JP4140403B2 - 誘電体共振器およびその製造方法 - Google Patents

誘電体共振器およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信機装置のRF回路などに用いられる誘電体フィルタを構成する誘電体共振器に関し、詳しくは、超伝導電極を備えた誘電体共振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超伝導デバイス技術の急速な進展に伴って、通信機器などの応用分野への適用が研究されている。中でも、超伝導電極を有する誘電体共振器を用いたフィルタは、通過信号の低損失性や周波数帯域のシャープカット性を実現することができるため、携帯電話の基地局用のフィルタとして今後の需要が期待される。
【0003】
図11は、従来の誘電体共振器を示す断面図である。図11に示すように、誘電体共振器70は、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系セラミックからなる誘電体基板71と、誘電体基板71の両主面上に形成されたBi系2223相酸化物からなる超伝導層72と、超伝導層72上に形成されたAg層73と、からなる。また、超伝導層72およびAg層73により超伝導電極74が構成されている。
【0004】
誘電体共振器70は、例えば、誘電体基板71の両主面上に、焼き付け後に超伝導層72となる超伝導ペースト、焼き付け後にAg層73となるAgペーストを順に塗布し、焼き付けることにより作製される。この焼き付けの際に、Bi系2223相酸化物とAgとが反応し、Bi系2223相酸化物の粒成長およびc軸配向が促進され、誘電体共振器70の超伝導特性が向上する。
【0005】
図12は、誘電体共振器70における共振周波数の温度特性を示すグラフである。図12において、T(K)は誘電体共振器70の使用温度、Tc(K)は超伝導層72を構成する超伝導体の臨界温度を示す。また、fT(MHz),fTc(MHz),f295(MHz)は、それぞれ使用温度T、臨界温度Tc、295Kにおける誘電体共振器70の共振周波数である。以下、誘電体共振器70における共振周波数変化のメカニズムについて説明する。
【0006】
まず、超伝導体の臨界温度Tc以下では、超伝導層72の導電率がAg層73の導電率よりも大きくなるため、超伝導層72に電流が集中する。また、超伝導層72の導電率が大きくなればなるほど、誘電体基板71と超伝導層72の界面に電流が集中するため、臨界温度Tcから温度が下がるにつれて、実効的な共振空間が狭まり、共振周波数が大きくなる。
【0007】
一方、超伝導体の臨界温度Tc以上では、超伝導層72の導電率がAg層73の導電率よりも小さくなるため、Ag層73に電流が集中する。Ag層73の導電率は温度変化に対してほぼ一定であるため、超伝導体の臨界温度Tc以上における誘電体共振器70の共振周波数は、誘電体基板71を構成する誘電体の共振周波数の温度特性に左右される。誘電体共振器70では、臨界温度Tcから温度が上がるにつれて、共振周波数が徐々に大きくなっている。(例えば、特許文献1参照。)
【0008】
【特許文献1】
特開2000−196155号公報(図10、段落番号0027)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
誘電体共振器70は、超伝導現象を利用するものであるため、70K前後という低温で動作することを前提としたものである。したがって、誘電体共振器70を使用する際には、使用温度Tまで誘電体共振器70を冷却するための冷凍機が必要になる。
【0010】
ところで、この冷凍機が停止した場合、誘電体共振器70は常温で動作することになる。しかし、誘電体共振器70においては、使用温度Tにおける共振周波数と、常温における共振周波数とが異なるため、誘電体共振器70を用いたフィルタでは、冷凍機停止時に通過信号の帯域周波数が変わってしまうという問題があった。
【0011】
また、次世代(第3世代)ディジタル移動体通信の世界標準方式IMT−2000(International Mobile Telecommunication 2000)の有力候補であるW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式では、1事業者あたりに20MHzの周波数帯域が割り当てられており、この帯域を5MHz幅の4つのキャリアに分割して使用している。
【0012】
ここで、フィルタの通過信号の帯域周波数が目的周波数からずれてしまうと、隣接するキャリアとの間に信号の干渉が生じるため、使用できるキャリアが減少する。キャリアの幅は5MHzであるため、帯域周波数のズレが3MHzまでなら1つのキャリアが減少するだけなので許容できる。しかし、帯域周波数のズレが3MHzを超えると2つ以上のキャリアが使用できなくなる可能性が生じる。このように、通過信号の帯域周波数が大きくずれることによる影響は深刻である。
【0013】
本発明は、使用温度と常温とで通過信号の帯域周波数のズレが少ない誘電体共振器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る誘電体共振器は、誘電体基体と、前記誘電体基体の外表面上に形成された超伝導層と、前記超伝導層上に形成された金属層と、を備え、前記超伝導層および前記金属層により共振器用の電極を構成する誘電体共振器であって、前記超伝導層の平均厚みをd(μm)、前記超伝導層を構成する超伝導体の転移温度以下での誘電体共振器の使用温度をT(K)、前記使用温度Tにおける誘電体共振器の共振周波数をfT(MHz)、前記誘電体基体を構成する誘電体の共振周波数の温度係数をτf(ppm/K)、としたとき、
|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
を満足することを特徴とする。
【0015】
前記誘電体共振器において、前記誘電体基体を構成する誘電体は、Ba(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミック、またはBa(Sn,Zr,Mg,Ta,Nb)O3系セラミックであることが好ましい。また、前記誘電体共振器において、前記超伝導層の平均厚みdは、2≦d≦12の範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明に係る誘電体フィルタは、前記誘電体共振器と、前記誘電体共振器に接続された外部結合手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る誘電体デュプレクサは、少なくとも二つの誘電体フィルタと、前記誘電体フィルタに接続される入出力手段と、前記誘電体フィルタに共通に接続されるアンテナ接続手段と、を備え、前記誘電体フィルタの少なくとも一つが前記誘電体フィルタであることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る通信機装置は、前記誘電体フィルタと、前記誘電体フィルタに接続された増幅器と、前記誘電体フィルタおよび前記増幅器にそれぞれ接続された外部結合手段と、前記誘電体フィルタを冷却する冷凍機と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る通信機装置は、前記誘電体デュプレクサと、前記誘電体デュプレクサの少なくとも一つの入出力手段に接続される送信回路と、前記送信回路に接続される前記入出力手段と異なる少なくとも一つの入出力手段に接続される受信回路と、前記誘電体デュプレクサのアンテナ接続手段に接続されるアンテナと、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る誘電体共振器の製造方法は、誘電体基体と、前記誘電体基体の外表面上に形成された超伝導層と、前記超伝導層上に形成された金属層と、を備え、前記超伝導層および前記金属層により共振器用の電極を構成する誘電体共振器の製造方法であって、前記超伝導層を構成する超伝導体の転移温度以下での誘電体共振器の使用温度T(K)における、誘電体共振器の共振周波数の目標値fTG(MHz)を設定し、前記誘電体基体を構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を測定し、
|d−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
で表される関係式にfTG,τfの値を代入して、前記超伝導層の平均厚みd(μm)の最適範囲を特定する工程と、前記超伝導層の平均厚みが前記最適範囲に収まるように、前記誘電体基体の外表面上に、加熱後に前記超伝導層となる超伝導膜を形成する工程と、前記超伝導膜上に、加熱後に前記金属層となる金属膜を形成する工程と、前記超伝導膜および前記金属層を加熱する工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る誘電体共振器の製造方法は、誘電体基体と、前記誘電体基体の外表面上に形成された超伝導層と、前記超伝導層上に形成された金属層と、を備え、前記超伝導層および前記金属層により共振器用の電極を構成する誘電体共振器の製造方法であって、前記超伝導層を構成する超伝導体の転移温度以下での誘電体共振器の使用温度T(K)における、誘電体共振器の共振周波数の目標値fTG(MHz)を設定し、前記超伝導層の平均厚みの目標値dG(μm)を設定し、
|dG−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、dG>0)
で表される関係式にfTG,dGの値を代入して、前記誘電体基体を構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)の最適範囲を特定する工程と、前記最適範囲に収まる共振周波数の温度係数を有する誘電体からなる誘電体基体を準備する工程と、前記誘電体基体の外表面上に、加熱後に前記超伝導層の平均厚みがdGとなるように超伝導膜を形成する工程と、前記超伝導膜上に、加熱後に前記金属層となる金属膜を形成する工程と、前記超伝導膜および前記金属層を加熱する工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る誘電体共振器の一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、誘電体共振器10は、誘電体基体となる誘電体基板11と、誘電体基板11の両主面上に形成された超伝導層12と、超伝導層12上に形成された金属層13と、を備える。また、超伝導層12および金属層13により超伝導電極14が構成されており、この超伝導電極14が共振器用の電極として機能する。
【0023】
誘電体基板11を構成する誘電体としては、例えば、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系セラミックなどの多結晶誘電体を用いることができる。中でも、Ba(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミックや、Ba(Sn,Zr,Mg,Ta,Nb)O3系セラミックは、Zrの置換量を調整することにより後述する共振周波数の温度係数τfを調整することができるため、使い勝手がよい。具体的には、Zrの置換量を多くすればするほど、それだけτfの絶対値が大きくなる。
【0024】
超伝導層12は、例えば、Bi系2223相酸化物、Bi系2212相酸化物、Tl系2223相酸化物などの超伝導体により構成される。金属層13は、例えば、Ag,Au,Ptなどの金属により構成される。
【0025】
誘電体共振器10は、
|d−2{τf×f295×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
を満足する。この関係式において、d(μm)は超伝導層12の平均厚み、f295(MHz)は295Kにおける誘電体共振器10の共振周波数、T(K)は誘電体共振器10の使用温度、τf(ppm/K)は誘電体基板11を構成する誘電体の共振周波数の温度係数、を表す。以下、この関係式について説明する。
【0026】
本発明の目的は、誘電体共振器において、使用温度と常温とで通過信号の帯域周波数のズレを少なくすることである。この目的を達成するためには、使用温度における誘電体共振器の共振周波数と、常温における誘電体共振器の共振周波数と、を近づけてやればよい。しかし、常温といっても、季節の変化により様々であるため、常温における誘電体共振器の共振周波数を特定することは困難である。そこで、本発明者は、使用温度における誘電体共振器の共振周波数と、室温295Kにおける誘電体共振器の共振周波数と、をほぼ同じにすることとした。すなわち、室温295Kにおける共振周波数であれば、その前後の温度における共振周波数とそれほど変わりがなく、実質的に常温における共振周波数と言える。
【0027】
つまり、誘電体共振器10における共振周波数の温度特性は、図2に示すグラフのようになればよい。図2において、T(K)は誘電体共振器10の使用温度、Tc(K)は超伝導層12を構成する超伝導体の臨界温度を表す。また、fTは使用温度Tにおける誘電体共振器10の共振周波数、fTcは臨界温度Tcにおける誘電体共振器10の共振周波数、fTc+10は臨界温度Tcより10K高い温度における誘電体共振器10の共振周波数、f295は295Kにおける誘電体共振器10の共振周波数を表す。図2に示すように、誘電体共振器10では、使用温度における共振周波数fTと、295Kにおける共振周波数f295とが等しい、すなわち、fT=f295となっている。
【0028】
誘電体共振器10の共振周波数は、臨界温度Tc以上では、主に誘電体基板11を構成する誘電体の共振周波数の変化に影響され、臨界温度Tc以下では、誘電体の共振周波数の変化と、超伝導層12を構成する超伝導体の超伝導転移による共振周波数の変化と、に影響される。
【0029】
ここで、誘電体共振器10において、超伝導転移による共振周波数の変化がないと仮定した場合、誘電体共振器10の共振周波数は、使用温度Tから295Kにかけて、主に誘電体の温度周波数特性の影響を受けることになる。この場合、使用温度Tにおける誘電体共振器10の共振周波数は、図2中に示すfSとなる。すなわち、(fT−fS)が超伝導転移による共振周波数の変化量に相当する。図2では、これをδf1(MHz)として表している。一方、使用温度Tから295Kにかけて、誘電体の共振周波数の変化量は(f295−fS)である。図2では、これをδf2(MHz)として表している。
【0030】
ところで、δf1と超伝導層12の平均厚みdとの間には、
δf1≒d×0.5
という関係が成り立つ。この関係は、本発明者が実験を行った結果導き出されたものであり、その実験については後述する実施例8において説明する。
【0031】
一方、δf2=(f295−fS)であるが、fSは仮定値であるため実測することができない。しかし、図2に示すグラフの直線部分の傾きを求め、その傾きに温度差(295−K)をかければ、δf2を求めることができる。この傾きをaとすると、傾きaはグラフの直線部分に存在する任意の2点から求めることができるから、
a=(f295−fTc+10)/{295−(Tc+10)}
と表すことができる。
【0032】
ここで、任意の2点の1つとして点(Tc+10,fTc+10)を選んだ理由は、臨界温度Tc付近では超伝導転移による共振周波数の変化の影響を受けるが、臨界温度Tcより10K高い温度であればその可能性がないためである。なお、傾きaを求めるためには、グラフの直線部分において、超伝導転移の影響を実質的に受けない温度に存在する点から任意に2点を選択すればよく、その2点は、点(Tc+10,fTc+10)、点(295,f295)に限られるものではない。
【0033】
以上から、
δf2=a×(295−T)
=(f295−fTc+10)/{295−(Tc+10)}×(295−T)
と表すことができる。
【0034】
また、基準温度を295Kとすると、誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)は、
τf=(f295−fTc+10)/{295−(Tc+10)}/f295×10-6
=a/f295×10-6
と表すことができるため、
δf2=τf×f295×(295−T)×10-6
と表すことができる。
【0035】
以上のようにして、δf1,δf2の関係式をそれぞれ定めることができる。図2のグラフから明らかなように、fT=f295の場合、δf1=δf2が成り立つから、
δf1=δf2
⇔d×0.5≒τf×f295×(295−T)×10-6
⇔d≒2{τf×fT×(295−T)×10-6
となる。ただし、上述した通り、本発明では、使用温度における誘電体共振器の共振周波数と、室温295Kにおける誘電体共振器の共振周波数とのズレを小さく抑えられればよいから、厳密にfT=f295でなくてもよく、若干のズレも許容範囲として含まれる。本発明では、W−CDMA方式における5MHzのチャネル幅を考慮して、このズレの許容範囲を±3MHzとし、このズレを超伝導層12の平均厚みdに反映させ、
2{τf×fT×(295−T)×10-6}−6≦d≦2{τf×fT×(295−T)×10-6}+6
⇔|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|≦6
としている。
【0036】
また、超伝導層12の平均厚みdは、2≦d≦12の範囲にあることが好ましい。d<2の場合、均一な厚みの超伝導層12が形成できなかったり、高周波電磁界が金属層13にまで届いてしまい、使用温度Tにおける高周波特性が低下することがある。一方、d>12の場合、室温295Kにおいて高周波電磁界が金属層13まで届きにくくなり、高周波特性が劣化することがある。
【0037】
以下、誘電体共振器10の製造方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、誘電体基板11の両主面上に、超伝導体の前駆体粉末および有機ビヒクルからなる超伝導ペーストを塗布し、厚膜の超伝導膜12aを形成する。なお、超伝導膜12aの形成方法はこれに限られず、例えば、超伝導体の前駆体粉末に有機ビヒクルを混合してなるスラリーをシート状に成形したグリーンシートを誘電体基板11上に配置する方法や、上記スラリーを誘電体基板11上に噴霧する方法などを用いることができる。また、上述したように超伝導膜12aを形成するのではなく、蒸着やスパッタリングにより超伝導体の前駆体を誘電体基板11上に堆積させ、薄膜の超伝導膜12aを形成してもよい。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、超伝導膜12a上に、金属粉末および有機ビヒクルからなる金属ペーストを塗布し、厚膜の金属膜13aを形成する。超伝導膜12aと同様に、金属膜13aは、その他の厚膜形成方法により形成されたものでもよいし、薄膜であってもよい。
【0039】
次に、超伝導厚12aおよび金属膜13aを加熱し、超伝導の前駆体粉末および金属粉末を焼結させる。これにより、図3(c)に示すように、誘電体基板11上に、超伝導層12および金属層13からなる超伝導電極14を形成し、誘電体共振器10を完成させる。なお、超伝導膜12aを単独で加熱して、超伝導体の前駆体の一部を合成した上で、超伝導膜12a上に金属膜13aを形成して加熱してもよい。
【0040】
ところで、誘電体共振器10を設計する際には、まず、その使用温度Tと、使用温度Tにおける共振周波数fTとが考慮される。使用温度Tは、超伝導層12を構成する超伝導体の臨界温度Tcよりも低い温度で、任意に設定されるものである。また、共振周波数fTについては、誘電体共振器10を用いたフィルタの通過周波数帯域に応じて、その目標値fTG(MHz)を設定することができる。ここで、上記関係式にfT=fTGを代入すると、
|d−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
となる。
【0041】
次に、誘電体基板11を構成する誘電体の共振周波数の温度係数τfは、
τf=−1/2τεr−α(τεr:誘電体の比誘電率の温度係数、α:誘電体の熱膨張係数)
で表されるものであり、誘電体共振器11の共振周波数から求めなくてもその値を知ることができる。つまり、上記関係式にτfの測定値を代入すれば、超伝導層12の平均厚みdの最適範囲を特定することができる。
【0042】
したがって、加熱後の超伝導層12の平均厚みが上記最適範囲に収まるように、超伝導膜12aを形成すればよい。超伝導膜12aの平均厚みは、例えば、超伝導ペーストの塗布厚を調整するなどして制御することができる。超伝導膜12aの平均厚みは、加熱による収縮を考慮して、目標とする超伝導層12の平均厚みよりも若干大きく設定される。あらかじめ、加熱条件と超伝導膜12aの収縮との関係を調べておけば、目標通りの超伝導層12の平均厚みを実現することができる。
【0043】
一方、超伝導層12の平均厚みの目標値dG(μm)をあらかじめ設定し、
|dG−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、dG>0)
で表される関係式にfTG,dGの値を代入すれば、誘電体基板11を構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)の最適範囲を特定することができる。
【0044】
この場合、上記最適範囲に収まる共振周波数の温度係数を有する誘電体からなる誘電体基板11を準備すればよい。誘電体の共振周波数の温度係数は、誘電体の組成を変えることにより制御することができる。例えば、Ba(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミックにおいては、Zrの置換量を変化させることにより、共振周波数の温度係数を調整することができる。
【0045】
そして、最適範囲に収まる共振周波数の温度係数を有する誘電体基板11の両主面上に、加熱後に超伝導層12の平均厚みがdGとなるように超伝導膜12aを形成すればよい。
【0046】
(実施形態2)
本発明に係る誘電体共振器は、基本的には、図1に示したような構成を備えている。本実施形態においては、本発明に係る誘電体共振器の変形例について説明する。なお、以下に示す変形例も、|d−2{τf×平均厚み×(295−T)×10-6}|≦6の関係式を満足するものである。
【0047】
図4(a)は、本実施形態の誘電体共振器を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)中のA−A線に沿った断面図である。図4(a)、(b)に示すように、誘電体共振器20は、誘電体基体である誘電体ブロック21と、誘電体ブロック21の側面上、および誘電体ブロック21の長手方向に形成された貫通孔21aの内周面上に形成された超伝導層22a,22bと、超伝導層22a,22b上にそれぞれ形成された金属層23a,23bと、を備えるλ/2TEMモード共振器である。また、超伝導層22aおよび金属層23aにより超伝導電極24aが構成され、超伝導層22bおよび金属層23bにより超伝導電極24bが構成されており、超伝導電極24a,24bが共振器用の電極として機能する。
【0048】
図5は、図4(a)、(b)に示した誘電体共振器20の変形例を示す斜視図である。この誘電体共振器20aにおいては、金属層23a,23b上にさらに超伝導層22c,22dが形成されている。ただし、超伝導層22c,22dは共振器用の電極としてはほとんど機能しない。この超伝導層22c,22dはBi,Pb,Tlなどの揮発成分を含有しており、誘電体共振器20aを作製する段階で、超伝導層22a,22bから同種の揮発成分が揮発するのを抑制する目的で形成されるものである。
【0049】
(実施形態3)
図6は、本発明に係る誘電体フィルタを示す斜視図である。図6に示すように、誘電体フィルタ35は、長手方向に複数の貫通孔31a〜31cおよび複数の結合孔36a,36bが形成された誘電体ブロック31と、誘電体ブロック31の側面上に形成された超伝導層32aおよび金属層33aからなる超伝導電極34aと、貫通孔31a〜31cの内周面上に形成された超伝導層32b〜32dおよび金属層33b〜33dからなる超伝導電極34b〜34dと、を備える。また、超伝導電極34aの一部を切り欠いて、入出力電極(外部結合手段)37a,37bが形成されている。
【0050】
誘電体フィルタ35は、誘電体ブロック31を構成する誘電体と、超伝導電極34a〜34dと、で構成される複数の誘電体共振器が、結合孔36a,36bにより電磁界結合し、超伝導電極34b,34dを含む共振器が入出力電極37a,37bに結合することにより、フィルタとして機能する。
【0051】
また、超伝導電極34aの一部をさらに切り欠いて、アンテナ接続手段としての電極を形成すれば、誘電体デュプレクサを作製することができる。
【0052】
(実施形態4)
図7は、本発明に係る通信機装置の一実施例を示す概要図である。図7に示すように、通信機装置(受信装置)40は、誘電体フィルタ41、LNA(低雑音増幅器)42、断熱高周波ケーブル43、冷凍機44、冷却ステージ45、真空断熱ケース46、およびハーメチックコネクタ(外部結合手段)47a,47bを備える。誘電体フィルタ41としては、例えば、図6に示した誘電体フィルタを用いることができる。
【0053】
誘電体フィルタ41およびLNA42は、互いに断熱高周波ケーブル43により接続された状態で、冷却ステージ45上に設置されている。冷凍機44は冷却ステージ45に接続され、冷却ステージ45を所定の温度に冷却する。また、誘電体フィルタ41、LNA42、および冷却ステージ45は、真空断熱ケース46内に設置されているため、誘電体フィルタ41およびLNA42を、一定の低温下で動作させることができる。
【0054】
また、誘電体フィルタ41はハーメチックコネクタ47aに、LNA42はハーメチックコネクタ47bに、それぞれ断熱高周波ケーブル43で接続され、ハーメチックコネクタ47a,47bを介して、外部回路に接続されている。
【0055】
ハーメチックコネクタ47aを介して外部回路から受信した信号は、断熱高周波ケーブル43を介して、誘電体フィルタ41に伝送される。誘電体フィルタ41を通過した特定帯域周波数の信号は、断熱高周波ケーブル43を介してLNA42に伝送される。LNA42で増幅された信号は、断熱高周波ケーブル43とハーメチックコネクタ47bを介して、次の外部回路に出力される。
【0056】
(実施形態5)
図8は、本発明に係る誘電体共振器を用いた通信機装置の一例を示すブロック図である。図8に示すように、通信機装置50は、誘電体デュプレクサ51と、送信回路52と、受信回路53と、アンテナ54と、を備える。送信回路52は誘電体デュプレクサ51の入力手段51aに接続され、受信回路53は誘電体デュプレクサ51の出力手段51bに接続され、アンテナ54は誘電体デュプレクサ31のアンテナ接続手段51cに接続される。
【0057】
誘電体デュプレクサ51は、2つの誘電体フィルタ55a,55bを備える。誘電体フィルタ55a,55bは、本発明の構成を備える誘電体共振器50に、外部結合手段57を接続してなるものである。
【0058】
誘電体フィルタ55aは、入力手段51aとアンテナ接続手段51cとの間に接続される。一方、誘電体フィルタ55bは、出力手段51bとアンテナ接続手段51cとの間に接続される。
【0059】
【実施例】
以下のようにして、誘電体共振器の試料を作製し、これらの高周波特性を評価した。
【0060】
(実施例1)
本実施例では、誘電体基体として、寸法12mm×12mm×15.3mmのBa(Sn,Zr,Mg,Ta)系セラミックからなり、長手方向に直径4mmの貫通孔が形成された誘電体ブロックを準備した。
【0061】
次に、超伝導ペースト用の原料粉末として、Bi23,PbO,SrCO3,BaCO3,CaCO3,CuOの各粉末を準備した。次に、各原料粉末を、焼結後の組成がBi1.85Pb0.35Sr1.90Ba0.20Ca2.05Cu3.3510.625(Bi系2223相酸化物)となるように調合した。なお、このBi系2223相酸化物の臨界温度Tcは110Kである。次に、このようにして得られた調合物を、エタノールおよびイソプロピルアルコールの混合溶媒中でボールミル粉砕した後、780℃で12時間仮焼、粉砕し、得られた仮焼粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して、超伝導ペーストを作製した。
【0062】
一方、金属ペーストの原料粉末としてAg粉末を準備し、このAg粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して金属ペーストを作成した。
【0063】
次に、スクリーン印刷により誘電体ブロックの側面上に超伝導ペーストを塗布し、超伝導ペーストを付着させたブラシにより誘電体ブロックに形成された貫通孔内周面上に超伝導ペーストを塗布して、誘電体ブロックの側面上および誘電体ブロックに形成された貫通孔内周面上に、超伝導膜を形成した。次に、400℃で加熱して有機成分を揮発させ、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行った。
【0064】
次に、超伝導ペーストを塗布したときと同様の手段を用いて超伝導膜上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発させ、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行った。
【0065】
本実施例では、超伝導ペーストの塗布厚を変化させ、超伝導層の平均厚みdが1μm,2μm,5μm,9μm,10μmである誘電体共振器の試料1〜5を作製した。なお、各試料における超伝導層の平均厚みは、超伝導層の断面を電子顕微鏡で観察することにより測定した。
【0066】
次に、試料1〜5の使用温度を75Kとし、各試料について、75Kにおける共振周波数f75(MHz)を測定したところ、いずれの試料においてもf75=1900であった。また、各試料について、120K,295Kにおける共振周波数をそれぞれ測定し、誘電体ブロックを構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を求めたところ、τf=4であった。
【0067】
次に、各試料について、X=|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|の値を求めた。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。さらに、各試料について、75Kにおける無負荷Q(Qu at 75K)、295Kにおける無負荷Q(Quat 295K)を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0068】
【表1】
Figure 0004140403
【0069】
表1からわかるように、Xの値が6より大きくなっている試料5については、δf0の値が±3MHzの許容範囲を超えている。また、超伝導層12の平均厚みdが2μmより薄くなっている試料1については、75Kにおける無負荷Qが20000を下回っている。
【0070】
なお、各試料の共振周波数、無負荷Qを測定する際には、図9に示すような金属ケースに各試料を収納して測定した。この金属ケース61は、無酸素銅からなる金属キャビティ62と、その開口部を覆うように載置された無酸素銅からなる金属蓋63と、からなる。金属蓋63には励振ケーブル64a,64bが設けられており、励振ケーブル64a,64bは、ネットワークアナライザ(図示せず)に接続されている。誘電体共振器60(各試料)は、樹脂シート65を介して金属キャビティ62の底面に載置される。後述する実施例2〜8においても、同様にして各試料の共振周波数、無負荷Qを測定した。
【0071】
(実施例2)
本実施例では、実施例1と同じ寸法、形状であり、同じBa(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミックからなるが、実施例1よりもZrの置換量を多くした誘電体ブロックを準備した。この誘電体ブロックを用いて、実施例1と同様にして、超伝導層の平均厚みdが1μm,2μm,5μm,10μm,12μm,13μmである誘電体共振器の試料6〜11を作製した。
【0072】
次に、試料6〜11の使用温度を75Kとし、各試料について、75Kにおける共振周波数f75(MHz)を測定したところ、いずれの試料においてもf75=1900であった。また、各試料について、120K,295Kにおける共振周波数をそれぞれ測定し、誘電体ブロックを構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を求めたところ、τf=8であった。
【0073】
次に、各試料について、X=|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|の値を求めた。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。さらに、各試料について、75Kにおける無負荷Q(Qu at 75K)、295Kにおける無負荷Q(Quat 295K)を測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0074】
【表2】
Figure 0004140403
【0075】
表2からわかるように、Xの値が6より大きくなっている試料11については、δf0の値が±3MHzの許容範囲を超えている。また、超伝導層12の平均厚みdが2μmより薄くなっている試料6については、75Kにおける無負荷Qが20000を下回っている。一方、超伝導層12の平均厚みdが12μmより厚くなっている試料11については、295Kにおける無負荷Qが1000を下回っている。
【0076】
(実施例3)
本実施例では、実施例1と同じ寸法、形状であり、同じBa(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミックからなるが、実施例1よりもZrの置換量を多くした誘電体ブロックを準備した。この誘電体ブロックを用いて、実施例1と同様にして、超伝導層の平均厚みdが3μm,4μm,10μm,12μm,13μm,16μm,17μmである誘電体共振器の試料12〜18を作製した。
【0077】
次に、試料12〜18の使用温度を75Kとし、各試料について、75Kにおける共振周波数f75(MHz)を測定したところ、いずれの試料においてもf75=1900であった。また、各試料について、120K,295Kにおける共振周波数をそれぞれ測定し、誘電体ブロックを構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を求めたところ、τf=12であった。
【0078】
次に、各試料について、X=|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|の値を求めた。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。さらに、各試料について、75Kにおける無負荷Q(Qu at 75K)、295Kにおける無負荷Q(Quat 295K)を測定した。その結果を下記の表3に示す。
【0079】
【表3】
Figure 0004140403
【0080】
表3からわかるように、Xの値が6より大きくなっている試料12,18については、δf0の値が±3MHzの許容範囲を超えている。また、超伝導層12の平均厚みdが12μmより厚くなっている試料16〜18については、295Kにおける無負荷Qが1000を下回っている。
【0081】
(実施例4)
本実施例では、実施例1と同じ寸法、形状であり、同じBa(Sn,Zr,Mg,Ta,Nb)O3系セラミックからなるが、セラミックからなる誘電体ブロックを準備した。この誘電体ブロックを用いて、実施例1と同様にして、超伝導層の平均厚みdが1μm,2μm,5μm,10μm,12μm,13μmである誘電体共振器の試料19〜24を作製した。
【0082】
次に、試料19〜24の使用温度を75Kとし、各試料について、75Kにおける共振周波数f75(MHz)を測定したところ、いずれの試料においてもf75=1900であった。また、各試料について、120K,295Kにおける共振周波数をそれぞれ測定し、誘電体ブロックを構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を求めたところ、τf=8であった。
【0083】
次に、各試料について、X=|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|の値を求めた。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。さらに、各試料について、75Kにおける無負荷Q(Qu at 75K)、295Kにおける無負荷Q(Quat 295K)を測定した。その結果を下記の表4に示す。
【0084】
【表4】
Figure 0004140403
【0085】
表4からわかるように、Xの値が6より大きくなっている試料24については、δf0の値が±3MHzの許容範囲を超えている。また、超伝導層12の平均厚みdが2μmより薄くなっている試料19については、75Kにおける無負荷Qが20000を下回っている。一方、超伝導層12の平均厚みdが12μmより厚くなっている試料24については、295Kにおける無負荷Qが1000を下回っている。
【0086】
(実施例5)
本実施例では、実施例4と同じ寸法、形状であり、同じBa(Sn,Zr,Mg,Ta,Nb)O3系セラミックからなるが、実施例4よりZrおよびNbの置換量を多くした誘電体ブロックを準備した。この誘電体ブロックを用いて、実施例1と同様にして、超伝導層の平均厚みdが3μm,4μm,10μm,12μm,13μm,16μm,17μmである誘電体共振器の試料25〜31を作製した。
【0087】
次に、試料25〜31の使用温度を75Kとし、各試料について、75Kにおける共振周波数f75(MHz)を測定したところ、いずれの試料においてもf75=1900であった。また、各試料について、120K,295Kにおける共振周波数をそれぞれ測定し、誘電体ブロックを構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を求めたところ、τf=12であった。
【0088】
次に、各試料について、X=|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|の値を求めた。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。さらに、各試料について、75Kにおける無負荷Q(Qu at 75K)、295Kにおける無負荷Q(Quat 295K)を測定した。その結果を下記の表5に示す。
【0089】
【表5】
Figure 0004140403
【0090】
表5からわかるように、Xの値が6より大きくなっている試料25,31については、δf0の値が±3MHzの許容範囲を超えている。また、超伝導層12の平均厚みdが12μmより厚くなっている試料29〜31については、295Kにおける無負荷Qが1000を下回っている。
【0091】
(実施例6)
本実施例では、誘電体基体として、直径39mm、厚さ3mmのBa(Sn,Zr,Mg,Ta)系セラミックからなる円板状の誘電体基板を準備した。
【0092】
次に、実施例1で用いたのと同じ超伝導ペーストを、スクリーン印刷により誘電体基板の両主面上に塗布し、超伝導膜を形成した。次に、400℃で加熱して有機成分を揮発させ、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行った。
【0093】
次に、実施例1で用いたのと同じ金属ペーストを、スクリーン印刷により超伝導膜上に塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発させ、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行った。
【0094】
本実施例では、超伝導ペーストの塗布厚を変化させ、超伝導層の平均厚みdが1μm,2μm,5μm,9μm,10μmである誘電体共振器の試料32〜36を作製した。
【0095】
次に、試料32〜36の使用温度を75Kとし、各試料について、75Kにおける共振周波数f75(MHz)を測定したところ、いずれの試料においてもf75=1900であった。また、各試料について、120K,295Kにおける共振周波数をそれぞれ測定し、誘電体ブロックを構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を求めたところ、τf=4であった。
【0096】
次に、各試料について、X=|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|の値を求めた。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。さらに、各試料について、75Kにおける無負荷Q(Qu at 75K)、295Kにおける無負荷Q(Quat 295K)を測定した。その結果を下記の表6に示す。
【0097】
【表6】
Figure 0004140403
【0098】
表6からわかるように、Xの値が6より大きくなっている試料36については、δf0の値が±3MHzの許容範囲を超えている。また、超伝導層12の平均厚みdが2μmより薄くなっている試料32については、75Kにおける無負荷Qが20000を下回っている。
【0099】
(実施例7)
本実施例では、実施例6と同じ寸法、形状であり、同じBa(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミックからなるが、実施例1よりもZrの置換量を多くした誘電体基板を準備した。この誘電体基板を用いて、実施例6と同様にして、超伝導層の平均厚みdが1μm,2μm,5μm,10μm,12μm,13μmである誘電体共振器の試料37〜42を作製した。また、実施例6と同様にして、試料37〜42を用いてTM010モードの誘電体共振器を作製した。
【0100】
次に、試料37〜42の使用温度を75Kとし、各試料について、75Kにおける共振周波数f75(MHz)を測定したところ、いずれの試料においてもf75=1900であった。また、各試料について、120K,295Kにおける共振周波数をそれぞれ測定し、誘電体ブロックを構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を求めたところ、τf=8であった。
【0101】
次に、各試料について、X=|d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|の値を求めた。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。さらに、各試料について、75Kにおける無負荷Q(Qu at 75K)、295Kにおける無負荷Q(Quat 295K)を測定した。その結果を下記の表7に示す。
【0102】
【表7】
Figure 0004140403
【0103】
表7からわかるように、Xの値が6より大きくなっている試料42については、δf0の値が±3MHzの許容範囲を超えている。また、超伝導層12の平均厚みdが2μmより薄くなっている試料37については、75Kにおける無負荷Qが20000を下回っている。一方、超伝導層12の平均厚みdが12μmより厚くなっている試料42については、295Kにおける無負荷Qが1000を下回っている。
【0104】
(実施例8)
本実施例では、実施例6と同じ寸法、形状であるが、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系セラミックからなり、共振周波数の温度係数τfを0ppm/Kに調整した誘電体基板を準備した。この誘電体基板を用いて、実施例6と同様にして、超伝導層の平均厚みdが5μm,10μm,20μmである誘電体共振器の試料43〜45を作製した。また、実施例6と同様にして、試料43〜45を用いてTM010モードの誘電体共振器を作製した。次に、各試料について、75K,295Kにおける共振周波数の差δf0=(f75−f295)(MHz)を求めた。その結果を下記の表8に示す。
【0105】
【表8】
Figure 0004140403
【0106】
試料43〜45では、誘電体基板を構成する誘電体の共振周波数の温度係数τfが0ppm/Kである。この場合、誘電体共振器の共振周波数の温度特性は、図10に示すグラフのようになる。図10からわかるように、この誘電体共振器においてはfTc=fS=f295となるため、超伝導転移による共振周波数の変化量δf1は、
δf1=fT−fS
=fT−f295
となる。すなわち、本実施例においては、δf0=(f75−f295)がδf1に相当する。ここで、表8の試料43〜45からは、
δf0≒d×0.5
という比例関係が読み取れるため、
δf1≒d×0.5
が成り立つ。
【0107】
【発明の効果】
本発明に係る誘電体共振器によれば、使用温度における誘電体共振器の共振周波数と、室温295Kにおける誘電体共振器の共振周波数とのズレを小さく抑えることができる。したがって、この誘電体共振器を用いてなる誘電体フィルタでは、冷凍機停止時においても、低温時と同じ帯域特性を実現することができる。
【0108】
また、本発明に係る誘電体共振器の製造方法によれば、
|d−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
の関係式から、超伝導層の厚みdの最適範囲を特定することにより、使用温度における誘電体共振器の共振周波数と、室温295Kにおける誘電体共振器の共振周波数とのズレを小さく抑えることができる。
【0109】
また、本発明に係る誘電体共振器の製造方法によれば、
|dG−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
の関係式から、誘電体の共振周波数の温度係数τfの最適範囲を特定することにより、使用温度における誘電体共振器の共振周波数と、室温295Kにおける誘電体共振器の共振周波数とのズレを小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の誘電体共振器を示す断面図である。
【図2】実施形態1の誘電体共振器における共振周波数の温度特性を示すグラフである。
【図3】実施形態1の誘電体共振器の製造方法を示す工程断面図である。
【図4】実施形態2の誘電体共振器を示し、(a)はその斜視図、(b)は斜視図(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図5】実施形態2の誘電体共振器の変形例を示す斜視図である。
【図6】実施形態3の誘電体フィルタを示す斜視図である。
【図7】実施形態4の通信機装置を示す概要図である。
【図8】実施形態5の通信機装置を示すブロック図である。
【図9】実施例1〜8で用いられた金属ケースを示す断面図である。
【図10】実施例8の誘電体共振器における共振周波数の温度特性を示すグラフである。
【図11】従来の誘電体共振器を示す断面図である。
【図12】従来の誘電体共振器における共振周波数の温度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
10,20 誘電体共振器
11,21 誘電体基板(誘電体基体)
12,22a,22b 超伝導層
12a 超伝導膜
13,23a,23b 金属層
13a 金属膜
14,24a,24b 超伝導電極
35 誘電体フィルタ
37a,37b 入出力電極(外部結合手段)
40 通信機装置
41 誘電体フィルタ
42 LNA(増幅器)
44 冷凍機
47a,47b ハーメチックコネクタ(外部結合手段)
50 通信機装置
51 誘電体デュプレクサ
51a 入力手段
51b 出力手段
51c アンテナ接続手段
52 送信回路
53 受信回路
54 アンテナ

Claims (9)

  1. 誘電体基体と、前記誘電体基体の外表面上に形成された超伝導層と、前記超伝導層上に形成された金属層と、を備え、
    前記超伝導層および前記金属層により共振器用の電極を構成する誘電体共振器であって、
    前記超伝導層の平均厚みをd(μm)、
    前記超伝導層を構成する超伝導体の転移温度以下での誘電体共振器の使用温度をT(K)、
    前記使用温度Tにおける誘電体共振器の共振周波数をfT(MHz)、
    前記誘電体基体を構成する誘電体の共振周波数の温度係数をτf(ppm/K)、
    としたとき、
    |d−2{τf×fT×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
    を満足することを特徴とする誘電体共振器。
  2. 前記誘電体基体を構成する誘電体は、Ba(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミック、またはBa(Sn,Zr,Mg,Ta,Nb)O3系セラミックであることを特徴とする、請求項1に記載の誘電体共振器。
  3. 前記超伝導層の平均厚みdは、2≦d≦12の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の誘電体共振器。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の誘電体共振器と、前記誘電体共振器に接続された外部結合手段と、を備えることを特徴とする、誘電体フィルタ。
  5. 少なくとも二つの誘電体フィルタと、
    前記誘電体フィルタに接続される入出力手段と、
    前記誘電体フィルタに共通に接続されるアンテナ接続手段と、
    を備え、
    前記誘電体フィルタの少なくとも一つが請求項4に記載の誘電体フィルタであることを特徴とする誘電体デュプレクサ。
  6. 請求項4に記載の誘電体フィルタと、
    前記誘電体フィルタに接続された増幅器と、
    前記誘電体フィルタおよび前記増幅器にそれぞれ接続された外部結合手段と、
    前記誘電体フィルタを冷却する冷凍機と、
    を備えることを特徴とする通信機装置。
  7. 請求項5に記載の誘電体デュプレクサと、
    前記誘電体デュプレクサの少なくとも一つの入出力手段に接続される送信回路と、
    前記送信回路に接続される前記入出力手段と異なる少なくとも一つの入出力手段に接続される受信回路と、
    前記誘電体デュプレクサのアンテナ接続手段に接続されるアンテナと、
    を備えることを特徴とする通信機装置。
  8. 誘電体基体と、前記誘電体基体の外表面上に形成された超伝導層と、前記超伝導層上に形成された金属層と、を備え、
    前記超伝導層および前記金属層により共振器用の電極を構成する誘電体共振器の製造方法であって、
    前記超伝導層を構成する超伝導体の転移温度以下での誘電体共振器の使用温度T(K)における、誘電体共振器の共振周波数の目標値fTG(MHz)を設定し、
    前記誘電体基体を構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)を測定し、
    |d−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、d>0)
    で表される関係式にfTG,τfの値を代入して、前記超伝導層の平均厚みd(μm)の最適範囲を特定する工程と、
    前記超伝導層の平均厚みが前記最適範囲に収まるように、前記誘電体基体の外表面上に、加熱後に前記超伝導層となる超伝導膜を形成する工程と、
    前記超伝導膜上に、加熱後に前記金属層となる金属膜を形成する工程と、
    前記超伝導膜および前記金属層を加熱する工程と、
    を備えることを特徴とする、誘電体共振器の製造方法。
  9. 誘電体基体と、前記誘電体基体の外表面上に形成された超伝導層と、前記超伝導層上に形成された金属層と、を備え、
    前記超伝導層および前記金属層により共振器用の電極を構成する誘電体共振器の製造方法であって、
    前記超伝導層を構成する超伝導体の転移温度以下での誘電体共振器の使用温度T(K)における、誘電体共振器の共振周波数の目標値fTG(MHz)を設定し、
    前記超伝導層の平均厚みの目標値dG(μm)を設定し、
    |dG−2{τf×fTG×(295−T)×10-6}|≦6(ただし、dG>0)
    で表される関係式にfTG,dGの値を代入して、前記誘電体基体を構成する誘電体の共振周波数の温度係数τf(ppm/K)の最適範囲を特定する工程と、
    前記最適範囲に収まる共振周波数の温度係数を有する誘電体からなる誘電体基体を準備する工程と、
    前記誘電体基体の外表面上に、加熱後に前記超伝導層の平均厚みがdGとなるように超伝導膜を形成する工程と、
    前記超伝導膜上に、加熱後に前記金属層となる金属膜を形成する工程と、
    前記超伝導膜および前記金属層を加熱する工程と、
    を備えることを特徴とする、誘電体共振器の製造方法。
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