JP4166556B2

JP4166556B2 - 漂白触媒

Info

Publication number: JP4166556B2
Application number: JP2002355135A
Authority: JP
Inventors: 洋泉水島; 洋檀上
Original assignee: Kao Corp
Current assignee: Kao Corp
Priority date: 2002-12-06
Filing date: 2002-12-06
Publication date: 2008-10-15
Anticipated expiration: 2022-12-06
Also published as: JP2004182954A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温においても優れた漂白効果を有し、染料漂白性及び繊維損傷性が少なく、さらに繊維の色移り防止効果にも優れる、漂白触媒並びに漂白剤組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
洗濯用に過酸化水素等のペルオキシ漂白剤を利用することは公知の技術である。このペルオキシ漂白剤は高温で使用され、紅茶、コーヒー、ワイン、果物等の汚れを漂白できる。しかし、ペルオキシ漂白剤の漂白効果は６０℃以下では極端に低下することから、漂白活性化能を有する遷移金属錯体をペルオキシ漂白剤と併用することが検討されており、例えば、特許文献１には環状ポリアミンを配位子とするマンガン錯体が、特許文献２にはコバルトアンミン錯体が、特許文献３及び特許文献４にはマンガンあるいはコバルトのシッフ塩基誘導体錯体が、特許文献５及び特許文献６にはピリジンメチルアミン誘導体を配位子とする金属錯体が開示されている。しかしながら、これらの錯体は紅茶染みのようなポリフェノール系の汚れに対して充分な漂白効果が得られず、さらには染料の脱色や、繊維の損傷を引き起こすなどの問題があった。
【０００３】
一方、特許文献７に記載の大環状テトラアミド遷移金属錯体は水溶液中に存在する、紅茶、ワイン、果物等の幅広い汚れに対する漂白力に優れているが、過酸化水素の分解活性が高く、布上に付着した汚れを漂白する能力は乏しい。
【０００４】
【特許文献１】
特公平７−６５０７４号公報
【特許文献２】
特表平１１−５０７６８９号公報
【特許文献３】
特開平８−６７６８７号公報
【特許文献４】
特表平１１−５１５０４９号公報
【特許文献５】
国際公開第９５／３４６２８号パンフレット
【特許文献６】
国際公開第９７／４８７１０号パンフレット
【特許文献７】
国際公開第９８／０３６２５号パンフレット
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、低温においても充分な漂白効果を有し、かつ染料漂白性及び繊維損傷性が少なく、さらに繊維の色移り防止効果にも優れる、漂白触媒並びに漂白剤組成物を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式（Ｉ）
SiW₁₀[Fe(OH)₂]₂O₃₈ （Ｉ）
で表されるヘテロポリアニオンを含有する漂白触媒、並びに（ａ）一般式（Ｉ）で表されるヘテロポリアニオンを含有する漂白触媒（以下（ａ）成分という）と、（ｂ）過酸化水素、水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物又は有機過酸から選ばれるペルオキシ漂白剤（以下（ｂ）成分という）とを含有する漂白剤組成物を提供する。
【０００７】
【発明の実施の形態】
本発明に係わるヘテロポリアニオンは、前記一般式（Ｉ）で表されるケギン型のヘテロポリアニオンであり、その合成法は水野らによって、J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 9267-9272 に記載されている。本発明の漂白触媒においてヘテロポリアニオンは中和塩の形、例えばヘテロポリアニオンのアルカリ金属塩、あるいは４級アンモニウム塩として用いられるが、公知の方法によって対イオンを交換しても良い。
【０００８】
本発明のヘテロポリアニオンはシクロヘキサン等のアルカンの過酸化水素酸化やオレフィンのエポキシ化を触媒すること、過酸化水素有効利用率（消費された過酸化水素に対する酸化生成物の生成率）が極めて高いこと、並びに反応にラジカルが関与しないことが上記論文により知られている。過酸化水素有効利用率が高いことは、過酸化水素の分解活性が低く、衣類上の汚れの漂白反応に有効に過酸化水素が利用されること、すなわち過酸化水素が低濃度な漂白条件であっても高い漂白力を発揮できることを意味している。
【０００９】
さらに本発明者らの検討（特願２００２−０５９９８６号、特願２００２−０２６４３６号）によって、酸化活性種としてＯＨラジカル等のラジカル種が生成する場合、衣類の繊維損傷や染料の漂白などの好ましくない酸化反応が併発することが明らかになっている。したがって酸化反応にラジカルが関与しない本発明のヘテロポリアニオンは漂白活性化触媒として用いた場合に衣類の繊維損傷や染料の漂白を伴わないという特長が期待できる。
【００１０】
本発明の漂白剤組成物は、上記（ａ）成分と（ｂ）成分とを含有する。本発明の漂白剤組成物中の（ａ）成分の含有量は、好ましくは0.0001〜30重量％であり、更に好ましくは0.001〜３重量％である。（ｂ）成分の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.01〜99重量％である。（ａ）成分と（ｂ）成分の重量比（ｂ）／（ａ）は、（ａ）成分が漂白触媒として有効に作用し、漂白性能を発現する観点から、10〜100,000が好ましく、10〜50,000が更に好ましい。
【００１１】
（ｂ）成分としては、過酸化水素、又は水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物が好ましい。水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物として、過炭酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム過酸化水素付加物、ピロリン酸ナトリウム過酸化水素付加物、尿素過酸化水素付加物、過ホウ酸ナトリウム１水和物、過ホウ酸ナトリウム４水和物、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム等が挙げられ、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム１水和物、過ホウ酸ナトリウム４水和物が好ましい。
【００１２】
本発明の漂白剤組成物は、粉末状でも液体状でもよく、上記必須成分以外に、アルカリ剤、界面活性剤、金属イオン封鎖剤等を含有することができる。
【００１３】
本発明に用いられる好適なアルカリ剤として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【００１４】
本発明に用いられる界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が好ましく、陰イオン界面活性剤としては、アルキル基の炭素数１０〜１８の、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられ、非イオン界面活性剤としては、各種ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。本発明の漂白剤組成物中の界面活性剤の含有量は５０重量％以下が好ましく、０．５〜４０重量％がより好ましい。
【００１５】
本発明に用いられる金属イオン封鎖剤としては、リン酸塩、ホスホノカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩等が挙げられる。本発明の漂白剤組成物中の金属イオン封鎖剤の含有量は、漂白効果の観点から３０重量％以下が好ましく、０．１〜２０重量％がより好ましい。
【００１６】
更に本発明の漂白剤組成物には、必要に応じて再汚染防止剤、増量剤、酵素、蛍光増白剤、染料、顔料、香料等を添加することができる。
【００１７】
本発明の漂白剤組成物は、粉末又は液体の衣料用洗剤、硬質表面洗浄剤、自動食器洗い用洗剤、入れ歯用洗浄剤等に添加して漂白性能もしくは色移り防止能を付与することができる。さらには毛髪用脱色剤、木材パルプや回収紙の漂白のような各種工業用途に使用することができる。
【００１８】
本発明の漂白触媒及び漂白剤組成物は３０℃以下の低温においても充分な漂白能力を有し、かつ繊維損傷や染料漂白を引き起こさない。
【００１９】
【実施例】
実施例１及び比較例１
漂白触媒として、γ-SiW₁₀[Fe(OH)₂]₂O₃₈アニオンのテトラブチルアンモニウム塩、すなわち[(C₄H₉)₄N]_3.5H_2.5[γ-SiW₁₀｛Fe(OH)₂｝₂O₃₈]・H₂O錯体（合成法は J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 9267-9272に記載）を用い、以下の方法にて漂白性能を測定した（実施例１）。また比較として、漂白触媒を用いない場合についても同様に漂白性能を測定した（比較例１）。得られた漂白処理時間による漂白率の経時変化を図１に示した。
【００２０】
＜漂白性能測定方法＞
（１）紅茶抽出物乾燥粉末の調製
市販紅茶葉（リプトン）１０ｇを熱水（９０℃）400ｇで抽出し、茶葉をろ過した溶液を凍結乾燥した。茶褐色粉末2.53ｇが得られ、これを紅茶抽出物乾燥粉末とした。
【００２１】
（２）漂白性能の測定
上記紅茶抽出物乾燥粉末200ppm、漂白触媒135ppmをアセトニトリル８mLに加え、３５％過酸化水素水をH₂O₂濃度が0.04％になるよう加え、２５℃で所定時間漂白処理した。漂白前（過酸化水素水添加前）の紅茶水溶液と漂白処理後の水溶液を、UV-VIS測定機(HITACHI U-3300)を用いて420nmの吸光度を測定し、次式により漂白率を算定した。
【００２２】
漂白率（％）＝（１−漂白処理後の吸光度／漂白処理前の吸光度）×１００
図１から明らかなように、実施例１の漂白触媒は、優れた漂白性能を示した。
【００２３】
実施例２及び比較例２
漂白触媒として、実施例１と同様のγ-SiW₁₀[Fe(OH)₂]₂O₃₈アニオンのテトラブチルアンモニウム塩を用い、以下の方法にて漂白性能を測定した（実施例２）。また比較として、漂白触媒を用いない場合についても同様に漂白性能を測定した（比較例２）。これらの結果を表１に示す。
【００２４】
＜漂白性能測定方法＞
（１）紅茶汚染布の調製
日東紅茶（黄色パッケージ）８０ｇを３Ｌのイオン交換水にて１５分間煮沸後、糊抜きしたさらし木綿で濾し、この液に木綿原布を浸し１５分間煮沸後、２時間放置した。次に布を取り出して、自然乾燥させた後、洗液に色がつかなくなるまで水洗し、脱水・プレスし、４×４ｃｍの紅茶汚染布として実験に供した。
【００２５】
（２）漂白性能の測定
２５℃のアセトニトリル１０mLに漂白触媒１０ppmを添加し、上記紅茶汚染布を１５時間浸漬して漂白を行った。その後、布をアセトニトリルで洗浄し、乾燥した。得られた漂白洗浄後の汚染布、漂白洗浄前の汚染布及び原布の木綿布について、日本電色工業（株）製NDR-101DPで420nmでの反射率を測定し、下記式により漂白率を求めた。
【００２６】
【数１】

【００２７】
【表１】

【００２８】
【発明の効果】
本発明の漂白触媒及び漂白剤組成物は、低温においても優れた漂白効果を有し、かつ染料漂白性及び繊維損傷性が少なく、さらに繊維の色移り防止効果にも優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施例１及び比較例１の漂白率の経時変化を示す図である。

Claims

（ａ）一般式（Ｉ）
SiW ₁₀ [Fe(OH) ₂ ] ₂ O ₃₈ （Ｉ）
で表されるヘテロポリアニオンを含有する漂白触媒と、（ｂ）過酸化水素、水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物又は有機過酸から選ばれるペルオキシ漂白剤とを含有する漂白剤組成物。