JP4152010B2 - 間歇的陽圧式呼吸補助装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マスクを使用した陽圧式呼吸補助装置に関する。更に詳細には、換気不全患者の治療に適する間歇的陽圧換気療法(IPPV:Intermittent Positive Pressure Ventilation)などに使用する間歇的陽圧式呼吸補助装置に関する。
【0002】
【従来技術】
高炭酸ガス血症などの換気不全患者の治療に適する間歇的陽圧換気療法(IPPV:Intermittent Positive Pressure Ventilation)などには、様々な呼吸補助器(人工呼吸器)、呼吸用マスク(鼻マスク、口マスク、鼻口マスク等)およびそれらに付属する治療用ガス混入装置が使用されている。
【0003】
一般的にマスク式間歇的陽圧換気療法に使用されている装置のうち、鼻マスクを用いたものを図1に示す。本体1は4〜30cmH2O程度の陽圧ガスを間歇的に発生し、導管2に送る。中でも、吸気、呼気に合わせた2レベルの陽圧ガスを供給する装置が主流である。そして、導管2は鼻マスク6を固定するマスクフレーム5に繋ぎ、鼻マスク6を通して陽圧ガスを使用者7の鼻へ送るようになっている。
【0004】
また、呼気排出孔3は使用者7の呼気ガスを排出するために設けるものであり、治療用ガス混入ポート4は、治療用ガスの混入が必要となる場合に、治療用ガス供給装置に接続して使用する。また、呼気排出孔3および治療用ガス混入ポート4は、マスクを固定するマスクフレーム5に付属するものがほとんどである。
【0005】
このようなマスクを用いた間歇的陽圧換気療法には、陽圧ガス中に治療用ガスの混入を必要とするものがあり、例えば慢性閉塞性呼吸不全患者には0.25〜5L/minの一定流量の酸素ガスを混入することが多い。しかし、従来の装置の多くは、治療用ガス混入ポート4がマスクに設けられているか呼気排出孔3の近傍に設けられているため、呼気期間中に、治療用ガスが呼気と陽圧ガスの流れに乗って呼気排出孔3から排出されやすく、混入された治療用ガスの一部は、使用者7に吸入されることなく排出され、無駄になっている。
【0006】
また、このような装置は、使用者7の呼気をマスク、マスクフレーム5、および導管外に完全に排出することは難しく、一旦体外へ排出した呼気中のCO2を再呼吸してしまうことが問題となる場合がある。
【0007】
再呼吸量を少なくするには、使用者7の呼気を排出しやすいように、呼気排出孔3の面積を大きくしたり、例えば図2のように使用者7の鼻孔前部に呼気排出孔3を位置させる方法などがある。
【0008】
しかし、一般的に呼気排出に優れたマスク、すなわちCO2再呼吸量の少ないマスクほど吸気中の治療用ガス濃度が低い傾向にあり、このように鼻孔前部に呼気排出孔3があるマスクは、再呼吸量は少ないものの吸気中の治療用ガス濃度が低いという欠点がある。従って、呼気排出孔3と治療用ガス混入ポート4がマスクもしくはマスクフレーム5に付属する装置においては、再呼吸量と吸気中の治療用ガス濃度はトレードオフの関係になって、両立することが困難であった。
【0009】
このため、吸気時に必要とする治療用ガス濃度を得るためには、呼気排出孔3の面積の小さいマスクに変更するか、治療用ガスの流量を増やす方法が取られてきた。しかし、前者はCO2再呼吸量が問題になり、後者は治療用ガスの無駄が問題となる。
【0010】
また、呼気排出孔3の面積が比較的大きいマスクを使用した場合に、例えば一般的な酸素濃縮器によって最大流量5L/minの一定流量の酸素ガスを混入したとしても、使用者7の治療に必要な酸素ガス濃度を達成できないことがあるように、治療用ガスを既存の治療用ガス供給装置の最大流量で混入したとしても、使用者7に必要な治療用ガス濃度を供給できない。
【0011】
また、呼吸補助器本体1と導管2の接続部分に治療用ガス混入ポート4の付いているものがある。しかし、この方法は治療用ガス混入ポート4からマスクまでの導管内容積が固定されてしまうため、使用者7の呼吸流量パターンによっては、吸気中に高濃度治療用ガスを得ることができない場合がある。
【0012】
また、予め所定の治療用ガス濃度の呼吸用ガスをブレンドしておき、呼吸補助器本体1が使用者7に陽圧ガスを送るために外部から空気を吸い込む位置に、ブレンドされた呼吸用ガスを投入できるような装置を設けることで、使用者7に常に一定濃度の治療用ガスを供給する装置もあるが、そういったものは複雑な装置になり、非常に高価である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、間歇的陽圧換気療法において、治療用ガス混入を必要とする使用者7が、簡単で、再呼吸量が少なく、なおかつ一定流量、一定濃度の治療用ガスを混入する場合に最も高濃度の治療用ガスを吸入できるような間歇的陽圧式呼吸補助装置を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するため、本発明者は鋭意検討した結果、呼吸補助器本体1とマスクを繋ぐ導管手段の途中に治療用ガスを混入する治療用ガス混入ポート4を備え、該ガス混入ポート4の位置から該呼吸用マスクまでの該導管内容積が、使用者7の呼気流量の最大値に対応する時刻から吸気流量の最大値に対応する時刻までに該導管2を通過するガス体積にほぼ等しいことを特徴とする間欠的陽圧式呼吸補助装置を提供することで、上記の課題を解決できることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は、使用者の呼吸に対応して間歇的に陽圧空気を供給する呼吸補助器1、使用者に該陽圧空気を供給するための呼吸用マスク、および該呼吸補助器1と該呼吸用マスクを繋ぐ導管手段を備えた間歇的陽圧式呼吸補助装置において、該導管手段の途中に治療用ガスを混入する治療用ガス混入ポート4を備えたことを特徴とする間歇的陽圧式呼吸補助装置を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、該ガス混入ポート4の位置から該呼吸用マスクまでの該導管内容積が、使用者の呼気流量の最大値に対応する時刻から吸気流量の最大値に対応する時刻までに該導管2を通過するガス体積の0.7〜1.3倍、特に等倍の容積であることを特徴とする間歇的陽圧式呼吸補助装置を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
使用者7の吸入するガスのうち、実際に肺胞にまで届いてガス交換が実施されるものは、吸気期間前半において吸入されたガスのみである。肺胞まで到達する量は、ヒトの一回換気量の67〜75%と言われている。吸気期間終盤において吸入されたガスは肺胞にまで到達することはなく、気道、気管支等の解剖学的死腔内に止まることになり、解剖学的死腔内に溜まっていたガスは直後の呼気によって体外に排出される。従って、吸気期間終盤に濃度の高い治療用ガスを送ることに治療効果は期待できない。
【0018】
効率的に治療用ガスを使用者7に吸い込ませるためには、肺胞にまでガスの到達できる吸気期間前半において高濃度の治療用ガスを使用者7に送り込むことが望ましい。一般的に、ヒトがガスを吸入する場合、吸気流量が最も多いのは吸気期間前半である。従って、治療用ガスを最も多く肺胞に到達させるには、高濃度の治療用ガスを吸気期間中最も吸気流量の多いタイミングで使用者7に送ることが望ましい。本発明は、このようなヒトの呼吸の特徴を生かして、効率的に治療用ガスを供給するものである。
【0019】
最適な該導管内容積は、使用者7の1回換気量、呼吸レートや呼吸補助器本体1の換気設定などによって使用者一人一人異なるが、使用者7が呼吸補助器本体1による呼吸を行っている時の、治療用ガス混入ポート4から呼気排出孔3までの導管内の流量パターンから決定できる。
【0020】
図6に治療用ガス混入時の導管内の、呼吸補助器本体1から使用者方向への一般的該流量パターンと、その時の使用者7の呼吸流量パターンを示す。吸気から呼気に移り、導管内の流量が小さくなってくると、治療用ガス混入ポート4から呼気排出孔3までの導管内に混入ガスが貯留され、導管内流量が最小、すなわち呼気流量が最大の時に、ガス混入ポート位置付近の混入ガス濃度は最も高くなる。その後、呼気から吸気へ移るにしたがって高濃度混入ガスは使用者方向へ移動していく。
【0021】
この貯留された高濃度ガスを吸気期間中最も吸気流量の多い時に吸入するには、図6の斜線で示した、導管内流量最小の時刻(呼気流量最大時)から導管内流量最大の時刻(吸気流量最大時)までに導管内を移動する流量の積分値が、治療用ガス混入ポート4からマスクまでの導管内容積に相当すれば良い。
【0022】
使用者7にとって最適な該導管内容積を決定する方法として、次のような方法が考えられる。
▲1▼治療用ガス混入ポート4からマスクの間の導管中に流量計を接続し、使用者7の処方条件に合わせて治療用ガス、呼吸補助器本体1の設定を行い、使用者7に安静呼吸あるいは睡眠呼吸をしてもらう。
▲2▼流量計で得られるデータをA/D変換ボードを通して数値データとして取り込む。
▲3▼該積分値を求め、該導管内容積を求める。安静呼吸時の流量パターンは10パターン程度取って平均値を取ればいい。
【0023】
また、使用者7が最適な該導管内容積を決定するのは、病院で昼間診断してもらう時である場合が多い。これに対して、実際に間歇的陽圧式換気療法を行うのが睡眠時であるような場合には、昼間覚醒時の呼吸パターンなどは睡眠時と異なり、これらを考慮した場合、昼間診断時に決定される最適な導管内容積の0.7〜1.3倍の範囲に決定すれば好適である。また、夜間睡眠時に呼吸検査を行う場合には、上記最適導管内容積、即ち導管2を通過するガス体積と等しい容積の導管位置に治療用ガス混入用ポート4を設けることが好ましい。
【0024】
図7に本発明の間欠的陽圧式呼吸補助装置の好ましい態様を示す。両端を導管2に接続可能な、円筒状ガス混入用コネクター8を作成し、治療用ガスはコネクター8に対して垂直に投入できるものとした。導管2は使用者7に最適な該導管内容積に基づき、切って使用する。
【0025】
または、図8のように、該導管内容積が十分に取れる位置から治療用ガス混入用チューブ9を導管内に差し込んで、該導管内容積が最適になるような位置に治療用ガス混入チューブ先端を持ってくる方法を採用することも可能であり、この場合は、導管2を切る必要は無い。
また、本発明の導管としては、異形断面の導管を採用することが当然出来る。
【0026】
治療用ガスとしては、ここで取り上げた酸素を使用することもあるが、この他にNOや麻酔薬等どの治療用ガスを使用する場合でも、同じ原理で高濃度の治療用ガスを吸入することができる。
【0027】
【実施例】
該導管内容積に最適な容積があることを確かめるため、マスクフレーム5に付属した治療用ガス混入ポート4と、マスクから治療用ガス混入ポート4までの該導管内容積が560cm3および1200cm3になるような位置に治療用ガス混入ポート4を設けて実験を行い、吸入時の鼻孔内の治療用ガス濃度を比較した。
【0028】
[実施例1]
本発明の図7の装置を用いて、成人5名に対して、治療用ガスとして94%濃度の一定流量の酸素ガスを混入させ、鼻マスク式間歇的陽圧呼吸補助装置で呼吸させた。5名の呼吸流量測定から、呼気流量の最大値に対応する時刻から吸気流量の最大値に対応する時刻までに該導管2を通過するガス体積の平均値は560cm3であった。
【0029】
治療用ガス混入ポート4の位置は、マスク端側から560cm3の内容積の導管位置に設定し、酸素ガスを5L/minで連続混入した。呼吸補助器本体1の設定は、吸入時圧力18cmH2O、呼気時圧力4cmH2Oとし、吸気時間1.5秒、呼気時間は2秒で行った。また、鼻マスク6は呼気排出孔3が鼻孔前部に位置する再呼吸量の少ないものを使用した。
【0030】
[比較例1]
本発明の図7の装置を用い、治療用ガス混入ポート4を、マスク端側から1200cm3の内容積の導管位置に設け、他の条件は実施例1と同じ条件下で、鼻マスク式間歇的陽圧呼吸補助装置で呼吸させた。
【0031】
[比較例2]
図1の装置を用い、マスクに設けた治療用ガス混入ポート4からマスク内に直接酸素を混入させ、他の条件は実施例1と同じ条件下で、鼻マスク式間歇的陽圧呼吸補助装置で呼吸させた。
【0032】
5L/minの酸素ガスを混入した場合の平均的呼吸流量パターンおよび鼻孔内酸素濃度を、図3、図4および図5に示す。
【0033】
マスクフレーム5に付属した治療用ガス混入ポート4での呼吸(図3)は、酸素ガス濃度のピークが最高で30%程度にしかなっておらず、吸気期間中最も吸入流量の多くなる前に濃度ピークが現れている。
【0034】
それに対して、マスクから治療用ガス混入ポート4までの該導管内容積が560cm3になる位置から酸素ガスを混入した時の呼吸(図4)は、導管内に混入酸素ガスを貯めることができ、最高で40%程度の酸素ガスを使用者7に供給することができた。また、矢印で示すように、吸気期間中で最も吸入量の多い時に最高濃度の酸素ガスを吸入することができ、効率の良い酸素吸入ができている。
【0035】
また、マスクから治療用ガス混入ポート4までの導管内容積が1200cm3の所から酸素ガスを混入した時の呼吸パターン(図5)は、導管内に混入酸素ガスを貯めることはできるので、最高で40%程度の酸素ガスを吸入することができるが、マスクから治療用ガス混入ポート4までの導管内容積が大きすぎるために、矢印で示す吸気期間中で最も吸入量の多い時には、まだピーク濃度酸素ガスが体内に届いておらず、ほぼ吸気の終わる頃になってやっとピーク濃度の酸素ガスが流れてくる。先程説明したように、吸気期間終盤で高濃度の酸素ガスが供給されても、肺胞まで届く前に体外に排出されてしまうため何の意味も無い。
【0036】
安定した5呼吸分の平均値を用い、吸入酸素量(酸素濃度×呼吸流量を吸気期間で積分)と1回換気量(吸気流量を吸気期間で積分)を求め、吸入酸素量/1回換気量を吸気時の平均吸入酸素濃度として比較した。
【0037】
その結果、平均吸入酸素濃度の5人の平均値は、導管内容積を1200cm3になるような位置に治療用ガス混入ポートを設けた装置(比較例1):従来のマスクに治療用ガス混入ポートを設けた装置(比較例2):本発明の間歇的陽圧式呼吸補助装置(実施例1)が、27%:28%:33%と、本発明の間歇的陽圧式呼吸補助装置の方が明らかに高い吸入酸素濃度を示した。
【0038】
【発明の効果】
本願発明の間歇的陽圧式呼吸補助装置を用い、マスクから治療用ガス混入ポート4までの導管内容積をが最適になるような位置に治療用ガス混入ポート4を設けることで、吸気中に効率的に高濃度の酸素ガスを吸入できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的に鼻マスク式間歇的陽圧換気療法に使用される装置。
【図2】使用者の鼻孔前部に呼気排出孔のある鼻マスク。
【図3】マスクフレームに付属したガス混入ポートから酸素ガスを混入した時の呼吸パターン及び鼻孔内酸素濃度パターン。
【図4】マスクから治療用ガス混入ポート4までの該導管内容積が560cm3になる位置から酸素ガスを混入した時の呼吸パターン及び鼻孔内酸素濃度パターン。
【図5】マスクから治療用ガス混入ポート4までの該導管内容積が1200cm3になる位置から酸素ガスを混入した時の呼吸パターン及び鼻孔内酸素濃度パターン。
【図6】ガス混入時の導管内流量パターン。
【図7】本発明の好適な間歇的陽圧式呼吸補助装置の概略図。
【図8】本発明の好適な間歇的陽圧式呼吸補助装置の概略図。
【符号の説明】
1.呼吸補助器本体
2.導管
3.呼気排出孔
4.治療用ガス混入ポート
5.マスクフレーム
6.鼻マスク
7.使用者
8.円筒状ガス混入用コネクター
9.治療用ガス混入チューブ
Claims (3)
- 使用者の呼吸に対応して間歇的に陽圧空気を供給する呼吸補助器、使用者に該陽圧空気を供給するための呼吸用マスク、および該呼吸補助器と該呼吸用マスクを繋ぐ導管手段を備えた間歇的陽圧式呼吸補助装置において、
該導管手段の途中に治療用ガスを混入する治療用ガス混入ポートを備え、
該呼吸用マスクには使用者の呼気を排出するための呼気排出孔が設けられ、
該治療用ガス混入ポートからは一定濃度かつ一定流量の該治療用ガスが供給され、
該ガス混入ポートの位置から該呼吸用マスクまでの該導管内容積は、使用者の呼気流量の最大値に対応する時刻から吸気流量の最大値に対応する時刻までに該導管を通過するガス体積の0.7〜1.3倍であることを特徴とする間歇的陽圧式呼吸補助装置。 - 使用者の呼吸に対応して間歇的に陽圧空気を供給する呼吸補助器、使用者に該陽圧空気を供給するための呼吸用マスク、および該呼吸補助器と該呼吸用マスクを繋ぐ導管手段を備えた間歇的陽圧式呼吸補助装置において、
該導管手段の途中に治療用ガスを混入する治療用ガス混入ポートを備え、
該呼吸用マスクには使用者の呼気を排出するための呼気排出孔が設けられ、
該治療用ガス混入ポートからは一定濃度かつ一定流量の該治療用ガスが供給され、
該ガス混入ポートの位置から該呼吸用マスクまでの該導管内容積は、使用者の呼気流量の最大値に対応する時刻から吸気流量の最大値に対応する時刻までに該導管を通過するガス体積と等しいことを特徴とする間歇的陽圧式呼吸補助装置。 - 該治療用ガスが酸素であることを特徴とする請求項1または2に記載の間歇的陽圧式呼吸補助装置。
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