JP4158408B2 - セラミックコンデンサの等価直列抵抗における電極抵抗および誘電体の損失の測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、セラミックコンデンサの等価直列抵抗における電極抵抗および誘電体の損失の測定方法に関し、特に、積層セラミックコンデンサなどの電極抵抗および誘電体の損失を個別に測定するための測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セラミックコンデンサの選別方法として、セラミックコンデンサの静電容量、等価直列抵抗、コンデンサ損失、絶縁抵抗等の特性値を測定し、これらの測定値に基づいて所定範囲の値から外れたセラミックコンデンサを不良品として良否を選別する方法がある。
また、セラミックコンデンサの設計においては、静電容量、等価直列抵抗、コンデンサ損失、絶縁抵抗等の特性値について所望の特性値が得られるように、誘電体材料や電極材料、寸法や電極形状などが設計されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特性値はすべて、セラミックコンデンサ全体としての特性値であり、セラミックコンデンサを構成する個々の部分の特性値ではなかった。
そのため、良否の選別において、電極部分に微小な欠陥があったとしても、電極部分以外の部分、たとえば、誘電体部分で補正されてしまってセラミックコンデンサ全体としては所望の特性値を満たしていることがあり、このようなものが良品とされる可能性があった。
また、セラミックコンデンサの設計においては、所望の特性値が得られない場合、どの部分に問題があるのかを明確にすることが難しいという問題があった。また、個々の部分がセラミックコンデンサ全体の特性にどのように関係しているか不明であった。
これに対して、セラミックコンデンサの部分的な特性を得るために次のような方法が考えられる。
まず、セラミックコンデンサに研磨等の加工を施して電極を露出させ、電極抵抗を測定する方法が考えられる。
しかしながら、この方法では、セラミックコンデンサを破壊しなければ、特性を測定することができないため、良否選別には用いることができない。また、研磨等の加工についても、加工によって微小な欠陥部分を無くしてしまう可能性があり、非常に困難なものである。
次に、たとえばアルミナ等の基板の上に、セラミックコンデンサにおける電極部分と同じ体積となるように電極ペーストを塗布して焼き付け、その抵抗を測定することにより推定する方法が考えられる。
しかしながら、セラミックコンデンサと同じ状態にはできないため、電極抵抗値が異なる可能性が高いという問題があった。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、非破壊でセラミックコンデンサの電極部分における抵抗と誘電体部分における損失とを分離して把握することができ、セラミックコンデンサの誘電体材料、電極材料、電極形状などの設計や選別に応用することができる、セラミックコンデンサの等価直列抵抗における電極抵抗および誘電体の損失の測定方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
また、この発明は、上述のセラミックコンデンサの等価直列抵抗における電極抵抗および誘電体の損失の測定方法により得られたセラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失を用いてセラミックコンデンサの誘電体材料、電極材料、電極形状を設計することを特徴とする、セラミックコンデンサの設計方法である。
さらに、この発明は、上述のセラミックコンデンサの等価直列抵抗における電極抵抗および誘電体の損失の測定方法により得られたセラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失の値によってセラミックコンデンサの良否を選別することを特徴とする、セラミックコンデンサの選別方法である。
【0006】
ある周波数(f)におけるセラミックコンデンサの等価直列抵抗(ESR)、電極抵抗(r)、誘電体の損失(DL)、静電容量(C)、コンデンサ損失(DF)の関係は、一般に次式で示される。
【0007】
【数1】
【0008】
【数2】
【0009】
これらの式において、近接する複数の周波数f1,f2において測定したとき、電極抵抗(r)や誘電体の損失(DL)が等しいものとみなすと、複数の周波数f1,f2でセラミックコンデンサの静電容量C1,C2と等価直列抵抗ESR1,ESR2とを測定したり、静電容量C1,C2とコンデンサ損失DF1,DF2とを測定して、これらの値から算出することにより、セラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失を値で表すことができる。特に、測定を行う2点の周波数f1,f2が1MHz以下であり、f1に対するf2の比が100以下である場合、これらの周波数における電極抵抗および誘電体の損失が等しいと考えることができる。これは、セラミックコンデンサに用いられる誘電体材料や電極材料が1MHz以下であれば、周波数による変動が少なく、たとえばf1が10kHzに対してf2が1MHzの場合、電極抵抗および誘電体の損失がほぼ同じ値となるためである。したがって、本願において、近接する複数の周波数とは、電極抵抗および誘電体の損失が等しいと考えることができる複数の周波数のことである。
【0010】
セラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失を分離して把握することができれば、これらのパラメータとセラミックコンデンサの特性との関係を分析することができ、セラミックコンデンサの設計に応用することができる。また、電極抵抗および誘電体の損失によって、より細かくコンデンサを選別することができる。
【0011】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の測定方法を用いて、たとえば積層セラミックコンデンサなどのセラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失が測定される。セラミックコンデンサの等価直列抵抗(ESR)は、一般に次の式で表される。
【0013】
【数3】
【0014】
上式において、rはセラミックコンデンサの電極抵抗であり、DLは誘電体の損失であり、fは測定周波数であり、Cは静電容量である。ここで、異なる周波数f1,f2でセラミックコンデンサの特性を測定し、そのとき測定された静電容量をC1,C2、等価直列抵抗をESR1,ESR2とする。そして、異なる周波数f1,f2で測定した電極抵抗(r)および誘電体の損失(DL)が等しいとみなすと、これらのパラメータは、次の2式で表すことができる。
【0015】
【数4】
【0016】
【数5】
【0017】
特に、2つの周波数f1,f2の比が100以下であるような近接した周波数で測定した場合、これらの周波数f1,f2で測定した電極抵抗および誘電体の損失は等しいものとみなすことができる。上の2式より、電極抵抗(r)と誘電体の損失(DL)は、次の2式で表される。
【0018】
【数6】
【0019】
【数7】
【0020】
これらの式を用いてセラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失を得るために、LCRメータなどを用いて、異なる周波数f1,f2でセラミックコンデンサの静電容量C1,C2と等価直列抵抗ESR1,ESR2とが測定される。そして、これらの値を上式に代入することにより、セラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失を算出することができる。
【0021】
このように、この測定方法を採用すれば、セラミックコンデンサの電極抵抗と誘電体の損失とを分離して算出することができる。そのため、セラミックコンデンサの特性を分析する際に、電極部分と誘電体部分とに分けて分析することができる。したがって、セラミックコンデンサを設計する際にも、電極部分と誘電体部分とに分けて設計することができ、所望の特性に近づけることが容易となる。
【0022】
さらに、電極部分と誘電体部分の特性を分けて測定することにより、これまでの静電容量、等価直列抵抗、コンデンサ損失などに加えて、電極抵抗および誘電体の損失にも管理幅を定めて選別を行うことができる。
【0023】
また、セラミックコンデンサの静電容量(C)、コンデンサ損失(DF)および等価直列抵抗(ESR)の間には、次式のような関係があり、この式からも電極抵抗および誘電体の損失を知ることができる。
【0024】
【数8】
【0025】
上式において、fは測定周波数である。そして、LCRメータやCメータなどを用いて、周波数f1,f2で静電容量C1,C2およびコンデンサ損失DF1,DF2を測定すると、上式より等価直列抵抗ESR1,ESR2は、次の2式で表される。
【0026】
【数9】
【0027】
【数10】
【0028】
これらの式を数式6および数式7に代入することにより、電極抵抗(r)および誘電体の損失(DL)は、次の2式で表すことができる。
【0029】
【数11】
【0030】
【数12】
【0031】
このように、2つの周波数における静電容量とコンデンサ損失からも、セラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失を算出することができる。
【0032】
これらの測定方法において、より多くの周波数で静電容量、等価直列抵抗およびコンデンサ損失を測定し、数式6、数式7、数式11、数式12などを用いて電極抵抗および誘電体の損失を算出し、それらの値を平均することによって、算出精度を上げることができる。
【0033】
【実施例】
この発明の方法を用いてセラミックコンデンサの電極抵抗および誘電体の損失を測定するために、積層セラミックコンデンサを準備した。準備した積層セラミックコンデンサについて、LCRメータを用いて、異なる周波数f1,f2で等価直列抵抗ESR1,ESR2、静電容量C1,C2およびコンデンサ損失DF1,DF2を測定し、その結果を表1に示した。これらの値から、数式6,数式7,数式11,数式12を用いて、電極抵抗(r)および誘電体の損失(DL)を算出し、その結果を表2に示した。
【0034】
また、同じ積層セラミックコンデンサについて、測定周波数f1,f2の組み合わせを変えて、等価直列抵抗ESR1,ESR2、静電容量C1,C2、コンデンサ損失DF1,DF2を測定し、その測定結果を表1に示した。これらの測定結果から、数式6,数式7,数式11,数式12を用いて、電極抵抗(r)および誘電体の損失(DL)を算出し、その結果を表2に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1および表2から、同じ試料番号の積層セラミックコンデンサについてみると、同じ測定周波数の組み合わせにおいて、数式6,数式7,数式11,数式12で算出した電極抵抗および誘電損失は、同じ値となっていることがわかる。また、同じ試料番号の積層セラミックコンデンサについて、測定周波数の組み合わせを変えても、得られる電極抵抗および誘電体の損失は、同じ値となった。このように、この発明の測定方法を用いることにより、セラミックコンデンサの電極抵抗と誘電体の損失とを分離して把握することができる。
なお、上記実施の形態においては、2つの周波数f1,f2でセラミックコンデンサの特性を測定したが、これに限るものではなく、さらに測定する周波数を増やしてもよく、要は近接する複数の周波数で測定すればよい。
【0038】
【発明の効果】
この発明によれば、近接する複数の周波数f1,f2で測定した、静電容量C1および等価直列抵抗ESR1と静電容量C2および等価直列抵抗ESR2、または静電容量C1およびコンデンサ損失DF1と静電容量C2およびコンデンサ損失DF2から電極抵抗と誘電体の損失を算出しているので、セラミックコンデンサを破壊することなく、セラミックコンデンサの電極抵抗と誘電体の損失とを分離して把握することができる。
また、これらの電極抵抗と誘電体の損失を用いれば、セラミックコンデンサの設計において、所望の特性が得られない原因が、電極部分にあるのか誘電体にあるのかを明確にすることができる。
さらに、これらの電極抵抗と誘電体の損失を用いれば、セラミックコンデンサの良否選別において、全体の特性からは判別できない微小な欠陥を有する不良品を判別することが可能となる。そのため、電極抵抗値と誘電体の損失の値について、それぞれ選別範囲を設定すれば、厳密な選別が可能となる。
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