JP4198534B2 - アンカー用スペーサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばロックボルト等のアンカーを地盤に設置する場合、掘削した孔に対して、その孔心位置にアンカーを保持するためのアンカー用スペーサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロックボルトやグラウンドアンカーなどの各種アンカーが地盤安定化の手段として多用されている。これらのアンカーは、頭部を残して掘削孔に挿入した状態でその周囲に適宜のグラウト材を充填することにより地盤に定着される。この定着作業においては、それらグラウト材の被り厚を適正に確保することが重要である。このため、アンカーを掘削孔の中心すなわち孔心に位置させる各種形状のスペーサ(センタライザとも称される。)が一般的に使用され、アンカーの挿入部分に対して所定の間隔毎に複数個が装着される。
【0003】
斯かるスペーサの代表的な従来例としては、下記の特許文献1及び特許文献2に記載のものが知られている。その基本構成は、周壁の一部が分断され径方向の内外に拡縮変形が可能な略円筒状の把持部と、円周方向に互いにほぼ等間隔で設けられ径方向外方に膨出した複数の間隔保持片部とからなる。そして、これらスペーサは、アンカーの長手方向の適宜位置にその円筒状部分を嵌合させると、アンカー外周面から放射状に飛び出している複数の間隔保持片部がそれぞれ掘削孔の内面に当接することにより、アンカーを掘削孔の中心位置に保持するものである。なお、多くの地盤では、礫や土砂または岩盤等が入り交じり、均一な地質ではない。このため、掘削孔の直進性が低下したり、全長に渡って断面真円とならずに歪な部分が形成されたりする。このような事情から、掘削孔への挿入時に大きな抵抗とならず且つ挿入後においてアンカーを中心位置に保持しなければならない上記スペーサの間隔保持片部には、掘削孔の壁面状態に追随可能な適度の弾性変形能力が望まれる。
【0004】
【特許文献1】
特公昭64−537号公報(第1頁第2欄第15行−第2頁第4欄第12行、第1図及び第2図)
【特許文献2】
実公平6−7120号公報(第2頁第4欄第30行−第3頁第5欄第6行、第1図及び第2図)
【0005】
上記特許文献1に記載のスペーサは、把持部が開放した構成になっているが、その形状からしてアンカー端部からの挿入を前提とするものである。すなわち、図面から明らかなように、開放部における把持部周壁の両側端縁部分が打抜き状態のままであり、特にアンカー外径に対する開放部の幅もかなり狭いので、アンカー側面からの装着は困難である。さらに、アンカー端部からの挿入となるから、長手方向の所定位置まで円滑に移動できるようにするため、両方の把持部の内径はアンカー外径よりも幾分大きく設定されている。したがって、アンカーに対する固定は、スペーサを端部から所定位置までずらした後、各間隔保持片部の膨出部分を握り込むなどして把持部の内径を縮め、適宜の結束線で把持部を緊結する必要がある。
【0006】
このように両端側の把持部が固定されると、各間隔保持片部は、これと一体になっている把持部により両端側で拘束されることから、スペーサがバネ鋼板等の弾性材料で形成されていた場合では、その弾性変形能力が大幅に抑制されてしまう。このため、掘削孔への挿入時において、各間隔保持片部は孔の楕円状部分などを通過する際に、その孔壁内面の状態に合わせて円滑に弾性変形することができず、大きな抵抗が生じる。したがって、この場合には、挿入性の低下が避けられない。さらに、非装着状態で円周方向に均等配置されている4個の間隔保持片部は、装着状態での把持部の縮径に伴い均等配置から外れることになる。しかしながら、各間隔保持片部はその両端側で把持部に拘束されるため、その頂部である当接部分が孔壁内面に追随して正対するような周方向への変形ができない。このことは、挿入性の低下や偏心の原因にもつながる。一方、非弾性材料によりスペーサを形成した場合では、直進性あるいは真円性の悪い掘削孔に適用したとき、挿入途中で塑性変形した間隔保持片部が元の状態に戻らず、アンカーを孔心に位置させることができないという問題がある。
【0007】
次に、特許文献2に記載のスペーサは、アンカーに対して側面から装着する点で特許文献1のものとは異なる。この場合、スペーサはバネ鋼板等の弾性材料で形成され、把持部の締付力によりアンカーに固定される。そして、各間隔保持片部は、略円筒状の把持部の一端側において径方向外方に向けて膨出している。これらは一体成形であることにより、間隔保持片部の基部すなわち把持部に近い部分では、把持部の円筒形状の影響を受けて曲面状に形成されている。このため、このスペーサでは、間隔保持片全体としての弾性変形が抑制され、実質的には自由端側に近い部分のみが変形可能領域となっている。したがって、挿入の際に間隔保持片部の先端が掘削孔の内壁面に引っ掛かったり、内壁面を削ることもあり、このスペーサの挿入性は必ずしもよくない。そして、そのような食込みがあった場合には、アンカーを孔心に位置させることができないなど、このスペーサにおいても上記従来例と同様に解決すべき問題が残されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、これら従来技術の問題点について鋭意検討を重ねた結果、本発明に想到したのである。すなわち、本発明では、掘削孔への挿入性が向上するとともに、挿入したときに軸心のずれが生じにくいアンカー用スペーサの提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係るアンカー用スペーサでは、周壁の一部が軸心方向に沿って開放した略円筒状に形成され、アンカーをその開放部側から内部に受け入れて弾発的に把持する把持部、この把持部の一端側にあって互いに周方向にほぼ等間隔でアンカーの長手方向に沿って延在するとともに径方向外方に膨出し、当該膨出部分の頂部を掘削孔の壁面に弾発的に当接せしめてアンカーと壁面の間を所定の間隔に保持する2個以上の間隔保持片部、及びこれら間隔保持片部の少なくとも他端側にあって把持部の開放部とほぼ同じ周方向位置で周壁の一部が開放し、アンカーをその開放部側から内部に遊嵌状態で受け入れる筒状部の各部位が、弾性金属板の一体成形により一体に形成され、前記間隔保持片部が、頂部を除いた長手方向の少なくとも一部にそれぞれ断面欠損部を備えることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、両側に位置する把持部および筒状部に対して、両方の端部がそれぞれ一体的に繋がってる各間隔保持片部は、一端側において把持部により固定されるが、他端側では筒状部がアンカーに対して遊嵌状態であることから、弾性金属板の一体成形からなるその膨出部分の径方向への拡縮変形に伴い、筒状部と一体になってアンカーの長手方向に進退可能になっている。すなわち、複数の間隔保持片部の少なくとも1個が、掘削孔内面に突出した岩石等に接触して内方(アンカー側)に押圧されたときには、それらが両端側において略円筒状の把持部と筒状部とにそれぞれ繋がり、その全体的な円筒形状に基づく剛性により個別の間隔保持片部の変形が抑制され、全ての間隔保持片部が連動してアンカーの長手方向に伸びるような変形をする。本発明では、各間隔保持片部に掘削孔内面への当接部となる頂部を除いた長手方向の少なくとも一部にそれぞれ断面欠損部が存在し、当該部位の断面性能が低下している。その結果、上述した把持部と筒状部による拘束力が低減され、各間隔保持片部は、本来の弾性変形能力を十分に発揮することができる。したがって、このスペーサを装着したアンカーは、挿入時において各間隔保持片部が掘削孔内面の凹凸状態に追随して無理なく弾性変形をするので挿入性が向上するとともに、アンカーを孔心に設置させることが可能になる。
【0011】
さらに、上記構成における各間隔保持片部の断面欠損部として、頂部よりも幅の狭い切欠部とすれば、プレス成形による製造において、各間隔保持片部の打抜き工程で同時に形成することができるので好都合である。また、断面欠損部の位置は、各間隔保持片部の両端側すなわち把持部と筒状部のそれぞれ近い部位に設けると、より効果的である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係るアンカー用スペーサは、両端側がそれぞれ把持部と筒状部に繋がるとともに、中間部分が径方向外方に膨出し、その頂部を掘削孔の内壁面に弾発的に当接する2個以上の間隔保持片部に、それぞれ断面欠損部を設けた点に技術的な特徴がある。すなわち、各間隔保持片部に対して、頂部を除いた長手方向の少なくとも一部にそれぞれ断面欠損部を設け、断面性能の低下した部分を形成する。これにより、剛性の高い略円筒状の把持部ならびに筒状部との一体化構造に基因する各間隔保持片部に対する拘束力を低減し、各間隔保持片部が本質的に備える弾性変形能力を発揮できるようにした。
【0013】
ここで、上記断面欠損部としては、掘削孔内面に対する当接部分となる頂部に対して、例えばそれよりも幅の狭い切欠き部分、あるいは幅は同じで肉厚が薄い部分などがこれに該当し、各間隔保持片部につき少なくとも1個所あればよい。それら断面欠損部の位置は、把持部ならびに筒状部との境界部付近もしくはこれに近い位置が好ましく、さらに両端側にそれぞれ設けるのが好適である。また、前記切欠きに代えて、頂部から両端側に向けてその幅が漸減するようにしてもよい。これら断面欠損部の形成方法は、例えばバネ鋼板を素材とする場合には、平板の状態で間隔保持片部間をプレス成形により櫛歯状に打ち抜く際に、各間隔保持片部の把持部側あるいは筒状部側、もしくはその両方について、その幅が狭くなるように同時に切り欠くようにすればよい。前記のように幅を連続的に減少させる場合も同様である。次いで、把持部と筒状部になる各歯の基端側部分を円筒状に丸めながら間隔保持片部を外側に膨出させることにより、本発明のスペーサが得られる。なお、筒状部は、少なくとも間隔保持部片の他端側にあることが必須要件であるが、さらに把持部と間隔保持片部の間にも設けてもよい。
【0014】
なお、間隔保持片部の数は2個以上あれば格段の限定はないが、好ましくは4個である。例えば、間隔保持片部が3個の場合には、把持部および筒状部の開放部側端部の近くに1個ずつと、当該開放部側端部に対して軸心を挟む対向位置に残りの1個を配置すればよく、各間隔保持片部間はほぼ120度になる。また、間隔保持片部が2個の場合には、開放部と軸心を結ぶ線に対して直交する対向位置に各1個ずつ配置すればよい。その材質については、削孔径の適用範囲が拡大するなどの理由によりバネ鋼板などの弾性に富む弾性金属板が好適である。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1ないし図4は、本発明に係るアンカー用スペーサの第一実施例を示し、それぞれ正面図、左側面図、底面図および右側面図である。図示のアンカー用スペーサ1は、適度な弾性を有する鋼板の一体成形からなり、略円筒状の把持部11と、その軸心方向の一端側に把持部11と一体に設けられた4個の間隔保持片部12と、これら間隔保持片部12の他端側に配置される筒状部13で構成されている。
【0016】
この把持部11は、図2,3に示されるとおり、周壁の一部が軸心方向に分断されて開放状態となり、その開放部14を形成する周壁の両側端部11a,11aが外周面側に折り返されている。さらに、開放部14に対して軸心を挟む対向位置の周壁内面には突起11bが設けられている。この突起11bは、例えば異形棒鋼などのように外周面に節が存在するアンカーに対して、適宜位置でその節に掛合することにより、挿入に伴う長手方向への変位を防止するものである。この突起11bは本発明において必須要件ではなく、設ける場合でも適宜数を把持部11の適宜場所に設ければよい。なお、図2から明らかなように、本実施例における把持部11は、周壁全体が同じ曲率ではなく、突起11b側の円弧部分がその両側部分の円弧よりも大きな曲率で形成され、平らに近いものになっている。これは、適用対象となるアンカー(ロックボルト)の断面形状に合わせたためであり、必ずしもこれに限定されない。
【0017】
一方、筒状部13は、図4等に示すように、把持部11と同様に周壁の一部が軸心方向に沿って開放されるとともに、開放部15を形成する両側端部13a,13aが外周面側に折り返されている。ただし、その内径が適用すべきロックボルトの外径よりも大きく設定されている点が上記把持部11とは異なる。これは、掘削孔への挿入時において、後述する4個の間隔保持片部12の縮径変形に伴い、筒状部13がロックボルト上を長手方向へ円滑に変位できるようにするためである。なお、開放部15の間隔は、把持部11の開放部14も含めてロックボルト外径よりも小さく設定される。また、図3等から明らかなように、それら開放部14,15の周方向上での位置はほぼ一致している。
【0018】
そして、4個の間隔保持片部12は、把持部11と筒状部13との間にあってその中央部分が最大径となるように円弧状に膨出し、図2,4から明らかなように、周方向においてほぼ90度間隔で配置されている。この場合、対向位置にある間隔保持片部の最大径部(頂部)である中央部分間の間隔は、掘削孔の内径よりも幾分か大きく設定されている。さらに、各間隔保持片部12における長手方向の両端部分、すなわち把持部11と筒状部13との境界付近は、それぞれ両側に設けられた円弧状の切欠部12aにより他の部分の幅よりも狭く形成され、これら狭幅部分が本発明の技術的特徴である断面欠損部となっている。なお、頂部間の間隔は、掘削孔の内径と同じか、それ以下でもよい。要は、アンカーを掘削孔の中心近くに保持し、必要な被り厚が確保されればよい。
【0019】
次に、上記アンカー用スペーサ1の使用方法について説明する。図5は、アンカー用スペーサ1が装着されたロックボルトR(アンカー)を掘削孔Hに設置した状態を示すものである。ここで使用されるロックボルトRは、ネジ節型の異形棒鋼からなり、その外周面には長手方向に沿って2個の平坦部が軸心を挟む対向位置に形成され、ネジ節がそれら平坦部により分断された形状になっている。装着にあたっては、ロックボルトRの所定位置において、把持部11の開放部14と筒状部13の開放部15とをネジ節の列に向けて宛がい、後方から強く押し付ける。これにより、それぞれの両側端部11a,11aと両側端部13a,13aとが、素材の弾性に抗しながらロックボルトRの平坦部間の幅以上に開き、さらに押し込むと、開放部14,15が平坦部を乗り越え、把持部11と筒状部13の内部にロックボルトRが嵌入する。ここで、把持部11はロックボルトRを外周面側から弾発的に把持することになるが、筒状部13においては、その内径がロックボルトRの外径よりも大きいことから把持せず、長手方向への変位を妨げないようになっている。ただし、開放部15の幅が平坦部間の幅よりも狭いため、筒状部13がロックボルトRから容易に外れることはない。このようにして、本発明によるアンカー用スペーサ1は、ワンタッチ操作でロックボルトRに装着することができる。なお、把持部11による把持力を高めてより確実な外れ防止を図る場合には、例えば両側端部11a,11aと両側端部13a,13aの折返し部分の裏側に跨って開き止めをするコ字状のクリップの使用、あるいは両側端部11a,11aと間隔保持片部12との境界部分に結束線を巻き付けるなど、適宜の補助部材の使用が有効である。
【0020】
ここで、円弧状に外側へ湾曲した各間隔保持片部12において、アンカー用スペーサ1の軸心からその最大径部分となる中央の頂部までの距離は、掘削孔Hの半径よりも少し大きく設定されている。また、スペーサ1は把持部11側がロックボルトRの先端側となるように装着される。そして、ロックボルトRの掘削孔Hへの挿入に伴い、まずスペーサ1の各間隔保持片部12が掘削孔Hの入り口に当接し、ロックボルトRに負荷された押圧力によりその前方側の傾斜面が押されると、ロックボルトR側に倒れるように変形する。すなわち、中央の頂部が縮径する方向の力を受けることになる。この際、各間隔保持片部12では、次に詳述するように切欠部12aの存在により把持部11と筒状部13から受ける拘束力が減少し、本来備える弾性変形能力が回復している。さらに、筒状部13はロックボルトRに対して適度な隙間を残した状態で包囲していることから、各間隔保持片部12の拡縮変形に連動して筒状部13側が長手方向に進退可能になっている。したがって、このスペーサ1が装着されたロックボルトRは、掘削孔Hの内面の凹凸に応じて各間隔保持片部12が適宜弾性拡縮変形をすることで、掘削孔Hに無理なく挿入され、その中心位置に設置することができる。
【0021】
図6ないし図9は、上記各間隔保持片部12の拡縮変形のメカニズムを示す説明図であり、図6,7は間隔保持片部に断面欠損部が存在する本発明の実施例、図8,9は断面欠損部の無い比較例である。本発明に係るスペーサ1では、各間隔保持片部12が、その両端側において略円筒状の把持部11と筒状部13に繋がる一体構造の採用により、個々の自由な弾性変形が少なからず拘束されている。このため、間隔保持片部12のうちのどれか1個でも内方への押圧力を受けると、間隔保持片部12が湾曲状態から偏平状態に変化するに伴い、筒状部13を後方に押しやる。その際には、筒状部13に対して他の間隔保持片部12も同じように繋がっているので、それらも連動して同様に縮径変形をする構造になっている。
【0022】
図6,7に示す本発明のスペーサ1では、各間隔保持片部12の把持部11と筒状部13との境界付近に、それぞれ円弧状の切欠部12aが各2個ずつ存在している。すなわち、同じ板厚からなる各間隔保持片部12において、切欠部12aが存在する両端部分では、頂部等の他の部分よりも幅が狭く、断面性能が低下している。このような断面欠損部分(切欠部12a)の存在により、各間隔保持片部12の自由な変形に対して、把持部11と筒状部13がその円筒形状に基づき及ぼしていた拘束力が低減されることになる。したがって、各間隔保持片部12が備える本来の弾性変形能力を十分に発揮できる状態となる。この場合、各間隔保持片部12の少なくともいずれかに対して、外側から軸心に向けた径方向の力を負荷すると、最大径部分に相当する中央の頂部における半径がL1だけ減少すると同時に、スペーサ1の全長がL2だけ伸びる。これに対して、図8,9に示す同じ板厚・寸法で切欠部のない比較例では、同じ力を負荷したときの変形量はそれぞれM1、M2であり、L1>M1かつL2>M2の関係となる。すなわち、切欠部12aを備える実施例のスペーサ1では、各間隔保持片部12がそれを持たない比較例のものに比べて弾性変形しやすくなっている。
【0023】
なお、4個の間隔保持片部12が実施例のような配置であった場合、開放部14,15に隣接する2個の間隔保持片部12は、開放部14,15の存在や把持部11と筒状部13が断面楕円状であることにより、プレス成形したときにそれぞれ対向位置に配置された他の間隔保持片部12に対して正対位置からずれやすい。すなわち、対向位置にある各間隔保持片部12の頂部においては、それらの面と面とが平行関係から外れることになる。このような場合でも、断面欠損部分(切欠部12a)を設けたことにより、間隔保持片部12を適宜捻じるなどして正対位置に容易に調整することができる。
【0024】
図10ないし図16は、それぞれ本発明に係るアンカー用スペーサの異なる実施例である。なお、前記実施例と同一部分については、重複する説明を省略する。図10に示すスペーサ2は、把持部21と筒状部23の間に4個の間隔保持片部22が配置される点は前記実施例と共通するが、断面欠損部の形状が異なる。すなわち、これらの間隔保持片部22は、最大径部分として中央に位置する所定長さの頂部22aに対して、両端側部分22bがそれぞれ把持部21と筒状部23に近づくにつれて幅が狭くなるテーパ状に形成され、このテーパ状の狭幅部分が断面欠損部に相当するものである。
【0025】
図11に示すスペーサ3では、各間隔保持片部32の中央(頂部)の幅が最も広く、両端に位置する把持部31と筒状部33に向けてそれぞれ円弧状に幅が狭くなっている。この場合には、明確に区分されるものではないが、両端側部分が断面欠損部となる。その他の部分については、前記各実施例と同様である。
【0026】
図12に示すスペーサ4は、長手方向に同じ幅の間隔保持片部42の一部に切欠部42aを有する点で前記第一実施例のスペーサ1に近いものである。この場合、切欠部42aは把持部41と筒状部43の周縁部分も含めて切り欠くように形成されている。
【0027】
図13に示すスペーサ5における間隔保持片部52は、所定長さの頂部52aに対して、それぞれ把持部51と筒状部53に続く両端側部分52bが、一定幅で狭く形成され、これが断面欠損部になっている。
【0028】
図14に示すスペーサ6は、前記第一実施例のスペーサ1に近いものであるが、各間隔保持片部62における断面欠損部としての切欠部の位置が異なっている。この場合、所定長さの頂部62aに近い位置に切欠部62bが設けられ、把持部61と筒状部63との境界部分は他の部分と同じ幅に形成されている。
【0029】
図15は、断面欠損部の形成方法が前記各実施例とは異なるスペーサの要部を示している。すなわち、図示のスペーサ7では、各間隔保持片部72の幅は長手方向の全長において同じであるが、把持部71と筒状部(図示せず)の境界付近に薄肉部72aが形成されている。この薄肉部72aの存在により、断面性能が低下し、把持部71等による各間隔保持片部72に対する拘束力を低減している。なお、薄肉部72aは各間隔保持片部72の表側でもよい。
【0030】
図16に示すスペーサ8は、前記各実施例とは異なり、筒状部83,84を各間隔保持片部82の両側に設けたものである。すなわち、このうちの一方の筒状部83がスリット85を挟んで把持部81に連接されている。なお、スリット85は円周の大半を占め、把持部81と筒状部83とは円周の一部で繋がっている。そして、各間隔保持片部82は前記第一実施例のスペーサ1と同様に筒状部83,84との境界付近に切欠部82aが形成され、これらが断面欠損部となっている。斯かる構成では、把持部81がアンカー径の大小に応じて拡大変形をしても、その影響は各間隔保持片部82にはほとんど至らない。
【0031】
なお、上記各実施例では、断面欠損部を各間隔保持片部の両側に設けた事例について説明したが、片側のみでもよく、また間隔保持片部の数を変更することはもちろん可能であり、さらに把持部を楕円状や真円状にするなど、この発明の技術思想内での種々の変更実施はもちろん可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るアンカー用スペーサでは、両端側に把持部と筒状部を備え、径方向外方に膨出してその頂部を掘削孔の壁面に弾発的に当接せしめてアンカーと壁面の間を所定の間隔に保持する間隔保持片部を、把持部と筒状部とともに弾性金属板の一体成形により形成し、さらに間隔保持片部にそれぞれ断面欠損部を設け、剛性の高い略円筒状の把持部ならびに筒状部が各間隔保持片部に及ぼす拘束力を低減し、各間隔保持片部が本質的に備える弾性変形能力を発揮できるようにした。これにより、掘削孔へのアンカーの挿入が容易になり、アンカーを確実に掘削孔の中心位置に設置することができるなど、本発明の実用上の効果はきわめて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるアンカー用スペーサの一例を示す正面図である。
【図2】 上記アンカー用スペーサの左側面図である。
【図3】 上記アンカー用スペーサの底面図である。
【図4】 上記アンカー用スペーサの右側面図である。
【図5】 上記アンカー用スペーサの使用状態を示す側面図である。
【図6】 上記アンカー用スペーサにおいて、間隔保持片部の拡縮変形のメカニズムを示す説明図である。
【図7】 図6の左側面図である。
【図8】 比較例のアンカー用スペーサにおいて、間隔保持片部の拡縮変形のメカニズムを示す説明図である。
【図9】 図8の左側面図である。
【図10】 本発明によるアンカー用スペーサの他の例を示す正面図である。
【図11】 本発明によるアンカー用スペーサの他の例を示す正面図である。
【図12】 本発明によるアンカー用スペーサの他の例を示す正面図である。
【図13】 本発明によるアンカー用スペーサの他の例を示す正面図である。
【図14】 本発明によるアンカー用スペーサの他の例を示す正面図である。
【図15】 本発明によるアンカー用スペーサの他の例において、その要部を示す説明図である。
【図16】 本発明によるアンカー用スペーサの他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
1,2,3,4,5,6,7,8…アンカー用スペーサ、11,21,31,41,51,61,71,81…把持部、12,22,32,42,52,62,72,82…間隔保持片部、12a,42a,62b,82a…切欠部、13,23,33,43,53,63,83,84…筒状部、14,15…開放部、22a,52a,62a…頂部、R…ロックボルト
Claims (3)
- 周壁の一部が軸心方向に沿って開放した略円筒状に形成され、アンカーをその開放部側から内部に受け入れて弾発的に把持する把持部、この把持部の一端側にあって互いに周方向にほぼ等間隔でアンカーの長手方向に沿って延在するとともに径方向外方に膨出し、当該膨出部分の頂部を掘削孔の壁面に弾発的に当接せしめてアンカーと壁面の間を所定の間隔に保持する2個以上の間隔保持片部、及びこれら間隔保持片部の少なくとも他端側にあって把持部の開放部とほぼ同じ周方向位置で周壁の一部が開放し、アンカーをその開放部側から内部に遊嵌状態で受け入れる筒状部の各部位が、弾性金属板の一体成形により一体に形成されたアンカー用スペーサであって、前記間隔保持片部は、頂部を除いた長手方向の少なくとも一部にそれぞれ断面欠損部を備えることを特徴とするアンカー用スペーサ。
- 前記断面欠損部が、頂部よりも幅の狭い切欠部であることを特徴とする請求項1に記載のアンカー用スペーサ。
- 前記断面欠損部が、各間隔保持片部の両端側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンカー用スペーサ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003160603A JP4198534B2 (ja) | 2003-06-05 | 2003-06-05 | アンカー用スペーサ |
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