図1は、AOTFを用いたOADM装置の基本的原理を示す図である。
同図では、AOTF10に波長λ1〜λnの波長多重光信号が入力され、8波がアド・ドロップされる場合を示している。もちろん、アド・ドロップする波長の数はこれに限られたものではない。
AOTF10による光波長の選択は、ドロップしたい波長に対応するRF信号(電気信号)を印加することによって行う。同図の場合、AOTF10には、波長λ1〜λnの波長多重光信号が入力されている。そして、AOTF10には、波長λ1〜λnに対応する周波数f1〜fnまでのRF信号のうち、8つが印加される。
AOTF10に印加されたRF信号の周波数に対応する波長の光信号は、AOTF10のドロップポートに出力され、光アンプ20によって増幅された後、8×1カプラ11に入力される。ここで、カプラが8×1構成となっているのは、ドロップされる波長数が8となっているからである。8×1カプラ11はドロップされてきた光信号を波長の数だけ分岐する。分岐された各光信号はすべて同じ光信号であり、ドロップされた波長の光信号をすべて含んでいる。次に、波長選択フィルタとしてAOTF13が設けられており、電気ADM(光信号受信器)17に各波長の光信号が送信される。
一方、AOTF10は、所望の波長の光信号をドロップするだけではなく、ドロップした波長の光信号と同じ波長の光信号をアドすることができる。これは、AOTF10がある波長の光信号をドロップする動作を行っている時には、同時に同じ波長の光信号をアドする作用を有しているからである。RF信号としては、ドロップあるいはアドしたい波長の光信号に対応する周波数のRF信号をAOTF10に印加しているだけで良い。
アドする光信号は、同図の左側の構成によって生成される。光源となるレーザダイオードLD19は、アドすべき光信号の波長を有するLD19がアドする光信号の数だけ設けられており、これらのLD19から出力される波長λ1〜λ8の光は8×8カプラ18で一旦合波された後、分岐される。分岐された光は光アンプ15によって増幅され、波長選択フィルタとしてのAOTF14に入力される。AOTF14では、波長λ1〜λ8が多重された光から光信号送出に使いたい波長の光を抽出する。AOTF14で抽出された波長の光は、変調器16によって変調され、光信号とされる。このようにして生成された各波長の光信号は、8×1カプラ12で合波され、光アンプ21で増幅されて、AOTF10に入力される。AOTF10では、アド光信号がスルー光に合波され、出力側に出力される。
このように、AOTF10を使用すれば、原理的には、このAOTF10を1つ使うだけで、OADMの機能を達成することができる。ただし、実際のAOTFの特性は、上記原理で説明したような理想的なものでないので、様々な工夫を必要とする。例えば、AOTF10のアドポートから入力されるアド光信号は、AOTF10のクロストークの為、ドロップポートに僅かに出力される。アド光とドロップ光とは波長が同じであるので、コヒーレントクロストークと呼ばれるクロストークが生じ、光信号の劣化に大きな影響を与える。従って、実際にAOTFを使ってOADM装置を構成する場合には、このコヒーレントクロストークを避けるように構成しなくてはならない。
なお、AOTF10で波長をアド・ドロップしない場合には、光アンプ21をとめておくか、AOTF10の選択帯域をはずすようにしておく。これは、光アンプを動作させておくと、光信号をアドしないにもかかわらず、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光がノイズとしてスルー光信号に加えられてしまうので、SN比の劣化を起こすためである。あるいは、AOTF10の選択帯域をはずしておけば、ASEがスルー光信号の帯域外に挿入されることになるので、スルー光信号のSN比の劣化には直接には影響しなくすることが出来る。
図2は、実際のAOTFを使用してOADM装置を構成する場合の基本的構成例のブロック図である。
同図に示すのは、AOTFを光信号のドロップのみに使用する構成である。入力側から入力された光信号は、光アンプ30で伝送路の損失の補償のために増幅され、1段目のAOTF31に入力される。1段目のAOTF31では、ドロップすべき波長の光信号の内の一部のみをドロップする。そして、1段目のAOTF31をスルーした光信号は、2段目のAOTF32に入力されて、ドロップすべき残りの波長の光信号をドロップする。このようにして、ドロップされた光信号は、カプラ35で合波されると共に、受信器ORの数だけ分岐される。このとき、AOTF31のドロップポート側には、光アッテネータ38が設けられており、AOTF32からドロップされた光信号のレベルとAOTF31からドロップされた光信号のレベルをほぼ同じにしてカプラ35に入力するように構成される。これは、AOTFがロスが大きく、AOTFを1つだけ通過した光信号と2つ通過した光信号とではレベルに大きな差が生じてしまうからである。もし、レベル差があるままドロップ光信号を送出すると、受信側で、あるいは受信側に届くまでに光アンプで増幅しようとしても、レベルの低い光信号がうまく増幅されず、受信側で信号を正しく受信できなくなってしまう。このようにして、ドロップされた光信号はAOTF等の波長選択フィルタ37によって所望の波長が選択され、受信器ORで受信される。
また、AOTF31、32からドロップされた光信号を一旦合波するカプラ35には、別の出力ポートを付けておき、この出力ポートからの光信号を光スペクトルモニタ39に入力して、ドロップ光信号の有無や、各光信号の波長やパワーを監視するようにする。
2段のAOTF31、32をスルーした光信号は、ドロップされない波長の光信号のみを含んでおり、OADM装置のスルー光としてカプラ33に入力される。光送信器OSからは、AM変調された各波長の光信号(ドロップ光信号の波長と同じ波長)がカプラ36で合波され、アド光信号としてカプラ33に入力される。このようにして、カプラ33に入力されるスルー光とアド光は互いに合波され、光アンプ34で増幅されて、伝送路に出力される。
同図の構成例において、1段目のAOTF31と2段目のAOTF32とを使ってドロップすべき全ての光信号をドロップするのは、AOTFの波長選択特性によるものである。すなわち、AOTF31はRF信号が印加されたときの波長選択特性の幅が広く、ITU−T G.692勧告ドラフトで規定されている0.8nm間隔の波長の隣り合う光信号を1つのAOTFでドロップしようとすると、クロストークが発生してしまい受信側で受信できなくなってしまう。そこで、実際には、1つのブロックで示されているAOTF31、あるいは、32は、1つの基板に直列に3段のAOTFがモノリシックに形成されたものを使用している。このようにすると、波長選択特性の幅を狭くすることができるが、これでも十分ではない。そこで、更に、AOTFを2段に設け、1段目では、例えば、光信号の波長を端から順番に番号を付けた場合に、偶数番目あるいは、奇数番目の波長の光信号のドロップのみを担当するようにする。そして、2段目では、1段目ではドロップされなかった、奇数番目あるいは偶数番目の波長の光信号のドロップを担当するようにする。このように構成することによって、隣り合う2つの光信号をドロップする場合にも、波長間隔が最低でも1.6nmとなるので、AOTFの波長選択特性でも十分クロストークを少なくすることができる。
また、同図の構成では、アド光信号は、AOTFを介さないで、直接カプラ33で合波するようにしている。前述したように、AOTFは、ドロップした光信号の波長と同じ波長の光信号をアドする機能を有しているが、AOTFにアドとドロップの両方の機能を担わせると、ドロップ側にアド側の光が混ざり込んでクロストークを発生してしまう。特に、この場合、アド光とドロップ光の波長が同じコヒーレントクロストークなので、クロストークによって生じる、ビート成分が大きくなり、ドロップ側で正常に光信号を受信することができなくなってしまう。アド光は、対応する波長がスルー光から抜かれており、その開いているグリッド(光信号の波長の設定位置)に合波されれば良いので、同図のように、スルー光にカプラで合波する構成を採用する。
なお、同図では、AOTFを2つ用いて、ドロップすべき光信号の全てを分岐する構成を示したが、必ずしも2つに限られるものではなく、2つ以上のAOTFを用いてもよい。このように、多くのAOTFを用いると、1つのAOTFでドロップすべき光信号の内、互いに波長の値が最も近い光信号間の波長間隔を広げることができるので、クロストークをより減少させることができる。
図3は、AOTFを使ったブロードキャスト機能対応のOADM装置の構成例を示すブロック図である。
同図(a)に示されるように、入力側から波長λ1〜λnが波長多重されて送信されてくる。これを光アンプ40で増幅し、カプラ41に入力する。カプラ41では、入力した光信号を2つに分岐し、1つはAOTF42に入力し、もう1つはドロップして、トリビュータリ局のカプラ46に入力する。カプラ46に入力された光信号は、カプラ46で分岐される。分岐する数は、ドロップ光として使用される波長の数でも、全波長数でもよい。カプラ46で分岐された光信号は、波長λ1〜λnまでの波長の光信号を含んでいるので、この中から、ドロップ光として使用する波長の光を波長選択フィルタ48で選択して、抽出する。
一方、AOTF42に送られた光信号は、波長選択フィルタ48で選択された波長をAOTF42で選択し、選択ポートに出力させる。選択ポートはどこにも接続されておらず、選択された光信号は捨てられることになる。AOTF42の後段にもAOTF43が設けられているのは、図2で説明したように、一方のAOTFでドロップすべき波長の光信号の一部をドロップしてやり、他方で残りの波長の光信号をドロップしようとするものである。このようにすることによって、波長選択におけるクロストークを低減することができる。
2段のAOTF42、43を通過したスルー光はカプラ44に入力され、アド光と合波される。アド光は、図2で説明したのと同様に、光源からの光を波長選択フィルタ49で所望の波長の光を選択し、次に変調器50で変調してカプラ47に入力される。カプラ47で合波されたアド光はカプラ44に入力され、スルー光と合波されて、光アンプ45で増幅され、伝送路に送出される。
なお、ここでは、アド光信号は、光源からの光を波長選択フィルタ49で選択した後変調器50で変調をかける構成を示したが、光源からの光に変調をかけ、後に波長選択しても同様にアド光信号を生成することができる。
同図(b)は、ブロードキャスト機能を説明する図である。
同図(a)のOADM装置が同図(b)のように伝送路で接続されている場合、波長λ1の光信号をOADM1〜3でブロードキャストしたいとする。OADM1では、波長λ1をドロップし、AOTFでは波長λ1を選択せず、また、波長λ1のグリッドに光信号をアドしないようにする。すると、波長λ1の光信号はOADM1をスルーし、次のOADM2に入力される。OADM2でも波長λ1の光信号をドロップし、AOTFでは波長λ1を選択しないようにする。すると、同様に波長λ1の光信号はOADM3に伝送される。OADM3では、波長λ1をドロップすると共に、AOTFで波長λ1を選択し、波長λ1の光信号を破棄する。これにより、OADM3から出力される光信号は、波長λ1の新しい光信号がアドされない限り、波長λ2〜λnまでが多重された光信号となる。
このように、同図(a)の構成によれば、OADM1〜3に波長λ1にのった同じ光信号をドロップすることができるので、ブロードキャスト通信を行いたい場合に容易に実現できるという利点がある。
図4は、OADM装置内のAOTF及び伝送路の冗長構成を示す原理的図である。
同図(a)は、OADM内のAOTFの冗長構成を示している。
OADMの入力側に1×2スイッチ60を設け、入力した光信号の進路を2つの進路に切り換えられるように構成しておく。1×2スイッチ60の2つの出力ポートには、現用のAOTFと予備のAOTFを接続し、それぞれのAOTFの後段には、アド光を合波するための合波器を設ける。すなわち、同図(a)では、上側が現用の構成となり、下側が予備の構成となる。それぞれは、1×2スイッチ61の2つの入力ポートに接続されている。1×2スイッチ61は、現用のAOTFからの光信号と予備のAOTFからの光信号とを切り替え、いずれかを伝送路に出力するようにしている。1×2スイッチ61はOADM装置の出力側に設けられる。
同図(b)は、OADM装置外の伝送路の冗長構成を示した図である。
伝送路が現用と予備に2重化されており、OADMの入力側に1×2スイッチ62が設けられている。1×2スイッチ62は、現用伝送路と予備伝送路のいずれかを選択して、光信号をAOTFに送る。AOTFの次段にはアド光信号を合波する合波器が設けられ、1×2スイッチ63に入力する。1×2スイッチ63の出力ポートは、現用伝送路と予備伝送路に接続されており、1×2スイッチ63がいずれかの伝送路を選択して光信号を送出するように構成される。
なお、同図(a)、(b)では、AOTFのみ、あるいは、伝送路のみが2重化されている場合のみを示したが、伝送路とAOTF両方が2重化されている構成も可能である。この場合には、OADM装置の入力側及び出力側の1×2スイッチを2×2スイッチに置き換え、現用と予備の伝送路及び現用と予備のAOTFそれぞれを2×2スイッチの入出力ポートに接続するようにすればよい。また、この場合には、2×2スイッチが壊れた場合には、対処できないので、2×2スイッチも2重化しておくと、より信頼性の高いシステムを構築することができる。すなわち、現用及び予備伝送路それぞれに1×2スイッチを設け、現用の2×2スイッチと予備の2×2スイッチのいずれに光信号を入力すべきかを選択できるようにしておく。そして、2×2スイッチの後段にも1×2スイッチを設け
、現用と予備のいずれの2×2スイッチから光信号を受け取るかを選択できるようにしておく。この構成は、OADM装置の入力側及び出力側のいずれの場合にも適用でき、AOTF及び伝送路のみではなく、現用と予備を切り替えるためのスイッチも2重化したOADM装置を構成することができる。
図5、6は、AOTFを使用したOADM装置の具体的構成の第1の例を示す図である。
伝送路より入力された光信号は、先ず、光増幅部(In-Line Amplifier:ILA)に入力される。光増幅部は2つの増幅媒体を持っており(三角で示されている)、前段の増幅媒体で増幅される前の光信号は一部が分岐され、光スペクトルモニタ部のスイッチに入力される。この光スイッチモニタ部のスイッチは、入力する光信号を順次切り替え、スペクトルアナライザSAUに光信号を送り、各場所での光スペクトルの様子を解析し、モニタするために設けられている。スペクトルアナライザSAUはスペクトルアナライザコントローラSAU CNTによって制御される。スペクトルアナライザSAUは、順次切り換えられ、入力される光信号を解析する作業と並列的に解析結果のデータを出力し、スペクトルアナライザコントローラSAU CNTで処理を受け、不図示の制御線によって、ス
ペクトルの状態が各所で最適になるように制御信号が伝送される。あるいは、オペレータが出向き、スペクトルの様子を直接モニタすることができるようにも構成される。
光増幅部ILAの前段の増幅媒体で増幅された光信号は、伝送路での分散を打ち消すために、分散補償ファイバDCFに入力される。この後、更に、後段の増幅媒体に入力され、パワーの大きくなった光信号がOADM装置に入力される。なお、光増幅部の後段の増幅媒体に接続されているBSTは、ブースタと呼ばれ、増幅媒体、例えば、エルビウムドープファイバに光増幅を行うための励起光を供給するものである。
光増幅部ILAで増幅された光信号は、前述した冗長化のためのスイッチ部PSW1に入力される。このスイッチ部PSW1の詳細は省略する。スイッチ部PSW1を通過した光信号は、次に、チューナブルフィルタモジュールTFMに入力される。チューナブルフィルタモジュールTFMの入力には、光モニタが設けられている。これは、モジュール間がちゃんと接続されているか否かを監視するためのものであり、入力した光信号のパワーを検出して、不図示の制御部に通知する。不図示の制御部は、このモニタ結果を解析して、モジュールが正常に接続され、光信号が来ているか否かを判断する。例えば、モジュールが外れている場合など強度の強い光が漏れている場合には、側に人がいると、その人に危険が及ぶので、光スイッチを切るなどの処置をする。このような光モニタはチューナブルフィルタモジュールTFMの出力側にも設けられており、基本的に同じ役割をになうものである。
光モニタを通過した光信号は、AOTF1に入力される。AOTF1は、チューナブルフィルタモジュールTFDのコントローラCNTからの制御信号によって、制御される。すなわち、コントローラCNTからの制御信号は、RF信号を生成する回路(図5では、増幅器とPLL回路からなっていることが示されている)に印加され、このようにして生成されたRF信号がAOTF1及びAOTF2に印加される。AOTF1では、前述したように、例えば、偶数番目の波長の光信号が選択され、図5の上側のポートに出力される。AOTF1をスルーした光信号は、偏波モード分散補償器PMDに入力される。
AOTFは、後述するように、入力光信号のTEモードの光とTMモードの光とを表面弾性波(SAW)との相互作用により、所定の波長の光信号のモードのみを変換し、出力ポートを変えるものである。ところで、AOTFは一般に、ニオブ酸リチウム等の複屈折性を持つ材料で構成されており、何の作用も受けないスルーする光信号のTEモードとTMモードとの間に伝搬速度の違いを生じる。このとき生じる時間差は、AOTFの1つのデバイスが3段構成になっているとした場合(後述)、50ps程度となる。ところで、本実施形態のOADM装置は、10Gbpsの伝送速度を有するシステムに使用することが望まれているが、10Gbpsの場合、1つのビットに与えられるタイムスロットは100ps程度である。従って、AOTFをスルーすることによって受ける偏波モード分散は、1タイムスロットの50%程度のずれを異なるモード間に引き起こすため、このままでは、光信号を正常に受信することができなくなってしまう。従って、ここでは、1つのAOTFを通過する毎に偏波モード分散補償を行うようにしている。偏波モード分散を補償する方法としては、やはり偏波モード分散を有するPANDAファイバ等の軸をAOTFの軸と直交させるように接続する。このようにすれば、AOTF内で速く伝播していたモードはPANDAファイバ内では遅く、AOTF内で遅く伝播していたモードはPANDAファイバ内では速く伝播することになる。AOTFの偏波モード分散を補償するために必要なPANDAファイバの長さは、AOTFの特性や、使用するPANDAファイバの特性にも依存するが、約20mである。
一方、波長選択された光信号、すなわち、ドロップ側の光信号の場合には、AOTFの内部で、SAWとの相互作用により、TEモードで入ってきた光信号はTMモードに変換されながら伝播し、TMモードで入ってきた光信号は、TEモードに変換されながら伝播するので、TEモードで分散を受ける時間とTMモードで分散を受ける時間が等しくなる。従って、最初、TEモードで入力された光も、TMモードで入力された光も、AOTF内部を伝播している間に、TMモードとTEモードとにそれぞれ変換されるため偏波モード分散は生じない。
偏波モード分散補償器PMDを通過した光信号は、光増幅部TFAに入力され、増幅媒体によって光信号が増幅される。AOTF1を通過してきた光信号は、AOTFのロスのためパワーが弱くなっており、AOTF2に入力してドロップされる光信号と、AOTF1でドロップされた光信号との間にレベル差が生じてしまうため、これを補償する必要があるのである。例えば、AOTF1つのロスは10dB程度である。光増幅部TFAで増幅された光信号はAOTF2で、例えば、奇数番目の波長の光信号が分岐され、残りの光信号はスルーしていく。
AOTF1とAOTF2で分岐されたドロップすべき光信号は、2×2カプラで合波され、再び光増幅部TFAで増幅され、トリビュータリ局へと送信される。一方、2×2カプラ1のもう一方のポートからは、光アッテネータを介して光スペクトルモニタ部のスペクトルアナライザSAUに入力され、ドロップされた光信号の波長及びパワーが所定の基準を満たしているか否かが検出される。
AOTF2をスルーした光信号は、前述したように、偏波モード分散補償器PMDに入力され、偏波モード分散が補償された後、光モニタ部を介してスイッチ部PSW2の2×2カプラ2に入力される。スイッチ部PSW2の2×2カプラ2には、アド光信号も入力される。アド光信号は、光増幅器PWA1で増幅され、トリビュータリ局からの伝送ロスによる損失が補償される。更に、分散補償ファイバDCFによる分散が補償され、2×2カプラ2に入力される。2×2カプラ2で合波されたスルー光信号とアド光信号は、冗長化のためのスイッチを介して、光増幅部PWA2に入力され、ブースタBST3、4からの励起光により増幅され、カプラで分岐される。大部分の光信号は、カプラから伝送路に出力されるが、一部は光スペクトルモニタ部に送られ、波長ずれや各波長の光信号のパワ
ーが解析される。光増幅部PWA2による光信号の増幅は、OADM装置全体を通過することによるロスを補償するためのものである。
図6は、図5のOADM装置を使ったシステムにおけるトリビュータリ局の構成例を示した図である。
チューナブルフィルタモジュールTFMでドロップされた光信号は、トリビュータリ局の波長分波器で各波長に分波される。同図の場合、波長λ1〜λ32までの32波に分波されている。これらの各波長の光信号は、既存光ネットワークの光電気変換部OEで受信され電気信号に変換された後、当該ネットワーク用の信号、例えば、1波光ネットワークの場合には、そのネットワークで使われている波長の光信号に変換され、伝送される。一方、既存光ネットワーク等の信号出力部では、電気光変換部EOで電気信号が図5でドロップされた光信号の波長λ1〜λ32に変換されて、送出される。これらの光信号は、アッテネータで相対的レベル調整が行われ、合波器で合波されて、図5のOADM装置にアド光信号として送出される。
なお、同図では、ドロップ光信号の波長は32個あり、この32個の波長全てが使用されているように示されているが、システムの構築当初では、これらの波長を全て使用する必要はなく、一部の波長のみを使用してもよい。この場合、図5のチューナブルフィルタモジュールTFMでドロップされる波長も32波以下に設定される。
また、同図のように、波長分波器で各波長の光信号に分岐してしまうと、受信する波長を変えたいという場合に、波長分波器が各波長に先に分波してしまうので、対応するのが難しいという点が存在する。例えば、受信側で同じ波長の光信号を受信したいという場合には、波長分波器の1つのポートから信号を分けなければならず、そのような構成がシステム構築当初から設けられていない場合には、1つのポートからの光信号を分岐するカプラ等を新たに設けなくてはならない。
図7、8は、AOTFを用いたOADM装置の具体的な構成の第2の例を示す図である。
図7の構成は、基本的に図5の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
伝送路より入力される光信号は、光増幅部ILAで増幅され、分散補償ファイバで分散が補償されて、スイッチ部PSW1に入力される。スイッチ部PSW1は、前述したように、現用、予備の冗長化のための構成である。スイッチ部PSW1から出力された光信号はチューナブルフィルタモジュールTFMの光モニタ部を通過し、AOTF1、AOTF2でドロップ光信号がドロップされて、2×2カプラ1に入力される。
2×2カプラ1からの出力のうち一部は、スペクトルアナライザSAUに入力され、スペクトルが解析される。2×2カプラ1で合波されたドロップ光信号は光アンプで増幅された後、1×4カプラで分岐される。同図では、ドロップ光の波長数は4であるとしているが、必ずしも4に限られるものではない。1×4カプラで分岐された光信号は、全てのドロップ波長を含んでおり、トリビュータリ局の受信部TRB1のAOTFで各波長が抽出される。ここでのAOTFは1×4カプラからの光信号の中から所望の波長を抽出する作用をしており、ドロップする光信号の波長を変える予定のない場合には、通常のバンドパスフィルタも使用可能である。AOTFを使用するのは、本システムを使用するユーザの要望により柔軟に対応するためであり、ユーザの要望としてシステム使用中にアド・ド
ロップする光信号の波長を変えることは強く望まれることである。なお、波長選択フィルタとしてのトリビュータリ局のAOTFは、略記されているチューナブルフィルタコントローラTFCによって制御される。同図の場合には、AOTFが2つしか設けられていないが、ドロップ光信号として4波を使用する場合には、AOTFを4つ使用する。
AOTF1でドロップされなかったスルー光は、偏波モード分散補償器PMDで偏波モード分散補償されてから、光アンプに入力され、AOTF2に入力される。このように、AOTFを2段にしているのは、前述したように、1つのAOTFでドロップすべき波長の一部、例えば、偶数番目の波長の光信号をドロップし、もう1つのAOTFで残りの波長、例えば、奇数番目の波長の光信号をドロップするようにしているものである。これは、AOTFの波長選択特性の半値幅が比較的広いので、クロストークをできるだけさけるためになされている処置である。
AOTF2をスルーした光信号は、再び、偏波モード分散補償器PMDによって偏波モード分散が補償されてから、光モニタを通過してスイッチ部PSW2の2×2カプラCPL2に入力され、アド光信号と合波される。同図の場合、ドロップ光の波長が4波であるので、アド光信号の波長も4つの同じ波長を使用する。カプラCPL4には、1×8カプラが設けられており、将来のアップグレードに対応できるように構成されているが、現在使われているのは1〜4番のポートのみである。カプラCPL4で合波された各波長のアド光信号は、光アンプPWA1で増幅され、分散補償ファイバDCFで分散が補償されてから、スイッチ部PSW2の2×2カプラCPL2に入力される。そして、スルー光とアド光が合波され、プロテクションスイッチ(現用、予備を切り替えるスイッチ)を通過して、OADM装置の出力側の光アンプ部PWA2に入力される。そして、光アンプ部PWA2に入力した光信号は、励起光源BST3、BST4からエネルギーを与えられて、パワーが増幅された後、カプラCPLを介して伝送路に出力されていく。なお、カプラCPLで分岐された一部の光信号は、スペクトルアナライザユニットSAUに送られ、OADM装置から出力される光スペクトルの状態が解析され、OADM装置が正常に動作しているか否かのモニタに使用される。
図8は、トリビュータリ局のアド光送信側の構成を示す図である。
アド光信号送信部は、レーザバンクと光変調部及び不図示の電気ADM装置(E ADM)からなっている。送信すべきデータは電気ADM装置から電気信号として送信されてきて、レーザバンクからの光を変調する駆動信号として使用される。
レーザバンクは、複数の互いに異なる波長の光を出力するレーザダイオードからなっており、これらがレーザダイオードユニットLDU#1〜#4に収納されている。ここでも、障害発生時に対応するため冗長化がなされており、レーザダイオードユニットLDUは、現用(Work)と予備(Protection)とが用意されている。また、アドする光信号の波長が1〜32のいずれの波長にも変更可能なように、異なる波長を出力するレーザダイオードが32個設けられている。これらのレーザダイオードから出力される光は、合波器で合波されて、1〜32の波長の光が波長多重された光を生成する。レーザダイオードユニットが冗長化されているのに対応して合波器も現用と予備が設けられている。
合波器から出力された光は、光アンプ部で増幅される。光アンプ部も冗長化されており、光アンプ部の構成は、増幅媒体を2つ設け、その間にアッテネータを挟んだようになっている。これは、間にアッテネータを入れることによって、後段の増幅媒体への光の入射強度を調整する作用を得る為である。増幅媒体で増幅された光信号は、カプラCPLで一部が分岐されて、カプラ部CPL3に入力される。分岐された光信号は、スペクトルアナライザユニットSAULに入力される。スペクトルアナライザユニットSAULの構成は、スペクトルアナライザコントローラSAU CNTと、これに制御されるスペクトルアナライザSAUとからなっており、カプラCPLはシステムのオペレータが手動でレーザバンクからの出力光の検査をする場合に必要な出力光を光モニタポートに出力するものである。スペクトルアナライザユニットからの解析結果は略記されているレーザダ
イオード制御部LDCに送られ、レーザダイオードを制御するのに使用される。同図に示されるように、スペクトルアナライザユニットSAUL及びレーザダイオード制御部LDCも冗長化されている。
このように、異なる波長のレーザダイオードを複数用意し、これらの光を合波して使用するのは、発振波長を可変できるレーザが非常に不安定で、発振波長が精密に安定している必要のある光通信においては、十分な機能を得られないからである。
複数のレーザダイオードから出力された光を合波したものは、光増幅器で増幅された後、カプラ部CPL3の1×8カプラに入力される。1×8カプラでは、入力された光をアド光信号の波長として使う分だけ分岐し、光変調部に送る。今の場合、アド・ドロップする光信号の波長は4つだけであるとしているので、実際に光接続されているのは、1×8カプラの4つのポートのみである。残りのポートは反対方向の通信回線用に設けられている光変調器(不図示)に光を供給するために使用される。
1×8カプラの出力ポートに接続されたファイバは、アドする光信号の波長分設けられた変調器を有する光変調部に送られる。同図では、内部構成は、1つについてのみの記載となっているが、実際には、同じ構成の変調装置が4つ設けられている。レーザバンクから送られてきた光は波長選択部TFR1の前段のAOTFで、先ず、アド光として使用する波長の光が選択される。この選択された波長の光は変調器部の変調器Modに入力される。一方、電気ADMからは、所定の波長の光信号としてデータが送られてきて、受信器ORで受信され、電気信号に変換される。この電気信号は分配器で分岐され、デジタルフリップフロップD−FFと電気増幅器を介して変調器Modに印加される。変調器Modは、この電気信号の印加を受けて、波長選択部の前段のAOTFで選択された波長の光信
号を変調し、出力する。変調された光信号は1×2カプラで分岐され、一方がコントローラで検出され、所望の変調が行われているか否かが確かめられる。この検出の結果は、電気増幅器にフィードバックされ、変調器Modが安定して動作するように調整される。
このようにして、変調器Modで変調された光信号は、光アンプPOAで増幅された後、波長選択部の後段のAOTFに入力されてアド光信号として送出される。ここで、光アンプPOAで増幅した後に再びAOTFを通過させるのは、光アンプPOAで発生したノイズを除去するためのものであり、このAOTFは波長選択部の前段のAOTFの選択波長と同じ波長を選択するように設定されているものである。
なお、レーザバンクからの光の中からアドするための光波長を選択するのに、選択波長固定型のフィルタではなく、選択波長を可変できるAOTFを使用するのは、アド・ドロップする光信号の波長を変えたいときに容易に対応できるようにするためである。
また、波長選択部の前段のAOTFでアド光信号に使用する波長を1波だけ最初に選ぶことによって、変調器Modの後段の光アンプPOAは、1波用のアンプで良くなり、小型のアンプを使用することができる。前述したように、最初に変調をかけて、後に波長を選択することも可能であるが、この場合には、変調器の後段のアンプは波長多重光用の光アンプでなくてはならず、大型になるとともに、高価になってしまう。
図9、10は、AOTFを使ったOADM装置の具体的構成の第3の例である。
図9の場合、伝送路が現用と予備に冗長化されている様子が描かれている。後に説明するように、伝送路の冗長化にも種類があり、UPSR(uni-directional path switch ring)や2ファイバ、4ファイバのBLSR(bi-directional line switch ring)等の構成がある。同図の場合、4ファイバBLSRを前提にしており、伝送路(PB)と記載されているのは、4ファイバのBLSRの場合の反対方向の伝送路のOADM装置に設けられるLBスイッチへの伝送ケーブルを示し、伝送路(P)と記載されているのは4ファイバBLSRの場合の反対方向の伝送路のOADM装置に設けられる光1+1プロテクションスイッチ(1+1SW)への光信号伝送ケーブルを示している。これらは、伝送路及びOADM装置の冗長化の為に設けられており、システムの冗長化については、後述す
る。
現用の伝送路から入ってきた光信号は、光増幅部ILAで増幅されると共に、分散補償ファイバDCFによって分散が補償され、スイッチ部PSW1に入力される。スイッチ部PSW1では、LBスイッチと1+1スイッチとが設けられているが、ネットワークが2ファイバのBLSRと4ファイバのBLSRのいずれを使用しているかによって、いずれかのスイッチのみが設けられる。
スイッチ部PSW1を通過した光信号は、チューナブルフィルタモジュールで前述した作用により、ドロップ光がドロップされ1×8カプラを有するカプラ部CPL1に入力される。1×8カプラでは、ドロップされた波長を全て含んでいる波長多重光信号を8つに分岐し、トリビュータリ局の受信部へと送信する。チューナブルフィルタモジュールをスルーした光信号は、スイッチ部PSW2の2×2カプラに入力される。トリビュータリ局から送信されてくるアド光信号は、カプラ部CPL4の1×8カプラで合波され、光アンプPWA1で増幅される。そして、増幅された光信号は、分散補償ファイバDCFで分散補償され、スイッチ部PSW2の2×2カプラでスルー光と合波される。
カプラ部CPL4の1×8カプラの前段に光モニタが各波長のアド光信号毎に設けられているが、これは、カプラ部CPL4がちゃんと装着されているか否かをモニタするために設けられているものである。
2×2カプラで合波されたスルー光とアド光は、冗長化のために設けられた1+1スイッチ、及び、LBスイッチを通過して、光アンプPWA2で増幅されて、伝送路に送出される。
図10は、図9の具体例におけるトリビュータリ局側の構成を示した図である。
受信側では、OADM装置からドロップされ、分岐された光信号の数だけ受信器TRB#1〜#8(1)が設けられる。受信器TRB#1のみ内部構成が示されているので、これについて説明する。他の受信器TRB#2〜#8(1)も同様の構成である。
先ず、ドロップされた光信号は8波からなっており、この光信号が受信器TRB#1(1)に入力されると、光アンプAMP1で増幅される。光アンプAMP1は、励起光源BSTから励起光を受け取っている。増幅された光信号は、カプラ部CPL2の1×4カプラでドロップされた光信号の波長数分に分岐される。ここでは、4つに分岐されている。次に、光信号の波長変換を行うトランスポンダ#1に入力される。詳細な構成は省略されているが、トランスポンダは#1〜#4の4つあり、それぞれ1×4カプラから出力される光信号を受信する。
トランスポンダ#1に入力された光信号は波長選択フィルタとしてのAOTFにより、1つの波長の光信号が選択され、光受信器ORによって電気信号に変換される。この電気信号は、分配器で2つに分岐され、デジタルフリップフロップD−FFおよび増幅器を通って、変調器Modに印加される。変調器Modには、送信側のレーザバンクLDBKからの光が送信されてきており、レーザバンクLDBKから送られる複数の波長の中から適当な波長がAOTF1で選択されて、入力される。そして、AOTF1で選択された光信号は変調器Modで変調されて出力される。出力された光信号は、光アンプPOAで増幅された後、AOTF2で増幅器のノイズ成分が取り除かれ、他のネットワーク等に送信される。このように、他のネットワークにデータを送信する場合には、ドロップされた光信号のままでは伝送できない可能性があるので、どのような波長にでも変換できるようにトランスポンダが設けられている。また、変調器Modの出力は1×2カプラで分岐され、コントローラに検出されて、変調器Modの動作を安定させるためにフィードバックがかけられる。
このように、受信側のトランスポンダの動作は、図8の光変調部のものと基本的に同じである。
一方、送信側では、不図示のレーザバンクLDBKから変調に使うための光が送信されてくる。この光は、送信器#1〜#8(2)のカプラ部CPL5に入力される。入力すると、先ず、カプラ部CPL5がちゃんと接続されているか否かをモニタするための光モニタを通過し、次に、1×8カプラで8つの光に分岐され、光アンプAMP#1〜#4によって増幅される。このうち、アド光信号を生成するために使用されるのは、4つのみであり、他の4つは、受信側のトランスポンダに光信号の波長変換用光として送られる。
レーザバンクからの光のうち、アド光信号生成のために使われる4つの光は、トランスポンダ#5のAOTF3に入力され、アド光信号生成のための波長が選択され、変調器Modに送られる。アド光を変調すべきデータは、他のネットワークから光信号で送信されてきたものを光アンプAMP2で増幅し、1×4カプラで分岐した後、AOTF5で波長を選択し、光受信器ORで電気信号に変換する。この後の動作は、受信側のトランスポンダと同様なので説明を省略する。そして、AOTF4から出力されるアド光信号は、同様に生成されたトランスポンダ#6〜#8までの光信号と1×4カプラで合波され、OADM装置にアド光信号として送信される。
図11、12は、AOTFを使ったOADM装置の具体的構成の第4の例を示す図である。
図11の構成は、図9の構成とほとんど同じなので、概略説明する。なお、同図の場合には、アド側に結線がなされていないが、省略されているだけであって、実際には、トリビュータリ局のアド光信号送信側が接続されるべきものである。
伝送路より入力した光信号は、光増幅器で増幅され、分散補償ファイバで伝送路の分散が補償されて、現用・予備切り替え用スイッチ部PSW1に入力される。ここでの切り替えは、ネットワークが採用している冗長構成によって変わるが、ここでは、4ファイバBLSRを前提としている。スイッチ部PSW1を通過した光信号はチューナブルフィルタモジュールでドロップ光がドロップされ、ドロップ光信号は、1×8カプラでトリビュータリ局の受信側へ送信される。スルー光信号はそのままスイッチ部PSW2の2×2カプラに入力される。アド光信号は、2×8カプラで合波された後、光アンプPWA1で増幅され、分散補償ファイバDCFで分散補償された後、2×2カプラでスルー光と合波される。ここで、2×2カプラや2×8カプラはそれぞれ1×2カプラや1×8カプラでもよ
く、ここで、出力ポートが1つ多いカプラを使っているのは、合波された光信号の状態をモニタしようとするときのための便宜を考えてのことである。従って、必ずしも2×2カプラや2×8カプラを使用しなければならないことはない。
アド光信号とスルー光信号とが合波された光信号は、現用・予備を切り替えるためのスイッチ(1+1スイッチ及びLBスイッチ)を通過した後、光アンプPWA2によって増幅され、伝送路に送出される。
図12は、トリビュータリ局の受信側構成の変形例を示した図である。
受信部TRB#1は、トリビュータリ局の次段に接続するネットワークが単波長ネットワークの場合の構成である。OADM装置からドロップされてきたドロップ光信号は、光アンプAMPで増幅された後、カプラ部CPL2の1×4カプラで4つに分岐される。ここで、分岐する数が4であるのは、OADM装置でドロップする波長の数が4であるとしているからである。1×4カプラで分岐された光信号は、それぞれに設けられているAOTFに送られ、それぞれの波長の光信号が選択される。各波長λ1〜λ4の光信号が選択されると、これらは、そのまま単波長ネットワークにそのまま送信される。なお、単波長ネットワークがサポートする光信号の波長がドロップされた光信号の波長でないときには、単波長ネットワークに接続する前段に波長変換を行うトランスポンダを設けて、サポートされている波長で光信号を送信するようにする。
受信部TRB#2は、トリビュータリ局の次段に接続するネットワークが多波長ネットワークであるが、4波までの波長多重システムである場合を示している。OADM装置からドロップされてきたドロップ光信号は、光アンプAMPで増幅された後、1×4カプラで4つに分岐され、1×4カプラの出力ポート毎に設けられた波長選択部TFR#1〜#4に入力される。AOTFはドロップ光信号の中から1波のみを抽出される。抽出された光信号は、単波長用の光アンプPOAで増幅され、再びAOTFに入力される。後段のAOTFは、前述したように、光アンプPOAのノイズを除去するためのものである。このようにして、波長選択部TFR#1〜#4で抽出されたドロップ光信号は2×4カプラで合波され、波長多重ネットワークに送信される。もちろん、ドロップされたままの波長を
次段の波長多重ネットワークがサポートしていない場合には、トランスポンダを介して、波長を変換して接続するようにする。
受信部TRB#8は、4波以上の波長多重光信号をサポートしているネットワークに接続する場合のトリビュータリ局の構成を示している。4波以上のドロップ光信号の波長を選択する場合には、OADM装置に使用されているように、AOTFを2段に使って、波長を選択するようにする。AOTFはチューナブルフィルタドライバTFDによって駆動される。OADM装置でドロップされた光信号は、全て2段のAOTFによって選択されるので、2段目のAOTFのスルーポートには、原理的にノイズ以外は光信号は出てこない。従って、2段目のAOTFのスルーポートから出力される光は破棄する。その他の構成及び、動作は、OADM装置のAOTFによる光信号のドロップのための構成及び動作と同じなので、説明を省略する。
このようにして、選択された波長のドロップ光信号は、2×2カプラで合波され、増幅されて、次段の波長多重ネットワークに送信される。尚、前述の通り、次段のネットワークがドロップされたままの光信号の波長をサポートしない、あるいは、別の光信号を使用している場合には、波長変換して次段のネットワークに送信する。
図13は、アド光信号を生成するための光を供給するために使用されるレーザバンクの構成及び概念を説明する図である。
任意波長型のOADMシステムを構築するためには、任意の波長の光信号をドロップできるだけではなく、対応する任意の波長の光信号をアドできなくてはならない。そのためには、トリビュータリ局側で任意の波長の光信号を生成できなくてはならないので、波長を任意に変えることのできる光源が必要である。しかし、現在光源として広く使われているレーザダイオードは、波長を変えることが難しい。というのも、もともとレーザというのは、発光媒体を反射鏡で挟んで、反射鏡間で光を往復させる間に強度の強い光を放出するという構成をとっており、発振波長はこの発光媒体の特性と、反射鏡間の光学的距離に依存する。特に、同じレーザで異なる波長を発振させようとする場合には、反射鏡間の光学的距離を変えなくてはならないが、この方法があまりないというのが現状である。現状
考えられる光学的距離の変更の仕方は、反射鏡の位置を機械的に移動させるか、温度を上下して、発光媒体の屈折率を変化させるというぐらいである。反射鏡を機械的に動かすのは、レーザが可動部を有することになるので、反射鏡の位置が狂いやすく、安定したレーザ発振を行うことができない。また、温度を上下して波長を変化させる場合には、レーザの構成に可動部がないので、安定した発振はできるが、温度上昇などによる波長の変化が小さいので、波長多重システムのグリッド全体をカバーすることはできない。
そこで、本実施形態では、使用する可能性のある全ての波長を発振波長とする個々のレーザダイオードを用意しておき、これらが発振するレーザ光を束ねて1つの光とし、これを様々な所に使用することとした。
レーザバンクの構成は、同図に示されている通りであり、波長λ1〜λnをそれぞれ発振波長とするレーザダイオード139を設け、それぞれに発振させる。それぞれが発振する波長は、スペクトルモニタ133で監視され、予め定められている基準波長値と比較し、ずれが生じた場合には、発振波長にずれの生じたレーザダイオード139の駆動電流あるいは温度を調整して、発振波長が所定の値になるように調整される。
各レーザダイオード139が発振する光信号は、合波器138で合波され、1つの光とされる。そして、光アンプ136で増幅され、分配器131で必要な数だけ分岐される。
この光を使用する場合には、AOTF等のチューナブルフィルタ132、あるいは、使用する波長が固定しているのであれば、選択波長の固定されているバンドパスフィルタ等で必要な波長をレーザバンクからの光から抽出し、外部変調器135で変調をかけ、光アンプ137で増幅して送出する。
このように、複数の波長の異なる光源の光を合波して、これを利用するようにすれば、光源の発振している波長の光であれば、どの波長であってもフィルタで抽出して使うことができる。特に、波長分割多重通信システムでは、各チャネルの光信号の波長がITU−Tの勧告で規定されているので、それ以外の波長を任意に使用することはないと考えてよいので、レーザバンクを使用すれば十分である。
図14〜図20は、OADM装置におけるドロップ用AOTFの制御方法を説明する図である。
なお、図にはAOTFが1つしか記載されていないが、前述したようなAOTFを2つ用いる場合も同様である。
図14は、OADM装置を含むOADMシステムの初期状態を示している。入力側から例えば、32波の波長多重光信号が送信されてきた場合に、まだ、システムが稼動する前は、光信号がどこにも出力されない状態が好ましい。そこで、OADM装置のAOTF140は、32波全ての波長を選択するように、RF信号発振器からRF信号をAOTF140に印加する。すると、入力側から入力された32波全ての波長はドロップされてしまい、スルー側(出力側)には光信号が出力されない。従って、32波全ての光信号は、トリビュータリ局側へ送信される。トリビュータリ局では、送信されてきた光信号を光カプラ142で分岐し、各波長の光信号を選択するAOTF143に送る。通常動作時では、AOTF143は、ドロップすべき波長を選択するのであるが、初期状態では、AOTF143に入力側から伝送されてきた32波の光信号からは、漏れ光等が生じない程度に十分離れた位置を選択波長とするようなRF信号を入力する。このようにすれば、32波の内、AOTF143で選択される波長がないので、光受信器144に送信される光信号は存在しない。このように、システムの初期状態では、全てのパスが閉じられ、どこも光信号を受信しない状態となる。
なお、AOTF143は、常に1波長を選択するためのRF信号が印加されるので、光信号を選択しない場合にも、32波以外の場所を1つ選択するようなRF信号を印加しておく。これにより、AOTF143に印加されるRF信号のパワーが光信号を選択する場合もしない場合も同じになり、AOTF143の動作を安定化させることができる。
図15は、OADM装置によるドロップが行われない場合のAOTFの制御方法を示している。
スルーする場合には、AOTF140には、32波の波長以外の場所に選択波長を設定するようなRF信号をRF信号発振器141で生成して、印加するようにする。RF信号は光信号は選択しないが、32個の波長を選択するような32個の周波数からなるRF信号が印加される。これは、図14のとき、AOTF140に32波分のRF信号が印加されていたので、AOTF140の特性をあまり大きく変えないようにするため、わざと32個の周波数のRF信号を印加しているのである。
これにより、32波全ての光信号はスルー側(出力側)に送信される。トリビュータリ局側には、光信号はドロップされない。したがって、光カプラ142にも光信号は入力されないが、AOTF143には、32波以外の波長位置を選択するようなRF信号を印加しておく。このRF信号は1波のみを選択するような、1個の周波数からなるRF信号である。これは、前述したように、AOTF143の動作が、RF信号のパワーの変化によって変わってしまわないようにするためである。従って、光受信器144では光信号は検出されない。
図16は、OADM装置でドロップはしないが、入力される光信号が波長毎に異なるパワーを有している場合のAOTFの制御方法を説明する図である。
なお、同図では、波長がλ1〜λ32に行くに従ってパワーが大きくなる、いわゆる、チルトが起きている場合のみを示しているが、各波長のパワーが全くバラバラでも同じ作用を得ることができる。
すなわち、AOTF140に印加されるRF信号のパワーの違いにより、ドロップされる光信号のパワーも異なってくるので、RF発振器141からは、パワーの大きい波長の光信号をより多くドロップするようにし、パワーの小さい波長の光信号はより少なくドロップ、あるいは、全くドロップしないようにする。このようにすることによって、スルー側(出力側)に出てくる光信号はパワーが揃って出てくるようになる。一方、トリビュータリ局側には、AOTF140に入力された時のパワーに応じた量のドロップ光が表れることになる。この光は、光アンプで増幅されたり、光カプラ142で分岐されるが、AOTF143の選択波長を32波の波長域から十分離れた位置に設定することにより、AOTF143からは光信号が出力されない。従って、光受信器144では、光信号を受け取ることが無く、ドロップ動作は行われないことになる。
このように、AOTF140を波長をドロップする為だけに使うのではなくて、波長毎のパワーの違いをなくすために使用することによって、システムの伝送品質の向上に役立てることができる。
なお、AOTF140には、やはり、常に32個分の波長を選択するための32個の周波数のRF信号を印加するようにしておき、AOTF143には、1波のみを選択す為の1個の周波数のRF信号を印加するようにしておく。これにより、AOTF140及び143の動作を波長を選択するか否か、あるいは、選択する波長の数によらず、安定させることができる。
なお、上記した波長毎のパワーの違いを補償する動作は、制御CPUを設けておいて、ソフトウェアで行うようにしてもよい。
図17は、OADM装置でドロップを行う場合の各AOTFの制御方法を説明する図である。
ここでは、波長λ1〜λ32の内、λ2とλ32のみをドロップする場合を考える。入力側から32波の光信号が入力されると、AOTF140には、波長λ2とλ32とを選択するようなRF信号が印加されると共に、AOTF140の動作を安定化させるために、32波の光信号の波長から十分離れた位置に30波を選択するような30個の周波数のRF信号をRF信号発振器141で生成して、印加しておく。これにより、AOTF140に印加されるRF信号は32波分を選択するものとなるが、実際にドロップされる光信号は波長λ2とλ32のみである。残りの波長の光信号はスルー側(出力側)へ送出される。
ドロップされた波長λ2とλ32は、トリビュータリ局側へ送られ、光カプラ142で分岐され、AOTF143に入力される。AOTF143は、1波のみを選択するように1波のみを選択するための1つの周波数のRF信号が印加される。AOTF143の一方は、波長λ2を選択し、もう一方は波長λ32を選択する。このようにして、光受信器144の一方では、波長λ2の光信号が受信され、もう一方では、波長λ32の光信号が受信される。
このように、AOTF140と143には、常に同じパワーのRF信号を印加するようにしておき、AOTFの動作の安定を図る。また、波長多重された光信号間のパワーの違いを抑える働きも持たせることができる。
図18は、トリビュータリ局側での選択波長のトラッキングについて説明する図である。
OADM装置のAOTF180からドロップされた光信号は光カプラ181でドロップされた波長数分(同図では4波)に分岐され、AOTF182で各波長が選択される。しかし、温度変化やRF信号の周波数のずれなどにより、ドロップされた光信号の波長とAOTF182の選択波長とがずれることがある。従って、AOTF182で選択された光信号を監視し、光信号の波長とAOTF182の選択波長とを一致させる必要がある。そこで、AOTF182の後段に例えば、10:1カプラ183を設け、大半を光受信器で受信すると共に、一部をフォトダイオードPD185でパワーを検出して、その結果をトラッキング回路186に送るようにする。トラッキング回路186では、AOTF182に印加するRF信号の周波数を僅かに変えて、あるいは、AOTF182に印加するRF
信号のベースの周波数に低周波成分を重畳し、PD185で受信される光信号のパワーの変化を検出し、各PD185で受信する光信号のパワーが最も大きくなるように制御する。これは、RF信号の周波数を大きいほうと小さいほうに振るように僅かにずらしたとき、周波数の大きいほうに振ったときと小さいほうに振ったときの両方でPD185で受信する光信号のパワーが小さくなれば、中心の周波数のとき光信号の受信パワーが最大であることを示す。トラッキング回路186は、このような状態を検出するようにRF信号を調整して、トラッキングを行う。
図19は、OADMシステムのAOTFの全体の制御を示す図である。
同図で、図18と同じ番号のついているものは同じものなので詳しい説明を省略する。
OADM装置のAOTF180でドロップされた光信号が光カプラ194で分岐され、1×4光スイッチを介して光スペクトルモニタ192に入力されている。これは、OADM装置のAOTF180が光信号の波長を選択する場合に、適切に、ドロップすべき光信号の波長にマッチした動作を行っているか否かを検出するためのものである。すなわち、ドロップすべき光信号の波長とAOTF180の選択波長特性とがずれている場合には、ドロップすべき光信号のスペクトルを完全にドロップすることができず、光信号に波形劣化などを引き起こして好ましくないので、AOTF180に印加するRF信号の周波数とパワーを制御するためである。光スペクトルモニタ192の解析結果は、OADM装置制御CPU193に入力され、AOTF180が適切に動作するようにRF信号の制御信号
が出力される。
また、図18で説明したトラッキング回路186もOADM装置制御CPUと情報を交換し、AOTF182を適切に動作するように制御する。
トリビュータリ局のアド光信号生成側では、LDバンク202から出力された光が、光カプラ201によって分岐され、AOTF200によって波長選択されるが、この波長選択も適切に行われているか否かを監視し、AOTF200を制御するために、光カプラ199で光を分岐し、PD198で受光して結果をトラッキング回路203に入力する。トラッキング回路203はOADM装置制御CPU193と情報を交換しながら、図18で説明した処理と同様の処理により、AOTF200をトラッキングする。光カプラ199から出力された光は、光変調器197によって変調され、次段で増幅された後、AOTF196で波長選択を受ける。このAOTF196は、AOTF200と同じ選択波長を有する必要があるので、トラッキング回路203が得た情報をOADM装置制御CPU193が取得し、直接AOTF196に印加されるRF信号を制御する。これにより
、AOTF196とAOTF200は同じ波長選択特性を有することになり、同じ波長の光信号を適切に選択することができる。AOTF196を通過した光信号は、アド光信号として光カプラ195で合波され、途中分散補償ファイバで分散補償されて、AOTF180をスルーした光信号と光カプラ190で合波される。
アド光信号が合波された光信号は、増幅されると共に、アド光信号が正常にアドされているか否かを検出するために、光カプラ191で分岐され、1×4光スイッチ204を介して光スペクトルアナライザ192で解析される。この結果は、OADM装置制御CPU193で制御信号生成に使用され、AOTF180やAOTF196、あるいは、トラッキング回路203を介してAOTF200を制御する。
1×4光スイッチ204には、逆方向伝送用のOADM装置及びトリビュータリ局からの光信号も入力され、順次切り替えて光スペクトルモニタ192に入力するようにしている。これは、光スペクトルモニタ192が高価で、且つ、大型であるため、各所にそれぞれ設けるのはコスト的にも小型化にも好ましくないからである。そのかわり、光スペクトルモニタ192は、光スペクトルの解析とデータの送出とを並列に行うことができるように構成されており、1つの光信号のスペクトルの解析が終わったら、データの送出を待たずに、次の光信号のスペクトルの解析を始めることができるようになっている。通常、光スペクトルモニタ192においては、光信号のスペクトルの分析とデータの送出とが同じ位の時間だけかかるので、データの送出を待ってから次の光信号の解析を始めるのは測定
時間を長引かせ効率的でない。そこで、1×4光スイッチ204を、光スペクトルモニタ192が光信号のスペクトル解析が終わったら、次の光信号に切り替えるように制御する。
なお、OADM装置制御CPU193は、内部にROMを持ち、AOTF180がドロップする時に、AOTF180に印加するRF信号のデータ、スルー時のRF信号データなど複数のRF信号の印加状態を蓄積しておく。このROMのデータを用いてAOTF180に印加するRF信号の発振周波数の設定値を変更することで、瞬時に所定のRF周波数とパワーを印加することを可能としている。
AOTFの全体制御において、動作シーケンスは以下のようにする。すなわち、AOTF182を最初に駆動し、動作が安定したら、次にAOTF180を駆動する。AOTF180の動作が安定したら、光受信器184でドロップ光信号を受信する。次にAOTF196、200を駆動し、動作が安定したら、光変調器197を駆動し、アド光信号を送出する。
図20は、AOTFへのRF信号の印加の仕方を説明する図である。
AOTFに突然RF信号を印加すると、対応する光信号が突然選択され、出力される。ところで、AOTFはロスが大きいので、通常AOTFの後段に光アンプが挿入される。この構成において、AOTFが突然光信号を選択し、光アンプに急に強度の大きい光が入力されると、光サージ現象が起きてしまう。これを防ぐためには、光アンプに入力される光が50〜60msの時間をかけて立ち上がる必要がある。そこで、RF信号のパワーを50〜60msかけて徐々にいっぱいのパワーまで上げるようにする。このようにすれば、AOTFで選択される光のパワーはRF信号のパワーに一対一に対応するので、光も50〜60msかけて立ち上がるようになる。RF信号の立上げ方としては、アナログ的に滑らかに上昇させる方法もあるが、デジタル制御することを考え、50〜60msをn(nは自然数)ステップに分けてRF信号を上昇させるようにする。nは、設計時に回路をできるだけ簡単化しながら最適な効果が得られるように設定されるべきものである。
以上説明したような、AOTFを用いたOADMでは、次のようなアップグレードが可能である。
即ち、OADMの初期導入時には、アドするチャネル(波長)及びドロップするチャネル(波長)を固定しておき、チャネル固定型のOADMとして運用する。この場合、AOTF10に印加するRF信号周波数f1、f2、・・・fnを固定することによって実現できる。アド/ドロップするチャネルが固定であるため原理的にはRF信号周波数を変化する必要がなく、制御が容易である。
次に、任意のチャネル(波長)をアド/ドロップする機能を有する任意波長型のOADMが要求される場合には、AOTF10に印加するRF信号周波数f1、f2、・・・fnを可変にする機能を設けるだけで実現できる。例えば、図1において、ドロップするチャネルを変更する場合には、AOTF10に印加するRF信号周波数を変更するチャネル(波長)に合わせて変更すればよい。また、アドするチャネルを変更する場合には、LD19、8×8カプラから構成されるレーザバンクを設け、8×8カプラから出力されるWDM光(波長多重された光)から選択する波長をAOTF14でチューニングすれば良い。この場合は、AOTF14に印加するRF信号周波数を選択する波長に合わせて変化させれば良い。
このように、AOTF及びレーザバンクを用いることにより、OADMのハードウェアをほとんど変更することなく固定波長型から任意波長型へのアップグレードが可能となる。
図21は、AOTFの構成を示す図である。
AOTFは、ニオブ酸リチウムの基板に同図太線のように光導波路を形成し、導波路の交叉する部分に偏光ビームスプリッタPBSを設けている。RF信号は、IDT(inter digital transducer)と呼ばれる、櫛を交互にかみ合わせたような電極に印加される。IDTに所定の周波数のRF信号が印加されると、弾性表面波(SAW)が発生し、基板の表面を伝播する。このSAWが伝播することによる影響は、基板内部の光導波路にもおよび、屈折率を周期的に変化させて、基板内部に薄い波長板のような構造を形成する。SAWガイドは、基板表面に貼り付けられた金属膜であり、SAWはこのガイドに沿って進行する。
光入力から入力される光信号は、TEモードとTMモードとが混在したものであるが、PBS1でTMモードとTEモードに分かれて別々の導波路を伝播する。ここで、入力された光信号のうち、SAWとちょうど相互作用する波長の光があると、上記した、薄い波長板の作用により、TEモードとTMモードとが入れ替わる。従って、PBS2での当該波長の進行方向が変わり、ドロップ光信号として出力される。一方、SAWとちょうど相互作用する波長以外の波長の光は、SAWの影響がランダムに働き、TEモードとTMモードの入れ換えが起こらない。従って、そのような波長の光は光出力へスルー光として出力される。
同様に、同図のアド光信号が入力されると、PBS1でTEモードとTMモードとに分岐されて進むが、アド光信号はドロップ光信号と同じ波長を有しているので、SAWと相互作用し、TEモードとTMモードとが入れ替わって、光出力として送出される。このようにして、光信号のアド動作が行われる。
ところで、ニオブ酸リチウムは、複屈折の特性を有しているので、TEモードの伝搬速度とTMモードの伝搬速度は導波路内で異なってしまう。従って、モード変換を受けない波長の光は偏波モード分散を受けたまま光出力として送出されてしまう。一方、モード変換を受ける波長の光は導波路内でほぼ同じ時間TEモードとTMモードでいるので、両方のモードで伝播する光学的長さが同じとなり、偏波モード分散は打ち消されて出力される。
なお、このようなAOTFにおいては、導波路のパラメータ(長さ等)を適切に選んでやると、ロスを小さくしたり、選択特性の波長幅を狭くすることができる。選択特性の波長幅を狭くすることにより、クロストークを小さくすることができる。また、SAWガイドを斜めに配置したことによっても、波長選択特性のサイドローブを小さくすることができたり、RF信号のパワーが少なくて済むなどの効果が得られる。また、PBSを工夫することにより、ロスの偏波依存性をなくすことができる。
図22は、図21のAOTFの透過特性を示した図である。
同図には、ドロップポートの波長選択特性あるいは透過特性を示している。同図に示されるように、サイドローブが多く形成され、半値幅(FWHM)も0.65nmとなっている。従って、図21の構成では、ITU−T G.692で規定される0.8nm間隔のグリッドに配置される波長をクロストークを少なくして、選択するのは困難である。
図23は、図21のAOTFを3段モノリシックに基板上に構成し、同一周波数のSAWで波長選択した場合の波長選択特性である。
1段のAOTFの半値幅が0.65nmであるものを3段カスケードに接続すると、波長選択特性の幅が広がっているのが同図(a)からわかる。同図(a)を拡大したものが同図(b)であり、半値幅が0.39nmとなっていることが分かる。これによれば、0.8nm間隔のグリッドに配置されている光信号を選択することが精度良くできるようになると共に、サイドローブの位置を調整することによって、クロストークをよくすることができる。
従って、図5〜図12で説明したOADM装置に使われているAOTFは全て、3段のAOTFをモノリシックに形成し、同一周波数のSAWで波長選択動作を行わせている構成を前提にしている。
図24は、AOTFの温度依存性に対する対応技術を説明する図である。
AOTFは温度に敏感であり、1℃温度が上がると選択波長が0.73nmずれてしまう。WDMシステムにおいては、0.8nm間隔で隣のチャネルの光信号が配置されていることを考えると、AOTFは温度が1℃上がっただけで、隣のグリッドの波長を選択してしまうような特性を有している。従って、AOTFをWDMシステムのOADM装置に使用する場合には、温度変化に対するフィードバックをRF信号あるいは温度制御装置にかける必要がある。温度制御装置を設けてAOTFの温度を一定に保とうとしても、ペルチェ素子等をAOTFの表面以外に設けてしまえば、温度勾配が生じるために表面の温度を正確に一定にすることは難しい。また、直接表面の温度を制御することも考えられるが、構造上ペルチェ素子等温度を上下する素子をAOTFの表面に設けることは難しい。また、温度センサもAOTFの表面の温度を正確に測らなければならないので、従来の温度センサでは、その設置方法も難しい。しかし、SAWがAOTFの表面を伝播するものであって、AOTFの表面の温度に一番影響を受けることから表面の温度を何らかの方法で正確に検出し、表面の温度に対応した適切なフィードバックをかける必要がある。
そこで、本実施形態では、共振器の発振周波数が温度により敏感に変化することを利用して、AOTFの表面に共振器を作成して表面の温度を測定する。その構成を示したのが、図24である。
3段構成のAOTFの横の基板の表面上に周期Λ、対数NのIDTを設け、共振器を構成する。発振回路240は、共振器用IDTを発振させるように信号を送信し、共振器を共振させる。周波数カウンタ241は、発振回路240から発振された信号の周波数の内、共振器が共振を起こした周波数をカウントし、その周波数からAOTFの表面温度を取得する。表面温度の情報は、フィードバックとしてAOTFのIDTにRF信号を送信する駆動回路242に送られる。駆動回路242は、温度の変化による選択波長のずれを計算して、AOTFに印加するRF信号の周波数を制御し、AOTFが正確に所望の波長の光信号を選択できるように調整する。
図25は、共振器の温度依存性を示す図である。
同図によれば、IDTの周期が20μm、対数が200本の場合、20℃〜70℃の広い範囲で、周波数の変化がほぼ直線となっていることが分かる。同図によれば、共振器の温度係数は、−14.1kHz/℃である。共振器の周波数は電気回路で検出すれば良いが、通常の共振器の共振周波数を180MHzとして、1秒ゲートを使用して共振器の共振周波数を計測したとすると、1万分の1の精度で温度を測定できることになる。
従って、上記技術によれば、AOTFの表面温度を非常に精度良く測定することができるので、測定された共振周波数に基づいて、RF信号の周波数を調整してやれば、精度の良い透過特性の制御を行うことができる。
なお、上記では、AOTFの温度変化による選択波長の変化をRF信号の周波数を変えることで補償する点について述べたが、AOTFの温度を制御することによって、選択波長を制御することも可能である。この場合、ペルチェ素子をAOTFの表面に近い位置に配置し、温度を変化させることによって選択波長を制御する。この場合、RF信号で制御するのとは異なり、選択波長全てをスライドするように波長シフトできるので、経時劣化などによって、選択波長全体がずれを起こしている場合などに有効に使用できる。
図26、27は、3段構成のAOTFの選択特性の揺らぎと揺らぎ防止対策を説明する図である。
図26、27において、AOTFによる選択波長は4つとし、3段構成のAOTFの各段に、同じ周波数成分を持つSAWを発生させて、波長選択させる場合を前提としている。AOTFに生成されるSAWは理想的な正弦波ではないので、揺らぎが生じる。従って、周波数成分にサイドローブが生じ、これにより、選択される波長にクロストークを生じる。AOTFで選択する波長が互いに離れている場合には、サイドローブが非常に小さくなるので、クロストークの発生は無視できる程度となるが、互いに近接している場合には、クロストークにより、出力される光信号のパワーがビートを生じてしまう。また、AOTFのSAWは定在波とはなっておらず、進行波としてAOTF上を進行しているので、光信号にドップラー効果による波長シフトを生じる。そこで、本実施形態では、AOTFに印加するRF信号の位相を制御して、ビート等を打ち消すようにする。
図26は、3段構成のAOTFの格段に生じるSAWの位相差がない場合を示している。同図(a)は、4つのチャネルを選択するために発生されるSAWが互いに位相差0°となっていることを示している。
同図(b)の(1) は、AOTFの選択波長特性が時間とともにどのように変化するかを示したものであり、波長特性の縦軸は線形スケールである。(2) は、(1) の縦軸をデシベル表示したものである。いずれも横軸は波長である。また、(3) と(4) はスルーポート側の波長選択特性を線形スケールとデシベルスケールで示したものである。
同図(b)の(1) 〜(4) から明らかなように、波長選択特性は、時間が経過するに従い、揺らぎを起こすことが分かる。この揺らぎは、対応する波長の光信号をドロップしようとした時、選択波長の光信号のパワーの揺らぎを引き起こす。選択波長の時間の経過に伴う揺らぎの様子を示したのが(5) であり、(6) は、スルーポート側のドロップされた光波長のスルー側への漏れ具合を示したものである。
同図(b)から分かるように、3段構成のAOTFに単純に波長選択のためのSAWを発生させたのでは、選択された波長のパワーに揺らぎが生じ、これが大きくなると強度変調されている光信号のデータを正常に受信側で受信できなくなる可能性を示している。
図27は、AOTFの選択特性の揺らぎを防止する方法を示した図である。
同図(a)に示されるように、本実施形態では、3段構成のAOTFで4つのチャネルを選択する場合、それぞれを選択するためのSAWの位相を周期的に変えてやる。このように、SAWの位相制御を行った場合の波長選択特性を示したのが、同図(b)である。(1) 〜(4) に示されるように、波長選択特性の時間経過による揺らぎが抑圧されているのが分かる。ここで図26と同様に(1) と(3) は波長選択特性を縦軸を線形スケールに採って示したものであり、(2) と(4)は、時間経過による変化を重ね書きし、波長選択特性の縦軸をデシベルスケールで示したものである。
(5) はドロップポートに出力される選択波長のパワーレベルの変化を示した図である。同図(b)の(5) は、図26(b)の(5) と比較すれば明らかなように、パワーの揺らぎが抑圧されていることが分かる。パワーのレベルは0デシベルから少し下がっているが、これは、ドロップポートに出力される光信号のレベル変化をSAWの位相制御で打ち消すことによって生じたロスである。また、(6) には、スルーポートの選択波長光信号の漏れ具合を示したものである。
このように、SAWをAOTFに印加する場合、3段構成の各段に発生するSAWの位相を制御することによって、ドロップされる光信号のパワーに生じるビートを抑制することができることが分かった。また、スルーポート側でも漏れ光が極端に多くなったりすることがなくなり、AOTFの波長選択特性が良くなることが示されている。
このように、AOTFを単に3段構成にするのみではなく、各段に発生するSAWの位相をRF信号の位相を制御することによって、変えてやることによって、AOTFの波長選択特性をよりプレーンなものとすることができる。従って、AOTFの波長選択時に生じるビートを抑制して、強度変調された光信号をより正確に受信することができるようになる。
図28は、AOTF駆動回路の概略構成を示す第1の例である。
AOTF駆動回路を形成するに当たり、RF信号の発振周波数に対応する固定発振周波数の発振器を必要とするだけ用意しておき、これらの発振RF信号を適宜選択してAOTFに加えることにより、AOTFを駆動する方法が1つの駆動回路構成方法である。
同図は、チャネル1用に発振器OSC1が用意され、同様に、チャネル2用に発振器OSC2が、チャネル3用に発振器OSC3が、準備され、波長分割多重システムで使用される全てのチャネルに対して、発振器OSCnまで設けられている。
これらの発振器OSC1〜nは固定周波数発振器であって、これらが発振する信号をディバイダでそれぞれ3つに分割し(AOTFは3段構成で、RF信号を印加すべきIDTが1つのAOTFについて3つあるとしている)、1つは、位相遅延無しでカプラに入力される。2つめは、図27(a)の表にあるように、RF信号に位相遅延を与えるために位相遅延部が設けられている。同図の場合、1つの位相遅延部で与える位相遅延は120°となっている。
発振器OSC1からのRF信号は、ディバイダで分岐された後、ポート1から出力されるRF信号は位相遅延無しに、カプラに送られ、1段目のAOTF#1に与えられる。ポート2から出力されるRF信号は、120°位相遅延を受けた後、カプラに入力され、2段目のAOTF#2に印加される。また、ポート3から出力されるRF信号は、120°の遅延を2回受け、240°位相遅延を受けてからカプラに入力され、3段目のAOTF#3に印加される。
同様に、チャネル2選択用の発振器OSC2から出力されるRF信号は、ディバイダで分割された後、ポート1から出力される信号は位相遅延を受けずカプラに入力され、AOTF#1に印加される。ポート2から出力されるRF信号は、240°の位相遅延を受けて、カプラに入力され、AOTF#2に印加される。ポート3からのRF信号は120°の位相遅延を受けて、カプラに入力され、AOTF#3に印加される。
チャネル3用の発振器OSC3からのRF信号はディバイダで分岐された後、ポート1〜3のいずれの信号も位相遅延を受けることなく、1〜3段のAOTF#1〜#3に印加される。
後は、同様に、上記発振器OSC1〜OSC3までの位相遅延の仕方を繰り返し、発振器OSCnまでをカプラに結線し、1〜3段までのそれぞれのAOTF#1〜#3にRF信号が印加される。
位相遅延部としては、ケーブルを長くするとか、トランスを設け、信号を取り出す位置を変えるとか、遅延線を使用する等が考えられる。ただし、トランスを使用した場合には、信号を取り出す位置によりインピーダンスが異なったりするので、あまり、好ましいとはいえず、また、遅延線はRF信号の波形が崩れる恐れがあるので、本実施形態においては、ケーブルを長くすることによって位相遅延を与えている。ケーブルを使った場合、RF信号が170MHzの場合、120°遅延を与えるには、35cm余分に長くしてやればよく、240°遅延を与える場合には、70cm余分に長くしてやればよい。ただし、他の方法であっても、それぞれの欠点を解消するような方策をとれば、使用することができる。
図29は、AOTFの駆動回路の概略構成を示す第2の例である。
図28の場合には、どのような波長の光信号をもドロップすることができるように、各チャネル用の発振器を全て用意していたので、ドロップする光信号の波長が、対応しない発振器は、設けられているにも関わらず、使用されない状態となってしまう。つまり、無駄な発振器を用意していることになる。
ところで、電気信号の発振器は通常発振周波数を変えることができるようになっているので、発振器をドロップする波長の数だけ用意しておき、ドロップする光信号の波長が変わったときには発振器の発振周波数を変化させることによって、対応するような回路構成も可能である。このような構成の概略を示したのが同図である。
ここでは、ドロップされる光信号の波長数は8個であると決められているとする。この場合、発振器はOSC1〜OSC8の8つのみを設けておく。各発振器OSC1〜OSC8から出力されるRF信号は、3段のAOTFのいずれかに印加するためにディバイダで三分岐され、三分岐されたRF信号は、更に後段のディバイダによって3つに分岐される。このようにして後段のディバイダによって3つに分けられたRF信号は、それぞれ位相遅延無し、120°位相遅延、240°位相遅延の三種類とされて、スイッチに入力される。スイッチは、AOTFで選択すべき波長の数等から発振器OSC1が#1〜#3のAOTFの各段に印加するべき位相を選択するためのものである。
同図では、発振器OSC1に対応する構成のみが示されているが、他の発振器OSC2〜OSC8に対応する構成もまったく同じである。このように構成することにより、各発振器OSC1〜OSC8が発振するRF信号を所望の位相差を付けて各段のAOTF#1〜#3に加えることができるので、発振器OSC1〜OSC8の発振周波数が変わった場合にも、AOTFに適切な位相制御を行ったRF信号を印加し、選択された波長の光信号のパワーのビートを平滑化することができる。
また、上記説明では、位相遅延量は120°単位であったが、設計上最も良い位相遅延量を設定すべきであって、本実施形態のように必ずしも120°に限られたものではない。
図30は、OADM装置を含むOADMシステムのシステム設計を説明する図である。
WDM伝送システムに適用する光アンプとしては、1.5μm帯に広い利得帯域を持つエルビウムドープファイバアンプ(EDFA)が実用段階にある。しかし、現在世界的に最も普及している既設の1.3μm帯零分散シングルモードファイバ(SMF)伝送路上で1.5μm帯信号の高速伝送を行う場合、あるいは使用波長帯域で分散値が零でないnon-zero-dispersion shifted fiber (NZ−DSF)伝送路を用いる場合、伝送路の波長分散特性あるいは分散特性と光ファイバ中で発生する非線形効果の相互作用で伝送波形が歪む。WDM伝送システムで分散特性との相互作用で波形劣化を引き起こす非線形効果は、伝送波長が1波長の場合にでも発生する自己位相変調効果(SPM)と多波長の場合に発生する相互位相変調効果(XPM)の2つである。SPM、XPM共、伝送光信号に波長チャープを起こさせるものである。
これら光ファイバの分散特性に起因する影響は伝送速度、伝送距離を制限する大きな要因となる。このため何らかの方法でこれらの影響を抑圧する必要がある。
抑圧する方法として、伝送路で発生する分散と逆符号の分散を有する分散補償器を伝送路に挿入し、全伝送路の分散を小さくする方法が提案されている。分散補償器としては、ファイバグレーティングを用いたもの、光干渉計を用いたもの、伝送路と逆の分散特性を持つ光ファイバを用いたもの等様々な方法が提案されている。また、送信部で予めプリチャープをかける方法(ベースバンド信号の光強度変調成分以外に波長分散による広がりを抑圧するために光位相または光周波数変調を意図的に施す方法)、プリチャープと上記分散補償器との組み合わせで行う方法が提案されている。
実システムにおいては、使用する伝送路の分散値、非線形係数、非線形効果の効率に大きく影響する各波長の伝送路入力光パワー等にばらつきが生じる。これらばらつきが生じた場合でも伝送特性に影響を与えない方法を適用する必要がある。また、光波ネットワークにおいては、各波長は任意のノードで、分岐、挿入されるため、波長によって伝送ルートが異なる。この場合にでも伝送品質を保持する必要がある。
従って、本実施形態では、プリチャープと分散補償器とを組み合わせ、さらに分散補償機の挿入位置、分散補償量、送信部でのプリチャープ量(αパラメータ)の最適化により問題を解決する。
以下に、具体的に説明する。
OADMシステムは、同図(a)に示されるように、送信部と受信部の間を伝送路で結び、伝送路中に、光アンプや分散補償手段、OADMノードが接続された構成となっている。送信部は、各電気信号を波長λ1〜λnまでの光信号に変換するE/O装置が設けられ、これらによって生成された光信号がマルチプレクサMUXによって波長多重され送出される。波長多重された光信号は光アンプで増幅され、分散補償手段によって分散が補償されてから再び光アンプで増幅されて、伝送路に送出される。伝送路の分散量を16ps/nm/kmで、80kmで(光アンプ間やOADM装置間等ノード間の伝送路のことをスパンと呼ぶ)、4スパン(送信局と受信局の間にノードが3つ入っている構成を示す。同図の場合、ノードとして2つの光アンプと分散補償手段の組み合わせ2つとOADMノ
ードが1つ入れられている。)の場合、送信部の分散補償手段の補償量は、例えば、−700ps/nmである。また、途中に入れられるノードとしての分散補償手段の分散補償量は例えば−1200ps/nmである。受信部は、光アンプに挟まれた分散補償手段と、波長多重された光信号を分波するデマルチプレクサDMUXと、分波された波長の光信号を電気信号に変換するO/E装置とからなっている。ここで、受信部の分散補償手段の補償量は例えば−1200ps/nmである。このとき、受信部でのトレランスは±200ps/nmとなる。
このように、各分散補償手段の分散量を設定してやると80kmを4スパン伝送する波長分割多重システムにおいては、最適な分散補償をすることができる。
同図(b)は、分散補償手段を構成する場合の光アンプとの組み合わせの変形例を示した図である。
同図(b)上段は分散補償手段が非線形効果を示しやすく、しかもロスが大きい場合の構成である。先ず、分散補償手段のロスを補償し、しかも分散補償手段内で非線形効果が起こらないようにするために、所定のレベルまで光信号のレベルを増幅する前段光アンプを設ける。ここで、所定のレベルまで増幅された光信号は、分散補償手段に入力され、分散補償される。分散補償手段から出力された光信号は、後段の光アンプによって、例えば80km伝送し、次の光中継器まで光信号を送信するのに必要なレベルまで増幅される。
同図(b)中段は分散補償手段のロスが小さい場合に可能な構成である。
伝送されてきた光信号は、増幅されないまま分散補償手段に入力され、分散が補償されてから、光アンプで増幅される。この場合は、分散補償手段のロスが小さいので、分散補償手段を通過した後の光信号のレベルがあまり小さくなっていないので、後から光アンプで増幅してもSN比をあまり悪くすることない。
一方、同図(b)下段は、分散補償手段がファイバグレーティングを使ったもののように非線形効果をあまり示さない場合に可能な構成である。
この場合には、光アンプで光信号を増幅してから分散補償手段に入力している。光アンプで光信号は非常にパワーの大きい信号となるが、分散補償手段が非線形効果をあまり示さないので、非線形効果による波形劣化を招く恐れがほとんどない。従って、先に光アンプを設けることが可能である。このとき、分散補償手段のロスが大きくても先に光アンプで増幅しているので、分散補償器を通過した後でも十分なSN比を維持することができる。
分散補償手段としては、分散補償ファイバを使うことが一般的であるが、分散補償ファイバは、ロスが大きく、しかも入力する光信号のレベルが所定値より大きいと非線形効果を示すので、入力する前には、所定値より小さいレベルまで光信号を増幅し、分散補償後再び遠くまで伝送するために光パワーを挙げてやる必要がある。従って、分散補償ファイバを分散補償手段として使用する場合には、同図(b)の上段の構成を使用するのが好ましい。
図31は、OADM装置部分の分散補償のための構成を示す図である。
OADM装置では、ドロップされる光信号に対しては、図30の送信部から受信部に送信される光信号と同様に分散補償を受けられるように分散補償器を配置し、トリビュータリ局に送信するようにする。一方、アドされる光信号に対しては、やはり、トリビュータリ局からOADM装置を通って受信部に送信される光信号は、図30の送信部から受信部に送信される光信号と同様の分散補償が受けられるように構成する。
同図(a)では、送信側から伝送されてきた光信号は、図30の伝送路中に設けられる分散補償手段の分散補償量と同じ−1200ps/nmの補償量を有する分散補償手段によって分散補償され、OADM装置に入力する。スルーする光信号は、OADM装置がなかったようにそのまま伝送されていく。一方、ドロップされる光信号も−1200ps/nmの補償を受けて、ドロップされトリビュータリ局に送信されるので、トリビュータリ局で受信されるときは、図30の送信部から受信部にスルーして受信される光信号と同じ分散補償を受けることができる。一方、アドされる光信号は、アドポート側に、図30では、送信器に設けられていた−700ps/nmの補償量を有する分散補償手段に対応する分散補償手段が設けられる。従って、トリビュータリ局からそのまま送出された光信号
は、アドポート側の分散補償手段によって、図30の送信部でうける補償に対応する分散補償を受けてOADM装置でアドされることになる。アドされた後は、他の光信号と同じように分散補償されるので、トリビュータリ局からアドされる光信号も、受信側に送信されるときには、図30の送信部から受信部にスルーして送信される光信号と同様の分散補償を受けて伝送される。
このように、OADM装置をスルーする光信号も、アド・ドロップされる光信号もそれぞれの端局に伝送される間に同じような仕方で分散補償されるように分散補償手段をネットワークに組み込むようにする。
同図(b)は、OADM装置の別の構成例である。
OADM装置の中には、光信号をドロップするためのAOTF等の分岐回路と、光信号をアドするための光カプラ、AOTF、あるいは合波器等の挿入回路とが設けられている、同図(a)で述べたように、アド・ドロップされる光信号も、図30の送信部から受信部にスルーする光信号と同じように分散補償をするために、OADM装置の前段には、補償量−1200ps/nmの分散補償手段が設けられており、アド側には、−700ps/nmの分散補償手段が設けられている。同図(b)の構成は、AOTFをドロップ専用に使用し、アドは光カプラ等で行うという構成をしており、図5〜図12に示したOADM装置の具体的構成に対応している。
図32、33は、送信部、受信部、及びOADM装置のアド側、ドロップ側に設けられる分散補償手段の構成例を示す図である。
送信部、受信部及びOADM装置のアド側、ドロップ側は、伝送路の経時劣化や破損回復による割入れ等により補償量を調整できることが好ましい。そこで、分散補償手段を補償量の可変な構成とすることが有力である。
図32(a)は、1〜nの補償量の異なる分散補償手段(例えば、分散補償ファイバ)を設け、入力された光信号を光カプラで等しく分岐し、光スイッチを各分散補償手段毎に設けておいて、いずれかの分散補償手段を選択するようにする。従って、光信号は、1〜nの異なる補償量を有する分散補償手段のいずれかを通って出力されることになり、最適な分散補償手段を選択することにより、伝送路の伝送特性の変化に対応することができるようになる。
図32(b)は、1〜nの異なる補償量を有する分散補償手段を設けると共に、出力側に1×n光スイッチを設けている。このようにすれば、1〜nの分散補償手段それぞれに光スイッチを設ける必要がなくなる。入力された光信号は、光カプラで分岐され、全ての分散補償手段に等しく入力され、分散補償されるが、1×n光スイッチで、最適に分散補償された光信号を選択して出力するようになっている。
図33(a)は、入力側に1×n光スイッチを設け、1〜nの分散補償手段のいずれか1つ、最適に分散補償することのできる分散補償手段に光信号を入力するように構成されている。1×n光スイッチで光路が選択された光信号は、対応する分散補償手段を通過して、光カプラを介して出力される。
図33(b)は、光カプラを使用する代わりに1×n光スイッチを使用する構成例を示している。
入力した光信号は1×n光スイッチで光路が決定され、1〜nのいずれかの分散補償手段に入力される。出力側の1×nスイッチは、光信号が入力された分散補償手段からの光信号を通過させるように光路をスイッチングし、光信号を出力させる。
図33の構成は、図32の構成に比べ、光信号のパワーの減少を少なくすることができる。すなわち、図32では、入力された光信号は、実際に分散補償手段に入力されるか否かに限らず、等しく分割されてしまうのでパワーは、分割数分の1となってしまう。しかし、図33の構成では、入力した光信号は1×nスイッチにより、1〜nのいずれかの分散補償手段に全てのパワーが送られることになるので、実際には使用されない光路に光信号のパワーを分割して送出してしまうことがない。
図34〜37は、分散補償するための構成の変形例を示した図である。
図34は、光スイッチまたは、光カプラ340を使用した例であり、補償量が同じ、あるいは、異なる分散補償ファイバ等の分散補償手段を直列に接続し、分散補償手段を複数通過させることにより、光信号の分散補償を最適化してやろうというものである。入力した光信号は、分散補償手段を通過するが、分散補償手段の後段に設けられた光スイッチ341により、光路が変えられ、光スイッチまたは光カプラ340へと送られ、出力される。どの光スイッチで光路が切りかえられるかにより、通過する分散補償手段の数が異なるので、補償される分散の量も異なってくる。
図35は、迂回路を作って、光信号が通過する分散補償手段の数や種類を変えてやる構成である。入力した光信号は、光スイッチ350によって次段の分散補償手段を迂回するか通過するかが切り換えられる。直列に接続されている分散補償手段のそれぞれの前段には、光スイッチ350が設けられており、各光スイッチの次段の分散補償手段を光信号に通過させるか否かが決定できるようになっている。同図の構成の場合には、迂回路が形成されているため、後段に設けられている分散補償手段に光信号を通過させるのに、前段の分散補償手段を通過させる必要がないので、分散補償手段によって補償する分散補償量の大小をより自由に設定できる。
図36は、図34の変形例である。各分散補償手段の後段には、光カプラ362が設けられており、光信号が分岐されるようになっている。この構成によれば、同構成で可能な分散補償量の種類を受けた全ての光信号が、それぞれの光スイッチ360まで送られてきており、光スイッチ360の内1つを開いてやることにより、最も良く分散補償された光信号を光スイッチまたは光カプラ361に送ることができる。光スイッチまたは光カプラ361からは、このようにして選択された最も良く分散補償された光信号を送出することができる。ただし、この構成では、光信号が光スイッチまたは光カプラ361に送られるか否かに関わらず、光カプラ362によって分岐されてしまうので、後段の分散補償手段に入力される光信号ほどパワーが小さくなってしまうという性質がある。
図37は、図36の更なる変形例である。各分散補償手段の後段には光カプラ370が設けられており、各分散補償手段によって分散補償された光信号が光スイッチ371に入力される。光スイッチはさまざまな分散補償を受けた光信号のうち最も良く分散補償された光信号を選択して出力する。この場合にも、光信号は、分散補償手段を順次通過するうちに、その後段の光カプラ370で分岐されてしまうことにより、パワーが小さくなってしまうという性質を持っている。
図38、39は、分散補償と波形劣化特性について示した図である。
図38は、10Gbpsで、8波多重した場合において、80kmを4スパン伝送したときの波形劣化を示している。伝送路(シングルモードファイバ;SMF)への入力光パワーは1チャネル当たり平均で+10dBm、送信局側でαパラメータ=−1のプリチャープを行っており、送信局では分散補償ファイバを使用せず、中継器と受信局で同じ大きさの分散補償量を持つ分散補償ファイバで分散補償している。
ISI劣化とは符号間干渉による劣化量のことであり、信号の振幅方向の劣化を表している。ISI劣化は、0%に近いほど良い。位相マージンは、光信号のオン/オフパターンの時間方向のずれの量など、光信号の位相方向の劣化量を表すものであり、100%に近いほうが良い。
今、光信号の劣化量の許容範囲をISI劣化が10%、位相マージンが70%であるとする。同図の上から突出しているグラフのISI劣化が10%である部分で持つ幅が、いずれのチャネルに対してもほぼ1000〜1200ps/nm/unitの範囲にあることが分かる。一方、同図の下から突出しているグラフの位相マージンが70%である部分の幅が、いずれのチャネルに対してもほぼ1150〜1300ps/nm/unitの範囲であることが分かる。
上記両者の範囲の重なった部分が、分散補償量のトレランスである。このトレランスが広いほうが良いのであるが、同図では、非常に狭いことが分かる。
図39は、図38の条件において、送信局で受信局と同じ量の分散補償をしており、中継器は送信局や受信局の分散補償量の2倍の分散を行っている。また、送信局では、送信局でαパラメータ=+1のプリチャープを行っている。
同図ではトレランスの広がりがわかりにくいが、送信側で分散補償を行うとともに、αパラメータが正のプリチャープを行うことによって、分散トレランスを広くすることができる。
これをわかりやすく示したのが図40である。
図40は、位相マージンが70%以上である場合の分散トレランスを示した図である。
同図(a)は、送信側でαパラメータ=+1のプリチャープを行った場合を示し、同図(b)は、送信側でαパラメータ=−1のプリチャープを行った場合を示す。同図は、10Gbpsの伝送速度で、16波波長多重し、4スパン伝送したものである。同図では、グラフの上方に位相マージンが70%以上を満たす上限が示されており、グラフの下方に下限が示されている。この上限と下限の間が分散トレランスである。同図(b)のように、送信側で負のプリチャープを行った場合には、上限と下限がほとんどくっついてしまい、トレランスがほとんどないことが示されている。これに対し、同図(a)のように、送信側で正のプリチャープを行った場合には、上限と下限に幅があり、分散トレランスが大きく取れることが分かる。分散トレランスが大きいということは、中継器(インラインアンプ)の分散補償量を一定に保っていても、伝送路のスパンの長さの変化によら
ず同じ伝送特性で光信号を伝送することができることを示している。これは、光信号の分岐、挿入や修復時の割入れ等によって、伝送路のスパン長が変わってしまったり、伝送路劣化により伝送路の長さは同じでも光信号の感じる光路長が長くなってしまったりした場合にもインラインアンプの分散補償量を変えずに済む許容量が大きいということであり、実際のシステムを構築する上で有利になる。
以下に、OADM装置を使ってネットワークを構築する際に必要とされる冗長構成(パスプロテクション)の構成例を説明する。
図41は、2ファイバBLSRのOADMノードの構成を示した図である。
同図では、32波を多重する波長分割多重システムを前提に説明する。BLSRでは、2ファイバで上り伝送路と下り伝送路の冗長化を行うため、波長チャネルの半分を現用(Work)、残り半分を予備(Protection)として使用する。例えば、同図では、西から東への通信には、波長λ1〜λ16を現用として使用し、東から西への通信には、波長λ17〜λ32を現用として使用している。
正常時は、西から来た光信号は、1×2カプラ410から光ループバックスイッチ411を通り、波長λ1〜λ16までを現用として使用している波長Add/Drop部412に入力される。波長Add/Drop部412から出力される光信号は、光ループバックスイッチ413を通って1×2カプラ414を介して伝送路に送出される。同様に、東から西に光信号を送信する場合には、1×2カプラ419から光ループバックスイッチ418を介して波長Add/Drop部417に入力される。波長Add/Drop部417では、波長λ17〜λ32を現用として使用している。波長Add/Drop部417から送出される光信号は、光ループバックスイッチ416を介して、1×2カプラ415を通って、西側に送出される。なお、波長λ1〜λ16と波長λ17〜λ32は、それぞれ同じ情報を常に運んでいる。
ここで、図42に示すように西側にケーブル切断が起こり、西側へ光信号を送信できない、あるいは、西側から光信号を受信できなくなったとすると、東側から送られてくる波長λ1〜λ16の予備回線が波長Add/Drop部412の現用装置により処理され、波長λ17〜λ32の現用回線が波長Add/Drop部417の現用装置により処理されるようになる。すなわち、東側から送られてきた光信号は、1×2カプラ419で光ループバックスイッチ418に送られると共に、光ループバックスイッチ411にも送られている。光ループバックスイッチ411は、西側からのパスを切断し、1×2カプラ419からの光信号を波長Add/Drop部412に送信するようにする。波長Add/Drop部412は、波長λ1〜λ16の光信号を現用の装置で処理し、光ループバックスイッチ413と1×2カプラ414を介して東側へ送出する。1×2カプラ419からのもう一方の光信号は、光ループバックスイッチ418を介して波長Add/Drop部417に入力され、波長λ17〜λ32までを現用装置で処理して、出力する。波長Add/Drop部417から出力された光信号は、光ループバックスイッチ416で光路が切り換えられ、1×2カプラ414から東側へ送出される。
図43に示すように、東側にケーブル切断が生じた場合は、上記説明と同じであって、ただし、光ループバックスイッチ418が上記説明の光ループバックスイッチ411の動作をし、光ループバックスイッチ413が上記説明の光ループバックスイッチ416の動作をするようになる。
同図のように、波長Add/Drop部412で現用として使う波長と予備として使う波長とを波長Add/Drop部417では、現用と予備を入れ換えて使用することにより、ケーブル切断が生じて、光信号の折り返しが必要になった場合に、光信号の波長変換を行う必要がなくなる。従って、装置の構成を簡単化でき、コストの低減に寄与するところが大きい。
同図のような装置構成は、BLSR(Bidirectional Line Switch Ring )という名前が示すように、リング状のネットワーク(図44、45参照)において採用される。
図44は、正常時のリングネットワークを示す。OADMノードA、B、C、Dは図41にて説明したOADMノードと同一の状態にある。図45はOADMノードAの西側で光ケーブル断が生じた場合のリングネットワークの構成を示す図である。この場合OADMノードAでは、図42のようにループバックスイッチ411、416が切り替わる。また、OADMノードDでは、図43に示すようにループバックスイッチ413、418が切り替わる。
図46は、4ファイバBLSRのOADMノードの構成を示す図である。
4ファイバBLSRにおいては、波長Add/Drop部も2重化されており、西側から東側へ向かう回線には、現用の波長Add/Drop部423と予備の波長Add/Drop部424が設けられ、東側から西側へ向かう回線には、現用の波長Add/Drop部431と予備の波長Add/Drop部432が設けられている。また、4ファイバBLSRにおいては、伝送路も現用と予備が設けられており、例えば、32波のチャネルを現用と予備に分ける必要はなく、32波すべてを現用として使用することができる。
1+1プロテクションにおいては、現用伝送路と予備伝送路に常に同じ情報が流されている。通常動作では、西側から入力された光信号は、光ループバックスイッチ426、427を通過し、光1+1プロテクションスイッチ425に入力する。光1+1プロテクションスイッチ425では、現用回線と予備回線の切り替えを行う。一般に、現用の波長Add/Drop部423には、SN比の良い回線の光信号が入力される。光1+1プロテクションスイッチ425から出力された光信号は、それぞれ現用の波長Add/Drop部423あるいは予備の波長Add/Drop部424に入力され、処理された後、光1+1プロテクションスイッチ422に入力される。光1+1プロテクションスイッチ422では、現用と予備の切り替えが行われ、出力された光信号は、光ループバックスイッチ420、421を介して東側へ送出される。
東側から西側へ送られる光信号は、光ループバックスイッチ434、435及び光1+1プロテクションスイッチ433を介して、それぞれ現用波長Add/Drop部431及び予備波長Add/Drop部432に入力されて、処理される。現用及び予備の波長Add/Drop部431、432から出力された光信号は、光1+1プロテクションスイッチ430、光ループバックスイッチ428、429を介して西側へ送出される。
図46のOADMノードによりリングネットワークを構成した場合の例を図47に示す。
図46のノードの西側のケーブルがすべて切断などにより使用できなくなった場合には、このノードで折り返し転送が行われる。東側の現用回線から入力した光信号は、そのまま現用の波長Add/Drop部431に入力される。現用の波長Add/Drop部431から出力された光信号は、光1+1プロテクションスイッチを介して光ループバックスイッチ428に入力されるが、西側へは送信されず、光ループバックスイッチ421へ転送され、予備回線を使って東側へ送信される。一方、東側の予備回線から入力された光信号は、西側のケーブル切断等により、光ループバックスイッチ435によって、光ループバックスイッチ426に転送される。光ループバックスイッチ426は、転送されてきた光信号を光1+1プロテクションスイッチ425を介して現用の波長Add/Drop部423に入力する。この光信号が現用の波長Add/Drop部423から出力されると、光1+1プロテクションスイッチ422、光ループバックスイッチ420を介して東側へ現用回線を使って送信される。
図48のOADMノードAの動作が以上の説明に対応する。
東側のケーブルがすべて使えなくなった場合は、上記説明と同様であって、ただし、光ループバックスイッチ428の動作を光ループバックスイッチ420が、光ループバックスイッチ435と426の動作を光ループバックスイッチ427と434が行う。
図48のOADMノードDの動作が以上の説明に対応する。
4ファイバBLSRでは、現用の波長Add/Drop部の故障と伝送路の切断が同時に起きても対応することができる。例えば、図49に示すように、現用の波長Add/Drop部423が故障し、西側へ向かう現用回線が同時に切断されたとする。
このときは、東側の現用回線から入力された光信号は、現用の波長Add/Drop部431を介して光1+1プロテクションスイッチ430でパスが予備側に切り換えられ、光ループバックスイッチ429を介して西側へ送出される。一方、西側の現用回線から入力された光信号は、光1+1プロテクションスイッチ425で予備の波長Add/Drop部424に送られる。予備の波長Add/Drop部424から送出された光信号は、光1+1プロテクションスイッチ422によって、光ループバックスイッチ420に送られ、現用回線を使って、東側へ送出される。
このように、伝送路の現用回線が使えなくなった、あるいは、現用の波長Add/Drop部が使えなくなった場合には、光1+1プロテクションスイッチ430が現用と予備を切り替えて障害を克服する。
図50は、1つのファイバで両方向伝送を行うシステムにおける2ファイバBLSRのノード構成である。
同図の構成では、現用回線の東側から入力した光信号は、BD−WDMカプラ440で分岐され、光ループバックスイッチ442を介して現用波長Add/Drop部のうち、波長λ17〜λ32を扱う(波長多重数を32と仮定している)装置444に入力する。ここで、BD−WDMカプラとは、Bi-Directional−WDMカプラという意味である。装置444から出力された光信号は光ループバックスイッチ446を介してBD−WDMカプラ447に入力され、現用回線を使用して西側に送出される。一方、現用回線を介して西側から入力した波長λ1〜λ16の光信号は、光ループバックスイッチ445を介して現用の波長Add/Drop部の内、波長λ1〜λ16を扱う装置443に入力される。装置443から出力される光信号は、光ループバックスイッチ441を介してBD−WD
Mカプラ440で西向きの光信号と合波されて現用回線を東向きに伝送される。
このように、1つのファイバで両方向伝送を行う場合は、互いに逆方向に伝播する光信号の干渉が大きくならないように、異なる波長を使うようにする。例えば、同図では、西から東へ向かう信号を波長λ1〜λ16とし、東から西に向かう信号を波長λ17〜λ32としている。
通常時における予備側の動作は、現用側の動作と同じであるが、使用される波長が異なっている。すなわち、西から東へ向かう光信号の波長はλ17〜λ32であり、東から西へ向かう光信号の波長はλ1〜λ16となっている。
ここで、図51に示すようにOADMノードの西側の伝送路が現用も予備も使用できなくなったとする。すると、波長λ1〜λ16の光信号は、東側から予備回線を使って、BD−WDMカプラ448に入力され、光ループバックスイッチ450を介して光ループバックスイッチ445に転送される。光ループバックスイッチ445は、転送された光信号を現用の波長Add/Drop部の波長λ1〜λ16を処理する装置443に入力する。装置443から出力された光信号は、光ループバックスイッチ441を介してBD−WDMカプラ440に入力され、東側へ現用回線を使用して伝送される。
一方、東側から現用回線を使ってBD−WDMカプラ440に入力した、波長λ17〜λ32までの光信号は、光ループバックスイッチ442を介して装置444に入力され、処理される。装置444から出力された光信号は、光ループバックスイッチ446で、光ループバックスイッチ449に転送され、BD−WDMカプラ448を介して、予備回線を使って東側へ送出される。
また、図52に示すようにOADMノードの東側の伝送路が現用、予備共に使えなくなった場合には、上記と動作は同じであるが、光ループバックスイッチ450の動作を光ループバックスイッチ453が行い、光ループバックスイッチ446と449の動作を光ループバックスイッチ441と453が行う。
図53は、図50のOADMノードを用いてリングネットワークを構成した場合の図である。また、図54は、OADMノードAの西側でケーブル断が生じた場合の例を示す図である。この場合、OADMノードAでは、図51と同様にループバックスイッチ445、446、449、450が動作し、またOADMノードDでは図52と同様に、ループバックスイッチ441、442、453、454が動作する。
なお、図41〜図53において説明したλ1〜λ32の光信号は、北米SONET OC−192又はOC−48、OC−12等に対応したフレーム構成を有する。
図55は、光1+1プロテクションスイッチの構成例を示した図である。
OADMノードは光1+1プロテクションスイッチによって冗長化がなされているが、光1+1プロテクションスイッチが故障した場合には、冗長化が機能しなくなるので、光1+1プロテクションスイッチそのものも冗長化しておくのが好ましい。
入力側から入力された光信号は、2×1カプラ460、461によってそれぞれ2分岐され、ゲートスイッチ462〜465に入力される。ゲートスイッチ462〜465を通過した光信号は、2×1カプラ466、467から出力側に出力される。2×1カプラ466と467の内、いずれかが故障した場合には、ゲートスイッチ462、463か、ゲートスイッチ464、465のいずれかを開いた状態にし、もう一方を閉じて、光信号を送り出すようにする。また、2×1カプラ460、461のいずれか一方が故障した場合には、ゲートスイッチ462、464か、ゲートスイッチ463、465のいずれかを開いた状態にし、もう一方を閉じて、光信号を送出するようにする。
このように、ゲートスイッチ462〜465を切り替えることによって、2×1カプラ460、461、466、467のいずれかが故障しても対応することができる。
図56は、光伝送路において、再生器をどのように挿入するかに関する考え方を説明する図である。
同図(a)に示されるように、光伝送路には、光アンプ470−1〜470−4が設けられ、これら光アンプ470−1〜470−4を所定数中継した後再生器471で光信号の再生を行う。
同図(b)には、光アンプ470−1〜470−4を中継される間の光信号のレベルの変化とSN光の劣化の様子を示している。同図(b)に示されるように、光信号のレベルは光アンプ470−1〜470−4でそれぞれ増幅され、伝送路を伝播するに従って減衰するということを繰り返している。従って、光信号のレベルのみに着目すれば、伝送路に適当な間隔で光アンプを配置しておけばよい。しかし、同図(b)のSN比のグラフに示されるように、光アンプでは、光信号にASE(Amplified Spontaneous Emission)というノイズが積み重ねられていくので、SN比は徐々に悪化していく。SN比の劣化は、劣化すればするほど悪化の仕方か小さくなっていくが、そのような状態になると光信号の情報を正確に読み取ることができなくなってしまう。従って、SN比が悪くなりきらない
内に、再生器471を使って光信号の再生を行わなくてはならない。再生器471は、受信した波長多重された光信号を各波長に分波し、各波長毎に光受信器ORで光受信し、3R処理を行って電気信号を生成し、この電気信号で光送信器OSで光信号に変換して送出する。各波長毎に再生された光信号は互いに合波されて波長多重光信号として伝送路に再び送出される。
このような再生器471を設ける方法は、直線型のネットワークでは、所定数の光アンプを通過したら、そこに再生器471を設けるようにすればよいが、リングネットワークであって、しかも冗長化がなされている場合には、予備のパスが使用された場合においても、所定数の光アンプを通過したら再生器を設けるように、再生器の配置を最適化する必要がある。一般に、5つ光アンプを通過した後、再生器を入れるとすると、予備のパスを使用した場合には上手く行かない場合が生じる。従って、5つの以下の光アンプ、例えば、3つを通過したら再生器を入れるようにする。これによれば、早めに光信号を再生することになり、また、高価で構成の複雑な再生器をより多くネットワークに組み込むことになるが、これは、ネットワークのパフォーマンスとコストを鑑みて最適化されるべきものである。