JP4175457B2 - 電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子電解質膜を用いる電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法に関し、特にイオン導電性を高く保ち、水分管理を容易にする電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気化学セルの1つである固体高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池は、低温稼動、高効率、低公害などの特性を有する。そのため、固体高分子型燃料電池は、環境負荷低減に役立つ電源として、移動体用電源(主に車載用)や定置型電源(主にビル・家庭用)として開発が進められている。
一方、電気化学セルの1つである固体高分子電解質膜を用いた水電解装置は、水を電気分解することにより、低温稼動、高効率、低公害で酸素と水素を製造する。水素は、クリーンエネルギーとして注目されている。そのため、水電解装置は、再生可能エネルギー(風力、太陽光など)と組み合わせた水素製造システムとして開発が進められている。
【0003】
しかし、固体高分子電解質膜を用いた発電反応あるいは電気分解反応では、膜中で水分子の移動が起きる。そしてそれに伴い、水分の膜中の分布や、膜からの水分の散逸が発生する。そのため、膜におけるイオン導電率の低下を招くことになる。それを避けるためには、電解質膜中の水分の管理が重要となる。
従来水の管理方法として、アノード側及びカソード側の両極へ、外部から水分を供給し、運転を行なっている。その場合、発電あるいは電気分解の急激な状態変化に対して、水分の供給の追随性が良好でない可能性がある。また、電極上では水分が多いため、水分の効率的な循環や、電極近傍でのガス拡散において、問題が生じる可能性がある。
【0004】
従来技術のひとつである特開平6−196182号公報には、固体高分子電解質電気化学セルの隔膜加湿構造及びその製造方法が開示されている。図7を参照して、この技術では、アノード電極103及びカソード電極104を有する固体高分子電解質膜102の内部又は表面に、供給圧力を変えながら水を供給する細い通路101を設けたことを特徴とする。この通路を通して、固体高分子電解質膜へ水を供給する。また、その製造方法は固体高分子電解質膜中に水溶性の糸を埋め込んで形成した後、該糸を溶出除去することにより得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、イオン導電率を高く保つことが可能な電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法を提供することである。
【0006】
また、本発明の別の目的としては、内部の水分量を一定に保つことが可能な電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の更に別の目的としては、膜中に発生し易い水の分布を解消することが可能な電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、電気化学セルのガス及び水の供給ラインでの効率的な水分の循環を図ることが可能な電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の更に他の目的は、電気化学セルの電極付近での効率的なガス拡散を図ることが可能な電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の更に他の目的は、電気化学セルの運転効率の向上を図ることが可能な電気化学セル用電解質膜及びその製造方法、電気化学セル及びその運転方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下に、[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
従って、上記課題を解決するために、本発明の電気化学セルの運転方法は、酸性の溶液(25)の濃度を測定するステップと、濃度測定の測定結果と予め設定された基準濃度とから、酸性の溶液(25)を基準濃度に調整するステップと、基準濃度に調整された酸性の溶液(25)を、電気化学セルの固体高分子電解質膜(1)の内部へ供給するステップと、固体高分子電解質膜(1)の内部を通過した酸性の溶液(25)を電気化学セルから送出するステップとを具備する。
【0013】
また、本発明の電気化学セルの運転方法は、酸性の溶液(25)の基準濃度が、3乃至5規定である。
【0014】
更に、本発明の電気化学セルの運転方法は、酸性の溶液(25)は、硫酸、塩酸、硝酸及び酢酸の内、少なくとも一つを含む。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の電気化学セルは、外部から酸性の溶液(25)を供給され、酸性の溶液(25)を送出する上流液溜部(11)を備える。また、膜厚方向の第1面に開口する第1開口部(2の一端部)と、第1面と異なる膜厚方向の第2面に開口する第2開口部(2の他端部)とを含み、酸性の溶液が通過可能な空間(2)を備え、上流液溜部(11)に第1開口部(2の一端部)を開放して接続し、第1開口部(2の一端部)から酸性の溶液(25)を内部へ流通させ、第2開口部(2の他端部)から酸性の溶液(25)を排出する固体高分子電解質膜(1)を備える。更に、第2開口部(2の他端部)を開放されて接続され、第2開口部(2の他端部)から排出された酸性の溶液(25)を外部へ排出する下流液溜部(12)を具備する。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の電気化学セル循環システムは、酸性の溶液(25)が循環する配管である循環管路(26−1〜3)を有する。また、循環管路(26−1〜3)の途中に接続され、酸性の溶液(25)の濃度を測定し、濃度測定の結果と予め設定された基準濃度とから、酸性の溶液(25)を基準濃度に調整して循環管路(26−1〜3)へ送出する循環制御部(21)を有する。更に、循環管路(26−1〜3)の途中に接続され、基準濃度に調整された酸性の溶液(25)の供給を受け、自身の内部を通過した酸性の溶液(25)を循環管路(26−1〜3)へ送出する電気化学セル(24)を有する。
ここで、電気化学セルは、酸性の溶液を供給受け、酸性の溶液(25)を送出する上流液溜部を備える。また、膜厚方向の第1面に開口する第1開口部(2の一端部)と、第1面と異なる膜厚方向の第2面に開口する第2開口部(2の他端部)とを含み、酸性の溶液(25)が通過可能な空間(2)を備え、上流液溜部(11)に第1開口部(2の一端部)を開放して接続し、第1開口部(2の一端部)から酸性の溶液(25)を内部へ流通させ、第2開口部(2の他端部)から酸性の溶液(25)を排出する固体高分子電解質膜(1)を備える。加えて、第2開口部(2の他端部)を開放されて接続され、第2開口部(2の他端部)から排出された酸性の溶液(25)を排出する下流液溜部(12)とを具備する。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の電気化学セル用電解質膜の製造方法は、電気化学セルに用いる複数の固体高分子電解質膜(1)を、間に金属線を挟んで一つに重ねるステップと、金属線を挟んだ複数の固体高分子電解質膜(1)をホットプレスで一体化するステップと、一体化された固体高分子電解質膜(1)中の金属線を溶かして除去し、酸性の溶液(25)用の流路(2)を形成するステップとを具備する。
【0018】
また、本発明の電気化学セル用電解質膜の製造方法は、金属線が、複数あり、互いに交わらないように配置されている。
【0019】
更に、本発明の電気化学セル用電解質膜の製造方法は、金属線の同士の間隔PAmmと直径DAμmとの比RA=PA/DAが、0.1≦RA≦10である。
【0020】
更に、本発明の電気化学セル用電解質膜の製造方法は、金属線が、櫛状、格子状、樹枝状の少なくとも一つの形状を含む。
【0021】
更に、本発明の電気化学セル用電解質膜の製造方法は、電気化学セルに用いる複数の固体高分子電解質膜(1)を、間に金属粒子を挟んで一つに重ねるステップと、金属粒子を挟んだ複数の固体高分子電解質膜(1)をホットプレスで一体化するステップと、一体化された固体高分子電解質膜(1)中の金属粒子を溶かして除去し、酸性の溶液(25)用の流路(2)を形成するステップとを具備する。
【0022】
上記課題を解決するための、本発明の電気化学セル用電解質膜は、膜内部に形成され、膜厚方向の第1面に開口する第1開口部(2の一端部)と、第1面と異なる膜厚方向の第2面に開口する第2開口部(2の他端部)とを有する、酸性の溶液(25)が通過可能な空間(2)を具備する。
【0023】
また、本発明の電気化学セル用電解質膜は、空間は、互いに交わることがない複数の細管(2)である。
【0024】
更に、本発明の電気化学セル用電解質膜は、細管(2)の同士の間隔PBmmと直径DBμmとの比R=PB/DBは、0.1≦RB≦10である。
【0025】
更に、本発明の電気化学セル用電解質膜は、空間(2)は、櫛状、格子状、樹枝状の少なくとも一つの形状を含む細管である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明である電気化学セル用電解質膜、電気化学セル用電解質膜の製造方法、電気化学セル及び電気化学セルの運転方法の実施の一形態に関して、添付図面を参照して説明する。
本実施例において、電気化学セルの1つである燃料電池に使用される固体高分子電解質膜とその製造方法、及び、燃料電池セル及び燃料電池セルの運転方法を例に示して説明するが、他の水電解装置のような電気化学セルにおいても、適用可能である。
【0027】
本発明である電気化学セル用電解質膜及び電気化学セルの実施の形態の構成について、添付図面を用いて説明する。
図1は、本発明である電気化学セル用電解質膜及び電気化学セルの実施の形態に関わる燃料電池セル30の構成を示す断面図である。
燃料電池セル30は、液流路2を有する固体高分子電解質膜1、アノード触媒層3、アノードガス拡散電極4、カソード触媒層5、カソードガス拡散電極6、セパレータA7、セパレータB8、アノードシール材9−1、アノードシール材9−2、カソードシール材10−1、カソードシール材10−2、上流液溜部11、下流液溜部12、上流シール材A13−1、上流シール材A13−2、下流シール材A14−1、下流シール材A14−2、上流シール材B15−1、上流シール材B15−2、下流シール材B16−1、下流シール材B16−2、循環液流通口A17、循環液流通口B18、循環液流通口C19、循環流通口D20を具備する。
【0028】
また、図4は、固体高分子電解質膜1を含めた図1の左側半分(カソード側)に関する斜投影図である。
液流路2を有する固体高分子電解質膜1、カソード触媒層5の形成されたカソードガス拡散電極6、カソードシール材10−1〜カソードシール材10−4、上流シール材B15−1〜上流シール材B15−4、下流シール材B16−1〜下流シール材B16−4、循環液流通口B18及び循環流通口D20を有するセパレータB8を具備する。
なお、固体高分子電解質膜1を含めた図1の右側半分(アノード側)については、カソード側と対称である他は、カソード側と同様であるのでその説明を省略する。
【0029】
本発明においては、アノード(アノード触媒層3、アノードガス拡散電極4)とカソード(カソード触媒層5、カソードガス拡散電極6)と電解質膜(固体高分子電解質膜1)とで形成される電気化学セル(本実施例では燃料電池セル)において、電解質膜中に液体の通過が可能な空間(液流路2)を設ける。そして、そこに循環液(硫酸水溶液のような酸性の溶液;後述する循環液25)を通過させる。電解質膜中に酸性の溶液が常時循環することにより、イオン導電性を高く保つことが可能となる。また、水溶液を流すことで、電解質膜中の水分量を一定に保ち、その分布を解消することが可能となる。すなわち、膜の内部で水分調整を行なうので、電極での加湿用水分の量を低減することができ、電極における水分の流通がスムースとなる。そして、ガス拡散も良好に行なうことが可能となる。以上の効果により、発電効率の向上を図ることも可能となる。
【0030】
図1、図3及び図4を用いて、その構成について説明する。
図1を参照して、固体高分子電解質膜1は、アノード側の水素ガスとカソード側の酸素ガスとの電気化学反応による発電(電池反応)に寄与する電解質膜である。アノード触媒層3とカソード触媒層5との間にある。固体高分子電解質膜1は、イオン交換樹脂で出来ている。好ましくは、フッ素系イオン交換膜であるパーフルオロスルホン酸膜(perfluorosulfonic acid membrane)である。本実施例では、ナフィオン膜(登録商標:Du Pont社)を用いる。内部には、液流路2(後述)を有する。厚み及び大きさは、必要とする電力(電流、電圧)及び電池性能に基づいて設計される。本実施例では、大きさは、15cm×15cmの矩形、厚みは、20〜150μmである。アノード触媒層3とカソード触媒層5よりも、一回り大きい(余剰部は、ガスシール用)。
【0031】
液流路2は、液体を入れ再び出すことの可能(液体が通過可能)な空間である。固体高分子電解質膜1の内部に形成されている。固体高分子電解質膜1の厚み方向の面(第1面)に、その空間に接続した第1開口部としての入口側の開口部と、第1面とは異なる厚み方向の面(第2面)に、その空間に接続した第2開口部としての出口側の開口部を有する。本実施例における液流路2の具体的な形状を、図3を用いて説明する。
【0032】
図3は、本実施例における固体高分子電解質膜1の構造を示す図である。平面図である図3(b)のA−A’面で切断したものが、断面図である図3(a)である。
図3を参照して、矩形の固体高分子電解質膜1は、厚み方向の面である第1面1−1と第2面1−2と空間としての液流路A2−1(液流路2)とを有する。液流路A2−1の一端部は、固体高分子電解質膜1の一辺側(第1面1−1)に達し入口側の開口部となり、他端部は、その一辺に対向する他辺側(第2面1−2)に達し出口側の開口部となる。そして、概ね直線の液流路A2−1が、互いに交わらないようにして複数形成されている。一端部からは、液体が流入し、他端部から流出することが可能である。液流路A2−1のサイズは、例えば、ピッチL1は、10mmであり、形状は5μmの円筒状である。液流路A2−1のある領域の両脇には、ガスシールのための領域(幅L2)が設けられている。
【0033】
液流路A2−1同士の間隔(1層1列の場合はピッチL1)を間隔PBmmとし、液流路A2−1の内径を直径DBμmとすれば、液流路A2−1に酸性の溶液を流通させた場合、効果がある範囲として、その比RB=PB/DBが、0.1≦RB≦10であることが望ましい。より好ましくは、0.5≦RB≦5である。この範囲より大きくなる(=Pが大きくなる)と、間隔が広くなりすぎて、膜全体に酸性の溶液が行き渡らず、酸性の溶液を循環させる効果が少なくなる。また、この範囲より小さくなる(=Pが小さくなる)と、液流路A2−1の占める体積が大きくなり、電池効率や強度的な問題等で好ましくない。
【0034】
また、図3(b)において、液流路A2−1は、一列分並んでいる。しかし、図3(c)に示すように、2列あるいはそれ以上の液流路A2−1’を積み重ねることも可能である。図3(c)は、3列積み重ねている。その場合、固体高分子電解質膜1全体に、より均一に、酸性の溶液を供給することが可能となる。この場合にも、液流路A2−1’同士の間隔と液流路A2−1’の内径(直径)との関係は、上述の範囲が望ましい。
【0035】
図1を参照して、アノード触媒層3は、供給される水素ガスをイオン化する機能を有する触媒で形成されている。また、固体高分子電解質膜1とアノードガス拡散電極4とを電気的に接続する機能も有する。固体高分子電解質膜1とアノードガス拡散電極4との間にあり、アノードガス拡散電極4の一表面上に形成される。本実施例では、カーボン微粒子又は多孔体を担体とするルテニウム添加の白金系触媒である。大きさは、固体高分子電解質膜1よりもやや小さい大きさである。そしてセパレータA7(後述)の溝部の領域とほぼ同等の面積を有する。厚みは、20〜50μmである。
【0036】
アノードガス拡散電極4は、セパレータA7とアノード触媒層3(及び固体高分子電解質膜1)とを電気的に接続する導体である。また、セパレータA7を介して供給される水素ガス又は水素ガスを含むガス及び水分(水蒸気を含む、以下同じ)をアノード触媒層3へ均一に分布を少なくして供給する機能を有する。アノード触媒層3とセパレータA7との間にある。導電性の多孔体を用いる。本実施例では、多孔体のカーボン板にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テフロン(登録商標)のディスパージョン溶液を含浸処理して、撥水化したものを用いる。大きさはアノード触媒層3と同じ面積を有し、厚みは約150μmである、薄板状の形状である。
【0037】
カソード触媒層5は、供給される酸素ガスと固体高分子電解質膜1を経由してくる水素イオンとを反応させ水を生成する機能を有する触媒で形成されている。また、固体高分子電解質膜1とカソードガス拡散電極6とを電気的に接続する機能も有する。固体高分子電解質膜1とカソードガス拡散電極6との間にあり、カソードガス拡散電極6上に形成される。本実施例では、カーボン微粒子又は多孔体を担体とする白金系触媒である。大きさは、固体高分子電解質膜1よりもやや小さい大きさである。そしてセパレータB8(後述)の溝部の領域とほぼ同等の面積を有する。厚みは、20〜50μmである。
【0038】
カソードガス拡散電極は、セパレータB8とカソード触媒層5(及び固体高分子電解質膜1)を電気的に接続する導体である。また、セパレータB8を介して供給される酸素ガス又は酸素ガスを含むガス(空気など)をカソード触媒層5へ均一に分布を少なくして供給する機能を有する。カソード触媒層5とセパレータB8との間にある。導電性の多孔体を用いる。本実施例では、多孔体のカーボン板にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テフロン(登録商標)のディスパージョン溶液を含浸処理して、撥水化したものを用いる。大きさは、カソード触媒層5と同じ面積を有し、厚みは、約150μmである、薄板状の形状である。
【0039】
セパレータA7及びセパレータB8は、燃料電池セル同士を分離し、相互にガスが流通し無いようにする。そして、隣り合う燃料電池セル同士を電気的に接続する。燃料電池セルの最外側の、それぞれカソード側及びアノード側に存在する。形状は、薄板状である。そして、表面及び裏面の中央付近において、各ガス拡散電極と同程度の領域内に平行に走る複数の溝を有する溝部41(後述)がある。そして、その溝に沿って水素ガスあるいは酸素ガスを、各ガス拡散電極に各ガスを概ね均等に分配し、生成(残存)ガスを外部に排出する。また、後述する循環液流通口A17と循環液流通口C19、及び循環液流通口B18と循環流通口D20の孔が貫通している。カーボンのコンポジット、チタン、ステンレスなどの導電性の材料で作製する。本実施例では、カーボンのコンポジットである。大きさは、固体高分子電解質膜1よりも、ひと回り大きい矩形形状をしている。
【0040】
循環液流通口A17及び循環液流通口C19は、セパレータA7を貫通する孔である。循環液流通口A17は、隣接する図1と同様の燃料電池セルの上流液溜部から上流液溜部11(後述)へ循環液25(後述)を供給する際に、液を通す孔である。循環液流通口C19は、下流液溜部12(後述)から隣接する燃料電池セルの下流液溜部へ循環液25を送出する際に、液を通す孔である。孔は、それぞれ複数個有る。本実施例では、それぞれ、内径10mmφ×5個である。
【0041】
循環液流通口B18及び循環流通口D20は、セパレータB8を貫通する孔である。循環液流通口B18は、上流液溜部11から隣接する燃料電池セルの上流液溜部へ循環液を供給する。循環液流通口D20は、隣接する燃料電池セルの下流液溜部から下流液溜部12へ循環液を送出する。孔は、それぞれ複数個有る。本実施例では、それぞれ、内径10mmφ×5個である。
【0042】
図4を参照して、セパレータB8(セパレータA7も同様)の構造を説明する。循環液流通口B18(循環液流通口A17も同様である)は、セパレータB8の図4での上方に、頂辺に平行に形成されている(本実施例では、内径10mmφ×5個)。また、循環流通口D20(循環液流通口C19も同様である)は、セパレータB8の図4での下方に、底辺に平行に形成されている(本実施例では、内径10mmφ×5個)。また、その中央付近に、複数の溝が底辺に平行に形成された溝部41を有する。溝の領域の外側には、燃料ガス(水素ガス及び水分)又は酸化剤ガス(酸素)を供給するためのガス導入口42−1〜42−2と、残余のガスを排出するガス排出口42−3〜42−4が開口している。
【0043】
図1を参照して、アノードシール材9−1及びアノードシール材9−2は、アノード側のガスが、燃料電池セル30のアノード側から外部へ流出することを防止する。固体高分子電解質膜1とセパレータA7との間にある。燃料電池セル30の発電領域(固体高分子電解質膜1、アノード触媒層3、アノードガス拡散電極4、カソード触媒層5、カソードガス拡散電極6で形成される発電を行なう領域)のうち、アノード側を囲む矩形のリング形状である。アノードシール材9−1が矩形の一辺であり、アノードシール材9−2が矩形の対向する一辺である。シール材として、ゴムや柔軟な樹脂のような弾性体を用いる。本実施例では、バイトン(登録商標)ゴムを用いる。
【0044】
カソードシール材10−1及びカソードシール材10−2は、カソード側のガスが、燃料電池セル30のカソード側から外部へ流出することを防止する。固体高分子電解質膜1とセパレータB8との間にある。燃料電池セル30の発電領域のうち、カソード側を囲む矩形のリング形状である。カソードシール材10−1が矩形の一辺であり、カソードシール材10−2が矩形の対向する一辺である。シール材として、ゴムや柔軟な樹脂のような弾性体を用いる。本実施例では、バイトン(登録商標)ゴムを用いる。
【0045】
図4を参照して、カソードシール材10(アノードシール材9も同様)について更に説明する。形状は、矩形であり、上側の辺はカソードシール材10−1、対向する下側の辺はカソードシール材10−2、上辺と下辺を結ぶ垂直な辺の内一方はカソードシール材10−3、他方はカソードシール材10−4である。ガスをリークさせないようにカソード側の領域を囲んでいる。
【0046】
図1を参照して、上流液溜部11は、セパレータA7の有する循環液流通口A17から、循環液25の供給を受け、この領域に溜める。そして、循環液25を固体高分子電解質膜1の液流路2へ供給する。また、循環液流通口B18を介して隣接する燃料電池セルの上流液溜部へ循環液25を供給する。固体高分子電解質膜1とセパレータA7と上流シール材A13−1と上流シール材A13−2とセパレータB8と上流シール材B15−1と上流シール材B15−2とで囲まれた領域(空間)である。
【0047】
下流液溜部12は、固体高分子電解質膜1の有する液流路2から、又は、隣接の燃料電池セルから循環液流通口D20から送出された固体高分子電解質膜1を通過した循環液25が下流液溜部12に溜まる。そして、溜まった循環液25を、循環液流通口C19を介して隣接する燃料電池セルの下流液溜部へ送出する。固体高分子電解質膜1とセパレータA7と下流シール材A14−1と下流シール材A14−2とセパレータB8と下流シール材B16−1と下流シール材B16−2とで囲まれた領域(空間)である。
【0048】
上流シール材A13−1及び上流シール材A13−2は、上記上流液溜部11を形成する。そして、上流液溜部11の循環液25が、燃料電池セル30のアノード側及び外部へ流出することを防止する。上流シール材A13−1は、固体高分子電解質膜1とセパレータA7との間にある。上流シール材A13−2は、セパレータA7と上流シール材B15−2との間にある。矩形のリング形状である。上流シール材A13−1が矩形の一辺であり、上流シール材A13−2が矩形の対向する一辺である。シール材として、ゴムや柔軟な樹脂のような弾性体を用いる。本実施例では、バイトン(登録商標)ゴムを用いる。上流シール材A13−1及び上流シール材A13−2は、上流シール材B15−1及び上流シール材B15−2と向かい合わせにある。
【0049】
上流シール材B15−1及び上流シール材B15−2は、上記上流液溜部11を形成する。そして、上流液溜部11の循環液25が、燃料電池セル30のカソード側及び外部へ流出することを防止する。上流シール材B15−1は、固体高分子電解質膜1とセパレータB8との間にある。上流シール材B15−2は、セパレータB8と上流シール材A13−2との間にある。矩形のリング形状である。上流シール材B15−1が矩形の一辺であり、上流シール材B15−2が矩形の対向する一辺である。シール材として、ゴムや柔軟な樹脂のような弾性体を用いる。本実施例では、バイトン(登録商標)ゴムを用いる。上流シール材B15−1及び上流シール材B15−2は、上流シール材A13−1及び上流シール材A13−2と向かい合わせにある。
【0050】
図4を参照して、上流シール材B15(上流シール材A13も同様)について更に説明する。形状は、矩形であり、上側の辺は上流シール材B15−1、対向する下側の辺は上流シール材B15−2、上辺と下辺を結ぶ垂直な辺の内一方は上流シール材B15−3、他方は上流シール材B15−4である。上流シール材A13と共に、上流液溜部11の循環液25が外部にリークしないように、循環液25を保持している。
【0051】
図1を参照して、下流シール材A14−1及び下流シール材A14−2は、上記下流液溜部12を形成する。そして、下流液溜部12の循環液25が、燃料電池セル30のアノード側及び外部へ流出することを防止する。下流シール材A14−1は、固体高分子電解質膜1とセパレータA7との間にある。下流シール材A14−2は、セパレータA7と下流シール材B16−2との間にある。矩形のリング形状である。下流シール材A14−1が矩形の一辺であり、下流シール材A14−2が矩形の対向する一辺である。シール材として、ゴムや柔軟な樹脂のような弾性体を用いる。本実施例では、バイトン(登録商標)ゴムを用いる。下流シール材A14−1及び下流シール材A14−2は、下流シール材B15−1及び下流シール材B15−2と向かい合わせにある。
【0052】
下流シール材B16−1及び下流シール材B16−2は、上記下流液溜部12を形成する。そして、下流液溜部12の循環液25が、燃料電池セル30のカソード側及び外部へ流出することを防止する。下流シール材B16−1は、固体高分子電解質膜1とセパレータB8との間にある。下流シール材B16−2は、セパレータB8と下流シール材A16−2との間にある。矩形のリング形状である。下流シール材B16−1が矩形の一辺であり、下流シール材B16−2が矩形の対向する一辺である。シール材として、ゴムや柔軟な樹脂のような弾性体を用いる。本実施例では、バイトン(登録商標)ゴムを用いる。下流シール材B15−1及び下流シール材B15−2は、下流シール材A14−1及び下流シール材A14−2と向かい合わせにある。
【0053】
図4を参照して、下流シール材B16(下流シール材A14も同様)について更に説明する。形状は、矩形であり、上側の辺は下流シール材B16−1、対向する下側の辺は下流シール材B16−2、上辺と下辺を結ぶ垂直な辺の内一方は下流シール材B16−3、他方は下流シール材B16−4である。下流シール材A14と共に、下流液溜部12の循環液25が外部にリークしないように、循環液25を保持している。
【0054】
図1で示すセパレータ(A7及びB8)で囲まれた燃料電池セル30は、隣接する燃料電池セル(図示せず)とセパレータを共用して、燃料電池セルが直列に複数並べられた燃料電池スタックを形成する(図では1セルのみ表示)。そして、循環液流通口A17から循環液である酸性の溶液が上流液溜部11へ供給される。循環液は、一部は固体高分子電解質膜1の液流路2へ進入する。残りは、循環液流通口B18から隣接する燃料電池セルの上流液溜部へ供給される。固体高分子電解質膜1の液流路2へ進入した循環液は、固体高分子電解質膜1中の水分濃度を調整しながら進み、下流液溜部12へ達する。そして、隣接する燃料電池セルの下流液溜部より循環液流通口D20経由で来る使用済み循環液と一緒になり、循環液流通口C19から隣接する燃料電池セルの下流液溜部へ送出される。
【0055】
次に、循環液25について説明する。
図2は、本発明である電気化学セル用電解質膜及び電気化学セルの実施の形態に関わる循環液の循環システムの構成を示す図である。循環制御部21、ポンプ27及び固体高分子電解質膜1を含む燃料電池スタック24、循環管路26−1〜26−3を具備する。本図では、ガスの供給系、電気の集電系の構成は省略している。
【0056】
循環システムは、循環制御部21において、燃料電池スタック24から送出された使用済みの循環液25について、その濃度を調整する。そして、予め設定された基準濃度の循環液25に再生し、ポンプ27で再び循環液25を燃料電池スタック24へ供給する。
【0057】
図2を参照して、循環制御部21は、内部に供給される循環液25の酸性濃度を、予め設定した値に調整する。濃度測定部28と、濃度調整部29とを具備する。
濃度測定部28は、濃度調整部29の前後の循環液25の酸性濃度を測定する。例えば、pHメーターである。
濃度調整部29は、測定された酸性濃度と、予め設定された酸性濃度である基準酸性濃度(図示しない記憶部に保持)とに基づいて、循環液25の濃度を基準酸性濃度に調整する。例えば、高濃度又は低濃度の酸性の溶液を加える方法や、蒸留する方法、膜分離による方法などを用いフィードバック法で制御する。
【0058】
ポンプ27は、循環系の循環液25を所定の速度で循環させる。ポンプの回転数により流量を制御することが可能である。図示しない制御部により、基準酸性濃度と発電状態に基づいて流量が制御される。
燃料電池スタック24は、図1で説明した燃料電池セル30を、複数重ねて出力をアップした燃料電池である。図2中では、液流路2を有する固体高分子電解質膜1、水素ガス22及び酸素ガス23のみを模式的に示している。
循環管路26−1〜26−3は、循環液25を循環させる配管である。循環管路26−1は、一端部を循環制御部21に接続し、他端部をポンプ27に接続している。循環管路26−2は、一端部をポンプ27に、他端部を燃料電池スタック24に接続している。循環管路26−3は、一端部を燃料電池スタック24に、他端部を循環制御部21に接続している。
【0059】
ここで、循環液25は、酸性(ルイス酸)の溶液である。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸の水溶液や、これらの混合液である。好ましくは、硫酸の水溶液である。固体高分子電解質膜として好ましいパーフルオロスルホン酸膜における、スルホン酸基を補強することが可能なためである。
酸性濃度は、低い場合には、固体高分子電解質膜1へのイオン導電性付与の効果が少なく、高い場合には、配管や燃料電池セル30内の部材の腐食等の問題が発生する。従って、好ましくは3〜5規定(3N〜5N)である。より好ましくは3.5〜4.5規定である。本実施例では、4規定(4N)の硫酸水溶液を用いる。
【0060】
次に、本発明である電気化学セル用電解質膜の製造方法について、図3を用いて説明する。
図3に示す構造は、以下のようにして形成する。
(1)固体高分子電解質膜の膜Aを用意する。膜Aは、イオン交換樹脂製である。好ましくは、フッ素系イオン交換膜であるパーフルオロスルホン酸膜である。本実施例では、ナフィオン膜(登録商標:Du Pont社)を用いる。所望の大きさ及び厚みのものを用いる。本実施例では、大きさは、15cm×15cmの矩形、厚みは、20〜100μmである。
(2)膜A上に、複数の金属線を、概ね平行に等間隔に配置する。金属線の両端は、膜Aからはみ出すようにする。金属線は、後に膜Aから化学的に溶解除去するので、膜Aが溶けない化学薬品で溶解可能な金属である。本実施例では、鉄を用いる。金属線の直径は、膜Aの厚みの2倍よりも小さい大きさである。後のプロセスで、膜を重ねるため、金属線の直径を最終的な膜の厚み以下にするのが望ましいためである。本実施例では、10μmとする。
また、液流路A2−1同士の間隔(1列の場合はピッチL1)PBmmと直径DBμmとの望ましい範囲として、その比RB=PB/DBが、0.1≦RB≦10、より好ましくは、0.5≦RB≦5であることから、金属線同士の間隔PAmmと直径DAμmとの望ましい範囲として、その比RA=PA/DAが、0.1≦RA≦10、より好ましくは、0.5≦RA≦5となる。
従って、間隔PA=配置間隔L1は、本実施例では、10mm間隔である。
(3)金属線を配置された膜A上に、別の固体高分子電解質膜の膜Bを重ねる。膜Bは、膜Aと同等の膜を用いる。ただし、膜厚や大きさ、膜の種類が異なっていても良い。また、重ねる際、有機溶媒中に溶解させた液状のイオン交換樹脂(例えば、ナフィオン(登録商標)のソリュージョン)を接着用の助材として用いても良い。
(4)(3)で準備した膜A、金属及び膜Bに対して、ホットプレスを行なう。本実施例では、プレス条件は、処理温度160〜180℃、処理圧力100kg/cm2である。
(5)ホットプレスされた膜を、化学溶媒中に浸し、膜中の金属を溶解する。本実施例では、化学溶媒として塩酸を用い、膜中の鉄分を溶解除去する。
以上の処理により、図3に示すような固体高分子電解質膜1が完成する。
【0061】
ここで、図3(c)のように液流路を複数列積み重ねる場合には、(1)において、最終膜厚を考慮して、固体高分子電解質膜の膜厚をやや薄めにする。そして、(2)−(3)の工程を、積み重ねる回数だけ行うことにより、実施することが可能である。この場合、膜内における液流路の分布が向上し、酸性の溶液を万遍無く固体高分子電解質膜に供給することが可能となる。
【0062】
また、上記製造工程における(2)において、格子状(あるいは網目状)の金属線を用いることも可能である。すなわち、(2)における平行に配置された金属線に対して、垂直方向にも金属線を配置し、格子状(あるいは網目状)にする。ただし、垂直方向に置く金属線は、固体高分子電解質膜1よりもL2×2の長さ分だけ短くし、両脇の部分に流通路ができないようにする。垂直方向の配置間隔L3は、膜Aの強度に影響がなく、循環液25が出来るだけ広い領域に行き渡るような大きさとする。本実施例では、10mm間隔である。初めから格子状(あるいは網目状)の金属線を置いても良い。
そして、残りの工程を、上記(3)〜(5)のようにすると、図5に示すような格子状(あるいは網目状)の流通路を有する固体高分子電解質膜を得ることが出来る。また、膜内における液流路の分布を向上させるため既述の工程により、図3(c)のように、流通路を複数列積み重ねても良い。
【0063】
また、金属線の形状は、格子状の他に、櫛状、樹枝状にすることも可能である。いずれの場合にも、事前に櫛状、格子状、樹枝状の金属線を用意し、上記(2)の工程において、膜A上にのせることで実施することが可能である。
【0064】
上記櫛状、格子状、樹枝状の金属線を用いることで、一本ずつ並べる手間が掛からない、循環液25を固体高分子電解質膜1全体に均一に供給できるので循環液25の効果がより大きくなる、等の利点がある。
【0065】
更に、上記製造工程における(2)において、粒子状の金属を用いることも可能である。すなわち、(2)におけるた金属線の代りに、金属微粒子を含有するペーストを塗布し乾燥したものを用いる。ペーストは、所定の粒径の金属粒子と、イオン交換樹脂(好ましくは、フッ素系イオン交換樹脂であるパーフルオロスルホン酸、ナフィオン(登録商標)など)の同程度の大きさの粒子と、有機溶媒とを混合したものを用いる。塗布領域は、上記工程における金属線を配置した領域である。本実施例では、塗布方法としてスクリーン印刷法を用いる。また、金属粒子の大きさとして、20〜50μmを用いる。金属粒子を塗布した後、乾燥して有機溶媒を除去する。
そして、残りの工程を、上記(3)〜(5)のようにすると、図6に示すようなランダムなの流通路を有する固体高分子電解質膜を得ることが出来る。また、膜内における液流路の分布を向上させるため既述の工程により、図3(c)のように、流通路を複数列積み重ねても良い。
【0066】
上記ペースト塗布法は、ペーストをスクリーン印刷で塗布するだけで良いので製造方法が容易、ランダムであるが、膜全体に均一に液流路2を形成可能である。従って、循環液25を固体高分子電解質膜1全体に均一に供給できるので循環液25の効果がより大きくなる、等の利点がある。
【0067】
次に、電気化学セル用電解質膜を用いた燃料電池セル(電気化学セル)の製造方法及び燃料電池セル(電気化学セル)循環システムについて、図1、図2及び図4を用いて説明する。
▲1▼液流路2を有する固体高分子電解質膜1を、既述の(1)〜(5)の方法により作製する。
▲2▼アノード触媒層3を形成したアノードガス拡散電極4と、カソード触媒層5を形成したカソードガス拡散電極6とにより、▲1▼の固体高分子電解質膜1を挟み、燃料電池の基本セル(アノード触媒層3を形成したアノードガス拡散電極4と、固体高分子電解質膜1と、カソード触媒層5を形成したカソードガス拡散電極6とで構成されるセル)を形成する。
▲3▼セパレータB8上に、カソードシール材10、上流シール材B15及び下流シール材B16を載せ、その上に▲2▼の燃料電池の基本セルを載せる(図4)。
▲4▼そして、▲3▼の上に、カソードシール材9、上流シール材A13及び下流シール材A14を載せ、その上にセパレータA7を載せる。以上により、図1に示す電気化学セル用電解質膜を用いた燃料電池セル30が完成する。
▲5▼更に、カソード側及びアノード側のセパレータを隣接する燃料電池の基本セルと共用する。これにより、複数の燃料電池セル30からなる燃料電池スタック24が完成する。
▲6▼燃料電池スタック24の各上流液溜部につながる2つの循環液供給口の一方を閉じ、他方に循環系(図2)の配管を接続する。また、下流液溜部につながる2つの循環液供給口の一方を閉じ、他方に循環系の配管を接続する。
▲7▼循環系にポンプ27と循環制御部21を接続し、燃料電池セル循環システムが完成する。
なお、電気系、燃料及び空気の供給系は省略している。
【0068】
本発明である電気化学セル用電解質膜を用いた電気化学セルの実施の形態の動作(運転方法)について、図1及び図2を用いて説明する。
(i)図1に示す燃料電池セル30を複数有する燃料電池システムが、図2のように、循環管路26−1〜26−3に接続されている。
(ii)循環制御部21は、予め設定された基準酸性濃度に基づいて、循環液25の濃度を調整する。それと共に、ポンプ27により、循環管路26−1〜26−3に循環液25を循環させる。
(iii)循環管路26−2を介して燃料電池スタック24へ、循環液25が供給される。供給された循環液25は、図1における循環液流通口A17より上流液溜部11へ供給される。
(iv)上流液溜部11の循環液25の一部は、固体高分子電解質膜1の液流路2の中に侵入する。
(v)循環液25は、液流路2を通過しながら、固体高分子電解質膜1中のイオン導電性を向上させる。すなわち、酸性の溶液の供給により、水素イオンが供給されるので、水素イオン導電性が向上する。
また、固体高分子電解質膜1中の水分を調整する。すなわち、水分濃度が少ない場合には、その部分へ酸性の水溶液である循環液25が浸透する。従って、水分の不足している部分には酸性度の高い循環液25が供給され、イオン導電率の回復が速い。また、水分濃度が高い場合には、酸性度の高い循環液25の濃度を低下させるように膜中の水分が液流路2へ供給される。従って、膜中の水分が過剰な部分が解消され、水分は一定の濃度に保たれる。
(vi)上流液溜部11の循環液25の残りは、隣接する燃料電池単セルの上流液溜部へ供給される。そして、その一部はその固体高分子電解質膜1の液流路2の中に侵入し、残りは更にその隣の燃料電池単セルの上流液溜部へ供給される。最終的には、循環液25は、どれかの燃料電池セルの固体高分子電解質膜1中へ供給される。
(vii)液流路2を経由した使用済みの循環液25は、下流液溜部12へ送出される。そして、そこから循環液流通口Cを介して、再び循環管路26−3へ戻される。隣接する他の燃料電池セルからの使用済みの循環液25も、隣接する下流液溜部を経由して、再び循環管路26−3へ戻される。
(viii)循環管路26−3へ戻された循環液25は、循環制御部21へ戻る。循環制御部21では、戻ってきた使用済みの循環液25の濃度を計測する。そして、測定結果と予め設定している基準酸性濃度とを比較する。そして、比較結果に基づいて、使用済みの循環液25の酸性濃度を基準酸性濃度になるように、循環液25の再生処理(濃度調整)を行う。
(ix)再生された循環液25をリサイクルし、ポンプ27により再び循環管路26−1及び26−2を経由して、燃料電池スタック24へ送出する。
【0069】
上記運転により、循環液中の酸性成分の供給で、イオン導電率を高く保つことができ、燃料電池の発電効率を高めることが可能となる。それに加えて、固体高分子電解質膜1の膜中に発生し易い水の膜中での分布を解消することができ、内部の水分量を安定的に保つことが可能となる。
【0070】
また、固体高分子電解質膜1の膜中の水分調整を、燃料ガス及び酸化剤ガスを加湿して行なう必要が無くなる、又は加湿量が少なくて済む。従って、アノード側及びカソード側での水分量が少なくなり、そこで用いられる水分の循環を良好に行なうことが出来る。また、それに伴い、アノード側及びカソード側でのガスの移動を良好に行なうことが可能となる。それらの要因により、燃料電池の発電効率を高めることが可能となる。
【0071】
本実施例では、燃料電池について、説明を行なっているが、燃料電池と逆の水の電気分解による水素ガスおよび酸素ガスの生成においても、同様の効果を得ることが可能である。
【0072】
【発明の効果】
本発明により、内部の水分量を安定に保ちつつ、固体高分子電解質膜のイオン導電率を高く保つことができ、電気化学セルの運転効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明である電気化学セル用電解質膜及び電気化学セルの実施の形態に関わる燃料電池セルの構成を示す断面図である。
【図2】本発明である電気化学セル用電解質膜及び電気化学セルの実施の形態に関わる循環液の循環システムの構成を示す図である。
【図3】(a)(b)(c)本発明の電気化学セル用電解質膜の実施の形態に関わる固体高分子電解質膜の構造を示す図である。
【図4】本発明の電気化学セル用電解質膜及び電気化学セルの実施の形態の構成を示す斜投影図である。
【図5】(a)(b)本発明の電気化学セル用電解質膜の実施の形態に関わる固体高分子電解質膜の他の構造を示す図である。
【図6】(a)(b)本発明の電気化学セル用電解質膜の実施の形態に関わる固体高分子電解質膜の更に他の構造を示す図である。
【図7】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
1 固体高分子電解質膜
1−1 第1面
1−2 第2面
2 液流路
2−1 液流路A
2−1’ 液流路A
2−2 液流路B
2−3 液流路C
3 アノード触媒層
4 アノードガス拡散電極
5 カソード触媒層
6 カソードガス拡散電極
7 セパレータA
8 セパレータB
9 アノードシール材
10 カソードシール材
11 上流液溜部
12 下流液溜部
13 上流シール材A
13−1 上流シール材A
13−2 上流シール材A
13−3 上流シール材A
13−4 上流シール材A
14 下流シール材A
14−1 下流シール材A
14−2 下流シール材A
14−3 下流シール材A
14−4 下流シール材A
15 上流シール材B
15−1 上流シール材B
15−2 上流シール材B
15−3 上流シール材B
15−4 上流シール材B
16 下流シール材B
16−1 下流シール材B
16−2 下流シール材B
16−3 下流シール材B
16−4 下流シール材B
17 循環液流通口A
18 循環液流通口B
19 循環液流通口C
20 循環液流通口D
21 循環制御部
22 水素ガス
23 酸素ガス
24 燃料電池スタック
25 循環液
26 循環管路
26−1 循環管路
26−2 循環管路
26−3 循環管路
27 ポンプ
28 濃度測定部
29 濃度調整部
30 燃料電池セル
41 溝部
42−1 ガス導入口
42−2 ガス導入口
42−3 ガス排出口
42−4 ガス排出口
101 通路
102 固体高分子電解質膜
103 アノード電極
104 カソード電極
Claims (13)
- 酸性の溶液の濃度を測定するステップと、
前記濃度測定の測定結果と予め設定された基準濃度とから、前記酸性の溶液を前記基準濃度に調整するステップと、
前記基準濃度に調整された前記酸性の溶液を、電気化学セルの固体高分子電解質膜の内部へ供給するステップと、
前記固体高分子電解質膜の内部を通過した前記酸性の溶液を前記電気化学セルから送出するステップと、
を具備する、
電気化学セルの運転方法。 - 前記酸性の溶液の基準濃度は、3乃至5規定である、
請求項1に記載の電気化学セルの運転方法。 - 前記酸性の溶液は、硫酸、塩酸、硝酸及び酢酸の内、少なくとも一つを含む、
請求項1又は2に記載の電気化学セルの運転方法。 - 前記電気化学セルは、
外部から酸性の溶液を供給され、前記酸性の溶液を送出する上流液溜部と、
膜端部に現れる膜厚方向に平行な第1面に開口する第1開口部と、前記第1面と異なる前記膜厚方向に平行な第2面に開口する第2開口部とを含み、前記酸性の溶液が通過可能な空間を備え、前記上流液溜部に前記第1開口部を開放して接続し、前記第1開口部から前記酸性の溶液を前記空間の内部へ流通させ、前記第2開口部から前記酸性の溶液を排出する固体高分子電解質膜と、
前記第2開口部を開放されて接続され、前記第2開口部から排出された前記酸性の溶液を外部へ排出する下流液溜部と
を備える
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気化学セルの運転方法。 - 外部から酸性の溶液を供給され、前記酸性の溶液を送出する上流液溜部と、
膜端部に現れる膜厚方向に平行な第1面に開口する第1開口部と、前記第1面と異なる前記膜厚方向に平行な第2面に開口する第2開口部とを含み、前記酸性の溶液が通過可能な空間を備え、前記上流液溜部に前記第1開口部を開放して接続し、前記第1開口部から前記酸性の溶液を前記空間の内部へ流通させ、前記第2開口部から前記酸性の溶液を排出する固体高分子電解質膜と、
前記第2開口部を開放されて接続され、前記第2開口部から排出された前記酸性の溶液を外部へ排出する下流液溜部と、
前記上流液溜部と前記下流液溜部とに接続された前記酸性の溶液を循環させる酸性溶液循環系と
を具備する、
電気化学反応システム。 - 前記酸性溶液循環系は、
酸性の溶液が循環する配管である循環管路と、
前記循環管路の途中に接続され、前記酸性の溶液の濃度を測定し、前記濃度測定の結果と予め設定された基準濃度とから、前記酸性の溶液を前記基準濃度に調整して前記循環管路へ送出する循環制御部と
を具備し、
前記上流液溜部及び前記下流液溜部は、前記循環管路の途中に接続され、
前記上流液溜部は、前記基準濃度に調整された前記酸性の溶液の供給を受け、
前記下流液溜部は、前記排出された前記酸性の溶液を前記循環管路へ送出する
請求項5に記載の電気化学反応システム。 - 前記空間は、互いに交わることがない複数の細管である、
請求項5に記載の電気化学反応システム。 - 前記細管の同士の間隔PBmmと直径DBμmとの比R=PB/DBは、0.1≦RB≦10である、
請求項7に記載の電気化学反応システム。 - 前記空間は、櫛状、格子状、樹枝状の少なくとも一つの形状を含む細管である、
請求項5に記載の電気化学反応システム。 - 電気化学セルに用いる複数の固体高分子電解質膜を、間に金属線又は金属粒子を挟んで一つに重ねるステップと、
前記金属線又は前記金属粒子を挟んだ前記複数の固体高分子電解質膜をホットプレスで一体化するステップと、
前記一体化された前記固体高分子電解質膜中の前記金属線又は前記金属粒子を溶かして除去し、酸性の溶液用の流路を形成するステップと、
を具備する電気化学セル用電解質膜の製造方法。 - 前記金属線は、複数あり、互いに交わらないように配置されている、
請求項10に記載の電気化学セル用電解質膜の製造方法。 - 前記金属線の同士の間隔PAmmと直径DAμmとの比RA=PA/DAは、0.1≦RA≦10である、
請求項11に記載の電気化学セル用電解質膜の製造方法。 - 前記金属線は、櫛状、格子状、樹枝状の少なくとも一つの形状を含む、
請求項10に記載の電気化学セル用電解質膜の製造方法。
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