JP4171619B2 - 鉄心の成形方法およびこの鉄心を用いた電磁誘導機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機等に用いられる鉄心の成形方法およびこの鉄心を用いた電磁誘導機器に関し、特に、電流の高周波化に伴う渦電流による悪影響を回避するだけでなく、漏れ磁束による悪影響を回避させることができる鉄心の成形方法およびこの鉄心を用いた電磁誘導機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機(モータ)は、現在では、位置制御用、速度制御用、或いは動力用として、様々な機器や電化製品、或いは自動車などに幅広く用いられている。電動機は、その構造や動作原理などによって様々な種類に分類されるが、いずれの場合でも、所定の回転出力を得ることが必要であり、そのための条件は、以下の4つの要素が必要とされている。
1.回転速度
2.磁束(磁束密度)
3.駆動電流
4.電動機の寸法
【0003】
従来の電動機の設計においては、このうち、「2.磁束(磁束密度)」、「3.駆動電流」、「4.電動機の寸法」の3つの要素を検討するのが主な作業であった。回転数を上げるためには、「1.回転速度」がその要因であるにもかかわらず、従来の電動機の設計方法では、この回転速度の要因は取り扱っていない。その理由は、電磁鋼板を用いる従来の電動機においては、高周波化する(回転数を上げる)と、電磁鋼板における透磁率が低下して有効磁束が下がり有効トルクが低減してしまうこと、また、高周波化するとその渦電流損が増大すること、から取り上げられていなかったものである。仮に、これを無理に実現化させようとすると、電動機の大きさを変えたり、駆動電流を2〜3倍上げざるを得なくなるなどの問題が生じる。
【0004】
ところで、この高周波化に対応させるために、鉄心を用いる方法がある。この鉄心は、珪素の含有率を上げた薄い電磁鋼板あるいは高周波透磁率の良いパーマロイ薄板を成層(積層)したものである。しかし、それらの板は打ち抜きによって得られるものであり、その打ち抜きには精密な金型が必要となり、そのために、製造コストを大きく上昇させてしまう。
【0005】
このため、鉄粉をバインダーとともに圧粉焼結することによって鉄心を得、これによって磁路を構成させるようにしたものが最近提案されている。このように鉄粉をバインダーとともに圧粉焼結した鉄心は、渦電流が低減されることから高周波に適していると考えられる。また、粉体設計であるため、設計の自由度がある程度増大するという利点もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、鉄粉をバインダーとともに圧粉焼結した従来の鉄心によれば、以下のような問題があった。
(1)このような鉄心は、金型内で鉄粉を圧縮するため、外径に対して、厚さの制約があり、設計的に制限されてしまうという問題があった。
(2)また、その成形は、バインダーならびに鉄粉形状等にも影響されるが、一般的に密度が電磁鋼板に比べて低くなり、その密度にも圧粉方向によってむらが生じるのが実情である。このため、得られる最高磁束密度も電磁鋼板などと比較して低く、有効トルクが電磁鋼板に比べて半分以下に低減するという問題があった。
(3)また、鉄粉を使用するため、機械的強度が低減するという問題があった。
【0007】
(4) 一方、電動機を多相化する場合、多相の起磁力による磁束を合成すると回転磁界が形成されるように工夫されているのが普通であるが、高周波化による透磁率の低下は、設定の相極以外の相極に磁束が漏れるのを促進させる。漏れた磁束は正規の相極の発生トルクとは逆方向のトルク成分と成りやすいことから、いわゆる正相分と逆相分のうち、逆相分が増大し、出力トルクが低減する結果をもたらす。この磁束の漏れは、2次元平面上だけでなく、3次元空間的にも生じるという問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、電流の高周波化に伴う渦電流による悪影響を回避しつつ、3次元設計の自由度を向上させることができ、高密度の鉄粉による磁路を形成することができ、機械的強度を向上させることができる鉄心の成形方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、電動機を多相化して構成した場合でも、高周波化による漏れ磁束による悪影響を回避させることができる電磁誘導機器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、線に流れる電流によって励磁される鉄心を成形するための方法であって、前記鉄心の形状に合わせた上金型および下金型からなる該鉄心成形用のキャビティを用意し、該用意したキャビティ内に、巻線が巻かれ内径の所定位置に溝が複数設けられた円筒状の枠部材を挿入し、該枠部材が挿入されたキャビティ内に、強磁性体の粉末および少なくとも該粉末を固定させる接着剤を有する流動性を持たせた成形材を、前記枠部材のパーティングラインに沿って前記枠部材の全周を覆うように注入し、前記枠部材の巻線に間欠的に電流を流すことにより前記枠部材を加熱して前記成形材の粘性を低下させ、前記成形材に対して加圧しながら、または、前記成形材に対して加圧および減圧を繰り返しながら、前記キャビティ内から余分な接着剤を油だまりに排除させつつ、該粉末を前記接着剤で固定させることにより、前記鉄心を成形することを特徴とする鉄心の成形方法を提供するものである。
【0011】
以上の構成において、前記枠部材の所定位置に溝を複数設け、前記溝内に前記粉末を固定させて、前記鉄心で極歯となる部分を該溝に一体化させることが望ましく、前記溝は、前記枠部材の内径に設けられることが望ましい。
【0012】
また、前記溝内に前記粉末を固定させて、前記鉄心で極歯となる部分を該溝に一体化させる、ことが望ましい。また、前記枠部材の所定位置に、前記枠部材を補強する補助鉄心を前記枠部材に沿って装着し、該枠部材と一体化することが望ましい。この場合、前記補助鉄心は、前記枠部材の外周側に設けられた外周側突極と該枠部材の内周側に設けられた内径側極歯を備え、該補助鉄心を前記枠部材に沿って装着したとき、前記外周側突極は前記枠部材の開口面両側から挿入して前記パーティングラインで対向させるように配置し、前記内径側極歯は前記枠部材の開口面両側から前記溝内に挿入されるように配置する、ことが望ましい。また、前記補助鉄心を前記枠部材に沿って装着する際に、前記枠部材の装着側に接着剤を塗布し、該接着剤を塗布した面にチョップドストランドされたガラスまたは炭素繊維を植毛する、ことが望ましい。また、前記上金型および下金型が対向する所定の部位をそれぞれ強磁性体部材でリング状に成形し、前記流動性を持たせた成形材を、前記上金型および下金型のリング状の強磁性体部材に沿って前記キャビティに注入する、ことが望ましい。
【0013】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、上記の成形方法によって成形される鉄心を用いて多相の電流を回転子側および固定側の少なくとも一方に流して回転子を回転させるようにした電磁誘導機器であって、前記鉄心を電流の相毎に該相の電流を流して励磁するとともに、該鉄心を前記電流の相別にそれぞれ前記固定側の部品として前記回転子の回転軸の長手方向に並べて配置したことを特徴とする電磁誘導機器を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による電動機作製方法を用いて作製した電動機の構成を示す図である。
【0015】
この電動機は、4相の電流によって駆動する4相電動機である。図1に示すように、回転子(ロータ)10は、シャフト(回転軸)11に、各相別に用意した4つのロータコア12を、磁化されない非磁性体の3つの間座13により各ロータコア12間を離間させた形で取り付けて構成されている。他方の固定側は、シャフト11が突出した正面に設けられた正面フランジ21と、その正面フランジ21に取り付けられた形でシャフト11を支持する軸受22と、背面に設けられた背面フランジ23と、背面側でシャフト11を支持する軸受リング24と、フランジ21、23間を覆うパイプケース25と、そのフランジ21、23間に挟まれた形で配置された4つの磁界発生部26と、それら磁界発生部26の位置決め用の位置決めキー27と、引出線の端子が設けられた端子台28と、を備えて構成されている。なお、上記ロータコア12、磁界発生部26の個数については、相数の2以上の整数倍としても良い。以下、磁界発生部26とロータコア12の構成を更に詳細に説明する。
【0016】
〔磁界発生部26の構成〕
磁界発生部26は、それぞれ相別の電流により、その内部に挿入されるロータコア12に作用させる磁界を発生するものであり、図1に示すように、その電流を流す巻線31と、その巻線31が巻かれた非磁性体の巻線枠32と、その巻線枠32の周囲に固定された固定子(鉄心)33と、を備えて構成されている。なお、端子台28上の端子には、その巻線31の引出線が接続される。
【0017】
図2は、この巻線枠32の形状を示す図であり、(a)は電動機に取り付けられた際に正面側から見た場合の正面図(以降、特に断らない限り、電動機に取り付けられた際の視点を基準に表現することにする)、(b)はそのA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。
【0018】
図2(b)に示すように、巻線枠32には、外側(外径側)に外周に沿って溝41が形成されている。この溝41には、図1に示す巻線31が多連式巻線機によってトロイダル状に巻かれるようになっている。そして、この巻線31の引出線は、溝41に沿って引き出される。この巻線31の外側は絶縁テープなどで封じた後、充填材などで密封硬化させることで巻線枠32と一体化される。多連式巻線機によって溝41に巻線31をトロイダル状に巻くようにしたのは、特定かつ専用の巻線機をあえて用意することなく巻線を行うことができるからであり、また、簡単かつ容易にして、多量、迅速かつ安価に巻線31を巻線枠32に巻けるようにするためである。なお、巻線枠32自体は、樹脂成形やセラミック成形などで作成されている。このように樹脂成形やセラミック成形などで作成することにより、巻線枠32を大量、安価に製造することができる。
【0019】
巻線枠32の外側(外径側)には、図2(a)および(c)に示すように、位置決め用の切り欠きが4つ(42a〜42d)形成されている。この位置決め用の切り欠き42a、42b、42c、42dは、そのピッチの2倍の相数分の1だけずらして配置されている。即ち、図2(a)の最も上に位置する切り欠き42a(第1の切欠)と、その右回り方向の隣に位置する切り欠き42b(第2の切欠)と、その右回り方向の隣に位置する切り欠き42c(第3の切欠)と、またその右回り方向の隣に位置する切り欠き42d(第4の切欠)とが形成されているが、第1の切欠42aと第2の切欠42bとは、第1の切欠42aの中心線を基準としたとき、78.75°(=90−90/8)、第1の切欠42aと第3の切欠42cとは、第1の切欠42aの中心線を基準としたとき、157.50°(=90×2−90×2/8)、第1の切欠42aと第4の切欠42dとは、第1の切欠42aの中心線を基準としたとき、236.25°(90×3−90×3/8)、の角度を持たせて形成されている。これにより、第1〜第4の各切り欠き42a、42b、42c、42dを案内にして、図1の説明で述べた位置決めキー27に各相毎に位置決めを行えるようにしている。
【0020】
また、巻線枠32の内側(内径側)には、図2(b)に示すように、それぞれ、正面側あるいは背面側から彫り込まれた形の溝43が、正面側および背面側ともに4つ、正面から見た中心に対し90度の回転角で互いに隔離させた形で形成されている。この正面側および背面側の溝43は、それぞれ互いのピッチを半分ずらす形で、言い換えれば、機械的に180度の位相差で形成されている。正面側および背面側の溝43の数は設計的に4とした。本実施の形態における電動機は4相の電流で駆動するのを前提としている。なお、後述するように、巻線枠32の内側(内径側)には、巻線枠32の内径に沿って補助鉄心90が装着される。
【0021】
図3は、巻線枠32の部分拡大断面図である。
図に示すように、巻線枠32の開口部44内の形状は、奥に行くに従って細くなるようにテーパ状に形成されている。この理由は、極歯部へ充分な磁束を導くためである。即ち、固定子33は、強磁性体の粉末(以下、「鉄粉」という)を巻線枠32に固定・硬化させて成形されるものであり、前述した図2における巻線枠32の正面側および背面側の溝43は、この固定子33の極歯部を成形するために用意した極歯空間部ともなる。この極歯空間部は、電磁機器として設計する際に、磁路中、一番磁束密度を上げるために鉄粉密度を高めておきたい空間であり、このために、巻線枠32の開口部44内の形状を、奥に行くに従って細くなるようにテーパ状に形成している。逆に言うと、開口部44は、巻線枠32の中心(以下、「パーティングライン」という)から規定された角度をもって扇状に広がる形状で形成している。このように形成することにより、極歯部に充分な磁束を導くことができる。
【0022】
なお、前述したように、正面側および背面側の溝43を、互いに隔離させた形で形成させているのは、正面側から背面側に延びた形の極歯(正面側の溝43によって成形される)に、背面側から正面側に延びた形の極歯(背面側の溝43によって成形される)を通る磁束の極歯に磁束を集中させるためである。
【0023】
図4および図5は、この巻線枠32自体を成形する成形金型の入れ子80(以下、「中子」という)の形状および加工方法を示す図である。図4は、中子80の形状を示す図であり、(a)はその正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。また、図5は、この中子80の加工方法を示す図であり、(a)はその正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【0024】
図4(b)に示すように、中子80は、極歯空間部と同じく、奥(図では右側)に行くに従って細くなるテーパな円錐台形状に形成される。その加工法は、まず、前述した巻線枠32の拡大図(図3)の枠正面および背面と重複する極歯長さの半分の深さまで巻線枠32の内径に合わせて彫りこみ、カップ形の形状に仕上げる。次に、図5(a)に示すように、規定された角度を持って扇状に広がる扇状部81を残しワイヤカット放電で切り取る。これを後述する上金型に装着し、同様に加工したものを45°位相をずらし、同心に噛み合わせて、後述する下金型に装着する。なお、図4、図5の各図において、U溝82が設けられているが、これは、上下の金型に噛み合わせる際の位置決め用のキー溝である。
【0025】
図6は、巻線枠32に沿って装着される補助鉄心90の形状を示す図である。この補助鉄心は、外周側突極91と内径側極歯92を備えている。外周側突極91は、巻線枠32の組立キー溝や組立ボルト(図示せず)を阻害しない位置で、巻線枠32の正面および背面の両側から挿入して、位置的には重なる角度に設けるが、ちょうど巻線枠32のパーティングラインで対向させるように配置する。従って、8極の場合は22.5°、4極の場合は45°を対称軸として配する。
【0026】
一方、内径側極歯92は、極歯部の挿入長さは、重複部の半分程度までとする。この幅は巻線枠32の溝43内に挿入されるものであるから、それよりも細くなければならないし、内径側極歯92の総極歯幅より外周側突極91の総突極幅は広くなければならない。補助鉄心90の材料は電磁鋼板を抜き、折り曲げたものでも良い。そして、この補助鉄心90を折り曲げて接着剤を塗布し、チョップドストランドされたガラスまたは炭素繊維を植毛し、巻線枠32に装着する。このように、補助鉄心90を巻線枠32に沿って装着することにより、固定子33を補強することができるほか、鉄粉磁路を導き、極歯空間部に磁束をより集中させると同時に、低周波磁路を確保することができる。
【0027】
〔ロータコア12の構成〕
図7は、ロータコア12の構成を説明するための図であり、(a)は側面断面図、(b)は正面断面図である。
【0028】
図7(a)に示すように、ロータコア12は、強磁性体部材51と外側を強磁性体のリング52とで覆い、それらを2つの全体としては円盤状の形状をした非磁性体部材53で挟み込むような形で構成する。図7(b)に示すように、強磁性体部材51とリング52間には、非磁性体ブロック54に線を通す穴55を形成させている。
【0029】
磁界発生部26およびロータコア12は、以上のような構成となっている。本実施の形態では、このような構成のロータコア12および磁界発生部26を相別に用意し、それぞれ、機構的(磁気的)に隔離させる形で電動機を構成させている。それにより、他の相の電流が流れることで発生する磁界の影響を回避させている。その結果、巻線31に高周波の電流を流したとしても、磁束の漏れによる他相への悪影響を抑えるようにしている。
【0030】
また、巻線枠32と一体化させる固定子33を鉄粉の固定化によって成形させている。そのようにして成形したものは、電磁鋼板などを成層(積層)したものと比較して、高周波の磁界を作用させた際に生じる渦電流などによる鉄損が抑えられる。また、その際における有効磁束の低減も電磁鋼板に比べて抑えられる。このため、巻線31に高周波の電流を流したとしても、磁界発生部26、ロータコア12によって形成される磁路を通る有効磁束量の低下を抑えることができる。
【0031】
〔磁界発生部26の作製方法〕
以上で述べた磁界発生部26の作製方法について、図8および図9を参照して(必要に応じて図1〜図7を参照して)詳細に説明する。
なお、ここでは、鉄粉の含有率を60%以上とした場合の成形方法を示す。鉄粉の含有率を60%以上の場合としたのは、鉄粉が成形材の90%以上を占める場合は、圧縮成形が適当であるが、その場合、巻線枠32の正面側と背面側との密度をそろえることが困難であり、成形材に圧力を加えた場合には、極歯空間部に加わる圧力が充分とは言えないという問題が残る。本実施の形態では、その対応策として、成形材の流動性を上げるため、鉄粉の含有率を下げるようにしている。そのために、従来の圧縮金型を用いて圧縮成形するのではなく、トランスファ金型を用い、トランスファ成形によって成形するようにしている。
【0032】
ここで、トランスファ金型とは、非磁性体の上金型と非磁性体の下金型を加圧し、締めたまま、プランジャを上げ、金型をそのまま別の場所に移動させ、加熱硬化させるようにした金型をいい、このトランスファ金型で成形する方法をトランスファ成形という。ここで用いられるトランスファ金型は、磁界発生部26の作製に際して、パーティングラインが極歯部空間の中間に来るように設計している。
【0033】
なお、以下の説明においては、下金型800と上金型810のヒータ部分は図示していないが、当然、成形作業に適した温度までに各金型は予熱されているものとする。また、図4および図5に示した中子80を用いて図2に示す巻線枠32が成形され、この成形された巻線枠32に図6に示した補助鉄心90が装着され、かつ、巻線枠32に巻線31が巻かれて一体化された以降に着目して説明する。
【0034】
まず、図8(a)に示すように、巻線31が巻かれて一体化された巻線枠32を非磁性体で成形された固定式の下金型800のキャビティ801に挿入し、非磁性体で成形された上下動可能な上金型810を下方に移動させてL1の位置まで閉じる。そして、上金型810とプランジャ830とで形成されるポット900に成形材910を投入する。この成形材910は、鉄粉、バインダー、添加剤、接着剤などから構成され、接着剤や添加剤の割合を比較的に大きくすることで鉄粉の流動性を持たせたものである。鉄粉に流動性を持たせたのは、流体力学の原理を利用してキャビティ801内の成形材910の圧力、流速あるいは鉄粉密度を望ましい状態に管理するためである。なお、図において、符号811は上金型810に設けられたガイドブッシュであり、上金型810が上下動する際はこのガイドブッシュ811が下金型800に設けられたガイドピン802に嵌合されて上下動するようになっている。また、符号840は、上金型810および下金型800に設けられた強磁性体のリングである。上金型810および下金型800自体は非磁性体で成形されているが、このリング840は強磁性体で成形される。その理由は、後述するように巻線枠32の極歯部の磁束密度を高めるとともに金型内で閉磁路のループを形成するためである。
【0035】
次に、図8(b)に示すように、上金型810と下金型800がL2(=L1)の位置まで閉じた状態でプランジャ830を下げ成形材を加圧する。すると、成形材910は、スプル850を通じ、リングゲート860により流れる方向を放射状に変えられ、上金型810および下金型800にそれぞれ設けられた強磁性体のリング840に沿ったランナ870を通じて巻線枠32の極歯空間部に導かれる。上金型810および下金型800に強磁性体のリング840を設けたのは、金型内で極歯空間部の磁束を高密度にするためである。そして、巻線枠32の極歯空間部に導かれた成形材910は、キャビティ801内に充填され、巻線枠32の正面側・背面側および外周側に沿って移動し、巻線枠32全体を覆う。
【0036】
この状態において、極歯空間部は一番圧力が高く、強磁性体の密度が一番高い場所となるが、巻線枠32の正面側、背面側および外周側の密度はほぼ均一である。しかし、鉄粉が磁路を形成するには密度がまだ不十分である。そこで、巻線31に電流を流すことにより巻線枠32を加熱し、バインダー・接着剤の粘性を低下させる。すると、鉄粉は余分に混合したバインダーや接着剤と分離し、鉄粉が巻線枠32の正面側、背面側および外周側の巻線枠32に近い位置に吸着し、この吸着により、鉄粉による密度の高い閉磁路のループを形成するようになる。
【0037】
この際に、プランジャ830の押下げで成形材910をキャビティ801に注入しながら加圧し、巻線31に電流を流す作業を間欠的に行う。即ち、電流を流して一度切ったら加圧し、また電流を流して一度切ったら加圧する。これにより、形成される鉄粉による磁路の密度が高くなり、高密度の鉄粉による閉磁路のループを形成することができる。言い換えれば、磁束密度が最大となるように最適化された形で鉄粉が磁路に沿って集合することになる。
【0038】
一方、加圧・再加圧等により、キャビティ801内の余分なバインダーや接着剤等の成形材910は、図8(c)に示すように、キャビティ801の上面・下面から圧縮され、ウェルタイプランナ891を通じて、油だまり890に排出される。この状態で、金型をそのまま別の場所に移動させ、加熱硬化させる。これにより、磁界発生部26が形成される。なお、下金型800における油だまり890とガイドピン802との間に図示しない真空ポンプに連結する貫通孔を設け、
加圧・再加圧しながら成形材910をキャビティ801内に押し込むとともに、当該真空ポンプでキャビティ801内を減圧した後常圧に戻す作業、いわゆる、真空引き、を繰り返し行うようにしてもよい。このようにすることにより、巻線枠32の加熱により温められ粘性が下がった成形材910は細部にも行き渡り、かつ、油だまり890に容易に排出できるようになる。なお、このように真空ポンプによる真空引きを行う際には、当該貫通孔の位置に対向する上金型810の所定の部位に、吸引時に上金型810が当該貫通穴をふさがないようにするための逃げ穴を設け、かつ、これら(貫通穴と逃げ穴)とガイドピン802との間には耐熱性のゴム、例えば、ブチルゴム等、を設けてキャビティ801内の気密性を保持させるようにする。
【0039】
そして、図8(d)に示すように、まず、スプル850内に硬化した樹脂(成形材)とともにプランジャ830を引き上げ、次に、上金型810を開き、エジェクタピン880を押し出すことによって磁界発生部26を取り出す。その後、ランナ870の部位とウェルランナ891の部位に付着した余分な硬化樹脂を切り取る。これにより、磁界発生部26が完成する。
【0040】
一般的に、突出したような部分や薄い部分の機械的強度は小さくなる。このように完成した磁界発生部26の固定子33では、溝43によって成形される極歯の機械的強度は他の部分と比較して弱い。しかし、この実施の形態では、固定子33を巻線枠32と一体に成形しているため、極歯は溝43によって補強された形となって、十分な機械的強度が得られるようになる。言い換えれば、機械的強度の面からの制約が回避されて、3次元設計の自由度が向上することになる。その結果、3次元設計できるという、鉄粉を用いることで得られるはずの有利性を十分、生かせるようになる。
【0041】
また、固定子33を巻線枠32と一体に成形するので、磁界発生部26は一つの部品のように取り扱えることになる。それにより、電動機の組み立てが容易かつ迅速に行えるようになるという効果も得られる。
【0042】
鉄粉で固定子33を成形すると、たとえ成形後に機械加工で固定子33を切削するようなことを行ったとしても、鉄粉が作る磁区にその加工の影響が及ぶことが回避される。その成形自体は、迅速、且つ安価に行うことができる。このようなことから、機械加工による特性の劣化を回避できるという効果や、電動機をより迅速、且つ安価に作製できるようになるといった効果も得られる。
【0043】
巻線31に定電圧で電流を流したときの電流値は、磁路の磁気抵抗が大きいときには大きいが、その抵抗が小さくなるに従い、即ち磁路の鉄粉密度が高くなるに従い、小さくなる。本実施の形態では、そのことに着目し、電流値を監視して、電流値が下がらない間、成形材を投入して鉄粉を供給するようにしている。そのようにしても、巻線31に電流を流すことで発生する磁界により鉄粉はキャビティ801内に優先的にとどまるため、キャビティ801内に必要な鉄粉の量を電流値から確認しつつ、より最適な密度で固定子33を成形することができる。
【0044】
上記鉄粉の材質は、磁気焼鈍済みの純鉄、珪素鉄、パーマロイなど強磁性材料のいわゆる軟磁性材料であれば良く、用途と要求されるモータ特性などに合わせて選択すれば良い。その形状については、球形が望ましく、寸法は300μm程度が望ましい。寸法のばらつきがあっても良い。但し、必ず鉄粉の外周はバインダーや接着剤、酸化や望ましくない他の化学変化を防ぐための添加剤で被覆させる必要がある。しかし、その被覆の厚さの均一性や厚さそのものは、焼結用鉄粉ほどの精度はいらない。この被覆された鉄粉は加熱される前はパウダー状であるので、キャビティ801内に注入・充填しやすくするために、そのバインダーや接着剤と同一系統・性質の常温で流動性のあるバインダーや接着剤と混合する。その量は樹脂成形の成形機種の方式や、磁路空間以外のキャビティ801内の体積、成形時間などを考慮して選択すれば良い。
【0045】
その混合の際に、硬化後の機械的強度、温度や時間に対する寸法安定性を向上させるために、ガラス繊維、或いは炭素繊維も合わせて混合することもできる。この繊維は、鉄粉を被覆するバインダーや接着剤をつなぐ働きをする。その結果、機械的強度や寸法の安定性が向上する。
【0046】
図9は、このようにして製作された固定子33の一部切欠断面図である。図に示すように、固定子33は巻線枠32と補助鉄心90とが一体に成形され、鉄粉が全体を覆っている。また、内径は極歯が露出している。この極歯は、溝43によって補強された形となって、十分な機械的強度が得られるようになる。従って、機械的強度の面からの制約が回避されて、3次元設計の自由度が向上する。換言すれば、鉄粉を用いることで得られるはずの有利性を十分生かすことができる。
【0047】
〔ロータコア12の作製方法〕
なお、特に図示していないが、ロータコア12の作製に際しても、磁界発生部26の作製と同様に鉄粉を用いこれを固定・硬化して強磁性体部材51を構成するようにしてもよい。
【0048】
〔モータ形式毎の説明〕
ところで、図2に示す巻線枠32は、極数として1相分の巻線枠32の例であるが、4相の電動機に適用するためには、巻線枠32の外周にキー溝(切欠)を45°/4=11°.25だけそれぞれずらして配置し、補助鉄心90も装着した巻線入り鉄心磁極においてキー溝(切欠)をそれぞれ各相分ずらして成形し、各相分すなわち4個準備する。
【0049】
また、モータの型式によっては、相励磁電流切換タイミング検知センサの鉄心磁極(4相8極モータの相励磁電流切換タイミング検知センサは極数8×4=32極))を同一手法の成形金型と成形で準備する。図10は、この相励磁電流切換タイミング検知センサの巻線枠32を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。図に示すように、モータの発生トルクは固定子33、回転子10のマグネットセンタのズレに対応し、固定子33と回転子10の磁束分布が正弦波であり、その位相角が電気角で90°の場合、最大トルクを発生し、エネルギー変換効率が最高である。従って、固定子33に対する回転子10のマグネットセンタ位置を検出し、相励磁電流を切換える必要がある。
【0050】
この巻線入り成形鉄心磁極4個またはその整数倍と、型式によっては、各相間に、磁気遮蔽板や、相励磁電流切換タイミング検知センサ成形鉄心磁極を加え、長手方向に、キー溝(切欠)と内径を基準に、端子台を併せたキーを案内として組み立て、前面取付フランジ、背面取付フランジで挟み、4本のボルトで締め付け固定する。もちろん、接着剤も併用し、より固定力を強める。
【0051】
次に、モータ型式ごとに実施形態を説明する。
図11は、相励磁電流切換タイミング検知センサ付4相リラクタンスモータ100の総組立図を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。図12は、このモータの回転子110を示す図であり、(a)はその左側面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図である。これらの図に示すように、回転子110の突極111の8極歯を等分に配し、これを1相分として磁気遮断間座112を介し、長手方向に組み立て、センサ用回転子(突極の32極歯を等分配に配する)115も付加して、長手方向に一直線に極歯をそろえて固定する。通称、センサ付VRモータ、SRモータと呼ばれるもので、30000rpm、320w、1kgcmのモータが実現する。
【0052】
図13は相励磁電流切換タイミング検知センサ付4相インダクタンスモータ120の総組立図を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。固定子33は各相間に磁気遮断板125を挟み、長手方向に、キー溝(切欠)と内径を基準に、キーを案内として組み立てる。図14は、このモータの回転子130を示す図である。なお、図11および図12と同一の符号は同一の内容であるので重複する説明は省略する。このモータの回転子130は、突極131の8極歯を等分に配し、回転極歯数を前述したリラクタンスモータ110の極歯数の半分とし、永久磁石132を間に、回転子極歯を180°ずらして組み立て、これを1組とし、磁気遮断間座133を介し、もう1組とともに、同様に長手方向に組み立てる。フェライトや希土類ボンド磁石を使用し、円筒ロータとし、8極NS交互着磁し、これを長手方向2組を磁極歯が一直線に配置する回転子を構成すれば、300w、15000rpm、2kgcmの、通称、ブラシレスDCモータと呼ばれるものが実現する。
【0053】
なお、図14のインダクタ型モータのセンサ用回転子135を取り外し、モータ軸から外力を加えて回転させれば、通称、誘導子(インダクタ)型高周波発電機と呼ばれ小水量高落差の山間地小型自家用発電に用いられる発電機140となる。図15は、その発電機140の実施形態を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。発電された交流を整流器で直流に変え、インバータで50または60Hzに変換する。30000rpmで30w、24V、1.25A、4KHzの発電機が実現する。
【0054】
図16は、2相4極カゴ形誘導電動機150を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。これには、相励磁電流切換タイミング検知センサ151も付加されている。いわゆる、電圧および位相制御やスベリの調整を行ういわゆる2相ACサーボモータである。図17は、その1相分の巻線枠32を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。2相モータに適用するため、外周にキー溝(切欠)を90°/2=45°ずらしたもう1箇所のキー溝(切欠)を配した巻線枠32に、図18に示すように、45°に対称軸をもった4極用の補助鉄心155を植毛後挿入した後、巻線入り鉄粉成形鉄心磁極(主巻線側)とする。2相側(制御巻線側)は巻線枠の45°ずらしたキー溝(切欠)を基準として巻線入り成形鉄心磁極を準備する。各相極歯が重なる部分に対応する回転子コアは電磁鋼板とし、それに挟まるところにはコア形状は同一であるが、非磁性鋼板164とする。そして、図19に示すように、回転子160において、15本の銅バー162を等分配し、回転子1スロット分だけスキューし、両端を短絡リングで固定するか、全体をアルミダイキャストで鋳造する。これを1組として、非磁性の回転間座163を介し、非磁性鋼板164を2個一直線に長手方向へ組み立てる。なお、図19(a)は回転子160の左側面図、図19(b)はその正面図、図19(c)はその右側面図、図19(d)は非磁性鋼板164のC−C断面図である。可変周波数インバータで駆動し、2KHz、30000rpm、240W、0.8kgcmのモータが実現する。
【0055】
以上の相励磁電流切換タイミング検知センサ付4相リラクタンスモータ100、4相永久磁石インダクタ型モータ120、誘導子型高周波発電機140、2相カゴ型誘導電動機150のいずれも、巻線入り成形鉄心磁極の高い周波数特性を生かして、モータの高速化を図って高出力容量を得るようにしている。しかし、いずれのモータも、停止時、または起動トルクならびに低速回転時のトルクは、電磁鋼板をステータとするモータに比べて同一形状寸法で5〜6割程度しかなく低い。
【0056】
巻線入り強磁性体鉄粉成形磁極では、3次元設計の自由度が向上するが、そのことを生かしたモータの実施形態を説明する。
図20は、1つのステップが1.8°、最大静止トルク10kgcm、動トルク、1000ppsで4.0kgcmの4相ハイブリッドステップモータ170を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。また、図21は、その巻線枠32を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。図22は、その補助鉄心を示す図である。4相ステップモータ170は、基本的には2相モータであるから、図21に示すように、外周にキー溝(切欠)90°/2=45°ずらし、もう1箇所キー溝(切欠)を配した巻線枠32と、図22に示すように、45°に対称軸をもった補助鉄心175を準備し、巻線枠32に、1相と3相を同時に巻き込み、もう1つの巻線枠32には2相と4相を同時に巻き込んだ2個を準備する。
【0057】
また、巻線枠内径側には、例えば、特開平10−174413号の第2の実施形態に記載される数の2倍の極歯を配することができる。各キー溝(切欠)を基準として、巻線入り成形鉄心磁極とし、これを遮蔽板を挟んで1組として、もう1組準備し、その内径とキー溝(切欠)を基準に、端子台をかねたキーを案内に組み立てる。図23に示すように、回転子180は長手方向に従来どおりマグネット181を挟んで極歯数50の回転子を180°ずらして配置し、回転子遮蔽版を挟んでもう1組を長手方向に一直線に配する。
【0058】
このようにすることにより、鉄粉成形による極歯の密度が低く、電磁鋼板の60%程度までトルクが低減しても、極歯数の設計的増加により、ほぼ同等のトルクを得ることができる。
【0059】
なお、図17の巻線枠32の極歯空間部の各極の右半分に短絡コイルを挿入し、巻線入り成形鉄心磁極とし、1相分のカゴ形回転子を挿入すれば、時計方向回転の単相隈取りコイル型誘導電動機として実施できる。
【0060】
いずれも、同一寸法のトランスファ成形金型で巻線入り成形鉄心磁極を成形した場合のモータ特性である。
【0061】
本発明の実施の形態は、以上述べたとおりである。なお、本実施の形態では、1つの巻線枠32に固定子33を一体に成形するようにしているが、成形できる強磁性体部材はそのようなものに限定されるわけではない。その成形に流動性の高い鉄粉を採用することで、様々な形状の強磁性体部材を成形できることから、本発明は様々な形状の強磁性体部材の成形に幅広く適用できるものである。例えば複数の巻線枠32を対象に、それに巻かれた巻線31を流れる電流によって励磁させる強磁性体部材(鉄心)を1つ一体に成形するようにしても良い。当然のことながら、複数の強磁性体部材を各巻線枠32毎に一体的に成形して、それらを組み合わせて固定子を作製するようにしても良い。これらのことは、電動機の作製方法は図1に示すようなものに限定されるわけではないことを意味する。巻線については、トロイダル状に個別的に巻けることから、それをより安価に入手できるようになる。
【0062】
強磁性体部材を成形する際に鉄粉に作用させる磁界は線に電流を流すことで発生させている。その磁界を発生させる場所は、複数の金型によって囲まれた空間の内部としているが、その空間の外部であっても良い。成形の対象とする強磁性体部材については、電動機を構成する部品に限定されるわけではなく、特に高周波の磁界を作用させる強磁性体部材の成形に本発明は幅広く適用することができる。
【0063】
なお、上述の実施の形態では、インナーロータ形式の電動機について説明したが、これに限られるものではなく、アウターロータ形式の電動機についても、これを適用することができる。その場合には、外部から極歯部に成形材を注入するようにする。
【0064】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の鉄心の成形方法によれば、線に流れる電流によって励磁される鉄心を成形するための方法であって、前記鉄心の形状に合わせた上金型および下金型からなる該鉄心成形用のキャビティを用意し、該用意したキャビティ内に、巻線が巻かれ内径の所定位置に溝が複数設けられた円筒状の枠部材を挿入し、該枠部材が挿入されたキャビティ内に、強磁性体の粉末および少なくとも該粉末を固定させる接着剤を有する流動性を持たせた成形材を、前記枠部材のパーティングラインに沿って前記枠部材の全周を覆うように注入し、前記枠部材の巻線に間欠的に電流を流すことにより前記枠部材を加熱して前記成形材の粘性を低下させ、前記成形材に対して加圧しながら、または、前記成形材に対して加圧および減圧を繰り返しながら、前記キャビティ内から余分な接着剤を油だまりに排除させつつ、該粉末を前記接着剤で固定させることにより、前記鉄心を成形するようにしたので、磁束密度を高めたい部分の磁束密度を最適な形で高められるようになり、最適な磁路を形成させられるようになる。また、鉄粉を固化させることで、それに作用する磁界の高周波化に伴う渦電流などによる損失の増大が抑えられる。これらのことから、上述したようにして成形した鉄心を電動機に用いた場合には、その鉄心には高周波の磁界を作用させても有効磁路となり、有効磁束が通るようになる。その結果、電動機の高速回転が実現させられるようになる。
【0065】
また、巻線が巻かれた枠部材あるいは補強の役割をする部材などを成形用部材として、鉄心と一体化させて成形するようにしたので、その鉄心の細い部分などにも十分な機械的強度を持たせられるようになる。その結果、電磁鋼板などを積層して鉄心を成形するという手法にはない、鉄心を3次元設計できるという有利性を十分に生かせるようになる。
【0066】
また、本発明の上記鉄心を用いた電磁誘導機器によれば、多相の電流を回転子側および固定側の少なくとも一方に流して回転子を回転させるようにした電電磁誘導機器であって、前記鉄心を電流の相毎に該相の電流を流して励磁するとともに、該鉄心を前記電流の相別にそれぞれ前記固定側の部品として前記回転子の回転軸の長手方向に並べて配置するようにしたので、各相の構成が磁気的に分離された形となって、高周波の電流を流したとしても、ある相の電流によって発生した磁束の漏れによる他相への悪影響が抑えられるようになる。その結果、損失の増大が抑えられて、電動機等の電磁誘導機器の高速回転が実現させられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態による電動機作製方法を用いて作製した電動機の構成を示す図である。
【図2】 巻線枠の形状を示す図であり、(a)は電動機に取り付けられた際に正面側から見た場合の正面図、(b)はそのA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。
【図3】 巻線枠の拡大断面図である。
【図4】 巻線枠自体を成形する巻線枠の成形金型の入れ子の形状を示す図であり、(a)は、その正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図5】 中子を囲う方法を示す図であり、(a)は、その正面図、(b)は、側面図、(c)は、背面図である。
【図6】 巻線枠に沿って装着される補助鉄心の形状を示す図である。
【図7】 ロータコアの構成を説明するための図であり、(a)は側面断面図、(b)は正面断面図である。
【図8】 鉄粉の含有率を60%以上とした場合のトランスファ金型を用いた磁界発生部の成形方法を示す図である。
【図9】 図8の成形方法によって製作された固定子の一部切欠断面図である。
【図10】 相励磁電流切換タイミング検知センサの巻線枠を示す図であり、(a)は正面図、(b)はそのA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。
【図11】 相励磁電流切換タイミング検知センサ付4相リラクタンスモータの総組立図を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。
【図12】 図11に示すモータの回転子を示す図であり、(a)はその左側面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図である。
【図13】 相励磁電流切換タイミング検知センサ付4相インダクタンスモータの総組立図を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。
【図14】 図13に示すモータの回転子を示す図であり、(a)はその左側面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図である。
【図15】 誘導子(インダクタ)型高周波発電機を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。
【図16】 2相4極カゴ形誘導電動機を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。
【図17】 図16に示す電動機の1相分の巻線枠を示す図であり、(a)は正面図、(b)はそのA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。
【図18】 図17に示した巻線枠に、45°に対称軸をもった4極用の補助鉄心を植毛後挿入した後、巻線入り鉄粉成形鉄心磁極(主巻線側)としたことを示す図である。
【図19】 15本の銅バーを等分配し、回転子1スロット分だけスキューし、両端を短絡リングで固定するか、全体をアルミダイキャストで鋳造した回転子を示す図であり、(a)はその左側面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図、(d)は非磁性鋼板のC−C断面図である。
【図20】 1つのステップが1.8°、最大静止トルク10kgcm、動トルク、1000ppsで4.0kgcmの4相ハイブリッドステップモータを示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は平面図である。
【図21】 図20の巻線枠を示す図であり、(a)は正面図、(b)はそのA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。
【図22】 図21の巻線枠に挿入する45°に対称軸をもった補助鉄心を示す図である。
【図23】 図15に示す誘導子(インダクタ)型高周波発電機の回転子を示す図であり、(a)はその左側面図、(b)はその正面図、(c)はその右側面図である。
【符号の説明】
10 回転子
11 シャフト
12 ロータコア
13 間座
26 磁界発生部
31 巻線
32 巻線枠
33 固定子
43 溝
51 強磁性体部材
90 補助鉄心
801 キャビティ
802 ガイドピン
800 下金型
810 上金型
811 ガイドブッシュ
830 プランジャ
840 強磁性体のリング
850 スプル
870 ランナ
890 油だまり
891 ウェルランナ
900 ポット
910 成形材
Claims (7)
- 線に流れる電流によって励磁される鉄心を成形するための方法であって、
前記鉄心の形状に合わせた上金型および下金型からなる該鉄心成形用のキャビティを用意し、
該用意したキャビティ内に、巻線が巻かれ内径の所定位置に溝が複数設けられた円筒状の枠部材を挿入し、
該枠部材が挿入されたキャビティ内に、強磁性体の粉末および少なくとも該粉末を固定させる接着剤を有する流動性を持たせた成形材を、前記枠部材のパーティングラインに沿って前記枠部材の全周を覆うように注入し、
前記枠部材の巻線に間欠的に電流を流すことにより前記枠部材を加熱して前記成形材の粘性を低下させ、前記成形材に対して加圧しながら、または、前記成形材に対して加圧および減圧を繰り返しながら、前記キャビティ内から余分な接着剤を油だまりに排除させつつ、該粉末を前記接着剤で固定させることにより、前記鉄心を成形する、
ことを特徴とする鉄心の成形方法。 - 前記溝内に前記粉末を固定させて、前記鉄心で極歯となる部分を該溝に一体化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心の成形方法。
- 前記枠部材の所定位置に、前記枠部材を補強する補助鉄心を前記枠部材に沿って装着し、該枠部材と一体化した、ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心の成形方法。
- 前記補助鉄心は、前記枠部材の外周側に設けられた外周側突極と該枠部材の内周側に設けられた内径側極歯を備え、該補助鉄心を前記枠部材に沿って装着したとき、前記外周側突極は前記枠部材の開口面両側から挿入して前記パーティングラインで対向させるように配置し、前記内径側極歯は前記枠部材の開口面両側から前記溝内に挿入されるように配置する、ことを特徴とする請求項3に記載の鉄心の成形方法。
- 前記補助鉄心を前記枠部材に沿って装着する際に、前記枠部材の装着側に接着剤を塗布し、該接着剤を塗布した面にチョップドストランドされたガラスまたは炭素繊維を植毛する、ことを特徴とする請求項3に記載の鉄心の成形方法。
- 前記上金型および下金型が対向する所定の部位をそれぞれ強磁性体部材でリング状に成形し、前記流動性を持たせた成形材を、前記上金型および下金型のリング状の強磁性体部材に沿って前記キャビティに注入する、ことを特徴とする請求項1に記載の鉄心の成形方法。
- 前記請求項1〜6に記載の成形方法によって成形される鉄心を用いて、多相の電流を回転子側および固定側の少なくとも一方に流して回転子を回転させるようにした電磁誘導機器であって、
前記鉄心を電流の相毎に該相の電流を流して励磁するとともに、該鉄心を前記電流の相別にそれぞれ前記固定側の部品として前記回転子の回転軸の長手方向に並べて配置したことを特徴とする電磁誘導機器。
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