JP4142273B2 - 異常陰影候補検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は異常陰影候補検出装置に関し、特に詳しくは、被写体の放射線画像データに基づいて画像中の異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医療分野においては、被写体の放射線画像を読影して病変部を発見し、またその病変部の状態を観察して、疾病の有無や進行状況の診断を行うことが一般的に行なわれている。しかしながら、放射線画像の読影は読影者の経験や画像読影能力の高低によって左右され、必ずしも客観的なものとはいえなかった。
【0003】
例えば、乳癌の検査を目的として撮影されたマンモグラフィ(乳房を被写体とした診断用放射線画像)においては、その画像から癌化部分の特徴の一つである腫瘤陰影や微小石灰化陰影等の異常陰影を検出することが必要であるが、読影者によっては必ずしも的確にその異常陰影の範囲を指定することができるとは限らない。このため、読影者の技量に依存することなく、腫瘤陰影や微小石灰化陰影を始めとする異常陰影を的確に検出することが求められていた。
【0004】
この要望に応えるものとして、診断用画像として取得された被写体の画像データに基づき、その画像データが表す画像中の異常陰影の候補を計算機を用いて自動的に検出する異常陰影候補検出処理システム(計算機支援画像診断装置)が提案されている(特開平8-294479号、特開平8-287230号等)。この異常陰影候補検出処理システムは、異常陰影の濃度分布の特徴や形態的な特徴に基づいて、異常陰影候補を計算機を用いて自動的に検出するものであり、主として腫瘤陰影を検出するのに適したアイリスフィルタ処理や、主として微小石灰化陰影を検出するのに適したモフォロジーフィルタ処理等を利用して異常陰影の候補領域を検出する。
【0005】
アイリスフィルタ処理は、画像信号の濃度勾配の集中度の最大値を表すアイリスフィルタ出力値と所定の閾値とを比較することにより、画像中における乳癌の特徴的形態の一つである腫瘤陰影の候補領域を検出するのに有効な手法であり、一方、モフォロジーフィルタ処理は、画像信号に対して、検出しようとする微小石灰化陰影よりも大きいサイズの構造要素を用いたモフォロジー演算処理の出力値と所定の閾値とを比較することにより、画像中における乳癌の特徴的形態の一つである微小石灰化陰影の候補領域を検出するのに有効な手法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、異常陰影候補検出処理システムにおいて使用される被写体の画像データは、通常、病院等の施設に備えられた放射線撮影装置によって撮影され取得される。この際、人体への影響や診断用画像として要求される画質などを考慮して、撮影の都度、適切な放射線量や管電圧等が決定されて撮影が行われる。また、特に被写体が乳房である場合には、撮影時に被写体を圧迫して撮影するが、その圧迫の程度は患者個人差や撮影担当者、撮影装置等の要因に影響されて変動しやすい。その結果、得られる画像データの画質は一定ではなく、例えば、同じ被写体を異なる撮影条件下で2回撮影した場合に、実際に被写体に存在している異常陰影が一方の画像中に表れ、他方の画像中に表れないこともあり得る。
【0007】
一方、異常陰影候補検出処理システムは、診断用画像として取得された被写体の画像データに基づいて、その画像データが表す画像中の異常陰影候補を計算機(コンピュータ)を用いて自動的に検出するものであるから、検出処理の元となる画像データの画質がばらついていれば、それが検出結果に影響を及ぼし、画質によって検出結果がばらついたものとなってしまう。すなわち、画像ごとに検出され得る異常陰影のレベルが異なってしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、異常陰影候補の検出処理において、撮影条件の差が検出結果に与える影響を低減し、検出性能を向上させ得る異常陰影候補検出装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による異常陰影候補検出装置は、被写体の放射線画像の撮影に関する情報を入力する撮影情報入力手段と、撮影情報入力手段により入力された撮影に関する情報と放射線画像を表す放射線画像データとに基づいて、放射線画像中の異常陰影の候補を検出する検出手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、撮影に関する情報とは、撮影された画像の画質等に影響を与え得る撮影時の情報であり、例えば、放射線画像を撮影する際の撮影装置のグリッド種、管電圧、放射線の線質を制御するフィルタや放射線の線量、特に乳房の撮影時に被写体を圧迫する圧迫力や圧迫厚(被写体の厚み)等を意味するものであり、他にも種々存在する。
【0011】
撮影装置のグリッド種とは、撮影装置上に設置されるグリッドの種類を意味するものである。ここで、グリッドの種類とは、例えば材料により区分される種類や、本数により区分される種類を意味し、すなわち、撮影された画像のコントラストに影響を与えるような要素により区分される種類を意味するものである。
【0012】
また、検出手段を、撮影に関する情報に基づいて検出処理条件を決定する検出処理条件決定部と、決定された検出処理条件と放射線画像データに基づいて、異常陰影の候補を所定の検出処理により検出する異常陰影候補検出部とにより構成されるものとしてもよい。
【0013】
ここで、検出処理条件とは、検出処理における閾値や形状依存性フィルタのフィルタ特性等を意味するものである。また、この他にも、所定の検出処理において検出する異常陰影のレベルを調節し得るパラメータであれば種々適用することができる。
【0014】
また、形状依存性フィルタとは、微小石灰化陰影のサイズや濃度勾配等の幾何学的情報に応じて形成されたマッチドフィルタであり、被写体画像に表われる微小石灰化陰影の特性にあわせて、通常、予め異なる特性を有するものが複数用意され、その特性にあった微小石灰化陰影を強調するために利用されるものである。また、予め用意せずに、検出する微小石灰化陰影の特性にあわせてその都度フィルタを作成してもよい。
【0015】
また、所定の検出処理とは、例えばモフォロジーフィルタ処理による微小石灰化陰影の検出処理等を意味するものである。なお、検出処理条件や、その検出処理条件を用いた検出処理としては、他にも検出処理条件の設定レベルによって検出し得る異常陰影のレベルを調節することが可能なものであれば種々利用可能である。
【0016】
また、本発明による異常陰影候補検出装置は、検出手段が、撮影に関する情報に基づいて放射線画像データに対して所定の画像変換処理を施し変換画像データを取得する画像変換部と、取得された変換画像データに基づいて異常陰影の候補を検出する異常陰影候補検出部とにより構成されるものとすることもできる。
【0017】
なお、上記画像変換処理を周波数強調処理としてもよい。
【0018】
また、本発明の異常陰影候補検出装置は、特に放射線画像が乳房の放射線画像である場合、さらには、異常陰影が微小石灰化陰影である場合に効果的である。
【0019】
【発明の効果】
上記のように構成された本発明の異常陰影候補検出装置によれば、被写体画像の撮影情報を入力し、入力した撮影情報に基づいて異常陰影の検出処理を行うから、被写体や撮影装置等の撮影条件の差が検出結果に与える影響を低減することが可能となり、検出性能の向上が期待できる。
【0020】
また、異常陰影候補検出処理システムを病院等の施設に導入する際には、各施設の撮影装置等の撮影環境が異なることから、通常、各施設ごとにシステムのパラメータの調節が行われるが、本発明の異常陰影候補検出装置によれば、安定した検出性能が得られるように画像ごとに検出処理条件を決定するから、システム導入時にパラメータを調節する作業を省略することが可能になると考えられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の異常陰影候補検出装置の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における異常陰影候補検出装置を包含する異常陰影候補検出処理システムの一部を示す構成図である。
【0022】
本実施形態の異常陰影候補検出装置は、被写体(乳房)を撮影する撮影手段10から撮影情報を入力する撮影情報入力手段20と、撮影情報入力手段20から撮影情報を入力して検出処理条件を決定する検出処理条件決定部30と、検出処理条件決定部30から検出処理条件を入力し、撮影手段10から被写体を撮影した画像を表す原画像データPを入力し、入力した検出処理条件および原画像データPに基づいて画像中の異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出部40とを備える。また、上記検出処理条件決定部30と異常陰影候補検出部40とにより、検出手段60が構成される。
【0023】
撮影手段10は、被写体の撮影時に撮影に関する種々の情報、例えば、撮影時のグリッド種、管電圧、フィルタ、線量、被写体に対する圧迫力、圧迫厚等を自動的に或いはオペレータの手入力により取得している。
【0024】
また、本実施形態においては、異常陰影として微小石灰化陰影を検出する例を示す。図2(A)は、原画像データPに基づく原画像P′を示した図であり、画像中に微小石灰化陰影Q′が表れている。
【0025】
次に、以上のように構成された本実施形態の異常陰影候補検出装置の作用について説明する。
【0026】
撮影情報入力手段20は、撮影手段10から撮影情報の1つである圧迫力を入力する。なお、撮影情報入力手段20は必要に応じて、他の撮影情報、すなわち、撮影時のグリッド種、管電圧、フィルタ、線量、被写体に対する圧迫厚等を入力することができる。
【0027】
検出処理条件決定部30は、撮影情報入力手段20から上記の圧迫力を入力し、入力した圧迫力の値に基づいて検出処理条件を決定する。
【0028】
圧迫力とは、乳房を放射線撮影する際に圧迫する力であり、通常理想的な画像データを得るためには100N以上の力で圧迫するように推奨されている。しかしながら、現実的には撮影時の状況により推奨量が得られない場合があり、圧迫力が弱いと、図2(B)に示すように微小石灰化陰影Q″が淡い画像、すなわち、コントラストが弱い画像になってしまう可能性が高いと考えられている。このため、圧迫力が100N以下の場合には、圧迫力に応じた石灰化強調フィルタを検出処理条件として用いて検出処理を行う。
【0029】
すなわち、検出処理条件決定部30は、入力した圧迫力の値に応じて、圧迫力が50N以下の場合には、図3(A)に示すような不鮮明な微小石灰化陰影と同等の特性を有する第1の石灰化強調フィルタを検出処理条件として利用することを決定し、圧迫力が50Nより大きく100N未満の場合には、図3(B)に示すような典型的な微小石灰化陰影と同等の特性を有する第2の石灰化強調フィルタを検出処理条件として利用することを決定し、また、圧迫力が100N以上の場合には、石灰化強調フィルタを利用しないことを決定する。
【0030】
ここで、石灰化強調フィルタとは、微小石灰化陰影の形状および濃度勾配をそのまま表すマッチドフィルタであり、撮影条件等の影響により変動する画像の特性にあわせて最適化された異なる特性を有する複数のフィルタを、処理対象の画像に応じて切り替えて利用できるように、予め複数用意されたものである。図3に示した石灰化強調フィルタは、主走査および副走査の各画素位置と、その画素位置における「最高濃度値/微小石灰化陰影の濃度値」で求められる濃度比との関係を示している。同図(A)に示す第1の石灰化強調フィルタは、不鮮明な微小石灰化陰影の形状等の特性を模式化したものであり、微小石灰化陰影の中心の濃度比が比較的小さく(図では略0.2)裾野が広がった(図では略5×5画素分)形状をなしている。また、同図(B)に示す第2の石灰化強調フィルタは、典型的な微小石灰化陰影の形状等の特性を模式化したものであり、微小石灰化陰影の中心の濃度比が比較的大きく(図では略0.55)裾野が狭い(図では略2×2画素分)形状をなしている。
【0031】
この石灰化強調フィルタは、原画像と、原画像に対してモフォロジー演算による平滑化処理(オープニング処理またはクロージング処理)を施して得られた画像との差分画像である微細構造画像に対して施すものである。
【0032】
異常陰影候補検出部40は、撮影手段10から原画像データPを入力するとともに、検出処理条件決定部30から決定結果を入力し、その結果の検出処理条件に基づいて異常陰影候補の検出を行う。なお、本実施形態においては、形状依存性フィルタである石灰化強調フィルタを検出処理条件とし、予め定められた所定の閾値を用いたモフォロジーフィルタ処理により微小石灰化陰影を検出する例を示す。以下に、その詳細を説明する。
【0033】
まず、異常陰影候補検出部40は、入力した原画像データPに対して、モフォロジー演算処理を施して、微細構造画像を取得する。
【0034】
(モフォロジーの基本演算)
モフォロジー演算処理は一般的にはN次元空間における集合論として展開されるが、直感的な理解のために2次元の濃淡画像を対象として説明する。
【0035】
濃淡画像を座標(x,y)の点が濃度値f(x,y)に相当する高さをもつ空間とみなす。ここで、濃度値f(x,y)は、濃度が低い(CRTに表示した場合には輝度が高い)ほど大きな画像信号となる高輝度高信号レベルの信号とする。
【0036】
まず、簡単のために、その断面に相当する1次元の関数f(x)を考える。モフォロジー演算処理に用いる構造要素gは次式(1)に示すように、原点について対称な対称関数
【数1】
であり、定義域内で値が0で、その定義域が下記式(2)であるとする。
【0037】
【数2】
このとき、モフォロジー演算の基本形は式(3)〜(6)に示すように、非常に簡単な演算となる。
【0038】
【数3】
すなわち、ダイレーション(dilation)処理は、注目画素を中心とした、±m(構造要素Bに応じて決定される値)の幅の中の最大値を検索する処理であり(図4(A)参照)、一方、イロージョン(erosion )処理は、注目画素を中心とした、±mの幅の中の最小値を検索する処理である(同図(B)参照)。また、オープニング(opening )処理は最小値探索の後に、最大値を探索することに相当し、クロージング(closing )処理は最大値探索の後に、最小値を探索することに相当する。オープニング処理は低輝度側から濃度曲線f(x)を滑らかにし、マスクサイズ2mより空間的に狭い範囲で変動する凸状の濃度変動部分(周囲部分よりも輝度が高い部分)を取り除くことに相当する(同図(C)参照)。一方、クロージング処理は、高輝度側から濃度曲線f(x)を滑らかにし、マスクサイズ2mより空間的に狭い範囲で変動す凹状の濃度変動部分(周囲部分よりも輝度が低い部分)を取り除くことに相当する(同図(D)参照)。
【0039】
ここで、濃度の高いもの程大きな値となる高濃度高信号レベルの信号の場合においては、濃度値f(x)の画像信号値が高輝度高信号レベルの場合に対して大小関係が逆転するため、高濃度高信号レベルの信号におけるダイレーション処理は、高輝度高信号レベルにおけるイロージョン処理(図4(B))と一致し、高濃度高信号レベルの信号におけるイロージョン処理は、高輝度高信号レベルにおけるダイレーション処理(同図(A))と一致し、高濃度高信号レベルの信号におけるオープニング処理は、高輝度高信号レベルにおけるクロージング処理(同図(D))と一致し、高濃度高信号レベルの信号におけるクロージング処理は、高輝度高信号レベルにおけるオープニング処理(同図(C))と一致する。なお、ここでは高輝度高信号レベルの画像信号(輝度値)の場合について説明する。
【0040】
(石灰化陰影検出への応用)
石灰化陰影の検出には、原画像から平滑化した画像を引き去る差分法が考えられる。単純な平滑化法では石灰化陰影と細長い形状の非石灰化陰影(乳腺や血管や乳腺支持組織等)の識別が困難であるため、多重構造要素を用いたオープニング演算に基づく下記式(7)で表されるモフォロジー演算処理が提案されている(「多重構造要素を用いたモルフォロジーフィルタによる微小石灰化像の抽出」電子情報通信学会論文誌 D-II Vol.J75-D-II No.7 P1170 〜1176 1992年7月、「モルフォロジーの基礎とそのマンモグラム処理への応用」MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.12 No.1 January 1994 )。
【0041】
【数4】
ここでBi (i=1,2,3,4)は図5に示す直線状の4つの構造要素Bである。構造要素Bを検出対象の石灰化陰影よりも大きく設定すれば、オープニング処理で、構造要素Bよりも細かな凸状の信号変化部分(空間的に狭い範囲で変動する画像部分)である石灰化像は取り除かれる。一方、細長い形状の非石灰化陰影はその長さが構造要素Bよりも長く、その傾き(延びる方向)が4つの構造要素Bi のうちいずれかに一致すればオープニング処理(式(7)の第2項の演算)をしてもそのまま残る。したがってオープニング処理によって得られた平滑化画像(石灰化陰影が取り除かれた画像)を原画像fから引き去ることで、小さな石灰化像の候補のみが含まれる画像が得られる。これが式(7)の考え方である。
【0042】
なお前述したように、高濃度高信号レベルの信号の場合においては、石灰化陰影は周囲の画像部分よりも濃度値が低くなり、石灰化陰影は周囲部分に対して凹状の信号変化部分となるため、オープニング処理に代えてクロージング処理を適用し、式(7)に代えて式(8)を適用する。
【0043】
【数5】
この上記式(7)または(8)によって得られた画像、すなわち、原画像と石灰化陰影を取り除いた平滑化画像との差分画像が微細構造画像である(図6(B)参照)。
【0044】
次に、異常陰影候補検出部40は、検出処理条件決定部30による決定に従って、決定された石灰化強調フィルタを微細構造画像に対して施すことにより、微細構造画像上のこのフィルタと同等の特性を有する微小石灰化陰影を特異的に強調する(図6(C)参照)。なお、石灰化強調フィルタを利用しないことが決定された場合には、石灰化強調フィルタによる強調処理は行われない。
【0045】
さらに、異常陰影候補検出部40は、ここで得られた画像に対して、従来と同様の閾値処理を施して微小石灰化陰影の検出を行う。
【0046】
すなわち、次式(9)のモフォロジー演算に基づく微分情報を利用して式(7)のPに含まれる非石灰化像をさらに除去する。
【0047】
【数6】
ここで、Mgradの値が大きいほど石灰化陰影の可能性が大きいので、石灰化候補画像Cs は下記式(10)により求めることができる。
【0048】
【数7】
ここで、T1,T2は実験的に決められる、予め設定された閾値である。
【0049】
ただし、石灰化陰影の大きさとは異なる非石灰化陰影については、式(7)のPと所定の閾値T1との比較のみで除去できるため、石灰化陰影と同等の大きさをもつ非石灰化陰影が残ることのないような場合は、式(10)の第1項の条件(P(i,j)≧T1)を満たすだけでよい。
【0050】
最後に、式(11)に示す、マルチスケールのオープニング演算とクロージング演算との組合わせにより、石灰化陰影のクラスターCc を検出する。
【0051】
【数8】
ここで、λ1とλ2はそれぞれ融合したい石灰化陰影の最大距離と除去したい孤立陰影の最大半径とによって決められ、λ3=λ1+λ2である。
【0052】
なお、これらのモフォロジー演算処理に関する説明は上述したように、高輝度高信号レベルの画像データの場合についてであるが、高濃度高信号レベルの画像データ(高濃度の画素ほど大きなデジタル値を持つ画像データ)の場合については、オープニング演算とクロージング演算とが逆の関係になる。
【0053】
なお、上記の実施形態においては、検出処理条件として石灰化強調フィルタを利用した例を示したが、上記の閾値T1,T2を検出処理条件とし、入力した撮影情報の値に応じて閾値T1,T2を調整してもよい。
【0054】
また、上記の実施形態においては、撮影情報として圧迫力を利用した例を示したが、この他にも上述したような種々の撮影情報に基づいて検出処理条件を決定し、各画像に適した検出処理を行うことができる。
【0055】
例えば、圧迫厚とは、撮影時に被写体(乳房)を圧迫した際の被写体の厚みを意味するものであるが、圧迫力と同様に、厚い場合は石灰化陰影が淡い画像となってしまうことがあるため、厚みに応じて石灰化強調フィルタを切り替えて利用する。
【0056】
また、線量とは、撮影時に照射する放射線量であり、線量が低い場合はノイズが多く石灰化陰影との分離性が悪いため、例えば、石灰化検出処理における閾値を高く設定してノイズを検出し過ぎないようにする。すなわち、上記の実施形態の検出処理において、石灰化強調フィルタによる強調処理を行わず、閾値T1、T2を高く設定する。
【0057】
また、フィルタとは、放射線の線質をコントロールするために利用するアルミやモリブデン等の材質の板を意味するものであるが、モリブデン以外のフィルタを利用した場合には画像のコントラストが落ちている場合があるので、不鮮明な微小石灰化陰影と同等の特性を有する第1の石灰化強調フィルタを利用して検出処理を行う。
【0058】
管電圧の場合は、例えば30kVより高いとコントラストが落ちている場合があるので、同様に不鮮明な微小石灰化陰影と同等の特性を有する第1の石灰化強調フィルタを利用して検出処理を行う。
【0059】
また、グリッド種とは、撮影装置上に設置されるグリッドの種類を意味するものであるが、鉛とアルミを材料とした一般的なグリッドを用いた場合に比べ、空気とタンタルを材料としたHTCグリッドを用いたときには画像のコントラストが非常に高くなる傾向がある。そこで、一般的なグリッドを利用したときには、石灰化検出処理における閾値として、実験的に決められる、予め設定された基本閾値T1,T2を利用し、HTCグリッドを利用したときには、基本閾値T1,T2に例えば0.50加算したものを石灰化検出処理における閾値として利用する。すなわち、HTCグリッドを利用したときには、石灰化検出処理における閾値を高くする。なお、この0.50という値は、10bitの画像を基準にして実験的に定めたものであり、この値に限定されるものではない。
【0060】
なお、検出処理条件を調整することが望ましいグリッド種はこのHTCグリッドに限られるものではない。特に、材料に空気を用いたグリッドを利用した場合と、空気を用いていない(空気の代わりに、放射線を吸収する空気以外の材料を用いている)グリッドを利用した場合では、異常陰影の検出レベルが大きく異なることがあるため、材料に空気を利用したグリッドを用いて撮影された画像を検出処理対象とする場合には検出処理条件を調整することが望ましい。
【0061】
なお、これら以外にも、異常陰影の検出結果に影響を与える種々の撮影情報に基づいて、検出処理条件を設定することが可能である。また、各撮影情報に基づいて決定される閾値や石灰化強調フィルタのフィルタ特性などは上記の組合せに限るものではなく、各撮影情報の特徴や被写体画像の画質にあわせて利用する検出処理条件を設定することが可能である。
【0062】
次に、本発明の具体的な第2の実施の形態について説明する。図7は、本実施形態における異常陰影候補検出装置を包含する異常陰影候補検出処理システムの一部を示すブロック図である。なお、第1の実施の形態と同等の要素についての説明は、特に必要のない限り省略する。
【0063】
本実施形態の異常陰影候補検出装置は、被写体(乳房)を撮影する撮影手段10から撮影情報を入力する撮影情報入力手段20と、撮影情報入力手段20から撮影情報を入力し、撮影手段10から原画像データPを入力し、入力した撮影情報に基づいて原画像データPを変換画像データP′に変換する画像変換部50と、画像変換部50から変換画像データP′を入力し、変換画像データP′に基づいて画像中の異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出部40とを備える。また、上記画像変換部50と異常陰影候補検出部40とにより、検出手段60が構成される。
【0064】
次に、以上のように構成された本実施形態の異常陰影候補検出装置の作用について説明する。
【0065】
画像変換部50は、撮影情報入力手段20に入力された撮影情報を入力し、撮影手段10から原画像データPを入力し、入力した撮影情報に基づく所定の画像変換処理により原画像データPを変換画像データP′に変換する。例えば、圧迫力が所定の値より低い場合には、原画像データに対して高周波の強調処理を施して変換画像データP′を取得する。なお、他の撮影情報についても、その特徴にあわせた所定の画像変換処理を原画像データPに対して施し、変換画像データP′を取得することも可能である。
【0066】
異常陰影候補検出部40は、画像変換部50から変換画像データP′を入力し、変換画像データP′に基づいて、従来と同様の処理により微小石灰化陰影候補の検出を行う。すなわち、変換画像データP′に対して、第1の実施の形態と同様にモフォロジー演算による平滑化処理を施して微細構造画像を取得し、第1の実施の形態における石灰化強調フィルタによる強調処理は行わず、その微細構造画像から非石灰化像をさらに除去し、予め設定された閾値T1,T2を用いて微小石灰化陰影候補を検出する。
【0067】
なお、上記各実施形態においては、モフォロジーフィルタ処理により微小石灰化陰影を検出する例を示したが、本発明の異常陰影候補検出装置が採用し得る検出処理や検出対象の異常陰影はこれらに限るものではなく、閾値等の検出処理条件を用いて画像中の異常陰影の候補を検出するものであれば種々採用可能である。例えば、画像中の腫瘤陰影を検出する際のアイリスフィルタ処理における閾値を検出処理条件とすることもできる。
【0068】
また、撮影情報入力手段20が撮影情報を入力する形態は、上記のように撮影手段10から入力する形態に限るものではなく、例えば、オペレータの手入力により、直接、撮影情報入力手段20が各撮影情報を入力してもよい。
【0069】
なお、本発明はマンモグラフィCAD に限られるものではなく、胸部CAD 等、様々な被写体に対して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による異常陰影候補検出装置を包含する異常陰影候補検出処理システムの一部を示す構成図
【図2】(A)微小石灰化陰影Q′を含む乳房の放射線画像P′を示す図、(B)淡い微小石灰化陰影Q″を含む乳房の放射線画像を示す図
【図3】石灰化強調フィルタを示す図
【図4】モフォロジーフィルタの基本作用を示す図
【図5】直線状の4つの構造要素Bを示す図
【図6】(A)原画像、(B)微細構造画像、(C)石灰化強調フィルタ処理済画像、の各画像の信号値を示す図
【図7】本発明の別の実施形態による異常陰影候補検出装置を包含する異常陰影候補検出処理システムの一部を示す構成図
【符号の説明】
10 撮影手段
20 撮影情報入力手段
30 検出処理条件決定部
40 異常陰影候補検出部
50 画像変換部
60 検出手段
Claims (7)
- 被写体の乳房の放射線画像の撮影に関する情報を入力する撮影情報入力手段と、
該撮影情報入力手段により入力された前記撮影に関する情報と前記放射線画像を表す放射線画像データとに基づいて、前記放射線画像中の微小石灰化陰影の候補をモフォロジー演算により検出する検出手段とを備え、
前記検出手段が、前記撮影に関する情報に基づいて決定された乳房の放射線画像に表れる微小石灰化陰影の形状および濃度値勾配を表す形状依存性フィルタを用いて、前記放射線画像中の微小石灰化陰影を強調し、該微小石灰化陰影を強調した放射線画像より前記微小石灰化陰影の候補を検出するものであることを特徴とする異常陰影候補検出装置。 - 前記撮影に関する情報が、前記被写体の乳房を撮影する際に該被写体の乳房を圧迫した圧迫力を表し、
前記検出手段が、前記圧迫力が所定の圧迫力以下の場合にのみ、前記形状依存性フィルタを用いて前記微小石灰化陰影を強調するものであることを特徴とする請求項1記載の異常陰影候補検出装置。 - 前記形状依存性フィルタを予め複数用意して、前記圧迫力が所定の圧迫力以下の場合、前記圧迫力に応じて前記形状依存性フィルタを切り替えることを特徴とする請求項2記載の異常陰影候補検出装置。
- 前記撮影に関する情報が、前記被写体の乳房を撮影する際に撮影装置で用いられた放射線の線質を制御するフィルタを表し、
前記検出手段が、前記撮影に関する情報がモリブデン以外のフィルタを表す場合にのみ、前記形状依存性フィルタを用いて前記微小石灰化陰影を強調するものであることを特徴とする請求項1記載の異常陰影候補検出装置。 - 前記撮影に関する情報が、前記被写体の乳房を撮影した撮影装置の管電圧を表し、
前記検出手段が、前記撮影に関する情報が前記撮影装置が30k V より高い管電圧で撮影したことを表す場合にのみ、前記形状依存性フィルタを用いて前記微小石灰化陰影を強調するものであることを特徴とする請求項1記載の異常陰影候補検出装置。 - 被写体の乳房の放射線画像の撮影に関する情報を入力する撮影情報入力手段と、
該撮影情報入力手段により入力された前記撮影に関する情報と前記放射線画像を表す放射線画像データとに基づいて、前記放射線画像中の微小石灰化陰影の候補をモフォロジー演算により所定の閾値を用いて検出する検出手段とを備え、
前記撮影に関する情報が、前記放射線画像を撮影する際に用いられたグリッドのグリッド種を表し、
前記検出手段が、前記グリッド種に基づいて前記閾値を決定して、該閾値に応じて前記微小石灰化陰影の候補を検出するものであることを特徴とする異常陰影候補検出装置。 - 被写体の乳房の放射線画像の撮影に関する情報を入力する撮影情報入力手段と、
該撮影情報入力手段により入力された前記撮影に関する情報と前記放射線画像を表す放射線画像データとに基づいて、前記放射線画像中の微小石灰化陰影の候補をモフォロジー演算により検出する検出手段とを備え、
前記撮影に関する情報が、前記被写体の乳房を撮影する際に該被写体の乳房を圧迫した圧迫力を表し、
前記検出手段が、前記被写体の乳房を撮影する際に該被写体の乳房を圧迫した圧迫力が所定の圧迫力以下の場合にのみ、前記放射線画像に対して高周波数を強調する周波数強調処理を施し、該周波数強調処理を施した画像より前記微小石灰化陰影の候補を検出するも のであることを特徴とする異常陰影候補検出装置。
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