JP4202705B2 - レーザデータのノイズ除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザデータのノイズ除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、地表データを直接取得することができる航空機レーザスキャナを使用した測量が注目されているが、レーザデータには、機器の性能上の制約等の原因によりノイズが含まれており、このノイズをレーザデータの劣化を来すことなく除去する必要がある。
【0003】
そして、従来、このようなレーザデータのノイズ除去方法としては、ポイントデータであるレーザデータを補間して一旦画像化し、該画像を目視により確認することが行われている。
【0004】
しかし、このような方法は、自動化が困難であるために、多大な労力を要する上に、レーザデータを一旦画像にすると、補間の手法に影響を受け、データの劣化がもたらされるという問題がある。
【0005】
また、画像データ等のデジタルデータのノイズ除去方法としては、特許文献1に記載されたように、フィルタを使用するものも提案されているが、この場合には、フィルタによるデジタルデータの書き換えが行われるために、データの劣化が発生するという問題がある。
【0006】
データの劣化は、上述したような画像データであれば見た目には影響を与えないために、さほど重大ではないが、ポイントベクトルデータであるレーザデータの場合には、取得点のずれにつながるために、例えば、レーザデータを使用して作成したサーフェイスモデルの信頼性等にも大きく影響するというように重大な問題を惹起する。
【0007】
【特許文献1】
特開平8-202871号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、レーザデータの劣化をもたらすことなく、かつ自動処理可能なレーザデータのノイズ除去方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
航空機レーザスキャナを使用して取得されるレーザデータ群は、平面位置情報に加えて高さ情報(標高データ)を有するポイントデータであるが、地上における地物の把握を目的とするこの種の分野においては、測定系としては、正しいデータであっても、ノイズデータとして除去する必要が生じる場合がある。
【0010】
例えば、レーザデータ群には、空中を浮遊する塵埃等からの反射光に基づくものが含まれるが、このデータは、実際に塵埃がレーザ掃射領域に存在し、該塵埃の位置、高さを示すという点では、測定系におけるノイズとは必ずしもいえないが、地物の把握を目的とした場合には、明らかにノイズデータとして削除が必要なデータということになる。
【0011】
このように、航空測量で使用されるレーザデータからのノイズ除去は、測定系に起因するノイズに加えて地上の地物の把握という点からみたノイズをも有効に除去する必要があるという点で固有の困難性を有するものであるが、一方、測定対象である地物は、面積、高さ等の広がりが、常識的範囲に収まるという特殊性も有している。
【0012】
本発明は、以上のように地物の特殊性を配慮することにより、効率よく、かつ、正確にノイズデータを除去するもので、
航空機レーザスキャナを使用して取得した平面位置データと標高データとを含むレーザデータ群からノイズデータを除去するレーザデータのノイズ除去方法であって、
レーザデータ群を平面位置データを基準に、縦横方向にそれぞれ半メッシュずれた一対のメッシュを設定した後、各メッシュ内の標高データを統計処理して代表値を設定し、
各標高データに対して該標高データの属する2種類のメッシュに付与された代表値の平均値を基準とする統計的検定を施してノイズデータを分別、除去するように構成される。
【0013】
航空機レーザスキャナを使用して取得したレーザデータ群は、まず、平面位置データを基準にメッシュ化され、各メッシュに代表値が設定される。メッシュサイズは、空白メッシュが発生しないように設定され、例えば、レーザデータ群の解像度、あるいはデータポイント間の平均間隔を考慮して決定される。
【0014】
メッシュへの代表値には、ノイズデータによる影響が可及的に排除される統計的数値が使用され、例えば、メディアン値が使用できる。これに対し、例えば、平均値等の使用は、ノイズデータの影響をそのままうけるために望ましくない。
【0015】
また、代表値の設定に際しては、着目メッシュに加えてその周囲のメッシュ内の生データも参照される。参照メッシュ数は、当該メッシュの総面積が、例えば、小規模ビルディング等1棟分程度の面積、例えば、40〜80m2程度になるように設定される。このように着目メッシュの代表値を1個の地物に近い面積内の生データを参照して決定することにより、後述する仮説検定等の統計的処理の基礎が保証される。
【0016】
レーザデータ群のノイズ除去は、各メッシュ内のデータと、メッシュに設定された代表値とを統計的手法により検定することにより行われる。統計的検定は、仮説検定のほかに、生データと代表値との差による検定であってもよい。
【0017】
したがってこの発明において、レーザデータ群からのノイズ除去は、レーザデータ群に対する直接的な評価により行うことができるために、後述する各ステップが記載されたプログラムに基づいて動作するコンピュータシステム等を使用して全自動化することができる。
【0018】
上述した代表値は、
メッシュサイズが前記着目メッシュの2倍で、かつ、縦横方向にそれぞれ半メッシュずれた一対の暫定メッシュ内での標高データを統計処理して暫定代表値を得た後、
各暫定メッシュを4分割して形成される前記着目メッシュに割り当てられる各分割前暫定メッシュからの暫定代表値の平均値として与えることが可能である。
【0019】
さらに、レーザデータのノイズ除去方法は、
航空機レーザスキャナを使用して取得した平面位置データと標高データとを含むレーザデータ群からノイズデータを除去するレーザデータのノイズ除去方法であって、
レーザデータ群を平面位置データを基準に、縦横方向にそれぞれ半メッシュずれた一対のメッシュを設定した後、各着目メッシュの代表値を該着目メッシュ内の標高データを統計処理して設定し、
各標高データを該標高データの属する2種類の着目メッシュに付与された代表値を基準とした2回の統計的検定を施して、双方の検定により統計的異常値と検定された場合にのみノイズデータとして分別、除去するように構成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、航空測量において取得されたレーザデータ1に対するノイズ除去を例にとって本発明の参考例、および実施の形態を示す。航空測量におけるレーザデータ1は、所定の飛行経路を飛行する飛行体に搭載されたレーザスキャナにより地表をスキャンして得られる平面位置情報と標高情報(高さ情報)とを有するポイントデータであり、1回の飛行により得られたレーザデータ群は、平面位置情報に対応した直交座標平面(XY平面)上においては、図2に示すように、レーザ走査線に対応する直線上に配置される。なお、図2においてXY平面上にプロットされた点に付された数字は各点の標高データ1aを示すもので、煩雑さを避けるために、必要箇所のみに示されている。
【0021】
図1に以上のレーザデータ1からノイズを除去するフローチャートを示す。ノイズ除去に際し、先ず、上記XY平面に正方形のメッシュ2を設定する(S11)。メッシュサイズ(メッシュの1辺の長さ)は、レーザデータ1を1個も含まない空白メッシュ2が発生することのない程度の大きさに設定され、隣接するポイント間のデータ間隔が平均約2.5(m)であるこの実施の形態において、2.5(m)に設定される。図2の上段にレーザデータ群にメッシュ2を設定した図を示し、図2の下段に上段の太線で囲ったメッシュ内のレーザデータを標高データ1aを付して示す拡大図を示す。
【0022】
次に、各メッシュ2毎に代表値を設定する(S21)。着目メッシュ2(代表値設置対象メッシュ2)への代表値の設定に際し、まず、着目メッシュ2を領域中心とするm×m(この実施の形態においては3×3)のメッシュ群が抽出され、これらメッシュ群内の全標高データ1aのメディアンが着目メッシュ2の代表値とされる。図2の上段において太線で囲まれたメッシュ群の中心に位置するメッシュ2(着目メッシュ)への代表値の設定を例に取ると、まず、図2の下段に示すように、太線で囲った3×3=9個のメッシュ2、2・・内の20個の標高データを値によりソートし、数列の中心に位置する標高データ(メディアン)=12.21を代表値とする。
【0023】
図3(a)に以上のようにして求められた代表値が着目メッシュに設定された状態を、図3(b)に同様の手順ですべてのメッシュに代表値を設定した状態を示す。
【0024】
次いで、ステップS31において、上記着目メッシュ2内の各標高データ1aの検定を行う。検定には、「調査点は常に他に取得された点と比べ精度の差はない」との帰無仮説に対する仮説検定が使用され、まず、着目メッシュ2を領域中心とするn×n(この実施の形態においては11×11)のメッシュ群を抽出し(S311)、メッシュ群中の各メッシュ2の代表値の標準偏差をとる(S312)。抽出メッシュ数(n値)は、標準偏差を求めるためのデータ量が十分であり、かつ、面積が地物の状況が大きく変化しない程度に狭いことが考慮される。また、標準偏差は、実際の標高データ1aを使用することなく、各メッシュ2の代表値を使用するのは、標高データ1aにはノイズが含まれているために、標準偏差が大きくなり、後述する検定の際の許容値が過大となってノイズ除去が不可能となるのを防止するためである。なお、図3(a)において、11×11のメッシュ群の境界線を太線で示す。
【0025】
このようにして求められた標準偏差を図3(b)に示す。なお、煩雑さを回避するために、図3(b)においては、2個のメッシュについてのみ、代表値の下にカッコ付きで示されている。
【0026】
以上のようにして標準偏差を求めた後、ステップS313において着目メッシュ2内の標高データ1aの各点を有意水準p%(この実施の形態においては99%)で両側検定し、棄却される場合には、ノイズとして除去、廃棄し、棄却されない場合には、標高データ1aとして採用する。
【0027】
図3(b)において代表値が12.21、標準偏差が0.80のメッシュ内における11.91の標高データ(図2下段参照)は、
abs((11.91-12.21)/0.80)=0.375
となり、有意水準99%のx値は2.58であるから、
0.37<2.58
より、与点は棄却されず、ノイズとは見なされない。
【0028】
これに対し、図3(b)において代表値12.13、標準偏差0.82のメッシュ内における997.47の標高データ(図2下段参照)は、
abs((997.47-12.13)/0.82)=1201.634
>2.58
より、与点は棄却され、ノイズとして排除される。
【0029】
このようにして、すべてのレーザデータについて検定を行った後、棄却されないデータのみをレーザデータ群として使用する。
【0030】
図4に本発明の第1の実施の形態を示す。この実施の形態において、先ず、レーザデータ1のXY平面にメッシュ2を設定する。上述した参考例において、メッシュサイズは、データ間隔にほぼ一致する寸法に設定されたが、この実施の形態において、メッシュサイズは、その倍、すなわち、5(m)に設定される。また、XY平面へのメッシュ2は、互いに半メッシュ、すなわち、2.5(m)ずれた2種類について設定される(S12)。
【0031】
この後、各メッシュ2について代表値を設定した(S22)後、メッシュ2を合成する(S23)。図5に半メッシュ相互にずれた2種類のメッシュを上下段に、各メッシュに設定された代表値をメッシュ内に示す。
【0032】
メッシュサイズが上述した参考例に比して大きなこの実施の形態において、メッシュ2への代表値には着目メッシュ2内の標高データ1aのメディアンが使用される。これは、例えば、3×3行列のメッシュ2を対象にメディアンを取ると、対象面積は(5×3)2=225(m2)となり、着目メッシュ2の個性が過度に希釈化されて検定精度の低下をもたらすことによる。
【0033】
メッシュ2の合成の方法を図6(a)に示す。図6(a)は、図5の上段において12.07の代表値をもつメッシュの分割方法を示すもので、まず、各メッシュ2を半分のサイズに4分割した後、分割後の各メッシュ2に代表値を割り当てる。図6(a)においては、矩形枠が図5の上段メッシュ、矩形枠を縦横断する線が下段メッシュ(代表値12.05、13.03、12.55、12.32)の境界を示す。この図から明らかなように、矩形枠の左上の分割メッシュは、12.07と12.05の2種類の代表値が割り当てられることとなり、これらの平均値12.06がこのメッシュの代表として設定される。
【0034】
この後、上述した参考例と同様に、ステップS31を実施し、ノイズデータの除去を行う。図6(b)に合成後のメッシュ2を示す。
【0035】
図7に本発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態において、先ず、レーザデータ1のXY平面には、上述した第1の実施の形態と同様に、5(m)サイズで、互いに半メッシュずれた2種類のメッシュ2を設定し(S12)、各々のメッシュ2に代表値を設定する(S22)。代表値には、メディアンが使用され、同一データを使用しているために、代表値の設定結果は、図5と同様になる。
【0036】
この後、ステップS32において標高データ1aの検定を行う。標高データ1aの検定に際し、まず、各メッシュ2からm×m行列メッシュ2を抽出し(S321)、標準偏差を求める(S322)。メッシュサイズが上述した参考例の場合の2倍であるこの実施の形態において、m値は、対象面積がほぼ同一となる7に設定される。
【0037】
次いで、ステップS323で、各メッシュ2内の標高データ1aを上述した実施の形態と同一条件で仮説検定する。この実施の形態において、同一の標高データ1aは、異なった2種類のメッシュ2内に包含されるために、仮説検定は、同一標高データ1aについて2度行われ、双方のメッシュ2において帰無仮説が棄却された場合にのみノイズとして標高データ1aを廃棄する。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、レーザデータの劣化をもたらすことなく、かつ自動処理も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例を示すフローチャートである。
【図2】 メッシュが設定されたXY平面上のレーザデータを示す図である。
【図3】 メッシュへの代表値の設定状態を示す図である。
【図4】 本発明の第1の実施の形態を示すフローチャートである。
【図5】 2種類のメッシュを示す図である。
【図6】 メッシュの合成方法を示す図である。
【図7】 本発明の第2の実施の形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 レーザデータ
1a 標高データ
2 メッシュ
Claims (4)
- 航空機レーザスキャナを使用して取得した平面位置データと標高データとを含むレーザデータ群からノイズデータを除去するレーザデータのノイズ除去方法であって、
レーザデータ群を平面位置データを基準に、縦横方向にそれぞれ半メッシュずれた一対のメッシュを設定した後、各メッシュ内の標高データを統計処理して代表値を設定し、
各標高データに対して該標高データの属する2種類のメッシュに付与された代表値の平均値を基準とする統計的検定を施してノイズデータを分別、除去するレーザデータのノイズ除去方法。 - 航空機レーザスキャナを使用して取得した平面位置データと標高データとを含むレーザデータ群からノイズデータを除去するレーザデータのノイズ除去方法であって、
レーザデータ群を平面位置データを基準にメッシュ化した後、着目メッシュの代表値を該着目メッシュに加えて周辺メッシュ内の標高データを統計処理して設定し、
着目メッシュ内の各標高データに対して該着目メッシュに付与された代表値を基準とする統計的検定を施してノイズデータを分別、除去してなり、
前記代表値は、
メッシュサイズが前記着目メッシュの2倍で、かつ、縦横方向にそれぞれ半メッシュずれた一対の暫定メッシュ内での標高データを統計処理して暫定代表値を得た後、
各暫定メッシュを4分割して形成される前記着目メッシュに割り当てられる各分割前暫定メッシュからの暫定代表値の平均値として与えられるレーザデータのノイズ除去方法。 - 航空機レーザスキャナを使用して取得した平面位置データと標高データとを含むレーザデータ群からノイズデータを除去するレーザデータのノイズ除去方法であって、
レーザデータ群を平面位置データを基準に、縦横方向にそれぞれ半メッシュずれた一対のメッシュを設定した後、各着目メッシュの代表値を該着目メッシュ内の標高データを統計処理して設定し、
各標高データを該標高データの属する2種類の着目メッシュに付与された代表値を基準とした2回の統計的検定を施して、双方の検定により統計的異常値と検定された場合にのみノイズデータとして分別、除去するレーザデータのノイズ除去方法。 - 前記代表値が着目メッシュと周辺メッシュ内の標高データのメディアンである請求項2または3記載のレーザデータのノイズ除去方法。
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