JP4138028B2 - マクロダイバーシティ無線システムにおけるダウンリンク電力制御方法及びその装置 - Google Patents
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Description
本発明は一般にマクロダイバーシティ能力を有する通信システムの分野に関し、特に、移動局へ情報を送信するために使用する1つまたはそれ以上の送信装置の送信電力の制御に関する。
発明の背景
セルラー通信システムの単純化したレイアウトが図1に描かれている。移動局M1〜M10は、セルラー基地局B1〜B10へ無線信号を送信し、セルラー基地局B1〜B10から無線信号を受信することにより、公衆交換電話通信網(PSTN)の固定部分と交信を行う。セルラー基地局B1〜B10は移動交換センター(MSC)を介してPSTNと順次接続を行う。各基地局B1〜B10は、対応するエリア、或いは“セル”C1〜C10の範囲内で信号を送信する。各セル内では、基地局がダウンリンクRFチャネルを介して移動ユニットへ送信を行う一方で、移動ユニットがアップリンクRFチャネルを介して基地局へ情報を送信する。図1に描かれているように、セルが、オーバーラップが最小となる状態で、通常移動電話通信が行われるエリア(たとえば大都市エリア)をほぼカバーするよう、基地局を理想的に配置することができる。
セルラーシステムは元来、移動局と、地理的セルをカバーする関連基地局との間を1対1の対応で動作するように設計されたものであるが、一方で、2つ以上のリンクを介して一つの移動局へ同じ信号を通信することによりシャドウイングとフェージングの影響が低減可能であることが明らかとなっている。例えば、2つの異なる基地局が2つの異なる空間的オフセットリンクを介して一つの移動局へ同じ情報を通信することができる。その移動局は何らかの方法(最大比合成法)でこれらの信号を組み合わせることによって2つのリンクから来たこれらの信号を処理する。この手法はダイバーシティとして公知のものである。従来型の空間ダイバーシティ法では、移動局との交信が行うために、単一基地局で2以上の分離アンテナを必要とするか、或いは、2以上の基地局を必要とする。しかし、ダイバーシティは、基地局やアンテナ(すなわち複数の伝送路)の空間的オフセットに限定されるものではない。時間、偏波、又は周波数におけるオフセットのうちの1つまたはそれ以上を用いてダイバーシティ送信を行うことが可能である。時間的ダイバーシティの一例としてはインターリーブがあり、北米ディジタル・セルラー・システムのIS-54B-EIA/TIA規格で使用されている。周波数ダイバーシティは、2つの異なる周波数で同じ情報を送信することによって実現されるがそのような方式では周波数スペクトルを効率的に利用することができない。簡単に上述したように、空間ダイバーシティというコンセプトには複数の信号路を介する信号の受信が含まれる。
空間ダイバーシティには、2つの全く異なる基地局を利用する移動局との交信を含むことができるので、この方法はマクロダイバーシティと称される。しかし、本明細書で用いられているように、マクロダイバーシティという用語には、ダイバーシティ送信に使用されるアンテナが互いに接近して配置されている構成や、同じ基地局内で共同配置されて(co-located)いる構成までも含ませることができる。図2〜5はいくつかの例示的マクロダイバーシティ構成を描くものである。
図2にはマクロダイバーシティ構成が例示されている。この構成では、第1基地局202と第2基地局204の各々によって同じメッセージ206が移動局208へ伝送される。メッセージ206は、第1ダウンリンク210と第2ダウンリンク212の形で異なる信号路を介して移動局208へ伝送される。第1及び第2ダウンリンク信号210と212は移動局208の中で再結合されメッセージ206が抽出される。移動局208は、第1及び第2アップリンク伝送路214と216を介してそれぞれ基地局202と204へ送信を行う。
図3にはマクロダイバーシティ構成が例示されている。この構成では、第1アンテナ304と第2アンテナ305から同じメッセージ306が放送される。アンテナ304と305とは異なる偏波特性(例えば水平及び垂直偏波)を有するが、同じ基地局302内に配置されている。第1及び第2ダウンリンク310と312とは基地局302から移動局308へメッセージ306を通信し、一方、対応する第1及び第2アップリンク314と316は移動局308から基地局302へ通信を行う。
図4には屋内RF通信システム用マクロダイバーシティ構成が描かれている。この構成では、第1、第2及び第3アンテナ402、404、410のうちの1つまたはそれ以上のアンテナによって同じメッセージ406を含む信号が移動ユニット408へ送信される。図に描かれているように、第1及び第2ダウンリンク410と412とはそれぞれアンテナ404と410から移動局408へメッセージ406を通信する。第1及び第2アップリンク414と416とは移動局408からそれぞれアンテナ404と410とへ通信を行う。
図5には単一基地局マクロダイバーシティ構成が描かれている。この構成では、アンテナアレイ504によって生成される第1及び第2指向性ローブ518と520の各々によって別々のカバーエリアがカバーされる。第1指向性ローブ518は、第1マクロダイバーシティリンクを維持する。この第1マクロダイバーシティリンクにはメッセージ506を運ぶ第1ダウンリンク510が含まれる。第2指向性ローブ520は第2マクロダイバーシティリンクを維持する。この第2マクロダイバーシティリンクにはメッセージ506を含む第2ダウンリンク512が含まれる。第1及び第2アップリンク514と516とは、各ローブ518と520の範囲内でそれぞれ移動局508からアンテナアレイ504へ通信を行う。
マクロダイバーシティ構成では、基地局及び/又はアンテナは“アクティブ・セット”の構成要素として知られている特定の移動局と交信する。例えば図4に戻って参照すると、アンテナ404と410とはアクティブ・セットの構成要素と見なされる。アクティブ・セットの構成要素は、システムの基地局及び/又はアンテナによって処理されるカバーエリアから移動局が出たり入ったりするにつれて変化する場合がある。当業者には公知のように、基地局及び/又はアンテナのアクティブ・セットへの追加とアクティブ・セットからの削除を使ってハンド・オフを達成することができる。
マクロダイバーシティは、ロバスト性を増し、改善されたダウンリンク品質を達成し、フェージングを抑制する。しかし、マクロダイバーシティ方式による追加のアクティブ送信要素のために、近傍で動作する周囲の移動局及び/又は基地局の干渉(すなわちC/I比)が増大する。従来型のマクロダイバーシティシステムではアクティブ・セット中の各アンテナ用電力を送信する同量のダウンリンクが通常利用される。例えば、IS-95システムではアクティブ・セット中のすべてのダウンリンク用として同じ送信電力レベルが使用される。他のユーザーにとって望ましくない干渉の原因となるので、アクティブ・セットから構成要素を追加したり削除したりするとき、無関係なリンクでの干渉が最小になるように慎重な考慮が必要である。従って、干渉を制御する1つの方法として、アクティブ・セットの中で基地局及び/又はアンテナの数を限定するという方法がある。
マクロダイバーシティオペレーションから生じる不必要な干渉の影響を少なくする従来型のシステムで使用される別の方法として、電力分割制御がある。電力分割制御を行う際、ダウンリンク送信電力もアクティブ・セットの各アクティブな基地局及び/又はアンテナ間で均等に分割することができる。すなわち、3つのダウンリンクがあって、Pという総送信電力が利用可能な場合、ダウンリンクの各々はP/3の送信電力レベルを有することになる。しかし、アクティブ・セットの中で“最も弱い”ダウンリンクがP/3の電力レベルで動作しているとき、このような割り振りによっても不必要な量の干渉が入り込む場合がある。特に、このリンクによって、実際に通信ロバスト性の小さな改善を実現することはできるかもしれないが、結局は、さらに過度の干渉が入り込み、周囲の通信に対してより多くの途絶が引き起こされることになる。その結果、隣接セルのC/I比は悪影響を受け、通信効率の最小利得しか得られない可能性がある。
DS-CDMAシステムでは、移動局が受信するダウンリンク信号の特徴に従ってダウンリンク送信電力を割り当てる比例ダウンリンク送信電力制御方法が利用される。特に、ダウンリンク用として使用される一定量の送信電力は、移動局で測定されるようなダウンリンク信号のパイロットチャネル信号の強さと干渉値に基づいて画定される。次いでこの測定情報は移動局によってシステムへ報告される。最小限の量の電力を使用して望ましいレベルの通信効率を維持しながら、その一方で同時に、隣接する無関係のリンクに対して最小量の干渉しか入り込まないようにすることが可能になるのでこのようなシステムは望ましい。しかしDS-CDMAシステムには多くの欠点がある。
例えば、DS-CDMAシステムではかなりの情報コストを必要とし、ダウンリンク電力制御を実行する重要な資源が浪費される。DS-CDMAダウンリンク電力制御システムでは、移動局に隣接するセルの経路利得の特性を定期的に測定するために移動局が利用される。測定レポートが関連するアップリンクで規則的に返信される。DS-CDMAシステムではいわゆる“高速”電力制御が頻繁に使用されるので、情報の測定及び転送に、アップリンクフレーム容量のおよそ10%のダウンリンク測定情報及び報告の為だけの使用が必要となる場合がある。その結果他の情報のために使われるフレーム容量が少なくなる。移動局は測定を行うための追加処理を行い、測定情報をフォーマットし送信しなければならない。これは、処理用資源を浪費し、設計をより複雑にし、ハンドセット電力消費量を増やすという影響を及ぼすことになる。
そこで、移動局が送信するフレームの情報容量を減らさないようにする、各アンテナ及び/又は基地局ダウンリンク用のダウンリンク送信電力制御システムが要求されている。ダウンリンク品質の測定及び測定データの送信処理のような追加タスクを移動局に負わせないようにするダウンリンク電力制御システムの提供が更に望ましい。
発明の概要
上述の問題を解決するために、アップリンク信号品質を基地局で測定し、マクロダイバーシティシステムでダウンリンク電力制御を行う電力制御システムが本発明によって提供される。本発明は、特別な処理を行う必要や、測定情報用のアップリンクフレーム容量を犠牲にすることから移動局を救うためのものである。その結果、ダウンリンク電力制御を行いながら製造コスト、設計の複雑さ、移動局に関連する電力消費量の低減を図ることができる。本発明の例示的実施例に従って、アップリンクの測定を行うか、システム規格(GSMまたはD-AMPSなど)に準拠して既に利用可能なアップリンク品質係数を利用するかのいずれかの方法によって、アップリンク品質を正確に測定することができる。1つまたはそれ以上の基地局の範囲内で、アクティブ・セットと関連する制御手段あるいは基地局と接続したノードによって、このアップリンク品質情報を利用してダウンリンク送信電力レベル。このようなダウンリンク送信電力の制御によって、最善のダウンリンク品質を達成する可能性が最も大きいアクティブ・セットの構成要素を制御し、適切な電力レベルで送信を行うことができる。通常、残存ダウンリンクを制御してより低い電力レベルで送信が行われる。このようにして、マクロダイバーシティ通信によるロバスト(robust)通信をそのまま維持しながら、干渉量を最少化できるある一定レベルでの送信がアクティブ・セットのダウンリンクによって行われる。
特に、本発明の例示実施例によるシステムでは、マクロダイバーシティ無線システムにおいて基地局から移動局へのダウンリンク信号中で使用する送信電力の制御方法が提供される。1つの例示的方法の中には、基地局で受信したアップリンク信号の品質を測定し、このアップリンク信号の品質測定に応じてダウンリンク送信電力レベルの制御を行うことが含まれる。
例示実施例には、マクロダイバーシティ無線システムの基地局と移動局間のダウンリンクで送信電力を制御する装置が含まれる場合がある。一般に、このような装置には、基地局で受信した移動局からのアップリンク信号の品質測定手段が含まれる。ダウンリンク信号の送信に使用する送信電力レベルの量の制御手段は、測定手段によって測定したアップリンク信号の品質に基づいて動作する。
例示実施例によれば、ダウンリンク送信電力制御は、対応するアップリンクの経路利得及び/又は対応するアップリンクの搬送波対干渉比に従って行われる。
【図面の簡単な説明】
本発明の目的と利点は以下の詳細な説明を参照図面と併せ読むことによって理解される。
図1は本発明を利用することができる従来型のセルラー通信システムを描く。
図2は2つの個々の基地局が移動局と交信するマクロダイバーシティシナリオを描く。
図3は、個々の基地局が相互からの極性オフセットを有する2つのダウンリンク用アンテナを使用して移動局と交信するマクロダイバーシティシナリオを描く。
図4は、屋内RF通信システムでのマクロダイバーシティシナリオを描くもので、複数の個々のアンテナのうちの1つまたはそれ以上のアンテナが移動局と交信するようになっている。
図5は、個々の基地局が個々のローブを伝播するアレーアンテナを用いて移動局と交信するマクロダイバーシティシナリオを描くものである。これら個々のローブの各々によって異なるカバーエリアが処理される。
図6Aと6Bは従来型の移動局要素と基地局要素からなる回路図である。
図7は本発明の例示実施例に従う処理過程を例示する流れ図である。
図8は本発明に準拠する1つの例示的ダウンリンク電力制御システムの性能を示すために使用した第1シミュレーションの結果を例示するグラフである。
図9は本発明に準拠する1つの例示的ダウンリンク電力制御システムの性能を示すために使用した第2シミュレーションの結果を例示するグラフである。
図10は本発明の例示実施例を使用して行ったシミュレーションに従って使用したフロア空間のマップである。
推奨実施例の詳細な説明
図6Aはマクロダイバーシティ能力を有し、したがって本発明に従って動作可能な1つの例示的基地局600の要素を描くブロック図である。基地局600には無線送受信装置606を制御する基地局制御装置602が含まれる。無線送受信装置606を行き来する通信用信号は、1つまたはそれ以上の結合器608によってそれぞれ結合され二重化される。結合器608は、アンテナアレイやそれぞれの垂直及び水平分極アンテナと各々接続することができる。アンテナアレイは、個々の地理的エリア(たとえば図5参照)をカバーするビームローブ614と616を持つことができる。後者のアンテナ構成は図3に例示したものと類似している。基地局制御装置602は、トラフィックバス620、タイミングバス622及びベースバンドバス624を介して基地局送受信装置606の要素と交信を行う。当業者が理解するように、また、上記発明の背景のセクションで簡単に説明したように、各々が単数のアンテナを有する1つまたはそれ以上の基地局を含む代替構成を使用して本発明に準拠するマクロダイバーシティ通信を容易にすることができる。
図6Bに描かれているように、1つの例示的移動局650には、無線送受信装置654と結合する制御装置652が含まれる。この無線送受信装置654は今度はアンテナ656と接続している。マクロダイバーシティオペレーションによって、移動局650が1つまたはそれ以上の基地局及び/又はアンテナから受信したダウンリンクダイバーシティ信号を再結合する能力を有することは当業者の理解するところである。
本発明の例示実施例による基地局動作について図2を参照しながら説明する。この実施例では2つの別個の基地局202と204が使用され移動局208へダイバーシティ信号が通信されるようになっている。しかし、当業者が理解するように、本記載のダイバーシティ信号は同じ基地局の2つまたはそれ以上のアンテナから発することができる。図2を参照すると、本発明の1つの例示実施例には第1基地局202と第2基地局204を含めることができ、別々のダウンリンク伝送路210と212をそれぞれ用いてこれら基地局の双方によって移動局208へ共通情報206が通信される。移動局208から基地局202と204への通信には、第1基地局202への第1アップリンク214と第2基地局204への第2アップリンク216とが含まれる。本発明の1つの例示的様相によれば、第1及び第2ダウンリンク210と212の各々に使用する送信電力レベルは、対応するアップリンク214と216用について基地局202と204でそれぞれ測定される品質測定値に依存する。
本発明による1つの例示的処理が図7に例示されている。この独創的な処理は、アクティブな通信処理が行われている間、アクティブ・セットの構成要素用のダウンリンク電力レベルを継続的に調整するために使用可能であるという意味の適応性があることが望ましい。これに応じて、アクティブ・セット中の基地局及び/又はアンテナと、移動局との間の通信リンクの確立と共にステップ700から処理が始まる。アクティブ・セットの構成要素は、移動局からのアップリンクの特性や品質をステップ702でモニターし測定する。制御システム、送受信装置、または基地局の類似要素、あるいは基地局と接続したノードによって、アップリンク信号の品質測定値の関数としてダウンリンク送信電力レベルが計算される(ステップ704)。次いで、この計算された電力レベルを制御するためにアクティブ・リンク用として使用するダウンリンク送信電力レベルが印加される(ステップ706)。この様にして、本発明により動作するシステムでは、システムに対する不必要な量のRF干渉が入り込むことなく、移動局に供給されるアクティブな構成要素の各々について最適量ダウンリンク電力が印加される。関連するアップリンク品質に応じて用いられるダウンリンク送信電力レベルはダウンリンク電力を制御する様々な方法で計算することができる。
当業者には理解できるように、アップリンク品質は任意の様々な信号特性によって測定することができる。本発明の1つの例示実施例に従って用いることができる1つの例示的特性は経路利得giであり、この利得は特定のリンクiについての測定値である。経路利得(また負の経路損とも呼ばれる)は一般に、信号が発出された源である送信装置からの距離の増大に関連するような信号の減衰に関連する。送信電力Pの総量が、アクティブ・セットのダウンリンク用アンテナに対して利用可能であると仮定すると、リンクi用として使用されるダウンリンク送信電力Piのレベルは次式1によって決定することができる。
ここで、Pは利用可能な総電力である。giはアップリンクiについて測定した経路利得である。nはアクティブ・セット中のアンテナ/基地局数である。
代替アップリンク品質測定係数を使用して適切なダウンリンク電力を計算することができる。例えば、式1に関して上に述べた方法と同様の方法で、搬送波対干渉(C/I)比を用いてダウンリンク電力レベルを計算することができる。特に、リンクi用として使用されるダウンリンク送信電力のレベルは式2によって決定することができる。
ここで、Pは利用可能な総電力である。Ci/Iiはアップリンクiについて測定した搬送波対干渉比である。nは、アクティブ・セット中の基地局(またはアンテナ)数である。
例えば、他のアクティブな移動ユニットが近傍に存在する可能性がより高い状況では、C/I比を利用してダウンリンク電力割り振りを決定するほうが好適な場合もある。そのような状況では、自分が望む通信品質の所望のレベルを達成するために必要なものよりも多くの干渉を導入することによって、干渉を生じる周囲の通信を回避することが重要である。アップリンクC/I比を利用することによって、現在存在する周囲の干渉の程度の評定を行うことができる。次いで適宜この比率を用いてダウンリンク送信電力レベルを調整し、不必要に増大する干渉を避けながら一方で望ましいレベルの通信品質を維持することができる。
本発明に準拠する対応するダウンリンク用の適切な電力レベルを決定するアップリンク特性を使用することによっていくつかの利点が達成される。例えばDS-CDMAシステムにおけるように、移動局でダウンリンク特性の測定とその結果を報告することは、ダウンリンク品質の直接測定を行うことになる。しかし、上記発明の背景のセクションで述べたように、諸経費及びそのようなシステムによって浪費される資源は相当なものである。これと対照的に、アップリンク品質の測定とその結果生じる測定値を利用することは、ダウンリンク特性の評価を行うための有効な手段を提供するものである。本発明の例示実施例によれば、これらのアップリンク特性はアクティブ・セット基地局において測定される。従って、アップリンクで伝送されるフレームには測定報告を行うための専用フレーム容量についての要件が存在しない。更に、基地局には移動局と同じ処理や電力制限はなく、アップリンク測定を評価するのに必要な処理用資源をもっと容易に専用資源として割り当てることができる。アップリンクデータ処理用及びその結果を利用するダウンリンク電力レベル制御専用の追加的電力消費は、基地局全体で利用可能な電力資源を考慮すると僅かな量である。
更なる問題として、アップリンク品質係数の多くは、システムが動作している動作規格要件に従って収集できるので、基地局ですぐに入手可能である。例えば、GSM及びD-AMPSシステムではアップリンク信号の強さ、経路利得及びC/I比の測定が行われる。従って、前述の情報を用いて対応するダウンリンク電力レベルを決定する際このような係数はまだ無用であるように思われるにもかかわらず、これらの係数はシステムにとっては既に利用可能であり、本発明の例示実施例に従って使用可能である。
基地局中でのアップリンク品質情報の処理は当業者が十分に理解できるような様々な方法で行うことができる。上記のように、既存の規格の下で維持されるアップリンク品質用システム変数を使用してダウンリンクの電力制御計算を行うことができる。参照図6Aに戻って、基地局制御装置602は増幅器(図示せず)に従って動作することができる。該増幅器は、アンテナアレイを駆動するために及び/又はダウンリンク送信用として印加する電力レベルを制御するために使用される。或いは、無線送受信装置606の構成要素を利用してアップリンク品質を測定し、その後にそのような測定値を増幅器に印加してダウンリンク送信電力レベルを適宜調整することができる。言うまでもなく、基地局600が接続されている1つまたはそれ以上のノードにおいて送信電力制御とアップリンク測定を行うことができる。増幅器の制御及びアップリンク信号の測定は本発明に従って容易に行うことができるので更なる説明については省略する。
図4に描かれているものと類似の屋内RF無線システムを使用してシミュレーション(アクティブ・セットのアンテナ間での本発明に準拠する電力割り振り)を行った結果、通信性能にきわめて明らかな改善が見られた。このシミュレーションにはモデルとしてのいくつかの配慮が含まれた。例えば所定リンクiについて検知される(perceived)電力Cは次式によってモデル化した。
ここで、リンクiについて使用したダウンリンク電力はPiによって示されている。また、移動局とアンテナ間の平均経路利得giは周知の経路損予測法に従ってモデル化された。riで示されるレイリーフェージングとして高速フェージングをモデル化したが、このフェージングは時間及び周波数の双方に依存した。受信干渉電力1は、n個の干渉要素(interferer)から生じる瞬時電力の和として次式によりモデル化した。
例えばリンク1と2を含むマクロダイバーシティシナリオ用の所望の信号は以下のように計算した。
移動局中の等化器は、例えば最大比結合(maximal ratio} combining)を用いて、複数の光線を分解し、それらの光線をコヒーレントに加えることができると仮定されている。アンテナの1つからの送信をおよそ1記号時間(one symbol time)だけ遅延することによって上記を達成することができる。或いは、リンク中の1つについて周波数オフセットを選択することができる。
このシミュレーションには5つのフロアと多数の移動局が含まれた。これらの移動局はフロアの各々にわたって等しい確率レベルで出現するようにモデル化された。このシミュレーションで使用した個々のフロアは図10に描かれている。フロアの各々は各フロアの同じ位置に配置した7本のアンテナによってカバーされた。シミュレーションの各フロアは個々のセルとして一般に処理され、これらのセルは7本のアンテナによって専ら処理された。チャネルの再利用は各セル内で1チャネルに制限された。チャネルは各フロアで移動局に対してランダムに割り振られた。各移動局について、最高の平均利得を持つ2本のアンテナがマクロダイバーシティリンクとして選択された。個々の移動局用として利用するのに7本のアンテナのうち2本しか許可されなかった。2本のアンテナ間で分割された電力の総量は一定(すなわちP=p1+p2)であった。システム性能はGSMバースト・インターバルに従って1/216秒毎に測定した。建物内のコチャネル干渉は考慮したが、隣接チャネルによる干渉は無視した。このシミュレーションの他のパラメータを以下表1に示す。
このシミュレーション結果を従来型の単一アンテナによる動作構成と比較した。これらの構成にはシングルキャスト(singlecast)構成を含め、移動局へのダウンリンク送信用としてセルの平均的最適リンクアンテナを使用した。また理想的シングルキャスト構成を比較目的のために使用した。この場合、単一の最も強いリンク(1つのセルの7つのリンクのなかの1つ)からの情報がシステムによってバーストからバーストへ送られた。周波数2重距離(frequency duplex distance)に起因してアップ/ダウンリンクでの高速フェージングが独立して行われるので、従来型のシステムでは理想的シングルキャスト法は一般に実行不可能であることが当業者によって理解されている。
シミュレーションの比較結果が図8と9に描かれている。例えば、図8は経路利得(gi)とC/I比例ダウンリンク電力割り振り方式を従来型のシングルキャストの場合と比較したものを例示した図である。(gi)及びC/I比例ダウンリンク制御方式の利得は累積分布関数(C.D.F.)の10%の確率レベルで1.0〜1.5dBで類似している。しかしもっと低いdBレベルではこの利得は更に大きくなる。
図9は理想的シングルキャストとマクロダイバーシティシナリオとの比較を示す図である。この場合、リンクi用のダウンリンク電力はリンクiのアップリンク部分(すなわちpi〜gi)について測定された経路利得giに比例する。本発明に準拠する電力割り振りを備えたマクロダイバーシティの動作が、理想的シングルキャスト方式のレベルに匹敵する性能レベルを達成できることを示すという点での改善が注目される。図9には、2つのリンク間で分割された電力が等しい(p1=p2)ケースも描かれている。このケースは、ダウンリンク中の少なくとも1つのダウンリンクがあまりに高い電力レベルで送信を行っているとき、干渉レベルが不必要に高くなる可能性があることをはっきりと示すものである。これとは対照的に、本発明に準拠する電力分割方式を用いるとき干渉レベルは減少する。
本発明の別の様相によれば、所定のリンクをアクティブ・セットに含むべきかまたはアクティブ・セットから除去すべきかどうかを評価する際にアップリンク品質係数を使用することができる。ハンド・オフの決定を行う際にこのような構成は有効な助けになる。例えば、基地局及び/又はアンテナを追加すべきかあるいは移動局をハンドリングするアクティブ・セットから削除すべきかどうかを示す所定の数や品質レベルと、移動局近傍の各基地局及び/又はアンテナで採られたアップリンク測定値を比較することができる。移動局が1つのカバーエリアから動いてそのエリアの外に出ることによってそのカバーエリアのアップリンク品質測定値(その対応する基地局によって測定されるような)が所定のレベル以下に落ちた場合、そのリンクは落とされる。一方、移動局がカバーエリア内に入って来て対応する基地局及び/又はアンテナのアップリンク測定値が品質閾値以上に上昇した場合、基地局/アンテナはアクティブ・セットに追加され、その後移動局とアクティブに交信することができる。したがってハンド・オフを効率良く達成することができる。
本明細書に開示された本発明はマクロダイバーシティ無線通信システムに関する。本明細書に開示され記載されているように、本発明の例示的様相はマクロダイバーシティ能力を有するセルラー電話及び屋内RF通信システムという文脈で述べられている。しかし、当業者が容易に理解するように、本発明はマクロダイバーシティを用いて動作可能な任意のRF通信システムに対して適用することができる。このようなシステムとして光(たとえば赤外線)通信とPCSシステムが含まれるがこれらのシステムに限定されるものではない。さらに、本発明に準拠するシステムは、発明の背景のセクションで説明した電力分割システムのような従来型のシステムでも適用することができる。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載された例示実施例による限定を意図するものではなく、本明細書添付の請求項及びその均等物に限定されるものである。
推奨実施例だけを参照しながら本発明を詳細に説明したとはいえ、本発明から外れることなく種々の変更を行うことができることを当業者は理解するであろう。したがって、本発明はすべてのその均等物を包含するように意図された以下の請求項によって画定されるものである。
Claims (27)
- マクロダイバーシティ無線システムにおいて基地局から移動局へのダウンリンク信号で使用する送信電力を制御する方法であって、
基地局で受信した移動局からのアップリンク信号の品質を測定するステップと、
最大量のダウンリンク信号送信電力が、最高品質のアップリンク信号を受信するアクティブセットリンクに割り当てられるように、2以上のダウンリンク信号を制御するステップとを有することを特徴とする方法。 - マクロダイバーシティ無線システムにおいて基地局から移動局へのダウンリンク信号で使用する送信電力を制御する方法であって、
基地局で受信した移動局からのアップリンク信号の品質を測定するステップと、
アップリンク信号の品質測定値に応じてダウンリンク信号送信電力を制御するステップとを有し、
ダウンリンク信号送信電力量が、対応するアップリンク信号の品質測定値に比例し、
アクティブ・セット中のリンクi用のダウンリンク信号送信電力量Piが、
によって決定される比に従うことを特徴とする方法。
ただし、Pは利用可能総電力であり、giはリンクiのアップリンクについての経路利得であり、nはアクティブ・セット中の通信装置数である。 - マクロダイバーシティ無線システムにおいて基地局から移動局へのダウンリンク信号で使用する送信電力を制御する方法であって、
基地局で受信した移動局からのアップリンク信号の品質を測定するステップと、
アップリンク信号の品質測定値に応じてダウンリンク信号送信電力を制御するステップとを有し、
ダウンリンク信号送信電力量が、対応するアップリンク信号の品質測定値に比例し、
アクティブ・セット中のリンクi用ダウンリンク信号送信電力量Piが、
によって決定される比に従うことを特徴とする方法。
ただし、Pは利用可能総電力であり、Ci/Iiはリンクiのアップリンクについての搬送波対干渉比であり、nはアクティブ・セット中の通信装置数である。 - マクロダイバーシティセルラー電話システムにおいて基地局から移動局へダウンリンク信号を送信するために使用する電力レベルを制御する方法であって、
複数のアップリンク信号の少なくとも経路利得と搬送波対干渉品質のうちの一方を測定してアップリンク品質係数を決定するステップと、
計算の基礎として前記複数のアップリンクの品質係数を用いて複数のダウンリンク電力レベルを計算するステップと、
前記計算したダウンリンク電力レベルに従って、移動局へ複数のダウンリンク信号を送信するために使用する電力レベルを制御するステップとを有することを特徴とする方法。 - 前記giが前記リンクiのアップリンクの平均経路利得であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 前記Ci/Iiが前記リンクiのアップリンクについて測定された平均搬送波対干渉比であることを特徴とする請求項3記載の方法。
- 前記リンクは基地局リンクであって、前記通信装置は基地局であることを特徴とする請求項2、3、5、または6に記載の方法。
- 前記リンクはアンテナリンクであって、前記通信装置はアンテナであることを特徴とする請求項2、3、5、または6に記載の方法。
- 最大量のダウンリンク信号送信電力が最高品質のアップリンク信号を受信するアクティブ・セット基地局に対して割り当てられることを特徴とする請求項7記載の方法。
- 最大量のダウンリンク信号送信電力が最高品質のアップリンク信号に対応するアクティブ・セットアンテナリンクに対して割り当てられることを特徴とする請求項8記載の方法。
- アップリンク信号の品質を測定するステップが、アップリンク信号の経路利得を測定するステップを有することを特徴とする請求項1記載の方法。
- アップリンク信号の品質を測定するステップがアップリンク信号の搬送波対干渉比を測定するステップを有することを特徴とする請求項1記載の方法。
- アップリンク信号の品質を測定するステップが、アップリンク信号についてのビット誤り率を測定するステップとアップリンク信号についてのフレーム消去率(frame erasure rate)を測定するステップとを含むグループから選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
- アップリンク信号の品質を測定するステップが、前記アップリンク信号の搬送波信号成分の品質を測定するステップを有することを特徴とする請求項1記載の方法。
- マクロダイバーシティ無線システムにおいて基地局と移動局間のダウンリンクで使用される送信電力を制御する装置であって、
基地局で受信した移動局からのアップリンク信号の品質を測定する手段と、
最大量のダウンリンク信号送信電力が、最高品質のアップリンク信号を受信するアクティブセットリンクに割り当てられるように、2以上のダウンリンク信号を制御する手段と、
を有することを特徴とする装置。 - マクロダイバーシティ無線システムにおいて基地局から移動局へのダウンリンク信号で使用する送信電力を制御する装置であって、
基地局で受信した移動局からのアップリンク信号の品質を測定する手段と、
アップリンク信号の品質測定値に応じてダウンリンク信号送信電力を制御する手段とを有し、
ダウンリンク信号送信電力量が、対応するアップリンク信号の品質測定値に比例し、
アクティブ・セット中のリンクi用のダウンリンク信号送信電力量Piが、
によって決定される比に従うことを特徴とする装置。
ただし、Pは利用可能総電力であり、giはリンクiのアップリンクについての経路利得であり、nはアクティブ・セット中の通信装置数である。 - マクロダイバーシティ無線システムにおいて基地局から移動局へのダウンリンク信号で使用する送信電力を制御する装置であって、
基地局で受信した移動局からのアップリンク信号の品質を測定する手段と、
アップリンク信号の品質測定値に応じてダウンリンク信号送信電力を制御する手段とを有し、
ダウンリンク信号送信電力量が、対応するアップリンク信号の品質測定値に比例し、
アクティブ・セット中のリンクi用ダウンリンク信号送信電力量Piが、
によって決定される比に従うことを特徴とする装置。
ただし、Pは利用可能総電力であり、Ci/Iiはリンクiのアップリンクについての搬送波対干渉比であり、nはアクティブ・セット中の通信装置数である。 - 前記giが前記リンクiのアップリンクの平均経路利得であることを特徴とする請求項16に記載の装置。
- 前記Ci/Iiが前記リンクiのアップリンクについて測定された平均搬送波対干渉比であることを特徴とする請求項17記載の装置。
- 前記リンクは基地局リンクであって、前記通信装置は基地局であることを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の装置。
- 前記リンクはアンテナリンクであって、前記通信装置はアンテナであることを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の装置。
- 最大量のダウンリンク信号送信電力が最高品質のアップリンク信号を受信するアクティブ・セット基地局に対して割り当てられることを特徴とする請求項19記載の装置。
- 最大量のダウンリンク信号送信電力が最高品質のアップリンク信号に対応するアクティブ・セットアンテナリンクに対して割り当てられることを特徴とする請求項20記載の装置。
- アップリンク信号の品質を測定する手段が、アップリンク信号の経路利得を測定する手段を有することを特徴とする請求項15記載の装置。
- アップリンク信号の品質を測定する手段が、アップリンク信号の搬送波対干渉比を測定する手段を有することを特徴とする請求項15記載の装置。
- アップリンク信号の品質を測定する手段が、アップリンク信号についてのビット誤り率を測定する手段と、アップリンク信号についてのフレーム消去率(frame erasure rate)を測定する手段と、を含むグループから選択されることを特徴とする請求項15記載の装置。
- アップリンク信号の品質を測定する手段が、前記アップリンク信号の搬送波信号成分の品質を測定する手段を有することを特徴とする請求項15記載の装置。
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