JP4140351B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両が停止状態でかつ、所定の条件が成立した場合に内燃機関を自動的に停止させ、発進条件が成立した場合に自動的に内燃機関を再始動させる制御を行う内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
信号待ち等の停車中に内燃機関をアイドリング運転させている際にエンジンを自動的に停止させることで、排出ガス量を抑制し、燃費向上を図る技術(アイドリングストップ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この文献には、特に、ディーゼルエンジンにおいてアイドリングストップによるエンジン停止時の振動を低減するため、エンジンブレーキ作動時の圧縮および膨張行程中に専用弁などをリフトさせてブレーキ力を増大させる常開式圧縮エンジンブレーキをエンジン停止時に作動させることによってエンジン停止時に発生する振動を抑制する技術が開示されている。そして、吸気・圧縮・膨張行程において専用弁を開くことで、専用弁を介して流入するガスの流動抵抗によりエンジン回転速度を減速する方向に力が働き続け、エンジンを早く停止させることが可能となると記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−97972号公報(段落0022〜0028、図1〜図3)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この技術によれば、流動抵抗を増大させることでエンジンを早く停止させることが可能となるが、停止時に排気側へと流れるガス流量が増大して、排ガス浄化触媒の保温性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、アイドリングストップと再始動を自動的に行う内燃機関の制御装置において、機関停止時に排ガス浄化触媒の温度低下を抑制可能とした制御装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の制御装置は、車両が停止状態でかつ、所定の条件が成立した場合に内燃機関を自動的に停止させ、発進条件が成立した場合に自動的に内燃機関を再始動させる制御を行う内燃機関の制御装置において、この内燃機関は、機関排気系に排気浄化触媒と、吸気バルブまたは排気バルブの少なくともいずれか一方の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング手段とをさらに備えており、内燃機関の自動停止時に、燃料供給を停止して可変バルブタイミング手段を操作することにより、排気バルブが閉じてから吸気バルブが開くまでのタイミングを通常より長くなるよう制御することにより、内燃機関の自動停止時に排気浄化触媒へ流入する排気ガス量を低減するものである。
【0007】
この可変バルブタイミング手段は、内燃機関の自動停止時には、吸気バルブを通常よりも遅く開くか、排気バルブを通常よりも早く閉じる制御を行うことが好ましい。
【0008】
可変バルブタイミング手段によって排気バルブが閉じてから吸気バルブが開くまでのタイミングを通常よりも長くなるように調整することで、吸気行程においてポンプ仕事を増大させるか、排気行程において排気圧縮仕事を増大させることにより機関の回転抵抗を増大させて機関を早期に停止させることができる。また、排気側へ流れるガス流量を少なくすることができるので、触媒の温度低下を抑制することができる。このため、再始動時のエミッションの悪化を抑制できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明に係る制御装置(内燃機関の制御装置)を搭載した内燃機関の概略構成図である。この内燃機関1は、車両に搭載される多気筒式のガソリンエンジンであって、筒内燃料噴射式の火花点火式内燃機関であり、ここでは、その一気筒のみを簡略化して図示している。
【0011】
内燃機関1のシリンダ10には、往復移動するピストン11が配置されており、ピストン11とシリンダ10およびシリンダヘッド12で区画された領域が燃焼室13を構成する。この燃焼室13には、吸気バルブ41、排気バルブ42を介して吸気管20と排気管30が接続されている。この吸気バルブ41と排気バルブ42はそれぞれの可変バルブタイミング手段43、44によって開閉駆動される。吸気バルブ41、排気バルブ42は各気筒ごとに1つずつ設けられてもよいし、複数設けられていてもよい。また、吸気バルブ41と排気バルブ42の数を異ならせてもよい。シリンダヘッド12の燃焼室13に臨む位置には、点火プラグ16と燃料インジェクタ17が配置される。ピストン11はコンロッド14を介してクランク軸15に接続され、ピストン11の往復移動をクランク軸15の回転運動へと変換する。このクランク軸15には始動モータ70が接続可能である。そして、シリンダ10に冷却水温センサ45がクランク軸15に隣接してクランク角度センサ46が配置される。
【0012】
吸気管20には、上流側からエアフィルター21、吸気温センサ22、電磁スロットル弁24、吸気圧センサ26が配置され、電磁スロットル弁24はスロットルモータ23によって駆動され、その開度はスロットル開度センサ25によって検出される。
【0013】
排気管30には、三元触媒やNOx吸蔵還元触媒等からなる排気浄化装置31が配置されており、排気浄化装置31の上流側にはA/Fセンサ32とCOセンサ33が配置され、排気浄化装置31には触媒温度センサ34が配置されている。
【0014】
内燃機関1の制御装置であるエンジンECU60は、CPU、メモリ等から構成される。そして、上述した各センサ22、25、26、32〜34、45、46の各出力のほか、運転者の操作するアクセルペダル50に取り付けられたアクセル開度センサ51と車速を検出する車速センサ52の出力が入力されており、点火プラグ16、燃料インジェクタ17、スロットルモータ23、可変バルブタイミング手段43、44、始動モータ70の作動を制御する。
【0015】
可変バルブタイミング手段43、44は、吸気バルブ41、排気バルブ42を駆動するカムを有するカムシャフトを異なる位相となるよう転動させたり、カム自体の形状をカムシャフトの長手方向に異なるように形成しておき、カムシャフトを長手方向に移動させることで、バルブのリフトタイミングやリフト量を調整するものである。図2はその調整例を示す図である。ここでは、標準的なバルブリフトを太線で示している。可変バルブタイミング手段43、44によってバルブの開(閉)タイミングを破線で示すように早めることを進角させると呼び、逆に開(閉)タイミングを点線で示されるように遅らせることを遅角させると呼ぶ。ここではリフト量は固定のままタイミングだけをシフトさせる例を示したが、バルブリフトの開閉タイミングの調整に合わせてリフト量を調整してもよい。
【0016】
本発明に係る内燃機関1の制御装置(エンジンECU60)は、停車時かつ機関アイドリング時に自動的に内燃機関1を停止させるアイドリングストップ(IS)を行い、運転者の発進操作時に再始動させる制御を実施する。以下、その制御処理を具体的に説明する。図3は、この処理内容を示すフローチャートであり、図4〜図6は、この処理動作時のバルブリフトタイミングの例のいくつかを示す図である。本処理はエンジンECU60により、内燃機関1の始動後、運転者がイグニッションキーの操作によりエンジンを停止させるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、この処理に使用されるフラグFlagESは、内燃機関1を自動停止させたIS状態であるか否かを示すフラグであり、エンジン始動時に初期値0に設定されている。
【0017】
ステップS1では、このフラグFlagESの値をチェックする。値が0の場合、つまり現在、IS状態ではなく、内燃機関1が作動中である場合にはステップS2へと移行する。ステップS2では、IS条件が成立しているか否かを判定する。このIS条件とは、例えば、車速センサ52によって検出された車速が0で、スロットル開度センサ25によって検出されたスロットル開度が全閉状態で、クランク角度センサ47によって検出されたエンジン回転数が所定回転数以下で、冷却水温センサ45によって検出されたエンジン冷却水温が所定温度以上で、アクセル開度センサ51で検出されたアクセル開度が所定角度以下で、触媒温度センサ34で検出された触媒温度が所定温度以上の場合にIS条件を満たすと判定すればよい。このように停車中かつ内燃機関1がアイドリング状態で負荷がほとんどない状態では、内燃機関1を停止させることが可能であり、また、内燃機関1および排気浄化装置31の暖機が完了していることから、発進時の再始動も容易に行える状態にあると考えられるからである。
【0018】
条件を満たしている場合には、ステップS3へと移行し、燃料インジェクタ17からの燃料噴射を禁止し、続くステップS4では、可変バルブタイミング手段43、44によってバルブリフトタイミングを停止時のタイミングに変更する。例えば、図4の破線A、Bに示されるように、可変バルブタイミング手段43によって吸気バルブ41の開タイミングを遅角させる。あるいは、図5の破線A、Bに示されるように、可変バルブタイミング手段44によって排気バルブ42の閉タイミングを進角させる。さらには、図6の破線A、Bに示されるように、可変バルブタイミング手段43、44によって吸気バルブ41の開タイミングを遅角させると同時に排気バルブ42の閉タイミングを進角させてもよい。
【0019】
このようにバルブタイミングを制御することで、排気バルブ42が閉じてから吸気バルブ41が開くまでの時間である負のバルブオーバーラップ時間(tA、tB)を長くすることができる(通常は、排気バルブ42が開いている間に吸気バルブ41が開くため、両者が同時に開いている期間があり、これをバルブオーバーラップ時間[正の値をとる]と称している)。
【0020】
排気バルブ42を早く閉じると、筒内ガス全てを排出しきれず、排気バルブ42を閉じた後、ピストン11がTDC(上死点)に達するまでの間、残存している筒内ガスを圧縮するための仕事量が増大する。この仕事量増加により内燃機関1を早期に停止させることが可能となる。また、排気管30を経て排気浄化装置31へと送られるガス量が減少するため、触媒の過剰な冷却を抑制することができ、その保温性が向上する。一方、吸気バルブ41を遅く開くと、ピストン11のTDCから吸気バルブ41が開くまでの間、燃焼室12を密閉した状態でピストン11により筒内ガスを膨張させる必要があるため、ポンプ仕事の仕事量が増大する。この仕事量増加により内燃機関1を早期に停止させることが可能となる。また、吸気量を減らすことで結果的に、排気管30を経て排気浄化装置31へと送られるガス量をも減少させることができ、触媒の過剰な冷却を抑制し、その保温性が向上する。両者を組み合わせると、内燃機関1の早期停止と排気浄化装置の保温効果をより高めることが可能となるが、吸気バルブ41、排気バルブ42の双方に可変バルブタイミング手段43、44を設けることは装置構成を複雑化させ、製品コストも増加することから、いずれか一方のみを設けてもよい。このようにしてステップS5で、内燃機関1を停止させた後、前述したフラグFlagESに1をセットして処理を終了する。
【0021】
一方、ステップS2でIS条件が不成立と判定した場合には、その後の処理をスキップして処理を終了する。この場合には、内燃機関1はそのまま作動し続けることになる。
【0022】
ステップS1でFlagESが1と判定された場合、つまり、現在IS状態で内燃機関1を自動停止させていると判定した場合には、ステップS11に移行して発進条件が成立しているか否かを判定する。この発進条件とは、例えば、運転者がアクセルペダル50を所定角度以上に踏み込む操作を行ったことがアクセル開度センサ51により検出された場合に満たされる。発進条件が満たされていない場合には、その後の処理をスキップして処理を終了する。この場合には、IS状態、つまり、内燃機関1の自動停止状態が継続することになる。
【0023】
ステップS11で発進条件が満たされたと判定された場合には、ステップS12へと移行して機関再始動処理を行う。ここでは、始動モータ70をクランク軸15に接続して始動モータ70の駆動力によってクランク軸15を回転させ、スロットルモータ23により電磁スロットル弁24を開いて、開かれた吸気バルブ41から燃焼室13へと空気を導入し(吸気行程)、その後吸気バルブ41を閉じて、導入した空気を圧縮し(圧縮工程)、燃料インジェクタ17から燃料を噴射して混合気を形成し、ピストン11のTDC付近で点火プラグ16により混合気に着火させて燃焼させ、その燃焼ガスの膨張によってピストン11を駆動し(膨張行程)、コンロッド14を介してクランク軸15を駆動させる。燃焼ガスは開かれた排気バルブ42を介して排気管30へと送られ、排気浄化装置31によって処理される。内燃機関1の始動が成功したら、始動モータ70をクランク軸15から切り離す。始動の成功・不成功はクランク角度センサ47の出力から判定可能である。燃料インジェクタ17からの燃料噴射量、始動時の吸気バルブ41、排気バルブ42の可変バルブタイミング手段43、44によるバルブリフトタイミングは、アクセル開度や吸気温センサ22で検出した吸気温、吸気圧センサ26で測定した吸気圧、A/Fセンサ32とCOセンサ33によって測定したA/F値等によって補正される。
【0024】
内燃機関1の再始動に成功したら、ステップS13に移行してFlagESに0をセットして処理を終了する。この再始動は自動的かつ短時間で行うことができるため、発進性を損なうことがない。このような制御により、停車中の機関アイドリング時に内燃機関1を速やかに停止させ、発進時には速やかに再始動を行えるので、排出ガス量を抑制し、燃費が向上する。また、機関停止時に排気浄化装置31に送られるガス量を減らすことができるため、触媒の保温性を維持できる。
【0025】
以上説明した処理フローは例示であって、本発明の内燃機関の制御装置における制御はこの処理フローに限定されるものではなく、内燃機関1をアイドリングストップさせる際に、可変バルブタイミング手段によりバルブリフトタイミングを制御して負のオーバーラップ時間を長くしてエンジンを早期に停止させる形態であれば各種の処理形態が採用できる。例えば、ステップS3とステップS4の順序は変更可能である。
【0026】
ここではエンジンECU60により内燃機関1の制御を行う実施形態を説明してきたが、可変バルブタイミング手段43、44の制御用に専用のECUを設け、これとエンジン制御用のECUとを協働させてもよい。あるいは、車両制御用のECUが内燃機関1の制御も行うようにしてもよい。
【0027】
以上の説明では、筒内噴射式のガソリンエンジンの場合を例に説明してきたが、ディーゼルエンジンあるいは吸気管内に燃料を噴射するタイプのガソリンエンジンに対しても本発明は適用可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、停車中かつ機関アイドリング時に自動的に内燃機関を停止させる際に、吸気バルブと排気バルブの少なくとも一方のバルブリフトタイミングを可変バルブタイミング手段により変更することで、負のオーバーラップ時間を長くする、つまり、両バルブが閉じている時間を長くすることにより膨張あるいは排気行程中のピストンの仕事量を増大させて内燃機関を早期に停止させる。また、排気量を減らすことができるので、排気浄化装置の冷却を抑制し、その保温性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る制御装置を搭載した内燃機関の概略構成図である。
【図2】可変バルブタイミング手段によるバルブリフトタイミングの変更を説明する図である。
【図3】図1の装置におけるアイドリング停止・再始動制御の処理を示すフローチャートである。
【図4】図3の処理時のバルブリフトタイミングの一例を説明する図である。
【図5】図3の処理時のバルブリフトタイミングの別の例を説明する図である。
【図6】図3の処理時のバルブリフトタイミングのさらに別の例を説明する図である。
【符号の説明】
1…内燃機関、10…シリンダ、11…ピストン、12…シリンダヘッド、13…燃焼室、14…コンロッド、15…クランク軸、16…点火プラグ、17…燃料インジェクタ、20…吸気管、21…エアフィルター、22…吸気温センサ、23…スロットルモータ、24…電磁スロットル弁、25…スロットル開度センサ、26…吸気圧センサ、30…排気管、31…排気浄化装置、32…A/Fセンサ、33…COセンサ、34…触媒温度センサ、41…吸気バルブ、42…排気バルブ、43、44…可変バルブタイミング手段、45…冷却水温センサ、46…クランク角度センサ、50…アクセルペダル、51…アクセル開度センサ、52…車速センサ、60…エンジンECU、70…始動モータ。
Claims (3)
- 車両が停止状態でかつ、所定の条件が成立した場合に内燃機関を自動的に停止させ、発進条件が成立した場合に自動的に内燃機関を再始動させる制御を行う内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関は、機関排気系に排気浄化触媒と、吸気バルブまたは排気バルブの少なくともいずれか一方の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング手段とをさらに備えており、内燃機関の自動停止時に、燃料供給を停止して前記可変バルブタイミング手段を操作することにより、排気バルブが閉じてから吸気バルブが開くまでのタイミングを通常より長くなるよう制御することにより、前記内燃機関の自動停止時に前記排気浄化触媒へ流入する排気ガス量を低減する内燃機関の制御装置。 - 内燃機関の自動停止時には、前記可変バルブタイミング手段により吸気バルブを通常よりも遅く開く制御を行う請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- 内燃機関の自動停止時には、前記可変バルブタイミング手段により排気バルブを通常よりも早く閉じる制御を行う請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
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