであってよい。TGF-βタイプIレセプターの生物学的活性は、TGF-βと結合し、TAB1を介してその生物学的活性を伝達することである。さらに詳しくは、TGF-βとTGF-βタイプIIレセプターが結合した後、TGF-βを介してTGF-βタイプIIレセプターとヘテロ4量体を形成し、TGF-βのシグナルを伝達する活性であることが明らかになっている。しかしながら、本発明においては、TGF-βタイプIレセプターはXIAPに結合する活性を有してさえいればよく、TGF-βタイプIレセプターのTGF-βと結合する活性、TGF-βタイプIIレセプターとヘテロ4量体を形成する活性、又はTGF-βのシグナルを伝達する活性を失っているTGF-βタイプIレセプターであってもよい。したがって、ここで述べるTGF-βタイプIレセプターの生物学的活性とは、XIAPに対する結合活性であってよい。
【0033】
また、本発明に使用されるTGF-βタイプIレセプターは、TGF-βタイプIレセプターの生物学的活性を有し、且つ配列番号6に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するTGF-βタイプIレセプターであってよい。より具体的には、本発明に使用されるTGF-βタイプIレセプターは、TGF-βタイプIレセプターの生物学的活性を有する限り、配列番号6に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は20個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸が置換したアミノ酸配列を有するものでもよい。
【0034】
あるいはまた、TGF-βタイプIレセプターは配列番号6に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は20個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有していてよい。または、配列番号6に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は30個以下、より好ましくは1又は20個以下のアミノ酸が付加したアミノ酸配列を有するものでもよい。
【0035】
本発明に使用されるTGF-βタイプIIレセプターとしては、配列番号8に示すアミノ酸配列においてアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置567のLysからなるアミノ酸配列を有し、且つTGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性を有するTGF-βタイプIIレセプターであれば、いかなるものであってよい。TGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性は、TGF-βと結合し、TGF-βタイプIレセプターを活性化し、TAB1を介してその生物学的活性を伝達することである。さらに詳しくは、TGF-βと結合し、TGF-βタイプIレセプターとヘテロ4量体を形成し、TGF-βタイプIレセプターのキナーゼ活性を活性化し、TGF-βのシグナルを伝達する活性であることが明らかになっている。しかしながら、本発明においては、TGF-βタイプIIレセプターはXIAPに結合する活性を有してさえいればよく、TGF-βタイプIIレセプターのTGF-βと結合する活性、TGF-βタイプIレセプターとヘテロ4量体を形成する活性、TGF-βタイプIレセプターのキナーゼを活性化する活性、又はTGF-βのシグナルを伝達する活性を失っているTGF-βタイプIIレセプターであってもよい。したがって、ここで述べるTGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性とは、XIAPに対する結合活性であってよい。
【0036】
また、本発明に使用されるTGF-βタイプIIレセプターは、TGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性を有し、且つ配列番号8に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するTGF-βタイプIIレセプターであってよい。より具体的には、本発明に使用されるTGF-βタイプIIレセプターは、TGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性を有する限り、配列番号8に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は20個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸が置換したアミノ酸配列を有するものでもよい。
【0037】
あるいはまた、TGF-βタイプIIレセプターは配列番号8に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は20個以下、より好ましくは1又は10個以下のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列を有していてよい。または、配列番号8に示すアミノ酸配列において、1又は2個以上、好ましくは1又は30個以下、より好ましくは1又は20個以下のアミノ酸が付加したアミノ酸配列を有するものでもよい。
【0038】
あるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸残基の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433、 Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413)。
【0039】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターは、由来する種、それらを産生する宿主及び/又は精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖付加の有無や糖鎖付加の位置、糖鎖の構造、リン酸化状態及び/又はジスルフィド結合の有無が異なる。しかしながら、本発明に好適に使用し得る限り、いかなる構造を有するものであってよいが、由来する種としてはヒトが好ましい。
【0040】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターはまた、他のペプチド又はポリペプチドと融合した上記TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターであってよい。これら融合ポリペプチドを作製する方法は、すでに公知の手法を用いることができる。TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの融合に付される他のペプチド又はポリペプチドとしては、本発明に有効に使用される限りいかなるペプチド又はポリペプチドであってよい。例えば、ペプチドとしては、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210)、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α-tubulin の断片、B-tag 、Protein Cの断片等、すでに公知であるペプチドが使用される。また例えば、ポリペプチドとしては、GST(グルタチオン・S・トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β-ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合蛋白質)等が挙げられる。これらは市販されているものを用いることができる。
【0041】
本発明に使用されるTAB1をコードするDNAとしては、配列番号1に示す塩基配列の塩基位置7位の塩基Aから1518位の塩基Gからなる塩基配列が挙げられる。本発明に使用されるXIAPをコードするDNAとしては、配列番号3に示す塩基配列の塩基位置82位の塩基Aから1572位の塩基Tからなる塩基配列が挙げられる。本発明に使用されるTGF-βタイプIレセプターをコードするDNAとしては、配列番号5に示す塩基配列の塩基位置77位の塩基Aから1585位の塩基Gからなる塩基配列が挙げられる。本発明に使用されるTGF-βタイプIIレセプターをコードするDNAとしては、配列番号7に示す塩基配列の塩基位置336位の塩基Aから2036位の塩基Aからなる塩基配列が挙げられる。
【0042】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAとしては、各々配列番号1、3、5又は7に示す塩基配列を有するDNAであれば、いかなる由来のDNAであってよい。このようなDNAとして、例えばゲノミックDNA、cDNA、合成DNAが挙げられる。これらは、種々の細胞、組織又は臓器あるいはヒト以外の種から得られたcDNAライブラリー、ゲノミックライブラリーから得られたDNAであってよいし、それらは市販のDNAライブラリーであってもよい。これらライブラリーに用いられるベクターとしては、プラスミド、バクテリオファージ、YACベクター等いかなるものであってよい。
【0043】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターは、TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAを用いて、後述のように遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え蛋白質として得ることができる。例えば、組換え蛋白質は、本明細書に記載されたTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの遺伝子の塩基配列をそれらを発現する細胞、組織、又は臓器からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させる。本発明には、この組換え蛋白質を用いることができる。
【0044】
具体的には、本発明に使用される蛋白質を発現する細胞、組織、又は臓器から、その遺伝子をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299) 、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159) 等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
【0045】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて遺伝子のcDNAを合成する。cDNAの合成は、 AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、cDNAの合成および増幅を行うにはMarathon cDNA Amplification kit(CLONTECH製)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5′−RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932) を使用することができる。
【0046】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認する。目的とするDNAが得られれば、これを発現ベクターへ組み込む。
【0047】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAとしてはまた、各々配列番号1、3、5又は7に示す塩基配列に対しハイブリダイズし、且つその生物学的活性を有するTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターコードするDNAであってもよい。 TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAがハイブリダイズする条件としては、適度なストリンジェンシー条件であればよい。
【0048】
このようなハイブリダイズ条件としては、例えば低ストリンジェンシーな条件が挙げられる。低ストリンジェンシーな条件としては、例えば42℃、5×SSC、0.1%sodium dodecyl sulfate、50%ホルムアミドにより与えられる洗浄条件である。より好ましくは、高ストリンジェンシーな条件であるとよい。高ストリンジェンシーな条件としては、例えば60℃、0.1×SSC、0.1% sodium dodecyl sulfateにより与えられる洗浄条件である。ある蛋白質をコードする塩基配列に対し、適度な条件でハイブリダイズするDNAがコードする蛋白質がその蛋白質と同じ生物学的活性を有することはすでに知られている。
【0049】
上記配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のアミノ酸Metからアミノ酸位置504位のアミノ酸Proからなるアミノ酸配列を有するヒトTAB1をコードするDNAを含有するプラスミドTABI-f-4を保持する大腸菌はEscherichia coli DH5a(TABI-f-4)と命名され、平成8(1996)年7月19日に工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に寄託番号FERM BP-5599として、ブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0050】
また、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のアミノ酸Metからアミノ酸位置504位のアミノ酸Proからなり、かつ52位のアミノ酸SerがArgである上記ヒトTAB1をコードするDNAを含有するプラスミドpBS-TAB1を保持する大腸菌はEscherichia coli HB101( pBS-TAB1)と命名され、平成8(1996)年4月19日に工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に寄託番号FERM BP-5508として、ブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0051】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAは、種々の細胞、組織又は臓器あるいはヒト以外の種から得られたcDNAライブラリー、ゲノミックライブラリーから得られたDNAであってよいし、それらは市販のDNAライブラリーであってもよい。これらライブラリーに用いられるベクターとしては、プラスミド、バクテリオファージ、YACベクター等いかなるものであってよい。
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAは、以上に述べたDNAを市販のキットや公知の方法によって構築することができる。例えば、制限酵素による消化、リンカーの付加、開始コドン(ATG)及び/又は終始コドン(ATT、TGA又はTAG)の挿入等が挙げられる。
【0052】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの発現ベクターは、本発明に好適に使用される発現ベクターであればいかなる発現ベクターであってよい。発現ベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター、例えばpEF、pCDM8、昆虫細胞由来の発現ベクター、例えばpBacPAK8、植物由来の発現ベクター、例えばpMH1、pMH2、動物ウィルス由来の発現ベクター、例えばpHSV、pMV、酵母由来の発現ベクター、例えばpNV11、枯草菌由来の発現ベクター、例えばpPL608、pKTH50、大腸菌由来の発現ベクター、例えばpGEX、pGEMEX、pMALp2が挙げられる。
【0053】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの発現ベクターには、例えばTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAを、発現ベクターの中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。プロモーター/エンハンサーとしては、哺乳動物由来のプロモーター/エンハンサー、例えばEF1-αプロモーター/エンハンサー、γ-アクチンプロモーター/エンハンサー、昆虫ウィルス由来のプロモーター/エンハンサー、例えば多核体(ポリヘドリン)ウィルスプロモーター/エンハンサー、植物由来のプロモーター/エンハンサー、例えばタバコモザイクウィルスプロモーター/エンハンサー、動物ウィルス由来のプロモーター/エンハンサー、例えばSV40プロモーター/エンハンサー、ヒトCMVプロモーター/エンハンサー、酵母由来のプロモーター/エンハンサー、例えばアルコール脱水素酵素プロモーター/エンハンサー、大腸菌由来のプロモーター/エンハンサー、例えばLacプロモーター/エンハンサー、Trpプロモーター/エンハンサー、Tacプロモーター/エンハンサーが挙げられる。
【0054】
例えば、SV 40プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushimaらの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、分泌のためのシグナル配列、発現させる遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Nature (1098) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Science (1988) 240, 1041-1043)に従えばよい。
【0055】
本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの発現には、発現に用いられる宿主に適したシグナル配列を付加して使用してもよい。シグナル配列としては、例えば分泌蛋白質のシグナル配列が挙げられる。分泌蛋白質のシグナル配列としては、例えば哺乳動物由来分泌蛋白質のシグナル配列、例えばイムノグロブリンのシグナル配列が挙げられる。また分泌蛋白質のシグナル配列としては、大腸菌由来分泌蛋白質のシグナル配列、例えばOmpA、 pelB(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379)等のペリプラズム分泌シグナル配列が挙げられる。
【0056】
このように作製した発現ベクターは、公知の方法により宿主に導入することができる。宿主への導入の方法としては、例えばエレクトロポレーション(EMBO J. (1982) 1, 841-845)、リン酸カルシウム法(Virology (1973) 52, 456-467)、リポソーム法が挙げられる。
複製開始点としては、SV 40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子等を含むことができる。さらに、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucleic Acids Research (1981) 9, r43-r74)。
【0057】
本発明において、組換え蛋白質の製造のために、任意の産生系を使用することができる。組換え蛋白質製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0058】
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えばCHO(J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Vero、(2)両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340)、あるいは(3)昆虫細胞、例えばsf9、sf21、Tn5が知られている。CHO細胞としては、特にDHFR遺伝子を欠損したCHO細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220)やCHO K-1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。
【0059】
植物細胞としては、Nicotiana tabacum 由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギウス属(Aspergillus)属、例えばアスペルギウス・ニガー(Aspergillus niger)が知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli)、枯草菌が知られている。
【0060】
これらの細胞を目的とするDNAにより形質転換し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより組換え蛋白質が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜200時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、撹拌を加える。このように遺伝子を導入した細胞に組換え蛋白質を産生させ、回収する。
【0061】
一方、in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物又は植物に目的とするDNAを導入し、動物又は植物の体内で組換え蛋白質を産生させ、回収する。
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
【0062】
例えば、目的とするDNAをヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。このDNAが挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から組換え蛋白質を得る。トランスジェニックヤギから産生される組換え蛋白質を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702)。
【0063】
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的とするDNAを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の組換え蛋白質を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。
さらに植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とするDNAを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の組換え蛋白質を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
【0064】
これらの動物又は植物に上記のように遺伝子を導入し、動物又は植物の体内で組換え蛋白質を産生させ、回収する。前記のように発現、産生された組換え蛋白質は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される蛋白質の分離、精製は通常使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。
【0065】
例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、蛋白質を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988) 。
【0066】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization : A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996) 。これらのクロマトグラフィーはHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0067】
蛋白質は、公知の方法を用いて濃度を測定することができる。例えば、吸光度の測定又はBradford法を用いればよい。
XIAPとTAB1との結合を阻害する物質のスクリーニング方法においては、XIAP、TAB1及び被験試料を接触させ、次いでXIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べる。
【0068】
また、TGF-βタイプIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法においては、TGF-βタイプIレセプター、XIAP及び被験試料を接触させ、次いでTGF-βタイプIレセプターとXIAPとの結合の形成の有無を調べる。
また、TGF-βタイプIIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法においては、TGF-βタイプIIレセプター、XIAP及び被験試料を接触させ、次いでTGF-βタイプIIレセプターとXIAPとの結合の形成の有無を調べる。
本発明において提供されるスクリーニング系は、in vitroのアッセイ系として行われる。
【0069】
in vitroのアッセイ系の一つの具体例は、非細胞系において行われる。具体的にはTAB1あるいはXIAP又はTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターのいずれか一方を支持体に結合させ、ここにもう一方と被験試料を加え、インキュベートをした後洗浄して支持体に結合した蛋白質に対するもう一方の蛋白質の結合を検出又は測定すればよい。
【0070】
TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターは、それらを固有に発現する細胞、本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAを導入した細胞、本発明に使用されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードするDNAを導入した動物又は植物から産生される蛋白質を、精製した状態であるいは粗精製の状態で使用することができる。
【0071】
精製された又は粗精製された蛋白質(TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプター)のいずれか一つを支持体に結合させる。該蛋白質を支持体に結合させるには、標準的な方法で該蛋白質を支持体に固相化すればよい。蛋白質を結合させる支持体としては、例えば不溶性の多糖類、例えばアガロース、デキストラン、セルロース、合成樹脂、例えばポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等が挙げられる。より具体的にはそれらを原料として製造される市販のビーズ、プレートが用いられる。ビーズの場合、これらが充填されたカラム等を用いてもよい。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)やバイオセンサーチップが挙げられる。
蛋白質と支持体を結合させるには、化学結合、物理的な吸着等を利用する、通常用いられる方法を用いればよい。また、蛋白質を特異的に認識する抗体を予め支持体に結合せしめ、この抗体と蛋白質とを結合させることもできる。さらに、アビジン/ビオチンを介して結合させることができる。
【0072】
TAB1とXIAP、XIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合は、通常緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、Tris緩衝液等が使用される。また、インキュベートの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば4℃〜室温にて1時間〜24時間のインキュベーションが挙げられる。インキュベート後の洗浄は、TAB1とXIAP、XIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば界面活性剤を含む緩衝液が使用される。界面活性剤としては、例えば0.05%Tween 20が使用される。
【0073】
スクリーニングにかける被験試料としては、例えばペプチド、ポリペプチド、合成化合物、微生物発酵物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞紬出物、真核単細胞抽出物又は動物細胞抽出物あるいはそれらのライブラリーが挙げられる。これらの被験試料に含まれる物質はTAB1とXIAP、XIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対し阻害的に作用すると予想される物質である。これらの阻害物質はTAB1に対するXIAPの結合又はXIAPに対するTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を阻害する。これらの阻害物質は、TGF-βのシグナル伝達を抑制あるいは活性化する。
【0074】
これらの被験試料に含まれるTAB1に対するXIAPの結合又はXIAPに対するTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの結合を阻害する物質を選択するには、適切な条件下でインキュベート及び洗浄することにより、特異的な結合と非特異的な結合を分離することができる。そして、本発明に使用されるTAB1に対するXIAPの結合又はXIAPに対するTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの結合状態を評価すればよい。
【0075】
本発明のスクリーニング方法において、被験試料を蛋白質に接触させる群と共にコントロール群を設置してもよい。コントロール群としては、被験試料を含まない陰性コントロール群又はTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの明らかな結合阻害物質を含む陽性コントロール群あるいはその両群をおくことができる。
【0076】
本発明において結合した蛋白質を検出又は測定する際、単に結合した蛋白質を検出するだけでもよいし、又は結合した蛋白質を定量的に測定してもよい。これらの場合、被験試料を含まない陰性コントロール群で得られた結果、被験試料を含む群で得られた結果及び/又は明らかな結合阻害物質を含む陽性コントロール群で得られた結果を比較することにより、目的のTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合阻害物質を検出することができる。
【0077】
また、これらの結果を数値として得、それらの数値を比較することにより、TAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を阻害する物質の活性を定量的に測定することもできる。定量的に測定する場合、被験試料を含まない陰性コントロール群で得られた数値と被験試料を適用した群で得られた数値を比較することにより、目的のTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を阻害する物質を検出することができる。被験試料中に目的のTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を阻害する物質が含まれていれば、得られた数値が減少することにより結合阻害物質を含む試料を決定することができる。
【0078】
また、定量的に測定する場合、TAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を阻害することがわかっている物質を既知量含む陽性コントロール群で得られた数値により作成された標準曲線を元に定量することができる。結合した蛋白質が多い場合、その被験試料に含まれるTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を阻害する物質の活性が低く、一方結合した蛋白質が少ない場合、その被験試料に含まれるTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を阻害する物質の結合阻害活性が強いことが推測される。
【0079】
本発明のTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを使用することができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーは蛋白質―蛋白質間の相互作用を微量の蛋白質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である(例えばBIAcore;Pharmacia製)。したがって、BIAcore等のバイオセンサーを用いることによりTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合を評価することが可能である。
すなわち、TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターのいずれかを固定化したセンサーチップに、もう一方の蛋白質を接触させ、固定化したTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターに結合する蛋白質を共鳴シグナルの変化として検出しようとするものである。
【0080】
具体的には以下のように行えばよい。初めにセンサーチップCM5(Biosensor社)を活性化してTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをセンサーチップ上に固定化する。すなわち、EDC / NHS水溶液(200mM EDC(N-ethyl-N'-(3-dimethylaminopropyl) carbonate hydrochloride), 50mM NHS(N-hydroxysuccinimide))によりセンサーチップを活性化した後、HBSバッファー(10mM HEPES pH7.4, 150mM NaCl, 3.4mM EDTA, 0.05%Tween20)によりセンサーチップを洗浄する。
【0081】
次に HBSバッファーに溶解した適量の相互作用を有する蛋白質をセンサーチップに接触させ、固定化する。 HBSバッファーによりセンサーチップを洗浄後、エタノールアミン溶液(1M ethanolamine hydrochloride, pH8.5)によりセンサーチップ上の残存活性基をブロックする。再び HBSバッファーによりセンサーチップを洗浄し結合評価に用いる。
次にHBSバッファーに溶解した適量の蛋白質を注入する。このときにセンサーチップに固定化されたTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターに結合する相互作用を有する蛋白質の量は共鳴シグナル値の増加として観察される。
【0082】
さらに、上記結合評価系において、TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターに相互作用を有する蛋白質に引き続いて被験試料を注入する。また被験試料を注入する群と共に、コントロール群を設置してもよい。コントロール群としては被験試料を含まない陰性コントロール群又は明らかな結合阻害物質を含む陽性コントロール群あるいはその両群をおくことができる。
結合した蛋白質は共鳴シグナル値の変化量として定量的に測定することができる。この場合、被験試料を含まない陰性コントロール群で得られた結果、被験試料を含む群で得られた結果及び/又は明らかな結合阻害物質を含む陽性コントロール群で得られた結果を比較することにより、目的の結合阻害物質を検出、決定することができる。
【0083】
本発明のTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、いずれかの蛋白質を標識し、結合した蛋白質の標識を検出又は測定することができる。
例えば、前述のスクリーニング方法において、被験試料とともに一方の蛋白質に接触させるもう一方の蛋白質をあらかじめ標識しておき、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその標識により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料と標識したもう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質の標識を検出又は測定すればよい。
【0084】
TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターは、通常知られる方法により標識されることができる。標識物質としては、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光物質、ビオチン/アビジン等が挙げられる。これらの標識物質は市販の標識物質を使用することができる。放射性同位元素しては、例えば32P、33P、 131I、125I、3H、14C、35Sが挙げられる。酵素としては、例えばアルカリフォスファターゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ等が挙げられる。蛍光物質としては、例えばフロオロセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンが挙げられる。これらは市販のものを入手することができ、公知の方法によって標識される。
【0085】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料ともう一方の標識された蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない群(陰性コントロール)及び/又は既知濃度の結合阻害物質を加えた群(陽性コントロール)を置き、これらをインキュベートする。インキュベートの後、洗浄し結合した蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば阻害物質を含む被験試料を決定することができる。
【0086】
本発明のTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、一方の蛋白質を特異的に認識する一次抗体を用いることができる。
【0087】
例えば、前述のスクリーニング方法において、一方の蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質を特異的に認識する一次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質をその蛋白質を特異的に認識する一次抗体により検出又は測定すればよい。一次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0088】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料ともう一方の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない群(陰性コントロール)及び/又は既知濃度の結合阻害物質を加えた群(陽性コントロール)を置き、これらをインキュベートする。
【0089】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質に対する抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄しその蛋白質を特異的に認識する一次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計より検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば阻害物質を含む被験試料を決定することができる。
【0090】
本発明のTAB1とXIAPと、又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターと融合した他のペプチド又はポリペプチドを特異的に認識する一次抗体を用いることができる。
【0091】
例えば、前述のスクリーニング方法において、いずれかの蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチド又は蛋白質を特異的に認識する一次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドを特異的に認識する一次抗体により検出又は測定すればよい。一次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0092】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料と他のペプチド又はポリペプチドと融合したもう一方の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない群(陰性コントロール)及び/又は既知濃度の結合阻害物質を加えた群(陽性コントロール)を置き、これらをインキュベートする。
【0093】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドに対する抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄しその蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドを特異的に認識する一次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば阻害物質を含む被験試料を決定することができる。
【0094】
本発明のTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターを特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体を用いることができる。
【0095】
例えば、前述のスクリーニング方法において、いずれかの蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質を特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させたいずれかの蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質をその蛋白質を特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定すればよい。二次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0096】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料ともう一方の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない群(陰性コントロール)及び/又は既知濃度の結合阻害物質を加えた群(陽性コントロール)を置き、これらをインキュベートする。
【0097】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドに対する一次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで一次抗体を特異的に認識する二次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、その蛋白質を特異的に認識する一次抗体を特異的に認識する二次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば阻害物質を含む被験試料を決定することができる。
【0098】
本発明のTAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する阻害物質のスクリーニング方法において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターと融合した他のペプチド又はポリペプチドを特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体を用いることができる。
【0099】
例えば、前述のスクリーニング方法において、いずれかの蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドを特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドを特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定すればよい。二次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0100】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料と他のペプチド又はポリペプチドと融合したもう一方の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない群(陰性コントロール)及び/又は既知濃度の結合阻害物質を加えた群(陽性コントロール)を置き、これらをインキュベートする。
【0101】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドに対する一次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで一次抗体を特異的に認識する二次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、その蛋白質と融合した他のペプチド又はポリペプチドを特異的に認識する一次抗体を特異的に認識する二次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば阻害物質を含む被験試料を決定することができる。
【0102】
より詳しくは、本発明は特に好ましくはELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)により次のようにして行うことができる。すなわち、他のペプチド又はポリペプチド、例えば6×Hisと融合したXIAPを固相化バッファー(0.1 M NaHCO3、0.02% NaN3、pH9.6)により希釈する。96穴のイムノプレート(Nunc製)の各穴に希釈したこの水溶液を適量加え4℃で一晩インキュベートする。
【0103】
洗浄バッファー(PBS に0.05% Tween20 となるよう調製したもの)で3回各穴を洗浄後、 PBSに溶解した5% BSA(SIGMA 製)溶液200ml を加え、4℃で一晩ブロッキングする。
【0104】
次に洗浄バッファーで3回各穴を洗浄し、希釈バッファー(1% BSA、0.5% Tween20、PBS)で希釈した他のペプチド又はポリペプチド、例えばFLAGと融合したTAB1と被験試料を適量加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで3 mg/mlに希釈したマウス抗FLAG M2抗体(IBI製)を100 ml各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。
【0105】
洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで 1000 倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(ZYMED製)を 100 ml 各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファーで5回各穴を洗浄し、発色溶液(基質バッファー;50 mM NaHCO3、10mM MgCl2、pH9.8に 1 mg/mlの濃度に溶解したp-フェニルフォスフェート;SIGMA製)を 100 ml 各穴に加え、室温で反応させた後に 405 nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Model3550、BIO-RAD 製)を用いて測定する。これらの結果を、陰性コントロール群及び/又は陽性コントロール群で得られた数値と比較すれば阻害物質を含む被験試料を決定することができる。
【0106】
本発明のスクリーニング方法は、High Throughput Screening(HTS)にも使用することができる。具体的には、ブロッキングまでを手作業で行い、その後の反応はロボットによって行うことでオートメーション化し、High Throughput screeningを実現することができる。
すなわち、他のペプチド又はポリペプチド、例えば6×Hisと融合したXIAPを固相化バッファー(0.1 M NaHCO3、0.02% NaN3、pH9.6)により希釈する。96穴のイムノプレート(Nunc製)の各穴に希釈したこの水溶液を適量加え4℃で一晩インキュベートする。
【0107】
洗浄バッファー(PBS に0.05% Tween20 となるよう調製したもの)で3回各穴を洗浄後、 PBSに溶解した5% BSA(SIGMA 製)溶液200 mlを加え、4℃で一晩ブロッキングする。
次に、例えばBiomek2000 HTS system(Beckman製)にブロッキング済みのイムノプレートをセットしてシステムのコントロールプログラムを実行する。この際、分注機としてはBiomek 2000分注機(Beckman製)あるいはMultipipette96穴同時分注器(Sagian製)を用いることでイムノプレート各穴への溶液の分注や溶液の除去を行うことができる。また、イムノプレートの各穴の洗浄にはEL404マイクロプレートウオッシャー(Bio Tek社)を用いることができる。また、吸光度の測定にはSPECTRAmax250プレートリーダー(Molecular Devices製)を用いることができる。
【0108】
プログラムは以下の操作をおこなうよう設定する。すなわち洗浄バッファーで3回各穴を洗浄し、被験試料と希釈バッファー(1% BSA、0.5% Tween20、PBS)で希釈した他のペプチド又はポリペプチド、例えばMBP(マルトース結合蛋白質)と融合したTAB1を適量加える。同時に被験試料を含まない群(陰性コントロール)及び既知濃度の結合阻害物質を加えた群(陽性コントロール)を置き、これらを室温で1時間インキュベートする。
【0109】
洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで5000倍に希釈したウサギ抗MBP抗血清(New England Biolabs製)を100 ml各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで 5000倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(TAGO製)を 100 ml 各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。
【0110】
洗浄バッファーで5回各穴を洗浄し、発色溶液(基質バッファー;50 mM NaHCO3、10mM MgCl2、pH9.8に 1 mg/mlの濃度に溶解したp-ニトロフェニルフォスフェート;SIGMA製)を 100 ml 各穴に加え、室温で反応させた後に 405 nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー、Biomekプレートリーダー(Beckman / Molecular Devices製)を用いて測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば阻害物質を含む被験試料を同定することができる。
【0111】
本発明に使用される抗体として、市販の抗体や市販のキットに含まれる抗体を用いることもできるし、公知の手段を用いて得られるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いることもできる。
モノクローナル抗体は、所望の感作抗原を使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0112】
具体的には、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原は、その由来となる動物種に制限されないが、実際に本発明で使用するペプチド又はポリペプチドの由来となる哺乳動物、例えばヒト、マウス又はラット由来のものが好ましい。これらのうち、特にヒト由来の感作抗原が好ましい。例えば、ヒトTAB1、ヒトXIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターを感作抗原として使用する場合、それらの塩基配列及びアミノ酸配列は本明細書に開示される遺伝子配列を用いて得ることができる。また、ヒトTAB1、ヒトXIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの融合に付される他のペプチドやポリペプチドを感作抗原として用いる場合、それらのペプチドやポリペプチドを化学的に合成するか、遺伝子工学的手法により得ることができる。
【0113】
感作抗原として使用される蛋白質あるいはペプチド又はポリペプチドは、その全長を使用してもよいし、またその断片も用いることができる。断片としては、例えばC末端断片やN末端断片が挙げられる。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用される。
【0114】
げっ歯目の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。ウサギ目の動物としては、例えば、ウサギが使用される。霊長目の動物としては、例えばサルが使用される。サルとしては、狭鼻下目のサル(旧世界ザル)、例えば、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline) や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。このように免疫し、血清中で所望の抗体レベルが上昇するのを常法により確認する。
【0115】
ここで、ポリクローナル抗体を得るには、血清中の所望の抗体レベルが上昇したことを確認した後、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出す。この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としてポリクローナル抗体を含む血清を使用してもよいし、必要に応じこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離してもよい。
【0116】
モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物の血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を取り出し、細胞融合に付せばよい。この際、細胞融合に使用される好ましい免疫細胞として、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞としては、既に公知の種々の細胞株が好適に使用される。
【0117】
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Galfre, G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46) 等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0118】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
【0119】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG溶液を通常、30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
【0120】
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
【0121】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウィルスに感染したヒトリンパ球をin vitroで蛋白質あるいはペプチド又はポリペプチドやそれらの発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、ペプチド又はポリペプチドへの結合活性を有する所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる(特開昭63-17688)。
【0122】
さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となる蛋白質あるいはペプチド又はポリペプチド、それらの発現細胞又はその溶解物を免疫して抗体産生細胞を取得し、これをミエローマ細胞と融合させたハイブリドーマを用いて本発明に使用される蛋白質あるいはペプチド又はポリペプチドに対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO92−03918、WO93−2227、WO94−02602、WO94−25585、WO96−33735およびWO96−34096参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0123】
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に移植して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
ハイブリドーマを用いて抗体を産生する以外に、抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞を癌遺伝子 (oncogene) により不死化させた細胞を用いてもよい。
【0124】
このように得られたモノクローナル抗体はまた、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体として得ることができる。例えば、組換え型抗体は、抗体遺伝子をハイブリドーマ又は抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させる。本発明には、この組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck, C. A. K. and Larrick, J. W., THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照) 。
【0125】
本発明で使用される抗体は、所望の結合活性を有するかぎり、その抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab、F(ab′)2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる。
【0126】
前記のように発現、産生された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。
例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988) 。
【0127】
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose F. F. (Pharmacia) 等が挙げられる。
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization : A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996) 。これらのクロマトグラフィーはHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0128】
上記で得られた抗体の濃度測定又は活性確認は、公知の方法、例えばELISA、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。
上記のように得られた一次抗体又は二次抗体は、通常知られる方法により標識されることができる。標識物質としては、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光物質等が挙げられる。これらの標識物質は市販の標識物質を使用することができる。放射性同位元素しては、例えば32P、33P、 131I、125I、3H、14C、35Sが挙げられる。酵素としては、例えばアルカリフォスファターゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ等が挙げられる。蛍光物質としては、例えばフロオロセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンが挙げられる。これらの標識物質として市販のものを入手して、公知の方法によって標識化を行えばよい。
【0129】
本発明において提供されるスクリーニング系のもう一つの具体例は、細胞を用いたin vitroのアッセイ系において行われる。
TAB1とXIAPとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法においては、TAB1及びXIAPを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでTAB1又はXIAPを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定してもよい。
【0130】
また、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法においては、XIAP及びTGF-βタイプIレセプターを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでXIAP又はTGF-βタイプIレセプターを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定してもよい。
また、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合を阻害する物質のスクリーニング方法においては、XIAP及びTGF-βタイプIIレセプターを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでXIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定してもよい。
【0131】
上記の方法において、TAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターは使用する細胞内において発現される。後述の実施例において、TAB1とXIAPが結合することによりTAB1及びTAK1を介した生物学的活性を増強することが明らかになった。また、XIAPとTGF-βタイプI及びタイプIIレセプターが結合することが明らかになった。したがって、TAB1とXIAP又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの結合に対する阻害物質によりXIAPの生物学的活性を介したシグナル伝達が阻害される。TAB1及びTGF-βレセプターを介してTGF-βの生物学的活性を伝達することがすでに知られている。したがって、TAB1とXIAP又はTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとXIAPとの結合を阻害し、XIAPを介したTGF-βのシグナル伝達を阻害することにより、TGF-βの生物学的活性が阻害される。
【0132】
TAB1とXIAP及びTGF-βタイプI及びタイプIIレセプターを発現する細胞は、好ましくは天然にこれら全てを発現しない細胞にTAB1とXIAP及びTGF-βタイプI及びタイプIIレセプターをコードするDNAを導入することにより作製することができる。また、TGF-βタイプI及びタイプIIレセプターを発現する細胞にTAB1をコードする遺伝子とXIAPを発現する遺伝子を通常用いられる方法により導入すればよい。
【0133】
また、TAB1及び/又はXIAP及び/又はTGF-βタイプI及びタイプIIレセプターを発現する細胞は、遺伝子工学的に作製することができる。例えば、TGF-βタイプI及びタイプIIレセプターを発現する細胞にTAB1をコードする遺伝子を通常用いられる方法により導入すればよい。あるいは、TGF-βタイプI及びタイプIIレセプターを発現しない細胞にTAB1又はTAB1とXIAPをコードする遺伝子を通常用いられる方法により導入すればよい。後述の実施例において、XIAPを介してTGF-βの生物学的活性が伝達されることから、TAB1とXIAP及びTGF-βタイプI及びタイプIIレセプターとを介したTGF-βのシグナル伝達を検出又は測定することが可能となる。
TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターをコードする遺伝子は本明細書に前記した方法で得ることができる。
【0134】
TAB1、XIAP及び/又はTGF-βレセプター又はTAB1及びTGF-βレセプターを発現する細胞は本発明に使用し得る限りいかなる細胞を用いることができる。本発明に使用し得る細胞としては、原核細胞と真核細胞が挙げられる。原核細胞としては、細菌細胞等が挙げられる。真核細胞としては、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞等が挙げられる。
TGF-βの生物学的活性は、細胞外マトリックス蛋白質産生亢進作用、細胞増殖阻害作用、単球遊走作用、生理活性物質誘導作用、免疫抑制作用、βアミロイド蛋白質沈着作用等である。したがって、TGF-βの生物学的活性を検出するにはこれらの作用を検出又は測定すればよい。
【0135】
TGF-βの生物学的活性を検出するためにこれらの作用を検出又は測定するためには、これまでにこれらの作用を発現することが知られている細胞株等を用いることができる。例えば、細胞外マトリックス蛋白質産生亢進作用を検出又は測定するには、ヒト線維肉腫細胞株HT1080細胞等を用いることができる。細胞増殖阻害作用を検出又は測定するには、ミンク肺上皮細胞株Mv1Lu細胞等を用いることができる。単球遊走作用を検出又は測定するには、単核球等を用いることができる。生理活性物質誘導作用を検出又は測定するには、単核球等を用いることができる。免疫抑制作用を検出又は測定するには、単核球等を用いることができる。そして、βアミロイド蛋白質沈着作用を検出又は測定するには、TGF-βとβアミロイドを過剰発現するトランスジェニックマウス(由来の初代培養細胞)を用いることができる。
【0136】
これらの細胞株に、TAB1、XIAP又はXIAPとTAB1、TGF-βタイプI及び/又はタイプIIレセプターをコードする遺伝子を導入し、被験試料を加え、TGF-βの生物学的活性を反映した作用を検出又は測定すればよい。
被験試料の導入及び接触は、被験試料を細胞培養液中へ添加することで行えばよい。
【0137】
TAB1を介したシグナル伝達は、TAB1の生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量増加によって検出及び/又は測定することができる。TAB1の生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子としては、PAI-1、ファイブロネクチン、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲンを使用することができる。レポーター遺伝子として、例えばファイブロネクチンを使用する場合、その発現量を検出及び/又は測定するためには、ノーザン解析を行えばよい。
【0138】
細胞で発現されるTAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターは他のポリペプチドとの融合蛋白質であってよい。 TAB1、XIAP、TGF-βタイプI又はタイプIIレセプターと融合に付される他のポリペプチドとは、本発明のスクリーニング方法で使用されうる限りいかなるポリペプチドであってよいが、好ましくは転写調節因子である。
【0139】
例えば、DNAに結合してあるレポーター遺伝子の転写を活性化することが知られているヘテロダイマーからなる転写調節因子の各々のサブユニットとTAB1及びXIAPを融合させたDNAを構築し、それらを発現ベクターに含めて細胞に導入する。TAB1とXIAPとの結合を阻害する物質が被験試料に含まれていない場合、TAB1とXIAPが融合したサブユニットがヘテロダイマーを形成し、そしてそのヘテロダイマーからなる転写調節因子がDNAに結合してレポーター遺伝子が活性化する。また、TAB1とXIAPとの結合を阻害する物質が被験試料に含まれている場合、TAB1とXIAPとの結合が阻害され、その結果転写調節因子のサブユニットがヘテロダイマーを形成できず、レポーター遺伝子が活性化しない。レポーター遺伝子の発現量の変化を調べることにより、目的の阻害物質を検出又は測定することができる。このような系においてレポーター遺伝子の発現量の変化を調べる場合、two hybrid system(Fields, S., and Sternglanz, R., Trends. Genet. (1994) 10, 286-292)を使用することができる。
【0140】
具体的には、次のようにすればよい。すなわち、TAB1をコードする遺伝子とLexAのDNA結合ドメインをコードする遺伝子とを連結し発現ベクターを作製する。全長又は1位から418位からなるTAB1をコードする遺伝子を酵母ツーハイブリッド発現プラスミドpBTM116(Vojtek, A.B., et al., Cell (1993) 74, 205-214)にフレームが一致するように挿入し、発現プラスミドを構築する。
【0141】
次に、全長もしくは配列番号4において1位から326位のアミノ酸からなるXIAPをコードする遺伝子とGAL4転写活性化ドメインをコードする遺伝子とを連結せしめることにより発現ベクターを作製する。XIAPをコードする遺伝子は酵母ツーハイブリッド発現プラスミドpGAD10(CLONTECH製)にフレームが一致するように挿入することで構築できる。
【0142】
LexA結合モチーフが存在するプロモーターにより転写が調節されるHIS3遺伝子を組み込んだ酵母L40株を各ツーハイブリッド発現プラスミドを用いて形質転換した後、ヒスチジン不含合成培地上でインキュベートするとタンパクの相互作用が認められたときのみ酵母の生育が観察される。このように、形質転換体の生育程度によりレポーター遺伝子の発現量の増加を調べることができ、TAB1とXIAPとの結合に対する阻害物質をスクリーニングすることができる。
【0143】
また、Mv1Lu細胞においてはTGF-β1の刺激によりPAI-1(Plasminogen activator inhibitor type1)の発現が上昇する。XIAPとTAB1及び/又はTAK1をMv1Lu細胞で強制発現させ、TGF-β1 刺激によるPAI-1の発現への影響を検討すればよい。XIAP発現ベクター、TAB1及び/又はTAK1発現ベクターはpCOS1のEcoRIならびにNotI制限酵素部位にXIAP、TAB1及び/又はTAK1をコードする遺伝子を挿入し、それぞれ発現プラスミドを構築すればよい。
【0144】
Mv1Lu細胞に各発現プラスミドを導入した細胞及び挿入遺伝子を含まないpCOS1を導入したコントロール細胞にPAI-1遺伝子由来のTGF-β応答性エレメントによって制御されるルシフェラーゼ遺伝子を含むレポーター遺伝子構築物(p3TP-Lux;Carcamo, J. et al., Mol. Cell. Biol., (1994) 14, 3810-3821)を導入し、それぞれ10ng/mlのTGF-β1またはTGF-β1を含まない培地中で培養する。その細胞抽出物中のルシフェラーゼ活性を測定する。
【0145】
被験試料を加えない細胞では、TGF-β1添加によりルシフェラーゼ活性は増加するのに対し、被験試料を加えた細胞においてはルシフェラーゼ活性が増加しない。すなわち、被験試料に含まれるTAB1とXIAPとの結合に対する阻害物質がTGF-β1刺激によるPAI-1の発現量増加を阻害する。このようにして、レポーター遺伝子の発現量の増加を調べることができ、TAB1とXIAPとの結合に対する阻害物質をスクリーニングすることができる。
【0146】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られるTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する結合阻害物質は、スクリーニング方法を用いて被験化合物、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、微生物発酵生産物、海洋生物抽出液、植物抽出液、細胞抽出液、動物組織抽出液をスクリーニングすることにより得ることができる。これらの被験化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0147】
これらの結合阻害物質は、TAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI及び/又はタイプIIレセプターとの結合を阻害する化合物である。本発明のスクリーニング方法を用いて得られるTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI及び/又はタイプIIレセプターとの結合に対する結合阻害物質の構造式の一部を、付加、欠失あるいは置換により変換される化合物も本発明のスクリーニング方法を用いて得られるTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI及び/又はタイプIIレセプターとの結合に対する結合阻害物質に含まれる。
【0148】
本発明のスクリーニング方法により得られたTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する結合阻害物質は、TGF-βのシグナル伝達を活性化する物質でも有り得るし、又はTGF-βのシグナル伝達を抑制する物質でも有り得る。TGF-βは、細胞外マトリックス蛋白質産生亢進作用、細胞増殖阻害作用、単球遊走作用、生理活性物質誘導作用、免疫抑制作用を有することが知られている。TGF-βレセプターとXIAP及びTAB1は各々が結合することにより、TGF-βのシグナル伝達系を担う。したがって、本発明のスクリーニング方法により得られたTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合阻害物質はTGF-βのシグナル伝達を活性化あるいは抑制する物質として得ることができる。
【0149】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られるTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する結合阻害物質をヒトや哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーの医薬として使用する場合、通常知られる方法に従って実施することができる。
【0150】
例えば必要に応じてカプセル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えばTAB1とXIAP又はTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターとの結合に対する結合阻害物質を生理学的に認められる単体、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、吸着防止剤とともに一般に認められた製剤に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0151】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、HSA(ヒト血清アルブミン)、結晶性セルロース、アルギン酸、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖、乳糖が用いられる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80TM、HCO−50、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン、ベンジルアルコール、フェノール、と併用してもよい。
【0152】
TAB1とXIAP又はTGF-βタイプI又はタイプIIレセプターの結合に対する結合阻害物質の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
以下に実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0153】
【実施例】
TGF-βシグナル伝達に関与するTAB1結合分子XIAPの同定ならびにその解析
実施例1 TAB1結合分子XIAPの単離
TGF-βスーパーファミリーに属する各因子は、細胞の増殖、分化および形態形成において多様な活性を発揮する。TGF-βスーパーファミリーに属する各因子は、I型およびII型Ser/Thrキナーゼレセプターからなるヘテロマーのレセプター複合体を介してシグナルを伝達する。リガンドがII型レセプターに結合した後、II型レセプターがI型レセプターをリン酸化し、I型レセプターが活性化されシグナルを伝える(Wrana, J.L., et al., Nature, 370, 341-347, 1994)。
【0154】
最近、TGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達経路において機能する2つの蛋白質、TAK1(Yamaguchi, K., et al., Science, 270, 2008-2011, 1995)およびTAB1が同定された(Shibuya, H., et al., Science, 272, 1179-1182, 1996)。TAK1はMAPキナーゼキナーゼキナーゼ(MAPKKK)ファミリーのメンバーであり、TAB1はTAK1の活性化因子として機能する。
【0155】
しかし、TGF-βレセプターとTAK1の活性化とを結び付ける作用機序はなお不明であり、さらに別のシグナル伝達分子が関与していることが推察される。TAB1のC末端の68アミノ酸部分[TAB1(437-504)]は、TAK1に結合しこれを活性化するのに十分であることより(Shibuya, H., et al., Science, 272, 1179 -1182, 1996)、TAB1のN末端領域は他のシグナル伝達系の構成因子と相互作用し、シグナル伝達を調節している可能性が考えられる。さらにTAB1のC末端のTAK1結合ドメインを欠くトランケート型TAB1[TAB1(1-418)]は、TGF-β応答のドミナントネガティブインヒビターとして機能し、TGF-β誘導遺伝子発現およびTAK1活性化を阻害することが示された(Shibuya H., et al., Science, 272, 1179-1182, 1996; Shirakabe, K., et al., J. Biol. Chem. 272, 8141-8144, 1997)。従って、TAB1のN末端領域は蛋白質-蛋白質相互作用を介してTGF-βのシグナル伝達に関与していることが考えられる。
【0156】
そこでTGF-βのシグナル伝達経路において、TAB1-TAK1の上流で機能する蛋白質を同定するため、酵母のツーハイブリッド法を用いてTAB1と相互作用する分子を単離した。C末端を欠いたTAB1(1-418)をベイトとして用いて、ヒト脳cDNAライブラリー(CLONTECH製)をスクリーニングした。すなわち、TAB1(1-418)発現ベクターはLexAのDNA結合ドメイン(DBD)をコードする遺伝子を含有する発現ベクターpBTM116(Vojtek, A.B., et al., Cell, 74, 205-214, 1993)にフレームが一致するようにTAB1(1-418)をコードする遺伝子を挿入することにより構築し、またヒト脳cDNAライブラリーはGAL4転写活性化ドメイン(GAD)との融合タンパクとして発現するように構築されている。これらTAB1(1-418)発現ベクターならびに1×106個クローンを含むcDNAライブラリーを用いて酵母L40株を形質転換し、ヒスチヂン欠損培地上で培養した。L40株はLexA結合部位を含むプロモーターの下流にHIS3遺伝子を含有し、2種の分子の相互作用が認められた場合のみヒスチヂンを含まない培地上で生育でき、その結果15個の陽性クローンを得た。これらの15個のクローンのうち、5個はIAPファミリーに属するXIAP(MIHAまたはILPとしても知られている(Listen, P., et al., Nature 379, 349-353, 1996; Uren, A.G., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 4974-4978, 1996; Duckett, C.S., et al., EMBO J. 15, 2685 1996)と一致した。
【0157】
実施例2 TAB1とIAPタンパクとの結合特異性の確認
IAP蛋白質ははじめにバキュロウィルスにおいて同定され、進化過程において真核細胞の間で保存されており、N末端に特徴的なバキュロウィルスIAPリピート(BIR)およびC末端にRINGジンクフィンガードメインを含む。動物細胞のIAP蛋白質としてはXIAPの他にc-IAP1、c-IAP2が知られており、それら全てに3個のBIRモチーフおよび1個のRINGフィンガーモチーフが存在する(Clem, R.J and Duckett, C.S. TIBTECH, 7, 337-339, 1997)(図1)。c-IAP1およびc-IAP2は、73%のアミノ酸の同一性を有するのに対し、XIAPはc-IAP1またはc-IAP2のいずれかに対しても43%程度の同一性を示すに過ぎない。またc-IAP1およびc-IAP2は、BIRモチーフを介して腫瘍壊死因子(TNF)レセプター結合因子1(TRAF1)およびTRAF2と結合することが示されたが、XIAPはいずれとも相互作用しない(Rothe, M., et al., Cell, 83, 1243-1252 1995; Roy, N., et al., EMBO J., 16, 6914-6925, 1997)。そこで、TAB1とIAPタンパクとの結合特異性をツーハイブリッド法を用いて明らかにした。
【0158】
TAB1発現ベクターとしてGAL4の転写活性化ドメイン(GAD)と融合タンパクとして発現するようなpGAD-TAB1(Shibuya, H., et al., Science, 272, 1179-1181, 1996)を用い、さらにc-IAP1(MIHB)、c-IAP2(MIHC)、およびXIAP(MIHA)とDNA結合ドメイン(DBD)との融合タンパクの発現ベクター(Uren, A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 4974-4978, 1996)を用いた。pGAD-TAB1といずれかのIAP発現ベクターで酵母HF7c株を形質転換し、ヒスチヂン欠損培地上での生育を調べることで、それぞれの相互作用の有無を確かめた。
【0159】
その結果、TAB1とXIAPそれぞれの発現ベクターで形質転換した酵母のみヒスチヂン欠損培地上で生育し、TAB1とXIAPとの相互作用が認められた。しかしながら、TAB1とc-IAP1またはc-IAP2とは相互作用が認められなかった(図2)。
したがって、TAB1はXIAPとのみ特異的に相互作用することが示された。また、ツーハイブリッドスクリーニングにおいて単離されたクローンの中にC末端RINGフィンガードメインを欠損していたXIAP(1-326)が認められたことより、XIAPのN末端領域、恐らくBIRモチーフを介してTAB1の相互作用することが示唆された。また同様にc-IAP1およびc-IAP2はそれらのN末端BIRモチーフを介してTRAF1およびTRAF2と会合することが知られており、IAP蛋白質のBIRドメインの間に機能的な差異があることを示唆している。以上、BIRモチーフはIAPを介したシグナル伝達を調節するうえで、恐らく重要な役割を果たしていると考えられる。
【0160】
実施例3 動物細胞におけるTAB1とXIAPの相互作用
次に、動物細胞においてもXIAPがTAB1と相互作用し得るか否かを調べた。N末端にFlagタグ(配列番号9)とTAB1の融合タンパク(Flag-TAB1)発現ベクターは、全長のTAB1をコードするcDNAをベクターpFLAG-CMV-2(Kodak製)に挿入することにより、構築した。また、N末端にMycタグ(配列番号10)が融合したXIAP(Myc-XIAP)発現ベクターは、全長のXIAPをコードするcDNAをベクターpCS2MT(Rupp, R.A. et al., Genes Dev. (1994) 8, 1311-1323)に挿入することにより、構築した。Myc-XIAPおよびFlag-TAB1発現ベクターをそれぞれヒト胚腎臓由来細胞株293細胞に導入し、それぞれの融合タンパクを一過的に発現させた。次に、この細胞より細胞抽出物を調製し、抗Flagモノクローナル抗体M2(Kodak製)を用いて免疫沈降させた。免疫複合体の洗浄後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、PVDF膜に転写した。免疫沈降物に含まれるMyc-XIAPは抗Mycモノクローナル抗体9E10(Boehringer Mannheim製)を用いて検出した。Myc-XIAP及びFlag-TAB1の発現はそれぞれ、細胞抽出物を直接9E10抗体でイムノブロット、ならびにM2抗体による免疫沈降物をM2抗体でイムノブロットすることで確認した。その結果、XIAPはTAB1と共沈し、酵母と同様に動物細胞においてもXIAPはTAB1と相互作用することが明らかになった(図3)。
【0161】
実施例4 XIAPとTGF-βレセプターとの相互作用の確認
TGF-βのシグナル伝達は、ヘテロマー複合体を形成することができるTGF-βのI型(TβR-I)およびII型(TβR-II)レセプターによって媒介されることが知られており、XIAPがこれらTGF-βレセプターと会合し得るか否かを調べた。インフルエンザ凝集素(HA)タグが融合したTβR-I(HA-TβR-I )(Hoodless, P.A., Cell, 85, 489-500, 1996)、Mycタグと融合したTβR-II(Myc-TβR-II)(Chen, R.H., et al., Nature, 377, 548-552, 1995)及び/又はXIAPをコードする発現ベクターを、293細胞に導入し、それぞれのタンパクを一過的に発現させた後、3ng/mlのヒトTGF-β1を含む、又は含まない培地で10分間処理した。これらの細胞より細胞抽出物を調製し、XIAPに対する抗体(X)、又はコントロールマウスIgG(C)を用いて免疫沈降を行った。なお、XIAPに対するモノクローナル抗体は、全長のXIAPとグルタチオン-S-トランスフェラーゼとの融合蛋白質を免疫して作製した。免疫複合体は洗浄後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動をにより分離した。これをPVDF膜に転写し、次いで、抗HAポリクローナル抗体Y11(Santa Cruz製)および抗Myc抗体9E11を用いてイムノブロットし、それぞれ共沈したHA-TβRI及びTβRIIを検出した。また、細胞抽出物を直接イムノブロッティングし、それぞれのタンパクの発現の有無の確認を行った。XIAP発現ベクターの非存在下では、XIAPとTGF-βレセプターの間の相互作用は全く検出されなかった。それに対し、XIAP発現ベクターを導入した細胞においては、TβR-IおよびTβR-IIがXIAPと共沈することが明らかに検出できたが、TGF-βで処理した細胞と処理しなかった細胞の間では、相違は全く認められなかった(図4)。したがって、過剰発現条件下では、XIAPは上記TGF-βレセプター複合体と構成的に相互作用することが考えられた。また、以上の結果よりXIAPはTGF-βレセプターとTAB1-TAK1と結び付け、TGF-βシグナル伝達経路に関与している可能性が考えられた。
【0162】
実施例5 TGF-βシグナル伝達系におけるXIAPの影響についての検討
プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)遺伝子プロモーター領域由来のTGF-β応答性エレメントによって制御されるルシフェラーゼ遺伝子を含むレポーター遺伝子構築物(p3TP-Lux)(Carcamo, J., et al., Mol. Cell. Biol., 14, 3810-3821, 1994)を用いて動物細胞におけるTGF-βシグナル伝達に及ぼすXIAPの影響を検討した。
【0163】
初めに、p3TP-LuxとTAK1、TAB1及びXIAPの発現ベクターを種々の組合せでミンク肺上皮細胞株Mv1Lu細胞に導入した。なお、cDNAを含まない空の発現ベクターによりトランスフェクションに用いる総DNA量を5mgと一定にした。次いで、これらの細胞を2ng/mlのヒトTGF-β1存在下、又は非存在下20時間培養した。その後、細胞抽出物を調製し、その中に含まれるルシフェラーゼ活性を測定した。なお、各実験のトランスフェクション効率はβ-アクチンプロモーターの下流にLacZの遺伝子を連結した発現ベクター(Act-LacZ)のβガラクトシダーゼの発現量により標準化した。
【0164】
Mv1Lu細胞においてはTGF-βの非存在下では基礎レベルの低いルシフェラーゼ活性が認められるのみであり、TGF-βの添加によって強力にルシフェラーゼ活性が誘導された。また、TAB1およびXIAP発現ベクターを導入してもp3TP-Luxからの転写レベルはMv1Lu細胞と何ら変化は認められなかった。それに対し、TAK1とTAB1またはXIAP発現ベクターを同時に導入した細胞では、TGF-β非存在下でのルシフェラーゼ活性の上昇が確認された。さらに、TAK1、TAB1およびXIAPと同時発現させると、TGF-β非依存的に強いルシフェラーゼを誘導した(図5)。さらに、ヒト皮膚ケラチノサイト細胞株HaCat細胞においても、同様なリガンド非依存的応答が明らかに認められた。
【0165】
次に、TβR-Iを欠損したMv1Lu由来のR-1B/L17細胞(Carcamo, J., et al., Mol. Cell. Biol., 14, 3810-3821, 1994)におけるXIAPのTGF-βシグナル伝達に及ぼす効果を検討した。上述のようにp3TP-Luxと各発現プラスミドをR-1B/L17細胞に導入し、それらのルシフェラーゼ活性を測定した。初めに、R-1B/L17細胞に活性型又は非活性型TβR-Iを発現させ、それらの細胞におけるルシフェラーゼ活性を測定した。TβR-Iの204位のThrをAspに置換した変異体TβR-I (T204D)は構成的にキナーゼ活性を示し、TGF-β非存在下でもそのシグナルを伝達できることが知られており(Weiser, R., et al., EMBO J., 14, 2199-2208, 1995)、R-1B/L17細胞にTβR-I (T204D)発現ベクターを導入し、一過的にTβR-I (T204D)を発現させると、p3TP-Luxレポーター遺伝子の転写を誘導し、ルシフェラーゼ活性の増強が認められた(図6A)。また、TβR-Iの232位のLysをArgに置換した変異体TβR-I (K232R)はキナーゼ活性を示さず(Weiser, R., et al., EMBO J., 14, 2199-2208, 1995)、TβR-I (K232R)発現ベクターを導入しても(図6KR)、空の発現ベクターを導入した場合(図6V)と同レベルのルシフェラーゼ活性を示すのみであった。このように、TβR-Iを欠損したR-1B/L17細胞でも人為的にシグナルを導入することで、TGF-βのシグナルを伝達することが可能である。次に、TAK1およびTAB1とともにXIAP発現ベクターを導入した結果、これらの蛋白質を同時に発現させると3TPのプロモーター活性を誘導することが明らかとなった。以上の結果は、XIAPがTGF-β応答の正の調節因子として機能することを示唆している。
【0166】
以上、TGF-βレセプター及びTAB1との結合分子としてXIAPを同定した。以上の結果は、XIAPはTGF-βレセプターへのTAB1のリクルートを促進するアダプター蛋白質として働くことを示唆するものであり、XIAPはTGF-βシグナル伝達経路において機能し、さらにTGF-βレセプターとTAB1-TAK1とを結ぶメディエーターとして働く分子であることが明らかとなった。
【0167】
【発明の効果】
本発明のスクリーニング方法によりTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI及び/又はタイプIIレセプターの結合阻害物質のスクリーニングが可能であることが明らかとなった。本発明のスクリーニング方法はTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI及び/又はタイプIIレセプターの結合阻害物質のスクリーニングに有用である。本発明のスクリーニング方法により得られるTAB1とXIAP、又はXIAPとTGF-βタイプI及び/又はタイプIIレセプターの結合阻害物質は医薬として有用である。
【0168】
【配列表】
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【0169】
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【0170】
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【0171】
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【0172】
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【0173】
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【0174】
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【0175】
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【0176】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、細胞性IAPを模式的に示す。各蛋白質の模式図中にBIRモチーフ(灰色の四角)およびRINGジンクフィンガードメイン(黒い四角)の位置を示す。
【図2】図2は、酵母におけるTAB1とIAPファミリーの細胞性メンバーとの相互作用、特にツーハイブリッドシステムにおける蛋白質相互作用を示す。
【図3】図3は、動物細胞におけるXIAPとTAB1との相互作用を示す。
【図4】図4は、動物細胞におけるXIAPとTGF-βレセプターとの相互作用を示す。
【図5】図5は、TGF-βシグナル伝達に及ぼすXIAPの効果、特に3TPプロモーター活性に及ぼすXIAPの効果を示す。数値は空ベクターを導入した非刺激細胞で得られたルシフェラーゼ活性と比較した増加倍数で表現している。数値は各トランスフェクションを2回実施した代表的な1回の実験における平均値である。標準誤差は5%未満である。
【図6】図6は、TGF-βシグナル伝達に及ぼすXIAPの効果、特にR-1B/17細胞における3TPプロモーター活性に及ぼすXIAPの効果を示す。数値は空ベクターを導入した細胞で得られたルシフェラーゼ活性と比較した増加倍数で表現している。数値は、各トランスフェクションを2回実施した際の代表的な1回の実験における平均値である。標準誤差は5%未満である。

Claims (54)

  1. XIAP、TAB1及び被験物質を接触させ、次いでXIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べることにより、XIAPとTAB1との結合を阻害する物質をスクリーニングする方法。
  2. TAB1が、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置504位のProからなるアミノ酸配列又はTAB1の生物学的活性を有し、且つ配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸残基の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する請求項1記載のスクリーニング方法。
  3. XIAPが、配列番号4に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置497位のSerからなるアミノ酸配列又はXIAPの生物学的活性を有し、且つ配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸残基の置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する請求項1記載のスクリーニング方法。
  4. TAB1及び/又はXIAPが、他のペプチド又はポリペプチドと融合している請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  5. TAB1又はXIAPが、支持体と結合している請求項1〜4のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  6. 支持体がビーズ又はプレートである請求項5記載のスクリーニング方法。
  7. TAB1又はXIAPを標識し、該標識を検出又は測定することによりXIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べる請求項1〜6のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  8. 標識が、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質である請求項7記載のスクリーニング方法。
  9. TAB1に結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べる請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  10. TAB1に結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べる請求項9記載のスクリーニング方法。
  11. XIAPに結合したTAB1を、TAB1に対する一次抗体又はTAB1と融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べる請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  12. XIAPに結合したTAB1を、TAB1に対する一次抗体又はTAB1と融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合の形成の有無を調べる請求項11記載のスクリーニング方法。
  13. 一次抗体又は二次抗体が、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質により標識されている請求項9〜12のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  14. TAB1及びXIAPを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでTAB1又はXIAPを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定することにより、XIAPとTAB1との結合を阻害する物質をスクリーニングする方法。
  15. TAB1又はXIAPを介して伝達される生物学的活性がTGF-βの生物学的活性である請求項14記載のスクリーニング方法。
  16. TGF-βの生物学的活性が細胞外マトリックス蛋白質産生亢進、細胞増殖阻害、単球遊走、生理活性物質誘導、免疫抑制及びβアミロイド蛋白質沈着からなる群より選択される少なくとも一つの作用である請求項15記載のスクリーニング方法。
  17. TAB1又はXIAPを介して伝達される生物学的活性が、TAB1又はXIAPの生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量変化である請求項14記載のスクリーニング方法。
  18. レポーター遺伝子がPAI-1、ファイブロネクチン、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲンである請求項17記載のスクリーニング方法。
  19. XIAP、TGF-βタイプIレセプター及び被験試料を接触させ、次いでXIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べることにより、TGF-βタイプIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法。
  20. XIAPが、配列番号4に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置497位のSerからなるアミノ酸配列、又はXIAPの生物学的活性を有し、且つ配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する請求項19記載のスクリーニング方法。
  21. TGF-βタイプIレセプターが、配列番号6に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置503位のMetからなるアミノ酸配列、又はTGF-βタイプIレセプターの生物学的活性を有し、且つ配列番号6に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する請求項19記載のスクリーニング方法。
  22. XIAP又はTGF-βタイプIレセプターが、他のペプチド又はポリペプチドと融合している請求項19〜21のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  23. XIAP又はTGF-βタイプIレセプターが、支持体と結合している請求項19〜22のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  24. 支持体がビーズ又はプレートである請求項23記載のスクリーニング方法。
  25. XIAP又はTGF-βタイプIレセプターを標識し、該標識を検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項19〜24のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  26. 標識が、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質である請求項25記載のスクリーニング方法。
  27. XIAPに結合したTGF-βタイプIレセプターを、TGF-βタイプIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項19〜26のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  28. XIAPに結合したTGF-βタイプIレセプターを、TGF-βタイプIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項27記載のスクリーニング方法。
  29. TGF-βタイプIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項19〜26のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  30. TGF-βタイプIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項29記載のスクリーニング方法。
  31. 一次抗体又は二次抗体が、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質により標識されている請求項27〜30のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  32. XIAP及びTGF-βタイプIレセプターを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでXIAP又はTGF-βタイプIレセプターを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定することにより、TGF-βタイプIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法。
  33. XIAP又はTGF-βタイプIレセプターを介して伝達される生物学的活性がTGF-βの生物学的活性である請求項32記載のスクリーニング方法。
  34. TGF-βの生物学的活性が細胞外マトリックス蛋白質産生亢進、細胞増殖阻害、単球遊走、生理活性物質誘導、免疫抑制及びβアミロイド蛋白質沈着からなる群より選択される少なくとも一つの作用である請求項33記載のスクリーニング方法。
  35. XIAP又はTGF-βタイプIレセプターを介して伝達される生物学的活性が、XIAP又はTGF-βタイプIレセプターの生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量変化である請求項32記載のスクリーニング方法。
  36. レポーター遺伝子がPAI-1、ファイブロネクチン、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲンである請求項35記載のスクリーニング方法。
  37. XIAP、TGF-βタイプIIレセプター及び被験試料を接触させ、次いでXIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べることにより、TGF-βタイプIIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法。
  38. XIAPが、配列番号4に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置497位のSerからなるアミノ酸配列、又はXIAPの生物学的活性を有し、且つ配列番号4に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する請求項37記載のスクリーニング方法。
  39. TGF-βタイプIIレセプターが、配列番号8に示すアミノ酸配列のアミノ酸位置1位のMetからアミノ酸位置567位のLysからなるアミノ酸配列、又はTGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性を有し、且つ配列番号8に示すアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する請求項37記載のスクリーニング方法。
  40. XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターが、他のペプチド又はポリペプチドと融合している請求項37〜39のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  41. XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターが、支持体と結合している請求項37〜40のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  42. 支持体がビーズ又はプレートである請求項41記載のスクリーニング方法。
  43. XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを標識し、該標識を検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項37〜42のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  44. 標識が、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質である請求項43記載のスクリーニング方法。
  45. XIAPに結合したTGF-βタイプIIレセプターを、TGF-βタイプIIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項37〜44のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  46. XIAPに結合したTGF-βタイプIIレセプターを、TGF-βタイプIIレセプターに対する一次抗体又はTGF-βタイプIIレセプターと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項45記載のスクリーニング方法。
  47. TGF-βタイプIIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項37〜44のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  48. TGF-βタイプIIレセプターに結合したXIAPを、XIAPに対する一次抗体又はXIAPと融合した他のペプチド若しくはポリペプチドに対する一次抗体及び一次抗体に対する二次抗体により検出又は測定することにより、XIAPとTGF-βタイプIIレセプターとの結合の形成の有無を調べる請求項47記載のスクリーニング方法。
  49. 一次抗体又は二次抗体が、放射性同位元素、酵素又は蛍光物質により標識されている請求項45〜48のいずれか1項に記載のスクリーニング方法。
  50. XIAP及びTGF-βタイプIIレセプターを発現する細胞に被験試料を導入及び/又は接触させ、次いでXIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを介して伝達される生物学的活性を検出及び/又は測定することにより、TGF-βタイプIIレセプターとXIAPとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法。
  51. XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを介して伝達される生物学的活性がTGF-βの生物学的活性である請求項50記載のスクリーニング方法。
  52. TGF-βの生物学的活性が細胞外マトリックス蛋白質産生亢進、細胞増殖阻害、単球遊走、生理活性物質誘導、免疫抑制及びβアミロイド蛋白質沈着からなる群より選択される少なくとも一つの作用である請求項51記載のスクリーニング方法。
  53. XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターを介して伝達される生物学的活性が、XIAP又はTGF-βタイプIIレセプターの生物学的活性に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量変化である請求項50記載のスクリーニング方法。
  54. レポーター遺伝子がPAI-1、ファイブロネクチン、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲンである請求項53記載のスクリーニング方法。
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