JP4140400B2 - Egr冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのEGR(排気再循環)ガスを冷却するEGR冷却に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの排気中に含まれている窒素酸化物(NOx )の量を低減させるための手段としてEGRがある。これは、エンジンの排気通路から排気の一部を取り出して吸気通路へ還流させることにより、シリンダ内の燃焼ガス温度を低下させて、NOx の生成を抑制するものである。EGRによりNOx の生成が抑制される理由として、シリンダ内の空気の一部が、排気中のCO、HOなどと置き換わることにより気体の熱容量が増大し、これにより燃焼ガスの温度上昇が抑えられること、および空気過剰率が低下する、つまり吸気中の酸素濃度が低下することによりNO生成が抑制されることが挙げられる。
【0003】
この場合、再循環される排気(以降、EGRガスと書く)を、予め何らかの冷却手段により温度を下げて、エンジンの吸気通路へ還流させれば、EGRによるNOx低減効果をさらに高めることができる。
【0004】
このため、エンジンの冷却水を用いてEGRガス温度を下げる、いわゆる水冷式のEGRクーラが提案されている。
【0005】
ところで、エンジンのアイドリング中あるいは、始動直後等の排気温度が低い場合、排気中における炭化水素の濃度が高く、これらの成分がEGRクーラ内のEGRガス通路内壁に付着・堆積して、EGRクーラの冷却性能が低下する可能性がある。
【0006】
この問題を解決するために、EGRクーラと並列にバイパス管路を設けるとともに、EGRクーラの遮断およびバイパス管路の連通とEGRクーラの連通およびバイパス管路の遮断とを切替える管路切替え弁を設け、エンジンの排気温度が低いときは、EGRガスを、EGRクーラを通さずに上述のバイパス通路を通して吸気通路へ還流させる技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−280565号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の特開平11−280565号公報に開示されるEGR装置においては、EGRクーラのほかに、バイパス管路、管路切替え弁等が必要になる。これらの追加部品を車両のエンジンルーム内に配置するのは非常に困難であり、組付け工数が増大するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、EGR冷却装置の構成に工夫を凝らして、組付け作業性に優れるEGR冷却装置を提供することにある。
【0010】
本発明の請求項1に記載のEGR冷却装置は、エンジンの排気通路と吸気通路を結ぶEGR通路途中に設けられ且つその内部にエンジンの冷却水の一部を通過させてEGRガスを冷却するEGRクーラと、EGRクーラへの冷却水の導入および遮断を切替える冷却水切替え弁とを備えるEGR冷却装置であって、EGRクーラは、EGRガスが流れる第1通路と、第1通路と平行に設けられEGRガスが流れる第2通路と、第1通路の連通および遮断を切替える第1切替え弁と、第2通路の連通および遮断を切替える第2切替え弁とを備え、第1通路の流通抵抗は第2通路の流通抵抗よりも大きく、冷却水切替え弁によるEGRクーラへの冷却水の導入遮断時には、第2切替え弁により第2通路が連通され且つ第1切替え弁により第1通路が遮断される構成としている。
【0011】
上述の構成によれば、エンジンの運転中、EGRクーラに冷却水が導入されない時には第2通路が連通状態となり、EGRガスはEGRクーラの第2通路を流れて吸気通路に至る。このとき、第2通路を流れるEGRガスとエンジン冷却水間での熱交換がほんど行われずEGRガスの温度はほとんど低下しない。すなわち、第2通路は、従来のEGR冷却装置におけるバイパス通路としての機能を果たすことができる。一方、EGRクーラに冷却水が導入される時に第1切替え弁により第1通路を連通させれば、EGRガスは第1通路を通過中に冷却水との熱交換により温度が低下する。すなわち、第1通路は、従来のEGR冷却装置におけるEGRクーラの機能を果たすことになる。
【0012】
これにより、従来のEGR冷却装置においてEGRクーラとは別の独立した部品であったバイパス通路および通路切替え弁を、EGRクーラ内に一体的に内蔵させ、これらを1つの部品とすることができる。したがって、EGR冷却装置のエンジンへの組付け工数を大幅に低減することができる。
【0013】
また、本発明の請求項1に記載のEGR冷却装置においては、第1通路および第2通路それぞれの連通・遮断を独立して制御可能できるので、エンジンの中・高負荷時において、第1通路および第2通路の両方にEGRガスを流すことも可能である。これにより、従来のEGR冷却装置ではEGRクーラ使用時、すなわちEGRガス冷却時においてはEGRガスが流れないバイパス通路をEGRガス冷却に利用することができる。したがって、従来のEGR冷却装置ではエンジン始動時等短時間のみ使用していた、言い換えると稼動率が低かったバイパス通路をEGRガスの冷却のためにも利用することで、EGR冷却装置全体の体格を小さくすることができる。また、第1通路の流通抵抗を第2通路の流通抵抗よりも大きい構成とすることにより、第1通路におけるEGRガスから冷却水への放熱量を増大して、EGRクーラの冷却効率(第1通路の単位表面積当りの放熱量)を増大する、言い換えるとEGRクーラを小型化することができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載のEGR冷却装置は、前記第1切替え弁は弁開度を連続的に制御可能である構成としている。これにより、エンジンの中・高負荷域運転状態において、EGRガスを冷却しつつエンジンに吸入させるEGRガス流量を調節することができる。したがって、従来のEGR冷却装置において、EGRクーラの下流側に接続されてエンジンに吸入させるEGRガス流量を調節する、いわゆるEGRバルブを廃止して、EGR冷却装置の組付け工数を低減できる。この場合、本発明の請求項3に記載のEGR冷却装置のように、第1切替え弁および第2切替え弁は弁開度を連続的に制御可能である構成とすれば、エンジンに吸入させるEGRガス流量の調節をよりきめ細かく行うことができる。
【0015】
本発明の請求項4に記載のEGR冷却装置は、第1通路および第2通路はEGRガス流動方向と直交する方向における断面形状が同一の管状部材から形成される構成としている。
【0016】
一般に、EGRガスを第2通路に流す、言い換えるとEGRガスを冷却しないのは、エンジンの運転状態が低速・低負荷域の場合である。すなわちEGRガス流量が少ない状態である。したがって、第1通路の断面積は第2通路の断面積よりも大きく設定されている。そこで、EGRクーラにおいて、第1通路および第2通路を同一の管状部材から形成するとともに、第1通路の断面積および第2通路の断面積がそれぞれ所定値となるように各通路に用いる管状部材の本数を決定すれば、管状部材を製作するための型を複数種類準備しなくてよいので、EGRクーラの製作コストを低減することができる。
【0018】
本発明の請求項に記載のEGR冷却装置は、第1通路を形成する管状部材はその内部に熱交換促進用のインナーフィンを備え、第2通路にはインナーフィンが無い構成としている。これにより、第1通路におけるEGRガスから冷却水への放熱量を増大してEGRクーラの冷却効率(第1通路の単位表面積当りの放熱量)を増大する、言い換えるとEGRクーラを小型化することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態によるEGR冷却装置2を、自動車用エンジンに搭載されるEGRシステム100に適用した場合を例に図に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2が適用されるEGRシステム100の全体構成を説明する模式図である。
【0021】
図2は、本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2におけるEGRクーラ3の断面図である。
【0022】
図3は、図2のIII−III線断面図である。
【0023】
EGRシステム100は、図1に示すように、エンジン1の排気通路4と吸気通路5をEGR通路6により連通させて、エンジンの排気の一部を吸気通路5に還流させる、つまりエンジンのシリンダ内に吸入させるものである。そして、吸気通路5に還流される排気、すなわちEGRガス流量がエンジン1の運転状態(回転数、負荷等)に応じて最適な流量となるように、主には後述する切替え弁33の弁開度を調節している。通常、EGR通路6は、吸気通路5のエアクリーナ11の下流側に開口・接続している。
【0024】
EGR冷却装置2は、図1に示すように、EGR通路6の途中に設けられるEGRクーラによりEGRガスを冷却し、吸気通路5に還流されるEGRガスの温度を下げるためのものである。
【0025】
EGR冷却装置2は、EGR通路6の途中に設けられエンジン冷却水によりEGRガスを冷却するためのEGRクーラ3と、エンジン1の冷却水通路12から冷却水をEGRクーラ3まで導入する冷却水導入管路8と、冷却水導入管路8の途中に設けられ冷却水導入管路8の連通・遮断を切替える冷却水切替え弁9とから構成されている。そして、EGRクーラ3は、EGRガスが流れる第1通路であるメイン通路31と、メイン通路31と並列に設けられEGRガスが流れる第2通路であるバイパス通路32と、メイン通路31の連通・遮断を切替える第1切替え弁である切替え弁33と、バイパス通路32の連通・遮断を切替える第2切替え弁である切替え弁34とを備えている。
【0026】
エンジン1の冷却水回路において、ウォータポンプ14により加圧された冷却水は、図1中の矢印で示すように、エンジン1内を循環した後、冷却水通路12を経てラジエータ13に流入し冷却される。そして、冷却水通路21を経てウォータポンプ14に吸入され加圧されて再びエンジン1内に送られる。
【0027】
一方、図1に示すように、EGRクーラ3の冷却水入口3cは冷却水導入通路8aを介してエンジン1の冷却水通路12に連通するとともに、EGRクーラ3の冷却水出口3dは冷却水流出通路8bを介してエンジン1の冷却水通路21に連通している。これにより、エンジン1からラジエータ13に向かう冷却水の一部が、冷却水導入通路8aを経てEGRクーラ3に至りウォータジャケット35を通過し、冷却水流出通路8bを経て冷却水通路21に合流してウォータポンプ14に吸入される。
【0028】
また、冷却水導入通路8aの途中には、図1に示すように、冷却水切替え弁9が設けられている。冷却水切替え弁9は、電磁弁を備えて電気的に制御され、冷却水導入管路8の連通・遮断を切替えることによりEGRクーラ3への冷却水の導入・遮断を制御している。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2のEGRクーラ3の構成について説明する。
【0030】
EGRクーラ3の本体部39は、耐熱性および耐腐食性に優れる材質、たとえばステンレス鋼等から形成されている。EGRクーラ3本体部39の一端側(図2の左側)には、図2に示すように、ガス入口3aが設けられ、他端側(図2の右下側)にはガス出口3bが設けられている。したがって、EGRガスは、図2中の矢印で示すように、ガス入口3aからEGRクーラ3に入り、ガス出口3bからEGRクーラ3から流出する。
【0031】
EGRクーラ3は、EGRガスが流れる通路として、図2に示すように、メイン通路31およびメイン通路31と並列に設けられるバイパス通路32を備えている。EGRガスは、メイン通路31内およびバイパス通路32内を図2の矢印で示す方向に流れる。メイン通路31およびバイパス通路32はステンレス鋼により管状に形成されており、EGRガス流動方向(図2の左右方向)と直交する方向における両通路31、32の断面形状は、図3に示すように同一である。また、メイン通路31の内部には、図3に示すように、インナーフィン31aが装着されている。このインナーフィン31aにより、メイン通路31におけるEGRガスから冷却水への放熱量を増大させている。なお、本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2のEGRクーラは、メイン通路31を6本、バイパス通路32を3本備えている。メイン通路31およびバイパス通路32の両端部には、エンドプレート36a、36bが、ろう付け又は溶接等により気密的に取り付けられている。
【0032】
すなわち、本体部39、両通路31、32の外周、エンドプレート36aおよび36bにより取囲まれる空間が、冷却水が流れるウォータジャケット35となる。本体部39には、ウォータジャケット35に対応して、図2に示すように、冷却水入口3cおよび冷却水出口3dが設けられている。冷却水が、冷却水入口3cからウォータジャケット35内に流入し、ウォータジャケット35内を冷却水出口3dに向かって流れることにより、メイン通路31およびバイパス通路32内を流れるEGRガスと冷却水との間で熱交換が行われる。つまりEGRガスが冷却される。
【0033】
メイン通路31およびバイパス通路32の下流側(図2の右側)のエンドプレート36bの下流側(図2の右側)には、図2に示すように、弁座板38が配置されている。弁座板38は、耐熱性、耐摩耗性に優れる材質、たとえばニッケル、モリブデン等を含有する合金鋼から形成されている。弁座板38には、後述する切替え弁33、34が着座する弁座部38a、38bが形成されている。
【0034】
エンドプレート36bと弁座板38の間には、図2に示すように、仕切り板37が配設されている。仕切り板37は、エンドプレート36bと弁座板38の間において、メイン通路31とバイパス通路32の間の連通を遮断している。
【0035】
弁座板38の下流側(図2の右側)には、図2に示すように、メイン通路31の連通・遮断を切替える第1切替え弁である切替え弁33、およびバイパス通路32の連通・遮断を切替える第2切替え弁である切替え弁34が取り付けられている。
【0036】
切替え弁33、34は、動力源として、たとえばステッピングモータあるいはリニアソレノイド等が用いられ、弁開度、すなわち弁体33a、弁体34aのリフト(図2中における左右方向の位置)を連続的に制御できる方式のものである。つまり、全閉位置および全開位置だけでなく、全閉位置−全開位置間の任意の位置に保持可能な構造のものである。
【0037】
これにより、コントローラ10により切替え弁33あるいは切替え弁34のどちらか一方の弁開度を制御する、または切替え弁33および切替え弁34の両方の弁開度を同時に制御して、吸気通路5に還流されるEGRガス流量を制御することが可能となる。
【0038】
切替え弁33の弁体33aが弁座板38の弁座部38aに着座すると、メイン通路31が遮断され、弁体33aが弁座部38aから離れる方向(図2の右方向)に所定距離移動して開放状態になると、メイン通路31が連通状態となる。同様に、切替え弁34の弁体34aが弁座板38の弁座部38bに着座すると、バイパス通路32が遮断され、弁体34aが弁座部38bから離れる方向(図2の右方向)に所定距離移動して開放状態になると、バイパス通路32が連通状態となる。なお、図2は、切替え弁33を着座状態、切替え弁34を開放状態で示している。
【0039】
次に、上述した構成のEGR冷却装置2が適用されるEGRシステム100の作動についてEGR冷却装置2の作動を中心に、図1の模式図に基づいて説明する。
【0040】
EGRシステム100において、コントローラ10は、図1に示すように、イグニッションスイッチ19を介してバッテリ20から電力を供給されている。そして、エンジン1の運転状態、すなわち、各種センサ15、16、17、19により検出した検出信号に基づいて、切替え弁33、切替え弁34を駆動して、吸気通路5に還流されるEGRガスの冷却・非冷却を制御するとともに、吸気通路5に還流されるEGRガス流量を最適値に制御している。なお、本発明の第1実施形態によるEGRシステム100においては、エンジン1の運転状態を検出するためのセンサとして、冷却水温度を検出する水温センサ15、排気温度を検出する排気温センサ16、クランク軸(図示せず)の回転数を検出する回転数センサ17および負荷センサ18を用いている。ここで、負荷センサ18として、たとえば、エンジン1の燃料噴射量センサ(図示せず)、あるいはスロットルバルブの回動位置を検出するスロットルセンサ(図示せず)等を用いることが可能である。
【0041】
(1)エンジン1が無負荷域または極低負荷域且つ排気温度が所定値以下の場合。
【0042】
ここで、排気温度の所定値とは、エンジンの通常運転中における排気温度より低く、エンジン1の始動直後、あるいはアイドリング運転時等において出現する値であり、エンジン毎に決定される。
【0043】
この場合、コントローラ10は、切替え弁33を遮断状態に、切替え弁34を連通状態に、冷却水切替え弁8を遮断状態にそれぞれ駆動する。さらに、吸気通路5に還流されるEGRガス流量が最適値となるように切替え弁34のバルブ開度を制御する。
【0044】
これにより、EGRガスはEGRクーラ3のバイパス通路32を経由して吸気通路へ還流されるとともに、EGRクーラ3には冷却水が流れなくなる。バイパス通路32にはインナーフィン31aが無く、EGRクーラ3に冷却水が流れないので、EGRクーラ3におけるEGRガスの温度低下は極わずかとなり、エンジン1の燃焼状態を安定させることができる。また、バイパス通路32にはインナーフィン31aが無いため、EGRガス中の微粒子成分、特に粘性の強い成分が付着せず、したがって、EGRクーラ3中にEGRガス中の微粒子成分が付着・堆積することがない。
【0045】
(2)エンジン1が低負荷域および中負荷域且つ排気温度が所定値を超える場合。
【0046】
この場合、コントローラ10は、切替え弁33を連通状態に、切替え弁34を遮断状態に、冷却水切替え弁8を連通状態にそれぞれ駆動する。さらに、吸気通路5に還流されるEGRガス流量が最適値となるように切替え弁33のバルブ開度を制御する。
【0047】
これにより、EGRガスはEGRクーラ3のメイン通路31を経由して吸気通路へ還流されるとともに、EGRクーラ3のウォータジャケット35内に冷却水が流れる。メイン通路31にはインナーフィン31a装着され、EGRクーラ3に冷却水が流れるので、EGRガスは、EGRクーラ3を通過することにより冷却されて温度が低下する。したがって、EGRシステム100によるNOx低減効果を良好に発揮させることができる。
【0048】
(3)エンジン1が低負荷域および中負荷域且つ排気温度が第2の所定値を超える場合。
【0049】
ここで、排気温度の第2の所定値とは、エンジンの通常運転中における排気温度より高く、エンジン1の負荷が大きい場合等において出現する値であり、エンジン毎に決定される。
【0050】
この場合、コントローラ10は、切替え弁33を連通状態に、切替え弁34を連通状態に、冷却水切替え弁8を連通状態にそれぞれ駆動する。さらに、吸気通路5に還流されるEGRガス流量が最適値となるように切替え弁33のバルブ開度および切替え弁34のバルブ開度を制御する。
【0051】
これにより、EGRガスはEGRクーラ3のメイン通路31およびバイパス通路32を経由して吸気通路へ還流されるとともに、EGRクーラ3のウォータジャケット35内に冷却水が流れる。メイン通路31にはインナーフィン31a装着され、EGRクーラ3に冷却水が流れるので、EGRガスは、EGRクーラ3を通過することにより冷却されて温度が低下する。また、バイパス通路32においても、その外表面からEGRガスの熱を冷却水に放熱するのでEGRガスの温度を低下させることができる。すなわち、従来のEGR冷却装置におけるバイパス通路はEGRガスの冷却機能を備えていないのに対して、本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2においては、バイパス通路32にEGRガス冷却機能を附加させている。したがって、EGRシステム100によるNOx低減効果を良好に発揮させることができる。
【0052】
以上説明した、本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2においては、EGRクーラ3へ冷却水を導入する冷却水導入通路8の途中に、EGRクーラ3への冷却水の導入および遮断を切替える冷却水切替え弁9を設け、且つEGRクーラ3には、EGRガスが流れるメイン通路31と、メイン通路31と並列に設けられるバイパス通路32と、メイン通路31の連通および遮断を切替える切替え弁33と、バイパス通路32の連通および遮断を切替える切替え弁34とを備える構成としている。
【0053】
従来のEGR冷却装置において、EGRクーラとは別の独立した部品であるバイパス通路および管路切替え弁を、EGRクーラ3内にバイパス通路32および切替え弁33、34として一体化して1つの部品として構成したことで、特に、EGRガス関係の配管の接続個所数を大幅に減らして、EGR冷却装置2のエンジン1への組付け工数を低減することができる。
【0054】
また、冷却水切替え弁9により必要に応じてEGRクーラ3への冷却水の導入を遮断できる。すなわち、エンジンの始動直後、あるいはエンジン運転状態が低負荷域の場合等、EGRガスが、メイン通路31ではなくバイパス通路32を流れる場合に、EGRクーラ3への冷却水導入を遮断しEGRクーラ3の冷却機能を停止させることができる。これにより、バイパス通路32を流れるEGRガス温度の低下を最小限度に抑えて、エンジン1の始動直後、あるいはエンジン1の運転状態が極低負荷域の場合において燃焼を安定させることができる。
【0055】
また、切替え弁33、34は独立して制御できるので、エンジン1の排気温度がより高い場合おいて、メイン通路31およびバイパス通路32の両方にEGRガスを流すことが可能である。これにより、バイパス通路32においてもEGRガスの熱を冷却水に放熱されるのでEGRガス冷却が可能となる。すなわち、従来のEGR冷却装置ではEGRクーラ使用時、すなわちEGRガス冷却時においてはEGRガスが流れないバイパス通路をEGRガス冷却に利用することができる。したがって、従来のEGR冷却装置ではエンジン始動時等短時間のみ使用していた、言い換えると稼動率が低かったバイパス通路をEGRガスの冷却のためにも利用することで、EGR冷却装置全体の体格を小さくすることができる。
【0056】
また、メイン通路31およびバイパス通路31をEGRガス流動方向と直交する方向における断面形状が同一の管状部材から形成している。これにより、管状部材を製作するための型を1種類としてEGRクーラ3の製作コストを低減することができる。また、メイン通路31の総断面積およびバイパス通路32の総断面積は、管状部材の本数を変更することにより必要に応じて容易に変更することができる。
【0057】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態によるEGR冷却装置2が適用されるEGRシステム100の全体構成を説明する模式図である。
【0058】
本発明の第2実施形態によるEGR冷却装置2が適用されるEGRシステム100においては、EGRクーラ3の構成が変更されるとともに、EGRバルブ7が追加されている。
【0059】
EGRバルブ7は、従来のEGR冷却装置に用いられているEGRバルブと同等のものである。すなわち、吸気通路5に還流されるEGRガス流量を連続的に制御するものである。
【0060】
EGRクーラ3においては、第1実施形態における切替え弁33、34に替えて、切替え弁301、302が取り付けられている。
【0061】
切替え弁33、34が、弁開度を連続的に制御可能な方式であるのに対して、切替え弁301、302は、遮断(全閉)位置と連通(全開)位置の、どちらかのみに駆動可能な方式のものである。
【0062】
第2実施形態によるEGR冷却装置2が適用されるEGRシステム100においては、切替え弁301、302は、それぞれメイン通路31、バイパス通路32の連通・遮断のみを制御し、EGRガス流量の調節は、EGRバルブ7により行なっている。
【0063】
切替え弁において弁開度を連続的に制御する場合、EGRガス流量の制御精度を向上させるためには、何らかの弁開度センサが必要であり、このため、切替え弁のコストが上昇する可能性がある。第2実施形態においては、弁開度を連続的に制御する切替え弁はEGRバルブ7のみであるので、EGRシステム100のコスト上昇を抑えることができる。
【0064】
なお、以上説明した、本発明の第1、第2実施形態によるEGR冷却装置2において、切替え弁33、34、301、302の弁タイプを茸弁型としているが、他の形式の弁を用いてもよい。たとえば、バタフライ弁あるいはスリーブ弁等を用いてもよい。
【0065】
また、以上説明した、本発明の一実施形態によるEGR冷却装置1が適用されるエンジンは水冷式であれば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのどちらでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2の全体構成を説明する模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるEGR冷却装置2におけるEGRクーラ3の断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるEGR冷却装置2の全体構成を説明する模式図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 EGR冷却装置
3 EGRクーラ
3a 排気入口
3b 排気出口
3c 冷却水入口
3d 冷却水出口
31 メイン通路
32 バイパス通路
33 切替え弁(第1切替え弁)
33a 弁体
34 切替え弁(第2切替え弁)
34a 弁体
35 ウォータジャケット
36 エンドプレート
37 仕切り板
38 弁座板
38a 弁座部
38b 弁座部
39 カバー
4 排気通路
5 吸気通路
6 EGR通路
7 EGRバルブ
8a 冷却水導入通路
8b 冷却水流出通路
9 冷却水切替え弁
10 コントローラ
11 エアクリーナ
12 冷却水通路
13 ラジエータ
14 ウォータポンプ
15 水温センサ
16 排気温センサ
17 回転数センサ
18 負荷センサ
19 イグニッションスイッチ
20 バッテリ
21 冷却水通路
100 EGRシステム
301 切替え弁(第1切替え弁)
302 切替え弁(第2切替え弁)

Claims (6)

  1. エンジンの排気通路と吸気通路を結ぶEGR通路途中に設けられ且つその内部に前記エンジンの冷却水の一部を通過させてEGRガスを冷却するEGRクーラと、
    前記EGRクーラへの前記冷却水の導入および遮断を切替える冷却水切替え弁とを備えるEGR冷却装置であって、
    前記EGRクーラは、EGRガスが流れる第1通路と、
    前記第1通路と平行に設けられEGRガスが流れる第2通路と、
    前記第1通路の連通および遮断を切替える第1切替え弁と、
    前記第2通路の連通および遮断を切替える第2切替え弁とを備え、
    前記第1通路の流通抵抗は前記第2通路の流通抵抗よりも大きく、
    前記冷却水切替え弁による前記EGRクーラへの前記冷却水の導入遮断時には、前記第2切替え弁により前記第2通路が連通され且つ前記第1切替え弁により前記第1通路が遮断されることを特徴とするEGR冷却装置。
  2. 前記第1切替え弁は弁開度を連続的に制御可能であることを特徴とする請求項1に記載のEGR冷却装置。
  3. 前記第1切替え弁および前記第2切替え弁は弁開度を連続的に制御可能であることを特徴とする請求項1に記載のEGR冷却装置。
  4. 前記第1通路および前記第2通路はEGRガス流動方向と直交する方向における断面形状が同一の管状部材から形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のEGR冷却装置。
  5. 前記第1通路を形成する前記管状部材はその内部に熱交換促進用のインナーフィンを備え、前記第2通路には前記インナーフィンが無いことを特徴とする請求項4に記載のEGR冷却装置。
  6. 前記冷却水切替え弁、前記前記第1切替え弁、および前記第2切替え弁を駆動するコントローラを備え、
    前記コントローラは、
    前記冷却水切替え弁による前記EGRクーラへの前記冷却水の導入遮断時には、前記第2切替え弁により前記第2通路が連通され且つ前記第1切替え弁により前記第1通路が遮断されるよう駆動し、
    前記冷却水切替え弁による前記EGRクーラへの前記冷却水の導入時には、前記第2切替え弁により前記第2通路が遮断され且つ前記第1切替え弁により前記第1通路が連通されるよう駆動、又は、前記第2切替え弁により前記第2通路が連通され且つ前記第1切替え弁により前記第1通路が連通されるよう駆動することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のEGR冷却装置。
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