本願発明者は研究を重ね、電子放出素子を用いた従来の画像表示装置において見られる彩度の低下は、電子放出素子が放出する電子が、該電子放出素子が対応する発光領域のみでなく、近接(隣接も含む)する異なる色の発光領域に入射することによって生じていることを確認し、鋭意努力の末、その問題を改善できる新規な画像表示装置の構成及び駆動信号の補正方法を見出した。
以下では本願に係る発明の画像表示装置及び駆動信号の補正方法の具体的な例を説明する。
以下の実施形態では説明を簡単にするため、表示装置に入力する画像データと表示輝度が線形であるような表示装置を前提として説明する。
以下では、所定の発光領域と、該所定の発光領域に近接する発光領域が存在する構成において、前記所定の発光領域に対応する電子放出素子からの該所定の発光領域への電子放出に伴って生じる、該所定の発光領域に近接する発光領域の発光をハレーションともいう。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態として、ハレーションによる画質低下を軽減するために用いるフィルタ及びそれによるフィルタ処理について説明する。
本実施形態の画像表示装置は、複数の画素によって画面を構成するものである。各画素は、複数の異なる色、特には、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光領域を有している。これら発光領域を構成する発光体としては電子の照射により光を発する蛍光体を用いている。赤の発光領域に電子を照射する電子放出素子と、緑の発光領域に電子を照射する電子放出素子と、青の発光領域に電子を照射する電子放出素子とを、各画素に対応して設けている。特にここでは好適な電子放出素子として表面伝導型放出素子を用いている。
図16は以降説明する実施形態の画像表示装置の表示部の構成を示す図である。
図17は以降説明する実施形態の画像表示装置の構成を示す図である。この画像表示装置は表示部1701と駆動回路1702を有している。表示部1701は図16に示した構成である。駆動回路1702は変調信号出力回路1704と走査信号出力回路1705と信号処理回路1703を有している。変調信号出力回路1704は表示部に変調信号を供給する。走査信号出力回路1705は表示部に走査信号を供給する。信号処理回路1703は入力線1706を介して入力される外部信号(コンピュータからの信号等)や信号処理回路1703が有するアンテナで受信した放送信号などを処理して、階調信号やタイミング信号を発生させ、それらを変調信号出力回路1704や走査信号出力回路1705に供給する。信号処理回路1703は補正回路1707を有しており、補正回路1707が以降説明する補正処理を行う。
図16に示す表示部は電子放出素子と発光体とを有している。電子放出素子としては、例えばエミッタコーンとゲート電極とを組み合わせたスピント型の電子放出素子や、カーボンナノチューブやグラファイトナノファイバーといった炭素繊維を用いた電子放出素子や、MIM型の電子放出素子など種々の電子放出素子を用いることができる。ここで示す実施形態では特に好適な電子放出素子として表面伝導型放出素子4004を用いている。またここでは複数の表面伝導型放出素子4004を複数の走査信号印加配線4002と複数の変調信号印加配線4003にてマトリックス接続した構成を採用している。複数の走査信号印加配線4002には走査信号出力回路1705が出力する走査信号が順次に印加される。また複数の変調信号印加配線4003には変調信号出力回路1704が出力する変調信号がそれぞれ印加される。電子放出素子とそれがマトリックス接続される走査信号印加配線と変調信号印加配線とは基板となるガラス板4005上に設けられている。
またここで示す実施形態では発光体として蛍光体4008を用いている。蛍光体4008は基板となるガラス板4006上に設けられている。ガラス板4006上には、電子放出素子が放出する電子を加速するための加速電極となるメタルバック4009が設けられている。メタルバック4009には高圧端子4011を介して電源4010から加速電位が供給される。ガラス板4005とガラス板4006の間に外枠となるガラス枠4007が位置し、ガラス板4005とガラス枠4007間、及びガラス板4006とガラス枠4007間はそれぞれ気密に封止され、ガラス板4005とガラス板4006とガラス枠4007によって気密容器が構成されている。該気密容器の内部は真空に保たれている。この気密容器内にはスペーサ4012が配されており、それによって気密容器の内部と外部の圧力差によって気密容器がつぶれるのが防がれている。
この構成の表示部においては、各電子放出素子それぞれに略対向する位置が各電子放出素子それぞれに対応する発光領域となっている。
図1は本実施形態に係る補正回路の構成を示す回路図である。図中の20は近傍データ積算部(積算回路)、6はRGB加算部(加算回路)、7は係数演算部(補正値算出回路)、8、9、10は加算器(駆動信号生成回路)、11は比較器である。近傍データ積算部20は、RGB用として同構成の回路が3つある。
サンプリングされたデジタルRGBデータR1、G1、B1は、入力信号としてまず近傍データ積算部20に入力される。このRGBデータは輝度と線形であるようなデータとする。もし、RGBデータが輝度に対し非線形であれば、テーブル等で線形になるように変換すればよい。
図2は図1の近傍データ積算部20の詳細図である。図中の1は一水平同期期間(1H)遅延回路、2は一画素(1P)遅延回路、3は係数をデータにかける乗算器、4はデータを水平方向に積算する水平加算器、5は水平方向に積算されたデータを垂直方向に積算する垂直加算器である。
図2を使って近傍データ積算部の処理を説明する。サンプリングされたデジタルRGB信号R1、G1、B1は近傍データ積算部20に入力される。近傍データ積算部はRGBによらず全く同じ構成であるため、ここではRを例にとって説明する。
まず、1H遅延回路1について説明する。近傍データ積算部20に入力されたデータR1は1H遅延回路1により1H分遅延される。R1を1H遅延した信号をR2、さらに1H遅延した信号をR3、さらに1H遅延した信号をR4、さらに1H遅延した信号をR5、さらに1H遅延した信号をR6、さらに1H遅延した信号をR7とする。
通常画像データは画面上の行データから入力されるため、常に信号R2はR1の一行上のデータとなる。同様に、R3はR2の一行上、R4はR3の一行上、R5はR4の一行上、R6はR5の一行上、R7はR6の一行上のデータである。
次に、1P遅延回路2について説明する。1P遅延回路2はデータを水平方向に一画素分遅延する回路である。例えば、信号R8は信号R7を一画素遅延した信号となる。通常画像データは画面左のデータから入力されるため、常に信号R8は信号R7の左の画素データである。同様に、R9はR8の左、R10はR9の左、R11はR10の左、R12はR11の左、R13はR12の左の画素データである。ここでは1P遅延回路を近傍データ積算部20の最上行21で説明したが、近傍データ積算部20内のどの行においても1P遅延回路2は同様な処理を行う。
近傍データ積算部20の上下左右の中央(以下、注目画素と呼ぶ)のデータ(以下、注目画素データと呼ぶ)をR14とする。注目画素データR14はR4のデータを三画素分水平に遅延させたデータである。つまり、注目画素データR14はデータR4の表示画素から左に3画素移動した画素に表示されるデータである。同様に、注目画素データR14はデータR10の表示画素から下に3画素移動した画素に表示されるデータである。
注目画素データR14に注目すると近傍データ積算部20内のデータは、注目画素を中心に縦横7画素の矩形内のデータである。例えば、R10はR14の3画素上のデータ、R4はR14の3画素右のデータ、R7はR14の3画素上かつ、3画素右のデータである。つまり、近傍データ積算部20は注目画素データを中心に、縦横7画素分のデータを処理することができる。これは一般的に7タップフィルタと呼ばれるものである。
前記のフィルタタップ数(本実施形態では7)はハレーションの及ぶ範囲によって決定される。本実施形態においては、ある蛍光体に電子が照射されるとその画素を中心にハレーションによる円形発光が起こる。考慮すべきハレーションの及ぶ円形領域の直径がn画素であれば、nタップのフィルタが必要になる。
本実施形態ではn=7としたが、例えば、考慮すべきハレーションの及ぶ範囲が注目画素に隣接する上下左右の画素のみであれば、n=3のフィルタを用いればよい。
前記ハレーションの及ぶ領域の直径は、蛍光体が配置されているフェースプレートと電子源が配置されているリアプレートとの間隔に依存する。したがって、フェースプレートとリアプレートの間隔に応じて、フィルタタップ数を決めることが出来る。
次に、乗算器3について説明する。図3は乗算器3の構成を表す図である。乗算器3は2つの入力50、51を乗算した結果を出力するものである。本実施形態においては、50はデータであり、51は乗算する係数である。例えば、データ50が図2のR13である場合、係数51はa11である。本来乗算器は図3のような構成であるが、図2では簡略化して乗算器の中に係数を示している。
図2に示すように、データR12には係数a21を、データR11には係数a31を、データR10には係数a41を、データR9には係数a51を、データR8には係数a61を、データR7には係数a71を乗算するような構成となっている。ここでは、乗算器の処理を近傍データ積算部20の最上行21で説明したが、近傍データ積算部内のどの行においても乗算器3は同様な処理を行う。
水平加算器4は一行分のデータを加算するものである。本実施形態では、水平加算器4は1行当り6個ある。この水平加算器4が7行分あるため、近傍データ積算部内では全部で6×7=42個の水平加算器が必要である。水平加算器4に入力されるデータは、前記乗算器3の出力である。乗算器3から出力されたデータを一行分加算するのが水平加算器4である。
近傍データ積算部20の最上行21を例に上記の乗算器3、水平加算器4の処理を式で書くと以下のようになる。
上記は近傍データ積算部20の最上行21の処理であるが、近傍データ積算部内のどの行においても同様の処理を行っている。係数a11〜a77の詳細は後述する。
このようにして水平方向に積算された近傍データは、垂直加算器5により垂直方向に加算される。水平加算器4により出力された各行の近傍データを図2のようにR15〜R21とすると、垂直加算器5の出力値R22は以下の式により表される。
本実施形態ではR22を近傍データ積算値と呼ぶ。近傍データ積算値R22は注目画素R14の近傍データに、係数a11〜a77の重みをかけて積算された値である。このように、近傍データ積算部20は注目画素データR14と、近傍データ積算値R22の2つの信号を出力する。
以上が、近傍データ積算部20の処理である。上記では、Rの処理例のみ説明したが、GBにおいてもまったく同様な処理がなされる。Gにおいては、G1が入力され注目画素データG14と近傍データ積算値G22が出力される。Bにおいては、B1が入力され注目画素データB14と近傍データ積算値B22が出力される。
次に、近傍データ積算部20後の処理について図1を用いて説明する。近傍データ積算部20から出力された近傍データ積算値R22、G22、B22はRGB加算部6により加算される。RGB加算部6の出力をW22とするとW22は次式により表される。
上記で、W22は注目画素近傍のデータに係数a11〜a77をかけて積算し、さらにRGB全てを積算したものである。すなわち、近傍データ積算部20と加算部6によって、所定の電子放出素子(注目画素を構成する電子放出素子)に近接する電子放出素子に対応した入力信号の和をとったことになる。電子放出素子を用いて、該電子放出素子からの電子を蛍光体に照射して表示を行う表示装置においては、電子放出素子からの電子は指向性をもって蛍光体に照射されるようにするので、所定の色の蛍光体に対応する電子放出素子からの電子が他の色の蛍光体に照射されることはないと想定され、混色を防止するために各電子放出素子間を完全に障壁で区切るという構成を採用しない。しかしながら本願発明者は、電子放出素子からの電子を対応する蛍光体に照射したとしても、該照射によって生じる反射電子が近傍の蛍光体にも電子が照射されてしまうことを確認し、ある電子放出素子から所定の色の蛍光体に照射される電子によって発生した反射電子が他の色の蛍光体に入射して彩度を低下させることを認識したのである。そこで、色毎に独立に注目画素のデータを補正するのではなく注目画素近傍のデータに係数をかけたものを全色分加算したもの、すなわちW22を注目画素データの補正値の算出に用いることにしたのである。
係数演算部7では、入力されたデータW22に所定の係数を乗算する。この係数はハレーションの影響の程度を補正値に反映させるためのものであり、以下のようにして決定されるものである。
電子源からの電子照射による発光(ハレーションを含まない発光、以下輝点と呼ぶ)強度をL0、ハレーションによる発光強度をL1とする。係数演算部7で乗算するする係数kは以下の式より決定する。
ここで、kの値は実験により求めることが出来る。通常L0はL1より大きいため、kは0〜1の間の数値となる。
係数演算部7では係数kを入力信号に乗算した後、符号を反転して出力する。したがって、係数演算部7の出力データR23、G23、B23は以下の式により表される。
データR23、G23、B23は加算器8、9、10により、それぞれ注目画素データR14、G14、B14に加算される補正値である。加算器8、9、10のそれぞれの出力R24、G24、B24は以下の式で表される。
比較器11は入力されたデータと0を比較し、大きい方の値を出力する。したがって比
較器11の出力データデータR25、G25、B25は以下のようになる。
次に、近傍データ積算部20の係数a11〜a77について説明する。
図4(a)は、ある画素p44を注目画素とし、注目画素p44を中心に縦横7画素の配置を示したものである。pnm(n、mは1〜7)は画素を表す。あるタイミングのとき、画素p11〜p77のデータにかける係数がa11〜a77であったとする。
本実施形態の画像表示装置は、輝点を中心に円形領域にハレーション発光が起こる構成である。図4(a)の実線60は注目画素p44を点灯した際ハレーション発光が起こる領域である。本実施形態では係数a11〜a77を簡単にするため実線60の円を、点線61で近似する。つまり、注目画素p44が点灯した際、点線61に囲まれた画素にハレーション発光が発生すると近似する。
注目画素p44を点灯した際ハレーション発光する画素が点線61で囲まれた画素であるが、これは逆に点線61で囲まれた画素を点灯するとその反射電子により注目画素p44がハレーション発光することを意味する。
本実施形態では、係数a11〜a77は0か1いずれかの値とする。注目画素にハレーション発光を起こしうる画素の係数は1、それ以外の係数は0である。注目画素にハレーション発光を起こしうる画素は、図4(a)の点線61内の画素であるため、係数a11〜a77は図4(b)に示すようになる。この図において、左上が係数a11、右下が係数a77、中央が注目画素の係数a44を示している。
本実施形態では、注目画素にハレーション発光を起こし得る画素は、7x7画素領域と仮定している。例えば、これが3x3画素領域であれば、注目画素の上下左右の係数、すなわちa43、a34、a44、a54、a45が1となり、それ以外の係数は0とすればよい。また、注目画素の反射電子が注目画素に照射されることがないのであれば、a44を0とすればよい。
本実施形態においては、輝点を中心に円形領域にハレーション発光が起こる。このハレーション発光強度L1は円形領域内の画素でほぼ均一であることがわかっている。従って、円形領域内の係数はすべて同一値となる。
係数a11〜a77を上記のように設定すると、図1の近傍データ積算値R22、G22、B22は注目画素にハレーション発光を及ぼす画素のデータの色毎の積算値になる。ハレーションは主に反射電子による発光であるため、電子放出素子を用いた画像表示装置においてはRGBの区別なく発生する。つまり、Rの反射電子はGBの注目画素をも発光させる。当然、GBの反射電子も他の色の注目画素を発光させる。したがって、ここでは
彩度低下を抑制するために他色のハレーションデータも注目画素データから差し引くことができるように構成している。
RGB加算部6は、RGBそれぞれの近傍データ積算値R22、G22、B22を積算する。これにより注目画素にハレーション発光を及ぼす全ての色の画素データの積算値W22が求められる。
データW22に係数kをかけ注目画素データR14、G14、B14から差し引いたデータR24、G24、B24は、ハレーションによる発光分を差し引いたデータである。係数演算部7ではW22に係数kをかけ、符合を反転して出力する。このデータR23、G23、B23(R23=G23=B23;符号は−)と注目画素データR14、G14、B14を加算することで、ハレーションによる発光分を差し引いた表示データR24、G24、B24となる。
このとき、例えばR14よりR23が大きければR24は負値となる。その場合は比較器11により0として出力する。このようにして得られたデータR25、G25、B25はハレーション発光分を差し引いた画像データである。このデータに基づいて画像表示装置を構成する電子放出素子を駆動すれば、画像データ上で差し引いたハレーション発光分が実際のハレーションにより付加され、所望の輝度、色度で発光する。すなわち、所定の色の表示データを他の色の近傍データ値を考慮した値とすることによって、好適な色度での表示が実現できるのである。
ある画素に注目した場合のRGBデータ値の一例を図5に示す。原データが図5(a)に示すようにR=10、G=15、B=255であったとする。これは、ハレーションがない表示装置ならばほぼ青のように見えるデータである。
本実施形態の補正をせずに表示した場合、図5(b)のように周辺画素からのハレーションが付加され表示される。自画素内でのハレーションもあるが、ここでは7x7画素領域でのハレーションを考慮しているので、このハレーション強度はRGB同程度である。例えば、このハレーション強度が画像データで8に相当する量であったと仮定する。この量は図1のR23、G23、B23に相当する。この画像を観察すると彩度がやや低い青(水色に近い青)に見える。
本実施形態の補正は図5(c)のように上記ハレーションによる発光分を画像データから差し引いて表示するものである。上記の例で言うと、ハレーションによる発光分が画像データで8に相当するため、この分を画像データから差し引いて、R=2、G=7、B=247のデータで電子放出素子を駆動して表示を行うことになる。これにより、表示時にはハレーション発光分が実際のハレーションにより付加され、ハレーションにより低下した彩度を原データと同じ彩度に補正し、原データと同じRGB輝度、彩度、色度で画像が表示される。
本実施形態では説明を簡単にするため、表示装置に入力する画像データと表示輝度が線形であるような表示装置を前提として説明した。画像データと表示輝度が非線形であるような表示装置においては、表示の際にテーブル等を用いて表示特性に合ったデータに変換した後に表示すればよい。
また、本実施形態では、自画素内でのハレーションのみならず、7x7画素領域でのハレーションを考慮したが、注目する発光領域に対して、該発光領域に対応する電子放出素子以外のどの電子放出素子からの電子による注目発光領域の発光状態への影響を考慮するかは、適宜に決めることが出来、近傍データ積算部で用いるa11〜a77をそれに合わ
せて設定することで、ハレーションを考慮する対象を選択することができる。
(第2の実施形態)
図16に示した表示部はスペーサ4012を有している。このスペーサは気密容器内外の圧力差によって気密容器がつぶれるのを防ぐためのものである。このスペーサは、所定の電子放出素子が放出する電子に起因する電子(その電子放出素子が放出する電子の一部であって、直接他の電子放出素子が対応する発光領域に向かってしまう電子や、その電子放出素子が放出する電子が発光体(蛍光体)やその近傍の部材(蛍光体が配置される基板や加速電極であるメタルバック)で反射された後、他の電子放出素子が対応する発光領域に向かってしまう電子)を遮蔽して、その電子が他の電子放出素子に対応する発光領域に照射されるのを抑制する作用を生じさせてしまう。ガラス基板4005もしくはガラス基板4006に設けられたリブなどもこの電子遮蔽の作用を生じさせる電子遮蔽部材となりうる。このような電子遮蔽部材が全ての電子放出素子に対応して一様な位置関係で配置されていれば電子遮蔽の作用も各電子放出素子に対して生じることとなるが、図16に示すスペーサ4012のように、表示部内に電子遮蔽部材が不均一に配置されていると、電子遮蔽部材による各電子放出素子に対応する電子遮蔽の作用は不均一になる。例えば、スペーサ近傍にある電子放出素子が放出する電子に起因する電子は、該スペーサに対してその電子放出素子と反対側にある電子放出素子が対応する発光領域にはスペーサによって遮蔽されることで到達しない。このスペーサによる電子遮蔽の作用はスペーサから充分にはなれて位置する電子放出素子に対しては生じない。従ってスペーサによる電子遮蔽の作用は非一様に生じることとなる。
本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態の処理をスペーサ近傍のみ変更する例を示す。スペーサ近傍では反射電子がスペーサ(遮蔽部材)により遮られるためハレーション強度が軽減する。非スペーサ近傍と同様にスペーサ近傍にも第1の実施形態のようなフィルタをかけると、スペーサ近傍は過補正になってしまう。本実施形態では、スペーサ近傍は係数a11〜a77を変更することでこの問題を解決する。
本実施形態の回路は図1、図2と同じである。異なるのは、近傍データ積算部20の係数a11〜a77の値が変動することである。
近傍データ積算部20の7タップの画素を図6に示すように、p11〜p77とする。図2の係数a11〜a77はそれぞれ画素p11〜p77の画素データに乗算する係数である。
本実施形態ではスペーサはある画素行とその下の行の中央に配置されている板状の部材とする。
スペーサの上の画素行を上第一近接、その上の画素行を上第二近接、その上の画素行を上第三近接、…と呼ぶ。例えば、図6においてスペーサがAの位置に存在する場合、上第一近接はp17〜p77の行であり、上第二近接はp16〜p76の行であり、上第三近接はp15〜p75の行である。また、スペーサの下の画素行を下第一近接、その下の画素行を下第二近接、その下の画素行を下第三近接、…と呼ぶ。例えば、図6においてスペーサがBの位置にある場合、p17〜p77の行が下第一近接である。
また、本実施形態では表示装置の垂直解像度は768本とし、スペーサは40行おきに20本配置されているものとする。
図6においてスペーサが図中のAの位置に存在する場合、注目画素p44近傍の画素の電子放出素子が電子を放出することによって注目画素p44に照射される電子(この電子
としては、注目画素近傍の画素の電子放出素子が放出した電子が反射して注目画素に照射されるものが主なものなので、単に反射電子とも言う)がスペーサにより遮られることはない。何故なら、注目画素p44に照射される反射電子が発生するのはp17〜p77の行が下限であり、その下の行の反射電子はスペーサの有り無しに関係なく注目画素p44に照射されることはないからである。従って、スペーサがAの位置に存在する場合、係数a11〜a77は第1の実施形態と同様に図4(b)に示す値である。
図6においてスペーサがBの位置に存在する場合、注目画素p44に照射される反射電子のうち、スペーサに対して注目画素p44と反対側に位置する画素の反射電子は、スペーサにより遮られる。p17〜p37、p57〜p77の反射電子はスペーサの有り無しに関係なく注目画素p44に照射されることはない。しかし、p47の反射電子がスペーサにより遮られる。
第1の実施形態で述べたように、近傍データ積算部20は、注目画素にハレーション発光を及ぼす画素データの積算値を求めるものである。従って、スペーサにより反射電子が遮られハレーション発光を及ぼさない画素データは積算から除外しなければならない。これにより、スペーサが図6においてBの位置に存在する場合、係数a47は0となり、係数a11〜a77は図7(a)のようになる。
スペーサが図6でCの位置に存在する場合、やはりスペーサにより注目画素に照射されるはずの反射電子が遮られる。この場合、スペーサに対し注目画素と反対側にある画素p26〜p66、p47の反射電子がスペーサにより遮られる。p16、p76、p17〜p37、p57〜p77の反射電子はスペーサの有り無しに関係なく注目画素p44に照射されることはない。このとき係数a11〜a77は図7(b)のようになる。
同様にスペーサが図6のDの位置に存在するとき、係数a11〜a77は図7(c)のようになる。
これまでは注目画素p44はスペーサの上側にあったが、スペーサがEの位置にくると注目画素はスペーサの下側になる。この場合注目画素p44より下側の画素はスペーサにより反射電子が遮られることがなくなるため、p44より下側の係数a14〜a77は第1の実施形態と同じとなる。一方、注目画素p44より上側の画素の反射電子はスペーサに遮られるため、係数a11〜a73はすべて0となる。スペーサが位置Eの場合、係数a11〜a77は図7(d)のようになる。
以下同様に、スペーサが図6のFの位置にある場合、スペーサに対し注目画素と反対側の画素の係数a11〜a72は0、それ以外は第1の実施形態と同じ値になる。従って、スペーサがFの位置にある場合、係数a11〜a77は図7(e)のようになる。
同様に、スペーサがGの位置にある場合、係数a11〜a77は図7(f)のようになる。
スペーサがHの位置にある場合、注目画素p44に照射される反射電子は再びスペーサに遮られることはなくなる。そのため、この場合の係数は第1の実施形態と同様に図4(b)のようになる。
上記の係数の切換えは水平同期期間内のブランク期間に行われる。例えば、スペーサが図6のAの位置に存在する場合、係数a11〜a77は図4(b)の値がセットされている。このときp17〜p77は上第一近接である。入力データR1、G1、B1はp77の画素データであるから、入力データは上第一近接のデータということになる。
次に、スペーサが図6のBの位置にある場合、p17〜p77は下第一近接であり、入力データR1、G1、B1は下第一近接のデータである。このとき係数a11〜a77は図7(a)の値がセットされている。つまり、入力データが上第一近接データから下第一近接データになる間のブランク期間に係数a11〜a77は図4(b)から図7(a)に切り替わる。
次に、スペーサが図6のCの位置にある場合、p17〜p77は下第二近接である。つまり、入力データR1、G1、B1は下第二近接のデータである。このとき係数a11〜a77には図7(b)の値がセットされている。入力データが下第一近接データから下第二近接データに変わるブランク期間に係数a11〜a77は図7(a)から(b)に切り替わる。
同様に、入力データが下第二近接データから下第三近接データに変わるブランク期間に係数a11〜a77は図7(b)から(c)に切り替わり、入力データが下第三近接から下第四近接に変わるブランク期間に係数a11〜a77は図7(c)から(d)に切り替わり、入力データが下第四近接から下第五近接に変わるブランク期間に係数a11〜a77は図7(d)から(e)に切り替わり、入力データが下第五近接から下第六近接に変わるブランク期間に係数a11〜a77は図7(e)から(f)に切り替わり、入力データが下第六近接から下第七近接に変わるブランク期間に係数a11〜a77は図7(f)から図4(b)に切り替わる。
以上のようにすることで、近傍データ積算値R22、G22、B22にはスペーサにより遮られた反射電子分のデータは含まれず、注目画素p44に照射された反射電子分のデータのみとなる。このデータを第1の実施形態と同様、RGB加算部6で足し合わせW22とし、係数演算部7で係数kをかけ、注目画素データR14、G14、B14から差し引く。
これにより、スペーサにより遮られたハレーションを補正することなく、スペーサ近傍でも適切な補正をかけることができる。
(第1の参考形態)
本発明の第1の参考形態として、スペーサ近傍画素データにはハレーション分のデータを付与する例を示す。スペーサ近傍では反射電子がスペーサにより遮られるため、非スペーサ近傍よりハレーション強度が軽減しスペーサの存在による輝度むら、色むらが発生する。本参考形態では、非スペーサ近傍では補正せず、スペーサ近傍のみ非スペーサ近傍同様の輝度、色度にする補正を行う。
本参考形態も第2の実施形態と同様に、スペーサはある画素行とその下の行の中央に配置されている板状の部材とする。また、第2の実施形態同様、表示装置の垂直解像度は768本とし、スペーサは40行おきに20本配置されているものとする。
本参考形態の回路は図1、図2と同じである。第1の実施形態と異なるのは、近傍データ積算部20の係数a11〜a77の値が変動することと、係数演算部7で出力時に符号を反転しないことである。第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を用いて説明を省略する。
まず、注目画素が非スペーサ近傍にある場合について説明する。図6でスペーサがAあるいはH、あるいは注目画素p44から見てA、Hより外側に存在する場合を考える。これは言い換えると、注目画素p44が上第三近接から下第三近接の間にないことと等価で
ある。この場合、注目画素p44に照射される反射電子がスペーサに遮られることはなく、スペーサの存在による輝度、色度むらは発生しない。
本参考形態では、近傍データ積算部20は、スペーサがなければ反射電子が注目画素に照射されてしまうが、スペーサがあることによって反射電子がスペーサで遮られる画素のデータ積算値を計算する。上記の場合、このような画素はないため係数a11〜a77は図8(a)のように全て0をセットする。図1の近傍データ積算部20の出力データR22、G22、B22はすべて0となり、これらのデータを加算するRGB加算部6の出力W22も0となる。
第1及び第2の実施形態では係数演算部7は係数kを乗算し符号を反転して出力していた。しかし、本参考形態の係数演算部7は、係数kを入力信号に乗算し符号を反転せずに出力する。但し上記の例の場合は、入力信号W22が0であるため、係数演算部7の出力R23、G23、B23も0である。
加算器8、9、10の出力は、
となり、注目画素データR14、G14、B14がそのまま出力される。比較器11は数式9、10、11の処理を行い、比較器11の出力R25、G25、B25はR14、G14、B14と等しくなる。その結果、何も補正をかけない状態のデータが表示される。
以上のように、注目画素が非スペーサ近傍にある場合、本参考形態では全く補正せず入力データをそのまま表示する。
次に、注目画素がスペーサ近傍にある場合について説明する。図6でスペーサがBの位置にある場合、注目画素p44に照射される反射電子のうち、スペーサに対して注目画素p44と反対側に位置する画素の反射電子は、スペーサにより遮られる。p17〜p37、p57〜p77の反射電子はスペーサの有り無しに関係なく注目画素p44に照射されることはない。しかし、p47の反射電子がスペーサにより遮られる。
本参考形態の場合、近傍データ積算部20は、スペーサがなければ注目画素に照射されてしまう反射電子を発生させる画素であり、スペーサがあることによって注目画素への該反射電子がスペーサで遮られる画素のデータ積算値を計算する。従って、スペーサが図6においてBの位置に存在する場合、係数a47は1、それ以外は0となり、係数a11〜a77は図8(b)のようになる。
係数a11〜a77が図8(b)の場合、近傍データ積算部20の出力R22、G22、B22はp47のRGB画素データと等しくなる。これらをRGB加算器6で加算しW22とし、係数演算部7でk倍する。係数演算部7の出力データR23、G23、B23はスペーサで遮られることで注目画素p44に照射されなかったハレーション分のデータに相当する。このデータ、つまりスペーサがなければ注目画素に照射されていたハレーション分のデータR23、G23、B23を、加算器8、9、10で注目画素データR14、G14、B14にそれぞれ加算する。
本参考形態は、係数演算部7において符号を反転しないため、加算器8、9、10の出力は常に正である。従って、比較器11はあってもなくても関係ない。つまり、常に、
が成り立つ。
図6でスペーサがCの位置にある場合、やはりスペーサにより注目画素に照射されるはずの反射電子が遮られる。この場合、スペーサに対し注目画素と反対側にある画素p26〜p66、p47の反射電子がスペーサにより遮られる。p16、p76、p17〜p37、p57〜p77の反射電子はスペーサの有り無しに関係なく注目画素p44に照射されることはない。本参考形態では、スペーサで反射電子が遮られる画素の係数が1となるため、係数a11〜a77は図8(c)のようになる。
このとき、係数演算部7の出力データR23、G23、B23はスペーサで遮られることで注目画素p44に照射されなかったハレーション分のデータに相当する。このデータは加算器8、9、10で注目画素データR14、G14、B14にそれぞれ加算される。
同様に図6でスペーサがDの位置にある場合、係数a11〜a77は図8(d)のようになる。やはり、係数a11〜a77が1である画素は、スペーサにより反射電子が遮られる画素である。
図6でスペーサがEの位置にある場合、スペーサで反射電子が遮られる画素はスペーサの上側に移動する。この場合の係数a11〜a77は図8(e)のようになる。同様に、スペーサがFの位置にある場合、係数a11〜a77は図8(f)のようになり、スペーサがGの位置にある場合、係数a11〜a77は図8(g)のようになる。
上記の係数の切換えは水平同期期間内のブランク期間に行われる。この切換え動作は第2の実施形態と同じである。
以上の処理により、スペーサに遮られたハレーション分のデータを画像データとして注目画素に付与することにより、スペーサ近傍の補正を行っている。これにより、スペーサ近傍と非スペーサ近傍での画質の差を低減することができる。
(第2の参考形態)
本発明の第2の参考形態として、第1の参考形態と同様に、スペーサ近傍画素データにはハレーション分のデータを付与する例を示す。但し、スペーサ(遮蔽部材)は円柱状の部材であり、ある画素とその下の画素との中央に配置されているものとする。また、スペーサは縦横40画素おきに配置されているものとする。
本参考形態の回路図を図9に示す。図9で、20RR、20RG、20RB、20GR、20GG、20GB、20BR、20BG、20BBは近傍データ積算部、6R、6G、6BはRGB加算部、7R、7G、7Bは係数演算部、8、9、10は加算器である。
近傍データ積算部20RR、20GR、20BRは図2と同じ構成である。一方、近傍データ積算部20RG、20RB、20GG、20GB、20BG、20BBは、注目画
素データ出力がないという点のみ図2と異なり、図10のような構成である。近傍データ積算部20RR〜20BBは、第1の参考形態と同様にスペーサがなければ注目画素に照射される反射電子を発生させる画素であって、該反射電子がスペーサで遮られる画素のデータ積算値を計算する。
RGB加算部6R、6G、6Bはそれぞれ、R、G、Bの注目画素に反射電子を照射する画素データの積算を行う。このとき、第1及び第2の実施形態並びに第1の参考形態同様、RGBのデータを足し合わせる。係数演算部7R,7G、7Bはハレーション強度に関わる係数kを乗算して出力するものであり、基本的に第1の参考形態と同じである。
図11(a)は画素p11〜p77とスペーサs11〜s78の位置関係を示す図である。実際には、スペーサはs11〜s78のいずれか一つの場所にあるか、s11〜s78以外の場所にあるかのどちらかである。点線100内の画素は、スペーサがなければ注目画素p44に反射電子を照射しうる画素である。
図11(b)は図11(a)の実線101で囲った画素を抜き出して示したものである。各画素はRGB3つの蛍光体から構成され、左から順番にRGB3つの蛍光体が配置されている。該3つの蛍光体のそれぞれには対応する3つの電子放出素子それぞれからの電子が照射される。すなわち、各蛍光体に電子放出素子がそれぞれ対応するようにマトリックス状に電子放出素子が配置されている。
図11(a)において、スペーサがs11にある場合の処理について説明する。この場合、注目画素p44に照射される近接画素の電子放出素子からの電子による反射電子がスペーサに遮られることはなく、スペーサによる輝度むら、色むらは発生しない。
まず、図9の近傍データ積算部20RRの係数a11〜a77について説明する。近傍データ積算部20RRは、注目画素p44のR蛍光体に照射する反射電子が、スペーサにより遮られた画素のRデータの積算値を計算する。例えば、ある画素pのR蛍光体に電子が照射され反射電子が発生する(以下、この反射電子を、画素pのR蛍光体で発生する反射電子と呼ぶ)。この反射電子が注目画素p44のR蛍光体へ照射されるのをスペーサにより遮られた場合、画素pのRデータは近傍データ積算部20RRにより積算される。
本参考形態では、第1の参考形態と同様に近傍データ積算部は、注目画素に照射する反射電子がスペーサで遮られる画素のデータ積算値を計算する。スペーサがs11にある場合、このような画素はないため近傍データ積算部20RRの係数a11〜a77は全て0をセットする。
次に近傍データ積算部20GRの係数a11〜a77について説明する。近傍データ積算部20GRは、注目画素p44のR蛍光体に照射する反射電子が、スペーサにより遮られた画素のGデータの積算値を計算する。例えば、ある画素pのG蛍光体で反射電子が発生する。この反射電子が注目画素p44のR蛍光体へ照射されるのをスペーサにより遮られた場合、画素pのGデータは近傍データ積算部20GRにより積算される。
本参考形態では、第1の参考形態と同様に近傍データ積算部は、注目画素に照射する反射電子をスペーサで遮られる画素のデータ積算値を計算する。スペーサがs11にある場合、このような画素はないため近傍データ積算部20GRの係数a11〜a77は全て0をセットする。
同様に、近傍データ積算部20BRは、注目画素p44のR蛍光体に照射する反射電子を、スペーサにより遮られた画素のBデータの積算値を計算する。例えば、ある画素pの
B蛍光体で反射電子が発生する。この反射電子が注目画素p44のR蛍光体へ照射されるのをスペーサにより遮られた場合、画素pのBデータは近傍データ積算部20BRにより積算される。
本参考形態では、第1の参考形態と同様に近傍データ積算部は、注目画素に照射する反射電子をスペーサで遮られる画素のデータ積算値を計算する。スペーサがs11にある場合、このような画素はないため近傍データ積算部20BRの係数a11〜a77は全て0をセットする。
以上から、近傍データ積算部20RR、20GR、20BRの出力データRR22、GR22、BR22はすべて0となり、これらのデータを加算するRGB加算部6Rの出力WR22も0となる。
本参考形態の係数演算部7R、7G、7Bは第1の参考形態と同様、係数kを入力信号に乗算し符号を反転せずに出力する。但し上記の例の場合は、入力信号WR22が0であるため、係数演算部7Rの出力R23は0である。
加算器8により、注目画素データR14とR23が加算される。スペーサがs11にある場合R23は0であるから、R24はR14と同じ値である。その結果、何も補正をかけない状態のデータが表示される。
スペーサが点線の○で囲まれたs42、s23、s33、s43、s53、s63、s34、s44、s54、s35、s45、s55、s26、s36、s46、s56、s66、s47に存在する場合以外は、注目画素p44に照射される反射電子がスペーサに遮られることがないため、近傍データ積算部20RR〜20BBの係数a11〜a77は全て0となる。
スペーサがs42にある場合を図11(b)を用いて説明する。画素p41のR蛍光体で発生する反射電子は、軌道110を通り注目画素p44のR蛍光体に照射される。この場合、反射電子がスペーサに遮られていないため、近傍データ積算部20RRの係数a41は0である。また、画素p41以外の画素でもR蛍光体で発生する反射電子は、スペーサに遮られることはない。従って、スペーサがs42にある場合、近傍データ積算部20RRの係数a11〜a77は全て0である。
画素p41のG蛍光体で発生する反射電子は、スペーサがs42になければ軌道111を通り注目画素p44のR蛍光体に照射される。しかし、スペーサがs42にある場合スペーサに遮られ反射電子が注目画素p44のR蛍光体に照射されない。従って、近傍データ積算部20GRの係数a41は1となる。p41以外の画素のG蛍光体で発生する反射電子は、スペーサにより遮られることがないため、係数a41以外は全て0となる。
画素p41のB蛍光体で発生する反射電子は、スペーサがなければ電子軌道112により注目画素p44のR蛍光体に照射される。しかし、スペーサにより遮られ注目画素p44のR蛍光体に照射されない。従って近傍データ積算部20BRの係数a41は1となる。p41以外の画素のB蛍光体で発生する反射電子は、スペーサにより遮られることがないため、係数a41以外は全て0となる。
以上のように、近傍データ積算部20RRは、注目画素の周辺画素のR蛍光体で発生した反射電子がスペーサで遮られ注目画素p44のR蛍光体に照射されなかった場合、それらの画素のRデータを積算する。また、近傍データ積算部20GRは、注目画素の周辺画素のG蛍光体で発生した反射電子がスペーサで遮られ注目画素p44のR蛍光体に照射さ
れなかった場合、それらの画素のGデータを積算する。同様に、近傍データ積算部20BRは、注目画素の周辺画素のB蛍光体で発生した反射電子がスペーサで遮られ注目画素p44のR蛍光体に照射されなかった場合、それらの画素のBデータを積算する。
例えば、近傍データ積算部20RRの係数a11〜a77は、スペーサの位置により図12(a)〜(v)のように設定する。スペーサがs42、s23、s33、s43、s53、s63、s34、s44、s54、s35、s45、s55、s26、s36、s46、s56、s66、s47に存在するとき、係数a11〜a77はそれぞれ(a)〜(v)のように設定する。これにより、所望の近傍データ積算値を得ることができる。
例えば、図11(a)においてスペーサがs44にある場合、p52、p62、p53のR蛍光体で発生した反射電子はスペーサにより遮られ、注目画素p44のR蛍光体に照射されない。それ以外の画素の反射電子はスペーサに遮られない。従って、近傍データ積算部20RRの係数a52、a62、a53は1となり、それ以外の係数は0であり、図12(i)のような値となる。これにより、近傍データ積算部20RRの出力RR22は画素p52、p62、p53のRデータの積算値となる。
このようにして得られた近傍データ積算値RR22、GR22、BR22は加算器6Rで加算されWR22となる。係数演算部7Rでは、WR22に係数kを乗算しR23を出力する。R23はスペーサに遮られ、注目画素のR蛍光体に照射されなかったハレーション発光に相当する画像データである。このデータR23を加算器8で注目画素データR14に加算し表示する。
同様に、近傍データ積算部20RG、20GG、20BGは、注目画素p44のG蛍光体に照射する反射電子がスペーサで遮られた場合、それらの画素データをRGBでそれぞれ積算する。また、近傍データ積算部20RB、20GB、20BBは、注目画素p44のB蛍光体に照射する反射電子がスペーサで遮られた場合、それらの画素データをRGBでそれぞれ積算する。
加算器6Gでは得られた近傍データ積算値RG22、GG22、BG22が加算されWG22となる。係数演算部7Gでは、WG22に係数kを乗算しG23を出力する。G23はスペーサに遮られ、注目画素のG蛍光体に照射されなかったハレーション発光に相当する画像データである。このデータG23を加算器9で注目画素データG14に加算し表示する。
また、加算器6Bでは得られた近傍データ積算値RB22、GB22、BB22が加算されWB22となる。係数演算部7Bでは、WB22に係数kを乗算しB23を出力する。B23はスペーサに遮られ、注目画素のB蛍光体に照射されなかったハレーション発光に相当する画像データである。このデータB23を加算器10で注目画素データB14に加算し表示する。
以上のように処理することで、スペーサにより遮られた反射電子を、画像データとして注目画素に付与することができる。その結果、スペーサがなかったときと同様に発光し、スペーサの存在による輝度むら、色むらが解消される。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態として、第1の実施形態と同様にハレーション発光分のデータを注目画素データから差し引く例を示す。本実施形態の回路ブロック図は第2の参考形態同様、図9である。
図13は第1の実施形態を行った場合に発生する補正誤差を説明する図である。
画素p22のGで発生した反射電子は、注目画素p44のGに入射しハレーション発光を起こす(図中の実線矢印)。しかし、画素p22のRで発生した反射電子は、注目画素p44のGに入射しない(図中の点線矢印)。これは、画素p22のRと注目画素p44のGとの間の距離が、画素p22のGと注目画素p44のGとの間の距離より長いため、画素p22のRで発生した反射電子は注目画素p44のGに到達しないためである。
第1の実施形態では、図4に示した近似したハレーション領域61内の画素であれば、RGBどの色であっても、注目画素のRGB全てにハレーション発光を引き起こすと仮定している。つまり、画素p22のRGBどの蛍光体で発生した反射電子も注目画素p44のGにハレーション発光を起こすと仮定している。しかし、実際にはハレーション領域61の境界部の画素(例えば画素p22)では上述のようにRGBによりハレーション発光を引き起こさない色がある。第1の実施形態ではこのような補正誤差を無視して補正している。
本実施形態の回路ブロック図は第2の参考形態と同様図9である。上記のように、ハレーション領域境界部の画素では、色により注目画素にハレーション発光を及ぼす色と及ぼさない色がある。そこで本形態では、例えば注目画素p44のGの補正値を求める際は、近傍のRのデータを積算するブロック20RG、近傍のGのデータを積算するブロック20GG、近傍のBのデータを積算するブロック20BGの3ブロックを使用する。これらのブロックの係数a11〜a77は第1の実施形態同様、注目画素p44にハレーション発光を及ぼす画素の係数であれば1、そうでなければ0とする。上記のように、ハレーション領域境界部の画素では、色により注目画素にハレーション発光を及ぼす色と及ぼさない色があるため、必ずしも3ブロックの係数a11〜a77は同じではない。
注目画素p44のRの補正値を求める場合も同様に、近傍のRのデータを積算する20RR、近傍のGのデータを積算する20GR、近傍のBのデータを積算する20BRの3ブロックを使用する。また、注目画素p44のBの補正値を求める場合も同様に、20RB、20GB、20BBの3ブロックを使用する。
また、第2の参考形態では注目画素p44のデータR14、G14、B14と補正値R23、G23、B23を加算していたが、本形態では注目画素p44のデータR14、G14、B14から補正値R23、G23、B23を減算する。このように補正することで、第1の実施形態のような補正誤差を低減しつつハレーションによる彩度低下を補正できる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態として、第1の実施形態と同様にハレーション発光分のデータを注目画素データから差し引く例を示す。本実施形態では補正計算をメディアプロセッサで処理する例を示す。
図14は本実施形態のブロック図である。200はフレームメモリ、201は第一演算部、202は第二演算部である。
入力されたデータは1フレーム分フレームメモリ200に蓄積される。第一演算部201では、図4(b)に示す係数a11〜a77をカーネルとして、フレームメモリ200の補正すべきデータとコンボリューションを行う。つまり、注目画素p44を中心に7x7画素のデータをフレームメモリ200から読み出し、図4(b)の係数と各要素を乗算し、その結果を積算する。
第二演算部202では、まず、第一演算部201の出力に数式4の係数kを乗算する。その乗算結果を、フレームメモリ200から読み出した注目画素p44のデータから減算し、表示用の補正データとして出力する。
このように、メディアプロセッサ等により補正処理することも可能である。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態として、第1の実施形態と同様にハレーション発光分のデータを注目画素データから差し引く例を示す。第1の実施形態では、図4(b)に示すように0あるいは1の係数を用いていた。本実施形態では、実際のハレーションの輝度分布に近い係数を用いる。
図15に本実施形態で使用した係数a11〜a77を示す。図に示すように係数a11〜a77は0あるいは1以外の数値も含んでいる。
本実施形態は係数a11〜a77の値以外は、補正方法、補正回路ともまったく第1の実施形態と同様である。各係数の値は、近接する電子放出素子の電子放出による注目発光領域への影響を実験により評価することで求めることが出来る。先の各実施形態のように、係数を0と1の2値とする場合に対して、より正確な補正を行うことが出来る。
以上説明した各実施形態によれば、良好な発光状態を得られる画像表示装置及び画像表示に使用する電子放出素子の駆動信号の補正方法を実現することができる。