JP4137338B2 - 表示媒体および書き込み装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質あるいは物質群からなる表示媒体、特に着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の泳動粒子を分散させた分散液に電界を作用させることによって粒子の分布状態を変化せしめ、それによって可逆的に視認状態を変化させうる表示媒体と、少なくとも書き込み時には該表示媒体に近接させられるように着脱が可能な書き込み装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
低消費電力化、あるいは目への負担軽減などの観点から反射型表示装置への期待が高まっている。そのひとつとして、図3に示すような電気泳動表示装置が知られている。1および8はガラス等の透明基板とその片面に所要のパターンで形成された透明電極であって、対向配置されたこれらの一組の透明電極8の間には、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の泳動粒子を分散させた分散液4を封入してある。泳動粒子は分散媒中で表面に電荷を帯びており、透明電極8の一方に泳動粒子の電荷と逆向きの電圧を与えた場合には泳動粒子がそちらに堆積して泳動粒子の色が観測され、泳動粒子の電荷と同じ向きの電圧を与えた場合には泳動粒子は反対側に移動するため分散媒の色が観測される。これにより表示を行うことができる。
【0003】
ここで、分散液4を単に両電極8間に封入する構造では、泳動粒子の凝集や付着現象によって表示ムラを発生することがあるので、両電極8間にメッシュ状あるいは多孔質状の有孔スペーサ7を配置することにより、分散液4を不連続に分割し、表示動作の安定化を図る工夫がなされている。
【0004】
ところが、このような構造の場合、分散液の一様な封入処理が困難である、あるいは封入時に分散液の特性が変化して再現性を得るのが困難であるといった問題があった。そこで特許第2551783号掲載公報では、分散液を封入した多数のマイクロカプセルを形成し、これらを電極板間に配装した構成とすることにより上記問題点を解決している。
【0005】
しかしながら、これら従来の表示装置においては、表示に関わる層の厚さについての詳細な検討はなされておらず、そのために所望の表示解像度が得られない場合があった。
さらに、これら従来の表示装置では各電極に画像を表示するための信号を印加する駆動回路が接続されている。このような表示装置はマトリックス状の2次元駆動が容易であるため特にアクティブマトリックス駆動を採用することにより、高速かつ高解像度の書き込みが可能であるが、表示媒体を駆動部から切り離すことは実質上不可能であるため表示媒体が大型化し、かつ高価なものとなり、紙のように手軽に持ち歩いたり、複数枚を並べて見るというような用途には不向きであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点を解決し、(1)所望の解像度を得ることができる表示媒体を提供すること(請求項1)、(3)所望の解像度を得ることができ、かつ書き込み装置から外すことができる表示媒体を提供すること(請求項2)、(5)視認性が高く、消費電力が小さくかつ表示安定性に優れた表示媒体を提供すること(請求項3)、(6)表示媒体を表示状態を保持したまま書き込み装置から外すことができる書き込み装置を提供すること(請求項4)(7)より短い書き込み時間で画像を表示することができる書き込み装置を提供すること(請求項5)、(8)さらに短い書き込み時間で画像を表示することができる書き込み装置を提供すること(請求項6)をその課題とする。また、本発明は、(9)マイクロカプセル相互およびマイクロカプセルと基体との付着性が良好な表示媒体を提供すること、(10)表示の均一性が良好で、かつ製造が容易な表示媒体を提供すること、(11)中間調を伴う画像であっても鮮明な表示を行うことができる書き込み装置を提供することを別の課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の特徴は、泳動粒子を内包するマイクロカプセルを用いた表示媒体であって、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質あるいは物質群が、ストライプ状にパターンニングされた電極を一方に有し、前記形状と直交するようにストライプ状にパターンニングされた電極を他方に有する一対の基板間に封入されている表示媒体において、当該ストライプの幅の1辺の長さをW’(mm)とし、基板間の垂直距離をd’(mm)とし、表示ドット密度をD’(dpi)としたとき、下記式(1)の関係を有することを特徴とする表示媒体。
17/D’≦W’+d’≦44/D’ (1)
【0008】
電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質または物質群(表示用物質)としては、高分子分散型液晶、双安定性コレステリック液晶、酸化還元反応により着色と消色が可逆的に行われる物質からなる膜とそれに接する電解液からなるもの(エレクトロクロミック素子)、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の泳動粒子を分散させたもの(電気泳動素子)等が挙げられる。
【0009】
これらの表示用物質を少なくとも一方はストライプ状もしくはドット状およびそれに類する形状にパターンニングされた電極を有する一対の基板間に封入する方法としては、
▲1▼一方の基板上にメッシュ状あるいは多孔質状の有孔スペーサを載せ、前記表示用物質を孔内に挿入した後に他方の基板を重ね合わせる、
▲2▼一方の基板上にスペーサ材(例えばプラスチックビーズ)を散布し、他方の基板を重ね合わせた後に前記表示用物質を注入する、
▲3▼前記表示用物質を多数のマイクロカプセル中に閉じこめ、それらを一方の基板上に整列させた後に他方の基板を重ね合わせる等の方法を採用することができる。
【0010】
また、少なくとも一方の基板上にパターン形成された電極のストライプの幅もしくはドットの1辺の長さをW’(mm)とし、基板間の垂直距離をd’(mm)とし、表示ドット密度をD’(dpi)としたときに、17/D’≦W’+d’≦44/D’の関係を有するようにすることにより、所望の解像度を得ることができる。なお、この関係自体はd’の値によらないが、d’がW’に比べて無視できない場合、具体的にはW’/d’≦4程度の場合に特に有効である(請求項1)。
【0011】
前記電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質または物質群(表示用物質)を少なくとも一方はストライプ状もしくはドット状およびそれに類する形状にパターンニングされた電極を有する一対の基板間に封入する方法としては、表示用物質を多数のマイクロカプセル中に閉じこめ、それらを一対の基板間に配設するのが望ましい。前記の表示用物質はいずれも常温で流動性があるが、マイクロカプセル化することにより粉末状の固体として扱うことができるため、ブレードコート、ワイヤーバーコート、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、ロールコート等の手法を用いて基板上に整列させることができるので、製造工程が簡便なものとなる(請求項2)。
【0012】
本発明の第2の特徴は、泳動粒子を内包するマイクロカプセルを用いた表示媒体であって、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質あるいは物質群が、共通電極を設けた基板と一定の距離を隔てた対向面との間の空隙内に封入されている表示媒体において、当該表示媒体表面の任意の部位に電位を与えることのできる手段によって表示媒体表面に形成される等電位箇所の1辺の長さをW(mm)とし、共通電極表面から、共通電極の無い側の表示媒体表面までの垂直距離をd(mm)とし、表示あるいは書き込みドット密度をD(dpi)としたとき、下記式(2)の関係を有することを特徴とする表示媒体。
17/D≦W+d≦44/D (2)
【0013】
電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質または物質群(表示用物質)としては、前記第1の特徴のものと同様のものが使用できる。これらの表示用物質を共通電極を設けた基板と一定の距離を隔てた対向面との間の空隙内に封入する方法としては、
▲1▼共通電極を設けた基板上にメッシュ状あるいは多孔質状の有孔スペーサを載せ、前記表示用物質を孔内に挿入した後に対向基板(例えばプラスチックフィルム)を重ね合わせる、
▲2▼共通電極を設けた基板上にスペーサ材(例えばプラスチックビーズ)を散布し、対向基板(例えばプラスチックフィルム)を重ね合わせた後に前記表示用物質を注入する、
▲3▼前記表示用物質を多数のマイクロカプセル中に閉じこめ、それらを共通電極を設けた基板上に整列させる等の方法を採用することができる。
【0014】
また、表示媒体表面の任意の部位に電位を与えることのできる手段(書き込み装置)によって表示媒体表面に形成される等電位箇所の1辺の長さをW(mm)とし、共通電極表面から表示媒体表面までの垂直距離をd(mm)とし、表示あるいは書き込みドット密度をD(dpi)とした時、17/D≦W+d≦44/Dの関係を有するようにすることにより、所望の解像度を得ることができる。なお、この関係自体はdの値によらないが、dがWに比べて無視できない場合、具体的にはW/d≦4程度の場合に特に有効である(請求項3)。
【0015】
前記電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質または物質群(表示用物質)を、共通電極を設けた基板と一定の距離を隔てた対向面との間の空隙内に封入する方法としては、表示用物質を多数のマイクロカプセル中に封入し、それらを共通電極を設けた基板上に固定するのが望ましい。前記の表示用物質はいずれも常温で流動性があるが、マイクロカプセル化することにより粉末状の固体として扱うことができるため、ブレードコート、ワイヤーバーコート、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、ロールコート等の手法を用いて基板上に整列させることができるので、製造工程が簡便なものとなる。さらに上記構成では、マイクロカプセルが共通電極を設けた基板上に固定されているため、基板を1枚使用するだけでよく、また共通電極は通常パターンニングする必要がないため非常に安価に表示媒体を製造することができる(請求項4)。
【0016】
前記電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質または物質群の中で、高分子分散型液晶や双安定性コレステリック液晶は散乱によって白色を表示するが、散乱能がそれほど高くないため充分な白色濃度が得られないという欠点がある。エレクトロクロミック素子は表示の見やすさの点では液晶よりも優れているが、電気化学反応を利用しているため書き込み時に電流が流れ、消費電力が大きくなるという欠点がある。視認性、消費電力の面で、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の泳動粒子を分散させたもの(電気泳動素子)を用いるのが望ましい。この場合にはマイクロカプセル化することにより、分散液がマイクロカプセル壁によって微小領域に分割されているため、泳動粒子の凝集や付着現象が生じにくく安定に表示を行うことができるという利点も加わる(請求項5)。
【0017】
前記多数のマイクロカプセルはその隙間を埋めるバインダ材とともにひとつの層をなすように、前記一方の基板もしくは共通電極を設けた基板上に固定されているのが望ましい。バインダ材はマイクロカプセル相互およびマイクロカプセルと共通電極との付着力を増大させる作用をする。
【0018】
前記一方の基板もしくは共通電極を設けた基板上に固定されている多数のマイクロカプセルおよび/またはバインダ材上にはオーバーコート層が設けられているのが望ましい。オーバーコート層は表面を平滑化するとともに、表示媒体に外力が加わった場合にマイクロカプセルを保護する役目を果たす。
【0019】
本発明の第3の特徴は、前記の表示媒体に視認できる情報を表示させることができる書き込み装置において、該表示媒体と当該書き込み装置は、少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能であり、しかも当該書き込み装置は画像信号に応じて該表示媒体に電界を作用させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変えうる機構を有する電極アレイを具備していることを特徴とする書き込み装置にある。
【0020】
このような書き込み装置においては、表示媒体の共通電極をアース電位とし、基板と反対側の表面に電極アレイを密着させることにより、画像信号に応じた電位を所定の部位に与えることができ、それによって表示媒体中の分散液に電界を作用させることができる。電極アレイは表示媒体との平面位置関係を相対的に変えることができるので表示媒体の全面に視認できる情報を表示させることができる。さらにこの表示媒体は一度表示させた後は電界の作用がなくても表示状態を保持できるため、書き込み装置から外して手軽に持ち歩いたり、表示媒体を複数個用意することによって、複数の画像を並べて見ることが容易にできる(請求項6)。
【0021】
本発明の第4の特徴は、前記の表示媒体に視認できる情報を表示させることができる書き込み装置において、該表示媒体と当該書き込み装置は、少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能であり、しかも当該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体表面に電荷を付与させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変えうる機構を有するイオン銃アレイを具備していることを特徴とする書き込み装置にある。
【0022】
この書き込み装置は、前記第3の特徴の書き込み装置の電極アレイをイオン銃アレイに変えたものである。このような書き込み装置においては、表示媒体の共通電極をアース電位とし、基板と反対側の表面にイオン銃アレイを近接させることにより、画像信号に応じた電荷を所定の部位に与えることができ、それによって表示媒体中の分散液に電界を作用させることができる。イオン銃アレイは表示媒体との平面位置関係を相対的に変えることができるので表示媒体の全面に視認できる情報を表示させることができる。イオン銃により表示媒体の表面に与えられた電荷は表示媒体を構成する材料の時定数で放電するため、それが粒子の移動時間(応答時間)より長い場合にはイオン銃の作用時間を応答時間より短くすることができ、したがって書き込み速度を速くすることができる。また、前記第3の特徴の表示装置と同様、表示媒体を書き込み装置から外して手軽に持ち歩いたり、複数個用意することによって、複数の画像を並べて見ることが容易にできる(請求項7)。
【0023】
本発明の第5の特徴は、前記の表示媒体に視認できる情報を表示させることができる書き込み装置において、該表示媒体と当該書き込み装置は、少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能であり、しかも当該書き込み装置は、複数の信号電極と走査電極を備え、その交差部に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有し、それによって該表示媒体に画像を表示するように構成されたことを特徴とする書き込み装置にある。
【0024】
上記構成によれば、2次元配列された電界印加手段がスイッチング素子を有するため、その作用により選択時にある部位に与えられた電荷は非選択時には表示媒体を構成する材料の時定数で放電するため、それが粒子の移動時間(応答時間)より長い場合には選択時間を応答時間より短くすることができ、したがって書き込み速度を速くすることができる。また、前記第3および第4の特徴の表示装置と同様、表示媒体を書き込み装置から外して手軽に持ち歩いたり、複数個用意することによって、複数の画像を並べて見ることが容易にできる(請求項8)。
【0025】
スイッチング素子としては、大面積に作製することが容易な薄膜デバイス、特に薄膜トランジスタを用いるのが望ましい。薄膜トランジスタはゲートに接続された走査電極から走査パルスを印加し、これに同期してソースに接続された信号電極から画像信号によって変調されたパルスがドレインに接続された個別電極より表示媒体に印加される。薄膜トランジスタは3端子素子であるためスイッチング性能が高く、中間調を伴うような場合にも鮮明な表示を得ることができる。なお、より書き込み速度を速くするために、蓄積コンデンサを等価回路的に表示媒体と並列になるように設けてもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の第1の形態(請求項1、2、5に対応)を図8に基づいて以下に説明する。
図8は本発明の表示媒体の一例を示している。
1はガラス、プラスチック等からなる基板で、厚さは10μm〜1mm程度が望ましく、充分な機械的強度と軽量性を有するためには25〜500μm程度がより好ましい。視認側に用いる場合には透明な材質が選ばれるが、視認しない側に用いる場合には着色していてもよく、この色(反射色)を表示色の一部に利用したり、反射率を増加させることによりコントラスト比を向上させることもできる。
【0027】
9は金属、ITO、SnO2、ZnO:Al等の導電体薄膜からなる電極で、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で形成される。基板1を視認側に用いる場合には電極9として、ITO、SnO2、ZnO:Al等の透明な材質が選ばれるが、視認しない側に用いる場合には着色していてもよく、この色(反射色)を表示色の一部に利用したり、反射率を増加させることによりコントラスト比を向上させることもできる。電極9の少なくとも一方は、ストライプ状もしくはドット状およびそれに類する形状にパターンニングされている。
【0028】
3はマイクロカプセルで、分散液4を内包している。5はバインダ材で、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン等の皮膜形成性を有する材料からなる。外部から印加した電界がマイクロカプセル部分に有効に作用するためには、バインダ材として誘電率が分散液と同等以上であるものを用いるのが望ましい。バインダ材中には誘電率を調整するために主たる樹脂以外にアルコール、ケトン、カルボン酸塩等の化合物を混合してもよい。また、着色粒子あるいはイオンを混合することにより、その色(反射色)を表示色の一部に利用したり、反射率を増加させることによりコントラスト比を向上させることもできる。
【0029】
分散液4はベンゼン、トルエン、キシレン、ナフテン系炭化水素等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、臭化エチル等のハロゲン化炭(化水)素類、含フッ素エーテル化合物、含フッ素エステル化合物等の抵抗率の高い有機溶媒中にアントラキノン類やアゾ化合物類等の油溶性染料あるいはカーボンブラック、酸化鉄、有機顔料等の着色微粒子を0.01〜20wt.%程度含有させたものからなる分散媒に、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機顔料や、ダイアリーライドイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料からなる泳動粒子を分散させたものが用いられる。
【0030】
泳動粒子は分散媒と比重を合わせるため、あるいは凝集を防いで分散性を高めるために表面に他の物質を被覆したり、他の物質と複合化してもよい。粒径としては0.01〜10μm程度が好ましい。
【0031】
マイクロカプセル3の壁材としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン−アラビアゴム等が使用できる。マイクロカプセルは界面重合法、In−Situ重合法、コアセルベーション法等で形成される。カプセル径は1〜1000μmが作製可能であるが、充分な表示コントラストを得るには5μm以上とする必要があることが実験的にわかっている。また上限はカプセルの強度面から200μm以下とするのがよいことが実験的にわかっている。さらには、所望の解像度を得るために、電極9のストライプの幅もしくはドットの1辺の長さをW’(mm)とし、基板間の垂直距離をd’(mm)とし、表示ドット密度をD’(dpi)とした時に、17/D’≦W’+d’≦44/D’とされるが、カプセル径はd’以下にする必要があるのは言うまでもない。
【0032】
上記のような方法で形成されるマイクロカプセルは一般に水分を含むスラリー状となる。これを乾燥させて粉末状にすることも可能であるが、バインダ材5として、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレンポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等の水溶性の高分子(またはプレポリマー)材料あるいはシリコーン樹脂やアクリル樹脂の水系エマルジョン等を使用する場合には、バインダ材の水溶液にマイクロカプセルのスラリーを混合して塗布液を作製すればよい。これをブレードコート、ワイヤーバーコート、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、ロールコート等の手法で電極9を設けた一方の基板に塗布し、乾燥させればマイクロカプセルとバインダ材がひとつの層をなして、電極9を設けた一方の基板上に固定される。この上に接着剤を介して、他方の基板を貼り合わせれば、表示媒体が完成する。各電極を駆動回路および電源に接続し、画像信号に応じた電圧パルスを印加することにより、所望の画像を表示することができる。
【0033】
マイクロカプセルの面内配列はマトリックス状、六方最密状等種々の形態をとることができ、垂直方向には単層および多層配列が可能で、多層の場合マトリックス状、六方最密状等種々の形態をとることができる。また、層内のマイクロカプセルの充填率を上げるためにカプセル径分布の中心値が2つ以上であるマイクロカプセルを用いることは効果的である。
【0034】
次に、本発明の実施の第2の形態(請求項3、4、5に対応)を図1に基づいて以下に説明する。
図1は本発明の表示媒体の他の一例を示している。
1はガラス、プラスチック等からなる基板で、厚さは10μm〜1mm程度が望ましく、充分な機械的強度とフレキシビリティーを有するためには25〜200μm程度がより好ましい。視認側に用いる場合には透明な材質が選ばれるが、視認しない側に用いる場合には着色していてもよく、この色(反射色)を表示色の一部に利用したり、反射率を増加させることによりコントラスト比を向上させることもできる。
【0035】
2は金属、ITO、SnO2、ZnO:Al等の導電体薄膜からなる共通電極で、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等で形成される。基板1を視認側に用いる場合には共通電極2として、ITO、SnO2、ZnO:Al等の透明な材質が選ばれるが、視認しない側に用いる場合には着色していてもよく、この色(反射色)を表示色の一部に利用したり、反射率を増加させることによりコントラスト比を向上させることもできる。共通電極2は特にパターンニングする必要はないが、表示ドットごとの電界分布をより均一にしシャープな表示を得るために、ドット状、ストライプ状等の繰り返しパターンを形成してもよい。
3はマイクロカプセルで、分散液4を内包している。5はバインダ材で、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン等の皮膜形成性を有する材料からなる。外部から印加した電界がマイクロカプセル部分に有効に作用するためには、バインダ材として誘電率が分散液と同等以上であるものを用いるのが望ましい。バインダ材中には誘電率を調整するために主たる樹脂以外にアルコール、ケトン、カルボン酸塩等の化合物を混合してもよい。また、着色粒子あるいはイオンを混合することにより、その色(反射色)を表示色の一部に利用したり、反射率を増加させることによりコントラスト比を向上させることもできる。
【0036】
分散液4はベンゼン、トルエン、キシレン、ナフテン系炭化水素等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、臭化エチル等のハロゲン化炭(化水)素類、含フッ素エーテル化合物、含フッ素エステル化合物等の抵抗率の高い有機溶媒中にアントラキノン類やアゾ化合物類等の油溶性染料あるいはカーボンブラック、酸化鉄、有機顔料等の着色微粒子を0.01〜20wt.%程度含有させたものからなる分散媒に、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機顔料や、ダイアリーライドイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料からなる泳動粒子を分散させたものが用いられる。泳動粒子は分散媒と比重を合わせるため、あるいは凝集を防いで分散性を高めるために表面に他の物質を被覆したり、他の物質と複合化してもよい。
【0037】
粒径としては0.01〜10μm程度が好ましい。また、泳動粒子の表面電荷量を制御したり、分散性を高める目的で、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加してもよい。また、これら分散液を構成する各材料は必要に応じて2種類以上を混合して用いてもよい。
【0038】
マイクロカプセル3の壁材としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン−アラビアゴム等が使用できる。マイクロカプセルは界面重合法、In−Situ重合法、コアセルベーション法等で形成される。カプセル径は1〜1000μmが作製可能であるが、充分な表示コントラストを得るには5μm以上とする必要があることが実験的にわかっている。また上限はカプセルの強度面から200μm以下とするのがよいことが実験的にわかっている。さらには、所望の解像度を得るために、書き込み装置によって表示媒体表面に形成される等電位箇所の1辺の長さをW(mm)とし、共通電極表面から表示媒体表面までの垂直距離(表示層総厚)をd(mm)とし、表示あるいは書き込みドット密度をD(dpi)としたとき、17/D≦W+d≦44/Dとされるが、カプセル径はd以下にする必要があるのは言うまでもない。
【0039】
上記のような方法で形成されるマイクロカプセルは一般に水分を含むスラリー状となる。これを乾燥させて粉末状にすることも可能であるが、バインダ材5として、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレンポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等の水溶性の高分子(またはプレポリマー)材料あるいはシリコーン樹脂やアクリル樹脂の水系エマルジョン等を使用する場合には、バインダ材の水溶液にマイクロカプセルのスラリーを混合して塗布液を作製すればよい。これをブレードコート、ワイヤーバーコート、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、ロールコート等の手法で共通電極2を設けた基板に塗布し、乾燥させればマイクロカプセルとバインダ材がひとつの層をなして、共通電極2を設けた基板に強固に固定される。
【0040】
マイクロカプセルの面内配列はマトリックス状、六方最密状等種々の形態をとることができ、垂直方向には単層および多層配列が可能で、多層の場合マトリックス状、六方最密状等種々の形態をとることができる。また、層内のマイクロカプセルの充填率を上げるためにカプセル径分布の中心値が2つ以上であるマイクロカプセルを用いることは効果的である。
【0041】
次に、本発明の実施の第3の形態を図2に基づいて以下に説明する。
図2は本発明の表示媒体の他の一例を示している。1〜5は前記第2の形態と同様の材料および形成方法により作製される。
6はオーバーコート層で、SiO2やDLC(Diamond Like Carbon)等の無機物質あるいはポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン等の有機物質およびこれらに各種硬化剤、架橋剤を添加したものからなる。硬化剤、架橋剤の例として、イソシアネート基をもつ化合物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、エポキシ基をもつ化合物、グリオキザール等を挙げることができる。これらはスパッタリング法、CVD法等の気相法あるいはブレードコート、ワイヤーバーコート、スプレーコート、スピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、ロールコート等の塗布法で作製することができる。
【0042】
さらには紫外線硬化樹脂あるいは電子線硬化樹脂をオーバーコート層に用いることもできる。具体的には紫外線あるいは電子線照射により重合反応を起し、硬化して樹脂となるモノマーまたはオリゴマーに、場合により光重合開始剤を混合して塗布し、紫外線あるいは電子線を照射することにより形成される。
【0043】
このようなモノマーまたはオリゴマーとしては(ポリ)エステルアクリレート、(ポリ)ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、メラミンアクリレート、(ポリ)ホスファゼンメタクリレート等がある。光重合開始剤としてはジクロロアセトフェノンやトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、モノサルファイド、チオキサントン類、アゾ化合物、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルフォニウム塩、ビス(トリクロロメチル)トリアジン化合物等が挙げられる。
【0044】
オーバーコート層の厚さは、保護層としての機能を損なわない範囲内でできるだけ薄い方が表示解像度の点から望ましく0.1〜60μm、より好ましくは0.3〜30μmが好適である。
【0045】
外部から印加した電界がマイクロカプセル部分に有効に作用するためには、オーバーコート層の誘電率は大きい方が望ましい。具体的には、オーバーコート層の厚さをdo、誘電率をεoとし、マイクロカプセルとバインダよりなる層(近似的には分散液)の厚さをdm、誘電率をεmとすると、(εo/do)>(εm/dm)の関係にあるのが望ましい。
また、オーバーコート層の屈折率はマイクロカプセル壁材およびバインダ材の屈折率より小さい方が表面反射を軽減する点から望ましい。
【0046】
さらに、より積極的に表面反射を軽減するためにオーバーコート層の上に単層または多層の反射防止膜を設けてもよい。例えば2層膜の場合、空気の屈折率をna、オーバーコート層の屈折率をno、第1層(空気側の層)の屈折率をn1、膜厚をd1、第2層(オーバーコート層の側)の屈折率をn2、膜厚をd2とすると、▲1▼n1d1=n2d2かつnan2 2=non1 2、▲2▼n1d1=n2d2かつn1n2=nano等を満たすあるいはそれに近い組み合わせが効果的ある。屈折率の比較的小さい材料として、MgF2、CaF2等が、大きい材料としてSiOx、CeO2等が好適に使用できる。これらは真空蒸着法、スパッタリング法等の通常の薄膜形成手段によって作製することができる。
【0047】
外部から印加した電界(電荷)の消滅時間(時定数)が長い方が書き込み速度の点から望ましい。そのためにはオーバーコート層の比抵抗は大きい方が望ましい。具体的には、オーバーコート層の厚さをdo、比抵抗をρoとし、マイクロカプセルとバインダよりなる層(近似的には分散液)の厚さをdm、誘電率をρmとすると、ρodo>ρmdmの関係にあるのが望ましい。
【0048】
オーバーコート層中に着色粒子あるいはイオンを混合することにより、その色(反射色)を表示色の一部に利用することもできる。なお、オーバーコート層は必要に応じて2層以上からなる層としてもよい。
【0049】
上記実施の第1、第2および第3の形態において、電極9および共通電極2を設けた基板上に、マイクロカプセルあるいはバインダ材の付着性をより高めるためにアンダーコート層を設けてもよい。アンダーコート層の材料としてはオーバーコート層と同様のものが使用できる。また、その厚さ、誘電率、比抵抗等の物性値はマイクロカプセルとバインダ材よりなる層との関係において、前記のオーバーコート層に準ずるものとするのが望ましい。なお、アンダーコート層は必要に応じて2層以上からなる層としてもよい。
【0050】
次に、本発明の実施の第4の形態(請求項6に対応)を図4に基づいて以下に説明する。
図4は本発明の書き込み装置の一例を示している。
10は表示媒体で例えば図2に示す構造のものが使用される。11は電極アレイで、基板12にスクリーン印刷等で形成された電極棒13と一体的に搭載されたスイッチング回路14からなり、これらが紙面と垂直方向に多数並べられてアレイ化している。15は電源回路で、画像信号に応じた電圧パルスをスイッチング回路14を経て、電極棒13に供給する。16は送り機構で、この場合は表示媒体を移動させることにより、全面に視認できる情報を表示させることができる。この代わりに表示媒体を固定して、電極アレイを移動させるような機構を用いてもよい。11、15および16は図示しないハウジング内に納められ、書き込み装置として機能する。
【0051】
以下に表示動作の一例を説明する。まず、表示媒体中の泳動粒子の表面電荷と逆の極性の電圧(例えば負電圧)を電極棒13に印加することによって、泳動粒子が表面に移動し、泳動粒子の色が観測される。電圧を逆にすれば、泳動粒子は共通電極側に移動し、表面からは分散媒の色が観測される。駆動上はドット毎に極性を変えるよりは、一度全面をベタ表示(消去動作)した後に、画像信号に応じて選択したドットを反転させる(書き込み動作)方が容易である。この例においては、本発明でいうところの書き込み装置によって表示媒体表面に形成される等電位箇所の1辺の長さW(mm)は電極棒13の幅にほぼ等しい。
【0052】
次に、本発明の実施の第5の形態(請求項7に対応)を図5に基づいて以下に説明する。
図5は本発明の書き込み装置の他の一例を示している。
10は表示媒体で例えば図1に示す構造のものが使用される。21はイオン銃アレイで、コロナワイヤ22、放電フレーム23、制御電極24a,24bからなり、これらが紙面と垂直方向に多数並べられてアレイ化している。26はコロナイオン発生用高圧電源、27はイオン流制御用電源である。28は送り機構で、この場合は表示媒体を移動させることにより、全面に視認できる情報を表示させることができる。この代わりに表示媒体を固定して、イオン銃アレイを移動させるような機構を用いてもよい。
【0053】
以下に表示動作の一例を説明する。まず、表示媒体中の泳動粒子の表面電荷と逆の極性の電圧(例えば負電圧)をコロナワイヤ22に印加して、表示媒体の表面に負電荷を供給する。するとこの電荷と共通電極2との間に形成される電界によって、泳動粒子が表面に移動し、泳動粒子の色が観測される。次に正電圧をコロナワイヤ22に印加して、画像信号に応じて制御電極24aに印加する電圧の極性および大きさを変える。すなわち、正電圧を印加した場合にはイオン流がアパーチャー25を通過して、表示媒体の表面に正電荷が供給されるため、泳動粒子は共通電極側に移動し、表面からは分散媒の色が観測される。負電圧を印加した場合にはイオン流がアパーチャー25を通過できないため、表示媒体の表面には電荷が供給されず、泳動粒子の移動が起こらず、表面からは泳動粒子の色が観測される。21、26、27および28は図示しないハウジング内に納められ、書き込み装置として機能する。この例においては、本発明でいうところの書き込み装置によって表示媒体表面に形成される等電位箇所の1辺の長さW(mm)はアパーチャー25の開口幅にほぼ等しい。
【0054】
次に、本発明の実施の第6の形態(請求項8に対応)を図6に基づいて以下に説明する。
図6は本発明の表示装置の他の一例を示している。
10は表示媒体で例えば図2に示す構造のものが使用される。31は書き込み装置で、表面に複数の信号電極と走査電極を備え、その交差部に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有している。40は画像に応じた信号を書き込み装置に与えるための電源回路である。
【0055】
書き込み装置の表面の構造の一例を図7に基づき説明する。これはスイッチング素子に薄膜トランジスタを用いた場合である。基板32としてガラス等の絶縁体または表面を絶縁化した金属を用いる。33はゲート電極を兼ねる走査電極で、Ta,Mo,W,Al等の金属薄膜からなる。34はゲート絶縁膜で、SiNx,SiOx等の絶縁体薄膜からなる。35はa−Si,Poly−Si等の半導体薄膜からなるチャネル、36はソース電極を兼ねる信号電極、37はドレイン電極で、それぞれAl,Cr等の金属薄膜からなる。38は個別電極でAl,Cr,ITO,SnO2,ZnO:Al等の導電性薄膜からなる。39はSiO2,DLC(Diamond Like Carbon)等の無機物質あるいはポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の有機物質からなる保護層である。これらはスパッタリング法、CVD法、塗布法等の薄膜形成技術とウェットエッチング法、ドライエッチング法等のパターンニング技術とを組み合わせた公知の方法で作製することができる。なお、図7はスイッチング素子の1ユニットを示したものであり、表示画面の大きさと画素密度(解像度)に応じてX方向およびY方向に同一パターンが繰り返し形成される。この例においては、本発明でいうところの書き込み装置によって表示媒体表面に形成される等電位箇所の1辺の長さW(mm)は個別電極38の1辺の長さにほぼ等しい。
【0056】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
図2に示す表示媒体を以下のように作製した。分散媒としてテトラクロロエチレンに0.5wt.%の青色染料(マクロレックスブルーRR:バイエル社)を溶解したものを用い、泳動粒子として、表面をAlで処理した平均粒径0.21μmの二酸化チタン(CR60:石原産業社)を用いた。この粒子とオレイン酸を分散媒に各々10wt.%と0.5wt.%混合して、分散液4とした。この分散液を内包するマイクロカプセルを以下のように作製した。
【0058】
ゼラチン水溶液とアラビアゴム水溶液を混合して50℃に昇温し、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整した。この中に分散液4を加え、攪拌して乳化させた。さらにpHを4まで徐々に下げて分散液界面にゼラチン/アラビアゴムの濃厚液を析出させた後、温度を下げて皮膜をゲル化し、グルタールアルデヒド水溶液を加えて硬化した。このようにしてゼラチン−アラビアゴムを壁材とするマイクロカプセルのスラリーを得た。カプセル径は平均50μm〜150μmの範囲となるように乳化条件を制御した。
【0059】
基板1として100μm厚のPETを用い、ITO薄膜をスパッタリング法により形成して共通電極2とした。この上に、ポリビニルアルコール(PVA−117:クラレ社)10%水溶液に等重量の上記マイクロカプセルスラリーを加えたものをブレードコーターで塗布し、乾燥することによりマイクロカプセルとポリビニルアルコールがひとつの層をなして、共通電極2を設けた基板に固定された。この上に、市販の二液性エポキシ系接着剤を真空脱泡した後、ブレードコーターで塗布し、60℃に加熱して約5μmの厚さのオーバーコート層6を形成した。この時表示層総厚dとして、0.065mm(65μm)〜0.191mm(191μm)の範囲のものが得られた。
【0060】
(書き込み実験1)
ガラス基板にAl膜を蒸着し、エッチングによって幅100μmのストライプを300μmピッチで5本形成したもの(電極基板1)を用意した。これを上記表示媒体のオーバーコート層表面に押しつけ、共通電極2をアース電位とし、電極基板の全ラインに−300Vの直流電圧を1秒間印加した後、表示媒体表面の書き込み(白色部)線幅を計測した(5本の平均)。
図9に表示層総厚dと線幅増加量(書き込み線幅−電極幅W)の関係を示す。図から線幅増加量はほぼ表示層総厚dに等しいことがわかる。
【0061】
(書き込み実験2)
ガラス基板にAl膜を蒸着し、エッチングによって次の▲1▼〜▲8▼ようなパターンを形成したもの(電極基板2)を用意した。これらはライン(L)+スペース(S)=250μmに固定してL幅(S幅)を変化させたもので、各々書き込み部/非書き込み部のセットを250μmピッチで繰り返し形成できるようにしている。表示媒体に書き込まれるパターン幅は電極幅とは異なることが予想されるが、書き込み部:非書き込み部の幅が1:1になった場合には125μm(=0.125mm=25mm(≒1inch)/200)幅のL&Sパターンが形成される、すなわち200lpi(lines per inch≡dpi)の1line(1dot)L&Sが形成されることを想定している(現実の書き込み装置において、200dpiのラインヘッドで1ドットおきに書き込み、L&Sパターンもしくは千鳥パターンを形成することをイメージしている)。
▲1▼15μmライン/235μmスペースのL&S
▲2▼20μmライン/230μmスペースのL&S
▲3▼30μmライン/220μmスペースのL&S
▲4▼60μmライン/190μmスペースのL&S
▲5▼75μmライン/175μmスペースのL&S
▲6▼100μmライン/150μmスペースのL&S
▲7▼125μmライン/125μmスペースのL&S
▲8▼150μmライン/100μmスペースのL&S
【0062】
電極基板を表示媒体のオーバーコート層表面に押しつけ、共通電極2をアース電位とし、電極基板の全ラインに−200Vの直流電圧を1秒間印加し、書き込み(白色部)状態(L&Sが確保できているか否か)を評価した。表1に結果を示す。なお、表示媒体として、表示層総厚dが0.065mm(65μm)および0.095mm(95μm)のものを用いた。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果から0.085mm≦d+W≦0.220mmの範囲が好ましく、0.095mm≦d+W≦0.155mmの範囲がより好ましい。前述したようにこの書き込みパターンはD=200lpi(≡dpi) L&Sに相当するので、上記好ましい範囲は17/D≦d+W≦44/D、より好ましい範囲は19/D≦d+W≦31/Dと表記することができる。なお、表1の結果は書き込み線幅が電極幅Wに比べて、ほぼ表示層総厚d分だけ増大するという実験結果(書き込み実験1)に起因して生じていることが明らかであるため、Dが変わっても好ましい範囲の関係式は同様に成り立つことは容易に類推し得る。
【0065】
(実施例2)
図1に示す表示媒体を以下のように作製した。分散液4は実施例1と同様のものを用いた。
この分散液を内包するマイクロカプセルを以下のように作製した。分散液4を保護コロイド水溶液中に加え、攪拌して乳化させた。炭酸ナトリウムを加えてpHを9とした後、尿素−ホルムアルデヒドプレポリマーを加え、さらに酢酸を加えてpHを4に調整をした後、60℃で2時間反応させることにより分散液界面でプレポリマーが重合し、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の皮膜を形成した。このようにして尿素−ホルムアルデヒド樹脂を壁材とするマイクロカプセルのスラリーを得た。カプセル径は平均50μmとなるように乳化条件を制御した。
【0066】
基板1として100μm厚のPETを用い、ITO薄膜をスパッタリング法により形成して共通電極2とした。この上に、ポリビニルアルコール(PVA−117:クラレ社)10%水溶液に等重量の上記マイクロカプセルスラリーを加えたものをブレードコーターで塗布し、乾燥することによりマイクロカプセルとポリビニルアルコールがひとつの層をなして、共通電極2を設けた基板に固定された。表示層総厚dは0.06mm(60μm)であった。
【0067】
(実施例3)
実施例1の表示媒体(表示面積10cm×10cm,d=0.065mm)に図4に示す電極アレイを具備する書き込み装置で書き込みを行った。電極アレイは125μmピッチで800個の電極棒を配列したものを用いた。電極棒13の幅Wは20μm,60μm,120μmの3種類を用意した。まず、電極棒13に−300Vを供給した状態で走査し、全面を白表示とした。次に電源の極性を反転させて、スイッチング回路14を介して画像信号(千鳥パターンおよびベタ)に応じて、電極棒13に+300Vの電圧を印加した。印加のパルス幅は20msとした。ローラー送り機構16によって表示媒体を移動させることにより全面に画像を表示することができた。送り速度は6.25mm/secとした。電極棒13の幅Wが60μmの時は千鳥、ベタとも良好に表示できたが、20μmの場合はベタ濃度がやや不足、120μmの場合は千鳥パターンがぼけ気味であった。
【0068】
(実施例4)
実施例2の表示媒体(表示面積10cm×10cm,d=0.06mm)に図5に示すイオン銃アレイを具備する書き込み装置で書き込みを行った。イオン銃アレイは125μmピッチで800個のイオン銃を配列したものを用いた。アパーチャー25の開口幅Wは30μm,60μm,120μmの3種類を用意した。まず、コロナワイヤ22に−5kVの電圧を印加して、表示媒体表面全面を白表示とした。次に、コロナワイヤ22に+5kVの電圧を印加し、画像信号(千鳥パターンおよびベタ)に応じて制御電極24aに+150V(青表示)または−150V(白表示)の電圧を印加した。印加のパルス幅は10msとした。ローラー送り機構28によって表示媒体を移動させることにより全面に画像を表示することができた。送り速度は12.5mm/secとした。アパーチャー25の開口幅Wが60μmの時は千鳥、ベタとも良好に表示できたが、30μmの場合はベタ濃度がやや不足、120μmの場合は千鳥パターンがぼけ気味であった。
【0069】
(実施例5)
実施例1の表示媒体(表示面積10cm×10cm,d=0.065mm)に図6に示す書き込み装置で書き込みを行った。書き込み装置31として、表面に図7に示す薄膜トランジスタを800×800個(電極間ピッチ125μm)形成したものを用いた。個別電極38の1辺の長さWは20μm,60μm,120μmの3種類を用意した。1走査線当たりの選択時間を0.1msとして、全ライン(千鳥パターンおよびベタ)の書き込み(所要時間:0.1ms×800=80ms)を行った。共通電極側が白表示となる電圧を+20V、青表示となる電圧を−20Vとした。書き込み終了後間もなく全画面の表示が完了した。個別電極38の1辺の長さWが60μmの時は千鳥、ベタとも良好に表示できたが、20μmの場合はベタ濃度がやや不足、120μmの場合は千鳥パターンがぼけ気味であった。
【0070】
(実施例6)
図8に示す表示媒体を以下のように作製した。マイクロカプセル3は実施例1と同様の方法で作製した。カプセル径は平均50μmとなるように乳化条件を制御した。
基板1として100μm厚のPETを用い、両面にバリア層として、0.5μm厚のSiO2膜をプラズマCVD法で形成した後、電極9として、ITO薄膜をスパッタリング法により形成し、幅60μmのストライプパターンを125μmピッチ(ドライバーICとの接続部は330μmピッチに拡大した)で50本形成した。
この基板上に、ポリビニルアルコール(PVA−117:クラレ社)10%水溶液に等重量の上記マイクロカプセルスラリーを加えたものをブレードコーターで塗布し、乾燥した後、市販の二液性エポキシ系接着剤を塗布し、この上に同様のパターンを施した他方の基板を、両基板のストライプが直交するように重ね合わせ、80℃で2時間加熱した。
各電極をドライバーICに接続し、千鳥パターンおよびベタを表示させたところ、千鳥、ベタとも良好に表示できた。
【0071】
【発明の効果】
請求項1の表示媒体によれば、所望の表示解像度の得られる表示媒体を提供することができる。
請求項2の表示媒体によれば、上記に加えて、構造が簡単で、製造プロセスが簡略化できるため低コストな表示媒体を提供することができる。
請求項3の表示媒体によれば、所望の解像度を得ることができ、かつ書き込み装置から外すことができる表示媒体を提供することができる。
請求項4の表示媒体によれば、上記に加えて、構造が簡単で、製造プロセスが簡略化できるため低コストな表示媒体を提供することができる。
請求項5の表示媒体によれば、上記に加えて、視認性が高く、消費電力の小さくかつ表示安定性に優れた表示媒体を提供することができる。
請求項6の書き込み装置によれば、表示媒体を表示状態を保持したまま書き込み装置から外すことができるので、手軽に持ち歩いたり、複数の画像を並べて見ることが容易にできる。
請求項7の書き込み装置によれば、上記に加えて、短い書き込み時間で画像を表示することができる。
請求項8の書き込み装置によれば、さらに短い書き込み時間で画像を表示することができる。
また、本発明の別の表示媒体によれば、上記に加えて、マイクロカプセル相互およびマイクロカプセルと基板との付着性が向上するので、信頼性の高い表示媒体を提供することができる。
また、本発明の別の表示媒体によれば、上記に加えて、表面平滑性が増すために表示の均一性が向上し、かつ磨耗が少なく耐久性に優れた表示媒体を提供することができる。
また、本発明の別の書き込み装置によれば、上記に加えて、中間調を伴う画像であっても鮮明な表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による表示媒体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明による表示媒体の他の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】従来の表示装置を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明による表示装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明による表示装置の他の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明による表示装置の他の一例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明による書き込み装置の一例の表面付近を模式的に示す図である。
【図8】本発明による表示媒体の他の一例を模式的に示す断面図である。
【図9】表示層層厚と線幅増加量(書き込み線幅−電極幅)の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 共通電極
3 マイクロカプセル
4 分散液
5 バインダ材
6 オーバーコート層
7 有孔スペーサ
8 透明電極
9 電極
10 表示媒体
11 電極アレイ
12 基板
13 電極棒
14 スイッチング回路
15 電源回路
16 送り機構
21 イオン銃アレイ
22 コロナワイヤ
23 放電フレーム
24a 制御電極
24b 制御電極
25 アパーチャー
26 コロナイオン発生用高圧電源
27 イオン流制御用電源
28 送り機構
31 書き込み装置
32 基板
33 走査電極(兼ゲート電極)
34 ゲート絶縁膜
35 半導体薄膜
36 信号電極(兼ソース電極)
37 ドレイン電極
38 個別電極
39 保護層
40 電源回路
Claims (6)
- 泳動粒子を内包するマイクロカプセルを用いた表示媒体であって、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質あるいは物質群が、ストライプ状にパターンニングされた電極を一方に有し、前記形状と直交するようにストライプ状にパターンニングされた電極を他方に有する一対の基板間に封入されている表示媒体において、当該ストライプの幅の1辺の長さをW’(mm)とし、基板間の垂直距離をd’(mm)とし、表示ドット密度をD’(dpi)としたとき、下記式(1)の関係を有することを特徴とする表示媒体。
17/D’≦W’+d’≦44/D’ (1) - 泳動粒子を内包するマイクロカプセルを用いた表示媒体であって、電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質あるいは物質群が、共通電極を設けた基板と一定の距離を隔てた対向面との間の空隙内に封入されている表示媒体において、当該表示媒体表面の任意の部位に電位を与えることのできる手段によって表示媒体表面に形成される等電位箇所の1辺の長さをW(mm)とし、共通電極表面から、共通電極の無い側の表示媒体表面までの垂直距離をd(mm)とし、表示あるいは書き込みドット密度をD(dpi)としたとき、下記式(2)の関係を有することを特徴とする表示媒体。
17/D≦W+d≦44/D (2) - 前記電界の作用によって光学的特性が可逆的に変化する物質あるいは物質群が、着色した分散媒中に分散媒の色とは異なる色を有する複数の泳動粒子を分散させた分散液であることを特徴とする請求項2に記載の表示媒体。
- 請求項2〜3のいずれか一項に記載の表示媒体に視認できる情報を表示させることができる書き込み装置において、該表示媒体と当該書き込み装置は、少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能であり、しかも当該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体に電界を作用させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変えうる機構を有する電極アレイを具備していることを特徴とする書き込み装置。
- 請求項2〜3のいずれか一項に記載の表示媒体に視認できる情報を表示させることができる書き込み装置において、該表示媒体と当該書き込み装置は、少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能であり、しかも当該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体表面に電荷を付与させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変えうる機構を有するイオン銃アレイを具備していることを特徴とする書き込み装置。
- 請求項2〜3のいずれか一項に記載の表示媒体に視認できる情報を表示させることができる書き込み装置において、該表示媒体と当該書き込み装置は、少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能であり、しかも当該書き込み装置は、複数の信号電極と走査電極を備え、その交差部に画像信号に応じて該表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有し、それによって該表示媒体に画像を表示するように構成されていることを特徴とする書き込み装置。
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