JP2007003463A - Cmr(共通モード雑音排除)概念による色素線量計の感度改善 - Google Patents

Cmr(共通モード雑音排除)概念による色素線量計の感度改善 Download PDF

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Abstract

【課題】
ラジオクロミック線量計は、軽元素組成あるいは組織等価型として優れた特性がある反面、軽元素組成ゆえに低感度という本質的な問題があり、医療を始めとする様々な分野から感度の飛躍的向上策が求められている。
【解決手段】
IVRではクロミックフィルムに記録されたイメージをスキャナで走査し、パーソナルコンピュータで放射線に有感な色成分と鈍感な色成分の組に光学CMR法を適用し、放射線には関係の薄い共通雑音を低減させ、線量分布を高感度・高精度で測定・取得する。
【選択図】図7

Description

本発明は、色素線量計の放射線吸収線量の低ノイズ測定法に係わり、特に2次元医療被曝モニターであるラジオクロミックフィルムの高感度化・高精度化技術に関する。本発明は、ラジオクロミックフィルムに記録されたイメージのうちの放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用し、CMR概念に類似の方法を応用して、吸収線量並びにその量の位置分布を低線量領域まで高い感度で精度よく測定する方法及び装置に関する。
医療現場などの放射線を取り扱う分野では、人体などへの放射線の被曝線量を測定評価することが必要となっている。様々なエネルギーの放射線の混在場で人体の被曝線量を測定評価するには、組織等価型の線量計(dosimeter)が必要とされる。人体組織等価であるためには線量計は生体軟組織とX線吸収的に等価な軽元素の組成でなければならない。組織等価型でない場合には、エネルギーによって感度に差が生じてくるため、その補正をする必要が出てくる。例えば、現在、線量測定サービス会社が提供している個人積算型線量計としては銀塩フィルム線量計(フィルムバッジ)、蛍光ガラス線量計((株)千代田テクノル)と、アルミナOSL線量計(長瀬ランダウア(株))などがあるが、それらはともに組織等価型ではない。そこで、厚さの異なる金属板などをフィルタとして用いてエネルギー補正を行っている。しかし、医療現場で患者の被曝線量を計測する場合、これらのフィルタが画像に写り込んで診断の妨げになるために組織等価型でない線量計を使用することはできない。
これに対して、ラジオクロミックフィルムはH、C、N、Oという軽元素で構成されており、組織等価型であることが大きな特長になっている。市販では、International Specialty Products (ISP)社製のGAFCHROMICTM (以下、ガフクロミックと記す)フィルムを始めとするラジオクロミックフィルムは、2次元型積算線量計として以下に示す数多くの特長をもつ。低原子番号物質により構成される組織等価型である、位置分解能が良い、XR型フィルムなど数例の例外を除いてX線のエネルギーに対し平坦な応答性を持つ、吸収線量に対して広いダイナミックレンジを持つ、線量率に依存しない、画像を長期間保持できるため繰り返し測定ができる、薄く可撓性があるなどである。
しかし、このフィルムにはいくつかの欠点がある。すなわち、低感度、応答のばらつき/不均一性、照射後の経時的光学濃度上昇、高価格であるなどである。このうち、最初の2点は、主にフィルムが低原子番号物質から構成されていることから生じるもので、軽元素組成の線量計ではX線やγ線の吸収係数が小さいために低感度という弱点を本質的に背負っていると言える。近年医療分野で施行例がますます増えているIVR (interventional radiology、X線透視や各種造影検査、CT、MRI、超音波などの画像診断装置を用いて体内の様子を確認しながら、体内に挿入したカテーテルやガイドワイヤー、穿刺針などを操作して行う低侵襲性治療)では、特に施術中の患者の被曝線量計測において組成的に最適なラジオクロミックフィルムに期待が高まり、高感度化が強く求められている。
フィルムはもともとは高線量用線量計、高解像度ラジオグラフィ用のイメージング材料であった。しかし、最近、工業分野だけでなく、上記の数多くの特徴のゆえに医学分野への応用が普及してきたが、その低感度という欠点が深刻に受け止められるようになって来た。例えば、IVR治療では、約10mGy〜数Gy(グレイ、線量単位)レンジの患者皮膚入射線量の測定が重要であるが、現在のフィルムの感度では全く不十分で、同類の術式への応用への支障となっている。
感度を向上させるための試みは従来いくつかなされてきた。すなわち、1)フィルムを5枚重ねて使用し(4.5倍の向上)、2)イットリウム・タンタレートを含むUV増感紙でフィルムを包む(50%改善)、3)感応層に臭素、セシウム、バリウムを混入した新規格のフィルム(ガフクロミックXRフィルム)の製造などである。しかし、このうち、1)の方法はフィルムの可撓性と費用に難点があり、2)と3)の方法は、高原子番号物質が入ることになるため、フィルムの最大の長所である組織等価性が失われてしまう。
診断領域の低エネルギーX線レンジでは光子と物質との相互作用のうち光電効果が支配的に作用し、その発生確率は原子番号の5乗に比例して増加する。そのため、重元素の添加により感度は大幅に向上する。そこで、ラジオクロミックフィルムの低感度問題の解決策としてCsやBrなどの重元素の添加が試みられているが、この解決方法はフィルムの組織等価性という最大の長所を犠牲にするものである。例えば、感度向上を目指して少量の重元素を添加したものとして、ガフクロミック XR type Rがあるが、そのエネルギー依存性は図1に示す通りであり、XR type R フィルムでは、確かに感度は上がっているが、添加しないタイプのMD-55-2フィルムのフラットなレスポンスと対照的に大きなピークを描いており、人体組織への影響をより正確にモニターする目的にはあまり適切とは言い難いものであることがわかる。
最近、LiとClを添加した新型ガフクロミック EBTフィルムが開発された。感度を約10mGyまで向上させてはいるが、基本的に上記XR type Rと同じ発想によるものであるため、組織等価型ではなく、組織等価型に近似するもの(near tissue-equivalent、ISP product brochureより)でしかなく、また依然として感応層(active layer)の厚さゆらぎや不均一性の問題はそのまま残されている。
したがって、組織等価型という特性はあくまで保持しながら感度を飛躍的に向上させることが、医療を始めとする様々な線量計測の場で最も求められているが、現在、フィルムの感度を改善する試みは行き詰まっている。最近ではラジオクロミックフィルムを見限る論文も現れている。
現在、医療現場でのIVR治療においては患者の吸収線量測定が急務であり、ラジオクロミックフィルムにより術中の累積的な吸収線量を2次元的に記録することが患者の被曝低減につながる。ラジオクロミックフィルムの感度を向上させる方法としては、フィルムの素材を改良する方法とフィルムの読み取り方を改良する方法がある。前者は、原子番号の5乗に感度が比例するため素材に高い原子番号の元素を用いれば感度は向上する。しかし、医療用においては、人体に吸収されるX線量を測定することが目的であるため、低原子番号の物質で構成されていることがやはり理想とされる。よって、素材の改良には限界がある。
後者に関しては、従来のラジオクロミックフィルムの読み取り方では、フィルムの製品むらやフィルムの感度がフィルムの方向により揺らぐなどによりノイズが多く入り、0.1Gyぐらいの変動誤差があり、医療現場での低線量測定には向いていなかった。また、フィルムを読み取るカラースキャナから出力されるRGB(赤、緑、青)の3出力のうち1出力だけ(多くの場合赤色)を利用した報告はいくつかある〔非特許文献1= S. Devic et al., Med. Phys., 31: 2392 (2004); 非特許文献2= A. Sh Aydarous et al., Phys. Med. Biol., 46: 1379 (2001)〕が、2成分色を組み合わせて利用する方法は今までに1報も報告されていない。
S. Devic et al., Med. Phys., 31: 2392 (2004) A. Sh Aydarous et al., Phys. Med. Biol., 46: 1379 (2001)
線量計
X線などの放射線を利用した医療技術並びにその関連技術の進歩に伴い、患者や医療従事者の受ける放射線被曝の測定・管理が強く求められるようになってきている。そして、こうした様々なエネルギーの放射線とその散乱線が混在する場での線量計(dosimeter)には、組織等価型であることが要求される。特に、IVRを含めての医療分野ではそれが重要である。ラジオクロミックフィルムは、低原子番号物質により構成され、組織等価型で、吸収線量に対して広いダイナミックレンジを持つため、2次元型医療被曝モニターとして有望な候補である。
しかし、ラジオクロミックフィルムは、光子エネルギーに対してフラットな応答性をもつタイプの中で最高感度であるガフクロミック HS-14でさえも測定下限値が公称0.5Gyとされ、線量計としては感度が全く不十分であるという問題がある。
したがって、組織等価型という特性をあくまで保持しながら、感度を飛躍的に向上させることが、医療を始めとする様々な線量計測の場で求められている本質的な解決策である。
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究を進め、放射線照射によるラジオクロミックフィルムの光学的特性を調べ、低感度となる原因を検討した結果、高感度測定法の開発に成功した。
本発明は、CMR(common mode rejection、共通モード雑音排除)と呼ばれる差動増幅器の共通モード雑音排除動作の概念に類似の、放射線に有感な波長帯の光量と鈍感な波長帯の光量の比または差を計測の尺度とする「光学的共通モード雑音排除法」(以下「光学CMR法」と呼ぶ)を開発し利用することで、ノイズをキャンセルし、X線の低線量領域の測定を可能とした。特に、本発明は、放射線吸収線量にほぼ比例して色の濃度が記録されているイメージ(例えば、ラジオクロミックフィルムに記録されたイメージ)のうちの放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用し、光学CMR法を応用して、放射線依存事象以外のフィルムの不均一性による揺らぎなどの両者共通の影響を除いて、低レベルの被曝線量(吸収線量)並びにその量の位置分布を高い感度で精度よく測定する方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、光学CMR法を利用することで、ノイズをキャンセルし、放射線の比較的低レベルの線量測定(dosimetry)をも可能とするもので、例えば、ラジオクロミックフィルムに記録されたイメージを読み取り、読み取ったデータの赤色(Red; R)の波長帯の成分と緑色(Green; G)波長帯の成分を利用し、該RとGとの各成分間でその透明度または着色濃度(あるいは出力の大きさまたは光量)に関して比または差を求めて、変動雑音成分(または色濃度変動雑音成分あるいは主な放射線効果とは無関係の変動分)を低減(あるいは相殺)せしめてラジオクロミックフィルムの高感度化・高精度化を図ることにある。
本発明は、次なる態様を提供している。
〔1〕照射放射線に感応して色濃度が変化する物質の色濃度の光学計測において、物質の吸光スペクトルのうち色濃度変化に寄与する主な吸光波長を含む波長帯の光量と、主な吸光波長を含まない波長帯の光量の比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる色濃度変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法。
〔2〕ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をRGBカラースキャナまたはデンシトメーターまたはカメラで読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)の大きさと放射線には鈍感なG出力(緑色成分)の大きさの比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法。
〔3〕ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をカラースキャナまたはデンシトメーターまたはカメラで読み取る場合に、放射線に有感な出力(例えばR出力(赤色成分))だけでなく放射線には鈍感な出力(例えばG出力(緑色成分))も利用して、その出力間で除算または減算を実行することにより主な放射線効果とは無関係な変動分を相殺または低減して、高感度で線量を測定するとともに、鮮明な線量マップを取得する方法。
〔4〕放射線の吸収線量に比例して色の濃度が記録されているイメージ(例えば、ラジオクロミックフィルムに記録されたイメージ)のうちの放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用し、光学CMR法を応用して、低レベルの吸収線量並びにその量の位置分布を高い感度で精度よく測定する計測装置。
〔5〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の方法を実行する手段または装置を備えていることを特徴とする上記〔4〕に記載の計測装置。
〔6〕ラジオクロミックフィルム上のフィルムイメージを読み込むための読み取り器と、放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用して光学CMR法を応用するソフトウエアを備えたコンピューターを備えているあるいは該コンピューターへ該読み取ったイメージデータを該演算の全部または一部または逆数生成・符号反転などの該演算の準備演算を実行のうえ転送する装置並びに該後処理ソフトウエアを備えていることを特徴とする上記〔4〕または〔5〕に記載の計測装置。
〔7〕(a)照射放射線に感応して色濃度が変化する物質の色濃度の光学計測において、物質の吸光スペクトルのうち色濃度変化に寄与する主な吸光波長を含む波長帯の光量と、主な吸光波長を含まない波長帯の光量の比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる色濃度変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法を実行するソフトウエア、(b)読み取り器がRGBカラースキャナまたはデンシトメーターまたはデジタルカメラであり、ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像を読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)の大きさと放射線には鈍感なG出力(緑色成分)の大きさの比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法を実行するソフトウエア、あるいは(c)ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をカラースキャナまたはデンシトメーターまたはデジタルカメラで読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)だけでなく放射線には鈍感なG出力(緑色成分)も利用して、その出力間で除算または減算を実行することにより主な放射線効果とは無関係な変動分を相殺または低減して、高感度で線量を測定するとともに、鮮明な線量マップを取得する方法を実行するソフトウエアであることを特徴とする上記〔4〕〜〔6〕のいずれか一に記載の計測装置。
組織等価型という特性はあくまで保持しながら感度を飛躍的に向上させることが、医療を始めとする様々な線量計測の場で最も求められている解決策で、本発明の光学CMR法によるラジオクロミックフィルムの感度改善は、まさにその方法である。本発明は、信号検出方法及び信号処理方法に工夫を加えることによって、ラジオクロミックフィルムの高感度化を図ったものである。例えば、本発明によりガフクロミックHS-14フィルム(仕様応答範囲: 0.5-40Gy)では25倍、ガフクロミックMD-55-2(応答範囲:2-100Gy)では40倍程度改善でき、検出下限がそれぞれ20mGy、50mGyに達するという結果が得られている。
ラジオクロミックフィルムは、生産過程でフィルムの感光剤の均一性が求められるためコストがかかり、半切りと呼ばれるフィルムの大きさで1枚約6000円と高価なものとなっている。しかし、本発明を用いてフィルムの読み取りをする場合、フィルムの感応剤がさほど均一でなくとも精度よく吸収線量が算出できるため、間接的にラジオクロミックフィルムのコストダウンにもつながる可能性を有する技術である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/または改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
ラジオクロミックフィルムは、照射された放射線の吸収線量をフィルムの透明度の変化あるいは着色度の変化から求めるものである。医療現場でのIVRと呼ばれるX線などの放射線、NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)による透視下でカテーテルを使って血管造影、血管拡張術や血管塞栓術など低侵襲的な治療を行う場合における線量モニタリングであり、患者の術中の累積的な吸収線量を2次元的に記録することができる。フィルムは放射線への応答特性が人体軟組織と等しくなるように、軽元素材料を用いることを特徴としているが、軽元素組成の線量計ではX線・γ線の吸収係数が小さいために低感度という本質的な弱点を背負っている。
従来のラジオクロミックフィルムスキャナやリーダーやデンシトメーターなどでは、放射線照射によりフィルムの吸光度が変化する波長帯(主に赤色波長帯)または特定の赤色波長でのみ、その透明度を測定し、X線の吸収線量に換算していた。これでは、製造条件などによるフィルムの厚さや感応材のばらつきや色むらなどの揺らぎによりノイズが多く入り、0.1Gy程度の誤差は避けられず、感度が十分には上がらず、医療現場での低線量測定には向いていないという問題がある。
本発明は、CMRと呼ばれる差動増幅器の共通モード雑音排除動作の概念に類似の光学的共通モード雑音排除法である光学CMR法を開発し利用することで、ノイズをキャンセルし、X線被曝などの低線量測定を可能とするものである。つまり、ラジオクロミックフィルムをRGBカラースキャナまたはデンシトメーターまたはデジタルカメラで読み込み、赤色(Red; R)の波長帯とX線には鈍感な緑色(Green; G)波長帯を利用し、Rバンドの透明度/Gバンドの透明度(あるいは着色濃度の比)あるいは両者の差から、吸収線量を求めることを特徴としている。本明細書で、放射線としては、γ線、X線、放射光、電子、陽子、イオンビーム、アルファ粒子、中性子などが挙げられる。該放射線のうちには、紫外線などのエネルギー線が含まれていてもよい。
本発明の技術は、フィルムの欠点である巨視的及び微視的不均一性、すなわちフィルムの放射線感応層や保護層の厚さ揺らぎなどについての考察を基礎としており、それらの不均一性こそが着色濃度計で測定される光(シグナル、S)を妨害するノイズ(N)の主因であり、フィルムの感度限界の悪化要因であるとの認識に基づくものである。感度改善の最も重要なポイントは、単にシグナルの量を増やすことではなく、S/N比を上げることにあることを見出すことに成功した。すなわち、ラジオクロミックフィルムの検出下限線量値は1組の色成分、例えばRGBカラースキャナから得られる3原色成分のうちの赤色成分(R)と緑色成分(G)の1組を用いることにより、大幅に改善できる。RとGの両光は光路がほとんど共通であるため、波長依存事象以外のフィルム不均一性揺らぎなどの共通影響は共に同程度受ける。かくして、電子工学におけるいわゆるCMR概念に類似する数学操作、すなわち、R、G両光の光量の比または差をとる数学操作を実施することで、感度改善を達成できる。
さて、フィルム線量計の測定器としては、RGBカラースキャナが広く用いられており、例えば、M. J. Butson et al., Mat. Sci. Eng., R41, 61 (1003); S. Devic et al., Med. Phys., 31: 2392 (2004); A. Sh Aydarous et al., Phys. Med. Biol., 46: 1379 (2001)などで使用されているような、当該分野で知られた各種カラースキャナを使用できる。解析に用いることのできるRGBフィルタ関数の代表例を図2に示す。その特性は、CCDフォトシステム用カラーフィルタの一つと同様なもので、インターネットのウェブサイト、例えば、http://www5f.biglobe.ne.jp/~kztanaka/ccdfilter.htmlから取り寄せることができるものである。解析の結果、ガフクロミックHS-14またはMD-55-2フィルムの場合、幸いなことに、放射線の照射により生じる675nm(主)と617nm(副)の2つの吸収ピークは共に赤色領域にあり(図3参照)、両方ともカラースキャナからのR出力に含まれる。RとGの両光は光路が共通で、波長依存事象以外の不均一性揺らぎなどの影響は共に同程度受けている。R成分とG成分は100nm程度の波長差で近接隣接しているが、照射放射線への応答は全く異なっている。R成分が放射線照射に高い感応性を示すのに対し、G成分は吸収ピークが緑色波長域にはないためほとんど放射線に感じない。このことは、両光を用いて光学CMR法を実行することにより、両光に共通しない放射線感応事象を弁別的に取得できることを示唆している。
そこで、分光光度計を用いてラジオクロミックフィルムの光学的特性を調べ、吸収スペクトルを基に、フィルム線量計測への光学CMR法の有効性と適用性を、シミュレーション実験をして検討したところ、その有効性をここに確認することに成功した。データ処理に必要なRGB成分は、スペクトルにRGBフィルタ関数を乗ずることにより得られる。光学CMR法を実行する一つの方法は、R、G両光の比をとることである。この方法では、分子と分母の両光に共通する因子は自動的に除去される。そのほか、光学的共通モード雑音排除は、放射線に有感な波長帯の光量と鈍感な波長帯の光量の差を求めることによっても一定の範囲内では達成することが可能であり、特に両者の大きさを予め調整し得る場合にはその結果は良いものとなる。すなわち比の計算(除算)は場合により差の計算(減算)でもって一定程度代用はでき、よって除算による光学的共通モード雑音排除操作と減算による同操作は共に光学CMR法に含まれる。
試料として適切なサイズのラジオクロミックフィルムを使い、そしてX線装置により、例えば、100kVpのX線で照射を行い、解析を行う。線量の測定は、X線装置に組み込まれた電離箱などを使用して確認できる。一方、ラジオクロミックフィルムに付与されたエネルギー量に係わる675nm(主)と617nm(副)の2つの吸収ピークを含む赤色成分(R)と、緑色成分(G)について、その透過度(%T)を、分光光度計(spectrophotometer)、デンシトメーター、カラースキャナ、フィルムスキャナなどで測定する。
一般的には、ラジオクロミックフィルムは、広い帯域の線量とエネルギーをカバーするようなものであり、すべてのタイプの放射線などについてそれを測定し、マッピングするために使用できるものであり、好ましくは組織等価型のものである。基本的には、感応層 (active layer)に存在する反応性物質が放射線などに応答して化学反応を生起させ、エネルギーの吸収量に比例してその色濃度を変えるような材料である。代表的なラジオクロミックフィルムは、米国特許明細書第4,734,355号(US Patent No. 4,734,355, A)、同第4,970,137号(US Patent No. 4,970,137, A)、同第5,420,000号(US Patent No. 5,420,000, A)、同第5,672,465号(US Patent No. 5,672,465, A)、国際公開第03/021276号パンフレット(WO 03/021276, A1(2003))などに開示されているし、International Specialty Products (ISP)社などから入手でき、例えば、ガフクロミックフィルムなどとして販売されている。
透過度(%T)と光学濃度(OD; optical density)は以下の関係にある。
Figure 2007003463
バックグラウンドを差し引いたnet ODは、次の式で表される。
Figure 2007003463
(T0: 未照射フィルムの透過度)
ここで、下付き0は、未照射バックグラウンドに関する量を表している。
赤色成分と緑色成分の透過度をそれぞれRd(%)とGr(%)とすると、光学CMR法では、TはRd/Grで置き換えられるので、換算OD (ROD)は、次式で示される。
Figure 2007003463
かくして正味のROD(net reduced optical density; net ROD)は、次で求められる。
Figure 2007003463
かくして、本発明に従うと、ガフクロミックフィルムの場合、この光学CMR法により感度限界は大きく改善され、検出下限線量はHS-14で約20mGy(仕様応答範囲:0.5〜40Gy)、MD-55-2で50mGy(仕様応答範囲:2〜100Gy)の低線量にまで達したとの結果を得ることができる。よって、本発明で光学CMR法に基礎をおく放射線線量測定方法が提供される。該方法は、ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をRGBカラースキャナなどで読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)の大きさと放射線には鈍感なG出力(緑色成分)の大きさの比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる変動雑音成分を低減することを特徴とするものである。別の態様では、該方法は、照射放射線に感応して色濃度が変化する物質の色濃度の光学計測において、物質の吸光スペクトルのうち色濃度変化に寄与する主な吸光波長を含む波長帯の光量と、主な吸光波長を含まない波長帯の光量の比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる色濃度変動雑音成分を低減することを特徴とするものである。さらなる態様では、該方法は、ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をカラースキャナで読み取り、放射線に有感なR出力(赤色成分)だけでなく放射線には鈍感なG出力(緑色成分)も利用して、その出力間で除算または減算を実行することにより主な放射線効果とは無関係な変動分を相殺または低減して、高感度で線量を測定するとともに、鮮明な線量マップを取得することを特徴とするものなどである。ラジオクロミックフィルムは、生産過程でフィルムの感光剤の均一性が求められるためコストがかかり、半切と呼ばれるフィルムの大きさで1枚約6000円と高価なものとなっている。しかし、本発明を用いてフィルムの読み取りをする場合、フィルムの感光剤がさほど均一でなくとも精度よく吸収線量が算出できるため、間接的にラジオクロミックフィルムのコストダウンにもつながる可能性を有する技術である。
本明細書中、放射線画像とは、吸収した放射線などのエネルギーの量(放射線吸収線量)にほぼ比例してラジオクロミックフィルムなどの放射線などに感応して色濃度を変化せしめる物質に記録されたもので、通常、画像イメージとして保持されたものをいう。ここで「放射線に有感」とは、放射線などの吸収エネルギーに感応することあるいは反応することを意味してよい。また、「放射線に鈍感」とは、感度が物質の放射線損傷などの一般的放射線効果のほかには顕著な放射線影響を受けることが少ないことを意味してよい。さらに、ここで「色濃度」とは特定の光の波長あるいは光の波長帯域での光学濃度を意味したものであってよく、色の濃い薄い及びその程度を意味するものであってよい。また、光学CMR法による計測の「高精度化」は低線量域に限るものではなく、高線量域の計測でも有効に機能することを意味してよい。また、この方法は薄いフィルム状に限らず、板状あるいは透明容器入り液状などの色素線量計にも通用することを意味してよい。
本発明にしたがえば、ラジオクロミックフィルム上のフィルムイメージを読み込むための読み取り器と、放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用して光学CMR法を応用するソフトウエアを備えたコンピューターを備えているあるいは該コンピューターへ該読み取ったイメージデータを該演算の全部または一部または逆数生成・符号反転などの該演算の準備演算を実行のうえ転送する装置並びに該後処理ソフトウエアを備えている計測装置が提供できる。
該読み取り器としては、分光光度計、デンシトメーター、フラットベッドスキャナ、ドラムスキャナ、フィルムスキャナなどのスキャナ、イメージリーダー、デジタルカメラ、ビデオカメラなどが挙げられ、例えば、RGBカラースキャナを広く用いることができる。当該読み取り器としては、例えば、M. J. Butson et al., Mat. Sci. Eng., R41, 61 (1003); S. Devic et al., Med. Phys., 31: 2392 (2004); A. Sh Aydarous et al., Phys. Med. Biol., 46: 1379 (2001)などで使用されているようなカラースキャナを使用できる。さらに、読み取り器は、カラーフィルタを備えているもの、帯域通過フィルタ(RGBフィルタ)関数処理ソフトウエアを備えたものなどが好ましく使用できる。当該読み取り器の受光部は、CCD(charge coupled device)素子あるいはCCDイメージセンサ(charge coupled device image sensor)を備えたものであることもできる。該スキャナあるいはデンシトメーターは、Vidar, Lumisys, Array, Molecular Dynamics, Photoelectron Corporation, Howtek, Radlink, Epson, Canon, Konica, Nikon, Microtek, Agfa, Hewlett-Packardなどの製造業者あるいは販売業者から入手できる。当該装置及びそれを駆動するためのソフトウエア、さらに画像処理ソフトウエア、データ加工ソフトウエアの素材などは、例えば、Photoelectron Corporation CCD100 Microdensitometer, Radlink LaserPro 16TM, Nuclear Associates Radiochromic Densitometer Model 37-443, フラットベッド型カラースキャナなどとともに、当該社から入手できるし、上記で挙げられた製造業者あるいは販売業者からも入手できる。
一般的には、スキャナ類は、受光部とともに、光源を備えている。光源は、光を発生するエレメント(発光エレメント)を有しており、該発光エレメントの放射する光の波長は好ましくは主な吸収ピークをすべて含む狭い波長領域とそれに近く隣接する長または短波長領域のもの、あるいは両者ををカバーするものである。光源部は、受光対象フィルム部分に光が均一にあたるように、光拡散エレメントを備えていることができるし、一般的にはそれを備えている。該発光エレメントは、当該分野で知られたものを適宜選択して使用でき、それらのうちには発光ダイオード(LED)が含まれていてよい。むろん、主な吸光波長帯と隣接波長帯に特化した2フィルタまたは2光源と特化した受光部を備える2色スキャナまたは2色デンシトメーターと専用ソフトウエアを備えるシステムは最も好ましいものである。
本発明の装置は、上記した光学CMR法を実行する処理ソフトウエアを備えていることを特徴としているものであることができる。例えば、該装置は、ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をRGBスキャナで読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)の大きさと放射線には鈍感なG出力(緑色成分)の大きさの比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法を実行するソフトウエアを備えたもの、照射放射線に感応して色濃度が変化する物質の色濃度の光学計測において、物質の吸光スペクトルのうち色濃度変化に寄与する主な吸光波長を含む波長帯の光量と、主な吸光波長を含まない波長帯の光量の比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる色濃度変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法を実行するソフトウエアを備えたもの、ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をRGBスキャナで読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)だけでなく放射線には鈍感なG出力(緑色成分)も利用して、その出力間で除算または減算を実行することにより主な放射線効果とは無関係な変動分を相殺または低減して、高感度で線量を測定するとともに、鮮明な線量マップを取得する方法を実行するソフトウエアを備えたものなどである。具体的には、ラジオクロミックフィルムから読み取ったR特定波長帯の透過度とG特定波長帯の透過度を計測し、そのデータが演算ソフトウエアを備えるPC(パソコン、Personal Computer)または演算チップに転送され、容易にX線の吸収線量を結果として出力することができる。また、将来のラジオクロミックフィルムの利用法として、医療現場での患者の吸収線量測定とマッピング(mapping)、建設現場での非破壊検査、弱い線源による中性子ラジオグラフィ、中性子回折測定の研究など幅広い分野で使用することを可能とする。
該コンピューターは、上記光学CMR法処理を行うプログラムソフトウエアとともに、通常のイメージプロッセシング技術を使用して、吸収した線量並びに分布に応じたマップ(map)あるいはイメージ図を作成することが出来るようになっているものであることができる。
取得したイメージデータは、光学濃度の経時的変動のほか、様々な因子に起因するエラーを有しているので、それを較正する必要がある。通常、イメージデータはピクセルと呼ばれる画素を単位として扱われるが、それぞれのピクセルにつき暗色イメージを獲得するのに伴うエラー(実際の暗色と記録された暗色の間の差)がある。また、受光部の応答性、温度、受光時間、対象からの角度などに伴う歪みを含めたエラーもある。さらに、光源が一様でないことに伴うエラー、レンズに起因するエラーなどもある。さらに、読み取り器の機械的動作の不均一性などに伴うエラー、チリなどに起因するエラーもそれを除く必要がある。こうした較正処理は、当該分野で知られた技術、例えば、処理ソフトウエアを使用するなどして行うことが可能であり、上記読み取り器に関連して挙げられた製造業者あるいは販売業者などからも提供されている。
本発明計測装置は、特には、ラジオクロミックフィルムに記録されたイメージのうちの放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用し、光学CMR法を応用して、低レベルまでの吸収線量並びにその量の位置分布を高い感度で精度よく測定するものである限り、いかなるものであってもよい。より具体的な態様では、本発明の装置は、光学CMR法を利用することで、ノイズをキャンセルし、放射線の比較的低レベルまでの線量測定を可能とするもので、例えば、ラジオクロミックフィルムに記録された2次元イメージを読み取り、読み取ったデータの赤色波長帯の成分(R)と緑色波長帯の成分(G)を利用し、該RとGとの各成分間でその透明度または着色濃度(あるいは出力の大きさまたは光量)に関して比または差を求めて、変動雑音成分(または色濃度変動雑音成分あるいは主な放射線効果とは無関係の物理的変動分)を低減(あるいは相殺)せしめてラジオクロミックフィルムの高感度化・高精度化を図ることのできるものである。
代表的なラジオクロミックフィルムを利用した放射線線量測定技術並びにそのための装置は、米国特許明細書第5,637,876号(US Patent No. 5,637,876, A)、同第5,767,520号(US Patent No. 5,767,520, A)、同第6,268,602号(US Patent No. 6,268,602, B1)、同第6,285,031号(US Patent No. 6,285,031, B1)などに開示されており、そこに開示の手法並びに構成装置の一部あるいは全部を含み、上記した本発明に特有の手法及び処理プログラムなどのソフトウエアを備えたもの(線量測定及び測定装置)は、本件添付の請求の範囲の範囲内のものであると考えてよい(該特許文献に開示の内容は、ここで参照することにより、それらは本明細書の一部としてここに含められる)。
本発明のラジオクロミックフィルムの感度改善技術では、スキャナまたはデンシトメーターなどの光源、レンズ、カラーフィルタ、反射板などの適用法を検討することにより、さらなる感度限度の改善を施すこともできる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、または実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
〔実験方法〕
ガフクロミック HS-14及びMD-55-2フィルムを1cm × 4cm 大にカットして試料とした。X線装置はMBR-1520R(Hitachi Medico Co.)を使用し、100kVp(1.0 mm厚 Alフィルタ付き)、5mAのX線で、HS-14フィルムに8.1mGy 〜1.6Gy の、MD-55-2フィルムに7.2mGy 〜 720mGyのレンジで線量を変えて照射を行った。線量の測定は、X線装置に組み込まれた電離箱で行った。照射後24又は25.5時間後に分光光度計DU-640 (Beckman Coulter, Inc.)を用いて波長領域450nm 〜 1100nmの透過度(%T; percent transmission)を測定した。この分光光度計から出力される透過度のデータをパソコンに送り、パソコンで、数式(4)により、net RODを計算して吸収線量に対するグラフ(図4〜6参照)を表示することにより実験を行った。
〔結果と考察〕
図2に解析に用いたRGBフィルタ関数を示す。この特性はCCD フォトシステム用カラーフィルタの一つである。図3にHS-14フィルムの吸収スペクトルにフィルタ関数を乗じて得たR成分及びG成分の例を示す。縦軸は透過度T(%)である。フィルムの感応層の不均一性が測定誤差の主要な原因であり、結果的に感度の低下を招いていると考えられる。透過スペクトルを緑色成分と赤色成分とに分け、X線の照射により生じる675nm(主)と617nm(副)の2つの吸収ピークが赤色領域にあり、緑色成分は照射には比較的感じないことを利用して、赤色成分と緑色成分の比を用いることで、厚さゆらぎなどによるばらつきを軽減できるのではないかと考えて、次の方法を開発した。
すなわち、透過度(T (%))と光学濃度(OD; optical density)は数式(1)〜(4)に示した関係にある。
HS-14フィルムの8.1mGy〜1.6Gy照射の、24時間後の線量応答、すなわち、net RODと吸収線量の関係を、図4に示す。図4を広げた0〜500mGy範囲の図を、図5に示す。
図4及び図5とも、応答は良好な直線関係であり、信頼性確認のため測定箇所を変えて測定して得た2組の測定点(黒丸と中空四角形)は、傾きもよく合致した。最低線量のあたりで16.2mGyの点(黒丸)などのばらつきが見られるが、X線装置の線量保証範囲が0.1〜860Gyであるので、100mGyより下の線量についてはX線装置側のばらつきが含まれると考えられる。この結果により、HS-14フィルムはおおよそ20mGyの低線量までは線量計として使用可能であることが明らかになった。
MD-55-2フィルムの7.2mGy〜720mGyの照射の、25.5時間後の線量応答を、図6に示す。40mGyより下の線量でのばらつきの原因はHS-14フィルムの場合ほど明らかでないものの、MD-55-2フィルムの放射線感応層が2倍構造であることに由来する多層膜干渉(縞の発生など)と偏光性(感度がフィルムの方向に依存する)が関与している可能性がある。測定点のばらつきから判断して、検出下限値はおおよそ50mGyであると言える。
本法により、HS-14で20mGy、MD-55-2で50mGyまで検出下限を飛躍的に向上させることができ、公称値(それぞれ0.5Gy, 2Gy)より25、40倍の高感度測定が可能であった。
2次元イメージングのラジオクロミックフィルム、例えば、ガフクロミックフィルムの場合、検出限度はこの光学CMR法により大幅に改善され、検出下限値がHS-14では20mGy、MD-55-2では50mGyに達した。
以上により、光学CMR法はフィルム線量計による線量計測に有効で、かつ強力なツールであることがわかった。
医療現場などの放射線を取り扱う分野で、組織等価型で大面積の2次元線量モニタリングの有力ツールとして期待されながら、いままで低線量域での応答感度の不足から利用が限定されていたラジオクロミックフィルムの利用普及が本光学CMR法による高感度化・高精度化により大いに進むものと期待される。特には、医用放射線装置の使用を含むIVRなどで患者の吸収線量測定とマッピング、建設現場での非破壊検査、弱い線源による中性子ラジオグラフィ、中性子回折測定の研究など放射線を扱う幅広い分野での利用が期待できる。IVR医療分野での一実施例を図7に示す。IVRでは患者の被曝線量が記録されたラジオクロミックフィルム1をパーソナルコンピュータ3に接続されたイメージスキャナ2で走査し、放射線に有感な色成分と鈍感な色成分の組に光学CMR法を適用し放射線には関係の薄い共通雑音を低減させ、線量分布を高感度・高精度で測定・取得することが可能となる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
ラジオクロミックフィルムであるガフクロミック XR type R 及びMD-55-2 の光学濃度のX線エネルギー依存性を示す。 解析に用いた赤色成分(R)と緑色成分(G)の帯域通過フィルタ(RGBフィルタ)関数を示す。縦軸は透過率である。 HS-14フィルムの吸収スペクトルに、図2に示されたフィルタ関数を乗じて得たR成分及びG成分の例を示す。縦軸は透過度T(%)である。 100kVpのX線を照射した時のHS-14フィルムの、24時間後の線量応答、すなわち、net ROD (net reduced optical density)と吸収線量との関係を示す。黒丸と中空四角形は測定箇所を変えて得た2回の測定値を示す。 HS-14フィルムの、24時間後の線量応答、すなわち、net RODと吸収線量の関係につき、図4の範囲を広げた図を示す。 100kVpのX線を照射した時のMD-55-2フィルムの、25.5時間後の線量応答、すなわち、net RODと吸収線量の関係を示す。 本発明のIVR医療分野における一実施例の説明図である。

Claims (7)

  1. 照射放射線に感応して色濃度が変化する物質の色濃度の光学計測において、物質の吸光スペクトルのうち色濃度変化に寄与する主な吸光波長を含む波長帯の光量と、主な吸光波長を含まない波長帯の光量の比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる色濃度変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法。
  2. ラジオクロミックフィルム(放射線有感色素線量計フィルム)に記録された放射線画像をRGBカラースキャナまたはデンシトメーター(densitometer、光学濃度計)またはカメラで読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)の大きさと放射線には鈍感なG出力(緑色成分)の大きさの比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法。
  3. ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をカラースキャナまたはデンシトメーターまたはカメラで読み取る場合に、放射線に有感な出力(例えばR出力(赤色成分))だけでなく放射線には鈍感な出力(例えばG出力(緑色成分))も利用して、その出力間で除算または減算を実行することにより主な放射線効果とは無関係な変動分を相殺または低減して、高感度で線量を測定するとともに、鮮明な線量マップを取得する方法。
  4. 放射線の吸収線量にほぼ比例して色の濃度が記録されているイメージのうちの放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用し、その成分間で演算を実行して、低レベルの吸収線量並びにその量の位置分布を高い感度で精度よく測定する計測装置。
  5. 請求項1〜3のいずれか一に記載の方法を実行する手段または装置を備えていることを特徴とする請求項4に記載の計測装置。
  6. ラジオクロミックフィルムのイメージを読み込むための読み取り器と、放射線に有感な色成分と放射線には鈍感な色成分を利用してその間で演算を実行し共通モード雑音を低減するソフトウエアを備えたコンピューターを備えているあるいは該コンピューターへ該読み取ったイメージデータを該演算の全部または一部または逆数生成・符号反転などの該演算の準備演算を実行のうえ転送する装置並びに該後処理ソフトウエアを備えていることを特徴とする請求項4または5に記載の計測装置。
  7. (a)照射放射線に感応して色濃度が変化する物質の色濃度の光学計測において、物質の吸光スペクトルのうち色濃度変化に寄与する主な吸光波長を含む波長帯の光量と、主な吸光波長を含まない波長帯の光量の比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる色濃度変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法を実行するソフトウエア、(b)読み取り器がカラースキャナまたはデンシトメーターまたはカメラであり、ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像を読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)の大きさと放射線には鈍感なG出力(緑色成分)の大きさの比または差を計算することにより、両者に共通に含まれる変動雑音成分を低減することを特徴とする放射線線量測定方法を実行するソフトウエア、あるいは(c)ラジオクロミックフィルムに記録された放射線画像をカラースキャナまたはデンシトメーターまたはカメラで読み取る場合に、放射線に有感なR出力(赤色成分)だけでなく放射線には鈍感なG出力(緑色成分)も利用して、その出力間で除算または減算を実行することにより主な放射線効果とは無関係な変動分を相殺または低減して、高感度で線量を測定するとともに、鮮明な線量マップを取得する方法を実行するソフトウエアであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一に記載の計測装置。
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