JP4164848B2 - 直流電気炉における炉底電極の冷却構造及び炉底電極の冷却方法 - Google Patents

直流電気炉における炉底電極の冷却構造及び炉底電極の冷却方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、金属材料の熔解、精錬に使用される直流電気炉の炉底電極の冷却構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属材料の溶解および精錬用の電気炉として、炉内に装入したスクラップや溶融金属の上方に配置した上部電極と、炉底や側壁等に取り付けられた電極との間に電流を流し、溶融金属の精錬を行う直流電気炉が知られている。
この種の直流電気炉における炉底電極は、炉内にある高温の溶融金属からの受熱、供給電流が通過するときに発生するジュール熱等によって、極めて過酷な使用雰囲気に曝されている。
また、この種の炉底板との間に絶縁体が配設され、電気的に絶縁されている。そして、溶融金属中に鉛が存在していると、その金属を溶解した際に鉛が炉底の耐火物の上面から耐火物の目地やクラック部に浸透し、もし、その鉛が前記絶縁物に到達すると、炉底電極と炉底板との間の電気的絶縁を破壊し、スパーク事故を生じる。この絶縁破壊が炉底電極の寿命の支配要因の一つとなっている。
【0003】
そこで、特開平11−219781号公報に記載された炉底電極においては、炉底板および炉底板に内張された耐火物からなる炉壁を貫通して、精錬される金属と同種の金属からなる上部棒状電極と導電性および熱伝導率が良好な金属さらなる下部棒状電極とを接合して形成された炉底電極が設けられ、炉底電極と炉底板との間は絶縁体によって電気的に絶縁されている直流電気炉の炉底電極の冷却構造において、炉底電極の接合面の高さまで側面冷却部材を位置させて、接合面を周囲から冷却する冷却構造が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
炉底電極を冷却するために冷却部材は、それと接する部分の耐火物を冷却することになり、耐火物の熱勾配が大きくなり、発生する内部応力により、割れが発生し、地金の侵入による重大なトラブルの原因となる。
また、棒状電極の溶接面は、その位置が低下して側面冷却部材に接合すると、冷却効果が高められ、凝固を開始し、溶融面の位置が上昇する。このように長期間に渡り繰り返し発生するとその結果、側面冷却部材に変形や亀裂が発生する。亀裂が発生すると炉底電極を冷却するために側面冷却部材内に通水している冷媒が外部に漏れ、側面冷却部材の周囲に配設されている耐火物に浸透する。その結果、耐火物が変質して溶融金属の流出等、重大なトラブルの原因となる。
そこで、本発明では、直流電気炉の炉底電極を冷却するにあたって、炉底電極の冷却は、従来と同様に確実に行い、かつ炉底電極の周囲の耐火物に優しく、かつ、側面冷却部材に変形や亀裂が発生した場合にあっても、冷却水が炉底電極の周囲の耐火物に浸透することがない直流電気炉における炉底電極の冷却構造及び炉底電極冷却方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述のように、冷却部材周囲の耐火物は、直接冷却部材に接しているため、熱勾配が大きく耐火物内部に大きな熱応力が発生して耐火物に亀裂が発生する。この亀裂部分に溶融金属が浸透すると、最悪炉外への流失事故にまで発展する可能性がある。そこで本発明では、熱勾配を小さくして熱応力を押さえ耐火物の亀裂を防止するために冷却部材と耐火物との間に緩冷却層を設けるもので、また、冷却部材の外側に亀裂が発生した場合、冷却部材が漏出した冷却媒体を初期の段階で検出すること、また炉外への排出を可能とすることにより、耐火物に冷却媒体が急激に浸透して溶融金属が炉外に流出する事故になることを防止するものであり、請求項1に記載の発明は、直流電気炉における炉底電極を冷却する構造において、炉底電極の外周に該炉底電極を冷却する冷却部材を配設し、該冷却部材の外周側に空間部を形成する空間部材を配設したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記空間部材には、冷却部材側面を補強するリブを配設したことを特徴とし、請求項3記載の発明は、前記空間部に冷却気体を通過させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項4に記載の発明では、直流電気炉における炉底電極の冷却構造において、炉底電極の外周に該炉底電極を冷却する冷却部材を配設すると共に、冷却部材周囲の耐火物と該冷却部材との間に介在させる空間部材よりなる緩衝冷却層を配設し、空間部内に漏れ出た冷却部材からの冷却水を検知する冷媒検知部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明では、直流電気炉における炉底電極の冷却構造において、炉底電極の外周に該炉底電極を冷却する冷却部材を配設すると共に、冷却部材周囲の耐火物と該冷却部材との間に介在させる空間部材よりなる緩衝冷却層を配設し、空間部内に漏れ出た冷却部材からの冷却水を外部排出する排出口を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項に記載の発明では、直流電気炉における炉底電極冷却方法において、炉底電極の外周に冷却部材により炉底電極を冷却すると共に、冷却部材周囲の耐火物と該冷却部材との間に介在させる空間部材よりなる緩衝冷却層を介し、炉底電極を冷却することを特徴とする。
【0010】
(作用)
本発明の請求項1およびに記載の発明では、直流電気炉における炉底電極を冷却するに際し、炉底電極の外周に該炉底電極を冷却する冷却部材を配設し、該冷却部材の外周側に空間部を形成する空間部材を形成している。従って、この空間部材を配設することにより、空間部材が緩衝冷却層となり、冷却部材周囲の耐火物を部分的に過冷却となることを防止すると共に、炉底電極を冷却する冷却部材の側面に変形や亀裂が発生した場合に、冷却部材周囲には空間部材が設けられており、漏れた冷媒はこの空間部材に漏れ、炉底電極の周囲の耐火物に浸透することを防止する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記空間部材に冷却部材側面を補強するリブを配設することで、冷却部材及び空間部材に十分な強度を持たせることが出来る。
また、請求項3記載の発明では、前記空間部材内を冷却空気を通過させることより、空間部材が緩衝冷却層となる他、炉底電極を冷却する冷却部材の側面に変形や亀裂が発生した場合に、漏れた冷媒はこの空間部材を通過する冷却気体の気流に乗って、速やかに炉外に排出することが出来る。このことは、請求項記載の発明によっても同様に漏れた冷媒の排出口を設けることで、漏れた冷媒をこの空間部材から、速やかに炉外に排出することが出来る。
そして、この場合請求項に記載の発明の如く、空間部内或いは空間部を通過した漏れ出た冷却部材からの冷却水の冷媒検知を行う冷媒検知部材を設けることで、より速く冷却部材の故障を探知することができる。
【0012】
【実施の形態】
図面は、本発明の直流電気炉における炉底電極の冷却構造及び炉底電極の冷却方法の好適な一実施の態様を示すものである。
ここで、図1は本発明を設けている直流電気炉における炉底構造の概略説明図、図2は炉底電極の取付部を示す拡大断面図、図3は本発明の炉底電極部の斜視図、図4、5は、冷却部材の冷媒通路部分の炉底構造の展開説明図である。
直流電気炉における炉底電極の冷却構造は、炉底板3上に内張された耐火物2がライニングされている。そして、炉底部板3及び耐火物2を貫通し、かつ炉底部板3と絶縁物4を介して棒状電極1が設けられている。そして、この棒状電極1は、その外周に配置され炉底に装着されている冷却部材5及び図2に示す如く、電極底部冷却材11によって冷却されている。
【0013】
この冷却部材5の詳細は、図2、3に示すように、棒状電極側の内側に冷却水等の冷媒が流れる冷媒通路50を設けている。
この冷媒流路50は、例えば図4に示すように経路で形成しており、冷媒導入口51から冷媒通路50a内に入った冷媒Aは、一度冷却部材5の最上部の鍔部冷媒通路50bに達し、以後横桟リブ53により形成されている冷媒流路50cを流れ、最下段の冷媒通路50dを経て、冷媒排出口52に達し排出される。
なお、冷媒導入口51及び冷媒排出口52には、それぞれ冷媒通路50に冷媒Aを供給する冷媒配管60が設けられている。
また、冷却水の流路構成は、上述の図4に示す形式のものの他、図5に示す形式等、仕切の設け方は特に限定するものではない。
【0014】
次に、冷却部材5を囲うように、図2に示す如く、空間部材7を配設している。 この空間部材7は、冷却部材5の冷媒通路を囲うように空間部70を形成し、図2、3、6に示すように空間部を仕切るように、縦横それぞれに補強リブ71、72で、冷却部材5の外壁部を補強するように設けている。また、空間部70の底部には、冷却気体導気口73と冷却気体排気口74を交互に配置している。
冷却気体導気口73と冷却気体排気口74は、冷却気体配管61をそれぞれ接続し、冷却気体排気口74側の冷却気体配管61には、冷却空気内に漏水検知を行う冷媒検知部材8を設けている。この冷媒検知部材8は、単純なものとしては、例えば冷媒として水を用いるものにあっては、スリット電極間を水が介在することにより、導通接続するもの等公知のセンサー、スイッチを用いる。
なお、冷却気体配管61から冷却気体導気口73に供給する冷却気体Bは、コンプレッサー等で圧縮した通常の空気を用いる。
【0015】
また、補強リブ71,72のそれぞれには、冷却気体通過穴75が設けられている。
この冷却気体通過穴75の設ける位置は、冷却気体Bが空間部70内を均一に通過できる位置に設ける。例えば、隣り合う上空間部70b、70cの間の縦方向の補強リブ72の上部に冷却気体通過穴75bを設け、空間部70内をくまなく冷却気体Bを通過させることが出来る。図6の例で述べると、冷却気体Bを空間部材7の下面に設けた導入口73から引き込み、下空間部70a−冷却気体通過穴75a−上空間部70b−冷却気体通過穴75b(又は75c)−上空間部70c−冷却気体通過穴75d−下空間部70dを経て、排出口74から排出する気体通過経路となる。
この空間部70内を通過する冷却気体Bは、空間部材7が、冷却部材5と周囲の耐火物2を部分的に過冷却することを防止する緩衝冷却層となるが、単なる空間とした場合には、この空間部材7が、耐火物2の熱により、熱変形をすることになる為、緩衝冷却層としての他、空間部材の変形を防止する役割も有する。そして、炉底電極を冷却する冷却部材5の側面に変形や亀裂が発生した場合に、冷却部材5の周囲に有する空間部70が設けられており、漏れた冷媒Aはこの空間部70内を通過する冷却気体Bに乗って炉外に排出され、冷却気体配管61に設けられている冷媒検知部材8により、冷却気体Bの冷媒の存在を検知し、作業者に冷却部材5の亀裂等の発生を警告をし、炉底電極の周囲の耐火物に、冷媒が浸透することを未然に防止する。従って、冷却気体導気口73に供給する冷却気体Bは、冷却気体B内に漏出した冷媒Aを外部に引き出す流量、或いは圧力が必要となるため例えば10kpa以上の圧力を用いることが好ましい。
【0016】
冷却部材5からの漏水が、導入口73側の空間部70であった場合には、漏水が完全な霧状であれは確実に排出できるが、液体状の漏水となる場合には、これを素早く排出することが出来ないため、各空間部70の縦方向の補強リブ72の下端側にも冷却気体通過穴75c,75eを設けることが好ましい。但し、この冷却気体通過穴75c,75eの大きさは、冷却気体の均一な流れを阻害しない程度の大きさとする必要がある。
また、上記補強リブ71,72は、主に冷却部材5の側面を補強する意義を有するが、これとは別に、補強リブ71,72によって空間部材7を仕切ることで、前記冷却気体の空間部70内を均一に通過させる意義も有する。従って、仕切の数は、縦方向に4つ以上設けることが好ましい。また、本実施の形態では、材料の節約等の観点から、冷却部材5と空間部材7を一体的に形成している。
【0017】
なお上述実施例に於いて、空間部材7内に漏れ出た冷媒を速やかに炉外に排出する構成が炉操業上もっとも最良の例を述べているが、これに限らず、内部に冷媒が漏れたとき検知する冷媒検知部材8を空間内に設ける構成とし、空間部材7内に漏れ出た冷媒を速やかに検知する構成としても良い。また冷却気体を用いずに、前記冷却気体導気口73と冷却気体排気口74と同様の位置に、漏れた冷媒Aを排出する排出口を設ける構成としても良い。
また、冷媒検知部材8は、冷却水又は空気の流れを検知する場合と漏水を検知する場合とがあり、これらを検知できるものであれば良い。
さらに、冷媒検知部材8の取付位置は、図2の実施の形態では、冷媒排出口52の外側に設けているが、空間部材7内に設けて良いことは言うまでもない。
【0018】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成することより、従来のアーク炉等の電気炉炉底電極に比べて、冷却部材の側面に出来た亀裂から漏れた冷却水等の冷媒を、空間部材によって速やかに炉外に排出することが出来、冷媒を耐火物に浸透することを未然に防止することが出来、炉底部からの溶鋼漏れ等の重大なトラブルを防止することが出来ると共に、電気炉の寿命を更に長くすることが出来る。
また、空間部材の補強リブを設け、空間部に冷却気体を通すことにより、冷却部材の側面強度を高めることが出来、冷却部材の変形、亀裂発生を未然に防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を設けている直流電気炉における炉底構造の概略説明図である。
【図2】本発明の炉底電極の取付部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の炉底電極部の斜視図である。
【図4】本発明の炉底電極部の冷却部材部の冷媒流路の展開説明図である。
【図5】本発明の炉底電極部の他の実施形態の冷却部材部の冷媒流路の展開説明図である。
【図6】本発明の炉底電極部の空間部材の冷却気体通路の展開説明図である。
【符号の説明】
1. 棒状電極
11 電極底部冷却材
2. 耐火物
3. 炉底板
4. 絶縁物
5. 側面冷却部材
50,50a,50b,50c,50d 冷媒通路
51 冷媒導入口
52 冷媒排出口
53 横桟リブ
60 冷媒配管
61 冷却気体配管
7 空間部材
70,70a,70b,70c,70d 空間部
71,72 補強リブ
73 冷却気体導気口
74 冷却気体排気口
75a,75b,75c,75d 冷却気体通過穴
8 冷媒検知部材

Claims (6)

  1. 直流電気炉における炉底電極の冷却構造において、炉底電極の外周に該炉底電極を冷却する冷却部材を配設すると共に、冷却部材周囲の耐火物と該冷却部材との間に介在させる空間部材よりなる緩衝冷却層を配設したことを特徴とする直流電気炉における炉底電極の冷却構造。
  2. 前記空間部材には、冷却部材側面を補強するリブを配設したことを特徴とする請求項1に記載の直流電気炉における炉底電極の冷却構造。
  3. 前記空間部に冷却気体を通過させることを特徴とする請求項1に記載の直流電気炉における炉底電極の冷却構造。
  4. 直流電気炉における炉底電極の冷却構造において、炉底電極の外周に該炉底電極を冷却する冷却部材を配設すると共に、冷却部材周囲の耐火物と該冷却部材との間に介在させる空間部材よりなる緩衝冷却層を配設し、空間部内に漏れ出た冷却部材からの冷却水を検知する冷媒検知部材を設けたことを特徴とする直流電気炉における炉底電極冷却構造。
  5. 直流電気炉における炉底電極の冷却構造において、炉底電極の外周に該炉底電極を冷却する冷却部材を配設すると共に、冷却部材周囲の耐火物と該冷却部材との間に介在させる空間部材よりなる緩衝冷却層を配設し、空間部内に漏れ出た冷却部材からの冷却水を外部排出する排出口を設けたことを特徴とする直流電気炉における炉底電極冷却構造。
  6. 直流電気炉における炉底電極の冷却方法において、炉底電極の外周に冷却部材により炉底電極を冷却すると共に、冷却部材周囲の耐火物と該冷却部材との間に介在させる空間部材よりなる緩衝冷却層を介し、炉底電極を冷却することを特徴とする直流電気炉における炉底電極冷却方法。
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