JP4153680B2 - 軸付きメタルボンド超砥粒ホイール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インターナル研削及びシリコンウエハ−のノッチ加工等に用いる軸付き超砥粒ホイールに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体業界の技術の発展に伴い、シリコンウエハーの直径も拡大し、またICチップの集積度と配線密度が大きくなっている。図5に示すように、シリコンウエハー7は円形から一部分を直線的に切ったオリエンタルフラット7aとよばれる部分が設けられ、これにより加工時の位置決めを行っていた。ところが、近年シリコンウエハー7の大径化およびICチップの集積度と配線密度が大きくなり位置決め精度が重要であること、及び1枚のシリコンウエハー7からできるだけ多くのICチップ得ること等々のため、図6に示すように、シリコンウエハー7の一部に小さなノッチ7bと呼ばれる切り欠き部分を設けて、シリコンウエハー7の位置決めを行う方法が主流とりつつある。ノッチ7bはその大きさに対応した超砥粒ホイールを使用して形成される。
【0003】
前記ノッチ加工等に用いる超砥粒ホイールは、超砥粒ホイール部8とこれを保持するためのシャンク部9とからなり、その構造は、図7及び図8の側面図及び分解図に示すように、シャンク部9を銅めっきした後、このシャンク部9の端面へ超砥粒ホイール部8のホイール底面を接着したものが周知である。このような接着タイプの超砥粒ホイールでは、断続的に側圧がかかる研削中に底面の接着部が劣化すると破壊されやすい。また研削中におけるホイールの磨耗によりその底側の直径の減少したとき、シャンク部9に対する接合強度も急激に低下し超砥粒ホイール部8がシャンク部9から分離脱落するといったおそれがあり、このため使用寿命が制限されてきた。
また、超砥粒ホイール部8の分離脱落といった問題を解消するためには、超砥粒ホイール部8とシャンク部9とを接合する方法として、特開平6−23625公報に記載されるように、シャンク部の一部に雄ねじを形成してホイール部へ接合する方法が公知である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さらに、超砥粒ホイール部の補強及びシャンク部に対する接合強度を向上させるため、図9に示すような、シャンク部9の先端部に細い中芯9aを成形し、これに超砥粒ホイール部8を接合させてなる超砥粒ホイールが考えられる。超砥粒ホイール部に軸止された細い中芯9aは研削を邪魔せずにホイール部の構造的補強に役立つものである。
しかしながら、シャンク部9に一体成形された中芯9aは、超砥粒ホイール部8を軸方向に圧入又は加圧焼結させるが、この中芯9bは細いので、基端部付近に接合時の応力が集中して曲がり等の変形を起こしやすく、あるいは変形した状態のまま接合されるおそれがある。また、稼働中の超砥粒ホイールにおいては、中芯9aの変形を伴うような残存応力があるならば、研削による超砥粒ホイールの磨耗に伴って相対的な強度低下を露呈し、研削中に超砥粒ホイール部8は破壊されやすくなる。
本発明は、シャンク部9へ超砥粒ホイール部8を接合する時に、前記細い中芯のような変形しやすい補強構造に応力を残存させることがなく研削によるホイール摩耗が進んでも破壊されにくく、耐久性に優れた軸付き超砥粒ホイール及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の軸付き超砥粒ホイールの製造方法は、超砥粒ホイール部側をシャンク部側へ軸方向で加圧することにより双方の軸方向に小径棒を軸止して接合させる軸付き超砥粒ホイールの製造方法であって、前記シャンク部の挿入穴に前記小径棒の一端を配置し、該小径棒の他端に配置される超砥粒ホイール部側を加圧したときに、該小径棒が砥粒ホイール部と密着しつつ軸方向を移動して前記シャンク部の挿入穴内に固定される工程を経る。
【0006】
好ましくは、前記シャンク部の挿入穴は、前記超砥粒ホイール部側の加圧に伴う前記小径棒の軸方向の移動を許容する深さにする。
また、より好ましくは、前記シャンク部の挿入穴は、移動後の前記小径棒の端部に対して軸方向の逃げを有する非貫通穴とし、該非貫通穴にその逃げ分に相当する金属粉末を入れから、前記加圧とともに金属粉末を加熱溶融させて接合させる。
また、前記挿入穴と前記小径棒との間における直径のクリアランスは、接合したときの位置で、挿入口側の直径でプラス0.03〜0.06mm、底側の直径でマイナス0.04〜0.2mmに設定することが好ましい。
【0007】
本発明の軸付き超砥粒ホイールは、超砥粒ホイール部とシャンク部とを小径棒を介して接合させた超砥粒ホイールであって、該小径棒の一端が前記シャンク部に設けられている軸方向の挿入穴に挿入されて固定されており、その他端側が超砥粒ホイール部に軸止されていることを特徴とする。
好ましくは、前記シャンク部の挿入穴が、前記小径棒の端部に対して逃げを有する深さに穿設され、特に、前記逃げに充填された金属粉体が溶融固着して連結されている構成が好ましい。
このような構成の本発明の軸付き超砥粒ホイールは、シリコンウエハーのノッチ加工に好適なメタルボンド超砥粒ホイールとして提供されるが、ノッチ加工だけでなくそれ以外のインターナル研削に用いることもできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、一般的なメタルボンド超砥粒ホイール及びその製造方法に適用することができる。その具体的な原材料や寸法等は公知のメタルボンド超砥粒ホイールと同様な一般的仕様を採用することができる。
【0009】
図1は、本実施形態の軸付きメタルボンド超砥粒ホイールの基本構造を示す縦断面図である。同図に示されるように、ノッチ形成溝1aを形成した超砥粒ホイール部1とシャンク部2とはその双方の回転軸方向Xに金属製の小径棒3を軸止することで接合されている。加えて、超砥粒ホイール部1の底面をシャンク部2の端面は接着又は焼結させることができる。かくして、本発明のホイールは、端面同士を接着しただけの従来の軸付きホイールと異なり、小径棒3により超砥粒ホイールが構造的に補強され、特に研削中ホイールの磨耗によりホイール底部の直径減少に伴う破壊現象も防止され、またワークに対する側圧にも強いものとなる。
【0010】
さらに、前記小径棒3は、シャンク部2の内部へ固着するように軸止されるが、シャンク部2に一体成形したものではなく、図2の分解図に示すようにシャンク部2とは別体に成形したものが用いられる。シャンク部2には小径棒3の挿入穴2aが成形されている。
また、前記小径棒3の材質は、ロックウエル硬度HRc=45以上の熱間ダイス鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、又は高速度鋼等の金属材料、一般的にはシャンク部2と同一の金属材料が望ましい。小径棒3の直径は、0.3mm〜10mm、好ましくは0.5mm〜8mmである。0.3mmを下回ると補強効果が得られず、その上限としては超砥粒ホイールの径に依るものの、一般には10mmを越えるとインターナル超砥粒ホイールとしては需要が乏しい。
【0011】
前記別体の小径棒3を用いた軸付きメタルボンド超砥粒ホイールは、例えば次のような製造方法により得ることができる。
本発明の製造方法の好ましい実施の形態では、超砥粒ホイール部1とシャンク部2とに小径棒3の径とほぼ同一の直径の挿入穴2a及び貫通穴1bを形成しておき、図3に示すように、シリンダ6内に超砥粒ホイール部1の貫通穴1b、小径棒3及びシャンク部2の挿入穴2aを回転軸方向(1点鎖線)に配置し、小径棒3の基端側はシャンク部2の挿入穴2aに仮に差込み、この小径棒3の先端側から超砥粒ホイール部1を被せるようにして超砥粒ホイール部1を一方向から押圧する。これにより超砥粒ホイール部1の貫通穴1bへ小径棒3が装着されていく。このとき、その小径棒3が超砥粒ホイール部1の貫通穴1bとの摩擦すなわち密着を生じるので、小径棒3の基端部もシャンク部2の挿入穴2aへ軸方向に沿って更に進入する。図3は装着後の状態を示す。そのシャンク部2の挿入穴2aは、上記軸方向の小径棒3の移動を許容できる深さを有する。同図の例では、超砥粒ホイール部1の加圧で進入した小径棒3と、挿入穴2aとの間に残った逃げ2bを強調して図示している。この逃げ2bの量は、移動する小径棒3にかかる負荷を逃がすことができる範囲であればよい。
【0012】
小径棒3と挿入穴2aとの関係では、軸方向で挿入穴2aの段階的にクリアランスが小さくなる楔状の結合にすることができる。例えば、挿入口から中央付近まで、挿入穴2aの直径は小径棒3の直径よりも0.03〜0.06mm、好ましくは約0.03〜0.1mmほど大きく、また、挿入穴2aの中央付近からその底部付近までは、挿入穴2aの直径は小径棒3の直径よりも0.04〜0.2mmほど小さくすることができる。この構成によれば、接合前の小径棒3を挿入穴2aに仮組みすることが容易であり、その接合時の軸方向移動によって底側へ狭持されて固定される。
【0013】
このように、本発明の製造方法は、小径棒3がシャンク部2から独立しており且つその押圧時に生じる軸方向移動を許容できる。この製法によれば、超砥粒ホイール部1の装着のための加圧が小径棒3に負荷をかけることなくに、ホイール部1とシャンク部2とをスムーズに固定することができる。その結果、補強に重要役割を果たす小径棒3の変形や残存応力を生じずに理想的な補強構造を形成できる。
【0014】
好ましい他の実施の形態では、超砥粒ホイール部1を小径棒3周囲に焼結させて形成する。図4(a)は焼結前、同図(b)は焼結後の状態を示す。シャンク部2を金型としてのシリンダ6内に固定する。シャンク部2の軸方向に設けられた非貫通の挿入穴2aには適量の金属粉体4を入れてから小径棒3を立設する。シャンク部2の接合端面上には焼結用金属層を設けて、そこに立設する小径棒3の周囲に砥材が充填される。充填砥材は、同図4(a)の矢印で示すような軸方向から加圧され且つ加熱されてシャンク部2上で超砥粒ホイール部1に焼成される。
【0015】
同図(b)に示すように、充填砥材の加圧を伴う焼結が進むにつれ砥材と小径棒3との密着が進み、同図(b)の矢印に示すごとく小径棒3は、挿入穴2aの奥側へ移動する。このとき、挿入穴2aに充填されていた金属粉末4の焼成熱による溶融を伴う。金属粉末4は、挿入穴2a内に予定されている逃げ2bの量にほぼマッチする適量が充填されている。そして、上記接合時の溶融により金属粉末4の体積は縮小するので、これが小径棒3を挿入穴2a内へ案内する役目を果たす。その結果、シャンク部2と小径棒3との間で金属粉末4の溶融固着による強固な接合を生じさせると共に、加圧挿入された小径棒3に残存応力を残さない接合状態を形成することができる。挿入穴2aに入れる金属粉末4の充填量は、その金属の収縮率や粒度等の諸特性よって異なるであろうが、小径棒3の移動量及び逃げ2bの量を考慮して調整すればよい。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明するが、これらは本発明の実施可能性等を例証するものであり、本発明の構成を何ら限定する意図はない。
ホイール部寸法
ホイール部外径:φ4.2mm
へこみ部外径: φ2.2mm
厚み:11mm
シャンク部長さ:27mm
ホイール仕様
砥粒:ダイヤモンド砥粒 粒度#800
結合剤:メタルボンド(成分 Co60wt%、Cu28wt%、Sn12wt%の金属粉末)
混合比:砥粒 1000重量部、結合剤4200重量部
ホイールの製造方法
前記材料を前記混合割合で均一に混合後、金型に充填し700℃にて加圧して、ホイールを得た。その後加工により図1及び図2のごとき研削面形状のホイールを得た。
【0017】
各テストホイール
[実施例1]
貫通しない1.0mmの挿入穴を設けたシャンク部、直径0.95mmの小径棒を用意した。シャンク部を金型としてシリンダ内に固定した。シャンク部の軸方向に設けられた非貫通の挿入穴に適量の金属粉体を入れてから小径棒を立設した。シャンク部の接合端面上に、超砥粒と金属結合剤との混合粉体からなる砥材を小径棒の周囲に充填した。
700℃で加熱加圧後、図1の軸付きメタルボンド超砥粒ホイールを得た。
[比較例1]
実施例1と同じ仕様の超砥粒ホイール及びシャンク部を用いたが、貫通穴及び挿入穴を設けずに、シャンク部を金型としてのシリンダ内に固定した。シャンク部の接合端面上に超砥粒と金属結合剤との混合粉末からなる砥材を充填した。700℃で加熱加圧後、図7のごとき構造の軸付きメタルボンド超砥粒ホイールを得た。
[比較例2]
実施例1と同じ仕様の超砥粒ホイール及びシャンク部を用いたが、シャンク部は小径の中芯を一体成型したものを用意した。シャンク部を金型としてのシリンダ内に固定した。シャンク部の接合端面上に、超砥粒からなる砥材と金属結合剤との混合粉体からなる砥材を中芯の周囲に充填した。
700℃で加熱加圧後、図9のごとき軸付きメタルボンド超砥粒ホイールを得た。
【0018】
評価方法
シリコンウエハー2000枚分をノッチ加工するまでに、破壊に至ったホイールの数量により評価した。
研削条件
ワークは、外径8インチのシリコンウエハーを用い、その外周部に、図6のごとき幅4mmの正三角形型の切り欠きを超砥粒ホイールのノッチ形成溝で加工した。
【0019】
テスト結果
実施例1:破壊ホイール 無し
比較例1:破壊ホイール 6個
比較例2:破壊ホイール 3個
【0020】
比較例1では6個の破壊を生じた。これはホイールに断続的に側圧がかかることによりホイール部とシャンク部との接着強度が劣化し破壊に至った。
【0021】
比較例2では、超砥粒ホイール部に小径棒が入っているため、ホイールの側圧に対する補強効果があるので比較例1よりも側圧に強くなった。しかし、焼成時の加圧に起因して破壊ホイールが発生した。
図10に、前記比較例2の代表的なホイール部の断面写真を示す。研削時に破壊を起こしたホイールの断面を観察したところ、小径棒の曲がりが認められた。その曲がりによる応力は、研削を続けてホイールの磨耗が進行したときに破壊の原因になることが判った。
【0022】
実施例1は、比較例1及び2と比較してホイールの破壊は認められなかった。図11に、実施例1の代表的なホイール部の断面写真を示す。この断面写真で明らかなように、比較例1のような小径棒の曲がりは認められなかった。比較例2と同様の加熱加圧条件にもかかわらず、補強の役割を果たす小径棒が曲がらずまっすぐにな姿勢に挿入されていた。
【0023】
【発明の効果】
以上のごとく、本発明品は軸付きインターナル用メタルボンド超砥粒ホイールにおいて研削中超砥粒ホイールの側圧による破壊に対して、良好な結果が得られ特にシリコンウエハーのノッチ加工において良好な結果が得られることにより安全性が高く良好な研削が可能なホイールの供給ができ、産業界への貢献は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の軸付きメタルボンド超砥粒ホイールの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の超砥粒ホイールの構成部品を示し、同図(a)は小径棒、同図(b)はシャンク部、同図(c)は超砥粒ホイールの各側面図である。
【図3】本発明の製造方法の一実施形態を示すの断面図である。
【図4】本発明の製造方法の他の実施形態を示し、同図(a)は焼結前、同図(b)は焼結後を示す断面図である。
【図5】オリエンタルフラットが付いているシリコンウエハーの平面図である。
【図6】ノッチ部が付いているシリコンウエハーを示し、同図(a)はシリコンウエハーの平面図、同図(b)はそのノッチ部分の拡大図である。
【図7】従来の軸付き超砥粒ホイールの側面図である。
【図8】従来の軸付き超砥粒ホイールの分解構成図である。
【図9】比較例2の超砥粒ホイールの概略構成を示す部分断面図である。
【図10】比較例2の超砥粒ホイールの断面を示す写真代用図である。
【図11】実施例1の超砥粒ホイールの断面を示す写真代用図である。
【符号の説明】
1 超砥粒ホイール部
2 シャンク部
2a 挿入穴
2b 逃げ
3 小径棒
4 金属粉末
Claims (2)
- メタルボンド超砥粒ホイール部側をシャンク部側へ軸方向で加圧することにより双方の軸方向に小径棒を軸止して接合させる軸付きメタルボンド超砥粒ホイールの製造方法であって、前記シャンク部の挿入穴に前記小径棒の一端を配置し、該小径棒の他端に配置されるメタルボンド超砥粒ホイール部側を加圧したときに、該小径棒がメタルボンド超砥粒ホイール部と密着しつつ軸方向を移動して前記シャンク部の挿入穴内に固定され、前記シャンク部の挿入穴は、前記メタルボンド超砥粒ホイール部側の加圧に伴う前記小径棒の軸方向の移動を許容する深さにし、前記シャンク部の挿入穴は、移動後の前記小径棒の端部に対して軸方向の逃げを有する非貫通穴とし、該非貫通穴にその逃げ分に相当する金属粉末を入れてから、前記加圧とともに金属粉末を加熱溶融させて接合させることを特徴とする、前記方法。
- 請求項1に記載の製造方法によって製造された軸付きメタルボンド超砥粒ホイール。
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