JP4173433B2 - 高熱伝導性プリント配線板 - Google Patents
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Description
ノイズ対策の一つとして、コイル、コンデンサ、抵抗等を組み合わせたフィルタを電子回路に接続する方法が一般的に行われている。
また、(特許文献2)には、電源層とグランド層と信号層がそれぞれ絶縁材を介在して積層された多層プリント基板において、前記電源層と接続されたヴィアホール又はスルーホール中にコイルを埋め込んだ多層プリント基板が開示されている。これにより、スルーホールがインダクターとして働き、高周波インピーダンスを大きくしてノイズの電源層への回り込みを防止している。
さらに、(特許文献3)には、異なる層間を接続するバイアホールを、カーボンブラックを含む抵抗性の樹脂組成物で形成したプリント配線板が開示されている。樹脂組成物の抵抗値を1オーム以上とすることで、信号の反射による誤動作の防止や放射ノイズの低減を行っている。
しかしながら、従来のプリント配線板には、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の合成樹脂の基板が多用されており、そのような基板は熱伝導性が劣るので、蓄積した熱を放散し難く、それゆえ上記の(特許文献1)〜(特許文献3)の構成によっては、フィルタの性能を十分に発揮できなかった。
なお、ここでカーボンマイクロコイルとは、アセチレンの熱分解等によって製造される、直径数μmのコイル状炭素繊維をいう。
また、微小なコイル素子として機能するカーボンマイクロコイルの充填材によって複数の導電層間を接続し、さらにその充填材に対して並列に、導電性の炭素質基板を利用してコンデンサを形成したため、全体にコンデンサ入出力型の高性能フィルタとして機能させることができる。したがって、プリント配線板の回路を伝導するノイズや外部から放射されるノイズを効果的に低減することができる。
さらに、高熱伝導性の炭素質基板を用いたことに伴い、回路上の熱が速やかに放熱されてインピーダンスが安定し、これによってフィルタ効果の熱による低下を防止することができる。
まず、本発明の高熱伝導性プリント配線板(以下、単にプリント配線板と呼ぶ)の実施の形態(1)を図1及び図2に示す。図1はプリント配線板の断面図であり、図2はプリント配線板に形成したスルーホール近傍の等価回路である。図1のプリント配線板1は、炭素質基板10の両面に、複数の導電層12A、12Bがそれぞれ絶縁層11A、11Bを介して積層された多層プリント配線板であり、この例では、導電層12Aを信号層、導電層12Bを電源層として用いている。また、炭素質基板10は導電性を有しており、アースする等してグランド層を構成している。
したがって、スルーホール13に埋め込んだコイル成分(L1〜Ln)に対して、コンデンサC1〜C3が並列に接続された、いわゆるπ型のローパスフィルタを構成することになる。これにより、電源ラインや導電層12Aに実装されるIC/LSI等の動作に伴って回路上を伝導し、あるいは外部から放射される高周波のノイズを効果的に低減することができる。なお、図1で構成するπ型のローパスフィルタは、入力側、出力側ともにインピーダンスが比較的高い回路と整合性が良く、その場合に最も高い性能を発揮する。
なお、それぞれのカーボンマイクロコイル141は、実際にはコイル成分とともに抵抗成分とコンデンサ成分とを同時に有しており、また、充填材14中では多数のカーボンマイクロコイル141が3次元的に絡み合って接触しているため、真の等価回路はより複雑である。しかし、フィルタ特性の測定結果等から、図2のような回路と見なしても矛盾がないことを知見している。
まず、炭素質基板10としては、炭素繊維を補強材とし、炭素をマトリックスとする炭素複合材料や、あるいは等方性高密度炭素材料等の板状物が用いられる。炭素質基板10の厚さは、薄すぎると基板の強度低下を招き、またインピーダンスが増加するためグランド層として好ましくない。逆に厚すぎると熱伝導性が低下し、重量増加やコストアップにもつながるので、これらを考慮して適宜設定される。一般には、0.3〜5mmが適当である。
上記のような炭素複合材料は、各種配向状態の炭素繊維複合体に、フェノール樹脂等の熱硬化性合成樹脂、あるいは石油ピッチ等のマトリックス材を含浸させてプリグレグを調製し、そのプレグレグを必要に応じて複数枚積層し、加圧下で加熱してマトリックス材を硬化させ、さらに不活性雰囲気中で高温焼成しマトリックス材を炭素化ないし黒鉛化させて製造することができる。なお、炭素複合材料は、予め炭素質基板10の厚さになるよう板状に成形しても良いし、あるいはブロック状に成形した炭素複合材料から、ワイヤーソー、回転ダイヤモンドソー等の公知の切断手段により所定の厚さに切り出しても良い。
また、無機コーティング剤を含浸させる方法としては、炭素質基板10に無機コーティング剤を刷毛等により塗布する方法、炭素質基板10を無機コーティング剤中に浸漬する方法、炭素質基板10に高圧で無機コーティング剤を圧入する方法、炭素質基板10に高真空にて無機コーティング剤を吸入する方法等を適宜採用することができる。
含浸させる方法は、流動性を有する熱硬化性樹脂を炭素質基板10に塗布する等して微細孔に浸透させ、その後加熱する等して硬化させることによって行うことができる。熱硬化性樹脂を用いると、低コストで炭素質基板10の熱伝導性を向上させることができるため有利である。
具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を挙げることができる。これらの樹脂材料は、一般的に、炭素質基板10上にディッピング、スプレー、電着等の手段により塗布し、硬化させることで層を形成することができる。その他、樹脂フィルムを炭素質基板10に積層させた後に熱溶融させる方法や、炭素質基板10上に蒸着重合して層を形成する方法等を挙げることができる。また、上記の樹脂材料の他にも、SiO2等の無機塗料を用いることができる。無機塗料を用いると、薄く均一な絶縁層を形成できるため、安定したフィルタを構成する観点から好ましい。
また、導電層12A(信号層)、及び導電層12B(電源層)のそれぞれの側におけるインピーダンスに応じて、絶縁層11Aと絶縁層11Bの厚さを異なるように設定することもできる。
これらの金属箔やリードフレームは、各種接着剤を用いて絶縁層11A、11Bに積層させる。あるいは、電気絶縁性を有する接着剤を用いることにより、絶縁層11A、11Bを形成しつつ炭素質基板10に貼り合わせても良い。
上記の無電解めっきによる方法の他にも、真空蒸着、低温スパッタ、イオンプレーティング等の乾式法が適用可能である。このような、めっき等による導電層の厚さは、回路として機能させるために、少なくとも15μm以上有することが好ましい。
なお、導電層12A、12Bは、炭素質基板10と相対してコンデンサを構成しているため、導電層の回路パターンの面積を変えることによって電気容量を制御することができる。したがって、種々のノイズに応じた最適なフィルタを構成することができる。
上記方法により得られるカーボンマイクロコイルは、非晶質の微小なコイル状炭素繊維(通常は2本のらせんがコイル状に巻いた炭素繊維)であり、そのらせんピッチは0.01〜1μm、コイルの直径は1〜10μm、コイルの長さは1μm〜10mm程度である。
上記の各添加物は、充填材14の誘電損失、磁性損失を大きくしたり、充填材14中におけるカーボンマイクロコイル141の密度を低下させたりして、全体の見かけのインダクタンスを変化させ、フィルタの性能を向上させることができる。一般的には、添加物の混合量を多くすると、除去されるノイズの周波数領域が広くなる傾向がある。
また、絶縁層15の厚さは、上述の絶縁層11A、11Bの場合と同様に、絶縁層15がコンデンサにおける誘電体として機能することを考慮して適宜設定することができる。具体的には、5〜100μm程度とすることが適当である。
図3のプリント配線板1は、充填材14と絶縁層15との間に導電コーティング16を形成したことを特徴としている。導電コーティング16は、導電層12Aと導電層12Bとを接続している。この実施形態は、充填材14の導電性が比較的低い場合に適しており、層間の導通を確保しつつ有効なフィルタを構成することができるため好ましい。
また、上述のように、カーボンマイクロコイル141とバインダー142との混合物から柱状等の充填材14を成形し、その充填材14の周面に、金属材料をめっき等して導電コーティング16を施し、それをスルーホール13内に挿入しても良い。
上記の導電コーティング16の厚さは、導通を確保するため15μm以上有することが好ましい。その他の構成については、上記実施の形態(1)に準ずる。
さらに、上記実施の形態(1)及び(2)では、プリント配線板1が、単一の炭素質基板10の両面に導電層12A、12Bを設けた2層のプリント配線板であるが、これに限定されることなく、例えば、上から導電層(信号層)、絶縁層、炭素質基板(グランド層)、絶縁層、導電層(電源層)、絶縁層、炭素質基板(グランド層)、絶縁層、導電層(信号層)、等のように3層以上の多層プリント配線板を構成することもできる。
10 炭素質基板
11A、11B 絶縁層
12A、12B 導電層
13 スルーホール
131 内周面
14 充填材
141 カーボンマイクロコイル
142 バインダー
15 絶縁層
16 導電コーティング
Claims (7)
- 炭素質基板に、複数の導電層がそれぞれ絶縁層を介して積層された高熱伝導性プリント配線板であって、前記高熱伝導性プリント配線板にスルーホールが形成され、前記スルーホールには、50〜80wt%のカーボンマイクロコイルが混合された充填材が埋め込まれて前記複数の導電層を接続し、前記充填材と前記スルーホールの内周面との間に絶縁層が設けられてなり、
前記スルーホールの中で多数のカーボンマイクロコイルが3次元的に絡み合って接触し、前記複数の導電層の間においてローパスフィルタを構成することを特徴とする高熱伝導性プリント配線板。 - 炭素質基板の両面に、導電層がそれぞれ絶縁層を介して積層された高熱伝導性プリント配線板であって、前記高熱伝導性プリント配線板にスルーホールが形成され、前記スルーホールには、50〜80wt%のカーボンマイクロコイルが混合された充填材が埋め込まれて前記両面の導電層を接続し、前記充填材と前記スルーホールの内周面との間に絶縁層が設けられ、前記スルーホールの中で多数のカーボンマイクロコイルが3次元的に絡み合って接触し、前記両面の導電層を接続する充填材に対し並列となるように、前記導電層と前記炭素質基板、及び前記充填材と前記炭素質基板によってコンデンサが形成されコンデンサ入出力型フィルタの等価回路が構成されてなる高熱伝導性プリント配線板。
- 請求項1又は2記載の高熱伝導性プリント配線板において、充填材と絶縁層との間に導電コーティングが施され、前記導電コーティングにより複数の導電層が接続されることを特徴とする高熱伝導性プリント配線板。
- 請求項1〜3のいずれか記載の高熱伝導性プリント配線板において、充填材に、グラファイト粉末、カーボンナノチューブ、フェライト粉末、金属粉末、マイクロバルーンから選ばれる一以上の添加物がさらに混合されることを特徴とする高熱伝導性プリント配線板。
- 請求項1〜4のいずれか記載の高熱伝導性プリント配線板において、炭素質基板は、炭素繊維が基板の厚さ方向に沿って配列した炭素複合材料であることを特徴とする高熱伝導性プリント配線板。
- 請求項1〜5のいずれか記載の高熱伝導性プリント配線板において、炭素質基板が微細孔を有しており、前記微細孔に、無機コーティング剤、熱硬化性樹脂、又は金属が含浸されていることを特徴とする高熱伝導性プリント配線板。
- 請求項1〜6のいずれか記載の高熱伝導性プリント配線板において、絶縁層に、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素から選ばれる一以上の熱伝導性フィラーが含有されることを特徴とする高熱伝導性プリント配線板。
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