JP4134462B2 - レーダ装置,調整方法,調整システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波を受信する複数のアンテナを用いて物体を検出し、受信チャネル間の相互干渉による方位検出能力の低下を防止するレーダ装置、その調整方法、及び特に車両に搭載されたレーダ装置の調整を車両走行中に可能とする調整システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年レーダ装置を自動車に搭載し、衝突防止などの安全装置として応用する試みがなされている。特に、最近、電気的に広範囲の物体を検出する電子スキャンレーダに関して様々な方式が検討されている。
【0003】
これらの電子スキャンレーダの一つとして、複数の受信アンテナを備えたものが知られている。この電子スキャンレーダでは、装置を小型化する等のシステム上の制約から受信アンテナを近接配置することが多い。しかし、近接配置された受信アンテナ間には素子間相互結合が生じてしまい、各受信アンテナの受信信号間の相関が大きくなるため、結果的にレーダ装置の方位検出精度や分解能が低下してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、例えば、特開平9−148836号公報には、曲面又は平面上に複数のアンテナ素子を配列するアレーアンテナにおいて、各アンテナ素子の指向性(以下「単体素子指向性」という)fn(θ)と、アレーアンテナとして動作する時に素子間相互結合の影響を受けた各アンテナ素子の指向性(以下「アレー素子指向性」という)gi(θ)に基づいて、素子間相互結合の影響を補償するレーダ装置(以下「従来装置」とも呼ぶ)が開示されている。
【0005】
なお、単体素子指向性fn(θ)とアレー素子指向性gi(θ)との関係は(1)式にて表され、式中の正方行列(これを「相互干渉行列」という)の係数cij(i,j=1〜N)は、アレーアンテナの各アンテナ素子を、その配列に従ってA1〜ANで表すものとして、素子間相互結合によりアンテナ素子Ajがアンテナ素子Aiに与える影響を表している。
【0006】
【数1】
【0007】
従って、相互干渉行列の逆行列を求め、これを補償行列として各アンテナ素子の送受信信号に乗算すれば、素子間相互結合の影響が補償され、アレーアンテナとしての特性の低下、即ちサイドローブの上昇や利得の低下を抑制できるのである。
【0008】
但し、干渉行列の係数cijは、次の(2)式における平均二乗誤差を最小にする係数として算出可能であり、具体的には(3)〜(5)式を用いて算出される。なお、(4)(5)式において、θ1,θ2はそれぞれアンテナ指向性の計測開始角度と計測終了角度を表している。
【0009】
【数2】
【0010】
【数3】
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年では、自動車用レーダ装置として、雨、雪、霧などの劣悪な気象環境に対する耐性があるという点において有利なミリ波帯の電波を用いたミリ波レーダ装置が注目されている。
【0012】
但し、このミリ波レーダ装置では、アンテナ素子間の相互結合だけでなく、ミリ波帯の受信信号を処理する高周波回路内においても各アンテナ素子に対応したチャネル間の相互干渉の影響が大きくなり、レーダ装置の性能を著しく劣化させる原因となっている。
【0013】
しかし、上述の従来装置の補償行列では、アンテナ素子間の相互結合の影響しか考慮されていないため、ミリ波レーダ装置に適用した場合、アンテナ及び高周波回路を含めたチャネル間の相互干渉を十分に補償することができないという問題があった。
【0014】
また、アンテナ素子の指向性を個々に測定することは非常に困難であり、また、その結果を用いた係数cijの算出にも、上述の(4)(5)式に示されているように、積分等の複雑な計算を行わなければならないため、従来装置においては、補償行列の算出に膨大な手間を要するという問題があった。
【0015】
なお、レーダ装置を大量に製造する場合、アンテナ素子の加工精度や組付精度が高い場合には、各製品の特性を同一とみなすことができるため、全ての製品についてアンテナ素子の指向性を測定するのではなく、任意に抽出したサンプル品でのみ測定を行い、この測定結果を用いて求めた補償行列を、他の製品にも適用することにより、補償行列を求めるための手間を大幅に削減する手法が考えられる。
【0016】
ところが、レーダ波の波長が回路素子や伝送線路の大きさと同程度となるミリ波レーダ装置では、ミリ波を扱うアンテナや高周波回路の特性を各製品間で同一にするには、極めて高度な微細加工技術が必要となるため、これを実現しようとすると、製造コストが膨大なものとなり実用的ではない。従って、通常は、加工精度に余裕を持たせており、製品毎にチャネルの特性がばらつくことになるため、結局、ミリ波レーダ装置では、各製品毎に個別に補償行列を求めなければならず、上記手法を用いることができなかった。
【0017】
そこで本発明は、上記問題点を解決するために、小さな計算負荷にてアンテナを含む高周波回路内でのチャネル間の相互結合を総合的に補償することが可能なレーダ装置、及びその調整方法、更に車両に搭載されたレーダ装置の調整に好適な調整システムを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための発明である請求項1記載のレーダ装置では、送受信手段が、連続波(CW)からなるレーダ波を送出すると共に、このレーダ波を反射した目標物体からの反射波を複数のアンテナにて受信し、各アンテナからの受信信号にローカル信号を混合することにより、各アンテナに対応した受信チャネル毎のビート信号を生成する。すると、受信データ生成手段が、このビート信号を周波数分析して、受信チャネル毎にビート信号の信号強度及び位相を表す受信データを生成し、補償演算実行手段が、相互干渉補償行列を用いて、受信データに対する補償演算を実行する。そして、この補償演算が施された受信データを用いて目標物体の検出を行う。
【0019】
特に、本発明のレーダ装置では、到来方向特定手段が、送受信手段にて受信されたレーダ波の到来方向を特定すると、ベクトル生成手段が、この特定された到来方向に基づき、各アンテナに入射されたレーダ波の信号強度及び位相を表す方位データを求めると共に、この方位データを要素とする参照信号ベクトル、及び受信データ生成手段にて生成された受信データを要素とする受信信号ベクトルを対にして生成する。
【0020】
そして、到来方向の異なる複数のレーダ波が送受信手段にて順次受信されることにより、ベクトル生成手段にて複数対の受信信号ベクトル及び参照信号ベクトルが生成されると、信号行列生成手段が、これらのうち受信信号ベクトルを配列してなる受信信号行列、及びこの受信信号行列に対応させて参照信号ベクトルを配列してなる参照信号行列を生成する。
【0021】
更に、補償行列生成手段が、受信信号行列及び参照信号行列の行列演算により、各受信チャネル間に生じる相互干渉を補償するための相互干渉補償行列を求め、この相互干渉補償行列が、前述の補償演算実行手段にて用いられることになる。
【0022】
即ち、受信チャネルchiにおける受信データをνi、方位データをuiとし、受信チャネルchkが受信チャネルchiに与える影響(相互干渉量)をcikとすると、受信データνiを配列してなる受信信号ベクトル[ν1,ν2,…,νN],参照信号ベクトル[u1,u2,…,uN]と、係数cijを配列してなる相互干渉行列Cとの関係は、(6)式にて表すことができる。
【0023】
【数4】
【0024】
また、j回目(但し、j=1,2,…,N)の測定により得られた受信信号ベクトルを[ν1j,ν2j,…,νNj]、参照信号ベクトルをUC[u1j,u2j,…,uNj]とすると、N個の受信信号ベクトル及び参照信号ベクトルを配列してなる受信信号行列V及び参照信号行列Uは、(7)(8)にて表される。
【0025】
【数5】
【0026】
そして、これら受信信号行列V及び参照信号行列Xと、相互干渉行列Cとの関係は、(9)式にて表すことができる。
V=C・U (9)
相互干渉補償行列Dは相互干渉行列の逆行列C-1(=D)であるため、(9)式を変形した式を用いて、受信信号行列Vと参照信号行列Uとの行列演算を行うことにより、相互干渉補償行列Dが求められるのである。
【0027】
このように、本発明のレーダ装置では、アンテナに入射されたレーダ波を表す方位データ(参照信号ベクトル)及びレーダ波を受信することにより実際に高周波回路にて生成されたビート信号に基づく受信データ(受信信号ベクトル)を用いると共に、これらの方位データ及び受信データに基づいて生成された参照信号行列及び受信信号行列の行列演算のみを用いて相互干渉補償行列を作成している。従って、従来装置のようにアンテナの指向性を測定したり、複雑な積分計算等をする必要がないため、相互干渉補償行列を求めるための手間(測定及び計算)を大幅に削減できる。
【0028】
また、本発明のレーダ装置では、相互干渉補償行列により、アンテナにてレーダ波が受信されてから受信データが生成されるまでの過程に含まれるあらゆる影響が総合的に補償されるため、アンテナ間の相互結合や高周波回路内での相互干渉等はもちろん、それ以外の原因不明の要因も含めて補償することができる。
【0029】
ところで、送受信手段は、アンテナのそれぞれにビート信号を生成するためのミキサを設けるように構成してもよいが、例えば、請求項2記載のように、複数のアンテナのうち、いずれかからの受信信号を選択して供給する切替スイッチを用いることでミキサを共用し、ミキサの数を削減した構成を採用してもよい。
【0030】
この場合、高価なミキサの数が削減され装置を安価に構成できるだけでなく、ミキサに供給するローカル信号の電力量も削減されるため、装置の消費電力を低減することができる。
但し、切替スイッチを設けた場合には、この切替スイッチ内で生じる相互干渉、振幅変動、位相回転の影響が大きくなり、レーダ装置の性能を著しく劣化させることがある。
【0031】
しかし、本発明のレーダ装置では、このような切替スイッチの挿入により生じる影響も相互干渉補償行列に反映されるため、その影響も合わせて補償することができる。
また、請求項3記載のように、送受信手段には、切替スイッチとミキサとの間に、レーダ波の送信信号を切替スイッチに供給すると共に、切替スイッチからの受信信号を前記ミキサに供給する信号分離器が設けられ、アンテナ及び切替スイッチが送受信に兼用されるように構成してもよい。
【0032】
この場合、ミリ波レーダ装置全体の容積の中で最大の面積を有するアンテナを、有効利用することができる。
ところで、一般に、切替スイッチの分岐数が増えると、切替周期が長くなるだけでなく、切替スイッチにおける相互干渉量も大きくなる。また、切替スイッチを順番に切り替えて各チャネルの受信信号を時分割で処理する場合、各チャネルの検出信号は、同時に検出されたものではなく、切替スイッチの動作に従って、少しずつずれたタイミングで検出されたものとなっている。つまり各検出信号の位相は、この時間差に応じた誤差が含まれているため、位相情報を用いて目標物体の方位を検出する場合、誤検出を招く可能性がある。
【0033】
そこで、受信アンテナの数が多い場合には、請求項4記載のように、送受信手段は、アンテナを複数の受信グループに分割して該受信グループ毎に、切替スイッチ及びミキサを設けることが望ましく、この場合には、相互干渉補償行列を、受信グループ毎に設定することができる。
【0034】
このように構成された本発明のレーダ装置では、同一受信グループ内の受信チャネル間の検出タイミングのずれを無くすことは不可能であるが、異なる受信グループの受信チャネル間では検出タイミングを同時とすることが可能である。従って、このように同時受信された信号を比較すれば、両信号間には検出タイミングのずれに基づく位相誤差が含まれないため、方位検出を精度よく行うことができる。
【0035】
また、本発明のレーダ装置では、受信グループ毎に異なる切替スイッチを用いており、異なる受信グループに属する受信チャネル間の相互干渉量は大幅に減少するため、アンテナ間の相互干渉が切替スイッチ内での相互干渉と比較して十分に小さければ、相互干渉補償行列を受信グループ毎に設定しても、十分に補償効果を得ることができる。
【0036】
しかも、受信グループ毎に相互干渉補償行列を設定した場合、各行列が扱う信号数が少なくなるため、相互干渉補償行列を生成する演算、及び相互干渉補償行列を用いて受信データを補償する演算のいずれも、演算量を大幅に削減できる。
次に、送受信手段は、請求項5記載のように、時間と共に周波数が変動する周波数変調連続波(FMCW)をレーダ波の送信信号として生成するようにしてもよい。この場合、受信データ生成手段が受信データを生成する際に特定されるビート信号の周波数から、目標物体との距離と相対速度を求めることができ、また、補償演算実行手段にて生成された補償演算後の受信データに基づき、各受信データの信号強度や位相を比較することにより、目標物体の方位情報を精度よく求めることができる。
【0037】
即ち、例えば、方位情報を、受信データに対してFFTを行うことにより求めた場合には、受信チャネル間の相互干渉が大きいと、目標物体が存在する位置を中心として角度方向の広い範囲に渡って誤ったレーダ反応(サイドローブ)が発生する。特に、近接した距離、或いは同一距離に複数の目標物体が存在する場合には各々のサイドローブが重複し合うためレーダ装置の分解能が劣化する。しかし本発明では、補償演算により受信チャネル間の相互干渉を補償した受信データを用いるため、サイドローブの発生を抑えることができ、複数の目標物標の方向を確実に識別することができるのである。
【0038】
また、受信データ生成手段は、請求項6記載のように、ビート信号の周波数分析を複素フーリエ変換によって行うことが望ましい。この場合、比較的少ない計算量にて効率良く受信データを生成することができる。
ところで、ベクトル生成手段は、具体的には、請求項7記載のように、位相差算出手段が、到来方向特定手段にて特定されたレーダ波の到来方向と各アンテナの配置とに基づいて、各アンテナに入射されたレーダ波の伝搬距離差を求め、この伝搬距離差から各アンテナに入射されたレーダ波の位相差を求めると共に、振幅算出手段が、受信データ生成手段にて生成された受信データに基づいて、各アンテナに入射されたレーダ波の推定振幅を求め、これら位相差算出手段及び振幅算出手段にて求められた位相差及び推定振幅の情報を複素数にて表現したものを方位データとするよう構成すればよい。
【0039】
なお、振幅推定手段は、請求項8記載のように、受信データ生成手段にて生成された受信データが表す振幅の平均値を推定振幅とすることが望ましい。このように設定することで、計算によって得られる相互干渉補償行列の各要素の大きさがほぼ一定値となるため、相互干渉補償行列生成後に、各要素の大きさを揃えるための正規化計算を行う必要がなく、相互干渉補償行列の生成に必要な演算量を削減できる。
【0040】
即ち、図17に示すように、各アンテナが一定間隔dwで配置され、電波の到来方向がアンテナの正面方向に対して角度αである場合、隣接する一対のアンテナが受信するレーダ波の伝搬距離差dlは、(10)式にて表すことができる。
dl=dw・sinα (10)
この伝搬距離差dlが長い方のアンテナでは、隣接するアンテナの受信信号に対して受信信号の位相が遅れることになり、具体的には、伝搬距離差dlをレーダ波の波長で除した余りが、両受信信号の位相差ζに比例する。
【0041】
また、各アンテナが十分に接近して配置されている場合、各アンテナでの受信強度はほぼ等しくなるため、これを一定としても大きな誤差を生じることがない。
このように、各アンテナに入射されたレーダ波の信号強度及び位相(即ち、方位データ)を実際に測定できなくても、レーダ波の到来方向と、アンテナの位置情報とを用いれば、ほぼ同じ特性を持った信号を求めることができるのである。
【0042】
ところで、補償行列生成手段が生成する相互干渉補償行列は、請求項9記載のように、この相互干渉報償行列の補償対象となる受信データの数がN個である場合、N行×N列の正方行列からなることが望ましい。
この場合、相互干渉補償行列は、受信データが補償対象となる全ての受信チャネルについて、互いの他の全ての受信チャネルとの相互干渉の影響を補償することができるため、どの受信チャネルも同等な精度にて補償を行うことができる。また、正方行列であれば、逆行列を求める等の行列演算を行うことができ、相互干渉補償行列を効率よく求めることができる。
【0043】
ここで補償行列生成手段にて相互干渉補償行列を求める具体的な手順としては、請求項10記載のように、まず、受信信号行列Vの逆行列である受信信号逆行列V-1を求め、その後、この受信信号逆行列V-1に参照信号行列Uを乗算することにより、つまり、上述の(9)式を変形して得られる次の(11)式に従って、相互干渉補償行列D(=C-1)を求める方法を用いることができる。
【0044】
D=C-1=U・V-1 (11)
この場合、簡単な演算によって、相互干渉補償行列を直接生成することができる。但し、受信信号行列Vを構成する受信信号ベクトルの組合せ方によっては、受信信号行列の逆行列V-1が存在しないことがあるため、この方法では、相互干渉補償行列Dを求めることができない場合がある。
【0045】
そこで、請求項11記載のように、まず、参照信号行列Uの逆行列である参照信号逆行列U-1を求め、次に、この参照信号逆行列U-1と受信信号行列Vとを乗算することにより相互干渉行列Cを求め、更に、この相互干渉行列Cの逆行列を求めることにより、つまり、上述の(9)式を変形して得られる次の(12)式に従って、相互干渉補償行列Dを求める方法を用いてもよい。
【0046】
D=C-1={V・U-1}-1 (12)
即ち、参照信号行列を構成する参照信号ベクトルの各要素は、計算によって求められるものであるため、予め逆行列をもつように設定することが可能であり、しかも、切替スイッチの特性は、いくら相互干渉が大きいといっても、他チャネルへの漏洩成分よりも正常に通過する成分の方が十分に大きいため、相互干渉行列は、対角要素が十分に大きく行列の正則性が保たれたものとなる。つまり、参照信号行列の逆行列であれば確実に求めることができ、ひいては、相互干渉補償行列を確実に求めることができるのである。
【0047】
次に、到来方向特定手段は、レーダ波の到来方向を、請求項12記載のように、受信データ生成手段が生成する受信データに基づいて算出された目標物体の方位情報から特定してもよいし、請求項14記載のように、当該装置の外部よりレーダ波の到来方向に関する情報を取得することにより特定してもよい。
【0048】
なお、前者(請求項12)の場合、請求項13記載のように、起動手段が、所定条件に従って到来方向特定手段を起動することにより、相互干渉補償行列の生成を行わせる必要がある。所定条件とは、外部からの指令に基づくものであってもよいし、周期的なものであってもよい。
【0049】
一方、後者(請求項14)の場合、レーダ装置に相互干渉補償行列の生成を行わせるためには、外部からレーダ波の到来方向に関する情報を提供しなければならないため、次のような調整方法を用いる必要がある。
即ち、請求項15記載の調整方法では、レーダ装置の各アンテナに対して測定用レーダー波を照射する第1の手順と、アンテナに対する測定用レーダ波の照射角度を到来方向特定手段を介してレーダ装置に取得させる第2の手順とを、測定用レーダ波の照射角度を変更しながら繰り返すようにしている。
【0050】
この場合、測定用レーダ波の照射角度は、請求項16記載のように、レーダ装置の検出角度範囲内をN等分した各領域の中心方向のいずれかと一致するよう設定されていることが望ましい。
即ち、到来方向の設定が接近し過ぎると、各受信データの独立性が弱くなり、この受信データに基づいて生成される受信信号行列が正則ではなくなり、受信信号行列の逆行列が求められない可能性が高くなってしまうため、各到来方向はできるだけ離して設定する方が好ましいのである。そして、上述のように設定することで、効率良く測定できるだけでなく、測定結果に基づいて生成される相互干渉補償行列の補償精度を最大限に引き出すことができる。
【0051】
なお、測定用レーダ波としては、レーダ装置外のレーダ波発生源にて発生させたものを用いてもよいが、請求項17記載のように、レーダ装置が送出したレーダ波を反射する反射物体からの反射波を用いてもよい。
この場合、調整対象となるレーダ装置以外に、レーダ波を発生させるための装置を必要とせず、反射物体といった簡易な設備のみを用いて調整を行うことができる。
【0052】
また、この時、レーダ波の到来方向に基づいて算出される方位データと、実際にアンテナに入射されたレーダ波との誤差を小さくして、生成する相互干渉補償行列の精度を向上させるには、請求項18記載のように、反射物体を、反射物体にて反射しレーダ装置に到達する反射波が平面波と見なされる距離以上、レーダ装置から離して設置することが望ましい。
【0053】
ところで、このような反射物体を用いた調整方法では、測定用の設備は簡易なものとなるが、測定のために広い空間が必要となってしまう。
これに対して、測定用レーダ波の発生源として、請求項19記載のように、レーダ装置の各アンテナに個別に入射され、互いの位相差を任意に設定可能な複数のレーダ波を発生させることができ、各レーダ波の位相差を適宜設定することにより、任意の照射角度を有する測定用レーダ波を模擬可能な送信装置を用いれば、測定のために大きな空間を必要とすることなく、極めて短時間にて効率良く調整を行うことができる。
【0054】
ここで、上述の調整方法では、主として、レーダ装置の製造過程等において調整を行うことを想定しているが、レーダ装置の特性が年月によって変化する場合は、定期的に調整を行う必要がある。特にレーダ装置が車両に搭載されている場合には、この調整を、車両の定期点検の際に行ってもよいが、より信頼性を向上させるためには、走行中に得た受信データを用いて行っていもよい。
【0055】
このように、車両に搭載されたレーダ装置の調整を行う場合、受信データや方位データを生成するための測定用レーダ波として、請求項20記載のように、レーダ装置の検出角度範囲内に存在し、レーダ装置から送出されたレーダ波を反射する他車両からの反射波を用いてもよいし、請求項21記載のように、直線道路の路側付近に設置され、レーダ装置から送出されたレーダ波を反射する反射物体からの反射波を用いてもよい。
【0056】
特に前者(請求項20)の調整方法では、例えば、カーブ状の道路を走行している時に、前方を走行する他車両(以下「対象車両」という)からの反射波を利用すれば、様々な方向から到来するレーダ波についての受信データを連続的に獲得することができる。
【0057】
そして、この測定の間、自車両と対象車両のいずれもが、同一レーンを走行し続けていれば、自車両の走行情報から走行軌跡を求めることにより、道路形状(カーブ具合)についての情報を得ることができると共に、レーダ装置の本来の機能により対象車両までの距離を求めることができるため、これら道路形状と対象車両までの距離とからレーダ波の到来方向、即ち、相互干渉補償行列の作成に必要な方位データも得ることができるのである。
【0058】
このように本発明の調整方法は、対象車両からの反射波を測定用レーダ波として用いており、道路側に特別な設備を用意する必要がないため、簡単且つ低コストで実現することができる。
なお、本発明の調整方法では、自車両及び対象車両のいずれもが同一レーンを走行し続けているか否かを確認する必要がある。この確認は、例えば、車両の搭乗者に行わせればよく、いずれかの車両がレーンを外れた場合には、獲得した受信データや到来方向のデータを無効にする旨の指令を、レーダ装置に入力するようにすればよい。
【0059】
また、道路近傍に設けられた路上局と車両に搭載された車上局との間での無線通信(路車間通信)が可能である場合には、道路側に走行車両の位置を検知する装置を設け、その検知結果を路車間通信によって各車両に伝達するように構成し、該検知結果に従って方位データを求めるようにしてもよい。
【0060】
更に、車両間の無線通信(車車間通信)が可能な場合には、車車間通信によって獲得した対象車両の走行情報も考慮して方位データを求めるようにしてもよい。これらの場合、自車両及び対象車両が同一レーンを走行し続ける必要がなく、より柔軟にレーダ装置の調整を行うことができる。
【0061】
一方、後者(請求項21)の場合、直線道路を走行する車両と、この直線道路の近傍に設置された反射物体との位置関係が連続的に変化するため、この反射物体からの反射波を利用することにより、様々な方向から到来するレーダ波についての受信データを獲得することができる。
【0062】
例えば、走行車線中央から10mだけ横に離して配置した反射物体が車両から見える角度は、車両が150mから50mへ近づく間に、約2〜10度まで変化する。現在、一般に、自動車用レーダの検出可能距離は百数十m程度、また検出角度範囲は±10度以下程度に設定されているため、補償計算に用いる受信信号行列を生成するには十分な受信データを得ることができる。
【0063】
この調整方法では、反射物体の位置が固定されており、道路形状も直線であるため、カーブ状の道路にて対象車両の反射波を測定用レーダ波として利用する場合と比較して、安定した受信データを得ることができ、精度のよい相互干渉補償行列を生成することができる。
【0064】
次に、車両に搭載された上述のレーダ装置の調整を行う調整システムについて説明する。
請求項22記載の調整システムでは、直線道路の路側付近に設置された反射物体が、直線道路を走行する車両に搭載されたレーダ装置からのレーダ波を反射し、これと共に路上局が、反射物体とレーダ装置を搭載した車両との位置関係を特定するための位置特定情報を無線通信により送信する。
【0065】
この路上局が送信した位置特定情報を、車両に搭載された車上局が受信すると、同じ車両に搭載されたレーダ装置では、この位置特定情報に基づいて、到来方向特定手段が、反射物体の位置する方向を求めることにより、レーダ波の到来方向を特定する。
【0066】
つまり、レーダ装置は、反射物体からの反射波を繰り返し受信することにより、様々な方向から到来するレーダ波についての受信データを獲得できると共に、位置特定情報に基づいて特定される反射物体と当該レーダ装置を搭載した車両との位置関係から、受信データ獲得時のレーダ波の到来方向、即ち方位データを求めることができ、その結果、これらの受信データと方位データとに基づいて相互干渉補償行列を生成できるのである。
【0067】
なお、反射物体は、反射効率を良くするために、ある角度範囲から到来するレーダ波をほぼ同じ方向へ反射する構造であることが望ましい。しかし、レーダ装置を搭載した車両は、レーダ波が車両と反射物体との間を往復する間に移動してしまう。このため、反射物体は、請求項23記載のように、レーダ装置から送出されたレーダ波が、レーダ装置を搭載した車両と反射物体との間を往復する間に、車両が移動する可能性のある角度範囲内のすべてに向けて反射するものを用いる必要がある。
【0068】
次に、請求項24記載の調整システムでは、路上局は、位置特定情報として、反射物体から該反射物体の手前に位置する計測開始地点までの道路区間の長さを表す固定距離情報、計測開始地点を通過した車両の通過タイミング、及び車両が走行中の走行レーンの中央から反射物体までの最短距離を表す第一距離情報を通知する。
【0069】
一方、レーダ装置では、走行状態検出手段が、当該レーダ装置を搭載した自車両の走行状態を検出し、この検出した車両の走行状態、及び車上局を介して路上局から取得した位置特定情報に基づき、推定手段が、自車両と反射物体との位置関係を推定する。この推定された位置関係から、到来方向特定手段がレーダ波の到来方向を特定する。
【0070】
このように本発明の調整システムでは、位置特定情報として計測開始地点の通過タイミングをレーダ装置に通知しているため、このタイミングを利用してレーダ装置が自動的に調整を開始するよう構成すれば、運転者や同乗者に負担をかけることなく調整を行うことができる。
【0071】
なお、走行状態検出手段が、少なくとも自車両の走行距離を算出可能な情報を検出している場合、推定手段は、請求項25記載のように、固定距離情報及び通過タイミング後の自車両の走行距離に基づいて自車両から反射物体までの道路区間の長さ表す第二距離情報を求め、第一距離情報と第二距離情報とにより、自車両と前記反射物体との位置関係を推定すればよい。
【0072】
また、レーダ装置が、受信データに基づいて自車両から反射物体までの直線距離を表す第三距離情報を求める直線距離算出手段を備えている場合には、請求項26記載のように、推定手段は、固定距離情報及び通過タイミング後の自車両の走行距離に基づいて自車両から反射物体までの道路区間の長さを表す第二距離情報を求め、第一距離情報及び第二距離情報のうち少なくともいずれか一方と、直線距離算出手段にて算出された第三距離情報とにより、自車両と反射物体との位置関係を推定するようにしてもよい。
【0073】
即ち、第一距離情報,第二距離情報,第三距離情報の3つの情報は、自車両の位置及び反射物体の位置を2頂点(但し、直角ではない)とする直角三角形の各辺の長さを表しているため(図15参照,但し、各距離情報をL1,L2,L3とする)、これらのうち少なくともいずれか2つの情報から、自車両の位置に対応する頂点の角度を求めれば、これが車両の正面方向に対して反射物体が見える角度、つまり反射波の到来方向を表しているため、ひいては方位データを生成することができるのである。
【0074】
そして、特に、レーダ波の到来方向の特定に直線距離情報を用いる場合、直線距離情報はビート信号の周波数に基づいて算出され、受信チャネル間の相互干渉による影響を受けないため、受信チャネル間の相互干渉の有無に関わらず正確に求めることができ、その結果、方位データの算出精度を向上させることができる。
【0075】
また、レーダ波の到来方向の特定に第二距離情報を用いる場合、路上局の通信エリアは、できるだけ小さく設定することが望ましい。即ち、路上局の通信エリアが小さいほど、車上局が位置特定情報を受信する位置のばらつきが小さくなるため、計測開始地点の通過タイミングがより正確に伝達されることになり、第二距離情報の推定精度、ひいては方位データの算出精度を向上させることができる。
【0076】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された第1実施形態の車載用レーダ装置の全体構成を表すブロック図である。
【0077】
図1に示すように、本実施例のレーダ装置2は、ミリ波帯のレーダ波を送信する送信部4と、送信部4から送出され先行車両や路側物等といった目標物体(障害物)に反射したレーダ波(以下、反射波という)を受信し、後述するビート信号Bを生成する受信部6と、受信部6が生成するビート信号Bに基づいて目標物体との距離,相対速度,及び方位等を検出する信号処理部8と、外部装置との間でデータの入出力を行うインタフェース部9とを備えている。
【0078】
このうち送信部4は、時間に対して周波数が直線的に漸増,漸減を繰り返すよう変調されたミリ波帯の高周波信号を生成する送信器10と、送信器10の出力を送信信号Ssとローカル信号Lとに電力分配する分配器12と、送信信号Ssに応じたレーダ波を放射する送信アンテナ14とを備えている。
【0079】
なお、送信器10が生成する高周波信号の周波数は、(具体的には、図2(a)に実線で示すように)三角波状に変化し、本実施形態では、中心周波数Fo=76.5GHz,周波数変動幅ΔF=100MHz,変動周期T=1.024msに設定されている。また、送信アンテナ14のビーム幅は、当該レーダ装置2の検出領域をすべてカバーするように設定されている。
【0080】
一方、受信部6は、レーダ波を受信する複数(本実施形態では8個)のアンテナ素子からなる受信アンテナ20と、いずれかのアンテナ素子からの受信信号Srにローカル信号Lを混合し、これら信号の差の周波数成分であるビート信号Bを生成する高周波用ミキサを備えた受信器22と、アンテナ素子からの受信信号Srのいずれかを選択信号Xrに従って択一的に選択し、受信器22へ供給する切替スイッチ24と、切替スイッチ24を制御するための選択信号Xrを生成する選択信号生成器26とを備えている。つまり、受信部6は、各アンテナ素子に対応して8つの受信チャネルch1〜8を有しており、すべての受信チャネルch1〜8が、単一の受信器22を時分割で共用するように構成されている。
【0081】
なお、各アンテナ素子が形成するビームにおいて、正面方向に対する利得の低下が3dB以内の角度範囲をビーム幅と規定し、各受信チャネルch1〜ch8のアンテナ素子は、そのビーム幅が、いずれも、送信アンテナ14のビーム幅(本実施例ではφ=20°)全体を含むように設定されている。
【0082】
また、選択信号生成器26は、受信信号が受信器22に供給されるアンテナ素子が、配列順、即ち受信チャネルch1〜ch8の番号順に従って順番に切り替わるような選択信号Xrを生成するように構成されている。なお、この選択信号Xrは、信号処理部8へも供給されている。
【0083】
次に、信号処理部8は、CPU,ROM,RAMからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、更に、選択信号Xrに同期して動作し、受信部6が生成するビート信号Bをデジタルデータに変換するA/D変換器、及びA/D変換器を介して取り込んだデータについて、高速フーリエ変換(FFT)処理を実行するための演算処理装置等を備えている。
【0084】
このように構成された本実施例のレーダ装置2では、送信器10が生成した高周波信号を分配器12が電力分配することにより送信信号Ss及びローカル信号Lが生成され、このうち送信信号Ssは、送信アンテナ14を介してレーダ波として送出される。
【0085】
この送信アンテナ14から送出されたレーダ波の反射波は、受信アンテナ20を構成する全てのアンテナ素子にて受信されるが、切替スイッチ24によって選択されている受信チャネルchi(i=1〜8)の受信信号Srのみが受信器22へ供給される。すると、受信器22では、この受信信号Srに分配器12からのローカル信号Lを混合することによりビート信号B(図2(b)参照)を生成し信号処理部8へ供給する。そして、信号処理部8では、ビート信号Bを、選択信号Xrのタイミングに従ってサンプリングした後、後述する障害物情報検出処理を実行する。
【0086】
なお、切替スイッチ24では、選択信号Xrに従って受信チャネルchiを順次切り替えているため、受信器22には、各受信チャネルch1〜8の受信信号Srが時分割多重されて供給されることになる。その結果、受信器22が生成するビート信号Bも、図3(a)に示すように、各受信チャネルch1〜8の受信信号Srに基づくビート信号B1〜B8が時分割多重されたものとなる。
【0087】
そして、切替スイッチ24が一回の接続を保持する期間tdはいずれも一定(本実施例では0.25μs)であり、従って、全ての受信チャネルch1〜ch8が切替スイッチ24によって一度ずつ選択される切替周期Txは、Tx=8×td(=2μs)となる。このため、信号処理部8は、変動周期T毎に、全ての受信チャネルch1〜ch8のビート信号B1〜B8を、T/Tx(=512)回ずつサンプリングすることになる。但し、各受信チャネルch1〜8のサンプリングタイミングは、期間Tdずつずれたものとなっている。
【0088】
ここで、信号処理部8が実行する障害物情報検出処理を、図4に示すフローチャートに沿って説明する。なお、本処理は、送信信号Ssの一変動周期T分のサンプリングデータが蓄積される毎に起動される。
本処理が起動されると、まずS110では、蓄積されたサンプリングデータを、各受信チャネルch1〜8毎、即ち、同じビート信号B1〜B8に基づくもの(図3(b)参照)毎に分離し、この分離されたサンプリングデータ毎に、複素フーリエ変換(特に、ここでは高速フーリエ変換のアルゴリズムを適用した複素FFT,以下「時間軸方向の複素FFT」ともいう)を実行することにより周波数分析を行う。
【0089】
但し、この複素FFTは、サンプリングデータの前半(上り変調時のデータ)と後半(下り変調時のデータ)とに分けてそれぞれ行う。そして、この複素FFTの演算結果として、各受信チャネル毎かつ各変調時毎に、各周波数成分毎の信号強度、及び位相を表す複素数からなるデータが得られる。
【0090】
続くS120では、各変調時毎に、信号強度がピーク(図2(c)参照)となる周波数成分(以下「ピーク周波数成分」という)についてのデータを抽出して、これを受信データとし、各受信チャネルchi(i=1〜8)から集めた受信データν1〜ν8を要素とする受信信号ベクトルVC=[ν1,ν2,…,ν8]を生成する。
【0091】
そして、S130では、S120にて抽出されたピーク周波数成分の周波数fu,fdを用い、FMCWレーダ装置において周知の算出式に基づいて、目標物体との距離や相対速度を算出する。
次にS140では、後述する相互干渉補償行列Dを用いて、先のS120にて生成した受信信号ベクトルVCに対する補償演算を行い、続くS150では、この補償演算後の受信信号ベクトルVC’の各要素を用いて、複素FFT(以下「空間軸方向の複素FFT」ともいう)を実行することにより、受信アンテナ20が受信したレーダ波の到来方向、即ち目標物体の方位を算出して本処理を終了する。
【0092】
ここで、先のS140にて使用される相互干渉補償行列Dを生成する際の調整方法について説明する。
まず、調整の際には、図5に示すように、レーダ装置2に、そのインタフェース部9を介してデータ端末50を接続すると共に、レーダ装置2の検出範囲内に、レーダ装置2から送信されたレーダ波を反射する反射板52を設置する。
【0093】
このうち、反射板52は、レーダ装置2の受信アンテナ20に到達した反射板52からの反射波を平面波と見なすことができる程度に、レーダ装置2から離れた位置に設置されている。具体的には、レーダ装置2が送信するレーダ波の波長をλ、反射板52の最大径をWとして、(10)式を満たすようにレーダ装置2と反射板52との間隔Rを設定すればよい。この場合、受信アンテナ20を構成するアンテナ素子間での利得の測定誤差が0.05dB以下に抑えられることになる。
【0094】
R≧2×W2/λ (10)
また、レーダ装置2及び反射板52の設置場所では、レーダ装置2から送信されたレーダ波が、反射板52以外の場所で反射してレーダ装置2に戻ってくることのないようにされている。
【0095】
更に、反射板52は、レーダ装置2が生成する相互干渉補償行列Dの次数をN(本実施形態では8)とし、レーダ装置2の検出範囲をN等分した各領域の中心方向のいずれかに設置される。
一方、データ端末50は、反射板52の設置場所に応じて、反射板52からの反射波がレーダ装置2の受信アンテナ20に照射される時の照射角度α(但し、レーダ装置2の正面方向を0°とする)を、レーダ波の到来方向を示す情報として、後述する補償行列生成処理を起動するための調整用コマンドと共にレーダ装置2に供給したり、レーダ装置2からの指令を表示画面に表示することができるように構成されている。
【0096】
ここで、レーダ装置2の信号処理部8が実行する補償行列生成処理を図6に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理は、データ端末50から調整用コマンドが入力されると起動し、本処理が起動すると、図6に示すように、まずS210では、送信器10を起動してレーダ波を送出させると共に、受信部6にて生成されるビート信号Bを、選択信号Xrのタイミングに従ってサンプリングすることにより、一変動周期T分のサンプリングデータを収集する。
【0097】
続くS220及びS230では、先に説明したS110及びS120での処理と全く同様に、サンプリングデータを各受信チャネルch1〜8毎に分離し、この分離されたサンプリングデータ毎に複素FFTによる周波数分析を行って、その分析結果よりピーク周波数成分、即ち受信データν1〜ν8を抽出すると共に、この受信データを要素とする受信信号ベクトルVCを生成する。
【0098】
続くS240では、調整用コマンドと共にデータ端末50から取得した照射角度αに基づいて方位データu1〜u8を求め、この方位データu1〜u8を要素とする参照信号ベクトルUC=[u1,u2,…,u8]を生成し、これを先のS230にて生成した受信信号ベクトルVCと対応付けてメモりに記憶する。
【0099】
なお、方位データu1〜u8は、照射角度α及び予め記憶されているアンテナ素子の配置間隔dwとから(10)式にて求められる伝搬距離差dlに基づき、この伝搬距離差dlをレーダ波の波長にて除算した余りから得た位相情報、及び受信信号ベクトルVCを構成する受信データν1〜ν8の絶対値を平均することにより得た振幅情報を用い、これらの位相情報及び振幅情報を複素数にて表現するようにされている。
【0100】
次のS250では、S240の処理により、メモリに記憶された受信信号ベクトルVC及び参照信号ベクトルUCが、所望数(ここでは8個)に達したか否かを判断する。そして、所望数に達していなければS260に移行し、データ端末50に対してレーダ波の到来方向の設定、即ち反射板52の設置場所を変更させるための変更コマンドを出力して、本処理を終了する。
【0101】
この時、レーダ装置2から変更コマンドを受信したデータ端末50は、その旨を表示パネルに表示する等して、調整作業を行っている作業者に報知する。その後、作業者により反射板52の設置場所が変更され、変更された設置場所に対応して決まる照射角度αが作業者によって入力されると、データ端末50は、この照射角度αを調整用コマンドと共にレーダ装置2に送信する。これにより、本処理が再起動され上述の処理が繰り返されることになる。なお、反射板52の移動や照射角度α及び調整用コマンドの送信は、作業者の手作業によらず、変更コマンドに従って動作する外部装置によって自動的に行ってもよい。
【0102】
一方、先のS250にて、メモリに記憶された受信信号ベクトルVCが所望数に達していると判定された場合には、S270に移行し、メモリに記憶された受信信号ベクトルVCに基づいて受信信号行列Vを作成すると共に、受信信号ベクトルVCに対応させて記憶した参照信号ベクトルUCに基づいて参照信号行列Uを作成する((7)(8)式参照)。
【0103】
続くS280では、S270にて生成された受信信号行列Vと参照信号行列Uとに基づき、(11)又は(12)式に示した所定の行列演算を行うことにより、相互干渉補償行列Dを生成し、これをメモリに記憶して、本処理を終了する。
つまり、本処理では、到来方向が互いに異なったN(ここではN=8)種類の測定用レーダ波を順次受信することによりN個の受信信号ベクトルVCを生成すると共に、測定時にデータ端末50から供給される測定用レーダ波の到来方向αに基づいて受信アンテナ20の各アンテナ素子に入射する信号の強度及び位相を表す参照信号ベクトルUCを生成している。そして、これらN個の受信信号ベクトルVC及び参照信号ベクトルUCをそれぞれ対応させて配列することにより生成したN行N列の受信信号行列V,及び参照信号行列Uの行列演算により、相互干渉補償行列Dを生成している。
【0104】
ここで、図7及び図8は、上述の補償行列生成処理にて生成された相互干渉補償行列Dによる補償演算の効果を表すグラフである。
なお、図7は、当該レーダ装置2を搭載した車両(以下「自車両」という)M1の50m先かつ該車両の正面方向に対して−3度の方位に反射物体Mxが存在する場合、図8は、同じく自車両の50m先かつ自車両M1の正面方向に対して−3度及び5度の方位にそれぞれ反射物体Mx,Myが存在する場合に、ピーク周波数成分の受信データ(受信信号ベクトルの各要素)に対して空間軸方向の複素FFTを実行することにより得られた方位情報のグラフである。
【0105】
但し、方位情報の角度は、自車両の正面方向を0度とし、右回り方向をプラス方向、左回り方向をマイナス方向とした。また、図中「▲」のポイントを結ぶグラフは、上述の補償行列生成処理により生成された相互干渉補償行列Dによる補償演算を行った場合、「□」のポイントを結ぶグラフは、補償演算を行わなかった場合を示している。
【0106】
図7及び図8に示すどちらの場合も、補償演算を行うことによってサイドローブが抑圧され、目標物体の有無がより明確になっている様子が示されている。特に、図7では、5度の位置には反射物体が存在しないにも関わらず出力のピークが表れており、補償演算を行わない場合、これを反射物が存在によるものとして誤認する可能性が高いが、補償演算を行うことにより、このような事態を防止することができる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置2においては、ビート信号Bをサンプリングして各受信チャネルch1〜ch8毎に分離し、複素FFT処理を行った後の受信データν1〜ν8に対して、相互干渉補償行列Dによる補償演算を行うようにされているため、単に受信アンテナ20のアンテナ素子間の相互結合だけでなく、切替スイッチ24内での相互干渉、ビート信号Bのサンプリングタイミングの同期ずれや、サンプリングデータから各受信チャネル毎の受信データν1〜ν8を得るまでの処理過程における様々な影響を一括して補償することができる。
【0108】
また、本実施形態のレーダ装置2では、補償演算を行うための相互干渉補償行列Dが、測定の難しいアンテナ指向性を必要せず、レーダ波の到来角度αから算出される方位データu1〜u8と、そのレーダ波を実際に受信することにより得られる受信データν1〜ν8とに基づいて生成されているため、従来装置と比較して、相互干渉補償行列Dを生成するための手間を大幅に削減することができる。
【0109】
更に、本実施形態のレーダ装置2では、ビート信号Bのサンプリングデータからピーク周波数成分を求めるための周波数解析、及び受信信号ベクトルVCの各要素に基づき目標物体についての方位情報を求める計算を、複素FFTを用いて行っているため、信号処理部8での演算量が比較的少なく、簡素なハードウエアにて必要な信号処理を行うことができる。
【0110】
なお、本実施形態において、受信アンテナ20構成するアンテナ素子の数は必ずしも8個に限定されるものではなく、複数であれば同様の効果を得ることができるため、2個以上であれば何個であってもよい。
また、本実施形態では、レーダ装置2から送出され、反射板52にて反射させたレーダ波を測定用レーダ波として用いているが、レーダ装置2外部のレーダ波放射源を用い、レーダ波放射源からのレーダ波を反射板52を介することなくレーダ装置2に直接照射するようにして調整を行ってもよい。
【0111】
特に、図9に示すように、受信アンテナ20の各アンテナ素子に対して、任意の位相を有する複数のレーダ波を同時に生成可能な送信装置54と、送信装置54にて生成された各レーダ波を、それぞれ個別に互いに干渉することなく各アンテナ素子に入射させるガイド装置56とを用いれば、レーダ装置2とレーダ波の発生源(即ち送信装置54)との間を広くする必要がないため、狭い場所であっても調整を行うことができる。
【0112】
また、この場合、送信装置54では、レーダ波を生成する際に、方位データと全く同じ情報を用いるため、この情報を、レーダ波の到来角度αの代わりに、レーダ装置2に対して送信するようにすればよい。
本実施形態において、送信部4及び受信部6が送受信手段、S240が到来方向特定手段、S230,S240がベクトル生成手段、S270が信号行列生成手段、S280が補償行列生成手段、S140が補償演算手段に相当する。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0113】
図10は、第2の実施形態のレーダ装置の全体構成を表すブロック図である。
本実施形態のレーダ装置2aは、送信部4a及び受信部6aの構成が、第1実施形態のレーダ装置2とは一部異なっているだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0114】
即ち、図10に示すように、本実施形態のレーダ装置2aでは、送信部4aから送信アンテナ14が省略されていると共に、受信部6aには、切替スイッチ24と受信器22との間に、送信信号Ssを切替スイッチ24側にのみ通過させると共に、切替スイッチ24からの受信信号Srを、受信器22側にのみ通過させるよう信号を分離する信号分離器としてのサーキュレータ28が設けられている。
【0115】
このように構成された本実施形態のレーダ装置2aによれば、アンテナ20及び切替スイッチ24が送受兼用とされる以外は、第1実施形態と同様に動作するため、第1実施形態のレーダ装置2と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態のレーダ装置2aでは、ミリ波高周波回路において、最もスペースを必要とするアンテナのスペースを有効利用することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0116】
図11は、本実施形態のレーダ装置の全体構成を表すブロック図である。
本実施形態のレーダ装置2bは、受信部6bの構成、及び信号処理部8での処理内容が、第1実施形態のレーダ装置2とは一部異なっているだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0117】
図11に示すように、本実施形態のレーダ装置2bは、受信部6bが、受信チャネルch1〜ch4に属する4つの受信アンテナ20a、及び受信チャネルch5〜ch8に属する4つの受信アンテナ20bと、各受信アンテナ20a,20bからの受信信号Srを、それぞれローカル信号Lと混合してビート信号Ba,Bbを生成する一対の受信器22a,22bと、受信アンテナ20aのいずれかの受信信号Srを選択信号Xrに従って受信器22aに供給する切替スイッチ24aと、受信アンテナ20bのいずれかの受信信号Srを選択信号Xrに従って受信器22bに供給する切替スイッチ24bとを備えている。
【0118】
なお、以下では、受信チャネルch1〜4、即ち受信アンテナ20a,切替スイッチ24a,受信器22aを、第1の受信グループと呼び、受信チャネルch5〜8、即ち受信アンテナ20b,切替スイッチ24b,受信器22bを第2の受信グループと呼ぶ。
【0119】
また、本実施形態のレーダ装置2bでは、同じ受信グループに属する受信チャネル間での相互干渉が、異なる受信グループの受信チャネル間との相互干渉と比較して、これを無視できる程度に大きいものとする。
そして、信号処理部8には、各受信グループ毎のビート信号Ba,Bbが供給されるため、これらをサンプリングするために、一対のA/D変換器が備えられており、選択信号Xrと同期して同時に動作するように構成されている。
【0120】
また、本実施例において、選択信号Xrは、各受信グループに属する受信アンテナ20a,20bを、それぞれ配列順に順番に選択するようにされており、即ち、ch1とch5,ch2とch6,ch3とch7,ch4とch8が、それぞれ対になって同時に動作するようにされている。
【0121】
このように構成された本実施例のレーダ装置2bでは、第1の受信グループからは、受信チャネルch1〜4のビート信号が時分割多重されたビート信号Baが、第2の受信グループからは、受信チャネルch5〜8のビート信号が時分割多重されたビート信号Bbが、信号処理部8に供給される。
【0122】
なお、信号処理部8にて実行される障害物情報検出処理は、S110〜S140の処理が受信グループ毎に行われ、S150にて、両受信グループから、同じ検出タイミングで動作する受信チャネル同士の受信データを比較することにより方位情報を算出する以外は、第1実施例の場合と全く同様である。
【0123】
また、補償行列生成処理も、受信グループ毎に個別に実行されるだけで、その内容は、扱うベクトルや行列の次数が異なる以外は、第1実施例の場合と全く同様である。
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置2bでは、切替スイッチ24a,24b及び受信器22a,22bを2つずつ設け、それぞれが互いに異なった受信グループに属する2つのアンテナ素子からの受信信号を同時に処理できるように構成されている。これら同時に検出された受信データ間では、切替スイッチ24a,24bでの切替タイミングに基づく位相誤差が発生しないため、これらの受信データを用いることにより、目標物体の方位情報を精度よく求めることができる。
【0124】
また、本実施形態のレーダ装置2bでは、受信グループ毎に別個の相互干渉補償行列Dを用いており、相互干渉補償行列の補償対象となる受信データの数が少ないため、相互干渉補償行列Dを用いた受信データの補償計算、及び相互干渉補償行列Dを生成するための計算のいずれも、その計算量を大幅に削減することができる。
【0125】
なお、本実施形態では、相互干渉補償行列Dによる補償演算を、受信グループch1〜ch4及びch5〜ch8毎に行っているが、第1及び第2実施形態と同様に、受信グループに分けることなく、全ての受信チャネルch1〜ch8について一括して行ってもよい。
【0126】
また、本実施形態のレーダ装置2bでは、各受信グループに同数の受信チャネルを割り当てているが、両受信グループに割り当てられる受信チャネル数は互いに異なっていてもよい。
[第4実施形態]
次に第4実施形態について説明する。
【0127】
なお、本実施形態のレーダ装置2cは、車両に搭載して使用するものであり、第1実施形態のレーダ装置2とは、補償行列生成処理の内容と、該処理を用いて行うレーダ装置の調整方法が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0128】
但し、図12に示すように、レーダ装置2cのインタフェース部9には、車両の走行状態を制御するECU30と、道路近傍に設置された路上局との無線通信を行う無線通信装置32と、レーダ装置2cに対して各種指令を入力するためのキースイッチ、及びレーダ装置2cの動作状態等を表示する表示画面等を備えた操作パネル34とが接続されている。
【0129】
そして、ECU30は、車速を検出する車速センサ30a,ステアリング角を検出するステアリングセンサ30b、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ30c等からの検出信号に基づいて各種車両制御を行うものであり、これら車速,ステアリング角,ヨーレート(以下総称する場合「走行状態情報」という)の検出信号を、レーダ装置2cに転送するよう構成されている。
【0130】
ここでは、信号処理部8とECU30とが別々に構成されているが、ECU30が信号処理部8を兼ね、信号処理部8での処理も実行するように構成してもよい。
なお、本実施形態のレーダ装置2cは、道路のカーブ部分では、当該レーダ装置を搭載した車両(以下「自車両」という)と、前方を走行する他車両(以下「対象車両」という)との位置関係が様々に変化することを利用して、車両の走行中に、相互干渉補償行列Dを生成するための調整を行うものである。
【0131】
即ち、図13に示すように、自車両M1と対象車両M2とが同一レーンを走行しているものとして、両車両M1,M2とも直線部分を走行している時(図中▲1▼参照)には、対象車両M2からの反射波は、常に一定の到来角度(α=0)となるが、対象車両M2が力ーブ部分に差し掛かかると(図中▲2▼参照)、自車両M1から対象車両M2を見る角度、即ち反射波の到来角度αが除々に増加する。そして、両車両M1,M2ともカーブ部分を走行している時(図中▲3▼参照)には、カーブ部分の曲率半径および両車両M1,M2間の相対速度がほぼ一定であれば、反射波の到来角度αもほぼ一定となり、その後、対象車両M2がカーブ部分を通過すると(図中▲4▼参照)、反射波の到来角度αが除々減少する。このように道路のカーブ部分では、対象車両M2からの反射波の到来角度が連続的に変化するのである。
【0132】
以下、この調整の際にレーダ装置2の信号処理部8が実行する補償行列生成処理を、図14に示すフローチャートに沿って説明する。
なお、本処理は、障害物情報検出処理(図4参照)が繰り返し実行さている時にのみ実行可能であり、車両の搭乗者が、操作パネル34に設けられた所定のキースイッチを操作することにより起動,停止、或いは強制終了(キャンセル)をできるようにされている。
【0133】
即ち、本処理は、見通しの良い力ーブ部分が存在する道路区間にて、前方に自車両と同一レーンを走行する対象車両が存在し、しかも、この対象車両以外の車両がレーダ装置2cの検知範囲内に存在しない場合に実行する必要があるため、その点を確認して車両の搭乗者が本処理の起動,停止を行い、また、自車両或いは他車両が走行するレーンを変更したり、レーダ装置2cの検知範囲内に別の車両が進入してきた場合には、精度のよい相互干渉補償行列を生成することが期待できなくなるため、このような場合に、搭乗者が本処理をキャンセルできるようにされている。
【0134】
図14に示すように、本処理が起動されると、まずS310では、障害物情報検出処理にて生成された最新の受信データ(S120参照)及び距離情報(S130参照)を取得し、取得した受信データを要素とする受信信号ベクトルVCを生成すると共に、S320にて、ECU30から走行状態情報を取得する。
【0135】
続くS330では、操作パネル34に設けられた本処理の起動/停止用のキースイッチが操作されたか否かを判断し、操作されていなければ、S340に移行し、今度は、キャンセル用のキースイッチが操作されたか否かを判断する。そして、これも操作されていなければ、S310に戻って、いずれかのキースイッチが操作されるまでの間、受信データ(受信信号ベクトル),距離情報,走行状態情報の取得を繰り返す。
【0136】
そして、キャンセル用のキースイッチが操作され、S340にて肯定判定された場合には、S410に移行し、S310,S320にて取得した情報を削除して本処理を終了する。
一方、起動/停止用のキースイッチが操作され、S330にて肯定判定された場合には、S350に移行し、先のS320にて取得された走行状態情報に基づき、自車両の走行軌跡を求めることにより、自車両と対象車両とが走行したレーンの道路形状を推定する。
【0137】
続くS360では、先のS310にて取得した距離情報と、S350にて推定された道路形状とに基づいて、S310にて取得した各受信信号ベクトルVC毎に電波の到来方向(到来角度α)を求め、続くS370では、この到来角度αに基づいて、各アンテナ素子毎の方位データu1〜u8を算出して、この方位データを要素とする参照信号ベクトルUCを生成し、これを対応する信号ベクトルVCと対にして記憶する。
【0138】
そして、S380にて記憶されたベクトル対(受信信号ベクトルVC,参照信号ベクトルUC)の中から、相互干渉補償行列Dの作成に適した到来方向からのものを、相互干渉補償行列Dが補償対象とする受信チャネルと同数だけ選択する。但し、相互干渉補償行列Dの作成に適した到来方向とは、各到来方向の間隔がほぼ均等となり、且つできるだけ広い角度範囲がカバーされるものをいう。
【0139】
以下、S390,S400では、S380にて選択されたベクトル対に基づき、先のS270,S280での処理と全く同様に、受信信号行列V及び参照信号行列Uを生成(S390)し、この生成した両行列V,Uの行列演算を行うことにより、相互干渉補償行列Dを生成しメモリの所定エリアに記憶(S400)して、本処理を終了する。
【0140】
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置2cでは、自車両M1の前方を走行する他車両を対象車両M2として、この対象車両M2からの反射波を利用して調整を行っているので、車両の走行中であっても適宜調整を行うことができる。その結果、レーダ装置2cの経年変化などによって受信チャネルch1〜ch8間の相互干渉の状態が変化したとしても、その変化を相互干渉補償行列Dに簡単に反映させることができ、常に精度よく目標物体の検出を行うことができる。
【0141】
また、本実施形態のレーダ装置2cでは、車速,ステアリング角だけでなく、車両の挙動が反映されるヨーレートも監視も考慮して車両の走行軌跡を求めているため、精度よく走行軌跡を求めることっができ、ひいては方位データu1〜u8や相互干渉補償行列Dの算出精度を向上させることができる。
【0142】
なお、本実施形態では、補償行列生成処理の起動,停止やキャンセルを、搭乗者が行うようにされているが、例えば、道路のカーブ部分の入口部分と出口部分とに、路車間通信を行うための路上局を設け、無線通信装置32を介してこれら路上局からの信号を受けて本処理を自動的に起動,停止したり、また、障害物情報検出処理にて複数の目標物体が検出されたり、走行状態情報に基づいて自車両のレーン変更が検出された場合に、本処理を自動的にキャンセルするよう構成してもよい。
【0143】
また、無線通信装置32を介した路車間通信により、自車両M1及び対象車両M2に関する位置情報の提供を受けるように構成し、この位置情報に基づいて反射波の到来方向を求めるようにしてもよい。
更に、無線通信装置32を介して車車間通信を行うよう構成し、この車車間通信を介して対象車両の走行情報を獲得して、反射波の到来方向の算出に反映させるようにしてもよい。
[第5実施形態]
次に第5実施形態について説明する。
【0144】
なお、本実施形態のレーダ装置は、第4実施形態の場合と同様に、車両に搭載して使用するものであり、第1実施形態のレーダ装置2とは、補償行列生成処理の内容と、該処理を用いて行うレーダ装置の調整方法が異なるだけであるため、この相違する部分を中心に説明する。
【0145】
なお、本実施形態のレーダ装置2dは、相互干渉補償行列Dを生成するための調整を、車両の走行中に行うものであり、ここでは、直線道路において、道路の路側付近に設置した物体を、走行車線を走行する自車両から見た角度が、物体に近づくに従って連続的に変化することを利用している。
【0146】
そして、レーダ装置2dのインタフェース部9には、第4実施形態の場合と同様に、ECU30と無線通信装置32と操作パネル34とがインタフェース部9を介して接続されている(図12参照)。
また、直線道路の路側付近には、図15に示すように、レーダ装置2dからのレーダ波を再帰反射する反射板M3が設置されていると共に、車両進行方向に対して反射板M3の手前側には、車両に搭載された無線通信装置32との通信を行う路上局M4が設置されている。
【0147】
なお、路上局M4の通信エリアは、道路の各レーン毎に設定されており、この通信エリアに進入した車両M1に対して、路上局M4の設置位置を測定開始地点とし、この測定開始地点から反射板M3に到る道路区間の長さを表す固定距離情報Lx、及び反射板M3の設置位置から測定開始地点を通過した車両M1が走行するレーン中央までの最短距離を表す第一距離情報L1を送信する。
【0148】
つまり、車両M1に搭載されたレーダ装置2dでは、路上局M4から固定距離情報Lx及び第一距離情報L1を受信することにより、測定開始地点の通過タイミングを検出できるようにされている。
以下、レーダ装置2dの信号処理部8にて実行される補償行列生成処理を、図16に示すフローチャートに沿って説明する。
【0149】
なお、本処理は、無線通信装置32を介した路上局M4との通信にて測定開始地点の通過が検出されると起動する。
図16に示すように、本処理が起動すると、まずS510,S520では、先に説明したS310,S320と全く同様に、障害物情報検出処理にて生成された最新の受信データ及び距離情報を取得し、取得した受信データを要素とする受信信号ベクトルVCを生成する(S510)と共に、ECU30から走行状態情報を取得する(S520)。
【0150】
続くS530では、本処理の起動時に路上局M4から取得した固定距離情報Lx,第一距離情報L1、及びS520にて取得した走行状態情報に基づいて、レーダ波の到来方向を求める。即ち、走行状態情報(特に車速情報)に基づいて測定開始地点からの走行距離Lrを算出し、この算出した走行距離Lrを固定距離情報Lxから減じることにより、車両M1の現在位置から反射板M3に到る道路区間の長さを表す第二距離情報L2(=Lx−Lr)を求める。そして、この第二距離情報L2と第一距離情報L1とに基づき、(13)式から、反射板M3から戻ってくるレーダ波の到来角度αを算出する。但し、角度αは、車両M1の正面方向を0°として表す。
【0151】
α=tan-1(L1/L2) (13)
続くS540では、S530にて算出された到来角度αに基づいて、先のS240と全く同様に、各アンテナ素子毎の方位データu1〜u8を算出して、この方位データu1〜u8を要素とする参照信号ベクトルUCを生成し、これを対応する受信信号ベクトルVCと対にして記憶する。
【0152】
続くS550では、現在、自車両M1は測定区間内に存在するか否かを判断し、測定区間内であれば、S510に戻って、同様に、受信信号ベクトルVC及び参照信号ベクトルUCからなるベクトル対を求める処理を繰り返し実行する。
なお、自車両M1が測定区間内に存在するか否かの判断は、測定開始地点からの走行距離Lrにより判断してもよいし、レーダ装置2dにより反射板M3を検出できているか否か(即ち、レーダ装置2dの検出角度範囲2αmax 内に反射板M3が存在するか否か)により判定してもよい。更には、測定開始地点の路上局M4以外に、別途、測定区間の終了を通知する路上局を設け、この路上局との無線通信を行うことにより判定してもよい。
【0153】
そして、車両M1が測定区間を通過することにより、S550にて否定判定されると、S560に移行して、S510〜S550の処理が繰り返されることにより蓄積されたベクトル対VC,UCの中から、相互干渉補償行列Dを求めるのに適したものを抽出し、以下、S570,S580では、S560にて選択されたベクトル対VC,UCに基づき、先のS270,S280での処理と全く同様に、受信信号行列V及び参照信号行列Uを生成(S570)し、この生成した両行列V,Uの行列演算を行うことにより、相互干渉補償行列Dを生成し、メモリの所定エリアに記憶(S580)して、本処理を終了する。
【0154】
以上説明したように、本実施形態のレーダ装置2dでは、調整を開始するタイミングを路上局M4からの無線通信により得ているので、車両M1の搭乗者に負担をかけることなく自動的に調整を行うことができる。
なお、本実施形態では、第一及び第二距離情報L1,L2を用いて、反射板M3からの反射波の到来方向(到来角度α)を求めているが、S510にて受信データと共に獲得した反射板M3との直線距離を表す第三距離情報L3と、第一及び第二距離情報L1,L2のいずれか一方とを用いて(14)又は(15)式から到来角度αを求めてもよい。
【0155】
α=sin-1(L1/L3) (14)
α=cos-1(L2/L3) (15)
特に、第一及び第三距離情報L1,L3を用いた場合、固定距離情報Lxや走行状態情報を必要としないため、処理を簡易化できるだけでなく、車両M1の走行に依存した不確定な要素が減るため、到来角度αの算出精度を向上させ、ひいては相互干渉補償行列Dによる補償精度を向上させることができる。
【0156】
なお、本実施形態では、路上局M4との無線通信により、補償行列生成処理を起動するタイミング、即ちレーダ装置2dが調整を開始するタイミングを得ているが、何等かの方法によって車両の搭乗者に対して調整区間であることを報知することにより、第4実施形態の場合と同様に、搭乗者による操作パネル34の操作に従って、補償行列生成処理を起動するようにしてもよい。
【0157】
本実施形態において、S520が走行状態検出手段、S530が推定手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態のレーダ装置の構成を表すブロック図である。
【図2】 FMCWレーダ装置の動作についての説明図である。
【図3】 切替スイッチを用いることで生成されるビート信号の波形図である。
【図4】 障害物情報検出処理の内容を表すフローチャートである。
【図5】 レーダ装置の調整方法などを表す説明図である。
【図6】 調整時に実行される補償行列生成処理の内容を表すフローチャートである。
【図7】 相互干渉補償行列を用いて補償演算を行った場合の効果を表すグラフである。
【図8】 相互干渉補償行列を用いて補償演算を行った場合の効果を表すグラフである。
【図9】 レーダ装置の他の調整方法を表す説明図である。
【図10】 第2実施形態のレーダ装置の構成を表すブロック図である。
【図11】 第3実施形態のレーダ装置の構成を表すブロック図である。
【図12】 第4実施形態のレーダ装置を車両に搭載した場合の他の装置との接続関係を表すブロック図である。
【図13】 道路のカーブ部分を利用したレーダ装置の調整方法を表す説明図である。
【図14】 第4実施形態における補償行列生成処理の内容を表すフローチャートである。
【図15】 直線道路の近傍に設置された反射板を利用したレーダ装置の調整方法を表す説明図である。
【図16】 第5実施形態における補償行列生成処理の内容を表すフローチャートである。
【図17】 レーダ波の到来方向に基づいて、各アンテナ素子の受信信号間に生じる位相差を求める原理を示す説明図である。
【符号の説明】
2,2a〜2d…レーダ装置 4,4a…送信部
6,6a,6b…受信部 8…信号処理部 9…インタフェース部
10…送信器 12…分配器 14…送信アンテナ
20,20a,20b…受信アンテナ 22…ミキサ
22,22a,22b…受信器 24,24a,24b…切替スイッチ
26…選択信号生成器 28…サーキュレータ 30…ECU
32…無線通信装置 34…操作パネル 50…データ端末
52…反射板 54…送信装置 56…ガイド装置 M1…自車両
M2…対象車両 M3…反射板 M4…路上局 Mx,My…反射物体
Claims (26)
- 連続波からなるレーダ波を送出すると共に、該レーダ波を反射した目標物体からの反射波を複数のアンテナにて受信し、各アンテナからの受信信号にローカル信号を混合してビート信号を生成する送受信手段と、
該送受信手段にて生成されたビート信号を周波数分析し、各アンテナに対応した受信チャネル毎に前記ビート信号の信号強度及び位相を表す受信データを生成する受信データ生成手段と、
を備え、該信号処理手段が生成する受信データに基づいて、前記目標物体の検出を行うレーダ装置において、
前記送受信手段にて受信されたレーダ波の到来方向を特定する到来方向特定手段と、
該到来方向特定手段にて特定された到来方向に基づき、各アンテナに入射されたレーダ波の信号強度及び位相を表す方位データを求めると共に、該方位データを要素とする参照信号ベクトル、及び前記レーダ波の受信により前記受信データ生成手段にて生成された前記受信データを要素とする受信信号ベクトルを対にして生成するベクトル生成手段と、
到来方向の異なる複数のレーダ波が前記送受信手段にて順次受信されることにより、前記ベクトル生成手段にて生成される複数対の受信信号ベクトル及び参照信号ベクトルに基づき、前記受信信号ベクトルを配列してなる受信信号行列、及び該受信信号行列に対応させて前記参照信号ベクトルを配列してなる参照信号行列を生成する信号行列生成手段と、
該信号行列生成手段にて生成された受信信号行列及び参照信号行列の行列演算により、各受信チャネル間に生じる相互干渉を補償するための相互干渉補償行列を生成する補償行列生成手段と、
該補償行列生成手段にて生成された相互干渉補償行列を用いて、前記信号処理手段にて生成された受信データに対する補償演算を実行する補償演算実行手段と、
を設け、該補償演算実行手段により補償演算が施された受信データを用いて、前記目標物体の検出を行うことを特徴とするレーダ装置。 - 前記送受信手段は、
前記複数のアンテナのうち、いずれかからの受信信号を選択して供給する切替スイッチと、
該切替スイッチから供給される受信信号と前記ローカル信号とを混合してビート信号を生成するミキサと、
を備えることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。 - 前記送受信手段は、レーダ波の送信信号を前記切替スイッチに供給すると共に、前記切替スイッチからの受信信号を前記ミキサに供給する信号分離器を備え、
前記アンテナ及び切替スイッチを送受信で兼用することを特徴とする請求項2記載のレーダ装置。 - 前記送受信手段は、前記アンテナが複数の受信グループに分割され、該受信グループ毎に前記切替スイッチ及びミキサを備え、
前記相互干渉補償行列は、前記受信グループ毎に設定されていることを特徴とする請求項2記載のレーダ装置。 - 前記送受信手段は、前記レーダ波として、時間と共に周波数が変動する周波数変調連続波を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか記載のレーダ装置。
- 前記受信データ生成手段は、前記ビート信号の周波数分析を複素フーリエ変換により行うことを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか記載のレーダ装置。
- 請求項1ないし請求項6いずれか記載のレーダ装置において、
前記ベクトル生成手段は、
前記到来方向特定手段にて特定されたレーダ波の到来方向と各アンテナの配置とに基づいて、各アンテナに入射されたレーダ波の伝搬距離差を求め、該伝搬距離差から各アンテナに入射されたレーダ波の位相差を求める位相差算出手段と、
前記受信データ生成手段にて生成された受信データに基づいて、各アンテナに入射されたレーダ波の推定振幅を求める振幅算出手段と、
を備え、前記位相差算出手段及び振幅算出手段にて求められた位相差及び推定振幅の情報を複素数にて表現したものを前記方位データとすることを特徴とするレーダ装置。 - 請求項7記載のレーダ装置において、
前記振幅推定手段は、前記受信データ生成手段にて生成された受信データが表す振幅の平均値を前記推定振幅とすることを特徴とするレーダ装置。 - 請求項1ないし請求項8いずれか記載のレーダ装置において、
前記補償行列生成手段が生成する相互干渉補償行列は、該相互干渉補償行列の補償対象となる受信データの数がN個の場合、N行×N列の正方行列からなることを特徴とするレーダ装置。 - 請求項9記載のレーダ装置において、
前記補償行列生成手段は、
前記受信信号行列の逆行列である受信信号逆行列を求め、
該受信信号逆行列に前記参照信号行列を乗算することにより相互干渉補償行列を求めることを特徴とするレーダ装置。 - 請求項9記載のレーダ装置において、
前記補償行列生成手段は、
前記参照信号行列の逆行列である参照信号逆行列を求め、
該参照信号逆行列に前記受信信号行列を乗算することにより相互干渉行列を求め、
該相互干渉行列の逆行列を求めることにより相互干渉補償行列を求めることを特徴とするレーダ装置。 - 請求項1ないし請求項11いずれか記載のレーダ装置において、
前記到来方向特定手段は、前記送受信手段が受信したレーダ波の到来方向を、前記受信データ生成手段が生成する受信データに基づいて算出された目標物体の方位情報から特定することを特徴とするレーダ装置。 - 請求項12記載のレーダ装置において、
前記到来方向特定手段は、予め設定された所定条件に従って起動することを特徴とするレーダ装置。 - 請求項1ないし請求項11いずれか記載のレーダ装置において、
前記到来方向特定手段は、レーダ波の到来方向に関する情報を、当該装置の外部より取得することを特徴とするレーダ装置。 - 請求項14記載のレーダ装置に対する調整方法であって、
前記レーダ装置の各アンテナに対して測定用レーダ波を照射する第1の手順と、 前記アンテナに対する前記測定用レーダ波の照射角度を前記レーダ装置の到来方向特定手段に取得させる第2の手順と、
からなり、上記第1及び第2の手順を、前記測定用レーダ波の照射角度を変更しながら繰り返すことにより、前記レーダ装置に前記相互干渉補償行列を生成させることを特徴とする調整方法。 - 請求項15記載の調整方法において、
前記測定用レーダ波の照射角度は、前記レーダ装置の検出角度範囲内をN等分した各領域の中心方向のいずれかと一致するよう設定することを特徴とする調整方法。 - 請求項15又は請求項16記載の調整方法において、
前記レーダ装置が送出したレーダ波を反射する反射物体からの反射波を、前記測定用レーダ波として用いることを特徴とする調整方法。 - 請求項17記載の調整方法において、
前記反射物体を、該反射物体にて反射し前記レーダ装置に到達する反射波が平面波と見なされる距離以上、前記レーダ装置から離して設置することを特徴とする調整方法。 - 請求項15又は請求項16記載の調整方法において、
前記レーダ装置の各アンテナに個別に入射され、互いの位相差を任意に設定可能な複数のレーダ波を発生させることができ、各レーダ波の位相差を適宜設定することにより、任意の照射角度を有する測定用レーダ波を模擬可能な送信装置を、前記測定用レーダ波の発生源として用いることを特徴とする調整方法。 - 車両に搭載された請求項1ないし請求項14いずれか記載のレーダ装置に対する調整方法であって、
前記レーダ装置の検出角度範囲内に存在し、該レーダ装置から送出されたレーダ波を反射する他車両からの反射波を用いて、前記相互干渉補償行列の生成を行わせることを特徴とする調整方法。 - 車両に搭載された請求項1ないし請求項14いずれか記載のレーダ装置に対する調整方法であって、
直線道路の路側付近に設置され、前記レーダ装置から送出されたレーダ波を反射する反射物体からの反射波を用いて、前記相互干渉補償行列の生成を行わせることを特徴とする調整方法。 - 車両に搭載された請求項1ないし請求項11いずれか記載のレーダ装置に、相互干渉補償行列を生成させるための調整システムであって、
直線道路の路側付近に設置され、前記直線道路を走行する車両に搭載された前記レーダ装置からのレーダ波を反射する反射物体と、
該反射物体と前記レーダ装置を搭載した車両との位置関係を特定するための位置特定情報を無線通信により送信する路上局と、
前記車両に搭載され、前記路上局からの位置特定情報を受信する車上局と、
を備え、
前記レーダ装置の到来方向特定手段は、前記車上局にて受信された位置特定情報に基づいて、前記反射物体が位置する方向を求めることにより、レーダ波の到来方向を特定することを特徴とする調整システム。 - 請求項22記載の調整システムにおいて、
前記反射物体は、前記レーダ装置から送出されたレーダ波が、該レーダ装置を搭載した車両と反射物体との間を往復する間に、該車両が移動している可能性のある角度範囲内のすべてに向けて反射することを特徴とする調整システム。 - 請求項22又は請求項23記載の調整システムにおいて、
前記路上局は、前記反射物体から該反射物体の手前に位置する計測開始地点までの道路区間の長さを表す固定距離情報、前記計測開始地点を通過した車両の通過タイミング、及び該車両が走行中の走行レーンの中央から前記反射物体までの最短距離を表す第一距離情報を前記位置特定情報として通知し、
前記レーダ装置の到来方向特定手段は、
当該レーダ装置を搭載した自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
該走行状態検出手段にて検出される車両の走行状態、及び前記車上局を介して取得した位置特定情報に基づき、自車両と前記反射物体との位置関係を推定する推定手段と、
を備え、該推定手段にて推定された位置関係からレーダ波の到来方向を特定することを特徴とする調整システム。 - 請求項24記載の調整システムにおいて、
前記走行状態検出手段は、少なくとも自車両の走行距離を算出可能な情報を検出し、
前記推定手段は、前記固定距離情報及び前記通過タイミング後の自車両の走行距離に基づいて自車両から前記反射物体までの道路区間の長さ表す第二距離情報を求め、前記第一距離情報と第二距離情報とにより、自車両と前記反射物体との位置関係を推定することを特徴とする調整システム。 - 請求項24記載の調整システムにおいて、
前記レーダ装置は、
前記受信データに基づいて、自車両から前記反射物体までの直線距離を表す第三距離情報を求める直線距離算出手段を備え、
前記推定手段は、前記固定距離情報及び前記通過タイミング後の自車両の走行距離に基づいて自車両から前記反射物体までの道路区間の長さを表す第二距離情報を求め、前記第一距離情報及び第二距離情報のうち少なくともいずれか一方と、前記直線距離算出手段にて算出された第三距離情報とにより、自車両と前記反射物体との位置関係を推定することを特徴とする調整システム。
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