JP4152121B2 - ターボ分子ポンプを用いた真空排気装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はターボ分子ポンプを用いた真空排気装置に関し、特に、電子顕微鏡や半導体製造装置などに使用するターボ分子ポンプを用いた真空排気装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図19は、磁気軸受を採用した従来のターボ分子ポンプ本体の縦断面図であり、図20はターボ分子ポンプのシステム概念図を示す。
【0003】
図19において、ターボ分子ポンプ201は、動翼215を取付けた回転軸203とステータ202とを含み、回転軸203の下端側と回転軸203の上下部に対向して、回転軸203とステータ202との間の相対位置を検出するセンサコイル208,209,210が設けられ、これらのセンサコイル208,209,210で検出された検出信号が図20に示されるコントローラ251内のセンサ回路255に与えられて回転軸203の位置検出信号(アナログ信号もしくはデジタル信号)が作り出される。回転軸203の上側と下側には回転軸203を磁気軸受支持するための電磁石204,205,206が設けられている。さらに、回転軸203の中央部分に対向するように、回転軸203を回転駆動するためのモータ207が設けられている。
【0004】
図20に示されるように、モータ207はモータコントローラ258によって回転制御され、電磁石204,205,206による磁気軸受は磁気軸受制御回路256によって制御され、これらの磁気軸受制御回路256およびモータコントローラ258は磁気軸受スピンドル外に設けたコントローラ251に配置される。
【0005】
さらに、図19に示すように、回転軸203の上下端には非常用軸受211,212が設けられている。この非常用軸受211,212は磁気軸受装置が制御不能になったときに回転軸203を支持する。また、図19には図示していないが、回転軸203の回転数を検出する回転検出センサ262がステータ202内に配置されており、回転検出センサアンプ254を介して回転軸回転数信号が作り出される。
【0006】
回転軸203とステータ202との間の相対位置を検出するセンサには、一般にリラクタンス式や渦電流式に代表される磁気式センサが使用される。さらに、真空ケーシング213には、真空排気口214が設けられているとともに、動翼215と対向するように静翼216が配置されており、動翼215が回転することにより、真空排気口214から空気が排気されて真空状態が形成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ターボ分子ポンプは回転軸203に取り付けられた動翼215を高速回転させることで、気体分子に運動エネルギを与え、スピンドルの上部の気体を希薄にする機械式の真空ポンプである。このために、軸受を介して回転軸203の回転振動を外部に振動を伝えてしまうという問題がある。この軸受に後述の図6に示したような磁気軸受を採用した場合には、非接触軸受である磁気軸受の振動伝達倍率が低いために、転がり軸受などの接触式軸受を用いた場合と比較して、外部への振動伝達を低減できるといった利点があった。しかし、半導体の露光装置やナノ粒子など超微細組織観察で使用するターボ分子ポンプでは、さらなる低振動化が望まれてきた。
【0008】
これに対応して、ターボ分子ポンプの振動成分が主に回転周波数成分であることから、この回転周波数域の軸受支持剛性を選択的に低下させることで、この周波数の振動を低減する方法がなされている。
【0009】
図21において回転周波数域の軸受剛性を選択的に低下させるためのひとつの方法を概念的に説明する。磁気軸受は回転軸203の位置をセンサで検出し、このセンサ出力をPID制御回路271によって位相補償した信号に基づく電流を電磁石277のコイルに流し、回転軸位置を制御する。これまで、特定の周波数域の軸受剛性を低下させるため、このPID制御回路と直列にバンドエルミネートフィルタ275を挿入することで、そのフィルタの中心周波数を回転軸の回転周波数に一致させ、スピンドルからの回転周波数に同期した振動を選択的に低減する方法が成されてきたが、まだ十分とは言えない。
【0010】
それゆえに、この発明の主たる目的は、さらなる低振動化を図るターボ分子ポンプを用いた真空排気装置を提供することである。
【0017】
本発明における、ターボ分子ポンプを用いた真空排気装置は、真空チャンバにターボ分子ポンプを取付けて使用する真空排気装置において、真空チャンバもしくはターボ分子ポンプに取付けられる振動検出器を備える。その振動検出器は、ターボ分子ポンプ内の回転軸のラジアル方向における1方向であるX方向において回転軸を支持する磁気軸受電磁石が回転軸を吸引する方向に沿った方向における振動を検出するものであり、X方向のみの振動を測定する。振動検出器の出力もしくは演算により求めた真空チャンバの振動変位成分もしくは振動速度成分もしくは振動加速度成分からターボ分子ポンプ内の回転軸の回転数成分を抽出し、真空チャンバの振動が回転軸の回転振動に起因していると想定した上で、ラジアル方向における他の方向であるY方向の振動をターボ分子ポンプ内の回転軸の回転数と同期させるという仮定のもとに、振動検出器の測定したX方向の振動から、Y方向の振動を推定する位相シフト回路をさらに備える。そして、抽出した信号に基づき、振動検出器の出力もしくは振動変位成分もしくは振動速度成分もしくは振動加速度成分に比例させた電流を、ターボ分子ポンプ内の回転軸をX方向において支持する磁気軸受電磁石に重畳させる。さらに、位相シフト回路を用いて推定されたY方向の振動に応じた電流を、ターボ分子ポンプの回転軸をY方向において支持する磁気軸受電磁石に重畳させる。
【0018】
このように振動検出器は、回転軸を支持する磁気軸受電磁石が回転軸を吸引する方向に沿った方向における振動を検出するものであり、X方向のみの振動を測定する。振動検出器の出力もしくは演算により求めた真空チャンバの振動変位成分もしくは振動速度成分もしくは振動加速度成分からターボ分子ポンプ内の回転軸の回転数成分を抽出する。真空チャンバの振動が回転軸の回転振動に起因していると想定することにより、この回転軸の回転数成分を元に、位相シフト回路の働きにより、Y方向の振動をターボ分子ポンプ内の回転軸の回転数と同期させるという仮定のもとに、振動検出器の測定したX方向の振動から、Y方向の振動を推定することができる。そして、この抽出した信号に基づいた、振動変位成分もしくは振動速度成分もしくは振動加速度成分に比例させた電流に応じて電磁石に流れる電流を制御することにより、振動検出器の取付け部分の振動を低減できる。
【0019】
また、振動検出器の出力を、ターボ分子ポンプ内の回転軸とステータとの間の相対位置の出力、もしくは相対位置の出力を基にして磁気軸受電磁石の電流を制御する回路の出力、に加算する。
【0022】
このように磁気軸受電磁石に流れる電流を制御することにより振動を軽減する。
【0023】
また、磁気軸受電磁石に重畳させる電流は、重畳される前にローパスフィルタもしくはハイパスフィルタを通して得られることを特徴とする。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を、図を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1はこの発明の第1の参考例におけるターボ分子ポンプの断面図である。図1において、ターボ分子ポンプ30の具体的構成は図19に示した従来例と同じであるのでここでは説明を繰り返さない。
【0030】
ターボ分子ポンプ30の真空ケーシング31と図示されない真空チャンバに固定される真空フランジ32との間がばね定数の低いベローズ33で結合され、真空ケーシング31と真空フランジ32との間に摩擦減衰機構34が設けられている。
【0031】
図2は図1に示した摩擦減衰機構34の拡大図を示す。摩擦減衰機構34は複数枚のリング状薄板35を積層して構成されている。ターボ分子ポンプ30の内部に振動が発生すれば、固定された真空フランジ32に対してベローズ33が変形し、真空ケーシング31が相対振動する。その結果、真空フランジ32と真空ケーシング31に挟まれた各薄板35間に相対摩擦が発生し、そのエネルギ消散によって、真空フランジ32と真空ケーシング31との間の相対運動に対する減衰が作用する。よって、ターボ分子ポンプ30内で振動が発生しても、この摩擦減衰機構34でこれを減衰でき、真空フランジ32を介した振動伝達を抑制できる。
【0032】
図1および2では、摩擦減衰機構34を単純なリング状の薄板35の積層構造としたが、この薄板35は円周状もしくは半径方向に凹凸をもつような薄板で構成してもよい。また、これら薄板35は円周状に完全に繋がっている必要はない。
【0033】
図3は図1に示した摩擦減衰機構34の他の例の拡大図である。図3において、回転軸半径方向(図1において、左右方向)に薄板35を重ねた構成であっても、さらにベローズ33を外径から薄板を多層に巻きつけるようにしてもよい。ここで示した摩擦減衰機構34は真空フランジ32と真空ケーシング31とに挟まれ物質が相互に、もしくは真空フランジ32との間で、もしくは真空ケーシング31との間で、もしくはベローズ33との間で摩擦を発生させることで、真空フランジ32と真空ケーシング31との相対運動に対し減衰力が発生するいかなる構成を用いてもよい。
【0034】
さらに、各薄板35同士は相互に機械的に接触し、かつ相対運動が可能であればよく、一部弾性に優れたゴム材や高減衰能を有する樹脂を介在させてもよい。また、この薄板35からなる摩擦減衰機構34の真空フランジ33および真空ケーシング31への固定は、各薄板35同士が相互に機械的に接触し、かつ相対運動が可能であればよく、限定されるものではない。
【0035】
図4はこの発明の第2の参考例におけるターボ分子ポンプの断面図であり、図5は図4の摩擦減衰機構36の要部拡大図である。
【0036】
図4において、図1に示した摩擦減衰機構34を圧電減衰機構36に置き換えたものであり、それ以外の構成は同じである。図5に拡大して示す圧電減衰機構36は主に、圧電素子42と抵抗43とからなる。外部からの作用力による変形によって、その圧電素子42の厚さ方向に電圧が発生する。この電圧を外部の抵抗43によって放電させ熱エネルギとして消費させることで、外部からの作用力を減衰させることができる。
【0037】
図5を参照してより具体的に説明すると、真空フランジ32と真空ケーシング31との間をベローズ33で接続し、さらに、真空フランジ32と真空ケーシング31との間に圧電素子42と間座41とバネ40とを介在させて圧電減衰機構を形成している。すなわち、真空フランジ32と真空ケーシング31との間に相対運動があるとバネ40および間座41を介して、相対変位に比例した力が圧電素子42に作用し、これによる圧電素子42の弾性変形量に比例した電圧が圧電素子42に発生する。この電圧を抵抗43によって放電させることにより、真空フランジ32と真空ケーシング31との間に相対運動に対する減衰力が発生する。
【0038】
圧電素子42は一般に引張応力にはその耐久性が劣る。そのため、図5では、バネ40によって圧電素子42に圧縮方向に予圧を加え、また間座41はバネ40を介して圧電素子42に作用する力を均等に加えるために設けている。ベローズ33の調整によっては、バネ40を使用しなくても圧電素子42に予圧を加えることも可能である。
【0039】
図6は図4の摩擦減衰機構における他の例の要部拡大図である。図5では圧電素子42を上下方向に配置したが、図6のように水平方向に配置させることも可能である。この場合は真空フランジ32の下部に下方向に延びる突出部36を形成し、真空ケーシング31の外側端部から上方向に延びる突出部37を形成し、これらの突出部36と37との間に圧電素子42を配置すればよい。
【0040】
図7はこの発明の第3の参考例におけるターボ分子ポンプを示す断面図である。この図7に示した参考例は図1に示した摩擦減衰機構34に代えて、粘性ダンパ50を設けたものである。
【0041】
図8は図7に示した粘性ダンパの具体例を示す断面図である。図8において、円筒型のシリンダ51の中に粘性流体54を注入し、ピストン52の外径とシリンダ51の内径間に数10ミクロンの隙間を有することで、ピストン52とシリンダ51との間の相対運動により粘性流体54がその隙間を移動し、ピストン52およびシリンダ51と、粘性流体54との間に発生する粘性摩擦力によって、シリンダ51とピストン52との間の相対運動に対する減衰力が作用する。すなわち、ピストン52を真空フランジ32もしくは真空ケーシング31の一方に、シリンダ51を他方に接続することで、真空フランジ32もしくは真空ケーシング31との間の相対運動に対して減衰力を作用させることができる。
【0042】
なお、図8においてシリンダ51から外部への粘性流体54の漏れを防ぐためにシール53が設けられている。
【0043】
図9はこの発明の実施の形態におけるターボ分子ポンプの断面図である。図9において、円筒状のベローズ64の一端を真空ケーシング31に固着し、ベローズ64の他端を真空チャンバ62に固着する。そして、真空チャンバ62に振動検出器60を取付け、振動検出器60からの検出信号をターボ分子ポンプ内の電磁石電流を制御するコントローラ61に入力し、電磁石電流を制御することで、振動検出器60の出力(振動変位成分もしくは振動速度成分もしくは振動加速度成分に比例した出力)すなわち振動検出器60の取付け部の振動を軽減することができる。なお、振動検出器60の振動検出方向と磁気軸受電磁石によるロータ吸引方向とをほぼ一致させておく必要がある。
【0044】
振動検出器60が、図9においてX方向および紙面に対し垂直方向となるY方向の振動を測定している場合には、振動検出器60の出力信号の各々をその方向に一致する電磁石電流に影響させるようにする。また、X方向のみの振動を測定する振動検出器を装着した場合には、真空チャンバ62の振動が主にターボ分子ポンプ65の回転軸の回転振動に起因していると仮定して、この振動検出器の出力からY方向の振動を推定し、Y方向に作用させる電磁石の電流に影響を与えてもよい。
【0045】
さらに、ターボ分子ポンプ65の回転軸のラジアル方向制御は上下2箇所に配した電磁石の吸引力によって行うが、この振動検出器の出力は、この上下の電磁石を制御するようにしても、またその一方のみを制御するようにしてもよい。また、振動検出器60をターボ分子ポンプ65自体に取り付けてもよい.
図10は振動検出器がXおよびYの2方向を測定している場合の振動低減方法についての概念を説明するための図である。図10では、X方向のみの信号の流れを示しているが、Y方向も同様に設定される。
【0046】
図10(a)に示すように、図9で説明した振動検出器60の出力をターボ分子ポンプの回転軸203とステータ202との間の相対位置の検出力である位置センサ出力に加算したり、図10(b)に示すように、この位置センサ出力をもとにして電磁石の電流を制御する磁気軸受制御回路(図10ではPID制御回路72,75)の出力信号に加算することによって、振動検出器60の出力が小さくなるように構成する。
【0047】
さらに、図10(a),(b)に示すフィルタ回路70,71は、ローパスフィルタもしくはハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタもしくはバンドエルミネートフィルタからなり、振動を低減したい周波数域によって選定される。
【0048】
図11は各フィルタ回路の周波数特性(ボード線図)を示す図である。低周波振動のみを低減したい場合は図11(a)で示されるローパスフィルタを使用し、高周波振動のみ低減したい場合は図11(b)で示されるハイパスフィルタを使用し、回転周波数のような特定の周波数のみを低減したい場合は図11(c)で示される特定の周波数にフィルタの中心周波数を有するバンドパスフィルタを使用し、特定の周波数以外の振動を低減したい場合には図11(d)で示される特定の周波数にフィルタの中心周波数を有するバンドエルミネートフィルタを使用する。
【0049】
図12は振動検出器がX方向のみの振動を測定している場合の振動低減方法についての概念を説明するための図である。図12に示すように、X方向位置センサ出力はPID制御回路80に与えられ、パワーアンプ83を介して電磁石84が制御され、Y方向位置センサ出力はPID制御回路85に与えられ、X方向の振動を検出する振動検出器出力をX方向だけでなく、ターボ分子ポンプの回転軸を制御するY方向の制御にも加算しているのが特徴である。ここで、位相シフト回路82は、X方向からY軸方向の振動を推定する回路である。真空チャンバの振動が主にターボ分子ポンプの回転軸の回転振動に起因していると想定して、この振動はある振幅を有するX−Y座標系の回転振動とし、Y方向の振動をターボ分子ポンプの回転軸回転数と同期させ、かつX方向の振動と90度位相がずれた振動を有するという仮定のもとに、Y方向の振動を推定し、これをY方向の制御に加算する。
【0050】
図13はこの発明の第4の参考例におけるターボ分子ポンプの断面図である。図9に示した実施形態では、振動検出器60の出力に基づいてをターボ分子ポンプの電磁石電流を制御することにより振動の減衰を図った。これに対してこの参考例では専用に設けたアクチュエータをターボ分子ポンプに固定し、振動検出器の出力に応じてこのアクチュエータを動かすことにより、アクティブダンパによって振動減衰を図る。
【0051】
図13において、円筒状のベローズ64を介してターボ分子ポンプ65を真空フランジ63で真空チャンバ62に取付け、振動検出器60を真空チャンバ62に取付け、振動検出器60からの検出信号を専用のコントローラ68を介して、ターボ分子ポンプ65の下面に取り付けたアクチュエータ67を制御することで、振動検出器60の出力すなわち振動検出器取付け部の振動を軽減する。
【0052】
図14,図16および図17は図13で説明したアクチュエータ部の構成例を示す図である。図14は、アクチュエータとして、バイモルフ形の圧電アクチュエータを使用した例であり、アクチュエータケース90に取り付けた板バネ91の両面に圧電素子92を張り付け、さらに板ばね91の先端に錘93を取り付けたものである。この圧電素子92に印加する電圧94を制御することにより、アクチュエータケース90を支点にして、所望の周波数で板ばね91を振動させることができる。この振動を振動検出器取付け部の振動と逆位相とすることによって、振動検出器取付け部の振動を抑制できることになる。ここで、コントローラ104は、図15に示すように振動検出器の出力(振動変位成分もしくは振動速度成分もしくは振動加速度成分に比例した出力)を比例演算もしくは微分演算もしくは積分演算,もしくはこれらの演算出力を加算するPID制御回路100の出力に比例した電圧をアクチュエータに印加する働きをもつ。
【0053】
図16は図14に示したバイモルフ形圧電アクチュエータに代えて、積層形圧電アクチュエータを用いた例を示す。図16で示されるように、アクチュエータケース101に積層形圧電素子102を固定し、その端部に錘103を取付けたものであり、コントローラ104は図15と同様にして構成されている。
【0054】
図17は図14と図16の圧電アクチュエータに代えて電磁アクチュエータを用いた例を示す。アクチュエータケース105に取り付けた板バネ106の端部に錘107を固定し、その両面を電磁石108により吸引することにより、所望の振動を与えることができる。この振動を振動検出器取付け部の振動と逆位相とすることによって、振動検出器取付け部の振動を抑制できる。コントローラは図18と同様に構成される。
【0055】
さらに、図15で示したコントローラに、図18に示すフィルタ回路110を挿入してもよい。このフィルタ回路は、ローパスフィルタもしくはハイパスフィルタもしくはバンドパスフィルタもしくはバンドエルミネートフィルタからなり、振動を低減したい周波数域によって選定される。各フィルタ回路の特性は前述の図11に示すが、低周波振動のみを低減したい場合は図11(a)で示されるローパスフィルタを使用し、高周波振動のみ低減したい場合は図11(b)で示されるハイパスフィルタを使用し、回転周波数のような特定の周波数のみを低減したい場合は図11(c)で示される特定の周波数にフィルタの中心周波数を有するバンドパスフィルタを使用し、また、特定の周波数以外の振動を低減したい場合には図11(d)で示される特定の周波数にフィルタの中心周波数を有するバンドエルミネートフィルタを使用する。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、ターボ分子ポンプの外部への振動の影響を大幅に低減することができ、半導体装置の露光装置やナノ粒子など超微細組織観察で使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の参考例におけるターボ分子ポンプの断面図である。
【図2】 図1に示した摩擦減衰機構の拡大図である。
【図3】 図1に示した摩擦減衰機構の他の例の拡大図である。
【図4】 この発明の第2の参考例におけるターボ分子ポンプの断面図である。
【図5】 図4の摩擦減衰機構の要部拡大図である。
【図6】 図4の摩擦減衰機構の他の例の要部拡大図である。
【図7】 この発明の第3の参考例におけるターボ分子ポンプを示す断面図である。
【図8】 図7に示した粘性ダンパの具体例を示す断面図である。
【図9】 この発明の実施形態におけるターボ分子ポンプの断面図である。
【図10】 振動検出器がXおよびYの2方向を測定している場合の振動低減方法についての概念を説明するための図である。
【図11】 各フィルタ回路の周波数特性(ボード線図)を示す図である。
【図12】 振動検出器がX方向のみの振動を測定している場合の振動低減方法についての概念を説明するための図である。
【図13】 この発明の第4の参考例におけるターボ分子ポンプの断面図である。
【図14】 アクチュエータとしてバイモルフ形の圧電アクチュエータを使用した例を示す図である。
【図15】 振動検出器の出力をPID制御回路を介してアクチュエータを駆動する例を示す図である。
【図16】 図14に示したバイモルフ形圧電アクチュエータに代えて、積層形圧電アクチュエータを用いた例を示す図である。
【図17】 図14と図16の圧電アクチュエータに代えて電磁アクチュエータを用いた例を示す図である。
【図18】 振動検出器の出力をフィルタ回路とPID制御回路を介してアクチュエータを駆動する例を示す図である。
【図19】 従来のターボ分子ポンプのポンプ本体断面図である。
【図20】 従来のターボ分子ポンプのシステム構成を示す図である。
【図21】 従来のターボ分子ポンプのポンプ本体に関する説明図である。
【符号の説明】
30,65 ターボ分子ポンプ、31 真空ケーシング、32 真空フランジ、33,64、ベローズ、34 摩擦減衰機構、35 薄板、36 圧電減衰機構、36,37 突出部、40 バネ、41 間座、42,92 圧電素子、43 抵抗、50 粘性ダンパ、51 シリンダ、52 ピストン、53 シール、54 粘性流体、60 振動検出器、61,68,104 コントローラ、62 真空チャンバ、67 アクチュエータ、70,71,81,110 フィルタ回路、80,85,100 PID制御回路、82 位相シフト回路、83,86 パワーアンプ、84,87,108 電磁石、90,101,105 アクチュエータケース、91,106 板バネ、102 積層型圧電素子。
Claims (3)
- 真空チャンバにターボ分子ポンプを取付けて使用する真空排気装置において、
前記真空チャンバもしくは前記ターボ分子ポンプに取付けられる振動検出器を備え、
前記振動検出器は、前記ターボ分子ポンプ内の回転軸のラジアル方向における1方向であるX方向において前記回転軸を支持する磁気軸受電磁石が前記回転軸を吸引する方向に沿った方向における振動を検出することにより、前記X方向のみの振動を測定し、
前記振動検出器の出力もしくは演算により求めた真空チャンバの振動変位成分もしくは振動速度成分もしくは振動加速度成分から前記ターボ分子ポンプ内の回転軸の回転数成分を抽出し、前記真空チャンバの振動が前記回転軸の回転振動に起因していると想定した上で、前記ラジアル方向における他の方向であるY方向の振動を前記ターボ分子ポンプ内の前記回転軸の回転数と同期させるという仮定のもとに、前記振動検出器の測定した前記X方向の振動から、前記Y方向の振動を推定する位相シフト回路をさらに備え、
前記抽出した信号に基づき、前記振動検出器の出力もしくは前記振動変位成分もしくは前記振動速度成分もしくは前記振動加速度成分に比例させた電流を、前記ターボ分子ポンプ内の回転軸を前記X方向において支持する磁気軸受電磁石に重畳させるとともに、前記位相シフト回路を用いて推定された前記Y方向の振動に応じた電流を、前記ターボ分子ポンプの回転軸を前記Y方向において支持する磁気軸受電磁石に重畳させる、ターボ分子ポンプを用いた真空排気装置。 - 前記振動検出器の出力を、
前記ターボ分子ポンプ内の回転軸とステータとの間の相対位置の出力、もしくは前記相対位置の出力を基にして前記磁気軸受電磁石の電流を制御する回路の出力、に加算する、請求項1に記載のターボ分子ポンプを用いた真空排気装置。 - 前記磁気軸受電磁石に重畳させる電流は、重畳される前にローパスフィルタもしくはハイパスフィルタを通して得られることを特徴とする、請求項1または2に記載のターボ分子ポンプを用いた真空排気装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002133693A JP4152121B2 (ja) | 2002-05-09 | 2002-05-09 | ターボ分子ポンプを用いた真空排気装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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