JP4168543B2 - 光学特性測定ユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学素子の光学特性を測定するために好適な光学特性測定ユニットに関する。なお、ここでいう、光学特性とは、例えば、透過率、反射率、および、透過または反射における光の位相変化(詳細は後述する)から選ばれる特性をいう。
【0002】
【従来の技術】
光学素子の光学特性の典型例として、透過率や反射率がある。また、透過率や反射率には、予め値付けされている基準物に対する相対値で表される相対透過率や相対反射率と、当該素子自体から求める絶対透過率や絶対反射率がある。また、透過率や反射率の、波長による変化は、それぞれ、分光透過率および分光反射率と呼ばれている。
【0003】
透過率や反射率を測定する場合、最も一般的には、上記の分光透過率や分光反射率が測定される。また、透過率や反射率を測定する場合、光の入射角の変化に対する透過率や反射率の測定も、しばしば行われる。
【0004】
また、光学素子の光学特性の他の例として、光学素子を構成する部材の屈折率や、薄膜の光学定数がある。これら屈折率や光学定数は、通常は、被測定物を光が透過することによる光の位相変化(以下、「透過における光の位相変化」という)の入射角依存性、または、被測定物により光が反射されることによる光の位相の変化(以下、「反射における光の位相変化」という)の入射角依存性を測定し、この測定結果を解析することで得られる。
【0005】
透過率や反射率の測定は、通常は、市販の分光光度計とこれに付属する専用の光学系とを用いて行われる。また、透過や反射における光の位相変化は、通常は、エリプソメータを用いて行われる。以下それらの従来例について説明する。
【0006】
光学素子の透過率を、分光光度計を用いてかつ光の入射角依存性をも考慮して測定する従来の装置として、以下のような装置があった。図25は、その説明図である。ただし、分光光度計の詳細(モノクロメータ部や受光部等)の図示は省略してある。
【0007】
この従来装置では、被測定物11が、ゴニオメータ13に固定される。被測定物11は、ゴニオメータ13により所定の角度に回転される。そのため、被測定物11を透過した光量(被検光量)を、入射角θを変えながら測定できる。また、測定系に被測定物11を設置しない状態での光量(基準光量)を測定する。これら被検光量および基準光量から、透過率の入射角依存性を測定できる。
【0008】
また、光学素子の絶対反射率を測定する従来装置として、例えば日本工業規格(JISK0115−1992)に規定されているVN法と称される方法を利用した装置がある。図26(A)および(B)は、その説明図である。
【0009】
このVN法では、3枚のミラーM1〜M3が用いられる。そして、第1の状態として、光路がV字状になるように、これらミラーM1〜M3が配置される(図26(A))。そしてこの光学系から出力される光量(基準光量)が受光部(図示せず)で測定される。この基準光量は、Ir=Io×R1×R2×R3で表される。ただし、Ioは入射光量、R1〜R3は、ミラーM1〜M3それぞれの反射率である。
【0010】
次に、図26(B)に示したように、被測定物11が光路に挿入される。ただし、被測定物11およびミラーM1〜M3によりN字状の光路が形成されるように、ミラーM2,M3が移動又は回転される。そして、この光学系から出力される光量(被検光量)が受光部で測定される。この被検光量は、Is=Io×R1×R2×R3×Rsで表される。ただし、Rsは被測定物11の被検面の絶対反射率である。
【0011】
被検光量は基準光量に被検面の絶対反射率が積算された量であるので、被検面の絶対反射率Rsは、Rs=Is/Irにより求まる。
【0012】
なお、通常、上記の透過率測定や反射率測定を行う場合、ダブルビーム方式を採用することで、測定精度の向上を図っている。すなわち、光源の光を被測定物を含む経路を進む光と、他の経路を進んで受光部に向かう光とに分ける。そして、この他の経路を経ている光を監視して、光源の強度変動等の情報を得る。こうして得た情報により被測定物の測定結果を補正して、測定精度の向上を図っている。
【0013】
また、相対反射率を測定する従来装置として以下のような装置がある。図27(A)および(B)はその説明図である。
【0014】
この装置の場合、ミラーM1,M2がハの字状に配置されている。ただし、ミラーM1,M2は、それぞれの反射面が他方のミラー側ではなく反対向きとなるように、配置されている。ハの字状のミラーM1,M2の上方に、基準物15(図27(A)参照)または被測定物11(図27(B)参照)が置かれる。測定光はミラーM1に入射された後、基準物15(または被測定物11)およびミラーM2を経て受光部(図示せず)に至る。ハの字の上方に基準物15を置いたときの光量Irと、被測定物11を置いた時の光量Isとをそれぞれ測定する。相対反射率は、前記絶対反射率と同様、Rs=Is/Irにより求まる。
【0015】
また、エリプソメータを用いて偏光解析を行う場合は、任意の角度で被測定物に光を照射してこのときの反射光を受光する必要があるため、通常、以下の様な構成がとられる。図28はその説明図である。
【0016】
被測定物11はゴニオステージ17上に置かれる。光源部19は、その位置が変わらないよう固定されている。この光源部19は、例えば、光源19a、波長フィルタ19b、集光光学系19cおよび偏光子19dで構成されている。受光部21は、ゴニオステージ17の回転に同期して同軸で回転するステージ23に固定されている。この受光部21は、例えば、検光子21a、集光光学系21bおよび受光素子21cで構成されている。被測定物11の被検面11aへの入射角は、ゴニオステージ17を回転させることで変わる。また、この入射角をθとしたとき、受光部21が固定されているステージ23は2θ回転して、被測定物11からの光を受ける構造となっている。そのため、入射角を変えての測光が行える。
【0017】
エリプソメータを用いて測定した情報から、光の位相変化を算出するには、偏光解析特有の計算理論と方法とが用いられる。これは、例えば文献1(光学的測定ハンドブック、田幸 敏治監修、朝倉書店)に記載されているが、本願の説明に直接関係がないので、ここではその説明を省略する。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
光学特性測定装置として、従来は上記のような各種の装置があったが、これらでは、以下のような問題点があった。
【0019】
先ず、図26を用いて説明した絶対反射率測定装置の場合、入射角を変化させて反射率を測定することができない。それを実現するためには、入射角ごとに、VN光学系をそれぞれ用意する必要がある。また、入射角を違えたVN光学系を用意したとしても、予め予定した離散的な入射角についての測定しか出来ない。すなわち、任意の入射角での反射率測定および、連続的に入射角を変えての反射率測定はできない。
【0020】
また、図27を用いて説明した相対反射率測定装置の場合も、入射角を変化させて反射率を測定することができない。それを実現するためには、入射角ごとにハの字状の光学系をそれぞれ用意する必要がある。また、入射角を違えたハの字状の光学系を用意したとしても、予め予定した離散的な入射角についての測定しか出来ない。すなわち、任意の入射角での反射率測定および、連続的に入射角を変えての反射率測定はできない。
【0021】
また、図26を用いて説明した装置および図27を用いて説明した装置いずれの場合も、入射角を変えての測定を行おうとするごとに、VN光学系またはハの字状の光学系を交換し、かつ、交換した光学系の調整をする必要がある。また、光学系を交換するため、その都度、厳密には、光路差、収差、焦点距離、光量などの光学的特性が変わってしまうという問題も生じる。
【0022】
また、エリプソメータを用いる場合、被測定物を移動させつつ受光部を移動させる構造が必要なため、機械的な原因による測定の不安定さが生じる。また、受光部が異なる位置に移動されるため、例えば磁界分布の影響を受けるので、測定精度を高めにくい。また、構造上、装置の設置面積も大きくなる。
【0023】
また、エリプソメータは基本的にダブルビーム測光を行えない。したがって、測定中の光源の強度変動や偏光の変動を補償できない。そのため、測定精度を高めにくい。
【0024】
この発明はこのような点に鑑みなされたものであり、従ってこの発明の目的は、光学系の光学的特性や受光部の位置を変えずに、入射角を任意に変えながら透過率、反射率、および透過や反射における光の位相変化の少なくとも1つを従来に比べて簡易に測定できる光学特性測定ユニットを提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
(a)そこで、この発明の光学特性測定ユニットは、以下のような構成を具える。その説明を図1(A)および(B)を参照して行う。これら図1(A)および(B)それぞれは、光学特性測定ユニットの基本構成を説明する図である。ただし、図1(A)は、この発明に係る光学特性測定ユニット30によって、この発明でいう第1の測定を実施する場合を考慮した図、図1(B)はこの発明でいう第2の測定を実施する場合を考慮した図である。
【0026】
この光学特性測定ユニット30は、第1の測定時は入射光を第1〜第4の反射面M1〜M4の順で反射し(図1(A)参照)、第2の測定時は入射光を第1の反射面M1、第5の反射面M5、第6の反射面M6および第4の反射面M4の順で反射する(図1(B)参照)、第1〜第6の反射面M1〜M6と、第1および第4の反射面M1、M4を回転させる反射面回転装置31と、被測定物33(基準物の場合も含む)を第2および第3の反射面M2、M3間、または、第5および第6の反射面M5、M6間に入れ出しする物体移動装置35とを具える。さらに、反射面移動装置37(詳細は後述する)を具える。
【0027】
そして、第1〜第4の反射面M1〜M4を、これら反射面M1〜M4を経る光路がN字状となるように、かつ、第1の反射面M1に入射される入射光L1と第4の反射面M4から出射される出射光L2とが同軸となるように配置してある。ただし、N字状とは、略N字状の場合も含む。また、この図1(A)および(B)の例では、図面の背面から見たときに光路がN字状となっている。
【0028】
さらに、第1および第4の反射面M1、M4それぞれを、前記N字状の光路を含む平面に対してそれぞれの反射面が垂直になるように配置してある。
【0029】
さらに、入射光L1の第1の反射面M1での入射点Aおよび出射光L2の出射点Dを結ぶ線分と、第2の反射面M2から第3の反射面M3に進む光線の軌道BCとの交点を光学系中心Oと定義したとき、第2の反射面M2を、この光学系中心Oと入射点Aとを焦点とする第1の回転楕円面により、構成してある。
【0030】
さらに、第3の反射面M3を、光学系中心Oと出射光L2の出射点Dとを焦点とする第2の回転楕円面により、構成してある。
【0031】
さらに、第5の反射面M5を、第1の反射面M1からの光を平行光に変える反射面としてある。典型的には、第5の反射面M5は、第1の反射面M1からの光を平行光にできかつ該平行光を光学系中心Oを通るよう反射できる位置に配置した反射面(例えば第1の放物面鏡)としてある。なお、ここでいう平行光とは、実質的に平行光とみなせる場合も含む(以下、同様)。
【0032】
さらに、第6の反射面M6を、第5の反射面M5からの光を第4の反射面M4に集光する反射面としてある。典型的には、第6の反射面M6は、第5の反射面前記第1の放物面鏡からの光を受けこれを前記第4の反射面上に集光できる位置に配置した反射面(例えば第2の放物面鏡)としてある。
【0033】
さらに、反射面回転装置31を、第1および第4の反射面M1,M4の配置位置各々(具体的には図1(A)、(B)中の入射点A、出射点D各々)で、前記N字状の光路を含む平面に垂直な軸(図1(A)、(B)の紙面と垂直な軸)を中心として、前記第1および第4の反射面M1、M4を連動させて回転する装置としてある。
【0034】
なお、第1および第4の反射面M1、M4それぞれの回転方向および回転量は、入射光L1と反射光L2とを同軸にできるように決める。したがって、両反射面M1,M4の回転方向は、同一方向の場合、反対方向の場合のいずれもあり得る。また、両反射面M1,M4の回転量は同じ場合も、異なる場合もあり得る。また、連動して回転とは、同期して回転する場合、そうでない場合いずれの場合もあり得る。ただし、典型的には、同期して回転する。
【0035】
さらに、物体移動装置35を、被測定物33の被測定面33aが光学系中心Oを含む位置になるように被測定物33を第2および第3の反射面M2、M3間、または、第5及び第6の反射面M5、M6間に挿入する挿入状態と、挿入しない非挿入状態とを選択的に形成する装置としてある。
【0036】
(b)この発明の光学特性測定ユニットの作用について、図1(A)および(B)を参照して説明する。
【0037】
この発明の光学特性測定ユニットでは、第1、第2、第3および第4の反射面M1〜M4を用いての光学特性測定、すなわち第1の測定(図1(A)参照)と、第1、第5、第6および第4の反射面M1、M5、M6およびM4を用いての光学特性測定、すなわち第2の測定(図1(B)参照)とを、行うことができる。
【0038】
▲1▼:この第1の測定(図1(A)参照)では、次のような作用が得られる。入射点Aと出射点Dとを結ぶ線分ADに対して、光学系中心Oで直交する線分OHを、考える。この線分OHと、第2の反射面M2から第3の反射面M3に向かう光の軌道BCとのなす角度をθとする。この発明では、被測定物33の被測定面33aが光学系中心Oを含む位置になるように、被測定物33を第2および第3の反射面間に挿入する第1の状態を形成できる。すると、この第1の状態では、この角度θは、被測定面33aへの光の入射角になる。
【0039】
然も、この発明の装置では、第1の反射面M1を上記の所定の回転軸を中心に回転させることが出来、かつ、第2の反射面M2を所定の回転楕円面で構成してあるので、第1の反射面M1を回転することにより、被測定物に対する光の入射角θを任意に(連続的の場合も含む)変化させることができる。これについて、以下、詳細に説明する。
【0040】
図2は、被測定物33を、第2および第3の反射面M2、M3間に上記の通り挿入した場合の、第1の反射面M1と、被測定物33と、回転楕円面で構成された第2の反射面M2とで構成される光学系を示した図である。ただし、第2の反射面M2として、ここでは、楕円モデルを考えている。すなわち、回転楕円面は、実際は、図2の楕円を図2のx軸を中心として必要な角度回転させた軌跡で形付けられる反射面であるが、ここでは、楕円のモデルを考えている。また、図2は図1の一部を天地を逆転させて表した図に相当する。
【0041】
反射面回転装置31により第1の反射面M1を回転させた時の角度をφとする。すると、この角度φと、被測定物33への光の入射角θとは、次のような関係になる。
【0042】
被測定物33に入射する光と線分AOとのなす角度をψとすると、ψ=π/2−θである。楕円M2の離心率をe、楕円M2の焦点の座標をそれぞれ(−c、0)、(c、0)とする。すると、φとψとの正接は、それぞれ以下の(1)式および(2)式で表される。
【0043】
tanφ=y/(c+x) ・・・(1)
tanψ=y/(c−x) ・・・(2)
これら式から、x、yをφ、ψを用いて表すと、それぞれ以下の(3)式および(4)式のようになる。
【0044】
x=c(tanφ−tanψ)/(tanφ+tanψ)・・・(3)
y=2c(tanφtanψ)/(tanφ+tanψ)・・・(4)
ここで、楕円の式とパラメータとを以下のようにおく。
【0045】
(x/a)2 +(y/b)2 =1 ・・・(5)
2 =(a2 +b2 )/a2 ・・・(6)
2 =a2 +b2 ・・・(7)
(5)式に(3)式、(4)式を代入し、さらに、適宜(6)式、(7)式の関係を用いてtanψについて解くと、以下の式が得られる。
【0046】
tanψ={(1−e2 2 tanφ±√2・e(1−e2 )tan2 φ}/(1−e2 2 −4e2 tanφ} ・・・(8)
この(8)式を、tanψ=cotφの関係を用いて、φについて解くことで次の式が得られる。
【0047】
θ=arctan{(1−e2 2 −4e2 tanφ}/{(1−e2 2 tanφ±√2・e(1−e2 )tan2 φ} ・・・(9)
この(9)式から判るように、被測定面33aへの光の入射角θは、第1の反射面M1を回転させる角度φによって変化させることができる。然も、入射点A、光学系中心Oそれぞれが、楕円M2の焦点に位置するため、楕円の性質からφを変化させても光学系中心Oは移動することがなく、かつ、光路ABOの長さも変化しない。このことは、第1の反射面M1を回転させたとしても、この光学系では、光路長、焦点距離、収差などが保存されることを意味する。したがって、光路長、焦点距離、収差などを変えることなく、入射角依存性を考慮した透過率、反射率等の光学特性を測定できる。
【0048】
さらに、この発明の光学特性測定ユニットでは、第1の反射面M1および第4の反射面M4を連動させて移動できるので、次のような作用が得られる。この説明を図1(A)を再び参照して行う。
【0049】
第1の反射面M1を角度φ回転させると、既に説明した様に被測定物33の被測定面(光学系中心O)への光の入射角θは、上記の(9)式に従い変化する。この光学系中心Oを通過した光は、第3の反射面M3によって反射された後、第4の反射面M4に達する。この第4の反射面M4は、反射面回転装置31により、第1の反射面M1に連動させて任意の角度回転させることができる。そのため、入射光L1と、出射光L2とを同軸にすることができる。これは、受光部(図示せず)を、第4の反射面M4の後段でかつ線分ADの延長線上に固定して配置できることを意味する。
【0050】
また、第1および第4の反射面M1,M4を回転させるのみで、入射角を変えての光学特性の測定が可能になる。したがって、従来装置で問題となっていた光学系の交換や、交換した光学系の調整は、本発明の装置では行わずに済む。
【0051】
また、この発明の光学特性測定ユニットでは、物体移動装置35により、被測定物33の入れ出しができる。そのため、透過率、反射率、透過・反射における光の位相変化などの各種の光学特性を測定できる。
【0052】
例えば、上記の第1の測定の1種として、被測定物の透過率及び又は、透過における位相変化を、入射角を変化させながら測定する場合、次の様に行うことができる。図3(A)および(B)はその説明図である。
【0053】
先ず、物体移動装置35により、被測定物を光学系に挿入しない状態を形成する(図3(A))。そして、反射面回転装置31により第1および第4の反射面M1,M4を適正に回転させながら、出射光L2の強度を測定する。この処理を第1の処理とする。なお、両反射面M1,M4を適正に回転させながらとは、被測定物33への入射角を所望の通り変化できるように、第1の反射面M1を回転させ、かつ、入射光L1と出射光L2とが同軸となるように第4の反射面M4を回転させることをいう(以下、同様)。
【0054】
次に、物体移動装置35により、被測定物33の被測定面33aが光学系中心Oを含む位置(以下、この位置を「所定位置」ともいう。)になるように、被測定物33を第2および第3の反射面M2,M3間に挿入した状態を形成する(図3(B))。そして、反射面回転装置31により第1および第4の反射面M1,M4を適正に回転させながら出射光L2の強度を測定する。この処理を第2の処理とする。
【0055】
ただし、第1の処理と第2の処理とは、いずれを先に実施しても良い。
【0056】
次に、これら第1の処理および第2の処理それぞれで測定した出射光強度に基づいて、前記物体の透過率及び又は透過における光の位相変化を測定する。
【0057】
これについてさらに詳細に説明する。図3(A)に示した第1の処理で得られる入射角θに依存する出射光L2の光量を、Ir(θ)とすると、Ir(θ)は、次の式で表される。
【0058】
Ir(θ)=Io×R1(θ)×R2(θ)×R3(θ)×R4(θ) ・・・(10)
ただし、Ioは入射光量、R1(θ)〜R4(θ)それぞれは、角度θでの各反射面の反射率である。
【0059】
また、図3(B)に示した第2の処理で得られる入射角θに依存する出射光L2の光量を、Is(θ)とすると、Is(θ)は、次の式で表せる。
【0060】
Is(θ)=Io×R1(θ)×R2(θ)×R3(θ)×R4(θ)×Rs(θ) ・・・(11)
ただし、Rs(θ)は、角度θでの被測定物33の透過率である。
【0061】
第2の処理で測定される光量Is(θ)中の、被測定物33に依存する成分(すなわちRs(θ))以外の成分は、第1の処理で測定される成分と同じである。そのため、入射角θを考慮した被測定物の透過率を、Ts(θ)とすると、該Ts(θ)は、以下の(12)式により求まる。
【0062】
Ts(θ)=Is(θ)/Ir(θ)・・・(12)
また、透過における位相変化を求める場合は、先ず、上記の第1の処理での位相特性Φ1(θ)と、上記の第2の処理での位相特性Φ2(θ)とをそれぞれ求める。
【0063】
これら位相特性Φ1(θ)、Φ2(θ)は、例えば、以下の様にして測定出来る。
【0064】
先ず、光源として例えば図28を用いて説明した光源部19、受光部として例えば図28を用いて説明した受光部21をそれぞれ用意する。この光源部19を、第1の反射面M1の前段に配置し、この受光部21を第4の反射面M4の後段に配置する。この光源部19からの光を、この発明の光学特性測定ユニット30に、入射光L1として入射させる。そして、上記の第1の処理および第2の処理それぞれで受光部21で測定される光強度と、公知の偏光解析特有の計算理論とから、位相特性Φ1(θ)、Φ2(θ)を算出する。これら算出したΦ1(θ)およびΦ2(θ)を用いて、被測定物33についての透過における位相変化は、
Φs=Φ2(θ)−Φ1(θ) ・・・(13)
により求まる。
【0065】
▲2▼:一方、この発明の光学特性測定ユニットでは、第2の測定(図1(B)参照)を実施する場合、次のような作用が得られる。
【0066】
この第2の測定では、入射光L1が第1の反射面M1、第5の反射面M5、第6の反射面M6および第4の反射面M4の順で反射される。なお、このような反射経路を形成するには、第1および第4の反射面M1、M4を反射面回転装置31によって所定位置まで回転させれば良い。
【0067】
然も、第5の反射面M5を、第1の反射面M1からの光を平行光に変える反射面としてある。より具体的には、第1の反射面M1からの光を平行光に変えかつ光学系中心Oを通るように反射する反射面で、第5の反射面を構成してある。そのため、光学系中心Oに平行光を通すことができる。
【0068】
また、第6の反射面M6を、第5の反射面M5からの光を第4の反射面M4に集光する反射面としてある。そのため、第5の反射面から出た光は第4の反射面に集光される。
【0069】
このようなとき、第5および第6の反射面間であって、光学系中心Oの辺りに、被測定物33を例えば物体移動装置35により入れ出しすると、図1(B)に示した光学系での出力光強度として、被測定物33がある場合と、無い場合それぞれの光強度を、図示しない受光素子により測定することができる。従って、被測定物33がある場合と無い場合とでの、光強度の比、すなわち、透過率を求めることができる。然も、この様にして求まる透過率は、測定光が平行光の場合の透過率である。このように、この発明の光学特性測定ユニットでは、第2の測定をした場合、平行光を用いての、被測定物の透過率を測定することができる。また、この第2の測定時において、被測定物自体を、光学系中心Oを中心に、前記N字状の光路を含む平面内で回転させることで、平行光を用いて、被測定物の透過率の角度依存性も測定できる。
【0070】
平行光を用いて被測定物の透過率を測定できるということは、NA(開口数)を持たない(実質的に持たない)測定光によって、被測定物の透過率を測定できることを意味する。
【0071】
NAを持つ測定光、特に大きいNAをもつ測定光により被測定物の透過率を測定した場合、この被測定物に入射する測定光の光束中心付近の光と、該光束の端付近の光とでは、被測定物入射面での屈折角が異なってしまう。測定光のNAに起因して上記の様に屈折角が異なった場合、被測定物の厚さが薄い場合は、それ程影響はないが、被測定物の厚さが厚い程、上記中心付近の光と端付近の光各々の、被測定物から出るときの進行方向がズレてくる。そのため、被測定物を出た光の焦点位置が異なったり、一部の光が後段の光学系に入射されなかったり等の問題が生じる。従って、厚さが厚い被測定物の透過率の測定精度を高めることができない。
【0072】
ところが、この発明の光学特性測定ユニットでは、上記の如く、第2の測定時には、測定光として平行光を用いた測定を行えるので、上記のNAに起因する問題を解決又は低減することができる。
【0073】
(c)また、この発明の光学特性測定ユニットの発明を実施するに当たり、好ましくは、第3の反射面M3および第4の反射面M4を、前記N字状のための配置にするN状態と、該N状態に対して線分ADを回転軸として180度回転させた配置にする状態(これを非N状態という)とを選択的に形成する反射面移動装置37をさらに具えた構成とするのが良い。
【0074】
このような反射面移動装置37を具えた装置の場合、該装置を例えば以下のように使用することで、被測定物33の反射率(絶対反射率)及び又は、反射における位相変化を、入射角を変化させながら測定できる。図4(A)〜(D)はその説明図である。
【0075】
先ず、物体移動装置35により、被測定物33を所定位置に挿入しない状態を形成する。然も、反射面移動装置37により、第3および第4の反射面M3,M4をN字状のための配置にする(図4(A))。そして、反射面回転装置31により第1および第4の反射面M1,M4を適正に回転させながら出射光L2の強度(例えば光量Ir(θ))を測定する(図4(B))。この処理を第1の処理とする。
【0076】
次に、物体移動装置35により、被測定物33を所定位置に挿入した状態を形成する。然も、反射面移動装置37により、第3および第4の反射面M3,M4をN字状の位置から線分ADを軸に180度回転させた配置にする(図4(C))。そして、反射面回転装置31により第1および第4の反射面M1、M4を適正に回転させながら出射光L2の強度(例えば光量Is(θ))を測定する(図4(D))。この処理を第2の処理とする。
【0077】
ただし、第1の処理と第2の処理とは、いずれを先に実施しても良い。
【0078】
なお、これら第1の処理および第2の処理をそれぞれ実施すると、第3および第4の反射面M3,M4は、N状態または非N状態になるように、反射面移動装置37によって移動される。しかし、この発明では第3および第4の反射面の構成や配置等を上記のごとく工夫してあるため、M3,M4をこのように移動しても、M3,M4の移動前後での光学系における光路長、焦点距離、収差等の光学的特性は変わらない。すなわち、光学的特性は、保存される。
【0079】
次に、上記の第1の処理および第2の処理それぞれで測定した出射光強度に基づいて、入射角θを考慮した被測定物33の反射率Rs(θ)を求める。このRs(θ)は、
Rs(θ)=Is(θ)/Ir(θ)・・・(14)
により求まる。その原理は、上記の透過率測定の場合と同様である。
【0080】
また、反射における位相変化Φ(θ)は、上記の透過における位相変化を求めた方法に準じた方法で求めることができる。すなわち、第2の処理で求める位相特性Φ2(θ)が反射における位相特性であること以外は、下記の(15)式により、反射における位相変化を求めることができる。
【0081】
Φs=Φ1(θ)−Φ2(θ) ・・・(15)。
【0082】
(d)また、反射面移動装置37を具える好適例の光学特性測定ユニット30の場合、以下のように使用することで、基準物の反射率に対する被測定物の反射率(すなわち相対反射率)及び又は、基準物の反射における位相変化に対する、被測定物の反射における位相変化(これを、以下、「反射における相対位相変化」という)を測定することもできる。図5(A)および(B)は、その説明図である。
【0083】
先ず、反射面移動装置37により、第3及び第4の反射面M3,M4を非N字状態にする。然も、物体移動装置35により、基準物39を、第2および第3の反射面M2,M3間の所定位置(被測定物33を挿入する場合の位置)に挿入する(図5(A))。そして、反射面回転装置31により第1および第4の反射面M1,M4を適正に回転させながら出射光L2の強度(例えば光量Ir(θ))を測定する(図5(A))。この処理を第1の処理とする。
【0084】
次に、基準物39の代わりに被測定物33を挿入すること以外は、図5(A)を用いて説明したと同様にして、出射光L2の強度(例えば光量Is(θ))を測定する(図5(B))。この処理を第2の処理とする。
【0085】
次に、これら第1および第2の処理それぞれで測定した出射光強度に基づいて、被測定物33の基準物39に対する相対反射率及び又は相対位相変化を測定する。ただし、この場合は、Ir(θ)およびΦ1(θ)は、それぞれ基準物についてのものである。これらを用いること以外は、相対反射率は上記の(14)式により、また、相対位相変化は上記の(15)式により求めることが出来る。
【0086】
なお、反射面移動装置を具えた構成とする場合、反射面移動装置として、図6に示したように、第4の反射面M4のみをN状態(図6(A)参照)および非N状態(図6(B)参照)に選択的に変化させる反射面移動装置37aを具え、そして、第3の反射面M3が前記非N状態にされた場合に相当する位置に、第3の反射面相当の第7の反射面M7を具える構成としても良い。
【0087】
この場合、第3の反射面M3を移動させないで済む分、反射面移動装置37aの構成を簡単にすることができる。ただしこの場合、第3の反射面M3と第7の反射面M7の個体差の影響を受けやすくなるので、光学的特性をより保存したい場合は、第7の反射面M7を設けずに第3および第4の反射面M3,M4を移動する構成(図4を参照して説明した構成)の方が好ましい。
【0088】
(e)なお、この発明の光学特性測定ユニットでは、入射光としてビーム径が小さいものを用いる場合、入射光のF値が大きい場合、および又は光学系全体が小さいため光路長が短い場合等は、第2および第3の反射面M2,M3それぞれを、回転楕円面で構成する代わりに、前記N字状の光路を含む平面に垂直な方向に曲率を持たない楕円円筒面、または、前記回転楕円面に近似な形状を持つ球面、または、前記回転楕円面に近似な形状を持つ円筒面で構成しても良い。ビーム径が小さい場合等は、入射角を変えても第1の反射面M1で反射された光は図2の楕円モデルの線上のどこかに入射される。すなわち、図2の紙面に垂直な方向への光の広がりは少ない。そのため、第2および第3の反射面M2,M3を上記のような球面または円筒面で構成しても、M2,M3を回転楕円面で構成する場合と等価な光学系が実現できる。にもかかわらず、上記の球面や円筒面は、いずれも、回転楕円面に比べて、作製が容易であるので、例えば、光学特性測定ユニットのコスト低減を図ることができる。
【0089】
(f)また、この発明の光学特性測定ユニットの発明を実施するに当たり、反射面回転装置31の代わりに、図7に示したように、第1および第4の反射面M1,M4を、入射点Aおよび出射点Dを結ぶ線分ADを回転軸として連動させて回転する反射面回転装置41(以下、第2の反射面回転装置41ともいう。)を具える構成としても良い。
【0090】
この第2の反射面回転装置41を用いて、第1の反射面M1を線分ADを回転軸として角度α回転させた場合の、被測定面33aへの光の入射角θは、以下の(16)式により表せる。
【0091】
θ=arccos{cosθ0 cosα}・・・(16)
このようにθが与えられる理由を、図8を参照して説明する。ただし、この図8において、Nは被測定面33aの法線ベクトル、S0 はα=0(第1の反射面M1の初期状態)での被測定面33aへの入射光線のベクトル、Sは第1の反射面M1を線分ADを回転軸として、角度α回転させた時の被測定面33aへの入射光線のベクトルである。これら3つのベクトルはすべて単位ベクトルであるとする。また、θ0 は、α=0での被測定面33aへの入射角である。なお、図8では、計算を簡略化するため、ベクトルS0 の方向をz軸と定め、かつ、ベクトルSの移動する平面がyzとなるようにy軸を定めてある。このとき、法線ベクトルNは自動的にxz平面内にある。
【0092】
ベクトルNの成分は以下の(17)式の通りであり、また、ベクトルSの成分は以下の(18)式の通りである。
【0093】
N=(sinθ0 、0、cosθ0 )・・・(17)
S=(0、sinα、cosα) ・・・(18)
入射角θは、上記の各ベクトルの内積を使って以下の(19)式のように表すことができる。
【0094】
N・S=|N||S0 |cosθ ・・・(19)
ここで、|N||S0 |=cosθ0 cosα、|N|=1、|S0 |=1であるので、これらを(19)式に代入し、かつ、該式を変形すると、上記の(16)式が得られる。
【0095】
θ0 =10度とすると、第1の反射面M1の回転角度αを0〜90度の範囲で変化させることにより、入射角θを10〜90度の範囲で任意に変化させることができる。
【0096】
この第2の反射面回転装置41を用いると、反射面回転装置31を用いる場合とは異なる光学特性測定ユニットを設計することができる。そのため、光学特性測定ユニットの設計自由度が向上する。
【0097】
なお、第2の反射面回転装置41を用いる構成の場合も、第2の反射面M2が、入射点Aおよび光学系中心Oを焦点とする回転楕円面であるので、第1の反射面M1を回転させても、第1および第2の反射面M1,M2を経た反射光は、常に光学系中心Oを通過する。然も、点Aから、点Bを経て、光学系中心Oに至る光路長も、第1の反射面M1を回転させても、変化しない。また、この第2の反射面回転装置41の場合も、第1の反射面M1の回転に連動させて第4の反射面M4を回転させることができる。そして、第4の反射面M4の回転方向および回転量は、第4の反射面M4からの出射光L2が、第1の反射面M1への入射光と同軸になるように、設定することができる。
【0098】
これらのことから、第2の反射面回転装置41を用いる構成の場合も、光路長、焦点距離、収差などの光学的特性を保存することができる。
【0099】
なお、この第2の反射面回転装置41を用いる構成の場合で、第2の測定、すなわち、第1、第5、第6及び第4の反射面を用いた平行光による透過率測定をするためには、第1および第2の反射面M1、M4がある所定位置の時に、第1の反射面M1から第5の反射面に光が反射され、かつ、第6の反射面からの光が第4の反射面M4に集光されるように、第5および第6の反射面の位置を考慮すれば良い。
【0100】
(g)この第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットの場合も、第1および第4の反射面M1,M4の回転のさせ方が反射面回転装置31を具えた光学特性測定ユニットの場合と異なること以外は、反射面回転装置31を具えた光学特性測定ユニットについて説明した場合と同様にして、被測定物の透過率、透過における位相変化、反射率、反射における位相変化を測定できる。以下、簡単に説明する。
【0101】
図7(A)および(B)は、第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットで、透過率および又は透過における位相変化を測定する場合の説明図である。第2および第3の反射面M2,M3間に被測定物を挿入しない状態で出射光L2の強度を測定する(図7(A))。第2および第3の反射面M2,M3間の所定位置に被測定物33を挿入した状態で出射光L2の強度を測定する(図7(B))。これら測定で得た情報から、透過率および又は透過における位相変化を求める原理は、反射面回転装置31を具えた光学特性測定ユニットの場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0102】
図9(A)および(B)は、第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットで、絶対反射率および又は反射における位相変化を測定する場合の説明図である。第2および第3の反射面M2,M3間に被測定物を挿入しない状態で出射光L2の強度を測定する(図9(A))。第2および第3の反射面M2,M3間の所定位置に被測定物33を挿入した状態で、かつ、第3および第4の反射面をAD線を中心として図9(A)の状態から180度回転させた状態で出射光L2の強度を測定する(図9(B))。これら測定で得た情報から、絶対反射率および又は反射における位相変化を求める原理は、反射面回転装置31を具えた光学特性測定ユニットの場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0103】
図10(A)および(B)は、第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットで、相対反射率および又は相対位相変化を測定する場合の説明図である。
【0104】
第3および第4の反射面M3,M4を、N字状を構成する位置ではなく、該位置に対して線分ADを中心として180度回転させた位置(非N字状の位置)に、反射面回転装置31(図1参照)により、移動しておく。そして、基準物39を所定位置に置く(図10(A))。そしてこの状態で出射光L2の強度を測定する。次に、基準物の代わりに被測定物33を所定位置に置く。そして、この状態で出射光L2の強度を測定する(図10(B))。これら測定で得た情報から、相対反射率および又は反射における相対位相変化を求める原理は、反射面回転装置31を具えた光学特性測定ユニットの場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0105】
(h)なお、第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットの場合で、入射光のビーム径が小さい場合や、入射光のF値が大きい場合や、光学系全体が小さいために光路長が短い場合は、第2および第3の反射面M2,M3を回転楕円面で構成していた代わりに、後述する所定の円筒面で構成しても良い。これについて、図11を参照して詳細に説明する。
【0106】
第2の反射面回転装置41を用いた場合、第1の反射面M1を回転させた時の第2の反射面M2への光の入射点の軌跡は、図11(A)に網点模様で示したように、回転楕円面の短周に沿うようになる。然も、図11(B)に示したように、回転楕円面の、楕円成分が最も少ない部分に沿うようになる。すなわち、図11(C)に示したように、球面成分を持つ面に沿うようになる。したがって、M2に入る光線のビーム系が小さい場合等では、図11(D)に示したように、AD線を軸とする円筒面の一部で第2および第3の反射面M2,M3それぞれを構成しても、本発明の作用・効果が得られる。
【0107】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。ただし、説明に用いる各図は、この発明を理解出来る程度に概略的に示してあるにすぎない。また、以下の説明に用いる各図において、同様な構成成分については、同一の番号を付して示す。そして、同様な構成成分の重複説明を省略することもある。
【0108】
1.第1の実施の形態
図12は、第1の実施の形態の光学特性測定ユニットを説明するための斜視図である。
【0109】
この光学特性測定ユニットでは、基板51上に、第1〜第4の反射面M1〜M4を、これら反射面を経る光路がN字状となるように、配置してある。
【0110】
さらに、この基板51上の所定の位置に、第5および第6の反射面M5、M6を、配置してある。この所定の位置とは、第1および第4の反射面M1、M4を、この発明でいう第2の測定を実施する際の任意の位置に固定した時に、第1の反射面M1からの光を平行光にできかつ該平行光を光学系中心Oを通るよう反射できる、第5の反射面の設置位置であり、また、この第5の反射面M5からの光を受けこれを第4の反射面M4上に集光できる、第6の反射面の設置位置である。
【0111】
これら第5および第6の反射面M5、M6それぞれは、例えば放物面鏡で構成することができる。第5の反射面M5を放物面鏡で構成した場合、この放物面鏡M5を、例えば、その焦点が第1の反射面M1のA点若しくはその近傍に位置し、かつ、その頂点が適正な位置になるように配置することで、この発明でいう第5の反射面を実現することができる。また、第6の反射面を放物面鏡で構成した場合、この放物面鏡M6を、例えば、その焦点が第4の反射面M4のD点若しくはその近傍に位置し、かつ、その頂点が適正な位置になるように配置することで、この発明でいう第6の反射面を実現することができる。もちろん、これは一例にすぎない。
【0112】
また、第1および第4の反射面M1,M4それぞれを、平面鏡で構成してある。また、第2の反射面M2を、入射点Aと光学系中心Oとを焦点とする回転楕円面の一部で構成してある。また、第3の反射面M3を、光学系中心Oと出射点Dとを焦点とする回転楕円面の一部で構成してある。
【0113】
そして、第2および第3の反射面M2,M3それぞれを、基板51に固定してある。これに対して、第1および第4の反射面M1,M4それぞれは、基板51に固定していない。
【0114】
この第1の反射面M1を、第1回転軸53の一端と接続してある。この第1回転軸53は、基板51の貫通孔51a通って基板51の裏面に至っている。この第1の回転軸53の他端を、第1プーリ55と接続してある。
【0115】
また、第4の反射面M4を、第2回転軸57の一端と接続してある。この第2回転軸57は、基板51の貫通孔51b通って基板51の裏面に至っている。この第2の回転軸57の他端を、第2プーリ59と接続してある。
【0116】
また、この光学特性測定ユニットは、回転手段として例えば任意好適なモータ61を具えている。このモータ61のシャフト61aに、第3のプーリ63および第4のプーリ65を接続してある。モータとしては、例えばステッピングモータを用いることができる。
【0117】
第3のプーリ63と第1のプーリ55とを、ベルト67により結合してある。第4のプーリ65と第2のプーリ59とを、ベルト69により結合してある。
【0118】
この第1の実施の形態では、回転軸53,57と、各プーリ55,59,63,65と、モータ61とにより、反射面回転装置31を構成している。
【0119】
また、この光学特性測定ユニットは、物体移動装置35を具える。この物体移動装置35は、被測定物(基準物の場合も含む)を、この発明でいう所定位置に入れ出しする。この物体移動装置35は、任意好的な、移動機構で構成することができる。
【0120】
この第1の実施の形態の場合、モータ61を回転させると、この回転は、各プーリと回転軸とにより第1および第4の反射面M1,M4に伝わる。そのため、この例の場合は、第1および第4の反射面M1,M4を、同一方向に、同一角度回転させることができる。
【0121】
なお、第2の反射面M2を構成する回転楕円面と、第3の反射面M3を構成する回転楕円面とが同一の形状である場合、第1の反射面M1をφ回転させたことに対する第4の反射面M4の回転角度および回転方向は、第1の反射面M1と同じで済む。M2,M3の形状が異なる場合は、両者の形状の違いを考慮して、第4の反射面M4の駆動条件を決定する必要がある。
【0122】
この図12に示した実施の形態の光学特性測定ユニットの場合、図3(A)および(B)を用いて説明した各処理が可能である。したがって、被測定物の透過率および又は透過における位相変化を測定することができる。
【0123】
さらに、この図12に示した実施の形態の光学特性測定ユニットの場合、第1、第5、第6および第4の反射面を用いることによる、図1(B)を参照して説明した第1の測定、すなわち平行光を用いての透過率測定を行うことができる。
【0124】
2.第2の実施の形態
図13は、第2の実施の形態の光学特性測定ユニットを説明するための斜視図である。
【0125】
第1の実施の形態では、第1および第4の反射面M1、M4を、最終的には、共通のモータ61に結合していた。これに対し、この第2の実施の形態では、第1および第2の反射面M1,M4それぞれを、別々のモータ71,73に結合してある。
【0126】
この第2の実施の形態の場合、モータ71,73と回転軸53,57とで、反射面回転装置31を構成している。
【0127】
この第2の実施の形態の場合、モータ71,73を別々に駆動できるので、第1および第4の反射面M1,M4の 回転方向および回転量をそれぞれ任意に制御できる。
【0128】
また、モータ73と回転軸57とからなる部分は、第4の反射面M4を線分ADを中心として180度移動させる反射面移動装置37の役割も担っている。
【0129】
さらに、第1の実施の形態では、第3の反射面M3を基板51に固定していたが、この第2の実施の形態では、第3の反射面M3は基板51に固定していない。然も、第3の反射面M3は、反射面移動装置37によって、線分ADを中心として、180度回転移動できる構成としてある。
【0130】
第3の反射面M3を移動するための反射面移動装置37は、任意好適な移動機構により構成することができる。
【0131】
この第2の実施の形態の光学特性測定ユニットの場合、反射面移動装置37を用いることで、第3の反射面M3を線分ADを回転軸として180度回転できるので、図4(A)〜(D)を参照して説明した各処理を行える。そのため、被測定物の絶対反射率および又は反射における位相変化を測定できる。
【0132】
さらに、この第2の実施の形態の光学特性測定ユニットの場合、図5(A)および(B)を参照して説明した各処理が行えるので、被測定物の相対反射率および又は反射における相対位相変化を測定できる。
【0133】
また、この第2の実施の形態の光学特性測定ユニットの場合、図3(A)および(B)を参照して説明した透過率の測定と、図1(B)を参照して説明した平行光を用いての透過率の測定とを、第1の実施の形態と同様に、行うことができる。
【0134】
したがって、この第2の実施の形態の光学特性測定ユニットによれば、▲1▼被測定物の絶対反射率および又は反射における位相変化、▲2▼被測定物の相対反射率および又は反射における相対位相変化、▲3▼被測定物の透過率および又は透過における位相変化、▲4▼平行光を用いての被測定物の透過率をそれぞれ測定できる。
【0135】
3.第3の実施の形態
図14は、この発明の光学特性測定ユニットをエリプソメータに適用した例を説明する図である。
【0136】
このエリプソメータは、この発明の光学特性測定ユニット30と、光源部81と、受光部83とを具える。
【0137】
光源部81は、例えば、任意の波長の光を出力する光源(例えばモノクロメータ)81aと、偏光子81bとで構成できる。受光部83は、例えば、検光子83aと受光素子83bとで構成出来る。
【0138】
光源部81からの光を、入射光L1として、第1の反射面M1に入射させる。受光部83は、第4の反射面M4の後段であって、AD線上に配置してある。
【0139】
この図14に示したエリプソメータの場合、光源部81と光学特性測定ユニット30と、受光部83とが直線状に配置された構造のエリプソメータを実現できる。然も、ゴニオステージなどを用いずにエリプソメータを実現できる。従って、この発明の光学特性測定ユニットの特徴を有した新規なエリプソメータを実現できる。
【0140】
4.第4の実施の形態
図15は、この発明の光学特性測定ユニットを、市販の分光光度計90に組み合わせる例を説明する図である。
【0141】
分光光度計90は、光源部91と、測定部93とを具える。測定部93には、リファレンス光路とサンプル光路とが形成されている。光源部91は、リファレンス光路およびサンプル光路に交互に光を出力する。これら光を、説明上、リファレンス光Lrおよびサンプル光Lsと呼ぶ。
【0142】
この発明の光学特性測定ユニット30はサンプル光路中に配置される。受光部95は、リファレンス光Lrおよびサンプル光Lsを交互に受光する。
【0143】
この実施の形態によれば、市販の分光光度計とこの発明の光学特性測定ユニットとにより、▲1▼被測定物の絶対反射率および又は反射における位相変化、▲2▼被測定物の相対反射率および又は反射における相対位相変化、▲3▼被測定物の透過率および又は透過における位相変化、▲4▼平行光を用いての被測定物の透過率をそれぞれ測定できる。
【0144】
しかも、これら測定のいずれを行う場合も、光学系の交換や、調整を特にすることなく、目的の測定を行うことができる。
【0145】
5.第5の実施の形態
図16は、この発明の光学特性測定ユニットを、エリプソメータに適用した例であって、しかも、ダブルビーム方式を適用する例を説明する図である。
【0146】
この実施の形態の装置では、光源部81と受光部83との間に、リファレンス光路101と、サンプル光路103とが形成されている。そして、リファレンス光路101およびサンプル光路103それぞれに、この発明の光学特性測定ユニット30を挿入してある。
【0147】
光源部81から出た光は、第1チョッパミラー105により時間的に振り分けられる。そして、リファレンス光路101およびサンプル光路103を進む。
【0148】
受光部83の前段に第2チョッパミラー107が設けてある。この第2チョッパミラー107は、リファレンス光路101を経てきたリファレンス光と、サンプル光路103を経てきたサンプル光とを、選択的に受光部83に入力する。
【0149】
この実施の形態の装置によれば、ダブルビーム方式による測光が可能なエリプソメータが実現される。そのため、この発明の光学特性測定ユニットの特徴を有しかつダブルビーム方式の利点(測定精度の高い)新規なエリプソメータを実現することができる。
【0150】
6.第6の実施の形態
この発明の光学特性測定ユニットでは、第2および第3の反射面を回転楕円面又は、所定の球面、楕円円筒面若しくは円筒面(以下、これらを回転楕円面等という)で構成すると述べた。しかしこの発明では、例えば平面鏡又は球面鏡を回転楕円面等に相当するように移動させて使用する場合も、この発明でいう回転楕円面等に含まれる。これについて図17を参照して説明する。
【0151】
図17では、第2の反射面M2および第3の反射面M3それぞれを、平面鏡または球面鏡で構成してある。そして、この平面鏡又は球面鏡M2を、第1の反射面M1を回転させた際のM1からの光線を受けることができ、かつ、この受けた光を光学系中心Oに出射できるように、第1の反射面M1の回転に同期させて移動する構成としてある。一方、この平面鏡又は球面鏡M3を、第2の反射面M2の移動に同期して移動し、かつ、第2の反射面M2からの光線を受けることができ、かつ、この受けた光を第4の反射面のD点に出射できるように、移動する構成としてある。
【0152】
この第6の実施の形態の場合、第2および第3の反射面M2,M3それぞれを平面鏡または球面鏡で構成できるので、回転楕円面を用いる場合に比べて、第2および第3の反射面自体を小型かつ安価にできる。ただし、この場合は、光線を追従できるように平面鏡又は球面鏡を駆動する機構が必要になる。
【0153】
【実施例】
以下、いくつかの実施例として、光学特性ユニット30を用いた測定結果について、比較例と共に説明する。ただし、以下で説明する波長、入射角、被測定物はいずれも例示にすぎない。従って、この発明がこれらに何ら限定されるものではない。
【0154】
1.第1実施例
先ず、厚さが厚い被測定物の絶対透過率を、平行光を用いて測定する例を説明する。そのため、先ず、図1(B)の光学系において、被測定物を測定位置に入れない状態で出射光L2の強度Irを測定する。ただし、入射光L1は、波長175〜250nmの範囲で変化させる。また、図1(B)の光学系において、図1(B)に示した様に被測定物33を、該光学系に入れる。そして、Irを測定したと同様にして、出射光L2の強度Isを測定する。ただし、被測定物33として、縦が20mm、横が20mm、厚さが50mmである直方体状の石英、すなわち測定部位の厚さが50mmというように厚い被測定物を用いる。
【0155】
上記求めたIsおよびIrから、波長毎の透過率Tsを、Is/Irに従い求める。この結果を、図18に、横軸に波長をとり、縦軸に透過率をとって示した。
【0156】
図18から明らかなように、この発明によれば、厚さが厚い被測定物であっても、透過率特性を測定できることが分かる。
【0157】
(比較例)
第1実施例で用いた被測定物、すなわち厚さが50mmの被測定物を用い、図3(A)および(B)を参照して説明した様に、透過率を測定する。すなわち、第1〜第4の反射面M1〜M4を用いた透過率測定を行う。
【0158】
この比較例1の測定では、被測定物を挿入した時の測定(Is測定)の際に、被測定物から出た光の光束が、受光素子(図示せず)の受光面より大きくなってしまい、そのため、第1の実施例に比べて、透過率は小さな値になってしまった(図示せず)。これは、入射光L1が平行光でない(NAを持つ光の)ため、入射光L1が、厚さが厚い被測定物中で多方面に広がってしまうためと考えられる。
【0159】
これら第1実施例と比較例とから分かるように、この発明の光学特性測定ユニットによれば、厚みが厚い被測定物の透過率も精度良く測定できることが分かる。
【0160】
2.第2実施例
直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に薄膜を形成した光学部品の絶対透過率を測定する。そのため、先ず、図3(B)の光学系において、被測定物を測定位置に入れない状態で出射光強度Irを測定する。ただし、入射光L1として波長190nmのp偏光を用い、かつ、薄膜への入射光の入射角を5〜30度の範囲で変化させる。次に、図3(B)の光学系において、被測定物(薄膜を有した石英基板)を測定位置に入れた状態で、Irを求めたと同様にして出射光強度Isを測定する。そして、これらIrおよびIsから、透過率を、Is/Irとして求める。
【0161】
この結果を、図19に、横軸に入射角(deg)をとり、縦軸に透過率をとって示した。
【0162】
図19から明らかなように、この発明によれば、透過率の入射角依存性を測定できることが分かる。
【0163】
3.第3実施例
直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に反射防止膜を形成した光学部品の絶対透過率を測定する。そのため、先ず、図3(B)の光学系において、被測定物を測定位置に入れない状態で出射光強度Irを測定する。ただし、入射光L1として波長175〜250nmのp偏光を用い、かつ、反射防止膜への入射角を30度とする。次に、図3(B)の光学系において、被測定物(反射防止膜を有した石英基板)を測定位置に入れた状態で、Irを求めたと同様にして出射光強度Isを測定する。そして、これらIrおよびIsから、透過率を、Is/Irとして求める。
【0164】
この結果を、図20に、横軸に波長をとり、縦軸に透過率をとって示した。
【0165】
図20から明らかなように、この発明によれば、反射防止膜の絶対透過率の波長依存性を測定できることが分かる。
【0166】
4.第4実施例
直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成した薄膜の透過における光の位相変化を測定する。そのため、先ず、図3(B)の光学系において、石英基板のみを測定位置に入れた状態で位相特性φr(θ)を測定する。ただし、入射光L1として波長190nmの光を用い、かつ、薄膜への入射角を30、50、60度とする。次に、図3(B)の光学系において、被測定物(薄膜を有した石英基板)を測定位置に入れた状態で、φr(θ)を求めたと同様にして位相特性φs(θ)を測定する。そして、これらφr(θ)およびφs(θ)から、薄膜の透過における光の位相変化を、φs(θ)−φr(θ)として求める。
【0167】
この第4実施例によれば、薄膜の透過における光の位相変化を測定出来ることが分かる。
【0168】
5.第5実施例
直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成したミラーの絶対反射率(入射角依存性)を測定する。そのため、先ず、図4(A)、(B)に示した様に、被測定物を測定位置に入れない状態で出射光強度Irを測定する。ただし、入射光L1として波長190nmのp偏光を用い、かつ、ミラーへの入射角を35〜55度とする。次に、図4(C)、(D)に示した様に、第3及び第4の反射面M3、M4を、反射面移動装置37によって移動すると共に、被測定物(ミラーを有した石英基板)を測定位置に入れ、そして、Irを求めたと同様にして出射光強度Isを測定する。そして、これらIrおよびIsから、反射率を、Is/Irとして求める。
【0169】
この結果を、図21に、横軸に入射角をとり、縦軸に反射率をとって示した。
【0170】
図21から明らかなように、この発明によれば、ミラーの絶対反射率の入射角依存性を測定できることが分かる。
【0171】
6.第6実施例
直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成したミラーの絶対反射率(波長依存性)を測定する。そのため、先ず、図4(A)、(B)に示した様に、被測定物を測定位置に入れない状態で出射光強度Irを測定する。ただし、入射光L1として波長175〜250nmのp偏光を用い、かつ、ミラーへの入射角を45度とする。次に、図4(C)、(D)に示した様に、第3及び第4の反射面M3、M4を、反射面移動装置37によって移動すると共に、被測定物(ミラーを有した石英基板)を測定位置に入れ、そして、Irを求めたと同様にして出射光強度Isを測定する。そして、これらIrおよびIsから、反射率を、Is/Irとして求める。
【0172】
この結果を、図22に、横軸に波長をとり、縦軸に反射率をとって示した。
【0173】
図22から明らかなように、この発明によれば、ミラーの反射率の波長依存性を測定できることが分かる。
【0174】
7.第7実施例
直径20mmかつ厚さが10mmの石英基板上に形成した反射防止膜の相対反射率を測定する。そのため、先ず、図5(A)に示す様に、基準物39として石英基板のみを測定位置に入れた状態で出射光強度Irを測定する。ただし、入射光L1として波長190nmのp偏光を用いる。また、入射角は20〜40度の範囲で変化させる。次に、図5(B)に示す様に、被測定物33(反射防止膜を有した石英基板)を測定位置に入れた状態で、Irを求めたと同様にして出射光強度Isを測定する。そして、これらIrおよびIsから、反射率を、Is/Irとして求める。
【0175】
この結果を、図23に、横軸に入射角をとり、縦軸に反射率をとって示した。
【0176】
図23から明らかなように、この発明によれば、反射防止膜の相対反射率の入射角依存性を測定できることが分かる。
【0177】
8.第8実施例
直径20mmかつ厚さが10mmの石英基板上に形成した薄膜の相対反射率を測定する。そのため、先ず、図5(A)に示す様に、基準物39として石英基板のみを測定位置に入れた状態で出射光強度Irを測定する。ただし、入射光L1として波長175〜250nmのp偏光を用いる。また、入射角は30度とする。次に、図5(B)に示す様に、被測定物33(反射防止膜を有した石英基板)を測定位置に入れた状態で、Irを求めたと同様にして出射光強度Isを測定する。そして、これらIrおよびIsから、反射率を、Is/Irとして求める。
【0178】
この結果を、図24に、横軸に波長をとり、縦軸に反射率をとって示した。
【0179】
図24から明らかなように、この発明によれば、薄膜の相対反射率の波長依存性を測定できることが分かる。
【0180】
9.第9実施例
直径20mmかつ厚さが10mmの石英基板上に形成した薄膜の反射における光の位相変化を測定する。そのため、先ず、図5(A)に示す様に、基準物39として石英基板のみを測定位置に入れた状態で位相特性φr(θ)を測定する。ただし、入射光L1として波長190nmのp偏光を用いる。また、入射角は30、50、60度とする。次に、図5(B)に示すように、被測定物33(薄膜を有した石英基板)を測定位置に入れた状態で、φr(θ)を求めたと同様にして位相特性φs(θ)を測定する。そして、これらφr(θ)およびφs(θ)から、薄膜の透過における光の位相変化Φs(θ)を、φs(θ)−φr(θ)として求める。また、この位相変化Φs(θ)より、この被測定物の屈折率、吸収定数を求める。
【0181】
この第9実施例によれば、薄膜の反射における光の位相変化、屈折率、吸収定数を測定出来ることが分かる。
【0182】
10.第10実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101、サンプル光路103それぞれを、第2の測定が出来る状態、すなわち、第1、第5、第6および第4の反射面M1、M5、M6、M4を入射光が進む状態にする(ただし、図16では第1の測定状態を示してある。)。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、縦が20mm、横が20mm、厚さが50mmである直方体状の石英(図示せず)を入れる。ただし、入射光は波長175〜250nmの範囲の光とする。
【0183】
そして、リファレンス光路101側の出射光強度Irと、サンプル光路側の出射光強度Isとを測定し、これらから、Is/Irに従い透過率を求める。
【0184】
この第10実施例によれば、所望の透過率測定を行えることが分かった。
【0185】
11.第11実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101、サンプル光路103それぞれを、第1の測定が出来る状態、すなわち、第1〜第4の反射面M1〜M4を入射光が進む状態にする。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成された薄膜(図示せず)を入れる。ただし、入射光は波長190nmのp偏光とし、薄膜への入射角を5〜30度とする。
【0186】
そして、リファレンス光路101側の出射光強度Irと、サンプル光路側の出射光強度Isとを測定し、これらから、Is/Irに従い透過率を求める。
【0187】
この第11実施例によれば、所望の透過率測定を行えることが分かった。
【0188】
12.第12実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101、サンプル光路103それぞれを、第1の測定が出来る状態、すなわち、第1〜第4の反射面M1〜M4を入射光が進む状態にする。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成された薄膜(図示せず)を入れる。ただし、入射光は波長175〜250nmのp偏光とし、薄膜への入射角を30度とする。
【0189】
そして、リファレンス光路101側の出射光強度Irと、サンプル光路側の出射光強度Isとを測定し、これらから、Is/Irに従い透過率を求める。
【0190】
この第12実施例によれば、所望の透過率測定を行えることが分かった。
【0191】
13.第13実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101を、図16の様にN状態にし、一方、サンプル光路103を、図4(C)の様に、非N状態にする。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成されたミラー(図示せず)を入れる。ただし、入射光は波長190nmのp偏光とし、薄膜への入射角を35〜55で変化させる。
【0192】
そして、リファレンス光路101側の出射光強度Irと、サンプル光路側の出射光強度Isとを測定し、これらから、Is/Irに従い反射率を求める。
【0193】
この第13実施例によれば、所望の反射率測定を行えることが分かった。
【0194】
14.第14実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101を、図16の様にN状態にし、一方、サンプル光路103を、図4(C)の様に、非N状態にする。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成されたミラー(図示せず)を入れる。ただし、入射光は波長175〜250nmのp偏光とし、薄膜への入射角を45度とする。
【0195】
そして、リファレンス光路101側の出射光強度Irと、サンプル光路側の出射光強度Isとを測定し、これらから、Is/Irに従い反射率を求める。
【0196】
この第14実施例によれば、所望の反射率測定を行えることが分かった。
【0197】
15.第15実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101およびサンプル光路103それぞれを、図4(C)の様に、非N状態にする。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成された反射防止膜(図示せず)を入れ、一方、リファレンス光路101の光学系中心付近に、基準物として石英基板のみを入れる。ただし、入射光は波長175〜250nmのp偏光とし、薄膜への入射角を30度とする。
【0198】
そして、リファレンス光路101側の出射光強度Irと、サンプル光路側の出射光強度Isとを測定し、これらから、Is/Irに従い反射率を求める。
【0199】
この第15実施例によれば、所望の反射率測定を行えることが分かった。
【0200】
16.第16実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101およびサンプル光路103それぞれを、図4(C)の様に、非N状態にする。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、直径20mmかつ厚さが2mmの石英基板上に形成された反射防止膜(図示せず)を入れ、一方、リファレンス光路101の光学系中心付近に、基準物として石英基板のみを入れる。ただし、入射光は波長190nmのp偏光とし、薄膜への入射角を15〜45度の範囲で変化させる。
【0201】
そして、リファレンス光路101側の出射光強度Irと、サンプル光路側の出射光強度Isとを測定し、これらから、Is/Irに従い反射率を求める。
【0202】
この第16実施例によれば、所望の反射率測定を行えることが分かった。
【0203】
17.第17実施例
図16を用いて説明したダブルビーム方式エリプソメータのリファレンス光路101およびサンプル光路103それぞれを、図4(C)の様に、非N状態にする。然も、サンプル光路103の光学系中心付近に、被測定物として、直径20mmかつ厚さが10mmの石英基板上に形成された薄膜(図示せず)を入れ、一方、リファレンス光路101の光学系中心付近に、基準物として石英基板のみを入れる。ただし、入射光は波長190nmのp偏光とし、薄膜への入射角を30、45、60とする。
【0204】
そして、リファレンス光路101側の位相特性φr(θ)とサンプル光路103側の位相特性φs(θ)とを測定する。そして、これらφr(θ)およびφs(θ)から、薄膜の反射における光の位相変化Φs(θ)を、φs(θ)−φr(θ)として求める。また、この位相変化Φs(θ)より、この被測定物の屈折率、吸収定数を求める。
【0205】
この第17実施例によれば、薄膜の反射における光の位相変化、屈折率、吸収定数を測定出来ることが分かる。
【0206】
【発明の効果】
上述した説明から明らかなように、この発明の光学特性測定ユニットによれば、第1の測定時は入射光を第1〜第4の反射面の順に反射し、第2の測定時は入射光を第1、第5、第6および第4の反射面の順に反射する所定配置および所定構成の第1〜第6の反射面と、前記第1の反射面および前記第4の反射面を回転させる反射面回転装置と、被測定物を前記第2および第3の反射面間、または、第5および第6の反射面間に入れ出しする物体移動装置とを具える。このため、光学系を交換することなく透過率および又は透過における光の位相変化を、入射角を変えながら測定出来る。また、第2の測定時では、平行光を用いた透過率測定が行えるので、厚みが厚い被測定物であっても精度良く透過率を測定することができる。
【0207】
また、この発明の好適例の光学特性測定ユニットによれば、第3および第4の反射面を移動するための所定の反射面移動装置をさらに具える。このため、光学系を交換することなく、▲1▼透過率および又は透過における光の位相変化、▲2▼反射率および又は反射における光の位相変化、▲3▼相対反射率および又は相対位相変化、▲4▼平行光による透過率特性の、任意の光学特性を、入射角を変えながら測定出来る。
【0208】
従ってこの発明の光学特性測定ユニットによれば、光学系の光学的特性や受光部の位置を変えずに、入射角を任意に変えながら透過率、反射率、透過や反射における光の位相変化を従来に比べて簡易に測定でき、また、厚みが厚い被測定物の透過率測定も所望の通り行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の光学特性測定ユニットの構成を説明する図である。
【図2】この発明の光学特性測定ユニットで被測定物への入射角を変えることが出来る理由を説明する図である。
【図3】この発明の光学特性測定ユニットを用いて、透過率および又は透過における光の位相変化を測定する場合の説明図である。
【図4】この発明の光学特性測定ユニットを用いて、絶対反射率および又は反射における光の位相変化を測定する場合の説明図である。
【図5】この発明の光学特性測定ユニットを用いて、相対反射率および又は反射における光の相対位相変化を測定する場合の説明図である。
【図6】この発明の光学特性測定ユニットの変形例の説明図である。
【図7】この発明の光学特性測定ユニットの他の変形例の説明図である。然も、第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットを用いて、透過率および又は透過における光の位相変化を測定する場合の説明図である。
【図8】第2の反射面回転装置41の作用を説明する図である。
【図9】第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットを用いて、絶対反射率および又は反射における光の位相変化を測定する場合の説明図である。
【図10】第2の反射面回転装置41を具えた光学特性測定ユニットを用いて、相対反射率および又は反射における光の相対位相変化を測定する場合の説明図である。
【図11】この発明で用いる第2および第3の反射面の変形例の説明図である。
【図12】第1の実施の形態の説明図である。
【図13】第2の実施の形態の説明図である。
【図14】第3の実施の形態の説明図である。
【図15】第4の実施の形態の説明図である。
【図16】第5の実施の形態の説明図である。
【図17】第6の実施の形態の説明図である。
【図18】第1の実施例での測定結果を説明する図である。
【図19】第2の実施例での測定結果を説明する図である。
【図20】第3の実施例での測定結果を説明する図である。
【図21】第5の実施例での測定結果を説明する図である。
【図22】第6の実施例での測定結果を説明する図である。
【図23】第7の実施例での測定結果を説明する図である。
【図24】第8の実施例での測定結果を説明する図である。
【図25】従来の透過率測定装置の説明図である。
【図26】従来の絶対反射率測定装置の説明図である。
【図27】従来の相対反射率測定装置の説明図である。
【図28】従来のエリプソメータの説明図である。
【符号の説明】
M1:第1の反射面
M2:第2の反射面
M3:第3の反射面
M4:第4の反射面
M5:第5の反射面
M6:第6の反射面
M7:第7の反射面
A:入射点
D:出射点
O:光学系中心
30:光学特性測定ユニット
31:反射面回転装置
33:被測定物
33a:被測定面
35:物体移動装置
37、37a:反射面移動装置
39:基準物
41:反射面回転装置(第2の反射面回転装置)
51:基板
51a,51b:貫通孔
53:第1回転軸
55:第1プーリ
57:第2回転軸
59:第2プーリ
61,71,73:回転手段(例えばモータ)
61a:シャフト
63:第3プーリ
65:第4プーリ
67,69:ベルト
81:光源部
81a:光源
81b:偏光子
83:受光部
83a:検光子
83b:受光素子
90:分光光度計
91:光源部
93:測定部
95:受光部
101:リファレンス光路
103:サンプル光路
105:第1チョッパミラー
107:第2チョッパミラー

Claims (5)

  1. 第1の測定時は入射光を第1〜第4の反射面の順で反射し、第2の測定時は入射光を第1、第5、第6および第4の反射面の順で反射する、第1〜第6の反射面と、
    前記第1および第4の反射面を回転させる反射面回転装置と、
    被測定物を前記第2および第3の反射面間、または、前記第5および第6の反射面間に入れ出しする物体移動装置とを具え、
    前記第1〜第4の反射面を、前記第1〜第4の反射面を経る光路がN字状となるように、かつ、前記第1の反射面に入射される入射光と前記第4の反射面から出射される出射光とが同軸となるように、配置してあり、
    前記第1および第4の反射面それぞれを、前記N字状の光路を含む平面に対して垂直に配置した反射面としてあり、
    前記入射光の前記第1の反射面での入射点Aおよび前記第4の反射面での出射点Dを結ぶ線分と、前記第2の反射面から前記第3の反射面に進む光線の軌道との交点を、光学系中心Oと定義したとき、前記第2の反射面を、前記光学系中心Oと前記入射点Aとを焦点とする第1の回転楕円面により構成してあり、
    前記第3の反射面を、前記光学系中心Oと前記出射点Dとを焦点とする第2の回転楕円面により構成してあり、
    前記第5の反射面を、前記第1の反射面からの光を平行光に変える反射面としてあり、
    前記第6の反射面を、前記第5の反射面からの光を前記第4の反射面に集光する反射面としてあり、
    前記反射面回転装置を、前記第1および第4の反射面の配置位置各々で前記N字状の光路を含む平面に直交する軸をそれぞれ中心として、前記第1および第4の反射面を連動させて回転する装置としてあり、
    前記物体移動装置を、前記被測定物の被測定面が前記光学系中心を含む位置になるように前記被測定物を前記第2および第3の反射面間、または、前記第5および第6の反射面間に挿入する挿入状態と、挿入しない非挿入状態とを選択的に形成する装置としてあること
    を特徴とする光学特性測定ユニット。
  2. 請求項1に記載の光学特性測定ユニットにおいて、
    前記第5の反射面を、前記第1の反射面からの光を平行光にできかつ該平行光を前記光学系中心Oを通るよう反射できる位置に配置した、第1の放物面鏡とし、
    前記第6の反射面を、前記第1の放物面鏡からの光を受けこれを前記第4の反射面上に集光できる位置に配置した、第2の放物面鏡としたこと
    を特徴とする光学特性測定ユニット。
  3. 請求項1に記載の光学特性測定ユニットにおいて、
    前記反射面回転装置の代わりに、前記入射点Aおよび前記出射点Dを結ぶ前記線分を回転軸として前記第1および第4の反射面を連動させて回転する反射面回転装置を具えることを特徴とする光学特性測定ユニット。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光学特性測定ユニットにおいて、
    前記第3の反射面および前記第4の反射面を、前記N字状の配置にするN状態と、該N状態に対して前記線分を回転軸として180度回転させた配置にする非N状態とを選択的に形成する反射面移動装置をさらに具えたこと
    を特徴とする光学特性測定ユニット。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学特性測定ユニットにおいて
    前記第4の反射面のみを前記N字状の配置にするN状態と、該N状態に対して前記線分を回転軸として180度回転させた配置にする非N状態とを選択的に形成する反射面移動装置を具え、
    前記第3の反射面を、前記線分を回転軸として180度回転させた位置に、第3の反射面相当の第7の反射面を具えること
    を特徴とする光学特性測定ユニット。
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