JP4173131B2 - 通信制御装置、通信制御方法、ノード及び通信システム - Google Patents

通信制御装置、通信制御方法、ノード及び通信システム Download PDF

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Description

本発明は、通信制御装置、通信制御方法、ノード及び通信システムに関し、例えば、センサネットワーク、あるいはLAN(Local Area Network)に接続された複数の機器から構成されるシステム等のように、空間に分散配置された多数のノードや移動体に設置されたノードが、相互にデータ通信を行う場合において、電波干渉等による通信データの衝突を回避する方法に関するものである。
空間に分散配置された複数のノードが衝突することなくデータ通信し得るようにするための方式として、TDMA方式、CSMA(CSMA/CAやCSMA/CD)方式などがある(非特許文献1)。
しかし、TDMA方式の場合、タイムスロットの割り当てを行なう集中管理ノードが故障したときに通信システムがダウンしてしまう等の問題があるために、集中管理サーバを必要とせず、個々のノードが自律分散的にタイムスロットの割り当てを相互調整することによって、通信データの衝突を回避する方法が種々提案されている(特願2003−328530号、特願2004−257562号、特願2004−257567号)。
上記提案されている各ノードが自律分散的にタイムスロットの割り当てを調整する方法は、各ノードが近傍ノードとの間で周期的なインパルス信号の送受信により相互作用することで調整する技術である。
すなわち、非線形振動をモデル化した数式を用いて、他ノードがインパルス信号を発信するタイミングに応じて、自ノードがインパルス信号を発信するタイミングを調整する。これにより、各ノードおいて、自ノード及び他ノードのインパルス信号の発信タイミングが極力離れるような調整を相互に行うことにより、自律分散的なタイムスロットの獲得を実現することができる。
松下温、中川正雄編著、「ワイヤレスLANアーキテクチャ」、共立出版、1996年、p.47、53〜59、69
ところで、複数のノードを空間に配置する際の配置形態には、種々の形態が存在するが、その特別な場合として、複数のノードを格子状に配置する通信形態がある。これら複数のノードを格子状に配置した場合、原理的には、隣接ノード間だけでタイムスロットを相互分割する最適な時分割通信の形態が存在する。この通信形態は極めてタイムロスが小さく、理想的なレベルの高い通信効率を得ることができる。
しかし、上記ノードを格子状に配置する通信形態に、上述した各ノードが自律分散的にタイムスロットの割り当てを調整する方法を適用する場合、こうした最適な時分割通信を実現することはできない。すなわち、複数のノードを格子状に配置した場合に対して、理想的な通信効率が得られないという問題がある。
そのため、複数のノードを格子状に配置して有するシステムにおいても、集中管理サーバにより通信タイミングの指示されることなく、通信効率が高いデータ発信タイミングを自律分散的に調整することができる、通信制御装置、通信制御方法、ノード及び通信システムが望まれている。
かかる課題を解決するために、第1の本発明の通信制御装置は、通信システムを構成する格子状に配置された複数のノードのそれぞれに搭載されるものであって、内部で変化される位相の状態に基づいて自ノードからのデータ発信のタイミングを決定する通信タイミング計算手段を備えた通信制御装置であって、通信タイミング計算手段は、近傍ノードのデータ発信のタイミングを表す位相を反映させた近傍ノードからの状態変数信号の受信に基づき、予め定められている位相応答関数及び同期アライアンス関数に基づく時間発展規則に従って自ノードの位相の状態を変化させる位相算出部と、自ノードと近傍ノードとの位相差を観測し、その位相差に基づいて、自ノードからのデータ発信のタイミングと近傍ノードのデータ発信のタイミングとの衝突率を算出する衝突率算出部と、状態変数信号に含まれている近傍ノードの位置情報と衝突率とに応じて、位相応答関数の特性を変化させる位相応答関数特性決定部と、状態変数信号に含まれている近傍ノードの位置情報に応じて、同期アライアンス関数の特性を変化させる同期アライアンス部とを備え、同期アライアンス部は、状態変数信号の通信可能な相互作用範囲内の特定空間位置に近傍ノードが存在する場合、近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を同期させる力学的特性を同期アライアンス関数に与え、位相応答関数特性決定部は、特定空間位置以外の近傍ノードが存在する場合、近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を反発させる方向に変化させる力学的特性を位相応答関数に与えることを特徴とする。
また、第2の本発明のノードは、上記第1の本発明の通信制御装置を有することを特徴とする。
さらに、第3の本発明の通信システムは、上記第2の本発明のノードを複数格子状に配置して有することを特徴とする。
さらにまた、第4の本発明の通信制御方法は、通信システムを構成する格子状に配置された複数のノードのそれぞれに搭載されるものであって、内部で変化される位相の状態に基づいて自ノードからのデータ発信のタイミングを決定する通信タイミング計算工程を備えた通信制御方法であって、通信タイミング計算工程は、近傍ノードのデータ発信のタイミングを表す位相を反映させた近傍ノードからの状態変数信号の受信に基づき、予め定められている位相応答関数及び同期アライアンス関数に基づく時間発展規則に従って自ノードの位相の状態を変化させる位相算出サブ工程と、自ノードと近傍ノードとの位相差を観測し、その位相差に基づいて、自ノードからのデータ発信のタイミングと近傍ノードのデータ発信のタイミングとの衝突率を算出する衝突率算出サブ工程と、状態変数信号に含まれている近傍ノードの位置情報と衝突率とに応じて、位相応答関数の特性を変化させる位相応答関数特性決定サブ工程と、状態変数信号に含まれている近傍ノードの位置情報に応じて、同期アライアンス関数の特性を変化させる同期アライアンスサブ工程とを備え、同期アライアンスサブ工程は、状態変数信号の通信可能な相互作用範囲内の特定空間位置に近傍ノードが存在する場合、近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を同期させる力学的特性を同期アライアンス関数に与え、位相応答関数特性決定サブ工程は、特定空間位置以外の近傍ノードが存在する場合、近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を反発させる方向に変化させる力学的特性を位相応答関数に与えることを特徴とする。
本発明の通信制御装置、通信制御方法、ノード及び通信システムによれば、複数のノードを格子状に配置して有するシステムにおいても、集中管理サーバにより通信タイミングの指示されることなく、通信効率が高いデータ発信タイミングを自律分散的に調整することができる。
(A)第1の実施形態
以下、本発明による通信制御装置、通信制御方法、ノード及び通信システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
本実施形態では、図2に示すように、複数のノードをほぼ格子状に配置(ここでは隣接ノード間の距離をLとして説明する)した場合を想定する。図2において、各ノードを示す番号は、位相が一致する(同期)ノードを示し、定常状態では同一番号のノードはすべて同期して動作し、番号の異なるノード間では位相差が形成されることを示す。また図2において、各ノードのデータ通信範囲(データ信号が到達する範囲)を、隣接ノード間の距離に等しいLとし、また、ノード間の相互作用範囲(相互作用信号が到達する範囲)を√5L(=51/2L)と仮定する。従って、図2において、例えば、ノードAとノードBが同時にデータ通信を行ったとしても、電波干渉等による通信データの衝突は発生しない。逆に、ノードAと、それを中心とする半径2Lの円内のノードが同時にデータ通信を行った場合、通信データの衝突が発生し得る。
(A−1)第1の実施形態のノード
図3は、各ノード10の構成を示す機能ブロック図である。図3において、ノード10は、インパルス信号受信手段11、通信タイミング計算手段12、インパルス信号送信手段13、同調判定手段14、データ通信手段15及びセンサ16を有する。なお、通信制御装置としては、インパルス信号受信手段11、通信タイミング計算手段12、インパルス信号送信手段13及び同調判定手段14が構成要素となっている。
インパルス信号受信手段11は、近傍ノード(例えば、そのノードの発信電波が届く範囲に存在する他のノード)が発信した出力インパルス信号を入力インパルス信号Sin11として受信するものである。ここで、インパルス信号はタイミング信号として授受されるものであり、例えば、ガウス分布形状等のインパルス形状を有するものである。なお、相互作用信号として用いるインパルス信号には、自ノードの空間位置を示す情報(アドレス情報)を付加(重畳)したものである。すなわち、後述するインパルス信号送信手段13が送信する出力インパルス信号Sout11は、特定の位相で発信することを前提とするタイミング信号を、自ノードの空間位置を示す情報に基づいて変調した信号とする。なお、受信インパルス信号Spr11は、入力インパルス信号Sin11を波形整形したものでも良く、信号を再生成したものであっても良い。
通信タイミング計算手段12は、その詳細は後述するが、受信インパルス信号Spr11に基づいて、当該ノードでの通信タイミングを規定する位相信号Spr12を形成して出力するものである(なお、受信インパルス信号Spr11がない場合であっても位相信号Spr12を形成して出力する)。ここで、当該ノードiの位相信号Spr12の時刻tでの位相値をθ(t)とすると、通信タイミング計算手段12は、受信インパルス信号Spr11に基づいて、後述するように、位相信号Spr12(=θ(t))を非線形振動リズムで変化させる。この位相信号の変化は、近傍のノード同士が逆相(振動の位相が反転位相)又は他の位相になろうとする非線形特性を実現し、その特性を用いて衝突回避を実行させようとしたものである。すなわち、近傍のノード間における出力インパルス信号Sout11の発信タイミングなどが衝突しないように、適当な時間関係(時間差)を形成させようとしている。
通信タイミング計算手段12の機能の意味合いを図4及び図5を用いて詳述すると以下の通りである。なお、図4及び図5に示す状態変化は、インパルス信号送信手段13の機能も関係している。
図4及び図5は、ある1つのノードに着目したときに、着目ノード(自ノード)と近傍ノード(他ノード)との間に形成される関係、すなわち、それぞれの非線形振動リズム間の位相関係が時間的に変化していく様子を示している。
図4は、着目ノードiに対して近傍ノードjが1個存在する場合である。図4において、円上を回転する2つの質点の運動は、着目ノードと近傍ノードに対応する非線形振動リズムを表しており、質点の円上の角度がその時刻での位相信号の値を表している。質点の回転運動を縦軸あるいは横軸に射影した点の運動が非線形振動リズムに対応する。後述する(1)式に基づく動作により、2つの質点は相互に逆相になろうとし、仮に、図4(a)に示すように初期状態で2つの質点の位相が近くても、時間経過と共に、図4(b)に示す状態(過渡状態)を経て、図4(c)に示すような2つの質点の位相差がほぼπである定常状態に変化していく。
2つの質点は、それぞれ固有角振動数パラメータωを基本的な角速度(自己の動作状態を遷移させる基本速度に相当)とする回転をしている。ここで、ノード間でインパルス信号の送受信に基づく相互作用が生じると、これらの質点は、それぞれ角速度を変化(緩急)させ、結果的に、適当な位相関係を維持する定常状態に到達する。この動作は、2つの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係を形成するものと見ることができる。定常状態では、後述するように、それぞれのノードが所定の位相(例えば0)のときに出力インパルス信号Sout11を発信するとした場合、互いのノードにおける発信タイミングは、適当な時間関係を形成していることになる。
また、図5は、着目ノードiに対して2個の近傍ノードj1、j2が存在する場合を表している。近傍ノードが2個存在する場合においても、上述と同様に、それぞれの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係(時間的な関係に関する安定性)を形成する。近傍ノード数が3個以上の場合についても同様である。
上述の安定な位相関係(定常状態)の形成は、近傍ノード数の変化に対して非常に適応的(柔軟)な性質を持つ。例えば、今、着目ノードに対して近傍ノードが1個存在し、安定な位相関係(定常状態)が形成されているときに、近傍ノードが1個追加されたとする。定常状態は一旦崩壊するが、過渡状態を経た後、近傍ノードが2個の場合における新たな定常状態を再形成する。また、近傍ノードが削除された場合や故障等により機能しなくなった場合においても、同様に適応的な動作をする。
以上、図4及び図5は、着目ノードiに対して近傍ノードjが1個の場合(図4参照)及び2個の場合(図5参照)における安定な位相関係(定常状態)の形成について説明したが、本実施形態では、複数のノードが格子状に配置されている場合を想定しているので、後述するように、着目ノードiに対して4個の近傍ノードとの間の位相関係が問題となる。そこで、通信タイミング計算手段12は、後述する(1)式を用いることで相互に安定な位相関係の形成を導くものである。
また、通信タイミング計算手段12は、得られた位相信号Spr12(=θ(t))を、インパルス信号送信手段13、同調判定手段14及びデータ通信手段15に出力する。
インパルス信号送信手段13は、位相信号Spr12に基づいて、出力インパルス信号Sout11を送信する。すなわち、位相信号Spr12が所定の位相α(0≦α<2π)になると、出力インパルス信号Sout11を送信する。ここで、所定の位相αは、予めシステム全体で統一しておくことが好ましい。以下では、α=0にシステム全体で統一されているとして説明する。なお、図4の例で言えば、ノードiとノードjとでは、定常状態で相互の位相信号Spr12がπだけずれているので、α=0にシステム全体で統一しても、ノードiからの出力インパルス信号Sout11の送信タイミングと、ノードjからの出力インパルス信号Sout11の送信タイミングとはπだけずれている。
同調判定手段14は、自ノードや1又は複数の近傍ノードの間で行われる出力インパルス信号Sout11の送信タイミングの相互調整が、「過渡状態」(図4(b)、図5(b)参照)あるいは「定常状態」(図4(c)、図5(c)参照)のいずれの状態にあるかを判定するものである。同調判定手段14は、受信インパルス信号Spr11(他ノードの出力インパルス信号Sout11に対応する)及び出力インパルス信号Sout11の発生タイミングを観測し、インパルス信号を授受し合う複数のノードの発生タイミング間の時間差が時間的に安定している場合に「定常状態」であると判定する。なお、この実施形態の場合には、同調判定手段14には、自ノードからの出力インパルス信号Sout11の発生タイミングを捉えるための信号として、出力インパルス信号Sout11に代えて、位相信号Spr12が入力されている。
同調判定手段14は、例えば、以下の(a)〜(d)のような処理を実行して同調判定を行う。
(a)受信インパルス信号Spr11の発生タイミングにおける位相信号Spr12の値βを、位相信号Spr12の1周期に亘って観測する。ここでは、上記の観測を行った結果、得られる位相信号Spr12の値βをそれぞれ、β,β,…,β(0<β<β<…<β<2π)とする。
(b)観測された位相信号Spr12の値βに基づいて、隣接値間の差(位相差)△1=β,△2=β−β,…,△N=β−β(N−1)を算出する。
(c)上記(a)及び(b)の処理を位相信号Spr12の周期単位に行い、相前後する周期における位相差△の変化量(差分)γ=△1(τ+1)−△1(τ),γ=△2(τ+1)−△2(τ),…,γ=△N(τ+1)−△N(τ)を算出する。ここで、τは、位相信号Spr12のある周期を示しており、τ+1は、位相信号Spr12のその次の周期を示している。
(d)上述の変化量γが、いずれも微小パラメータ(閾値)εよりも小さい場合、すなわち、γ<ε,γ<ε,…,γ<εの場合に、「定常状態」であると判定する。
なお、γ<ε,γ<ε,…,γ<εという条件がM周期にわたって満足される場合を定常状態と判定するようにしても良い。Mの値を大きくするほど、より安定性の高い状態で「定常状態」と判定できる。また、一部の受信インパルス信号Spr11に基づいて、「定常状態」の判定を行っても構わない。
同調判定手段14は、位相信号Spr12の周期毎に、判定結果を示す同調判定信号Spr13と、受信インパルス信号Spr11の発生タイミングにおける位相信号Spr12の値βの最小値β1をスロット信号Spr14としてデータ通信手段15に出力する。
なお、最小値βをスロット信号Spr14として出力するようにしたのは、上述したように、α=0としていることと関係しており、αの値の選定によっては、スロット信号Spr14に適用するβの値は変化する。
当該ノード10は、他のノードから受信したデータを中継して送信する機能と、自己を送信元とするデータ送信機能とを有している。
センサ16は、後者の場合の一例として書き出したものであり、例えば、音や振動の強度、化学物質の濃度、温度など、物理的又は化学的な環境情報Sin13を検知して観測データSpr15をデータ通信手段15に出力するものである。
また、前者の場合には、データ通信手段15に、近傍ノードが送信したデータ信号(出力データ信号Sout12)が入力データ信号Sin12として受信される。
データ通信手段15は、観測データSpr15及び又は入力データ信号Sin12(両方の場合を含む)を出力データ信号Sout12として他ノードに送信するものである。データ通信手段15は、この送信を、同調判定信号Spr13が「定常状態」を示す場合に、後述するタイムスロット(システムなどが割り当てた固定的な時間区間ではないが、「タイムスロット」という用語を用いる)で行ない、同調判定信号Spr13が「過渡状態」を示す場合には送信動作を停止している。なお、出力データ信号Sout12は、出力インパルス信号Sout11と同一周波数帯で送信周波数とするものであっても良い。
タイムスロットは、位相信号Spr12の位相θ(t)がδ≦θ(t)≦β−δである期間である。タイムスロットの開始点(そのときの位相信号の値をδとする)は、出力インパルス信号Sout11の送信が終了したタイミングであり、タイムスロットの終了点(そのときの位相信号の値をβ−δとする)は、位相信号Spr12の周期毎の最初の受信インパルス信号Spr11のタイミングより多少のオフセット分δ2だけ前のタイミングとしている。δやδは、当該ノード10の近傍の無線空間で、インパルス信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)と、データ信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)とが同時に存在しないことを補償するためのごく短い時間に対応する位相幅である。δ及びδは、例えば、ノード10の設置状況下で実験的に決定する。
例えば、図4(c)に示すような「定常状態」の場合、ノードiは、位相θが0から出力インパルス信号Sout11を送信し始め、位相θがδになる前に、出力インパルス信号Sout11の送信を終了させておき、位相θがδから出力データ信号Sout12を送信し始め、位相θがβ−δになると(但しβ≒π)、出力データ信号Sout12の送信が終了させ、それ以降、位相θが再び0になるまで、出力インパルス信号Sout11の送信も出力データ信号Sout12の送信も停止させる。他方のノードjも、位相θに基づいて同様な動作を実行するが、位相θと位相θとがほぼπだけずれているので、送信動作が競合することはない。ノード数が3以上の場合も同様に動作し、送信動作が競合することはない。
(A−2)通信タイミング計算手段12の詳細
続いて、上述した通信タイミング計算手段12の詳細な構成について図面を参照して説明する。
図1は、通信タイミング計算手段12の構成を示す機能ブロック図である。図1において、通信タイミング計算手段12は、インパルス信号復調手段21、位相拡散同期アライアンス手段22、インパルス信号変調手段23を有する。
ここで、上述したように、相互作用信号として用いるインパルス信号には、自ノードの空間位置を示す情報(アドレス情報)が含まれている。すなわち、出力インパルス信号Sout11は、特定の位相で発信することを前提とするタイミング信号を、自ノードの空間位置を示す情報に基づいて変調した信号とする。
インパルス信号復調手段21は、他ノードから受信した受信インパルス信号Spr11を復調して、他ノードの空間位置を示す情報と、その他ノードのタイミング信号とに分離するものである。
位相拡散同期アライアンス手段22は、内部に後述する同期アライアンス手段36を有し、インパルス信号復調手段21から他ノードの空間位置を示す情報と、その他ノードのタイミング信号とを受け取り、後述するように、それら他ノードの空間位置を示す情報及びタイミング信号とに基づいて、自ノードの通信タイミングを決定するための位相計算を実行するものである。また、位相拡散同期アライアンス手段22は、位相計算により得られた自ノードの位相信号Spr12を、インパルス信号変調手段23に与えると共に、インパルス信号送信手段13、同調判定手段14及びデータ通信手段15にも与えるものである。
インパルス信号変調手段23は、位相拡散同期アライアンス手段22の位相計算結果である自ノードの位相信号Spr12を受け取り、その自ノードの位相信号Spr12に基づいて自ノードのタイミング信号を生成し、空間位置を示す情報(自ノード)によりこれを変調する(得られる信号を変調インパルス信号とする)ものである。
ここで、タイミング信号の生成は、インパルス信号送信手段13における動作に基づいて行う。本実施形態では、インパルス信号送信手段13は、通信タイミング計算手段12で生成された変調インパルス信号を、出力インパルス信号として他ノードに発信する機能だけを担うものとする。
次に、位相拡散同期アライアンス手段22の詳細構成について、図6の機能ブロック図を参照しながら説明する。
図6において、位相拡散同期アライアンス手段22は、位相算出手段31、衝突率算出手段32、蓄積ストレス算出手段33、ストレス応答関数値算出手段34、位相応答関数特性決定手段35、同期アライアンス手段36を有する。
通信タイミング計算手段12は、上述したように、出力インパルス信号Sout11を決定するための計算を行うものである。通信タイミング計算手段12は、この発信タイミングを決定するための計算を、例えば、(1)式のような非線形振動をモデル化した数式を用いて行う。
Figure 0004173131
(1)式は、受信インパルス信号Spr11(相互作用範囲に存在する他ノードが発信した出力インパルス信号を受信することによって得られる信号)の入力に応じて、自ノード(ノードi)の非線形振動のリズムを時間的に変化させる規則(時間発展規則)を表す方程式である。
(1)式において、変数tは時間を表し、関数θ(t)は、時刻tにおける自ノードの非線形振動に対する位相を表す。関数θ(t)は、mod2π(2πで割った余り)の演算を施すことにより、常に、区間0≦θ(t)<2πの値を取るものとする。
また、△θij(t)は、(2)式に示すように、他ノードjの位相θ(t)から自ノードiの位相θ(t)を引くことにより得られる位相差である。各ノードが位相θ(t)=0のときに出力インパルス信号Sout11を発信すると仮定すると、自ノードiが観測可能な位相差△θij(t)は、他ノードjから出力インパルス信号Sout11を受信したタイミングにおける値のみであり、1周期に1回となる。
このとき、位相差△θij(t)は、(2)式に示されるように、△θij(t)=−θ(t)となる。ただし、位相差△θij(t)は、2πを加算した値にmod2π(2πで割った余り)の演算を施すことにより、便宜的に区間0≦△θij(t)<2πの値を取るものとする。本実施形態では、位相差△θij(t)を上記のように与えられる量とする。上記の説明では、各ノードが位相θ(t)=0のときに出力インパルス信号Sout11を発信すると仮定したが、このような仮定をしても一般性を失うものではない。
ωは、固有角振動数パラメータであり、各ノードが備える基本的なリズムを表す。ここでは、一例として、ωの値をあらかじめシステム全体で同一の値に統一しておくものと仮定する。
関数P(t)は、他ノードjが発信した出力インパルス信号Sout11を受信して得られる信号(受信インパルス信号)Spr11から、ノードjの空間位置を示す情報(アドレス情報)を分離(除去)したタイミング信号である。
本実施形態では、上述したように、出力インパルス信号Sout11は自ノードの空間位置を示す情報を付加(重畳)して発信することを前提とすることを述べた。すなわち、出力インパルス信号Sout11は、特定の位相で発信することを前提とするタイミング信号を、自ノードの空間位置を示す情報に基づいて変調した信号である。他ノードの出力インパルス信号Sout11を受信した際は、その信号を復調することにより、発信したノードの空間位置を特定することができる。この空間位置情報は、関数R(△θij(t))、及び関数H(△θij(t))を含む項の演算処理に用いられる。
関数R(△θij(t))は、受信インパルス信号Spr11の入力に応じて自ノードの基本的なリズムを変化させる応答特性を表現する位相応答関数である。位相応答関数R(△θij(t))は、他ノードの位相に対して、自ノードの位相θ(t)を斥力が働く方向に変化(反発)させる非線形特性を有する。(1)式において、記号Xは、自ノードの相互作用範囲に存在する反発させるべきノード集合を表す。集合Xは、自ノードの相互作用範囲に存在するノード集合から後述する集合Yに属する要素を除いた集合である。これにより、関数R(△θij(t))を含む項は、受信インパルス信号Spr11が、相互作用範囲内に存在する反発させるべき他ノード(すなわち、相互作用範囲内の他ノードから後述する特定の他ノードを除いた他ノード)が発信したインパルス信号である場合に対してのみ、他ノードの位相に対して自ノードの位相を反発させる力学的特性を発現する。なお、反発させるべき他ノードからのインパルス信号であるか否かの判断は、空間位置情報に基づいて行なわれる。
関数H(△θij(t))は、位相応答関数R(△θij(t))と同様に、受信インパルス信号の入力に応じて自ノードの基本的なリズムを変化させる応答特性を表現する関数であるが、その応答特性が位相応答関数R(△θij(t))とは異なる。つまり、関数H(△θij(t))は、自ノードとの相互作用範囲内に存在する特定の他ノードの位相に対して自ノードの位相を同期させる方向に変化させる力学的特性(非線形性特性)を備えるものである。なお、同期アライアンス手段36が、(1)式の関数H(△θij(t))を含む項の演算処理を行ない、以下では、関数H(△θij(t))を同期アライアンス関数という。
ここで、自ノードとの相互作用範囲内とは、自ノードと他ノードとの関係で、相互作用信号であるインパルス信号が到達可能な範囲内をいう。また、特定の他ノードとは、相互作用範囲内に位置する他ノードのうち、予め定められた特定の位置近傍に位置するノードあるいは特定の範囲内に位置するノードをいう。
例えば、本実施形態における特定の他ノードとは、図2において、自ノードの空間位置から見て、(2L、L)、(−L、2L)、(−2L、一L)、(L、−2L)の座標位置近傍(前記座標位置を中心とする半径rの円内の位置、r<L)に存在するノードとする。ここで、記号(*、**)は、自ノードから水平方向に距離*、垂直方向に距離**の座標位置(空間座標位置)を示す。すなわち、図2のノードAに着目すると、相互作用範囲に存在する「Aと同一模様のノード」となる。ただし、上記の同期させる特定の他ノードの座標位置は、これと鏡映関係にある(−2L、L)、(L、2L)、(2L、−L)、(−L、−2L)の座標位置近傍であっても構わない。なお、特定の他ノードからのインパルス信号であるか否かの判断は、空間位置情報に基づいて行なわれる。
また、他ノードの位相に対して自ノードの位相を同期させる方向に変化させる力学的特性とは、自ノードの位相を特定の他ノードの位相に同期(位相を一致)させるように働く非線形特性をいい、この特性を発現させることにより、特定の他ノードの位相と自ノードの位相を同期させることで、特定の他ノードと自ノードの間での位相関係の形成を実行せず、特定の他ノード以外の他ノードとの間での位相関係の形成を実行させることができる。なお、特定の他ノード以外の他ノードとの間での位相関係の調整は、上述した位相応答関数R(θij(t))による力学的特性に基づいてなされる。
なお、(1)式において、記号Yiは、自ノードの相互作用範囲内に存在する同期させるべきノード集合を表す。これにより、(1)式の同期アライアンス関数H(△θij(t))を含む項は、受信インパルス信号Spr11が、相互作用範囲内に存在する同期させるべき特定の他ノードが発信したインパルス信号である場合に対してのみ、自ノードの位相を同期させる力学的特性を発現することができる。
このような特性を備える同期アライアンス関数H(△θij(t))の例を下記式(2)に示す。ただし、上記の力学的特性を実現する関数形は、以下の例に限定されないことに注意されたい。
Figure 0004173131
関数ξ(Si(t))は、自ノードと他ノードとの相対位相差が小さい場合にストレスを蓄積し、蓄積されたストレス値Si(t)に応じてランダムな大きさで位相シフト(位相状態変化)を実行する働きをする項である。ここで、相対位相差とは次のように定義される量である。
位相差△θij、相対位相差Eとすると
Δθij≦π のとき E=Δθij …(5)
Δθij>π のとき E=2π−Δθij …(6)
すなわち、関数ξ(S(t))は、蓄積されたストレス値S(t)に対する応答特性を表現する関数である。以下では、この関数ξ(S(t))をストレス応答関数という。
第1の実施形態は、集中管理ノードが存在しなくても、各ノードが近傍ノードと相互作用し、非線形振動を表現するモデルに従っている位相信号を変化させることによって、自律分散的にタイムスロットの割り当てを決定できることに特徴を有し、また、自ノードと近傍ノードとの相対位相差が非常に小さい状態であっても定常状態として安定化してしまうノードが発生するような自体を避けるべく、非線形振動を表現するモデルにストレス応答関数ξ(S(t))を導入した。
次に、本実施形態における位相応答関数R(Δθij(t))及びストレス応答関数ξ(S(t))の具体例について説明するが、その前にこれら関数に関連する用語、(ア)「データ発信の衝突」、(イ)「衝突率(衝突時間を基準とする場合)」、(ウ)「衝突率(衝突回数を基準とする場合)」について説明する。
(ア)「データ発信の衝突」
(ア−1) 各ノードがデータの発信を行うために最低限必要なタイムスロットの大きさWminに対応する位相幅をφcとする。位相幅φcは、Wminと固有振動数パラメータωの積(φc=Wmin・ω)として算出することができる。また、Wminは、用途等に応じて決まる定数パラメータである。
(アー2) 各ノードにおいて、インパルス信号を受信可能な空間的距離範囲に存在する近傍ノードとの相対位相差が、上記位相幅φcよりも小さい場合は「データ発信の衝突が生起している」ものとする。複数の受信インパルス信号Spr11に対して、1つでも相対位相差が位相幅φcよりも小さいものが存在する場合は衝突が生起しているものとする。
(イ)「衝突率(衝突時間を基準とする場合)」の算出方法の一例
自ノード(ノードi)において、時刻tにデータ発信の衝突が生起しているか否かを表す関数として、関数x(t)を(7)式に示すように定義する。
Figure 0004173131
関数x(t)は、時刻tに衝突が生起しているとき(collision)に1、そうでないとき(else)に0の値を取る関数である。すると、n周期間における累積衝突時間y(t)は、(8)式に示すように、関数x(t)の値をn周期に渡って累積(時間積分)することによって得られる。(8)式において、Tはノードiの周期を表す。累積衝突時間y(t)は、n周期間において関数x(t)が1の値を取る時間の総和を表し、関数x(t)の値を観測することによって算出することができる。
このような累積衝突時間y(t)を最大累積衝突時間で規格化した値c(t)は、n周期間に生起した衝突の時間的な割合を表し、これを衝突率と定義する。ここで、最大累積衝突時間は、累積衝突時間y(t)の最大値である。各ノードが、大きさWmin(=φc/ω)のタイムスロットを用いて発信を行うと仮定すると、n周期間における累積衝突時間の最大値は、n・Wmin(=n・φc/ω)となる。従って、衝突率c(t)は、(9)式を用いて算出することができる。
但し、各ノードの位相θが(1)式に従って変化するため、周期Tは、毎周期ごとに異なる値を取り得る。このため、累積衝突時間y(t)が、最大累積衝突時間n・Wminを超える場合、すなわち、衝突率c(t)が1を超える場合が発生し得る。ここでは、衝突率c(t)が1を超える場合は、1として扱うものとする。
上記の衝突率の定義では、一例として、同時に複数の衝突が生起しているか否かを考慮しない形態を示した。しかし、衝突率の定義方法は、上記の方法に限定されないものである。例えば、同時に複数の衝突が生起している場合を考慮する方法を用いることも可能である。また、上記の衝突率の定義では、衝突時間を基準に衝突率を算出したが、衝突回数を基準に衝突率を算出することも可能である。
(ウ)「衝突率(衝突回数を基準とする場合)」の算出方法の一例
(S1)1周期単位に衝突が生起したか否かを観測する。但し、1周期内に衝突が複数回生起した場合においても、衝突の有無だけを問題にするものとし、カウントを1とする。
(S2)n周期間に生起した衝突回数、すなわち、累積衝突数γをカウントする。
(S3)そして、累積衝突数γを最大累積衝突数(n周期間に生起し得る最大衝突回数n)で規格化した値を衝突率と定義する。すなわち、衝突率c(t)を、次の(10)式によって定義し、(10)式を用いて、衝突率を算出する。
(t)=γ/n …(10)
(10)式の定義式を用いて衝突率を算出する場合においても、(9)式の場合と同様に、衝突率が1を超える場合が発生し得る。衝突率が1を超える場合は、1として扱うものとする。また、上記の衝突率の定義では、一例として、1周期内における複数回の衝突を考慮しない形態(衝突の有無だけを問題にする形態)を示したが、これを考慮する形態を用いることも可能である。
以上の(イ)及び(ウ)の項で説明した衝突率の定義(衝突時間を基準とする場合、及び、衝突回数を基準とする場合)は、衝突時間や衝突回数を一般化して衝突量と呼ぶことにすると、次のように表現することができる。
n周期間における累積衝突量を観測し、それを最大累積衝突量(n周期間に生起し得る最大衝突量)で規格化した値を衝突率と定義する。
図6における衝突率算出手段32は、(9)式又は(10)式で定義された衝突率c(t)を算出するものである。
次に、位相算出手段31が内部で算出処理している位相応答関数R(Δθij(t))の具体例とその機能を説明する。
(1)式は、上述したように、受信インパルス信号Spr11の入力に応じて、自ノード(ノードi)の非線形振動のリズムを時間的に変化させる規則(時間発展規則)を表す方程式である。ここで、受信インパルス信号Spr11は、近傍ノードが発信した出力インパルス信号Sout11に対応する。各ノードが(1)式に基づいて動作することにより、近傍ノード間において相互に安定な位相差を形成しようとする。その際、第1の実施形態では、位相応答関数R(Δθij(t))の特性を、衝突率c(t)の変化に応じて変化させる。図6における位相応答関数特性決定手段35は、衝突率c(t)に応じて位相応答関数R(Δθij(t))の特性を変化させる動作を実行する(すなわち、後述する(12)式の動作を実行する)。
第1の実施形態の位相応答関数R(Δθij(t))の具体例は、(11−1)式〜(11−4)式及び(12)式で与えられる。
Figure 0004173131
(11−1)式〜(11−4)式及び(12)式は、近傍ノード間において均等な位相差が形成されるようにした位相応答関数R(Δθij(t))である。上式において、pは均等な位相差を決定する定数パラメータである。均等な位相差が、1周期をp分割した時間に対応する位相幅2π/pになるように定められている。pの最適な値は、ノードの配置状態等により変化するため、実験的に決定する。位相幅2π/pは、データ発信に最低限必要な位相幅φc以上の値を取る(2π/p≧φc)。また、α及びbは定数パラメータであり、その値はpと同様に実験的に決定する。
但し、位相応答関数R(Δθij(t))の関数形は上記のものに限定されないことは勿論である。自ノードと近傍ノードとの相対位相差を、衝突率c(t)の値に応じて変化させる関数は、種々の形態(関数形)を用いて実現可能である。
次に、蓄積ストレス算出手段33及びストレス応答関数値算出手段34の順次の算出処理によって求められるストレス応答関数ξ(S(t))の具体例とその機能とを説明する。
ストレス応答関数ξ(S(t))は、例えば、以下の(13−1)式、(13−2)式、(14−1)式、(14−2)式及び(15)式によって規定されるものである。
Figure 0004173131
(15)式における関数s(c(t))は、時刻tにおける衝突率c(t)に対するストレス値を表す関数である。例えば、衝突率c(t)が高いほど、大きなストレス値を示すような特性を備える関数として実現する。一例としては、シグモイド関数などの非線形関数を用いて、衝突率c(t)の増大とともに、急激に大きなストレス値を示すような特性を備える関数が挙げられる。
(15)式で定義される関数S(t)は、時刻tにおけるストレス値s(c(t))を蓄積(時間積分)した値を示す関数である。蓄積する時間区間は、前回、蓄積されたストレス値S(t)に応じてランダムな位相シフトを実行した時刻tsから現在の時刻tまでである。つまり、関数S(t)は、ランダムな位相シフトを実行すると、一旦、値がリセットされ、その時刻から再度ストレス値s(c(t))を蓄積していく動作を繰り返す。関数S(t)における積分演算は、時間tが離散化して与えられる場合、各時刻におけるストレス値s(c(t))の総和として計算することができる。蓄積ストレス算出手段33が、蓄積ストレスS(t)を算出する。
(14−1)式又は(14−2)式で定義される関数q(S(t))は、蓄積されたストレス値S(t)に応じた確率で乱数値を返す関数である。確率S(t)で値μを返し、確率1−S(t)で値0を返す。値μは、区間ε≦μ<δ内の乱数であり、値ε及びδは、実験的に決定する定数パラメータである。
ストレス応答関数ξ(S(t))は、蓄積されたストレス値S(t)をn周期ごとに評価し、それに応じた確率で乱数値(μ又は0)を返す関数である。ストレス応答関数ξ(S(t))を、ストレス応答関数値算出手段34が算出する。
従って、上述した(1)式に示すように、非線形振動のモデルに対してストレス応答関数ξ(S(t))を導入することにより、(I)蓄積されたストレス値Si(t)がn周期ごとに評価され、(II)その評価値に基づく確率でランダムな位相シフトが実行される、という動作が実現される。つまり、衝突によるストレス値の蓄積が大きい場合ほど、高い確率でランダムな位相シフトが実行されることになる。n周期の整数倍の時刻以外では、ストレス応答関数ξ(S(t))の値は0であり、ランダムな位相シフトは実行されない。但し、ストレスの蓄積は、前述したようにn周期間とは限らず、前回、ランダムな位相シフトを実行した時刻tsから現在の時刻tまでであることに注意を要する。これは、例えば、ストレス値s(c(t))が小さくても、n周期以上の長時間に渡って持続的に蓄積され続けると、やがてストレス値の蓄積S(t)が大きくなり、ランダムな位相シフトが実行され得ることを意味する。
位相算出手段31は、ストレス応答関数値ξ(S(t))を適用しながら、(1)式によって定まる位相θ(t)を算出する。
なお、以上のような演算を適宜実行する通信タイミング計算手段12を、ソフトウェアによって実現しても良く、また、演算を実行する電子回路群によるハードウェアによって実現しても良く、さらには、ソフトウェアとハードウェアとを混在させて実現しても良い。
また、例えば、(1)式で示した演算の実行手段は、文献2「戸川隼人著、「UNIXワークステーションによる科学技術計算ハンドブック―基礎篇C言語版」、サイエンス社発行」に開示されるルンゲ・クッタ法などの一般的なソフトウェアとしてノード上に実装することができる。ルンゲ・クッタ法は、微分方程式を差分化(連続時間変数tを離散化)して得られる差分方程式(漸化式)を用いて状態変数の変化(時間発展)を計算する手法の一つである。また、同文献に開示される形態と同様に、他の差分化方法により得られる差分方程式を用いて状態変数の変化を計算することも可能である。
続いて、図2の各ノードが(1)式で示した演算を実行することにより、相互作用範囲のノード間に適切な位相関係が形成される。図7は、図2におけるノードAに着目した場合に、ノードAとその相互作用範囲のノードとの間に形成される位相関係の例を示したものである。
図7において、着目ノードAは、隣接する4個のノード(図2においてノードAの上下左右に位置するノード)との間で、1周期を5分割する位相関係を形成する。また、ノードAの相互作用範囲に存在する隣接ノード以外のノードは、ノードAまたは隣接ノードのいずれかと位相が一致する。つまり、図2において同一模様のノードの位相が一致する。このような位相関係を形成することにより、着目ノードAは、データ通信範囲に存在する隣接ノードとの間だけで1周期を5分割してタイムスロットを獲得することが可能になる。
図7では、ノードAに着目して説明したが、図2における全てのノードが、自ノードの相互作用範囲のノードとの間に同様の位相関係を形成する(ただし、システム境界領域に位置するノードの場合は多少異なる)。したがって、データ通信範囲の隣接ノード間だけで相互にタイムスロットを分け合う最適な時分割通信の形態が実現可能となる。この通信形態は極めてタイムロスが小さく、理想的なレベルの高い通信効率を得ることができる。
(A−3)第1の実施形態の効果
以上、第1の実施形態によれば、複数のノードがインパルス信号を送受信することによって自律分散的にタイムスロット割り当ての相互調整を行うデータ通信方法において、通信タイミング計算手段の構成に対して、同期アライアンス手段を新たに導入すると共に、相互作用信号として用いるインパルス信号に、自ノードの空間位置を示す情報(アドレス情報)を付加(重畳)した信号を送受信することにより、ノードを格子状に配置した場合に、隣接ノード間だけで相互にタイムスロットを分け合う最適な時分割通信の形態を実現することが可能となる。その結果、極めてタイムロスが小さい、理想的なレベルの高い通信効率を得ることができる。
(B)第2の実施形態
次に、本発明による通信制御装置、通信制御方法、ノード及び通信システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら詳説する。
(B−1)第2の実施形態のノード
第1の実施形態では、各ノードが、相互に出力インパルス信号Sout11を送受信する形態について説明した。その際、出力インパルス信号Sout11は、ノード間における相互作用(互いの位相状態に影響を与える働き)を実現する手段として用いられていた。
本発明において、ノード間における相互作用を実現する手段は、第1の実施形態のものに限定されない。例えば、第1の実施形態における位相θ(t)を直接送受信することによって相互作用させる形態を構成することも可能である。つまり、各ノードにおける位相状態などの動作状態の変化を連続信号のまま、相互に送受信する形態であっても動作させることができる。
そこで、第2の実施形態は、複数のノード間において連続的に位相信号を送受信することによって相互作用する形態を説明する。なお、第2の実施形態において、相互作用信号として用いる位相信号には、自ノードの空間位置を示す情報(アドレス情報)を付加(重畳)して発信する。すなわち、位相信号は、自ノードの空間位置を示す情報に基づいて変調した信号とする。
図8は、第2の実施形態におけるノードの構成例を示す機能ブロック図である。図8において、第2の実施形態のノード40は、位相信号受信手段41、混信検知手段42、データ通信手段43、通信タイミング計算手段44、位相信号送信手段45を有する。なお、図8では省略しているが、第1の実施形態と同様に、同調判定手段やセンサも設けられている。なお、データ通信手段43は、第1の実施形態で説明したデータ通信手段15に対応する構成である。
第1の実施形態のインパルス信号受信手段11に代えて設けられている位相信号受信手段41は、他ノードが発信し、当該ノード40が受信した連続信号でなる入力位相信号Sin31を受信処理してその信号に含まれ手いる情報を取り出すものである。入力位相信号Sinは、その他ノードjでの位相信号θ(t)と混信帯域番号とを規定するものであり、混信帯域番号で定まる周波数の連続番号に対して位相信号θ(t)を盛り込んだものである(例えば、PM信号)。位相信号受信手段31は、入力位相信号Sin31における他ノードjでの位相信号θ(t)を通信タイミング計算手段44に与え、受信状態の検知結果(例えば、混信帯域番号とその受信タイミング等)を混信検知手段42に与えるものである。
混信検知手段42は、位相信号受信手段41からの受信状態の検知結果に基づいて、複数ノードで出力位相信号Sout31での混信帯域番号が重複(混信)するか否かの混信結果を通信タイミング計算手段44に与えると共に、混信検知結果と、混信検知した混信帯域番号とを位相信号送信手段45に与えるものである。
通信タイミング計算手段44は、詳細は後述するが、他ノードの位相信号θ(t)などに基づいて、自ノードの位相信号θ(t)を形成するものである。
位相信号送信手段45は、自ノードの位相信号θ(t)を盛り込んだ出力位相信号Sout31を送信するものである。
ここで、第2の実施形態では、自ノード40からの出力位相信号Sout31と出力データ信号Sout32とを、異なる周波数帯域を使用して発信することを前提としている。さらに、出力位相信号Sout31発信用の周波数帯域はNb個(Nb:整数)の帯域に細分化された構成になっている。
(B−2)通信タイミング計算手段44の詳細
次に、通信タイミング計算手段44の詳細構成について図面を参照しながら詳述する。
図9は、第2の実施形態の通信タイミング計算手段44の詳細構成の機能ブロック図である。図9において、第2の実施形態の通信タイミング計算手段44は、位相信号復調手段51、位相拡散同期アライアンス手段52、位相信号変調手段53を有する。
位相信号復調手段51は、他ノードから受信した受信位相信号を復調して、空間位置を示す情報(他ノード)と位相信号(他ノード)に分離するものである。ここで、受信位相信号とは、他ノードが発信した出力位相信号を、位相信号受信手段41が受信して得られる信号である。
位相拡散同期アライアンス手段52は、内部に同期アライアンス手段を含み、通信タイミングを決定するための位相計算を実行するものである。
位相信号変調手段53は、位相拡散同期アライアンス手段52による位相計算の結果得られる自ノードの位相信号を、空間位置を示す情報(自ノード)により変調するものである。位相信号変調手段53により生成される変調位相信号は、位相信号送信手段45が発信する出力位相信号である。
図10は、位相拡散同期アライアンス手段の詳細構成を示す機能ブロック図である。図10において、第2の実施形態の位相拡散同期アライアンス手段52は、位相算出手段61、衝突率算出手段62、蓄積ストレス算出手段63、ストレス応答関数値算出手段64、位相応答関数特性決定手段65、同期アライアンス手段66を有する。
位相算出手段61は、位相計算を、例えば、(16)式のような非線形振動をモデル化した数式を用いて実行する。なお、(16)式における各記号の表す意味は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
Figure 0004173131
ただし、位相応答関数R(△θij(t))を含む項のNxはノード集合Xの要素数、Kxは結合定数パラメータを表す。また、同期アライアンス関数H(△θij(t))を含む項のNyはノード集合Yの要素数、Kyは結合定数パラメータを表す。
ここで結合定数パラメータKx、Kyは、それぞれ位相の時間発展に対する関数R(△θij(t))を含む項と関数H(△θij(t))を含む項の寄与度を決定するパラメータであり、その値は実験的に決定する。
なお、以上のような演算を適宜実行する通信タイミング計算手段44を、ソフトウェアによって実現しても良く、また、演算を実行する電子回路群によるハードウェアによって実現しても良く、さらには、ソフトウェアとハードウェアとを混在させて実現しても良い。
図2の各ノードが、それぞれ(16)式の演算を実行することにより、相互作用範囲のノード間には第1の実施形態で示した形態と同様の位相関係が形成される。
(B−3)第2の実施形態の効果
以上、第2の実施形態によれば、複数のノードが位相信号を送受信することによって自律分散的にタイムスロット割り当ての相互調整を行うデータ通信方法において、通信タイミング計算手段の構成に対して、同期アライアンス手段を新たに導入すると共に、相互作用信号として用いる位相信号に、自ノードの空間位置を示す情報(アドレス)を付加(重畳)した信号を送受信することにより、ノードを格子状に配置した場合に、隣接ノード間だけで相互にタイムスロットを分け合う最適な時分割通信の形態を実現することが可能となる。その結果、極めてタイムロスが小さい、理想的なレベルの高い通信効率を得ることができる。
(C)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても変形実施形態に言及したが、さらに以下に例示するような変形実施形態が考えられる。
(C−1)上述した第1及び第2の実施形態において、固有角振動数パラメータωは、その一例として、システム全体で同一の値に統一するものと仮定した。しかし、固有これは本発明を実施する上で必須事項ではない。ノードごとにωの値が異なっても動作させることが可能である。例えば、各ノードのωの値が、基準値を中心にその近傍でガウス分布等の確率分布に従って小さくばらついていても動作させるようにしてもよい。
(C−2)第1の実施形態においては、通信タイミング計算手段12における処理の説明に、(1)式の微分方程式を用いた。しかし、微分方程式を用いた記述は、算出方法を規定する一例の表現にしか過ぎない。ここでは、(1)式の微分方程式を差分化(連続時間変数tを離散化)して得られる差分方程式(漸化式)を用いた記述方法の例について説明する。
Figure 0004173131
(18)式において、変数uは、正の整数値をとる離散時間を表す変数である。その他の記号の表す意味は、第1の実施形態と同様であるが、全て離散時間変数uの関数になっている点に注意を要する。また、変数Δtは時間の刻み幅を表し、連続時間変数tと離散時間変数uは、t=u・Δtの関係にある。(18)式は、時刻uにおける位相θ(u)の値から、次の時刻u+1における位相θ(u+1)の値が算出されることを表している。
また、上述の記述方法は、位相θ(t)の時間発展を時間軸方向に離散化して扱う記述方法である。時間軸方向の離散化に加えて、さらに状態変数に対しても離散化、すなわち、位相θ(t)の値そのものを離散化(量子化)して扱う記述方法を用いることも可能である。この場合、位相θ(t)の取り得る値は、M個(M:自然数)の離散値になる。これは、例えば、(19)式を用いて実現することができる。(19)式において、関数quan(*)は、変数*を量子化幅wで割り、小数点以下の数値を無視した値を表す。ここで、量子化幅wは変数*のダイナミックレンジ(取り得る値の幅)をMで割った値である。(19)式において、位相θi(u)は、離散時間uにおける量子化された位相の値を表す。
Figure 0004173131
同様にして、第2の実施形態で示した(16)式についても、上記のような差分化や離散化した形の記述方法を用いることが可能である。こうした演算は、いずれもソフトウェアとしてノード上に実装することが可能である。
(C−3)第1及び第2の実施形態では、非線形振動をモデル化した数式として、(1)式及び(16)式を示し、さらに、その他の記述方法として、種々の変形形態が可能であることを上述した。
しかし、本発明を実現する非線形振動をモデル化した数式の記述方法は、上記各実施形態や既に言及した変形実施形態に限定されない。例えば、文献3「戸田盛和、渡辺慎介著、「非線形力学」、共立出版発行」に開示されるファン・デル・ポール方程式等の一般的な非線形振動やカオス振動のモデルを用いることも可能である。無論、ノード間における相互作用が、時間に関して離散的(パルス的)な場合、及び連続的な場合、ともに実現することが可能である。ファン・デル・ポール方程式は、電子回路上で発生する非線形振動現象をモデル化した式である。ファン・デル・ポール方程式による動作は、電子回路を用いてハードウェアとしてノード上に実装することが可能である。また、ルンゲ・クッタ法等の一般的な数値計算法を用いて、ソフトウェアとしてノード上に実装することも可能である。
本発明は、時間や動作状態,あるいは相互作用等に関する離散モデル、及び連続モデル、その他、特定の振動現象を表現するモデルといった、個別的なモデルの記述方法の違いに依拠するものではなく、ある時間発展規則に従って動作状態が遷移する種々のモデルを用いて実現することが可能である。動作状態が周期的、あるいはカオス的に変化するモデルを用いる形態は、本発明の実施形態の例として位置付けられる。
(C−4)第1の実施形態では、空間に分散配置された多数のノードが、相互に無線でデータをやり取りするシステムを想定して説明した。しかし、本発明の利用形態は、無線通信を行うシステムに限定されない。空間に分散配置された多数のノードが、相互に有線でデータをやり取りするシステムに適用することも可能である。例えば、イーサネット(Ethernet;登録商標)などのように有線接続されたLANシステムに適用することも可能である。また、同様に有線接続されたセンサやアクチュエータ、あるいはサーバなど、異なる種類のノードが混在するネットワークに適用することも可能である。無論、有線接続されたノードと、無線接続されたノードが混在するネットワークに適用することも可能である。
さらに、本発明は、インターネット上で、各ルータが相互に異なるタイミングでルーティングテーブルを交換するための通信プロトコルとして利用することができる。ここで、ルータとは、ネットワーク上を流れる情報の行き先を振り分ける(通信経路選択)機能を有する中継機器のことである。また、ルーティングテーブルとは、情報の行き先を振り分ける際に参照される通信経路選択規則である。効率的な通信を実現するためには、ネットワーク上における変更や局所的なトラフィックの変化等に応じて、逐次、ルーティングテーブルを更新する必要がある。このため、ネットワーク上に存在する多数のルータは、相互に一定の時間間隔でルーティングテーブルの交換を行っている。しかし、文献4「Floyd,S.,and Jacobson,V.,“The Synchronization of Periodic Routing Messages”, IEEE/ACM Transactions on Networking, Vol.2 No.2, pp.122-136, April 1994.」に開示されるように、各ルータがそれぞれ独立にルーティングテーブルを発信しているにもかかわらず、ルータ相互の発信が次第に同期(衝突)する現象が発生することが分かっている。上記文献4では、ルーティングテーブルの交換に用いられる通信プロトコルに対して、各ノードの処理周期にランダムな変動性を与えることによって、この問題に対処する方法を提案し、一定の効果が得られることを示している。しかし、上記文献4に開示される方法は、基本的にランダム性のみに依存した方法であるため、その効果は十分ではない。
それに対して、本発明を上記の問題に適用すると、近傍のルータ間において、ルーティングテーブルを発信するタイムスロットを自律的に相互調整することが可能である。従って、各ルータの発信は、相互に異なるタイミングとなり、上記文献4に開示される方法に比べて高い効果を得ることができる。
以上、説明したように、本発明は無線系、有線系を問わず、あらゆるネットワークに存在する発信データの衝突や同期の問題に適用可能であり、適応性と安定性を兼ね備えた効率的なデータ通信を実現する通信プロトコルとして利用することが可能である。
(C−5)本発明は、通信タイミング情報(実施形態での位相信号)の取得制御に特徴を有し、そのタイミング情報を通信にどのような利用するかは問われない。例えば、各ノードからのデータ信号の送信周波数が異なる場合であれば、タイムスロットを設定することなく通信を行うようにしても良く、この場合であっても、データ通信の始期を通信タイミング情報から定めるようにすれば良い。
(C−6)第1及び第2の実施形態では、位相応答関数R(Δθij(t))の具体例を示したが、関数の形態はこれに限定されず、本発明を実施する上で位相応答関数は他の種々の関数を用いて構成可能である。
(C−7)第1及び第2の実施形態では、位相Δθ(t)に対し、衝突率c(t)を、ストレス応答関数値として反映させ、かつ、位相応答関数R(Δθij(t))の特性切替えという形で反映させるものを示したが、位相応答関数R(Δθij(t))の特性切替えという形でのみ反映させるものであっても良い。
(C−8)本願発明に関係する先願の特許出願として、特願2003−328530号、特願2004−257562号及び特願2004−257567号があるが、その先願特許出願の明細書及び図面には多数の変形実施形態が記載されており、そのうち、本願に適用可能なものは本願の変形実施形態にもなる。
第1の実施形態の通信タイミング計算手段の構成を示す機能ブロック図である。 第1の実施形態のノードを格子状に配置した通信システムの全体構成図である。 第1の実施形態のノード構成を示す機能ブロック図である。 第1の実施形態の通信システムでのノード間の同調の説明図(1)である。 第1の実施形態の通信システムでのノード間の同調の説明図(2)である。 第1の実施形態の位相拡散同調アライアンス手段の構成を示す機能ブロック図である。 第1の実施形態の相互作用範囲のノード間に形成される位相関係を説明する説明図である。 第2の実施形態のノード構成を示す機能ブロック図である。 第2の実施形態の通信タイミング計算手段の構成を示す機能ブロック図である。 第2の実施形態の位相拡散同期アライアンス手段の構成を示す機能ブロック図である。
符号の説明
10、40…ノード、12、44…通信タイミング計算手段、21…インパルス信号復調手段、22、52…位相拡散同期アライアンス手段、23…インパルス信号変調手段、31、61…位相算出手段、32、62…衝突率算出手段、33、63…蓄積ストレス算出手段、34、64…ストレス応答関数値算出手段、35、65…位相応答関数特性決定手段、36、66…同期アライアンス手段、51…位相信号復調手段、53…位相信号変調手段。

Claims (7)

  1. 通信システムを構成する格子状に配置された複数のノードのそれぞれに搭載されるものであって、内部で変化される位相の状態に基づいて自ノードからのデータ発信のタイミングを決定する通信タイミング計算手段を備えた通信制御装置であって、
    上記通信タイミング計算手段は、
    近傍ノードのデータ発信のタイミングを表す位相を反映させた上記近傍ノードからの状態変数信号の受信に基づき、予め定められている位相応答関数及び同期アライアンス関数に基づく時間発展規則に従って自ノードの位相の状態を変化させる位相算出部と、
    自ノードと近傍ノードとの位相差を観測し、その位相差に基づいて、自ノードからのデータ発信のタイミングと近傍ノードのデータ発信のタイミングとの衝突率を算出する衝突率算出部と、
    上記状態変数信号に含まれている上記近傍ノードの位置情報と上記衝突率とに応じて、上記位相応答関数の特性を変化させる位相応答関数特性決定部と、
    上記状態変数信号に含まれている上記近傍ノードの位置情報に応じて、上記同期アライアンス関数の特性を変化させる同期アライアンス部と
    を備え
    上記同期アライアンス部は、上記状態変数信号の通信可能な相互作用範囲内の特定空間位置に上記近傍ノードが存在する場合、上記近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を同期させる力学的特性を上記同期アライアンス関数に与え、
    上記位相応答関数特性決定部は、上記特定空間位置以外の上記近傍ノードが存在する場合、上記近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を反発させる方向に変化させる力学的特性を上記位相応答関数に与える
    ことを特徴とする通信制御装置。
  2. 上記通信タイミング計算手段は、衝突率に応じたストレス値を時間的に蓄積し、蓄積されたストレス値に応じて、上記位相算出部が用いている時間発展規則にランダムな大きさの位相シフトを生起させるストレス応答関数値生成部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
  3. 格子状に配置された各隣接ノード間距離及びデータ通信距離をL程度、並びに上記状態変数信号の相互作用距離範囲を51/2L程度と仮定した場合、上記同期アライアンス部及び上記位相応答関数特性決定部は、自ノードから見て(2L、L)、(−L、2L)、(−2L、−L)、(L、−2L)の空間位置近傍のノードを上記特定空間位置のノードとすることを特徴とする請求項に記載の通信制御装置。ただし、記号(*、**)は、自ノードから水平方向に距離*、垂直方向に距離**の空間位置を表す。
  4. 格子状に配置された各隣接ノード間距離及びデータ通信距離をL程度、並びに上記状態変数信号の相互作用距離範囲を51/2L程度と仮定した場合、上記同期アライアンス部及び上記位相応答関数特性決定部は、自ノードから見て(−2L、L)、(L、2L)、(2L、−L)、(−L、−2L)の空間位置近傍のノードを上記特定空間位置のノードとすることを特徴とする請求項に記載の通信制御装置。ただし、記号(*、**)は、自ノードから水平方向に距離*、垂直方向に距離**の空間位置を表す。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の通信制御装置を有することを特徴とするノード。
  6. 請求項に記載のノードを複数格子状に配置して有することを特徴とする通信システム。
  7. 通信システムを構成する格子状に配置された複数のノードのそれぞれに搭載されるものであって、内部で変化される位相の状態に基づいて自ノードからのデータ発信のタイミングを決定する通信タイミング計算工程を備えた通信制御方法であって、
    上記通信タイミング計算工程は、
    近傍ノードのデータ発信のタイミングを表す位相を反映させた上記近傍ノードからの状態変数信号の受信に基づき、予め定められている位相応答関数及び同期アライアンス関数に基づく時間発展規則に従って自ノードの位相の状態を変化させる位相算出サブ工程と、
    自ノードと近傍ノードとの位相差を観測し、その位相差に基づいて、自ノードからのデータ発信のタイミングと近傍ノードのデータ発信のタイミングとの衝突率を算出する衝突率算出サブ工程と、
    上記状態変数信号に含まれている上記近傍ノードの位置情報と上記衝突率とに応じて、上記位相応答関数の特性を変化させる位相応答関数特性決定サブ工程と、
    上記状態変数信号に含まれている上記近傍ノードの位置情報に応じて、上記同期アライアンス関数の特性を変化させる同期アライアンスサブ工程と
    を備え
    上記同期アライアンスサブ工程は、上記状態変数信号の通信可能な相互作用範囲内の特定空間位置に上記近傍ノードが存在する場合、上記近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を同期させる力学的特性を上記同期アライアンス関数に与え、
    上記位相応答関数特性決定サブ工程は、上記特定空間位置以外の上記近傍ノードが存在する場合、上記近傍ノードの位相に対して自ノードの位相を反発させる方向に変化させる力学的特性を上記位相応答関数に与える
    ことを特徴とする通信制御方法。
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