JP4194109B2 - せり出し装置付きブラシホルダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工工具たるブラシを保持するブラシホルダの改良に関するものであり、特に、被加工物の平面角部のバリ取り加工に好適なブラシホルダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のブラシホルダは機械加工機の工具軸に着脱可能に取り付けられるのが一般的である。機械加工機は、工具軸を回転軸線まわりに回転させる回転駆動装置と、その工具軸と被加工物とを少なくとも回転軸線と交差する方向に移動させる移動装置とを備えるものとされることが多い。通常、ブラシホルダは、中心軸線方向において工具軸から被加工物の被加工面側に延び出し、ブラシの先端位置が被加工面より数mm程度長く突出した位置にあるように工具軸に保持され、回転させられつつ被加工物に対して相対移動させられる。その結果、ブラシは先端部が被加工面に押し付けられた状態で回転しつつ相対移動し、各毛先がバリの形成された被加工面の角部に順次乗り上げてバリを除去する。このブラシの先端が被加工面より長く突出した量を乗上げ量と称する。
【0003】
このバリ取り加工の進行に伴い、被加工面との摩擦によってブラシも摩耗するため、上記乗上げ量が徐々に減少していく。一方、バリ取りを良好に行うためには、ブラシの乗上げ量をほぼ一定に維持する必要があり、ブラシを摩耗分だけせり出させる必要がある。そのため、従来は、一定量の加工毎に、摩耗したブラシを、設定乗上げ量でプリセットされたブラシと、ブラシホルダごと交換したり、あるいは、マシニングセンタ等のNC機において、一定量の加工毎に、前進装置によって工具軸を僅かずつ前進させることによって、ブラシの摩耗分を補償することが行われていた。しかしながら、前者の場合、一定量の加工の最初と最後とでは乗上げ量が大きく異なるため、バリ取り結果にバラツキが生じることがあった。また、プリセットしたブラシホルダの交換作業に時間を要し、機械加工機の稼働率が低下する問題もあった。後者のように、前進装置によって乗上げ量を制御する場合には、当然ながら前進装置の存在が不可欠であり、また、前進装置の駆動制御が複雑になる問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、以上の事情を背景とし、ブラシホルダの構造の複雑化をできる限り回避しつつブラシの乗上げ量をほぼ一定に維持し得るようにすることを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様のせり出し装置付きブラシホルダが得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0005】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、 (4)項が請求項3に、 (5)項が請求項4に、 (7)項が請求項5に、 (8)項が請求項6にそれぞれ相当する。
【0006】
(1)ホルダ本体と、
そのホルダ本体に軸方向に移動可能かつ相対回転不能に保持されたブラシ保持具と、
1回の流体圧の印加により正方向に予め定められた量作動し、流体圧の解消により前記正方向とは逆の方向である逆方向に作動する流体圧アクチュエータと、
その流体圧アクチュエータの前記正方向の1回の作動を、前記ブラシ保持具の前記ホルダ本体に対する予め定められた量の前進運動に変換し、前記流体圧アクチュエータの前記逆方向の作動を前記ブラシ保持具を前記ホルダに固定する運動に変換する運動変換装置と
を含むことを特徴とするせり出し装置付きブラシホルダ。
本せり出し装置付きブラシホルダにおいては、流体圧アクチュエータを流体圧の印加によって正方向に1回作動させれば、ブラシ保持具がホルダ本体に対して予め定められた量前進させられてブラシを設定量せり出させ、流体圧の解消によって流体圧アクチュエータを逆方向に作動させれば、ブラシ保持具がホルダ本体に対して固定される。流体圧の印加状態と解消状態とを1回ずつ生じさせれば、ブラシが設定量せり出されるのであり、複数回生じさせれば、設定量ずつ複数回せり出させられる。流体圧の印加状態と解消状態とを生じさせるためには、例えば、流体圧アクチュエータと流体圧源との間に配設した電磁開閉弁あるいは電磁方向切換弁を作動させればよく、極めて単純な制御によってブラシのせり出しを実現することができ、自動せり出しの実施が容易になる。流体圧アクチュエータの流体圧の印加,解消は、自動で制御されるようにすることも可能であり、作業者によるボタン操作等の手動操作により行われるようにすることも可能である。
(2)当該ブラシホルダが、加圧されたクーラントを供給するクーラント供給路を内部に備えた工具軸に取り付けられるものであり、前記流体圧アクチュエータが前記クーラントの圧力を前記流体圧として作動するものである (1)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
工具軸には、それに取り付けられる加工工具とその加工工具により加工される被加工物との間にクーラントを供給するために、内部にクーラント通路が形成され、そのクーラント通路に加圧したクーラントを供給するクーラント圧送装置が接続されているものが多い。したがって、クーラント圧を流体圧アクチュエータの作動圧として利用すれば、多くの場合専用の流体圧供給装置を設ける必要がなく、設備費を節減することができる。
(3)前記流体圧アクチュエータが流体圧の印加と解消とにより1回の直線往復作動を行う往復直線運動型アクチュエータである (1)項または (2)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
流体圧アクチュエータは揺動シリンダのように往復回動型とすることも可能である。例えば、揺動シリンダとブラシ保持具との間に、往復回動を往復直線運動に変換する運動変換装置を設けるのである。しかし、往復直線運動型アクチュエータを使用すれば、運動変換装置が簡単で済む。なお、往復直線運動型アクチュエータの出力部材の運動を適宜の減速度で減速してブラシ保持具に伝達するものが、運動変換装置の一種であることは明らかであるが、出力部材とブラシ保持具とを単純に連結する連結装置も、上記減速度が1である特異な運動変換装置であるとみなすこととする。
(4)前記運動変換装置が、前記流体圧アクチュエータの正方向の作動時に、前記ブラシ保持具と共に前記ホルダ本体に対して相対的に前進し、流体圧アクチュエータの逆方向の作動時に、前記ホルダ本体および前記ブラシ保持具に対して相対的に後退する選択的運動伝達部材を含む (1)項ないし (3)項のいずれかに記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
選択的運動伝達部材を利用すれば、運動変換装置の構成を単純化することが容易となる。
(5)前記運動変換装置が、前記ブラシ保持具と前記ホルダ本体との間にそれら両者の軸方向の相対移動に対して摩擦抵抗を付与する抵抗付与装置を含む (4)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
摩擦抵抗付与装置を設ければ、流体圧アクチュエータの逆方向の作動時に、選択的運動伝達部材をブラシ保持具に対して相対的に確実に後退させることができる。
(6)前記選択的運動伝達部材が、前記流体圧アクチュエータの正方向の作動の前期には前記ブラシ保持具と共に前記ホルダ本体に対して相対的に前進するが、後期には、ブラシ保持具に対して相対的に前進するものである (4)項または (5)に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
本態様によれば、選択的運動伝達部材のブラシ保持具に対する係合を解除することが容易となる。
(7)前記ブラシ保持具が、円筒面である摩擦係合面を備え、前記選択的運動伝達部材がその摩擦係合面に押し付けられて前記ブラシ保持具に運動を伝達する作用状態と、摩擦係合面から離間してブラシ保持具に運動を伝達しない非作用状態とに変化可能なコレットであり、前記運動変換装置が、そのコレットに前記流体圧アクチュエータの運動を伝達するとともに、そのコレットを前記作用状態と前記非作用状態とに変化させるコレット制御装置を含む (4)項ないし (6)項のいずれかに記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
コレットが作用状態にある状態で前進させられれば、コレットはブラシ保持具を共に前進させる。コレットが非作用状態にある状態で前進あるいは後退させられても、ブラシ保持具を共に前進あるいは後退させることはない。ブラシ保持具の摩擦係合面は、外周面でも内周面でもよい。前者の場合は、コレットが縮径させられることによりブラシ保持具と摩擦係合し、後者の場合は拡径させられることにより摩擦係合することとなる。
(8)前記コレット制御装置が、
前記ホルダ本体に軸方向に限られた距離移動可能に保持され、前記コレットとテーパ面同士で係合することによりコレットを前記作用状態とするテーパ部材と、
前記コレットを前記ホルダ本体に対して後退方向に付勢する付勢装置と
を含む (7)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
常には、付勢装置の付勢力によりコレットが後退方向へ付勢されており、テーパ部材のテーパ面がコレットのテーパ面に係合させられ、コレットはブラシ保持具の摩擦係合面に摩擦係合させられている。また、テーパ部材は、コレットを介して伝達される付勢装置の付勢力によって後退端位置に保たれている。この状態からコレットが前進させられれば、テーパ部材およびブラシ保持具が共に前進させられる。そして、テーパ部材が前進端位置に達してホルダ本体により前進を阻止されれば、そのテーパ部材に対してコレットが相対的に前進し、拡径を許容され、摩擦係合面からの離間する。したがって、その後はコレットが前進してもその前進運動はブラシ保持具に伝達されない。コレットが後退させられる際には、当初、テーパ部材に対してコレットが相対的に後退する。このときには、コレットはブラシ保持具に摩擦係合しておらず、ブラシ保持具は前述のように一定量前進させられた位置に残される。やがて、コレットのテーパ面がテーパ部材のテーパ面に接触するに到り、その後はテーパ部材がコレットと共に後退する。テーパ部材が後退端位置に達してホルダ本体により後退を阻止されれば、以後はコレット等(コレットおよびそれと一体的な部材)がテーパ部材に対して相対的に後退し、両者のテーパ面同士が強く係合させられ、コレットが再びブラシ保持具に摩擦係合した状態に復帰させられる。コレット制御装置がコレットの前進前の状態に復帰するのである。
(9)前記ホルダ本体が、軸方向に延び、少なくとも前端が開口した中心穴を備え、前記ブラシ保持具がそのホルダ本体の軸方向に平行に延びて、前記中心穴の前記前端開口からその中心穴の内部に嵌入した軸部を備え、前記コレットがその軸部の外周面に摩擦係合する (7)項または(8)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
コレットを、内周側にテーパ面を有し、外周側にテーパ面を有するテーパ部材により拡径させられて、ブラシ保持具の円形穴の内周面に摩擦係合するものとすることも可能である。しかし、ブラシ保持具に軸部を設け、コレットをその軸部の外周面に摩擦係合するものとする方が、設計や製造が容易になる場合が多い。(10)前記ホルダ本体が、少なくとも前端が開口した円筒状の第1嵌合部を備え、前記ブラシ保持具が、前記第1嵌合部と軸方向に相対移動可能に嵌合し、第1嵌合部の前記前端の開口を閉塞する第2嵌合部を備えた (1)項ないし(9)項のいずれかに記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
ホルダ本体にブラシ保持具を軸方向に相対移動可能に嵌合すれば、ブラシ保持具の移動の案内が可能になるが、その上、ホルダ本体の円筒状の第1嵌合部の前端開口をブラシ保持具に閉塞させれば、ホルダ本体内への塵埃等の侵入を防止することが容易となる。
(11)前記第2嵌合部が概して有底円筒状を成し、前記第1嵌合部の外周面に嵌合される(10)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
(12)前記第2嵌合部が概して有底円筒状を成し、前記第1嵌合部の外周面に嵌合されるとともに、前記コレット制御装置が、前記第1嵌合部の前記第2嵌合部が嵌合された部分の内周側に配設された(10)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
本態様によれば、ホルダ本体とブラシ保持具との嵌合部と、コレット制御装置とを軸方向に関して互いにオーバラップさせることができ、せり出し装置付きブラシホルダの軸方向の寸法を短く構成することが容易になる。
(13)前記第2嵌合部が前記第1嵌合部の内周面に嵌合され、前記コレット制御装置が、前記第1嵌合部の内側の、前記第2嵌合部の後端より後方に配設された(10)項に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
本態様によれば、ホルダ本体とブラシ保持具との嵌合部と、コレット制御装置とを軸方向に直列に配列することにより、せり出し装置付きブラシホルダの外径を小さくすることが容易になる。
(14)前記運動変換装置が、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との間にそれら両者の軸方向の相対移動に対して摩擦抵抗を付与する抵抗付与装置を含む(10)項ないし(13)項のいずれかに記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
摩擦抵抗付与装置は他の部分に設けることも可能であるが、第1嵌合部と第2嵌合部との間に設けることが便利である。
(15) (1)項ないし(14)項のいずれかに記載のせり出し装置付きブラシホルダと、
回転軸線まわりに回転可能であり、前記ホルダ本体を前記軸方向が前記回転軸線と平行となる姿勢で保持する工具軸と、
その工具軸を前記回転軸線まわりに回転させる回転駆動装置と、
前記工具軸と被加工物とを少なくとも前記回転軸線と交差する方向に移動させる移動装置と、
予め定められた条件が満たされる毎に、前記流体圧アクチュエータへの前記流体圧の予め設定された回数の印加,解消を自動で行うことにより、前記ブラシ保持具に保持されたブラシをせり出させるせり出し制御装置と
を含むことを特徴とする自動せり出し機構付きブラシ加工装置。
上記予め定められた条件は、例えば、(a)被加工物の加工数が設定数に達すること、加工時間の総和あるいはブラシ加工装置の運転時間の総和が設定時間に達すること等、ブラシ使用量が設定量に達したことや、(b)回転駆動装置の駆動源たる電動モータの電流が設定値まで低下すること、回転トルク伝達装置の構成要素に作用する力が設定値まで低下すること等、ブラシが被加工物から受ける回転抵抗が設定量まで低下することや、(c)ブラシの摩耗量が設定量に達すること等とすることができる。ブラシが被加工物から受ける回転抵抗としては、例えば、1つの被加工物を加工する間の回転抵抗の最大値,最小値,平均値の少なくとも1つを採用することができる。ブラシの摩耗量は、光電スイッチや撮像装置等によりブラシ先端位置を検出し、その先端検出位置の変化量として検出することができる。せり出し制御装置は、例えば、流体圧を供給する流体圧源と、その流体圧源と流体圧アクチュエータとの間に配設した電磁開閉弁,電磁方向切換弁等の制御弁と、その制御弁を制御する弁制御装置とを含むものとすることができる。(16)ホルダ本体と、
そのホルダ本体に軸方向に移動可能かつ相対回転不能に保持されたブラシ保持具と、
1回の流体圧の印加および解消により予め定められた作動量ずつ作動する流体圧アクチュエータと、
その流体圧アクチュエータの1回の作動を、ブラシ保持具の予め定められた量ずつの前進運動に変換する運動変換装置と
予め定められた条件が満たされる毎に、前記流体圧アクチュエータへの前記流体圧の予め設定された回数の印加,解消を自動で行うことにより、前記ブラシ保持具に保持されたブラシをせり出させるせり出し制御装置と
を含むことを特徴とする自動せり出し機構付きブラシ加工装置。
前記(1)項ないし(14)項に記載の特徴を本項に適用することも可能である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2には、本発明の一実施形態であるせり出し装置付きブラシホルダが示されている。ブラシホルダは、ホルダ本体10を備えている。ホルダ本体10は、その中心軸線の方向である軸方向の一端部が、機械加工機たるブラシ加工装置8の工具軸11(図8参照)のホルダチャック13に保持されるシャンク部12とされるとともに、軸方向の他端部が加工工具たるブラシを保持する工具保持部14とされている。なお、これらシャンク部12および工具保持部14は、製作の都合上別体とされているが、組み付け後は一体的なホルダ本体10を構成する。シャンク部12は、DIN規格のHSK型シャンクとして公知の構成であるため説明は省略する。
【0008】
ホルダ本体10の工具保持部14には、ブラシ保持具20が軸方向に移動可能かつ相対回転不能に保持されている。工具保持部14は、そのシャンク部12とは反対側の前端面22に開口し、中心軸線を通る中心穴24が形成されることにより、概して円筒状を成している。ブラシ保持具20は、概して円板状のブラシ保持部30を備え、ブラシ保持部30の一方の端面にブラシ32が同心に固定されている。ブラシ保持具20はまた、ブラシ32が保持される側とは反対側の端面34から軸方向に平行に延びる有底円筒状の嵌合部36を備えている。さらに、端面34の中心部には、軸方向に延びる軸部38を備えている。嵌合部36がホルダ本体10の工具保持部14の外周面に嵌合されるとともに、軸部38が中心穴24の内部に嵌入させられた状態で、ブラシ保持具20がホルダ本体10に保持されている。嵌合部36が工具保持部14の外周面に嵌合されることにより、中心穴24の前端面22側の開口が気密に塞がれ、ブラシ32による被加工物39(図8参照)の平面角部のバリ取り加工時に発生する切屑,ブラシ32の摩耗片やクーラント液等がブラシホルダ内部に侵入することを良好に防止できる。なお、図2に示すように、嵌合部36には、本実施形態では直径方向に隔たった2個所において、軸方向に延びるとともに、内周面に開口する長穴である係合凹部40が形成されており、工具保持部14に一体的に設けられ、外周面から突出する一対の係合突部42が、それぞれ係合凹部40の長手方向に移動可能かつ長手方向に直交する幅方向には実質的に移動不能に係合している。これら係合凹部40および係合突部42が回転阻止装置を構成し、ブラシ保持具20のホルダ本体10に対する回転が阻止されるとともに、軸方向の移動が案内される。
【0009】
工具保持部14の内周側には、コレット50が軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に保持されている。コレット50は、流体圧アクチュエータたる液圧シリンダ52の作動によって軸方向に移動させられる。液圧シリンダ52は、シリンダハウジングとしても機能するホルダ本体10内に形成されたシリンダボア58内を、軸方向に摺動可能かつ液密に嵌合された可動部材としてのピストン60を備えている。ピストン60とコレット50とは、連結部材としてのボルト62により連結されている。コレット50とピストン60との間には円環状のばね受け64が挟まれており、コレット50の後端部の雌ねじ穴を有する雌ねじ部65にボルト62が締め付けられることにより、コレット50,ピストン60およびばね受け64が互いに固定される。これらコレット50,ピストン60,ボルト62およびばね受け64は、製作の都合上別部材により構成されているが、互いに固定されることにより、工具保持部14の中心穴24の内周面に軸方向に移動可能に嵌合された一体の部材として機能する。なお、ばね受け64とボルト62とが共同して、ピストン60とコレット50との連結部を構成していると考えることも、雌ねじ部65が、ばね受け64およびボルト62と共同して連結部を構成していると考えることもできる。
【0010】
工具保持部14の内周側であって、ばね受け64とホルダ本体10との間には、付勢装置の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング66が設けられ、ばね受け64を介して、コレット50,ボルト62およびピストン60が、工具保持部14側からシャンク部12に向かう向き(後退方向)に付勢されている。なお、圧縮コイルスプリング66は、一端がばね受け64の工具保持部14側の端面68に受けられ、他端がホルダ本体10に一体的に設けられたばね受け70に受けられる。ばね受け70のホルダ本体10への組付け時には、ばね受け70を工具保持部14の後端部側から挿入する。中心穴24は、先端側ほど小径となる段付円筒状を成しており、工具保持部14の肩面とばね受け70との間にスペーサ71を介在させてばね受け70の挿入限度が規定された状態で、工具保持部14の周壁に螺合された楔部材74の円錐状の先端部が、ばね受け70の外周面に形成された円錐状の係合凹部76に係合させられ、スペーサ71に接近する向きに押されることによって、ばね受け70がホルダ本体10に固定され、一体的なものとして機能する。スペーサ71の軸方向寸法を変えれば、ばね受け70の前端面(後述するストッパ面94)の中心穴24内での軸方向位置を任意に変更できる。液圧シリンダ52の作動によるコレット50の前進方向(軸方向において工具保持部14に向かう方向)の移動限度は、ばね受け64とばね受け70の後端面78との当接により規定される。上記スペーサ71に代えて、例えば図7に示すように、段付きの中心穴24に形成された肩面をストッパ79として機能させ、ばね受け70の挿入限度を規定した状態でばね受け70をホルダ本体10に固定することも可能である。
【0011】
コレット50は、底部80を有する容器状を成し、先端部82から底部80近傍にいたる複数のすり割り溝84が形成されており、先端部82が縮径,拡径可能である。先端部82の内周面86が円筒面とされる一方、外周面は先端側ほど大径となるテーパ面88とされている。内周面86に前記ブラシ保持具20の軸部38の円筒面である外周面が嵌合されている。軸部38の外周面が摩擦係合面を構成している。コレット50は、内周面86が軸部38の外周面に押し付けられてブラシ保持具20に運動を伝達する作用状態と、軸部38の外周面から離間してブラシ保持具20に運動を伝達しない非作用状態とに変化可能である。先端部82は、拡径状態では、図4に示すように、先端に向かうほど前記中心軸線から遠ざかる向きに湾曲させられており、先端部82の内周面86が軸部38の外周面からできる限り離間させられるようにされている。
【0012】
テーパ面88の外周側には、概して円筒状を成すテーパ部材90が工具保持部14の内周側を軸方向に限られた距離移動可能に保持されている。テーパ部材90の軸方向の移動範囲は、テーパ部材90の前進側,後退側にそれぞれ設けられたストッパ面92,94によって規定される。ストッパ面92は、工具保持部14に形成された肩面により構成され、ストッパ面94は、前記ばね受け70の前端面により構成される。したがって、前述のように、スペーサ71の軸方向寸法を変えてストッパ面94の軸方向位置を変更すれば、テーパ部材90の軸方向の移動範囲を任意に変更,調整できる。テーパ部材90がストッパ面94に当接して後退端位置にある状態では、テーパ部材90の前端面とストッパ面92との間には、軸方向に設定量αの隙間が設けられている。テーパ部材90の前端側の内周面には、テーパ面88に対応するテーパ面98が形成されている。コレット50のテーパ面88がテーパ部材90のテーパ面98に押し付けられれば、コレット50の先端部82が縮径させられ、内周面86がブラシ保持具20の軸部38の外周面に押し付けられて軸部38を強固に保持する(作用状態)。一方、テーパ面88がテーパ面98から離間させられれば、コレット50の先端部82が拡径させられ、ブラシ保持具20の軸部38が解放される(非作用状態)。
【0013】
液圧シリンダ52のヘッド側室である液圧室100には、図8に示すように、工具軸11側の液通路たるクーラント供給路101およびホルダ本体10内に形成された液通路102を経て流体圧源の一種である液圧源としてのクーラント供給装置104から加圧されたクーラントが供給されるようになっており、液圧シリンダ52とクーラント供給装置104との間に設けられた電磁開閉弁105の開閉によって、液圧シリンダ52に液圧が印加,解消されるようになっている。つまり、液圧シリンダ52は、クーラントの圧力を液圧として作動するものであり、液圧の印加と解消とにより1回の直線往復作動を行う往復直線運動型アクチュエータの一種である。液圧室100にはまた、ホルダ本体10内に設けられた絞り機構を備えた液通路106が連通させられ、その液通路106から噴出したクーラントがクーラント受け107に受けられ、排出路108を経てクーラント供給装置104の構成要素であるタンク装置109にクーラントが戻されるようになっている。なお、液通路106は常にタンク装置109に連通させられているが、電磁開閉弁105の開状態では、液通路102から供給されるクーラント量が液通路106から排出される量よりも多いため、液圧室100の液圧が上昇し、ピストン60が前進させられる。液圧シリンダ52の液圧室100の液圧は常には解消状態にあり、その状態では、圧縮コイルスプリング66の付勢力によりコレット50は後退方向に付勢され、テーパ面88がテーパ面98に押し付けられることによって作用状態に維持される。液圧シリンダ52の液圧が印加されて正方向に作動させられ、テーパ面88,98同士が離間させられれば、コレット50の内周面86が軸部38から離間させられる非作用状態となる。液圧シリンダ52の作動によるテーパ部材90およびコレット50の作動については後に詳述する。
【0014】
ホルダ本体10の工具保持部14の外周面とブラシ保持具20の嵌合部36との間には、図2に示すように、付勢装置の一種である弾性部材たる皿ばね110が設けられている。本実施形態においては、複数の皿ばね110が交互に逆向きとなるように直列に重ね合わされており、それら複数の皿ばね110がホルダ本体10の直径方向に隔たった2個所にそれぞれ設けられている。それら皿ばね110が抵抗付与装置として機能し、ブラシ保持具20とホルダ本体10との間にそれら両者の軸方向の相対移動に対して摩擦抵抗が付与される。
【0015】
ホルダ本体10には、コレット50の移動を手動で操作し得る操作装置が設けられている。操作装置は、図2および図3に示すように、ホルダ本体10に回転可能に支持される操作レバー122を備えるものである。操作レバー122の操作部124は、ホルダ本体10の外周面から外側に突出し、工具を係合させ得る工具係合穴126を備えている。操作レバー122の係合部128は、ホルダ本体10の内周側に位置するとともに、ばね受け64より軸方向において後(後退方向)側に位置させられている。工具係合穴126に工具を挿入させて、図2に矢印で示された方向に操作レバーを回動させることによって、係合部128がばね受け64に当接し、ばね受け64およびコレット50を圧縮コイルスプリング66の付勢力に抗して前進させることができる。
【0016】
本実施形態におけるブラシ加工装置8について簡単に説明する。図8に示すように、工具軸11は、加工装置本体130に複数の軸受132を介して回転軸線まわりに回転可能に保持されている。工具軸11は、ホルダチャック13によってホルダ本体10をその軸方向が上記回転軸線と平行(同軸)となる姿勢で保持する。工具軸11は、回転駆動装置140によって上記回転軸線まわりに回転させられる。回転駆動装置140は、駆動源たる工具軸モータ142と、工具軸モータ142の出力軸の回転を工具軸11に伝達する回転伝達装置とを備えている。回転伝達装置は、上記出力軸と工具軸11とにそれぞれ一体的に設けられた一対のプーリ144,145およびそれらプーリ144,145に巻きかけられたベルト146を備えている。工具軸11内部に設けられた液通路は、ロータリ継手148により前記クーラント供給路101と接続されており、工具軸11がいずれの回転位相にある状態でも、クーラント供給路101からクーラントが上記液通路に供給されるようになっている。被加工物39は、保持装置150に保持され、工具軸11(ブラシホルダ)に対して、移動装置によって工具軸11の回転軸線と直交する方向であるY軸方向と、上記回転軸線と平行な方向であるX軸方向とに移動させられる。移動装置は、Y軸移動装置154とX軸移動装置156とを含むものである。ただし、工具軸11(ブラシホルダ)をX軸方向とY軸方向との少なくとも一方に移動させる移動装置を工具軸11側に設け、工具軸11を移動させてもよい。
【0017】
前記クーラント供給装置104は、前記タンク装置109と、タンク装置109からクーラントを汲み上げるポンプ160と、ポンプ160を駆動するポンプモータ162と、ポンプ160の吐出圧を設定圧に制限するリリーフ弁164とを備えるものである。ブラシ加工装置8はまた、制御装置170を備えており、制御装置170の弁制御部172において電磁開閉弁105の励磁,消磁が制御される。制御装置170にはまた、前記工具軸モータ142,Y軸移動装置154,X軸移動装置156,ポンプモータ162等も接続されている。制御装置170にはさらに、加工数検出器174が接続されている。加工数検出器174は、被加工物39の加工数を検出するものであり、保持装置150による被加工物39の自動保持の回数をカウントすることにより、その回数を加工数として検出するものとすることも可能であるし、加工毎に作業者によるボタン操作等の手動操作を行うことによって加工数を検出するものとすることも可能である。本実施形態では、加工数検出器174によって、加工数が設定数に達するという予め定められた条件が満たされれば、電磁開閉弁105が1回励磁,消磁されることにより、液圧シリンダ52への液圧が自動で1回印加,解消されるようにプログラムが設定されている。以上、電磁開閉弁105,制御装置170(の弁制御部172),加工数検出器174等によりせり出し制御装置が構成されているのである。
【0018】
以上のように構成されたブラシホルダにおける、ブラシの設定量のせり出しについて図1および図4に基づいて説明する。
まず、ブラシホルダをブラシ加工装置8の工具軸11に取付ける前に、機外にてホルダ本体10にブラシ保持具20を保持させ、プリセッタあるいはセッティングゲージ等を使用してブラシ32の先端位置(毛先位置)が設定の乗上げ量となるようにプリセットする。乗上げ量とは、前述のように、ブラシホルダが工具軸11に取り付けられた状態で、ブラシ32の先端が被加工物39の被加工面より長く突出する量のことである。機外にて先端位置を上記設定位置に調整するために、前述の操作レバー122を操作する。ブラシ32の先端位置の調整については、後述するブラシホルダの交換時の調整の際に説明する。プリセットされた状態で、コレット50は、前記作用状態にあり、コレット50の内周面86がブラシ保持具20の軸部38の外周面に摩擦係合する。圧縮コイルスプリング66の付勢力により、上記作用状態に保たれる。その後、ブラシホルダを工具軸11に位置決めされた状態で取り付ける。前記回転駆動装置140,Y軸移動装置154およびX軸移動装置156の駆動により、ブラシ32の先端部が被加工物39の被加工面に押し付けられた状態で回転しつつ相対移動し、各毛先がバリの形成された被加工面の角部に順次乗り上げてバリを除去する。
【0019】
バリ取り加工が進行すれば、被加工面との摩擦によってブラシ32も摩耗するため、上記乗上げ量が徐々に減少していく。したがって、ブラシ32をホルダ本体10に対して設定量ずつ軸方向にせり出させられる。このせり出しは、バリ取り結果の均一化の観点からは頻繁に行われることが望ましいが、せり出し量をあまり小さく設定すれば、せり出しの実行回数が不必要に大きくなり、また、微小量のせり出しは、適正量のせり出しに比較して困難であることが多い。したがって、本実施形態においては、1回のせり出し量が0.5mmに設定されている。前述のように、予め定められた条件が満たされる毎に、電磁開閉弁105を開閉し、液圧シリンダ52に液圧を1回印加し、解消することにより、ブラシ32を0.5mmだけせり出させるNCプログラムが実行される。上記「予め定められた条件」は、本実施形態においては、バリ取りが行われた被加工物39の数によって設定されるようになっているが、バリ取り加工の実行時間累積値等他の量により設定されるようにすることも可能である。
【0020】
液圧シリンダ52への液圧の印加によって、ピストン60,ボルト62,ばね受け64およびコレット50が、圧縮コイルスプリング66の付勢力に抗して前進させられる。この液圧シリンダ52の正方向の作動の前期には、コレット50のテーパ面88がテーパ面98に押し付けられているテーパ部材90は、両者の間の摩擦力により、コレット50と共にストッパ面94から前進させられる。ただし、テーパ部材90は、ストッパ面92との当接により、それ以上の前進が阻止される。つまり、テーパ面88,98同士が押し付けられるとともに内周面86がブラシ保持具20の軸部38の外周面に押し付けられた状態で、テーパ部材90の前端面とストッパ面92との軸方向の隙間αだけ、コレット50とブラシ保持具20とが共に前進させられるのである。
【0021】
テーパ部材90がストッパ面92に当接させられた後、図4に示すように、コレット50のみがテーパ部材90に対してさらに前進させられる。このようにしてコレット50のみが前進させられることにより、テーパ面88,98同士の係合が解除され、コレット50が非作用状態となって、コレット50はブラシ保持具20に対しても前進させられる。また、前記皿ばね110の付勢力によってブラシ保持具20とホルダ本体10との軸方向の相対移動に抵抗が付与されていることにより、コレット50の前進につられてブラシ保持具20も前進させられることが阻止される。皿ばね110の付勢力は、コレット50の非作用状態では、ブラシ保持具20とホルダ本体10との軸方向の相対移動を阻止し得る程度の大きさに設定されているのである。さらに、コレット50の先端部82は、前述のように、拡径状態では、先端に向かうほど前記中心軸線から遠ざかる向きに湾曲させられているため、内周面86がブラシ保持具20の軸部38から離間させられ、内周面86と軸部38の外周面との間の摩擦力によって、ブラシ保持具20がコレット50と一緒に前進することが回避される。
【0022】
液圧シリンダ52への液圧の印加によって、ばね受け64が後端面78に当接するまでコレット50が前進させられた後、電磁開閉弁105が閉状態とされて液圧シリンダ52の液圧が解消されれば、コレット50が圧縮コイルスプリング66の付勢力によって後退させられる。最初はコレット50のみが後退させられるが、テーパ面88がテーパ面98に接触した後は、テーパ部材90も一緒に後退させられる。前述の液圧シリンダ52の正方向の作動の後期におけると同様に、コレット50の後退と共にブラシ保持具20が後退させられることは阻止されている。そして、テーパ部材90がストッパ面94に当接させられてそれ以上の後退が阻止された状態で、コレット50がさらに後退させられれば、テーパ面88,98同士が押し付けられ、再び内周面86において軸部38が強固に保持される状態となる。この時、ブラシ保持具20およびブラシ32は、液圧シリンダ52の1回の印加,解消の前よりも設定量α分だけせり出された状態でホルダ本体10に保持されることになる。このようにして、一定量の加工毎にブラシ32の摩耗分に対応する設定量αだけブラシ32が軸方向にせり出されれば、ブラシ32の乗上げ量がほぼ一定に維持されることとなり、良好なばり取りを行い続けることができる。
【0023】
なお、以上の説明においては、単純化のために、コレット50の前進時に、テーパ部材90がストッパ面92に当接すれば直ちにブラシ保持具20がコレット50と一緒には前進しない状態となり、コレット50の後退時に、テーパ面88,98同士が押し付けられ、内周面86において軸部38が強固に保持される状態となるまで、ブラシ保持具20がコレット50と一緒には後退しないものとしたが、実際にはそうではない。テーパ部材90がストッパ面92に当接した後も、ブラシ保持具20がコレット50と一緒に小距離前進し、内周面86において軸部38が強固に保持される状態となる前に、ブラシ保持具20がコレット50と一緒に小距離後退することを避け得ないのである。しかし、この小距離の前進と後退とはほぼ同じ大きさであるため、ないものと考えて差し支えないのである。また、もし前進距離と後退距離とが互いにほぼ同じではない場合でも、それぞれほぼ一定である場合には、それらの差を考慮して前記設定量αを設定すれば、ブラシ保持具20を所望量ずつ前進させることができる。
【0024】
本実施形態によれば、ブラシ32をブラシ本体10に保持された状態のままで設定量せり出させることができるため、従来のようにブラシホルダごと交換する手間が省け、加工装置の稼働率が向上する。また、クーラント液圧を利用して液圧シリンダ52を作動させるものであるため、従来のように、工具軸を僅かずつ前進させる前進装置を設ける必要はなく、設備コストが低減するとともに、ブラシ32のせり出しのための制御が容易となる。
【0025】
ブラシホルダが交換される場合には、使用済みのブラシホルダが工具軸11から取り外され、新たなブラシホルダと交換される。新たなブラシホルダは、機外にて先端位置が前記設定位置となるように予め調整される。操作レバー122の工具係合穴126に工具を係合させて図2において時計回りに操作レバー122を回動させることにより係合部128によってばね受け64が押され、液圧シリンダ52を正方向に作動させた場合と同様に、作動の前期にはコレット50と共にブラシ保持具20が前進させられ、作動の後期にはコレット50がブラシ保持具20に対して前進させられる。したがって、ブラシ保持具20が設定量αせり出されるとともに、コレット50が非作用状態となるため、ブラシ保持具20を任意の軸方向位置に移動させることができ、ブラシ32の乗上げ量を設定値となるように調整することができる。そして、工具係合穴126への工具の係合を解除すれば、圧縮コイルスプリング66の付勢力によって、コレット50が作用状態となって軸部38を保持する。あるいは、操作レバー122の時計方向,反時計方向の回動を繰り返すことにより、ブラシ32の一定量のせり出しを繰り返して、ブラシ32の先端位置を設定位置に調整することもできる。
【0026】
本実施形態においては、液圧シリンダ52が流体圧アクチュエータとして機能する。コレット50が選択的運動伝達部材として機能し、ボルト62,ばね受け64,70,テーパ部材90,付勢装置たる圧縮コイルスプリング66,ストッパ面92,94等がコレット制御装置を構成している。そして、このコレット制御装置が、複数の皿ばね110から構成される抵抗付与装置と共同して運動変換装置を構成している。また、ホルダ本体10の円筒状を成す工具保持部14が第1嵌合部を構成し、ブラシ保持具20の嵌合部36が第2嵌合部を構成している。
【0027】
本実施形態においては、液圧シリンダ52の液圧の印加,解消が自動で制御されるようになっているが、液圧シリンダ52への液圧の切換えが手動操作により行われるようにすることも可能である。予め定められた条件が満たされる毎に、作業者によるボタン操作等によって液圧シリンダ52への液圧の印加,解消が切り換えられることにより、ブラシ32がホルダ本体10に対して軸方向に一定量せり出させられるようにするのである。
また、ブラシホルダを工具軸に取り付ける前にプリセットすることは不可欠ではなく、ブラシホルダを工具軸に取り付けた後、上述のようにして作業者によるボタン操作等によって液圧シリンダ52を作動させることにより、ブラシ32の乗り上げ量を調整することも可能である。
【0028】
本発明は、種々の形態のブラシホルダに適用可能である。その一例を以下に示す。なお、コレット50,液圧シリンダ42,テーパ部材90等の構成は、図1〜図4に示す実施形態と同様であるため、同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略し、前記実施形態と異なる部分を主として説明する。
【0029】
図5および図6に示す実施形態では、ブラシ保持具20は、ブラシ保持部30のブラシ32が保持された側とは反対側の端面34の中心部から軸方向に延び出す軸部200を備えている。ブラシ保持具20は、軸部200において、ホルダ本体10の工具保持部14に軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に保持されている。軸部200には、軸方向に延び、かつ、外周面に開口する係合穴202が形成され、両端が工具保持部14に固定された係合ピン204が係合穴202に係合することにより、ブラシ保持具20のホルダ本体10に対する回転が阻止されるとともに、軸方向の移動が案内される。係合穴202および係合ピン204が回転阻止装置ないし案内装置を構成している。軸部200のブラシ32側とは反対側の後端には、軸部200より小径の嵌合部210が一体に設けられている。コレット50の作用状態では、コレット50の内周面86に嵌合部210の外周面が摩擦係合する。つまり、嵌合部210の外周面が摩擦係合面を構成している。工具保持部14が第1嵌合部を構成し、軸部200および嵌合部210が第2嵌合部を構成している。図1〜図4に示す実施形態においては、第2嵌合部たる嵌合部36が第1嵌合部たる工具保持部14の外周面に嵌合されるとともに、コレット制御装置が、第1嵌合部の第2嵌合部が嵌合された部分の内周側に配設された形態の一例であったが、本実施形態は、コレット制御装置が、第1嵌合部の内側の、第2嵌合部の後端より後方に配設された形態の一例である。
【0030】
図7に示す実施形態では、ブラシ保持具300は、概して円板状を成すブラシ保持部302の周方向に隔たった複数個所(例えば、等角度間隔で隔たった4個所)において、複数の束に分けられたブラシ32をそれぞれ保持するものである。これらブラシ32は、軸方向に長く延びるものであるため、ホルダ本体10の工具保持部14の先端部(シャンク部12とは反対側)には、ブラシ32が撓まないように先端部近傍をガイドする円筒状のガイド部310が、周方向におけるブラシ32の設置位置に対応して複数個所に設けられている。
【0031】
工具保持部14の内部には、軸方向に延びる中心穴320が形成されている。ブラシ保持具300は、ホルダ本体10の軸方向に平行に延びて中心穴320の内部に嵌入させられた軸部322と、ブラシ保持部302とが一体的に設けられることにより構成される。コレット50の内周面86は、コレット50が縮径状態では軸部322の外周面(摩擦係合面)に摩擦係合させられる。軸部322のコレット50に係合させられない基端部324は、他の部分より大径とされ、中心穴320の軸方向における先端部の小径穴部326に軸方向に相対移動可能かつ相対回転不能に保持されている。ブラシ保持部302と軸部322とは、両部材の半径方向に貫通してそれぞれに形成された嵌合穴の周方向位相および軸方向位置が合わされた状態で、それら嵌合穴に跨って係合ピン330が嵌合されることにより、ブラシ保持部302と軸部322とが一体のものとして機能する。係合ピン330は、上記嵌合穴に圧入される等して抜け出しが阻止されている。係合ピン330の軸部322から半径方向に突出する両端部が、工具保持部14に形成された係合穴332に係合されることにより、ホルダ本体10とブラシ保持具300との相対回転が阻止されるとともに、ブラシ保持具300の軸方向の移動が案内される。係合穴332は、工具保持部14の先端部の直径方向に隔たった2個所に軸方向に延びて形成され、工具保持部14の外周面に開口するとともに、小径穴部326に連通している。つまり、係合ピン330は、ブラシ保持部302と軸部322とを一体のものに連結する連結部材として機能するとともに、ホルダ本体10に対するブラシ保持具300の回転を阻止する回転阻止装置としても機能している。
【0032】
本実施形態におけるブラシホルダにおいても、前記実施形態で説明したのと同様にして、ブラシ32を設定量せり出せることができる。本実施形態のように、毛足の長いブラシであれば、ブラシが交換を要する状態となるまでの時間が比較的長くなり、ブラシホルダの交換作業による加工装置の稼働率の低下を一層良好に回避し得る。また、本発明を適用することによる、ブラシのせり出しのための制御が容易である等の効果をより有効に享受できる。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるせり出し装置付きブラシホルダを示す正面図(一部断面)である。
【図2】上記ブラシホルダの抵抗付与装置等を示す正面図(一部断面)である。
【図3】上記ブラシホルダの操作装置を示す側面断面図である。
【図4】上記ブラシホルダの図1とは別の作動状態を示す正面図(一部断面)である。
【図5】本発明の別の実施形態であるせり出し装置付きブラシホルダを示す正面図(一部断面)である。
【図6】上記ブラシホルダの抵抗付与装置等を示す正面図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態であるせり出し装置付きブラシホルダを示す正面図(一部断面)である。
【図8】本発明の一実施形態であるブラシ加工装置を概略的に示す図である。
【符号の説明】
8:ブラシ加工装置 10:ホルダ本体 11:工具軸 14:工具保持部 20:ブラシ保持具 24:中心穴 32:ブラシ 36:嵌合部38:軸部 50:コレット 52:液圧シリンダ 66:圧縮コイルスプリング 110:皿ばね 200:軸部 210:嵌合部 300:ブラシ保持具 320:中心穴 322:軸部
Claims (6)
- ホルダ本体と、
そのホルダ本体に軸方向に移動可能かつ相対回転不能に保持されたブラシ保持具と、
1回の流体圧の印加により正方向に予め定められた量作動し、流体圧の解消により前記正方向とは逆の方向である逆方向に作動する流体圧アクチュエータと、
その流体圧アクチュエータの前記正方向の1回の作動を、前記ブラシ保持具の前記ホルダ本体に対する予め定められた量の前進運動に変換し、前記流体圧アクチュエータの前記逆方向の作動を前記ブラシ保持具を前記ホルダに固定する運動に変換する運動変換装置と
を含むことを特徴とするせり出し装置付きブラシホルダ。 - 当該ブラシホルダが、加圧されたクーラントを供給するクーラント供給路を内部に備えた工具軸に取り付けられるものであり、前記流体圧アクチュエータが前記クーラントの圧力を前記流体圧として作動するものである請求項1に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
- 前記運動変換装置が、前記流体圧アクチュエータの正方向の作動時に、前記ブラシ保持具と共に前記ホルダ本体に対して相対的に前進し、流体圧アクチュエータの逆方向の作動時に、前記ホルダ本体および前記ブラシ保持具に対して相対的に後退する選択的運動伝達部材を含む請求項1または2に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
- 前記運動変換装置が、前記ブラシ保持具と前記ホルダ本体との間にそれら両者の軸方向の相対移動に対して摩擦抵抗を付与する抵抗付与装置を含む 請求項3に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
- 前記ブラシ保持具が、円筒面である摩擦係合面を備え、前記選択的運動伝達部材がその摩擦係合面に押し付けられて前記ブラシ保持具に運動を伝達する作用状態と、摩擦係合面から離間してブラシ保持具に運動を伝達しない非作用状態とに変化可能なコレットであり、前記運動変換装置が、そのコレットに前記流体圧アクチュエータの運動を伝達するとともに、そのコレットを前記作用状態と前記非作用状態とに変化させるコレット制御装置を含む 請求項3または4に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
- 前記コレット制御装置が、
前記ホルダ本体に軸方向に限られた距離移動可能に保持され、前記コレットとテーパ面同士で係合することによりコレットを前記作用状態とするテーパ部材と、
前記コレットを前記ホルダ本体に対して後退方向に付勢する付勢装置と
を含む請求項5に記載のせり出し装置付きブラシホルダ。
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