JP4197914B2 - 半凝固金属温度測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半凝固金属温度測定方法に関し、特に、熱電対を有する温度計によって半凝固金属の内部の温度を測定する際に、温度計に付着する金属の量を抑制し、半凝固金属との接触による温度計の損耗を防止する半凝固金属温度測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、注目されている新しい成形技術として、チクソキャスティング法、レオキャスティング法等の半溶融金属又は半凝固金属(スラリ)による成形法がある。これらの成形法は、従来の鋳造法に比べて収縮巣や偏析が少なく、半溶融金属又は半凝固金属内の金属組織が均一であるために、成形された製品の機械的性質が優れており、しかも、金型の寿命が長いことや、成形サイクルが短いこと等によるコスト低減の利点がある。
【0003】
これらの成形方法においては、成形する原材料の熱量が溶湯の半分しかないために、油を用いて金型を加熱して温度調整することが通常行われている。このため、半溶融金属又は半凝固金属による成形法においては、成形時に供給される原材料の温度さえ調整できていれば、1ショット目から良品を成形製品として得られることになる。
【0004】
半溶融金属成形法においては、その原材料を加熱するために、1ショット目から成形できる状態が整っている。一方、一定温度の溶湯を一定温度の保持容器に注湯して冷却することによって、目標とする温度と、金属組織とを有する半凝固金属を製造する方法においても、実験室ベースでは、一応、半溶融金属成形法と同様に、1ショット目から成形できる状態が整っている。
【0005】
この様に、レオキャスティング法等は、従来の鋳造法に比べて鋳造欠陥が少なく、成形サイクルが短い鋳造成形を可能にするが、工業的に、良品を量産するためには、射出スリーブに装填する半凝固金属の金属組織を微細かつ均一に管理することが不可欠となる。即ち、レオキャスティング法等では、鋳造装置に半凝固金属を供給する半凝固金属生成装置の適否が、鋳造性能に密接に影響を及ぼす鋳造法である。半凝固金属生成装置には、溶湯カップ内に注湯された溶湯を均一に冷却しながら、球状に近い微細な結晶を安定して生成させ、所定の固相率に調整することが求められる。
【0006】
このため、所望の固相率を有する半凝固金属を生成する種々の半凝固金属生成装置が提案されており、更には、レオキャスティング鋳造が本来有する生産性を有効に利用して、鋳造ショットに合わせて連続的に半凝固金属を自動的に生成する半凝固金属生成装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
そこで、このレオキャスティング法のための半凝固金属生成装置の概要を、図3及び図4に示した。この半凝固金属生成装置では、液相金属と固相金属とが混在する固液共存状態にある半凝固金属を連続的に生成できるように構成されており、図3(a)に示されるように、複数の溶湯保持容器1を載置でき、複数に区画した作業ステーションA乃至Hを鋳造ショット毎に一定の角度分だけ、回転駆動部3により順次回転移動する回転テーブル2が備えられている。回転テーブル2の上面は、作業ステーションA乃至Hに対応して等間隔に分割されたポジションがあり、各ポジションの夫々には、溶湯保持容器が載置される容器ホルダ3が配設されている。
【0008】
なお、図3(a)では、回転テーブル2の上方から見た状態を示しているが、図3(b)では、回転テーブルにおける加熱作業ステーションの横方向から見た状態を示している。図4は、図3(a)に示したX−X線で切り欠き、展開された状態を示しており、溶湯保持容器1が各作業ステーションC乃至Hを順次移動していく状態が表されている。
【0009】
図4に示されるように、回転テーブル2の上方には、作業ステーションC乃至Gに対応した冷却1乃至冷却5の冷却ユニットと、作業ステーションHに対応した加熱ユニットとが配設されている。5つの冷却ユニットは、昇降駆動部により上下する昇降支持部6で一括支持されており、加熱ユニットは、固定された加熱部支持部61で支持されている。
【0010】
冷却ユニットの夫々には、冷却用エアーを噴出する複数の噴出口を有するエアー噴出ノズル部7が備えられ、回転テーブル2が一定角度分だけ回転駆動されて、保持容器1が各作業ステーションC乃至Gに移動してきたとき、昇降支持部6が降下され、その後に、エアー噴出口から個々の冷却条件に応じた量のエアーが噴出するように制御される。
【0011】
保持容器1は、回転テーブル2上に載置されるときには、その底面部に容器ホルダ3によって断熱保持され、該底面部から冷却されることを防いでいる。また、保持容器1の上部から冷却させないために、冷却作業ステーションC乃至Gの各冷却ユニットには、昇降支持部6が下降したとき、保持容器1の上端部を覆う断熱性の容器蓋9が設けられている。この様に、各保持容器1が冷却作業ステーションC乃至Gに夫々移動したときには、保持容器1の上端部と底面部が断熱されているので、各保持容器1の円周側面部分がエアーによって冷却されることになる。
【0012】
加熱ユニットには、保持容器1内の半凝固金属を誘導加熱するための高周波誘導加熱コイル8が備えられ、回転テーブル2が一定角度分だけ回転駆動されて、保持容器1が加熱作業ステーションHに移動してきたとき、保持容器昇降部21によって、保持容器1が上昇され、誘導加熱コイル8内に挿入される。ここで、加熱条件に応じた量の加熱が制御される。
【0013】
加熱作業ステーションで一定時間待つことによって、保持容器1内の半凝固金属の温度が均一化され、また、冷却作業ステーションで生成された半凝固金属の状態が取出されるまで維持され、更なる冷却を防止し、或いは、半凝固金属を所定温度まで加熱している。半凝固金属生成装置で生成された半凝固金属の最終温度を確認するため、加熱ユニットの容器蓋9に熱電対による温度計10が突設されている。加熱作業ステーションHに保持容器1が移動され、保持容器昇降部21によって誘導加熱コイル8内に、保持容器1が挿入されたとき、温度計10の先端が、保持容器1内の半凝固金属表面を突き破り、内部に挿入される。そして、保持容器1が取出し作業ステーションAに移動するときに、温度計10によって、半凝固金属の最終温度が計測される。
【0014】
以上のように、半凝固金属生成装置を構成することにより、取出し作業ステーションAで装着された保持容器1が、回転テーブル2によって鋳造ショット毎に一定の角度分だけ移動し、給湯作業ステーションBにおいて、給湯装置(図示なし)から保持容器1に溶湯が注湯され、さらに、回転テーブル2が一定角度分だけ所定間隔を置いて回転することにより、保持容器1は、各冷却作業ステーションC乃至Gにおいて、給湯温度から順次低い温度に冷却されていく。この過程で、鋳造に最適な固相率を有する半凝固金属となる温度に冷却され、最後に、加熱作業ステーションHに移動し、保持容器1内の半凝固金属が加熱されて、最終の目標温度に調整される。この様に、回転テーブル2上に順次供給される複数の保持容器1が、各作業ステーションで順次冷却及び加熱されることにより、鋳造ショットに合わせて、半凝固金属が、自動的に連続して製造される。
【0015】
【特許文献1】
特開2000−280064号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、半凝固金属を工業的に連続して製造する場合、給湯装置によって注湯された溶湯保持容器は、室温にある半凝固金属生成装置に接触することによって抜熱されるため、半凝固金属生成装置の稼動開始時に半凝固金属の冷却が速くなること、しかも、該生成装置の温度が外気温度に依存することとなるため、例えば、季節により、半凝固金属の冷却履歴が変化してしまう。
【0017】
この冷却履歴を示す温度の遷移状態を、図5に示した。図中の横軸は、時間を示し、回転テーブル上の一つの保持容器が、その回転に伴って各作業ステーションで処理される時間を表している。給湯開始時をt0、半凝固金属の取出し時間をtxとしている。従って、(tx−t0)の時間が、回転テーブルの1回転に相当し、等間隔に区分された各時間が、鋳造ショットに対応している。
【0018】
ここで、給湯時t0における温度T0の溶融金属が冷却されて、取出される半凝固金属の最適固相率となる目標温度TXが得られる理想状態(理想特性)の温度プロファイルを太線で示した。丸印は、各作業ステーションで処理された最終実測温度を表している。上述した半凝固金属生成装置において、目標温度TXの半凝固金属が得られるように、各作業ステーションにおける冷却条件及び加熱条件が調整され設定され、該装置が定常状態で運転される。
【0019】
しかし、半凝固金属を工業的に連続して製造しようとする場合に、製造装置自体を恒温維持しておくことは、非現実的であり、この様なことは行われない。そのため、運転が停止されて、次に運転を開始するときには、製造装置自体が、未だ室温にあり、或いは、季節による温度変動の影響を受けて、最適運転環境に立ち上がっていない。
【0020】
温度の遷移状態は、図5に示されるように、生成1個目に対しては、初期状態になり、その後に続くものに対しては、過渡状態のようになる。前に設定して目標温度TXが得られる温度プロファイルに従って以前に設定された冷却条件及び加熱条件のまま運転したのでは、定常状態の白丸印の温度となるべきところ、黒丸印の温度になり、当該目標温度TXを達成できなく、例えば、アルミニウム合金AC4Cの場合であれば、最終温度が半凝固金属温度の温度許容幅±2℃を超えることになる。この様に、取出し時の最終温度が、半凝固状態の温度許容幅に入らない初期状態、過渡状態のような場合には、半凝固金属の固相率が高くなり、鋳造された製品は、不良品となってしまう。温度低下の大きさによっては、溶融金属が固体となり、保持容器から取出せないという障害が発生する。
【0021】
そのため、半凝固金属製造装置を稼動させ、該装置自身の稼動が定常状態になる、つまり、最適運転環境に立ち上がるまでは、オペレータが手動で半凝固金属の温度制御を行って、取出し時点での温度が目標温度の許容範囲内に入るように、各作業ステーションの冷却条件と加熱条件を設定する必要があった。
【0022】
そこで、生成された半凝固金属の最終温度を、半凝固金属毎に正確に測定し、その測定温度が目標温度の許容範囲に入っているかどうかの確認をしなければならない。前述した半凝固金属生成装置では、半凝固金属の最終温度は、加熱作業ステーションHで加熱処理された後、保持容器が取出し作業ステーションに移動するときに測定される。
【0023】
図6に、加熱作業ステーションにおける温度計10による半凝固金属の温度測定の様子を示した。同図では、保持容器1が、冷却5の冷却作業ステーションGから加熱作業ステーションHに移動され、保持容器昇降部21によって誘導加熱コイル8内に挿入されたときの状態を示している。加熱ユニットには、保持容器1の上部を覆う容器蓋9があり、この容器蓋9の下面には、熱電対が先端に組み込まれた温度計10が突設されている。そのため、保持容器1が誘導加熱コイル8内に挿入され、上昇してきたとき、温度計10の先端が、保持容器1内に保持されている半凝固金属の表面を貫通する。そして、保持容器昇降部21が上昇を停止したとき、温度計10の先端が半凝固金属内の測定点に到達している。
【0024】
加熱作業ステーションHでは、保持容器1内の半凝固金属に対して、温度均一化処理が行われるので、多点で温度測定することなく、保持容器1の中央であって、半凝固金属表面から所定の深さの一点を、全体の温度を代表して測定するようにしている。
【0025】
しかしながら、この様に、半凝固金属内に温度計10を直接挿入して温度計測する場合、保持容器1の開口部にある半凝固金属が冷却されて固相率が高くなっているため、温度計10が、半凝固金属内に挿入されるときに、この高固相率部分の貫通の際に、温度計10のシースと高固相率部分と強く接触することとなり、そのシースが磨耗し、温度計の使用寿命が短いものであった。そのため、半凝固金属の量産を行うときには、温度計の交換が多くなり、交換費用も嵩むものとなるという問題があった。
【0026】
また、温度計10を半凝固金属内に直接挿入していることから、温度計10の外側に金属が成長してしまう。その結果、温度計10の応答性を損なうこととなり、正確な温度計測ができなくなるという問題がある。温度計10の外側に成長した金属を、測定の都度、取り除けばよいが、この作業は、煩わしいことであり、しかも、その作業のために、半凝固金属生成装置の運転を停止しなければならないという問題もある。
【0027】
そこで、これらの問題点に鑑み、本発明は、上述した、回転テーブル上に順次供給される複数の保持容器が、複数の作業ステーションで順次冷却及び加熱されることにより、半凝固金属が、鋳造ショットに合わせて自動的に連続して製造される場合において、生成された半凝固金属の最終温度を測定する際に、温度計に付着する金属の量を抑制し、半凝固金属との接触による温度計の損耗を防止する半凝固金属温度測定方法を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
以上の問題点を解決するため、本発明では、容器内で生成される固液共存状態の半凝固金属中に、先端に熱電対を有する温度計を挿入し、内部温度を測定する半凝固金属温度測定方法において、前記半凝固金属の表面から棒を挿入する挿入段階と、前記棒を抜き取り、前記表面に穴部を形成する形成段階と、前記穴部内に液相領域を生成する生成段階と、前記液相領域中に前記温度計を挿入して温度を測定する測定段階とを含めた。
【0029】
そして、前記半凝固金属は、複数段からなる冷却工程と、その後の加熱工程とに従って生成され、所定の固相率となる目標温度に制御されるものであり、前記挿入段階と前記形成段階は、最後段の冷却工程で行われることとした。
【0030】
さらに、前記生成段階は、前記冷却工程から前記加熱工程に移行するときに行われ、前記測定段階は、前記加熱工程において行われるようにした。
【0031】
前記温度計は、前記半凝固金属への挿入前に前記目標温度より僅かに低い温度に加熱されるようにし、前記棒は、前記温度計の太さに対して、少なくとも1/2以上の太さを有することとした。
【0032】
また、前記挿入段階において、前記棒の先端は、前記表面の固相率が高い領域を超えた深さに挿入され、前記測定段階において、前記熱電対は、前記穴部内の前記液相領域又は該穴部の底部の固液共存領域に挿入されることとした。
【0033】
さらに、前記半凝固金属は、アルミニウム合金又はマグネシウム合金であるとし、前記半凝固金属の温度測定中の固相率は、30%から70%の範囲にあるようにした。
【0034】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の半凝固金属温度測定方法による実施形態について、図1を参照して説明する。図1に示した半凝固金属の温度測定方法の手順は、上述した図3及び図4における半凝固金属生成装置に適用された場合を表している。
【0035】
従来において、熱電対による温度計による半凝固金属温度測定にあっては、温度計を半凝固金属中に直接挿入する方法が採られていた。しかし、溶融金属を保持容器に注湯して徐々に冷却して、固液共存状態の半凝固金属を生成する過程で、保持容器の上部は、冷却されやすく、どうしても固相率が高くなる。そのため、従来法に従う温度測定では、温度計が、この固相率の高い表面部分を突き破る形で挿入されていたので、温度計の損耗が大きかった。
【0036】
そこで、本発明の半凝固金属温度測定方法では、保持容器内で固相率の高い表面部分が生成される過程において、適宜の太さを有する棒を所定深さまで挿入して、半凝固金属の上層部に穴部を形成し、所定時間経過後に該穴部に液相が生成されてから、該液相中に温度計を挿入して半凝固金属中の温度を計測するようにした。その棒を挿入する深さは、半凝固金属内の測定対象点とする位置付近とした。
【0037】
棒が挿入された跡の穴部に液相を滲みださせ、その液相中に温度計を挿入することは、温度計が固相率の高い半凝固金属と接触することによる磨耗を軽減することにある。さらに、温度計自体を、最適な固相率となる半凝固金属の温度より若干低い温度に加熱しておくようにして、液相中に挿入したとき、温度計に金属が析出することを防止している。
【0038】
ここで、上述したような、回転テーブル上に載置された複数の溶湯保持容器を複数の冷却作業ステーションと加熱作業ステーションとで順次冷却処理されて半凝固金属を生成する半凝固金属生成装置に、本実施形態の温度測定方法を適用した場合について、図1に示した手順に従って以下に説明する。
【0039】
図1(a)には、半凝固金属生成装置に備えられた冷却作業ステーションFにおいて、溶湯が給湯された保持容器1が冷却処理されている状態を示した。この時点では、保持容器1内の溶湯は、未だ、最適な固相率を有する固液共存状態の半凝固金属になっていない。
【0040】
次いで、図1(b)には、回転テーブル2が駆動されて、図1(a)の保持容器が冷却作業ステーションGに移動され、冷却処理されている状態を示した。この冷却作業ステーションGでは、冷却ユニット支持部6に備えられた冷却作業ステーションGに対応する冷却ユニットの容器蓋9に、下方に突出する穴部形成用棒11が設けられている。
【0041】
この穴部形成用棒11の材料は、ステンレス、窒化珪素等であり、棒の形状は、中空、中実のどちらでもよい。この棒11が、容器蓋9の中央部に突設されており、保持容器1が冷却作業ステーションGに移動されたとき、冷却ユニット支持部6が下降することによって、棒11の先端が保持容器1内の半凝固金属中に突き刺さるようになる。
【0042】
続いて、保持容器1が回転テーブル2の駆動によって次の加熱作業ステーションHに移動されるとき、冷却ユニット支持部6が上昇するので、このときに、棒11は、半凝固金属から引き抜かれる。ここで、棒11の挿入によって半凝固金属が棒の体積分押し退けられた結果として、穴部が形成されている。
【0043】
棒11が半凝固金属から引き抜かれた後、保持容器1が加熱作業ステーションHに移動中の状態が、図1(c)に示されている。保持容器1内では、固液共存状態の半凝固金属であるので、穴部が形成されると、固相より流動性の高い液相がその穴部に滲み出てくる。この滲み出てくる液相によって、その穴部の全てが埋められなくてもよい。
【0044】
次いで、図1(d)に示すように、保持容器1が加熱作業ステーションHに移動してきたとき、保持容器1は、保持容器昇降部21によって上昇され、誘導加熱コイル8内に挿入されるので、加熱ユニットの容器蓋9に設けられている温度計10が、半凝固金属の上層部に生成された液相中に突っ込まれる。
【0045】
なお、容器蓋9に設けられている温度計10は、最適な固相率となる半凝固金属の温度より若干低い温度に保っておくことにより、液相中に挿入されているときに金属の析出を抑えることができる。温度計の加熱には、温度計自体にヒータを内装しておくようにしてもよい。半凝固金属生成装置の運転開始時の最適運転環境になっていないときには、この加熱は、特に有効である。ただ、温度計の加熱に内装ヒータを使用する場合には、加熱作業ステーションHにおける加熱量に影響させないために、温度計が挿入される以前に、このヒータへの通電を停止しておく。
【0046】
これで、温度計10による半凝固金属中の温度計測準備が整ったことになる。保持容器1が加熱作業ステーションHに留まる間、保持容器1内の半凝固金属が最適固相率の温度で均一化処理され、次の取出し作業ステーションAに移動される前に、温度計10によって、半凝固金属の最終実測温度が計測される。この均一化処理の間に、この液相部分は、徐々に固液共存状態に変化していく。
【0047】
以上のように、温度計によって半凝固金属中の温度を計測する前に、温度計の挿入部位が液相とされているため、温度計は、円滑に挿入され、半凝固金属との接触を軽減でき、磨耗を低減できる。しかも、温度計が温まることによって、金属の析出を防止できる。
【0048】
なお、これまでは、図3及び図4に示した半凝固金属生成装置に本実施形態の温度測定方法を適用した場合を例にして説明したが、必ずしも、一定間隔時間で駆動される回転テーブルで連続して移動される複数の保持容器内の半凝固金属の温度測定に限られず、本実施形態の温度測定方法を、単独の保持容器内における固液共存状態の半凝固金属の内部温度を計測する場合にも適用できる。
【0049】
次に、本実施形態の半凝固金属温度測定方法の具体的実施例について、図2の表を参照しながら説明する。同図の表では、条件を夫々変えたNo.1からNo.11までのサンプルについて、温度測定の可否を示しているが、No.1からNo.5のサンプルは、本実施形態の半凝固金属温度測定方法の適用範囲を明確にする実験例であり、No.6からNo.11のサンプルが実施例である。
【0050】
各サンプルは、半凝固金属の固相率(%)、穴部形成用棒の材質、該棒の直径(%)、該棒が抜かれて温度計を挿入するまでの挿入時間(秒)の条件について夫々変えて温度測定を実行した。そして、温度計への金属付着の有無と、温度計の損耗(磨耗)の有無とを確認して、各サンプルについて総合判定した温度測定の可否を○印と×印とで示した。棒の直径は、棒の直径と温度計の直径との比(%)で示されており、例えば、400%は、棒の太さが温度計の太さの4倍であることを表している。ここで使用された合金は、Siが7%、Mgが0.3%を含むAl合金のAC4CHである。
【0051】
実験例のサンプルを見てみると、No.1サンプルでは、固相率が20%と少ないために、半凝固金属が柔らか過ぎ、温度計に金属が付着しやすく、付着金属の増加とともに温度測定が難しくなる。No.2サンプルでは、棒の引き抜きから温度計の挿入までの時間が150秒と長いために、温度が低下するとともに穴部に滲みこんだ液相中に固相が再び発生することとなり、その結果、温度計の挿入部分が硬くなり、温度計に金属が付着しやすく、しかも、温度計の損耗も発生する。これらにより、この場合も、温度測定が難しくなる。
【0052】
また、No.3サンプルでは、固相率が80%と高いために、半凝固金属が硬くなり、結果として、棒による穴部形成が難しく、温度測定ができない。No.4サンプルでは、棒の直径が700%と必要以上に大き過ぎ、穴部に滲みこんだ液相部のその周辺部の組織に対する割合が大きくなり、生成された半凝固金属を加圧成形したときに、不均一な組織が現れ、不良製品となる。No.4サンプルの場合は、金属付着と損耗の発生という観点では、温度測定が可ということになるが、不均一組織が残ることの点で温度測定に適さないとした。
【0053】
No.5サンプルでは、棒の直径が40%と細過ぎるために、液相生成量が少なく、温度計の挿入部としての硬さが高くなり、棒を挿入して穴部を形成した効果がない。その結果、この場合は、温度測定に適していない。
【0054】
これらの実験例と、温度測定が可と判定できた実施例との結果から、本実施形態の半凝固金属測定方法では、固相率が、30%〜70%の範囲にあることが好適であり、棒の直径は、温度計の太さの1/2以上であり、上限を5倍とするのが好適であり、また、挿入時間は、120秒以下とすることが好適であることが分かる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明の半凝固金属温度測定方法では、保持容器内で固相率の高い表面部分が生成される過程において、適宜の太さを有する棒を所定深さまで挿入して、半凝固金属の上層部に穴部を形成し、所定時間経過後に該穴部に液相が生成されてから、該液相中に温度計を挿入して半凝固金属中の温度を計測するようにしたので、温度計に金属の付着を低減でき、半凝固金属内部の温度を正確に測定できるようになり、しかも、温度計の損耗を少なくすることができ、熱電対の寿命を延ばすこととなり、連続生成装置に組み込まれた場合には、長期運転を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態による半凝固金属内の温度測定に係る手順を説明する図である。
【図2】本実施形態による半凝固金属温度測定方法の具体的実施例を示す表である。
【図3】容器内で半凝固金属を生成する連続生成装置の概要を説明する図である。
【図4】図3に示した連続生成装置における複数の容器を用いた半凝固金属連続生成の工程を説明する図である。
【図5】図3に示した連続生成装置における一つの容器内で生成される半凝固金属の温度プロファイルを説明するグラフである。
【図6】図3に示した連続生成装置における容器内の半凝固金属中の温度を測定する概要を説明する図である。
【符号の説明】
1…保持容器
2…回転テーブル
21…保持容器昇降部
3…容器ホルダ
4…回転駆動部
5…昇降駆動部
6…冷却ユニット支持部
61…加熱部支持部
7…エアー噴出ノズル部
8…誘導加熱コイル
9…容器蓋
10…温度計
11…穴部形成用棒
Claims (10)
- 容器内で生成される固液共存状態の半凝固金属中に、先端に熱電対を有する温度計を挿入し、内部温度を測定する半凝固金属温度測定方法において、
前記半凝固金属の表面から棒を挿入する挿入段階と、
前記棒を抜き取り、前記表面に穴部を形成する形成段階と、
前記穴部内に液相領域を生成する生成段階と、
前記液相領域中に前記温度計を挿入して温度を測定する測定段階と、
を有する半凝固金属温度測定方法。 - 前記半凝固金属は、複数段からなる冷却工程と、その後の加熱工程とに従って生成され、所定の固相率となる目標温度に制御されるものであり、
前記挿入段階と前記形成段階は、最後段の冷却工程で行われることを特徴とする請求項1に記載の半凝固金属温度測定方法。 - 前記生成段階は、前記冷却工程から前記加熱工程に移行するときに行われることを特徴とする請求項2に記載の半凝固金属温度測定方法。
- 前記測定段階は、前記加熱工程において行われることを特徴とする請求項3に記載の半凝固金属温度測定方法。
- 前記温度計は、前記半凝固金属への挿入前に前記目標温度より僅かに低い温度に加熱されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半凝固金属温度測定方法。
- 前記棒は、前記温度計の太さに対して、少なくとも1/2以上の太さを有することを特徴とする請求項1乃至5に記載の半凝固金属温度測定方法。
- 前記挿入段階において、前記棒の先端は、前記表面の固相率が高い領域を超えた深さに挿入されることを特徴とする請求項1乃至5に記載の半凝固金属温度測定方法。
- 前記測定段階において、前記熱電対は、前記穴部内の前記液相領域又は該穴部の底部の固液共存領域に挿入されることを特徴とする請求項1乃至5に記載の半凝固金属温度測定方法。
- 前記半凝固金属は、アルミニウム合金又はマグネシウム合金であることを特徴とする請求項1乃至8に記載の半凝固金属温度測定方法。
- 前記半凝固金属の温度測定中の固相率は、30%から70%の範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の半凝固金属温度測定方法。
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