JP4161736B2 - 家禽大腸菌症ワクチン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家禽大腸菌感染症ワクチンおよび家禽に大腸菌感染症に対する免疫性を付与して大腸菌感染症から家禽を防御する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
家禽大腸菌感染症(以下、単に「家禽大腸菌症」という。)は、家禽業界、特に養鶏業、とりわけブロイラー飼育農場において、多大の損害を生ずる感染性消耗性疾患であり、特に敗血症を主徴とする大腸菌症は経済的被害が大きく、農場の衛生管理において重要な疾患である。家禽大腸菌症に対する予防および治療措置としては、家禽の飼育室の徹底消毒、家禽に対する抗菌剤、抗生物質などの投与が主体となっている。また、家禽大腸菌症に対するワクチンとしては、例えば、大腸菌の血清型O1、O2、O78を含有する家禽大腸菌症予防用不活化ワクチン(特許文献1参照。)、予め不活化した大腸菌菌体を超音波処理により破壊した家禽大腸菌症のための全菌ワクチン(特許文献2参照。)、F11型のフィムブリエ(線毛)若しくはその免疫原性セクションを含有するワクチン(特許文献3参照。)、大腸菌の鞭毛あるいは鞭毛のフラジェリンサブユニットを含むワクチン(特許文献4参照。)などが提案されており、大腸菌の線毛および鞭毛を抗原とするオイルアジュバントワクチンが実用化されている。
【0003】
しかしながら、実用化されている前記オイルアジュバントワクチンは、経口投与または粘膜接種が困難で、皮下注射、筋肉注射により家禽に接種されている。しかし、皮下注射や筋肉注射の場合は、接種部位への残存性や安全性の面から、種鶏(母鶏)以外の肉用鶏に直接適用することは出来ず、その使用は種鶏用に限定され、ワクチンを種鶏に接種して、卵黄からの移行抗体により雛を大腸菌症から防御するようにしている。しかし、種鶏へのワクチン接種による移行抗体による防御は概して弱く、雛から移行抗体が消失した後に発症してしまうことが多く、あまり効果的ではなかった。また、従来から、経口投与または点眼若しくは点鼻などの粘膜接種に用いるワクチンは生ワクチンでないと効果がないと考えられている。しかし、大腸菌の生ワクチンはブロイラーなどの食用家禽のワクチンとしては安全性の面で問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特公昭55−45045号公報
【特許文献2】
特公平8−5802号公報
【特許文献3】
特許第2718523号公報
【特許文献4】
特許第3031561号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような家禽大腸菌症ワクチンの現状をふまえ、家禽に大腸菌症に対する確実な防御能を付与することが可能なワクチンを提供することを目的とし、種鶏への接種による移行抗体による防御ではなく、雛に直接接種または投与することが可能で、しかも接種部位への残留がなく、安全性に優れた家禽大腸菌症ワクチンおよびこれを種鶏以外の家禽の雛に直接接種または投与することで家禽を大腸菌症から確実に防御する方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、抗原として不活化大腸菌を用いた場合でも、リポソームまたはリポソーム様の形態を示す脂質を基材とするアジュバント、特にリン脂質からなるリポソームを基材とするアジュバントを用いた不活化大腸菌ワクチンが、粘膜接種または経口投与、更には発育鶏卵への注射による方法でも、家禽に大腸菌症に対する防御能を付与することができ、種鶏以外の雛や発育鶏卵に対して直接接種または投与して大腸菌症から家禽を効果的に防御することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明に係る家禽大腸菌症ワクチンは、家禽を大腸菌症から防御するために、家禽、特に種鶏以外の雛に対して直接、点眼接種されるワクチンであって、生物学的に不活性な大腸菌抗原である大腸菌のホルマリン不活化全菌体またはその破砕物と、リポソームまたはリポソーム様の形態を示す脂質を基材とするアジュバントを含有することを特徴とするものである。前記リポソームを構成するリン脂質は、生体由来物質であり、安全性と生体親和性を有し、接種部位への残存性の問題がなく、また経口投与、粘膜接種、発育鶏卵内へ注射しても安全性に問題はない。また、前記リポソーム様の形態を示す脂質とは、脂質の集合体、例えばミセルであり、リポソームと同様に脂質集合体構造を示し、リポソームと同様に安全性に問題はない。
【0008】
前記大腸菌抗原が、菌体表面に血清抵抗性因子(Increased Serum Survival、以下、「Iss」と略記する。)を表出している大腸菌であると、大腸菌症に対する防御能の付与効果が高いことから好ましい。
【0009】
更に、前記大腸菌抗原が莢膜抗原を発現している大腸菌であるとより好ましい。
【0010】
前記大腸菌抗原としては、大腸菌の全菌体、全菌体の破砕物または菌体可溶化物のいずれであってもよい。
【0011】
また、アジュバントの基材としての前記リポソームまたはリポソーム様の形態を示す脂質が陽性荷電していると、抗原である大腸菌を吸着しやすく、更に目や上部気道などの粘膜にも吸着しやすくなり、大腸菌症に対して家禽をより効果的に防御することができ、好ましい。
【0012】
前記リポソームを陽性荷電するためには、該リポソームが第3級脂質アミンまたは第4級脂質アミンを含有することが好ましい。
【0013】
前記リポソームが、コレステロールを含有している場合には、リポソームに強度が与えられる。
【0014】
前記リポソームとしては、陽性荷電された小さな一枚膜リポソーム(以下、「SUV型陽性荷電リポソーム」という。)を用いることが好ましい。
前記SUV型陽性荷電リポソームは直径が0.02〜0.05μmと小さいため粘膜から取り込まれ易く、また陽性荷電により抗原を吸着しやすく、かつ粘膜へも吸着しやすいことから、家禽に対して効果的に免疫能を付与することができる。
【0015】
本発明により家禽を大腸菌症から防御する方法は、本発明の家禽大腸菌症ワクチンを家禽に点眼接種する、あるいは家禽の鼻または総排泄腔へ滴下または噴霧して接種するなどの粘膜接種による方法が挙げられる。これらの粘膜接種は、孵化後、0日齢〜5日齢の雛に対して接種することが効果的である。
【0016】
また、本発明により家禽を大腸菌症から防御する方法は、本発明の家禽大腸菌ワクチンを混合した飲水を家禽に給与する経口投与による方法であってもよい。更に、前記粘膜接種と、この経口投与とを併用することで、家禽をより効果的に大腸菌症から防御することができる。
【0017】
更に、本発明の家禽大腸菌症ワクチンは、発育鶏卵内に注射することでも、該鶏卵から孵化した雛に大腸菌症に対する免疫能を付与することができる。更に、前記鶏卵から孵化した雛に前記粘膜接種や経口接種を施すとより効果的である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る家禽大腸菌症ワクチンおよびそれを使用して家禽を免疫化して大腸菌症から防御する方法の詳細を説明する。
【0019】
本発明に係る家禽大腸菌症ワクチンは、家禽、とりわけ肉用家禽であるブロイラー雛の大腸菌感染症を予防するために、雛に直接、点眼、点鼻、総排泄腔への接種などにより粘膜接種し、若しくは飲水投与し、あるいは発育鶏卵内に注射する方法で使用するものである。このように、種鶏以外の雛あるいは発育鶏卵に直接投与することで、雛に強い免疫が誘導され、しかもアジュバントとして生体由来物質であるリポソームや脂質を用いることで、ブロイラーなどの肉用家禽に使用した場合にも、食肉に残留する恐れが全くなく、安全性の高いワクチンである。
【0020】
本発明に係るワクチンは、不活化大腸菌抗原と、リポソームまたはリポソーム様形態を示す脂質を基材とするアジュバント(これを脂質アジュバントと称す。)を含有する。
【0021】
前記抗原としての大腸菌は特に限定されるものではないが、大腸菌O−1、O−2、O−78などのO−抗原を有する大腸菌が望ましい。これらの菌は、野外の感染鶏から容易に分離することができ、また大学、公共の研究機関または寄託機関から容易に入手可能である。更に、前記抗原としては、Issを菌体表面に発現している大腸菌株であることが好ましい。ここでいうIssとは、菌が生体内で生存するために菌体表面に産生するリポタンパク質であり、血清中の補体による攻撃から菌体を保護する役割を果たすものであり、本発明の家禽大腸菌症ワクチンにおいて有用な防御関連抗原となると考えられる。また、前記抗原としては、莢膜抗原であるK1、K5またはK80などのK抗原であることが好ましく、更に前記IssとK抗原との両方を発現している大腸菌株が好ましい。なお、Issおよび莢膜抗原のいずれも発現していない株でも抗原として使用可能である。本発明で使用する生物学的に不活性な抗原は、大腸菌の全菌体、全菌体の破砕物または菌体可溶化物のいずれであってもよく、Issを菌体表面に発現している大腸菌やK抗原を発現している大腸菌の全菌体のホルマリン不活化抗原、あるいはその破砕物、更にはIssやK抗原を含む菌体成分の混合物であってもよい。これらの中でも、全菌体を破砕して小さくしたもの(破砕菌)が、粘膜から容易に体内へ取り込まれて雛に全身性の防御免疫を誘発させやすいので好ましい。
【0022】
本発明では、アジュバント基材として、安全性と生体親和性、ブロイラーなどの食用肉への残留性の面から、生体由来物質であるリン脂質からなるリポソームを用いることが好ましい。アジュバント作用のある物質の多くのものは、界面活性剤のような両親媒性物質(一つの分子中に親水性基と疎水性基を有する物質)であり、その代表例としてはグラム陰性菌内毒素のアジュバント活性部位であるlipid Aや、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDA)、アブリジン、無水マンニトールオレイン酸エステルなど、脂質成分が分子構造の中心をなす物質が多い。本発明で用いるリポソームは、前記のような脂質のうち、リン脂質を主に用いて調製される、人工的に作られた脂質の二分子層(二分子膜)構造を有する小胞(脂質小胞)のことである。ここでいうリン脂質とは、生体由来物質であるレシチン(ホスファチジルコリンを主成分とするリン脂質の混合物)またはレシチンから精製、単離された構成リン脂質であるホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミンなどである。通常、リポソームは、前記のようなリン脂質を用いて、エバポレーター法、フレンチプレス法、超高圧ホモジナイザー法など様々な方法で水分散液として調製され、本発明では、このリポソームの水分散液を脂質アジュバントとして使用する。本発明で使用する前記リン脂質(レシチン)の具体例としては、日光ケミカルズ株式会社製のレシノールS−10、10M、10E、10EX、S−30、Y10、Y10M、Y10E、Y10EX、LL20、SH50などが好適に使用できるが、他社の同等品でも使用可能である。
【0023】
また、リポソームの表面電荷は酸やアミンの添加によって変わる。例えば、ホファチジン酸を添加すると陰性に荷電され、またリン脂質としてホスファチジルジエタノールアミンを用いたり、第3級アミンや第4級アミンを添加するとリポソームの表面は陽性に荷電される。例えば第3級または第4級脂質アミンを組成に加えてリポソームに陽性荷電を与えると、リポソーム表面に抗原が吸着し易くなるとともに、眼の粘膜面やその近くの免疫組織であるハダー腺で、粘膜上皮細胞のシアル酸のような陰性電荷体を介して、リポソームが眼や上部気道の粘膜に吸着し易くなることによって、該リポソームに吸着している抗原が効率よく体内に取り込まれ、家禽の雛に対して全身性の防御免疫を誘発することができると考えられる。
【0024】
前記のようにリポソームを陽性荷電するためには、第3級脂質アミンまたは第4級脂質アミンをリポソームの組成に加えることが好ましい。前記第3級脂質アミンとしては、例えばステアリルアミン、ステアリン酸ジアルキルアミドアルキルアミン、オクチルアミンなどが挙げられる。また、前記第4級脂質アミンとしては、例えばジメチルジオクタデシルアンモニウムクロライド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDA)などが挙げられる。リポソームを調製する際の前記脂質アミンの配合比率としては、第3級脂質アミンの場合には、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜6重量%、更に好ましくは1〜3重量%である。また、第4級脂質アミンの場合には、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%、更に好ましくは5〜15重量%である。なお、リポソーム様の脂質集合体構造をとるDDAは、それ自体が陽性荷電しており、DDAを基材とする水分散液からなるリポソーム様アジュバントは、前記陽性荷電したリポソームを基材とするアジュバントと同様の効果が得られる。
【0025】
更に、前記リポソームにコレステロールを含有している場合には、リポソームに強度を与えることができ、好ましい。また、コレステロールは、生体内の代表的な脂質成分であり、リポソームを構成するリン脂質と同様に生体由来物質であることから、安全性、生体親和性、食肉への残留性などの問題がない。リポソームを調製する際のコレステロールの配合比率としては、好ましくは5〜45重量%、より好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜30重量%である。
【0026】
また、リポソームには、単一の二分子層構造を有する一枚膜リポソームと複数の二分子層構造を有する多重層リポソーム(MLV)とがあり、前記一枚膜リポソームには、小さいのも(SUV)と大きいもの(LUV)とがある。これらのリポソームの内、MLV型リポソームの場合には、直径が大きく、その内部に抗原が取り込まれてしまったり、また一枚膜リポソームに較べて粘膜から吸収され難い。これに対し、一枚膜リポソーム、特にSUV型リポソームの場合には、直径が小さく(0.02〜0.05μm程度)、これが大腸菌の周囲を取り囲んだ状態で粘膜に吸着され、体内へ容易に取り込まれると考えられる。よって、本発明で使用するリポソームとしては、SUV型陽性荷電リポソームを用いることが好ましい。このSUV型陽性荷電リポソームは、直径が0.02〜0.05μm程度と小さいため粘膜から取り込まれ易く、また陽性荷電により抗原を吸着しやすく、かつ粘膜へも吸着しやすいことから、粘膜面から抗原が効果的に体内に取り込まれ、家禽の雛に対して全身性の防御免疫を誘発させ、大腸菌症から確実に防御することができる。
【0027】
本発明で使用するリポソームは、上記したリン脂質、脂質アミン、コレステロールなどを用い、公知の方法により調製することができる。例えば、実験室レベルの少量を調製するには、ロータリーエバポレーターを用いる薄膜法により1次リポソーム(MLV)を調製し、更に必要に応じて超音波処理などを施すことで、微細な2次リポソーム(SUV)を調製する。また、大量に調製するには、超高速ホモジナイザーや他の公知のリポソーム作製装置で調整することができる。なお、陽性荷電リポソームは、例えば日本油脂株式会社から中空リポソーム「EL−C−O1」として市販されており、これを使用してもよい。
【0028】
ロータリーエバポレーターおよび超音波発生装置によるSUV型陽性荷電リポソームの調製方法の1例を以下に示す。
1. 第4級アミン(例えば、DDAまたは塩化ジステアリルジメチルアンモニウム:50mg)、コレステロール(175mg)、大豆レシチン(350mg)を適当量(10〜20mL)のクロロホルムに加温(60〜70℃)溶解する。
2. 前記1.の溶解液をロータリーエバポレーターを用いて、減圧濃縮し薄層の脂質フィルムを形成させた後、100mLの水を用いて脂質フィルムを水中に分散させる。
3. 前記2.の分散液に超音波発生装置(例えば、タイテック社 超音波破砕機 vp−60、チップ:マイクロチップ MC−0418、処理条件:最大出力、発振サイクル:100%、処理時間30分)により超音波処理を冷水下にて施す。
4. 前記3.で作製されたリポソーム分散液(これをSUV型陽性荷電リポソームと称す。)は使用時まで冷暗所で保存する。
5. 使用に際しては、例えば抗原液:リポソーム分散液=1:1の容積比で混和し、ワクチンとして用いることができる。
【0029】
また、超高圧ホモジナイザーによるSUV型陽性荷電リポソームの調製方法の1例を以下に示す。
1. 脂質混合物(例えば、レシチン、コレステロール、第4級脂質アミンなど)を1.0w/vの濃度になるように水中で分散させたのち、ホモジナイザーのリザーバータンクに入れ90℃になるまで温度を上げて脂質を溶解し、プロペラシャフトで混合して均一な脂質分散液を調製する。
2. ホモジナイザーの射出圧力を20,000psiに設定し、80〜85℃に液温を保持したままで循環させながら15分間ホモジナイズしてリポソーム分散液(SUV型陽性荷電リポソーム)を調製する。
3. 前記2.で作製されたリポソーム分散液は使用時まで冷暗所に保存する。
4. 使用に際しては、例えば抗原液:リポソーム分散液=1:1の容積比で混和し、ワクチンとして用いることができる。
【0030】
また、他の脂質、例えば前記DDA単独で水に分散させると、脂質集合体構造をとり、リポソーム様の形態を示すことが知られている。DDAは第4級脂質アミンであるが、中心となる構造にオクタデシル基があり、脂質としての性質を示すことから、アジュバントの基材としてDDA単独で用いてもアジュバント効果を発揮する。前記DDA以外でリポソーム様の形態を示す脂質としては、例えばリポポリサッカライド(LPS)、ムラミルジペプチド(MDP)などが挙げられる。
【0031】
リポソーム様アジュバントの調製方法の1例を以下に示す。
1. 脂質(例えばDDA)を2〜4w/v%の濃度になるように水分散液を作製する。
2. 前記1.の脂質分散液に超音波発生装置(例えば、タイテック社 超音波破砕機:VP−60、チップ:マイクロチップ MC−0418、処理条件:最大出力、発振サイクル:100%、処理時間30分)により超音波処理を冷水下で施す。
3. 前記2.で作製された脂質分散液(これをリポソーム様アジュバントと称す。)を使用時まで冷暗所に保存する。
4. 使用に際しては、例えば抗原液:脂質分散液=1:1の容積比で混和し、ワクチンとして用いることができる。
【0032】
本発明の家禽大腸菌ワクチンは、不活化大腸菌抗原と前記のような脂質アジュバントとを単に混合するだけで調製することができる。混合割合には特に限定はなく、任意の割合で混合することができるが、通常は両者を等量混合すればよい。家禽に接種する際の抗原量としては、菌体破砕前総菌数で2.5×107個/羽以上となるようにすることが好ましい。
【0033】
本発明の家禽大腸菌症ワクチンを家禽に点眼接種する場合には、0〜5日齢、より好ましくは0〜2日齢の雛の片眼に1滴(約25〜50マイクロリットル)、または左右両目に一滴ずつ計2滴を滴下する方法が最適であるが、鼻や総排泄腔への接種も可能である。また、生後3日以降については、飲水投与も効果ある方法として応用でき、前記眼、鼻、総排泄腔などへの粘膜接種と、この経口投与とを併用することで、家禽により高い防御能を付与することができる。
【0034】
更に、前記のような本発明に係る家禽大腸菌症ワクチンを発育鶏卵内に注射する場合には、胎齢16〜19日の発育鶏卵内に接種することが好ましく、この発育鶏卵への接種と前記雛への粘膜接種や経口投与を組み合わせることで、より高い免疫効果が得られる。
【0035】
なお、本発明に使用されるリポソームまたはリポソーム様形態を示す脂質を基材とする脂質アジュバントおよびこの脂質アジュバントを用いたワクチンの接種方法は、キャンピロバクターなど、食中毒原因菌に対するワクチンにも十分に応用が可能であり、鶏卵、食肉などを介する食中毒低減にも大いに効果を示すことが期待できる。
【0036】
【実施例】
[大腸菌株のIssに関する情報および存在の確認]
血清抵抗性因子(Increased Serum Survival、Iss)に関する情報および試験データ
【0037】
Issは、10〜11kDaのリポタンパク質からなると考えられているが[James J. Barondessら(Journal of Bacteriology.,177,No.5(1995))]、菌体表層に発現する成熟リポタンパク質としては8〜9kDaと推定されている[Steven L.Foleyら(Avian Dis.,44,185−191(2000))]。また、そのDNA塩基配列は、Shelley M. Horne らによって報告されている(Gean Bank accession numberAF042279(1999))。更にアミノ酸残基配列の一部は、Shelley M. Horneら、およびSteven L. Foleyらによって報告されている(Avian Dis.,44,179−184(2000)およびAvian Dis.,44,185−191(2000))。
また、λファージDNA上に存在するbor遺伝子にコードされるBorリポタンパク質は血清抵抗因子として機能し、IssとDNA塩基配列および推定上のアミノ酸ホモロジーが非常に高く、特にC末12アミノ酸残基のホモロジーが83あるいは100%であることが知られており[James J. Barondessら(Journal of Bacteriology.,177,No.5(1995))あるいはShelley M. Horneら(Avian Dis.,44,179−184(2000))]、Borリポタンパク質ではこの領域(C末12アミノ酸残基)に抗原性が認められている[James J. Barondessら(Journal of Bacteriology.,177,No.5(1995))]。
そこで、IssのC末12アミノ酸残基の合成ペプチド(N末端方向−YTPLEARVYCSQ−C末端、配列表の配列番号1)を作製し、更にモルモット免疫血清を作製し、この免疫血清を用いて大腸菌株におけるIssの発現を確認した。
【0038】
具体的方法としては、DSMZ(ドイツ微生物・細胞培養保存機構)にDSM10775として寄託されている大腸菌株、(社)動物用生物学的製剤協会から入手したK−1株(O2:K1)、独立行政法人動物衛生研究所から入手した野外大腸菌罹患鶏由来のPDI−386株(O78:K−、微生物化学研究所(京都府宇治市))、ATCC43896株、および健康鶏の総排泄腔由来のF−1株(O86、微生物化学研究所(京都府宇治市))について、PCRによりiss遺伝子の存在を確認した。その結果、DSM10775株、K−1株およびPDI−386株はiss遺伝子の一部が存在すること、およびATCC43896株およびF−1株にはiss遺伝子が存在しないことを確認した(図1参照。)。
【0039】
(PCR:図1)
iss遺伝子 プライマー
Forward:5’−ATGTTATTTTCTGCCGCTCTG−3’
(配列表の配列番号2)
Reverse:5’−CTATTGTGAGCAATATACCC−3’
(配列表の配列番号3)
予想塩基数:285b.p.
反応条件:94℃ 1min、54℃ 1min、72℃ 1min×35
【0040】
なお、血清型が未知の大腸菌については、O血清型は抗血清を用いた凝集反応で、またK1発現の有無は抗血清を用いた凝集反応あるいはファージ感受性試験を用いて決定した。
【0041】
次ぎに、上記iss遺伝子陽性株であった3種の株とiss遺伝子陰性株であった2種の株との、合計5種の大腸菌株を用い、下記の方法により菌体外膜複合体(以下、「OMC」と略記する。)を抽出し、SDSポリアクリルアミド電気泳動(以下、「SDS−PAGE」と略記する。)を行い(図2参照)、抗Iss C末12アミノ酸残基−モルモット免疫血清を用いてウェスタンブロッティング(以下、「WB」と略記する。)を行った。
【0042】
(SDS−PAGE:図2)
SDS−PAGEは以下の条件により常法に従い実施した。
セパレーティングゲル濃度:20%
泳動条件:200V(定電圧)、60分間
染色法:CBB染色
【0043】
なお、抗Iss C末12アミノ酸残基−モルモット免疫血清は、例えば、100mg/mlの合成ペプチド(BSAなどのキャリアタンパク質と結合させてあっても良い)をフロイント完全あるいは不完全アジュバントと等量乳化し、その1mlをモルモットの皮下あるいは筋肉内に3、4週間隔で複数回数(3、4回)注射するなど、通常の免疫血清作製方法で得られる。
【0044】
(OMC抽出法)
1. LBブロスで37℃、24時間振盪培養した大腸菌を、6,000×gで30分間遠心し、菌体沈渣を水で洗浄し、再遠心を行った。
2. 前記1.の洗浄菌体沈渣を、培養量の1/10量の50mMリン酸−1N NaCl(pH7.2)に再浮遊した。
3. 前記2.の再浮遊菌液を、60℃にて3時間加熱攪拌した。
4. 前記3.の加熱菌液を、6,000×gで30分間遠心し、上清(OMC分画)を採取し、水に対して4℃にて透析を行った。
5. 前記4.の透析後のOMC分画を、適切な方法で濃縮し(分画分子量5,000程度で可能である)、およそ100倍濃縮OMC(この濃縮分画には分子量10,000前後のIssが豊富に含まれる)を得た。
【0045】
(WB:図3)
WBは以下の条件により常法に従い実施した。
1次血清:抗Iss C末12アミノ酸残基−モルモット免疫血清、100倍希釈
2次血清:ペルオキシダーゼ(POD)標識抗家兎Ig山羊血清、2,000倍希釈
基質:o−フェニレンジアミン(OPD)
【0046】
その結果、PCRでiss遺伝子陽性株であったDSM10775株、K−1株およびPDI−386株に8〜9kDa付近に特異的なシグナルが認められた(図3参照)。一方、PCRでiss遺伝子陰性株であったATCC43896株およびF−1株にはシグナルは認められなかった。
以上の成績より、DSM10775株、K−1株およびPDI−386株では、Issが発現されていることが確認された。
【0047】
[実施例1:アジュバントの違いによる鶏の安全性への影響]
以下のようにして、アジュバントの違いによる鶏の安全性への影響(脂質アジュバント含有ワクチンの鶏に対する安全性)を調べた。
【0048】
1.材料および方法(図4および表1参照)
(1)供試株
供試株としては、ワクチン用抗原および攻撃試験用株としてDSM10775株(O2:K1、Iss陽性)を用いた。
また、抗体測定用のELISA抗原(LPS)用株として、K−1株(O2:K1)を用いた。
(2)抗原
菌体破砕抗原(破砕菌)として、フレンチプレス(Thermo Spectronic社製)により800psiで菌体破砕後にホルマリン不活化したDSM10775株を用いた。
(3)アジュバント
アジュバントとしては、SUV型陽性荷電リポソーム、DDA(2%水分散液)または無水マンニトール・オレイン酸エステル加流動パラフィン(オイル)を用いた。
なお、SUV型陽性荷電リポソームは、以下のようにして調製した。
1) 以下の試薬a)〜c)を50mL容量のガラス製ビーカーに秤量して加えた。
a) 4級アミン(リポソームに陽性荷電を付与する場合に用いる):塩化ジステアリンジメチルアンモニウム;50mg
b) コレステロール;17mg
c) 大豆レシチン;350mg
2) 10mL〜20mLのクロロホルムで前記1)の試薬をドラフトチャンバー内で60℃〜70℃程度に加温しながら溶解した。
3) 前記2)の溶液を1L容量のなす型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下にて濃縮しフラスコ内壁に薄層の脂質フィルムを形成させた。この時、ドライヤーを用いてフラスコ全体を加温しながら行うと速やかに脂質フィルムが形成された。
4) 液層が蒸発したら前記3)のフラスコをロータリーエバポレーターからはずし、ドライヤーを用いてフラスコ内部に温風を吹き込みクロロホルム臭を除去した。
5) 前記4)のフラスコに100mLの滅菌水を少量(2mL〜5mL)ずつ加え脂質フィルムを分散させた。この時点でリポソーム分散液が作製された。
6) 前記5)のリポソームはサイズ、形状が不均一であるので、5)の分散液に超音波処理(タイテック社 超音波破砕機:VP−60、チップ:マイクロチップ MC−0418、処理条件:最大出力、発振サイクル:100%、処理時間30分)を冷水下にて施し、均一な単層のリポソーム(SUV)分散液に整型した。
7) 前記6)で作製されたリポソーム分散液は、使用時まで冷暗所にて保存した。
(4)免疫原(ワクチン)調製
免疫原(ワクチン)としては、抗原と前記SUV型陽性荷電リポソームまたはDDA分散液とを等量混合したものおよび抗原と前記オイルとを3:7の量比で油中水型に乳化したものを免疫原とした。なお、免疫原の抗原濃度は、菌体破砕前総菌数で1.0×109個/mlに調整した。
(5)ニワトリ
ニワトリは、初生ヒナを用い、免疫群および非免疫対照群として各10羽を用いた。
(6)免疫および攻撃
免疫は、ワクチン0.1ml/羽を点眼接種または皮下接種し、4週間飼育した。
攻撃は、ワクチン接種後4週間目にDSM10775株を0.1ml/羽(2.2×107CFU/羽)、静脈内攻撃し、7日間、血中菌数を測定した。また、臨床観察を行い、最終日には、体重測定および剖検を実施した。
(7)臨床観察および体重測定
ワクチン接種後、経日的に臨床観察を行い、経週的に体重測定を実施した。
臨床観察項目は、元気消失の有無、結膜の充血などの異常の有無、および眼瞼浮腫などの異常の有無とした。
(8)抗体測定
免疫後1週間隔で採血を行い、抗O2 LPS抗体(IgA、IgGおよびIgM)をELISA法にて測定した。
ELISA抗原としては、K−1株より温フェノール法にてLPSを抽出し、50μg/wellとなるように調整して用いた。
1次血清としては、5%FCS加Tween−PBSで100倍希釈して用いた。
2次血清としては、POD標識抗鶏IgA、IgG、IgMを5%FCS加Tween−PBSで4、000倍希釈して用いた。
【0049】
【表1】
Figure 0004161736
【0050】
2.成績
(1)ヒナにおける接種ワクチンの安全性(表2参照)
破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム点眼接種群(1.免疫群)および破砕菌−DDA点眼接種群(2.免疫群)では、観察期間中、いずれの項目においても、対照群(5.非免疫群)に比して異常を認めなかった。一方、破砕菌−オイルアジュバント点眼接種群(3.免疫群)では、50%の個体に元気消失、40%の個体に眼瞼浮腫および30%の個体に結膜の充血が認められ、また、破砕菌−オイルアジュバント皮下接種群(4.免疫群)では、30%の個体に元気消失および接種部位の浮腫あるいは硬結が認められた。
体重測定では、破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム点眼接種群(1.免疫群)、破砕菌−DDA点眼接種群(2.免疫群)および破砕菌−オイルアジュバント皮下接種群(4.免疫群)では、平均体重増加率は対照群(5.非免疫群)との間で有意差を認めなかったが、破砕菌−オイルアジュバント点眼接種群(3.免疫群)では、対照群(5.非免疫群)に比して有意に低かった。
【0051】
【表2】
Figure 0004161736
【0052】
(2)抗体応答は全群認められなかった。
【0053】
(3)血中菌数の推移(図5参照)
破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム点眼接種群(図5中に黒丸で示す、1.免疫群)では、攻撃1日以降、対照群(図5中に「×」で示す、5.非免疫群)に対して1/12〜1/251の菌数で推移した。また、破砕菌−DDA点眼接種群(図5中に黒三角で示す、2.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(5.)に対して1/11〜1/62の菌数で推移した。更にまた、破砕菌−オイルアジュバント皮下接種群(図5中に黒菱形で示す、4.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(5.)に対して1/5〜1/34の菌数で推移した。しかし、破砕菌−オイルアジュバント点眼接種群(図5中に黒四角で示す、3.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(5.)に対して同等〜1/3の菌数と大差なく推移した。
【0054】
(4)他の検査項目(表3−1、表3−2参照)
破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム点眼接種群(1.免疫群)、破砕菌−DDA点眼接種群(2.免疫群)および破砕菌−オイルアジュバント皮下接種群(4.免疫群)では、対照群(5.非免疫)に対して同等以上の成績を残した。しかし、破砕菌−オイルアジュバント点眼接種群(3.免疫群)では、免疫効果は認められなかった。
【0055】
【表3】
Figure 0004161736
【0056】
以上の成績から、破砕菌−SUV型陽性荷電リポソームワクチンおよび破砕菌−DDAアジュバントワクチンは、破砕菌−オイルアジュバントワクチンより初生ヒナに対してはるかに安全であることが明らかとなった。また、特に破砕菌−SUV型陽性荷電リポソームワクチンは、点眼接種時に有効なワクチンとなることが示された。
【0057】
[実施例2:初生ヒナに対する免疫効果−1]
以下のようにして、抗原内容およびアジュバント効果を検討した。
【0058】
1.材料および方法(図6および表4参照)
(1)供試株
供試株としては、ワクチン用抗原および攻撃試験用株としてDSM10775株(O2:K1、Iss陽性)を用いた。
また、抗体測定用のELISA抗原(LPS)用株として、K−1株(O2:K1)を用いた。
(2)抗原およびアジュバント
不活化全菌体抗原(全菌体)としては、ホルマリン不活化DSM10775株を用いた。
菌体破砕抗原(破砕菌)としては、フレンチプレスで菌体破砕後にホルマリン不活化したDSM10775株を用いた。
アジュバントとしては、実施例1と同じSUV型陽性荷電リポソームを用いた。
(3)免疫原調製
免疫原としては、抗原とアジュバントとを等量混合したものおよび菌体破砕抗原(破砕菌)のみを免疫原とした。なお、免疫原の抗原濃度は菌体破砕前総菌数で1.0×109個/mlに調整した。
(4)ニワトリ
ニワトリは、初生ヒナを用い、免疫群および非免疫対照群として各10羽を用いた。
(5)免疫および攻撃
免疫は、免疫原0.1ml/羽を点眼接種し、4週間飼育した。
攻撃は、免疫原接種後4週間目にDSM10775株を0.1ml/羽(2.0×107CFU/羽)、静脈内攻撃し、7日間、血中菌数を測定した。また、臨床観察を行い、最終日には、体重測定および剖検を実施した。
(6)抗体測定
免疫後1週間隔で採血を行い、抗O2 LPS抗体(IgA、IgGおよびIgM)をELISA法にて測定した。
ELISA抗原としては、K−1株より温フェノール法にてLPSを抽出し、50μg/wellとなるように調整して用いた。
1次血清としては、5%FCS加Tween−PBSで100倍希釈して用いた。
2次血清としては、POD標識抗鶏IgA、IgG、IgMを5%FCS加Tween−PBSで4,000倍希釈して用いた。
【0059】
【表4】
Figure 0004161736
【0060】
2.成績
(1)抗体応答は全群認められなかった。
【0061】
(2)血中菌数の推移(図7参照)
破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム接種群(図7中に黒丸で示す、1.免疫群)では、攻撃1日以降、対照群(図7中に「×」で示す、4.非免疫群)に対して1/20〜1/257の菌数で推移した。また、全菌体−SUV型陽性荷電リポソーム接種群(図7中に黒三角で示す、2.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(4.非免疫群)に対して1/10〜1/76の菌数で推移した。更に、抗原内容の比較では、破砕菌体使用(1.免疫群)の方が全菌体使用(2.群)よりも少なく推移する傾向が見られた、しかし、破砕菌のみの接種群(図7中に黒四角で示す、3.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(4.非免疫群)より少ない菌数で推移したが、アジュバント含有の2つの群(1.免疫群および2.免疫群)より多い菌数で推移した。
【0062】
(3)他の検査項目(表5−1、表5−2参照)
アジュバント含有の2つの群(1.免疫群および2.免疫群)は、対照群(4.非免疫)に対して同等以上の成績を示した。
【0063】
【表5】
Figure 0004161736
【0064】
(4)安全性
試験期間を通じて、ワクチン接種による鶏の異常は認められなかった。
【0065】
以上の成績から、破砕菌−SUV型陽性荷電リポソームワクチンおよび全菌体−SUV型陽性荷電リポソームワクチンは、点眼接種時に有効な免疫原となることが示された。
【0066】
[実施例3:初生ヒナに対する免疫効果−2]
以下のようにして、Issの免疫効果を検討した。
【0067】
1.材料および方法(図8および表6参照)
(1)供試株
供試株としては、ワクチン用抗原としてDSM10775株(O2:K1、Iss陽性)、PDI−386株(O78:K−、Iss陽性)、ATCC43896株(O78:K80、Iss陰性)およびF−1株(O86a、Iss陰性)を用い、また攻撃試験用株としてK−1株(O2:K1、Iss陽性)を用いた。
また、抗体測定用のELISA抗原(LPS)用株として、Iss C末12アミノ酸残基を50μg/wellとなるように調整して用いた。
(2)免疫原
菌体破砕抗原(破砕菌)として、フレンチプレスで菌体破砕後にホルマリン不活化したDSM10775株、PDI−386株、ATCC43896株およびF−1株を用いた。
アジュバントとしては、実施例1と同じSUV型陽性荷電リポソームを用いた。
(3)免疫原調製
免疫原としては、抗原とアジュバントとを等量混合したものを用いた。なお、免疫原の抗原濃度は、菌体破砕前総菌数で1.0×109個/mlに調整した。
(4)ニワトリ
ニワトリは、初生ヒナを用い、免疫群および非免疫対照群として各10羽を用いた。
(5)免疫および攻撃
免疫は、免疫原0.1ml/羽を点眼接種し、4週間飼育した。
攻撃は、免疫原接種後4週間目にK−1株を0.1ml/羽(2.5×107CFU/羽)、静脈内攻撃し、7日間、血中菌数を測定した。また、臨床観察を行い、最終日には、体重測定および剖検を実施した。
(6)抗体測定
免疫後1週間隔で採血を行い、抗Iss抗体(IgA、IgGおよびIgM)をELISA法にて測定した。
ELISA抗原としては、Iss C末12アミノ酸残基を50μg/wellとなるように調整して用いた。
1次血清としては、5%FCS加Tween−PBSで100倍希釈して用いた。
2次血清としては、POD標識抗鶏IgA、IgG、IgMを5%FCS加Tween−PBSで4,000倍希釈して用いた。
【0068】
【表6】
Figure 0004161736
【0069】
2.成績
(1)抗体応答は全群認められなかった。
【0070】
(2)血中菌数の推移(図9参照)
DSM10775株(Iss陽性)破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム接種群(図5中に黒丸で示す、1.免疫群)では、攻撃1日以降、対照群(図5中に「×」で示す、5.非免疫群)に対して1/19〜1/178の菌数で推移した。また、PDI−386株(Iss陽性)破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム接種群(図5中に黒三角で示す、2.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(5.非免疫群)に対して1/16〜1/85の菌数で推移した。更に、ATCC43896株(Iss陰性)破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム接種群(図5中に黒四角で示す、3.免疫群)では、攻撃1日以降、対照群(5.非免疫群)に対して1/6〜1/41の菌数で推移した。また、F−1株(Iss陰性)破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム接種群(図9中に黒菱形で示す、4.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(5.非免疫群)に対して1/3〜1/14の菌数で推移した。
【0071】
(4)他の検査項目(表7−1、表7−2参照)
破砕菌−SUV型陽性荷電リポソーム接種の4つの免疫群(1.免疫群〜4.免疫群)は、対照群(5.非免疫群)に対して同等以上の成績を示した。
【0072】
【表7】
Figure 0004161736
【0073】
(4)安全性
試験期間を通じて、ワクチン接種による鶏の異常は認められなかった。
【0074】
以上の成績から、Iss陽性株は有効な免疫原となることが示された。また、Iss陰性株であっても、Iss陽性株には劣るものの有効な免疫原となることが示された。
【0075】
[実施例4:異なる接種経路による免疫効果の検討]
以下のようにして、本発明のワクチンを異なる経路から接種した場合の免疫効果を検討した。
【0076】
1.材料および方法(図10および表8参照)
(1)供試株
供試株としては、ワクチン用抗原および攻撃試験用株としてDSM10775株(O2:K1、Iss陽性)を用いた。
また、抗体測定用のELISA抗原(LPS)用株として、K−1株(O2:K1)を用いた。
(2)抗原およびアジュバント
菌体破砕抗原(破砕菌)としては、フレンチプレスで菌体破砕後にホルマリン不活化したDSM10775株を用いた。
アジュバントとしては、実施例1と同じSUV型陽性荷電リポソームを用いた。
(3)免疫原(ワクチン)調製
免疫原としては、抗原とアジュバントとを等量混合したものを免疫原とした。
なお、免疫原の抗原濃度は菌体破砕前総菌数で1.0×109個/mlに調整した。
(4)ニワトリ
ニワトリは、初生ヒナを用い、免疫群および非免疫対照群として各10羽を用いた。
(5)免疫および攻撃
免疫は、免疫原0.1ml/羽を初生ヒナに点眼接種、点鼻接種、飲水投与、総排泄腔接種および18日齢発育鶏卵内に25ケージ注射器を用いて接種し、28日齢まで飼育した。
攻撃は、28日齢(孵化後4週齢)時にDSM10775株を0.1ml/羽(2.6×107CFU/羽)、静脈内攻撃し、7日間、血中菌数を測定した。また、臨床観察を行い、最終日には、体重測定および剖検を実施した。
(6)抗体測定
7日齢以降1週間間隔で採血を行い、抗O2 LPS抗体(IgA、IgGおよびIgM)をELISA法にて測定した。
ELISA抗原としては、K−1株より温フェノール法にてLPSを抽出し、50μg/wellとなるように調整して用いた。
1次血清としては、5%FCS加Tween−PBSで100倍希釈して用いた。
2次血清としては、POD標識抗鶏IgA、IgG、IgMを5%FCS加Tween−PBSで4、000倍希釈して用いた。
【0077】
【表8】
Figure 0004161736
【0078】
2.成績
(1)抗体応答は全群認められなかった。
【0079】
(2)血中菌数の推移(図11参照)
点眼接種群(図11中に黒丸で示す、1.免疫群)では、攻撃1日以降、対照群(図11中に「×」で示す、6.非免疫群)に対して1/55〜1/398の菌数で推移した。点鼻接種群(図11中に黒三角で示す、2.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(6.非免疫群)に対して1/6〜1/15の菌数で推移した。飲水投与群(図11中に黒四角で示す、3.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(6.非免疫群)に対して1/2〜1/8の菌数で推移した。また、総排泄腔接種群(図11中に黒菱形で示す、4.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(6.非免疫群)に対して1/16〜1/178の菌数で推移した。また、発育鶏卵内接種群(図11中に白丸で示す、5.免疫群)では、攻撃後1日以降、対照群(6.非免疫群)に対して1/9〜1/38の菌数で推移した。
【0080】
(3)他の検査項目(表9−1、表9−2参照)
飲水投与群(3.免疫群)以外は、対照群(6.非免疫)に対して同等以上の成績を示した。
【0081】
【表9】
Figure 0004161736
【0082】
(4)安全性
試験期間を通じて、ワクチン接種による鶏の異常は認められなかった。
【0083】
以上の成績から、本発明の家禽大腸菌症ワクチンは、点眼接種、点鼻接種、飲水投与(経口接種)、総排泄腔接種および発育鶏卵内接種のいずれでも有効に免疫応答を導くことが示されたが、特に点眼接種により優れた免疫応答を導くことが示された。
【0084】
【発明の効果】
本発明に係る家禽大腸菌症ワクチンは、不活化大腸菌抗原を用い、かつ生体由来物質であるリン脂質からなるリポソームやリポソーム様脂質を基材とするアジュバントを用いた安全性の高いワクチンであり、家禽、とりわけブロイラーなどの肉用家禽の種鶏以外の雛に直接点眼、点鼻または総排泄腔へ接種し、または飲水投与するか、あるいは発育鶏卵内に注射する方法で接種することができ、前記家禽の雛に強い免疫を誘導して大腸菌症から防御することができ、また該家禽から得られた食肉に残留する恐れがなく、安全性の高いワクチンである。
【0085】
また、抗原として、菌体表面にIssを発現している大腸菌を用いたり、更に、前記リポソームとしてSUV型陽性荷電リポソームを用いることで、家禽に対してより効果的に免疫能を付与することができる。
【0086】
【配列表】
Figure 0004161736
Figure 0004161736

【図面の簡単な説明】
【図1】 大腸菌株のPCR成績
【図2】 大腸菌株の菌体外膜複合体のSDS−PAGE成績
【図3】 大腸菌株の菌体外膜複合体のウェスタンブロッティング成績
【図4】 実施例1の試験実施項目
【図5】 実施齢1における攻撃後の血中攻撃菌数の推移を示すグラフ
【図6】 実施例2の試験実施項目
【図7】 実施例2における攻撃後の血中攻撃菌数の推移を示すグラフ
【図8】 実施例3の試験実施項目
【図9】 実施例3における攻撃後の血中攻撃菌数の推移を示すグラフ
【図10】 実施例4の試験実施項目
【図11】 実施例4における攻撃後の血中攻撃菌数の推移を示すグラフ

Claims (6)

  1. 家禽を大腸菌症から防御するために点眼接種されるワクチンであって、大腸菌のホルマリン不活化全菌体またはその破砕物と、リポソームまたはリポソーム様の形態を示す脂質を基材とするアジュバントを含有することを特徴とする家禽大腸菌症ワクチン。
  2. 前記大腸菌が、菌体表面に血清抵抗性因子を表出している大腸菌である請求項1記載のワクチン
  3. 前記リポソームまたはリポソーム様の形態を示す脂質が、陽性荷電している請求項1または2記載のワクチン。
  4. 前記リポソームが、第4級脂質アミンを含有している請求項記載のワクチン。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のワクチンを、家禽に点眼接種することを特徴とする、家禽を大腸菌症から防御する方法。
  6. 孵化後、0日齢〜5日齢の雛にワクチンを接種する請求項記載の方法。
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