次に、図面を参照し、本発明に係る実施形態のディスク収納ケースについて説明する。本実施形態のディスク収納ケースは、CD、DVD、BD等の記録媒体ディスクを収納するケースである。
(実施形態1)
図1は実施形態1におけるディスク収納ケースの分解斜視図を示すものである。
図1に示す如く、本実施形態のディスク収納ケース1は、一端縁同士が互いに連結され、開閉自在な表側ケース半体3と裏側ケース半体4とからなり、裏側ケース半体4には記録媒体ディスク(図示しない)が嵌め込まれて収納される略円盤状のディスク収納凹部2aを有するディスクトレイ2が着脱自在に嵌め込まれている。このディスク収納凹部2aの中央部には、記録媒体ディスクの中央開口部側を着脱自在に保持するディスククランパ2bが設けられている。
また、表側ケース半体3は略扁平な平坦部3aと、この平坦部3aの両側にそれぞれ着脱可能に係合された一対の側壁3b、3cとで構成されている。この平坦部3aの外側表面全体にはインク受容層が設けられている。
(実施形態2)
図2は実施形態2におけるディスク収納ケースの分解斜視図を示すものである。
図2に示す如く、本実施形態のディスク収納ケース1は、一端縁同士が互いに連結され、開閉自在な表側ケース半体3と裏側ケース半体4とからなり、裏側ケース半体4には記録媒体ディスク(図示しない)が嵌め込まれて収納される略円盤状のディスク収納凹部2aを有するディスクトレイ2が着脱自在に嵌め込まれている。このディスク収納凹部2aの中央部には、記録媒体ディスクの中央開口部側を着脱自在に保持するディスククランパ2bが設けられている。
また、裏側ケース半体4は底面の略全体に開口4aを有し、この開口4aに別成形した略扁平な平坦部材4bが嵌め込まれて構成されている。この平坦部材4bの外側表面全体にはインク受容層が設けられている。
ここで、実施形態1、2におけるディスク収納ケース1は、ディスクトレイ2とこれを収納する一対のケース半体3、4が、いずれも従来のディスク収納ケースの材料として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリルスチレン(AS)、ポリアクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリル(PMMA)等の樹脂が挙げられる。
以上のようなディスク収納ケースによれば、実施形態1における平坦部3a、実施形態2における平坦部材4bがそれぞれ略扁平な形状をしているので、既存のインクジェット記録プリンタに対応可能であり、ディスク収納ケースに任意の内容を印刷することが可能である。
なお、本発明のディスク収納ケースは、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えばディスクトレイが裏側ケース半体に一体に形成されたものであってもよい。
(インク受容層)
次に、本発明におけるインク受容層について詳しく説明する。本発明におけるインク受容層としては、例えば水性インク受理可能層、写真画質印刷可能なインク受容層、透明または半透明であるインク受容層等が挙げられる。以下にそれぞれについて詳しく説明する。
(水性インク受理可能層)
本発明の水性インク受理可能層は、水性インクを受容しうるに十分な親水性を与える層であれば特に制限はない。本発明において、水性インク受理可能層は、水との接触角が40〜90度、好ましくは、50〜87度、特に、60〜85度の範囲にあることが好ましい。水との接触角をこのような特定の範囲に設定することにより、水性インクが表面になじみ易くなり、色ムラなどが生じない良好な印刷適性を持つ表面が得られる。また、水との接触角が上記のような範囲にある水性インク受理可能層は油性のインクや筆記具をも受容するものである。このような表面特性をもつ水性インク受理可能層を得るために、本発明においては水性インク受理可能層を、吸水性微粒子と被膜形成性樹脂を含む層とすることが好ましく、さらに、被膜形成性樹脂としては紫外線硬化樹脂であることが好ましいが、吸水性微粒子を層中に均一に分散保持し得る被膜形成性樹脂であればそれに限定されるものではない。このような被膜形成性樹脂としては、紫外線硬化樹脂の他各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。このような特性を持つ水性インク受理可能層は、例えば、以下の方法で形成することができる。
吸水性微粒子は、水分を吸収し得る粒子であれば特に制限はないが、吸水性の材料を微粉末状に加工したものであることが好ましい。このような吸水性微粒子の例としては、グルコースのような単糖類、ショ糖や麦芽糖のような二糖類、及びセルロースやデンプンのような多糖類;硫酸セルロース及び燐酸セルロースなどの無機セルロースエステル、蟻酸セルロース及び酢酸セルロースなどの有機セルロースエステル、そしてカルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテルなどのセルロース誘導体;そして天然ポリペプチド及びタンパク質等の天然高分子の微粒子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー等の水溶性合成樹脂の微粒子、吸水性のポリマーの微粒子を挙げることができる。これらの中では、酢酸セルロース又はタンパク質が好ましい。特に好ましいものは、タンパク質である。吸水性微粒子は、水性インク受理可能層中に含有させた場合に、その表面に突出しないような大きさであることが好ましい。具体的には、吸水性微粒子の平均粒子径は1〜8μm(更に好ましくは、3〜8μm)の範囲にあることが好ましい。また、吸水性微粒子の平均粒子径と水性インク受理可能層との層厚との比は、1/5〜1/2、好ましくは、1/4〜1/2、特に1/4〜1/2.5の範囲にあることが好ましい。
水性インク受理可能層の結合剤として紫外線硬化性樹脂を用いることにより、水性インク受理可能層を容易に形成でき、製造上有利である。紫外線硬化性樹脂は、一般には分子中に一つ以上の反応性アクリル基やビニル基を持つ重合性化合物のモノマー又はオリゴマー、あるいはこれらの混合物、反応開始剤及び反応触媒からなり、従来から紫外線硬化性樹脂として知られているものから選択して使用することができる。なお、製品の変形などが伴わないように硬化収縮率の小さいものが選ばれる。例えば、単官能モノマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ジシクロペンチルオキシ(メタ)アクリレート、フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンを挙げることができる。多官モノマーとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(トリ)(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスア(メタ)クリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。好ましいものとしては、アクリルアミド基、ビニルアミノ基、又は水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ケトン基、スルホ基などの極性基を有する単官能又は多官能モノマー又はオリゴマーを挙げることができる。極性基を有する多官能モノマー又はオリゴマーからは、より親水性の高い層を形成することが可能であり、本発明の水性インク受理可能層を形成するのに好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン又はそのエーテル、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、ベンジル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタールなどのベンジル系化合物、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−2−プロパンなどのヒドロキシアルキルフェニルケトン系化合物などを挙げることができる。
水性インク受理可能層は、必要により有機溶剤などを用いて上記の紫外線硬化性樹脂と吸水性微粒子とを混合分散し、水性インク受理可能層形成用塗布液を調製した後、これをディスク収納ケースの基板上に塗布することにより、形成することができる。塗布方法は、特に限定されないが、スクリーン印刷による方法が有利である。水性インク受理可能層は、吸水性微粒子と紫外線硬化樹脂とが30:70〜80:20の重量比で形成されていることが好ましい。吸水性微粒子の含有率が前記比率より小さいと、吸水性が低下するため水性インクののりが悪くなり、また前記比率より大きいとインク受理可能層の機械的強度が低下しやすく好ましくない。吸水性微粒子と紫外線硬化樹脂の比率は、好ましくは、35:65〜70:30である。水性インク受理可能層の層厚は、3〜30μm、好ましくは、5〜20μm、特に好ましくは8〜15μmの範囲にあることが好ましい。
本発明において、水性インク受理可能層と基板との密着性を高めるための下地層を、1層以上水性インク受理可能層と基板との間に設けることができる。また、このような下地層を設けることにより、密着性が高められる他、スタックリングによるスクリーン印刷版の破れやマスクテープの剥がれ等を防止し工程適性を改善することができる。水性インク受理可能層として、吸水性微粒子を混入させた紫外線硬化樹脂を用いた場合、その吸水性微粒子の微粒子が存在することによって、若干基板との接着性が低下することがあるが、基板と水性インク受理可能層の層との間にこのような下地層を設けることにより、十分な接着性を確保することができる。下地層を構成する樹脂としては、水性インク受理可能層を形成するのに用いられる被膜形成性樹脂と相溶性を有する樹脂を用いることが好ましく、特に水性インク受理可能層に紫外線硬化樹脂を用いる場合、その紫外線硬化樹脂と同様のもの、より好ましくは同じ紫外線硬化樹脂が使用される。下地層は、スクリーン印刷法、スピンコート法等により形成することができるが、層形成が容易であること、低コストであること等によりスピンコート法で行うことが好ましい。
また、下地層に紫外線硬化樹脂を用いる場合、完全に硬化しない状態で、水性インク受理可能層を形成することが、両層の密着性を高める上で好ましい。また、水性インク受理可能層と基板との密着性を高めるために、この他に、基板の表面に密着性促進処理を施すことも可能である。このような処理としては、紫外線照射処理、コロナ放電処理、電子線照射処理等の高エネルギー線照射処理である。また、前記の水性インク受理可能層と基板との間の密着性を改良するための下地層に、着色剤を含有させることが可能である。このように下地層を着色することにより、審美性や意匠的効果を向上させ、色分けによる分類・インデキシング等の機能を付与することができる。下地層を着色するためには、下地層のための塗布液に、顔料、染料等が適宜混合される。顔料、染料としては、有彩色のものに限らず無彩色のものも使用できる。本発明において使用される顔料及び染料としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、コバルトブルー、紺青、群青等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン、アントラキノン、ぺリレン、チオインジゴ、キナクリドン、ジオキサジン、イソインドリノン、キノフタロン等の有機顔料、アゾ、アントラキノン、フタロシアニン、インジゴイド、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キサンテン、アクリジン、キノリン、チアゾール、オキサジン、チアジンなどの染料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗布方法としては、帝国インク製 UV PAL−71216、タンパク質微粒子35%を含有)をスクリーン印刷で塗布した後、メタルハライドランプを用いて紫外線硬化させることで、水性インク受理可能層を形成するものが挙げられる。
なお、基板と水性インク受理可能層の層との間に下地層を設けることは密着性が高められる等の効果があり、好ましい態様ではあるが、下地層を設けなくても構わない。
(写真画質印刷可能なインク受容層)
次に本発明の写真画質印刷可能なインク受容層について説明する。
本実施形態の写真画質印刷可能なインク受容層の製造方法は、基板上に下地層を設ける工程(以下、「下地層形成工程」と称する。)と、下地層上に、微粒子、結合剤、及び架橋剤を含有する塗布液を塗布した後、15℃以下で乾燥させて色材受容層を設ける工程(以下、「色材受容層形成工程」と称する。)と、をこの順に含むことを特徴とする。
以下、本発明における下地形成工程及び色材受容層形成工程について順に説明する。
<下地層形成工程>
本工程では、基板上に下地層を設ける。ここで、下地層が設けられる基板とは、インク受容層が設けられる面を有する部材を指すものである。
本発明における下地層としては、不透明性を高くすると、紙に近い拡散性を有し、画質が向上するため好ましい。特に、白色の下地層を設けると色再現性を良好とすることができる。また、下地層を光沢性の高いものにすると、光沢写真のように仕上がり、マット性の高いものとすると、マット写真のように仕上がる。下地層は、様々な色を用いると、様々な印象の画像を形成することができる。更に、蛍光性の下地層の場合、蛍光性の画質とすることができる。
このような下地層の形成手法は問わないが、生産性の観点から、放射線硬化樹脂(具体的には、例えば、紫外線硬化型インキ)をスクリーン印刷することにより形成することが好ましい。放射線硬化樹脂は、紫外線、電子ビーム、X線、γ線、赤外線等の電磁波によって硬化する樹脂であり、放射線としては、中でも、紫外線、電子ビームが好ましい。
下地層の層厚としては、0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましく、3〜20μmが最も好ましい。
<色材受容層形成工程>
本工程では、上記下地層形成工程にて得られた下地層上に、微粒子、結合剤、及び架橋剤を含有する色材受容層を設ける。
まず、本発明における色材受容層を構成する各成分について説明し、その後、その成分を用いた色材受容層の形成方法について説明する。
本発明における色材受容層は、上記のように、微粒子、結合剤、及び架橋剤を含有した塗布液から形成され、この塗布液は、更に、必要に応じて、一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物、各種添加剤などを含んでいてもよい。
[微粒子]
上述の通り、本発明における色材受容層形成用の塗布液は微粒子を含有する。微粒子としては、気相法シリカ、擬ベーマイト、酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト等が挙げられ、中でも、気相法シリカ、擬ベーマイト、酸化アルミニウムが好ましい。
(気相法シリカ)
シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、「気相法シリカ」とは該気相法によって得られた無水シリカ微粒子を意味する。
上記気相法シリカは、上記含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一
方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であり少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
上記気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行えば色材受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。
上記気相法シリカの平均一次粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましく、3〜10nmが最も好ましい。上記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
また、これらの気相法シリカの塗布液中の濃度は、気相法シリカの分散性、多孔質構造を形成性、及び塗布液適性の観点から、60質量%以下であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましい。
また、本発明において気相法シリカは、水系溶媒に分散して用いるのが好ましい。上記分散液中の気相法シリカの含有量は、60質量%以下が好ましく、5〜50質量%が更に好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。
気相法シリカは、上記範囲で特に効果的に分散させることができ、例えば、分散時において気相法シリカ同士の粒子間距離が短くなること等に起因する増粘やゲル化等を効果的に抑制することができる。
また、気相法シリカの色材受容層における固形分含有量は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。このように気相法シリカの含有量が50質量%以上である場合、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインキ吸収性を備えた色材受容層が得られるため好ましい。ここで、気相法シリカの色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成分中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
また、含水シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等の他の無機顔料微粒子を併用してもよい。該他の無機顔料微粒子と上記気相法シリカとを併用する場合、全無機顔料微粒子中、気相法シリカの含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
(擬ベーマイト)
擬ベーマイトは、Al2O3・xH2O(1<x<2)で表され、一般にその結晶は(020)面が巨大な平面を形成する層状の化合物であり、その格子定数dは0.67nmである。ここで、擬ベーマイトは、過剰な水を(020)面の層間に含んだ構造を有するものである。擬ベーマイトは、インクを良く吸収し定着し、インクの吸収性及び経時ニジミを向上させることができる。
また、容易に平滑な層が得られることから、ゾル状の擬ベーマイト(擬ベーマイトゾル)を原料として用いることが好ましい。
擬ベーマイトの一次平均粒子径は50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることが更により好ましく、20〜3nmの範囲内であることが特に好ましい。擬ベーマイトの平均一次粒子径が上記範囲内にあると、空隙率の大きい構造を形成することができ、更に色材受容層のインク吸収性を向上させることができる。なお、前記平均一次粒子径は、例えば、電子顕微鏡を用いて測定することができる。
また、擬ベーマイトのBET比表面積としては、40〜500m2/gが好ましく、200〜500m2/gが更に好ましい。
更に、上記擬ベーマイトのアスペクト比としては、3〜10が好ましい。擬ベーマイトの細孔構造については、その平均細孔半径は1〜30nmが好ましく、2〜15nmがより好ましい。また、その細孔容積は0.3〜2.0ml/g(cc/g)が好ましく、0.5〜1.5ml/g(cc/g)がより好ましい。ここで、上記細孔半径及び細孔容積の測定は、窒素吸脱着法により測定されるもので、例えば、ガス吸脱着アナライザー(例えば、コールター社製の商品名「オムニソープ369」)により測定できる。
また、これらの擬ベーマイトの塗布液中の濃度は、擬ベーマイトの分散性、多孔質構造を形成性、及び塗布液適性の観点から、60質量%以下であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましい。
また、擬ベーマイトは、水系溶媒に分散して用いるのが好ましい。分散して用いる場合の分散液中における擬ベーマイトの含有量としては、60質量%以下が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
擬ベーマイトは、上記範囲で特に効果的に分散させることができ、例えば、分散時において擬ベーマイト同士の粒子間距離が短くなること等に起因する増粘やゲル化等を効果的に抑制することができる。
また、擬ベーマイトの色材受容層における固形分含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。このように擬ベーマイトの含有量が60質量%以上である場合、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインキ吸収性を備えた色材受容層が得られるため好ましい。ここで、擬ベーマイトの色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成分中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
擬ベーマイト(A)と、気相法シリカ(S)と、を併用する場合、その含有比(S:A)としては、95:5〜5:95となる範囲が好ましく、80:20〜20:80の範囲がより好ましく、70:30〜30:70の範囲が特に好ましい。
前記含有比の範囲で気相法シリカと擬ベーマイトを併用すると、複数色の全てのインクにおける経時ニジミを色相に依存することなく効果的に防止することができ、多色に画像形成する場合でも高解像度で鮮やかな画像を形成し、保持することができる。
(酸化アルミニウム)
本発明における酸化アルミニウムとしては、例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、χ−アルミナ等の無水アルミナや、活性酸化アルミニウムが挙げられる。
これらの中でも好ましいアルミナ微粒子は、δ−アルミナであり、また、製造方法による観点からは、気相法により製造されるアルミナ微粒子、即ち、酸水素反応の際に発生する水の存在の下で、また、そのような反応に特徴的な温度において、気体状の金属塩化物を加水分解することにより得られる気相法アルミナ微粒子が、比表面積が大きいため好ましい。
上記酸化アルミニウムの形態としては、例えば、所定の粒子径を有する微細な粒子、微粒子、微細粒子、粉体、微粉、微細粉等を採用することができ、その平均一次粒子径は、200nm以下であることが好ましく、5〜100nmであるのが更に好ましく、特に5〜20nmであることが好ましい。上記アルミナ微粒子の平均一次粒径が上記範囲内にあると、空隙率の大きい構造を形成することができ、更に色材受容層のインク吸収性を向上させることができる。なお、上記平均一次粒子径は、例えば、電子顕微鏡を用いて測定することができる。
また、これらの酸化アルミニウムの塗布液中の濃度は、酸化アルミニウムの分散性、多孔質構造の形成性、及び塗布液適性の観点から、60質量%以下であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましい。
また、本発明において酸化アルミニウムは、水系溶媒に分散して用いるのが好ましい。上記分散液中の酸化アルミニウムの含有量は、60質量%以下が好ましく、5〜60質量%が更に好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
酸化アルミニウムは、上記範囲で特に効果的に分散させることができ、例えば、分散時において酸化アルミニウム同士の粒子間距離が短くなること等に起因する増粘やゲル化等を効果的に抑制することができる。
上記酸化アルミニウムの色材受容層における固形分含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。上記含有量が60質量%を超えていると、更に良好な多孔質構造を形成することが可能となり、十分なインク吸収性を備えた色材受容層が得られるので好ましい。ここで、上記酸化アルミニウムの色材受容層における固形分含有量とは、色材受容層を構成する組成物中の水以外の成分に基づき算出される含有量である。
また、本発明においては酸化アルミニウムと、他の微粒子と併用してもよい。該他の微粒子と上記酸化アルミニウムとを併用する場合、全微粒子中の本発明における酸化アルミニウムの含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
上記他の微粒子としては、有機微粒子、無機微粒子のいずれでもよいが、インク吸収性及び画像安定性の点から、無機微粒子が好ましい。
[結合剤]
上述の通り、本発明における色材受容層形成用の塗布液は、結合剤を含有する。当該結合剤としては水溶性樹脂が好ましい。
上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位として水酸基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性PVA、カチオン変性PVA、アニオン変性PVA、シラノール変性PVA、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔例えば、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕などが挙げられる。
また、水溶性樹脂として、解離性基としてカルボキシ基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も利用することができる。
以上の中でも、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。該ポリビニルアルコール系樹脂の例としては、特公平4−52786号、特公平5−67432号、特公平7−29479号、特許第2,537,827号、特公平7−57553号、特許第2,502,998号、特許第3,053,231号、特開昭63−176173号、特許第2604367号、特開平7−276787号、特開平9−207425号、特開平11−58941号、特開2000−135858号、特開2001−205924号、特開2001−287444号、特開昭62−278080号、特開平9−39373号、特許第2750433号、特開2000−158801号、特開2001−213045号、特開2001−328345号、特開平8−324105号、特開平11−348417号等に記載されたもの等を使用できる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の水溶性樹脂の例としては、特開平11−165461号公報の段落番号[0011]〜[0014]に記載の化合物等も挙げられる。
結合剤として好適な上記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。上記三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造の色材受容層を形成しうると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得た多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インクニジミのない真円性の良好なドットを形成することができる。
また、透明性の観点から、鹸化度70〜99%のポリビニルアルコール系樹脂が更に好ましく、鹸化度80〜99%のポリビニルアルコール系樹脂が特に好ましい。
これら結合剤としての水溶性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
また、これらの結合剤としての水溶性樹脂の塗布液中の濃度は、多孔質構造の形成性、及び塗布液適性の観点から、1〜25質量%であることが好ましく、2〜15質量%であることがより好ましい。
本発明において、形成された色材受容層中の結合剤としての上記水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂とその他の水溶性樹脂とを併用する場合、全水溶性樹脂中、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
(微粒子と水溶性樹脂(結合剤)との含有比)
色材受容層内において、微粒子(x)と、結合剤である水溶性樹脂(y)と、の質量含有比〔PB比(x/y)〕は、該色材受容層の膜構造及び膜強度に大きな影響を与える。即ち、該質量含有比〔PB比〕が大きくなると、空隙率や細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなるが、密度や強度は低下する傾向にある。
本発明における色材受容層では、上記質量含有比〔PB比(x/y)〕としては、該PB比が大き過ぎることに起因する、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつ、該PB比が小さ過ぎることによって、該空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、1.5/1〜10/1が好ましい。
[架橋剤]
本発明における色材受容層形成用の塗布液は、前記結合剤を架橋し得る架橋剤を含有する。このように架橋剤を含有させることにより、架橋剤と結合剤との架橋反応によって硬化された多孔質層の色材受容層を形成することができる。
前記結合剤である水溶性樹脂として好適なポリビニルアルコールの架橋には、ホウ素化合物が好ましい。該ホウ素化合物としては、例えば、硼砂、硼酸、硼酸塩(例えば、オルト硼酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二硼酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタ硼酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四硼酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2
O)、五硼酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こすことができる点で、硼砂、硼酸、硼酸塩が好ましく、特に硼酸が好ましい。
また、結合剤である水溶性樹脂の架橋剤として、上記のホウ素化合物以外の化合物を使用することもできる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドスターチ、植物ガムのジアルデヒド誘導体等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、1,2−シクロペンタンジオン、3−ヘキセン−2,5−ジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル)尿素、ビス(2−クロロエチル)スルホン、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン、1,3−ビス(ビニルスルホニル)−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、ジビニルケトン、1,3−ビス(アクリロイル)尿素、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;トリメチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、メラミン、ベンゾグアナミン、メラミン樹脂等のメラミン化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシナネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3,017,280号、同第2,983,611号等に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3,100,704号等に記載のカルボジイミド系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物;テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等:米国特許第2,725,294号、米国特許第2,725,295号、米国特許第2,726,162号、米国特許第3,834,902号等に記載の多価酸の無水物、酸クロリド、ビススルホナート化合物;米国特許第3,542,558号、米国特許第3,251,972号等に記載の活性エステル化合物等が挙げられる。
上記の架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いることもできる。
上記ポリビニルアルコールにゼラチンを併用する場合には、ゼラチンの硬膜剤として知られている、下記化合物を架橋剤としてホウ素化合物と併用することができる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3,017,280号明細書、同第2,983,611号明細書に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3,100,704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。
これらの硬膜剤も1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いることもできる。
上記ホウ素化合物と他の架橋剤とを併用する場合、全架橋剤中ホウ素化合物の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
これらの架橋剤の塗布液中の濃度は、多孔質構造の形成性及び塗布液適性の観点から、0.2〜5質量%であることが好ましく、0.7〜3質量%であることがより好ましい。
また、架橋剤は、水及び/又は有機溶剤に溶解し、架橋剤溶液として用いられることが好ましい。
上記架橋剤溶液中の架橋剤の濃度としては、架橋剤溶液の質量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%が特に好ましい。
架橋剤溶液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性を有するの有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。
上記有機溶剤としては、架橋剤が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、及びジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤等を挙げることができる。
また、形成された色材受容層における架橋剤の含有量としては、多孔質構造の形成性の観点から、色材受容層の全固形分質量に対して、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
[媒染剤]
本発明においては、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、色材受容層形成用の塗布液に媒染剤が含有されることが好ましい。
上記媒染剤としてはカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)が好ましく、該媒染剤を色材受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や経時ニジミを向上させることができる。
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、また、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマーや、水分散性のラテックス粒子の形態で使用できる。
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、又はそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
具体的には、例えば、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられる。
上記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性或いはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、或いは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、一種単独で、又は二種以上組合せて使用できる。
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレニミン、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン等も好ましいものとして挙げることができる。
上記ポリマー媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で1,000〜200,000が好ましく、重量平均分子量で3,000〜60,000が更に好ましい。上記分子量が1,000〜200,000の範囲にあると、耐水性が不十分となることがなく、また、粘度が高くなりすぎてハンドリング適正が低下するのを防止できる。
上記カチオン性の非ポリマー媒染剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等の水溶性金属塩が好ましい。
これらの媒染剤の塗布液中の濃度は、着色性、及び塗布液適性の観点から、0.1〜2質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがより好ましい。
また、形成された色材受容層における媒染剤の含有量としては、印画時のにじみ防止の観点から、色材受容層の全固形分質量に対して、2〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
[一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物]
本発明における色材受容層形成用の塗布液は、更に、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物は、高沸点溶剤である。
RO(CH2CH2O)nH 一般式(1)
[一般式(1)中、Rは、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の不飽和炭化水素基、フェニル基、又はアシル基を表す。nは、1〜3の整数を表す。]
RO(CH2CH(CH3)O)nH 一般式(2)
[一般式(2)中、Rは、炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の不飽和炭化水素基、フェニル基、又はアシル基を表す。nは、1〜3の整数を表す。]
上記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物を色材受容層に含むことで、3次元網目構造(多孔質構造)形成時の色材受容層の乾燥収縮を抑制することができる。これは、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物が、気相法シリカ表面のシラノール基とポリビニルアルコールの水酸基との水素結合を適度に阻害するために色材受容層の乾燥収縮が緩和されるためと推測される。これにより3次元網目構造形成時における色材受容層の膜割れを防止でき、ケース半体の生産歩留まりや品質を向上させることができる。
上記一般式(1)及び一般式(2)において、Rは炭素数1〜12の飽和炭化水素基、炭素数1〜12の不飽和炭化水素基、フェニル基、又はアシル基を表し、炭素数1〜4の飽和炭化水素基が好ましい。
上記飽和炭化水素基の炭素数は1〜12であり、好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜4ある。該飽和炭化水素基としては、アルキル基、脂環族炭化水素基等が挙げられる。該飽和炭化水素基は置換基によって置換されていてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。
上記不飽和炭化水素基の炭素数は1〜12であり、好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜4である。該不飽和炭化水素基としては、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。該不飽和炭化水素基は置換基によって置換されていてもよい。具体的には、ビニル基、アリル基、エチニル基、1,3−ブタジエニル基、2−プロピニル基等が挙げられ、アリル基が好ましい。
上記アシル基としては、炭素数1〜8のアシル基が好ましく、1〜4のアシル基が更に好ましい。該アシル基は置換基によって置換されていてもよい。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基が挙げられ、ブチリル基が好ましい。
上記一般式(1)及び一般式(2)において、nは1〜3の整数を表し、2又は3が好ましい。
一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物としては、水溶性の化合物が好ましい。ここで「水溶性」とは、水に1質量%以上溶解するものをいう。
一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
色材受容層形成用の塗布液には、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物は、その少なくとも1種を色材受容層に含んでいればよい。従って、一般式(1)で表される化合物又は(2)で表される化合物を単独又は2種以上含んでいてもよいし、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを併用してもよい。一般式(1)で表される化合物〔x〕及び一般式(2)で表される化合物〔y〕を併用する場合、その混合比(質量比;x:y)については特に限定はないが、好ましくは100:1〜100:100であり、更に好ましくは100:10〜100:50である。
このような高沸点溶剤の塗布液中の濃度は、多孔質構造の形成性、及び塗布液適性の観点から、0.1〜2質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがより好ましい。
また、形成された色材受容層中に含まれる高沸点溶剤の総含有量としては、0.1〜5.0g/m2が好ましく、0.2〜3.0g/m2が更に好ましい。
[他の成分]
本発明における色材受容層形成用の塗布液は、必要に応じて、下記成分を含んでいてもよい。
色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
上記紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位又は6位のうち1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
上記酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号等に記載のものが挙げられる。
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
上記褪色性防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この上記褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。
上記褪色性防止剤の添加量としては、色材受容層塗布液の0.01〜10質量%が好ましい。
また、無機顔料微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。
加えて、本発明における塗布液は、界面活性剤を含んでいてもよい。
[色材受容層の形成]
本発明においては、微粒子、結合剤、及び架橋剤を含有する塗布液を塗布した後、15℃以下で乾燥させることを満たしていれば、その形成方法は特に限定されない。
例えば、本発明における色材受容層は、微粒子を含む水分散物に、少なくとも結合剤を含む溶液(第1の溶液)と、少なくとも架橋剤を含む溶液(第2の溶液:架橋剤溶液)と、をそれぞれ添加し、再分散して得られる塗布液を、下地層上に塗布した後、15℃以下で乾燥させる方法を用いることが好ましい。当該方法において色材受容層形成用の塗布液のpHは2.5〜4.0であり、酸性を示す。当該方法を用いると、光沢度及び印画濃度が向上するため好ましい。
なお、上記第1の溶液中には、更に、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は下記一般式(2)で表される化合物が含有されることが好ましい。また、上記第2の溶液(架橋剤溶液)中には、更に、媒染剤が含有されることが好ましい。
また、塗布液を調製する際に用いられる溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
上記色材受容層形成用の塗布液には、必要に応じて、更に、界面活性剤、pH調整剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
本発明において、微粒子の水分散液を調製する際には分散剤を用いることができる。この分散剤としては、カチオン性のポリマーを用いることができる。カチオン性ポリマーとしては、上述の媒染剤の例として挙げた、第1級〜第3級アミノ基及びその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体の単独重合体や、該単量体と他のモノマーとの共重合体又は縮重合体として得られるものを好適に使用することができる。また、これらの分散剤は、水溶性ポリマーの形態で使用するのが好ましい。
上記分散剤の分子量は、重量平均分子量で1,000〜200,000が好ましく、3,000〜60,000が更に好ましい。該分子量が1,000より小さいと分散性に劣る場合があり、200,000を超えると水分散物の粘度が高くなる場合がある。上記分散剤の気相法シリカに対する添加量は、1%〜30%が好ましく、3%〜20%が更に好ましい。該添加量が、1%未満では分散性に劣る場合があり、30%を超えると色材受容層に印画した際、色濃度が低下することがあるため好ましくない。
また、微粒子と分散剤とからなる水分散剤の調製は、微粒子水分散液を予め調製し、該水分散液を分散剤水溶液に添加してもよいし、分散剤水溶液を微粒子水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、微粒子水分散液ではなく、粉体の微粒子を用いて上記のように分散剤水溶液に添加してもよい。
上記の微粒子と分散剤とを混合した後、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行うという点から、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
なお、分散剤を併用しない水分散液もこれらの分散機を用いることで、平均粒子径50〜300nmの水分散液を調製することができる。
上記色材受容層形成用の塗布液の塗布は、例えば、バーコート、ロールコート、ブレードコート、スクリーンコート、タンポコート等の接触塗布や、スプレーコート、スピンコート、カーテンコート、ディップコート等の非接触塗布等により行うことができる。また、エクストリュージョンダイコータによる塗布方法を用いることもできる。中でも、所定の範囲に色材受容層を形成することが容易である点から、エクストリュージョンダイコータを用いることが好ましい。
なお、塗布時の温度(塗布環境の温度)としては、20〜40℃が好ましく、23〜35℃がより好ましく、25〜30℃が更に好ましい。湿度としては、5〜80%RHが好ましく、20〜70%RHがより好ましく、30〜60%RHが更に好ましい。
また、塗布時の塗布液温度は、粘度安定性の観点から塗布環境の温度に近い方が好ましく、20〜40℃が好ましく、23〜35℃がより好ましく、25〜30℃が更に好ましい。
スプレーコートにより塗布を行う場合、圧力としては、1.013〜2026hPaが好ましく、50.65〜1013hPaがより好ましく、101.3〜506.5hPaが更に好ましい。スプレーの広がり角度としては、1〜120°が好ましく、10〜60°がより好ましく、20〜50°が更に好ましい。液粒径としては、0.1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、10〜100μmが更に好ましい。ワーク(ケース半体)からの距離としては、1〜1000mmが好ましく、10〜200mmがより好ましく、30〜100mmが更に好ましい。
スピンコートにより塗布を行う場合、塗布液の粘度としては、0.1〜10,000mPa・sが好ましく、1〜6,000mPa・sがより好ましく、10〜3,000mPa・sが更に好ましい。回転数としては、ディスペンス時においては、10〜1,000rpmとすることが好ましく、50〜600rpmとすることがより好ましく、100〜400とすることが更に好ましい。振り切り時においては、徐々に回転数を上げ、上げ方はステップでもなだらかでもよく、具体的には、100〜10,000rpmとすることが好ましく、200〜5,000rpmとすることがより好ましく、300〜3,000rpmとすることが更に好ましい。ノズルの形状は、長さは1〜100mmであることが好ましく、5〜50mmであることがより好ましく、10〜30mmであることが更に好ましい。ノズルの内径は、0.1〜5mmであることが好ましく、0.3〜3mmであることがより好ましく、0.5〜2mmであることが更に好ましい。ノズルの肉厚は0.1〜1mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。また、ノズルは流れに沿って斜めに設置してもよい。ワークからの距離としては、0.5〜100mmが好ましく、1〜50mmがより好ましく、2〜20mmが更に好ましい。
上記のような塗布により形成された塗膜を乾燥させる方法としては、該塗膜を15℃以下にて乾燥させることが可能であれば、接触乾燥、非接触乾燥等、その手法は特に限定されない。
このような乾燥を行なうことで、既述のように、塗布液(塗膜)が増粘し、また、レベリング機構が発現し、色材受容層の面状を向上させることができる。更に、急速乾燥が可能となったり、搬送が容易になるといった効果も有する。
なお、ここで、増粘の程度としては、塗膜の流動性が無くなる程度であることが好ましく、その粘度としては、具体的には、5℃において1〜15Pa・s程度である。
ここで、色材受容層形成工程における乾燥温度は、増粘の具合や冷却設備負荷の観点から、2〜15℃の範囲であることが好ましく、5〜15℃の範囲であることがより好ましい。
また、乾燥湿度は、増粘の具合や冷却設備負荷の観点から、10〜50%RHの範囲であることが好ましく、10〜30%RHの範囲であることがより好ましい。
乾燥時間としては、5〜20分が好ましい。
また、本発明においては、前記塗布液の塗布終了時から30秒以上経た後に、15℃以下で乾燥させることが好ましい。このように、塗布終了後から30秒以上経過した後に乾燥を開始することで、塗膜のレベリング機構が効率良く発現し、色材受容層の面状がより良好となる。
なお、塗布終了後から乾燥を開始するまでの時間は、レベリング機構の発現と生産性の観点から、30〜60秒の範囲であることがより好ましく、30〜40秒の範囲であることが更に好ましい。
本発明においては、前記15℃以下での乾燥(1段階目の乾燥)後、更に、20℃以上で乾燥(2段階目の乾燥)させることが好ましい。このように、15℃以下の低温で乾燥させた後、より高い温度にて乾燥させることで、乾燥が効率的に進行し、生産性を高めることができる。このような2段階目の乾燥後に、更に高温で乾燥させてもよい。
なお、2段階目の乾燥には、塗膜が減率乾燥速度を示すようになる前に移行することが好ましい。
ここで、「塗膜が減率乾燥速度を示すようになる前」とは、通常、色材受容層形成用の塗布液の塗布直後から数分間を指し、この間においては、塗布された塗膜中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥速度を示す。該恒率乾燥速度を示す時間については、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
上記2段階目の乾燥は、生産性及びクラック等の発生の観点から、温度は、20〜80℃の範囲であることがより好ましく、30〜60℃の範囲であることが更に好ましい。
また、上記2段階目の乾燥における湿度は、生産性及びクラック等の発生の観点から、5〜30%RHの範囲であることがより好ましく、10〜20%RHの範囲であることが更に好ましい。
また、この2段階目の乾燥時には、塗膜に対し、送風を行なってもよい。この送風は、塗膜に対して平行に3m/s以上であることが好ましい。
本発明においては、塗膜を乾燥させる具体的な手法としては、塗膜を所定の温度環境下に保持する非接触乾燥を用いることが好ましい。
具体的には、生産性の観点から、塗膜が形成された基板自体を、15℃以下の所定の温度、及び所定の湿度を示す恒温恒湿雰囲気下を搬送させることが好ましい。なお、上述のように2段階で乾燥を行なう場合には、1段階目の雰囲気下を搬送させた後、連続して、2段階目の雰囲気下を搬送させるという方法を使用することができる。
以上のようにして形成された色材受容層の層厚は、インクジェット記録に適用する場合、インク液滴の全てを吸収するだけの吸収容量を有することが必要であるため、色材受容層中の空隙率に応じて決定されることが好ましい。例えば、インク量が8nm/mm2であり、空隙率が60%である場合には、色材受容層の層厚は10μm以上であることが必要となる。
以上のようにして、下地層上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことにより、表面平滑性、光沢度、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、該カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行う必要がある。
カレンダー処理を行う場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがより好ましい。
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
上記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
本発明によって得られるケース半体は、60°の光沢度が30%以上である、又は、45°の光沢度が30°以上であることが好ましい。該光沢度は、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP,スガ試験機(株)製)や、デジタル光沢計(GK−45D、スガ試験機(株)製)等によって測定することができる。
なお、本発明における色材受容層において、実用上問題のない面状であることの指標として、上記45°の光沢度が用いられる。この45°の光沢度が30%以上であれば面状に優れ、好ましくは、35%以上であり、40%以上90%以下であることが更に好ましい。
<中間層形成工程>
本発明においては、下地層と色材受容層との間に中間層を設ける工程を有していてもよい。この中間層をインク吸収性の高い層とすると、受容できるインク量が増し、印画時に色濃度を向上させ、画質を向上させることができる。
或いは、下地層と基板との間に中間層を設ける工程を有していてもよい。この場合の中間層は、下地層と基板との密着性を向上させたり、ケース半体全体の反りを調整することができる。
中間層の層厚としては、0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましく、3〜20μmが最も好ましい。
<表面層形成工程>
本発明においては、色材受容層上に表面層を設ける工程を有していてもよい。この表面層により、表面強度を更に向上させたり、印画の保存性を向上させたりすることができる。表面層は、インクを受容するか、或いは速やかに透過させる性質を有する必要がある。
表面層の層厚としては、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmが最も好ましい。
以上の各工程を経ることで、本発明における写真画質印刷可能なインク受容層を設けることができる。
<実施例>
塗布方法としては、紫外線硬化インク(White No.3、帝国インキ製造(株)製)をスクリーン印刷で印刷し、印刷後、その上からメタルハライドランプで80W/cmの紫外線を照射して硬化させ8μmの下地層(白色層)を繰り返し2層、トータルで16μmの厚みで形成した。スクリーンは300本/インチメッシュ、糸径31μm、オープニング38μmのテトロン製スクリーンを用いた。
次に、下地層上に色材受容層を形成するため以下の工程を行った。
−色材受容層形成用の塗布液の調製−
下記組成中の(1)気相法シリカ微粒子、(2)イオン交換水を混合し、高速回転式コロイドミル(クレアミックス、エム・テクニック(株)製)を用いて、回転数10000rpmで20分間分散させた。その後、その水分散物に、(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、(4)ポリビニルアルコール9%水溶液、及び(5)ジエチレングリコールモノブチルエーテルから構成される第1の溶液と、(6)硼酸、(7)媒染剤、及び(8)イオン交換水からなる第2の溶液と、をそれぞれ添加し、更に上記と同一条件で再分散を行い、色材受容層形成用の塗布液Aを調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比/(1):(4))は、3.5:1であり、塗布液AのpHは3.4であり、酸性を示した。
〔塗布液Aの組成〕
(1)気相法シリカ微粒子(無機顔料微粒子) 10.0部
(平均一次粒子径7nm;アエロジル300、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 55.2部
[第1の溶液]
(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) 3.5部
(エマルゲン109P(10%)、花王(株)製、HLB値13.6)
(4)ポリビニルアルコール9%水溶液(水溶性樹脂) 31.7部
(PVA420、(株)クラレ製、鹸化度81.8%、重合度2,000)
(5)ジエチレングリコールモノブチルエーテル 0.5部
(一般式(1)で表される化合物)
[第2の溶液]
(6)硼酸(6%;架橋剤) 10.4部
(7)媒染剤(PAS−F5000;20%水溶液、日東紡(株)製) 2.5部
(8)イオン交換水 5.3部
−色材受容層の形成−
上記ケース半体の下地層の面にコロナ放電処理を行った後、上記から得た塗布液Aを、エクストルージョンダイコータを用いて、下地層上に塗布した。ここで、塗布液Aの温度は25℃であった。
塗布終了後、30秒経過した後、低温低湿庫にて5℃、10%RH環境で、表面の塗布液の流動性が抑えられるまで5分間搬送させながら乾燥させた。塗膜は、この期間恒率乾燥速度を示した。その直後、熱風乾燥機にて、30℃、10%RHの環境(風速4m/sec)で、5分間搬送させながら乾燥させた。なお、ここで得られた色材受容層の乾燥後の膜厚は、30μmであった。
以上のようにして、写真画質印刷可能なインク受容層を備えたディスク収納ケースを得る。なお本実施形態のインク受容層は下地層上に色材受容層を設けているが、本発明のディスク収納ケースにおけるインク受容層はこれに限定されるものではなく、下地層を設けたものでなくても構わない。
(透明または半透明であるインク受容層)
本発明の透明または半透明であるインク受容層は、インク受容層を透明または半透明にしたものである。ここで、インク受理層と基板との密着性を上げる等の効果があるので下地層を設けてもよい。下地層を設けた場合、下地層も透明または半透明にする必要がある。
透明であるインク受容層としては、紫外線光を照射して硬化させる紫外線硬化樹脂を用いることができる。具体的には帝国インク製 UV−SP−30616KM JR INK等が挙げられる。
以上により、本発明のディスク収納ケースでは、インク受容層に記録媒体ディスクの記録内容等を印刷することができるので、取り扱いが面倒なインデックスを使用することなく、また、記録媒体ディスクに直接記入または印刷する際に記録媒体ディスクを破損したり、記録情報を消失することなく、記録媒体ディスクの情報を確認することができる。
また、請求項2、3にかかるディスク収納ケースとした場合には、インクジェット記録プリンタを使用して任意の内容を印刷することができる。また、インク受容層が透明または半透明であるディスク収納ケースであれば、記録媒体ディスクの表面に写真や画像等の印刷がなされているレーベルプリント対応の記録媒体ディスクを収容した際に、ディスク収納ケースを閉じた状態でも記録媒体ディスク表面のレーベルを視認することができ、さらに記録媒体ディスクのレーベルと、ディスク収納ケース表面のデザインとを組み合わせることにより、全く新しいデザインを創造できる可能性を提供することができる。