JP4167543B2 - 液圧テンショナ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チェーンやベルトに適正な緊張力を作用させるための液圧テンショナに関し、詳細には、液圧低下時などにおいてピストンの縮退を防止するためのラチェット機構を備えたものに関する。
【0002】
【従来の技術およびその課題】
液圧テンショナは、一般に、ハウジングと、ハウジングに形成された穴にスライド自在に挿入され、スプリングによって突出方向に付勢された中空のピストンと、ハウジングの穴内でピストンおよびその中空穴により限定された流体チャンバとから主として構成されている。テンショナの運転中には、チェーンまたはベルトからピストン先端に作用する押付力が、スプリングによる弾性力およびチャンバ内の液圧による抗力と釣り合っている。
【0003】
ところで、とくに自動車用のタイミングシステムに適用される液圧テンショナにおいては、エンジンの始動時などのように、チャンバ内に十分な液圧が作用していない状況下では、チェーンからピストン先端に押付力が作用したとき、ピストンがハウジング内に容易に押し込まれてピストンが縮退し、その結果、ノイズや振動が発生することがある。
【0004】
そこで、このようなピストンの縮退を防止するために、例えば、特開2002−147551号公報に示すようなラチェット機構を備えた液圧テンショナが提案されている。
【0005】
このラチェット機構は、ピストンの外周に形成されたラック歯と、ハウジングに形成されたポール穴に設けられ、ピストン外周のラック歯と係合し得る歯を有する歯付パッド状のポール部材と、ポール部材をラック歯との係合方向に付勢する環状のポールスプリングとから構成されている。
【0006】
この場合、ポール部材の歯がピストンのラック歯と係合した状態で、ピストンが突出方向に移動する際には、ピストンのラック歯がポール部材の歯を乗り越えて移動することにより、ピストンの突出方向の移動は許容されるが、ピストンが後退方向に移動する際には、ピストンのラック歯がポール部材の歯と係合した状態が維持されることにより、ピストンの後退方向の移動は規制されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−147551号公報(図3および図6参照)
【0008】
しかしながら、前記従来のラチェット機構においては、ピストン後退時に、ポール部材がピストンのラック歯と係合した状態でラック歯から押付力を受けたとき、ポール部材の歯とラック歯との係合状態が外れる方向のモーメントがポール部材の歯に作用するように構成されており(詳細は以下の[課題を解決するための手段]参照)、その結果、ピストン後退時には、ポール部材がハウジング外部に飛び出ようとする力がポール部材に作用することになる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を解消すべくなされたもので、ポール部材を備えた液圧テンショナにおいて、ピストンの後退時にポール部材のハウジング外部への飛び出しを確実に防止できる液圧テンショナを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る液圧テンショナは、ハウジングの穴にスライド自在に挿入され、ラック歯が外周の一部に形成された中空のピストンと、ピストンを突出方向に付勢するピストンスプリングと、ピストンのラック歯と係合するとともに、ピストンの突出方向の移動を許容しかつ後退方向の移動を阻止するための歯部を有するポール部材と、ポール部材の歯部がラック歯と係合する側にポール部材を付勢するポールスプリングとを備えており、ポール部材の最後端の歯部の厚みが他の歯部の厚みよりも薄くなっている。
【0011】
請求項1の発明においては、ピストンがハウジングの穴から突出する方向に移動する際には、ピストンのラック歯がポール部材のいくつかの歯部を乗り越えることによって、ピストンが突出方向に移動する。そして、ピストンスプリングのばね力および流体チャンバ内の液圧によりピストン先端からチェーンに作用する押付力が、チェーン張力によりチェーンからピストン先端に作用する押付力と釣り合うと、ピストンの移動が停止する。
【0012】
次に、流体チャンバ内に十分な液圧が作用していない状況下で、チェーンからピストン先端に押付力が作用した場合には、図5(a)に示すように、ピストン外周のラック歯3bがポール部材5の歯部5aと係合した状態を維持したまま、ピストン3がポール部材5とともに後退方向(同図左方)に移動し、ポール部材5の後端面5cがハウジング2のポール穴2bの内壁面25に圧接する。これにより、ピストン3の移動が停止する。
【0013】
この場合において、ピストン3のラック歯3bからポール部材5の歯部5aに作用する押付力をFとし、その力の作用線をmとする。また、ポール部材5の後端面5c下方の角部をA点とするとき、ポール部材5の最後端の歯部5aの歯元部における厚みte が他の歯部5aの厚みto よりも薄くなっていることにより、好ましくは、A点は押付力Fの作用線mの下方に配置されている。これに対して、従来のポール部材においては、後端面5c′が後端面5cよりも後方に配置されているため、ポール部材の後端面5c′下部のA′点は押付力Fの作用線mの上方に配置されている。
【0014】
ここで、A点およびA′点回りの力Fのモーメントについて考察する。
A点回りのモーメントMA は、力Fの作用線mとA点との距離をdA とするとき
MA =F×dA
と表され、MA はポール部材5をA点の左回りに回転させるモーメントである。一方、A′点回りのモーメントMA ′は、力Fの作用線mとA′点との距離をdA ′とするとき
MA ′=F×dA ′
と表され、MA ′はポール部材5をA′点の右回りに回転させるモーメントである。
【0015】
すなわち、モーメントMA は、ポール部材5の歯部5aをピストン3のラック歯3bと噛み合わせる方向に作用しており、一方、モーメントMA ′は、ポール部材5の歯部5aをピストン3のラック歯3bから離れさせる方向に作用している。
【0016】
このように、従来の液圧テンショナにおいては、ピストン後退時に、ポール部材5がピストン3のラック歯3bと係合した状態でラック歯3bから押付力Fを受けたとき、ポール部材5の歯部5aに対してラック歯3bとの係合状態が外れる方向のモーメントMA ′が作用するように構成されているため、ピストン後退時には、ポール部材5がハウジング外部に飛び出ようとする力がポール部材5に作用することになる。
【0017】
これに対して、請求項1の発明では、ピストン後退時には、ポール部材5の歯部5aとラック歯3bとの係合状態がより強固になる方向のモーメントMA が作用するように構成されており、このため、ピストン後退時には、ポール部材5がハウジング外部に飛び出ようとする力がポール部材5に作用することはなく、これにより、ピストン後退時にポール部材の飛び出しを確実に防止できる。
【0018】
請求項2の発明では、請求項1において、ポール部材の最後端の歯部の歯面とこれに対応するピストンのラック歯の歯面との間にクリアランスが形成されている。
【0019】
請求項1において、ポール部材の最後端の歯部の厚みを他の歯部の厚みよりも薄くすると、最後端の歯部の強度が他の歯部に比べて相対的に低下することになるが、この請求項2の発明のように、最後端の歯部とラック歯との間にクリアランスを形成することで、最後端の歯部にラック歯からの押付力が作用するのを回避でき、これにより、最後端の歯部に破損等の不具合が発生するのを防止できる。
【0020】
請求項3の発明では、ポール部材の最後端の歯部の歯面とこれより一つ前方側の歯部の歯面との間の距離が、前後方向に隣り合う他の歯部の各歯面間の距離よりも大きくなっている。
【0021】
この場合においても、請求項2の発明と同様に、ポール部材の最後端の歯部の歯面とこれに対応するピストンのラック歯の歯面との間にクリアランスが形成されることになるので、最後端の歯部にラック歯からの押付力が作用するのを回避でき、最後端の歯部に破損等の不具合が発生するのを防止できる。
【0022】
請求項4の発明においては、ポール部材の歯部を構成する歯面のうち、ピストン後退時にラック歯と係合する側の歯面が当該歯面から前方のピストン軸線方向となす挟角は、90度よりも大きくなっている。
【0023】
請求項4の発明によれば、図5(b)に示すように、ポール部材の歯面sがピストンの軸線方向Lとなす挟角をθとするとき
θ>90°
になっている。なお、同図(b)においては、図示の便宜上、同図(a)中のθよりもθの角度を大きくして示している。
【0024】
また、図5(b)では、歯面sに作用する押付力をfとし、力fをピストン軸線方向およびこれと直交する方向にそれぞれ分解して、各分力をf1 ,f2 としている。同図から明らかなように、分力f2 は、ポール部材の歯面sを下方に、つまりピストンのラック歯に向かう側に作用している。これにより、ポール部材がハウジング外部に飛び出すのを防止している。なお、従来の液圧テンショナにおいては、この角度θが90度もしくは90度よりも小さな角度に設定されており、このため、ピストン後退時には、ポール部材の歯面への押付力がポール部材をポール穴から飛び出させる側に作用する場合があった。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施態様による液圧テンショナの全体斜視図、図2は図1の液圧テンショナの縦断面図、図3は図2のIII 矢視図、図4はハウジングのポール穴部分の斜視拡大図、図5は液圧テンショナのポール部材部分の正面拡大図である。なお、図5においては、図示の便宜上、ポールスプリングを取り外したものが示されている。
【0026】
図1ないし図3に示すように、液圧テンショナ1は、軸方向に延びかつ一端が開口するピストン穴2aが形成されたハウジング2と、ハウジング2のピストン穴2a内に軸方向(図2左右方向)スライド自在に挿入された中空のピストン3と、ハウジング2のピストン穴2a内に配設され、ピストン3をピストン穴2aから突出する方向に付勢するピストンスプリング4とから主として構成されている。
【0027】
ハウジング2は、液圧テンショナ1をたとえばエンジン内に取り付けるための取付ボルトが挿入されるボルト穴20,21を有している。ハウジング2内において、ピストン3に形成された内部空間3aおよびピストン穴2aの内壁面から流体チャンバ30が形成されている。ハウジング2の底部には、外部の加圧流体源(図示せず)から流体チャンバ30内に作動流体としてのエンジンオイルを導入するための導入路10が形成されている。
【0028】
ハウジング2内のピストン穴2aの底部には、チェックバルブ7が設けられている。チェックバルブ7は、導入路10から流体チャンバ30への流体の流れを許容する一方、これとは逆方向への流体の流れを阻止するためのものである。ここでは、ボールチェックバルブが採用されている。
【0029】
ピストン3の内部空間3aにおいてピストン頭部側には、ベントディスク8が設けられている。ベントディスク8は、流体チャンバ30内に混入したエアをテンショナ外部に排出するとともに、流体チャンバ30からの流体の漏出量を制御するための部材であって、そのピストン頭部側の側面には、たとえば螺旋溝が形成されている。一方、ピストン頭部には、軸方向の貫通孔31が形成されている。流体チャンバ30内のエアは、これを含む流体とともに、ベントディスク8の螺旋溝を通って、貫通孔31からテンショナ外部に排出される。また、ベントディスク8は軸部8aを有している。ピストンスプリング4は、ベントディスク8の軸部8aの回りに配設されており、その先端は、ベントディスク8をピストン頭部側に付勢している。
【0030】
ピストン3の外周面の一部には、ラック歯3bが形成されている。一方、ハウジング2には、ピストン穴2aに連通するポール穴2bが形成されている(図4および図5(a)参照)。ポール穴2b内には、ポール部材5が配置されている。ポール部材5の下面には、ピストン3のラック歯3bと係合し得る歯部5aが形成されている。
【0031】
図5(a)に示すように、ポール部材5の最後端の歯部5aの厚みte は、他の歯部5aの歯元部分の厚みto よりも薄くなっている。すなわち
te <to
となっている。より好ましくは、厚みte は、他の歯部5aの作用線m上の厚みよりも薄くなっている。また、ポール部材5の最後端の歯部5aの歯面とこれに対応するピストン3のラック歯3bの歯面との間には、クリアランスδが設けられている。言い換えると、ポール部材5の最後端の歯部5aの歯面とこれより一つ前方側の歯部5aの歯面との間の距離pe が、前後方向に隣り合う他の歯部5aの各歯面間の距離po よりも大きくなっている。すなわち
pe >po
となっている。
【0032】
ハウジング2のポール穴2bの開口部には、ポール部材5の歯部5aがピストン3のラック歯3と係合する側にポール部材5を付勢するポールスプリング6が設けられている。
【0033】
ポールスプリング6は、帯板状の部材に曲げ加工を施すことによって形成されており、複数の屈曲部を有している。これらの屈曲部がポール部材5に上方から当接することにより、ポールスプリング6のばね力がポール部材5に作用している。
【0034】
ポールスプリング6の両端には、係止フック部(図示せず)が形成されており、これらの係止フック部が、ハウジング2のポール穴2b開口部に形成された係止凹部22,22′(図4)に係止することにより、ポールスプリング6がハウジング2に取り付けられている。
【0035】
なお、ハウジング2においてピストン穴2aの開口部近傍には、幅方向の貫通孔23が形成されている(図1および図4参照)。また、ピストン3の頭部には、幅方向に延びる係止溝3eが形成されている(図2参照)。これらの貫通孔23および係止溝3eは、テンショナの輸送時などにおいてピストン2を縮退状態で保持するためのものである。ピストン2を縮退状態にして貫通孔23および係止溝3eを整列させた状態から、図3に示すようなリテーニングピン9を貫通孔23および係止溝3eに挿入することにより、ピストン2が縮退状態に保持される。
【0036】
また、ピストン3において、ラック歯3bの最後端の歯部の後方には、ストッパ溝3dが形成されている。このストッパ溝3dは、ピストン3の突出方向の移動の際に、ポール部材5の歯部5aと係合することにより、ピストン3のそれ以上の突出を防止するためのものであって、ピストン3の抜け止め機能を有している。
【0037】
次に、本実施態様の作用効果について説明する。
テンショナの運転中において、チェーンに弛みが生じたり、チェーンの張力が減少した場合には、ピストンスプリング4のばね力により、ピストン3がハウジング2から突出する方向に移動する。このとき、ピストン3のラック歯3bは、ポール部材5のいくつかの歯部5を乗り越えて移動する。
【0038】
ピストン3が突出方向に移動すると、流体チャンバ30内が負圧になることにより、チェックバルブ7が開き、導入路10からチェックバルブ7を通って流体チャンバ30内にエンジンオイルが導入される。これにより、ピストンスプリング4のばね力および流体チャンバ30内の液圧による合力がテンショナアームを介してチェーンに作用し、チェーンの張力が維持されることになる。
【0039】
次に、エンジン始動時などのように、流体チャンバ30内に十分な液圧が作用していない状況下でチェーンからピストン先端3cに押付力が作用した場合には、ピストン外周のラック歯3bがポール部材5の歯部5aと係合した状態を維持したまま、ピストン3がポール部材5とともに後退し、ポール部材5の後端面5cがハウジング2のポール穴2bの内壁面25に当接する(図5(a)参照)。これにより、ピストン5の後退方向の移動が停止する。
【0040】
このとき、ポール部材5の最後端の歯部5aの厚みte が他の歯部5aの厚みto よりも薄くなっていることにより、ポール部材5の後端面5c下部のA点は、ピストン3のラック歯3bからの押付力Fの作用線mの下方に配置されている。
【0041】
A点回りのモーメントMA は、力Fの作用線mとA点との距離をdA とするとき
MA =F×dA
と表され、MA はポール部材5をA点の左回りに回転させるモーメントである。
【0042】
ところで、従来のポール部材においては、後端面5c′が後端面5cよりも後方に配置されているため、ポール部材の後端面5c′下部のA′点は押付力Fの作用線mの上方に配置されている。
【0043】
A′点回りのモーメントMA ′は、力Fの作用線mとA′点との距離をdA ′とするとき
MA ′=F×dA ′
と表され、MA ′はポール部材5をA′点の右回りに回転させるモーメントである。
【0044】
したがって、モーメントMA は、ポール部材5の歯部5aをピストン3のラック歯3bと噛み合わせる方向に作用しているのに対し、モーメントMA ′は、ポール部材5の歯部5aをピストン3のラック歯3bから離れさせる方向に作用している。
【0045】
このように従来の液圧テンショナでは、ピストン後退時にピストン3のラック歯3bから押付力Fを受けたとき、ポール部材5の歯部5aに対してラック歯3bとの係合状態が外れる方向のモーメントMA ′が作用するため、ポール部材5がポール穴2bから外側(つまりハウジング外部)に飛び出ようとする力がポール部材5に作用することになる。
【0046】
これに対して、本実施態様では、ピストン後退時には、ポール部材5の歯5aとラック歯3bとの係合状態がより強固になる方向のモーメントMA が作用するようになるため、ポール部材5がポール穴2bから外側に飛び出ようとする力がポール部材5に作用することはなく、これにより、ピストン後退時にポール穴からハウジング外部へのポール部材の飛び出しを確実に防止できるようになる。
【0047】
しかも、この場合には、図5(b)に示すように、ポール部材5の歯部5aを構成する歯面のうち、ピストン後退時にラック歯3bと係合する側の歯面sがピストンの軸線方向Lとなす挟角θが、軸線方向前方から測った場合に、90度よりも大きくなっている。すなわち
θ>90°
になっている。なお、図5(b)においては、図示の便宜上、同図(a)中のθの角度を誇張して大きく描いている。
【0048】
図5(b)において、歯面sに作用する押付力をfとし、力fをピストン軸線方向およびこれと直交する方向にそれぞれ分解して、各分力をf1 ,f2 とすると、同図から明らかなように、分力f2 は、ポール部材5の歯面sを下方に、つまりピストンのラック歯の側に作用しており、この分力f2 により、ポール部材5がハウジング2のポール穴2bから飛び出すのを防止している。なお、従来の液圧テンショナにおいては、この角度θが90度もしくは90度よりも小さな角度に設定されており、このため、ピストン後退時には、ポール部材の歯面への押付力がポール部材をポール穴から飛び出させる側に作用する場合があった。
【0049】
また、この場合には、最後端の歯部5aとピストン3のラック歯3bとの間にクリアランスδを設けたことにより、厚みが相対的に薄くなって他の歯部に比べて強度が低下した最後端の歯部5aにラック歯3bからの押付力が作用するのを回避でき、これにより、最後端のラック歯に破損等の不具合が発生するのを防止できる。
【0050】
なお、前記実施態様では、ポール部材5のA点が押付力Fの作用線mの下方に配置される最も好ましい態様を例にとって示したが、本発明の適用はこれには限定されない。ポール部材5のA点は押付力Fの作用線mの上方に配置されていてもよい。この場合、A点回りのモーメントは、従来のポール部材5のA′点回りのモーメントと向きは同じになるが、作用線mからの距離が短くなる分、A′点回りのモーメントよりもモーメントの大きさを小さくできる。これにより、ピストン3の後退時には、従来に比べて、ポール部材5の歯部5aがピストン3のラック歯3bから離れるのを抑制できる。
【0051】
また、前記実施態様では、ピストン3の後退時にピストン3のラック歯3bからポール部材5の歯部5aに作用する押付力として集中荷重Fが作用する場合を例にとって説明したが、本発明の適用はこれには限定されず、双方の歯面に沿って面状に分布する分布荷重であってもよい。この場合、荷重Fの作用線mとしては、分布荷重の合力の作用線を求めるようにすればよい。
【0052】
さらに、前記実施態様では、板ばね状のポールスプリング6により、ポール部材5にばね力を作用させた例を示したが、ポールスプリングとしては、コイルスプリングを採用するようにしてもよい。この場合、コイルスプリングは、たとえばポール部材5の前端面側に圧接するように設けられ、ポール部材5の移動時には、コイルスプリングがポール部材5の移動に合わせて伸縮することになる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ポール部材の最後端の歯部の厚みを他の歯部の厚みよりも薄くしたので、ハウジング外部へのポール部材の飛び出しを確実に防止できる効果がある。また本発明によれば、ポール部材の歯部を構成する歯面のうち、ピストン後退時にピストンのラック歯と係合する側の歯面がピストンの軸線方向前方となす角度を90度よりも大きくしたので、同様にハウジング外部へのポール部材の飛び出しを確実に防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様による液圧テンショナの全体斜視図である。
【図2】液圧テンショナ(図1)の縦断面図である。
【図3】図2のIII 矢視図である。
【図4】液圧テンショナ(図1)におけるハウジングのポール穴部分の斜視拡大図である。
【図5】(a)は液圧テンショナ(図1)におけるポール部材部分の正面拡大図、(b)はポール部材の歯面sに作用する力の分解図である。
【符号の説明】
1: 液圧テンショナ
2: ハウジング
2a:(ピストン)穴
25: 内壁面
25′: 従来の内壁面
3: ピストン
3a: 内部空間
3b: ラック歯
30: 流体チャンバ
4: ピストンスプリング
5: ポール部材
5a: 歯部
5c: 後端面
5c′: 従来の後端面
6: ポールスプリング
F: 押付力
m: 作用線
te : 最後端の歯部の歯厚
to : その他の歯部の歯厚
pe : 最後端の歯部とその前方側の歯部との間の距離
po : 前後方向に隣り合う他の歯部の各歯面間の距離
δ: クリアランス
θ: 歯面が軸線となす角

Claims (4)

  1. チェーンに緊張力を作用させるための液圧テンショナであって、
    一端に開口する穴が形成されたハウジングと、
    前記穴にスライド自在に挿入され、前記穴との間で流体チャンバを形成する内部空間を有するとともに、ラック歯が外周の少なくとも一部に形成された中空のピストンと、
    前記ピストンを突出方向に付勢するピストンスプリングと、
    前記ピストンの前記ラック歯と係合するとともに、前記ピストンの突出方向の移動を許容しかつ後退方向の移動を阻止するための歯部を有するポール部材と、
    前記ポール部材の前記歯部が前記ラック歯と係合する側に前記ポール部材を付勢するポールスプリングとを備え、
    前記ポール部材の最後端の歯部の厚みが他の歯部の厚みよりも薄くなっている、
    ことを特徴とする液圧テンショナ。
  2. 請求項1において、
    前記ポール部材の前記最後端の前記歯部の歯面と、これに対応する前記ピストンの前記ラック歯の歯面との間には、クリアランスが形成されている、
    ことを特徴とする液圧テンショナ。
  3. 請求項1において、
    前記ポール部材の前記最後端の前記歯部の歯面とこれより一つ前方側の歯部の歯面との間の距離が、前後方向に隣り合う他の歯部の各歯面間の距離よりも大きくなっている、
    ことを特徴とする液圧テンショナ。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記ポール部材の前記歯部を構成する歯面のうち、前記ピストンの後退時に前記ピストンの前記ラック歯と係合する側の歯面が当該歯面から前方のピストン軸線方向となす挟角は、90度よりも大きくなっている、
    ことを特徴とする液圧テンショナ。
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