JP4147727B2 - 超極低炭素鋼の溶製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
この発明は、C含有量が極めて低い極低炭素鋼の溶製方法、特にRH真空脱ガス槽を用いた二次精錬によりC含有量35ppm以下の超極低炭素鋼の溶製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素(C)含有量の極めて低い鋼を溶製するためには、従来からRH脱ガス処理設備などを用いて減圧下で溶鋼を脱炭処理することが行われてきた。このような真空脱炭により炭素量が質量比で50ppm程度までの極低炭素鋼を溶製することが可能になっている。
【0003】
このような真空脱炭処理を行うに当たってはRH脱ガス槽の炉壁耐火物が重要であることがよく知られており、例えば、特開平9-104915号公報には、1400℃の大気雰囲気中に4時間暴露した後の酸化脱炭層の厚さが5mm以下のマグネシアカーボンれんがを一部あるいは全部に内張りしたRH槽の耐火物内張り、あるいは、れんがの一面以上を金属板あるいは金属箔で覆ったマグネシア−カーボンれんがを一部あるいは全部に内張りしたRH槽の耐火物内張りが提案されている。
【0004】
また、特開平9-41031号公報には、80〜98.5wt%のMgOと、0.3〜5wt%のCaB6と、1〜10wt%の炭素原料とを含有し、この炭素原料中には1〜8wt%の膨張黒鉛を含有され、残部が不純物からなる耐火れんが(マグネシア−カーボンれんが)を内張りとして用いる真空脱ガス容器が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特開平9-104915号公報に提案されている方法では、槽寿命の延長効果は認められるものの、質量比でCをほぼ15%含有するマグネシアカーボンれんがを使用しているため、真空脱ガス処理容器により真空脱炭する際に加炭が生じ、脱炭限度がほぼ50ppmにあり、C含有量35ppm以下の超極低炭素鋼の製造は困難である。特開平9-41031号公報に開示されている真空脱ガス容器、特にC含有量の低いマグネシアカーボンれんがを内張りした真空脱ガス容器を用いれば、よりC含有量の低い超極低炭素鋼を製造できる可能性があるが、本発明者等の経験によれば安定して、炭素量を質量比で35ppm以下とすることはできず、ましてやC含有量を15ppm以下とすることはできない。
【0006】
本発明はかかる課題を解決することを目的とし、安定して、C含有量35ppm以下、さらには15ppm以下の超極低炭素鋼を溶製することができる方法を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、RH脱ガス処理設備によって極低炭素鋼を溶製するに当たって生ずる種々の問題、特に溶鋼のC含有量が50ppmより低くなったときに生ずる脱炭進行停止の原因について調査し、RH脱ガス槽の休止期間が長くなると、内張り耐火物中のCが溶鋼中に溶出しやすくなることを見出して本発明を完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明の超極低炭素鋼の溶製方法は、転炉で溶製され、Cを0.04〜0.06%含有する溶鋼をRH脱ガス処理設備によって真空脱炭して極低炭素鋼を溶製するに当たり、
RH脱ガス槽の内張り耐火材を質量比でC含有量7%以下のマグネシア−カーボンれんがとするとともに、該脱ガス槽の休止期間を40min 以下として前記マグネシア−カーボンれんがの損耗速度をヒート1回当たり0.2mm以下として操業し、これによりキルド処理後のC含有量、すなわち脱炭限度を35ppm以下とするものであり、その際、C含有量3%以下のマグネシア−カーボンれんがを使用することによりキルド処理後のC含有量(脱炭限度)を15ppm以下とすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて具体的に説明する。本発明に供される溶鋼は、転炉で溶製された溶鋼であり、そのC含有量は0.04〜0.06%とする。溶鋼は未脱酸のままで、すなわちOを500ppm程度含有した状態でRH脱ガス処理設備による真空処理に供される。これにより、いわゆるリムド処理により〔C〕+〔O〕=CO反応が進む。
【0010】
本発明では、上記RH脱ガス処理設備により真空脱炭を行うに当たり、RH脱ガス槽の操業休止期間を40min以下にする。RH脱ガス槽の操業休止期間とは、RH脱ガス操業が完了し、RH脱ガス槽の環流環が取鍋から引き上げられた時から次の処理溶鋼の満たされた取鍋中にRH脱ガス槽の環流環が浸漬されるまでの時間をいう。
【0011】
図1は、RH脱ガス槽下部(スラグライン以下の部分をいう、以下単に脱ガス槽下部という)にC含有量5%のマグネシア−カーボンれんがを内張りしたRH脱ガス槽を用いて、真空脱炭処理を行ったときの平均休止期間とRH脱ガス槽下部の耐火物損耗速度(ヒート1回当たりの耐火物の損耗寸法、mm)を調査した結果である。調査に用いた操業条件は、次のとおりである。
ヒートサイズ:290t
処理前溶鋼C量:0.05〜0.055%
溶鋼温度(処理開始時):1600〜1605℃
処理時間:リムド処理10min,キルド処理10min 合計20min
到達真空度:0.5Torr
【0012】
なお、本発明で用いるマグネシア−カーボンれんがとは、マグネシアと炭素含有物質を混合して得られる耐火物であり、結合材としてフェノール樹脂、ピッチ等を含み、炭素の酸化防止剤としてAl、Si等の金属元素を含む場合もある。そのC含有量とは、原料として用いるマグネシアと黒鉛の混合比を質量比で現したもの、すなわち、
(原料黒鉛の質量)/(原料マグネシアの質量+原料黒鉛の質量)
をいう。したがって、結合材に含まれるCは計算から除外される。
【0013】
図1から明らかなように、真空脱ガス槽の操業休止時間が40minを越えると急にマグネシア−カーボンれんがの損耗速度が大きくなる。この損耗速度の上昇に伴い、真空脱炭処理時の脱炭限度が次第に高くなる。図2は上記の操業条件で得られた結果を、マグネシア−カーボンれんがの損耗速度と脱炭限度、すなわちキルド処理後の溶鋼中C含有量、との関係で整理したものであるが、マグネシア−カーボンれんがの損耗速度が0.2mmを越えると、脱炭限度が35ppmを越えるようになる。
【0014】
このように、操業休止時間を短くすることによって耐火物であるマグネシア−カーボンれんがの損耗速度が小さくなる原因は定かではないが、本発明者の考察によれば、操業休止期間中に起こる温度低下が少なくなり、そのため耐火物の熱スポーリング等が軽減されるためであると考えられる。これら図1および図2に示す関係から、真空脱ガス槽の操業休止時間を40min以下として操業すれば、マグネシア−カーボンれんがのC含有量が5%の条件においては、溶鋼の脱炭限度を十分低くすることができる。しかし、超極低炭素鋼を安定して製造するためにはそれだけでは十分ではない。
【0015】
図3は、先に示した操業条件と同様の条件を用い、マグネシア−カーボンれんがのC含有量を変化させたときの脱炭限度とマグネシア−カーボンれんがのC含有量との関係を示すグラフである。ここに示すように、マグネシア−カーボンれんがのC含有量が7%を下回ると急激に脱炭限度が下がって35ppm以下となり、マグネシア−カーボンれんがのC含有量が3%以下となると脱炭限度が15ppm以下となる。
【0016】
このような操業結果の解析に基づき、本発明では、、RH脱ガス設備を用いて極低炭素鋼を溶製にするに際して、脱ガス槽用の内張り耐火物を質量比でC含有量7%以下のマグネシア−カーボンれんがとするとともに、脱ガス槽の休止期間を40min以下とすることとした。なお、特にC含有量3%以下のマグネシア−カーボンれんがを使用することを好適とする。
【0017】
【発明の効果】
本発明により、C含有量が35ppm以下、さらには15ppmと極めて低い超極低炭素鋼を、安定して製造することができるようになった。また、本発明により真空脱ガス槽の内張り耐火物(マグネシア−カーボンれんが)の損耗量(損耗速度)が著しく減少し、耐火物原単位が小さくなり、操業コストを低くすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 RH脱ガス処理を行ったときの平均休止期間とRH脱ガス槽のスラグライン近傍の耐火物損耗速度の関係図である。
【図2】 耐火物の損耗速度と脱炭限度との関係を示すグラフである。
【図3】 脱炭限度と耐火物中のC含有量との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 転炉で溶製され、Cを0.04〜0.06%含有する溶鋼をRH脱ガス処理設備によって真空脱炭して極低炭素鋼を溶製するに当たり、
RH脱ガス槽の内張り耐火材を質量比でC含有量7%以下のマグネシア−カーボンれんがとするとともに、該脱ガス槽の休止期間を40min以下として前記マグネシア−カーボンれんがの損耗速度をヒート1回当たり0.2mm以下として操業し、脱炭限度をC含有量35ppm以下とすることを特徴とする超極低炭素鋼の溶製方法。 - C含有量3%以下のマグネシア−カーボンれんがを使用し、脱炭限度をC含有量15ppm以下とすることを特徴とする請求項1記載の超極低炭素鋼の溶製方法。
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