JP4164432B2 - メタン発酵方法およびメタン発酵装置 - Google Patents

メタン発酵方法およびメタン発酵装置 Download PDF

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Description

本発明は、電位制御された電極に発酵液を接触させながら有機性廃棄物をメタン発酵させるメタン発酵方法およびこのメタン発酵方法に好適に使用できるメタン発酵装置に関する。
電場または電気化学的な効果を利用して、発酵の制御、促進を図る例として電気透析発酵法などが知られている。この電気透析発酵法は、発酵液中から発酵生成物を透析、除去することによってその生成量を増やすことを目的とするものである。また、発酵槽内の環境を調整する目的で、例えばメタン発酵の場合に、発酵槽に硫化物イオンを加えることによって発酵槽内の酸化還元性をメタン発酵が可能な「卑」の領域に調整することは従来から行われている。
また従来、生化学反応と電極反応とを組み合わせた例としては、グルコースセンサーに代表されるバイオセンサーなど、多くの応用例が報告されている。これらは、電極表面と生化学反応との電荷移動を担う物質として鉄の錯イオンのように比較的小さく、かつ、電極反応性の高い化学種を用いることが好ましいとされている。このような、鉄を酸化還元メディエータとする方法の別例としては、鉄酸化細菌を利用して+3価の鉄イオンを生成させ、銅の溶出と回収(バイオリアリーチング)を行うことが知られている。このとき電解プロセスを導入して、培養促進を図る提案もある。このようなメディエータ利用の一例としてアントラキノンによって硫酸塩還元菌の代謝阻害を起こし、硫化水素を生成阻止する悪臭防止法なども提案されている。
また、生体代謝エネルギーを電力として系外に取り出す微生物電池において、鉄の他にも電荷移動を仲介する物質としては、負極における電子受容体としてのメチルビオロゲンやMV2+/MVのように水素を酸化し、プロトンを生成するメディエータなども用いられている。さらに、メディエータを経由せず、直接ヒドロゲナーゼを電極上に固定した電池も検討されている。
このように、酸化還元性を制御することによる影響は大きく、メタン発酵では、嫌気性微生物の生育に最適な酸化還元電位を常に保ちながらメタン発酵を行う方法が報告されている。
特許文献1に記載の発明では、発酵槽内の有機性廃棄物流入部の酸化還元電位を測定し、その結果が嫌気性菌の育成に最適な値(−350mV)より高くなった場合に、発酵槽内の有機性廃棄物流入部よりも下流側の液を、酸化還元電位測定部またはその上流側に循環させることによって発酵槽内の酸化還元電位を制御している。
特開昭62−160193号公報
このように電気化学的な効果を利用した技術は報告されているものの、メタン発酵液の電位を正確に制御する技術は報告されていない。本発明の課題は、電位制御した電極に発酵液を接触させながらメタン発酵させるメタン発酵方法およびこの方法に適したメタン発酵装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るメタン発酵方法の発明は、有機性廃棄物をメタン発酵するメタン発酵方法において、前記メタン発酵における発酵液に電極を接触させ、当該電極に電圧を印加しながらメタン発酵させ、電極制御手段により前記電極の電位を0.0Vより卑側から−1.0Vまでの範囲で調整することにより、該メタン発酵におけるメタン発生量を制御することを特徴とする。
この特徴によれば、メタン発酵の環境に変化を生じさせて、メタン発酵を制御することができる。よって、メタン発酵によって生成するバイオガス中のメタン濃度を調整することができ、バイオガスの高カロリー化を図ることができる。
電極電位が0.0Vより卑側に制御されていることにより、この電極に接触している発酵液を確実に嫌気状態として保持することができ、安定したメタン発酵を行うことができるとともに、メタン発酵を促進させることができる。また、後記実施例に示すように、メタン発酵により発生するバイオガス中のメタン濃度を高めることができ、バイオガスの高カロリー化を図ることができる。
また、本発明の第3の態様に係るメタン発酵方法の発明は、前記第1の態様または前記第2の態様において、前記発酵液に二酸化炭素含有ガスを導入することを特徴とする。
電圧が印加された電極と接触している発酵液に二酸化炭素含有ガスを導入することによって、二酸化炭素を原料としてメタンを生成させることができる。すなわち、二酸化炭素からエネルギー源となり得るメタンを産出することができる。
また、本態様に係るメタン発酵装置の発明は、有機性廃棄物をメタン発酵する発酵槽と、前記メタン発酵における発酵液と接触する電極と、前記電極の電位を0.0Vより卑側から−1.0Vまでの範囲で調整することにより該メタン発酵におけるメタン発生量を制御する電極制御手段とを備えていることを特徴とする。
この特徴によれば、メタン発酵における発酵液に電圧が印加された電極を接触させることによってメタン発酵を安定化することができるとともに、メタン発酵を促進させることができる。よって、電極電位を調整することにより、メタン発酵によって生成されるバイオガスの高カロリー化を図ることが可能である。
本発明によれば、電圧を印加した電極に発酵液を接触させることにより、メタン発酵を安定して行うことができるとともに、メタン発酵を促進させることができる。従って、バイオガス中のメタン濃度を高めることができ、バイオガスの高カロリー化を図ることが可能である。
以下、本発明に係るメタン発酵方法およびメタン発酵装置について説明する。
本発明に係るメタン発酵方法は、有機性廃棄物をメタン発酵するメタン発酵方法において、前記メタン発酵における発酵液に電極を接触させ、当該電極に電圧を印加しながらメタン発酵させることを特徴とするものである。
ここで有機性廃棄物(バイオマス)としては、例えば畜産廃棄物や緑農廃棄物、廃水処理汚泥などを挙げることができる。ここで、畜産廃棄物としては、家畜の糞尿や、屠体、その加工品が挙げられ、より具体的には牛、羊、山羊、ニワトリなどの家畜の屠体、そこから分離された骨、肉、脂肪、内臓、血液、脳、眼球、皮、蹄、角などのほか、例えば肉骨粉、肉粉、骨粉、血粉などに代表される家畜屠体の骨、肉等を破砕した破砕物や、血液などを乾燥した乾燥物も含まれる。また、緑農廃棄物としては、家庭の生ごみのほか、産業廃棄物生ごみとして農水産業廃棄物、食品加工廃棄物等が含まれる。
また、有機性廃棄物の性状により、必要に応じて、前処理として破砕・分別処理を実施することができる。破砕・分別処理は、例えば以下に示すような分別破砕、全量破砕により行うことができる。
分別破砕の場合は、破砕分別機を用い、有機性廃棄物のなかで比較的容易に破砕可能な部位を液と共にスラリーとして回収する。一方、破砕しにくい部位は塊状物として別途回収することもできる。スラリーの含水率は70〜95重量%程度、塊状物の含水率は40〜60重量%程度である。破砕分別機は、有機性の固形物をせん断力、引っ張り力によって破砕するもので、カッター部分は2軸式または3軸式のものが利用できる。牛などの動物屠体を原料とする場合には、3軸式の破砕分別機で破砕処理する方が破砕の細かさや均一性の観点から好ましい。選別除去すべき混入プラスティック類、シート類などは、メッシュによる選別、風選などで除去することが好ましい。また、全量破砕の場合は、例えばディスポーザー等の破砕機を使用して全対象物を破砕する。
以下、本発明に好適なメタン発酵装置および電極について図面に沿って説明する。
ここで、図1は本発明の第1の実施形態に係るメタン発酵装置101の概略構成図である。本実施形態に係るメタン発酵装置101は、主要な構成として、有機性廃棄物をメタン発酵する発酵槽11と、発酵槽11内の発酵液12に接触するように配備された電極40と、電極40の電位を制御する制御手段50を備えている。
メタン発酵(嫌気性消化)は、いわゆる中温型、高温型、またはスラリー(湿式)型、ドライ(乾式)型のいずれのタイプのものであっても適用できる。
発酵槽11は、絶対嫌気性であるメタン発酵菌による活動を妨げることがない構成のものが好ましく、例えば空気を完全に遮断したタンクにより構成される。発酵槽11は、固形分濃度(通常、7〜40重量%の範囲)と発酵温度(通常、中温発酵では37℃、高温発酵では55℃)によって、形状や運転条件などを適宜設定する。本発明においては、例えば高含水率の原料(固形分濃度10重量%まで)の場合は湿式型の完全混合方式の発酵槽11を、低含水率の原料(固形分濃度30〜40重量%)の場合は乾式型のプラグフロー式(押し出し式)の発酵槽11を用いることが好ましい。
発酵槽11には、生成するバイオガスを回収するための回収手段のほか、必要に応じて脱硫装置を設けることができる。脱硫装置は既知のものを用いることができ、バイオガスに含まれる腐食性の高い硫黄化合物(例えば硫化水素)を取り除くことができる。さらに、発酵槽11には、必要に応じて保温のための加熱手段を設けておくことが好ましい。加熱手段は特に限定されるものではなく、加熱媒体を用いる既知の加熱手段を使用可能である。
一般のメタン発酵においては、中温発酵で20〜30日間程度、高温発酵で15日間程度の滞留時間をとっているが、本発明においては、高含水率の原料(固形分濃度を10重量%程度まで)の場合は完全混合方式の発酵槽を用い、中温メタン発酵菌(至適温度37℃)では滞留時間を15〜20日間程度、高温メタン発酵菌(至適温度55℃)では滞留時間を10日間程度と、通常のメタン発酵の所要時間よりも短くすることが可能である。低含水率の原料(固形分濃度30〜40重量%)の場合は、被処理物の固形分濃度を30〜40重量%にして押し出し式の発酵槽を使用できる程度の固さに調整する。滞留時間については、高含水率の場合と同様に設定することができる。また、必要な場合は、炭素/窒素比の調整のために若干の有機成分を導入することもできる。
有機性廃棄物導入手段としての配管21から発酵槽11に導入された有機性廃棄物は、発酵槽11内の嫌気性細菌の作用により発酵して発酵液12を生成する。発酵液12は、0.0Vより卑側、好ましくは−0.4Vより卑側の電位に保持された電極40と接触している。電極電位を−1.0V程度より卑側とすると、水が電気分解してしまうことがあるため、好ましくない。なお、電極40の電位は制御手段50によって制御されるように構成されている。
このように発酵液12を電位制御された電極と接触させることによってメタン発酵を制御して、メタン発酵菌の代謝を促進させることができる。また、電極電位を0.0Vより卑側に調整することによってメタン発酵菌にとって好適な環境を調整することができ、安定した状態でメタン発酵させることができるとともに、活性の高い状態に制御できる。もって、メタン発酵が促進されて発生するバイオガス中のメタン濃度を高めることができる。すなわち、バイオガス単位体積あたりのメタン含有量を高めることができるのでバイオガスの高カロリー化を図ることができ、例えば通例バイオガス中のメタン濃度は55体積%程度であるが、これを後記実施例に示すように70体積%以上とすることが可能である。また、メタン濃度が高まることによってバイオガスからのメタン成分の分離が容易となる。
また、二酸化炭素ガスを導入するガス導入手段としての配管22から発酵槽11内の発酵液12に二酸化炭素含有ガスを導入することにより、二酸化炭素を原料としてメタンを生成させることができる。すなわち、電圧が印加された電極に接触している発酵液、すなわちメタン発酵が促進されている発酵液に二酸化炭素含有ガスを導入することによって二酸化炭素をメタンに変換させることが可能である。もって、二酸化炭素を原料としてエネルギー源となり得るメタンを効率的に産出することができる。
二酸化炭素含有ガスとしては、例えば焼却施設など一般の二酸化炭素排出源から排出されるガスを用いることができる。また、嫌気条件である発酵液12に導入されることから、二酸化炭素含有ガスに酸素成分が含まれている場合には、これを除去することが好ましい。
生成したバイオガスはバイオガス回収手段としての配管24から回収されてガスホルダーに貯留される。なお、発酵液12は必要に応じて配管23を介して発酵槽11から排出される。
次に、図2は本発明の第2の実施形態に係るメタン発酵装置102の概略構成を示す図面である。本実施形態に係るメタン発酵装置102は、主要な構成として、有機性廃棄物をメタン発酵する発酵槽11と、発酵液12を循環させる循環手段としてのポンプPと、発酵液の循環経路上に配置された電位印加槽30を備えている。なお、図1と同様の構成については同一の符合を付して説明を省略する。
本実施形態に係るメタン発酵装置102では、電極40は電位印加槽30内に配置されており、電位印加槽30を通過する発酵液12と接触するように構成されている。
配管21を介して発酵槽11に導入された有機性廃棄物は、発酵槽11内の嫌気性細菌の作用により発酵して発酵液12を生成する。発酵液12は配管25を介してポンプPにより循環させられ、電位印加槽30に導入された後、発酵槽11に戻される。
電位印加槽30を通過する発酵液12は、0.0Vより卑側、好ましくは−0.4Vより卑側の電位に保持された電極40と接触するように構成されている。電極電位を−1.0V程度より卑側とすると、水が電気分解してしまうことがあるため、好ましくない。なお、電極40の電位は制御手段50によって制御されるように構成されている。
発酵液12が電位印加槽30において電圧が印加された電極40と接触し、その発酵液12が発酵槽11に循環することによって、安定した状態でメタン発酵させることができるとともに、メタン発酵を促進させてバイオガス中のメタン濃度を高めることができる。
本実施形態のメタン発酵装置102は、発酵液12が循環し、電位印加槽30を通過する際に電圧が印加された電極40と接触する構成であるため、電極40の電位制御が比較的容易であるとともに、電位印加槽30のメンテナンス作業を発酵槽11とは無関係に独立して行い得るため、好ましい。
ここで、本実施形態のメタン発酵装置102に使用できる電極40の構成について図3および図4に沿って説明する。図3は積層構造を採用する電極40の一単位40aを示す概略構成図であり、図4は電極40の全体構成を示す概略構成図である。
電極40の一単位40aは、図3に示すようにカソード電極とアノード電極が複極仕切板42で仕切られたバイポーラ構造となっている。符合41は液透過型のアノード電極であり、例えばカーボンフェルト、カーボンメッシュなどの炭素質電極素材が充填されたもの、メッシュ構造の金属素材(例えば貴金属、SUS、鉄)などを用いることができる。符合43はカソード電極であり、例えば耐酸化性を有する貴金属、SUSなどからなるメッシュ構造の金属電極などを用いることができる。そして、この一単位40aを、イオン交換膜49を介して複数積層することによって図4に示す電極40を構成することができる。
次に、本発明に用いられる電極について詳細に説明する。
本発明に使用できる電極は、電気的に安定なものであれば特に限定されることは無く、例えば多孔質炭素(グラファイト)、カーボンフェルト、カーボンファイバー、グラッシーカーボンなどの炭素質電極、白金などの貴金属電極、表面が白金などの貴金属でコーティングされた表面処理電極などを挙げることができる。
以下、炭素質電極を例に挙げて、図5から図9に沿って説明する。
図5は炭素質電極のSEMイメージ図面であり、図5(A)は水素過電圧を高くする処理(化学修飾)を行ったカーボンフェルト電極を示すものであり、図5(B)は窒素雰囲気下1400℃で焼成処理したカーボンフェルト電極を示すものである。図5(A)に示す化学修飾カーボンフェルト電極は、表面に無数の小孔が形成されて表面積が大きくなっていることがわかる。
図6は、PAN(ポリアクニロニトリル)系化学修飾カーボンフェルト電極をESCA測定した結果を示す図面である。図6に示すように、炭素に係るピークが最も強く観測され、主成分として炭素成分を含有していることがわかる。また、酸素成分、窒素成分に係るピークも確認できたことから、電極表面に酸化物、窒化物が形成されていることがわかる。化学修飾を行うことにより電極表面に所定量の酸化物を形成させることができ、この酸化物形成よって電極の水素過電圧を高めることができる。なおESCA測定条件は、レンジ:3×10cps/18cm、X線:8kv、20mAであった。
図7は、化学修飾カーボンフェルト電極のESCA−C1sスペクトルを示す図面である。図7に示すように、−CH−に係るピークが最も大きく該電極の骨格を構成していることがわかる。また、他に酸化物などに由来するピークが確認できたことから、表面に酸化物が形成されていることがわかる。
図8は炭素質電極のサイクリックボルタムグラフを示す図面であり、図8(A)は化学修飾カーボンファイバー電極を示すものであり、図8(B)は窒素雰囲気下1400℃で焼成処理したカーボンファイバー電極を示すものである。図8(A)に示す化学修飾カーボンファイバー電極は、図8(B)に示す一般的な処理である焼成処理を施したカーボンファイバー電極と比し、広い電位幅を有していることがわかる。また、水素過電圧が大きく、比較的水を電気分解しにくいことから、より卑側の電圧を印加する場合に好適に使用できる。すなわち、後記実施例に示す如く、電極電位が卑側に大きいほどバイオガス中のメタン濃度を増加させることが可能であるため、電極として化学修飾カーボンファイバー電極を用いて高い電極電位に調整することによって、より一層高濃度でメタン成分を含有するバイオガスを生成させることが可能である。なお測定条件は、温度:35℃、電解液:0.05Mリン酸水素二ナトリウム溶液、撹拌下である。
図9は、温度35℃、牛糞尿を消化処理した場合における開路状態での電極電位(V vs NHE)と時間との関係を示す図面であり、電極としてグラッシーカーボン電極を使用した場合を図中実線で示し、白金ディスク電極を使用した場合を図中点線で示した。白金ディスク電極(図中点線)では経時変化がほとんど確認されないが、グラッシーカーボン電極(図中実線)では、若干の電極電位の低下が確認された。
図10は、炭素、硫黄および鉄に対するpH値ダイヤグラムであり、電位(V vs NHE)とpH値との関係を示すものである。図10からわかるように、メタン(CH)の発生領域は電位の「卑」側に構成されていることがわかる。
以下、実施例等を挙げて本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図11に示すメタン発酵装置103を使用してメタン発酵を行った。メタン発酵装置103は、発酵槽61と、この発酵槽61から回収したバイオガスを貯蔵するガスホルダー69を備えている。発酵槽61は、内容積約300mLのプラスティック容器から構成されており、その内部には作用電極(Working electrode)62と、電位を規定する参照電極(Reference electrode)63と、イオン交換膜64aで覆われた対極(Counter electrode)64が配置されている。
本実施例に係るメタン発酵装置103では、作用電極62として水素過電圧を高くする処理(化学修飾)を施したPAN系炭素質カーボンフェルト(厚さ約2.5mm、長さ約8cm、幅約5cm)をグラッシーカーボン板に圧着させたものを使用し、参照電極63として銀−塩化銀(Ag/AgCl)電極を使用した。また、発酵槽61は37℃に恒温設定された恒温浴67に浸されており、さらに発酵槽61内を均質とするために撹拌手段としてマグネティックスターラー68が配備されている。
また、発酵槽61内で発生したバイオガスをガスホルダー69に導く配管65の途中にはサンプリングノズル66が設けられており、このサンプリングノズル66からガスサンプルを適宜採取してガスクロマトグラフを用いてバイオガス組成(特にメタン含有率)を測定した。発酵液には、牛糞尿メタン発酵液を加えて一昼夜予備発酵させた食品廃棄物スラリーを使用した。
作用電極62に−0.44V、−0.55V、−0.62V、−0.70Vの電圧を印加した場合における電圧印加時間(min)とバイオガス発生量(mL)との関係を図12に示した。図12に示すように、電圧値に応じてバイオガス発生量に多少の差は確認できるものの、全体として有意な差は確認されなかった。
図13にはpH値7.5において、作用電極62の電位を複数調整した場合における、その電極電位(V)とバイオガス中のメタン濃度(体積%)との関係、およびその電極電位(V)とカソード電流(mA)(安定状態)との関係を示した。図13に示すように、電極電位の上昇に伴いバイオガス中のメタン濃度が増加しており、電極電位が−0.8V程度ではメタン濃度を78体積%程度まで高めることが可能であることがわかる。一方、カソード電流は、電極電位が−0.44V付近から流れ始め、−0.65V付近で極大値を示し、それより電極電位を大きくすると減少することが確認できた。なお、電極電位が小さいほどバイオガス中のメタン濃度が低下し、無電圧印加状態では通例のメタン発酵と同等である55体積%程度のメタン濃度であった。
このことから、卑側の電圧が印加された作用電極62に発酵液を接触させながらメタン発酵させることにより、バイオガス中のメタン濃度を高められること、すなわちバイオガスの高カロリー化を図ることが可能であることがわかる。また、電極電位を調整することにより、バイオガス中のメタン濃度を制御することができることがわかる。
このように、通例の発酵液に電圧が印加された電極を接触させることによってメタン発酵の環境に変化を生じさせることができる。また、電極電位を適宜制御することによってその電極電位に応じたメタン濃度を有するバイオガスを生成させることできる。
次に、表1に、所定電圧を印加してメタン発酵させた場合における、実測値としての電流値(mA)、クーロン量(coul./hr)、バイオガス発生量(mL/hr)および無電圧印加状態に対してのメタン増加率(%)を示し、さらに前記メタン増加率と同一の増加率を二酸化炭素の電解還元によって得る場合に必要とされるクーロン量(coul.)の理論値を示した。
Figure 0004164432
電極電位が−0.52Vである場合を例に挙げて説明すると、表1より電圧を印加しない場合と比してメタン発生が4%増加しており、このときのクーロン量が実測値として0.36coul./hrであることがわかる。一方、この4%のメタン増加率を二酸化炭素の電解還元に由来するメタン生成によって得るためには19coul.必要であることがわかる。
従って、−0.52Vの電圧を印加することによって得られるメタンの「4%」の増加分は、電解還元に起因するものではなく、電圧が印加された電極に発酵液を接触させたことに起因するものであることが推測される。より具体的には、電極電位の制御によってメタン発酵の環境に変化が生じ、メタン発酵が促進された結果であると考えられる。電極電位が−0.65V、−0.80Vである場合についても同様の結果が導出される。
有機性廃棄物をメタン発酵処理させるメタン発酵方法およびメタン発酵装置に利用可能である。
本発明の第1の実施形態に係るメタン発酵装置を示す概略構成図。 本発明の第2の実施形態に係るメタン発酵装置を示す概略構成図。 本発明に好適に使用できる電極の説明に供する図面。 本発明に好適に使用できる電極の説明に供する図面。 炭素質電極に係るSEMイメージ図面。 炭素質電極のESCAスペクトル。 炭素質電極のESCA−C1sスペクトル。 炭素質電極に係るサイクリックボルタムグラフ。 電極の電位特性を示す図面。 炭素、硫黄および鉄に対するpH値ダイヤグラム。 実施例に係るメタン発酵装置の概略構成図。 種々の電極電位でのバイオガス発生量を示す図面。 種々の電極電位でのメタン濃度とカソード電流を示す図面。
符号の説明
11 発酵槽
12 発酵液
30 電位印加槽
40 電極
50 制御手段
61 発酵槽
62 作用電極
63 参照電極
64 対極
66 サンプリングノズル
67 恒温浴
68 マグネティックスターラー
69 ガスホルダー

Claims (3)

  1. 有機性廃棄物をメタン発酵するメタン発酵方法において、
    前記メタン発酵における発酵液に電極を接触させ、当該電極に電圧を印加しながらメタン発酵させ、電極制御手段により前記電極の電位を0.0Vより卑側から−1.0Vまでの範囲で調整することにより、該メタン発酵におけるメタン発生量を制御することを特徴とする、メタン発酵方法。
  2. 請求項1において、前記発酵液に二酸化炭素含有ガスを導入することを特徴とする、メタン発酵方法。
  3. 有機性廃棄物をメタン発酵する発酵槽と、
    前記メタン発酵における発酵液と接触する電極と、
    前記電極の電位を0.0Vより卑側から−1.0Vまでの範囲で調整することにより該メタン発酵におけるメタン発生量を制御する電極制御手段とを備えていることを特徴とする、メタン発酵装置。
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