JP4163543B2 - 複合材料の生涯モニタリング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材料のRTM成形時における繊維プリフォーム中を含浸して行く樹脂の先端の検出と、製造された複合材料における損傷の検出が行えるようにした複合材料の生涯モニタリング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、FRP(繊維強化プラスチック)である複合材料をRTM(Resin Transfer Molding)成形した構造体は航空宇宙材料等の広い分野で利用されている。
【0003】
複合材料のRTM成形は、金型のキャビティ内に、例えばガラス繊維やカーボン繊維からなる強化繊維基材(以下繊維プリフォームという)を配置して型締めした後、硬化剤が混合された樹脂を金型のキャビティ内に加圧注入して強制的にキャビティ内に充満させることにより繊維プリフォームに含浸させ、樹脂を加熱等にて硬化させることにより複合材料を製造するものである。
【0004】
上記FRPの複合材料は、製造温度が金属やセラミックと比較して低く、強度等の特性を設計できる等の面で優れている。また、RTM成形は、特にキャビティが凹凸等の複雑な形状を有していても比較的容易に複合材料を製造できる利点がある。
【0005】
しかし、実際にRTM成形によって複合材料を製造するとき、キャビティが凹凸状の複雑に入りくんだ形状を有している場合には、キャビティ内に部分的に樹脂が良好に流動されない部位が生じることがある。また、型締めにより高密度で圧縮成形した繊維プリフォームに樹脂を加圧注入しても、部分的に流動抵抗が高い箇所が存在すると、その部位に良好に樹脂が流動しなくなることがある。
【0006】
このようにキャビティ内に樹脂の流動が困難か、樹脂が流れ込まない部位が生じると、樹脂含浸不良が生じたり、気泡が押し出されないために気泡を巻き込む結果となって、欠量やボイド等の欠陥を生じることがある。特にこのような欠陥が意匠面に存在すると、FRP製品の品質にとって致命的となる。また、樹脂の欠量が生じると、部分的に強度不足が生じ、構造的な欠陥ともなる。
【0007】
上記RTM成形は、金型を用いた成形であるために、キャビティ内に樹脂を加圧注入して繊維プリフォームに含浸させる際の樹脂の流動状態を金型外部から目視して確認することができない。このため、従来ではRTM成形の条件を種々変化させた試験を繰り返し、製造された複合材料を検査し、良好な複合材料が製造可能な条件を見つけ出す作業を行っており、この作業は、複合材料の形状、材質が変化するごとに行う必要があった。即ち、従来では製造された複合材料を目視或いは所要の検査方法を用いて欠陥の有無等の検査を行っている。
【0008】
非破壊で欠陥等の検査が行えるものとして、導電性の金属に対しては、いわゆる電磁超音波検出器が古くから知られている。これはコイルを試料表面に置き、これにパルス電流を流すと試料表面付近でコイル電流とは逆向きの渦電流が発生し、この渦電流と磁石によって与えられた静磁場の相互作用(ローレンツ力)によって超音波が発生するので、この超音波から試料の状態を検出する方法である。
【0009】
しかし、この方法は金属等の導電性材料にしか適用することができず、従って導電性のないGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)や、導電性があっても金属等と比較するとはるかに低い導電性であるCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)等の複合材料に対しては適用できないという問題を有していた。
【0010】
このため、複合材料のような非導電性材料に対しても電磁超音波検出器を適用できるようにした技術として、非導電性材料の表面に導電性皮膜を形成し、電磁超音波検出器を用いて導電性皮膜により非導電性材料の表面に渦電流を誘起させて非接触で探傷する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0011】
また、非導電性材料に対して電磁超音波検出器を適用できるようにしたものとして、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグにシートコイルを挟み込んで複数のプリプレグを積層し、オートクレーブ成型にて複合材料を製造し、得られた複合材料を前記シートコイルを用いて前記電磁超音波検出器により非接触で探傷する技術が提案されている(例えば、非特許文献1)。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−88815号公報
【非特許文献1】
社団法人 日本非破壊検査協会発行「非破壊検査」第51巻第1号(平成14年1月)第32頁〜第37頁
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1では、複合材料等の検査対象物を電磁超音波検出器にて検査する際に、その都度複合材料表面に導電性皮膜を形成するという面倒な作業が必要であった。特に、検査する複合材料が複雑な凹凸形状を有している場合に導電性皮膜を均一に形成することは技術的に非常に困難であり、また、この導電性皮膜を各々の複合材料に形成する作業には多大の時間が掛かるため生産性が著しく低下するという問題がある。
【0014】
また、前記特許文献1による電磁超音波検出器を用いた方法は、導電性皮膜に生じる渦電流を利用する方法であるために変換効率が悪く、検査精度を高められないという問題がある。
【0015】
また、上記非特許文献1では、複合材料に予めシートコイルを埋め込んでおくことによって、シートコイルを用いて複合材料の損傷を検査することはできるが、RTM成形時に、前記シートコイルを用いて繊維プリフォームに含浸する樹脂の先端を検出することはできない。このために、非特許文献1の場合においても、RTM成形の条件を種々変化させた試験を繰り返し、製造された複合材料を検査して良好な複合材料が製造可能な条件を見つけ出す作業が必要であり、作業能率が悪いという問題がある。
【0016】
そこで本発明は、上記問題点に着目し、複合材料のRTM成形時における樹脂の先端を樹脂先端検出センサにより検出でき、更に、該樹脂先端検出センサを利用して複合材料の使用中における損傷を検出できるようにした複合材料の生涯モニタリング方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、金型のキャビティ内に、繊維プリフォームと、薄肉基板に櫛形電極が形成された複数の樹脂先端検出センサを配置して型締めした後、金型のキャビティ内に樹脂を供給して繊維プリフォームに樹脂を含浸させ、この時の樹脂の先端を前記樹脂先端検出センサを用いて比誘電率検出器により検出し、樹脂を金型のキャビティ内に行き渡らせて硬化させることにより樹脂先端検出センサが一体化した複合材料を製造し、その後、前記樹脂先端検出センサの櫛形電極を加工して渦形配線を形成し、複合材料の使用中における探傷を、前記渦形配線を用いて電磁超音波検出器により検出することを特徴とする複合材料の生涯モニタリング方法、に係るものである。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記樹脂先端検出センサの櫛形電極が、前記金型のキャビティ内における樹脂の流れ方向に長く形成されていることを特徴とする請求項1記載の複合材料の生涯モニタリング方法、に係るものである。
【0019】
請求項3記載の発明は、前記樹脂先端検出センサが、櫛形電極を加工して渦形配線を形成するための接続配線を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材料の生涯モニタリング方法、に係るものである。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記樹脂先端検出センサに櫛形電極と共に渦形配線を形成して共用センサとし、櫛形電極の加工を省略することを特徴とする請求項1記載の複合材料の生涯モニタリング方法、に係るものである。
【0021】
請求項5記載の発明は、前記金型のキャビティ内に、樹脂先端検出センサと共に、薄肉基板に渦形配線を形成したコイルセンサを配置して櫛形電極の加工を省略することを特徴とする請求項1記載の複合材料の生涯モニタリング方法、に係るものである。
【0022】
請求項6記載の発明は、前記渦形配線が、繊維プリフォームの表面に配置されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合材料の生涯モニタリング方法、に係るものである。
【0023】
請求項7記載の発明は、前記渦形配線が、複数積層する繊維プリフォームの層間に配置されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合材料の生涯モニタリング方法、に係るものである。
【0024】
上記手段によれば、以下のように作用する。
【0025】
請求項1記載の発明では、金型のキャビティ内に繊維プリフォームと共に配置した樹脂先端検出センサを用いて比誘電率検出器により含浸する樹脂の先端を検出することができ、これにより樹脂がキャビティ内に行き渡ったことを確認でき、更に、製造された複合材料には樹脂先端検出センサが一体化されているので、この樹脂先端検出センサの櫛形電極を加工して渦形配線を形成することにより、複合材料の使用中に、前記渦形配線を用いて電磁超音波検出器により複合材料の損傷を検出することができるので、複合材料の製造時から使用時までの生涯モニタリングが容易に可能になる。
【0026】
請求項2記載の発明では、樹脂先端検出センサの櫛形電極が、金型のキャビティ内における樹脂の流れ方向に長く形成されているので、金型のキャビティ内を流動する樹脂の先端を確実に検出できる。
【0027】
請求項3記載の発明では、樹脂先端検出センサが櫛形電極を加工して渦形配線を形成するための接続配線を備えているので、渦形配線を形成するための加工が容易にできる。
【0028】
請求項4記載の発明では、樹脂先端検出センサに櫛形電極と共に渦形配線を形成して共用センサとしているので、櫛形電極の加工を省略し、複合材料の損傷を検出する操作が容易になる。
【0029】
請求項5記載の発明では、金型のキャビティ内に、樹脂先端検出センサと共に、薄肉基板に渦形配線を形成したコイルセンサを配置して櫛形電極の加工を省略しているので、複合材料の損傷の検出が容易になる。
【0030】
請求項6記載の発明では、渦形配線が繊維プリフォームの表面に配置されているので、渦形配線を用いて検出する電磁超音波検出器の変換効率を高めることができる。
【0031】
請求項7記載の発明では、渦形配線が複数積層する繊維プリフォームの層間に配置されているので、渦形配線自体の強度保持が図れ、複合材料の表面に何も存在しないので意匠面でも良好となる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施態様に係るRTM成形方法を示している。図1において、1は金型を示しており、上型1aと下型1bとの型締めにより、内部にキャビティ2が形成されており、通常、キャビティ2の長手方向一端側には樹脂注入口3が形成されている。
【0034】
図2は、前記キャビティ2内に装入配置する繊維プリフォーム4の一例であり、この繊維プリフォーム4の形態は特に限定されず、強化繊維織物や一方向性強化繊維、それらを組み合わせたもの、複数層配置したもの、更にはマット等を組み合わせたもの等を使用できる。更に、繊維プリフォーム4の種類としても特に限定されず、FRP成形用としては、例えばガラス繊維や炭素繊維、アラミド繊維、更には無機繊維等も使用可能である。
【0035】
図3、図4は、前記キャビティ2内に装入配置する樹脂先端検出センサ5の一例であり、樹脂先端検出センサ5は、薄肉基板6の表面に、一方の端子7aに接続された銅等の導電材料からなる電極8aと、他方の端子7bに接続された同様の電極8bとを備えており、上記電極8a,8bは、櫛形の歯を長くした形状を有して互いに入り込ませた櫛形電極9を形成している。図4では電極8a,8bの櫛形の歯が夫々3本に分岐された場合を示しているが、この櫛形の歯の数は任意である。前記樹脂先端検出センサ5は、幅が例えば数mm〜数十mm程度であり、長さは例えば前記樹脂注入口3から樹脂が注入される方向でのキャビティ2の長さと略等しい長さの細長い形状を有している。
【0036】
また、前記樹脂先端検出センサ5は、図8に関連して後述するように、前記櫛形電極9を利用して加工により渦形配線10を形成するための接続配線11を、前記薄肉基板6を挟んで櫛形電極9の反対面に形成している。
【0037】
前記樹脂先端検出センサ5を形成する薄肉基板6は、絶縁性を有し、且つ厚さが薄く自由な曲げが可能であれば種々の材料を用いることができ、例えば汎用されている市販のポリイミド基板を用い得る。
【0038】
RTM成形を行うには、図5に実線で示すように、下型1bのキャビティ2内に前記繊維プリフォーム4と樹脂先端検出センサ5を装入する。図5では、キャビティ2内に先ず繊維プリフォーム4を3枚装入し、その上面に樹脂先端検出センサ5を装入している。樹脂先端検出センサ5は、キャビティ2の長さに一致する長さを有しており、この時、細長い形状を有する樹脂先端検出センサ5は、キャビティ2の幅方向に対して間隔を置いて複数配置する。
【0039】
更に、上記したように樹脂先端検出センサ5を繊維プリフォーム4の上面に装入する場合には、樹脂先端検出センサ5の櫛形電極9が下面を向くように装入する。これは、櫛形電極9が金属の上型1aに接することがないようにするためである。
【0040】
また、前記したように、下型1bのキャビティ2に複数の繊維プリフォーム4を装入してその上面に樹脂先端検出センサ5を装入した後、更にこの樹脂先端検出センサ5の上面に図5の破線で示す1枚の繊維プリフォーム4を装入してもよい。尚、このように樹脂先端検出センサ5を繊維プリフォーム4の間に挟んで配置する場合は、樹脂先端検出センサ5の櫛形電極9が上面を向くように装入する。これは、櫛形電極9の埋没深さを浅くするためである。
【0041】
図5のようにキャビティ内に繊維プリフォーム4と樹脂先端検出センサ5を装入した後、金型1の型締めを行う。すると、図1に示すように前記繊維プリフォーム4と樹脂先端検出センサ5はキャビティ2の中で密着する。
【0042】
また、前記電極8a,8bの端子7a,7bに比誘電率検出器12を接続し、樹脂先端検出センサ5の電極8a,8bを用いて前記比誘電率検出器12により比誘電率の変化を検出できるようにする。
【0043】
次に、硬化剤が混合された樹脂13を、樹脂注入口3から強制的にキャビティ2内に供給すると同時に、前記比誘電率検出器12による比誘電率の検出を開始する。
【0044】
図6は、長さ250mmの樹脂先端検出センサ5を用いて、電極8a,8b間に1000Hzの交流電圧を印加した状態で、エポキシ樹脂の浴槽に樹脂先端検出センサ5を下端から2mm/minの速度で浸漬(変位)させた場合における比誘電率検出器12による比誘電率(Permittivity)の検出値である。上記試験は周波数を変えて複数回実施した。その結果、1000Hz付近の周波数の場合の比誘電率の検出値が、浸漬開始点Aから浸漬終了点Bまで良好な線形を示した。上記図6から、比誘電率を検出することによって、浸漬開始点Aからの樹脂先端検出センサ5の浸漬深さを計測することができる。
【0045】
従って、図6の原理から、図1では樹脂注入口3から注入された樹脂13がキャビティ2内を浸漬した距離、即ち樹脂13の先端の位置を正確に検出することができる。
【0046】
樹脂先端検出センサ5を用いた比誘電率の検出値が最大値になってキャビティ2内に樹脂13が行き渡ったことが検出されると、樹脂13の注入を停止し、キャビティ2内の樹脂13を加熱等にて硬化させる。そして、金型1を開放することにより図7に示すような樹脂先端検出センサ5が一体化された複合材料14が取出される。図7の複合材料14には3つの樹脂先端検出センサ5が一体化されている。この時、樹脂先端検出センサ5の櫛形電極9は、薄肉基板6によって被覆されるか、又は、一層目の繊維プリフォーム4によって被覆されているので、櫛形電極9が剥き出しになることはない。
【0047】
図8は、前記したように複合材料14に一体化された樹脂先端検出センサ5を用いて、複合材料14の使用中における損傷を電磁超音波検出器17により検出できるようにするための方法を示しており、前記図3、図4に示した樹脂先端検出センサ5は、予め図8に示すような構成としておく。
【0048】
即ち、図8では、薄肉基板6の表面に破線で示すような櫛形電極9が形成されており、且つ薄肉基板6の裏面には銅等からなる接続配線11が所定の位置に予め形成されている。従って、図8に示す接続配線11の黒丸点15をスポット溶接等にて電極8a,8bに接続し、また、電極8a,8bの×印点16を溶断等にて切断することにより、前記櫛形電極9を利用して細長い渦形配線10を形成できる。この渦形配線10は、端子7a,7b間に電流を流すことによって渦形配線10が形成されたことを検知できる。
【0049】
図9、図10は、前記複合材料14の内部に形成された渦形配線10を用いて複合材料14の損傷を検出する電磁超音波検出器(EMAT)17の検出方法の一例を示している。
【0050】
複合材料14に複数形成されている渦形配線10の一つ(図8の左側の渦形配線)には高周波発信器18を接続することにより発信コイル10aとし、また、これと隣り合う他の一つ(図8の右側の渦形配線)には広帯域レシーバ19を接続して受信コイル10bとし、前記広帯域レシーバ19は信号電圧観測装置20に接続する。更に、前記受信コイル10b上に対応するように受信側マグネット21(永久磁石)を固定して設け、また、前記発信コイル10a上に対応するように発信側マグネット22(永久磁石)を発信コイル10aの長手方向に移動(スキャン)可能に設ける。
【0051】
上記電磁超音波検出器17により複合材料14の損傷を検出するには、高周波発信器18により発信コイル10aに高周波電流を流す。すると、図11に示すように、複合材料14の表面付近でコイル電流とは逆向きの渦電流が発生し、この渦電流と発信側マグネット22によって与えられた静磁場の相互作用によるローレンツ力Xによって超音波が発生する。この超音波が複合材料14を伝播し、受信コイル10bが振動することにより受信コイル10bに電流が生じ、この電流が広帯域レシーバ19を介して信号電圧観測装置20に送られて一定の電圧値が検出される。
【0052】
前記発信側マグネット22を発信コイル10aの長手方向に沿って移動させると、発信側マグネット22の移動距離に応じて略線形に変化する電圧値が信号電圧観測装置20によって検出される。この時、複合材料14に剥離、割れ、欠損、開口等の損傷があると、その部分で電圧値が急激に変化(低下)するので、損傷の存在が検出でき、更に、発信側マグネット22と受信側マグネット21の位置から損傷の位置を検出できる。
【0053】
上記したように複合材料14に埋めこまれた渦形配線10に高周波電流を直接流して検出するので、前記特許文献1のように非導電性材料の表面に形成した導電性皮膜によって複合材料表面に渦電流を誘起させて検出する方法に比して変換効率が高められ、よって検査精度を高めることができる。
【0054】
前記したように、二つの渦形配線10を用いて受信側マグネット21に対して発信側マグネット22を移動させながら電磁超音波検出器17により検出する操作を、使用する二つの渦形配線10の組合わせを順次変えて行うことにより、複合材料14の全面を検査することができる。
【0055】
尚、図3、図4では、樹脂先端検出センサ5に櫛形電極9と接続配線11を備えた場合について例示したが、以下のように構成することもできる。
【0056】
即ち、図12に示すように、薄肉基板6の一面に櫛形電極9を形成した樹脂先端検出センサ5の薄肉基板6の他面に、銅等からなる渦形配線23を形成して共用センサ24とし、この共用センサ24を、前記RTM成形時において繊維プリフォーム4の層間に挾んで配置する。この時、前記樹脂先端検出センサ5は図8のような接続配線11を備える必要がない。上記共用センサ24では、RTM成形時の樹脂13の注入時には電極8a,8bの端子7a,7bを比誘電率検出器12に接続することにより繊維プリフォーム4に含浸される樹脂13の先端を検出することができ、また、製造した複合材料14に対しては前記渦形配線23の端子23aを電磁超音波検出器17に接続することにより複合材料14の損傷を検出することができる。この方法では、櫛形電極9を加工して渦形配線10を形成する作業が省略できる。
【0057】
また、図13に示すように、薄肉基板6の表面に銅等からなる渦形配線23を形成したコイルセンサ25を設け、RTM成形時に、図8の接続配線11を備えない樹脂先端検出センサ5と図13のコイルセンサ25を、所要の間隔を有して繊維プリフォーム4の上面に配置するか、或いは、繊維プリフォーム4の層間に配置してもよい。尚、上記樹脂先端検出センサ5とコイルセンサ25を繊維プリフォーム4の上面に配置するときは、櫛形電極9及び渦形配線23が下側を向くように装入し、また、樹脂先端検出センサ5とコイルセンサ25を繊維プリフォーム4の層間に配置する場合は櫛形電極9及び渦形配線23が上側を向くように装入するのが好ましい。上記により、RTM成形時の樹脂13の注入時には電極8a,8bの端子7a,7bを比誘電率検出器12に接続することにより繊維プリフォーム4に含浸される樹脂13の先端を検出することができ、また、製造した複合材料14に対しては前記渦形配線23の端子23aを電磁超音波検出器17に接続することにより複合材料14の損傷を検出することができる。この方法では、櫛形電極9を加工して渦形配線10を形成する作業が省略できる。
【0058】
上記したように、RTM成形時に、将来加工によって渦形配線10を形成できる図8のような接続配線11を備えた樹脂先端検出センサ5を繊維プリフォーム4と共にキャビティ2に配置するか、或いは図12のように櫛形電極9と渦形配線23が一体に形成された共用センサ24をキャビティ2に配置するか、又は、接続配線11を備えない樹脂先端検出センサ5と共にコイルセンサ25をキャビティ2に装入すると、RTM成形時の樹脂13の注入時には櫛形電極9を用いて比誘電率検出器12により繊維プリフォーム4に含浸される樹脂13の先端を検出することができ、また、製造した複合材料14に対しては前記渦形配線23を用いて電磁超音波検出器17により複合材料14の損傷を検出できるので、複合材料の製造時から使用時までの生涯モニタリングが容易に可能になる。
【0059】
尚、本発明は上記形態例にのみ限定されるものではなく、櫛形電極の形状、樹脂先端検出センサの形状等は種々変更し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【0060】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、金型のキャビティ内に繊維プリフォームと共に配置した樹脂先端検出センサを用いて比誘電率検出器により含浸する樹脂の先端を検出することができ、これにより樹脂がキャビティ内に行き渡ったことを確認でき、更に、製造された複合材料には樹脂先端検出センサが一体化されているので、この樹脂先端検出センサの櫛形電極を加工して渦形配線を形成することにより、複合材料の使用中に、前記渦形配線を用いて電磁超音波検出器により複合材料の損傷を検出することができるので、複合材料の製造時から使用時までの生涯モニタリングが容易に可能になる効果がある。
【0061】
請求項2記載の発明によれば、樹脂先端検出センサの櫛形電極が、金型のキャビティ内における樹脂の流れ方向に長く形成されているので、金型のキャビティ内を流動する樹脂の先端を確実に検出できる効果がある。
【0062】
請求項3記載の発明によれば、樹脂先端検出センサが櫛形電極を加工して渦形配線を形成するための接続配線を備えているので、渦形配線を形成するための加工が容易になる効果がある。
【0063】
請求項4記載の発明によれば、樹脂先端検出センサに、櫛形電極と共に渦形配線を形成して共用センサとしているので、櫛形電極の加工を省略し、複合材料の損傷を検出する操作が容易になる効果がある。
【0064】
請求項5記載の発明によれば、金型のキャビティ内に、樹脂先端検出センサと共に、薄肉基板に渦形配線を形成したコイルセンサを配置して櫛形電極の加工を省略しているので、複合材料の損傷の検出が容易になる効果がある。
【0065】
請求項6記載の発明によれば、渦形配線が繊維プリフォームの表面に配置されているので、渦形配線を用いて検出する電磁超音波検出器の変換効率を高められる効果がある。
【0066】
請求項7記載の発明によれば、渦形配線が複数積層する繊維プリフォームの層間に配置されているので、渦形配線自体の強度保持が図れ、複合材料の表面に何も存在しないので意匠面でも良好となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係るRTM成形方法を示す金型の切断側面図である。
【図2】図1の金型のキャビティ内に装入配置する繊維プリフォームの一例を示す平面図である。
【図3】図1の金型のキャビティ内に装入配置する樹脂先端検出センサの一例を示す側面図である。
【図4】図1の樹脂先端検出センサの平面図である。
【図5】本発明のRTM成形を行う際の繊維プリフォームと樹脂先端検出センサの装入配置例を示す切断側面図である。
【図6】樹脂先端検出センサを樹脂に浸漬したときの変位量と比誘電率との関係を示した線図である。
【図7】図1の方法で製造した複合材料の一例を示す平面図である。
【図8】図1の樹脂先端検出センサに予め形成した接続配線を用いて渦形配線を形成する例を説明するための背面図である。
【図9】複合材料の内部に形成された渦形配線を用いて電磁超音波検出器により複合材料の損傷を検出する方法の一例を示す概略側面図である。
【図10】図9の電磁超音波検出器により複合材料の損傷を検出する際のマグネットの移動方向を表わす斜視図である。
【図11】渦形配線に高周波電流を流したときに超音波が発生する原理を示す切断側面図である。
【図12】薄肉基板に櫛形電極と共に渦形配線を形成して共用センサとした場合の一例を示す側面図である。
【図13】樹脂先端検出センサと共にキャビティに配置するようにした、薄肉基板に渦形配線を形成したコイルセンサの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 金型
2 キャビティ
4 繊維プリフォーム
5 樹脂先端検出センサ
6 薄肉基板
9 櫛形電極
10 渦形配線
11 接続配線
12 比誘電率検出器
13 樹脂
14 複合材料
17 電磁超音波検出器
23 渦形配線
24 共用センサ
25 コイルセンサ
Claims (7)
- 金型のキャビティ内に、繊維プリフォームと、薄肉基板に櫛形電極が形成された複数の樹脂先端検出センサを配置して型締めした後、金型のキャビティ内に樹脂を供給して繊維プリフォームに樹脂を含浸させ、この時の樹脂の先端を前記樹脂先端検出センサを用いて比誘電率検出器により検出し、樹脂を金型のキャビティ内に行き渡らせて硬化させることにより樹脂先端検出センサが一体化した複合材料を製造し、その後、前記樹脂先端検出センサの櫛形電極を加工して渦形配線を形成し、複合材料の使用中における探傷を、前記渦形配線を用いて電磁超音波検出器により検出することを特徴とする複合材料の生涯モニタリング方法。
- 前記樹脂先端検出センサの櫛形電極が、前記金型のキャビティ内における樹脂の流れ方向に長く形成されていることを特徴とする請求項1記載の複合材料の生涯モニタリング方法。
- 前記樹脂先端検出センサが、櫛形電極を加工して渦形配線を形成するための接続配線を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の複合材料の生涯モニタリング方法。
- 前記樹脂先端検出センサに櫛形電極と共に渦形配線を形成して共用センサとし、櫛形電極の加工を省略することを特徴とする請求項1記載の複合材料の生涯モニタリング方法。
- 前記金型のキャビティ内に、樹脂先端検出センサと共に、薄肉基板に渦形配線を形成したコイルセンサを配置して櫛形電極の加工を省略することを特徴とする請求項1記載の複合材料の生涯モニタリング方法。
- 前記渦形配線が、繊維プリフォームの表面に配置されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合材料の生涯モニタリング方法。
- 前記渦形配線が、複数積層する繊維プリフォームの層間に配置されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合材料の生涯モニタリング方法。
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