JP4139444B2 - 磁気軸受を有する電気機械の軸支巻線および駆動巻線系を励磁するための方法および構造並びに電気駆動装置 - Google Patents
磁気軸受を有する電気機械の軸支巻線および駆動巻線系を励磁するための方法および構造並びに電気駆動装置 Download PDFInfo
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Description
磁気軸支技術によって、駆動装置の回転スピード、寿命、精度および防水性に対する要請が非常に大きい機械装置類の設計における応用分野が切り開かれた。この分野は、従来の軸支技術を用いては実質的に実現不可能あるいは実現が非常に困難な応用分野であった。例えば、高速フライス盤や研削盤の主軸、ターボ圧縮機、真空ポンプあるいは高純度の化学薬品や化学製品用のポンプ等の様々な実施例には既に磁気軸受が搭載されている。
従来の磁気軸支方式の機械(図1)には、機械ユニット1に加えて、二つのラジアル(半径方向)磁気軸受2および3、軸方向磁気軸受4、二つの機械的遮断軸受5および6、またモータや磁気軸受巻線を励磁するための合計10個の出力制御装置7、8、9および10が必要である。
機械とラジアル磁気軸受を磁気固定子ユニットに一体化するための方法が資料(図2)に示すように提案されている。駆動巻線および軸支巻線用として、二つの分離式巻線系11および12が固定子溝に多層構造の状態で導入されている。両巻線系は三つの巻線を有し、磁極対の数においてのみ異なる。これらのコイルは、分数ピッチで巻かれており、また複数の溝にまたがって配置されており、これらのコイルを通して、近似的に正弦波の磁束結合が実現されている。
− 4-磁極駆動巻線11(外側)は、第1の巻線13、第2の巻線14、第3の巻線15を含み、
− 2-磁極軸受巻線12(内側)は、第1の巻線16、第2の巻線17、第3の巻線18を含む。
図に示された機械の断面図は例示であり、また一部非常に簡略化して示されており、また動作原理をできるだけ精確に説明するためにのみ示すものである。
従来技術において実現された励磁方式には、正弦波状に分布した空隙磁束密度および正弦波状の電機子電流層が必要とされる。分布型巻線系はこのようにして必要となる(図2)。
本発明の目的は、軸支力および回転駆動力を所定の形態で印加するために、磁気軸受を有する電気機械の軸支巻線および回転駆動巻線系を励磁するための、可能な限り簡略化され、またコストを抑えた方法および構造を提案することである。
この目的は、個別に独立である発明の請求項の特性によって特徴付けられる各々の方法および構造によって達せられる。特に、従属の請求項の特性によって、利点を有する実施例がもたらされる。
次に、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。概略図および/または断面図を以下の通り示す。
図1は、従来の磁気軸受を有する電気機械を示す図であり、
図2は、回転駆動および軸支巻線系が磁気固定子ユニットに一体化されている従来の磁気軸受を有する電気機械を示す図であり、
図3は、磁気軸受(外側回転子)を有し、またコストを低減し、さらに本発明をによる方法が適用でき、構造を簡略化し、回転駆動巻線と軸支巻線が一つでありまた同一の巻線である電気機械の実施例を示す図であり、
図4は、磁気軸受(外側回転子)を有し、4つの高密度コイルを有し、また軸支力を生成するために前記高密度コイルを通して電流が流れるようにしたモータの実施例を示す図であり、
図5は、図4の電流によって生成される軸支力を示すグラフであり、
図6は、軸支力を生成するために別の電流が流れるようにした図4によるモータの実施例を示す図であり、
図7は、図6による電流によって生成される軸支力を示すグラフであり、
図8は、回転力を生成するために電流が流れるようにした図4(外側回転子)によるモータの実施例を示す図であり、
図9は、本発明による方法を実施するための構造の実施例を示す図であり、
図10は、本発明による方法を実施するための分離回路を有する構造の実施例を示すさらにもう1つの図であり、
図11は、磁気軸受(外側回転子)および軸支力および回転力生成のために分離式巻線系を有するモータの実施例を示す図であり、
図12は、空気との境界を有する強磁性体の表面を示す図であり、
図13は、回転子の軸方向のたわみに対して有効な軸方向の軸受を有しない円盤状の回転子モータ(内側回転子)において、間接的な安定化の動作方法を示す図であり、
図14は、回転子の傾斜に対して有効な軸方向の軸受を有しない円盤状の回転子モータ(内側回転子)において、間接的な安定化の動作方法を示す図であり、
図15は、4つの溝を有する固定子上に磁気軸受を有する単相モータ(外側回転子)の軸支巻線を示す図であり、
図16は、図15による4つの溝を有する固定子上に磁気軸受(外側回転子)を有する単相モータの回転駆動巻線を示す図であり、
図17は、1つの磁極対を有する単相モータの軸支巻線を示す図であり、
図18は、製造が簡単な高密度コイルを用いた図17の軸支巻線の変形例を示す図であり、
図19は、12の高密度コイルを持つ磁気軸受(外側回転子)を有する単相モータを示す図であり、
図20は、図19による磁気軸受および高密度コイルを有する単相モータにおける回転力を示すグラフであり、
図21は、図19による磁気軸受および高密度コイルを有する単相モータにおける軸支力を示すグラフであり、
図22は、図19による単相モータにおけるマックスウェル力およびローレンツ力を示すグラフであり、
図23は、回転子の360°の回転を表す角度依存性の、各々ループ電流と軸支力または回転力との間の関係を表すマトリックスk(φ)の係数k11(φ)を示すグラフであり、
図24は、マトリックスk(φ)の係数k12(φ)を示すグラフであり、また
図25は、マトリックスk(φ)の係数k33(φ)を示すグラフである。
図3は、コストを低減し、構造を簡略化した磁気軸受を有する機械の実施例を示す図である。巻線21、22、23および24を流れる電流によって、対応する回転力と軸支力の両方を求めることができる。この場合、本機械の回転子25の非接触軸受を用いることが可能である。図中各部の矢印は、個々の永久磁石セグメントの磁化方向を各々示している。
図4は、4つの高密度コイルを持つ磁気軸受(外側回転子)を有するモータを示す図である。コイル31、32、33および34を流れる電流を用い、回転子面において、回転子角φ(各々xおよびy方向において図4に示す回転子の位置の場合)に依存する力の関係をグラフ化し、図5に示す。分力41は、固定子静止状態の直交座標系においてx方向を向いている。同様に、分力42はy方向を向いている。高密度コイルを用いることにより、また鉄飽和の影響により、グラフに示す力は正弦波から大きくずれる。このことは、巻線に定電流を流した場合について、図中の一点鎖線43と44で示す。この非線形性によって、ループ電流に対する依存性に関して、図の曲線の形が変わる可能性がある。図6において、さらにもう一つの可能性を持った電流をグラフ化している。この電流と対応した力を図7にグラフ化している。
この図4および図6に示すコイル系を流れる電流は、固定子において半径方向に作用する力、すなわち軸支力を生成し、これらの電流により生ずる回転力は無視できる程度に小さい。回転力は、図8に示すコイル系を流れる電流によって生成される。この電流の場合、回転力をグラフ化すると、回転子角に対する依存性が正弦波の形から同様にずれる。
特定の回転子角および回転子位置の場合、xおよびy方向の力と回転力が設定されると、図4、6および8に示す電流を重ね合わせることができるが、電流の線形の重ね合わせが、例外的な場合にのみ可能となるように、ここに存在する非線形性を考慮することが必要になる(例えば、鉄の飽和状態、渦電流による損失等)。
一般的に、力と回転力の生成に関しては、次の式が与えられている。
ここで、
であり、軸支力FxとFyおよび回転力Mのベクトル量であり、
は、ループ電流のベクトル量、
φは、回転子角
は、半径方向の回転子の位置を表す。
ここで生成される力と回転力は、ループ電流の非線形の関数により回転子角および回転子位置に依存する。
磁気的に支持されているモータの回転位置と回転力の制御を簡単に行うためには、所定の力および所定の回転力に対して、ループ電流の計算を簡単に実行できることが好ましい。ループ電流のベクトル量は、原理的には非線形の式(1)から計算が可能である。
しかしながら、式(2)に示す関係に対して閉じた解を与えることは、構造が相対的に簡単な場合にのみ可能である。この理由により、この系の静止位置に関して、式(1)を線形化することが推奨できる。
式(3)から、△Iは、正則マトリックスであるとの仮定の下で、所定の軸支力および所定の回転力に対して与えることができる。
式(4)は、一般的な場合において成り立ち、特別な巻線構造に制限されない。このため、共用駆動巻線および軸支巻線系(図3)を有する磁気的に支持されたモータと分離型の駆動巻線および軸支力巻線系を有する磁気的に支持されたモータの両者に対して、必要なループ電流を計算することが可能である。式(4)においては、機械の構造上の違いやループの数の違いを考慮しなければならない。
分離型の駆動巻線および軸支巻線系を有する磁気的に支持されたモータを図11に示す。回転力は巻線101によって生成され、巻線102および103によって、半径方向の軸支力が生成される。
本発明による方法を実行するための(全)構造の実施例を図9に示す。分力調節器71と72および回転力調節器73は、機械的な構造とは独立に構成することが可能である。所望の電流値は、プロセッサ74において、回転力および力の信号から、表、事前の取り決め事項、式あるいは非線形および線形関数の助けを借りて、デジタル値またはアナログのパラメータ(電圧または電流)77の形式で求めることができ、電力増幅器75によって対応するループ電流78に変換もしくは増幅され、磁気的に支持されたモータ76を励起する。回転子位置および回転子角は、対応する検出器79で、複数の検出器(例えば、渦電流検出器あるいはホール検出器79a)の助けを借りて測定したり、あるいは、数学的なモデルにより状態パラメータ(安定状態の回転子において計算パラメータとなるパラメータ、例えば、xとy方向の間の結合定数)から算出したりすることができる。
ブロック71、72、73および74は、適切なデジタルプロセッサにおいて、演算論理関数の形式や数値表または線形および非線形関数の形式で実行可能であり、あるいはまた、アナログ回路やプログラマブル形式の集積アナログ回路によって構成することが可能である。
上述の方法は、位置x0=0(すなわち、回転子が中間点に位置する時)およびI=I0の場合に関して線形化すると、さらに簡略化することができる。この簡略化により、
の項が消去され、さらに簡略化された関係が得られる。すなわち、
式(5)は、簡略化された形式で次のように表すことができる。すなわち、
ここで、k(φ)は、回転子角に依存するマトリックスである。このようにして、ループ電流は、最も簡単な場合、必要な軸支力および回転力からマトリックスの乗算によって算出することが可能である。
図4に示すモータに対して、角度非依存性のマトリックスk(φ)を与えられるようにするには、次に示す変換式により4つのループ電流成分を変換すると良い。すなわち、
ここで、
であり、3つのループを有する系(図15と図16の組合せ)に対して成り立つ。このように、演算はIの代わりに
に関して実行される。これにより、正規マトリックス
が得られる。x0=0が挿入された場合は、次のような簡単な関係が得られる。すなわち、
図23に、回転子を360°回転する場合のk11(φ)のグラフを示す。k12(φ)のグラフを図24に示す。k33(φ)のグラフおよびそれによる一定の回転力の場合に必要な電流値は図25から導くことが可能である。
マトリックスk(φ)によって例示するように、半径方向および接線方向の分力を詳細に分離する前述の式の助けを借りて電流値を求めることが可能である。このことは、特に機械の座標系xおよびy方向の力を制御する場合は重要であり、また分離型の電流設定パラメータを用いて、一方では軸支力を他方では回転力を意図的に作用させることができるようにするために回転力を制御する場合でも、同様に重要である。もう一つの可能性としては、例えば、プロセッサに実装される分離回路により所望の効果を達成することが挙げられる。この対策は特に、電流制御回路を介して電流を印加する代わりに電圧制御を実行する場合に推奨できるものである。ハードウェアあるいはソフトウェアのいずれによっても実現可能である。
ループ電流と軸支力との関係(マトリックスk(φ)が最も簡単な場合)は、磁気的に支持されたモータの数学的なモデルを基に数値分析法によっても計算が可能であり、あるいは測定によっても求めることができ、または制御回路の設定パラメータあるいは基準値または所定の最適解ではない力と電流関数から出発して得られる校正値によるループ電流によっても求めることが可能である。
マトリックスk(φ)をフーリエ係数に分解した場合、次に示す条件もまた成り立つ。すなわち、
電流を印加することに対する選択肢として、図10に示す分離回路81と修正した制御回路82を追加して、電圧83もまた磁気的に支持された機械84の電気回路に印加することが可能である。
上述の方法は、特に磁気的に支持された電気機械(往々にして軸受フリーなモータと呼ぶ)を回転させる場合にも用いることが可能である。また原理的には、磁気的に支持された線形駆動装置の場合にも用いることが可能である。ここで、本方法は、機械の特定のループ数にも、また空隙磁束密度や電機子電流層の特性カーブの特定な形状に依存しない。その結果、例えば、リラクタンスモータ、非同期モータや同期モータ、特に永久磁石により励磁される同期モータ等の様々な種類のモータでの使用が可能になる。本発明による方法およびそれに対応する構造には、各々磁気的に支持される電磁気回転子あるいはアクチュエータの構造がさらに簡略化されるという利点がある。
このように本発明による方法は、磁気軸受を一体化した電気駆動装置の軸支巻線および回転駆動巻線系を励磁するための方法である。この場合、前記駆動装置は回転子や固定子に接続される回転駆動巻線および軸支巻線を有する電気機械から構成されている。さらに、これらの駆動装置は、位置および角度検出器、さらに前記機械の制御、調整、監視および送り用のアナログまたはデジタル電子回路で構成されている。回転子の位置および回転子の回転子角を設定する場合、モデルが用いられ、このモデルによって各々回転子あるいは固定子に対して半径方向と接線方向に作用する力とループ電流との関係を記述している。また、このモデルを用いるに当たっては、回転子の回転角に依存する分力の正弦波からのズレを実際に考慮できるようにしている。
ここで、このモデルは、接線方向および半径方向の分力が、実質的に回転子の回転角と独立に分離されるような利点を有するように構成することが可能である。このことにより、このモデルにおいては、飽和状態の発生や渦電流の発生の影響についてもまた考慮することが可能である。
さらにもう一つの利点を有する実施例においては、回転子の回転角に依存する、回転子と固定子に各々半径方向に作用している分力の正弦波からのズレは、これに対応して形成されたループ電流の挙動により補正することが可能である。
同様に、さらにもう一つの利点を有する実施例においては、回転子の回転角に依存する、回転子と固定子に各々接線方向に作用する回転力の正弦波からのズレは、これに対応して形成されたループ電流の挙動により補正することが可能である。
必要なループ電流は、軸支巻線や回転駆動巻線に対して、直接ループ電流として、または適宜間接的に電圧を介して印加することが可能である。
既に述べた接線方向と半径方向の分力の分離は、ハードウェアあるいはソフトウェアによって電気回路中に実装される分離回路により実現あるいはその助けを借りて実現することが可能である。
近似的に正弦波の励磁場分布および近似的に正弦波の磁束分布を有する機械の駆動特性に相当する駆動特性を前記電気回路に対して印加することも可能である。
前記ループ電流は次の関係(上記参照)を満たす。すなわち、
また、回転子静止位置x0=0の領域およびI=I0の領域において、次の式が成り立つ。すなわち、
I=k(φ)Q
ここで、Qは、軸支力および回転力のベクトル量を表し、
x0は、回転子が静止位置にある時、回転子の位置のベクトル量を表し
△xは、回転子の位置の静止位置からのズレ量を表し、
Iは、ループ電流のベクトル量を表し、
I0は、回転子が静止位置x0にある時、ループ電流のベクトル量を表し、
△Iは、電流の変化量を表し、
φは、回転子の回転角を表し、また
k(φ)は、回転子の回転角φに依存するマトリックスを表す。
所望の回転速度、所望の回転子の位置、所望の回転角またはその他所望の値に関して、各々軸支力および回転力に対する所定の値から、軸支巻線および回転駆動巻線中の電圧および電流の瞬時値、回転子の位置、回転角あるいはそこから導かれるパラメータ等の状態パラメータを用いて、必要なループ電流を求めることが可能である。この場合、検出器を介して直接あるいは巻線の電流または電圧の挙動から検出器を用いず間接的にこれらのパラメータを求めることが可能である。
分離型の軸支巻線および回転駆動巻線系においては、一方では軸支巻線に他方では回転駆動巻線に通電するループ電流は、各々半径方向および接線方向の力の制御あるいは調整に必要とするループ電流を決定する時に求めることが可能である。
共用軸支巻線および回転駆動巻線系においては、各々半径方向および接線方向の力の制御あるいは調整に必要とするループ電流を決定する場合、軸支力成分と回転力を生成するための分力の両方を含むループ電流を求めることが可能である。この場合、軸支力を生成するための電流成分と回転力を生成するための電流成分を重ね合わせてループ電流を求める。
駆動装置によっては、最適化した力の関数および電流の関数を、基準値または所定の最適解ではない力の関数と電流の関数から出発して得られる校正値によって求めることが可能である。
磁気軸受を一体化した電気駆動装置が有する軸支巻線および回転駆動巻線系の励磁の場合もこれに相当する説明が成り立つ。前記電気駆動装置は、回転子あるいは固定子に接続された回転駆動巻線および軸支巻線を有する電気機械から構成されている。さらに、前記電気駆動装置は、位置および角度検出器、さらに前記機械の制御、調整、監視および送り用のアナログまたはデジタル電子回路を含み構成されている。本構造は、上記において説明した方法を実行するのに適しており、また複数の電気装置から構成されている。すなわち、
― 軸支巻線および回転駆動巻線中の電圧および電流の瞬時値、回転子の位置、回転角あるいはそこから導かれるパラメータ等の状態パラメータの各々を測定あるいは計算するための検出器あるいは演算回路と
― 各々調整およびその他信号処理あるいは評価をハードウェアやソフトウェアによって、または数値表の形式で実現するデジタルあるいはアナログ回路と、また
― 電気機械の軸支巻線および回転駆動巻線にループ電流やループ電圧を印加するためのアナログ式またはスイッチ式の電力制御装置から構成されている。
最後に、本発明はまた磁気軸受を一体化した電気駆動装置に関するものである。この電気駆動装置は、上記において規定した回転駆動巻線および軸支巻線の励磁をするための構造を有しており、または上述した方法の変形方法の何れか一つの方法により動作されるものである。
上記において詳細を説明した式において、軸支力、回転力および必要な電流の間の関係は、一般的な表現方法で記述することができる。例えば、プロセッサにおいては、これらの関係の処理に当たり、これらの関係が例えば表形式や方程式あるいはフーリエ級数の展開式の形式で存在するという前提条件の下で処理を行う。最後に挙げた場合の例として、
と電流との関係は、フーリエ級数展開の形式で記述することができる。
しかしながら、電気機械(図12参照)におけるこれらの力の分析調査に対しては、簡略化することが必要である。すなわち、
― 軸支力および回転力は、回転電機の場合は円筒状の強磁性体に各々作用する。ここでは、鉄の比透磁率μFeは、空気の比透磁率μ0と比較して非常に大きいものであると仮定している。
― 電流が流れるのに必要な導体が溝に埋め込まれている大部分を占める。簡略化のために、この電流は、回転子表面の無限に薄い層を流れる等価な電流に置き換えることができる。この表面電流密度を電流層Aと呼ぶ。
― 空隙中での磁束密度の接線方向の成分は、法線方向の成分に対して無視することが可能である。
上述の簡略化を考慮すると(例えば、図12の回転子Rを参照)、磁界中の強磁性体の表面電圧σ12は次の関係から求められることが知られている。すなわち、
ここで、B1nは、空隙磁束密度(B1n=μ0H1n)の法線方向の成分を表し、
μ0は、空気中の透磁率を表し、また
Aは、表面の電流層を表す。
ここで、回転子が軸方向で中心位置にあるために、半径方向の電圧成分はゼロである。
これらの力は次の関係から求めることができる。すなわち、
dF=σ12ds
ここで、dFは、境界表面の要素を表す。
文献では、このようにして求められた力の法線方向の成分は、マックスウェル力(異なる透磁率を有する物体の境界面に作用する力)と呼ばれており、接線方向の力は、ローレンツ力(磁界中にあって電流が流れている物体に作用する力)と呼ばれている。この結果得られる力は、全表面を積分することにより求めることができる。
回転電機においては、空隙中の磁束密度および電機子の電流層は、一般的に周期関数である。これら主として非正弦波のパラメータは、次に示す形式のフーリエ級数により表すことができる。すなわち、
ここで、一般的にフーリエ係数と呼ばれるcμがこの関数を特徴付けるものである。これにより次の結果が得られる。すなわち、
形式的には、これらのフーリエ係数は全て集めて次のような無限列ベクトルにすることができる。すなわち、
これによって、次の関数を表すことができる。すなわち、
ここで、
これにより、空隙中での磁束密度の法線方向の成分は次の形式で与えられる。すなわち、
同様に、電機子の電流層の大きさは次の式で与えられる。すなわち、
式(15)による電機子の電流層Aの表現は、ループ電流との直接の関係が存在しないために、分析調査には不向きであることが解かる。この電機子の電流層Aの表現をもっと適切なものにするには、巻線の分布関数を用いることである。電流層Aは、これにより次のような形式で表現できる。すなわち、
この分布関数にフーリエ係数を適用することにより、最終的にm個の巻線系を有する機械における電流層に対する次の関係式を得る。すなわち、
表面に電流層を有する強磁性体の境界面での簡略化した電圧は、フーリエ係数を用いて次のような形式で表わされる。すなわち、
電気力によるトルクMの大きさは、スラスト電圧から得られる。(接線方向の力のみがトルクMに寄与する。接線方向の力は、表面要素のスラスト電圧が持つ接線方向の成分を積分することにより求められる。表面要素自体は、長さlに半径rを掛けさらにdφを掛け合わせることにより表すことができる。このようにしてトルクMは、さらに半径rを掛けることにより得られる。)すなわち、
ここで、
lは、軸方向の回転子の長さを表し、また
rは、回転子の半径を表す。
式(19)においては、φに依存するのは、ΩΩTの項のみである。これにより、定積分を解くことが可能になり、次のような簡略化された結果を得る。すなわち、
無限マトリックスmの構造から、電流層および空隙中における磁束密度の各々同一の順序数を有する高調波のみが回転力に寄与することが解かる。磁束密度および電機子の電流層の純粋な正弦波状の分布においては、二つのパラメータの内同じ番号の磁極対によってのみ、電気的な回転力が得られる。
回転子上の(横方向の)力の計算は、同じように進めることができる。回転子表面の積分および直交座標系での力の表現によって、横方向の力を得る。すなわち、
ここで、f1およびf2に関しては次の関係が成立する。すなわち、
式(21)におけるsine関数およびcosine関数は、回転子の円筒座標系から直交座標系に変換することで得られる。
f1およびf2に関して考察すると、順序数が一つだけ異なる高調波のみが横方向の回転子の力に寄与するということが解かる。このように回転力と横方向の力がモータ内で同時に生成されるとするならば、一方では回転力を生成するための励磁として同じ番号の磁極対を有する巻線系が必要となり(式(20)参照)、他方では、軸支力を生成するための励磁系(式(22)参照)の番号と比較し、磁極対の番号がプラス1またはマイナス1異なる番号を有する巻線系が必要となる。
代表的な例として、磁気軸受を有する機械は、二つの分割モータと一つの軸方向の軸受から構成されている。この構造によって、五つの自由度により安定性を確実なものにすることが可能である。例えば、換気装置あるいはポンプ等の特別な応用形態の場合、回転子の軸方向の長さを直径と比較して小さくすることが可能である。これによって、三つの自由度(軸方向の変位と二つの軸に関する傾斜)が永久磁石により間接的に安定化され得る。図13および14に、固定子Sにおける永久磁石Pの助けを借りて予め励磁することによって回転子Rを間接的に安定化する様子が示されている。
回転子の軸方向のたわみによって、このたわみの方向とは反対方向を向き、また回転子を安定化させる軸方向の力(矢印によって示されている力)を生成する(図13)。角方向のたわみまたは傾き(図14)の場合、安定化トルクが発生する。間接安定化は極めて簡単であるが、軸受の力学系(すなわち、剛性や減衰振動)に関しては影響を及ぼすことができないという不利益な点がもたらされる。
半径方向の回転子位置は直接的に安定化しなければならない。このためには、少なくとも二つの軸支巻線系が必要であり、この二つの軸支巻線系は固定子に(電気的に)90°の変位差を与えて設置する。出力の小さい換気装置やポンプ等に適用する場合、回転力を生成するための巻線系を唯一つ有する単相モータが用いられるが、これはコストを抑えるためである。この巻線構造は磁気軸受を有し出力の小さいモータにもまた用いることができる。ここで、気づくべき点は、単相巻線を用いた場合は回転場を生成することはできず、唯単に交流場しか生成できないということである。このように、回転駆動巻線中に電流が流れるにも拘わらず回転力がゼロとなる回転子の位置があるということである。このことは、モータ始動時に特に問題になる可能性がある。適切な対策によって(ラミナの非対称切断あるいは空隙中での非対称な磁束分布)、回転力が止まることで引き起こされる回転子の安定な静止位置が、電気的な回転力がゼロとなる回転子位置と一致するということは防止することが可能である。
このように、磁気軸受を有するモータの巻線構造には、全体として回転子の位置、要求される回転力および半径方向の力により、互いに独立に電流を供給するようにした三つの巻線系が必要である。
既に述べたように、回転駆動巻線には励磁機と同じ数の磁極対が備わっていなければならない。軸支巻線の磁極対の数は、励磁機の磁極対の数との差を一つとしなければならない。モータ側のコストおよび複雑さは出来る限り抑える必要がある。以上のことを考慮し、励磁機の磁極対の数は二つに設定することができる。ここで設定した磁極対の数二つという数は、同様に回転駆動巻線に対しても適用することができ、また例えば、一つという数は、軸支巻線の磁極対の数として選ぶことが可能である。
この巻線系は、四つの溝を有する固定子に収納することが可能である。図15に、二つの軸支巻線111、112を示し、また図16に回転駆動巻線113、114、115および116を示す。
さらに、モータを内側回転子とするか、あるいは外側回転子として構成するかを決めなければならない。選択した数の磁極対に対する力(マックスウェル力およびローレンツ力の総和)を考慮した場合、内側回転子よりも外側回転子の方がより大きな半径方向の力が生じるということが解かる。
磁気軸受を有する単相モータの製造方法は、巻線構造を変えることによって技術的に簡略化することが可能である。磁極対を一つ有する軸支巻線111について考察すると(図17)、この巻線の影響は、図18に示す電流が流れる二つの高密度コイル111aおよび111bによってシミュレーションを行うことが可能である。Nで表される溝を流れる電流によりこの影響はほぼ相殺されるが、巻線の長さが長いために別の損失が生じる。
同様な考察によって、軸支巻線は全て高密度コイルで置き換えることが可能である。それによって、図19に示す、12の高密度コイル111a―111d、112a―112dおよび113−116を有する巻線構造が得られる。
高密度コイルを用いることによって、理想的な形(正弦波)から大きくはずれる横方向の力のグラフを得る。図20に、回転力M、図21に、各々力Fのxおよびy成分であるFxとFyを角度φに対してグラフ化している。
図20および図21に示すグラフの曲線の算出は、FEM(有限要素法)の助けを借りて行うことが可能である。この方法では、回転子の各回転位置において、機械の回路系を新たに生成しなければならないため、演算時間は相対的に長くなる。
本発明による方法は、この方法と比較し実質的に効率的である。フーリエ係数による実施例で説明した通り、空隙中にある磁束密度分布の法線方向の成分は、FEM法によれば、回転子の一つの位置に対してのみ求められ、フーリエ係数はこれから算出され、また軸支力および回転力が各々計算される。回転子の1回転のシミュレーションは磁束密度分布および電機子電流層の変位により行うことが可能である。本方法の利点として、さらにマックスウェル力FMとローレンツ力FLを別々に調べることができるということが挙げられる(図22)。
モータのコストを最適化するために、図19に示す12の高密度コイルは、四つの高密度コイルで置き換えることが可能である(図3)。回転力および軸支力を生成するために必要な電流を次に算出しなければならず、また各々の場合において、これらの電流は個別のコイルに累加的に印加されることになり、これによって、信号および電力の電子回路系はさらに複雑で高価なものが必要になってくる。しかしながら、利点としては、横方向に必要な力が小さい状態で大きな回転力が得られ、またその逆の場合もあり得るという可能性が生じるということである。
Claims (14)
- 磁気軸受を一体化した電気駆動装置の軸支巻線および回転駆動巻線系の制御方法であって、
回転子および固定子に作用する力が、回転子や固定子に取付けられた回転駆動巻線および軸支巻線を用いて生成され、
回転子の位置(36、37)および回転子の回転角(φ)が、位置および角度検出器を用いて決定され、
回転子および固定子に対して半径方向と接線方向に作用する力を生成するために回転駆動巻線および軸支巻線に巻線電流が供給され、
回転子の回転角(φ)に依存する分力の正弦波からのズレに応じて前記巻線電流がアナログまたはデジタル電子回路により供給されることを特徴とする方法。 - 接線方向および半径方向の分力が、実質的に回転子の回転角と独立に分離されており、かつ/または、飽和状態および渦電流の形成の影響に応じて分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 回転子と固定子に各々半径方向に作用し、回転子の回転角(φ)に依存する分力の正弦波からの前記ズレが、これに対応して形成された巻線電流により角度に依存して補正されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
- 回転子および/または固定子に接線方向に作用する力の成分によって形成され、かつ回転子の回転角(φ)に依存する回転駆動力の所定の巻線電流における正弦波からの前記ズレが、これに対応して形成された巻線電流により角度に依存して補正されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記巻線電流は、軸支巻線や回転駆動巻線に対して、直接巻線電流(78)として、または、必要に応じて間接的に電圧(83)の印加を介しても印加されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
- 接線方向と半径方向の分力の前記分離は、電子回路中にハードウェアあるいはソフトウェアによって実装される分離回路により行われることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
- 近似的に正弦波の励磁場分布および近似的に正弦波の磁束分布を有する機械の駆動特性に相当する駆動特性を電気駆動装置に印加することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
- 所望の回転速度、所望の回転子の位置、所望の回転角またはその他所望の仕様値に関して、軸支力および/または回転駆動力に対する仕様値から、軸支巻線および回転駆動巻線中の電圧および電流の瞬時値、回転子の位置、回転角あるいはそこから導かれるパラメータ等であって、検出器を介して直接あるいは巻線の電流または電圧プロットから検出器を用いずに間接的に求められる状態パラメータを用いて、必要な巻線電流を求めることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
- 分離型の軸支巻線および回転駆動巻線系には、前記巻線電流に重ね合わされた軸支力を形成するための電流成分と回転駆動力を形成するための電流成分とが供給され、半径方向および接線方向の力の制御および/または調整に必要な巻線電流を決定する際に、個々の巻線電流は、一方を軸支巻線に、他方を回転駆動巻線に供給するために求められることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
- 共用軸支巻線及び回転駆動巻線系には、前記巻線電流に重ね合わされた軸支力を生成するための電流成分と回転駆動力を生成するための電流成分とが供給され、軸支力を生成するための成分と回転駆動力を生成するための成分の両方を含む巻線電流は、半径方向および接線方向の力の制御あるいは調整に必要な巻線電流を決定する間に求められることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
- 所定の最適ではない力と電流の関数から出発して、任意の駆動装置に対して、最適化した力および電流の関数が、基準値および/または校正値によって求められることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
- 磁気軸受を一体化した電気駆動装置の軸支巻線および回転駆動巻線系を制御するための装置であって、
前記電気駆動装置は、回転子や固定子に取付けられる回転駆動巻線および軸支巻線を有する電気機械、位置および角度検出器、さらに前記電気機械の制御、調整、監視および送り用のアナログまたはデジタル電子回路を備え、
前記装置は以下の複数の電気装置、すなわち、
軸支巻線および回転駆動巻線中の電圧および電流の瞬時値、回転子の位置、回転角あるいはそこから導かれるパラメータ等の状態パラメータを測定および/または計算するための検出器(79)あるいは演算回路と
請求項1から12のいずれか一項に基づく方法をハードウェアやソフトウェアによって、または数値表の形式で実現するデジタルまたはアナログ回路(71、72、73、74、81、82および85)と、
電気機械の軸支巻線および回転駆動巻線に巻線電流(75)や巻線電圧(86)を印加するためのアナログ式またはスイッチ式の電力制御装置と、を備えていることを特徴とする装置。 - 磁気軸受を一体化した電気駆動装置であって、請求項13に従う回転駆動巻線および軸支巻線の制御を行うための装置を有することを特徴とする電気駆動装置。
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