JP4154231B2 - 雑音環境における情報の取扱い - Google Patents

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    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04LTRANSMISSION OF DIGITAL INFORMATION, e.g. TELEGRAPHIC COMMUNICATION
    • H04L27/00Modulated-carrier systems

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、雑音環境において情報を取扱うための方法およびシステム、また雑音環境において相関した粒子状態を生成するための方法およびシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近5年間に量子情報処理という新しい分野が出現してきた。量子力学の理論によって説明される個々の微視的粒子―原子、電子および光子などの振る舞いは、多数のこのような粒子からなる巨視的対象の振る舞いとは全く異なっている。本分野の出現をもたらした重要な理解は、量子力学が根本的に新しい方法での情報の処理を可能にするということである。このことは、すべてが本質的に古典力学に基づいている現在の情報処理技術に対して非常に大きな利点の可能性を提供する。
【0003】
量子情報処理が古典情報処理に対して利点を提供することが証明された具体的な仕事は以下を含む。
・通信。一定の状況において量子通信は古典通信よりも有力である。例えば一定の計算タスクを実行するのに必要な量子通信の量は古典通信の量よりもはるかに少なくなり得る。(この局面は通信計算量(communication complexity)として知られる。)量子通信はまた、新規で原則的に破ることのできない暗号スキームを可能にする。
【0004】
・計算。量子力学の法則によって作動するコンピュータは、一定の計算を古典コンピュータよりも高速に実行することができる。特に、いかなる既知の古典アルゴリズムよりも指数関数的に高速な、整数を因数分解するための量子アルゴリズムが記述されている。
古典情報処理におけるのと全く同様に、量子情報処理では誤りが発生し、これらを訂正しなければならない。しかしながら、量子誤りは古典誤りとは性質が根本的に異なり、量子誤りの訂正は新しい技術を必要とする。
【0005】
量子通信が最初に提案されたとき、系の環境との相互作用およびその結果としての環境中への情報の損失が、理論上でさえ訂正できない誤りを通信において生じさせるのではないかと思われた(すなわち、量子誤り訂正は量子力学の法則によって不可能にされるのではないかと思われた)。しかしながら、1995〜96年に、2つの異なるアプローチを用いて、量子誤り訂正が実際に可能であることが示された。
一方では、C H Bennettら、Phys Rev Lett 76 (1996) 722において、環境とのデコヒーレンスからもつれ合い(entanglement)を保護することができることが示された。もつれ合い精製(entanglement purification)として知られるこのスキームの基本的な考え方は、いくつかの不純な(impure)もつれ合った状態(entangled state)から、局所的操作と古典通信のみを用いてより高度なもつれ合いを有するより少数の有限な次元を持つ量子状態を得ることができるというものである。そして、これらのもつれ合った状態は、通信プロトコル、例えばテレポーテーションにおいて用いることができる。
【0006】
他方では、PW Shor、量子コンピュータメモリにおけるデコヒーレンスの低減方法(Method for reducing decoherence in a quantum computer memory)、米国特許第5768297号;PW Shor、Phys Rev A, 52 (1995) R2493およびAM Steane、Phys Rev Lett, 77 (1996) 793において、環境との相互作用から量子メモリを保護することができることが示された。この場合の基本的な考え方は、各論理量子ビット(キュービット(qubit))をいくつかのキュービットのもつれ合った重ね合わせに符号化することである。符号化状態は、重ね合わせの個々のキュービットに影響を及ぼす誤りの数が少なければ誤りが符号化されたキュービットを破壊することがないように選ばれる。
【0007】
これらの2つの成果の関連性は、CH Bennett、DP DiVincenzo、JA Smolin、WK Wootters、Phys Rev, A54 (1996) 3824-3851において、通信が空間ではなく時間において起こる通信スキームとしてメモリをみなすことができるということを利用することによって検討された。特に、CH Bennett、DP DiVincenzo、JA Smolin、WK Wootters、Phys Rev, A54 (1996) 3824-3851においては、一方向古典通信のみを用いるもつれ合いの精製のためのプロトコルをデコヒーレンスからの量子メモリの保護のためのプロトコルに写像できることが示された。ショア・スティーン(Shor-Steane)符号は、まずショア・スティーン符号を用いてキュービットを符号化し、そのキュービットを雑音のあるチャネルを介して送り、その後復号化することによって、通信に関する誤り訂正に用いることもできる。
【0008】
これらの成果は後に、PW Shor、Proc 37th Symposium on the Foundations of Computer Science (Los Alamitos, CA; IEEE Comp Sci Press, (1996) p15)において説明されるようなフォールト・トレラント(fault tolerant)な量子計算を原則的に実現できることの証明につながった。
上記の研究のすべてにおいて、著者らの関心は技術的実現可能性にではなく原理の点を証明することにあった。これらのプロトコルは、多粒子量子系と、個々の粒子に局所的に作用する誤りとに関連している。これらのプロトコルすべてに関する一番の難点は、実施するためには多くの粒子間の制御された相互作用が必要なことである。これは現在のところ技術的に不可能であり、当面はこのままでありそうである。
【0009】
BraunsteinはNature 394 (1998), 47において、また、LloydおよびSlotineはPhys Rev Letters 80 (1998), 4088において、多粒子相互作用なしでショア・スティーン誤り訂正プロトコルを実施するための方法を提案した。彼らの方法は、(以前の研究において用いられた離散変数、例えばキュービットとは対照的に)量子論における連続的な量子変数(continuous quantum variable)の使用に基づいている。電磁場の矩象(quadrature)はこのような変数を好都合に具現化する。Phys Rev. Letters 90 (1998) 4084においては、量子誤り訂正符号を連続的な量子変数に一般化できることが示された。これらの方法は特定の物理系すなわち光に適用され、特別な種類の量子状態すなわち光のスクイーズド状態の使用を必要とする。BraunsteinならびにLloydおよびSlotineのプロトコルに必要な高度なスクイーズド状態は、作成および維持が技術的に困難である。さらに、これらのプロトコルは能動的な誤りの検出および能動的誤り訂正を用いる。
【0010】
Bouwmeesterは、quant-ph/006108において別の通信プロトコルを設けている。彼の方法は、標準のもつれ合った状態(一重項)を二者間に配布することに依存している。このプロトコルは、状態が雑音のあるチャネルを通って伝播する場合の古典タイプの交換誤り(commuting error)(スピン反転(spin-flip)など)の訂正に限定される。これは、Bouwmeesterによって用いられる枠組みにおいて発生する環境との任意の相互作用を訂正しない。さらに、Bouwmeesterプロトコルは、(GHZタイプの)非常に特別な状態を発するソースを用いるという犠牲を払って多粒子相互作用を回避する。雑音のあるチャネルを通って伝播する一重項の一方の当事者での1つのスピン反転の訂正という最も簡単な場合においてさえ、このようなソースは現在の技術の限界にある。より多くのスピン反転誤りの訂正は現在の技術の限界を超えたソースを必要とする。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、雑音によってもたらされる誤りを取り除く、情報を取扱うための方法およびシステムを提供することである。目的は、量子情報にだけでなく古典波動信号にも広く適用可能な方法およびシステムを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の1つの局面によると、少なくとも1つの情報搬送モードの形態で雑音環境において情報を取扱う方法であって、情報搬送モードの線形変換によって複数の符号化モードを生成し、前記符号化モードがそれぞれの独立チャネルに提供される工程と;少なくとも1つの復号化モードを生成するために符号化モードを線形結合する工程と;復号化モードを受信するための受信チャネルの組を提供する工程であって、前記受信チャネルの組のうちの1つが有用なチャネルとして指定される工程と;復号化モードが有用なチャネルで受信された場合はそれを有用な信号として供給し、復号化モードが組のその他の受信チャネルで受信された場合はそれを破棄する工程であって、有用な信号が雑音によって実質的に損なわれていない前記情報を表す工程とを含む方法が提供される。
【0013】
本発明の別の局面によると、少なくとも1つの情報搬送モードの形態で雑音環境において情報を取扱うためのシステムであって、情報搬送モードの線形変換によって複数の符号化モードを生成するための手段であって、前記符号化モードがそれぞれの独立チャネルに提供される手段と;少なくとも1つの復号化モードを生成するために符号化モードを線形結合するための手段と;少なくとも1つの復号化モードを受信するための受信チャネルの組であって、前記受信チャネルの組のうちの1つが有用なチャネルとして指定される受信チャネルの組と;復号化モードが有用なチャネルで受信された場合はそれを有用な信号として供給し、復号化モードが組のその他の受信チャネルで受信された場合はそれを破棄するための手段であって、有用な信号が雑音によって実質的に損なわれていない前記情報を表す手段とを含むシステムが提供される。
【0014】
本明細書中で用いられる語“モード”は、古典または量子力学によって記述される系に同等に適用される。量子の場合、これは、量子系の第二量子化記述における標準の意味に従って、ゼロ、1つ、2つまたはそれ以上の粒子を有する状態を含む状態の組を表すのに用いられる。量子力学においてはこのような状態の重ね合わせを得ることができる。従って、第1の情報搬送モードは、モード1の粒子なし、モード1の粒子1つなどの状態の組を提供することができる。量子力学においては、モードを、例えばそのモードの状態が粒子のない状態と粒子1つの状態との重ね合わせであり得るという意味で、1つ未満の粒子によって占める(populate)ことができる。古典波動系の場合、語“モード”とは適切な波動方程式の基本解のことをいう。
【0015】
本発明の説明においては、量子系を扱う2つの標準の方法すなわち第一および第二量子化言語を使用する。第二量子化の言語は、より一般的であり、任意の数の粒子を含有する系に関するあらゆる状況において用いることができる。それゆえ、本明細書中の量子プロトコルはすべて、(量子モード、生成および消滅演算子などの概念を用いて)第二量子化言語で記述することができた。しかしながら、第一量子化言語は定数の粒子を含有する系に関してより便利かつ簡単である。本明細書では所定の状況においてどちらが最も簡単と思われるかによって両方の言語を用いている。
【0016】
発明者らのプロトコルの重要な要素は、符号化および復号化操作が“線形”変換によって実現されることである。量子系の場合、線形とは、符号化および復号化を実施する有効な相互作用が、発明者らが関心を持っている状態の空間に適用されるときに線形であるということを意味している。すなわち、(第二量子化言語における)量子モードに関連する生成演算子へのその効果が、生成演算子が線形変換されるようなものであるということである(発明者らが関心を持っている状態の空間以外の他の状態については真の相互作用は非線形であるかもしれないが、このことは発明者らのプロトコルには無関係である)。特に、このことは、発明者らの単一粒子およびもつれ合い配布(entanglement distribution)プロトコルのすべてが定義上線形であることを意味している。古典波動との関連においては、同等の概念は古典モードが線形変換されることである。
【0017】
情報搬送モードが少なくとも1つの粒子によって占められる場合、符号化モードは、一旦生成されればその少なくとも1つの粒子を再構成するために線形結合することができる粒子の複数の状態として考えることができる。1つの粒子が再構成されると、それは有用なチャネルであるかどうかはわからない受信チャネルのうちの1つだけで検出可能である。そのシナリオでは、有用な信号は有用なチャネルで検出される粒子によって構成されており、その他の受信チャネルで検出される粒子は破棄される。
【0018】
用語“有用なチャネル”は、受信チャネルのうちで、到着する任意の粒子が良好で実質的に雑音のない状態にあるチャネルを表すために用いられる。以下に説明するように、基礎となる理論は、有用なチャネルに到着する粒子は有用で実質的に雑音のない信号を構成することを示している。粒子の中には有用なチャネルに到着しないものもある。粒子が有用なチャネルに現れる確率は雑音レベルに関係している。従って、本発明の技術を用いることによって、実質的に雑音のないものであるということに基づいて有用なチャネルに現れる信号を利用することが可能である。反対に、その他のチャネルに現れる粒子/信号は、完全に無視されるか“破棄される”。つまり、それらの粒子は、出力信号において用いられたり出力信号を変更するのに用いられたりすることはない。
【0019】
“雑音によって実質的に損なわれていない”という句は、信号がもとの状態におけるのと実質的に同じ情報を含有していることを意味する。本発明は、各チャネルの雑音がその他のチャネルのものから独立している場合の雑音の除去に特に適している。
上記に示したように、有用な信号は、雑音によって実質的に損なわれていないもとの情報を“表す”。つまり、情報は、そのもとの形態と実質的に同一の形態で回収することができるが、振幅/パワーは減少する(もとの信号の一部が破棄されたということを表している)。しかしながら、符号化と復号化の間でチャネルが線形または論理操作されたことによって、受信される信号がもとの情報の変更版となる可能性もある。
【0020】
本発明は、以下により詳細に論じるように通信および/または記憶に適用可能であることが理解されるであろう。
本発明は、いくつかの重要な面を有する。
実質的に雑音のない粒子または信号を提供するのに多粒子相互作用を必要としない。このことは、現時点では制御された粒子間相互作用が技術的に実現不可能なので、特に重要である。
また、符号化および結合工程を受動変換によって実行することができる。以前は受動変換だけを用いて雑音を取り除くことは可能とは考えられていなかった。
【0021】
本発明の別の局面によると、雑音環境において情報を伝送するための通信システムであって、波動の形態の物理情報信号を受け入れるための入力と;信号を複数の伝送要素に分割するスプリッタと;それぞれがそれぞれの伝送要素を搬送する複数の伝送経路と;伝送要素を結合し、それぞれの出力チャネルに出力信号の組を生成するための結合器であって、前記出力チャネルのうちの1つが有用なチャネルとして指定される結合器と;有用なチャネルで出力信号を検出するための検出器であって、その他の出力チャネルの出力信号は破棄され、有用なチャネルの出力信号は雑音によって実質的に損なわれていない前記情報を表す検出器とを含むシステムが提供される。
【0022】
さらなる局面は、雑音環境において情報を伝送するための光通信システムであって、光情報信号を受け入れるための入力と;光情報信号を複数の光ビームに分割するためのスプリッタと;光ビームを結合し、個別の光出力信号の組を生成するための結合器であって、前記信号のうちの1つが有用な信号として指定される結合器と;有用な光信号を捕捉するために配置された検出器であって、その他の出力信号は破棄される検出器とを含むシステムを提供する。
本発明は、所定の程度まで相関した粒子状態を生成するために用いることもできる。この局面によると、雑音環境における別個の位置において所定の程度まで相関した粒子状態を生成する方法であって、第1の粒子の第1の伝送サブ状態の組および第2の粒子の第2の伝送サブ状態の組を生成する工程であって、伝送サブ状態が所定の程度より高い程度の相関を示す工程と;第1の伝送サブ状態の組を第1の複数の独立伝送チャネルのそれぞれで伝送する工程と;第2の伝送サブ状態の組を第2の複数の独立伝送チャネルのそれぞれで伝送する工程と;第1の粒子の受信状態を第1の出力チャネルの組のそれぞれに生成するために第1の伝送サブ状態の組を結合する工程と;第2の粒子の受信状態を第2の出力チャネルの組のそれぞれに生成するために第2の伝送サブ状態の組を結合する工程と;第1および第2の粒子の状態を用いるか破棄するかをそれらが到着する出力チャネルによって判断する工程であって、用いると判断された第1および第2の粒子の状態が、第1および第2の組の対応するチャネルで入手可能であり、前記所定の程度まで相関している工程とを含む方法が提供される。
【0023】
別の局面は、雑音環境における別個の位置において所定の程度まで相関した粒子状態を生成するためのシステムであって、第1の粒子の第1の伝送サブ状態の組および第2の粒子の第2の伝送サブ状態の組を生成するように構成されたソースであって、伝送サブ状態が所定の程度より高い程度の相関を示すソースと;第1の伝送サブ状態の組をそれぞれ伝達するための、ソースと第1の復号器との間に構成された第1の複数の伝送経路と;第2の伝送サブ状態の組をそれぞれ伝達するための、ソースと第2の復号器との間に構成された第2の複数の伝送経路とを含み;第1の復号器は、第1の出力チャネルの組のそれぞれの出力チャネルで第1の粒子の受信状態を生成するために伝送サブ状態を結合するように操作可能であり;第2の復号器は、第2の出力チャネルの組のそれぞれの出力チャネルで第2の粒子の受信状態を生成するために伝送サブ状態を結合するように操作可能であるシステムであって;第1および第2の粒子の状態を用いるか破棄するかをそれらが到着する出力チャネルによって判断するための手段であって、用いると判断された第1および第2の粒子の状態が、第1および第2の組の対応するチャネルで入手可能であり、前記所定の程度まで相関している手段を含むシステムを提供する。
【0024】
説明のために、第1および第2の受信器がそれぞれ第1および第2の復号器から信号を受信するために配置される場合を考える。相関状態は対応するチャネルに現れる。つまり、第1の受信器がチャネル1および3を用いれば、第2の受信器はチャネル1および3を用いなければならない。第1の受信器がチャネル2および4を用いれば、第2の受信器はチャネル2および4を用いなければならない。しかしながら、受信器は、どのチャネルに粒子が現れるかをこの時点で確実に検出する必要はない。実際、この時点で状態が乱されないように検出を行うことは現実に技術的に困難であるかもしれない。したがって、判断手段は、例えば、粒子がチャネル1および3にあるかどうかを、粒子がそこにある場合にはそれらを乱すことなく、両方の側のチャネル2または4のいずれかに任意の粒子が現れるかどうかを測定することによって判断するように作用することができる。粒子がチャネル2または4に現れなかった場合は粒子はチャネル1および3に現れ、プロトコルは継続できる。粒子がチャネル2または4に現れた場合はプロトコルは中止される(なぜなら測定によって状態が乱されたからである)。
【0025】
第2の可能性は、確実な検出工程がラインのはるか下方で起こることである。このため、実際には、受信器が(4チャネルシステムにおいて)各側でやみくもに4つのチャネルすべてを用いるであろうこと、つまり粒子が実際にチャネルにあるかどうかはわからない(またはわかっていなくてもよい)がまるで粒子がそのチャネルにあるかのように動作をすることが予想できる。処理の最後でユーザはどこに粒子があるかを検出することができ、粒子が相関する粒子と一致するチャネル(すなわち、いずれの場合においても1および3、またはいずれの場合においても2および4)を通って来た場合に限り、その結果を用いることができる。
【0026】
本明細書にわたって“粒子”が論じられていることが理解されるであろう。単一粒子について述べている場合、ソースは完全ではないかもしれないので、実際にソースが正確に1つの粒子を生じさせるということを保証するのは不可能であることは明らかである。また、線形変換に言及している場合、ハードウェアの各部品が完全な線形変換を行うことを現実世界において保証することはできない。しかしながら、数学的な完全さが現実世界において実現されることはないということが本明細書中に論じるシステムおよび方法の根本的な有用性を減じることはない。
【0027】
状態間の相関に時間および/または偏光の相関を含む多くの因子を与えることができることが理解されるであろう。これらのパラメータはどちらも、同数の発生した粒子についてより相関した状態を生成するために用いることができる。
なお、通信中に誤りを訂正するためのプロトコルともつれ合いの配布のためのプロトコルには対応関係がある。したがって、発明者らの通信中の誤りフィルタ除去(error filtration)のためのプロトコルは、もつれ合った状態の配布において誤りをフィルタ除去する(filter)ためのプロトコルに簡単に写像することができる(その逆も同様である)。
【0028】
以下の説明は、どのようにして量子通信のための誤りフィルタ除去を実現するかを示す。誤り訂正と誤りフィルタ除去との違いは次の通りである。誤り訂正においては、目的は、復号化された信号が発せられた信号に可能な限り近くなるように伝送中に発生する誤りを能動的に訂正することである。誤りフィルタ除去においては、雑音の影響を受けた信号の部分は高い確率で破棄される。残るのは、強度は低下しているが雑音の少ない信号である。このことによって誤りフィルタ除去が行われなかった場合よりも良質の信号がもたらされる。
【0029】
以下に論じる誤りフィルタ除去プロトコルは、多くの重要な利点を有する。
1.制御された多粒子相互作用なしで実行される;
2.実施のためにいかなる特別な物理系をも必要としない;
3.いかなる特別な入力量子または古典状態をも必要としない;
4.ボソン(例えば光子)およびフェルミオン(例えば電子または半導体の正孔)の両方に適用することができ、単一粒子量子状態、多粒子量子状態(例えばコヒーレント状態、スクイーズド状態、光子数状態(number state))、もつれ合った量子状態、そしてまた古典波動信号の通信に用いることができる;
5.能動的検出または誤りの能動的訂正を必要としない。
【0030】
本発明のより良い理解のため、かつどのようにして本発明を実行に移し得るかを示すために、これから例として添付の図面を参照する。
【0031】
【発明の実施の形態】
1.好適な実施形態の説明
具体的な実施形態を論じる前に、本発明の根底にある考えは、適用範囲の広い量子通信のための誤りフィルタ除去の一般的方法を提供することである。量子通信について説明される考え方は古典波動信号の誤りフィルタ除去のためのプロトコルにつながる。また、量子光学およびメゾスコピック量子デバイスに関する具体的な物理状況においてどのようにして一般的アルゴリズムを実施するかを説明する。
【0032】
以下の説明は2つの部分を有する。
・一般的アルゴリズム:量子および古典情報の両方の通信について誤りフィルタ除去を実施するための一群の一般的アルゴリズムを提案する。これらのアルゴリズムは技術的に実現可能であり、古典および量子通信に用いることができる広範囲の技術に適用可能である。
・具体的な応用例:量子光学およびメゾスコピック量子デバイスにおける具体的な物理状況においてどのようにして一般的アルゴリズムを実施するかを説明する。
【0033】
一般に、以下の実施形態は量子および古典波動信号の通信中に発生する誤りの訂正に関係する。本技術は種々の状況において適用される。これらは、目的として、ソースが信号粒子または多粒子量子信号または古典波動信号を受信器に送ることである場合を含む。それらはまた量子信号をソースから複数の受信器へ送ることが望まれる場合にも適用され、従って量子もつれ合いの配布に用いることができる。本技術は、量子通信、量子計算および量子暗号という急速に発展しつつある新しい領域ならびに古典波動通信において応用される。
【0034】
誤り訂正のための各種一般的アルゴリズム、ならびに量子光学およびメゾスコピック量子系を含む(がこれらに限らない)種々の物理的実現に適当な一般的アルゴリズムの実施例を説明する。
量子および古典波動信号の両方についての誤りフィルタ除去のための具体的なプロトコル、つまり、信号が伝送中に位相雑音による影響を受ける場合のプロトコル;信号が内部自由度(internal degrees of freedom)を有する場合に適用されるプロトコル;雑音が非線形である場合に適用されるプロトコル;および振幅雑音を低減させるためのプロトコルを説明する。どのようにして誤りフィルタ除去を直列に(すなわち同じ伝送ラインに沿って数回)実施するかということと、このことが伝送された信号の質を高めることを示す。また、二者以上にもつれ合いを伝送するときにどのようにして誤りフィルタ除去を実施するかを示す。空間的に分離された伝送チャネルか同じ経路に沿って伝播する異なる時間空間(ビン)中かのいずれかを用いた、自由空間中およびファイバ中での量子光学における多数の一般的プロトコルの具体的な実施例を与える。また、メゾスコピック量子系を含む他の物理状況において光学的なものと類似した実施例があることも説明する。
【0035】
本発明の以下の実施形態は下記にさらに説明する多くの特有の要素を有する。
1.それらは発明者らが多重化(multiplexing)と呼ぶ考え方に依存する。この考え方を表すものは多くあり、伝送チャネル多重化(伝送チャネルの数がソースチャネルの数よりも多い場合)およびソース多重化(受信器に到着するチャネルの数よりも多いソースチャネルを介して信号を送る場合)を含む。多重化は並列および/または直列にすることも可能である。
2.発明者らが考えるシステムは、異なる伝送チャネルにおける雑音が本質的に独立しているように物理的実施例を構成できることを意図している。それは発明者らのプロトコルを作用可能にする雑音の特定の形態である。
【0036】
3.量子信号についての通常の誤り訂正とは異なり、発生した誤りを訂正しようとするのではないので、発明者らのプロトコルを誤りフィルタ除去と呼ぶ。より正確には、発明者らは誤りが発生した場合を識別してそれらを破棄し、それによりフィルタ除去された信号を得る。
このため、発明者らが示すように多重化は受動線形要素だけを用いて実施することができるので、発明者らの実施例の多くは受動線形要素を用いるだけである。特に、以前のプロトコルの大半とは異なり、信号を測定して誤りを識別し、その後誤りを訂正するために測定結果によって判断された系に対して能動変換を行うということはしない。発明者らの実施例のいくつかは能動要素―スイッチ―を用いるが、これらの要素はモードに対する“受動”線形変換を実現する。すなわち、それらは非線形変換または信号測定の結果次第の変換を行うために用いられるわけではない。
【0037】
以下において、量子および古典波動通信について誤りフィルタ除去を実施するのにどのように多重化を用いることができるかを示す。しかしながら、本発明の基本的な考え方、つまり多重化が誤りフィルタ除去をもたらすということは、量子または古典波動情報処理の他の局面においても用いることができる。例えば、用語の簡単な変更によって一方向通信プロトコルがメモリ保護のためのプロトコルに写像されることを上記で述べた。発明者らのプロトコルは一方向通信を用いるだけなので、量子メモリまたは古典波動信号を用いるメモリ(例えば、発明者らの考え方の光学的な実施例の場合にはメモリは記憶コイル(storage coil)であり得る)の保護に採用することができる。さらなる一般化として、多重化は、量子または古典波動コンピュータの論理要素において発生する誤りをフィルタをかけて除去するために用いることができる。実際、発明者らが考える通信プロトコルのすべてにおいて、通信チャネルは雑音がない場合には信号を変更しない(すなわち、恒等変換を行う)と仮定している。しかしながら、多重化の誤りフィルタ除去特性は、通信チャネルがモードに対して自明でない(non-trivial)線形変換Uを実現する場合には影響を受けない。この変換Uは、量子または古典波動コンピュータの一要素とみなすことができる。結論として、誤りフィルタ除去のための多重化の使用は、適用範囲が広く、量子および古典波動情報処理の多くの局面において有用である。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態を利用した通信システムの模式図である。ソースは少なくとも1つの情報搬送モードを量子信号の形態で生成する。情報搬送モードは1組のソース状態として経路1.08に沿って符号器1.04に供給される。符号器はソース1.01からの信号を後述する方法で符号化する働きをする。次いで、信号は一般に参照符号1.03によって示される複数の伝送チャネルを伝送される。これらのチャネルのそれぞれは独立した雑音の影響下にある。複数の伝送チャネルからの信号は復号器1.05で受信され、そこで後述する手順に従って線形結合される。線形結合の結果、一般に1.09と示される複数の出力チャネルの1つに情報搬送モードが再生される。これらのチャネルは有用なチャネルとして表され、これらの有用なチャネル上の信号は受信器1.02において捕捉される。1.07と標示された別のチャネルの組は破棄されたチャネルとして表され、これらのチャネルで受信された信号は、受信信号においても受信信号を変更することにも利用されない。参照符号1.06は、原則的には符号器に供給し得るけれども現実には以下に記載のプロトコルによって決して活性化されない他の入力状態を示す。つまり、符号器1.04は、制御された多粒子相互作用を必要としない受動線形符号化に基づいて作用する。
【0039】
図2は、もつれ合った量子状態の配布についての模式図を示す。参照符号2.01はもつれ合った状態のソースを示す。もつれ合った状態はそれぞれ第1の受信器2.02.1および第2の受信器2.02.2によって受信されることになっている。雑音のある伝送チャネルの組は、ソース2.01におけるもつれ合った状態を受信器2.02.1および2.02.2のそれぞれへ伝送するために存在する。伝送チャネルはそれぞれ2.03.1および2.03.2で示される。
図1および2ならびに残りの図3〜13について、以下の節でより詳細に論じる。
2 誤りフィルタ除去のためのプロトコル
2.1 一般的枠組みおよび目標
3つの主な部類のプロトコルがある。量子信号の一方向通信のためのプロトコル(節2.6、2.7、2.8、2.9、2.10、2.11)、古典波動信号の一方向通信のためのプロトコル(節2.12、2.13、2.14、2.15)およびもつれ合った量子状態の配布のためのプロトコル(節2.16)である。これら3つの部類のプロトコルを簡潔に概観する。
2.1.1 量子信号の一方向通信のためのプロトコル
発明者らが研究する一般的な枠組みを図1に示す。量子信号のソース1.01があり、目的はこれらの信号を受信器1.02に伝送することである。信号はソースから受信器へと雑音のあるチャネル(図1の1.03)を通って伝わらなければならない。概して、すべての場合において、目標はチャネルにおける雑音の影響を低減させることである。ソースからの信号の(符号器(図1の1.04)を用いた)特定の符号化および雑音のある伝送後の信号の(復号器(図1の1.05)を用いた)復号化によってこれらの目標を達成する。プロトコルの1つの群(節2.10)では、信号が最終的な受信器に達するまでに符号化/復号化の手順が何回も繰り返される。
2.1.2 古典波動信号の通信のためのプロトコル
ここでの一般的な枠組みは、上記に概説した量子通信プロトコルのためのものと全く同じである。しかしながら今度は、信号は量子状態ではなく古典波動信号である。
2.1.3 もつれ合った量子状態の配布のためのプロトコル
ここでの一般的な枠組みを図2に示す。2つの二分割(bipartite)系のもつれ合った状態のソース2.01がある。第1の系は当事者A(図2の2.02.1)によって、第2は当事者B(図2の2.02.2)によって受信されることになっている。信号は、ソースから当事者AおよびBへと雑音のあるチャネル(図2の2.03.1および2.03.2)を通って伝わらなければならない。状況によって、考えられる目標が多数ありうる。
【0040】
・ある標準のもつれ合った状態に可能な限り近い状態を受信器において生じさせることが望まれるかもしれない。広く用いられるのは、最大限にもつれ合った状態の場合である。これをもつれ合い配布と呼ぶ。
・あるいは、目標は、ソースによってもたらされた状態に(ある適切な意味で)可能な限り近似した状態を受信器において生じさせることであるかもしれない。
2つの目標の主な違いは、第1の場合には、受信器において最大量の所要の標準のもつれ合った状態を生じさせるために、ソースおよびソースが発するもとの状態を選択することが事実上可能なことである。第2の場合には、ソースによって発せられる状態を望むように選択することはできず、与えられた状態を用いなければならない。
【0041】
両方の可能性を一般的な枠組みの例として以下に例示する。他の場合と同様に目標はチャネルにおける雑音の影響を低減させることである。前述のように、これらの目標はソースからの信号の特定の符号化および雑音のある伝送の後の信号の復号化によって達成される。
なお、主として2パーティ(two-party)状態の通信を論じるが、説明する考え方は多パーティ(multi-party)もつれ合い状態を通信するのに用いるために簡単に拡張することができる。
2.2 雑音の説明
一般的な枠組みは以下の通りである。ソースは合計Stotのチャネルに信号を発する。これらは符号器によってTtotのチャネルに符号化される。その後、信号は雑音のあるチャネルを流れ、復号器によってRtotの受信チャネルへ復号化される。発明者らの発明の新規な局面の中には、誤りフィルタ除去には符号化および復号化によって状態の空間の次元を変えられるようにすることで十分であるという理解がある。そのことをソースチャネルがより多くの伝送チャネルに“多重化”されると言う。このことはプロトコルの性能にとって重要である。
【0042】
おそらく、発明者らの発明の最も重要な局面は、発明者らの考える実施例が、支配的な種類の雑音が極めて特殊な形態を有すること、つまり各伝送チャネルの雑音がその他の伝送チャネルのものから独立しているということを意図していることであろう。これは雑音の特定の形態であり、プロトコルを作用可能にする。
発明者らが考える最も簡単な例であり、かつ(節2.6において)最初に扱う例は、簡単な量子チャネルにおける位相雑音である。伝送状態の空間はTtot次元のヒルベルト空間であり、正規直交の伝送基本状態(orthonormal transmission basis states)|j〉T(j=1...Ttot)は、
【0043】
【数2】
Figure 0004154231
のように環境と相互作用する。ここで、環境状態|j〉Eは異なるjについて直交する。これは、環境が初期状態|0〉Eから始まり、相互作用によって環境の状態が乱される物理状況を表す。αおよびβは乱れ(disturbance)の量を表し、一般にこれらのパラメータはjによって決まる。この雑音を表す別の方法は、状態|j〉Tがランダムな位相を得るということ、つまり、
【0044】
【数3】
Figure 0004154231
である。ここで、φは環境に応じた分布を有するランダムな位相である。
なお、第3部で論じる具体的な実施例においては、支配的な誤りは位相雑音誤りである。このため、位相雑音に特に重点を置く。しかしながら、発明者らのプロトコルは決して位相雑音に限定されるわけではない。雑音のより一般的な形態を以下に論じる。
【0045】
発明者らの考える量子系における支配的な雑音が通常考えられているものとは非常に異なるということをここで強調することもまた重要である。量子情報処理の最も一般に考えられる実施例は、キュービット(すなわち2準位系)を基本構成要素として用いる。この場合の多パーティ系(multi-party system)は、キュービットヒルベルト空間のコピーのテンソル積であるヒルベルト空間を有する。この状況における雑音は、通常、キュービットに対して局所的であると考えられている(例えば、CH Bennettら、Phys Rev Lett 76 (1996) 722、PW Shor、量子コンピュータメモリにおけるデコヒーレンス低減方法(Method for reducing decoherence in a quantum computer memory)、米国特許第5768297号、AM Steane、Phys Rev Lett, 77 (1996) 793を参照)。環境との相互作用は個々のキュービットにビット反転(bit-flip)および位相誤りをもたらし得る。量子誤り訂正符号の理論はこれらの系をこれらの誤りから保護する方法を提供するために発展してきた。なお、この場合の基本的な誤りの数はキュービットの数に比例して増加する。言い換えれば、ヒルベルト空間の次元の対数として増加する。対照的に、発明者らの考えるすべてのより簡単な量子プロトコルの場合(節2.11の多重励起(multi-excitation)プロトコルを除く)には、伝送状態の空間は系の直和であり、物理的にどう考えてもより小さな次元の系のテンソル積ではない。従って、発明者らがここで考える誤りは、多キュービット(multi-qubit)の枠組みにおいて考えられるものとは非常に異なっている。特に、発明者らのシステムにおいて発生する基本的な誤りの数はヒルベルト空間の次元に比例して増加する。
2.3 プロトコルの概要
以下に量子および古典通信の両方についての多くの様々なプロトコルを示す。最も簡単なプロトコルを考えることから始め、その考え方をいろいろな方法で一般化し、またどのようにして種々の異なった物理状況に適用するかも示す。一般化を1つずつ説明するが、誤りフィルタ除去を高めるために多くの場合にそれらを一緒に用いることができることは明らかであろう。例えば、節2.8における一般的プロトコルを直列プロトコル2.10などと組み合わせることができる。
【0046】
1.位相雑音のフィルタ除去のための簡単な量子プロトコル(節2.6)。
このプロトコルは、各チャネルが1次元ヒルベルト空間によって記述される単一粒子量子状態に適用される。この場合に発明者らが考える雑音は位相雑音である。伝送チャネルにおける誤りの影響を低減させる具体的な符号化/復号化スキームを与える。
2.位相雑音のフィルタ除去のための一般的な量子プロトコル(節2.7)。
次に、どのようにして節2.6のプロトコルを前節のフーリエ変換に基づいたものよりもはるかに大きな部類の符号化/復号化スキームに一般化するかを示す。
【0047】
3.集団符号化( collective encoding )を用いた位相雑音のフィルタ除去のための一般的な量子プロトコル(節2.8)。
各伝送チャネルが1つより多くのソースチャネルからの信号を搬送できるようにするさらなる一般化であり、これをここで説明する。
4.より一般的な雑音のフィルタ除去のための量子プロトコル(節2.9)。
今度は先行のプロトコルを各チャネルが内部自由度を搬送する場合に拡張する。雑音は内部自由度のランダムな回転を行うという影響を有する。再びここで具体的な符号化/復号化スキームを示す。
【0048】
5.量子直列プロトコル(節2.10)。
先行のプロトコルにおいては1つの符号化工程と1つの復号化工程が存在する。ここでは、符号化/復号化工程の繰り返しを用いて1つの符号化/復号化工程だけを用いるプロトコルよりも誤り低減能力を高めたプロトコルを提示する。各チャネルが1次元ヒルベルト空間によって記述される単一パーティ量子状態(single-party quantum state)の例についての符号化/復号化の多重使用の考え方を説明するだけであるが、説明するプロトコルはいずれも符号化/復号化モジュールを繰り返すことによって高めることができる。
【0049】
6.量子多重励起プロトコル(節2.11)。
この節では、多重化伝送チャネルの考え方を各チャネルに多くの励起量子が存在する系にも適用可能であることを示す。
7.古典波動伝播の誤りフィルタ除去のためのプロトコル(節2.12)。
次に、先行の量子プロトコルにおいて発展させてきた考え方の古典波動伝播への応用例へと移る。まず、モードが単一複素振幅によって記述される古典波動を考える。発明者らが最初に考える雑音は、各伝送モード振幅がランダムな位相によって変更されるというものである。節2.6の量子プロトコルと同様の具体的なプロトコルを考える。
【0050】
8.内部自由度を有する古典チャネル(節2.13)。
次いで、内部自由度を有する古典信号にプロトコルを拡張する。この場合、雑音のために各モードがランダムな回転の作用によって変更される。
9.非線形古典雑音(節2.14)。
先行の古典プロトコル(節2.12および2.13)では雑音は線形であると想定していた。言い換えれば、雑音の強さはいかなるチャネルにおいても波動の強度と無関係であると想定している。この節では、たとえこの想定が緩和されたとしても発明者らのプロトコルが依然として適用可能であること、つまりプロトコルはたとえ雑音が信号の強度に対して非線形であっても有効であるということを指摘する。
【0051】
10.古典および量子振幅雑音(節2.15)。
先行のプロトコルはすべて、ユニタリ(unitary)である雑音の場合について説明してきた。例えば、(節2.12および2.14におけるように)古典信号の振幅が複素数であった場合、雑音は各チャネルの振幅を絶対値1の乱数で乗算するという影響を有していた。この節では、雑音が各モードの強度を維持することが必須であったわけではなく、たとえ雑音が信号の振幅を減少させもする場合であっても発明者らのプロトコルが有効であることを示す。このことは古典および量子の場合の両方にあてはまる。
【0052】
11.もつれ合った状態の通信のためのプロトコル(節2.16)。
最後に量子信号の考慮に戻るが、今度は目的はもつれ合った状態をソースから2つの受信器AおよびBへ伝播することである。この伝播を雑音から保護するためにどのようにしてプロトコルを組み立てるかを示す。
2.4 一方向通信プロトコルのための枠組み
発明者らが研究する一般的な枠組みを図1に示す。量子信号のソース1.01があり、目的はこれらの信号を受信器1.02へ伝送することである。信号は、ソースから受信器へと雑音のあるチャネル(図1の1.03)を通って伝わらなければならない。信号は符号器(図1の1.04)を用いて符号化され、復号器(図1の1.05)を用いて復号化される。ソースによって発せられる状態“ソース状態”は、1.08と表示されている。ユニタリ性とは、符号器に入る状態の総数が符号器から出て行く状態の総数と等しくなければならないことを意味している。従って、発明者らは伝送状態1.03の数がソース状態1.08の数よりも大きくなることを考慮しているので、符号器は原則的に多数の他の入力状態1.06を有するはずである。しかしながら、これらの状態は発明者らのプロトコルにおいては活性化されない。つまり、状態1.06を介して信号を送ることは決してない。実際、これらのチャネルは物理的に存在していなくてもよく、例えば、光ファイバを用いた一実施例において、符号器に入るファイバの数が符号器から出て行くものよりも少ないことがあり得る。同様に、ユニタリ性とは、復号器に入る状態の総数が復号器から出て行く状態の総数と原則的に等しくなければならないことを意味している。復号器からの出力状態のうちのいくつかだけが“有用”であるようにプロトコルを構成する。これらは1.09と表示されている。1.07と表示されている残りの出力状態は破棄される。符号器の場合と同様に、これらのファイバは物理的対象として存在していなくてもよい。プロトコルはこのようなものなので、これらの破棄される出力1.07に信号が存在するかもしれない。しかしながらこれは伝送中に雑音が発生した場合にのみ起こる。他の場合には受信器へと行ってしまうであろう雑音のその部分がこれらの破棄されるチャネルに行くように設計されているので、発明者らのプロトコルを“誤りフィルタ除去”と表現する。
2.5 一方向通信プロトコルの基本原理
どのようにして発明者らの一方向通信プロトコルが作用するかの基本原理は以下の通りである。
【0053】
信号は、ソースによって多数の有用なソースチャネル1.08に発せられる。符号器1.04は、これらの状態をより多数の伝送状態1.03の重ね合わせに符号化する。復号器1.05では伝送状態が干渉される。復号器は、雑音が伝送中に発生しなかった場合は、伝送状態が構造的に干渉し、復号器からの出力状態の総数よりも数が少なく有用なソース状態と1対1の対応関係にある多数の有用な受信状態1.09となるというようなものである。他方で、雑音が発生した場合は異なる伝送チャネル中の状態はもはや干渉できない。なぜなら、それらのそれぞれが、原則的に雑音が発生したチャネルについての情報を維持する環境の異なった状態と相関しているからである。そして、量子発展(quantum evolution)のユニタリ性は、雑音が発生した場合に状態が有用な出力チャネルだけでなく他の出力チャネルに広がることになることを暗示する。
【0054】
したがって、乱されていない状態全体が有用な受信チャネルに存在することになる一方、雑音の一部だけが有用な受信チャネルに存在し、残りの雑音はその他の受信チャネル1.07に存在することになって破棄される。
2.6 位相雑音のフィルタ除去のための簡単な量子プロトコル
この節では図1に与える一般的な枠組みの簡単な例を考える。発明者らが考える信号は単一粒子の量子状態である。各チャネルは1つの状態を含有している(すなわち内部自由度はない)。雑音は位相雑音である(節2.2において説明済みであり、以下も参照)。また、符号化および復号化処理は、各ソースチャネルが個別に符号化および復号化されるという点で特に簡単である。
【0055】
プロトコルを図3に示す。量子信号のソース3.01がある。これらの信号は単一粒子の量子状態である。したがって、信号は、
【0056】
【数4】
Figure 0004154231
と書くことができる。ここで、clは粒子がソースチャネルlにある振幅であり、|l〉Sは粒子がソースチャネルl(図3において3.08.1、3.08.2などと示す)にある場合の粒子の状態を表す。Stotはソースチャネルの総数である。目的は、この信号を受信器3.02へ伝送することである。信号はソースから受信器へと雑音のあるチャネル(図3の3.03)を通って伝わる。各ソースチャネル3.08.1、3.08.2などは個別の符号器(図3の3.04.1、3.04.2など)を用いて符号化され、個別の復号器(図3の3.05.1、3.05.2など)を用いて復号化される。3.06.1、3.06.2などは各符号器についての使われない入力状態である。受信器まで行く“有用な”状態は3.09.1、3.09.2などと表示されており、3.07.1、3.07.2などと表示された残りの出力状態は破棄される。
【0057】
この場合に発明者らが考える雑音は位相雑音である。つまり、いかなる伝送状態|j〉T
【0058】
【数5】
Figure 0004154231
のように環境と相互作用する。ここで、環境状態|j〉Eは異なるjについて直交する。
上述のように、このプロトコルにおいては各ソースチャネルを個別に符号化および復号化するので、例えば特定のソースチャネル|1〉Sに焦点を当てることができる。
【0059】
まず、誤りフィルタ除去なしで伝送するとどのようなことが起こるかを考える。言い換えると、ソース状態|1〉Sの系から始め、それを伝送状態|1〉Tとして符号化する(すなわち、符号化は本質的に自明(trivial)である)。系および環境を
【0060】
【数6】
Figure 0004154231
のように変換する。今度は自明の復号化
【0061】
【数7】
Figure 0004154231
を行い、受信器での最終的な状態が
【0062】
【数8】
Figure 0004154231
となるようにする。従って、発生した誤りについての振幅はβである。
それで、今度はどのようにして多重化が状態にフィルタ除去を行って誤り振幅を少なくすること可能にするのかを考えるとする。再びソースの状態|1〉Sから始めるが、今度はTの伝送チャネルに符号化する。
【0063】
【数9】
Figure 0004154231
この状態は、この入力状態に対するフーリエ変換の結果と考えることができる。
従って、系および環境の状態は、
【0064】
【数10】
Figure 0004154231
となる。ここで雑音が発生し、状態を
【0065】
【数11】
Figure 0004154231
へと変化させる。今度は逆フーリエ変換を行なうことによって復号化する。
【0066】
【数12】
Figure 0004154231
これにより、状態は
【0067】
【数13】
Figure 0004154231
となる。ここで、
【0068】
【数14】
Figure 0004154231
は環境の規格化された(normalized)状態であり、すべてのk=2,...Tについて
【0069】
【数15】
Figure 0004154231
であるということを用いた。この状態は“有用な”信号とみなされる受信チャネル|1〉Rにおける成分および破棄されるその他の受信チャネル|k〉R、k=2,...Tのすべてにおける成分を有することがわかる。
|1〉R受信チャネルに現れる状態は、
【0070】
【数16】
Figure 0004154231
である。従って、符号化/復号化の効果は有用なチャネルにおける雑音振幅を
【0071】
【数17】
Figure 0004154231
倍(すなわち、βから
【0072】
【数18】
Figure 0004154231
へ)低減させることであることがわかる。これにより、誤りフィルタ除去という目的を達成した。
なお、状態が有用なチャネルに現れる確率は、(14)の状態の絶対値の2乗、すなわち
【0073】
【数19】
Figure 0004154231
である。他方で、状態が“有用でない”受信チャネル|k〉R、k=2,...Tのうちの1つに現れる、
【0074】
【数20】
Figure 0004154231
という確率がある。これらのチャネルが有用でないのは、ここで終わる状態が常に環境中の雑音と相関しているからである。実際、(11)において受信チャネル|k〉R、k=2,...Tを含む成分は、
【0075】
【数21】
Figure 0004154231
であり、環境の乱されていない状態|0〉Eとは重なっていないことがわかる。
また、プロトコルは、雑音がない場合には構造的干渉があるように符号化/復号化工程が構成されてすべてのソース信号が有用な受信チャネルに到着するという特性を有する。
なお、状態|1〉Sだけでは真の量子信号を搬送しない。つまり、量子信号は状態の重ね合わせによって搬送される。このため、量子信号を搬送するためには少なくとも2次元のヒルベルト空間における状態が必要である。
【0076】
一例として、例えば2つの(直交する)入力ソース状態|1〉Sおよび|T+1〉S(すなわち、Stot=2)の間の干渉を考えることによってフィルタ除去の効果を見ることができる。この2次元ヒルベルト空間のソース状態を用いると、真の量子信号を伝播することができる。Ttot=2Tの伝送状態があることになる。入力重ね合わせ
【0077】
【数22】
Figure 0004154231
を考え、干渉パターンの鮮明度(visibility)がどのように雑音の影響を受けるかを見るとする。干渉は、受信器における状態を
【0078】
【数23】
Figure 0004154231
の方向に沿って射影することによって見ることができる。雑音がなく、符号化および復号化が自明であれば、すなわち、
【0079】
【数24】
Figure 0004154231
であれば、(18)に沿った射影の振幅は
【0080】
【数25】
Figure 0004154231
であり、従って強度は
【0081】
【数26】
Figure 0004154231
である。従って鮮明度は1である。
伝送チャネル中に雑音があり、かつ誤りフィルタ除去が行われない(すなわち、符号化/復号化が自明である)場合にどのようなことが起こるかを考える。
【0082】
【数27】
Figure 0004154231
受信器における(18)に沿った射影の強度は
【0083】
【数28】
Figure 0004154231
である。すなわち、鮮明度は|α2|まで減少した。
他方で各入力チャネルが個別にTの伝送チャネルに多重化される(すなわち、合計でTtot=2Tの伝送チャネルがある)場合には、受信器における(18)に沿った射影の強度は
【0084】
【数29】
Figure 0004154231
であることがわかる。従って、干渉の鮮明度は伝送チャネルの数とともに単調に増加し、多重化の量Tが無限大になる傾向があるので1になる傾向がある。
各伝送チャネルにおける雑音が同じ分布を有する場合を扱ってきたが、このことが必須ではないことをここで強調することもまた重要である。
【0085】
【数30】
Figure 0004154231
という雑音モデルよりはむしろ、雑音パラメータαおよびβがチャネルjに依存する、すなわち
【0086】
【数31】
Figure 0004154231
という場合の方があり得る。この場合には詳細な計算が変わるが、異なるチャネルにおける雑音が独立している限り、プロトコルは受信チャネルに現れる雑音を低減させる効果を依然として有する。以下に論じるプロトコルのすべてもまた、同様に分布した雑音を考えているが、同じことが言える。つまり、正確にどれだけの雑音が低減されるかは雑音の分布の詳細によるが、上記に沿った多重化の考え方は、すべてのチャネルについて分布が同じであろうとなかろうと依然として誤りフィルタ除去に有効である。
2.7 位相雑音のフィルタ除去のための一般的な量子プロトコル
今度は位相雑音を訂正するためのプロトコルのより一般的な部類を示す。これらは節2.6のプロトコルを一般化するものである。一般化とは、節2.6で用いたフーリエ変換よりも一般的な符号化および復号化操作を可能にすることである。このより一般的なものもまた図3によって示す。
【0087】
ここでは、節2.6におけるように、各ソースチャネルを個別に符号化および復号化するので、特定のソースチャネル、例えば|1〉Sに焦点を当てることができる。
ソースの状態|1〉Sから始めるが、今度はソース状態をTの伝送チャネルに符号化する。
【0088】
【数32】
Figure 0004154231
ここで、符号化変換Ueは、(図3に3.08.1で示すソース状態|1〉Sおよびその他の入力状態3.06.1の両方を含む)ソースヒルベルト空間から(図3に3.03で示す)変換ヒルベルト空間へのユニタリ写像である。すなわち、
【0089】
【数33】
Figure 0004154231
かつ
【0090】
【数34】
Figure 0004154231
であり、ここでidは所与のヒルベルト空間における恒等演算子である。上記の状態を伝送状態|j〉Tの正規直交基底によって
【0091】
【数35】
Figure 0004154231
と書くことができる。このユニタリ変換はフーリエ変換(7)の一般化である。
符号化の後、系および環境の状態は
【0092】
【数36】
Figure 0004154231
となる。ここで雑音(3)が発生し、状態を
【0093】
【数37】
Figure 0004154231
へ変化させる。今度は第2の復号化ユニタリ変換(逆フーリエ変換(10)の一般化)を行うことによって復号化する。
【0094】
【数38】
Figure 0004154231
ユニタリ性とは、
【0095】
【数39】
Figure 0004154231
かつ
【0096】
【数40】
Figure 0004154231
であることを意味する。従って、状態は
【0097】
【数41】
Figure 0004154231
となる。
この点までは符号化および復号化手順は非常に一般的である。今度は、雑音がない場合には状態が正確に受信チャネル|1〉Rに伝送されるようにすると限定する。従って、
【0098】
【数42】
Figure 0004154231
と規定する。これにより、系および環境の状態は
【0099】
【数43】
Figure 0004154231
となる。ここで、
【0100】
【数44】
Figure 0004154231
である。
再び、この状態は“有用な”信号とみなされる受信チャネル|1〉Rにおける成分および破棄されるその他の受信チャネルすべてにおける成分を有することがわかる。
有用な受信チャネルにおける状態は、
【0101】
【数45】
Figure 0004154231
である。粒子が有用なチャネルに存在することになる確率は、状態(36)の絶対値の2乗、すなわち、
【0102】
【数46】
Figure 0004154231
である。
他方で、粒子が“有用でない”受信チャネル|k〉R、k=2,...Tのうちの1つに現れる
【0103】
【数47】
Figure 0004154231
という確率がある。これらのチャネルが有用でないのは、ここで終わる粒子が常に環境中の雑音と相関しているからである。実際、(34)において受信チャネル|k〉R、k=2,...Tを含む成分は
【0104】
【数48】
Figure 0004154231
であり、これは環境の乱されていない状態|0〉Eと重なっていないことがわかる。
有用な受信チャネルにおける雑音の確率は、
【0105】
【数49】
Figure 0004154231
である。ここで、シュワルツの不等式は、この絶対値が
【0106】
【数50】
Figure 0004154231
よりも大きく、
【0107】
【数51】
Figure 0004154231
のとき等しいことを示す。従って、条件(33)および(42)を満たすいかなる符号化および復号化スキームについても、雑音振幅が
【0108】
【数52】
Figure 0004154231
倍まで低減されることがわかる。
これらの条件を満たす符号化/復号化スキームの1つの例は前節におけるフーリエ変換である。第2の例はアダマール変換であり、4つの伝送チャネルが各ソースチャネルを符号化する場合、符号化は、
【0109】
【数53】
Figure 0004154231
であり、復号化工程は、
【0110】
【数54】
Figure 0004154231
である。
2.8 集団符号化を用いた位相雑音のフィルタ除去のための一般的な量子プロトコル
先行する節においては、所与のソースチャネルが伝送チャネルの部分集合に符号化されるが、所与の伝送チャネルで搬送される信号は単一のソースチャネルから生じたものである。各伝送チャネルが1つより多くのソースチャネルからの信号を搬送できるようにすることによってこれらの考え方を一般化することができる。このことは、例えば、ソースチャネルの数が伝送チャネルの数を割り切れない場合(例えば2つのソースチャネルと3つの伝送チャネル)に役立つ。
【0111】
従って、一般的な状況は、Stotのソースチャネルがあって、これらを一括してTtotの伝送チャネルに符号化し、その後伝送チャネルを一括してRtotの受信チャネルに復号化するというものであり、発明者らはStot=Rtotの場合に特に関心を持っている。所定のソースチャネルがTの伝送チャネルに符号化され、かつ各ソースチャネルが異なる伝送チャネルの組に符号化される先行のプロトコルは、この一般的な枠組みに含まれる。しかし他の可能性もあり得る。
ここで、例を用いて考え方を簡単に示す。再び、位相雑音、つまり
【0112】
【数55】
Figure 0004154231
の形態の伝送チャネルにおける誤りの場合を考える。各ソースチャネル|j〉S、j=1...Stotが単純に1つの伝送チャネルに沿って送られる場合(自明の符号化)、誤り振幅はβである。しかしながら、前段落における一般的な枠組みの一例はフーリエ変換に基づいた以下の符号化/復号化スキームである。符号化工程は、
【0113】
【数56】
Figure 0004154231
である。復号化工程は、
【0114】
【数57】
Figure 0004154231
である。
例えば、このプロトコルをStot=2=RtotかつTtot=3の場合に用いることができる。ソースによって発せられる状態を
【0115】
【数58】
Figure 0004154231
と書くとする。チャネル|1〉Rおよび|2〉Rで受信器に到着する状態の入り状態(incoming state)に対する忠実度は
【0116】
【数59】
Figure 0004154231
であると計算することができる。入り状態のブロッホ球全体のこの忠実度の平均値は、
【0117】
【数60】
Figure 0004154231
である。いかなるαおよびβについても、これは、単純に各ソース状態を1つの伝送チャネルを介して送ることによって達成される平均忠実度よりも大きい。
2.9 より一般的な雑音のフィルタ除去のための量子プロトコル
先行のプロトコルによって訂正される雑音が位相雑音であり、それゆえアーベル群U(1)の任意の要素に対応するということは、重大ではない。プロトコルは、各チャネルが“内部の”自由度を有する系を搬送することができる(すなわち、各チャネルが任意のI次元のヒルベルト空間である状態空間を有する;ここではこの次元は有限であると考えるが、このことはプロトコルの成功に必須ではない)場合に簡単に拡張することができる。
【0118】
このため、正規直交の1組のソース状態
【0119】
【数61】
Figure 0004154231
を考える。一例は、各チャネルがスピン自由度を搬送することができる場合であり、そのためI=2である。1組の伝送状態
【0120】
【数62】
Figure 0004154231
を考える。すなわち、それぞれがI次元の状態空間を搬送するTtotの伝送チャネルがある。伝送状態は以下の雑音の影響を受ける。
【0121】
【数63】
Figure 0004154231
これはL種類の誤りを表し、各誤りは系状態の回転に対応する。内部スピン自由度、つまりI=2の場合、発生し得る誤りの組の一例は、3つのパウリ行列、すなわち
【0122】
【数64】
Figure 0004154231
の組である。従って、誤りλがチャネルjで発生した場合には|jλ〉Eが環境の状態となる。
チャネルにおける誤り(53)の全確率は、
【0123】
【数65】
Figure 0004154231
である。従って、ソース状態|1μ〉Sが単純に自明の符号化および復号化のある1つの伝送チャネルを通って送られる、
【0124】
【数66】
Figure 0004154231
の場合、誤りの確率は
【0125】
【数67】
Figure 0004154231
である。
今度はソースチャネルがTの伝送チャネルに多重化される簡単な誤りフィルタ除去プロトコルを考える。符号化工程は、
【0126】
【数68】
Figure 0004154231
である。なお、符号化はμとは無関係である。
ここで、伝送中に雑音が発生し、状態が
【0127】
【数69】
Figure 0004154231
となる。このプロトコルの復号化工程もまたj指数に対するフーリエ変換である。
【0128】
【数70】
Figure 0004154231
前述のように受信器において項|1μ〉Rを選択する。従って、この受信チャネルにおける状態は、
【0129】
【数71】
Figure 0004154231
である。今度は状態が雑音の影響を受けた確率は、第2項の絶対値の2乗、つまり
【0130】
【数72】
Figure 0004154231
である。ここで、
【0131】
【数73】
Figure 0004154231
ということを用いた。これにより、(62)を(55)と比較して、誤りフィルタ除去プロトコルが誤りの確率を1/T倍まで低減させた、すなわち、各誤り振幅が
【0132】
【数74】
Figure 0004154231
倍まで低減されたことがわかる。
このプロトコルは、符号化および復号化するために基本的にフーリエ変換を用いている。節2.6、2.7、2.8において位相雑音について行ったように、プロトコルをより一般的な符号化/復号化に拡張することは難しくはない。さらに、符号化は(式(58)の場合のように)内部自由度μと無関係である必要はない。
2.10 量子直列プロトコル
先行のプロトコルは、大まかに、雑音フィルタ除去を達成するために伝送チャネルを並列に用いるものと説明することができる。雑音をフィルタ除去するために直列の多重チャネルという考え方を用いてもよい。位相雑音の場合におけるこの考え方を説明するが、前節におけるより一般的な雑音への拡張は簡単である。
【0133】
2つの状況を比較する。改善が望まれるソースチャネルがあるとして、1つのソースチャネルをTの伝送チャネルに多重化する場合には上記の符号化を用いることができる。このことは、先に示したように、雑音振幅をβから
【0134】
【数75】
Figure 0004154231
に低減させる効果を有する。伝送チャネルが一定の長さlを有すると仮定すると、上記のプロトコルにおけるのと同じ符号化を行うことができるが、その後、中間点(または伝送チャネルに沿ったその他の点)においてもとの復号化手順を用い、次いで符号化を再び行い、信号が伝送チャネルの残りの部分を伝わることができるようにし、最終的に再び復号化することができる。ここで示すように、このプロトコルは内部の復号化/符号化なしのプロトコルよりも良好な誤りフィルタ除去を実現する(復号化/符号化モジュール自体が重大な誤りを生じさせることはないと想定する)。望むだけ多くの内部の点において復号化/符号化モジュールを実行できることは明らかであり、この効果を以下に計算する。
【0135】
まず、多重化を実行しない場合にはチャネル1を通過する量子の状態が
【0136】
【数76】
Figure 0004154231
であるのに対して、Tの伝送チャネルに多重化する場合には伝送後の系および環境の状態が
【0137】
【数77】
Figure 0004154231
であることを想起されたい。
今度は伝送チャネルを2つの半分に分解すると仮定する。環境ヒルベルト空間を、1つは伝送の第1の半分(E1)そして1つは第2の半分(E2)についての2つのヒルベルト空間のテンソル積として記述する。第1の半分(多重化がない場合)の後、状態は、
【0138】
【数78】
Figure 0004154231
であり、第2の半分の後は、
【0139】
【数79】
Figure 0004154231
である。式(64)と比較するとα’2=αであることがわかる。
2つの半分に対して直列に多重化を実行した場合には、伝送後の状態は
【0140】
【数80】
Figure 0004154231
であることがわかる。発生した誤りについての全体的な確率を得るために、(68)を
【0141】
【数81】
Figure 0004154231
と書く。ここで、|1”〉Eは規格化されたベクトルである。有用な受信状態が雑音の影響を受ける確率は、従って、
【0142】
【数82】
Figure 0004154231
である。この確率が任意のαについて復号化/符号化モジュールの挿入なしでの誤りの確率(これは|β|2/Tに等しい)よりも小さいことを確認することは難しくない。
より一般的には、合計でqの内部の復号化/符号化モジュールがある場合にどのようなことが起こるかを考えることができる。これらのモジュールが伝送チャネルに沿って等間隔であるとき、誤り確率は最大限に低減される。この場合、全誤り確率は
【0143】
【数83】
Figure 0004154231
であることがわかる。なお、この確率は、内部の復号化/符号化モジュールの数qが無限大になる傾向があるので、
【0144】
【数84】
Figure 0004154231
となる傾向がある。
2.11 量子多重励起プロトコル
先行のプロトコルにおいては、チャネルはそれぞれ単一の励起だけを含んでいた。ボソンの場合には、各チャネルが多くの量子を含む状況を考えることもできる。チャネル状態がコヒーレント状態である場合を考えることによってまずこのことを説明し、この節の最後で、どのようにしてプロトコルを一般的な多重励起状態に用いることができるかを示す。
【0145】
前述のように2つの入力チャネルを考えるとする。各チャネルは今度は無限次元のヒルベルト空間によって記述され、生成および消滅演算子によって状態を記述することができる。
【0146】
【数85】
Figure 0004154231
ここで、
【0147】
【数86】
Figure 0004154231
は第1のチャネルを、
【0148】
【数87】
Figure 0004154231
は第2のチャネルを表す。力学のシュレーディンガー描像で考えていく。系の初期状態を以下のコヒーレント状態であるとする。
【0149】
【数88】
Figure 0004154231
ここで、|0〉sysは系についての真空状態であり、N(λ)は規格化因子である。位相Φは信号の伝送を可能にし、後で雑音の影響の測定を可能にするためにも用いられる。
まず、フィルタ除去がない場合、つまり自明の符号化がある場合、すなわち各ソースチャネルが単一の伝送チャネルに発展する場合にどのようなことが起きるかを考えるとする。系の状態は、
【0150】
【数89】
Figure 0004154231
へ発展する。
環境の初期状態は、それぞれのチャネルについて1つの状態の積である。それを|ξ〉Eと表す。従って、系および環境の状態は、
【0151】
【数90】
Figure 0004154231
である。雑音の影響は、系と環境との間に相互作用があることである。このことを、
【0152】
【数91】
Figure 0004154231
という形のハミルトニアンによってモデル化することができる。ここで、B1および
【0153】
【数92】
Figure 0004154231
は、さらに規定する必要のない環境ヒルベルト空間に作用するエルミート演算子である。
従って、雑音のあるチャネルを介した伝送後、状態は、
【0154】
【数93】
Figure 0004154231
となる。ここで、受信器における状態が
【0155】
【数94】
Figure 0004154231
となるように信号を自明に復号化する。今度はこれらの2つの受信チャネルが干渉できるようにする。このことは、演算子
【0156】
【数95】
Figure 0004154231
および
【0157】
【数96】
Figure 0004154231
を、
【0158】
【数97】
Figure 0004154231
と変換する効果を有する。次にチャネル
【0159】
【数98】
Figure 0004154231
における流量(current)を計算する。これは、演算子
【0160】
【数99】
Figure 0004154231
の、最終状態
【0161】
【数100】
Figure 0004154231
における期待値である。この期待値は、
【0162】
【数101】
Figure 0004154231
である。
真空の状態|ξ〉Eが個々のチャネルについての状態の積であることを想起されたい。従って、それを
【0163】
【数102】
Figure 0004154231
と書くことができる。従って、例えば、
【0164】
【数103】
Figure 0004154231
である。前述のプロトコルの検討と同様に、異なるチャネルの雑音は独立していると想定しているので、
【0165】
【数104】
Figure 0004154231
と書く。したがって、チャネル
【0166】
【数105】
Figure 0004154231
における流量の期待値は、
【0167】
【数106】
Figure 0004154231
である。
今度はソースチャネルのそれぞれをTの伝送チャネルに多重化することによって符号化する場合にどのようなことが起こるかを考える。再び、コヒーレント状態(74)から始める。(7)と類似の最も簡単な符号化を用いて雑音フィルタ除去を例示する。この符号化はコヒーレント状態における生成演算子を
【0168】
【数107】
Figure 0004154231
へと変換する効果を有する。ここで雑音が発生し、コヒーレント状態における各生成演算子を
【0169】
【数108】
Figure 0004154231
へと変換させる。今度は逆フーリエ変換を用いて復号化し、生成演算子
【0170】
【数109】
Figure 0004154231
および
【0171】
【数110】
Figure 0004154231
によって定義される2つの受信チャネルにおける信号を考える。再びこれらが干渉できるようにし、最終的に最終状態における流量
【0172】
【数111】
Figure 0004154231
の期待値を計算する。これは、
【0173】
【数112】
Figure 0004154231
である。前述のプロトコルにおけるのと全く同様に、多重化は雑音を低減させる効果を有する。
この節ではここまで特に簡単な初期状態つまりコヒーレント状態を考えてきた。この場合、発明者らのフィルタ除去プロトコルの効果を計算することはやや簡単である。しかしながら、プロトコルはいかなる多重励起状態にも用いることができる。
【0174】
ソースの状態が真空に作用する生成演算子
【0175】
【数113】
Figure 0004154231
のある関数によって定義されると考えるとする。上記で行った符号化および復号化の効果は、この状態を、演算子
【0176】
【数114】
Figure 0004154231

【0177】
【数115】
Figure 0004154231
という形の式に変換された状態へと変えることである。従って、演算子の任意の累乗
【0178】
【数116】
Figure 0004154231

【0179】
【数117】
Figure 0004154231
で置き換えられることになる。
今度は状態におけるある演算子の期待値を計算すると仮定する。Nよりはるかに大きなTについては、例えば任意の演算子
【0180】
【数118】
Figure 0004154231
が1より大きな任意の累乗である期待値におけるすべての項を無視することができる。したがって、期待値を計算する場合、環境の状態との内積を行うことができ、それゆえ(93)を
【0181】
【数119】
Figure 0004154231
で置き換えることができる。ここで、αはチャネルkについての
【0182】
【数120】
Figure 0004154231
の期待値である。従って、大きなTの極限において、プロトコルの効果はソース演算子
【0183】
【数121】
Figure 0004154231

【0184】
【数122】
Figure 0004154231
に変換されることであることがわかる。
(大きなTについて)このプロトコルが達成する重要な点は、演算子間の干渉が影響を受けない、すなわち
【0185】
【数123】
Figure 0004154231
であることである。干渉の破壊は回避され、代わりに量子の全体的な吸収が起こる。これは、強度の全体的な減少という犠牲を払って鮮明度を向上させる先に提示した単一量子プロトコルについて起こることと同様である。
なお、前段落では大きなTの場合に焦点を当てたが、同様の分析は、非常に一般に、たとえ有限のTについてであっても、多重化が雑音を低減させてその代わりに強度の全体的な減少をもたらす効果を有することを示している。
2.12 古典波動伝播の誤りフィルタ除去のためのプロトコル
先行の節における考え方は、古典波動の伝播における誤りをフィルタ除去するのに容易に採用することができる。
【0186】
まず、どのようにして節2.6の量子プロトコルと全く同様の特定のプロトコルを用いて位相雑音をフィルタ除去するかを考える。ソースチャネルの正規直交モードを
【0187】
【数124】
Figure 0004154231
および
【0188】
【数125】
Figure 0004154231
と表示するとする。ここでi,j=1...Sである。これにより、系の状態は
【0189】
【数126】
Figure 0004154231
と書くことができる。ここでciおよびdiは複素振幅である。さて、2つの特定のソースモード
【0190】
【数127】
Figure 0004154231
および
【0191】
【数128】
Figure 0004154231
に焦点を当てるとする。これらのモード間の干渉の鮮明度を、いかに良好に誤りがフィルタ除去されるかの目安として用いることができる。具体的には、
【0192】
【数129】
Figure 0004154231
という状態を形成し、伝送後にいかに良好にΦを観測できるかを計算する。論じる古典プロトコルのすべてにおいて実数を表すためにAを用いる。伝送チャネルに位相雑音がある場合を考えるとする。伝送チャネルのモードを
【0193】
【数130】
Figure 0004154231
および
【0194】
【数131】
Figure 0004154231
と表示する。ここでi,j=1...Tである。これらのモードは環境と相互作用し、ランダムな位相を得る。
【0195】
【数132】
Figure 0004154231
θiおよびξiは独立しており、すべてのiおよびjについて同じ分布を有すると想定する。これらのランダムな雑音の他の特性は必要ない。
まず、自明の符号化、
【0196】
【数133】
Figure 0004154231
の場合にどのようなことが起こるかを考える。伝送チャネルにおける雑音は状態を
【0197】
【数134】
Figure 0004154231
へと変化させる。今度は受信モードへの自明の復号化、
【0198】
【数135】
Figure 0004154231
を行う。これにより、状態は、
【0199】
【数136】
Figure 0004154231
となる。位相Φを見るために、状態を2つの成分
【0200】
【数137】
Figure 0004154231
に分解する。これにより、状態は、
【0201】
【数138】
Figure 0004154231
となる。位相Φは、
【0202】
【数139】
Figure 0004154231
成分の強度
【0203】
【数140】
Figure 0004154231
を考えることによって観測することができる。この強度の期待値は、
【0204】
【数141】
Figure 0004154231
である。しかしながら、1以下の絶対値を有するある複素数αについては、
【0205】
【数142】
Figure 0004154231
である。従って、この強度の期待値は
【0206】
【数143】
Figure 0004154231
であり、鮮明度は
【0207】
【数144】
Figure 0004154231
である。
今度は先行の量子プロトコルにおけるようにソースを多重化することを考えるとする。
符号化工程は、自明の符号化(99)ではなく、
【0208】
【数145】
Figure 0004154231
である。この符号化は、量子の場合のように、フーリエ変換と考えることができる。
伝送チャネルにおける雑音は、状態を
【0209】
【数146】
Figure 0004154231
へと変化させる。ここで、前述のように、θiおよびξiは、すべてのiおよびjについて同じ分布を有するランダムな位相である。
今度は受信モードへの復号化を行う。
【0210】
【数147】
Figure 0004154231
前述のように、受信チャネル
【0211】
【数148】
Figure 0004154231
および
【0212】
【数149】
Figure 0004154231
に焦点を当てる。これらのチャネルを含む状態における項は、
【0213】
【数150】
Figure 0004154231
である。前述のように、位相Φを見るために状態を2つの成分
【0214】
【数151】
Figure 0004154231
に分解する。位相Φは、
【0215】
【数152】
Figure 0004154231
成分の強度
【0216】
【数153】
Figure 0004154231
を考えることによって観測することができる。この強度の期待値は、
【0217】
【数154】
Figure 0004154231
である。従って、鮮明度は、
【0218】
【数155】
Figure 0004154231
である。この鮮明度はTとともに単調に増加し、T→∞のとき1になる傾向がある。
説明したプロトコルは、節2.6における量子信号のための簡単なフーリエ変換プロトコルと類似している。当然のことながら、それらは節2.11において分析したコヒーレント状態と同じ鮮明度を実現する。このプロトコルは、節2.7および2.8におけるように容易に一般化することができる。また、各チャネルの雑音が独立していることはプロトコルにとって重要であるが、異なるチャネルの雑音が同様に分布していることはそれほど重要でない。雑音がフィルタ除去される正確な程度はこれらの分布に依存している。しかしながら、プロトコルは、分布が同じでなくても依然として雑音を低減させる。
2.13 内部自由度を有する古典チャネル
今度は、古典チャネルが内部自由度を有し、雑音がこれらの内部自由度に対してランダムな回転を行うという影響を有する場合を考えるとする。
【0219】
ソースチャネルの正規直交モードを
【0220】
【数156】
Figure 0004154231
および
【0221】
【数157】
Figure 0004154231
と表示するとする。ここでi,j=1...Sは異なるチャネルを表示し、μ,ν=1...Iは異なる内部自由度を表示する。しかしながら、表記の簡略化のためにベクトル表記を用いて正規直交モードのベクトルを
【0222】
【数158】
Figure 0004154231
および
【0223】
【数159】
Figure 0004154231
によって表す(すなわち、各iについて
【0224】
【数160】
Figure 0004154231
はI成分ベクトルである)。
説明の簡略化のために、前述のように2つの特定のソースモード
【0225】
【数161】
Figure 0004154231
および
【0226】
【数162】
Figure 0004154231
に焦点を当てる(一般的な入り状態におけるより多数のソースモードへの効果を理解することは簡単である)。これらのモード間の干渉の鮮明度を、いかに良好に誤りがフィルタ除去されるかの目安として用いる。具体的には、
【0227】
【数163】
Figure 0004154231
という重ね合わせを形成する。Uは、
【0228】
【数164】
Figure 0004154231
に対するユニタリ変換(回転)であり、伝送後にいかに良好にUを観測できるかを計算する。
伝送チャネルにおける雑音は以下の形態をとる。伝送チャネルのモードを
【0229】
【数165】
Figure 0004154231
および
【0230】
【数166】
Figure 0004154231
と表示する。ここでi,j=1...Tである。これらのモードは環境と相互作用し、ランダムな回転を得る。
【0231】
【数167】
Figure 0004154231
ランダムなユニタリ変換UiおよびVjは独立しており、すべてのiおよびjについて同じ分布を有すると想定する。これらのランダムな回転の他の特性は必要ない。
次に、前述のプロトコルにおけるのと全く同様に、フーリエ変換を用いてソース状態を符号化する。
【0232】
【数168】
Figure 0004154231
復号化もまたフーリエ変換を介する。
【0233】
【数169】
Figure 0004154231
前述のように、受信チャネル
【0234】
【数170】
Figure 0004154231
および
【0235】
【数171】
Figure 0004154231
に焦点を当て、2つの組み合わせ
【0236】
【数172】
Figure 0004154231
を考える。最終的に、
【0237】
【数173】
Figure 0004154231
成分の強度の期待値を計算する。BをランダムなユニタリUiおよびVjの期待値と考えると、この強度は
【0238】
【数174】
Figure 0004154231
であることがわかる。雑音がない場合、この強度は、多重化の有無に関わらず、
【0239】
【数175】
Figure 0004154231
に等しい。雑音が内部自由度全体にわたって均一である、すなわちある複素数αについてB=α(id)である場合、プロトコルは鮮明度を向上させ、出力強度は
【0240】
【数176】
Figure 0004154231
であることがわかる。
雑音が均一でない(すなわち、異なる内部自由度が異なったように劣化する)場合、ある複素数βについてCB=β(id)という特性を有する減少演算子(decreasing operator)Cを用いて作用することによって信号をさらに処理しなければならない。そうすると、αがβで置き換えられて鮮明度は前述のように再び向上する。
【0241】
チャネルが内部自由度を有する量子力学的信号の場合と同様に、このプロトコルは、はるかに多くの一般的な符号化および復号化スキームを用いるために一般化することができる。
2.14 非線形雑音
先行のプロトコルは、雑音が非線形である場合、言い換えれば雑音分布が振幅に依存する場合にも有効である。まず、節2.12におけるように内部自由度のない古典信号の場合を考えるとする。例えば、伝送状態
【0242】
【数177】
Figure 0004154231
および
【0243】
【数178】
Figure 0004154231
がそれぞれ複素振幅AiおよびBjを有するとする。初めに、伝送チャネルにおける雑音がこれらの複素振幅の絶対値に依存すると考える。
【0244】
【数179】
Figure 0004154231
さらに雑音は異なるチャネルにおいて独立していると考える。従って、伝送信号が
【0245】
【数180】
Figure 0004154231
であれば、雑音は信号を
【0246】
【数181】
Figure 0004154231
に変換する。
ここで節2.12と全く同じ状況を考える。
【0247】
【数182】
Figure 0004154231
という重ね合わせから始め、
【0248】
【数183】
Figure 0004154231
および
【0249】
【数184】
Figure 0004154231
の両方をTの伝送チャネルに多重化し、受信器における信号の
【0250】
【数185】
Figure 0004154231
成分を考える。この成分の振幅は、
【0251】
【数186】
Figure 0004154231
である。ランダムな、振幅に依存する位相の期待値は、
【0252】
【数187】
Figure 0004154231
である。ここで、この期待値は各伝送チャネルにおける振幅に依存する。干渉縞の鮮明度を計算すると、雑音が線形である場合と同じ結果、式(117)が得られるが、ここでは定数αを関数(131)で置き換える。
鮮明度の向上は2つの効果、つまり、まず第一には式(117)において既に明らかなTの増加に伴う鮮明度の増加、および第二にはTの増加に伴う
【0253】
【数188】
Figure 0004154231
の減少(強度の減少とともに雑音の非線形性が減少することが予想されるためである)を組み合わせたものとなる。つまり、多重化は各チャネルにおける振幅を低減させ、それゆえいかなる非線形性の影響をも減少させる。
入力モードが異なる強度を有する場合には、状況は(129)におけるように強度が等しい場合よりも少しだけ簡単ではなくなる。しかしながら、多重化は依然として雑音の影響を低減させるのに役立つ。このことは、関数αが振幅とは無関係となるように伝送チャネルの数Tが十分に大きい場合に特にあてはまり、それは多くの場合に(十分に大きなTの場合と同様に)モードにおける信号の振幅が小さくなる場合にあてはまる。この限度において、プロトコルは、雑音が強度とは無関係であると想定された先行の節におけるのと同様に作用する。同様のことは、位相乱れ(本節におけるθiおよびξj)が信号の位相およびその強度に依存する場合にもあてはまる。すなわち、Tが増加するにつれてこの乱れの重大さはますます低下することが予想され、Tが増加するにつれて雑音はこの信号の位相とは無関係になる傾向がある。
2.15 古典および量子振幅雑音
先行のプロトコルのすべてにおいては、雑音は振幅を維持すると考えていた。今度は、簡単な例を用いて発明者らのプロトコルが振幅雑音の改善もすることを示す。
【0254】
まず、古典の場合における最も簡単な例を考える。最も簡単な古典チャネル(節2.12)は各チャネルにおける振幅が複素数によって記述される(すなわち、内部自由度がない)場合であったこと、ならびに雑音は伝送チャネル
【0255】
【数189】
Figure 0004154231
および
【0256】
【数190】
Figure 0004154231
における振幅がランダムな位相で乗算される、つまり
【0257】
【数191】
Figure 0004154231
という影響を有することを想起されたい。
しかしながら、ただランダムな位相によって変更されるだけではなく、これらの振幅が振幅1を有さなくてもよいランダムな複素数で乗算される、つまり
【0258】
【数192】
Figure 0004154231
ということがあり得る。今度は先行の古典プロトコルがこの場合にも有効であることを示す。前述のように、雑音は異なるチャネルにおいて独立していると考える。
ここで、節2.12、2.14におけるのと全く同じ状況を考える。重ね合わせ
【0259】
【数193】
Figure 0004154231
から始め、
【0260】
【数194】
Figure 0004154231
および
【0261】
【数195】
Figure 0004154231
の両方をTの伝送チャネルに多重化し、受信器における信号の
【0262】
【数196】
Figure 0004154231
成分を考える。この成分の振幅は
【0263】
【数197】
Figure 0004154231
である。ランダムな振幅の期待値を
【0264】
【数198】
Figure 0004154231
と書くとする。ここで、βは1未満の絶対値の複素数であり、Bは実数である(2行目の項においては加算はない)。なお、
【0265】
【数199】
Figure 0004154231
である。受信チャネルにおいて観測される強度は
【0266】
【数200】
Figure 0004154231
であると計算することができる。従って、位相雑音の場合と全く同様に、多重化が振幅雑音の影響を低減させることがわかる。
今度は、例として、単一粒子が位相雑音および振幅雑音の両方の影響を受ける量子の場合を考える。これは例示である。この場合、伝送中の発展(3)は、
【0267】
【数201】
Figure 0004154231
で置き換えられる。ここで、γは粒子が伝送中に吸収される振幅であり、|absjEは粒子が伝送チャネルjにおいて吸収される場合の系および環境の状態である。この雑音モデルを用いると、節2.16のすべての計算は、|α|2+|β|2=1−|γ|2<1であること以外はもとのままである。特に式(24)は変わらず、したがって、振幅および位相雑音の両方が発生する場合に多重化がチャネルの質(そしてそれゆえに干渉の質)を向上させることがわかる。
【0268】
説明したすべてのプロトコルが振幅雑音の場合の伝送の質を向上させることを確認することができる。
2.16 もつれ合った状態の通信のためのプロトコル
先行のプロトコルはすべて量子および古典信号の一方向通信のための誤りフィルタ除去スキームである。今度は、これらの考え方を目標がもつれ合った量子状態をソースから二者以上に送ることである状況についてのプロトコルを提供するために拡張することができることを示す。
【0269】
しかしながら、まず、目標が単に多者間にもつれ合った状態をもたらすことであれば、先行の量子プロトコルを用いることによって、つまり当事者の1人が単に局所的に状態を用意し、それを先に説明した一方向通信チャネルを用いて伝送することによってこれを達成でき、誤りを減少させることができるのである。
以下においては、明確化のためにソースから二者への状態の伝送のためのプロトコルに主に集中するが、関連する考え方をソースから三者以上に伝送するために用いることができることは明らかである。
【0270】
より詳細には、構成は以下の通りである。ソース(図4の4.01)は2つのS準位系(S-level system)(図4の4.08.1および4.08.2)を発する。これらは符号器(図4の4.04.1および4.04.2)によってT準位系(T-level system)として符号化される。次いで、信号は雑音のあるチャネル(図4の4.03.1および4.03.2)を通って流れ、復号器(図4の4.05.1および4.05.2)によってR準位系(R-level system)(図4の4.09.1および4.09.2)に復号化される。上記の一方向通信のためのプロトコルと同様に、説明するプロトコルの新規な局面は、符号化および復号化によって状態の空間の次元を変化させることを可能にすることが重要であるという理解である。このことはプロトコルの性能にとって重要である。
【0271】
再び、先行するプロトコルと同様に、発明者らが考える実施例の重要な特徴は、個々の伝送チャネルのヒルベルト空間の直和としての状態のヒルベルト空間の形態である。これと関連するのは、支配的な種類の雑音が非常に特殊な形態を有すること、つまり、異なるチャネルの雑音が独立しているということである。それは発明者らのプロトコルを作用可能にする雑音の特定の形態である。
この節では簡略化のために位相雑音の場合を考える。一方向プロトコルにおけるのと同様に、プロトコルをより一般的な雑音の場合に一般化することは簡単である。任意の伝送状態|j〉T
【0272】
【数202】
Figure 0004154231
のように環境と相互作用すると考える。ここで、環境状態|j〉Eは異なるjについて直交する。
説明するプロトコルは以下の一般構造を有する。系Aの状態はソースから生じる。
【0273】
【数203】
Figure 0004154231
これらの状態は、符号器(図4の4.04.1)により、変換
【0274】
【数204】
Figure 0004154231
によって符号化される。これにより、出現する系の状態は、
【0275】
【数205】
Figure 0004154231
である。従って、チャネルの系および環境の初期状態は、
【0276】
【数206】
Figure 0004154231
である。チャネルを介した伝送後、状態は、
【0277】
【数207】
Figure 0004154231
となる。さらなる変換
【0278】
【数208】
Figure 0004154231
によって復号化が作用し、これにより、符号化および復号化後の最終状態は、
【0279】
【数209】
Figure 0004154231
である。
最終的には受信状態のうちのいくつかだけが用いられる。これは、最終状態をR次元の受信状態のヒルベルト部分空間に射影することによって達成される。この射影子をΠAで表す。他方では
【0280】
【数210】
Figure 0004154231
の定義に吸収することができるユニタリ変換によって射影子を変更できるので、この射影子の選択には一定の自由がある。具体化のために、
【0281】
【数211】
Figure 0004154231
と定義することによってこの任意性を固定する。これにより、初期状態
【0282】
【数212】
Figure 0004154231
から始めると、最後に(規格化されていない)状態
【0283】
【数213】
Figure 0004154231
になる。当事者Bはその状態に対して同様の操作を行う。
所与のプロトコルは、その都度の異なるヒルベルト空間の次元ならびに符号化および復号化操作の一選択である。以下にこれらの選択のいくつかの具体例を示す。
2.16.1 プロトコル1:ソースにおける多重化
この例では、課題は、R次元の最大限にもつれ合った状態を共有することである。プロトコルは、S準位系(S>R)を用意してそれが雑音のあるチャネルを通って伝送されるようにし、その後最後にそれを処理することによって作用する(すなわち、ソースおよび受信チャネル間の符号化が自明であり、T=Sである)。プロトコルは、R準位系が直接にチャネルを通って単純に伝送された場合に達成されるであろうよりも高い忠実度を有するR準位系の最終状態を二者が得ることができるようにする。受信器において生じさせることを望む1つの状態よりも多くのもつれ合いを生じさせるソースを用いる(S>R)ので、発明者らの方法を“ソースにおける多重化”と呼ぶ。このことが、ただ単にR次元のもつれ合った状態を生じさせるソースから始めた場合に得られるであろう状態よりも所要の状態に近い状態を受信器で得ることを可能にする。
【0284】
初期状態
【0285】
【数214】
Figure 0004154231
を考える。このプロトコルを定義する第1の条件は、符号化段階が自明であることである。これは、
【0286】
【数215】
Figure 0004154231
ということを意味する。このため、復号化および射影後の系の規格化されていない状態は、
【0287】
【数216】
Figure 0004154231
である。発明者らは、
【0288】
【数217】
Figure 0004154231
を生じさせることができるR準位|ψR〉一重項に対する最大忠実度に関心を持っている。状態|ψfin〉の忠実度は、
【0289】
【数218】
Figure 0004154231
である。
今度はプロトコルを定義する第2の条件、つまり、
【0290】
【数219】
Figure 0004154231
および
【0291】
【数220】
Figure 0004154231
が発明者らが用いる基礎において基本的に互いの複素共役であることによって関連しているということを導入する。すなわち、
【0292】
【数221】
Figure 0004154231
と書く場合、
【0293】
【数222】
Figure 0004154231
となる。このことは特に
【0294】
【数223】
Figure 0004154231
ということを意味している。次に
【0295】
【数224】
Figure 0004154231
を計算する。
【0296】
【数225】
Figure 0004154231
と計算することができる。ここで、
【0297】
【数226】
Figure 0004154231
ということを用いた。また、
【0298】
【数227】
Figure 0004154231
である。従って、忠実度を
【0299】
【数228】
Figure 0004154231
と書ける。ここで、
【0300】
【数229】
Figure 0004154231
である。Yは正の量(positive quantity)であり、シュワルツの不等式によって、
【0301】
【数230】
Figure 0004154231
である。しかし、
【0302】
【数231】
Figure 0004154231
である。従って、
【0303】
【数232】
Figure 0004154231
であり、
【0304】
【数233】
Figure 0004154231
のとき等しい。
このプロトコルを定義する第3の条件として(165)を与える。この場合、忠実度は、
【0305】
【数234】
Figure 0004154231
である。
ソースによって生じるもつれ合いの量を増加させることにより(すなわちSを増加させることにより)忠実度が増加することがわかる。
2.16.2 プロトコル2
節2.6、2.7、2.8に提示した誤りフィルタ除去のためのプロトコルを、もつれ合った量子状態を通信するときに誤りをフィルタ除去するために直接に用いることもできる。節2.6、2.7、2.8のプロトコルを、所与の伝送チャネルを改善する方法と考えることができる。つまり、各ソースチャネルをTの伝送チャネルに多重化することによって、誤り振幅をβから
【0306】
【数235】
Figure 0004154231
に低減させることができる。
次いで、ソースが2つのS準位系の状態を用意すると考える。この状態は、節2.7で与えるような一般的な符号化を用いて各ソースチャネルをTの伝送チャネルに多重化することによって前処理される。その後、信号は復号化され、2つの受信器RAおよびRBにおいて状態を生じさせるために後処理される。受信された状態は、前後処理が用いられなかった場合よりも高い忠実度を有する。
【0307】
例えば、以下の入力状態を考える。
【0308】
【数236】
Figure 0004154231
ここで、aiは複素振幅である(これは基本的に最も一般的な二分割(bi-partite)状態である)。各ソースチャネルが、もとの誤り振幅がβから
【0309】
【数237】
Figure 0004154231
に低減されるように、Tの伝送チャネルを介して処理されると、最終状態は
【0310】
【数238】
Figure 0004154231
である。雑音がなければ伝送されたであろう状態(すなわち、
【0311】
【数239】
Figure 0004154231
)に対する受信器における状態の忠実度は、
【0312】
【数240】
Figure 0004154231
である。従って、忠実度はTとともに単調に増加し、T→∞のとき1になる傾向がある。
3.誤りフィルタ除去の物理的実施
3.1 光ファイバにおける簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの実施例
これを図5に示す。具体化のために、2つのソースチャネルおよび4つの伝送チャネルがある場合を考える。ソース5.01は信号を2つの光ファイバ、つまりソースチャネル5.08.1および5.08.3に送る。符号化は、符号器5.04として光カプラを用いることによって行われる。次いで、信号は雑音のある伝送ファイバ5.03.1〜5.03.4に沿って伝わる。復号器5.05もまた光カプラである。信号は受信器5.02で収集される。有用なチャネルは5.09.1および5.09.3であり、その他の2つのチャネル5.07.2および5.07.4に現れる信号は純粋な雑音であって破棄される。なお、対の伝送ファイバ5.03.1および5.03.2(または5.03.3および5.03.4)は干渉計を構成する。これらの2つのファイバの光路長は、雑音がない場合にソースによってファイバ5.08.1(または5.08.3)に発せられた信号がファイバ5.09.1(または5.09.3)において確実に回収されるように、等しくなければならない。
【0313】
このハードウェアは、本明細書中で説明するプロトコルの多く、つまり単一光子量子信号、内部自由度を有する状態、多光子量子状態および古典信号に用いることができる。
単一光子量子状態の場合、2つのソースチャネルは状態|1〉Sおよび|3〉S(本明細書中の表記との一貫性のため)を搬送し、4つの伝送チャネルは状態|i〉T、i=1...4を搬送する。ソースファイバ5.08.1および5.08.3における光子の状態はa|1〉S+b|3〉Sであり、ここでaおよびbは複素数であり、|a|2+|b|2=1である。符号器5.04から出現する状態は
【0314】
【数241】
Figure 0004154231
である。次いで、信号は雑音のある伝送ファイバ5.03.1〜5.03.4に沿って伝わる。上側の復号器は、変換
【0315】
【数242】
Figure 0004154231
および
【0316】
【数243】
Figure 0004154231
をもたらし、下側の復号器は、変換
【0317】
【数244】
Figure 0004154231
および
【0318】
【数245】
Figure 0004154231
をもたらす。有用なチャネル5.09.1および5.09.3における状態は、それぞれ|1〉Rおよび|3〉Rである。
古典波動信号の場合、2つのソースチャネルはモード
【0319】
【数246】
Figure 0004154231
および
【0320】
【数247】
Figure 0004154231
(本明細書中の表記との一貫性のため)を搬送し、4つの伝送チャネルはモード
【0321】
【数248】
Figure 0004154231

【0322】
【数249】
Figure 0004154231

【0323】
【数250】
Figure 0004154231
および
【0324】
【数251】
Figure 0004154231
を搬送する。ソースファイバ5.08.1および5.08.3における信号は、
【0325】
【数252】
Figure 0004154231
であり、ここでaおよびbは複素数であり、|a|2+|b|2はソースによって発せられる全強度に等しい。符号器5.04から出現する状態は、
【0326】
【数253】
Figure 0004154231
である。次いで、信号は雑音のある伝送ファイバ5.03.1〜5.03.4に沿って伝わる。上側の復号器は、変換
【0327】
【数254】
Figure 0004154231
および
【0328】
【数255】
Figure 0004154231
をもたらし、下側の復号器は、変換
【0329】
【数256】
Figure 0004154231
および
【0330】
【数257】
Figure 0004154231
をもたらす。有用なチャネル5.09.1および5.09.3における状態は、それぞれ
【0331】
【数258】
Figure 0004154231
および
【0332】
【数259】
Figure 0004154231
である。
上記に挙げたその他の種類の信号のフィルタ除去は、第2部で詳細に説明するように非常に類似した方法で作用する。
なお、上記の例においてはいかなる信号の内部自由度も使用しなかった。単一光子状態の場合には、信号を光子の2つの偏光状態|H〉および|V〉に符号化して実施例を少し変更することができる。従って、これらの内部自由度を用いると、1つのソースチャネルおよび2つの伝送チャネルを用いるだけでよい。信号はa|H〉S+b|V〉Sとして符号化することができる。符号化および復号化は、1つの無偏光ビームスプリッタによって実行される。伝送信号の4つの成分(2つのファイバのそれぞれにおける水平および垂直偏光)のすべてについて雑音が独立している限り、プロトコルは上記と全く同様に作用する。
3.2 自由空間における簡単な誤りフィルタ除去の光学的な実施例
これを図6に示す。これは、光ファイバを介して送られるのではなく、信号が自由空間を介して送られること以外は、前節における実施例と非常に類似している。このため、光学素子が異なる。前節の例と同様に、具体化のために2つのソースチャネルおよび4つの伝送チャネルがある場合を考える。ソース6.01は信号を自由空間、つまりソースチャネル6.08.1および6.08.3に送る。符号化は、符号器6.04としてビームスプリッタを用いることによって行われる。次いで、信号は雑音のある伝送経路6.03.1〜6.03.4に沿って伝わる。これらの信号経路は同じ光路長を有していなければならない。信号を出力に向けなければならないので、信号を方向づけるために鏡6.10が必要である。復号器6.05もまたビームスプリッタである。信号は受信器6.02で収集される。有用なチャネルは6.09.1および6.09.3であり、その他の2つのチャネル6.07.2および6.07.4に現れる信号は純粋な雑音であって破棄される。
【0333】
前節の光ファイバにおける実施例と同様に、このハードウェアは、本明細書中で説明するプロトコルの多く、つまり単一光子量子信号、内部自由度を有する状態、多光子量子状態および古典信号に用いることができる。
伝送中の系の状態の数学的説明は、先行の実施例におけるのと全く同じであるので、ここでは繰り返さない。
3.3 光ファイバにおける時間ビンを用いた簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの実施例
これを図7に示す。この実施例では信号は光ファイバを介して送られる。しかしながら、節3.1の実施例におけるように複数の物理的ファイバを介して送られるのではなく、信号は1つのファイバを介して送られるのであるが、信号の異なった成分は異なった時間ビンに符号化される。この実施例は、光ファイバ中を伝播する、時間ビンに分散された信号を容易に操作することができるという最近の理解(J. Brendel、W. Tittel、H. ZbindenおよびN. Gisin、Phys. Rev. Lett. 82, 2594, 1999)に基づいている。どのようにして異なった時間ビンに信号を発するソースを実現するかの説明のために、この引用文献を参照する。
【0334】
先行の節における例と同様に、具体化のために、発明者らがソースチャネルと呼ぶ2つのソース基本状態(basis state)および4つの伝送基本状態(チャネル)がある場合を考える。ソース7.01は信号をファイバに沿って2つの時間ビン中で送る。どのように実施例が作用するかを理解しやすくするために、これらの2つの信号を丸い小塊(blob)7.08.3と三角の小塊7.08.1として描写した。
符号化は1つの符号器7.04によって行われる。符合器は、1つの短いアーム7.12と1つの長いアーム7.13とを有する。符号器に到着する信号は、まず光カプラ7.11.1を通過し、符号器の長いまたは短いアームを通過する振幅
【0335】
【数260】
Figure 0004154231
を有する。次いで、信号はスイッチ7.14.1に到達する。このスイッチは、符号器の長いアームおよび符号器の短いアームに沿って通過した信号の部分の両方を伝送光ファイバ7.03.0を介して送るようにソースと同期させられる。符号器の効果は、符号器に到着するいかなる信号も2つの時間ビンに分けられて符号器を出て行くというものである。2つのアームの光路の相対的長さは、この2つの時間ビンの時間間隔(time separation)が2つの入ってくる(incoming)ビンの時間間隔よりも大きくなるように構成される(このことが復号器におけるスイッチ動作を簡単にする―以下参照)。この符号化の結果、2つの時間ビン中のもとの信号が4つの時間ビン7.03.1〜7.03.4中に出現し、信号はその後、雑音のある伝送ファイバに沿ってこれらの4つの時間ビン中で伝わる。
【0336】
1つの物理的復号器7.05がある。これは、入力端におけるスイッチ7.14.2、1つの短い経路7.16および1つの長い経路7.17、ならびに出力端における(
【0337】
【数261】
Figure 0004154231
という透過係数の)光学カプラ7.15を有する。復号器のアームに沿った光路長は、符号器の対応するアームと同じであるように構成される。復号器に到着する2つの第1の信号成分(すなわち、符号器において短いアームに沿って行ったもの)は長い経路に沿って送られ、次いで、第2の信号対が復号器の短いアームに沿って送られるようにスイッチが操作される。このため、異なる経路の既知の光路長に合わせてスイッチのタイミングを調節しなければならない。復号器は信号を2つの時間ビンに再結合する効果を有する。信号は受信器7.02において収集される。有用なチャネルは7.09.1および7.09.3であり、その他の2つのチャネル7.07.2および7.07.4に現れる信号は純粋な雑音であって破棄される。
【0338】
このスキームの1つの利点は、全伝送ラインにわたって干渉計を安定させる必要がないことである。符号器および復号器の長短のアームの光路長の差だけを一定に保てばよい。他方で、このスキームは非線形要素、つまりスイッチを必要とする。スイッチの代わりに
【0339】
【数262】
Figure 0004154231
の透過係数のカプラを用いる場合には、スキームは相変わらず作用するが、各粒子が破棄される確率は3/4である(かつ、受信器は到着時間に基づいて粒子を受け入れるか破棄するかを判別できなければならない)。
先行の節における実施例と同様に、このハードウェアは、本明細書中で説明するプロトコルの多く、つまり単一光子量子信号、内部自由度を有する状態、多光子量子状態および古典信号に用いることができる。
【0340】
単一光子量子状態の場合、2つのソース時間ビン(チャネル)は状態|1〉Sおよび|3〉S(本明細書中の表記との一貫性のため)を搬送し、4つの伝送時間ビンは状態|i〉T、i=1..4を搬送する。ソース時間ビン7.08.1および7.08.3における光子の状態はa|1〉S+b|3〉Sであり、ここで、前述のように、aおよびbは複素数であり、|a|2+|b|2=1である。符号器7.04から出現する状態は
【0341】
【数263】
Figure 0004154231
である。次いで、信号は雑音のある伝送ラインに沿って4つの時間ビン7.03.1〜7.03.4中で伝わる。復号器は、変換
【0342】
【数264】
Figure 0004154231
および
【0343】
【数265】
Figure 0004154231
および
【0344】
【数266】
Figure 0004154231
および
【0345】
【数267】
Figure 0004154231
をもたらす。有用な時間ビン7.09.1および7.09.3における状態は、それぞれ|1〉Rおよび|3〉Rである。
上記に挙げたその他の種類の信号のフィルタ除去は、第2部に詳細に説明するように非常に類似した方法で作用する。数学的説明はここでは繰り返さない。
前述のように、この節における例ではいかなる信号の内部自由度も使用しなかった。単一光子状態の場合には、信号を光子の2つの偏光状態|V〉および|H〉に符号化して実施例を少し変更することができる。このため、これらの内部自由度を用いると、1つのソース時間ビンおよび2つの伝送時間ビンがあるだけでよい。信号はa|V〉S+b|H〉Sとして符号化できる。伝送信号の4つの成分(2つの時間ビンのそれぞれにおける上下の偏光)のすべてについて雑音が独立している限り、プロトコルは上記と全く同様に作用する。
3.4 自由空間における時間ビンを用いた簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの実施例
これを図8に示す。節3.1の複数ファイバプロトコルと類似の自由空間の節3.2があるのと同様に、時間ビンを用いる前節の実施例と類似の自由空間のものがある。この節における実施例の原理は前節のものと非常に類似しているが、ハードウェアは異なる。
【0346】
前節における例と同様に、具体化のために2つのソース基本状態(チャネル)および4つの伝送基本状態(チャネル)がある場合を考える。ソース8.01は信号を自由空間において2つの時間ビン中で送る。符号化は1つの符号器8.04によって行われる。符合器は1つの短いアーム8.12および1つの長いアーム8.13を有している。符号器に到着する信号は、ビームスプリッタ8.11.1に到達し、符号器の2つのアームを介して分散される。鏡8.10は、符号化を完結させるスイッチ8.14.1へ光子を向けるために必要である。前節における実施例と同様に、符号化の効果は、符号器に到着するいかなる信号も2つの時間ビンに分けられて符号器を出て行くというものであり、再び、2つのアームの光路の相対的長さは、この2つの時間ビンの時間間隔が2つの入ってくるビンの時間間隔よりも大きくなるように構成される。この符号化の結果、2つの時間ビン中のもとの状態が4つの時間ビン中に出現し、信号はその後、自由空間中を4つの時間ビン8.03の中で伝わる。この伝達中、雑音がある。1つの物理的復号器8.05がある。これは入力端におけるスイッチ8.14.2、1つの短い経路8.16および1つの長い経路8.17、ならびに出力端におけるビームスプリッタ8.11.2を有する。復号器のアームに沿った光路長は、符号器の対応するアームと同じであるように構成される。復号器に到着する2つの第1の信号成分(すなわち、符号器において短い経路に沿って行ったもの)は長い経路に沿って送られ、次いで、第2の信号対が復号器の短い経路を通って送られるようにスイッチが操作される。スイッチのタイミングは全光路の既知の経路長に合わせて調節しなければならない。復号器は信号を2つの時間ビンに再結合する効果を有する。信号は受信器8.02において収集される。8.07に現れる信号はいずれも純粋な雑音であって破棄される。
【0347】
先行の節における実施例と同様に、このハードウェアは、本明細書中で説明するプロトコルの多く、つまり単一光子量子信号、内部自由度を有する状態、多光子量子状態および古典信号に用いることができる。
いかなるプロトコルの実施例においても各段階における状態の説明は前節と全く同様である。
なお、前述のように、この節における実施例ではいかなる信号の内部自由度も使用しなかったが、そうすることもでき、その結果必要な時間ビンの数が減少する。
3.5 複数の光ファイバにおけるもつれ合った状態の配布のためのプロトコルの実施例
これを図9に示す。これは、ソースにおける多重化を用いる節2.16.1におけるプロトコルの実施例である。目標は、受信器AおよびB(それぞれ9.02.1および9.02.2)に最大限にもつれ合った状態に可能な限り近い状態を提供することである。具体化のために、受信者が2つの2準位系の最大限にもつれ合った状態を共有することを望み、各受信器に向けて出現する4つのソースチャネルがある場合を考える。この場合には符号化がなく、したがって伝送チャネルもまた4つであることを想起されたい。信号はソースを出て行き、その後、雑音のある伝送ファイバ9.03.1〜9.03.8に沿って伝わる。各対の伝送ファイバ(例えば9.03.1と9.03.2)の光路長は等しくなければならない。復号器9.05.1〜9.05.4は、
【0348】
【数268】
Figure 0004154231
の透過振幅の光カプラである。信号は受信器9.02.1および9.02.2において収集される。各受信器は2つのチャネルに到着する信号を収集するのであるが、受信器は相関したチャネルに到着する信号を収集しなければならない。従って、例えば受信器9.02.1はチャネル9.09.1および9.09.3に到着する信号を収集することができ、その場合、受信器9.02.2はチャネル9.09.5および9.09.7に到着する信号を収集しなければならない。
【0349】
この節2.16.1のプロトコルの実施例では、光子は、
【0350】
【数269】
Figure 0004154231
の状態でソースを出て行く。符号化が自明であるので、雑音のあるファイバに入る状態は、
【0351】
【数270】
Figure 0004154231
である。次いで、信号は雑音のある伝送ファイバ9.03.1〜9.03.8に沿って伝わる。復号器9.05.1に入る信号は
【0352】
【数271】
Figure 0004154231
および
【0353】
【数272】
Figure 0004154231
であり、復号器は、変換
【0354】
【数273】
Figure 0004154231
および
【0355】
【数274】
Figure 0004154231
をもたらす。同様に、その他の復号器9.05.2〜9.05.4は、変換
【0356】
【数275】
Figure 0004154231
および
【0357】
【数276】
Figure 0004154231

【0358】
【数277】
Figure 0004154231
および
【0359】
【数278】
Figure 0004154231

【0360】
【数279】
Figure 0004154231
および
【0361】
【数280】
Figure 0004154231
をもたらす。受信器は、チャネル9.09.1、9.09.3、9.09.5および9.09.7に現れる状態
【0362】
【数281】
Figure 0004154231

【0363】
【数282】
Figure 0004154231

【0364】
【数283】
Figure 0004154231
および
【0365】
【数284】
Figure 0004154231
を収集する。受信器はまた、その他の受信チャネルに現れる相補的な状態
【0366】
【数285】
Figure 0004154231

【0367】
【数286】
Figure 0004154231

【0368】
【数287】
Figure 0004154231
および
【0369】
【数288】
Figure 0004154231
を収集する場合には、誤りがフィルタ除去されたもつれ合った状態を収集する。復号化操作のこれらの選択および収集された状態が節2.16.1の3つの条件を満たすことを確認することができる。
このプロトコルで用いることができるソースの構成の一例を図13に与える。レーザ13.01はUVパルス13.05を光ファイバ13.04に沿って送る。これは、それぞれが光路長の等しい4つの光ファイバ13.09のうちの1つを伝わる4つのパルス13.06を発生するカプラ13.02に到達する。4つのパルス13.06は4つの非線形結晶13.07に同時に到達する。各パルスは2つの光学的光子パルスを発生する。それぞれが各結晶から出現する4つの上側のファイバ13.11.1〜13.11.4は、図9の4つのファイバ9.03.1〜9.03.4に対応する。それぞれが各結晶から出現する4つの下側のファイバ13.11.5〜13.11.8は、図9の4つのファイバ9.03.5〜9.03.8に対応する。
【0370】
一方向通信プロトコルをファイバまたは自由空間で実施し得るのと全く同様に、光ファイバを用いるのではなく自由空間において全構成を実施することもできる。前述のように光子を方向づけるために鏡が必要であり、光カプラの代わりにビームスプリッタが用いられる。
再び、上記の例においてはいかなる信号の内部自由度も使用しなかった。光子の2つの偏光状態を使用するために実施例を少し変更することができる。従って、これらの内部自由度を用いることで物理的ファイバの数が減少する。伝送信号のすべての成分について雑音が独立している限り、プロトコルは上記と全く同様に作用する。
3.6 光ファイバにおける時間ビン中でのもつれ合った状態の配布のためのプロトコルの実施例
これを図10に示す。これは、前節と同じプロトコルの、つまりソースにおける多重化を用いる実施例である。しかしながら、前述のプロトコルにおけるように複数のファイバを用いるのではなく、信号は複数の時間ビンに符号化される。前述のように、目標は、受信器AおよびB(それぞれ10.02.1および10.02.2)に最大限にもつれ合った状態に可能な限り近い状態を提供することである。再び、受信者が2つの2準位系の最大限にもつれ合った状態を共有することを望む場合を考える。各受信器に向けて伝わる4つのソース時間ビンがある場合を考える。前述のように符号化はなく、したがって伝送時間ビンもまた4つである。なお、どのようにして複数の時間ビン中のもつれ合った状態のソースを実験的に実現するかは、Brendelら、Phys Rev Lett 82 (1999) 2594に示されている。
【0371】
受信器Aに向けて伝わる信号を考えるとする。Bへと伝わる信号の説明は同じである。信号はソースを出て行き、その後、雑音のある伝送ファイバに沿って4つの時間ビン10.03.1〜10.03.4中で伝わる。装置のこの部分には1つの物理的復号器10.05.1がある。これは、入力端におけるスイッチ10.14.1、1つの短い経路10.16.1および1つの長い経路10.17.1、ならびに出力端における光カプラ10.15.1を有している。復号器のアームに沿った光路長は、10.03.3および10.03.4間と同じである時間ビン10.03.1および10.03.2間のものと同じであるように構成される。復号器に到着する2つの第1の信号成分は長い経路に沿って送られ、次いで、第2の信号対が復号器の短い経路を通って送られるようにスイッチが操作される。スイッチのタイミングは全光路の既知の経路長に合わせて調節しなければならない。復号器は、信号をカプラからの各出力ファイバに沿った2つの時間ビンに再結合する効果を有する。信号は受信器10.02.1において収集される。この受信器が2つの時間ビン10.09.1および10.09.3を収集する場合には、他方の受信器はその側で対応する時間ビンを収集しなければならない。
【0372】
状態および装置によって実行される変換の説明は前節におけるものと全く同様であり、繰り返す必要はない。
このプロトコルにおいて用いることができるソースの一例は、Brendelら、Phys Rev Lett 82 (1999) 2594に記載されており、図12に示す。レーザ12.01はUVパルス12.05を光ファイバ12.04に沿って発する。光カプラ12.02は異なる光路長の4つの光ファイバ12.09を接続する。もとのパルスは、それぞれがファイバ12.09のそれぞれに沿って伝わる4つのパルスに分けられる。ファイバはカプラ12.03で再結合される。4つのパルスがカプラから出現し、ファイバ12.10に沿って伝わる。パルスは非線形結晶12.07に到達する。結晶では4つのパルス12.06のそれぞれが2つの光学的光子パルスを生成し、一方はファイバ12.11.1に沿って、他方は12.11.2に沿って伝わる。従って、合計で8つのパルスが4つのパルス12.06によって生成される。4つのパルス12.08.1の組は、図10において受信器10.02.1に向けて送られる信号パルス10.03.1〜10.03.4として用いられ、もう一方の4つのパルス12.08.2は、図10において受信器10.02.2に向けて送られる信号パルスとして用いられる。
【0373】
また、前節に記載のように、一方向通信プロトコルをファイバまたは自由空間で実施し得るのと全く同様に、光ファイバを用いるのではなく自由空間において全構成を実施することもできる。前述のように光子を方向づけるために鏡が必要であり、光カプラの代わりにビームスプリッタが用いられる。
再び、上記の例においてはいかなる信号の内部自由度も使用しなかった。光子の2つの偏光状態を使用するために実施例を少し変更することができる。従って、これらの内部自由度を用いることで必要な時間ビンの数が減少する。伝送信号のすべての成分について雑音が独立している限り、プロトコルは上記と全く同様に作用する。
3.7 もつれ合った状態の配布のための第2のプロトコルの実施
ここで、本明細書中で節2.16において明らかにしたように、量子状態の伝送を向上させるいかなる一方向通信プロトコルも、もつれ合った状態の伝送を向上させるために用いることができることを簡単に述べておく。
3.8 メゾスコピック量子系におけるプロトコルの実施
先行のプロトコルの実施例はいずれも、メゾスコピック系あるいは実際には量子または古典波動情報処理を行うことが可能なその他の物理領域における使用に採用することができる。すなわち、光学素子(ファイバ、カプラ、ビームスプリッタなど)の代わりにメゾスコピックまたは他の領域(domain)において同等の仕事を行う素子を用いるだけである。
【0374】
メゾスコピックな実施例の場合、発明者らのプロトコルを実施するために用いることができる物理素子の例の明確な説明は、R. Ionicioiuらquant-ph/9907043およびquant-ph/0011051およびそれらの中の引用文献に見ることができる。上記の発明者らのプロトコルにおいて用いた各光学素子に対し、対応するナノスケールのものが存在する。具体的には、量子ナノワイヤが光ファイバに対応し、電子波導波カプラ(electron wave-guide coupler)または対称(symmetric)トンネル接合がビームスプリッタまたは光カプラに対応する。
【0375】
図11は、メゾスコピック領域における最も簡単なプロトコル(節2.6)の実施例を示す。具体化のために2つのソースチャネルと4つの伝送チャネルがある場合を考える。ソース11.01は信号を2つのナノワイヤ、つまりソースチャネル11.08.1および11.08.3へ送る。符号化は、符号器11.04としてナノスケールのカプラを用いて行われる。次いで、信号は雑音のある伝送ワイヤ11.03.1〜11.03.4を通って伝わる。復号器11.05もまたナノスケールのカプラである。信号は受信器11.02において収集される。有用なチャネルは11.09.1および11.09.3であり、その他の2つのチャネル11.07.2および11.07.4に現れる信号は純粋な雑音であって破棄される。なお、対の伝送ワイヤ11.03.1および11.03.2(または11.03.3および11.03.4)は干渉計を構成する。これらの2つのワイヤの伝送長さは、雑音がない場合にソースによってワイヤ11.08.1(または11.08.3)に発せられる信号がワイヤ11.09.1(または11.09.3)において確実に回収されるように、等しくなければならない。
【0376】
このハードウェアは、本明細書中で説明するプロトコルの多く、つまり単一電子量子信号、内部自由度がある状態、多粒子量子状態および古典電流に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一方向通信のための一般的な構成。
【図2】 もつれ合った状態の配布のための一般的な構成。
【図3】 一方向通信のための簡単なプロトコル。
【図4】 もつれ合った状態の配布のための一般的なプロトコル。
【図5】 光ファイバにおける簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの実施例。
【図6】 自由空間における簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの光学的な実施例。
【図7】 光ファイバにおける時間ビンを用いた簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの実施例。
【図8】 自由空間における時間ビンを用いた簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの実施例。
【図9】 複数の光ファイバにおけるもつれ合った状態の配布のためのプロトコルの実施例。
【図10】 光ファイバにおける時間ビン中でのもつれ合った状態の配布のためのプロトコルの実施例。
【図11】 メゾスコピック領域における簡単な誤りフィルタ除去プロトコルの実施例。
【図12】 時間ビンにおけるもつれ合った状態のソースの例。
【図13】 光ファイバにおけるもつれ合った状態のソースの例。

Claims (31)

  1. 雑音環境においてソースから受信器へ情報を伝送する方法であって、
    符号器により、情報搬送モードを少なくとも1つ含むソース信号を前記ソースから受信し、前記ソース信号の情報搬送モードを符号化信号の複数のモードに線形変換し、前記符号器と復号器との間を独立に接続する複数の伝送チャネルに前記符号化信号の複数のモードを個別に送出するステップ;
    前記復号器により、前記複数の伝送チャネルから前記符号化信号の複数のモードを受信して復号信号の少なくとも1つのモードに線形結合し、前記復号器と受信器との間を接続する有用チャネルを含む少なくとも1つの受信チャネルに前記復号信号のモードを送出するステップ;及び、
    前記受信器により、前記有用チャネルを伝搬する前記復号信号のモードを受信し、その他の受信チャネルを伝搬する前記復号信号のモードを破棄するステップ
    を含み、
    前記複数の伝送チャネルが実質的にノイズを含まないときに前記ソース信号の情報搬送モードが前記復号信号のモードとして現れる受信チャネルを前記有用チャネルとして利用する方法。
  2. 前記符号器がユニタリ変換によって前記ソース信号の情報搬送モードを前記符号化信号の複数のモードに線形変換し、
    前記復号器がユニタリ変換によって前記符号化信号の複数のモードを前記復号信号の少なくとも1つのモードに線形結合する
    請求項1に記載の方法。
  3. 前記ユニタリ変換が、フーリエ変換、逆フーリエ変換、又はアダマール変換のいずれかである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記符号器が前記ソース信号の情報搬送モードを複数受信して前記符号化信号の含む同数以上のモードに線形変換する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記有用チャネルが前記ソース信号の情報搬送モードと同数である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記符号化信号の複数のモードを線形結合するステップの前に、
    前記符号器から前記複数の伝送チャネルのそれぞれを通して記憶装置に前記符号化信号の各モードを格納するステップ、及び、
    前記記憶装置から前記複数の伝送チャネルのそれぞれを通して前記復号器に前記符号化信号の各モードを読み込むステップ、
    を更に含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記複数の伝送チャネルのそれぞれで前記符号化信号の各モードをコンピュータの論理素子によって共通の非自明な線形変換で処理するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
  8. 第2符号器により、前記有用チャネルから前記復号信号のモードを受信して第2符号化信号の複数のモードに線形変換し、前記第2符号器と第2復号器との間を独立に接続する複数の第2伝送チャネルに前記第2符号化信号の複数のモードを個別に送出するステップ;
    前記第2復号器により、前記複数の第2伝送チャネルから前記第2符号化信号の複数のモードを受信して第2復号信号の少なくとも1つのモードに線形結合し、前記第2復号器 と第2受信器との間を接続する第2有用チャネルを含む少なくとも1つの第2受信チャネルに前記第2復号信号のモードを送出するステップ;及び、
    前記第2受信器により、前記第2有用チャネルでは前記第2復号信号のモードを受信し、その他の第2受信チャネルでは前記第2復号信号のモードを破棄するステップ
    を更に含み、
    前記複数の第2伝送チャネルが実質的にノイズを含まないときに前記有用チャネルを伝搬する前記符号化信号のモードが前記第2復号信号のモードとして現れる第2受信チャネルを前記第2有用チャネルとして利用する請求項1に記載の方法。
  9. 前記複数の伝送チャネルが互いに物理的に、かつ空間的に分離されている、請求項1に記載の方法。
  10. 前記符号化信号の各モードを異なる時間に前記複数の伝送チャネルのそれぞれに送出する請求項1に記載の方法。
  11. 前記符号化信号の各モードが古典的な電磁波の信号である請求項1に記載の方法。
  12. 前記電磁波の信号が光信号である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記符号化信号の各モードが光子の異なる偏光状態で表される請求項1に記載の方法。
  14. 前記複数の伝送チャネルのそれぞれ内部自由度を持つ粒子伝送し、前記符号化信号の各モード前記粒子の内部自由度で表される請求項1に記載の方法。
  15. 前記複数の伝送チャネルのそれぞれが量子を伝送し、
    前記量子の状態が、ゼロ粒子状態、1粒子状態、及び多粒子状態を含む集合から成り
    前記符号化信号と前記復号信号との各モードが前記量子の状態で表される、
    請求項1に記載の方法。
  16. 前記量子の状態が、ゼロ粒子状態、1粒子状態、及び多粒子状態の重ね合わせを含む請求項15に記載の方法。
  17. 前記量子がボソンまたはフェルミオンである請求項15に記載の方法。
  18. 前記量子の状態が量子もつれ状態を含む請求項15に記載の方法。
  19. 雑音環境において情報を伝送するシステムであって、
    情報搬送モードを少なくとも1つ含むソース信号を生成するソース;
    前記ソースから前記ソース信号を受信し、前記ソース信号の情報搬送モードを符号化信号の複数のモードに線形変換する符号器;
    前記符号器から前記符号化信号の各モードを独立に伝送する複数の伝送チャネル;
    前記複数の伝送チャネルから前記符号化信号の複数のモードを受信して復号信号の少なくとも1つのモードに線形結合する復号器;
    前記復号信号の少なくとも1つのモードを前記復号器から伝送する少なくとも1つの受信チャネルであり、前記複数の伝送チャネルが実質的にノイズを含まないときに前記ソース信号の情報搬送モードが前記復号信号のモードとして現れる有用チャネルを含む受信チャネル;及び、
    前記有用チャネルを伝搬する前記復号信号のモードを受信し、その他の受信チャネルを伝搬する前記復号信号のモードを破棄する受信器
    を含むシステム。
  20. 前記符号器がユニタリ変換によって前記ソース信号の情報搬送モードを前記符号化信号の複数のモードに線形変換し、
    前記復号器がユニタリ変換によって前記符号化信号の複数のモードを前記復号信号の少なくとも1つのモードに線形結合する
    請求項19に記載のシステム。
  21. 前記複数の伝送チャネルに接続され、前記符号器から前記複数の伝送チャネルのそれぞれを通して前記符号化信号の各モードを格納する記憶装置をさらに含むシステムであり
    前記復号器が前記記憶装置から前記複数の伝送チャネルのそれぞれを通して前記符号化信号の各モードを読み出す、
    請求項19に記載のシステム。
  22. 前記複数の伝送チャネルが物理的に分離された伝送経路を含む請求項19に記載のシステム。
  23. 前記複数の伝送チャネル物理的に共通の通信経路を含み、
    前記符号器が前記符号化信号の各モードを異なる時間に前記通信経路に送出する
    請求項19に記載のシステム。
  24. 前記符号化信号の各モードが光信号である請求項19に記載のシステム。
  25. 前記複数の伝送チャネルのそれぞれが光ファイバを含む請求項24に記載のシステム。
  26. 前記光ファイバの各光路長が等しい請求項25に記載のシステム。
  27. 前記複数の伝送チャネルのそれぞれが自由空間を含む請求項24に記載のシステム。
  28. 前記複数の伝送チャネルに接続され、前記複数の伝送チャネルのそれぞれを伝搬する前記符号化信号の各モードを共通の非自明な変換で処理する論理素子さらに含む、請求項19に記載のシステム。
  29. 前記有用チャネルから前記復号信号のモードを受信して第2符号化信号の複数のモードに線形変換する第2符号器;
    前記第2符号器から前記第2符号化信号の各モードを独立に伝送する複数の第2伝送チャネル;
    前記複数の第2伝送チャネルから前記第2符号化信号の各モードを受信して第2復号信号の少なくとも1つのモードに線形結合する第2復号器;
    前記第2復号信号の少なくとも1つのモードを前記第2復号器から伝送する少なくとも1つの第2受信チャネルであり、前記複数の第2伝送チャネルが実質的にノイズを含まないときに前記有用チャネルを伝搬する前記復号信号のモードが前記第2復号信号のモードとして現れる第2有用チャネルを含む第2受信チャネル;及び、
    前記第2有用チャネルを伝搬する前記第2復号信号のモードを受信し、その他の第2受信チャネルを伝搬する前記第2復号信号のモードを破棄する第2受信器
    をさらに含む、請求項19に記載のシステム。
  30. 雑音環境において情報を伝送するための通信システムであって、
    ソース信号の情報搬送モードを電磁波の形態で生成するソース;
    前記ソース信号を前記ソースから受信し、前記ソース信号の情報搬送モードを符号化信号の複数のモードに分割するスプリッタ
    前記符号化信号の複数のモード前記スプリッタから個別に伝送する複数の伝送経路
    前記複数の伝送チャネルを伝搬する前記符号化信号の複数のモード1組の出力信号に結合する結合器;
    前記1組の出力信号のそれぞれを前記結合器から伝送する複数の受信チャネルであり、前記複数の伝送経路が実質的にノイズを含まないときに前記ソース信号の情報搬送モードが前記1組の出力信号の1つとして現れる有用チャネルを含む受信チャネル;及び、
    前記1組の出力信号のうち、前記有用チャネルを伝搬するものを受信し、他の受信チャネルを伝搬するものを破棄する受信器
    を含むシステム。
  31. 雑音環境において情報を伝送するための光通信システムであって、
    ソース信号の情報搬送モードを光ビームの形態で生成するソース;
    前記ソース信号前記ソースから受信し、前記ソース信号の情報搬送モードを複数の光ビームに分割するスプリッタ
    前記複数の光ビームを前記スプリッタから個別に伝送する複数の伝送経路;
    前記複数の伝送チャネルを伝搬する前記複数の光ビームを1組の出力光信号に結合する結合器
    前記1組の出力光信号のそれぞれを前記結合器から伝送する複数の受信チャネルであり、前記複数の伝送経路が実質的にノイズを含まないときに前記ソース信号の情報搬送モードが前記1組の出力光信号の1つとして現れる有用チャネルを含む受信チャネル;及び、
    前記1組の出力光信号のうち、前記有用チャネルを伝搬するものを受信し、他の受信チャネルを伝搬するものを破棄する受信器
    を含むシステム。
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