JP4194179B2 - 特性測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波等の電磁波の損失を利用して被測定物の含水率、イオン含有率、水分吸引圧値、電導度等の特性を測定する特性測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、農業では耕作地の土壌水分や土壌pF値を継続的に測定し、その測定値を参照して土壌管理が行われている。土壌水分や土壌pF値の測定には、例えば、テンションメータによる測定法等が用いられている。
【0003】
また、土壌中の無機体窒素に代表される肥料養分の含有率を測定することにより、その測定値を参照して施肥計画に役立てられてきた。従来、肥料養分の含有率の測定には、ECセンサ等が使用され、土壌溶液導電率と土壌水分率の測定値から硝酸体窒素の含有率即ち、硝酸イオンの含有率を算出する方法が知られている。ECセンサには、従来、特開平10−10066号、実開平2−124546号、実公平4−32606号等の先行出願がある。
【0004】
ところで、テンションメータ法による土壌含水率の測定には、例えば、図31に示すセンサが使用されている。このセンサでは、ポーラスカップ900を測定すべき土壌902中に埋設し、筐体904に充填されている内部測定水906をポーラスカップ900を通して土壌902中の水分と連通させる。内部測定水906は脱気された水であり、また、筒状の筐体904の上端は、ゴム栓908で閉塞されている。ポーラスカップ900を通して連通した内部測定水906と土壌902(hO は土壌表面概位置を示す)中の水分910の圧力(通常は負圧)が平衡になり、圧力センサ912は内部測定水906の圧力を検出し、その検出値は圧力測定装置914に加えられて内部測定水906の圧力から土壌902中の水分の圧力を算出する。その場合、圧力センサ912の位置h1 とポーラスカップ900の高さ位置h2 との差Δhによって生じる圧力差を補正する必要がある。算出された圧力はpF値、即ち、log10(−土壌中水分の圧力値〔cmH2 O〕)に換算する。また、予め土壌の種類毎に求められた土壌中水分の圧力に対する土壌含水率の検量線、例えば、図32に示す検量線A、B、Cから土壌毎に土壌含水率を導くことができる。圧力及びpF値は表示装置916に表示され、また、それらの換算値は換算表示装置918に換算表示される。
【0005】
また、土壌のイオン含有率は、例えば、図33に示すECセンサが使用されており、図34はその測定電極部の拡大断面を示す。このセンサでは、その測定電極部920を測定すべき土壌902中に埋設する。土壌902中に埋設前の初期状態では、セラミック吸収体922の孔隙924に純水925を浸透させてある。このセラミック吸収体922にある孔隙924中の純水925が土壌溶液927と置換される。このセラミック吸収体922の抵抗値は、孔隙924内の水の導電率(この場合は土壌溶液の導電率)により変化する。この変化は、セラミック吸収体922に設置された測定電極926、928間に一定電圧の直流電圧を加えた時に流れる電流値を測定することにより、検出することができる。930は測定補助電極である。
【0006】
測定電極部920から取り出された測定出力は、増幅器932に加えられて増幅され、電流値として取り出される。この電流値は、直流電源934に接続された電流測定装置936で測定される。その測定値はコンピュータ938に取り込まれて演算が行われる。この場合、測定電流値に対するセラミック吸収体922内の溶液導電率の検量線、例えば、図35に示す検量線(一次関数)から土壌溶液導電率を導くことができる。この場合、別途の方法で測定した土壌含水率を参照する必要がある。土壌溶液導電率と予め求められている土壌毎の特定の含水率(実際はpF値=1.5)時の土壌溶液導電率への換算式、又は、例えば、図36に示す検量線により、特定の含水率(実際はpF値=1.5)時の土壌溶液導電率を算出する。また、土壌毎の土壌中のイオン、例えば、無機体窒素即ち、硝酸イオンの含有率に対する特定の含水率(実際はpF値=1.5)時の土壌溶液導電率の検量線、例えば、図37に示す検量線から、土壌中のイオン、例えば、無機体窒素即ち、硝酸イオンの含有率を求めている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、テンションメータやECセンサ等を用いて測定したpF値や導電率から演算した含水率やイオン含有率の値は土壌の種類やその密度に影響される。また、テンションメータでは、侵入する空気の影響を回避するためのメンテナンスが必要であり、また、ECセンサにおいては、一定の測定精度を維持するために定期的な較正が必要である。
【0008】
テンションメータには、その構成としてセンサ筐体内部に測定水が充填されており、この測定水の内部圧力を測定することで周辺土壌水分の水分吸引圧(即ち、pF値)を測定しているため、測定水の充填中又は測定中に測定水内部に気泡を発生するおそれがある。筐体内に発生した気泡は、地温或いは地表温の変化により、その圧力が変化する。気体圧力の温度による変化は、液体圧力のそれより遙かに大きく、気泡が無い場合に比べると筐体内の圧力変動は大きく、その圧力変動速度は速い。それによって、内部測定水の圧力と、土壌中の水分の圧力の平衡が崩れる。双方の水の圧力が平衡になるのに比べ、一般的に温度変動が早いので、平衡が取れない。不平衡状態では、圧力センサで検出された内部測定水の圧力は、真の土壌中水分の圧力とは異なる。この気泡が筐体内部の圧力を大きく変動させ、これが圧力測定値を不正確にする。そのため、定期的なメンテナンスが必要であって、利便性に乏しく、長期的観測には不向きである。
【0009】
また、ECセンサでは、セラミック吸収体が、埋設使用中にそれ自体(包含した溶液以外の部分)の抵抗値が経時的変化を呈する結果、その測定値が不正確になる。長時間埋設使用すると、セラミック吸収体の包含した溶液以外の部分の抵抗値が変化し、孔隙内の土壌溶液の導電率が等しい場合でも、セラミック吸収体全体の電気抵抗が変化する。その結果、土壌溶液の導電率が等しい場合でも、セラミック吸収体を流れる電流は以前と異なる電流値となり、増幅器で増幅された電流値も従前値とは異なる。以降の換算式或いは検量線から得られた算出結果に誤差が生じ、継続的に測定するためには、セラミック吸収体内の溶液導電率と増幅器で増幅された電流値との関係を一定にするため、増幅器側の微調整が必要となる。
【0010】
このように、ECセンサでは、土壌溶液導電率測定のためのセンサ先端のセル定数が経時的に変化し、測定誤差が生じ、以降の算出即ち、硝酸体窒素の算出が不正確になる。程度の差はあるもののほぼ全ての場合でこのセル定数の変化は起こっており、現実的に定期的な校正作業を必要とし、しかも、土壌水分と同様に利便性を欠き、長期的観測には不向きである。
【0011】
そこで、本発明では、被測定物によるマイクロ波等の電磁波損失を利用して被測定物の特性測定を実現するとともに、メンテナンスの軽減化ないし容易化を実現し、特性測定の精度を高めた特性測定装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の特性測定装置は、図1ないし図30に例示するように、土壌、茶、木材、溶液等を被測定物(10)とし、この被測定物に伝送線路、即ち、センサ(MSLセンサ2)を近接させ、このセンサを通過させた周波数の異なる複数のマイクロ波等の電磁波損失から、被測定物の含水率、イオン含有率、水分吸引圧値、電導度等の特性測定を行い、その測定精度を高めたものである。
【0013】
本願発明において、特性測定センサは、単一の電磁波又は周波数の異なる複数の電磁波を通過させる単一又は複数の伝送線路(ストリップ導体8)を備え、この伝送線路に近接させた被測定物(10)によって生じる電磁波損失を取り出す。マイクロ波等の電磁波は、伝送線路を通過する際、その周辺部における被測定物によって電磁波損失を受け、その電磁波損失は被測定物の特性に依存する。そこで、その電磁波損失を電気的諸量として測定することにより、被測定物の特性を知ることができる。
【0018】
本願発明の特性測定装置において、前記伝送線路は、長さの異なる第1及び第2のストリップ導体(8A、8B)を備えるとともに、前記第1のストリップ導体を単一又は複数で構成し、かつ、前記第2のストリップ導体を分岐させてなることを特徴とする。即ち、周波数に応じてストリップ導体の形態を変え、分岐回路を以て線路長を異ならせることができる。
【0037】
本願発明の特性測定装置は、電磁波を通過させる単一又は複数のマイクロストリップラインからなる伝送線路を備え、被測定物(10)に前記伝送線路を近接させたセンサ(MSLセンサ2)と、このセンサに1又は2以上の電磁波を入力する電磁波発生源(電磁波発生装置38)と、この電磁波発生源から前記センサに加えられる入力電磁波と、前記センサを通して得られる出力電磁波とから前記被測定物による電磁波損失を検出する損失検出手段(電磁波損失検出装置42)と、この損失検出手段で得た前記電磁波損失から前記被測定物の特性を演算する演算手段(演算・記録・表示装置36)とを備え、前記伝送線路に周波数の異なる電磁波を通過させることにより前記センサを前記被測定物の含水率センサ又はイオン含有率センサとして機能させている。即ち、被測定物に近接させたセンサに電磁波発生源から1又は2以上の電磁波を加え、その入力電磁波と出力電磁波との関係から被測定物による電磁波損失を測定し、その電磁波損失から被測定物の特性を演算する。
【0043】
本願発明の特性測定装置において、前記センサは、前記電磁波の周波数に適した伝送線路である。即ち、この特性測定装置においても、選択された電磁波に最適な伝送線路を設定することが測定精度を高める上で有効である。ここで、電磁波に最適な伝送線路は、長さや幅等の物理的な諸量を選択される電磁波に応じて決定することである。
【0044】
本願発明の特性測定装置において、前記センサに前記電磁波の周波数に適した伝送線路(ストリップ導体8A、8B)を備え、このセンサから取り出される前記電磁波の周波数に応じて前記伝送線路を切り換える切換手段(スイッチ58)を備える。即ち、電磁波に応じて伝送線路を切り換えることにより、所望の伝送線路を選択し、精度の高い測定や所望の特性測定を行うことができる。電磁波に最適な伝送線路については、上述の通りである。
【0048】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の特性測定装置の原理を説明し、その実施形態に言及する。
【0049】
図1は、特性測定センサとしてマイクロストリップライン・センサ(以下、「MSLセンサ」という)を示している。
【0050】
このMSLセンサ2は、例えば、厚みtの板状の誘電体4を備え、その下表面に導体6、その上表面に伝送線路として幅wのストリップ導体8を貼り付けた板状構造体である。誘電体4は円筒状等の各種の形態としてもよく、円筒状の場合にはその内表面に導体6、外表面にストリップ導体8を貼り付けた円筒状構造体等としてもよい。
【0051】
ストリップ導体8にマイクロ波等の電磁波を通じると、図2に示すように、電界Eがストリップ導体8から導体6に向かい、その磁界Hは電界Eを直交方向に包囲する環状形を成す電磁界分布を呈する。
【0052】
ここで、MSLセンサの原理について説明すると、このMSLセンサ2を被測定物10中に埋め、又は、ストリップ導体8側を被測定物10に近接させると、被測定物10が電磁波に影響を与え、ストリップ導体8を通過する電磁波に電磁波損失Lを生じる。この電磁波損失Lは、式(1)で表すことができる。
【0053】
ここで、Pinは入力電磁波の電力(入力電力)、Pout は出力電磁波の電力(出力電力)、Vinは電磁波の入力電圧レベル、Vout はその電磁波の出力電圧レベルを示している。
【0054】
そして、この電磁波損失Lは、図1に示すストリップ導体8の幅w及び誘電体4の厚さt、そして、ストリップ導体8の長さkが一定の場合、被測定物10の誘電率εによって決定される。誘電率εは被測定物10の含水率、イオン含有率、即ち、被測定物10の単位体積当たりの水分量及びイオン量に関係するため、この電磁波損失Lを測定することにより、被測定物10の含水率、イオン含有率を算出することができる。
【0055】
ところで、このようなMSLセンサでは、被測定物10の性質を無視することができない。一般に、物質の誘電率は複素数であり(ε=ε´−jε″)、無損失物質において、虚数部が零となるため、実数で与えられる。多くの農産物及び工業原料は水を含む含水物質であるから、損失物質である。水の誘電率は乾燥した物質の誘電率より遙かに高く、含水物質の誘電率は主にその含水率によって決定される。そして、含水物質はイオンも含む物質が多く、例えば、海水や土壌等である。このような物質の誘電率はその含水率及びイオン含有率の双方に関係する。
【0056】
このように電磁波損失から被測定物10の特性を測定するには、電磁波の使用周波数を選択し、周波数毎の電磁波損失Lを測定することが必要である。即ち、電磁波損失Lは、100MHz以下の低い周波数では小さくなり、また、100GHzを越える高い周波数でも小さくなる。そのため、電磁波損失が適当な大きさであれば、イオンが無い場合、含水率が測定でき、電磁波損失が微小になる周波数帯では、イオンの有無に拘わらず含水率の測定ができなくなる。
【0057】
被測定物10の含水率の測定は、被測定物10が含むイオンの影響を受け、イオン含有率に関係する。そこで、式(1)で定義した電磁波損失Lは、含水率M、イオン含有率I及びストリップ導体8の長さkにより、次の式(2)で表すこことができる。
Lf1=Lf1(M,I,k) ・・・(2)
【0058】
ところで、例えば、海水の場合では、イオン濃度は3%程度であり、周波数を約10GHzまで高く設定すれば、イオンの影響は殆ど無視できる。この特性測定方法では、例えば、土壌含水率の測定に対応し、土壌及び標準砂を用いて含水率及びイオン含有率の変化可能な範囲で実験を行った。3GHz程度の周波数f1 を使用すれば、イオンの影響を無視できることが確認され、この場合、式(2)は、次の式(3)になる。
Lf1=Lf1(M,k) ・・・(3)
【0059】
このような実験結果を踏まえて、被測定物10のイオン含有率を測定するには、低い周波数を使用しなければならない。低い周波数領域における電磁波損失Lとイオン含有率との関係では、例えば、500MHz程度の周波数f2 が想定される。そこで、式(1)で定義した電磁波損失Lは、含水率M、イオン含有率I及びストリップ導体8の長さkにより、
Lf2=Lf2(M,I,k) ・・・(4)
決定される。
【0060】
したがって、これら式(2)又は(3)及び(4)の連立方程式を解くことにより、含水率M、イオン含有率Iを算出することができる。
【0061】
ところで、MSLセンサ2において、ストリップ導体8の長さkは予め決定されており、その長さkが未知数であっても、定数扱いになることから、周波数f1 、f2 に対応して電磁波損失Lは、含水率M、イオン含有率Iから、
Lf1=Lf1(M,I) ・・・(5)
Lf2=Lf2(M,I) ・・・(6)
を求めることができ、これら式(5)及び(6)の連立方程式を解くことにより、含水率M、イオン含有率Iを算出することができる。
【0062】
なお、被測定物10としては、土壌、茶、溶液、食品の他、木材等の建築資材等がある。
【0063】
次に、図3は、特性測定センサとして含水率センサを示している。この含水率センサは、誘電体基板40の下面側に導体6、上面側にストリップ導体8を配設してなるMSLセンサ2である。即ち、電磁波損失はストリップ導体8の長さと被測定物の含水率に関係する。そこで、高い測定精度を得るために、十分長いストリップ導体8を設定する必要がある。高い含水率を測定する場合には、電磁波損失が大きく、電磁波出力のレベルが低下し、それが測定誤差の原因となる。即ち、広範囲で高精度な測定を実現するには、一定長さのストリップ導体8を持つMSLセンサ2での対応は困難である。このため、この含水率センサは、誘電体基板40の表面に1つの入力端子12、複数の出力端子として3つの出力端子14、16、18を形成するとともに、1つのストリップ導体8を分岐回路の形成により、入力端子12から出力端子14に至るストリップ導体81、入力端子12から出力端子16に至るストリップ導体82、入力端子12から出力端子18に至るストリップ導体83を形成し、線路長が異なる複数の伝送線路を構成したものである。
【0064】
次に、図4は、特性測定センサとして含水率・イオン含有率センサを示している。この含水率・イオン含有率センサは、図3に示すMSLセンサを内包して構成したものであり、図3と同一部分に同一符号を付してある。即ち、独立した入力端子12、20と、独立した出力端子14、16、18、22を備えて線路長の異なる第1及び第2のストリップ導体8A、8Bを構成し、ストリップ導体8Aは、入力端子12から出力端子14に至るストリップ導体81、入力端子12から出力端子16に至るストリップ導体82、入力端子12から出力端子18に至るストリップ導体83を形成し、線路長が異なる複数の伝送線路を構成し、また、ストリップ導体8Bは、入力端子20から出力端子22に至る最も長いストリップ導体であって、中途部を千鳥状に屈曲させて最長の線路長を確保している。
【0065】
この実施形態では、ストリップ導体8A側に第1の周波数の電磁波、例えば、3GHzの電磁波を独立して伝送させ、ストリップ導体8B側に第2の周波数の電磁波、例えば、500MHzの電磁波を独立して伝送させることにより、含水率測定用ストリップ導体8Aとイオン含有率測定用ストリップ導体8Bとを併設したものである。即ち、例えば、1GHzより低い周波数範囲において電磁波損失は含水率及びイオン含有率の双方に依存し、例えば、3GHzの周波数の電磁波損失から求めた含水率と500MHzの電磁波損失によりイオン含有率を求めることができる。この含水率・イオン含有率センサでは、周波数の異なる電磁波を同時に入力することができるが、ストリップ導体8A側の電磁波損失は、出力端子14〜18の選択によって取り出すことができ、それぞれの電磁波損失を測定することにより、含水率及びイオン含有率を同時に求めることができる。
【0066】
実験によれば、500MHzにおける電磁波損失は3GHzよりかなり低くなり、電磁波損失の測定精度を高めるため、ストリップ導体8Bの線路長は十分に長く設定する必要がある。
【0067】
次に、図5は、特性測定センサとして含水率・イオン含有率センサを示している。図4に示すストリップ導体8A、8Bを独立して構成したものであるのに対し、両者を合体して線路長を異ならせたものである。即ち、入力端子12と入力端子20とを共通化して1つの入力端子12とし、分岐回路を以て所望の線路長を持つ複数のストリップ導体8A、81、82、83、8Bを構成したものである。図4に示す場合と同様に、ストリップ導体8A側に第1の周波数の電磁波、例えば、3GHzの電磁波を独立して伝送させ、ストリップ導体8B側に第2の周波数の電磁波、例えば、500MHzの電磁波を独立して伝送させる。即ち、含水率測定用ストリップ導体8Aとイオン含有率測定用ストリップ導体8Bとを併設したことにより、周波数の異なる電磁波を同時に又は個別に入力し、それぞれの電磁波損失を測定して含水率及びイオン含有率を求めることができる。この場合、入力端子12に周波数の異なる第1及び第2の電磁波として異なる周波数3GHz、500MHzを加えるため、その電磁波を切り換え、その切換えと同期して出力端子14、16、18と出力端子22の各出力の取出しを切り換えることにより、各周波数、即ち、ストリップ導体8A、8B又はストリップ導体81、82、83毎の電磁波損失を測定することができる。そして、それらの測定値から含水率及びイオン含有率を算出することができる。
【0068】
また、MSLセンサ2の表面は、ストリップ導体8A、81、82、83、8Bの劣化を防止するための手段として誘電体皮膜等の保護膜で覆うようにしてもよい。また、土壌や溶液に浸すことから、各ストリップ導体8A、81、82、83、8Bの表面又はその上面を覆う保護膜の表面上に防水膜を設置することは有効である。
【0069】
ところで、特性測定センサは、被測定物の特性に応じて各種の形態とすることができ、例えば、図6に示す円柱状としてもよく、また、図7及び図8に示すような形態としてもよい。
【0070】
次に、図6は円柱状のMSLセンサを示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図を示す。このMSLセンサ2は、誘電体で形成された円筒体24の外表面に螺旋状にストリップ導体8を配設するとともに、円筒体24の内面に導体6を形成し、その中空部に接着剤等の誘電体、金属等の充填物28を入れたものである。温度センサ30はストリップ導体8側に設置してもよいが、充填物28の内部に埋め込んで設置してもよい。図示しないが、円筒体24の外面及びストリップ導体8の表面に誘電体からなる保護膜を設置してもよい。
【0071】
このようなMSLセンサ2では、その直径を小さくし、棒状に形成すれば、被測定物10が土壌のような場合には埋設作業が容易になる。この場合、ストリップ導体8は螺旋状であるため十分な長さを確保できるが、螺旋状である必要はない。
【0072】
また、図7は円筒状のMSLセンサを示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図を示す。このMSLセンサ2では、誘電体で形成された円筒体24の内面側に螺旋状にストリップ導体8を配設するとともに、円筒体24の外面に導体6を形成し、その中空部側に被測定物10が侵入するようにしてもよい。同様に、このMSLセンサ2では、その直径を小さくし、棒状に形成すれば、被測定物10が土壌のような場合には埋設作業が容易になる。この場合、ストリップ導体8は螺旋状であるため十分な長さを確保できるが、螺旋状である必要はない。
【0073】
また、図8は円筒状のMSLセンサを示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図を示す。このMSLセンサ2では、誘電体で形成された円筒体24の外側で千鳥状に屈曲させて線路長を長くしたストリップ導体8を配設するとともに、円筒体24の内面に導体6を形成してもよい。同様に、このMSLセンサ2では、その直径を小さくし、棒状に形成すれば、被測定物10が土壌のような場合には埋設作業が容易になる。
【0074】
次に、特性測定センサとしてMSLセンサの実験結果について説明する。実験には、被測定物として純水、標準砂及び塩化カリウムを用いた。
【0075】
先ず、高い周波数の電磁波として例えば3.25GHzを使用し、電磁波損失Lf1と含水率M及びイオン含有率Iとの関係の測定結果を得た。図9は、その結果を示しており、イオンの影響はなく、無視することができる。
【0076】
そこで、含水率Mを電磁波損失Lf1の関数として較正し、図10に示すように、含水率における較正カーブを得た。この較正方程式は次の通りである。
M=aLf1 2 +bLf1+c ・・・(7)
【0077】
ここで、係数a、b、cの値は実験によって求めた数値である。この較正方程式を用いて、電磁波損失Lf1から含水率Mが算出できる。
【0078】
また、低い周波数における電磁波損失Lf2は含水率M及びイオン含有率Iに関係する。ここで、電磁波損失Lf2を、水自体による電磁波損失Lf2M とイオンによる電磁波損失Lf2I の和であると仮定する。
【0079】
そして、例えば、550MHzにおいて、水分(純水の水分)による電磁波損失Lf2M と含水率Mとの関係の測定結果及び近似カーブを図11に示し、近似方程式は式(8)のように書くことができる。
Lf2M =a’M2 +b’M+c’ ・・・(8)
【0080】
ここで、係数a’、b’、c’の値は実験によって求めた値である。
【0081】
また、イオンによる電磁波損失Lf2I とイオン含有率Iとの関係の測定結果及び近似カーブを図12に示し、近似方程式は式(9)のようになる。
Lf2I =gI ・・・(9)
【0082】
ここで、係数gの値は実験によって求めた値である。したがって、試料である被測定物の電磁波損失Lf2は式(10)で示すことができる。
Lf2=Lf2M +Lf2I =a’M2 +b’M+c’+gI ・・・(10)
【0083】
この式(10)からイオン含有率Iを解くと、イオン含有率における較正方程式は式(11)のようになる。
I={Lf2−(a’M2 +b’M+c’)}/g ・・・(11)
【0084】
そこで、式(7)、(11)における係数a、b、c、a’、b’、c’、gの値は実験によって求められるので、これら式(7)及び式(11)により、2つの周波数における電磁波損失Lf1、Lf2の各測定値から含水率M及びイオン含有率Iを求めることができる。
【0085】
そして、MSLセンサ2の表面に素焼き等で多孔質な吸水媒体を貼り付け、その媒体吸水率やイオン含有率を測定することで、間接的に土壌を測定することができる。即ち、MSLセンサ2の表面に吸水媒体としてセラミックを貼り付けると、そのセラミックの周辺土壌から吸い取る水分と相関するpF値によって電磁波の損失が変化する。3GHz以上の周波数の電磁波を利用すると、その電磁波損失測定には土壌水に存在するイオンの影響を無視でき、その電磁波損失の測定値からpF値を求めることができる。また、1GHz以下の低い周波数における電磁波損失はpF値及び土壌水の導電率やイオン濃度に依存する。このため、2つの周波数における電磁波損失の測定により、pF値、土壌水の導電率及びイオン濃度を算出できる。
【0086】
次に、本発明の特性測定装置の実施形態について説明する。
【0087】
図13ないし図15は、本発明の特性測定装置の第1の実施形態を示している。即ち、この特性測定装置は、MSLセンサ2、温度センサ30、制御ユニット32、伝送装置34及び演算・記録・表示装置36を備えている。
【0088】
MSLセンサ2には、図3に示すMSLセンサ2等が用いられ、その構成及び電磁波損失の測定原理は上述の通りである。
【0089】
温度センサ30は、MSLセンサ2又は被測定物10に設置され、MSLセンサ2の近傍の温度を測定する。測定温度は、例えば、電圧として取り出すことができ、電磁波損失Lの温度補正に用いられる。
【0090】
制御ユニット32は、電磁波損失の測定制御を行う制御手段であって、電磁波発生源である電磁波発生装置38、参照信号としての入力電磁波とともにMSLセンサ2からの出力電磁波を受けて電磁波損失Lを検出する損失検出手段としての電磁波損失検出装置42(以下単に「検出装置42」と言う)を備える。この制御ユニット32には避雷対策を施す。例えば、制御ユニット32は金属製の筐体に収容され、その筐体に接地44を施して避雷対策とすることができる。
【0091】
電磁波発生装置38は、500MHz、3GHz等の所望の周波数の電磁波を発生し、接続されているMSLセンサ2に発生した電磁波を入力する。図13において、PinはMSLセンサ2に加えられる入力電磁波、Pout はMSLセンサ2から取り出される減衰を伴う出力電磁波である。
【0092】
また、検出装置42は、電磁波発生装置38からの参照信号としての入力電磁波Pinと、MSLセンサ2からの出力電磁波Pout から周波数毎、即ち、第1及び第2の電磁波損失Lf1、Lf2として、この実施形態では、3GHzと500MHzの電磁波損失を測定する。この検出装置42には、電磁波損失を電圧で検出した際に、局部発振周波数との混合により周波数変換、即ち、ヘテロダイン検波等を用いて所望の周波数に変換した後、その電圧値を対数増幅して対数変換する手段として対数増幅器を用いることができる。
【0093】
また、伝送装置34は、検出装置42が出力した周波数毎の電圧信号V1 、V2 、温度センサ30が出力した電圧信号Vtを有線又は無線により演算・記録・表示装置36に伝送する信号伝送手段である。この場合、伝送装置34は、図14に示すように、電圧測定装置46、温度検出装置48を備えるとともに、ディジタル信号に変換するA/D変換装置50、そのディジタル信号を伝送する送信装置52を備えている。即ち、周波数3GHzと周波数500MHzの電磁波損失を表す電圧V1 、V2 、測定温度を表す電圧Vtをディジタル信号に変換して送信装置52によって演算・記録・表示装置36に伝送する。
【0094】
そして、演算・記録・表示装置36は、得られた電磁波損失及び測定温度から求めた検量線を用いて被測定物10の特性を演算し、その演算結果を記録するとともに、表示する手段であって、図15に示すように、伝送装置34からの送信信号を受信する受信装置54及びパーソナルコンピュータ56を備える。即ち、伝送装置34からの電圧信号(V1 、V2 、Vt)を受信装置54によってパーソナルコンピュータ56に入力される。式(1)から求めた検量線、即ち、式(2)、(3)、(4)から、次の式(12)、(13)が得られ、
M=M(V1 ,k) ・・・(12)
I=I(V2 ,M) ・・・(13)
これらの式(12)、(13)から含水率(M)、イオン含有率(I)を演算し、その温度補正した値を記録、表示する。
【0095】
次に、図16及び図17は、本発明の特性測定装置の第2の実施形態を示している。第1の実施形態と同一部分には同一符号を付してある。この実施形態では、MSLセンサ2に図4に示すMSLセンサ2が用いられる。即ち、電磁波発生装置38から周波数f1 (=3GHz)、周波数f2 (=500MHz)の各電磁波がMSLセンサ2の入力端子12、20に独立して入力され、周波数f1 側の出力電磁波Pout は切換手段であるスイッチ58により選択されて第1の検波器61に加えられ、周波数f2 側の出力電磁波Pout は第2の検波器62に加えられる。スイッチ58の出力切換えは切換制御部64によって行われる。第1及び第2の検波器61、62は、例えば、入力周波数と局部発振周波数とを混合するミキサを備え、ヘテロダイン検波によって所望の周波数の検波出力を取り出す検波器が使用される。
【0096】
そして、伝送装置34は、図17に示すように、電圧測定装置46、温度検出装置48を備えるとともに、ディジタル信号に変換するA/D変換装置50、A/D変換された電圧信号を有線又は無線を以て演算・記録・表示装置36に伝送する送信装置52を備えている。即ち、3GHzと500MHzの周波数の電磁波損失を表す電圧V1 、電圧V2 、測定温度を表す電圧Vtをディジタル信号に変換して送信装置52によって演算・記録・表示装置36に伝送する。
【0097】
次に、図18は、本発明の特性測定装置の第3の実施形態を示している。第2の実施形態と同一部分には同一符号を付してある。この実施形態では、MSLセンサ2に図5に示すMSLセンサが用いられる。電磁波発生装置38は、例えば、周波数f1 (=3GHz)、周波数f2 (=500MHz)の各電磁波を選択的に発生してMSLセンサ2に入力する。例えば、電磁波発生装置38に周波数選択手段としてスイッチを設け、発生した周波数f1 、f2 がそのスイッチを通して選択されてMSLセンサ2に加えられる。即ち、周波数f1 が選択されるとき、検波器61には、スイッチ58を通して周波数f1 の出力電磁波Pout が加えられるとともに、スイッチ66を通して入力電磁波Pinが加えられ、また、周波数f2 が選択されるとき、検波器62には、スイッチ58を通して周波数f2 の出力電磁波Pout が加えられるとともに、スイッチ66を通して入力電磁波Pinが加えられ、それぞれの電磁波損失が検波器61から電圧V1 、検波器62から電圧V2 として取り出される。
【0098】
次に、図19及び図20に示す特性測定装置を含水率センサに用いた土壌の含水率測定について説明する。
【0099】
MSLセンサ2は、被測定物としての土壌11に埋設等し、そのストリップ導体8を土壌11に隣接させる。このMSLセンサ2は、例えば、図20に示すように、誘電体基板40を備え、その裏面側に導体6、その表面側にストリップ導体8を配設したものを絶縁物で形成された筐体21内に埋め込み、ストリップ導体8側の表面を誘電体からなる保護膜としての防護層23で被覆したものである。筐体21には、温度センサ30が埋め込まれている。この場合、温度センサ30は、MSLセンサ2とともに土壌11中に埋設され、MSLセンサ2の近傍の温度を測定し、その測定温度をMSLセンサ2の出力の温度補正に用いる。
【0100】
また、制御ユニット32における電磁波発生装置38にはマイクロ波等の電磁波を発生させ、MSLセンサ2のストリップ導体8に加える。また、検出装置42には参照信号としてMSLセンサ2の入力電磁波とMSLセンサ2を通過した出力電磁波を加える。この場合、土壌11のイオンの影響を無視できるレベルにするために、高い周波数、例えば、約1GHz超のマイクロ波を使用する。検出装置42は、入力電磁波と出力電磁波とを受け、両者の電力比、電圧比、電力差又は電圧差に応じた直流電圧又は低周波電圧を出力する。この出力電圧は出力信号である出力電磁波と参照信号である入力電磁波により変化する。
【0101】
伝送装置34は、図14に示す構成であり、制御ユニット32から出力された直流電圧又は低周波電圧を測定し、そのレベルを表す出力を取り出し、温度センサ30の測定温度を表す電圧信号に変換し、これらの出力信号を無線又は有線により演算・記録・表示装置36に伝送する。
【0102】
そして、演算・記録・表示装置36は、伝送装置34を通して受けた電磁波損失から含水率やpF値を演算し、温度補正を行うとともに、その含水率やpF値及び温度を表示する。
【0103】
このとき、出力電磁波の振幅は、ストリップ導体8上の水分により、入力電磁波の振幅より減少する。これを参照信号と比較して電磁波損失を検出する。具体的には、電磁波損失を表す直流電圧又は低周波電圧として取り出す。このストリップ導体8を通過した電磁波に生じる電磁波損失は、その導体上空間にある水分の多寡に依存する。この実施例では、含水率センサとして機能させている。
【0104】
また、電磁波の周波数が高く、約1GHz超では、電磁波損失へのイオンによる影響が小さくなり、この事実に基づき、3〜3.5GHzを選択している。
【0105】
そして、MSLセンサ2の出力レベルである電圧と電磁波損失の相関については予め数式等を作成し、パーソナルコンピュータ56に格納しておく。そして、電磁波損失から土壌の含水率を算出し、温度補正を行う。この場合、予め電磁波損失と土壌の含水率の相関を表す検量線及び数式等を作成し、パーソナルコンピュータ56に格納しておく。図21は、実験により得られた検量線を示す。
【0106】
実験には、被測定物として豊浦標準砂と土壌を使用し、使用した水溶液は、純水、塩化カリウム水溶液、肥料水溶液について行った。電磁波の周波数は3.0GHzを使用し、その測定結果として図21に示す電磁波損失を得た。この電磁波損失は含水率に依存し、高い相関性を示している。しかも、水の中のイオンの影響は殆ど無視できるレベルであり、その検量線及び数式の温度依存性を把握できる。
【0107】
また、温度補正後の含水率を表示し、含水率とpF値の相関関係を用いて含水率をpF値に置換して表示する。この場合、電磁波損失とpF値は土壌の種類によって異なるので、検量線は、土壌の種類毎に作成しておく必要がある。
【0108】
次に、図19及び図20に示す特性測定装置をイオン含有率センサに用いた土壌のイオン等の測定について説明する。
【0109】
MSLセンサ2は、被測定物である土壌11中に埋め、ストリップ導体8にその土壌11を近接させる。この場合、電磁波発生装置38には周波数1GHz未満の特定波長の電磁波を発生させ、MSLセンサ2に加えるとともに、参照信号としてその入力電磁波を検出装置42に加える。検出装置42にMSLセンサ2からの出力電磁波が加えられるのは前記と同様である。
【0110】
この場合、出力電磁波の振幅は、ストリップ導体8上の水分のみならずイオンによっても減衰する。これを参照信号である入力電磁波と比較して電磁波損失として取り出す。この場合、電磁波損失が直流電圧又は低周波電圧として取り出される。
【0111】
ストリップ導体8を通過する電磁波に生じる電磁波損失は、その導体上にあるイオンの多寡にも依存することから、この実施形態では、イオン含有率センサとして機能させている。この場合、前記の方法で測定した含水率又は別途測定した含水率を参照する必要がある。
【0112】
また、この電磁波損失にイオンが影響する度合いは、電磁波の周波数が低い範囲(約1GHz未満)で顕著になり、そのため、数百MHzの周波数を選択している。
【0113】
そこで、電磁波損失と含水率とから土壌のイオン含有率を算出し、その算出値に温度補正を施す。この場合、予め電磁波損失と含水率に対する土壌のイオン含有率の相関について検量線や数式等を作成しておく必要がある。また、その検量線及び数式の温度依存性を予め把握する必要がある。
【0114】
なお、電磁波損失と含水率に対する土壌のイオン含有率の相関関係について、そのイオンには複数種類のイオンがあり、それらが混在している場合、特定のイオンを主成分としている場合や各種イオンの混合比率の変動が低い場合には、主成分イオンを測定するイオン含有率センサとして十分に機能する。例えば、茶畑では、慣習的に多施肥栽培が行われており、且つ、肥料成分的に窒素偏重の傾向が一般的に見られる。土壌中のイオンは、肥料窒素成分が土壌中で変化して生成する硝酸体窒素(即ち、硝酸イオン)を主成分としており、その比率があまり変わらない状況であることから、本発明に係る特性測定装置を硝酸イオン含有率センサとして使用することにより、そのイオンの測定が可能である。
【0115】
また、温度補正後のイオン含有率を表示し、この土壌のイオン含有率を土壌溶液中のイオン濃度に置換して土壌溶液中のイオン濃度を算出して表示する。この場合、検量線に相当する電磁波損失と含水率に対する土壌溶液中のイオン濃度を予め求めておくことが必要である。土壌溶液中のイオン濃度と含水率とを乗算することにより、土壌のイオン含有率を算出することができる。イオン濃度やイオン含有率を求める時点では、既に含水率が判明しているので、その含水率を用いてイオン濃度やイオン含有率を求めることができる。
【0116】
土壌11のイオン含有率を、土壌溶液導電率に置換することにより、土壌溶液導電率を算出して表示する。この場合、検量線として電磁波損失と含水率に対する土壌溶液導電率を予め求めておくことが必要である。水溶液の導電率は、その溶液中のイオン濃度に依存し、両者の間には相関があるから、何れか一方が判れば、他方は容易に判明し、土壌溶液においても同様である。即ち、土壌溶液導電率、土壌溶液中のイオン濃度、土壌のイオン含有率は何れかが判明すれば、他の2つの特性が判明する。
【0117】
ところで、土壌中硝酸イオン含有率の測定は、耕作地の土壌の肥料成分観測を目的として行われることが多いが、従来用いられた方法によっては、算出される硝酸イオン含有率よりも土壌溶液導電率の挙動に着目する場合がある。本発明の特性測定センサでは、土壌溶液導電率を算出することによって、それに対応できる。
【0118】
次に、図22及び図23は、実験結果を示すグラフである。実験には、土壌として豊浦標準砂を使用し、水溶液には塩化カリウム水溶液を使用し、濃度を変えたものを数種用いた。濃度のレベルについては、導電率を測定し、それを数水準に設定し、導電率0つまり濃度0を設定した。
【0119】
その実験結果は、図22及び図23に示す通りであり、各結果の損失レベルが異なるが、これは含水率に依存するものである。同じ含水率でも、水溶液の導電率によって電磁波損失が変化し、特定の周波数範囲では、電磁波損失は水分と導電率の双方に相関していることが判る。
【0120】
次に、図24〜図28に示す本発明の特性測定装置を土壌のイオン含有率・含水率センサに用いた土壌のイオン含有率及び含水率の同時測定について説明する。
【0121】
図24及び図25は本発明の特性測定装置による土壌のイオン含有率・含水率センサを示している。MSLセンサ2には、含水率測定用ストリップ導体8Aと、イオン含有率等測定用ストリップ導体8Bとを1つの筐体21内に収容している。この場合、単一の誘電体基板40上にそれぞれのストリップ導体8A、8Bを設置してもよく、また、2枚の誘電体基板40上にストリップ導体8A、8Bを個別に設置し、各誘電体基板を貼り付けてもよい。
【0122】
制御ユニット32の構成は前記の通りであり、この場合、電磁波発生装置38には、イオンの影響をより明確にするための低い周波数(約1GHz未満)の電磁波と、イオンの影響を無視できるレベルにするための高い周波数(約1GHz超)のマイクロ波の2つの周波数の電磁波を発生させる。そして、検出装置42で得られた電磁波損失を表す一方の直流電圧又は低周波電圧により含水率やpF値を算出し、温度センサ30で測定された温度を以てその算出値を温度補正する。
【0123】
そして、検出装置42で得られた電磁波損失を表す他方の直流電圧又は低周波電圧と前記含水率とからイオン含有率、イオン濃度、溶液導電率を算出し、その値を測定温度で温度補正する。これらの測定値を表示する。
【0124】
次に、図26及び図27は本発明の特性測定装置による土壌のイオン含有率・含水率センサの他の例を示している。MSLセンサ2には、含水率測定用ストリップ導体8Aと、イオン含有率等測定用ストリップ導体8Bとを入力側の端を共通に設置し、ストリップ導体8の中途部で分岐させている。
【0125】
この場合、電磁波発生装置38には、イオンの影響をより明確にするための低い周波数(約1GHz未満)の電磁波と、イオンの影響を無視できるレベルにするための高い周波数(約1GHz超)の2つの電磁波を発生させ、何れかの波長、即ち、周波数を選択するための切換手段としてのスイッチ66を備えている。検出装置42は、MSLセンサ2を通過した出力電磁波と、参照信号としての入力電磁波とを受け取る。この場合、検出装置42では、入力電磁波の選択に対応して各周波数で個別の出力電磁波を検出する。この結果、検出装置42は、電磁波損失を表す直流電圧又は低周波電圧を周波数毎に出力し、その直流電圧又は低周波電圧が出力信号と参照信号により変化する。
【0126】
制御ユニット32から出力された直流電圧又は低周波電圧は、伝送装置34の電圧測定装置46によって測定され、また、温度検出装置48は温度センサ30の出力から温度を表す電圧信号に変換する。これら出力信号は、伝送装置34を通して演算・記録・表示装置36に伝送され、一方の直流電圧又は低周波電圧から含水率やpF値を算出し、それを温度補正した後、表示する。また、他方の直流電圧又は低周波電圧と、既に求めた含水率とからイオン含有率やイオン濃度や溶液導電率を算出し、それを温度補正した後、表示する。
【0127】
次に、図28は本発明の特性測定装置による土壌のイオン含有率・含水率センサの他の例を示している。MSLセンサ2には、単一のストリップ導体8を備えたものを用いる。
【0128】
この場合、電磁波発生装置38には、イオンの影響をより明確にするための低い周波数(約1GHz未満)のマイクロ波と、イオンの影響を無視できるレベルにするための高い周波数(約1GHz超)のマイクロ波の2つの周波数の電磁波を発生させ、何れかの波長を選択して送り出すための切換手段としてのスイッチ66を備えている。
【0129】
このような構成によれば、一つの周波数の電磁波損失を表す直流電圧又は低周波電圧から含水率やpF値を算出し、それを温度補正する。また、他の電磁波損失を表す直流電圧又は低周波電圧と、既に算出した含水率とからイオン含有率、イオン濃度、溶液導電率を算出し、それを温度補正した後、それらを表示する。
【0130】
次に、図29は、本発明の特性測定方法及び特性測定装置の他の実施形態を示し、図30は特性測定センサの他の実施形態として一部を切り欠いて内部構造を示している。この実施形態では、MSLセンサ2の表面に多孔質な吸水媒体として素焼板68を貼り付け、その媒体吸水率やイオン含有率を測定することで、間接的に土壌を測定するようにしたものである。即ち、MSLセンサ2の表面に吸水媒体としてセラミックを貼り付けると、そのセラミックの周辺土壌から吸い取る水分と相関するpF値によって電磁波の損失が変化する。したがって、吸水媒体である素焼板68側で電磁波損失を測定することで、吸水媒体における含水率、水分の吸引圧、イオン含有率、水分のイオン濃度、水分の導電率の何れかを算出することができる。
【0131】
なお、土壌の含水率とイオン含有率の両方を一度に測定するには図26の特性測定装置を使用し、MSLセンサ2を測定すべき土壌に埋設し、ストリップ導体8に隣接し、電磁波発生装置38に発生させた電磁波の周波数の3〜3.5GHzの一波長と、1GHz未満の一波長の2つの電磁波を用いて得られる電磁波損失から含水率とイオン含有率を算出すればよい。
【0132】
また、実施形態では、伝送線路としてマイクロストリップ線路を例に取って説明したが、基板等に配設された各種の導体を用いればよく、本発明は実施形態のものに限定されるものではない。
【0133】
また、実施形態では、電磁波損失を電力比又は電圧比で求めたが、電力差又は電圧差等のレベル差で算出することが可能である。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次の効果が得られる。
a.メンテナンスの軽減化ないし容易化を図ることができ、土壌水分等の被測定物の特性を高精度に測定することができる。
b.耕作地の土壌水分の管理等に必要な特性測定の利便性を向上させることができる。
c.メンテナンスの軽減化ないし容易化を図ることができ、土壌中イオン含有率や、土壌溶液のイオン濃度や、土壌溶液の導電率を高精度に測定することができる。
d.耕作地の肥料成分管理のための観測における利便性を向上させることができる。
e.被測定物の特性として水分、イオンの双方を単一のMSLセンサで測定できる。
f.被測定物の水分測定については、その測定値を含水率及びpF値の何れでも表すことができる。
g.イオン測定については、その測定値をイオン含有率、溶液イオン濃度、溶液導電率の何れでも表すことができる。
h.また、特性測定センサ及び特性測定装置は既存の部品等を用いてしかも特殊な技術や高精度な技術を要することなく、容易かつ安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 特性測定センサを示す斜視図である。
【図2】 特性測定センサの電磁界分布を示す図である。
【図3】 特性測定センサを示す平面図である。
【図4】 他の特性測定センサを示す平面図である。
【図5】 他の特性測定センサを示す平面図である。
【図6】 他の特性測定センサを示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図である。
【図7】 他の特性測定センサを示し、(A)はその平面図、(B)はその一部を切り欠いて示した側面図である。
【図8】 他の特性測定センサを示し、(A)はその平面図、(B)はその側面図である。
【図9】 特性測定センサを用いた実験結果を示す図である。
【図10】 他の特性測定センサを用いた実験結果を示す図である。
【図11】 他の特性測定センサを用いた実験結果を示す図である。
【図12】 他の特性測定センサを用いた実験結果を示す図である。
【図13】 本発明の特性測定装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図14】 伝送装置を示すブロック図である。
【図15】 演算・記録・表示装置を示すブロック図である。
【図16】 本発明の特性測定装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図17】 伝送装置を示すブロック図である。
【図18】 本発明の特性測定装置の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図19】 本発明の特性測定装置の一実施形態である含水率センサ又はイオン含有率センサを示すブロック図である。
【図20】 MSLセンサの構成を示す縦断面図である。
【図21】 本発明の特性測定装置による含水率センサの実験結果を示す図である。
【図22】 本発明の特性測定装置によるイオン含有率センサの実験結果を示す図である。
【図23】 本発明の特性測定装置によるイオン含有率センサの実験結果を示す図である。
【図24】 本発明の特性測定装置の一実施形態である含水率・イオン含有率センサを示すブロック図である。
【図25】 MSLセンサの構成を示す縦断面図である。
【図26】 本発明の特性測定装置の他の実施形態である含水率・イオン含有率センサを示すブロック図である。
【図27】 MSLセンサの構成を示す縦断面図である。
【図28】 本発明の特性測定装置の他の実施形態である含水率・イオン含有率センサを示すブロック図である。
【図29】 本発明の特性測定装置の他の実施形態であって、MSLセンサの一部を切り欠いて示したブロック図である。
【図30】 MSLセンサの構成を示す縦断面図である。
【図31】 従来のテンションメータ法によるセンサを示す図である。
【図32】 従来のテンションメータ法による検量線を示す図である。
【図33】 従来のECセンサを示す図である。
【図34】 従来のECセンサの測定電極部分の拡大図を示す図である。
【図35】 従来のECセンサによる検量線を示す図である。
【図36】 従来のECセンサによる検量線を示す図である。
【図37】 従来のECセンサによる検量線を示す図である。
Claims (2)
- 電磁波を通過させる単一又は複数のマイクロストリップラインからなる伝送線路を備え、被測定物に前記伝送線路を近接させたセンサと、
このセンサに1又は2以上の電磁波を入力する電磁波発生源と、
この電磁波発生源から前記センサに加えられる入力電磁波と、前記センサを通して得られる出力電磁波とから前記被測定物による電磁波損失を検出する損失検出手段と、
この損失検出手段で得た前記電磁波損失から前記被測定物の特性を演算する演算手段とを備え、
前記センサに前記電磁波の周波数に適した伝送線路を備えて前記センサから取り出される前記電磁波の周波数に応じて前記伝送線路を切り換える切換手段を備え、
前記伝送線路に周波数の異なる電磁波を通過させることにより前記センサを前記被測定物の含水率センサ又はイオン含有率センサとして機能させたことを特徴とする特性測定装置。 - 請求項1記載の特性測定装置において、
前記伝送線路は、長さの異なる第1及び第2のストリップ導体を備えるとともに、前記第1のストリップ導体を単一又は複数で構成し、かつ、前記第2のストリップ導体を分岐させてなることを特徴とする特性測定装置。
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