JP4169883B2 - 全視野光刺激装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、全視野光刺激装置に係り、特に、視野の全域に光刺激を与えることが出来、以て各種の視機能評価検査の実施時に有利に使用され得る全視野光刺激装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
一般に、ERG(網膜電図)を記録するための検査や光覚検査等の、所謂、視機能評価検査には、被検者の眼に光刺激を与える装置が用いられて、所望の検査が実施されることとなるが、そのような装置としては、被検者の顔全体が挿入可能な円形の窓部を有し、該窓部の上部に、各種の色や明るさの光を放射する光刺激発生器が装備されてなる装置本体を含んで構成された全視野光刺激装置が、従来から用いられてきている。そして、そのような全視野光刺激装置においては、所定の基台上に載置される等した装置本体の窓部内に、被検者の顔全体を挿入させ、その状態で、光刺激発生器から光を放射することにより、被検者の視野の全域に対して光刺激が与えられ、以て、上述の如き各種の視機能評価検査がより正確に行われ得るようになっているのである。
【0003】
ところが、かかる従来の全視野光刺激装置にあっては、装置本体の窓部が、被検者の顔全体を挿入し得るような大きさとされていることから、装置本体が比較的大型なものとなってしまう問題があり、また、この装置本体には、光源と、該光源から放射される光の色や明るさを変えるためのフィルターとを有する光刺激発生器等が設置されているために、その構造が複雑で且つ高価なものとなることが避けられないという問題があった。しかも、乳幼児や寝たきりの高齢者、身体障害者等、所定の基台上に載置された装置本体の窓部内に顔全体を挿入して固定することが困難な被検者に対しては、前述の如き各種の視機能評価検査の実施自体が不可能となる場合があるといった大きな問題も内在するものであった。
【0004】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、小型で且つ安価な構造の装置本体を有し、しかも、各種の視機能評価検査が、如何なる被検者に対しても、大きな負担をかけることなく、有利に実施可能な全視野光刺激装置を提供することにある。
【0005】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、視野の全域に対して光刺激を与える全視野光刺激装置において、片眼を覆う覆眼部と手によって把持され得る把持部とが一体的に設けられて、該把持部を把持した手持ち状態下において、該覆眼部にて片眼を覆い得るように構成された装置本体を有し、且つかかる装置本体の覆眼部の内側部位に、前記光刺激となる光を反射して、該覆眼部にて覆われた眼の網膜全域に均一に照射する球状反射面が設けられると共に、該球状反射面の周縁部となる部位に、該光刺激となる光を放射する発光ダイオードが、かかる周縁部位の全周にわたって散在するように複数個配設されていることを特徴とする全視野光刺激装置を、その要旨とするものである。
【0006】
すなわち、本発明に従う全視野光刺激装置にあっては、装置本体が、把持部を把持した手持ち状態下において、覆眼部にて片眼を覆い得るように構成されているところから、所定の基台上に載置された装置本体を用い、その窓部内に、被検者の顔全体を挿入せしめて使用される従来装置とは異なり、装置本体が、極めて有利に軽量、小型化され得、それによって、被検者に対して大きな負担をかけることなく、また、被検者が如何なる姿勢をとっていても、常に、良好に使用され得ることとなる。それ故に、このような全視野光刺激装置を用いれば、例えば、母親等に抱かれた乳幼児や、ベッドで仰臥位したままの寝たきりの高齢者や身体障害者等においても、検査される眼の一つを、覆眼部にて、簡単に且つ確実に覆うことが出来るのである。
【0007】
また、本発明に従う全視野光刺激装置においては、上述の如く、装置本体が小型化されていることに加えて、装置本体の覆眼部に対して、単に、光刺激となる光を放射する複数個の発光ダイオードと、それら複数個の発光ダイオードからの放射光を反射する球状反射面とを設けただけの構造とされていることから、装置本体の窓部の上部に光を放射する光源とフィルターとが設けられた従来装置に比して、比較的安価で且つ簡略な構造をもって構成されている。
【0008】
しかも、そのような全視野光刺激装置にあっては、複数個の発光ダイオードが、覆眼部における球状反射面の周縁部位の全周にわたって散在するように配設されているところから、覆眼部に、発光ダイオードが、1個だけ、または、その複数個が、球状反射面の周縁部位に、部分的に偏在して配設される場合に比して、複数個の発光ダイオードから放射された光が、球状反射面のより広い領域に照射されて、該球状反射面にて、より均一に、また、より広い輝度範囲において反射され、それによって、発光ダイオードの発光状態下の覆眼部内に、暗部が部分的に生ずるようなことが効果的に抑制乃至は回避されるようになっており、その結果として、覆眼部にて覆われる被検者の眼がどこを向いていても、つまり、被検者の視点がどの位置にあっても、被検者の眼の網膜全域に、発光ダイオードからの放射光が、より均一に照射されて、視野の全域に対して、光刺激が、更に一層、確実に且つ均一に与えられ得るのである。
【0009】
従って、本発明に従う全視野光刺激装置にあっては、その設置に何等場所を取らない、小型、軽量で且つ安価な構造をもって構成され得るのであり、また、その使用によって、各種の視機能評価検査が、被検者の年齢や健康状態、或いは障害の有無等に拘わらず、如何なる被検者に対しても、大きな負担をかけることなく、極めて良好に且つ正確に実施され得ることとなるのである。
【0010】
また、かかる全視野光刺激装置においては、光刺激となる光を放射する発光ダイオードが、覆眼部に、複数個、配設されているため、色や明るさが互いに異なる背景光と刺激光とを用いた視機能評価検査を行う際に、それら複数個の発光ダイオードのうちの幾つかを、背景光を放射するためのものとして使用する一方、残りの幾つかを、刺激光を放射するためのものとして使用することも出来、それによって、光源から放射される光の色や明るさを変えるための高価なフィルター等を用いることなく、背景光と刺激光の色や明るさ等を容易に変化させ得、以て、上記の如き視機能評価検査を、比較的低いコストで行うことが可能となるといった利点もある。
【0011】
なお、そのような本発明に従う全視野光刺激装置の好ましい態様の一つによれば、前記発光ダイオードが、前記光刺激となる光を発する発光部と、該発光部を封入する、該光が透過可能な材料からなる封入部とを有すると共に、かかる封入部が、平らな表面を有する角形形状をもって構成されて、該発光部から発する光が、該封入部の平らな表面から指向性を有することなく放射されるように、構成されるのである。
【0012】
このような構成を有する全視野光刺激装置においては、発光ダイオードが、例えば、発光部から発する光を集める集光レンズ等を有し、該発光部から発せられる、光刺激となる光が、該集光レンズを通じて、所定の方向に向かう指向性をもって放射されるように構成されている場合に比して、発光ダイオードからの放射光が、球状反射面のより広い領域に照射されると共に、該球状反射面の広い領域において反射されて、その反射光が、覆眼部にて覆われる眼の網膜全域に、均一に照射され、その結果、視野の全域に対して、光刺激が、より一層、均一に与えられ得て、視機能評価検査を、更に正確に実施することが、可能となる。
【0013】
また、本発明に従う全視野光刺激装置によれば、前記球状反射面の周縁部における前記発光ダイオードの配設部位に、該発光ダイオードから放射される光を拡散する拡散部材が設けられて、該発光ダイオードからの放射光が、該拡散部材にて拡散せしめられた状態下で、該球状反射面にて反射されるように構成されることとなる。これによっても、発光ダイオードからの放射光が、球状反射面のより広い領域に照射されて、該球状反射面にて均一に反射され、更に、その反射光が、覆眼部にて覆われる眼の網膜全域に、均一に照射される。そして、その結果として、視野の全域に対して、光刺激が、更に一層、均一に与えられ得ることとなり、以て視機能評価検査をより正確に実施することが、可能となるのである。
【0014】
さらに、本発明に従う全視野光刺激装置によれば、前記球状反射面の周縁部となる部位の内側に、その周方向に連続して、若しくは不連続に延びるフランジ部が設けられると共に、かかるフランジ部の該球状反射面との対向部位に対して、前記発光ダイオードが、該球状反射面の周縁部位の全周にわたって散在するように複数個配設される。これによって、複数個の発光ダイオードが、球状反射面の周縁部位に対して、容易に且つ確実に配設され得るのであり、また、それら複数個の発光ダイオードが、球状反射面の周縁部位の内側に配設されているために、球状反射面が設けられる覆眼部、ひいては装置本体の外観が、複数個の発光ダイオードの配設によって損ねられることがなく、しかも、かかる覆眼部が各発光ダイオードの保護カバーとして機能して、各発光ダイオードの損傷の防止が、効果的に図られ得るのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係る全視野光刺激装置の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0016】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する全視野光刺激装置の一例が概略的に示されている。この図1からも明らかなように、全視野光刺激装置は、装置本体10とコントロールボックス12とを含んで、構成されている。そして、この全視野光刺激装置を構成する装置本体10は、白色に着色された合成樹脂材料から成っており、また、全体として、杓子形状を呈しており、その杓子形状の頭部が、片眼を覆う覆眼部14とされている一方、その柄部が、手にて把持される把持部16とされている。即ち、かかる装置本体10は、覆眼部14と把持部16とからなる合成樹脂製の一体成形品にて、構成されているのである。
【0017】
また、図2に示される如く、そのような装置本体10の覆眼部14は、半球状のドーム形状を呈している。そして、この覆眼部14にあっては、ドーム形状の開口部の開口径が、眼球の直径よりも十分に大きくされていることによって、片方の眼18を覆い得る大きさとされており、また、半球面形状を呈する内面が、白色を呈し、光を均一に反射する球状反射面20とされている。なお、この球状反射面20は、有利には、光反射がより均一となるように、公知の方法により、ツヤ消し表面仕上げが施される。また、かかる球状反射面20の半径(図2において、rにて示される寸法)は、特に限定されるものではなく、覆眼対象となる眼球の全体の大きさや、その瞳孔の大きさ、或いは瞳孔の中心から眼球の角膜頂点までの距離等によって、適宜に決定されるものであるが、ここでは、覆眼対象となる眼球として、12mmの半径を有し、その瞳孔の直径が8mmで、且つ瞳孔の表面と角膜表面との距離が4mmであるモデルを想定した上で、球状反射面20の半径:rが15mm程度とされている。
【0018】
さらに、図2及び図3に示されるように、覆眼部14の開口部、即ち、球状反射面20の周縁部位には、合成樹脂製の取付リング22が一体的に固定されている。この取付リング22は、覆眼部14の開口部の開口径、換言すれば、球状反射面20の周縁部位の直径よりも一回り小さな内径を有する、厚肉の円環板から成っており、上記の如く固定されていることによって、球状反射面20の周縁部位の内側に、その周方向に連続して、フランジ状に延びるように位置せしめられている。また、かかる取付リング22にあっては、球状反射面20との対向面に、開口部側が広幅とされる一方、底部側が狭幅とされた段付溝24が、周方向に連続して延びるように形成されており、更に、この段付溝24内には、円環状の基板26が、該段付溝24内の段付け面に接触して、位置固定に嵌め込まれている。
【0019】
また、そのような基板26には、複数個(ここでは、12個)の発光ダイオード(以下、LEDと略す)28が、固定されている。それら複数個のLED28は、それぞれ、公知の構造を有しており、図4及び図5に示される如く、二つの端子30,30と、それら二つの端子30,30の先端部に設けられた、白色光を発する発光部(図示せず)と、該発光部を封入する封入部32とを含んで、成っている。また、各LED28の封入部32は、無色透明で、各LED28の発光部から発する白色光を透過可能な合成樹脂材料からなり、平らな表面を有する略偏平な四角柱形状をもって構成されており、それによって、発光部からの光が、封入部32を透過した後、該封入部32の平らな表面から、何れの方向への指向性を有することなく、適度な広がりをもって放射されるようになっている。
【0020】
そして、図2及び図3からも明らかな如く、そのような構成とされた複数個のLED28のそれぞれが、発光部を封入する封入部32を、基板26における前記段付溝24の開口部側の面上、つまり、前記球状反射面20側の面上において、その周方向に、互いに一定の距離を隔てて位置せしめた状態で、二つの端子30,30にて、基板26に固定されている。これによって、各LED28が、基板26を介して、上記の如き配置形態をもって、取付リング22の段付溝24内に取り付けられ、以て、覆眼部14における球状反射面20の周縁部位の内側に、その全周にわたって、互いに等間隔をおいて散在するように配設されているのである。このことから明らかなように、本実施形態では、取付リング22にて、覆眼部14のフランジ部が構成されている。
【0021】
また、かかる取付リング22には、拡散部材34が、固定されている。この拡散部材34は、半透明な乳白色を呈する合成樹脂材料からなり、覆眼部14の開口部の開口径よりも小さな外径と、取付リング22の内径と略同一の内径とを有する薄肉板状の円環部36と、該円環部36における一方の面の内周部位に突出形成された略円筒状の取付部38とを有して、構成されている。そして、そのような拡散部材34が、覆眼部14の内側において、取付リング22に取り付けられた各LED28における封入部32の前記球状反射面20側の部位を、円環部36にて覆う(蔽翳する)ように位置せしめられた状態下で、取付部38において、取付リング22の内周部位に、位置固定に取り付けられているのである。
【0022】
かくして、覆眼部14における球状反射面20の周縁部位の内側に配設された複数個のLED28の封入部32の平らな表面から、何れの方向への指向性を有することなく、適度な広がりをもって放射された光が、拡散部材34の円環部36を透過せしめられると共に、かかる透過によって拡散せしめられた状態で、球状反射面20のより広い領域に照射され、そして、該球状反射面20にて均一に反射せしめられるようになっているのである。
【0023】
一方、図1及び図2に示される如く、上記の如き構造とされた覆眼部14と共に装置本体10を構成する把持部16は、片手で把持可能な太さと長さとを有している。そして、このような把持部16が片手で把持されることにより、装置本体10が、手持ち状態で、容易に取り扱われるようになっており、以て、かかる手持ち状態下において、覆眼部14を、使用者(被検者)の片方の眼18の前に位置せしめることにより、該片方の眼18が、覆眼部14にて覆われるようになっているのである。
【0024】
また、この装置本体10の把持部16には、覆眼部14に配設された複数個のLED28への給電を行うリード線42が、内部に挿通せしめられており、更に、このリード線42が、前記コントロールボックス12に対して、電気的に接続されている。そして、リード線42が接続されたコントロールボックス12は、覆眼部14に配設された複数個のLED28の発光状態(作動状態)を制御するためのプログラムが内蔵されたマイクロプロセッサ(図示せず)を有しており、また、その前面パネルには、例えば、覆眼部14に配設された複数個のLED28のうちで、発光させるLED28を選択する撮みや、発光するLED28の輝度や発光時間を調節する撮み、或いは発光するLED28の発光時間を表示する時間表示板や電源スイッチ等が設けられている。これにより、それら各種の調節撮みやスイッチ等への操作に対応した各LED28の発光状態等の調節が、コントロールボックス12内の制御プログラムに基づいて、実行されるようになっているのである。なお、コントロールボックス12の各種の調節撮みやスイッチ等への操作は、ERG(網膜電図)を記録するための検査や光覚検査、或いはCFF(臨界融合頻度)検査等の各種の視機能評価検査が好適な条件で実施されるように、適宜に行われることとなる。
【0025】
ところで、このような構造とされた全視野光刺激装置を用いた、所定の視機能評価検査は、例えば、以下の如くして、行われることとなる。
【0026】
すなわち、先ず、図2に示されるように、把持部16を片手で把持した装置本体10の手持ち状態下において、装置本体10の覆眼部14を、使用者(被検者)の片方の眼18の前に、それから所定距離を隔てて位置せしめることにより、該片方の眼18を、覆眼部14にて覆う。このとき、該眼18の前での覆眼部14の位置、つまり、眼18から覆眼部14の球状反射面20までの距離(図2において、mにて示される寸法)は、特に限定されるものではなく、球状反射面20の半径:rと同様に、覆眼対象となる眼球の全体の大きさや、その瞳孔の大きさ、瞳孔の中心から眼球の角膜頂点までの距離等によって、適宜に決定されることとなるが、ここでは、前述せる如く、覆眼対象となる眼球として、12mmの半径を有し、且つその瞳孔の直径が8mmであるモデルを想定した上で、球状反射面20の半径:rが15mm程度とされていることから、覆眼部14にて使用者の眼18を覆う際には、使用者の眼18から覆眼部14の球状反射面20までの距離:mも、一般には、15mm程度とされる。
【0027】
次いで、視機能評価検査の実施条件に応じて、コントロールボックス12の各種の調節撮みやスイッチ等への操作を、従来と同様に行い、覆眼部14に配設された複数個のLED28の発光状態を制御しながら、それら複数個のLED28を発光させる。それによって、図2に矢印で示されるように、各LED28の封入部32の平らな表面から、何れの方向への指向性を有することなく、適度な広がりをもって放射された光を、拡散部材34への透過によって拡散せしめた状態で、球状反射面20のより広い領域に照射して、該球状反射面20にて均一に反射せしめる。そして、かかる反射光を、使用者の眼18の網膜19の全域に、均一に照射して、被検者の視野の全域に対して、白色光からなる光刺激を均一に与えるのである。なお、このような全視野光刺激装置を用いた視機能評価検査は、装置本体10の覆眼部14の周縁部位と被検者の眼18の周囲との隙間からの外部からの光の侵入を防ぐ上で、好ましくは、暗室内において、実施されることとなる。
【0028】
このように、本実施形態に係る全視野光刺激装置にあっては、装置本体10が、覆眼部14と把持部16とが一体形成された合成樹脂製の一体品から成ると共に、覆眼部14の内面にて与えられた球状反射面20の周縁部位に、複数個のLED28が配設されただけの構造を有してなり、また、把持部16を片手で把持した手持ち状態下で、覆眼部14にて、使用者の眼18を覆い得るようになっているところから、従来装置に比して、装置本体10が、極めて有利に小型、軽量化され、しかも簡略で、且つ安価な構造をもって構成され得て、使用者(被検者)が乳幼児や寝たきりの老人、或いは身体障害者であっても、そのような使用者に対して、大きな負担をかけることなく、各種の視機能評価検査を迅速に且つ低コストで行うことが出来る。
【0029】
また、かかる全視野光刺激装置にあっては、複数個のLED28が、覆眼部14における球状反射面20の周縁部位の内側に固定された取付リング22に取り付けられていることにより、該球状反射面20の周縁部位の全周にわたって、互いに等間隔をおいて散在するように配設されているところから、覆眼部14に、LED28が、1個だけ、または、その複数個が、球状反射面20の周縁部位に、部分的に偏在して配設される場合に比して、複数個のLED28からの放射光が、球状反射面20の広い領域に照射されて、該球状反射面20にて、より均一に、また、より広い輝度範囲において反射され得るのである。そして、それによって、LED28の発光状態下の覆眼部14内に、暗部が部分的に生ずるようなことが効果的に抑制乃至は回避されるようになっており、以て、覆眼部14にて覆われる使用者の眼18がどこを向いていても、使用者の眼18の網膜19の全域に、LED28からの放射光が、より均一に照射されて、視野の全域に対して、光刺激が、更に確実に且つ均一に与えられ得ることとなる。従って、その結果として、各種の視機能評価検査が、正確に実施され得ることとなるのである。
【0030】
さらに、本実施形態に係る全視野光刺激装置においては、上述の如く、複数個のLED28が、覆眼部14における球状反射面20の周縁部位の内側に配設されていることから、覆眼部14の外側に、各LED28が露呈せしめられることがなく、それによって、覆眼部14、ひいては装置本体10の外観が、それら複数個のLED28の配設によって損ねられることがなく、また、かかる覆眼部14が各LED28の保護カバーとして機能して、各LED28の損傷が、有効に防止され得るといった利点がある。
【0031】
また、かかる全視野光刺激装置においては、LED28が、覆眼部14に、複数個、配設されているため、明るさが互いに異なる背景光と刺激光とを用いて、視機能評価検査を行う際に、それら複数個の発光ダイオードのうちの幾つかを、背景光を放射するためのものとして使用する一方、残りの幾つかを、刺激光を放射するためのものとして使用することも出来、それによって、各LED28からの放射光の明るさを変えるための高価なフィルター等を、何等用いることなく、背景光と刺激光の明るさを容易に変化させ得、以て、上記の如き視機能評価検査を、比較的低いコストで行うことが可能となるといった特徴もある。
【0032】
さらに、本実施形態に係る全視野光刺激装置においては、複数個のLED28の発光部から発せられた光が、各LED28の封入部32の平らな表面から、何れの方向への指向性をも有することなく、適度な広がりをもって放射され、また、かかる放射光が、拡散部材34にて拡散せしめられた状態で、球状反射面20のより広い領域に照射されて、該球状反射面20にて均一に反射せしめられ、更に、この反射光が、使用者の眼18の網膜19の全域に、均一に照射されて、被検者の視野の全域に対して、白色光からなる光刺激が、より一層、均一に与えられるようになっているところから、各種の視機能評価検査が、更に一層、正確に実施され得ることとなる。
【0033】
更にまた、かかる全視野光刺激装置にあっては、拡散部材34が、覆眼部14の内側において、各LED28を円環部36にて覆う(蔽翳する)ように位置せしめられて、取付リング22に取り付けられていることから、各LED28が、異物に直接に接触することが有利に防止され、それによって、各LED28の保護が効果的に図られ得るといった利点がある。
【0034】
また、かかる全視野光刺激装置においては、拡散部材34が、半透明な乳白色を呈する合成樹脂材料にて構成されているため、かかる合成樹脂材料を適宜に選択するだけで、拡散部材34の透明度を容易に変更することが出来、それによって、各LED28から放射されて、球状反射面20に照射される光の明るさを、極めて簡単に調節することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の具体的な実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことが、理解されるべきである。
【0036】
例えば、前記実施形態では、装置本体10が、覆眼部14と把持部16とを一体成形してなる一体品にて構成されていたが、覆眼部14と把持部16とが別部材にて構成され、所定の連結部材にて連結されてなる構造としても、何等差し支えない。
【0037】
また、装置本体10の全体形状も、覆眼部14と把持部16とを有してなるものであれば、前記実施形態に示されるものに、特に限定されるものではなく、例えば、装置本体10を、全体として、半球状のドーム形状をもって構成し、このドーム形状の外面を、手指にて把持可能な把持部16と為しても良い。このようにすれば、装置本体10が、より小型、軽量化され得ることとなる。
【0038】
さらに、装置本体10を与える材料も、前記実施形態に示されるものに、決して限定されるものではなく、また、覆眼部14と把持部16とを必ずしも同一の材料にて構成する必要もない。即ち、例えば、それら覆眼部14と把持部16のうちの少なくとも一方を、ステンレス等の金属材料等にて構成することも可能なのである。但し、覆眼部14の内側部位に設けられる球状反射面20は、光を反射可能な材料にて構成する必要がある。
【0039】
更にまた、前記実施形態では、覆眼部14が、半球状のドーム形状をもって構成されて、該覆眼部14の半球面形状を呈する内面が、球状反射面20とされていたが、覆眼部14を、それ以外の形状にて構成し、かかる覆眼部14の内側部位に、半球面形状を呈する球状反射面20を、別途に取り付けることも、勿論可能である。
【0040】
また、前記実施形態では、光刺激となる光を放射するLED28として、白色光を放射する白色LEDが採用されていたが、例えば、実施される視機能評価検査の種類やその実施条件等に応じて、青色光、赤色光、緑色光等を放射するLEDのうちの何れか1種を採用したり、或いはそれら互いに異なる色の光を放射するLEDを2種以上組み合わせて、採用することも可能である。そして、そのように、互いに異なる色の光を放射するLEDを2種以上組み合わせて、採用する場合には、色が互いに異なる背景光と刺激光とを用いた視機能評価検査を行う際に、所定の色の光を放射するLEDを、背景光を放射するためのものとして使用する一方、それとは別の色の光を放射するLEDを、刺激光を放射するためのものとして使用することも出来、それによって、LEDからの放射光の色を変えるための高価なフィルター等を、何等用いることなく、背景光と刺激光の色を容易に変化させ得、以て、上記の如き視機能評価検査を、比較的低いコストで行うことが可能となる。
【0041】
さらに、前記実施形態では、複数個のLED28が、覆眼部14の開口部に固定された取付リング22に配設されていたが、それら複数個のLED28は、覆眼部14における球状反射面20の周縁部位の全周にわたって散在乃至は点在するように配設されておれば、その配設構造は、特に限定されるものではない。従って、例えば、球状反射面20の周縁部位に、周方向に連続して、若しくは不連続に延びる内向フランジ部を一体形成し、この内向フランジ部の球状反射面20との対向部位に対して、複数個のLED28を、球状反射面20の周縁部位の全周にわたって散在するように配設しても良く、また、球状反射面20の周縁部位に、その全周にわたって散在するように貫通孔を、複数、形成すると共に、それら複数の貫通孔の形成部位のそれぞれに、LED28を配設して、それら各LED28からの放射光が、各貫通孔を通じて、覆眼部14の内側に入射せしめられて、球状反射面20にて反射されるように構成することも、可能である。
【0042】
更にまた、球状反射面20の周縁部位に配設されるLED28の配設個数や配設位置も、前記実施形態に示されるものに、何等限定されるものでないことは、言うまでもないところである。
【0043】
また、前記実施形態では、各LED28の配設位置に設けられた拡散部材34が、不透明な乳白色の樹脂材料にて構成されていたが、この拡散部材34を与える材料は、決してこれに限定されるものではなく、各LED28から放射する光を拡散して透過し得るものが、何れも採用され得るのであり、例えば、半透明な乳白色の樹脂材料に代えて、スリガラスやレンズ等にて、拡散部材34を構成することも可能である。
【0044】
さらに、そのような拡散部材34の形状も、前記実施形態に示されるものに、何等限定されるものではなく、各LED28の配設位置や配設構造等によって、適宜に変更され得るものであり、また、各LED28に対して、それぞれ、一つずつ設けるようにしても良い。
【0046】
また、前記実施形態では、LED28が、発光部を封入する封入部32を有し、この封入部32が、平らな表面を有する四角柱形状をもって構成されて、発光部から発する光が、封入部32の平らな表面から指向性を有することなく放射されるようになっていたが、かかる封入部32の形状も、特に、これに限定されるものではなく、一般的なドーム形状を呈するものや、凸形形状、三角柱形状を有するもの等も、採用可能である。
【0047】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0048】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明に従う全視野光刺激装置にあっては、何等場所を取らない、小型、軽量で且つ安価な構造をもって構成され得るのであり、また、その使用によって、各種の視機能評価検査が、被検者の年齢や健康状態、或いは障害の有無等に拘わらず、如何なる被検者に対しても、大きな負担をかけることなく、極めて有利に且つ正確に実施され得ることとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う全視野光刺激装置の一例を示す斜視説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】図2の III−III 断面における要部断面説明図である。
【図4】図1に示された全視野光刺激装置の本体に設けられる発光ダイオードの一例を示す正面説明図である。
【図5】図4に示された発光ダイオードの平面説明図である。
【符号の説明】
10 装置本体 12 コントロールボックス
14 覆眼部 16 把持部
20 球状反射面 22 取付リング
28 発光ダイオード 32 封入部
34 拡散部材
Claims (4)
- 視野の全域に対して光刺激を与える全視野光刺激装置であって、
片眼を覆う覆眼部と手によって把持され得る把持部とが一体的に設けられて、該把持部を把持した手持ち状態下において、該覆眼部にて片眼を覆い得るように構成された装置本体を有し、且つかかる装置本体の覆眼部の内側部位に、前記光刺激となる光を反射して、該覆眼部にて覆われた眼の網膜全域に均一に照射する球状反射面が設けられると共に、該球状反射面の周縁部となる部位に、該光刺激となる光を放射する発光ダイオードが、かかる周縁部位の全周にわたって散在するように複数個配設されてなり、且つ
前記球状反射面の周縁部となる部位の内側に、その周方向に連続して、若しくは不連続に延びるフランジ部が設けられると共に、かかるフランジ部の該球状反射面との対向部位に対して、前記発光ダイオードが、該球状反射面の周縁部位の全周にわたって散在するように複数個配設されており、更に
前記球状反射面の周縁部における前記発光ダイオードの配設部位に、該発光ダイオードを覆うように、該発光ダイオードから放射される光を透過して、拡散せしめる拡散部材が設けられて、該発光ダイオードからの放射光が、該拡散部材にて拡散せしめられた状態下で、該球状反射面にて反射されるようになっていることを特徴とする全視野光刺激装置。 - 前記発光ダイオードが、前記光刺激となる光を発する発光部と、該発光部を封入する、該光が透過可能な材料からなる封入部とを有すると共に、かかる封入部が、平らな表面を有する角形形状をもって構成されて、該発光部から発する光が、該封入部の平らな表面から指向性を有することなく放射されるようになっている請求項1に記載の全視野光刺激装置。
- 前記複数個の発光ダイオードが、明るさが互いに異なる背景光と刺激光を放射する別個の発光ダイオードにて構成されている請求項1又は請求項2に記載の全視野光刺激装置。
- 前記拡散部材が、半透明な乳白色を呈する合成樹脂材料からなる請求項1乃至請求項3の何れかに記載の全視野光刺激装置。
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