JP4158720B2 - 内燃機関の点火時期制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ノックを発生しないように点火時期を制御する内燃機関の点火時期制御装置に関するものである。
エンジンの点火時期は燃費や出力に影響し、また点火時期がずれるとノッキングや失火を生じるおそれがあるので、その制御は非常に重要である。通常は、10〜15degATDCでシリンダ内圧力が最大圧になるように点火時期を制御している。しかし、点火時期設定の基本となる最大トルク最小進角点火時期(Minimmum Spark Advance for Best Torque;以下「MBT」と略す)は、エンジン回転速度、負荷、空燃比、EGR率等によって時々刻々と変動する。そこで従来は、エンジン回転速度や負荷に応じて設定した基本点火時期マップと、さまざまな運転状態を想定した補正値マップとを備え、運転状態に応じてそれらのマップを参照して制御していた。しかし、そのような方法では、精度を向上させるためにマップの格子数やマップそのものを増やさなければならず、マップを作成するために膨大な予備実験を要する。
また、従来は、ノックをセンサによって検出したら、それをフィードバックして点火時期を遅らせている。しかし、この方法では実際に発生したノックを検出してからフィードバック制御を行うので、制御遅れを回避できない。そこで特許文献1では、クランク角に対する気筒内圧力及び演算開始クランク角の気筒内ガス温度を入力し、それらに基づいて、気筒内ガスが断熱圧縮されるとの仮定のもとで気筒内ガス温度を計算して、その気筒内ガス温度が1200K以上に達した時点がノック発生時期であるとして、ノック発生時期を予測している。
特開平7−332149号公報(第3−5頁、第1,2,5図等)
ところで、1/τマップから自着火時期を求めるものが知られている。これによれば圧縮開始から燃焼に至るまでの燃焼室内の未燃ガスの圧力温度をトレースして知ることで、より精度よく自着火時期を求めることができる。しかしながら、特許文献1では圧力センサを用いて筒内圧力を直接検出している。このようにセンサを用いる方式では、運転条件が種々変化した場合には、その都度適合する必要があるので、適合工数が多大なものとなっていた。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、多くの適合工数を必要とすることなく、適切な点火時期制御を行うことが可能な内燃機関の点火時期制御装置を提供することを目的としている。
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。
本発明は、内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段(51)と、
前記運転状態検出手段で検出した運転状態に基づいて、ノックを発生しない限界の点火時期を算出するノック限界点火時期算出手段(53〜55)とを有する内燃機関の点火時期制御装置であって、前記ノック限界点火時期算出手段(53〜55)は、筒内温度及び筒内圧力を算出する温度圧力算出手段(531)と、前記筒内温度に基づいて未燃ガスの比熱比を算出する未燃ガス物性値算出手段(53221)と、前記未燃ガス比熱比と前記筒内圧力に基づいて未燃ガス温度を算出する未燃ガス温度算出手段(53222)と、前記未燃ガス温度と前記筒内圧力に基づいて筒内ガスの着火遅れを算出する着火遅れ算出手段(5323)と、前記着火遅れを時間積分してノック発生指標を算出するノック発生指標算出手段(532)と、を備え、その算出したノック発生指標に基づいて、ノックを発生しない限界の点火時期を算出ことを特徴とする。
本発明によれば、運転状態に基づいて筒内温度及び筒内圧力を算出し、その筒内温度及び筒内圧力に基づいて、ノックを発生しない限界の点火時期を算出するようにした。筒内温度及び筒内圧力は筒内ガスの最も基本的な状態量であるので、機関機種によらずに略同一の特性とすることが可能になり、またエンジンの暖機状態や環境条件にかかわらず、精度よくリアルタイムにノック発生時期を推定することができ、多くの適合工数を必要とすることなく、適切な点火時期制御を行うことが可能になったのである。
以下では図面等を参照して本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
図1は本発明のシステムを説明するための概略図である。
空気は吸気コレクタ2に蓄えられた後、吸気マニホールド3を介して各気筒の燃焼室5に導入される。燃料は各気筒の吸気ポート4に配置された燃料インジェクタ21より噴射供給される。空気中に噴射された燃料は気化しつつ空気と混合してガス(混合気)を作り、燃焼室5に流入する。この混合気は吸気弁15が閉じることで燃焼室5内に閉じこめられ、ピストン6の上昇によって圧縮される。
この圧縮混合気に対して高圧火花により点火を行うため、パワートランジスタ内蔵の点火コイルを各気筒に配した電子配電システムの点火装置11を備える。すなわち、点火装置11は、バッテリからの電気エネルギーを蓄える点火コイル13と、点火コイル13の一次側への通電、遮断を行うパワートランジスタと、燃焼室5の天井に設けられ点火コイル13の一次電流の遮断によって点火コイル13の二次側に発生する高電圧を受けて、火花放電を行う点火プラグ14とからなっている。
圧縮上死点より少し手前で点火プラグ14により火花が飛ばされ圧縮混合気に着火されると、火炎が広がりやがて爆発的に燃焼し、この燃焼によるガス圧がピストン6を押し下げる仕事を行う。この仕事はクランクシャフト7の回転力として取り出される。燃焼後のガス(排気)は排気弁16が開いたとき排気通路8へと排出される。
排気通路8には三元触媒9を備える。三元触媒9は排気の空燃比が理論空燃比を中心とした狭い範囲(ウインドウ)にあるとき、排気に含まれるHC、CO、NOxといった有害三成分を同時に効率よく除去できる。空燃比は吸入空気量と燃料量の比であるので、エンジンの1サイクル(4サイクルエンジンではクランク角で720°区間)当たりに燃焼室5に導入される吸入空気量と、燃料インジェクタ21からの燃料噴射量との比が理論空燃比となるように、エンジンコントローラ50ではエアフローメータ32からの吸入空気流量の信号とクランク角センサ(33、34)からの信号に基づいて燃料インジェクタ21からの燃料噴射量を定めると共に、三元触媒9の上流に設けたO2センサ35からの信号に基づいて空燃比をフィードバック制御している。
吸気コレクタ2の上流には絞り弁23がスロットルモータ24により駆動される、いわゆる電子制御スロットル22を備える。運転者が要求するトルクはアクセルペダル41の踏み込み量(アクセル開度)に現れるので、エンジンコントローラ50ではアクセルセンサ42からの信号に基づいて目標トルクを定め、この目標トルクを実現するための目標空気量を定め、この目標空気量が得られるようにスロットルモータ24を介して絞り弁23の開度を制御する。
吸気弁用カムシャフト25、排気弁用カムシャフト26及びクランクシャフト7の各前部にはそれぞれカムスプロケット、クランクスプロケットが取り付けられ、これらスプロケットにタイミングチェーン(不図示)を掛け回すことで、カムシャフト25、26がエンジンのクランクシャフト7により駆動されるのであるが、このカムスプロケットと吸気弁用カムシャフト25との間に介在して、作動角一定のまま吸気弁用カムの位相を連続的に制御し得る吸気バルブタイミングコントロール機構(以下、「吸気VTC機構」という。)27と、カムスプロケットと排気弁用カムシャフト26との間に介在して、作動角一定のまま排気弁用カムの位相を連続的に制御し得る排気バルブタイミングコントロール機構(以下、「排気VTC機構」という。)28とを備える。吸気弁15の開閉時期や排気弁16の開閉時期を変えると燃焼室5に残留する不活性ガスの量が変化する。燃焼室5内の不活性ガスの量が増えるほどポンピングロスが減って燃費がよくなるので、運転条件によりどのくらいの不活性ガスが燃焼室5内に残留したらよいかを目標吸気弁閉時期や目標排気弁閉時期にして予め定めており、エンジンコントローラ50ではそのときの運転条件(エンジンの負荷と回転速度)より目標吸気弁閉時期と目標排気弁閉時期を定め、それら目標値が得られるように吸気VTC機構27、排気VTC機構28の各アクチュエータを介して吸気弁閉時期と排気弁閉時期を制御する。
吸気温度センサ43からの吸気温度の信号、吸気圧力センサ44からの吸気圧力の信号、排気温度センサ45からの排気温度の信号、排気圧力センサ46からの排気圧力の信号が、水温センサ37からの冷却水温の信号と共に入力されるエンジンコントローラ50では、パワートランジスタ13を介して点火プラグ14の一次側電流の遮断時期である点火時期を制御する。
続いて、本発明の特徴である制御の基本的な考え方について説明する。
図2、図3はノック発生メカニズムについて説明する図である。
混合ガスに点火され、燃焼が開始すると、熱発生率が急激に上昇する(図2(A))。すると、筒内温度(図2(B))、筒内圧力(図2(C))も上昇する。そして、点火された火が伝わる前に未燃ガスが自着火して急激な燃焼を起こすと、ノックを発生する(図2(C))。自着火時間τの逆数(1/τ)が着火遅れを表す。この1/τの時間積分値が1となるクランク角でノックが発生する(図2(D))。すなわち、∫1/τ・dtがノック発生指標である。
図3を参照してさらに詳しく説明する。なお図3(A)は横軸に筒内温度、縦軸に筒内圧力をとったときの1/τマップである。筒内温度及び筒内圧力がわかれば、このマップから1/τの値が求まる。1/τを筒内圧力、筒内温度の履歴に沿って求めて時間積分して∫1/τ・dtを求める。∫1/τ・dt=1となるクランク角でノックが発生すると推定できる。
その推定の実証結果を図3(B)に示す。図3(B)の横軸にノック発生クランク角の実測値をとり、一方、縦軸に上記のようにして算出したノック発生クランク角の推定値をとる。すると図3(B)からも明らかなように推定値が実測値と略一致し、上記推定の正しいことが立証できた。
本件発明者は、ノック発生指標として∫1/τ・dtを導入した。これにより、ノック発生指標を筒内圧力及び筒内温度に帰着させることができたのである。筒内圧力及び筒内温度は筒内ガスの最も基本的な状態量であるので、機関機種によらずに略同一の特性とすることが可能になり、またエンジンの暖機状態や環境条件にかかわらず、精度よくリアルタイムにノック発生時期を推定することが可能になったのである。
図4は本発明による点火時期制御装置の制御の全体を示す制御ブロック図である。
エンジンコントローラ50は、運転状態51に基づいて燃焼速度521、燃焼期間522、基本点火時期523を順次算出し、また、ノック発生指標53を演算し、進角補正/限界(リタード幅)54を求め、それらよりノック限界点火時期55を算出する。
続いて、各構成ブロックについてさらに詳しく説明する。なお、基本点火時期算出部52の具体的な内容については特開2003−148236号公報において詳細に説明されているので本件では説明を省略する。
図5はノック発生指標ブロック53を詳述する図である。
ノック発生指標ブロック53においては、基本点火時期MBTCAL及び演算クランク角間隔delta_thetaを入力し、ノック発生指標演算開始要求JOB_REQに基づき、演算カウンタ(i)ごとに演算クランク角CA_calc(i)を順次計算する。そしてその演算クランク角CA_calc(i)に基づいてノック発生指標530を演算し、演算カウンタ(i)ごとにノック発生指標idx_kocr(i)及び質量燃焼割合X_burn(i)を順次計算する。なお質量燃焼割合X_burn(i)が燃焼終了時燃焼割合X_burn_endを超えるまで、割込演算を要求する。
ノック発生指標演算ブロック530については図6を参照しながら説明する。ノック発生指標演算ブロック530は、筒内平均温度・圧力演算ブロック531と、ノック発生指標演算ブロック532とを有する。筒内平均温度・圧力演算ブロック531においては、クランク角度CA、エンジン回転数NE、基本点火時期MBTCAL、噴射パルス幅TP、シリンダ容積初期値V_cyl_ini、筒内温度初期値T_cyl_ini、筒内圧初期値P_cyl_ini、点火むだ時間IGNDEAD、燃焼期間BURN、基準燃焼割合X_ref、残ガス率MRESFRに基づいて、筒内温度T_cyl、筒内圧P_cyl、質量燃焼割合X_burnを算出する。ノック発生指標演算ブロック532においては、クランク角CA、エンジン回転数NE、基本点火時期MBTCAL、筒内温度T_cyl、筒内圧P_cylに基づいて、ノック発生指標idx_kocrを算出する。筒内平均温度・圧力演算ブロック531については図7を参照しながら詳述し、ノック発生指標演算ブロック532については図21を参照しながら詳述する。
まず、図7を参照して、筒内平均温度・圧力演算ブロック531について説明する。
筒内平均温度・圧力演算ブロック531は、シリンダ容積演算ブロック5311と、発熱量演算ブロック5312と、冷却損失演算ブロック5313と、筒内温度・圧力演算ブロック5314とを有する。
シリンダ容積演算ブロック5311においては、クランク角度CAに基づいて、シリンダ容積V_cyl、ピストン変位x_pisを算出する。発熱量演算ブロック5312においては、クランク角度CA、噴射パルス幅TP、基本点火時期MBTCAL、点火むだ時間IGNDEAD、燃焼期間BURN、基準燃焼割合X_ref、残ガス率MRESFRに基づいて、発熱率Q_burn、物性演算用質量燃焼割合X_burn_r、質量燃焼割合X_burnを算出する。冷却損失演算ブロック5313においては、シリンダ容積V_cyl、ピストン変位x_pis、残ガス率MRESFR、筒内温度初期値T_cyl_ini、シリンダ容積初期値V_cyl_ini、筒内圧初期値P_cyl_ini、エンジン回転数NE、筒内圧前回値P_cyl_z、筒内温度前回値T_cyl_zに基づいて、冷却損失Q_lossを算出する。筒内温度・圧力演算ブロック5314においては、噴射パルス幅TP、シリンダ容積V_cyl、発熱率Q_burn、物性演算用質量燃焼割合X_burn_r、冷却損失Q_loss、筒内圧前回値P_cyl_z、筒内温度前回値T_cyl_zに基づいて、筒内圧P_cyl、筒内温度T_cylを算出する。
続いて、図7に示した筒内平均温度・圧力演算ブロック531を構成する各ブロックについてさらに詳しく説明する。
はじめに、シリンダ容積演算ブロック5311の詳細について、図8を参照して説明する。シリンダ容積演算ブロック5311は、ピストン変位演算ブロック53111と、シリンダ容積演算ブロック53112とを有する。ピストン変位演算ブロック53111において、クランク角度CAからピストン変位x_pisを算出する。シリンダ容積演算ブロック53112において、シリンダ容積V_cylを算出する。
次に、発熱量演算ブロック5312の詳細について、図9を参照して説明する。
発熱量演算ブロック5312は、Wiebe関数定数設定ブロック53121と、熱発生率算出ブロック53122と、質量燃焼割合算出ブロック53123と、発熱量/1シリンダ/1サイクル算出ブロック53124と、発熱量/1シリンダ/演算間隔算出ブロック53125とを有する。
ここでWiebe関数について説明する。熱発生率の特性を表すものとして、質量燃焼割合X(%)をクランク角θ(deg)に対する関数として一般に
X=1−exp[-a・[(θ-θS)/θB]n+1] …(1)
θS :実燃焼開始クランク角(deg)
θB :実燃焼期間(deg)
a,n:定数
と記述することができる。上記a,nは燃焼室形状や点火プラグ位置、および燃焼室内のガス流動特性等、エンジン機種によって定まる。これは実験等によって予め決めておくことができる。この(1)式がWiebe関数である。
上記(1)式をθで微分すると熱発生率を表す関数となり、
dX/dθ
=a(n+1)/θB・[(θ-θS)/θB]n・exp[-a・[(θ-θS)/θB]n+1] …(2)
(1)式を実燃焼期間θBについて解けば、
θB(θ−θ S )/[-log(1−X)/a]1/(n+1) …(3)
となる。
以上を踏まえて、Wiebe関数定数設定ブロック53121について、図10を参照しながら説明する。なお図10は上述の(3)式を制御ブロック図として記載したものである。すなわち、(3)式において、θ−θ S =BURN、X=X_refを代入すれば実燃焼期間θB(BURN_r)を算出することができる。Wiebe関数定数設定ブロック53121は、基本点火時期MBTCAL、点火むだ時間IGNDEADに基づいて、熱発生開始時期BURN_iniを算出するとともに、燃焼期間BURN、基準燃焼割合X_refに基づいて、実燃焼期間BURN_rを算出する。
また熱発生率算出ブロック53122については、図11を参照しながら説明する。なお図11は上述の(2)式を制御ブロック図として記載したものである。すなわち、(2)式において、θ=CA、θS=BURN_ini、θB=BURN_rを代入すれば熱発生率dX/dθを算出することができる。熱発生率算出ブロック53122は、クランク角度CA、熱発生開始時期BURN_ini、実燃焼期間BURN_rに基づいて、熱発生率を算出する。
質量燃焼割合算出ブロック53123については、図12を参照しながら説明する。なお図12は上述の(1)式を制御ブロック図として記載したものである。すなわち、(1)式において、θ=CA、θS=BURN_ini、θB=BURN_rを代入すれば質量燃焼割合X(X_burn)を算出することができる。質量燃焼割合算出ブロック53123は、クランク角度CA、熱発生開始時期BURN_ini、実燃焼期間BURN_r、残ガス率MRESFRに基づいて、質量燃焼割合X_burn、物性演算用質量燃焼割合X_burn_rを算出する。
発熱量/1シリンダ/1サイクル算出ブロック53124については、図13を参照しながら説明する。発熱量/1シリンダ/1サイクル算出ブロック53124は、噴射パルス幅TP、定数KCONST、目標空燃比TABYF、低発熱量Heat_Lowerに基づいて、1サイクル当たりの1シリンダ毎の発熱量を算出する。
発熱量/1シリンダ/演算間隔算出ブロック53125については、図14を参照しながら説明する。発熱量/1シリンダ/演算間隔算出ブロック53125は、熱発生率及び1サイクル当たりの1シリンダ毎の発熱量に基づいて、発熱量Q_burnを算出する。
以上が発熱量演算ブロック5312の説明である。続いて、図7の冷却損失演算ブロック5313の詳細については、図15を参照して説明する。
冷却損失演算ブロック5313は、燃焼室表面積算出ブロック53131と、平均ピストン速度算出ブロック53132と、モータリング−ガス物性値算出ブロック53133と、モータリング−筒内圧算出ブロック53134と、モータリング−筒内温度算出ブロック53135と、熱伝達係数算出ブロック53136と、冷却損失算出ブロック53137とを有する。
燃焼室表面積算出ブロック53131は、ピストン変位x_pisに基づいて燃焼室表面積を算出する。平均ピストン速度算出ブロック53132は、エンジン回転数に基づいて平均ピストン速度を算出する。
モータリング−ガス物性値算出ブロック53133は、残ガス率MRESFRから求めた質量燃焼割合と、筒内温度とに基づいて、比熱比κを算出する。具体的な算出方法は、ガス物性値算出ブロック53141(図19)と同じであるので、ここでは説明を省略する。
モータリング−筒内圧算出ブロック53134は、筒内圧前回値、シリンダ容積前回値、シリンダ容積今回値、比熱比κに基づいて、筒内圧P_cylを算出する。なお本演算では断熱変化であるとして計算している。モータリング−筒内温度算出ブロック53135は、筒内温度前回値、シリンダ容積前回値、シリンダ容積今回値、比熱比κに基づいて、筒内温度T_cylを算出する。なお本演算では断熱変化であるとして計算している。
次に、熱伝達係数算出ブロック53136について説明する前に、冷却損失Woschniの式について説明する。
冷却損失QLは以下により算出される、
QL = ∫t1 t2 h・A・( T - TW )・dt …(4)
h = 110・d-0.2・P0.8・T-0.53・[C1・cm + C2・(VS・TI)/(PI・VI)・(P - PM)]0.8 …(5)
h :熱伝達係数 [ kcal/(m2・h・K) ]
d :シリンダボア径 [ m ]
VS :シリンダ容積 [ m3 ]
cm :平均ピストン速度 [ m/s ]
PI :吸気弁閉時筒内圧 [ kgf/cm2 ]
VI :吸気弁閉時筒内容積 [ m3 ]
TI :吸気弁閉時筒内温度 [ K ]
PM :モータリング筒内圧 [ kgf/cm2 ]
P :筒内圧 [ kgf/cm2 ]
T :筒内温度 [ K ]
C1 :6.18(排気),2.28(圧縮&膨張) [−]
C2 :3.24×10-3 [ m/(s・K) ]
なお、上記でC1、C2は一般に用いられている定数である。
図16は(5)式を制御ブロックとして図示したものである。この図16に示すように、熱伝達係数算出ブロック53136は、筒内圧、筒内温度、平均ピストン速度、モータリング筒内圧、筒内温度初期値、シリンダ容積初期値、筒内圧初期値に基づいて、熱伝達係数を算出する。
図17は(4)式を制御ブロックとして図示したものである。この図17に示すように、冷却損失算出ブロック53137は、筒内温度、燃焼室壁温度、燃焼室表面積、熱伝達係数、演算間隔、エンジン回転数に基づいて、冷却損失Q_lossを算出する。
以上が冷却損失演算ブロック5313の説明である。次に図7の筒内温度・圧力演算ブロック5314について、図18を参照して説明する。
筒内温度・圧力演算ブロック5314は、ガス物性値算出ブロック53141と、全ガス量算出ブロック53142と、断熱変化筒内圧算出ブロック53143と、断熱変化筒内温度算出ブロック53144と、筒内温度算出ブロック53145と、筒内圧算出ブロック53146とを有する。
ガス物性値算出ブロック53141は、質量燃焼割合、筒内温度に基づいて、ガス物性値(比熱比、定容比熱)を算出する。ここで、既燃ガスの割合(「物性演算用質量燃焼割合」を適用)に基づいてガス物性を算出する場合、
(ガス物性値)=(既燃ガス物性値)*(既燃ガス割合)+(未燃ガス物性値)*(1-既燃ガス割合) …(6)
であるので、それを図19のブロック図に示した。図19に示すように、モータリング−ガス物性値算出ブロック53133は、筒内温度T_cyl(初期値はT_cyl_ini)に基づいて、既燃分の定容比熱及び比熱比を求めるとともに、同じく筒内温度T_cyl(初期値はT_cyl_ini)に基づいて、未燃分の定容比熱及び比熱比を求め、既燃分及び未燃分の割合を掛け合わせて筒内ガスの物性値を算出する。
全ガス量算出ブロック53142は、図20に示すように、噴射パルス幅TP、KCONST、空燃比ABYFに基づいて全ガス量を算出する。
断熱変化筒内圧算出ブロック53143は、筒内圧前回値、シリンダ容積前回値、シリンダ容積今回値、比熱比κに基づいて、断熱変化筒内圧を算出する。断熱変化筒内温度算出ブロック53144は、筒内温度前回値、シリンダ容積前回値、シリンダ容積今回値、比熱比κに基づいて、断熱変化筒内温度を算出する。筒内温度算出ブロック53145は、断熱変化筒内温度、発熱量、冷却損失、全ガス量、定容比熱に基づいて筒内温度T_cylを算出する。筒内圧算出ブロック53146は、断熱変化筒内圧、筒内温度、断熱変化筒内温度に基づいて、筒内圧P_cylを算出する。
以上が筒内温度・圧力演算ブロック5314の説明であり、これによって図6の筒内平均温度・圧力演算ブロック531についてすべて説明した。次に、図6のノック発生指標演算ブロック532について、図21を参照しながら詳述する。
ノック発生指標演算ブロック532は、resetフラグ演算ブロック5321と、未燃ガス温度演算ブロック5322と、瞬時着火遅れ逆数演算ブロック5323と、ノック発生指標演算ブロック5324とを有する。
resetフラグ演算ブロック5321の詳細を図22に示す。resetフラグ演算ブロック5321は、クランク角度CAが基本点火時期MBTCALを超えたらresetフラグを立てる。未燃ガス温度演算ブロック5322は、図23に示すように未燃ガス物性値算出ブロック53221と、未燃ガス温度算出ブロック53222とを有する。未燃ガス物性値算出ブロック53221は、ガス物性値算出ブロック53141(図19)と同じため、説明を省略する。質量燃焼割合としてゼロを入力して未燃ガスだけの物性値を算出している。また未燃ガス温度算出ブロック53222は、未燃ガス温度前回値、筒内圧今回値、筒内圧前回値、比熱比κに基づいて未燃ガス温度T_ubを算出する。
瞬時着火遅れ逆数演算ブロック5323においては、未燃ガス温度T_ub、筒内圧P_cylに基づいて瞬時着火遅れ逆数tauinvを求める。なお、このマップは予め実験によって求めらておく。ノック発生指標演算ブロック5324は、図24に示すようにエンジン回転数NEから時間を算出し、その時間によって瞬時着火遅れ逆数tauinvを積分してノック発生指標idx_kocrを算出する。なおresetフラグが立っていたら、初期値ゼロをノック発生指標idx_kocrとする。
以上が図6のノック発生指標演算ブロック532の説明であり、これによって図4のノック発生指標53についてすべて説明した。続いて、図4のリタード幅算出ブロック54について図25を参照しながら詳述する。なお図25はリタード幅算出ブロック54の詳細な制御ブロックを示す図である。
リタード幅算出ブロック54は、クランク角算出ブロック541と、質量燃焼割合算出ブロック542と、ノック強度算出ブロック543と、リタード幅算出ブロック544とを備える。
クランク角算出ブロック541は、予め実験によって求められている線図に基づいて、ノック発生指標idx_kocr(i)、演算クランク角CA_calc(i)からノック発生クランク角CA_knkを求める。
質量燃焼割合算出ブロック542は、予め実験によって求められている線図に基づいて、演算クランク角CA_calc(i)、質量燃焼割合X_burn(i)、ノック発生クランク角CA_knkからノック発生質量燃焼割合X_bknkを求める。
ノック強度算出ブロック543は、予め実験によって求められている線図に基づいて、ノック発生クランク角CA_knk、ノック発生時質量燃焼割合X_bknkからノック強度I_knkを求める。なお図中の線図において、矢印方向(下方)が遅角側である。
リタード幅算出ブロック544は、予め実験によって求められている線図に基づいて、ノック強度I_knkからリタード幅(進角補正限界)CA_rtdを求める。
次に、図4のノック限界点火時期算出ブロック55について図26を参照しながら詳述する。なお図26はノック限界点火時期算出ブロック55の詳細な制御ブロックを示す図である。基本点火時期MBTCALからリタード幅CA_rtdを遅角させて点火時期ADVを求める。
以上で、図4に示すエンジンコントローラ50の制御についてすべて説明した。
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、ノック発生指標として∫1/τ・dtを導入することで、ノック発生指標を筒内圧力及び筒内温度に帰着させることができた。筒内圧力及び筒内温度は筒内ガスの最も基本的な状態量であるので、機関機種によらずに略同一の特性とすることが可能になり、またエンジンの暖機状態や環境条件にかかわらず、精度よくリアルタイムにノック発生時期を推定することが可能になったのである。
また、筒内圧力及び筒内温度は点火時期の影響を受ける。そこで、本発明では、まず基本となる点火時期(基本点火時期)を求め、その基本点火時期を、筒内圧力及び筒内温度から求められた補正量で修正することで、より正確な点火時期を求めることができるのである。
さらに、本発明によれば筒内圧センサを用いなくても、運転状態に応じた適切な熱発生パターンを求めることができる。
さらにまた、熱発生パターンの基本プロファイルは、エンジン燃焼室形状や点火プラグの位置等によってほぼ決まるので、無次元化された「熱発生率」の基本パターンを持ち、これと運転状態に応じて算出した燃焼速度代表値から熱発生パターンを得るようにしたので容易かつ適切に熱発生パターンを求めることができるのである。
また、点火時期をMBTとした場合には、燃焼速度や熱発生率のピーク位置等、熱発生パターンが運転状態に応じて一義的に定まることとなる。そのため、基本点火時期をMBTとすると、熱発生パターンは運転状態に基づいて比較的容易に定めることができるのである。
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明と均等であることは明白である。
本発明のシステムを説明するための概略図である。 ノック発生メカニズムについて説明する図である。 ノック発生メカニズムについて説明する図である。 本発明による点火時期制御装置の制御の全体を示す制御ブロック図である。 ノック発生指標ブロック53を詳述する図である。 ノック発生指標演算ブロック530を示す図である。 筒内平均温度・圧力演算ブロック531を示す図である。 シリンダ容積演算ブロック5311を示す図である。 発熱量演算ブロック5312を示す図である。 Wiebe関数定数設定ブロック53121を示す図である。 熱発生率算出ブロック53122を示す図である。 質量燃焼割合算出ブロック53123を示す図である。 発熱量/1シリンダ/1サイクル算出ブロック53124を示す図である。 発熱量/1シリンダ/演算間隔算出ブロック53125を示す図である。 冷却損失演算ブロック5313の詳細を示す図である。 熱伝達係数算出ブロック53136を示す図である。 冷却損失算出ブロック53137を示す図である。 筒内温度・圧力演算ブロック5314を示す図である。 モータリング−ガス物性値算出ブロック53133を示す図である。 全ガス量算出ブロック53142を示す図である。 ノック発生指標演算ブロック532を示す図である。 resetフラグ演算ブロック5321を示す図である。 未燃ガス温度演算ブロック5322を示す図である。 ノック発生指標演算ブロック5324を示す図である。 リタード幅算出ブロック54の詳細な制御ブロックを示す図である。 ノック限界点火時期算出ブロック55を示す図である。
符号の説明
1 エンジン
50 エンジンコントローラ
51 運転状態検出手段
53 ノック発生指標ブロック(ノック限界点火時期算出手段)
530 ノック発生指標演算ブロック
531 筒内平均温度・圧力演算ブロック(温度圧力算出手段)
5312 発熱量演算ブロック
53121 Wiebe関数定数設定ブロック(熱発生パターン算出手段)
53122 熱発生率算出ブロック
53123 質量燃焼割合算出ブロック
53124 発熱量/1シリンダ/1サイクル算出ブロック
53125 発熱量/1シリンダ/演算間隔算出ブロック
532 ノック発生指標演算ブロック(ノック発生指標算出手段)
54 リタード幅算出ブロック(ノック限界点火時期算出手段(点火時期補正量算出手段))
55 ノック限界点火時期算出ブロック(ノック限界点火時期算出手段)

Claims (2)

  1. 内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
    前記運転状態検出手段で検出した運転状態に基づいて、ノックを発生しない限界の点火時期を算出するノック限界点火時期算出手段と、
    を有する内燃機関の点火時期制御装置であって、
    前記ノック限界点火時期算出手段は、
    筒内温度及び筒内圧力を算出する温度圧力算出手段と、
    記筒内温度に基づいて未燃ガスの比熱比を算出する未燃ガス物性値算出手段と、
    前記未燃ガス比熱比と前記筒内圧力に基づいて未燃ガス温度を算出する未燃ガス温度算出手段と、
    前記未燃ガス温度と前記筒内圧力に基づいて筒内ガスの着火遅れを算出する着火遅れ算出手段と、
    前記着火遅れを時間積分してノック発生指標を算出するノック発生指標算出手段と、
    を備え、
    その算出したノック発生指標に基づいて、ノックを発生しない限界の点火時期を算出する、
    ことを特徴とする内燃機関の点火時期制御装置。
  2. 前記ノック限界点火時期算出手段は、
    前記温度圧力算出手段で算出した筒内温度及び筒内圧力に基づいて、ノックを発生させないリタード量を算出する点火時期補正量算出手段を備え、
    前記リタード量及び機関運転状態に基づいて算出された基本点火時期に基づいて、ノックを発生しない限界の点火時期を算出する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の点火時期制御装置。
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