JP4162079B2 - 放射線測定用の照射材及び放射線測定装置並びに放射線測定方法 - Google Patents

放射線測定用の照射材及び放射線測定装置並びに放射線測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線測定用の照射材及び放射線測定装置並びに放射線測定方法に係り、更に詳しくは、放射線の吸収線量及び試料温度やそれらの分布を簡単且つ広範囲で測定することのできる放射線測定用の照射材及び放射線測定装置並びに放射線測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
粒子加速器やラジオアイソトープ等の放射線源から放射線を照射した際に、その吸収線量を測定する方法として、三酢酸セルロース(CTA)フィルムを用いた方法やアラニンを用いた方法等が知られている(非特許文献1参照)。CTAフィルムを用いた方法では、当該フィルムに測定対象の放射線を照射し、当該照射によって生じるフィルムの化学的変化に関連した量を測定することで吸収線量が求められる。すなわち、このCTAフィルムを用いた方法は、波長280nm付近における放射線照射前後の吸光度変化が、吸収線量に対して比例することを利用したものであり、波長280nm付近の吸光度変化を測定し、これによって、吸収線量が求められる。
一方、アラニンを用いた方法では、アラニンを含むペレット体に放射線が照射されると、当該放射線の照射によってアラニンが分解してラジカルが生じることを利用したものであり、当該ラジカルを電子スピン共鳴装置(ESR)で測定することで、吸収線量が求められる。
【0003】
また、放射線照射時における試料温度の測定の際には、当該試料に取り付けられる熱電対が用いられる。
【0004】
【非特許文献1】
森内和之、他6名著「工業照射用の電子線量計測」、第1版、株式会社地人書館、平成2年3月25日、p.27−30、p172−180
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CTAフィルムを用いた前述の方法にあっては、測定環境を厳格に保持しながら行う必要があり、吸収線量の測定に手間がかかるという不都合がある。すなわち、この方法では、放射線照射後のフィルムに当てる光の波長が280nm付近に限定されるばかりか、放射線を照射する雰囲気の温度及び湿度を所定の値に保たなければならず、しかも、放射線を照射した後のフィルムの特性が経過時間に応じて変わるため、当該経過時間を一定にしなければならない。また、放射線をフィルムに照射しているときに、当該フィルムの試料温度がビーム加熱によって上昇する場合もあり、この場合には、吸収線量の値を正確に求めることができないという不都合もある。
一方、アラニンを用いた方法にあっては、CTAフィルムを用いた場合と同様に温度管理を厳格にする必要がある他、測定に際しては、高価な電子スピン共鳴装置(ESR)が必要になり、当該装置をあらゆる測定施設に導入することができず、放射線を照射した後のペレット体を所定の施設に搬送する手間がかかるという不都合がある。
また、これらCTAフィルムやアラニンを用いた方法では、例えば、数秒間に100kGy以上の線量等、短時間に多量の線量が試料に与えられる場合には、実際の吸収線量に対する誤差が大きくなって用いることができない他、吸収線量を測定できる範囲がせいぜい200kGy程度とされ、それ以上の吸収線量が短時間で付与される場合には、使用できないという不都合もある。
【0006】
また、熱電対を用いて放射線照射時の試料温度を測定する方法にあっては、温度測定装置等を放射線環境下で使用することから、温度測定装置の遮蔽などの放射線防護措置を行う必要があり、温度測定作業に手間がかかるという不都合がある。また、高線量率での放射線照射の場合、熱電対そのものが放射線によって直接加熱されてしまい、放射線の照射による実際の試料温度を正確に測定することができないという不都合もある。
【0007】
ところで、本発明者らは、このような不都合に鑑み、放射線照射時の吸収線量及び試料温度を測定する際の照射材に用いられる各種高分子材料について、種々の実験及び研究を行った。その結果、フッ素系高分子であるエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)に放射線を照射すると、当該ETFEに着色現象が生じ、特に、放射線の吸収線量及び試料温度が増大すると、次第に色彩が濃くなることを知見した。すなわち、ETFEをフィルム状として放射線を照射した後、当該フィルムに所定の光を透過させたときに、従来よりも広範囲となる光の波長で、フィルムの吸光度変化と、前記吸収線量及び試料温度との間に一定の関係が存在することを見出した。
【0008】
すなわち、光の波長が約200nm〜約900nmの範囲、吸収線量が約1kGy〜約50MGyの範囲、及び試料温度が約4K〜約553Kの範囲内では、図1及び図2に示されるように、吸光度変化ODと吸収線量Dとが、正比例関係にあるとともに、図3及び図4に示されるように、吸光度変化ODと試料温度Tとが、当該試料温度Tの一定範囲毎でそれぞれ正比例関係にあることが判明した。このことは、吸収線量Dや試料温度Tに比例して、分子の共役二重結合の量が増大することに起因すると考えられる。
【0009】
具体的に、図1及び図2に示されるように、吸光度変化ODは、吸収線量Dに対して、所定の比例定数(以下、「線量係数」と称する)を乗じた関係となる。この線量係数は、波長λ及び試料温度T毎に異なり、これら波長λ及び試料温度Tに対して一義的に定まる。また、前記線量係数は、波長λが増大するに従い減少し、試料温度Tが増大するに従い増大する。
【0010】
また、図3及び図4に示されるように、吸光度変化ODは、試料温度Tに対して、所定の比例定数(以下、「温度係数」と称する)を乗じた関係となる。この温度係数は、波長λ及び吸収線量D毎に異なり、更には、一波長λ、一吸収線量Dにつき、三つの値が存在する。この三つの値は、各波長λ及び吸収線量Dで共通した二箇所の転移温度t1,t2を境に変化するようになっている。この転移温度t1,t2は、高分子鎖の分子運動における運動モードが変化する温度であり、210K付近、400K付近にそれぞれ存在する。従って、線量係数は、波長λ、吸収線量D及び試料温度T毎に異なり、これら波長λ、吸収線量D及び試料温度Tに対して一義的に定まる。また、前記温度係数は、t1未満の温度領域、t1以上t2未満の温度領域、t3以上の温度領域の順に増大し、しかも、波長λが増大するに従い減少し、吸収線量Dが増大するに従い増大する。
【0011】
【発明の目的】
本発明は、このような発明者の知見に基づいて案出されたものであり、その目的は、放射線の吸収線量及び試料温度やそれらの分布を簡単且つ広範囲で測定することができる放射線測定用の照射材及び放射線測定装置並びに放射線測定方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係る照射材は、測定対象となる放射線が照射されたときの吸光度変化を測定することで、前記放射線の吸収線量及び試料温度が測定可能となる放射線測定用の照射材であって、
前記放射線が照射される部分をエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体により形成する、という構成を採っている。このような構成によれば、放射線の照射部分がエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)で形成されているため、前述したETFEの性質上、測定対象の放射線が照射された照射材に対し、少なくとも二種類の波長における各吸光度変化を測定することで、前記放射線の吸収線量及び試料温度を同時に求めることができる。また、吸収線量及び試料温度の測定に際しては、様々な光の波長や温度等で行うことが可能であり、測定環境を厳格に管理しなくてもよく、放射線の吸収線量及び試料温度を簡単に求めることができる。更に、約1kGy〜約50MGyの広範囲で吸収線量を測定することができ、従来の線量計で測定可能となる吸収線量の範囲に加え、当該範囲よりも高線量域での測定も可能となり、吸収線量の測定に対する高い汎用性を付与することができる。また、温度測定装置を用いなくても試料温度の測定が可能となるため、従来において問題とされた温度測定装置の遮蔽等が不要となり、試料温度の測定を簡単に行うことができる。しかも、従来の方法では試料温度を正確に測定できない高線量率での放射線照射の場合についても、試料温度を正確に測定することができる。
【0013】
また、本発明に係る放射線測定装置は、前記照射材を用いて放射線の吸収線量及び試料温度を求める放射線測定装置において、
所定の波長の光を前記照射材に透過させることにより当該波長の光に対する吸光度変化を求める吸光度変化算出手段と、前記照射材の特性に基づく所定のデータを記憶する記憶手段と、前記吸光度変化から前記記憶手段内のデータに基づき前記吸収線量及び試料温度を決定する線量・温度決定手段とを備え、
前記線量・温度決定手段は、測定対象の放射線が照射された照射材に対し、少なくとも二種類の波長の光を透過させたときの各吸光度変化から、吸収線量及び試料温度を決定する、という構成を採っている。このような構成によれば、前述したように、放射線の吸収線量及び試料温度を簡単且つ広範囲で測定することができる。
【0014】
更に、本発明に係る放射線測定方法は、前記照射材を用いた放射線測定方法であって、
前記照射材に測定対象の放射線を照射した後、当該照射材に少なくとも二種類の波長の光を透過させることで、各波長に対する照射材の吸光度変化を測定し、当該各波長及び各吸光度変化から、前記照射材の特性に基づくデータを用いて前記放射線の吸収線量及び試料温度を決定する、という手法を採っており、このような手法によっても、前述した目的を達成することができる。
【0015】
ここにおいて、放射線の測定が可能となる光の波長範囲及び吸収線量範囲が存在し、
予想される吸収線量が、前記吸収線量範囲内の上限側に位置する場合には、前記波長範囲の上限側の波長を選択する一方、予想される吸収線量が、前記吸収線量範囲内の下限側に位置する場合には、前記波長範囲の下限側の波長を選択する、という手法を採ることができる。このようにすることで、照射材に照射された放射線の吸収線量をより正確に求めることができる他、当該吸収線量を適切なオーダーで測定することが可能となる。
【0016】
また、本発明に係る放射線測定方法は、前記照射材を用いた放射線測定方法であって、
前記照射材に測定対象の放射線を照射したときに、当該照射材の色彩と、前記吸収線量及び/又は試料温度毎に塗り分けられた着色表の色彩とを対比することにより、前記放射線の吸収線量及び/又は試料温度を求める、という手法を採っている。このような手法によれば、放射線測定装置を使わなくても、放射線の吸収線量や試料温度を簡単に測定することができ、照射材を放射線測定装置にセットする手間が省け、且つ、従来よりも広範囲となる吸収線量を測定することが可能になる。
【0017】
更に、本発明に係る放射線測定方法は、前記照射材を用いた放射線測定方法であって、
前記照射材に測定対象の放射線を照射したときに、当該照射材に施された色彩の濃淡で、前記放射線の吸収線量及び/又は試料温度の分布を求める、という手法を採っており、この手法によれば、従来測定が困難であった放射線の吸収線量及び/又は試料温度の分布を簡単且つ広範囲で測定することができる。これによって、例えば、放射線を照射する際に照射材を載せる載置台からの熱伝導等の影響を調べることが可能となる。すなわち、この場合は、照射材を部分的に載置台から浮かせ、当該浮いた部分の試料温度とそれ以外の部分の試料温度とを比較することによって、載置台からの熱伝導による照射材の加熱等の影響を、具体的に数値化して把握することができる。
【0018】
なお、本明細書における「放射線」とは、電子線、X線、γ線、中性子線、高エネルギーイオン、放射光等の電離性放射線を意味し、単独或いはそれらの混合放射線をも含む概念として用いる。
【0019】
また、「吸光度変化」とは、照射材に対する放射線の照射前後の吸光度の変化量を意味する。
【0020】
更に、「試料温度」とは、測定対象となる放射線が照射材に照射されたときの当該照射部位の温度を意味し、「照射温度」とは、前記放射線が照射される雰囲気の温度を意味する。
【0021】
また、「エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体」は、その不純物をも含む概念として用いる。ここで不純物として含有される物質は、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)、パープルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系材料、そのオリゴマー等を例示できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
[第1実施例]
図5には、第1実施例に係る放射線測定装置の概略システム構成図が示されている。この図において、放射線測定装置10は、テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)からなる照射材としての照射フィルムFを用いて放射線の吸収線量及び試料温度を測定する装置である。すなわち、放射線測定装置10は、測定対象の放射線が照射された照射フィルムF1、及び放射線が未照射の照射フィルムF2にそれぞれ所定の波長のUV光を当てることで、照射フィルムF1の吸光度変化を測定し、当該吸光度変化と前記UV光の波長に基づいて放射線の吸収線量及び試料温度を求めるようになっている。
なお、特に限定されるものではないが、本実施例において、照射フィルムFは、略全域が放射線の照射部分となるように形成されており、その厚みが200μm以下に設定されている。
【0024】
具体的に、前記放射線測定装置10は、UV光を照射可能なキセノンランプ等のUV光源12と、このUV光源12から照射されたUV光が通過するレンズ13と、このレンズ13を通過したUV光のうち、測定者によって任意に選択した所定波長のみに分光する分光器14と、当該分光器14で分光された波長のUV光を二方向に分岐させるハーフミラー16及び全反射ミラー17と、測定対象の放射線が照射された照射フィルムF1及び未照射の照射フィルムF2をそれぞれ保持するとともに、当該各照射フィルムF1,F2にミラー16,17によって二方向に分岐されたUV光をそれぞれ当てる照射部19と、当該照射部19における照射フィルムF1,F2を透過したUV光の強度をそれぞれ検出するフォトダイオード20,21と、このフォトダイオード20,21で検出されたUV光の強度に基づいて、照射フィルムF1に照射された放射線の吸収線量及び試料温度を検出する線量・温度検出部23とを備えて構成されている。なお、ここでは、フォトダイオード20,21を用いているが、代わりに、フォトマルチプライヤーを用いることもできる。
【0025】
前記照射部19は、測定対象の放射線が照射された照射フィルムF1を着脱自在に保持する第1の保持部25と、放射線が照射されていないリファレンス材としての照射フィルムF2を着脱自在に保持する第2の保持部26とを備えている。
【0026】
前記線量・温度検出部23は、フォトダイオード20,21からの信号がそれぞれ入力されるA/Dコンバーター28,29と、このA/Dコンバーター28,29からの信号に基づいて、照射フィルムF1の吸光度変化を求める吸光度変化算出手段31と、照射フィルムFの特性に基づく所定のデータを記憶する記憶手段32と、吸光度変化算出手段31で求めた吸光度変化から、当該記憶手段32内のデータを用いて照射フィルムF1に照射された放射線の吸収線量及び試料温度を決定する線量・温度決定手段33とを備えて構成されている。
【0027】
前記吸光度変化算出手段31は、各照射フィルムF1,F2に対し、フォトダイオード20,21によって検出された透過UV光の強度から、公知の計算式を用いて各フィルムF1,F2の吸光度を算出し、放射線が照射された照射フィルムF1の吸光度から、未照射の照射フィルムF2の吸光度を減算することにより、照射フィルムF1の吸光度変化が求められるようになっている。
【0028】
前記記憶手段32は、前述したETFEの特性により、UV光の波長毎に、一吸光度変化、一吸収線量に対し、試料温度の値が一つ記憶されている。これらデータは、予め行った幾つかの実験データに基づき、吸収線量及び試料温度と吸光度変化との比例式から、多数のデータを算出した状態で記憶されている。なお、前記実験は、予め吸収線量が判っている照射フィルムFの吸光度変化を複数種の波長について測定するとともに、そのときの試料温度が熱電対で測定される。このときの放射線は、照射フィルムFに対するビーム加熱の影響の少ない電子線やコバルト線が用いられる。
【0029】
前記線量・温度決定手段33は、照射フィルムF1,F2のそれぞれに対し、異なる二種類の波長のUV光を照射したときに求められる二種類の吸光度変化により、後述するように、記憶手段32のデータを用いて吸収線量及び試料温度を決定する。
【0030】
なお、前述した以外の構成及び構造については、公知の構造が採用されており、ここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
次に、前記放射線測定装置10を用いた放射線の測定手順につき、以下に説明する。
【0032】
まず、所定の放射線源から照射される放射線に対し、所定の照射温度となる所望の場所に照射フィルムF1を所定時間置くことで、当該照射フィルムF1に放射線を当てる。そして、そこから照射フィルムF1を回収し、放射線未照射の照射フィルムF2とともに、前記第1及び第2の保持部25,26に保持させる。このとき、照射フィルムF2は、略無色透明状となっているのに対し、放射線が照射された照射フィルムF1は、茶褐色若しくは黄色状となる有色透明状に変色した状態となっている。
【0033】
そして、UV光源12からUV光を各照射フィルムF1,F2に向かって照射する。このとき、測定者の操作により、分光器14でUV光の波長が所望の波長に限定され、吸光度変化算出手段31により、限定された波長に対する吸光度変化が算出される。そして、UV光の波長を異なる別の波長に限定し、この場合における吸光度変化も吸光度変化算出手段31で算出される。
【0034】
このように、異なる二種類の波長に対する各吸光度変化が求まれば、前述したETFEの特性から、照射フィルムF1に照射された放射線の吸収線量及び試料温度が一義的に決まることになる。
【0035】
すなわち、吸光度変化ODと吸収線量Dとの間には比例関係が生じ、ここでの比例定数(線量係数)は、波長λ及び試料温度Tに応じて定まる。また、吸光度変化ODと試料温度Tとの間にも比例関係が生じ、ここでの比例定数(温度係数)は、波長λ、吸収線量D及び試料温度Tに応じて定まる。従って、ETFEの特性から、四変数(波長λ、吸光度変化OD、吸収線量D、試料温度T)からなる二つの比例式が存在し、少なくとも二点の波長λ1,λ2と、当該各波長λ1,λ2に対する各吸光度変化OD1,OD2が判れば、前記二つの比例式を二変数(吸収線量D、試料温度T)からなる二式とすることができ、この二元連立方程式を解くことで、吸収線量D及び試料温度Tをそれぞれ一つの値に特定できることは自明である。
【0036】
以上のような吸収線量D及び試料温度Tの特定は、線量・温度決定手段33によって行われるが、ここでは、図1及び図2を用い、一例を挙げて説明する。
【0037】
吸光度変化算出手段31で、波長λ1(nm)のときの吸光度変化ODがOD1と算出され、波長λ2(nm)のときの吸光度変化ODがOD2と算出されたとする。これによって、予め記憶された記憶手段32のデータを用いることで、吸収線量D及び試料温度Tが特定されることになる。すなわち、図1に示されるように、波長λ1(nm)の場合に、吸光度変化ODがOD1と算出されたことにより、試料温度TがT1(K),T2(K),T3(K)のときにおける吸収線量Dが、D3(MGy),D2(MGy),D1(MGy)にそれぞれ特定される。同様に、図2に示されるように、波長λ2(nm)の場合に、吸光度変化ODがOD2と算出されたことにより、試料温度TがT1(K),T2(K),T3(K)のときにおける吸収線量Dが、D4(MGy),D2(MGy),D0(MGy)にそれぞれ特定される。ここで、波長λ1(nm),λ2(nm)の双方の場合で、同一の試料(照射フィルムF1)が用いられているため、何れの場合でも、吸収線量D及び試料温度Tは同じ値になる。そこで、この場合は、双方の場合で同じ値となる放射線の吸収線量Dは、D2(MGy)であり、これによって、試料温度Tは、T2(K)であると決定される。
【0038】
なお、図3及び図4に示されるグラフからも、同様に、放射線の吸収線量D及び試料温度Tをそれぞれ一つの値に決定できることが理解できるであろう。
すなわち、図3に示されるように、波長λ1(nm)の場合に、吸光度変化ODがOD1と算出されると、吸収線量DがD1(MGy)、D2(MGy)、D3(MGy)のときにおける試料温度Tが、それぞれT3(K)、T2(K)、T0(K)にそれぞれ特定される。同様に、図4に示されるように、波長λ2(nm)の場合に、吸光度変化ODがOD2と算出されると、吸収線量DがD1(MGy)、D2(MGy)、D3(MGy)のときにおける試料温度Tが、それぞれT4(K)、T2(K)、T1(K)にそれぞれ特定される。従って、このように図4の関係を用いても、図3の関係を用いた場合と同様に、放射線の吸収線量DがD2(MGy)と決定でき、且つ、試料温度Tは、T2(K)と決定できる。
【0039】
なお、本実施例においては、記憶手段32で記憶された各数値データに基づいて、放射線の吸収線量Dと試料温度Tを求めたが、本発明はこれに限らず、前述したETFEの特性による二種類の比例式等を記憶手段32に記憶し、波長λ及び吸光度変化ODを前述と同様に二組求め、線量・温度決定手段33で、この二組の数値を二種類の比例式に代入し、これらの連立方程式を解いて、吸収線量Dと試料温度Tを求めることもできる。
【0040】
また、図6に示されるように、照射されるUV光の波長が約200nmから約900nmの範囲内、すなわち、ETFEの特性上測定可能となる波長範囲内においては、波長が長くなる程、測定可能な最大吸収線量(最大測定可能線量)が次第に大きくなる。従って、予想される吸収線量Dが最大測定可能線量の範囲(吸収線量範囲)の上限側にある場合には、前記波長範囲の上限側の波長を選択する一方、予想される吸収線量Dが前記吸収線量範囲の下限側にある場合には、前記波長領域の下限側の波長を選択するとよい。このようにすると、照射フィルムF1に照射された放射線の吸収線量Dをより正確に求めることができる他、当該吸収線量Dを適切なオーダーで測定することが可能となる。
【0041】
更に、照射フィルムFを複数用意し、各照射フィルムFに対し、各放射線の照射時間や放射線源からの距離を変えて放射線を照射する等、異なる照射条件で放射線を照射し、それぞれについて、照射線量Dや照射温度Tを求めると、求めようとする照射線量Dや照射温度Tの精度をより高めることができる。
【0042】
従って、このような第1実施例によれば、照射フィルムFがETFEによって形成されているため、当該ETFEの特性により、放射線を照射フィルムF1に照射する際の温度や湿度、放置時間等の環境条件を厳格に管理しなくても、放射線の吸収線量Dを正確に測定することができる他、同時に試料温度Tの測定もでき、別手段で試料温度Tを測定する手間を省くことができるという効果を得る。
【0043】
なお、図7に示されるように、図5の構成に対して第2の保持部26を省略し、放射線未照射の照射フィルムF2の吸光度を吸光度変化算出手段31に予め記憶しておき、この記憶値を照射フィルムF1の吸光度から減算することで、吸光度変化を求めてもよい。但し、前記実施例の方が、照射フィルムFの製造上のバラツキ等を考慮することができ、吸光度変化の誤差を少なくして、当該吸光度変化をより正確に求めることができる。
【0044】
次に、本発明の第2実施例について説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施例と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【0045】
[第2実施例]
この第2実施例は、放射線の照射による照射フィルムFの着色現象を利用して、放射線照射後の照射フィルムF1の色彩と、吸収線量及び照射温度毎に塗り分けられた図8の着色表36の色彩とを対比し、照射フィルムF1に照射された放射線の吸収線量及び試料温度を求めるようにしたところに特徴を有する。
【0046】
照射フィルムFは、放射線が照射されていない初期状態で略無色透明状をなし、放射線が照射されると、次第に茶褐色若しくは黄色状の有色透明状に変色し、照射した放射線の吸収線量や試料温度の上昇に伴って色彩の濃度が増大する特質を有する。
【0047】
前記着色表36は、所定の照射温度毎に、吸収線量に対する照射フィルムFの色彩が塗り分けられた線量決定用の着色表36Aと、所定の吸収線量毎に、試料温度に対する照射フィルムFの色彩が塗り分けられた温度決定用の着色表36Bとからなる。
【0048】
前記着色表36を用い、次のようにして吸収線量又は試料温度が求められる。
【0049】
先ず、照射温度が判明しているときには、着色表36Aを用い、当該照射温度における着色表36Aの色彩群と照射フィルムF1の色彩とを目視等により対比し、照射フィルムFの色彩に合致する着色表36Aの色彩を見つけ、当該色彩に対応する吸収線量が求める値となる。
一方、照射した放射線の吸収線量の値がある程度目安が付く場合には、着色表36Bを用い、着色表36Aと同様に、着色表36Bの色彩群と照射フィルムFの色彩とを目視等により対比することで試料温度を求める。
また、照射温度や吸収線量が全く特定できない場合には、放射線が照射された照射フィルムFの色彩と、着色表36A、着色表36Bの全ての色彩群とを対比し、略同一となる色彩が施された着色表36A,36Bの部分における吸収線量及び試料温度を選び出すことで、吸収線量及び試料温度を求めることができる。
【0050】
従って、このような第2実施例によれば、特別な放射線測定装置等を用いなくても、放射線の吸収線量及び試料温度を簡単且つ広範囲で測定できるという効果を得る。
【0051】
また、当該照射フィルムFに放射線を照射したときに、放射線の吸収線量及び/又は試料温度が部分的に異なる場合には、前述したETFEの着色現象から、照射フィルムFに施された色彩に濃淡が生じ、これを目視等することで、前記吸収線量及び/又は試料温度の分布を容易に確認することができる。このときに、前記着色表36を用いると、当該分布毎における吸収線量及び/又は試料温度の値を求めることも可能となる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体の特性を利用することにより、放射線の吸収線量及び試料温度やそれらの分布を簡単且つ広範囲で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体における吸収線量と吸光度変化との関係を示すグラフ。
【図2】図1に対して、吸光度変化を測定する際の光の波長を変えた場合における図1と同様のグラフ。
【図3】エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体における試料温度と吸光度変化との関係を示すグラフ。
【図4】図3に対して、吸光度変化を測定する際の光の波長を変えた場合における図3と同様のグラフ。
【図5】第1実施例に係る放射線測定装置のシステム構成図。
【図6】前記放射線測定装置における最大測定可能線量を前記波長毎及び試料温度毎に示した図表。
【図7】第1実施例の変形例に係る放射線測定装置のシステム構成図。
【図8】第2実施例に係る着色表を説明するための概念図。
【符号の説明】
10 放射線測定装置
31 吸光度変化算出手段
32 記憶手段
33 線量・温度決定手段
36 着色表
36A 着色表
36B 着色表
F 照射フィルム(照射材)
F1 照射フィルム(照射材)
F2 照射フィルム(照射材)

Claims (6)

  1. 測定対象となる放射線が照射されたときの吸光度変化を測定することで、前記放射線の吸収線量及び試料温度が測定可能となる放射線測定用の照射材であって、
    前記放射線が照射される部分をエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体により形成したことを特徴とする放射線測定用の照射材。
  2. 請求項1記載の照射材を用いて放射線の吸収線量及び試料温度を求める放射線測定装置において、
    所定の波長の光を前記照射材に透過させることにより当該波長の光に対する吸光度変化を求める吸光度変化算出手段と、前記照射材の特性に基づく所定のデータを記憶する記憶手段と、前記吸光度変化から前記記憶手段内のデータに基づき前記吸収線量及び試料温度を決定する線量・温度決定手段とを備え、
    前記線量・温度決定手段は、測定対象の放射線が照射された照射材に対し、少なくとも二種類の波長の光を透過させたときの各吸光度変化から、吸収線量及び試料温度を決定することを特徴とする放射線測定装置。
  3. 請求項1記載の照射材を用いた放射線測定方法であって、
    前記照射材に測定対象の放射線を照射した後、当該照射材に少なくとも二種類の波長の光を透過させることで、各波長に対する照射材の吸光度変化を測定し、当該各波長及び各吸光度変化から、前記照射材の特性に基づくデータを用いて前記放射線の吸収線量及び試料温度を決定することを特徴とする放射線測定方法。
  4. 前記照射材に照射する前記光について、放射線の測定が可能となる光の波長範囲及び吸収線量範囲が存在し、
    予想される吸収線量が、前記吸収線量範囲内の上限側に位置する場合には、前記照射材に照射する前記光の波長を選択する際に前記波長範囲の上限側の波長を選択する一方、予想される吸収線量が、前記吸収線量範囲内の下限側に位置する場合には、前記照射材に照射する前記光の波長を選択する際に前記波長範囲の下限側の波長を選択することを特徴とする請求項3記載の放射線測定方法。
  5. 請求項1記載の照射材を用いた放射線測定方法であって、
    前記照射材に測定対象の放射線を照射したときに、当該照射材の色彩と、前記吸収線量及び/又は試料温度毎に塗り分けられた着色表の色彩とを対比することにより、前記放射線の吸収線量及び/又は試料温度を求めることを特徴とする放射線測定方法。
  6. 請求項1記載の照射材を用いた放射線測定方法であって、
    前記照射材に測定対象の放射線を照射したときに、当該照射材に施された色彩の濃淡で、前記放射線の吸収線量及び/又は試料温度の分布を求めることを特徴とする放射線測定方法。
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