JP4191951B2 - 抗微生物剤投与装置および組立品 - Google Patents

抗微生物剤投与装置および組立品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚に存在する微生物を殺菌等するための抗微生物剤投与装置および組立品に係り、特に、抗微生物剤を皮膚に対して効率的かつ安全に、能動的な吸収制御に基づいて送達するための抗微生物剤投与装置および組立品に関する。
【0002】
【従来の技術】
入院患者管理のための基本的かつ日常臨床において頻繁に行われるカテーテル留置は、その不適切な使用によって発熱から敗血症まで多くの合併症を誘発するおそれがある。静脈カテーテル感染症の防止に対する新しい対策を考案することは、感染症防止研究の長年の課題となっている。これは現在医療において、急増する国際問題でもあり、治療費や病院費などが大きな負担となっている[Mermel L.A., Prevention of intravascular catheter related infections, Infect. Dis. Clin. Parc., 1994, 3, 391-398.]。中でも、最も重篤な感染症は中心静脈カテーテルにおいて観察され、集中治療室における患者管理が進歩した近年においてさえも、静脈カテーテル関連感染症は高い発生率及び死亡率を示している[Mermel L.A., Prevention of intravascular catheter-related infections, Ann Intern Med., 2000, 132, 391-402.]。
【0003】
生体にとって異物であるカテーテルが血管内に留置されると、穿刺時にフィブリンが付着する。これを起点としてカテーテルの表面にフィブリンの皮膜や血栓が付着する。これらの皮膜や血栓が付着したカテーテルが細菌増殖の巣となりカテーテル感染症が発症すると言われている。特に、細菌がカテーテル関連感染において最も共通に単離される細菌として、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(主に、表皮ブドウ球菌)や黄色ブドウ球菌が見られる[Das I., Philpott C., and Gerorge R.H., Central venous catheter-related septicaemia in paediatric cancer patients, J. Hosp. Infect., 1997, 36, 67-76., Gupta B., Bernardini J., and Piraino B., Peritonitis associatedwith exit site and tunnel infections, Am. J. Kidney Dis., 1996, 28, 415-419.]。
【0004】
細菌の進入経路として、連結部からの汚染、注入溶液の汚染、カテーテル皮膚刺入部からの汚染、カテーテル穿刺時の感染などが挙げられる。中でも、連結部からの汚染、カテーテル皮膚刺入部からの汚染、カテーテル穿刺時の感染が主要因と考えられている。
【0005】
一方、カテーテルの改良は著しく発展し、大きな飛躍をもたらしている。すなわち、カテーテル皮膚刺入部からの汚染に対して、挿入部から皮下にトンネルをつくり、別の場所にカテーテルの出口を作成、さらに出口には皮下組織の増殖を促進するためのダクロンカフを配置することで、刺入部からカテーテルの外側を介しての上行感染を予防することができる[Broviac J.W., Cole J.J. and Scribner B.H., A silicon rubber atrial catheter for prolonged parenteral alimentation, Surg. Gynecol Obstet., 1973, 136, 602-606., Hickman R.O., Buckner C.D., Clift R.A. et al, A modified right arterial catheter for access to the venous system in marrow transplant recipients.]。さらに、カテーテル壁での細菌増殖を抑制するために、消毒剤や抗生物質を含ませたポリマー修飾など種々の試みがなされている[Miki D.G., Cobb L., Garman J.K., et al, An attachable silver-impregnated cuff for prevention of infection with central venous catheters. A prospective randomized multi-center trial, Am. J. Med., 1988, 85, 307-314., Heard S.O., Wagle M., Vijayakumar E., et al, Influence of triple-lumen central venous catheters coated with chlorhexidine and silver sulfadiazine on the incidence of catheter-related infections, Arch. Intern. Med., 1998, 158, 81-87., Tennenberg S., lieser M., McCurdy B., et al, A prospective randomized trial of an antibiotic- antiseptic-coated central venous catheter in the prevention of catheter-related infections, Arch. Surg., 1997, 132, 1348-1351.]。これらの技術は、カテーテル装置が原因の感染に対して有効な方法で大きな進歩となった。
【0006】
また近年では、敗血症などカテーテル関連感染症の要因として、カテーテル挿入時の皮膚内在来菌による感染誘発が大きく注目されている。特に、重篤な感染症を誘発することが知られるブドウ球菌などの細菌類は皮膚表面に広範囲に分布し、角質層や皮脂線などの付属器官に集中している[Eady E.A., Sampling the bacteria of the skin, in: Serup J., and Jemec G.B.E., eds., Handbook of non擁nvasive methods and the skin, Boca Raton, CRC ress, 1995., Kearney J.N., Harnby D., Gowland G., and Holland K.T., The follicular distribution and abundance of resident bacteria on human skin, J. Gen. Microbio., 1984, 130, 797-801., Selwyn S., and Ellis H., Skin bacteria and skin disinfection reconsidered, Br. Med. J., 1972, 1, 136-140.]。
これらの細菌に対する皮膚消毒方法として、従来よりポピドンヨードなどの消毒剤が使用されているが、完全に菌を消滅させることができないと報告されている[Hendley J.O., and Ache K.M., Effect of topical antimicrobial treatment on aerobic bacteria in the stratum corneum of human skin, Antimicrob Agents Chemother., 1991, 35, 627-631.]。特に、毛穴、皮脂腺、汗腺などの付属器官に生息する皮膚在来菌に対して、従来の消毒剤による消毒方法では十分な殺菌効果が得られない。これは、角質層表面または付属器官を覆う脂質類が薬剤の透過を制限し,皮膚在来菌が生息する部位への有効薬剤の移行を抑制するためと考えられる[Price P.B., The bacteriology of normal skin; a new quantitative test applied to a study of the bacterial flora and the disinfection action of mechanical cleansing, J. Infect. Dis., 1939, 63, 301-318., Selwyn S., and Ellis H., Skin bacteria and skin disinfection reconsidered, Br. Med. J., 1972, 1, 136-140., Sato S., Sakuragi T., and Dan K., Human skin flora as a potential source of epidual abscess, Anesthesiology, 1996, 85, 1276-1282.]。
【0007】
皮膚は種々の物質に対する主要なバリアーであり、高極性または荷電した薬剤透過をしばしば制限する。また、毛穴、皮脂腺及び汗腺などの皮膚付属器官はシャント経路として知られているが、それらの器官の開口部の総面積は小さく、さらに付属器官より排出される脂溶性物質によっても高極性または荷電した薬剤の吸収は抑制される[Potts R.O., and Francoeur M.L., the influence of stratum corneum morphology on water permeability, J. Invest. Dermatol., 1991, 96, 495-499., Barry B.W., Dermatological formulations: Percutaneous absorption, In: Swarbrick J. ed., Drugs and the pharmaceutical Sciences, New York and Basel, Marcel Dekker Inc., 1983.]。
【0008】
イオントフォレーシス(Iontophoresis)は外的刺激に電気を用いた経皮吸収促進システムで、その原理は主に通電により陽極および陰極間に生じた電界中を正にチャージした分子が陽極から出て陰極へ、負にチャージした分子が陰極から出て陽極へ移動する力(電気反発)、陽極側から陰極側への水の移動(電気浸透)などによって分子移動を引き起こして皮膚バリヤーの透過を促進する。
【0009】
すなわち、荷電した薬物を電気化学的ポテンシャルにより能動的に体内に吸収させる方法である。例えば、正荷電の薬物を陽極側から皮膚に投与する方法である。特に、電流は角質層内の電気抵抗の小さい汗腺や毛嚢などの付属器官に集中することから、極性薬物は主にこの経路から吸収されることが知られている。また、荷電しない物質についても溶媒中のイオンが電場による水の移動によって、物質の移動が起こる。このように、イオントフォレーシスでは受動拡散に加えて、電気反発及び電気浸透が薬物吸収に対して重要な役割を果たしている[Banga A.K. ed., Electrically assisted transdermal and topical drug delivery, London and Bristol, Taylor & Francis Ltd., 1998., Merino V., Alberti I., Kalia Y.N., et al, Transdermal and skin-targeted drug delivery, J. Cut. Med. Surg., 1998, 2, 108-119., Merino V., Kalia Y.N., and Guy R.H., Transdermal therapy and diagnosis by iontophoresis, Trends Biotechnol., 1997, 15, 288-290., Turner N.G., and Guy R.H., Iontophoretic transport pathways: Dependence on penetrant physicochemical prperties, J. Pharm. Sci., 1997, 86, 1385-1389.]。
【0010】
従って、イオントフォレーシスは皮膚付属器官などの標的部位へ薬物を局所的に送達する上でも最適な方法であり、さらに非侵襲的に投与できる点で確実かつ簡便な手法として期待できる。しかしながら、抗細菌剤の皮膚内在来菌に対する送達装置、すなわち抗微生物活性をもつ有効成分を付属器官へ特異的に送達するための装置についての具体的な報告はない。
【0011】
米国特許5908401明細書では、抗ウイルス剤の経皮投与に適したイオントフォレーシス装置について開示している。しかし、本特許は抗菌剤の適切な送達に関する記載はなく、臨床的にも有効かつ安全な装置については開示されていない。また、Amini T. らはJournal of Pharmacy and Pharmacology(52 (Supplement), p25, 2000)において、グルコン酸クロルヘキシジンのイオントフォレーシスによる皮膚透過の増大効果について発表している。本論文では、イオントフォレーシスによる薬物皮膚透過が溶液中のpHによって変化することを示している。しかし、抗菌活性に関する検討は行われておらず、さらに臨床的にも有効なイオントフォレーシス装置については一切記載されておらず、最適な投与装置については未だ不明のままである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、皮膚に存在する微生物を殺菌し、微生物に由来する感染症を有効に予防する抗微生物剤投与装置および組立品を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の装置では十分な殺菌効果が得られないという問題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、カテーテル関連感染症を誘発する微生物類が生息する皮膚付属器官に対して特異的に敏速かつ効率よく用いることができ、しかも、皮膚刺激等の安全性に優れ、使用においても容易かつ安全な装置を見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、抗微生物剤を含み、通電の総電流量が1〜30mA・min/cmのイオントフォレーシスを用いた装置であり、これにより皮膚付属器官に対して指向的に確実かつ短時間で有効成分を送達させ、生体に対して安全かつ効率よく抗微生物活性が発揮できるようにしたものである。
さらに本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、抗微生物効果が著しく増強され、より短時間でより効果的に殺菌できる組立品を見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、受動的装置と能動的装置を組み合わせた組立品であり、例えば、受動的装置にアルコール製剤、能動的装置にイオントフォレーシス装置を適用することができる。また、本装置や組立品に局所麻酔剤を組み合わせることにより、穿刺時の除痛が可能となる。これにより患者のコンプライアンスを同時に改善することができる。
【0014】
即ち本発明は、
(1)カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚を殺菌するためのイオントフォレーシスを用いた抗微生物剤投与装置であって、
(a)抗微生物剤を含むドナー電極と、
(b)ドナー電極の対向電極として設けられるリファレンス電極と、
(c)通電の総電流量が1〜30mA・min/cmとなるようにドナー電極とリファレンス電極間に電流を流す電源装置と
を備えた抗微生物剤投与装置である。
(2)ドナー電極の皮膚適用面積は好適には1〜100cmである。
(3)抗微生物剤は、例えば、抗ウィルス剤、抗菌剤、化学療法剤、抗生物質、消毒剤および抗真菌剤からなる群から選ばれる1種またはそれ以上である。
(4)抗微生物剤は、例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス属、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌アシネトバクター、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、カンジダ属、セラチア類およびメチシリン耐性菌からなる群から選ばれる1種またはそれ以上に対して抗微生物活性を有するものである。
(5)ドナー電極は陽極であって、抗微生物剤はクロルヘキシジンまたはその塩類とすることができる。
(6)ドナー電極は、さらに局所麻酔剤を含むことができる。
(7)ドナー電極は陽極であって、局所麻酔剤はリドカインまたはその塩類とすることができる。
(8)ドナー電極は、さらに血管収縮剤を含むことができる。
(9)ドナー電極は陽極であって、血管収縮剤はエピネフリンまたはその塩類とすることができる。
また本発明は、
(10)カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚を殺菌するための抗微生物剤投与用組立品であって、
(a)皮膚表面を広範囲に殺菌するための受動的装置からなる第1構成品と、
(b)カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚周辺を局部的に殺菌するための能動的装置からなる第2構成品と
を備えた抗微生物剤投与用組立品である。
(11)第1構成品および第2構成品は、それぞれ抗微生物剤を含むことができる。
(12)第1構成品の皮膚適用面積である第1面積は、好適には第2構成品の皮膚適用面積である第2面積より広く、かつ第1面積は20cm以上であり、第2面積は1〜100cmである。
(13)第1構成品はアルコール類を含有することができる。
(14)アルコール類はエタノールまたはイソプロピルアルコールとすることができる。
(15)第2構成品は、
(a)抗微生物剤を含むドナー電極と、
(b)ドナー電極の対向電極として設けられるリファレンス電極と、
(c)通電の総電流量が1〜30mA・min/cmとなるようにドナー電極とリファレンス電極間に電流を流す電源装置と
を備えることができる。
(16)第1構成品または第2構成品における抗微生物剤は、例えば、抗ウィルス剤、抗菌剤、化学療法剤、抗生物質、消毒剤および抗真菌剤からなる群から選ばれる1種またはそれ以上である。
(17)第1構成品または第2構成品における抗微生物剤は、例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス属、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌アシネトバクター、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、カンジダ属、セラチア類およびメチシリン耐性菌からなる群から選ばれる1種またはそれ以上に対して抗微生物活性を有するものである。
(18)第1構成品および第2構成品は、互いに同一の抗微生物剤を含むことができる。
(19)第2構成品のドナー電極は陽極であって、抗微生物剤はクロルヘキシジンまたはその塩類とすることができる。
(20)第2構成品のドナー電極は、さらに局所麻酔剤を含むことができる。
(21)第2構成品のドナー電極は陽極であって、局所麻酔剤はリドカインまたはその塩類とすることができる。
(22)第2構成品のドナー電極は、さらに血管収縮剤を含むことができる。
(23)第2構成品のドナー電極は陽極であって、血管収縮剤はエピネフリンまたはその塩類とすることができる。
このように構成することにより、皮膚に存在する微生物由来の感染症を抑える抗微生物剤投与装置を得ることができ、これによりカテーテル敗血症発症による致死率を抑制し、さらには治療のための医療コストを削減させることで、医療の場に大きく貢献することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るイオントフォレーシスを用いた抗微生物剤投与装置の一構成例を示す図である。本装置は、図示のように、抗微生物剤を含むドナー電極100と、ドナー電極の対向電極として設けられるリファレンス電極110と、ドナー電極とリファレンス電極間に電流を流す電源装置120とを備える。
本発明において有効成分として用いられる抗微生物剤は、抗微生物活性を有する化合物であることが好ましい。この抗微生物活性を有する化合物は、フリー体でも、その塩の形態のものでもよいが、塩酸塩は特に好ましい。
抗微生物剤としては、例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤、化学療法剤、抗生物質、消毒剤、抗真菌剤などが挙げられる。抗微生物剤は、具体的には、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス属、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌アシネトバクター、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、カンジダ属、セラチア類およびメチシリン耐性菌からなる群から選ばれる1種またはそれ以上に対して抗微生物活性を有するものが挙げられる。
通常、ドナー電極に有効成分を含み、リファレンス電極には有効成分を含有させない形態をとるが、これら有効成分はドナー電極及びリファレンス電極の何れにも含ませることができる。例えば、別の形態としては、リファレンス電極にドナー電極と同一のものを備えることもできる。
【0016】
抗ウイルス、抗菌剤、化学療法剤としては、例えば、アシクロビル、ビダラビン、サキナビル、ラミブジン、塩酸バラシクロビル、ザナビビル、リン酸オセルタミビル、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、メシル酸デラビルジン、ロピナビル、リトナビル、オフロキサシン、レボフロキサシン、リネゾリド、テイコプラニン、ガチフロキサシン、メシル酸パズフロキサシン、プルリフロキサシン、シタフロキサシン水和物、キモシフロキサシン、エノキサシン、塩酸ロメフロキサシン、ガンシクロビル、メシル酸デラビルジン、ラミブジンなどが用いられる。
【0017】
抗生物質としては、例えば、アジスロマイシン水和物、硫酸ゲンタンマイシン、リピドマイシン、硫酸シソマイシン、塩酸テトラサイクリン、アンピシリン、セファクロル、セファレキシン、セファロチンナトリウム、塩酸セフォチアム、セファゾリンナトリウム、チエナマイシン、スルファゼシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸カナマイシン、リファンピシン、塩酸バンコマイシン、塩酸リンコマイシン、ホスホマイシン、塩酸ミノサイクリン、リファンピシン、クリンダマイシン、硫酸アミカシン、オフロキサシン、硫酸セフォセリス、アモキシシリン、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、セファメジンナトリウム、メロペネム、ビアペネム、ドリペネム、リチペネムアコキシルなどが用いられる。
消毒剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルタラール、グルコン酸クロルヘキシジン、抗真菌剤としては、例えば、アンフォテリシンB、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、ミカファンギン、ポリコナゾール、グリセオフルビンなどが用いられる。
これらの抗微生物剤は、1種またはそれ以上を適宜選択して用いることができる。
【0018】
本発明に係るイオントフォレーシスを用いた抗微生物剤投与装置に使用するドナー電極またはリファレンス電極は、その構造や構成材料など特に限定されないが、(1)有効成分である抗微生物剤を溶液状態で含浸またはハイドロゲルなどに分散したマトリックス型構造、(2)マトリックス型構造において導電層と皮膚の間に導電層を保持するための半透膜、物質の移動を制御するための選択的透過膜、薬物透過速度を調整するための制御膜等を設けたリザーバー型構造体、(3)皮膚接触面に高濃度の有効成分を適用できるように薬剤保持層を使用時に備える積層型構造(積層型構造は、抗微生物剤が化学的に不安定であったり、微量で強力な薬理効果を発揮する薬剤または高価な薬剤である際には特に有用であり、抗微生物剤を含有する保持手段を使用直前に親水性導電層と当接して使用される)などがある。また、電極の形状、導電層の様態及び抗微生物剤の分布状態には、特に限定はなく、電極を補強する方法、すなわち、バッキングの形態、粘着層の配置等も特に限定はない。また、ドナー電極はカテーテル挿入範囲を十分に殺菌できることが望ましいが、本イオントフォレーシス装置による広範囲に及ぶ過度の消毒は安全性の面で避けた方がよく、ドナー電極の皮膚適用面積は約1〜100cm、より好ましくは2〜50cmである。
【0019】
さらに、本発明に使用されるマトリックス、リザーバー、導電層、薬剤保持層などにおいて、その性能に影響がない範囲で、適宜、電解質、pH調整剤、緩衝剤、皮膚保護剤、刺激緩和剤、安定化剤、増粘剤、湿潤剤、界面活性剤、可溶化剤、溶解補助剤、保湿剤、吸収促進剤、粘着剤、粘着付与剤、防腐剤などを添加してもよい。
【0020】
本発明に使用される電極材料には、通常イオントフォレーシス装置において使用できる導電性の電極材料であれば特に限定されない。このような導電材料としては、例えば、活性電極材料としては銀、塩化銀、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄等が挙げられ、非活性電極材料としてはカーボン、白金、チタン、ステンレス等が挙げられる。中でも、活性電極材料としての銀または銀・塩化銀は抵抗値等の電気特性もよく、ぺースト材料を用いて製造すれば安価で製造性も高い。また、非活性電極材料としてはカーボン等の材料を用いることで安価に製造できる。さらに、これらを組み合わせて使用することもできる。
【0021】
本発明における電源装置は、一定の方向に通電する一方向通電、また別の形態としては、通電中の極性を切り換えながら通電するスイッチング通電とすることができる。ドナー電極と同じものをリファレンス電極に使用できる。有効成分を両極に使用する際には、スイッチング通電が有効な手段となる。また、複数の電極を配した多極出力通電とすることもできる。電源装置より出力される電流は、薬物送達性から直流イオントフォレーシスが好ましく、通常、定電流または定電圧で制御可能であるが、薬剤吸収を厳密にコントロールするためには定電流制御が好ましい。ここで示す電流とは薬剤の吸収に関連する透過電流を意味する。本発明における直流イオントフォレーシスには、直流、パルス直流またはパルス脱分極直流を用いることができる。電源としては、連続直流電圧またはパルス直流電圧を印加し得るものがよい。また、これらの組み合わせであってもよく、さらに通電と非通電を任意に設定した間欠通電であってもよい。パルス直流においては、方形型または矩形型パルス直流電圧を印加し、パルス直流電圧の周波数は、好ましくは0.1〜200kHz、より好ましくは1〜100kHz、特に好ましくは5〜80kHzの範囲より適宜選択される。パルス直流電圧のオン/オフ(on/off)の比は、1/100〜20/1、好ましくは1/50〜15/1、より好ましくは1/30〜10/1の範囲より適宜選択される。さらに本通電手段において、通電開始直後及び終了時に、印加電圧を徐々に変化することで皮膚刺激感を抑制できる。
【0022】
本発明における直流イオントフォレーシス装置の最適電流密度範囲は、抗微生物剤の皮膚浸透性や通電による皮膚刺激性より制限される。電流密度は0.01mA/cm〜1.0mA/cm、より好ましくは0.05mA/cm〜0.5mA/cmであり、また総電流量は1〜100mA・min/cm、好ましくは1〜30mA・min/cm、より好ましくは2〜15mA・min/cmである。本発明における有効成分である抗微生物剤の好ましい適用濃度は、特に制限はないが、薬物透過または効果が添加した薬物濃度に対して非依存的になる濃度付近が好ましい。その場合、インビトロ皮膚透過試験または局所における薬効試験において、薬物透過、皮膚移行または薬理効果が総電流量と相関しない濃度付近が選択される。すなわち、ドナー中の薬物と同電荷をもつ競合イオン成分の存在、ハイドロゲルなどのように高分子によって薬物移動が抑制される場合によっても薬物濃度は影響をうけるが、通常の製剤においては、0.0001w/v%〜10w/v%、好ましくは0.001w/v%〜5w/v%、より好ましくは0.01w/v%〜5.0w/v%の範囲になる。特に、抗微生物活性を有する有効成分の正に荷電する薬物が多く、かつ電流印加時の薬物移動性と関連する分子量(通常、数百ダルトン程度)や脂溶性などの物理化学的性質が多くの有効成分に対して比較的共通しているためである。
【0023】
イオントフォレーシス法における薬物の輸送効率は有効成分と共存する電解質によって影響を受けることから、電極反応のために必要な塩類の添加は最小限に抑えた方がよい。例えば、競合イオンの影響を最小限にするための方法として、有効成分が正電荷かつ電極材料に銀などの活性電極からなる場合は、(1)抗微生物剤の塩酸塩を使用する、(2)樹脂または高分子の塩酸塩(例えば、陰イオン交換樹脂(コレスチラミン)やアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE(オイドラギッドE100、オイドラギッドEPO、プラストイドE35L)など)、(3)下記式(I)より算出される最少濃度の塩素イオンP(mmol)などの方法がある。
(I) P=I×T/96500・n
ここで、I及びTは、通電時間(秒)及び平均透過電流(mA)を示し、nは塩素イオンの輸率(通常0.6を使用)を示す。
【0024】
本発明の別の装置としては、カテーテル挿入時の患者の苦痛を取り除くために抗微生物剤と局所麻酔剤を同時にイオントフォレーシス手段により送達する装置がある。すなわち、これらの薬剤を併用することで、カテーテル挿入時の痛み、恐怖感などの患者の苦痛を排除でき、コンプライアンスの向上を図ることができる。また、血管収縮剤を加えることによって、抗微生物活性や局所麻酔効果の作用増強及び作用時間短縮が制御できる。
【0025】
このような局所麻酔剤としては、例えば、塩酸リドカイン、塩酸テトラカイン、塩酸プロカイン、塩酸ベンゾカイン、塩酸エチドカイン、塩酸プリロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸ブピバカイン、塩酸コカイン、アミノ安息香酸エチル、塩酸オルソカイン、塩酸オキセサゼイン、塩酸メピバカイン、塩酸ロピバカイン、塩酸ブピバカインなどが用いられる。
また、血管収縮剤としては、α−アドレナリン作動薬などがあり、例えばエピネフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、フェノキサゾリン、インダナゾリン、トラマゾリン、チマゾリンなどが用いられる。
【0026】
さらに別の有効な装置として、カテーテルまたは注射針を挿入する皮膚を殺菌するための非侵襲的な2種類の構成品からなる組立品がある。
図2は、本発明に係る抗微生物剤投与用組立品の一構成例を示す図である。本組立品は、図示のように、第1構成品200aと第2構成品200bとを備える。第1構成品200aは、皮膚表面を広範囲に殺菌等するための受動的装置201を有する。第2構成品200bは、カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚周辺を局部的に殺菌するための能動的装置を有する。この能動的装置は、抗微生物剤を含むドナー電極200と、ドナー電極の対向電極として設けられるリファレンス電極210と、ドナー電極とリファレンス電極間に電流を流す電源装置220を備える。第1構成品200aは、例えば、抗微生物剤、アルコールなどを含むパッチ、脱脂綿等の装置を前処理剤として使用する。第1構成品200aによる前処理(拭く、一旦貼って剥がすなど)後に、第2構成品200bを用いて、例えばイオントフォレーシスを用いて抗微生物剤を投与する。
すなわち、本組立品は、皮膚表面を広範囲に殺菌するための第1構成品が少なくとも1種の抗微生物剤を含む受動的装置からなり、カテーテルまたは注射針を挿入する皮膚周辺を局部的に殺菌するための第2構成品が少なくとも1種の抗微生物活性を有する有効成分を含む能動的装置からなる。本構成品において、第1構成品の皮膚適用面積である、皮膚に存在する微生物を除去することが可能な面積(第1面積)は、第2構成品の皮膚適用面である、皮膚に存在する微生物を除去することが可能な面積積(第2面積)より広く、かつ第1面積が10cm以上、好ましくは20cm以上、より好ましくは100cm以上であり、第2面積が1〜100cm、好ましくは2〜50cmである。
【0027】
第1構成品は、主に皮膚表面領域に抗微生物剤を短時間に適用し、皮膚表面の微生物を広範囲に殺菌等することを目的とする。すなわち、カテーテル挿入時の皮膚周辺の微生物以外の2時的な感染を予防することができる。特に、アルコール類(例えばエタノール、プロパノール)により消毒作用を得ることが好ましく、特に、抗微生物剤をアルコールに溶解することにより顕著な消毒作用を得ることが好ましい。さらに、第1構成品は、アルコール含有装置であるため、皮膚適用の簡便性、薬物皮膚浸透性及び薬物適用量コントロールなどの機能面でも優れている。さらに、アルコール溶液を用いる場合には、アルコールが短時間のうちに揮発するので、適用も容易である。また、短時間の処理のためコンプライアンスの低下も最小限に抑えられる。さらに、アルコール溶液中に薬物の吸収を促進する物質を添加してもよい。
【0028】
本発明の組立品における第2構成品は、第1構成品により皮膚表面に適用された抗微生物剤を、確実かつ短時間に皮膚及び付属器官の深部領域に送達できる能動的装置からなる。能動的装置にはイオントフォレーシス、エレクトロポレーション、超音波、熱等の物理学的吸収促進手段からなる装置が挙げられるが、特に電気駆動力による強い薬物送達性が得られるイオントフォレーシスは有効な手段である。
【0029】
第1構成品及び第2構成品に用いる抗微生物剤の種類、数量等には制限はないが、特定の微生物に対して強い効果を期待する場合は、第1構成品及び第2構成品の有効成分は同一の有効成分であるほうが有効である。なかでも、クロルヘキシジンまたはその塩類は強力な消毒作用を示すことから、有効な薬剤の一つである。一方、幅広い微生物に対して活性を期待する際には、各々異なる有効成分を添加することが有効である。したがって、抗微生物剤は、1種またはそれ以上を適宜選択して用いることができる。
【0030】
本発明における装置及び組立品に用いる抗微生物剤は、皮膚に存在する微生物の総合的な活性を低下させるものであり、抗ウィルス剤、抗菌剤、化学療法剤、抗生物質、消毒剤及び抗真菌剤からなる群から選ばれる1種またはそれ以上であることが好ましく、例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス属、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌アシネトバクター、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、カンジダ属、セラチア類およびメチシリン耐性菌からなる群から選ばれる1種またはそれ以上に対して抗微生物活性を有するものが挙げられる。
【0031】
【実施例】
以下、実験例に基づいて、本発明の実施例、比較例をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実験例1は皮膚細菌活性に及ぼす薬物濃度の影響について検討した。実験例2は皮膚細菌活性に及ぼす電流量の影響を、実験例3は皮膚刺激と電流量の関係について検討した。実験例4では皮膚細菌活性に及ぼす抗微生物剤の各投与方法の影響について検討した。また、実験例5では抗微生物剤と局所麻酔剤を併用投与した際の局所麻酔効果について評価した。
【0032】
(実験例1)
実験例1は、皮膚細菌活性に及ぼすグルクロン酸クロルヘキシジン(Hibitane:ZENECA Pharma社製)濃度の影響について、パッシブ法とイオントフォレーシス法で比較結果を示す。
グルクロン酸クロルヘキシジンは「CHXD」、クロルヘキシジンは「CHX」と略記する。実験は横型拡散セル(有効面積;1.77cm)を用い、ダーマトーム処理(約600μm)したブタ皮膚を隔膜として使用した。レセプター液には、pH7.4等張リン酸緩衝液(10mM塩化ナトリウム含有)を用い、陽極に銀電極、陰極に銀・塩化銀電極を適用した。実験終了後、培地接触法により皮膚表面の細菌を採取した。
また、テープストリッピング法により角質層を剥離し、1、5、10、15、20回剥離時の皮膚表面の細菌を培地接触法により採取した。各培地は約24時間、37℃で培養した後、各培地のコロニー数を肉眼で計測し、各培地の総コロニー数を算出した(n=3、平均±標準偏差)。
表1に示すように、比較例1及び6はドナー溶液中に0.09w/v% 塩化ナトリウムを用い、比較例2〜5及び実施例1〜4は、ドナー溶液中に各濃度に調製したCHXD溶液(0.09w/v% 塩化ナトリウム含有)を用いた。比較例1〜5は非通電のパッシブ投与、比較例6及び実施例1〜4は直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm)を10分間適用した。結果を図3に示す。(a)はパッシブ投与群、(b)はイオントフォレーシス投与群を示す。
【0033】
【表1】
Figure 0004191951
【0034】
図3から明らかなように、CHXD非存在下の比較例1及び6では何れも高い残存微生物活性を示した。パッシブ投与群の比較例2〜5のパッシブ法では1.0w/v%CHXD以上の濃度において抗細菌効果が観察された。しかし、パッシブ法においては依然として高い残存細菌が観察され、特に角質層深部領域に多数の細菌が認められた。一方、イオントフォレーシス投与群の実施例1〜4のイオントフォレーシス群では0.01w/v%CHXDから強い抗細菌作用を示し、角質層中の殆どの細菌の消滅が観察された。皮膚角質層に在来する細菌に対して短時間イオントフォレーシスは、薬物の低濃度領域から高い有効性を示すことが確認された。
【0035】
(実験例2)
実験例2は皮膚細菌活性に及ぼす電流量の影響について、実験例1と同様のインビトロ試験系で評価した。
表2に示すように、比較例7はコントロール群として未処理皮膚のコロニー数を計測し、実施例5〜14及び比較例8、9は各条件下の直流イオントフォレーシス(1w/v%CHXD、0.09w/v% 塩化ナトリウム含有)を適用した。図4に、比較例7〜9及び実施例5〜14の全ての結果をプロット(平均±標準偏差)する。
【0036】
【表2】
Figure 0004191951
【0037】
図4に示されるように、非通電下の比較例7に比較して、実施例5〜14及び比較例8、9に示す1.0mA・min/cm以上のイオントフォレーシス群では角質層内の細菌が顕著に減少することが確認された。特に、実施例8〜14に示す約4.0mA・min/cm以上のイオントフォレーシス群では角質層内細菌はほとんど完全に消滅した。
【0038】
(実験例3)
実験例3は皮膚刺激と電流量の関係について検討した。
ウサギ局所刺激試験は日本白色種雄性(体重約3.0〜4.0kg)の背部皮膚をバリカンで剃毛、シェーバーで処理した後、70%エタノール水溶液を含む脱脂綿で軽く擦り脱脂消毒して使用した。ウサギ背部皮膚に市販のドナー用電極パッド及びリファレンスゲル(TransQE:IOMED社製)を使用した。ドナー溶液の2mLを電極パッドに含浸させた。比較例7〜9及び実施例5〜14の適用条件は実験例2の表2と同様に行った。通電終了後に電極パッドを除去し、除去24時間後にドナー部の皮膚刺激を肉眼的に観察した。皮膚刺激は、刺激なし、ごく軽微な紅斑、明らかな紅斑、中程度から重度の紅斑、重度の紅斑から痂皮形成の5段階で判定した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
Figure 0004191951
【0040】
表3に示すように、イオントフォレーシスによって印加される電流量に依存して皮膚刺激性が観察された。
【0041】
(実験例4)
実験例4は皮膚細菌活性に及ぼす抗微生物剤の投与方法の影響について、実験例1と同様なインビトロ試験系で検討した。
表4に各試験条件を示す。比較例10は0.5w/v%CHXD含有70w/v%エタノール溶液を皮膚に3分間適用し、比較例11は0.5w/v%CHXD含有70w/v%エタノール溶液を皮膚に3分間処理した後に、薬物を含有しない0.09w/v%塩化ナトリウム溶液を直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)で投与した。実施例15は0.5w/v%CHXD含有70w/v%エタノール溶液を皮膚に3分間適用した後に、0.01w/v%CHXD溶液(0.09w/v%塩化ナトリウム含有)を直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)で投与した。結果を図5に示す。
【0042】
【表4】
Figure 0004191951
【0043】
図5から明らかなように、比較例10のCHXD含有アルコール溶液によるパッシブ処理では十分な抗微生物活性は得られず、さらにパッシブ処理後に電流のみ印加した比較例11においても角質層中に微生物活性が残存した。一方、実施例15のパッシブ処理後にイオントフォレーシス投与する2段階投与法においては低薬物濃度にもかかわらず角質層中の細菌は完全に消滅した。本2段階投与は、イオントフォレーシス単独投与による効果を著しく増強した。
【0044】
(実験例5)
実験例5は抗微生物剤と局所麻酔剤を併用投与した際の局所麻酔効果について検討した。
実験には、実験開始前にモルモット(ハートレイ系、雄性)の背部をバリカン、電気カミソリで除毛し、微温湯を浸したガーゼで皮膚表面をよく拭き取った。背部正中線を中心に右あるいは左側部を刺激用針で刺激し、皮膚の収縮反応が確実に現れる部位をドナー電極パッド(TransQE:IOMED社製)の貼付部位とし、他の除毛部位にリファレンス電極を貼付した。ドナー溶液の2mLを電極パッドに含浸させ、実施例16または17の溶液を直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)で投与した。また、2段階局所投与法では、第1段階局所投与液として0.5w/v%CHXD含有70w/v%エタノール溶液を用い、皮膚に3分間パッシブ適用した。その後に第2段階局所投与として、実施例18または19の溶液を直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)で投与した。比較例12は未処理のモルモットを用いた。通電終了後、ドナー電極貼付部位を刺激用針で6回刺激し、皮膚の収縮反応の変化を経時的に観察した。なお、局所麻酔効果の判定は表5の基準で行った。結果を表6に示す。
【0045】
(実施例16)
グルクロン酸クロルヘキシジン 1.00w/v%
塩化ナトリウム 0.09w/v%
精製水 適量
上記溶液を、直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)を用いて投与した。
【0046】
(実施例17)
グルクロン酸クロルヘキシジン 1.00w/v%
塩酸リドカイン 1.00w/v%
塩酸エピネフリン 0.01w/v%
塩化ナトリウム 0.09w/v%
精製水 適量
上記溶液を、直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)で投与した。
【0047】
(実施例18)
グルクロン酸クロルヘキシジン 1.00w/v%
塩化ナトリウム 0.09w/v%
精製水 適量
パッシブ法により処理した後、上記溶液を直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)で投与した。
【0048】
(実施例19)
グルクロン酸クロルヘキシジン 1.00w/v%
塩酸リドカイン 1.00w/v%
塩酸エピネフリン 0.01w/v%
塩化ナトリウム 0.09w/v%
精製水 適量
パッシブ法により処理した後、上記溶液を直流イオントフォレーシス(0.2mA/cm、10分間)で投与した。
【0049】
【表5】
Figure 0004191951
【0050】
表6に示すように、塩酸リドカインを含有する実施例17及び19においては、モルモットのピンプリッキング法に対して完全な無痛状態が確認された。一方、実施例16及び18では、比較例12と同様に局所麻酔効果はなかった。なお、実施例16〜19の抗微生物活性を実験例1と同じ培地接触法により観察したところ、何れの実施例からも細菌は認められなかった。
【0051】
【表6】
Figure 0004191951
【0052】
以上説明したように、本発明の抗微生物剤投与装置は、例えば、総電流量が1〜30mA・min/cmの直流イオントフォレーシス法によって皮膚付属器官指向的に確実かつ短時間のうちに有効成分の移行を達成でき、生体に対して安全かつ効率よい抗微生物剤の投与を実現できる。さらに本発明は、受動的装置と能動的装置を組み合わせた組立品であり、例えば、受動的装置にアルコール含有装置、能動的装置にイオントフォレーシス装置を用いることにより、抗微生物活性が著しく増強される。本発明の組立品は、臨床的にもより有効で、かつ汎用性及び実用性にも優れている。また、本発明では抗微生物剤と局所麻酔剤を組み合わせることにより、臨床的にカテーテル穿刺時の除痛も可能となり、患者のコンプライアンスを同時に改善することができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、皮膚に存在する微生物を殺菌し、微生物に由来する感染症を有効に予防する抗微生物剤投与装置及び組立品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るイオントフォレーシスを用いた抗微生物剤投与装置の一構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る抗微生物剤投与用組立品の一構成例を示す図である。
【図3】イオントフォレーシスにおける皮膚細菌活性に及ぼす薬物濃度の影響を示すグラフであり、(a)はパッシブ投与群、(b)はイオントフォレーシス投与群を示す。
【図4】イオントフォレーシスが皮膚細菌活性に及ぼす総電流量の影響を示すグラフである。
【図5】皮膚細菌活性に及ぼす抗微生物剤の各投与方法の影響を示すグラフである。
【符号の説明】
100、200 ドナー電極
110、210 リファレンス電極
120、220 電源装置
200a 第1構成品
200b 第2構成品
201 受動的装置

Claims (16)

  1. カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚を殺菌するためのイオントフォレーシスを用いた抗微生物剤投与装置であって、
    (a)皮膚に存在する微生物を殺菌するための抗微生物剤を含むドナー電極であって、前記ドナー電極の皮膚適用面積が1〜100cm であり、かつ、前記抗微生物剤が、抗ウィルス剤、抗菌剤、化学療法剤、抗生物質、消毒剤および抗真菌剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、および前記抗微生物剤が、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス属、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌アシネトバクター、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、カンジダ属、セラチア類およびメチシリン耐性菌からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して抗微生物活性を有するものであるドナー電極と、
    (b)ドナー電極の対向電極として設けられるリファレンス電極と、
    (c)通電の総電流量が1〜30mA・min/cmとなるようにドナー電極とリファレンス電極間に電流を流す電源装置と
    を備えたことを特徴とする抗微生物剤投与装置。
  2. ドナー電極が陽極であって、抗微生物剤がクロルヘキシジンまたはその塩類であることを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与装置。
  3. ドナー電極が、さらに局所麻酔剤を含むことを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与装置。
  4. ドナー電極が陽極であって、局所麻酔剤がリドカインまたはその塩類であることを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与装置。
  5. ドナー電極が、さらに血管収縮剤を含むことを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与装置。
  6. ドナー電極が陽極であって、血管収縮剤がエピネフリンまたはその塩類であることを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与装置。
  7. カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚を殺菌するための抗微生物剤投与用組立品であって、
    (a)皮膚表面を殺菌するための受動的装置からなる第1構成品であって、前記受動的装置が皮膚に存在する微生物を殺菌するための抗微生物剤を含むものであり、かつ、前記抗微生物剤が、抗ウィルス剤、抗菌剤、化学療法剤、抗生物質、消毒剤および抗真菌剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、および前記抗微生物剤が、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス属、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌アシネトバクター、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、カンジダ属、セラチア類およびメチシリン耐性菌からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して抗微生物活性を有するものである第1構成品と、
    (b)カテーテルまたは注射針が挿入される部分の皮膚周辺を局部的に殺菌するための能動的装置からなる第2構成品であって、
    (b1)皮膚に存在する微生物を殺菌するための抗微生物剤を含むドナー電極であって、前記ドナー電極の皮膚適用面積が1〜100cm であり、かつ、前記抗微生物剤が、抗ウィルス剤、抗菌剤、化学療法剤、抗生物質、消毒剤および抗真菌剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、および前記抗微生物剤が、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ミクロコッカス属、グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌アシネトバクター、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、カンジダ属、セラチア類およびメチシリン耐性菌からなる群から選ばれる少なくとも1種に対して抗微生物活性を有するものであるドナー電極と、
    (b2)ドナー電極の対向電極として設けられるリファレンス電極と、
    (b3)通電の総電流量が1〜30mA・min/cm となるようにドナー電極とリファレンス電極間に電流を流す電源装置とを備えた第2構成品
    を備えたことを特徴とする抗微生物剤投与用組立品。
  8. 第1構成品の皮膚適用面積である第1面積が第2構成品の皮膚適用面積である第2面積より広く、かつ第1面積が20cm以上であり、第2面積が1〜100cmであることを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与用組立品。
  9. 第1構成品がアルコール類を含有することを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与用組立品。
  10. アルコール類が、エタノールまたはイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与用組立品。
  11. 第1構成品および第2構成品が、互いに同一の抗微生物剤を含むことを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与用組立品。
  12. ドナー電極が陽極であって、抗微生物剤がクロルヘキシジンまたはその塩類であることを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与用組立品。
  13. ドナー電極が、さらに局所麻酔剤を含むことを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与用組立品。
  14. ドナー電極が陽極であって、局所麻酔剤がリドカインまたはその塩類であることを特徴とする請求項13記載の抗微生物剤投与用組立品。
  15. ドナー電極が、さらに血管収縮剤を含むことを特徴とする請求項記載の抗微生物剤投与用組立品。
  16. ドナー電極が陽極であって、血管収縮剤がエピネフリンまたはその塩類であることを特徴とする請求項15記載の抗微生物剤投与用組立品。
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