JP4177086B2 - 心臓治療装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、迷走神経刺激に基づく心臓治療装置に関し、特に、迷走神経刺激に伴った心拍出量減少による心不全を処置する心臓治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
心臓活動は、自律神経系の支配を受けるが、自立神経系には、交感神経系と副交感神経系とがある。交感神経が緊張すると心臓に対して興奮的に作用するのに対し、副交感神経に属する迷走神経が緊張すると心臓に対して抑制的に作用する。
【0003】
このように、心臓は交感神経と迷走神経の拮抗的支配を受けていると言えるが、迷走神経の興奮は、交感神経活動に対してその抑制として作用するためβ遮断効果と同様の効果を発揮する。β遮断効果とは、心臓のポンプとしての力を抑え、心臓の働きを抑えたり、血液の流れを緩やかにしたりする効果であり、主に心拍数の低下や動脈血圧の低下として現れる。
【0004】
β遮断効果における心拍数の低下は、心室頻拍や心室細動を誘発させる心室性期外収縮や遅延後脱分極等の頻拍リスクイベントの発生を低減させる。また、動脈血圧の低下は、心拍数の低下とともに心筋の酸素消費量を減少させるが、この心筋の酸素消費量の減少は、頻拍リスクイベントが発生した場合に、心筋障害部位やその周辺部で心筋が酸欠状態となるのを予防し、心室頻拍や心室細動を不活発化する作用を持ち、心筋梗塞の再発を防止する効果がある。
【0005】
迷走神経の刺激には、上述のような効果があるので、迷走神経への電気刺激によって器質的心疾患患者の心臓突然死予防や致死的不整脈治療への応用がなされ、このような観点から、いくつかの心臓治療装置が提案されている。
【0006】
例えば、頻脈性不整脈の検出に応答し、迷走神経を刺激するとともに、交感神経ブロックを目的として交感神経を刺激することによって、頻脈性不整脈の予防および治療を行う心臓治療装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)
【0007】
また、不整脈の検出に応答し、迷走神経と交感神経を同時に刺激することによって、心臓律動(心拍数)を安定化させ、心臓の自由運動サイクル内に心臓律動(心拍数)を保持するための心臓治療装置も既に提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0008】
また、迷走神経の刺激については言及されていないが、右心房、右心室及び左心室に心房電極リード及び心室電極リードを挿入して、心房の収縮と同期させて、予め定めた120〜200msの房室遅延時間後に右心室と左心室に同時に刺激パルスを送り、心臓の血流効率を上げる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)
【0009】
【特許文献1 】
特開平8−38625号公報
【特許文献2】
特表平11−514268号公報
【特許文献3】
米国特許4928688号明細書
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、迷走神経の電気刺激は、心拍数や動脈血圧を低下させる以外に、興奮伝導速度を低下させるという作用を奏する。そして、この興奮伝導速度の低下は、器質的心疾患の心筋傷害や心筋疾患の部位や重症度に関連して、心室内の興奮伝導速度を不均一とし、興奮伝導障害を引き起こすという問題があった。例えば、興奮伝導障害として、右心室あるいは左心室のどちらかへの脚ブロックあるいは伝導遅延が起こると,右心室と左心室の調和のとれた収縮に基づく効率的な血液の流出を達成できず、ポンプ機能不全に陥るのである。その結果、心拍出量は減少し、心機能の低下した器質的心疾患患者では心機能が更に悪化して心不全となるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、迷走神経刺激に応答して、心拍出量の減少を抑えるように心室刺激を最適化する手段を備えた心臓治療装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の心臓治療装置は、迷走神経を刺激する神経刺激発生手段と、心臓の右心室を刺激する右心室パルス発生手段と、心臓の左心室を刺激する左心室パルス発生手段と、前記右心室パルス発生手段を選択するか、あるいは前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段の両方を選択する制御手段と、を備え、この制御手段が、神経刺激発生手段が神経刺激を発生しない場合に右心室パルス発生手段を選択し、神経刺激発生手段が神経刺激を発生した場合に右心室パルス発生手段と左心室パルス発生手段の両方を選択することを特徴とする。
【0013】
請求項1記載の心臓治療装置によれば、迷走神経の刺激と右心室及び左心室の両心室の刺激とを連動させて行うために、迷走神経刺激に伴う心拍出量の低下を抑えることができる。
【0014】
また、請求項2記載の心臓治療装置は、請求項1記載の心臓治療装置において、心房の自発的収縮を検出する心房収縮検出手段を設け、この心房収縮検出手段に応答して予め定めた所定の房室遅延時間後に心室刺激を実行する房室遅延計時手段を付加したことを特徴としている。
【0015】
請求項2記載の心臓治療装置では、請求項1 記載の心臓治療装置に、心房の自発的収縮を検出する心房収縮検出手段と、この心房収縮検出手段に応答して予め定めた所定時間後に心室刺激を実行するための房室遅延計時手段を付加しているので、各心疾患患者に対して心房の自発的収縮後の最適なタイミングで心室の刺激を行うことができる。
【0016】
請求項3記載の心臓治療装置は、請求項2記載の心臓治療装置において、右心室パルス発生手段が選択された場合には、房室遅延計時手段が第1の房室遅延時間の時に心室刺激が実行され、右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段の両方が選択された場合には、房室遅延計時手段が第1房室遅延時間よりも短い第2の房室遅延時間の時に心室刺激が実行される、ことを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載される心臓治療装置では、右心室だけが刺激される時と、右心室と左心室両方の心室が刺激される時とで、房室遅延時間を異ならせているので、各心疾患患者の症状に応じてきめ細かい心室刺激を行うことができる。
【0019】
請求項4記載の心臓治療装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の心臓治療装置において、前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段の両方の心室パルス発生手段の選択が、前記神経パルス発生手段の応答から所定の回数なされることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5記載の心臓治療装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の心臓治療装置において、前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段の両方の心室パルス発生手段の選択が、前記神経パルス発生手段の応答から所定の時間なされることを特徴としている。
【0021】
請求項4または請求項5に記載の心臓治療装置によれば、迷走神経の刺激後に、所定の回数あるいは所定の時間だけ両心室刺激を繰り返して行うようにしているので、心疾患患者に対して適宜刺激の回数あるいは刺激の時間を設定することができて、迷走神経刺激終了後も持続する神経刺激の効果による心拍出量の低下を抑えることができる。
【0022】
請求項6記載の心臓治療装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の心臓治療装置において、前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段による刺激が同時に行われることを特徴としている。
【0023】
請求項6に記載の心臓治療装置によれば、右心室への刺激と左心室への刺激を同時に行うので、例えば、左右心室間における興奮伝導のタイミングのずれに基づく心室の奇異性運動が心拍出量低下の原因となっている患者には、両心室同時刺激によって興奮伝導タイミングのずれが矯正でき、左右心室の協調的収縮によって心拍出量の低下を抑えることができる。
【0024】
請求項7記載の心臓治療装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の心臓治療装置において、前記右心室パルス発生手段の作動に続いて、所定の時間経過後に、前記左心室パルス発生手段を作動させることを特徴としている。
【0025】
請求項8記載の心臓治療装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の心臓治療装置において、前記左心室パルス発生手段の作動に続いて、所定の時間経過後に、前記右心室パルス発生手段を作動させることを特徴としている。
【0026】
請求項7または請求項8に記載の心臓治療装置によれば、右心室への刺激と左心室への刺激のタイミングをきめ細かく調整できるので、例えば、両心室同時刺激では問題解決に至らない心疾患患者、例えば、心拍出量低下の原因が、心室筋の器質的変化(心筋の肥厚や壊死等)に基づく心室の奇異性運動であるような患者に対して特に有効である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による心臓治療装置の第1の実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書において、心臓の「イベント」とは、刺激起因、自発にかかわらず、心臓(心房及び/又は心室)で発生した収縮現象を含むものである。
心臓治療装置1は、制御手段2、心臓の右心室を刺激する右心室刺激パルスを発生する右心室パルス発生手段3、心臓の左心室を刺激する左心室刺激パルスを発生する左心室パルス発生手段4、心臓の心房の収縮(心房イベント)を検出する心房収縮検出手段5、心房イベントの検出に基づいて右心室または右心室と左心室の両方を刺激する心室刺激パルスを発生するまでの所定時間を計測する房室遅延計時手段6及び迷走神経を刺激する神経刺激パルスを発生する神経パルス発生手段7によって構成される。
【0028】
右心室パルス発生手段3は右心室電極リード8により右心室刺激電極9に接続され、左心室パルス発生手段4は左心室電極リード10により左心室刺激電極11に接続される。また、心房収縮検出手段5は心房収縮検出リード13により心房イベント検出電極14に接続される。右心室刺激電極9、左心室刺激電極11及び心房イベント検出電極14は図2に示されるように心臓12に配置される。
【0029】
一般に、心臓用の電極としては、心臓の筋肉、いわゆる心筋内に埋め込む心筋電極と、大静脈を経由して心臓まで電極を挿入するカテーテル電極がある。図2に示すものは、カテーテル電極の例であるが、右心室電極リード8、左心室電極リード10、心房収縮検出リード13のいずれも最初は大静脈から心臓12の右心房に導かれる。
【0030】
大静脈から右心房に挿入された心房収縮検出リード13は、J 字状に曲げられた先端部を右心房壁から出っ張った袋状の右心耳内に引っ掛けるように挿入し、心房イベント検出電極14が右心耳内壁に接触するように配置される。また、同じく大静脈から右心房に挿入される右心室電極リード8は、房室弁を通って右心室に入り、右心室電極リード8の先端部に設けられる右心室刺激電極9が右心室の最下部に接触するように配置される。更に、左心室電極リード10は、図2には示されていないが、大静脈から右心房を通り、右心房の後下壁に開口する冠状静脈洞へ挿入、あるいは更に冠状静脈洞に開口する冠状静脈に挿入し、左心室刺激電極11が冠血管内部から左心室に接触するように配置される。
【0031】
神経パルス発生手段7は神経電極リード15により神経刺激電極16に接続され、神経刺激電極16は迷走神経17に巻きつけ固定される。
【0032】
図1に示す心臓治療装置1の制御手段2は、右心室パルス発生手段3及び左心室パルス発生手段4の両方に接続される心室パルス選択手段18と、神経パルス発生手段7と心房収縮検出手段5に接続される神経パルス制御手段19と、右心房のイベントが起こってから右心室を刺激するまでの房室遅延時間を記憶するRAVD記憶手段20と、右心房のイベントが起こってから右心室及び左心室を同時刺激するまでの房室遅延時間を記憶するRLAVD記憶手段21と、RAVD記憶手段20またはRLAVD記憶手段21のいずれかを選択するAVD選択手段22と、房室遅延計時手段6のカウント値がAVD選択手段22で選択されたRAVD記憶手段20またはRLAVD記憶手段21の設定値に達すると出力を発生する比較手段23と、両心室刺激を何回継続して行うかをあらかじめ記憶しておく継続回数記憶手段24と、継続回数記憶手段24で設定された値を心室パルス選択手段18から左心室パルス発生手段4への出力があるごとにデクリメントする両心室刺激継続カウンタ25から構成されている。
【0033】
そして、神経パルス制御手段19は、心房収縮検出手段5からの心房イベントの間隔が、あるいは心房イベントの間隔の平均値が、例えば心拍数が毎分80回以上に相当する周期である750ms 以下になったことを検知して、制御信号を発生するように構成される。また、両心室刺激継続カウンタ25がロードされたときに、心室パルス選択手段18は、右心室パルス発生手段3及び左心室パルス発生手段4の両方を選択するように構成され、AVD選択手段22は、RLAVD記憶手段21を選択するように構成される。そして、両心室刺激継続カウンタ25の値が“0”となったときは、心室パルス選択手段18は、右心室パルス発生手段3のみを選択し、AVD選択手段22は、RAVD記憶手段20を選択するように構成されている。
【0034】
ここで、RAVD記憶手段20に記憶される時間は、それぞれの心疾患患者にとって右心房イベントが起こってから右心室刺激を行うまでの好ましい房室遅延時間であり、RLAVD記憶手段21に記憶される時間は、上記右心房イベントが起こってから右心室及び左心室の同時刺激を行うまでの好ましい房室遅延時間である。
【0035】
以下、本発明の心臓治療装置の第1の実施形態の動作を説明する。
図1において、まず、心房イベント検出電極14により検出される心房の拍動が心房収縮検出リード13を介して心房収縮検出手段5に伝えられる。心房収縮検出手段5は検出した心房収縮の信号を神経パルス制御手段19に伝える。
【0036】
心房収縮検出手段5から神経パルス制御手段19に心房イベントの検出信号が送られると、神経パルス制御手段19は送られてきた心房の1心拍毎のイベント間隔、あるいは数拍のイベント間隔の平均値が、例えば心拍数が毎分80回以上に相当する周期である750ms 以下になったか否かを監視し、750ms 以下になったときに神経刺激の必要性があると判断して制御信号を神経パルス発生手段7に送る。
【0037】
この迷走神経刺激の制御は、心房イベント情報に限定されるものではなく、心室イベント情報であってもよく、あるいはその他の心臓情報や血行動態情報などの生体情報、体動や時間等の物理情報、あるいは、これらの情報を組み合わせたものであってもよい。
【0038】
神経パルス発生手段7は神経パルス制御手段19からの制御信号を受けて神経刺激パルスを発生し、神経電極リード15、神経刺激電極16を経て迷走神経17を刺激する。ここで、神経刺激電極16は通常は迷走神経17に巻きつけるようにして配置される。神経刺激電極16を巻きつける領域としては、頚部領域かあるいは外側頚動脈の右中央位置が好適である。また、神経刺激電極16は、血管内にカテーテル電極を留置することによって、血管壁に隣接した迷走神経17を刺激するように配置することも可能である。配置領域としては、鎖骨下静脈内が好適である。
【0039】
また、心房収縮検知手段5は、心房イベント検出電極14及び心房収縮検出リード13を介して検出された心房イベント情報を房室遅延計時手段6にも伝える。房室遅延計時手段6は心房収縮検出手段5から送られたイベント情報をトリガとして計時を開始し、その時間情報を制御手段2内の比較手段23に送る。
【0040】
一方、RAVD記憶手段20には、それぞれの心疾患患者に応じて右心房イベントが起こってから右心室刺激を行うまでの好ましい房室遅延時間、例えば150ms〜250msの適当な値が記憶されている。また、RLAVD記憶手段21には、右心房イベントが起こってから右心室及び左心室の同時刺激を行うまでの好ましい房室遅延時間の値が記憶されている。
【0041】
AVD選択手段22は、RAVD記憶手段20またはRLAVD記憶手段21に記憶されている時間のいずれか一方を選択し、比較手段23に供給する。そして比較手段23において房室遅延計時手段6からの計時時間情報、すなわち心房イベント発生からの経過時間がAVD選択手段22で選択されたRAVD記憶手段20またはRLAVD記憶手段21に記憶されている好ましい房室遅延時間と比較される。
【0042】
通常、AVD選択手段22はRAVD記憶手段20を選択しており、この場合は、心室パルス選択手段18は右心室パルス発生手段3のみに接続している。そして、房室遅延計時手段6からの計時時間情報、すなわち心房イベント発生からの経過時間がAVD選択手段22で選択されたRAVD記憶手段20に記憶されている房室遅延時間に達すると比較手段23から出力が得られ、心室パルス選択手段18が選択している右心室パルス発生手段3を作動させて右心室刺激パルスを発生し、右心室電極リード8、右心室刺激電極9を介して心臓12の右心室を刺激するようにしている。
【0043】
神経パルス制御手段19において検出される心拍数が毎分80回以上、すなわち周期が750ms 以下になり、神経パルス制御手段19から神経パルス発生手段7に制御信号が供給されて迷走神経が刺激されると、それに応答して両心室刺激カウンタ25に継続回数記憶手段24に記憶されている所望の心室刺激回数Nがロードされる。このとき、AVD選択手段22がRAVD記憶手段20からRLAVD記憶手段21側に切り換えられるとともに、心室パルス選択手段18は右心室パルス発生手段3と左心室パルス発生手段4の両方を選択する。
【0044】
そして、AVD選択手段22がRLAVD記憶手段21を選択している場合には、比較手段23において房室遅延計時手段6で計時した心房イベントからの経過時間とRLAVD記憶手段21に記憶されている設定時間とが比較される。すなわち、心房イベント発生からの経過時間が、右心房イベントが起こってから右心室及び左心室を同時刺激するまでの好ましい房室遅延時間に達したか否かが比較手段23によって判断される。
【0045】
この両心室へ同時刺激をする場合の房室遅延時間は、右心室のみに刺激を行う通常の場合と比べて短い房室遅延時間を設定することが好ましい。なぜなら、両心室を同時刺激した場合に、心房と心室への協調的な収縮が達成されないと、房室弁での血液の逆流が起こる可能性があり、この血液の逆流が心拍出量低下の原因ともなる。これは、心臓の興奮を急速に心筋全体に伝播させるための刺激伝導系と呼ばれる特殊心筋繊維における興奮伝播速度が、神経刺激によって遅らされるため、心室の収縮時間が遅くなることに起因している。すなわち、心室と心房は協調して血液をポンピングしているのであるが、心室の収縮の遅れによって、この協調がくずれ、一回拍出量(一回の拍動で心臓が血液を送り出す量)が低下してしまうことがある。そこで、この実質的な心室収縮の遅れを補正するために、右心室のみを刺激するときよりも両心室を刺激するときの方の刺激を早期に行う必要があるのである。このために房室遅延時間を右心室のみを刺激するときと比べて短くし、これによって、心室の収縮の遅れを取り戻すようにする必要がある。
【0046】
房室遅延計時手段6の計時時間が、RLAVD記憶手段21に記憶されている、右心房イベントが起こってから右心室及び左心室を同時刺激するまでの好ましい房室遅延時間に達すると、比較手段23から出力が得られ、心室パルス選択手段18に供給される。このとき、心室パルス選択手段18は、右心室パルス発生手段3と左心室パルス発生手段4の両方を選択しているので、右心室パルス発生手段3及び左心室パルス発生手段4により、右心室電極リード8及び左心室電極リード10を介して右心室刺激電極9及び左心室刺激電極11に同時に刺激パルスが加えられ、右心室と左心室が同時刺激される。
【0047】
図3は、上述した第1の実施形態の動作の流れを示すフロー図であり、以下、このフロー図を用いて、本例の動作を更に詳細に説明する。まず、最初に両心室刺激継続カウンタ25をリセットする(ステップS1)。次に、心房イベントの発生を監視している心房収縮検出手段5により心房イベントが検出されたかどうかが判断され(ステップS2)、心房イベントが検出されなければ検出されるまでサイクルを繰り返す。心房イベントが検出されると、房室遅延計時手段6が時間のカウントを開始し(ステップS3)、それと同時に神経パルス制御手段19において神経刺激の必要性が判断される(ステップS4)。
【0048】
例えば、心拍数の平均値が80以上になって心房イベントの検出回数が多くなると、神経刺激が必要だと判断され、迷走神経刺激を行い(ステップS5)、同時に両心室刺激継続カウンタ25に継続回数記憶手段24に予め記憶されている数値Nをロードする(ステップS6)。ステップS5で神経刺激の必要がないと判断されれば、ステップS10に進む。
【0049】
ステップS6で両心室刺激継続カウンタ25に数値Nがロードされると、次に、房室遅延計時手段6で計時した時間がRLAVD記憶手段21に記憶されている設定時間と一致したかどうかが判断される(ステップS7)。そして、房室遅延計時手段6で計時した時間がRLAVD記憶手段21に記憶されている時間に達すると、右心室及び左心室の両方に同時に心室刺激パルスを送る(ステップS8)。この両心室の同時刺激が行われると、両心室刺激継続カウンタ25にロードされた数値Nより1が引かれて(N−1)とされる(ステップS9)。
【0050】
判断ステップS4において、心拍数が80以下である場合などで神経刺激の必要がないと判断されると、両心室刺激カウンタ25の値が“0”になっているか否かが判断され(ステップS10)、両心室刺激カウンタ25の値が“0”でないならば、引き続き判断ステップS7に戻る。
【0051】
両心室の刺激がN回繰り返されて、両心室刺激カウンタ25の値が“0”になると、両心室刺激カウンタ25からAVD選択手段22と心室パルス選択手段18に信号が供給され、AVD選択手段22はRLAVD記憶手段21からRAVD記憶手段20にその出力を切り換え、心室パルス選択手段18は両心室刺激から右心室のみの刺激に切り換えを行う。このとき、判断ステップS10で、両心室刺激カウンタ25の値が“0”と判断され、次のステップS11に移る。
【0052】
そして、判断ステップS11において、房室遅延計時手段6がRAVD記憶手段20に記憶されている右心室刺激のための房室遅延時間の設定値に達したか否かが判断され、房室遅延計時手段6の計時時間が上記設定値に達すると、右心室パルス発生手段3から右心室刺激パルスを発生する通常の心臓治療装置(ペースメーカ)の動作モードとなる(ステップS12)。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態を図4に基づいて説明する。図2に示される本発明の第1の実施形態と同じ部分は同一符号で示す。
本発明の第1の実施形態では、N回の両心室の刺激が行われると両心室刺激継続カウンタ25から出力が得られてAVD選択手段22及び心室パルス選択手段18が作動する構成としているが、本発明の第2実施の形態では、N回の両心室刺激のカウントを行う代わりにそれに相当する時間をタイマで計測してAVD選択手段22及び心室パルス選択手段18を切り換える構成にしている。
【0054】
すなわち、図4に示すように、図2に示す本発明の第1の実施形態と異なるところは、神経刺激パルスの発生に応答してカウントを開始する継続時間計時手段26と、右心室と左心室の同時刺激を行う継続時間を予め設定し記憶させる継続時間設定値記憶手段27と、継続時間計時手段26と継続時間設定値記憶手段27の出力を比較して、神経刺激からの経過時間が予め定めた継続時間設定値に達したか否かを判断する比較手段28を備えた点である。
【0055】
本発明の第1の実施形態と同様に、まず、心房イベント検出電極14により検出される心房の拍動が心房収縮検出リード13を介して心房収縮検出手段5で検出され、検出された心房収縮の信号が神経パルス制御手段19に伝えられる。神経パルス制御手段19は送られてきた心房の1心拍毎のイベント間隔、あるいは数拍のイベント間隔の平均値が、例えば心拍数が毎分80回以上に相当する周期である750ms 以下になったか否かを監視し、750ms 以下になったときに神経刺激の必要性があると判断して制御信号を神経パルス発生手段7に送る。
【0056】
この神経刺激に応答して継続時間計時手段26が経過時間の計数を開始するとともに、同時にAVD選択手段22及び心室パルス選択手段18を作動させて、AVD選択手段22はRAVD記憶手段20の選択からRLAVD記憶手段21の選択に切り換えられ、心室パルス選択手段18は右心室パルス発生手段3のみの選択から、右心室パルス発生手段3と左心室パルス発生手段4の両方を選択するように切り換えられる。
【0057】
また、心房収縮検出手段5により心房イベントが検出されると、房室遅延計時手段6も計数を開始し、この経過時間がRLAVD記憶手段21に記憶されている右心房イベントが起こってから右心室及び左心室を同時刺激するまでの好ましい房室遅延時間に達すると、比較手段23から出力が得られ、心室パルス選択手段18を経て、右心室パルス発生手段3及び左心室パルス発生手段4の両方に伝えられ、右心室電極リード8及び左心室電極リード10を介して右心室刺激電極9及び左心室刺激電極11に同時に刺激パルスが加えられて、右心室と左心室が同時刺激される。
【0058】
継続時間設定値記憶手段27には、各心疾患患者に応じて右心室と左心室の両方を刺激する好ましい時間が設定されており、比較手段28において、上記継続時間設定値記憶手段27に記憶された設定時間と、継続時間計時手段26により計数された、神経刺激パルスが発生してからの経過時間が比較され、神経刺激パルスが発生してからの経過時間が継続時間設定値記憶手段27に記憶された設定時間に達すると、比較手段28から出力が得られ、AVD選択手段22と心室パルス選択手段28に供給される。
【0059】
この比較手段28からの信号を受けて、AVD選択手段22はRLAVD記憶手段21の選択からRAVD記憶手段20の選択に切り換えられ、心室パルス選択手段18は右心室パルス発生手段3と左心室パルス発生手段4の両方の選択から右心室パルス発生手段3のみの選択に切り換えられる。これにより、心臓治療装置1は右心室のみを刺激する通常の心臓刺激装置(ペースメーカ)の作動状態に戻る。
【0060】
図5は、上記第2の実施形態の動作の流れを示すフロー図であり、以下、このフロー図を用いて、本発明の第2の実施形態の動作を更に詳細に説明する。まず、心房イベントの発生を監視している心房収縮検出手段5により心房イベントが検出されたかどうかが判断され(ステップS21)、心房イベントが検出されなければ検出されるまでサイクルを繰り返す。心房イベントが検出されると、房室遅延計時手段6が時間のカウントを開始し(ステップS22)、それと同時に神経パルス制御手段19において神経刺激の必要性が判断される(ステップS23)。
【0061】
例えば、心拍数の平均値が80以上になって心房イベントの検出回数が多くなると、神経刺激が必要だと判断され、迷走神経刺激を行い(ステップS24)、同時に継続時間計時手段26が計数を開始する(ステップS25)。判断ステップS23で神経刺激の必要がないと判断されれば、判断ステップS28に進む。
【0062】
次に、房室遅延計時手段6で計時した時間がRLAVD記憶手段21に記憶されている設定時間と一致したかどうかが判断される(ステップS26)。そして、房室遅延計時手段6で計時した時間がRLAVD記憶手段21に記憶されている時間に達すると、右心室及び左心室の両方に同時に心室刺激パルスを送る(ステップS27)。
【0063】
判断ステップS23において心拍数が80以下である場合などで神経刺激の必要がないと判断されると、継続時間計時手段26の計数時間(継続時間)が継続時間設定値記憶手段27の設定時間より大きいか否かが判断される(ステップS28)。上記継続時間計時手段26の計数時間(継続時間)が継続時間設定値記憶手段27の設定時間より小さいときは、引き続き判断ステップS26に戻る。
【0064】
継続時間計時手段26の計数時間(継続時間)が継続時間設定値記憶手段27の設定時間を超えると、比較手段28からAVD選択手段22と心室パルス選択手段18に信号が供給され、AVD選択手段22はRLAVD記憶手段21からRAVD記憶手段20にその出力を切り換え、心室パルス選択手段18は両心室刺激から右心室のみの刺激に切り換えを行う。
【0065】
そして、判断ステップS29において、房室遅延計時手段6がRAVD記憶手段20に記憶されている右心室刺激のための房室遅延時間の設定値に達したか否かが判断され、房室遅延計時手段6の計時時間が上記設定値に達すると、右心室パルス発生手段3から右心室刺激パルスを発生する通常の心臓治療装置(ペースメーカ)の動作モードとなる(ステップS30)。
【0066】
次に、本発明による心臓治療装置の第3の実施形態を図6の構成図に基づいて説明する。図1に示される本発明の第1の実施形態及び図4に示す本発明の第2の実施形態と同じ部分は同一符号で示してある。
図1に示す本発明の第1の実施形態及び図4に示す本発明の第2の実施形態いずれも神経刺激があったときに所定の回数あるいは所定の時間、右心室と左心室を同時に刺激するものであるが、本発明の第3の実施形態では、左右の心室刺激に時間差をつけて刺激するようにしている。この例では最初に右心室を刺激し、少しの時間差をおいて左心室を刺激するようにしているが、逆に、左心室刺激が先で右心室刺激があとであってもよい。
【0067】
図6に示す本発明の第3の実施形態では、本発明の第1または第2の実施の形態におけるRLAVD記憶手段21の代わりにBI−RAVD記憶手段29とBI−LAVD記憶手段30が設けられている。BI−RAVD(atrium-right ventricle delay of biventricular pacing)記憶手段29は、両心室を刺激する場合の右心房イベント検出から右心室刺激までの好ましい房室遅延時間を記憶するものであり、BI−LAVD(atrium-left ventricle delay of biventricular pacing )記憶手段30は、両心室を刺激する場合の右心房イベント検出から左心室刺激までの好ましい房室遅延時間を記憶するものである。
【0068】
この房室遅延時間の設定の方法について説明する。心不全における心拍出量低下の原因として、▲1▼左右心室間における興奮伝導のタイミングのずれに基づく心室の奇異性運動、及び、▲2▼心室筋の器質的変化(心筋の肥厚や壊死等)に基づく心室の奇異性運動、あるいは▲1▼と▲2▼の合併によるものなど多くの原因が考えられる。
【0069】
まず、▲1▼の左右心室間における興奮伝導のタイミングのずれに基づく心室の奇異性運動が心拍出量低下の原因となっている患者には、両心室同時刺激を行うことで興奮伝導タイミングのずれが矯正でき、左右心室の協調的収縮によって心拍出量の低下を抑えることができる。
【0070】
しかし、▲2▼の心室筋の器質的変化(心筋の肥厚や壊死等)に基づく心室の奇異性運動が心拍出量低下の原因となっている患者には(▲1▼と▲2▼の合併の患者も含む)、両心室同時刺激を行っても器質的変化を起こした心室筋は正常な他の心室筋と協調的に動くことができず、必ずしも心拍出量の低下を抑えることにはならない。この場合には、器質的変化を起こした心室筋の心拍出量低減への関与を少なくし、心室運動を最適化するように右心室と左心室に対して刺激パルスを送るタイミングを調整する必要がある。
【0071】
この調整を行うため、現実的には、心臓治療装置の植え込み時あるいは定期健診時に迷走神経刺激を行い、超音波診断装置等を用いて心室の動きや房室弁における血液の逆流の有無等を観察し、迷走神経刺激に伴う心拍出量の低下が最小となるように両心室の刺激タイミングの設定を行っている。このように、房室遅延時間の設定は各心疾患患者の状態に応じてきめ細かく設定されなければならないものである。
【0072】
AVD選択手段22は、通常はRAVD記憶手段20を選択しているが、心房イベントが検出され、その結果、迷走神経が刺激されると、AVD選択手段22はRAVD記憶手段20からBI−RAVD記憶手段29及びBI−LAVD記憶手段30の両方を選択するモードに切り換わる。同時に、図1に示される本発明の第1 の実施形態と同様に、迷走神経の刺激に応答して、両心室刺激継続カウンタ25には継続回数記憶手段24に予め記憶されている数値(例えば、N回)がセットされる。
【0073】
ここで、BI−RAVD記憶手段29に記憶されている房室遅延時間はBI−LAVD記憶手段30に記憶されている房室遅延時間よりも小さいという前提で、以下説明をする。
最初に、房室遅延計時手段6の計数値はBI−RAVD記憶手段29に記憶されている房室遅延時間に達するので、このとき比較手段23からの出力が心室パルス選択手段18により選択されている右心室パルス発生手段3に加えられる。そして右心室パルス発生手段3は右心室刺激リード8を介して右心室刺激電極9に刺激パルスを与え、右心室を刺激する。
【0074】
続いて、房室遅延計時手段6の計数値が、BI−LAVD記憶手段30に記憶されている房室遅延時間に達すると、比較手段23からの出力が心室パルス選択手段18により選択されている左心室パルス発生手段4に加えられ、左心室刺激リード10を介して左心室刺激電極11に刺激パルスが与えられ左心室が刺激される。
【0075】
このとき、左心室パルス発生手段4への出力が得られる毎に、両心室刺激継続カウンタ25にロードされている数値Nから“1”が引かれてゆく。そして、両心室刺激継続カウンタ25の出力が“0”になると、両心室刺激継続カウンタ25より出力が得られ、AVD選択手段22及び心室パルス選択手段18に切り換えパルスが発せられて、AVD選択手段22はRAVD記憶手段20を選択し、心室パルス選択手段18は右心室パルス発生手段3のみを選択する状態に切り換えられる。
【0076】
このように、本例では、心房イベントの検出から所定時間経過後、右心室と左心室に時間差をつけて刺激するので、心室筋の器質的変化(心筋の肥厚や壊死等)に基づく心室の奇異性運動が心拍出量低下の原因となっている患者に対して、特に有効な心臓治療装置を提供することができる。
【0077】
図7は、上記第3の実施形態の動作の流れを示すフロー図であり、以下、このフロー図を用いて、まず、最初に両心室刺激継続カウンタ25をリセットする(ステップS31)。次に、心房イベントの発生を監視している心房収縮検出手段5により心房イベントが検出されたかどうかが判断され(ステップS32)、心房イベントが検出されなければ検出されるまでサイクルを繰り返す。心房イベントが検出されると、房室遅延計時手段6が時間のカウントを開始し(ステップS33)、それと同時に神経パルス制御手段19において神経刺激の必要性が判断される(ステップS34)。
【0078】
例えば、心拍数の平均値が80以上になって心房イベントの検出回数が多くなると、神経刺激が必要だと判断され、迷走神経刺激を行い(ステップS35)、同時に両心室刺激継続カウンタ25に継続回数記憶手段24に予め記憶されている数値Nをロードする(ステップS36)。ステップS35で神経刺激の必要がないと判断されれば、ステップS42に進む。
【0079】
ステップS36で両心室刺激継続カウンタ25に数値Nがロードされると、次に、房室遅延計時手段6で計時した時間がBI−RAVD記憶手段29に記憶されている設定時間と一致したかどうかが判断される(ステップS37)。心房イベントからの経過時間が上記BI−RAVD記憶手段29に記憶されている設定時間に達しないときは、達するまで判断ステップS37を繰り返す。そして、房室遅延計時手段6で計時した時間がBI−RAVD記憶手段29に記憶されている時間に達すると、右心室パルス発生手段3より右心室刺激パルスが発せられる(ステップS38)。続いて、房室遅延計時手段6で計時した時間がBI−LAVD記憶手段30に記憶されている設定時間と一致したかどうかが判断される(ステップS39)。心房イベントからの経過時間が上記BI−LAVD記憶手段30に記憶されている設定時間に達しないときは、達するまで判断ステップS37を繰り返す。そして、房室遅延計時手段6で計時した時間がBI−LAVD記憶手段30に記憶されている時間に達すると、左心室パルス発生手段4より左心室刺激パルスが発せられる(ステップS40)。そして左心室の刺激が行われると、両心室刺激継続カウンタ25にロードされた数値Nより1が引かれて(N−1)とされる(ステップS41)。
【0080】
判断ステップS34において、心拍数が80以下である場合などで神経刺激の必要がないと判断されると、両心室刺激カウンタ25の値が“0”になっているか否かが判断され(ステップS42)、両心室刺激カウンタ25の値が“0”でないならば、引き続き判断ステップS37に戻る。
【0081】
両心室の刺激がN回繰り返されて、両心室刺激カウンタ25の値が“0”になると、両心室刺激カウンタ25からAVD選択手段22と心室パルス選択手段18に信号が供給され、AVD選択手段22はBI−RAVD記憶手段29とBI−LAVD30の両方を選択する状態から、RAVD記憶手段20のみを選択する状態にその出力を切り換え、心室パルス選択手段18は時間差をつけた両心室刺激から右心室のみの刺激に切り換えを行う。そして、判断ステップS43で、房室遅延計時手段6で計時した時間がRAVD記憶手段20に記憶されている設定時間と一致したかどうかが判断され、心房イベントからの経過時間が上記RAVD記憶手段20に記憶されている設定時間に達しないときは、達するまで判断ステップS43を繰り返し、房室遅延計時手段6で計時した時間がRAVD記憶手段20に記憶されている時間に達すると、右心室パルス発生手段3より右心室刺激パルスが発せられる(ステップS44)。
【0082】
上記説明では、心房イベントを検出してから両心室を刺激する場合であって、右心室を先に刺激する場合を説明したが、心疾患患者の状況においては、左心室を先に刺激し、少し時間を置いて右心室を刺激することもありうることである。
【0083】
以上、本発明の心臓治療装置を図示の3つの実施の形態の例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、両心室刺激機構を備えた心臓ベースメーカや植込み型除細動器、あるいは迷走神経刺激機構を備えた心臓治療装置等に適用が可能である。
【0084】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、迷走神経刺激に応答して、右心室と左心室の両方で心室の刺激が行われるため、迷走神経刺激に伴う左右心室間伝導障害による心拍出量の減少を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態の心臓治療装置の構成例を示した図である。
【図2】本発明の心臓治療装置に用いられる電極リード及び刺激電極の心臓への配置図である。
【図3】 図1に示す本発明の第1の実施形態の心臓治療装置の動作を示すフロー図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の心臓治療装置の構成例を示した図である。
【図5】図4に示す本発明の第2の実施形態の心臓治療装置の動作を示すフロー図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の心臓治療装置の構成例を示した図である。
【図7】図6に示す本発明の第2の実施形態の心臓治療装置の動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
1・・・心臓治療装置
2・・・制御手段
3・・・右心室パルス発生手段
4・・・左心室パルス発生手段
5・・・心房収縮検出手段
6・・・房室遅延計時手段
7・・・神経パルス発生手段
8・・・右心室電極リード
9・・・右心室刺激電極
10・・・左心室電極リード
11・・・左心室刺激電極
12・・・心臓
13・・・心房収縮検出リード
14・・・心房収縮検出電極
15・・・神経電極リード
16・・・神経刺激電極
17・・・迷走神経
Claims (8)
- 迷走神経を刺激する神経刺激発生手段と、
心臓の右心室を刺激する右心室パルス発生手段と、
心臓の左心室を刺激する左心室パルス発生手段と、
前記右心室パルス発生手段を選択するか、あるいは前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段の両方を選択する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、前記神経刺激発生手段が神経刺激を発生しない場合に前記右心室パルス発生手段を選択し、前記神経刺激発生手段が神経刺激を発生した場合に前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段の両方を選択する、
ことを特徴とする心臓治療装置。 - 心房の自発的収縮を検出する心房収縮検出手段と、
該心房収縮検出手段に応答して、心房の自発的収縮を検出してからの時間を計測する房室遅延計時手段と、を備えることを特徴とする、請求項1記載の心臓治療装置。 - 前記右心室パルス発生手段が選択された場合には、前記房室遅延計時手段が第1の房室遅延時間の時に心室刺激が実行され、前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段の両方が選択された場合には、前記房室遅延計時手段が前記第1房室遅延時間よりも短い第2の房室遅延時間の時に心室刺激が実行される、
ことを特徴とする、請求項2記載の心臓治療装置。 - 前記右心室パルス発生手段及び前記左心室パルス発生手段の両方の選択が、前記神経刺激発生手段の応答から所定の回数なされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の心臓治療装置。
- 前記右心室パルス発生手段及び前記左心室パルス発生手段の両方の選択が、前記神経パルス発生手段の応答から所定の時間なされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の心臓治療装置。
- 前記右心室パルス発生手段及び前記左心室パルス発生手段の両方が選択される心室刺激において、前記右心室パルス発生手段と前記左心室パルス発生手段による刺激が同時に行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の心臓治療装置。
- 前記右心室パルス発生手段及び前記左心室パルス発生手段の両方が選択される心室刺激において、前記右心室パルス発生手段の作動に続いて、所定の時間経過後に、前記左心室パルス発生手段を作動させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の心臓治療装置。
- 前記右心室パルス発生手段及び前記左心室パルス発生手段の両方が選択される心室刺激において、前記左心室パルス発生手段の作動に続いて、所定の時間経過後に、前記右心室パルス発生手段を作動させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の心臓治療装置。
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