JP4148619B2 - 光ファイバ用母材インゴット及びその製造方法 - Google Patents

光ファイバ用母材インゴット及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火炎加水分解反応により生成したガラス微粒子を、出発コア部材上に高速度堆積させて得た光ファイバ用母材インゴット(以下、母材インゴットと称する)表面の凹凸を研削して除去した母材インゴット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
母材インゴットは、例えば、出発コア部材の表面にOVD法(外付け法)により火炎加水分解反応により生成したガラス微粒子(スート)を堆積させて多孔質母材を製造し、さらに、脱水、焼結等の工程を経て製造される。
OVD法では、生産速度を上げるために、原料ガスを酸水素火炎中で加水分解させてガラス微粒子を堆積させるバーナーを大径化する方法、あるいはバーナーの数を増やす等の方法により、出発コア部材上へのスートの堆積速度を速める方法が一般的に知られている。
【0003】
原料ガスを供給するバーナーを大径化して供給ガス量を増す方法は、出発コア部材表面へのスートの付着率がスートの堆積初期において極めて低く、また複数のバーナーを用いる方法は、バーナー間で炎の干渉があり、堆積効率が思うように上がらない。
さらに、バーナーの数を増やす方法は、一般に知られているように、出発コア部材に沿ってバーナーを平行にかつ左右に移動させてスートを堆積させるため、堆積されたスート体の左右両端に、この方式の欠点である不良部を生じる。また、複数本のバーナーを使用するためにスート体の表面に凹凸ができる。この現象は、外付け法によりスート堆積用のバーナーのサイズや本数、またバーナーの左右移動方法などによりその表面に凹凸が顕著に現れることがある。特に、原料ガスを増量して高速度堆積を行うとより顕著に現れる。
【0004】
上記したように、出発コア部材の周囲に外付け法によりスートを堆積させて得られる母材インゴットの表面に、凹凸を生じることがあるが、このような母材インゴットを所望の径に細径化してプリフォームとし、これを紡糸して光ファイバとしたとき、光ファイバとしての光学特性に、母材インゴット表面の凹凸の影響が現れる場合がある。従って、クラッド部を形成する際、表面に凹凸が生じないような条件で行わねばならないが、そのような条件ではスートの堆積速度に限界があり、高速化の妨げになっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようにOVD法を用いて母材インゴットを製造する場合、スートの堆積速度を飛躍的に向上させるには、これらの問題を解決する必要がある。
そこで、スート堆積用のバーナーを複数本用い、かつ原料ガスを増量してスートの高速度堆積を行い、焼結ガラス化して得た母材インゴット表面の凹凸を研削・除去して平滑にする方法が考えられる。しかし、研削機に取り付けるには、母材インゴットの両端の円錐状の部分で研削機に握持させねばならないが、この部分の形状が一定でないため、研削用ホイルによる研削時の振動により回転中心がズレて、コア部が偏芯することがあった。
【0006】
本発明の目的は、高速度堆積によって表面に凹凸が生じたスート体を焼結ガラス化して得られた母材インゴットの表面を、コア部が偏芯しないように平滑に研削加工して表面の凹凸を除去し、優れた光学特性を有する母材インゴット及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の母材インゴットの製造方法は、火炎加水分解反応により生成したスート(ガラス微粒子)を出発コア部材上に堆積させてクラッド部を形成し、焼結ガラス化した後、得られた母材インゴットの表面に生じた凹凸を研削して除去するに際し、該母材インゴットの両端部近傍の外周面を平滑に加工して研削機に取り付け、加工時の位置ずれを防止することを特徴としている。
【0008】
母材インゴットの両端部近傍の外周面を平滑に加工する際、コア部の位置を検出し、該コア部が回転軸中心となるように研削機に取り付け、該回転軸中心に沿って該母材インゴットの外周面を研削する。また、両端部近傍の外周面を平滑に加工する際、該母材インゴットの長さ中心に向かって広がる円錐形状に加工するのが好ましい。さらに、円錐形状に加工した円錐部に、円周方向への傾き角度を検出するための基準方位面(オリエンテーションフラット)を研削して設けるのが好ましい。本発明の母材インゴットは、このようにして製造される。
【0009】
【発明の実施の形態】
OVD法で製作したスート体を脱水・焼結ガラス化して得た母材インゴットの表面に凹凸が存在すると、光ファイバ用プリフォームとするため所定の径に延伸するとコア径が変動し、これを紡糸して得られる光ファイバの光学特性に悪影響を与える。
これを防止するには、母材インゴットの表面に凹凸がある場合、表面を円滑に円柱形状に研削(以下、円柱研削という)加工する必要がある。このとき重要なことは、焼結ガラス化された母材インゴットの真円度とコア部の偏芯量である。特に、光ファイバの真円度とコア部の偏芯量は、光ファイバケーブル敷設時の光ファイバ接続作業のときに、光学特性(接続ロス)に大きな悪影響を与える。
【0010】
このため、母材インゴットを円柱研削するにあたり、母材インゴットのコア部の位置を光学的に計測して、研削時の回転中心位置を決定し、母材インゴットの両端部に、コア部の真円と合致する回転軸中心を持った円錐状の加工を施し、さらにコア部の円周方位が確認できるように、円錐部に基準方位面(オリエンテーションフラット)を研削して設けた後、研削機の回転中心にセットする。この状態で円柱研削することで非円、コア部の偏芯不良等の発生を防止することができる。
この結果、光学的に安定した特性を持つ母材インゴットを高速合成することが可能となり、これを所定の径に延伸して得たプリフォームを紡糸して光学特性の良好な光ファイバが得られる。
本発明を実施例,比較例および図に基いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
【実施例】
(実施例1)
図1に光ファイバ用スート体(多孔質ガラス母材)の製造装置の一例を示す。出発コア部材1として外径が25mmφ、長さ1200mmのシングルモード光ファイバ用に屈折率を調整したコア用石英ガラス棒を用いた。この出発コア部材1を石英ガラス製のダミー棒2に溶接し、これを密閉型反応炉3の中に設けられたコア部材回転用モータ4に取り付け40rpmで回転させた。
【0012】
酸水素火炎バーナー5は、従来使用しているバーナーよりも大径大型の物を複数本取り付け、図示を省略した原料供給装置より酸素ガス80cm3/min、水素ガス160cm3/min、キャリアガスとしての酸素ガス10cm3/minに同伴して原料ガスSiCl440g/minを供給した。
このバーナー5をトラバース用モータ6により150mm/minの速度で1600mmの範囲で往復運動させ、SiCl4の火炎加水分解で生じたガラス微粒子を出発コア部材1に堆積させた。堆積が進むにつれてさらに原料ガス量を増量し、24時間後に外径が230mmφのスート体を得た。さらに、堆積終了直前には、バーナーに原料供給装置より、酸素ガス240cm3/min、水素ガス480cm3/min、キャリアガスとしての酸素ガス250cm3/minに同伴して原料ガスSiCl4125cm3/minを供給した。
【0013】
この平均堆積速度30g/minの高速で堆積されたスート体7の表面には、螺旋状に凹凸を生じているのが認められた。さらにスート体7を焼結炉に入れ、脱水・焼結ガラス化して透明な母材インゴットを得たが、焼結ガラス化後においても表面に螺旋状の凹凸が残っていた。凹凸の深さは最大で1.35mmあり、この状態でプリフォーム化し、さらに紡糸して光ファイバとすると、光ファイバの光学特性の一つである、光ファイバの融着接続時に偏芯による大きな接続ロスを生じる。
【0014】
次ぎに、第1研削工程として、焼結ガラス化した母材インゴットの両端部に、コア部の真円と合致する回転軸中心を持った円錐状の加工を施し、さらに、形成した円錐部に、コア部の円周方向への傾き角度すなわち円周方位が確認できるよう基準方位面(オリエンテーションフラット)を研削して設けた。このように両端部に平滑な円錐部を加工して設けた後、円柱研削機に取り付け加工する。
【0015】
具体的には図2に示すように,母材インゴット21をテーパー研削機22のチャック23に取り付け、チャック支持部24で固定した。次に、母材インゴット21を回転させながら、図示を省略した光学計測器(偏光ガラスを用いた光学測定器)にてコア位置の測定を行い、コアの中心位置をチャック23を移動させてチャック支持部24の回転中心に調整して合わせ、母材インゴット21のセッティングを行った。母材インゴット端部のテーパー部8の研削には荒さ#600番のダイヤモンドホイール25を使用し、コアの中心軸線に対して10度の角度で円錐状に研削した。これを母材インゴット21の両端について行った。さらに、図3に示すように、一方のテーパー部8に円周方向の原点(円周方向への傾き角度を検出するための基準方位面)とするオリエンテーションフラット26を研削して設けた。
【0016】
さらに、第2研削工程では、母材インゴット21の直胴部の周面を平滑に研削して表面の凹凸を除去する。先ず、両端を円錐状に研削加工した母材インゴット21を図4に示す円柱研削機27のチャック28に取り付け、チャック支持部29に固定した。一方のチャック28には、母材インゴット21をオリエンテーションフラット26で固定するように加工がなされている。次ぎに、母材インゴット21を回転して、図示を省略した光学計測器にてコア部の偏芯を母材インゴット21の長手方向にわたって測定し、オリエンテーションフラット26を基準とした回転角度・偏芯量、および長手方向における位置を制御機器に記憶させる。なお、図2,4において、研削機に支持されたダイヤモンドホイールの支持機構は図示を省略した。
【0017】
これらのデータにもとづき、円柱研削機27にダイヤモンドホイール31,32,33を下記のように取り付けて回転させ、母材インゴット21の送り速度50mm/minで研削部を水冷しながら1回研削した。この研削で母材インゴット21の表面は平滑に仕上がり、コア部も明確に計測できる状態になった。
なお、各ダイヤモンドホイール31,32,33の荒さは、それぞれ順に#60番、#140番、#600番であり、各ホイールは研削深さが、ホイール31は0.75mm、ホイール32はホイール31の切削面よりさらに0.3mm深く、ホイール33はホイール32の切削面よりさらに0.05mm深くなる位置にセットした(図5,6参照)。
【0018】
次ぎに、母材インゴット21を回転させながら光学計測器で、コア・クラッドの径比率とコアの偏芯量を測定した。この測定結果にもとづき、コアの回転中心の微調整をチャックで行うとともに、さらにコア・クラッドの径比率を調整するために、#600番のホイール33のみを用いて、研削深さ0.05mm、母材インゴットの送り速度50mm/minで仕上げ研削を1回行い、母材インゴットの直胴部周面の研削を終了した。直胴部の研削工程におよそ120分の時間を要したが、母材インゴットの表面は極めて平滑となり、堆積速度の遅い従来の製造方法で製作した物となんら遜色なく、製造時間を、表面凹凸を除去するための円柱研削を含めても従来の約1/2に短縮することができた。
【0019】
研削加工した母材インゴットを電気炉にて45mmφに延伸して光ファイバプリフォームとし、さらに、これを線引き機で紡糸して外径125μmの光ファイバを得た。この光ファイバの光学特性を測定したところ、表1に示すように、コアの偏芯率、接続損失ともに極めて小さく、良好な結果が得られた。
【0020】
(比較例1)
実施例1と同様にして合成したスート体を焼結炉に入れ、脱水・焼結ガラス化して透明な母材インゴットを得た。この母材インゴットの表面には螺旋状に凹凸が残っていた。凹凸の深さは最大で1.20mmであった。
従来方法で円柱研削機に母材インゴットをセットし、荒さ#60番のダイヤモンドホイールを使用し、研削深さ0.5mm、母材インゴットの送り速度70mm/minで研削部を水冷しながら3回研削し、さらに#600番のダイヤモンドホイールを使用して深さ0.1mm、母材インゴットの送り速度50mm/minで1回、さらに、研削深さ0.05mm、母材インゴットの送り速度50mm/minで仕上げ研削を1回行い、母材インゴット直胴部の研削を終了した。
【0021】
製造した母材インゴットを電気炉にて直径45mmφに延伸して光ファイバプリフォームとした。このプリフォームを線引き機で紡糸して外径125μmの光ファイバを得た。この光ファイバの光学特性を測定したところ、コアの偏芯率にバラつきが見られる結果となった。この原因は、母材インゴット両端部のテーパー部の形状が不均一なため円柱研削機に取り付ける際、チャック部での馴染みが悪く、研削加工時の震動等による取り付け位置のズレに起因することが判明した。
実施例、比較例で得られた光ファイバの光学特性の測定結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0004148619
【0023】
【発明の効果】
上記したように本発明によれば、スート体の表面に凹凸が発生するような条件で高速合成を行い製造した母材インゴットでも、両端のテーパー部を円錐状に研削し、この円錐部にオリエンテーションフラットの加工を施したことによって、母材インゴット直胴部の外周面研削時の位置ズレは防止され、さらに、オリエンテーションフラットで円周方向の原点位置を決め、円周方向の削り込み深さを調節することで、焼結ガラス化時に生じたコア部の微妙な曲りも修正され、コアの偏芯率は小さく向上し、従来の方法で製造したものと同様な光学特性を得ることができた。
この母材インゴットを所望の径に延伸してプリフォームとし、紡糸して得られる光ファイバは、コアの偏芯率、接続損失ともに極めて小さく、良好な光学特性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 光ファイバ用スート体製造装置の概略を示す正面図である。
【図2】 テーパー部研削機で、母材インゴットの端部を円錐状に加工する様子を示す概略正面図である。
【図3】 テーパー部に設けられたオリエンテーションフラットを示す概略平面図である。
【図4】 円柱研削機を用いて、母材インゴット直胴部の周面を平滑に研削する様子を示す概略正面図である。
【図5】 母材インゴット直胴部の周面を平滑に研削する様子を示す概略側面図である。
【図6】 母材インゴット直胴部の周面を平滑に研削する様子を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1.出発コア部材
2.ダミー棒
3.密閉型反応炉
4.コア部材回転用モータ
5.酸水素火炎バーナー
6.トラバース用モータ
7.スート体
8.テーパー部
9.バーナーガイド機構
10.排気フード
21.母材インゴット
22.テーパー研削機
23,28.チャック
24,29.チャック支持部
25,31,32,33.ダイヤモンドホイール
26.オリエンテーションフラット
27.円柱研削機

Claims (5)

  1. 火炎加水分解反応により生成したガラス微粒子を出発コア部材上に堆積させてクラッド部を形成し、焼結ガラス化した後、得られた母材インゴットの表面に生じた凹凸を研削して除去するに際し、該母材インゴットの両端部近傍の外周面を平滑に加工して研削機に取り付け、加工時の位置ずれを防止することを特徴とする光ファイバ用母材インゴットの製造方法。
  2. 前記母材インゴットの両端部近傍の外周面を平滑に加工する際、コア部の位置を検出し、該コア部が回転軸中心となるように研削機に取り付け、該回転軸中心に沿って該母材インゴットの外周面を研削する請求項1に記載の光ファイバ用母材インゴットの製造方法。
  3. 前記母材インゴットの両端部近傍の外周面を平滑に加工する際、該母材インゴットの長さ中心に向かって広がる円錐形状に加工する請求項1に記載の光ファイバ用母材インゴットの製造方法。
  4. 前記円錐形状に加工された円錐部に、円周方向への傾き角度を検出するための基準方位面(オリエンテーションフラット)を研削して設ける請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバ用母材インゴットの製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法により製造されてなることを特徴とする光ファイバ用母材インゴット。
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