JP4199360B2 - 粒子移動/固定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞等のような粒子を媒質中にて移動または固定させるための粒子移動/固定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、粒子状の微小な対象物を操作するマイクロマニピュレーション技術の一種として、マイクロインジェクションという技術が知られている。
【0003】
マイクロインジェクションとは、例えばガラス管を加工してなるマイクロピペットと呼ばれる注射針を用い、細胞内にDNA、RNA、オルガネラ、各種蛋白質、各種薬液等を注入する手法のことを指す。このような技術は、特定遺伝子などを細胞内に選択的に導入しうる有効な手法として近年特に注目を浴びている。かかる手法は、類似の手法であるレーザーインジェクション等に比べて導入効率が高くてしかも安価といった利点を有している。
【0004】
上記技術においては、媒質中に浮遊している細胞に対してマイクロピペットを突き刺した状態で細胞内に液体を注入するため、突き刺し時には細胞を何らかの手段により固定しておく必要がある。また、細胞における特定の部位に遺伝子等を導入したい場合には、ピペットを突き刺しやすい所定の方向に当該部位を向けた状態で細胞を固定する必要がある。そして、従来では突き刺し用のマイクロピペットとは別の固定用ピペットを用い、その先端に細胞を吸い付けることにより、細胞の固定を図っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、細胞を吸い付けて固定するという従来方法は、固定用ピペットの操作が面倒であることに加え、操作自体に時間がかかる。このため、生産性の向上を期待することが難しかった。また、従来方法では硬いピペットの先端が柔らかい細胞に対して直かに接触することから、細胞膜を傷付けやすく、細胞にダメージを与えやすかった。よって、細胞の移動や固定をできるだけ非接触的に行ないたいというニーズがあった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、粒子の移動・固定を非接触的にかつ効率よく行なうことができる粒子移動/固定装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、媒質に晒される基材と、その基材の所定箇所に設けられるとともに前記媒質中の粒子を収容可能な粒子収容部と、誘電泳動力をもたらす電界を発生させるため前記粒子収容部に隣接して配置された電極とを備えたことを特徴とする粒子移動/固定装置をその要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記基材は光透過性材料からなるものであり、前記粒子収容部はその基材の片側面のみにて開口する非貫通の凹部であるとした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記凹部の内側面は前記基材の厚さ方向に対して所定の角度をなし、かつ同凹部の底面は前記基材の面方向に対して略平行であるとした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3において、前記基材はほう珪酸ガラス製であり、前記凹部は等方性エッチングにより形成されたエッチング凹部であるとした。
【0011】
以下、本発明の「作用」について説明する。
請求項1に記載の発明によると、電極に電圧を印加することにより、粒子収容部に電界が発生し、この電界のもたらす誘電泳動力が粒子に作用する。その結果、固定用器具を粒子に対して何ら接触させることなく、粒子を粒子収容部にて移動または固定させることができる。よって、粒子にダメージを与えることなく操作を行なうことができる。また、面倒な固定用器具の操作を伴わないため、生産性の向上も期待できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、このような材料からなる基材であれば、光を透過させることができるので、操作時に粒子を観察しやすくなる。また、非貫通の凹部は貫通孔に比べて形成しやすいため、これを粒子収容部とした装置は製造が容易なものとなる。さらに、非貫通の凹部からなる粒子収容部であれば、基材の両側面を媒質に晒す必要がなくなるという利点がある。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、凹部の内側面が基材の厚さ方向に対して所定の角度をなしているので、電圧印加によって電界の強さにアンバランスが生じる結果、粒子収容部内にて好適な誘電泳動力が発生する。従って、静電分極した粒子が電界の強いほうへと引き寄せられる。また、凹部の底面が基材の面方向に対して略平行であれば、底面側へ光が通過するときでも不自然に屈曲するようなこともなく、基材の下面側からの観察に支障を来しにくい。
【0014】
請求項4に記載の発明によると、ほう珪酸ガラス製の基材は高い光透過性を有するので観察性に優れるばかりでなく、高い強度も有するので肉薄に形成することが可能である。また、等方性エッチングにより形成されたエッチング凹部の場合、凹部の内側面が基材の厚さ方向に対して所定の角度をなし、かつ凹部の底面が基材の面方向に対して略平行、という好適な形状になりやすいという利点がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
以下、本発明の粒子移動/固定装置を具体化した一実施形態のセルマニピュレーションシステム1を図1〜図3に基づき詳細に説明する。
【0016】
このセルマニピュレーションシステム1は、細胞移動/固定装置2、取り付け用ホルダ3、下部観察手段としての対物レンズ4、顕微鏡ステージ5、マイクロピペット6、マニピュレータ(図示略)、光源(図示略)等を含んで構成されている。また、細胞移動/固定装置2及び取り付け用ホルダ3によって、1つの細胞移動/固定ユニットUN1が構成されている。
【0017】
図1に示されるように、顕微鏡ステージ5の中央部には透孔11が設けられている。この透孔11の下方には対物レンズ4が上向き状態で配設されている。対物レンズ4は、図示しない操作手段を操作することにより垂直方向に移動することができる。光源は透孔11の上方に離間して配置されている。マイクロピペット6は、顕微鏡ステージ5の上側に配置されている。マイクロピペット6は、加熱溶融したガラス管を細く引き延ばすことによって製造される。マイクロピペット6の先端部は、直径数十μm〜数百μm程度の植物細胞12を突き刺すことができるように尖った形状に形成されている。なお、マイクロピペット6はマニピュレータを操作することにより三次元的に駆動される。マニピュレータの駆動方式としては、例えば油圧式、エア式、機械式などがある。マイクロピペット6の基端部は、図示しないシリンジ等の加圧器に接続されている。加圧器からは例えばDNAを含む溶液等が圧送されてくる。
【0018】
図1に示されるように、取り付け用ホルダ3は、観察ステージ5の上面中央部に対して図示しないボルト等の締結により取り付けられている。ホルダ3の取り付け時には、透孔11の上部開口は塞がれた状態となる。ホルダ3は断面円形状をした有底状の部材であって、透明なガラスを材料として形成されている。なお、このホルダ3は、媒質である培養液13を満たすための容器を兼ねている。ホルダ3の内底面における複数箇所には支持突起14が設けられている。これらの支持突起14の上面に対しては、細胞移動/固定装置2の外周部下面側が接着剤を介して接合されている。その結果、ホルダ3内において装置2が水平に支持される。
【0019】
細胞移動/固定装置2を構成する円盤状の基材15の中央部には、粒子状対象物である植物細胞12を1つ1つ収容するための細胞チャンバ16が設けられている。粒子収容部である細胞チャンバ16は、基材15に複数個設けられていてもよい。本実施形態における細胞チャンバ16は、基材15の両側面にて開口する断面円形状の貫通孔となっている。この貫通孔の断面は、下部開口にいくほど細いテーパ状をなしている。即ち、細胞チャンバ16の内側面は、基材15の厚さ方向に対して10°〜40°程度の角度をなしている。
【0020】
図1,図2に示されるように、基材15において細胞チャンバ16の付近には、複数個の電極17が隣接して配置されている。本実施形態では、基材15の上面側及び下面側にそれぞれ4個ずつ電極17が形成されている。各電極17の位置関係を説明する便宜上、図3(b)では基材15の上面側における4つの電極17にU1,U2,U3,U4が付されている。同図では、基材15の下面側における4つの電極17に、D1,D2,D3,D4が付されている。これによると、電極U1−D1、U2−D2、U3−D3、U4−D4がそれぞれ対応する位置関係にあることがわかる。
【0021】
基材15の両面外周部にはパッド19が形成されている。各電極17は、これらのパッド19に対し配線パターン18を介して電気的に接続されている。パッド19以外の導体部分は、ポリイミド等のような絶縁性材料からなる絶縁層21によって保護されている。各パッド19には導電性接着剤22を用いてリード線20が接合されている。培養液13との電気的な絶縁を図るために、導電性接着剤22はさらに樹脂層23によって全体的に被覆されている。本実施形態の場合、基材15の上面側に接合された4本のリード線20は、上部開口を介してホルダ3の外部に引き出されている。基材15の下面側に接合された4本のリード線20は、ホルダ3の底面に設けられたリード線挿通孔24を介してホルダ3の外部に引き出されている。引き出されたリード線20は、数10kHz〜数MHzの高周波交流電圧を発生する装置に対して電気的に接続されている。
【0022】
図3(a)は、8つの電極17(U1〜U4,D1〜D4)に対する通電の仕方を説明するための表である。植物細胞12を右回転させたい場合には、U1→U2→U3→U4というように、特定の1つの電極17のみに対してプラス電圧を印加することを、右回りで順に行なえばよい。これをU4→U3→U2→U1というように反対回りで順に行なえば、植物細胞12を左回転させることができる。植物細胞12を上昇させたい場合には、U1及びU2にプラスの電圧を印加し、U3及びU4にマイナスの電圧を印加すればよい。植物細胞12を下降させたい場合には、U1〜U4にプラスの電圧を印加すればよい。また、植物細胞12を動かさずに固定したい場合には、U1〜U4,D1〜D4に対して印加する電圧値を固定すればよい。
【0023】
以上のような動作制御が可能なのは、リード線20を介して電極17へ高周波電圧を印加すると、細胞チャンバ16内に電界が発生し、その電界が植物細胞12に対して好適な誘電泳動力をもたらすからである。この場合、粒子状対象物である植物細胞12の誘電率は、一般的に媒質である培養液13の誘電率と異なるため、電界が働くことで植物細胞12が静電分極を起こす。上記のごとく細胞チャンバ16の内側面は基材15の厚さ方向に対して所定の角度をなしているので、電圧を印加すると、電界の強さにアンバランスが生じる。その結果、細胞チャンバ16内にて好適な誘電泳動力が発生し、静電分極した植物細胞12が電界の強いほうへと引き寄せられる。
【0024】
次に、このように構成されたシステム1の具体的な使用方法の一例を述べておく。
顕微鏡ステージ5上にホルダ3をセットし、かつそのホルダ3の内底面に細胞移動/固定装置2を固定しておく。この状態でホルダ3内を滅菌した培養液13で満たしておく。その結果、基材15の上側面及び下側面がともに培養液13のある環境となり、細胞チャンバ16内が確実に培養液13で満たされた状態となる。よって、乾燥に弱い植物細胞12の死滅が未然に回避される。植物細胞12は、プロトプラストや花粉等のような単細胞であってもよいほか、胚珠などの特定器官やカルス等のような細胞群(即ち多細胞)であってもよい。
【0025】
オペレータは図示しない別のマイクロピペットにより細胞チャンバ16内に1つの植物細胞12を移し入れる。次いで、オペレータは顕微鏡観察を行ないながら電極17に高周波電圧を印加し、植物細胞12の位置修正を行なう。この場合、特定遺伝子を導入したい部位が例えば胚であれば、胚の部分をマイクロピペット6の先端部に向けるように調整する。
【0026】
次いでオペレータは、顕微鏡を観察しながらマイクロピペット6を駆動操作して、その先端部をターゲットである植物細胞12に向けてゆっくりと前進させる。マイクロピペット6の先端部が植物細胞12の胚に突き刺さったことを顕微鏡により確認した後、オペレータはシリンジの頭部を静かに押圧し、外部にDNAの入った液体を押し出すようにする。すると、マイクロピペット6を経由してその先端部から当該液体が吐出される。従って、植物細胞12の胚にDNAを注入することができる。上記のような導入処理が終了した後、オペレータはマイクロピペット6を後退させて、その先端部を植物細胞12から抜き去る必要がある。以上の結果、特定遺伝子を植物細胞12内に選択的にかつ効率よく導入することができる。この後、遺伝子導入がなされた植物細胞12は、再び別のマイクロピペットによって細胞チャンバ16から静かに吸い出される。
【0027】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のセルマニピュレーションシステム1によると、電極17に電圧を印加することにより、好適な誘電泳動力が植物細胞12に作用する。その結果、固定用マイクロピペット等の器具を植物細胞12に対して何ら接触させることなく、その植物細胞12を細胞チャンバ16内にて移動または固定させることができる。よって、粒子状対象物を吸い付けて固定するという従来方法とは異なり、柔らかい植物細胞12にダメージを与えることなく各種の操作を行なうことができる。また、このシステム1によれば、面倒な固定用マイクロピペットの操作を伴わないため、生産性の向上も期待できる。
[第2の実施形態]
次に、本発明を具体化した実施形態2のセルマイクロマニピュレーションシステム41を図4〜図6に基づいて説明する。ここでは実施形態1と相違する点を主に述べ、共通する点については同一部材番号を付すのみとしてその説明を省略する。
【0028】
このシステム41に用いられる細胞移動/固定装置2を構成する基材15は、円盤状をなしている。本実施形態では、透過性材料の一種であるガラス(具体的にはほう珪酸ガラス)製の基材15が用いられている。ほう珪酸ガラス製基材15の厚さは0.2mm〜1mm程度に設定されている。この基材15の中央部には、実施形態1のときと形状の異なる細胞チャンバ42が形成されている。図5(b)等に示されるように、本実施形態における細胞チャンバ42は、基材15の上側面のみにて開口する非貫通の凹部になっている。この凹部は等方性エッチングにより断面円形状に形成されている。エッチング凹部の内側面下部は、基材15の厚さ方向に対して0°〜90°の角度をなすアール面となっている。また、エッチング凹部の底面は、基材15の面方向に対して略平行になっている。この細胞チャンバ42はいわば略椀状をなしている。また、エッチング凹部からなる細胞チャンバ42の深さは50μm〜150μm程度に設定され、その直径は150μm〜300μm程度に設定されている。
【0029】
また、このシステム41に用いられる取り付け用ホルダ3Aは、以下の点で実施形態1のものと構造が相違している。即ち、このホルダ3Aは、基材15を両面側から挟み込むことで基材15を着脱可能に保持する一対の治具43,44を主要な構成要素としている。下治具43及び上治具44はともに環状をなしている。下治具43は顕微鏡ステージ5上に水平に固定された状態で使用される。顕微鏡ステージ5上かつ透孔11の周囲には、下治具43を位置決めした状態で固定するための嵌合凹部5aが形成されている。下治具43はこの嵌合凹部5aに嵌脱可能な寸法となるように形成されている。上治具44は下治具43の上端面側に対して嵌合された状態で使用される。下治具43の内周縁上側には、その全周にわたって基材挟持部45が設けられている。上治具44の内周縁下側には、その全周にわたって基材挟持部46が設けられている。基材挟持部45,46同士はちょうど対向する位置関係にある。基板挟持部45,46の外周側には、それぞれ環状溝47,48が形成されている。
【0030】
基材挟持部45において基材15と接触する部位(ここでは下端縁)には、全周にわたって環状凹部49が形成されている。その環状凹部49内には、シール部材としてのOリング50が装着されている。Oリング50は無端状かつ断面楕円形状であって、ゴム等の弾性体からなる。図5(a)にて二点鎖線で示されるように、Oリング50は、基材15において配線パターン18の形成領域(言い換えると各電極17と各パッド19との間の領域)に当接する位置関係にある。
【0031】
上治具44の外周部における複数箇所には、ねじ挿通孔51が透設されている。下治具43の外周部において前記各ねじ挿通孔51に対応する箇所には、めすねじ穴52が設けられている。締結手段であるねじ53は、各ねじ挿通孔51に挿通された状態で各めすねじ穴52に螺着される。従って、上治具44を下治具43に嵌合した状態で各ねじ53を締め付けることにより、両治具43,44の固定が図られる。下治具43の上面側には、基材15の外形寸法にほぼ等しい内径を有する嵌合凹部54が形成されている。従って、粒子移動/固定装置2は嵌合凹部54に嵌合することが可能である。粒子移動/固定装置2の嵌合時において、同装置2は基材挟持部45上に水平に支持されるとともに、位置決めされた状態で下治具43に固定される。
【0032】
図4に示されるように、一対の治具43,44はコンタクト61,62を複数本ずつ備えている。コンタクト61,62は、導電性を有するばね材料を用いて形成されている。下治具43の有するコンタクト61は略直線状であり、内端側に略C字状の屈曲部61aを持つ。上治具44の有するコンタクト62は2箇所を直角に屈曲させた形状であり、内端側に略C字状の屈曲部62aを持つ。各屈曲部61a,62aにおける凸面はパッド19側を向いている。コンタクト61,62は、両治具43,44による挟み込み動作に伴い、各パッド19に対して圧接される。コンタクト61,62の屈曲部61a,62aは、ホルダ3Aに装置2を保持させて培養液13を満たした場合、培養液13の満たされている領域A1からOリング50を介して隔離される領域A2に配設されている。具体的にいうと、領域A1とはOリング50よりも内周側となる領域をいい、領域A2とはOリング50よりも外周側となる領域をいう。なお、本実施形態のホルダ3Aを構成する治具43,44は、絶縁性の樹脂成形材料内にコンタクト61,62をインサートしてなるインサート成形品である。
【0033】
各コンタクト61,62の外端は治具43,44の外周面から突出していて、そこにはリード線20の先端に設けられためす型ソケット63が着脱可能になっている。そして、ソケット63の装着時には、各リード線20を介して各コンタクトに高周波電圧を印加できるようになっている。
【0034】
次に、図6に基づいて本実施形態の細胞移動/固定装置2を製造する方法を述べる。
まず、ほう珪酸ガラスからなる基材15を準備するとともに、この基材15に対して従来公知の手法によりパターニングを行ない、電極17、配線パターン18及びパッド19等の導体部分をそれぞれ形成する(図6(a)参照)。パターニングの手法としては、一般的なめっき法のほか、焼成印刷法、スパッタリング、CVD等がある。導体部分の形成に用いられる導電性金属材料としては、例えば銅、スズ、ニッケル、鉛、鉄、クロム、チタン、金、白金等がある。ガラスに対する等方性エッチングを行なう場合、前記金属材料はエッチャントであるふっ酸に耐性のものであることが望ましい。このことに鑑み、本実施形態では、金及びクロムの2種からなる金/クロム層(即ちクロム層を下地とする金層)を採用している。
【0035】
パターニングを行なった後、基材15の両面のほぼ全域に感光性ポリイミド樹脂を均一に塗布しかつ乾燥させる。この状態でフォトマスクを配置して露光・現像を行ない、電極17及び配線パターン18を保護するための絶縁層21を形成する(図6(b)参照)。基材15の中央部や各パッド19は、絶縁層21で被覆されておらず、外部に露出している。
【0036】
絶縁層形成工程を行なった後、基材15上にエッチングマスク65を設ける(図6(c)参照)。このエッチングマスク65は、基材15の上面側中央部、即ち細胞チャンバ42が形成されるべき箇所に開口部66を備えている。開口部66の径は細胞チャンバ42の内径よりも小さく(数十μm程度に)設定される。なお、エッチングマスク65の形成材料としては、エッチャントであるふっ酸に耐えうるものであることが望ましい。
【0037】
そして、マスク配設状態でふっ酸を用いた等方性エッチングを行なうことにより、基材15の上面側に細胞チャンバ42となる非貫通のエッチング凹部を形成する(図6(d)参照)。その後、不要となったエッチングマスク65を除去すれば、所望の細胞移動/固定装置2が完成する(図6(e)参照)。
【0038】
続いて、細胞移動/固定ユニットUN1の組み付け手順を説明する。
まず、下治具43の嵌合凹部54に対して、細胞移動/固定装置2を嵌合させる。装置2はこのとき基材挟持部45上に水平に支持される。次に、各ねじ挿通孔51とめすねじ穴52とを位置合わせして、上治具44を下治具43の上端面側に嵌合する。この状態で各ねじ53を締め付けることにより、両治具43,44を固定する。その際、対向する位置関係にある基材挟持部45,46によって基材15が上下両面側から挟み込まれる結果、装置2がホルダ3に確実に保持される。
【0039】
この場合、ねじ53の締め付け力が作用することにより、Oリング50が自身の軸線方向へ圧縮される。その結果、Oリング50が弾性変形した状態で装置2の上面に密着する。この密着により、領域A1と領域A2との間に高いシール性が得られる。つまり、パッド19やコンタクト61,62の屈曲部61a,62a等のある領域A2に、領域A1の培養液13が浸入してこなくなる。また、Oリング50の圧接により、両治具43,44のセッティング時における応力も緩和されるため、装置2の傾き等を防止することができる。
【0040】
また、ねじ53の締め付け力が作用することにより、対応するパッド19に対して各屈曲部61a,62aが圧接した状態となる。この圧接により、ホルダ3A側の導電部分(即ちコンタクト61,62)と、装置2側の導電部分(パッド19、配線パターン18、電極17)とが導通する。ゆえに、各コンタクト61,62の外端にソケット63を装着して通電を行なえば、各電極17に対して高周波電圧を印加することが可能となる。
【0041】
なお、組み付けられた細胞移動/固定ユニットUN1は、特にボルトや接着剤等を用いることなく、嵌合凹部5aに対して簡単にかつ位置ずれ不能に固定されることができる。
【0042】
従って、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における上記(1)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2)このセルマイクロマニピュレーションシステム41では、光透過性材料であるガラスからなる基材15が使用されているため、オペレータが操作をする際に植物細胞12を観察しやすくなっている。
【0043】
(3)同システム41では、基材15の上側面のみにて開口する非貫通の凹部を、細胞チャンバ42として形成している。従って、ガラス製基材15に小径かつテーパ状の貫通孔を形成する実施形態1のときほど、細胞チャンバ42の形成にあたって困難さを伴わない。ゆえに、比較的容易に製造可能な細胞移動/固定装置2とすることができる。
【0044】
(4)非貫通の凹部からなる細胞チャンバ42を採用した同システム41では、基材15の上側面のみを培養液13に晒せば足り、下面側をあえて晒す必要がないという利点がある。従って、基材15の下側面と対物レンズ4との間に、培養液13やホルダ3A等のような障害物が全く介在しなくなる。ゆえに、対物レンズ4を基材15の下側面に対して接近させることができる。このように基材15から対物レンズ4までの距離を短くすることができる結果、高倍率・高解像度を実現することができる。
【0045】
(5)同システム41では、細胞チャンバ42の内側面下部が基材15の厚さ方向に対して所定の角度をなしている。従って、電圧印加によって電界の強さにアンバランスが生じやすく、電界チャンバ42内に好適な誘電泳動力を発生させることができる。また、細胞チャンバ42の底面が基材15の面方向に対して略平行になっている。従って、細胞チャンバ42の底面側へ通過しようとする光が、通過の際に不自然に屈曲するようなこともない。よって、基材15の下面側からの観察に支障を来しにくく、観察性の向上を図ることができるという利点がある。
【0046】
(6)同システム41では、ほう珪酸ガラス製の基材15を用いて装置2を構成している。ほう珪酸ガラス製の基材15は高い光透過性を有するので、観察性に優れた装置2とすることができる。そればかりでなく前記基材15は高い強度も有するので、それ自体を肉薄に形成することが可能である。また、等方性エッチングにより形成されたエッチング凹部の場合、上記の好適な形状(つまり略椀状)を得やすくなるという利点がある。さらに、エッチャントを用いたケミカルエッチングによれば、機械的に穴あけをするような手法に比べ、任意形状かつ小径の凹部を比較的容易に形成できる点で有利である。
【0047】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 非貫通の凹部からなる細胞チャンバ42は、実施形態2にて示した略椀状のもの(図7(a)参照)のみに限定されない。例えば、図7(b)の別例の細胞チャンバ42Aは断面略台形状であって、凹部の内側面全体が基材15の厚さ方向に対して約45°の角度をなしている。図7(c)の別例の細胞チャンバ42Bは略半球状であって、凹部の底面全体がラウンドしている。図7(d)の別例の細胞チャンバ42Cは略円錐状であって、凹部の底面に平坦部がないものとなっている。
【0048】
・ 細胞チャンバ42は、ふっ酸以外のエッチャントを用いた等方性エッチングにより形成されたものでもよく、さらにはケミカルエッチング以外の手法により形成されたものでもよい。
【0049】
・ 基材15の形成材料として、ほう珪酸ガラス以外のもの、例えばシリカガラス等を用いてもよい。なお、ガラスに限定されることはなく、ジルコニア等に代表されるような透明のセラミック材料を基材15の形成材料として選択してもよい。
【0050】
・ 電極17の数、形状、配置方法等は変更可能である。例えば、電極17を基材15の上側面のみに設けたり、下側面のみに設けた構成を採用することも許容される。
【0051】
・ 実施形態1,2にて示した植物用の培養液13を媒質として用いるのみならず、養分を殆ど含まない単なる蒸留水等を媒質として用いても構わない。勿論、媒質は粒子の種類に応じて適宜変更することが可能である。
【0052】
・ 本発明のシステム1,41は、実施形態1,2において述べたような植物細胞12へのDNAそのものの導入のみに使用されるに止まらず、様々な用途に用いられることができる。例えば、粒子状対象物を動物の卵細胞とした場合には、顕微受精技術の1つである卵子細胞質への精子のインジェクション(卵細胞質精子注入法)等に利用することができる。勿論、本発明のシステム1,41は、細胞12等のような生物を対象物とした操作のみならず、非生物を対象物とした操作にも利用されることができる。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) 請求項4において、前記凹部は、ふっ酸をエッチャントとして用いた等方性エッチングにより形成されたエッチング凹部であること。
【0054】
(2) 請求項1乃至4、技術的思想1のいずれか1つにおいて、前記電極は複数個であること。従って、この技術的思想2に記載の発明によれば、通電の組み合わせ変更によって、粒子の移動操作を多様化することができる。
【0055】
(3) 請求項1乃至4、技術的思想1のいずれか1つにおいて、前記電極は複数個かつ基材の両面に存在すること。従って、この技術的思想3に記載の発明によれば、通電の組み合わせ変更によって、粒子の移動操作をより多様化することができる。
【0056】
(4) 技術的思想1乃至3のいずれか1つにおいて、前記各電極は配線パターンを介して各パッドに電気的に接続されていること。
(5) 技術的思想1乃至4のいずれか1つにおいて、前記基材に形成された前記電極等の導体部分は、耐ふっ酸性を有する金属材料からなること。従って、この技術的思想5に記載の発明によれば、ふっ酸の影響を受けにくくなるので、寸法精度に優れた導体部分が得られ、装置の信頼性も向上する。
【0057】
(6) 請求項1乃至4、技術的思想1乃至5のいずれか1つにおいて、前記粒子収容部の深さは50μm〜150μmに設定され、その直径は150μm〜300μmに設定されていること。
【0058】
(7) ガラス製の基材に電極をパターニングした後、前記基材上にマスクを設けた状態でふっ酸をエッチャントとして用いた等方性エッチングを行なうことにより、粒子収容部となる非貫通のエッチング凹部を形成することを特徴とする請求項4に記載の粒子移動/固定装置の製造方法。従って、この技術的思想7に記載の発明によれば、粒子の移動・固定を非接触的にかつ効率よく行なえる優れた粒子移動/固定装置を確実に得ることができる。
【0059】
(8) ステージ及びレンズを有する顕微鏡ユニットと、請求項1乃至4のいずれか1つに記載された粒子移動/固定装置、及びその装置を前記ステージに取り付ける際に用いられるとともに、前記媒質を満たしておくための容器を兼ねるホルダを有する粒子移動/固定ユニットと、細胞操作用のマイクロピペットとを備えたセルマニピュレーションシステム。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によれば、粒子の移動・固定を非接触的にかつ効率よく行なうことができる粒子移動/固定装置を提供することができる。
【0061】
請求項2に記載の発明によれば,製造が容易でありかつ基材の両側面を媒質に晒す必要のない粒子移動/固定装置とすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、好適な誘電泳動力を発生させることができるとともに、観察性の向上を図ることができる。
【0062】
請求項4に記載の発明によれば、観察性の向上及び装置の肉薄化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態の細胞移動/固定装置を備えるユニットを利用したセルマニピュレーションシステムを示す概略断面図。
【図2】(a)は実施形態1の細胞移動/固定装置の平面図、(b)は同装置の断面図。
【図3】(a)は各電極に対する通電の仕方を説明するための表、(b)は各電極の位置関係を説明するための概略図。
【図4】第2実施形態の細胞移動/固定装置を備えるユニットを利用したセルマニピュレーションシステムを示す概略断面図。
【図5】(a)は実施形態の細胞移動/固定装置の平面図、(b)は同装置の断面図。
【図6】(a)〜(e)は実施形態の細胞移動/固定装置を製造する手順を説明するための断面図。
【図7】(a)〜(d)は凹部のバリエーションを示す部分拡大断面図。
【符号の説明】
2…粒子移動/固定装置としての細胞移動/固定装置、12…粒子としての植物細胞、13…媒質としての培養液、15…基材、16…粒子収容部としての細胞チャンバ、17(U1,U2,U3,U4,D1,D2,D3,D4)…電極。

Claims (4)

  1. 媒質に晒される基材と、その基材の所定箇所に設けられるとともに前記媒質中の粒子を収容可能な粒子収容部と、誘電泳動力をもたらす電界を発生させるため前記粒子収容部に隣接して配置された電極とを備えたことを特徴とする粒子移動/固定装置。
  2. 前記基材は光透過性材料からなるものであり、前記粒子収容部はその基材の片側面のみにて開口する非貫通の凹部であることを特徴とする請求項1に記載の粒子移動/固定装置。
  3. 前記凹部の内側面は前記基材の厚さ方向に対して所定の角度をなし、かつ同凹部の底面は前記基材の面方向に対して略平行であることを特徴とする請求項2に記載の粒子移動/固定装置。
  4. 前記基材はほう珪酸ガラス製であり、前記凹部は等方性エッチングにより形成されたエッチング凹部であることを特徴とする請求項2または3に記載の粒子移動/固定装置。
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