JP4141000B2 - 急性心筋梗塞を検出するための方法と装置および判断マトリックスの作成のための方法 - Google Patents

急性心筋梗塞を検出するための方法と装置および判断マトリックスの作成のための方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に、心電図法の波形データ(以下心電波形データと称する)の監視に使用する方法およびシステムの改良に関するものであり、特に、心電波形データの監視に使用され、急性心筋梗塞(以下AMIと称する)に良く似た基礎心臓状態にある患者(以下擬似AMI患者と呼称する)においてさえ、急性心筋梗塞の存在を検出できる改良された方法およびシステムに関する。更に詳細に述べれば、本発明は、心電波形データの監視に使用され、患者特有のデータセットを作成してこの患者特有のデータセットと統計的判定基準との両者を基に急性心筋梗塞の存在の評価を行うことにより、擬似AMI患者を含む患者において、AMIの存在を検出できる改良された方法およびシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、患者心電波形データに基づき急性心筋梗塞(AMI)を検出する従来技術の方法およびシステムの欠点を矯正するものである。矯正されるべき欠点は、従来技術の方法およびシステムでは患者が標準AMI心電図法検出判断基準に良く似た基礎的心臓状態にあるとき、すなわち擬似AMI患者であると患者の心電波形データに基づきAMIを検出できないという点である。従来技術の方法およびシステムでは、このような患者のAMIを検出しようとしていない。そうではなく、従来技術では患者の心電波形データに標準AMI検出判断基準に良く似た基礎的心臓状態が見られるかについて予め篩にかけ、このような状態が見つかれば、このような患者に対してはAMIの検出を断念していた。
【0003】
従来技術および本発明は共に、心電計といわれる心臓機能を監視する装置から得られるある特定の電気信号(「誘導」と言われている)を利用している。これらある特定の電気信号を利用する方法を理解するために、心電計と参照する電気信号について知ることが重要である。そこで、心電計の理解を助けるため、以下に(1)心臓の電気化学的および機械的動作、(2)心臓の電気化学的動作が、次に心電計により使用されて心臓の機械的動作を図式的に示す電気エネルギに如何に変換されるか、および(3)ある特定の電気信号(または「誘導」)が心電計から如何ににして得られるか、を簡単に説明する。
【0004】
心臓の電気化学的活動(すなわち、活動電位の伝播)が心臓の機械的事象先行して開始される。心臓の電気化学的活動を人間の目に見える形に変換する装置が存在する。それが心電計であって、これは心臓の電気化学的活動の視覚表現を与える。この視覚表現を心電図(EKG)という。
【0005】
EKGを得るために、電極が身体表面に取付けられる。電極は、電極内の電荷担体が電気化学的交換により身体内の電荷担体と交流できるように特に処理されている。電極を身体表面に取付けることにより、身体内部の電圧変化信号を適切に増幅して記録できる。EKGモニタ内のガルヴァノメータが記録装置として使用されている。ガルヴァノメータは、二つの電極間の電位差を記録する。EKGは単に身体表面上の二つの電極間の電圧の差を時間の関数として記録したものであり、普通、ストリップ・チャートに記録される。心臓が休息しているとき(弛緩期)、心臓の細胞が分極し、電荷の移動は生じない。その結果、EKGのガルヴァノメータは振れを記録しない。しかし、心臓が活動電位を伝播し始めると、電極の下で脱分極が生じ、その下部で心臓が未だ脱分極していない身体の領域と電極との電位差を記録するように、ガルヴァノメータが振れる。
【0006】
完全な心臓サイクルを心搏という。EKGでは、通常の心搏は明確な信号を有している。最初、ガルヴァノメータは、比較的持続時間の短い丸みのある正の振れ(P波という)を記録するが、これは心房の脱分極により生ずると信じられている。これに続いて、小さいが鋭い負の振れ(Q波という)がある。次に、非常に大きい正の振れ(R波という)があり、その後に鋭く大きい負の振れ(S波という)がある。これらの波を共に纏めてQRS波という。QRS波は心室の脱分極により生ずると信じられている。QRS波に続いて比較的持続時間の長い丸みのある正の振れ(T波という)が存在するが、これは心室の再分極により生ずると信じられている。
【0007】
EKGは、実際上、多数組の電極を使用している。しかしこれら電極は、受信信号が上述の波形と同様の波形を有するように身体の表面に設置されている。周知の二個対の電極は通常、患者の右腕(RA)、左腕(LA)、右脚(RL)(普通、基準として使用される)、および左脚(LL)に設置される。正しく参照される単極電極をV誘導といい、確立した慣習に従い解剖学的に患者の胸に設置される。心臓の監視および診断では、二つのこのような電極の間、または一つの電極と他の電極群の平均との間に現われる電圧差は、心臓の電気的活動の特定の相関関係を表しており、一般にEKGと言われる。電極の特定の組合せからの電気信号を誘導という。たとえば、標準の12誘導心電図システムに使用できる誘導は次のとおりである。
誘導I=(LA−RA)
誘導II=(LL−RA)
誘導III=(LL−LA)
誘導V1=V1−(LA+RA+LL)/3誘導V2=V2−(LA+RA+LL)/3誘導V3=V3−(LA+RA+LL)/3誘導V4=V4−(LA+RA+LL)/3誘導V5=V5−(LA+RA+LL)/3誘導V6=V6−(LA+RA+LL)/3誘導aVF=LL−(LA+RA)/2誘導aVR=RA−(LA+LL)/2誘導aVL=LA−(RA+LL)/2したがって、「誘導」は、一般には物理的電線を示すのに現われる用語であるが、心電図法ではこの用語は、上に示したような一定の電極装置から取った電気信号を実際に意味している。
【0008】
多年にわたり、保健の専門家は多くの知識を蓄積してきた、そのなかで色々な病気や心臓欠陥をEKGの変化およびEKGからのデータに関連つけることを学んできた。公式には、この関連つける方法を「心電図法」という。
【0009】
心電図法の中で、EKGデータは多数の目的達成に役立つ。目的の一つは、患者心臓がAMIに入ったときおよびAMIに入ったか否かを決定することである。心筋梗塞、または心臓麻痺は、心臓筋肉の一部の死を記述するのに使用される用語であり、一般に、冠状動脈の閉塞による心臓への血液の供給が不十分なことにより生ずる。急性とはそれが発生の過程にあることを意味している。
【0010】
心臓麻痺は、冠状動脈が永続的に閉塞するか、または約30分より長く閉塞しているときに生ずる。このような長さの時間閉塞が生じていると、心筋層、すなわち冠状動脈により供給を受ける心臓筋肉の領域が長い間酸素と栄養分を得ることができず永久損傷(壊死)が生ずる。身体全体が心臓のポンプ作用による血液供給に依存しているが、心臓麻痺により影響される。激しい麻痺の期間中、心臓は身体を生かしておくのにぎりぎりな血液を送ることができるかもしれない。しかし肺が流体で満たされ、腎臓は排泄物が含まれた血液流を浄化することができない。脳が十分な酸素を受け取らないので犠牲者は困惑する。ショックの兆候も存在する。心筋梗塞は一般に15分より長く咽頭痛を生ずるが、兆候の現われない「静かな」心臓麻痺が存在することも可能である。静かな心臓麻痺の証拠は、心電図または他の心臓に関する試験で見られることがある。
【0011】
患者がAMIに罹っているか否かをEKGデータを基に判断する一般的判断基準は色々な誘導におけるST部の高まりを探すことである。たとえば、下方で心筋梗塞が生ずると、一般に誘導II、III、およびaVFにST部の高まりが存在し、これらの誘導におけるST部の高まりはAMIの検出に対する主要判断基準として使用される。前または前横の心筋梗塞が生ずると一般に誘導V2−V5にST部の高まりが存在し、これらの誘導におけるST部の高まりはAMIの検出に対する主要判断基準として使用される。
【0012】
このような判断基準の使用は大多数の患者に対して良く働き、AMIの検出をおこなう殆どの自動化システムはこれら判断基準の幾つかまたは全部をAMIの存在を検出するのに使用している。しかし、(それら患者に対して)彼らの「正常な」または通常のEKGにAMIを検出するのに一般に使用されていると全く同じように高いST部を示すような心臓状態を有する患者の部分母集団が存在している。
【0013】
明らかに、患者の「正常な」(すなわち、その患者に対して普通の事態)EKGはAMIを検出するための標準判断基準と同様であるから、部分母集団内の患者がAMIを有するか否かを決定するのに標準判断基準を使用することはできず、したがって、このような患者の「正常な」EKGを、現実にこのようなことが生じていないときそれがAMIとして検出されることになるという点で、「疑似陽性」として登録できよう。したがって、標準のAMI検出判断基準に良く似た「正常な」(すなわち、その患者に対して常態にある)EKGパターンを有する患者すなわち擬似AMI患者の部分母集団におけるAMIを検出するための方法およびシステムの必要性が存在する。
【0014】
この必要性は従来技術の中では取り扱われていなかった。従来の技術では、これらの擬似AMI患者は、単に考察から除外されていた。すなわち、従来技術では患者のEKGデータを、患者が標準のAMI検出判断基準に良く似たある基礎状態を有する指示により選別している。この選別篩分けは、基礎状態に関係するがAMIを有する通常の一般患者に関係しない他の波形特性を選別して行われている。当業者は、このような特性は多数あるが、一つの例は、下記の一つと比較的同時期に発生する標準AMI検出判断基準を探すことにより左心室肥大を検出する予備篩分け判断基準であることを理解するであろう。
(1)誘導V1のS波の振幅と誘導V5のR波の振幅との和が3.5mV以上である。
(2)誘導V1−V5のR波の振幅が2.5mVより大きい、または(3)誘導V1−V2のS波の振幅が2.5mVより大きい。
他の例は、下記の一つと比較的同時期に発生する標準AMI検出判断基準を探すことにより右索枝閉塞を検出する予備篩分け判断基準である。
(1)誘導V1、V2、またはV3の一つ以上におけるQRS持続時間が135ミリ秒以上および誘導V1におけるR波の持続時間が39ミリ秒以下である。
(2)誘導V1、V2、またはV3のいずれか二つにおけるQRS持続時間が140ミリ秒以上である。
このような基礎状態が検出されれば、この患者のデータは検査から除外され、どんなAMI検出判断基準も適用されることはない。したがって、従来技術はこのような擬似AMI患者に対する疑似陽性AMI検出が行われる危険を緩和するが、このような擬似AMI患者におけるAMIの存在を検出しようとしていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明、すなわち擬似AMI患者のAMIを検出できるシステムおよび方法の必要性が存在することは明らかである。
【0016】
それ故、EKG波形データを監視するのに使用される改良された方法およびシステムを提供するのが本発明の一つの目的である。
【0017】
EKG波形データを監視するのに使用され、急性心筋梗塞に良く似ている基礎心臓状態を有する擬似AMI患者に関してさえ、AMIの存在を検出できる改良された方法およびシステムを提供するのが本発明の他の目的である。
【0018】
本発明の更に他の目的は、EKG波形データを監視するのに使用され且つ、患者特有のデータセットを作り、作った患者特有のデータセットと統計的判断基準との両者に基づき、急性心筋梗塞の存在を評価することにより、擬似AMI患者に関してさえ、急性心筋梗塞の存在を検出できる改良された方法およびシステムを提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】

前述の目的は、次に説明するようにして達成される。この方法およびシステムは、各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形(たとえば、QRSTU波形のS波成分)内に少なくとも一つの指定成分波が存在するか否かを決定することにより機能する。考察中の心搏波形に指定成分波が存在するか否か(各誘導は一般にその中に存在する各連続する心搏波形の或る表現を備えている)を決定してから、波形振幅比(たとえば、或る指定の瞬間におけるST部の振幅をS波成分の振幅で割ったもの)を計算する。したがって、同じ心搏波形が一般に各心電計誘導に、或る形で、現われるから、各連続する心搏波形について各心電計誘導に対して計算した少なくとも一つの波形振幅比が一般に存在する。最後に、計算した波形振幅比が、これは一般に各連続する心搏波形に関して各誘導について再計算されるが、所定の判断基準と比較され(たとえば、分類ツリーを精査してする)、この比較に基づき、急性心筋梗塞が発生しているか否かが指示される。
【0020】
本発明の上述の他別の目的、特徴および長所は下記詳細記述説明により明らかになるであろう。
【0021】
【発明の実施の態様】
本発明の新規な特徴であると信じられる特性を特許請求の範囲に述べてある。しかし、本発明自身の他にその好適使用態様、他の目的、および長所は、例示実施例の下記詳細説明を図面と関連して読むことにより最も良く理解されよう。
【0022】
図1は、本発明がAMIを検出する方法およびプロセスを示す高レベルの論理流れ図である。この流れ図は、患者のEKG波形データの特定の一つの波形に必要なステップを示している。したがって、図示したステップは一般に患者のEKGデータ内の各連続する心搏波形について行われる。
【0023】
ステップ40は、プロセスの開始を示す。ステップ41では、予備篩分け判断点を示し、検討中のEKG波形内の一定の判断基準が擬似AMI患者を示しているか否かを決定する。当業者は、このような判断基準は多数あるが、このような一つの例は下記の一つと比較的同時期に発生する標準AMI検出判断基準を探すことにより左心室肥大を検出する予備篩分け判断基準であることを理解するであろう。
(1)誘導V1におけるS波の振幅および誘導V5におけるR波の振幅の和が3.5mV以上である。
(2)誘導V1−V5でR波の振幅が2.5mV以上である。
(3)誘導V1−V2でS波の振幅が2.5mV以上である。
他の例は、下記の一つと比較的同時期に発生する標準AMI検出判断基準を探すことにより右索枝閉塞を検出する予備篩分け判断基準である。
(1)誘導V1、V2、またはV3の一つ以上においてQRS持続時間が135ミリ秒以上で且つ誘導V1におけるR波の持続時間が39ミリ秒以下である。
(2)誘導V1、V2、またはV3のいずれか二つにおいてQRS持続時間が140ミリ秒以上である。
このような基礎状態が検出されなければ、波形はステップ42に送られる。ステップ42は、従来技術によりAMIを検出する仕方を示している。当業者は、従来技術でこれを行う仕方が多数存在することを認めるであろう。たとえば、上に説明したように、誘導V2からV5までにおけるST部の高まりである。
【0024】
ステップ46は、判断点を示す。ステップ42がAMIが検出されたことを指示すれば、この判断点で直ちにステップ48に進み、AMIが検出されていることを記して停止する。ステップ42がAMIの存在を検出しなければ、直ちにステップ50に進む。ステップ41の予備篩分けが標準AMIに良く似た基礎状態を検出しなくても、データがなおステップ50に与えられる理由は、EKG波形のST部の高まりが非常に弱い信号で判断の境界線上にある可能性があり、なおもAMIを示す可能性があるということである。すなわち、ステップ41に合格しなくてもAMIが存在しないということを必ずしも意味しない。
【0025】
ステップ50は、各心電計誘導に現われる心搏波形に少なくとも一つの所定の成分波が存在するか否かの判定を示している(好適実施例では、成分波はS波である)。すなわち、この心電計心搏波形の変種が一般に各心電計誘導に現われるということを理解して、所定の成分波が各心電計誘導に現われる同じ心搏波形の別の変種の中に存在するか否かに関して判定を行う。
【0026】
ステップ52は、心搏波形が現われた各心電計誘導についての少なくとも一つの波形振幅比の計算を示す。すなわち、その心電計心搏波形の変種が一般に各心電計誘導に現われるということを理解して、少なくとも一つの波形振幅比が一般に心搏波形の変種が現われる各心電計誘導について計算されるということを理解すべきである。好適実施例では、ST/S波形振幅比(以下ST/S比と称する)が、J点、中間点、およびJ点から80ミリ秒におけるST振幅をS波の最大振幅で割ることにより計算される。これらすべてが満足な結果を生ずる。
【0027】
好適実施例では、可能ではあるが、ST/S比は受け取った各波形すべてについては計算せず、心電計データの10または11秒間に関して計算される。好適実施例で現在使用されているこの手法にはつぎの二つの変形が存在する。
(1)ST/S比を計算するために心電計データの10または11秒間から特定の単一波形を抜き取るか、または(2)データの10または11秒間に入っているすベてのST部から平均ST部の振幅を計算し、データの10または11秒間に入っているすベてのS部分から平均S波形振幅を計算し、これら得られた平均を使用してST/S比を計算する。
【0028】
ステップ54は、ステップ52で得られた各波形振幅比計算値と一定の所定の判断基準との比較を示す。特に、ステップ54は、波形振幅比計算値が分類ツリーを精査するのに使用されることを示している。この分類ツリーは、図3に示されており、以下に説明する。分類ツリーが各心電計誘導に現われる心電計心搏波形がAMIが発生していることを指示しているという指示を生ずれば、ステップ60に進んでAMIの発生を指示する。他の場合には、分類ツリーがAMIが発生しているという指示を生じなければ、AMIが検出されなかったという結果を示すステップ58に進む。ステップ62は、精査中の心搏波形に関するプロセスの終了を示す。次に受け取った後続波形に関してプロセスはステップ40で再開する。
【0029】
次に図2を参照すると、本発明を実施するためのシステムの高レベル概略図が示されている。図2は、システムをコンピュータ機械で実行する一組のプログラムとして提示しているが、当業者は、ここにソフトウェアとして記した機能をハードウェアまたはファームウェアで実施できることを理解するであろう。図示してあるのは、多数の心電計電極16が固定されている患者14である。心電計電極16は伝導ケーブル18によりEKGモニタ20に接続されている。EKGモニタ20は、次にEKGフロントエンド21に送られるEKG波形信号を発生する。EKGフロントエンド21は、信号調節を行い、EKG波形信号を濾波し、次いでA/D変換し、個別にサンプルされたEKG波形の流れを出力するが、この流れを、理解を簡単にするため、単にEKG波形23の流れと言うことにする。
【0030】
図1について行ったように、図2に示すシステムの説明を特定の一つの心搏波形に関係づけることにする。説明全体は患者のEKG波形23の流れの各連続する波形に等しく適用されることを理解すべきである。
【0031】
EKG波形23の流れからの先導波形は、AMI検出ソフトウェア27を実行しているマイクロプロセッサ25に供給されるが、ソフトウェア27には、標準AMI検出モジュール22および、EKG波形が標準AMI検出判断基準に酷似しているときAMIを検出するモジュール29が入っている。
【0032】
EKG波形23の流れからの先導波形は、標準AMI検出モジュール22により受け取られる。標準AMI検出モジュール22は、AMI検出に標準判断基準を使用するAMIを探すという点で、ステップ42と同じ機能を行うのに十分なプログラミングを備えている。
【0033】
標準AMI検出モジュール22がAMIを検出しない場合には、装置は心電計心搏波形を、EKG波形が標準AMI検出判断基準に良く似ているときAMIを検出するモジュール29に伝え、このモジュールは、心搏波形を所定の成分波が各心電計誘導に現われる心搏波形内に存在しているか否かを決定するサブモジュール24に与える。所定の成分波が各心電計誘導24に現われる心搏波形内に存在しているか否かを決定するサブモジュール24は、ステップ50と同じ機能を行うに十分なプログラミングを備えており、一定の所定成分波(好適実施例では、この成分波はS波である)が存在するか否かを調べて確認する。
【0034】
所定の成分波が各心電計誘導に現われる心搏波形内に存在しているか否かを決定するサブモジュール24は、その決定を心搏波形が現われた各心電計誘導について波形振幅比を計算するサブモジュール26に伝える。心搏波形が現われた各心電計誘導について波形振幅比を計算するサブモジュール26は、ステップ52と同じ機能を行うのに十分なプログラムを備えている。
【0035】
波形振幅比が計算されてしまうと、比は波形振幅比計算値を所定判断基準と比較するサブモジュール28に伝えられる。波形振幅比計算値を所定判断基準と比較するサブモジュールは、波形振幅比計算値を所定判断基準と比較するに十分なプログラムを備えており、この比較に基づき、AMIが発生しているか否かを決定する。好適実施例では、このモジュールは、ステップ52で説明したようにST/S比を作るようプログラムされており、これら計算した比を分類ツリーの所定判断基準と比較する。分類ツリーを図3に示してある。前述の動作が完了すると、波形振幅比計算値を所定判断基準と比較するサブモジュール28は、比較結果をAMIが発生しているか否かを決定するサブモジュール30に送る。
【0036】
AMIが発生しているか否かを決定するサブモジュール30は、AMIが発生しているか否かを決定するために各波形振幅比計算値を所定判断基準と比較するサブモジュール28(これは普通、AMIまたはAMIなしの結果を生ずる)から受け取ったデータを使用する。AMIが発生していれば、AMIが発生しているか否かを決定するサブモジュール30が、その情報を、AMIの発生を指示する装置32に送り、装置32は、閃光、ブザー、または役立つと考え得る他の警報のような、適切な手段によりAMIの発生を指示する。AMIが発生しているか否かを決定するサブモジュール30がAMIが発生していないと決定した場合には、AMIの発生を指示する装置32に信号が送られない。再び上述のように前記システムは、その動作を患者のEKG波形の流れ23の中の引き続く各心搏波形に関して行う。
【0037】
次に、ST/S比計算値がAMIの発生を指示しているか否かを決定するのに好適実施例で使用されている、実際には分類ツリーである、図3を参照する。図示されているのは、分類ツリー内部で行われる一連の比較であり、ツリー内で指定された誘導に対するST/S比は図示した値と比較される。ツリーは終点に到達するまで精査される。
【0038】
当業者は、図示した分類ツリーが、AMIの存在を指示する判断基準を予め指定することができるまさに一つの方法であることを認識するであろう。分類ツリーは、(1)多数の患者について心電図データを集め、(2)このデータを篩分けてAMIが発生していることおよび擬似AMI患者であることの双方を指示する心電図を見付け、(3)篩分けたデータの中の成分波の振幅を記録し、(4)これら記録した振幅を使用して、関係ある心臓状態と統計的に相関する量を決定することにより、得られる。開示した好適実施例では、決定される量は、ST/S比であり、ST/S比と相関している、関係心臓状態は、擬似AMI患者のAMIであるが、当業者は、波形振幅比をST/S比以外の指示および分類ツリー以外の統計的相関マトリックスを作成して、本発明人が行ったものと同等の機能を達成するのに使用できることを理解するであろう。このような機能的同等技術はこの明細書の中に包含されているものである。
【0039】
次に図4を参照すると、患者の心臓機能を診断するのに使用される所定判断基準を作成するためのプロセスの高レベル論理流れ図が示されているすなわち、図4は、図3の分類ツリーを作る方法およびプロセスを示している。
【0040】
ステップ70は、プロセスの開始を示す。ステップ72は、関係ある心臓状態を示す心電波形の集録を示す。実際上は、これら波形を心電図法に関して学んだ論文を調べ、このような波形をインターネットからダウンロードすることにより、またはどんな心電波形が関係ある一定の心臓状態を指示しているかという疑問に関して権威ある心電計学者に相談することにより、得ることができる。そのようにして得られた波形の幾つかまたは全部を共に集めることができる。
【0041】
ステップ74は、集めた心電波形から一つ以上の波形振幅比を作ることを示している。上に開示した好適実施例に対して、このステップは、ST/S比を得る仕方を示している。集めた心電波形から一つ以上の波形振幅比を作ることは、それにより当業者が、一定の心電波形の波形振幅成分の或るもの、または心電計データの波形振幅成分の一定の比を、関係ある心臓状態を表すものと見做している経験的プロセスである。波形振幅成分を、その成分を1で割ったものとすることができるという点で、比ということができることを理解すべきである。
【0042】
ステップ76は、患者の心電波形データに基づく心臓機能の正確な自動診断に利用される所定の判断基準として役立つ判断マトリックスの作成を示す。この判断マトリックスは、ステップ74で作った一つ以上の波形振幅比を取り、これをそれを用いてステップ72で得られた関係ある一定の心臓状態を表す心電波形と統計的に相関させることにより作成される。統計的相関を市販統計パッケージを用いてでも行うことができる。統計的判断ツリーが作成されると、そのツリーは、それによりステップ76で作成された判断マトリックスと関連してステップ74で作られた一つ以上の波形振幅比を使用できる精度を得るため多数の試験を受ける。
【0043】
ステップ78は、判断点を示す。この判断点では、ステップ76で作成された判断マトリックスに関連して使用されるステップ74で作られた一つ以上の波形振幅比が診療目的に役立つ十分正確な結果を生ずるか否かが決定される。答えが肯定的であれば、プロセスの終わりであるステップ80に進む。その他の場合には、ステップ74に戻り、そこで一つ以上の別の振幅比を作り、再び使用してステップ76で他の統計的判断マトリックスを作成する。ステップ74、76、および78から成るループは、プロセスが、ステップ78で示したように、診療目的に役立つ十分な精度の診断を発生するすくなくとも一つの波形振幅比−判断マトリックス組を生ずるまで継続する。この判断基準が満足されると、ステップ80に進み、プロセスが停止する。
【0044】
次に図5は、10または11秒間のデータを使用して、図1のステップ52で説明したような平均ST/S比を構成する仕方の部分的概略図を示す。図示してあるのは、心電計誘導の一つ(たとえば、aVF)に現われる心電波形100の10または11秒間の波形列である。平均化102を表す矢印は心電波形100の10または11秒間の波形列全体に関して描かれている「平均波形」104の作成を示す。実際に計算されるものは、先に説明したように、平均S波成分振幅106および平均ST部振幅108であるが、理解を明瞭にするために概念的平均波形104を示している。次に、ST/S比が平均S波形振幅106および平均ST部振幅108を使用して計算されることが図示されており、これを誘導あたりの単一ST/S比110と名付けてある。既に説明したように、各誘導につき計算された少なくとも一つのST/S比が存在する。この事実を例示ST/S波の表112に示してある。これら計算値を次に判断ツリー114に伝える。判断ツリー114は、ステップ54での所定判断基準と同様であり、好適実施例では図3の分類ツリーに等しい。
【0045】
例示実施例を特に図示し説明してきたが、当業者は例示実施例の精神および範囲から逸脱することなく形態および細目に種々の変更を行い得ることを理解するであろう。以下に本発明の実施態様を例示して発明の理解の助けとする。
【0046】
(実施態様1):患者が急性心筋梗塞を検出する標準判断基準に良く似た基礎的心臓状態にある場合であっても前記患者の心電波形データに基づき、急性心筋梗塞の発生を検出する方法であって、各心電誘導内に現われる各連続する心搏波形の中に少なくとも一つの所定成分波が存在するか否かを判定するステップ(50)、前記判定するステップに応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について少なくとも一つの波形振幅比を計算するステップ(52)、および前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比が所定判断基準に合っていることに応答して、急性心筋梗塞の発生を指示するステップ(60)、を有する方法。
【0047】
(実施態様2):前記各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中に少なくとも一つの所定成分波が存在するか否かを判定するステップは更に、該各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中にS波が存在するか否かを判定するステップを含むことを特徴とする実施態様1記載方法。
(実施態様3):前記計算するステップは更に、前記各連続する心搏波形が現われ且つS波が存在しないと判定された前記各心電計誘導について、ST/S波形振幅比に0を割り当てるステップ、および前記各連続する心搏波形が現われ且つS波が存在すると判定された前記各心電計誘導について、ST振幅を前記S波振幅で割ることにより、前記ST/S波形振幅比を計算するステップ、含むことを特徴とする実施態様2記載方法。
【0048】
(実施態様4):前記急性心筋梗塞の発生を指示るステップは更に、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比を利用して分類ツリーを精査するステップ(54)、前記精査するステップに応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比を、急性心筋梗塞を表しているかまたは表していないとして分類するステップ、および前記分類するステップに応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比が急性心筋梗塞を表していると分類されていれば、急性心筋梗塞の発生を指示するステップ(60)、を含むことを特徴とする実施態様1記載方法。
【0049】
(実施態様5):患者が急性心筋梗塞を検出する標準判断基準に良く似た基礎的心臓状態にある場合であっても前記患者の心電波形データに基づき、急性心筋梗塞の発生を検出するシステムであって、各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中に少なくとも一つの所定成分波が存在するか否かを判定する手段(24)、前記判定する手段に応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について少なくとも一つの波形振幅比を計算する手段(26)、および前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算された少なくとも一つの波形振幅比が所定の判断基準に合っていることに応答して、急性心筋梗塞の発生を指示する手段(30、32)、を備えていることを特徴とするシステム
【0050】
(実施態様6):前記各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中に少なくとも一つの所定成分波が存在するか否かを判定する手段は更に、各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中にS波が存在するか否かを判定する手段を備えていることを特徴とする実施態様5記載のシステム
(実施態様7):前記計算する手段は更に、前記各連続する心搏波形が現われ且つS波が存在しないと判定された前記各心電計誘導について、ST/S波形振幅比に0を割り当てる手段、および前記各連続する心搏波形が現われ且つS波が存在すると判定された前記各心電計誘導について、ST振幅を前記S波振幅で割ることにより、前記ST/S波形振幅比を計算する手段、を備えていることを特徴とする実施態様6記載のシステム
【0051】
(実施態様8):前記急性心筋梗塞の発生を指示る手段は更に、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比を利用して分類ツリーを精査する手段(28)、前記精査する手段に応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比を、急性心筋梗塞を表しているかまたは表していないとして分類する手段(30)、および前記分類する手段に応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比が急性心筋梗塞を表していると分類されていれば、急性心筋梗塞の発生を指示する手段(32)、を含むことを特徴とする実施態様5記載のシステム
【0052】
(実施態様9):患者の心電波形データに基づき心臓機能の正確な自動診断に利用される所定の判断基準として役立つコンピュータ用判断マトリックスを作成する方法であって、患者から、関係ある一定の心臓状態を表す心電波形データを得るステップ(72)、前記得られた心電波形データから、前記関係ある一定の心臓状態を表す一つ以上の波形振幅比を作り出すステップ(74)、および前記作り出された一つ以上の波形振幅比に基づき、前記判断マトリックスが、前記作り出された一つ以上の波形振幅比に関連して前記コンピュータシステム内で利用されるとき、前記患者から新しく得られた心臓波形に適用するとき患者の心臓機能の正確な診断を行うように、前記コンピュータシステム内部で前記判断マトリックスを作成するステップ(76)、を有することを特徴とする方法。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の急性心筋梗塞の発生を検出する方法およびプロセスをしめす高レベル論理流れ図である。
【図2】本発明を実施するためのシステムの概略図を示す。
【図3】ST/S比の計算値が急性心筋梗塞の発生を指示しているか否かを決定する好適実施例に使用されている分類ツリーを示す図である。
【図4】患者の心臓機能を診断するのに使用する所定判断基準を作成するプロセスの高レベル論理流れ図である。
【図5】図1のステップ52で説明したように、心電波形データの10または11秒間を使用して平均ST/S比を構成する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
14 患者、 16 心電計電極、
18 伝導ケーブル、 20 EKGモニタ、21 EKGフロントエンド、 22 AMI検出モジュール、23 EKG波形の流れ、
25 マイクロプロセッサ、27 AMI検出ソフトウェア、 29 AMI検出判断基準

Claims (2)

  1. 患者が急性心筋梗塞を検出する標準判断基準に良く似た基礎的心臓状態にある場合であっても前記患者の心電波形データに基づき、急性心筋梗塞の発生を検出するシステムであって、
    各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中に少なくとも一つの所定成分波が存在するか否かを判定する手段、
    前記判定する手段に応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について少なくとも一つの波形振幅比を計算する手段、および
    前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算された少なくとも一つの波形振幅比が所定の判断基準に合っていることに応答して、急性心筋梗塞の発生を指示する手段、
    を備え
    前記各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中に少なくとも一つの所定成分波が存在するか否かを判定する手段は更に、該各心電計誘導内に現われる各連続する心搏波形の中にS波が存在するか否かを判定する手段を備え、
    前記計算する手段は更に、
    前記各連続する心搏波形が現われ且つS波が存在しないと判定された前記各心電計誘導について、ST/S波形振幅比に0を割り当てる手段、および
    前記各連続する心搏波形が現われ且つS波が存在すると判定された前記各心電計誘導について、ST振幅を前記S波の振幅で割ることにより、前記ST/S波形振幅比を計算する手段、
    を備えていることを特徴とするシステム。
  2. 前記急性心筋梗塞の発生を指示する手段は更に、
    前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比を利用して分類ツリーを精査する手段、
    前記精査する手段に応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比を、急性心筋梗塞を表しているかまたは表していないとして分類する手段、および
    前記分類する手段に応答して、前記各連続する心搏波形が現われる各心電計誘導について前記計算した少なくとも一つの波形振幅比が急性心筋梗塞を表していると分類されていれば、急性心筋梗塞の発生を指示する手段、
    を含むことを特徴とする請求項記載のシステム。
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